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▶ 中村 奈穂美の特許一覧

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  • 特許-装飾具の製造方法、装飾具、及び座部材 図1
  • 特許-装飾具の製造方法、装飾具、及び座部材 図2
  • 特許-装飾具の製造方法、装飾具、及び座部材 図3
  • 特許-装飾具の製造方法、装飾具、及び座部材 図4
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  • 特許-装飾具の製造方法、装飾具、及び座部材 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】装飾具の製造方法、装飾具、及び座部材
(51)【国際特許分類】
   A44C 27/00 20060101AFI20220928BHJP
   A44C 17/02 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
A44C27/00
A44C17/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022004684
(22)【出願日】2022-01-14
【審査請求日】2022-03-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522020195
【氏名又は名称】中村 奈穂美
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】中村 奈穂美
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-087312(JP,U)
【文献】特開2001-087016(JP,A)
【文献】実開昭61-055822(JP,U)
【文献】実公昭31-004071(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 27/00
A44C 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス製の宝飾部材と、当該宝飾部材が配置される宝飾部材配置用開口部のみが外部に開放された金属製で中空の座部材と、を具備した装飾具の製造方法であって、
前記座部材は、開口部のない底部と、当該底部の外縁部から立ち上がる周状の側周壁部と、を含み、
溶融状態のガラス材で構成された溶融ガラス体を、前記座部材と当該溶融ガラス体とを共に加熱した上で前記側周壁部の上縁部に形成された前記宝飾部材配置用開口部を塞ぐように前記座部材に流入させて前記側周壁部のみと溶着させるとともに前記宝飾部材配置用開口部を塞いだ前記溶融ガラス体と前記座部材の底部との間に、当該座部材の外部と遮断された空隙を形成して、前記溶融ガラス体と前記底部とが非接触となる状態とする工程を含み、前記溶融ガラス体と前記座部材の内周面とで囲繞されて当該座部材の外部と遮断された当該空隙を継続的に確保したまま前記溶融ガラス体を冷却して当該溶融ガラス体を前記宝飾部材とする
ことを特徴とする装飾具の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の装飾具の製造方法によって製造された装飾具であって、
前記底部には、前記宝飾部材配置用開口部へ向かって突出する下ガラス材支持部が形成されており、当該下ガラス材支持部によって前記溶融ガラス体が支持されて当該下ガラス材支持部の上端部と前記底部との間に前記空隙が形成されてなる
ことを特徴とする装飾具。
【請求項3】
請求項1に記載の装飾具の製造方法によって製造された装飾具であって、
前記側周壁部における内周面には、前記座部材における内側へ向かって突出する横ガラス材支持部が形成されており、当該横ガラス材支持部によって前記溶融ガラス体が支持されて当該横ガラス材支持部と前記底部との間に前記空隙が形成されてなる
ことを特徴とする装飾具。
【請求項4】
前記側周壁部には、前記宝飾部材に係止する係止部が形成されてなる
請求項2又は請求項3に記載の装飾具。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の装飾具に用いられる
ことを特徴とする座部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス材を用いた装飾具の製造方法、当該製造方法によって製造された装飾具、及び当該装飾具に用いられる座部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス材を用いた装飾具にあっては、土台となる座部材とガラス製の宝飾部材とを接着剤を用いて接着したものが知られており、市場に多く提供されている。また、市場での数は少ないものの、例えば特許文献1のようなリング状の枠体にガラス材を溶着させた構成も既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-71027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、接着剤を用いたものは、経年劣化により接着剤が剥がれてしまうという問題がある。また、装飾具としても安っぽい印象を与えてしまう。
