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特許7148211回転係合部付き無人航空機およびそれを用いた紐状体の引っ掛け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】回転係合部付き無人航空機およびそれを用いた紐状体の引っ掛け方法
(51)【国際特許分類】
   B64D 1/22 20060101AFI20220928BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20220928BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
B64D1/22
B64C27/08
B64C39/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019189853
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2021062835
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000117010
【氏名又は名称】古河電工パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中澤 貞範
(72)【発明者】
【氏名】相田 涼太
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-081526(JP,A)
【文献】実開平03-067295(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0131507(US,A1)
【文献】特開2017-100602(JP,A)
【文献】特開2018-075869(JP,A)
【文献】特開2018-100063(JP,A)
【文献】特表2016-523759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 1/22
B64C 27/08
B64C 39/02
B64F 3/02
B64F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体部、および
前記胴体部の上面側に装着された回転翼
を有する無人航空機と、
一端が前記胴体部の側面側に装着され、略水平方向外方に延在する軸部、および
前記軸部の他端に、前記軸部を中心として回転自在に連結される回転部
を有する回転体と
を備え、
前記回転体は、前記回転部の外周位置に、前記回転部とともに回転し、紐状体を分離可能に取り付ける回転係合部を有し、
前記回転部の最上外周位置にあるときの回転係合部の高さ位置(H2)は、無人飛行機の回転翼の高さ位置(H1)よりも上方にあることを特徴とする回転係合部付き無人航空機。
【請求項2】
前記回転体は、
前記回転係合部に前記紐状体が取り付けられた前記無人航空機が上昇移動する場合に、前記回転係合部を前記回転部の下側外周に位置させ、
前記回転係合部に取り付けられた前記紐状体が高所にある対象物に引っ掛った状態で前記無人航空機が下降移動する場合に、前記回転係合部を前記回転部の上側外周に位置させる請求項1に記載の回転係合部付き無人航空機。
【請求項3】
前記回転部は、回転リングである請求項1または2に記載の回転係合部付き無人航空機。
【請求項4】
前記回転部は、前記無人航空機を外気の出入りが可能な状態で収容する筒状の回転ケージである請求項1または2に記載の回転係合部付き無人航空機。
【請求項5】
前記回転ケージは、水平方向および垂直方向のうち、少なくとも1方の方向に間隔をおいて延在するように配設した複数の棒状部材で構成されている請求項4に記載の回転係合部付き無人航空機。
【請求項6】
前記回転ケージは、網状部材で構成されている請求項4に記載の回転係合部付き無人航空機。
【請求項7】
前記網状部材は、前記回転ケージの全面にわたって配置されているか、または前記回転ケージの複数の位置に点在するように配置されている請求項6に記載の回転係合部付き無人航空機。
【請求項8】
胴体部、および前記胴体部の上面側に装着された回転翼を有し、紐状体を取り付けた無人航空機を、対象物の一方側の付近位置を通って前記対象物よりも上方の位置まで上昇移動させ、次いで、前記対象物の上方を通過させた後に、対象物の他方側の付近位置を通って下方に下降移動させて、前記紐状体を前記対象物の上部に引っ掛ける方法であって、
