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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】ダイヤフラム部材
(51)【国際特許分類】
   F16J 3/02 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
F16J3/02 D
F16J3/02 A
F16J3/02 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021122131
(22)【出願日】2021-07-27
(62)【分割の表示】P 2018151832の分割
【原出願日】2018-08-10
(65)【公開番号】P2021179255
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000101514
【氏名又は名称】アドバンス電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117503
【弁理士】
【氏名又は名称】間瀬 ▲けい▼一郎
(72)【発明者】
【氏名】松沢 広宣
(72)【発明者】
【氏名】藤川 伸之
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-211618(JP,A)
【文献】特開昭56-167957(JP,A)
【文献】特開2011-220422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 3/00-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度薬液や超純水の液体を流動させるダイヤフラム弁に適用されるPFA製のフィルム状ダイヤフラムと、
当該フィルム状ダイヤフラムの中央部に同軸的にレーザー溶接されたフッ素樹脂製の補助軸と、
前記ダイヤフラムの外周部に対し当該ダイヤフラムの両面のうちの一側面に沿うようにレーザー溶接されて前記ダイヤフラムを補強して取扱い易くするに適した環状形状を有するように形成してなるフッ素樹脂製の補強用環状体とを備えており、
前記補強用環状体は、その前記環状形状にて、前記ダイヤフラムを補強して取扱い易くするに適した径方向幅及び厚さを有するように形成されているダイヤフラム部材。
【請求項2】
記ダイヤフラムは、PFAを押し出し成形或いは圧縮成形することにより、フィルム状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のダイヤフラム部材。
【請求項3】
記補助軸は、1(mm)以上で4(mm)以下の範囲以内の外径を有しており、
前記ダイヤフラムは、0.1(mm)以上で0.5(mm)以下の範囲以内の厚さを有することを特徴とする請求項2に記載のダイヤフラム部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置において高純度薬液や超純水の液体を流動させるダイヤフラム弁に採用するに適したダイヤフラム部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のダイヤフラム部材が適用されるダイヤフラム弁は、ハウジングと、当該ハウジング内にて軸方向に湾曲状に変位可能に支持されるダイヤフラムと、当該ハウジングに組み付けられてダイヤフラムを軸方向に湾曲状に変位させるように駆動する駆動機構とにより構成されている。
【0003】
このような構成からなるダイヤフラム弁が半導体製造装置に用いられる場合、当該半導体製造装置における洗浄工程や剥離工程では、強酸・強アルカリ等の腐食性の高い薬液が高純度薬液として使用されることから、ダイヤフラム弁内のダイヤフラムの形成材料としては、耐酸性や耐アルカリ性等の耐薬品性に優れるフッ素樹脂を採用することが望ましい。
【0004】
また、半導体製造装置においては、ダイヤフラム弁からの金属成分や有機物成分の溶出は許されないことから、ダイヤフラムの形成材料としては、低溶出性を有するフッ素樹脂を採用することが望ましい。
【0005】
また、上述のようなダイヤフラム弁としての構成上、屈曲性に優れ長寿命を維持し得るフッ素樹脂を採用することが望ましい。
【0006】
以上のようなことから、ダイヤフラムの形成材料としては、耐薬品性、低溶出性を有し、かつ屈曲性に優れ長寿命を維持し得るフッ素樹脂を採用することが要請される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5286330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述のような構成を有するダイヤフラム弁では、さらに、半導体製造装置においてダイヤフラム弁からのパーティクルによる液体の汚染は許されないことから、ダイヤフラム弁内の流路系統に流れる液体を、ダイヤフラムでもって、駆動機構から隔離することが必要で、そのためには、当該ダイヤフラムを、外周部、湾曲変位部及び中央部でもって一体的に構成することが要請される。
【0009】
ここで、ダイヤフラムの形成材料として、PTFEを採用する場合、PTFEは、メルトフローレートが低いため、射出成形や押出成形では、良好な品質のダイヤフラムを形成することはできない。従って、ダイヤフラムは、PTFEの圧縮成形丸棒を切削加工することで形成される。
【0010】
このように切削加工により形成されるPTFE製ダイヤフラムの寿命は長いものの、このようなダイヤフラムを用いたダイヤフラム弁においては、その動作に伴い、切削加工してなる湾曲変位部がその表面にて伸延或いは圧縮することから、当該湾曲変位部から微少ではあるが発塵する。但し、このような発塵は、例えば、半導体製造装置で製造されるシリコンウエハの配線ピッチが10(nm)より大きい場合は、許容範囲以内にある。
【0011】
また、ダイヤフラムの形成材料として、PTFEに代えて、PFAを採用する場合、ダイヤフラムは、射出成形丸棒、圧縮成形丸棒或いは押し出し成形丸棒を切削加工することで形成される。
【0012】
このように切削加工により形成されるPFA製ダイヤフラムの寿命は短い。また、このように切削加工により形成してなるPFA製ダイヤフラムを用いたダイヤフラム弁は、その動作に伴い、切削加工してなる湾曲変位部の表面にて、切削加工により形成されるPTFE製ダイヤフラムの湾曲変位部と同様に、伸延或いは圧縮することから、湾曲変位部から微少ではあるが発塵する。
【0013】
ここで、ダイヤフラムの形成材料として、PFAを採用し、当該PFAを用いて射出成形により湾曲変位部の厚いものを成形するとともに切削加工することでダイヤフラムを形成する場合、射出成形や圧縮成形で厚肉形状に成形すると、湾曲変位部における結晶化が均一には起こらず、その界面が破壊の起点となるとともに寿命が短くなるため、このような湾曲変位部を有するダイヤフラムは、殆ど採用されていない。
【0014】
一方、近年、半導体製造装置による半導体素子、例えば、シリコンウエハの製造にあたり、さらなる微細化が要請されている。例えば、シリコンウエハにおける配線ピッチを10(nm)以下にしたいという要請がある。従って、ダイヤフラム弁からの発塵は、数nmサイズのパーティクルの発塵さえも許されない状況となっている。
【0015】
しかるに、上述したごとく、切削加工により形成したダイヤフラムを用いたダイヤフラム弁は、その動作に伴い、切削加工してなる湾曲変位部の表面にて伸延や圧縮を生じ、これに伴い、湾曲変位部から微少ではあるが、発塵する。
【0016】
このようなことでは、上述したダイヤフラム弁からの数nmサイズのパーティクルの発塵さえも許されない状況には対応し得ず、切削加工してなる湾曲変位部を有するダイヤフラムに対して、さらなる改良が要請される。
【0017】
これに対しては、PFA製のフィルムは、薄肉であるため、結晶化を均一にし得ることから、当該PFA製のフィルムを、押出成形や圧縮成形により形成して、少なくともダイヤフラムの湾曲変位部として採用すれば、上述したダイヤフラムの改良につながるものと認識した。
【0018】
ところで、上記ダイヤフラム弁においては、その構成上、駆動機構によりダイヤフラムを湾曲状に変位させるにあたり、ダイヤフラムは、その中央部にて、駆動機構の駆動軸に連結される。
【0019】
しかしながら、ダイヤフラムが上述のようにフィルム状であって非常に薄いことから、当該ダイヤフラムの中央部において、駆動機構の駆動軸と連結するに要する連結部を形成することはできない。従って、当該連結部なくして、ダイヤフラムの中央部を駆動機構の駆動軸と連結することは極めて困難である。
【0020】
これに対しては、上記特許文献1に記載の樹脂ダイヤフラムのシール方法によるレーザー溶接を適用してなるダイヤフラム弁の構成を利用することが考えられる。
【0021】
当該特許文献1にいうダイヤフラム弁においては、シール目的ではあるが、ダイヤフラムが、そのフランジ部にて、弁体室を密封するように、下ハウジングのフランジ部とレーザー溶接されている。このようなことに着目して、レーザー溶接を、PFA製ダイヤフラムの中央部と他の部材との連結に利用することは可能であろうという着想に至った。
【0022】
そこで、本発明は、以上のようなことに対処するため、屈曲性や長寿命性を確保し得るようなフィルム状のPFAを、数nm程度の発塵をも最少に抑制し得るダイヤフラムの形成材料として選択するとともに、他の部材との組み付け易さを考慮して適宜なフッ素樹脂製補助軸を活用し、ダイヤフラムがフィルムのように薄くても、当該補助軸とダイヤフラムの中央部との連結にレーザー溶接を適用したダイヤフラム構造として構成してなるダイヤフラム部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題の解決にあたり、本発明に係るダイヤフラム部材は、請求項1の記載によれば、
高純度薬液や超純水の液体を流動させるダイヤフラム弁に適用されるPFA製のフィルム状ダイヤフラム(200a)と、
当該フィルム状ダイヤフラムの中央部に同軸的にレーザー溶接されたフッ素樹脂製の補助軸(200c)と、
ダイヤフラムの外周部に対し当該ダイヤフラムの両面のうちの一側面に沿うようにレーザー溶接されてダイヤフラムを補強して取扱い易くするに適した環状形状を有するように形成してなるフッ素樹脂製の補強用環状体(200b)とを備えており、
補強用環状体は、その上記環状形状にて、ダイヤフラムを補強して取扱い易くするに適した径方向幅及び厚さを有するように形成されている。