【0005】
また、特許文献1に示されるような構成は、金属製の土台が枠状であるが故に剛性が比較的低いことからガラス材が土台から外れやすく、また底がない土台にガラス材を取り付けた構成で装飾部材とするためガラス面の露出面積が大きく、衝撃に弱いという問題があった。
【0006】
ところで、土台の剛性を高めるべく、有底でいわゆるカップ形状の金属製土台を使用して、そこに溶融状態のガラス材を隙間無く充填して溶着させる構成が提案されるものの、こうした構成は冷却の際にガラスが割れやすく、不良品の割合が高くなって生産性が低いという問題が生じる。このため、製品としては市場に出回ってないのが現状である。結局、接着剤を用いた構成が非常によく採用されているが、接着面を確保するためにガラスの形状と土台の形状を一致させる手間のかかる作業が必要となり、依然として生産性の点で改善の余地があった。
【0007】
そこで本発明は、有底の座部材を用いつつガラス材が割れにくい装飾具の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また本発明は、宝飾部材となるガラス材を割れにくくする装飾具を提供することを目的とする。
【0009】
さらに本発明は、冷却過程のガラス材を割れにくくする装飾具に用いられる座部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ガラス製の宝飾部材と、当該宝飾部材が配置される開口部を備えた中空で金属製の座部材と、を具備した装飾具の製造方法であって、前記座部材は、底部と、当該底部の外縁部から立ち上がる周状の側周壁部と、を含み、溶融状態のガラス材で構成された溶融ガラス体を、前記側周壁部の上縁部に形成された前記開口部を塞ぐように前記座部材に流入させて前記側周壁部と溶着させるとともに前記開口部を塞いだ前記溶融ガラス体と前記座部材の底部との間に空隙を形成する工程を含み、前記溶融ガラス体と前記座部材の内周面とで囲繞されて当該座部材の外部と遮断された当該空隙を継続的に確保したまま前記溶融ガラス体を冷却して当該溶融ガラス体を前記宝飾部材とすることを特徴とする装飾具の製造方法である。
【0011】
かかる構成にあっては、前記座部材の底部と前記宝飾部材となる前記溶融ガラス体との間に、当該座部材の外部と遮断された空隙を形成することで、当該座部材と当該宝飾部材との接触面積を減らしつつ当該宝飾部材を構成するガラス材の割れを抑制することができる。かかる構成により、接着剤を用いない美観に優れた装飾具を提供することが可能となる。
【0012】
また本発明は、前記装飾具の製造方法によって製造された装飾具であって、前記底部には、前記開口部へ向かって突出する下ガラス材支持部が形成されており、当該下ガラス材支持部によって前記溶融ガラス体が支持されて当該下ガラス材支持部の上端部と前記底部との間に前記空隙が形成されてなることを特徴とする装飾具である。
【0013】
さらに本発明は、前記装飾具の製造方法によって製造された装飾具であって、前記側周壁部における内周面には、前記座部材における内側へ向かって突出する横ガラス材支持部が形成されており、当該横ガラス材支持部によって前記溶融ガラス体が支持されて当該横ガラス材支持部と前記底部との間に前記空隙が形成されてなることを特徴とする装飾具である。
【0014】
かかる構成にあっては、前記下ガラス材支持部や前記横ガラス材支持部によって前記溶融ガラス体が支持されるため、前記空隙が形成されやすく、本発明の装飾具を製造しやすい。
【0015】
そして本発明は、前記装飾具に用いられることを特徴とする座部材である。
【0016】
かかる構成にあっては、前記溶融ガラス体が流入される際に、前記空隙を容易に形成することのできる座部材とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の装飾具の製造方法は、有底の座部材を用いつつガラス材が割れにくいという優れた効果がある。
【0018】
また本発明の装飾具は、宝飾部材となるガラス材を割れにくくする優れた効果がある。
【0019】
さらに本発明の座部材は、冷却過程のガラス材を割れにくくする優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例にかかる指輪の斜視図である。
図2】実施例にかかる溶融ガラス体と座部材の部分拡大縦断面図である。
図3】実施例にかかる指輪の部分拡大縦断面図である。
図4】他の実施例にかかる座部材の部分拡大縦断面図である。
図5】他の実施例にかかる指輪の部分拡大縦断面図である。
図6】他の構成の指輪を示す部分拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の装飾具の製造方法、装飾具、及び座部材を具体化した実施例を詳細に説明する。なお本発明は、下記に示す実施例に限定されることはなく、適宜設計変更が可能である。例えば装飾具としては指輪に限定されることはない。