前記無人航空機は、一端が前記胴体部の側面側に装着され、略水平方向外方に延在する軸部、および前記軸部の他端に、前記軸部を中心として回転自在に連結される回転部を有する回転体を備え、
前記回転体は、前記回転部の外周位置に、前記回転部とともに回転し、紐状体を分離可能に取り付ける回転係合部を有し、
前記回転部の最上外周位置にあるときの回転係合部の高さ位置(H2)は、無人飛行機の回転翼の高さ位置(H1)よりも上方にあることを特徴とする回転係合部付き無人航空機を用いた紐状体の引っ掛け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高所にある対象物に対し、紐状体(例えばロープ)を引っ掛ける作業を行わせるのに好適な回転係合部付き無人航空機およびそれを用いた紐状体の引っ掛け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高所にある対象物、例えば架空送電線(電線)は、通常、複数の鉄塔の間に、上下の位置に複数本延在した状態で架設され、また、各電線には、クランプアームに錘を取り付けたカウンタウェイトが所定の間隔ごとに配置されており、これによって、着雪による電線のねじれを防止している。しかしながら、例えば強風が吹くなどすると、電線がギャロッピング現象を起こして上下に激しく振動する場合があり、かかる上下振動の状態によっては、下方に位置する電線が上方に位置する電線の上方まで跳ね上がって両電線が混触して相間短絡事故を起すことがある。
【0003】
このような複数本の架空送電線(電線)同士の混触状態を解消するための手段としては、例えば、混触している架空送電線(電線)に、紐状体(例えばロープ)を引っ掛け、引っ掛けた紐状体を用いて両電線を上下に揺れ動かしてカウンタウェイト取付け部分の絡み合いを外すように試みる方法が挙げられる。
【0004】
また、紐状体を高所にある対象物の上部に引っ掛ける方法としては、例えば特許文献1に記載されているように、マルチコプタやドローンと称される無人航空機を用い、紐状体を取り付けた無人航空機を、対象物の一方側に位置する空間領域内を対象物よりも上方の位置まで上昇移動させ、次いで、対象物の上方を通過させた後に、対象物の他方側に位置する空間領域内を下降移動させることによって、紐状体を対象物の上部に引っ掛けることが有用である。
【0005】
特許文献1に記載の従来の無人航空機100は、ロープと繋いだリード紐(紐状体)Wの端部を係止するための係止部101を、胴体部102の下面に設けているため、図1(a)に示すように、無人航空機100を対象物(例えば電線)Tの一方側に位置する空間領域内を対象物Tよりも上方の位置まで上昇移動させる場合は、係止部101に係合させた紐状体Wは、無人航空機100の胴体部102の下面から下方に位置しているため、紐状体Wをスムーズに引き上げることができるものの、無人航空機100を、対象物Tの上方を通過させた後に、対象物Tの他方側に位置する空間領域内を地上に向かう方向Rに下降移動させて、紐状体Wを地上に降ろす場合は、無人航空機100の胴体部102の下面の係合部101に係合する紐状体Wが、図1(b)に示すように、無人航空機100の側面(図1(b)では左側面)に沿って無人航空機100の胴体部102の下面から上方に向かって延在することになるため、紐状体Wが、無人航空機100の回転翼103に接触する可能性が高く、紐状体Wが回転翼103に接触した場合には、無人航空機100が墜落するおそれがあった。特に、紐状体Wを引っ掛ける対象物Tの高さが高いほど、無人航空機100は、垂直に近い角度で上昇移動および下降移動となる飛行経路で移動(飛行)することになることから、紐状体Wが無人航空機100の回転翼103に接触する現象は、顕著に発生しやすい。
【0006】