【0024】
このような構成によれば、補助軸は、ダイヤフラムの中央部に対し、レーザー溶接により連結されているので、補助軸は、ダイヤフラムの中央部に良好に連結され得る。また、補強用環状体は、ダイヤフラムの外周部に対し当該ダイヤフラムの両面のうちの一側面に沿うようにレーザー溶接により連結されているので、補強用環状体とダイヤフラムの一側面に沿う当該ダイヤフラムの外周部との連結は良好に確保され得る。その結果、ダイヤフラムと補助軸及び補強用環状体とは、レーザー溶接でもって、良好な一体的構成からなるダイヤフラム部材を形成し得る。なお、補強用環状体は、ダイヤフラムの外径と等しい外径を有するように形成されていてもよい。
【0025】
ここで、ダイヤフラムは、PFAでもってフィルム状のダイヤフラムとして形成されている。このようにダイヤフラムをPFAでもって形成することにより、当該ダイヤフラムは、フィルム状であっても、耐薬品性、低溶出性、屈曲性や長寿命性に優れたダイヤフラムであって発塵性を最少(最小限)に抑制し得るダイヤフラムとして形成され得る。
【0026】
また、ダイヤフラムがその中央部及び外周部にて補助軸及び補強用環状体と上述のようにレーザー溶接される前においては、当該ダイヤフラムは、補助軸及び補強用環状体とは別体の独立部品として位置付けられる。従って、ダイヤフラムの補助軸及び補強用環状体とのレーザー溶接前においては、ダイヤフラムは、独立した自由な部品として、用途の限定を受けることのない利便性のあるダイヤフラムとして利用することができる
【0027】
また、フッ素樹脂製の補強用環状体は、上述のごとく、ダイヤフラムの外周部に対し当該ダイヤフラムの両面のうちの一側面に沿うようにレーザー溶接されている。従って、ダイヤフラムがフィルムのように薄いために取扱いにくくても、上述のような補強用環状体とダイヤフラムの一側面に沿う当該ダイヤフラムの外周部との間のレーザー溶接による連結構成でもって、補強用環状体が、ダイヤフラムに対し補強機能を良好に発揮し得る。
ここで、補強用環状体は、上述のように、ダイヤフラムを補強して取扱い易くするに適した径方向幅及び厚さを有するような環状形状にて形成されていることから、補強用環状体のダイヤフラムに対する補強機能がより一層良好に確保され得る。
従って、当該ダイヤフラムは、薄くても、曲がったりすることなく、より一層容易に取り扱われ得る。
【0028】
以上要するに、請求項1に記載の発明によれば、予め、それぞれ、独立の部品として別々に準備したダイヤフラム、補助軸及び補強用環状体のもとに、ダイヤフラムが、その補助軸及び補強用環状体とのレーザー溶接前において、独立した自由な部品として、用途の限定を受けることのない利便性を有するようにしたという作用効果と、ダイヤフラムを補強して取扱い易くするに適した径方向幅及び厚さを有するような環状形状にて形成してなる補強用環状体が、ダイヤフラムの外周部との当該ダイヤフラムの一側面に沿うレーザー溶接後において、フィルムのように薄いために取扱いにくいダイヤフラムを良好に補強して取り扱い易くするようにしたという作用効果との双方の作用効果が達成され得る。
【0034】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載のダイヤフラム部材において、ダイヤフラムは、PFAを押し出し成形或いは圧縮成形することにより、フィルム状に形成されていることを特徴とする。
【0035】
このような構成によれば、ダイヤフラムは、PFAを押し出し成形或いは圧縮成形することにより、フィルム状に形成されている。これにより、当該ダイヤフラムは、切削加工により形成したダイヤフラムに比べて発塵は少なく、特に数nmサイズのパーティクル等の発塵さえも最少(最小限)に抑制し得るような平滑度の高い面を有するダイヤフラムであって耐薬品性、低溶出性、屈曲性や長寿命性に優れたダイヤフラムとして確保され得る
【0036】
また、上述のように、ダイヤフラムが、PFAの押し出し成形或いは圧縮成形でもって、フィルム状に形成されている。従って、当該ダイヤフラムにおいては、その湾曲変位部を中心とした結晶化が均一に確保され得るので、当該ダイヤフラムの寿命がより一層長く維持され得る。以上によれば、請求項1に記載の発明の作用効果がより一層向上され得る。
【0037】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項2に記載のダイヤフラム部材において、
補助軸は、1(mm)以上で4(mm)以下の範囲以内の外径を有しており、
ダイヤフラムは、0.1(mm)以上で0.5(mm)以下の範囲以内の厚さを有することを特徴とする。
【0038】
このように、補助軸の外径を、1(mm)以上で4(mm)以下の範囲以内の値とし、かつ、ダイヤフラムの厚さを、0.1(mm)以上で0.5(mm)以下の値とすることにより、請求項2に記載の作用効果と同様の作用効果がより一層確実に達成され得る。ここで、4(mm)以下の外径を有する補助軸は、ダイヤフラムの中央部と熱による接合を行うと補助軸やダイヤフラムの中央部にて熱変形を生ずるおそれがあるものの、補助軸とダイヤフラムの中央部との接合をレーザー溶接により行うようにしたので、補助軸の外径を4(mm)以下としても、補助軸とダイヤフラムの中央部との接合を、変形を伴うことなく行うことができる。なお、補助軸の外径を1(mm)としたのは、1(mm)未満の外径を有する補助軸は形成困難なためである。
【0039】
また、上述のように、ダイヤフラムの厚さを0.1(mm)以上としたのは、0.1(mm)未満では、ダイヤフラムが薄過ぎて破れ易いためである。また、上述のように、0.5(mm)以下としたのは、ダイヤフラムは、0.5(mm)よりも厚いと、厚過ぎて曲がりにくいためである。
【0040】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明が適用されるダイヤフラム弁の第1実施形態を示す縦断面図である。
図2】上記第1実施形態におけるダイヤフラム部材のダイヤフラムの中央部を補助軸とレーザー溶接する工程を示す工程図である。
図3】上記第1実施形態におけるダイヤフラムの中央部の補助軸に対するレーザー溶接を説明するための断面図である。
図4】上記第1実施形態におけるダイヤフラム部材のダイヤフラムの外周部を補強用環状体とレーザー溶接する工程を示す工程図である。
図5】上記第1実施形態におけるダイヤフラムの外周部に対する補強用環状体のレーザー溶接を説明するための断面図である。
図6】本発明が適用されるダイヤフラム弁の第2実施形態の要部を示す部分縦断面図である。
図7】上記第2実施形態におけるダイヤフラムの外周部に対する補強用環状体のレーザー溶接を説明するための断面図である。
図8】本発明が適用されるダイヤフラム弁の第3実施形態を示す縦断面図である。
図9】本発明が適用されるダイヤフラム弁の第4実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明を適用してなるダイヤフラム弁の第1実施形態を示す。当該ダイヤフラム弁としては、半導体素子を製造する半導体製造装置に適用される空気作動形ダイヤフラム弁が採用されている。
【0043】
当該ダイヤフラム弁は、上記半導体製造装置の配管系統内に介装されて、当該配管系統を流れる液体をその上流側から下流側へ流動させるように構成されている。本第1実施形態において、上記液体は、高純度薬液や超純水の液体をいい、上記半導体製造装置の液体供給源から上記配管系統に供給されるようになっている。また、当該液体には、上記半導体製造装置としての性格上、清浄であることが要請される。
【0044】
当該ダイヤフラム弁は、図1にて示すごとく、筒状ハウジング100と、当該筒状ハウジング100内に組み付けられるダイヤフラム部材200及び空気作動形駆動機構300とを備えて、常閉型ダイヤフラム弁として構成されている。なお、本第1実施形態において、空気作動形駆動機構300は、以下、駆動機構300ともいう。
【0045】
筒状ハウジング100は、下側ハウジング部材100a及び上側ハウジング部材100bにより構成されている。
【0046】
下側ハウジング部材100aは、図1にて示すごとく、底壁110と、隔壁120とを備えており、底壁110は、底壁本体110a、流入筒110b及び流出筒110cでもって構成されている。
【0047】
底壁本体110aは、横断面矩形状に形成されており、当該底壁本体110aは、図1にて示すごとく、上壁部111を有する。
【0048】
ここで、当該上壁部111は、内側環状壁部111a及び外側環状壁部111bでもって構成されており、内側環状壁部111aは、上壁部111の中央側に形成されている。外側環状壁部111bは、内側環状壁部111aの外周側にて当該内側環状壁部111aよりも上方へ環状に突出するように形成されている。
【0049】
また、当該底壁本体110aは、環状弁座部111cを有しており、当該環状弁座部111cは、内側環状壁部111aの中央部から隔壁120側へ同軸的にかつ環状に突出するように形成されている。ここで、当該環状弁座部111cは、流入路部112(後述する)の内端開孔部内に連通するように形成されている。
【0050】
底壁本体110aは、流入路部112及び流出路部113を有しており、流入路部112は、底壁本体110a内にて、環状弁座部111cから流入筒110bに向けて延出するように形成されている。当該流入路部112は、その内端開孔部にて環状弁座部111c内に連通するようになっている。
【0051】
一方、流出路部113は、内側環状壁部111aの一部から流出筒110cに向けて延出するように、底壁本体110a内にて形成されている。ここで、当該流出路部113は、その内端開孔部にて内側環状壁部111aの一部から液体室Ra(後述する)内に開口するように底壁本体110a内に形成されている。
【0052】
流入筒110bは、底壁本体110aに、その流入路部112の外端開孔部から外方へ延出するように形成されており、当該流入筒110bは、上記配管系統の上流側に流入路部112を連通させる役割を果たす。一方、流出筒110cは、流出路部113を上記配管系統の下流側に連通させる役割を果たす。
【0053】
隔壁120は、図1にて示すごとく、隔壁本体120a及び環状フランジ120bを有しており、隔壁本体120aは、その下壁部にて、底壁本体110aの上壁部111の外側環状壁部111b内に嵌装されて、ダイヤフラム部材200のダイヤフラム200a及び補強用環状体200b(後述する)を介し内側環状壁部111a上に着座している。
【0054】