【0022】
図1に示すように、装飾具としての指輪1は、ガラス製の宝飾部材10と、宝飾部材10が配置される金属製の座部材20とを備えている。
【0023】
宝飾部材10のガラス材料としては、例えばホウケイ酸ガラス、鉛ガラス、又はソーダガラス等が提案されうる。本実施例における指輪1に用いられる宝飾部材10として望ましいものはホウケイ酸ガラスである。
【0024】
また、装飾性を向上するために、ガラス材料に異素材等の装飾材を混ぜたものが用いられてもよい。
【0025】
座部材20の金属材料としては、例えばチタン、金、銀、銅、又は真鍮等が提案されうる。本実施例における指輪1に用いられる座部材20として望ましいものは、直接肌に触れることから金属アレルギーが発生しにくいチタンである。
【0026】
座部材20は、図2に示すように、平面視円形の底部21と、底部21の外縁部から立ち上がる周状の側周壁部22と、を備えている。底部21と側周壁部22で囲まれた空間は中空とされており、側周壁部22の上端部は当該座部材20の外部空間に開放された開口部25とされている。
【0027】
また、底部21の上面略中央からは、下ガラス材支持部31が開口部25に向かって突き出されている。
【0028】
さらに、側周壁部22の上端部においては、当該座部材20の中央に向かって折れ曲がった形状の係止部27が形成されている。
【0029】
次に、宝飾部材10と座部材20との接合工程について説明する。
まず、溶融状態のガラス材で構成された溶融ガラス体11を、当該溶融ガラス体11で開口部25を塞ぐように座部材20へ流入し、そして溶融ガラス体11が側周壁部22と溶着するとともに冷却されて宝飾部材10となることで宝飾部材10と座部材20とが接合される。
【0030】
実際には、宝飾部材10のみを加熱して溶融ガラス体11とするだけではなく、割れ防止や溶着強度の向上の目的で座部材20も同様に加熱する。
【0031】
このとき、図3に示すように、溶融ガラス体11と底部21との間に空隙Sが形成される。すなわち、溶融ガラス体11が流入した際に、当該溶融ガラス体11が下ガラス材支持部31によって下から支持されて底部21まで到達しないことによって、周囲が囲繞されて外部空間と遮断された空隙Sが形成される。
【0032】
そして、空隙Sが形成された状態を維持したまま溶融ガラス体11を冷却して宝飾部材10とする。
【0033】
これにより、空隙Sが緩衝機能を果たし、宝飾部材10の割れを効果的に防止できる。すなわち、熱膨張率の異なる溶融ガラス体11と加熱された座部材20とを接合した状態で共に冷却するところ、溶融ガラス体11は座部材20の側周壁部22とのみ接しており、底部21とは接することなく接触面積が小さくなる。これにより、冷却時における異部材間の位置ずれを抑制して宝飾部材10に割れが発生せず座部材20と接合することができる。
【0034】
さらに、側周壁部22の上端部の係止部27に宝飾部材10が係止され、宝飾部材10が座部材20から脱離することを防止している。
【0035】
空隙Sを形成するために、座部材20に代えて、例えば図4図5に示すように、側周壁部42の内周面部に、内側へ向いて突き出された横ガラス材支持部51が形成された座部材40が用いられた指輪2が提案される。
【0036】
この場合も、溶融ガラス体11が横ガラス材支持部51によって下から支持されて底部41まで到達せずに空隙Sが形成されるため、宝飾部材10の割れを好適に防止することができる。
【0037】
また、図6に示す指輪3に用いられる座部材60のように、係止部27が形成されることなく、開口部25の開口縁部がストレート形状とされていても勿論よい。かかる構成にあっては、開口縁部の美観に優れ、また溶融ガラス体11を座部材60に流入させやすいという利点がある。
【0038】
上記実施例において、各部の寸法形状は適宜自由に選択可能である。
例えば下ガラス材支持部31は複数形成されていてもよい。
例えば横ガラス材支持部51は側周壁部42の全周にわたって形成されている必要はなく、部分的に形成されている構成であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1,2,3 指輪
10 宝飾部材
11 溶融ガラス体
20,40,60 座部材
21,41 底部
22,42 側周壁部
25 開口部
27 係止部
31 下ガラス材支持部
51 横ガラス材支持部
S 空隙

【要約】
【課題】冷却の際にガラスが割れにくい装飾具の製造方法を提供する。
【解決手段】指輪1を製造する手順としては、溶融状態のガラス材で構成された溶融ガラス体11を、開口部25を塞ぐように座部材20に流入して側周壁部22と溶着する工程を含み、開口部25を塞ぐ溶融ガラス体11と座部材20の底部21との間に空隙Sを形成し、継続的に当該空隙Sが形成された状態を維持したまま溶融ガラス体11を冷却して宝飾部材10とする。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6