従来の無人航空機100では、紐状体Wが無人航空機100の回転翼103に接触する現象を防止するため、無人航空機100を、対象物Tよりも上方の位置まで上昇移動させた後に、図2に示すように、対象物Tの上方位置を水平方向Pに通過させ、その後、対象物Tの高さに相当する寸法と同じ余分な距離だけ水平移動をさせて紐状体Wを過剰に引き出してから、下降移動させて地上に着陸させる必要があった。しかしながら、このような無人航空機100の余分な距離の水平移動は、移動できる広いスペースがある場合に限定され、また、紐状体Wを過剰に引き出した後の無人航空機100の下降移動は、対象物Tの上部から垂れ下がった紐状体Wが、無人航空機100の係合部101から下方に延在した状態の部分を残しながら、無人航空機100の回転翼103との距離X(図2の両矢印で示す距離)を確保しながら、紐状体Wに徐々に近づきながら斜め下方(図2では左下斜め方向S)に下降移動させる高度な操縦技術が必要になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-100602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、紐状体(例えばロープ)を引っ掛ける係合部の適正化を図ることによって、例えば高所にある対象物に紐状体(例えばロープ)を引っ掛ける作業を行うため、無人航空機を上昇移動、水平移動および下降移動を含むあらゆる方向に移動(飛行)させたとしても、係合部に係合させた紐状体が、回転翼に接触することを有効に防止することができる回転係合部付き無人航空機、およびそれを用いた紐状体の引っ掛け方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、高所にある対象物である架空送電線(電線)に対し、紐状体を引っ掛ける作業を行う際に、無人航空機が上昇移動、水平移動および下降移動のいずれの移動(飛行)をした場合であっても、係合部に係合させた紐状体が回転翼に接触しないようにするための検討を重ねた結果、紐状体(例えばロープ)を引っ掛ける係合部を、無人航空機の胴体部に装着された略水平方向外方に延在する軸部に、軸部を中心として回転自在に連結される回転部の外周位置に設けることによって回転係合部とし、回転係合部を、無人航空機が上昇移動する際には回転部の下側外周位置に、また、無人航空機が下降移動する際には回転部の上側外周位置に配置されるように回転部が回転するように構成することによって、無人航空機をいずれの方向に移動(飛行)させたとしても、係合部に係合させた紐状体が回転翼に接触するのを防止できることを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
(1)胴体部、および前記胴体部の上面側に装着された回転翼を有する無人航空機と、一端が前記胴体部の側面側に装着され、略水平方向外方に延在する軸部、および前記軸部の他端に、前記軸部を中心として回転自在に連結される回転部を有する回転体とを備え、前記回転体は、前記回転部の外周位置に、前記回転部とともに回転し、紐状体を分離可能に取り付ける回転係合部を有し、前記回転部の最上外周位置にあるときの回転係合部の高さ位置(H2)は、無人飛行機の回転翼の高さ位置(H1)よりも上方にあることを特徴とする回転係合部付き無人航空機。
(2)前記回転体は、前記回転係合部に前記紐状体が取り付けられた前記無人航空機が上昇移動する場合に、前記回転係合部を前記回転部の下側外周に位置させ、前記回転係合部に取り付けられた前記紐状体が高所にある対象物に引っ掛った状態で前記無人航空機が下降移動する場合に、前記回転係合部を前記回転部の上側外周に位置させる上記(1)に記載の回転係合部付き無人航空機。
(3)前記回転部は、回転リングである上記(1)または(2)に記載の回転係合部付き無人航空機。
(4)前記回転部は、前記無人航空機を外気の出入りが可能な状態で収容する筒状の回転ケージである上記(1)または(2)に記載の回転係合部付き無人航空機。
(5)前記回転ケージは、水平方向および垂直方向のうち、少なくとも1方の方向に間隔をおいて延在するように配設した複数の棒状部材で構成されている上記(4)に記載の回転係合部付き無人航空機。
(6)前記回転ケージは、網状部材で構成されている上記(4)に記載の回転係合部付き無人航空機。
(7)前記網状部材は、前記回転ケージの全面にわたって配置されているか、または前記回転ケージの複数の位置に点在するように配置されている上記(6)に記載の回転係合部付き無人航空機。