また、環状フランジ120bは、底壁本体110aの軸方向中間部位から径方向に沿い外方へ環状に突出するように形成されており、当該環状フランジ120bは、底壁本体110aの上壁部111の外側環状壁部111b上に同軸的に着座している。このようにして、隔壁120は、ダイヤフラム200a及び補強用環状体200bを介して、底壁本体110aにその上方から同軸的に組み付けられている。
【0055】
また、当該隔壁120は、連通路121を有しており、当該連通路121は、隔壁本体120a内にて図1にて示すごとくL字状に形成されている。ここで、当該連通路121は、その外端開孔部にて、隔壁120の外部に開放されており、当該連通路121の内端開孔部は、ダイヤフラム200aと隔壁本体120aとの間に形成される空気室Rb(後述する)内に開口している。
【0056】
上側ハウジング部材100bは、横断面矩形状に形成されており、当該上側ハウジング部材100bは、周壁130と、上壁140とでもって、構成されている。周壁130は、上壁140から下方に向け筒状に延出してなるもので、当該周壁130の中空部131は、その内周面にて、横断面円形状に形成されている。また、当該周壁130は、その延出端開口部にて、隔壁120の隔壁本体120aにその上方からOリング123を介し同軸的にかつ気密的に嵌装されて環状フランジ120b上に着座している。
【0057】
ダイヤフラム部材200は、図1にて示すごとく、ダイヤフラム200a、補強用環状体200b及び補助軸200cでもって構成されている。ダイヤフラム200aは、その外周部210にて、補強用環状体200bを介し底壁110の底壁本体110aと隔壁120の隔壁本体120aとの間に挟持されている。これにより、当該ダイヤフラム200aは、底壁本体110aの上壁部111のうち外側環状壁部111bの内周側にて内側環状壁部111aと隔壁本体120aとの間を、液体室Raと空気室Rbとに区画する。
【0058】
ここで、液体室Raには、上記半導体製造装置の配管系統の上流側から流入筒110b及び底壁110の流入路部112を通り流動する液体が環状弁座部111cを通り流入する。これにより、当該液体が液体室Ra内にてダイヤフラム200aの下面220に作用する液圧を発生する。一方、空気室Rbには、外気が隔壁120の連通路121を通り流入する。これにより、当該外気が空気室Rb内にてダイヤフラム200aの上面230に作用する空圧(大気圧)を発生する。
【0059】
ダイヤフラム200aは、所定のフッ素樹脂でもって、円板状かつフィルム状のダイヤフラムとして形成されている。
【0060】
本第1実施形態において、ダイヤフラム200aは、ダイヤフラム弁としての構成上、強酸・強アルカリ等の腐食性の高い薬液等の高純度薬液と接触するから、当該ダイヤフラム200aは、耐酸性や耐アルカリ性等の耐薬品性に優れることが望ましい。
【0061】
また、ダイヤフラム弁のダイヤフラム200aやその他の構成部材からの金属成分や有機物成分の溶出は許されないことから、少なくともダイヤフラムの形成材料としては、低溶出性を有するフッ素樹脂を採用することが望ましい。
【0062】
また、ダイヤフラム200aは、ダイヤフラム弁の開閉毎に湾曲変位を繰り返すことから、少なくとも屈曲性や長寿命性に優れることが望ましい。
【0063】
そこで、本第1実施形態では、上記所定のフッ素樹脂として、耐薬品性、低溶出性、耐熱性や耐食性に優れ、かつ、屈曲性や長寿命性を確保し得るテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が採用されている。なお、本第1実施形態においては、筒状ハウジング100及び隔壁120の各形成材料としても、PFAが採用されている。
【0064】
また、当該ダイヤフラム200aは、フィルム状のダイヤフラムとして、所定の厚さ範囲以内の厚さ、例えば、0.5(mm)を有するようにPFAでもって形成されている。本第1実施形態において、上記所定の厚さ範囲は、0.1(mm)以上で0.5(mm)以下の厚さ範囲をいう。
【0065】
ここで、0.1(mm)以上としたのは、0.1(mm)未満では、ダイヤフラム200aが薄過ぎて破れ易いためである。また、0.5(mm)以下としたのは、ダイヤフラム200aは、0.5(mm)よりも厚いと、厚過ぎて曲がりにくいためである。
【0066】
以上のように構成してなるダイヤフラム200aは、その中央部240にて、環状弁座部111cに対向する弁体部(以下、弁体部240ともいう)としての役割を果たす。このことは、弁体部240が、環状弁座部111cと共に、ダイヤフラム弁の弁部を構成することを意味する。
【0067】
補強用環状体200bは、フィルム状のダイヤフラム200aを補強するためのもので、当該補強用環状体200bは、ダイヤフラム200aの外周部210に沿い当該ダイヤフラム200aの下面220側からレーザー溶接されている。これにより、補強用環状体200bは、ダイヤフラム200aの外周部210と一体的に形成されている。
【0068】
本第1実施形態では、当該補強用環状体200bは、後述のようにPFAを用いて円柱状に射出成形した後環状に切削することで、形成されている。ここで、 補強用環状体200bは、ダイヤフラム200aの外径に等しい外径を有しており、当該補強用環状体200bの径方向幅及び厚さは、フィルム状のダイヤフラム200aを補強して取り扱い易くするに適した各値に設定されている。このことは、当該補強用環状体200bは、ダイヤフラム200aの外径に等しい外径を有し、フィルム状のダイヤフラム200aを補強して取り扱い易くするに適した径方向幅及び厚さを有することで、フィルム状のダイヤフラム200aを補強して取り扱い易くするに適した環状形状に形成されていることを意味する。
【0069】
補助軸200cは、円柱状のもので、当該補助軸200cは、その下部にて、ダイヤフラム200aの中央部240にレーザー溶接されている。これにより、補助軸200cは、ダイヤフラム200aの中央部240と一体的に形成されている。また、補助軸200cは、雌ねじ孔部260を有しており、当該雌ねじ孔部260は、補助軸200cにその上部側から同軸的に形成されている。
【0070】
本第1実施形態において、補助軸200cは、後述のようにPFAを用いて円柱状に射出成形することで形成されている。また、補助軸200cの外径は、1(mm)以上で4(mm)以下の範囲以内の値に設定されている。
【0071】
ここで、補助軸の外径を4(mm)以下としたのは、4(mm)以下の外径を有する補助軸をダイヤフラムの中央部と熱による接合を行うと補助軸やダイヤフラムの中央部にて熱変形を生ずるおそれがあるものの、補助軸とダイヤフラムの中央部との接合をレーザー溶接により行えば、補助軸とダイヤフラムの中央部との接合部位に変形を伴わないためである。また、補助軸の外径を1(mm)以上としたのは、1(mm)未満の外径を有する補助軸は形成困難なためである。
【0072】
なお、補助軸200cの下部は、その中央側下面部aにて、当該補助軸200cの軸に直交するように形成されており、当該補助軸200cの下部の外周側下面部bは、外方に向けて凸な横断面円弧状に形成されている(図3参照)。
【0073】
このように構成された補助軸200cは、その上部から、隔壁本体120aに同軸的に形成してなる貫通孔部122(図1参照)に摺動可能に嵌装されて、後述のように駆動機構300のピストン軸320と当該貫通孔部122内にて連結されている。本実施形態において、補助軸200cの軸長は、隔壁本体120aの軸方向厚さよりも短い。
【0074】
以上のように構成してなるダイヤフラム部材200は、ダイヤフラム200a、補強用環状体200b及び補助軸200cでもって、一体的に形成されている。しかして、補助軸200cが、後述のようにコイルスプリング330の付勢力のもとにピストン軸320により液体室Ra側へ押動されたとき、ダイヤフラム200は、その湾曲変位部にて、補助軸200cにより液体室Raへ押動されて湾曲状に変位して、弁体部240にて、環状弁座部111cに着座することで、弁部を閉じる。このことは、ダイヤフラム弁が閉弁することを意味する。なお、ダイヤフラム200aの湾曲変位部は、当該ダイヤフラム200aの外周部と中央部との間のフィルム状部位をいう。
【0075】
一方、補助軸200cが、後述のように下側室131a内の空気圧に応じてコイルスプリング330の付勢力に抗して摺動するピストン軸320に連動してダイヤフラム200aを湾曲状に変位させながら下側室131b側へ摺動すると、ダイヤフラム200aが、弁体部240にて、環状弁座部111cから離れることで、弁部を開く。このことは、ダイヤフラム弁が開弁することを意味する。
【0076】
駆動機構300は、図1にて示すごとく、ハウジング100の内部に組み付けられている。当該駆動機構300は、ピストン310と、ピストン軸320と、コイルスプリング330とにより構成されている。
【0077】
ピストン310は、ハウジング部材100bの周壁130の中空部131内にOリング311を介し、気密的に摺動可能に嵌装されており、当該ピストン310は、その軸方向両側にて、周壁130の中空部131を上側室131a及び下側室131bに区画形成している。本第1実施形態では、ピストン310は、ピストン軸320とともに、PFAでもって形成されている。
【0078】
ここで、上側室131aは、ハウジング部材100bの上壁140に形成してなる環状溝部141、連通路部142及び開孔部143を通りハウジング部材100bの外部に開放されている。
【0079】
なお、環状溝部141は、上壁140に上側室131aの内部から同軸的に環状に形成されている。開孔部143は、上壁140の外周部内に形成されており、連通路部142は、環状溝部141を開孔部143に連通させるように、上壁140の内部に形成されている。
【0080】
一方、下側室131bは、周壁130に形成してなる連通路部133及び開孔部134を介し圧縮空気流供給源(図示しない)に接続されている。これにより、下側室131bの内部には、上記圧縮空気流供給源からの圧縮空気流が開孔部134及び連通路部133を通り供給されるようになっている。
【0081】
なお、開孔部134は、開孔部143の下方にて、連通路部133を通り下側室131b内に連通するように周壁130の一部に形成されている。連通路部133は、開孔部134を下側室131bの内部に連通させるように周壁130の一部に形成されている。
【0082】
ピストン軸320は、ピストン310から同軸的にかつ一体的に延出するように形成されている。当該ピストン軸320は、図1にて示すごとく、軸本体部320aと、軸状雄ねじ部320bとを備えており、軸本体部320aは、ピストン310から同軸的に下側室131bを通り延出して隔壁本体120aの貫通孔部122内にOリング321を介し摺動可能に嵌装されている。
【0083】
軸状雄ねじ部320bは、軸本体部320aの延出端部から同軸的にかつ一体的に延出されており、当該軸状雄ねじ部320bは、補助軸200cの雌ねじ孔部260内に締着されている。これにより、ピストン軸320aは、隔壁本体120aの貫通孔部122内にて、摺動可能に補助軸200cと同軸的に連結されている。
【0084】
コイルスプリング330は、図1にて示すごとく、上壁140の環状溝部141内に嵌装されており、当該コイルスプリング330は、環状溝部141の底部とピストン310との間に挟持されて、ピストン310を下側室131bに向けて付勢している。
【0085】
このように構成した駆動機構300においては、上記圧縮空気供給源からの圧縮空気流による空気圧が下側室131b内に発生していない場合には、ピストン310が、コイルスプリング330の付勢力により下側室131b側へ摺動されて、ピストン軸320が、補助軸200cを環状弁座部111c側へ押動することで、ダイヤフラム200aを、その中央部240(弁体部240)にて環状弁座部111cに着座するように変位させる。
【0086】
一方、上記圧縮空気供給源からの圧縮空気流が開孔部134及び連通路部133を通り下側室131b内に供給されると、ピストン310が、下側室131b内の圧縮空気による空気圧に応じてコイルスプリング330の付勢力に抗して上側室131a内の空気を環状溝部141、連通路部142及び開孔部143から外部へ排出しながら当該上側室131a側へ摺動し、ピストン軸320が、ピストン310の摺動方向と同一方向に連動して、補助軸200cを介し、ダイヤフラム200aを、その中央部240である弁体部にて、環状弁座部111cから離れる方向に湾曲状に変位させる。
【0087】
次に、以上のように構成したダイヤフラム弁の製造にあたり、ダイヤフラム部材200におけるダイヤフラム200aと補強用環状体200b及び補助軸200cとのレーザー溶接の方法について説明する。
【0088】
ダイヤフラム200aと補強用環状体200b及び補助軸200cとのレーザー溶接にあたり、ダイヤフラム200a、補強用環状体200b及び補助軸200cを、それぞれ、単独の別部品として形成したものを準備する。このようにダイヤフラム200aは、単独の別部品として形成されるので、用途の限定を受けない利便性のあるダイヤフラムとして形成され得る。
【0089】
本第1実施形態では、ダイヤフラム200aは、PFAでもって押し出し成形方法による成形でもって形成されたものを準備する。当該押し出し成形方法による押し出し成形は、例えば、次のようにしてなされる。
【0090】
予め準備したペレット状のPFAを、押し出し成形機により、加熱溶融する。然る後、加熱溶融したPFAを、型内のフィルム形状のキャビテイ内に圧入して徐々に冷却しながらフィルム状に成形する。このように成形した成形品からダイヤフラム200aに相当する円板形状に打ち抜く。これにより、ダイヤフラム200aが、フィルム状のダイヤフラムとして形成される。
【0091】
上述のようにダイヤフラム200aの形成にあたり、PFAを用いた押し出し成形方法を採用したのは、以下の根拠に基づく。
【0092】
例えば、PFAからなる材料を切削加工することでダイヤフラムを形成すると、当該ダイヤフラムの面には切削痕が形成される。従って、このような切削加工によるダイヤフラムがダイヤフラム弁の液体室Raにおいて流動する液体と接触する場合、ダイヤフラムの切削痕に起因して、パーティクル、例えば、数nmサイズの微小なパーティクル等が微少ではあるがダイヤフラムから剥がれて発塵し液体内に混入すると、当該液体は清浄には維持され得ない。
【0093】
これでは、半導体製造装置による製造品、例えば、配線ピッチが10(nm)以下であるようなシリコンウエハの品質不良を招く。このため、ダイヤフラム弁内の液体に対するパーティクルの混入、例えば、数nmサイズのパーティクルの液体に対する混入さえも確実に防止しなければならない。
【0094】
また、ダイヤフラムをPFAの射出成形でフィルム状に形成することは困難であるのは勿論のこと、フィルム状に形成できたとしても、屈曲性に優れた長寿命のダイヤフラムを形成することは困難である。
【0095】
そこで、本第1実施形態においては、ダイヤフラム200aを押し出し成形方法による成形でもってフィルム状に形成することとした。これにより、押し出し成形機により押し出し成形されたフィルム状のダイヤフラムは、その各面にて、非常に良好な平滑面、所謂、つるつるの滑らかな面を有するように形成された数nmサイズのパーティクルの発塵をも最少に抑制し得るダイヤフラムであって、耐薬品性、低溶出性や屈曲性に優れた長寿命を有するダイヤフラムとして形成され得る。
【0096】
また、補助軸200cとダイヤフラム200aの中央部240とのレーザー溶接は、次のようにして行う。まず、図2にて示す補助軸の保持工程S1において、補助軸200cを、図3にて示すごとく、雌ねじ孔部260を下側に向けて開口させて位置するように保持する。このとき、当該保持は、雌ねじ孔部260がその軸にて鉛直状に位置するように行う。
【0097】
然る後、ダイヤフラムの載置工程S2において、ダイヤフラム200aが、その中央部240にて、補助軸200cの下部の下面上に位置するように、補助軸200cに載置される(図3参照)。
【0098】
ついで、押さえ板の載置工程S3において、押さえ板Qが、ダイヤフラム200aの中央部240を介し補助軸200cに同軸的に対向するように中央部240上に載置される。
【0099】
ここで、押さえ板Qは、レーザー光を透過し易いガラスでもって、所定の厚さ及び所定の外径を有するように円板状に形成されている。当該レーザー光を透過し易いガラスは、高熱伝導性を有する。なお、押さえ板Qは、一般的には、光透過性及び熱伝導性を有する押え部材であればよく、また、当該押さえ部材は、板状であるか否かは問わず、どのような形状であってもよい。
【0100】
このように、押さえ板Qは上述のようにレーザー光を透過し易いガラスであることから、当該押さえ板Qは、レーザー光を吸収し難い。また、当該押さえ板Qを形成する上述のガラスは、高熱伝導性を有することから、ダイヤフラム200aの中央部240に対する載置状態において当該ダイヤフラム200aの中央部240の熱を吸収し易い。なお、本第1実施形態において、押さえ板Qの所定の外径は、補助軸200cの外径よりも大きく設定してある。
【0101】
また、押さえ板Qの所定の厚さは、次のように選定されている。押さえ板Qを、上述のごとく、ダイヤフラム200aの中央部240上に載置した状態において、レーザー光を、後述のように、押さえ板Qを通しダイヤフラム200aの中央部240と補助軸200cとの境界面の近傍に収束させたとき、当該レーザー光が押さえ板Qを良好に透過するとともに、押さえ板Qが、レーザー光に起因してダイヤフラム200aの中央部240に生ずる熱を吸収することで、当該ダイヤフラム220の中央部240の温度上昇を良好に抑制するように選定されている。
【0102】
上述のように押さえ板Qがダイヤフラム200aの中央部240上に載置された後、次の押さえ板に対する押え付け工程S4において、押さえ板Qが、その上方から、適宜なプレス機(図示しない)により、図3にて矢印Pにより示すごとく、ダイヤフラム200aの中央部240に向けて押し付けられる。このとき、押さえ板Qは、その下面にて、ダイヤフラム200aの中央部240の上面の全面に亘り、一様な押圧力でもって、押え付けられる。
【0103】
このような押え付け状態のまま、次のレーザー光照射工程S5において、レーザー光が、レーザー装置L(図3参照)により、次のようにして、押さえ板Qに向けて照射される。
【0104】
当該照射にあたり、レーザー装置Lの構成について説明すると、当該レーザー装置Lは、その出射部にて、レーザー光を出射するように構成されている。ここで、当該レーザー装置は、その出射部からのレーザー光を、レンズ系(図示しない)により、当該レンズ系から所定の焦点距離だけ離れた焦点上に収束するように構成されている。また、当該レーザー装置Lは、その出射部からのレーザー光の出射強度を調整可能に構成されている。
【0105】
しかして、レーザー装置Lにより押さえ板Qに向けてレーザー光を照射するにあたっては、当該レーザー装置Lが、その出射部にて、ダイヤフラム200aの中央部240の外周部に対向するように、ダイヤフラム200aの中央部240の外周部の直上に維持される。本第1実施形態において、当該レーザー装置Lのレーザー光の収束点、即ち、上記レンズ系の焦点は、ダイヤフラム200aの中央部240の外周部とこれに対する補助軸200cの対応部との境界部(以下、中央部―補助軸間境界部ともいう)上の部位F(以下、照射部位Fともいう)の近傍に対応する(図3参照)。
【0106】
ここで、レーザー装置Lは、上記中央部―補助軸間境界部の照射部位Fの近傍を含む円周に沿い当該円周上にレーザー光を収束させながら、押さえ板Qの軸周りに回転するようになっている。
【0107】
このとき、レーザー装置Lのレンズ系の焦点が、上記中央部―補助軸間境界部の照射部位Fの近傍に一致するように、レーザー装置Lのダイヤフラム200aの中央部240の外周部に対する高さが位置調整される。
【0108】
さらに、ダイヤフラム200aの中央部240及び補助軸200cの下部のうちの中央側下面部aを含む部位が、上記中央部―補助軸間境界部の照射部位Fの近傍を中心とする円周領域(溶融領域)にて溶融可能なように、当該レーザー装置Lからのレーザー光の出射強度が調整される。
【0109】
ここで、PFAの融点が約320(℃)であるため、当該レーザー装置Lは、その出射強度にて、上記中央部―補助軸間境界部の照射部位Fの近傍に対する加熱温度をPFAの融点よりも幾分高くするように、設定されている。
【0110】
但し、押さえ板Qが、その高熱伝導性のもとにダイヤフラム200aの中央部の外周縁部の熱を吸熱することを考慮して、上記中央部―補助軸間境界部の照射部位Fの近傍に対する加熱温度がPFAの融点を超えて上昇しても、上記中央部―補助軸間境界部の照射部位Fの近傍を中心とする溶融領域が所定領域内に収まるように、照射部位Fの近傍に対するレーザー光の出射強度が所定の出射強度として設定されている。
【0111】
換言すれば、レーザー装置Lにおいて、上記中央部―補助軸間境界部の照射部位Fの近傍を含む溶融領域上に沿い照射されるレーザー光の照射強度が一様に上記所定の照射強度となるように設定されている。なお、上述の所定領域は、例えば、ダイヤフラム200aの中央部240の補助軸200cに対する載置状態において、少なくともダイヤフラム200aの中央部240のうちの上面部を含まず補助軸200cのうちの下部のうち中央下面部aを含む部位以外の部位を含まない領域をいう。
【0112】
しかして、当該レーザー装置Lが、その作動に伴い、図3にて示すごとく、レーザー光を出射すると、当該レーザー光は、図3にて示すごとく、押さえ板Qの外周縁部及びダイヤフラム200aの中央部240の外周縁部を各厚さ方向に透過して、順次円周方向に変位する上記中央部―補助軸間境界部の照射部位Fの近傍に収束する。
【0113】
従って、このようなレーザー光による照射を維持しながら、上述のようなレーザー装置Lのレーザー光の出射強度の設定のもと、ダイヤフラム200aの中央部240及び補助軸200cの下部のうち中央側下面部aを含む部位が、上記中央部―補助軸間境界部の周方向に沿い、照射部位Fの近傍を中心として局所的にレーザー装置Lの移動位置に応じてレーザー光により順次加熱されていく。これに伴い、ダイヤフラム200aの中央部240の外周縁部及びこれに対する補助軸200cの対応部位が、その円周方向に沿い、上記中央部―補助軸間境界部の照射部位Fの近傍を中心として局所的に、順次、溶融されていく。
【0114】
本第1実施形態において、上述のような局所的な加熱では、ダイヤフラム200aの中央部240に対する加熱温度は、押さえ板Qによる吸熱作用のもと、ダイヤフラム200aの中央部240においてその下面(補助軸200c側の面)からその反対側の面に向けて順次低下するとともに、補助軸200cにおいては、ダイヤフラム200aの中央部240側から当該中央部240の上面とは反対方向に向けて順次低下する。従って、補助軸200c及びダイヤフラム200aの中央部240が、上述した所定領域内において共に溶融することとなる。
【0115】
このようなレーザー光による照射を維持しながら、レーザー装置Lが、レーザー光を、上記中央部―補助軸間境界部の照射部位Fの近傍を含む円周上に沿い順次収束させるように、回転していく。
【0116】
これにより、補助軸200cの下部のうち中央側下面部aを含む部位及びダイヤフラム200aの中央部240が、上記中央部―補助軸間境界部の照射部位Fの近傍を含む溶融領域を中心とする上記所定の領域に亘り、レーザー光により加熱されて一様に溶融して共に溶着していく。その後、レーザー装置Lからのレーザー光の出射を停止することで、補助軸200cの下部のうち中央側下面部aを含む部位及びダイヤフラム200aの中央部240は、自然冷却を経て硬化していく。
【0117】
ここで、上述のごとく、上記所定領域は、ダイヤフラム200aの中央部240の補助軸200cの下部のうち中央側下面部aを含む部位に対する載置状態において、少なくともダイヤフラム200aの中央部240の上面部及び補助軸200cの下部のうち中央側下面部aを含む部位以外の部位を含まない領域であることから、ダイヤフラム200aの中央部240を補助軸200cの下部のうち中央側下面部aを含む部位に載置した状態において、ダイヤフラム200aの中央部240がその押さえ板Qとの接合面まで溶融することはなく、また、補助軸200cの下部のうち中央側下面部aを含む部位は、当該部位以外の部位まで補助軸200cにおいて溶融することはない。従って、補助軸200c及びダイヤフラム200aは、その原形状を維持したまま、相互に溶着され得る。
【0118】
然る後、図2の押さえ板除去工程S6において、押さえ板Qが、ダイヤフラム200aの中央部240から除去される。これにより、補助軸200c及びダイヤフラム200aの中央部240が、相互に溶着硬化した状態にて、補助軸200cとダイヤフラム200aの中央部とのレーザー溶接による一体的な接合による連結構成が形成される。
【0119】
以上によれば、ダイヤフラム200aの単独の部品としてのレーザー溶接前における利便性を確保しつつ、補助軸200cとダイヤフラム200aの中央部とを良好に連結し得る。これに伴い、ダイヤフラム200aにおける外周部210、中央部240及び当該外周部210と中央部240との間の部位である湾曲変位部の一体構成のもと、液体室Raの内部のシールが良好に確保され得る。
【0120】
また、ダイヤフラム200aの外周部210と補強用環状体200bとのレーザー溶接は、次のようにして行う。
【0121】
上述のように補助軸200cとダイヤフラム200aの中央部とのレーザー溶接による一体的連結構成が形成された後、図4にて示す補強用環状体の保持工程S1aにおいて、補強用環状体200cを、その上面にて水平状になるように保持する(図5参照)。
【0122】
然る後、ダイヤフラムの載置工程S2aにおいて、ダイヤフラム200aが、その外周部210にて、補強用環状体200b上に位置するように、補強用環状体200bに載置される(図5参照)。
【0123】
ついで、環状押さえ板の載置工程S3aにおいて、環状押さえ板Q1が、ダイヤフラム200aの外周部210を介し補強用環状体200bに同軸的に対向するように、ダイヤフラム200aの外周部210上に載置される(図5参照)。
【0124】
ここで、環状押さえ板Q1は、押さえ板Qの形成材料と同一の材料でもって所定の厚さ及び所定の外内径を有するように環状に形成されている。従って、環状押さえ板Q1は、押さえ板Qと同様の特性、即ち、光透過性及び高熱伝導性を有する。
【0125】
従って、当該環状押さえ板Q1は、その光透過性に起因して、レーザー光を吸収し難い。また、当該環状押さえ板Q1は、その高熱伝導性に起因して、ダイヤフラム200aの外周部210に対する載置状態において当該ダイヤフラム200aの外周部210の熱を吸収し易い。
【0126】
なお、環状押さえ板Q1の所定の厚さは、環状押さえ板Q1を、上述のごとく、ダイヤフラム200aの外周部210上に載置した状態において、レーザー光を、後述のように、環状押さえ板Q1を通しダイヤフラム200aの外周部210と補強用環状体200bとの境界面の近傍に収束したとき、当該レーザー光が環状押さえ板Q1を良好に透過するとともに、環状押さえ板Q1が、レーザー光に起因してダイヤフラム200aの外周部210に生ずる熱を吸収して、当該ダイヤフラム220の外周部210の温度上昇を良好に抑制するように選定されている。また、環状押さえ板Q1の所定の外径は、補強用環状体200bの外径よりも大きく、環状押さえ板Q1の所定の内径は、補強用環状体200bの内径よりも小さく選定されている。
【0127】
上述のように環状押さえ板Q1がダイヤフラム200aの外周部210上に載置された後、次の環状押さえ板に対する押え付け工程S4aにおいて、環状押さえ板Q1が、その上方から、適宜なプレス機(図示しない)により、図5にて矢印P1により示すごとく、ダイヤフラム200aの外周部210に向けて押し付けられる。このとき、環状押さえ板Q1は、その下面にて、ダイヤフラム200aの外周部210の上面の全面に亘り、一様な押圧力でもって、押え付けられる。
【0128】
このような押え付け状態のまま、次のレーザー光照射工程S5aにおいて、レーザー光が、上述のレーザー装置L(図6参照)により、次のようにして、環状押さえ板Q1に向けて照射される。
【0129】
レーザー装置Lにより環状押さえ板Q1に向けてレーザー光を照射するにあたっては、当該レーザー装置Lが、その出射部にて、ダイヤフラム200aの外周部210に対向するように、ダイヤフラム200aの外周部20の直上に維持される。本第1実施形態において、当該レーザー装置Lのレーザー光の収束点、即ち、上記レンズ系の焦点は、ダイヤフラム200aの外周部210とこれに対する補強用環状体200bとの境界部(以下、外周部―補強用環状体間境界部ともいう)上の部位F1(以下、照射部位F1ともいう)の近傍に対応する(図5参照)。
【0130】
ここで、レーザー装置Lは、上記外周部―補強用環状体間境界部の照射部位F1の近傍を含む円周に沿い当該円周上にレーザー光を収束させながら、環状押さえ板Q1の軸周りに回転するようになっている。
【0131】
このとき、レーザー装置Lのレンズ系の焦点が、上記外周部―補強用環状体間境界部の照射部位F1の近傍に一致するように、レーザー装置Lのダイヤフラム200aの外周部210に対する高さが位置調整される。
【0132】
さらに、ダイヤフラム200aの外周部210及び補強用環状体200bの上面側部位が、上記外周部―補強用環状体間境界部の照射部位F1の近傍を中心として溶融可能なように、当該レーザー装置Lからのレーザー光の出射強度が調整される。
【0133】
具体的には、当該レーザー装置Lは、その出射強度にて、上記外周部―補強用環状体間境界部の照射部位F1の近傍に対する加熱温度をPFAの融点よりも幾分高くするように、設定されている。
【0134】
但し、環状押さえ板Q1が、その高熱伝導性のもとにダイヤフラム200aの外周部210の熱を吸熱することを考慮して、上記外周部―補強用環状体間境界部の照射部位F1の近傍に対する加熱温度がPFAの融点を超えて上昇しても、上記外周部―補強用環状体間境界部の照射部位F1の近傍を中心とする溶融領域が、押さえ板Qの場合と同様に、所定領域内に収まるように、照射部位F1の近傍に対するレーザー光の出射強度が所定の出射強度として設定されている。
【0135】
しかして、当該レーザー装置Lが、その回転作動に伴い、レーザー光を出射すると、当該レーザー光は、図5にて示すごとく、環状押さえ板Q1及びダイヤフラム200aの外周部210を各厚さ方向に透過して、順次変位する上記外周部―補強用環状体間境界部の照射部位F1の近傍に収束する。
【0136】
従って、このようなレーザー光による照射を維持しながら、上述のようなレーザー装置Lのレーザー光の出射強度の設定のもと、ダイヤフラム200aの外周部210及び補強用環状体200bの上面側部位が、上記外周部―補強用環状体間境界部の周方向に沿い、照射部位F1の近傍を中心として局所的にレーザー装置Lの移動位置に応じてレーザー光により順次加熱されていく。これに伴い、ダイヤフラム200aの外周部210及び補強用環状体200bの上面側部位が、その円周方向に沿い、上記外周部―補強用環状体間境界部の照射部位F1の近傍を中心として局所的に、順次、溶融されていく。
【0137】
本第1実施形態において、上述のような局所的な加熱では、ダイヤフラム200aの外周部210に対する加熱温度は、環状押さえ板Q1による吸熱作用のもと、ダイヤフラム200aの外周部210においてその下面(補強用環状体200b側の面)からその反対側の面に向けて順次低下するとともに、補強用環状体200bにおいては、ダイヤフラム200aの外周部210側から当該外周部210の上面とは反対方向に向けて順次低下する。従って、補強用環状体200b及びダイヤフラム200aの外周部210が、上述した所定領域内において共に溶融することとなる。
【0138】
このようなレーザー光による照射を維持しながら、レーザー装置Lが、レーザー光を、上記外周部―補強用環状体間境界部の照射部位F1の近傍を含む円周領域(溶融領域)上に沿い順次収束させるように、回転していく。
【0139】
これにより、補強用環状体200bの上面側部位及びダイヤフラム200aの外周部210が、上記外周部―補強用環状体間境界部の照射部位F1の近傍を含む円周領域を中心とする上記所定の領域に亘り、レーザー光により加熱されて一様に溶融して共に溶着していく。その後、レーザー装置Lからのレーザー光の出射を停止することで、補強用環状体200bの上面側部位及びダイヤフラム200aの外周部210は、自然冷却を経て硬化していく。従って、補強用環状体200b及びダイヤフラム200aは、その原形状を維持したまま、相互に溶着され得る。
【0140】
然る後、図4の環状押さえ板除去工程S6aにおいて、環状押さえ板Q1が、ダイヤフラム200aの外周部210から除去される。これにより、補強用環状体200b及びダイヤフラム200aの外周部210が、相互に溶着硬化した状態にて、補強用環状体200bとダイヤフラム200aの外周部とのレーザー溶接による一体的な接合構成が形成される。これに伴い、補強用環状体200bとダイヤフラム200aの外周部210との間のシールが良好に確保され得る。
【0141】
以上のようにしてダイヤフラム部材200が、ダイヤフラム200a、補強用環状体200b及び保持軸200cでもって、一体的に形成される。このように構成してなるダイヤフラム部材200aのうち補助軸200cが、駆動機構300のピストン軸320とは別部品として形成されている。従って、ダイヤフラム部材200によれば、ハウジング100内において駆動機構300とダイヤフラム200aとの間における隔壁120等の構成部品の組み付けを容易に行うことができるのは勿論のこと、少なくともレーザー溶接前におけるダイヤフラム部材200は、各種の仕様を有するダイヤフラム弁においても利用し得るという利便性が確保され得る。
【0142】
上述のようにダイヤフラム部材200が形成された後は、ダイヤフラム部材200が、補助軸200cを上側に保持するようにして、ダイヤフラム200aにて、予め準備してある底壁110の上壁部111の外側環状壁部111bの内側に嵌装して補強用環状体200bを介し内側環状壁部111a上に着座させる。
【0143】
このとき、補強用環状体200bが、ダイヤフラム200aの外周部にレーザー溶接されているので、補強用環状体200bを底壁110の上壁部111の外側環状壁部111bの内側にて内側環状壁部111a上に着座させることで、ダイヤフラム200aを内側環状壁部111a上に補強用環状体200bを介し着座させ得る。
【0144】
換言すれば、ダイヤフラム200aが薄いために取扱いにくくても、上述のようなダイヤフラム200aの外周部210と補強用環状体200bとのダイヤフラム200aの下面に沿うレーザー溶着による構成でもって、補強用環状体200bが、ダイヤフラム200aに対し補強機能を発揮して、ダイヤフラム200aを上壁部111の外側環状壁部111bの内側に容易に嵌装して内側環状壁部111a上に補強用環状体200bと共に良好に着座させ得る。
【0145】
ついで、隔壁120が、図1にて示すごとく、連通路121の内端開孔部にてダイヤフラム200aに対向するように、隔壁本体120aにて、ダイヤフラム200aを介し内側環状壁部111aに対向するように外側環状壁部111bの内側に嵌装されるとともに、環状フランジ部120bにて、外側環状壁部111b上に着座するように、底壁110に組み付けられる。これにより、ダイヤフラム200の外周部210の補強用環状体200bとのレーザー溶接のもと、ダイヤフラム200aの外周部210が、補強用環状体200bを介し、内側環状壁部111aと隔壁本体120aの外周部との間に挟持されるので、液体室Raの内部のシールが上述のごとく良好に確保され得る。なお、上述のように、隔壁120が上壁110に組み付けられるとき、隔壁120は、その貫通孔部122にて、補助軸200cに同軸的に嵌装される。
【0146】
ついで、ピストン軸320が、その軸状雄ねじ部320bにて、Oリング321を介し隔壁120の貫通孔部122に嵌装されながら、補助軸200cの雌ねじ孔部260内に同軸的に締着される。このとき、上述のごとく、ダイヤフラム200aの中央部240と補助軸200cの延出端部とがレーザー溶接されている。従って、上述したフィルム状のダイヤフラム200aは非常に薄いものの、ダイヤフラム200aがその中央部240にて補助軸200cとレーザー溶接されているため、当該ダイヤフラム200aがその中央部にてピストン軸320との連結に要する連結部を有さなくても、ピストン軸320の軸状雄ねじ部320bを、補助軸200cの雌ねじ孔部260に螺着することで、ピストン軸320、ダイヤフラム200aと補助軸200cとの連結を容易に行うことができる。
【0147】
然る後、上側ハウジング部材100bが、予め準備したコイルスプリング330を環状溝部141内に嵌装したまま、周壁130の中空部131内にピストン310を、Oリング131を介し収容しつつ、その先端開口部にて、隔壁本体120aに嵌装されて環状フランジ部120b上に着座する。これにより、ダイヤフラム弁の製造組み付けが完了する。
【0148】
以上のように構成した本第1実施形態において、半導体素子を上記半導体製造装置により製造するにあたり、当該空気作動形ダイヤフラム弁が閉弁状態にあるものとする。
【0149】
このとき、当該空気作動形ダイヤフラム弁においては、ピストン310が、コイルスプリング330による付勢力に基づき、上側ハウジング部材110b内において、下方へ摺動している。
【0150】
これに伴い、ピストン軸320が、補助軸200cを介しダイヤフラム200aをその中央部240である弁体部240にて環状弁座部111cに着座させている。このようなダイヤフラム弁の閉弁状態において、圧縮空気流が上記圧縮空気流供給源から上側ハウジング部材100bの開孔部134及び連通路部133を通り下側室131b内に供給されると、ピストン310が、ピストン軸320と共に、下側室131b内の圧縮空気流の圧力に基づきコイルスプリング330の付勢力に抗して上側ハウジング部材100bの中空部131を上方へ摺動する。
【0151】
これに伴い、補助軸200cが、ピストン軸320と共に連動して、ダイヤフラム200aがその中央部240にて補助軸200cにより引っ張られて、空気室Rb側へ湾曲状に変位する。これに伴い、ダイヤフラム200aが、その中央部240にて、環状弁座部111cから離れる。これにより、ダイヤフラム弁が開弁状態になる。
【0152】
このような状態において、液体が上記液体供給源から上記配管系統の上流部に供給されると、当該液体が、流入筒110b、連通路部112及び環状弁座部111cを通り液体室Ra内に流入する。このように液体室Ra内に流入する液体は、連通路部113及び流出筒110cを通り上記配管系統の下流部内に流出する。
【0153】
このような液体の流動過程においては、上述のように液体室Ra内に流入する液体が、その液圧の変動に応じて、ダイヤフラム200aを空気室Rb側或いは液体室Raへ湾曲変位させつつ、液体室Raから連通路部113を介し流出筒110c内に流動する。
【0154】
ここで、ダイヤフラム200aは、上述のごとく、PFAでもって押し出し成形により形成されたフィルム状のダイヤフラムである。このため、当該ダイヤフラム200aは、その両面にて、良好な平滑面となっている。
【0155】
従って、ダイヤフラム弁が作動状態にあっても、切削痕に起因するようなパーティクルが、ダイヤフラム200aの液体との接触により当該ダイヤフラム200aから剥離されて液体内に混入するという事態を生じないのは勿論のこと、数nmサイズの微小なパーティクルの液体内への混入さえも最少(最小限)に抑制し得る。また、このようなことは、ダイヤフラム弁の作動状態において、ダイヤフラム200aの中央部240が環状弁座部111cに着座したり当該環状弁座111cから離れたりしても、同様に成立する。
【0156】
以上のようなことから、液体室Ra内にて流入する液体は、数nmサイズの微小なパーティクルの混入さえも最少に抑制することで、実質的に清浄に維持されて、連通路部113及び流出筒110cを通り上記配管系統の下流部内に流出する。
【0157】
従って、上記配管系統の下流部内に流出した液体が、半導体素子の製造にあたり、例えば、例えば10(nm)以下の配線ピッチを有する半導体ウェハーの表面に沿い流動しても、数nmサイズのパーティクルが当該半導体ウェハーの表面に付着して配線間の短絡その他の異常を招くことはない。その結果、製造された半導体素子の品質が良好に維持され得る。
【0158】
また、フィルム状のダイヤフラム200aは、上述のごとく、PFAを用いた押し出し成形により形成されているから、数nmサイズのパーティクルの発塵をも最少に抑制し得るとともに屈曲性に優れ長寿命を維持し得るダイヤフラムとして形成され得る。従って、このようなダイヤフラム200aを有するダイヤフラム弁が半導体製造装置に適用されても、ダイヤフラム200aが長期に亘り屈曲作動を良好に維持することから、当該ダイヤフラム弁は、半導体製造装置に適用されるダイヤフラム弁として、長期に亘り良好な機能を維持し得る。
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態の要部を示している。当該第2実施形態では、空気作動形ダイヤフラム弁が、補強用環状体200bをダイヤフラム200aの外周部210にその上面側からレーザー溶接してなるダイヤフラム部材を、上記第1実施形態にて述べたダイヤフラム部材200に代えて採用してなるものである。なお、本第2実施形態にいうダイヤフラム部材も、上記第1実施形態と同様に、符号200により示す。
【0159】
当該ダイヤフラム部材200は、上記第1実施形態と同様に、ダイヤフラム200a、補強用環状体200b及び補助軸200cでもって構成されている。本第2実施形態においても、補助軸200cは、上記第1実施形態と同様に、ダイヤフラム200aの中央部240にレーザー溶接されている。また、補強用環状体200bは、上記第1実施形態とは異なり、ダイヤフラム200aの外周部210にて、上面230側からレーザー溶接されている。
【0160】
ここで、上記第1実施形態と同様に補助軸200cとレーザー溶接してなるダイヤフラム200aの外周部210と補強用環状体200bとのレーザー溶接は、次のようにして行う。
【0161】
図4の補強用環状体の保持工程S1aにおいて、補強用環状体200bがその上面にて水平状に位置するように保持される(図7参照)。すると、次のダイヤフラムの載置工程S2aにおいて、ダイヤフラム200aが、上記第1実施形態とは異なり、その上面230にて、補強用環状体200b上にその上側から載置される。このとき、当該載置は、ダイヤフラム200aの外周部210が補強用環状体200bに同軸的に対応するようになされる。
【0162】
然る後は、環状押さえ板の載置工程S3a、レーザー光照射工程S5a及び環状押さえ板の除去工程S6aの各処理が、上記第1実施形態と同様になされる。これにより、補強用環状体200b及びダイヤフラム200aの外周部210が、相互に溶着硬化した状態にて、補強用環状体200bとダイヤフラム200aの外周部とのレーザー溶接による一体的な接合構成が形成される。
【0163】
その結果、補強用環状体200bとダイヤフラム200aの外周部とのレーザー溶接に関して、ダイヤフラム200aの利便性を確保しつつ、上記第1実施形態にて述べたと同様の作用効果が、本第2実施形態のダイヤフラム部材200においても達成され得る。
【0164】
上述のように、本第2実施形態にいうダイヤフラム部材200が形成された後は、当該ダイヤフラム部材200が、次のようにして下側ハウジング部材100aに組み付けられる。
【0165】
ここで、上記第1実施形態にて説明した下側ハウジング部材100aの底壁本体110aにおいて、上壁部111が、内側環状壁部111a及び外側環状壁部111bに加えて、これら両内側環状壁部111a及び外側環状壁部111bの間に中側壁部111dを有するように形成されている。
【0166】
そして、中側壁部111dは、内側環状壁部111aの外周部上に形成されており、当該中側壁部111dは、内側環状壁部111aよりも高く突出している。これにより、底壁本体111は、その上壁部111にて、内側環状壁部111a、中側壁部111d及び外側環状壁部111bに亘り順次上方へ階段状に突出するように形成されている。
【0167】
しかして、本第2実施形態において、上述のように構成してなるダイヤフラム部材200では、ダイヤフラム200aが、補強用環状体200bを上側に位置させる状態にて、外側壁部211a内に嵌装されて、外周部210にて、中側壁部111d上に着座する。これに伴い、補強用環状体200bが、ダイヤフラム200aの上側から外側環状壁部111b内に嵌装される。
【0168】
ついで、隔壁120が、図6にて示すごとく、補強用環状体200bを介し、連通路121の内端開孔部にてダイヤフラム200aに対向するように、隔壁本体120aにて、外側環状壁部111bの内側に嵌装されて補強用環状体200b上に着座するとともに、環状フランジ部120bにて、外側環状壁部111b上に着座するように、底壁110に組み付けられる。このとき、隔壁120の貫通孔部122内には、補助軸200cが同軸的に摺動可能に嵌装される。
【0169】
このように、ダイヤフラム部材200が、上記第1実施形態とは異なり、補強用環状体200bをダイヤフラム200aの外周部210にその上面側からレーザー溶接した構成を有していても、補助軸200cが、駆動機構300のピストン軸320とは別部品として形成されている。従って、本第2実施形態でも、ダイヤフラム部材200によれば、ハウジング100内において駆動機構300とダイヤフラム200aとの間における隔壁120等の構成部品の組み付けを容易に行うことができるのは勿論のこと、当該ダイヤフラム部材200を、各種の仕様を有するダイヤフラム弁においても利用し得るという利便性が確保され得る。
【0170】
ついで、ピストン軸320が、その軸状雄ねじ部320bにて、Oリング321を介し隔壁120の貫通孔部122に嵌装されながら、補助軸200cの雌ねじ孔部260内に同軸的に締着される。このように、上記第1実施形態にて述べたと同様に、ダイヤフラム200aがその中央部にてピストン軸320との連結に要する連結部を有さなくても、補助軸200cの雌ねじ孔部260内にピストン軸320の軸状雄ねじ部320bを締着することで、ダイヤフラム200aとピストン軸320との連結を容易に行うことができる。その他の構成及び作用効果は上記第1実施形態と同様である。
(第3実施形態)
図8は、本発明を適用してなるダイヤフラム弁の第3実施形態を示している。当該第3実施形態において、当該ダイヤフラム弁としては、上記第1実施形態にて述べた空気作動形ダイヤフラム弁とは異なり、電磁作動形ダイヤフラム弁が採用されている。
【0171】
当該電磁作動形ダイヤフラム弁は、図8にて示すごとく、筒状ハウジングと、上記第1実施形態にて述べたダイヤフラム部材200と、電磁作動形駆動機構400とを備えて、常閉型の電磁作動形電磁弁として構成されている。なお、本第3実施形態において、上記筒状ハウジングは、上記第1実施形態と同様に、符号100により示す。また、電磁作動形駆動機構400は、以下、駆動機構400ともいう。
【0172】
本第3実施形態にいう筒状ハウジング100は、下側ハウジング部材100c及び上側ハウジング部材100dにより構成されている。下側ハウジング部材100cは、図8にて示すごとく、上記第1実施形態にて述べた底壁110と、隔壁150とにより構成されている。
【0173】
隔壁150は、図8にて示すごとく、隔壁本体150a及び環状フランジ部150bを有しており、隔壁本体150aは、その下壁部にて、底壁本体110aの上壁部111の外側環状壁部111b内に嵌装されて、ダイヤフラム部材200のダイヤフラム200a及び補強用環状体200bを介し内側環状壁部111a上に着座している。
【0174】
また、環状フランジ150bは、隔壁本体150aの外周部のうち下側部位を除く部位から径方向に沿い外方へ環状に突出するように形成されており、当該環状フランジ150bは、底壁本体110aの上壁部111の外側環状壁部111b上に同軸的に着座している。このようにして、隔壁150は、ダイヤフラム200a及び補強用環状体200bを介して、底壁本体110aにその上方から同軸的に組み付けられている。
【0175】
上側ハウジング部材100dは、上記第1実施形態にて述べた上側ハウジング部材100bと同様に、横断面矩形状に形成されており、当該上側ハウジング部材100dは、周壁170及び上壁180とでもって、磁性材料(例えば、鉄)により一体的に形成されている。
【0176】
周壁170は、上壁180から下方に向け筒状に延出されており、当該周壁170は、その延出端開口部にて、案内部材160の環状フランジ部160b(後述する)と共に隔壁150上に同軸的に組み付けられている。
【0177】
案内部材160は、その軸方向にプランジャー400b(後述する)を案内する役割を果たすもので、当該案内部材160は、円筒部160a及び環状フランジ部160bを一体的に有するように形成されている。環状フランジ部160bは、円頭部160aを周壁170内にて同軸的に位置させるように、当該円筒部160aの下端部から上壁180に平行となるように半径方向に延出しており、当該環状フランジ部160bは、その外周部にて、周壁170の延出端開口部内にカシメにより固着されている。なお、円筒部160aは、環状フランジ部160bの内周部から周壁170内に同軸に延出している。
【0178】
ダイヤフラム部材200は、上記第1実施形態にて述べたダイヤフラム部材と同様の構成を有しており、当該ダイヤフラム部材200においては、ダイヤフラム200aが補強用環状体200bとともに底壁本体110aの上壁部111のうち外側環状壁部111bの内周側に嵌装されている。
【0179】
これに伴い、ダイヤフラム200aは、補強用環状体200bを介し上壁部111の内側環状壁部111a上に着座しており、当該ダイヤフラム200aは、外側環状壁部111bの内周側にて内側環状壁部111aと隔壁本体150aとの間を、上記第1実施形態にて述べた液体室Raと空気室Rbとに区画する。
【0180】
補助軸200cは、隔壁本体150aの中央部に同軸的に形成してなる貫通孔部151内に摺動可能に嵌装されている。なお、上述した空気室Rbは、その内部にて、隔壁150を通して外部に開放されていてもよく、また、隔壁本体150aの貫通孔部151と補助軸200cとの間を通して上側ハウジング部材100dの内部に連通するようにしてもよい。
【0181】
駆動機構400は、コイル部材400a、プランジャー400b、コイルスプリング400c及び円柱状ストッパー部材400dを備えている。コイル部材400aは、上側ハウジング部材100dの周壁170内に同軸的に嵌装されている。当該コイル部材400aは、筒状ボビン410及びソレノイド420を有している。筒状ボビン410は、筒部411と、当該筒部411の軸方向両端部から外方へ半径方向に延出する上下両側環状壁部412、413とにより構成されている。ソレノイド420は、上下両側環状壁部412、413の間において筒部411に巻装されている。
【0182】
このように構成してなるコイル部材400aは、筒状ボビン410の筒部411にて、案内部材160の円筒部160a及び円柱状ストッパー部材400dに嵌装されるようにして周壁170内に収容されている。なお、ソレノイド420は、その上端端子にて、筒状ボビン410の上側環状壁部412を介し電源(図示しない)の給電線Hに接続されるようになっている。
【0183】
しかして、このように構成したコイル部材400aにおいては、ソレノイド420が、上記電源から給電線Hを介し給電を受けて励磁されると、当該ソレノイド420は、磁気的吸引力を発生する。また、ソレノイド420は、上記電源から遮断されたとき、消磁されて、磁気的吸引力の発生を停止する。
【0184】
プランジャー400bは、磁性材料からなるもので、当該プランジャー400bは、円柱状プランジャー本体部430及び雄ねじ軸部440でもって構成されており、プランジャー本体部430は、案内部材160の円筒部160a内に同軸的に摺動可能に嵌装されている。雄ねじ軸部440は、プランジャー本体部430の下端部から下方に向け同軸的に延出されており、当該雄ねじ軸部440は、補助軸200cの雌ねじ孔部260内に締着されている。
【0185】
コイルスプリング400cは、プランジャー400bのプランジャー本体部430にその上端部から同軸的に形成してなる挿入孔部431内に挿入されている。また、ストッパ―部材400dは、上側ハウジング部材100d内にてその上壁180の中央部に同軸的に固着されて案内部材160の円筒部160a、プランジャー400bのプランジャー本体部430及びコイルスプリング400cに向けて延出している。
【0186】
これにより、当該コイルスプリング400cは、ストッパー部材400dの延出端中央部とプランジャー本体部430の挿入孔部431の底部との間に挟持されて、プランジャー400bを補助軸200cに向けて付勢する。
【0187】
しかして、駆動機構400においては、ソレノイド420が磁気的吸引力を発生したとき、プランジャ-400bは、コイルスプリング400cの付勢力に抗して、上記磁気的吸引力に基づき、ストッパー部材400d側へ吸引されて案内部材160の円筒部160aに沿いストッパー部材400dの延出端部に向けて摺動して、雄ねじ軸部440により補助軸200cを介しダイヤフラム200aを環状弁座部111cから離れるように湾曲状に変位させる。
【0188】
一方、ソレノイド420の磁気的吸引力の発生が停止したとき、プランジャー400bは、コイルスプリング400cによりその付勢力のもとに隔壁150側へ摺動して、雄ねじ軸部440により補助軸200cを介しダイヤフラム200aを環状弁座部111cに着座させるように湾曲状に変位させる。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0189】
このように構成した本第3実施形態においては、電磁作動形ダイヤフラム弁が、上記第1実施形態にて述べた空気作動形ダイヤフラム弁に代えて、ダイヤフラム弁として採用されている。
【0190】
これによれば、本第3実施形態にいう電磁作動形ダイヤフラム弁は、上記第1実施形態にて述べた空気作動形ダイヤフラム弁の上側ハウジング部材100b及び空気作動形駆動機構300とは異なる上側ハウジング部材100d及び電磁作動形駆動機構400を有することで、プランジャー400bの軸状雄ねじ部440にて補助軸200cの雌ねじ孔部260に締着するものの、ダイヤフラム部材200及び下側ハウジング部材100aについては、隔壁に少し異なる構成を有する点を除き、上記第1実施形態と実質的に同様である。
【0191】
従って、本第3実施形態においても、ダイヤフラム200aの中央部240が上述のごとく補助軸200cとレーザー溶接済みであるから、プランジャー400bの軸状雄ねじ部440を、補助軸200cの雌ねじ孔部260に締着することで、プランジャー400b、ダイヤフラム200a及び補助軸200cを容易に連結し得る。
【0192】
また、本第3実施形態において、電磁作動形ダイヤフラム弁が、上記第1実施形態にて述べた空気作動形ダイヤフラム弁に代えて、上記半導体製造装置の配管系統に介装された場合、ダイヤフラム部材200のダイヤフラム200a及び補助軸200cの作動が、本第3実施形態では、上記第1実施形態における圧縮空気によるピストン310の作動ではなく、磁気的吸引力によるプランジャー400bの作動でもって行われるものの、ダイヤフラム弁としての開閉作動やダイヤフラム部材200の構成は、上記第1実施形態と同様であって、当該第1実施形態と同様の作用効果が達成され得る。
(第4実施形態)
図9は、本発明の第4実施形態を示している。当該第4実施形態では、電磁作動形ダイヤフラム弁が、上記第2実施形態にて述べたダイヤフラム部材200(図6及び図7参照)及び下側ハウジング部材100aを採用するとともに、上記第2実施形態にて述べた上側ハウジング部材100b及び空気作動形駆動機構300に代えて、上記第3実施形態にて述べた上側ハウジング部材100d及び電磁作動形駆動機構400を採用して構成されている。
【0193】
ここで、補助軸200cは、補強用環状体200bを通り隔壁150の貫通孔部151内に摺動可能に嵌装されており、当該補助軸200cの雌ねじ孔部260内には、プランジャー400bの雄ねじ軸部440が締着されている。なお、本第4実施形態では、補助軸200c及び軸状雄ねじ部440は、上記第3実施形態にいう補助軸200c及び軸状雄ねじ部440よりも長い軸長を有することで、補強用環状体200b内に延出している。その他の構成は、上記第2実施形態と同様である。
【0194】
このように構成した本第4実施形態においては、電磁作動形ダイヤフラム弁が、上記第2実施形態にて述べた空気作動形ダイヤフラム弁に代えて、ダイヤフラム弁として採用されている。
【0195】
これによれば、本第4実施形態にいう電磁作動形ダイヤフラム弁は、上記第2実施形態にて述べた空気作動形ダイヤフラム弁の上側ハウジング部材100b及び空気作動形駆動機構300とは異なる上側ハウジング部材100d及び電磁作動形駆動機構400を有することで、プランジャー400bの軸状雄ねじ部440にて補強用環状体200bを介しダイヤフラム200aの中央部240に締着するものの、ダイヤフラム部材200及び下側ハウジング部材100aについては、隔壁に少し異なる構成を有する点を除き、上記第2実施形態と実質的に同様である。
【0196】
従って、本第4実施形態においても、ダイヤフラム200aの中央部240が上述のごとく補助軸200cとレーザー溶接済みであるから、プランジャー400bの軸状雄ねじ部440を、補助軸200cの雌ねじ孔部260に締着することで、プランジャー400b、ダイヤフラム200a及び補助軸200cを容易に連結し得る。
【0197】
また、本第4実施形態において、電磁作動形ダイヤフラム弁が、上記第2実施形態にて述べた空気作動形ダイヤフラム弁に代えて、上記半導体製造装置の配管系統に介装された場合、ダイヤフラム部材200のダイヤフラム200a及び補助軸200cの作動が、本第4実施形態では、上記第2実施形態における圧縮空気によるピストン310の作動ではなく、上記第3実施形態と同様に磁気的吸引力によるプランジャー400bの作動でもって行われるものの、ダイヤフラム弁としての開閉作動やダイヤフラム部材200の構成は、上記第2実施形態と同様であって、当該第2実施形態と同様の作用効果が達成され得る。
【0198】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)本発明の実施にあたり、上記実施形態にて述べたダイヤフラム200aは、PFAを押し出し成形によりフィルム状に押し出し成形することで形成されるダイヤフラムに限ることなく、PFAを圧縮成形方法によりフィルム状に圧縮成形することで形成されるダイヤフラムであってもよい。
【0199】
当該圧縮成形方法は、PFAを型内に充填してフィルム状に圧縮する方法をいい、ダイヤフラム200aを、押し出し成形方法により成形する場合と同様に、耐薬品性、低溶出性、屈曲性や長寿命性に優れた平滑度の高いフィルム状のダイヤフラムであって数nmサイズのパーティクルの発塵性をも最少に抑制し得るダイヤフラムとして形成され得る。これによっても、上記実施形態と同様の作用効果が達成され得る。
(2)本発明の実施にあたり、上記第1或いは第2の実施形態にて述べた駆動機構300は、図1或いは図6において、コイルスプリング330を、上記実施形態とは異なり、下側室131b内にて、ピストン310を隔壁120とは反対方向に付勢するように構成してもよい。このことは、ダイヤフラム弁が常開型ダイヤフラム弁として機能することを意味する。
【0200】
このように、上記第1或いは第2の実施形態にて述べたダイヤフラム弁が、常開型ダイヤフラム弁として作動するようにしても、上記第1或いは第2の実施形態と実質的に同様の作用効果が達成され得る。
(3)本発明の実施にあたり、上記第3或いは第4の実施形態にて述べた駆動機構400は、図8或いは図9において、コイルスプリング400cを、上記第3或いは第4の実施形態とは異なり、プランジャー400bをストッパー部材400dに向けて付勢するように設けるようにしてもよい。このことは、電磁作動形ダイヤフラム弁が常開型ダイヤフラム弁として機能することを意味する。
【0201】
このように、上記第3或いは第4の実施形態にて述べた電磁作動形ダイヤフラム弁が、常開型ダイヤフラム弁として作動するようにしても、上記第3或いは第4の実施形態と実質的に同様の作用効果が達成され得る。
(4)また、本発明の実施にあたり、補強用環状体200bは、必要に応じて廃止してもよい。この場合には、ダイヤフラム200aの外周部210は、隔壁120の隔壁本体120aの外周部と底壁本体110aの内側環状壁部111aとの間に良好にシール可能に挟持される。
(5)本発明の実施にあたり、上記第1実施形態にて述べたピストン軸320は、軸状雄ねじ部320bに代えて、軸本体部320aにその延出端部側から雌ねじ孔部を同軸的に形成し、一方、補助軸200cは、その延出端部から軸状雄ねじ部を同軸的に延出するように形成することで、雌ねじ孔部260を廃止してもよい。この場合、補助軸200cは、その軸状雄ねじ部にて、ピストン軸320の軸本体部320aの雌ねじ孔部に同軸的に締着する。
(6)また、本発明の実施にあたり、上記第3或いは第4の実施形態にて述べたプランジャー400bは、軸状雄ねじ部440に代えて、プランジャー本体部430にその延出端部側から雌ねじ孔部を同軸的に形成し、一方、補助軸200cは、その延出端部から軸状雄ねじ部を同軸的に延出するように形成することで、雌ねじ孔部260を廃止してもよい。この場合、補助軸200cは、その軸状雄ねじ部にて、プランジャー400bの雌ねじ孔部に同軸的に締着する。
(7)本発明の実施にあたり、押さえ板Qに代えて、当該押さえ板と同様の役割を果たすリング状の押さえ板を採用してもよく、また、一般的には、押さえ板Qと同様の機能を有する押え部材であってもよい。
【符号の説明】
【0202】
100…ハウジング、100a、100c…下側ハウジング部材、
100b、100d…上側ハウジング部材、110…底壁、
112、113…連通路部、110b…流入筒、110c…流出筒、
111c…環状弁座部、120、150…隔壁、130…筒状周壁、
131a…上側室、131b…下側室、140…上壁、
200…ダイヤフラム部材、200a…ダイヤフラム、
200b…補強用環状体、200c…補助軸、300…空気作動形駆動機構、
310…ピストン、320…ピストン軸、330、400c…コイルスプリング、
400…電磁作動形ダイヤフラム弁、400b…プランジャー、Ra…液体室、
Rb…空気室、Q…押さえ板、Q1…環状押さえ板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9