(8)胴体部、および前記胴体部の上面側に装着された回転翼を有し、紐状体を取り付けた無人航空機を、対象物の一方側の付近位置を通って前記対象物よりも上方の位置まで上昇移動させ、次いで、前記対象物の上方を通過させた後に、対象物の他方側の付近位置を通って下方に下降移動させて、前記紐状体を前記対象物の上部に引っ掛ける方法であって、前記無人航空機は、一端が前記胴体部の側面側に装着され、略水平方向外方に延在する軸部、および前記軸部の他端に、前記軸部を中心として回転自在に連結される回転部を有する回転体を備え、前記回転体は、前記回転部の外周位置に、前記回転部とともに回転し、紐状体を分離可能に取り付ける回転係合部を有し、前記回転部の最上外周位置にあるときの回転係合部の高さ位置(H2)は、無人飛行機の回転翼の高さ位置(H1)よりも上方にあることを特徴とする回転係合部付き無人航空機を用いた紐状体の引っ掛け方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、胴体部、および前記胴体部の上面側に装着された回転翼を有する無人航空機と、一端が前記胴体部の側面側に装着され、略水平方向外方に延在する軸部、および前記軸部の他端に、前記軸部を中心として回転自在に連結される回転部を有する回転体とを備え、前記回転体は、前記回転部の外周位置に、前記回転部とともに回転し、紐状体を分離可能に取り付ける回転係合部を有することによって、例えば高所にある対象物に紐状体(例えばロープ)を引っ掛ける作業を行うため、無人航空機を上昇移動、水平移動および下降移動を含むあらゆる方向に移動(飛行)させたとしても、係合部に係合させた紐状体が、回転翼に接触することを有効に防止することができる回転係合部付き無人航空機、およびそれを用いた紐状体の引っ掛け方法の提供が可能になった。
【0012】
また、本発明の回転係合部付き無人航空機は、水平方向の移動スペースが狭い場合であっても、紐状体が回転翼に接触することなく、例えば垂直近くの角度で下降移動することが必要な高所の対象物に対しても、紐状体の引っ掛け作業を安定して行うことができ、加えて、高度な操縦技術も必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(a)および(b)は、紐状体を係合させた係合部を有する従来の無人航空機を示した概略図であって、図1(a)が無人航空機を上昇移動させた場合、図1(b)が無人航空機を下降移動させる場合を示す。
図2図2は、図1に示す無人航空機を適正に下降移動させる場合の手順を説明するための図である。
図3図3は、第1の実施形態の回転係合部付き無人航空機の概略斜視図である。
図4図4(a)、(b)、(c)は、図3の回転係合部付き無人航空機を示したものであって、図4(a)が平面図、図4(b)が正面図、図4(c)が側面図である。
図5図5は、図3の回転係合部付き無人航空機を用いて、紐状体を電線に引っ掛ける方法を説明するための図であって、図5(a)が回転係合部付き無人航空機を上昇移動させた場合、図5(b)が回転係合部付き無人航空機を下降移動させた場合を示す。
図6図6は、第2の実施形態の回転係合部付き無人航空機の概略斜視図である。
図7図7(a)、(b)、(c)は、図6の回転係合部付き無人航空機を示したものであって、図7(a)が平面図、図7(b)が正面図、図7(c)が側面図である。
図8図8は、第3の実施形態の回転係合部付き無人航空機の正面図である。
図9図9は、第4の実施形態の回転係合部付き無人航空機の正面図である。
図10図10は、第5の実施形態の回転係合部付き無人航空機の正面図である。
図11図11(a)~(c)は、回転体の種々の変形例を示す図である。
図12図12は、第6の実施形態の回転係合部付き無人航空機の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の好ましい実施形態について、以下で説明する。
【0015】
<第1の実施形態>
図3は、本発明に従う第1の実施形態の回転係合部付き無人航空機1の概略構成を示した斜視図であり、図4(a)、(b)および(c)は、それぞれ図3の回転係合部付き無人航空機の平面図、正面図および側面図であり、そして、図5は、図3の回転係合部付き無人航空機を用いて、紐状体を電線に引っ掛ける方法を説明するための図であって、図5(a)が回転係合部付き無人航空機1を上昇移動させた場合、図5(b)が回転係合部付き無人航空機1を下降移動させた場合を示す。
【0016】
本実施形態の回転係合部付き無人航空機1は、無人航空機10と回転体20とで主として構成されている。
【0017】
無人航空機10は、遠隔操作または自動操縦により飛行可能に構成されたものであって、具体的にはドローンやマルチコプタが挙げられる。無人航空機10は、胴体部11、および胴体部11の上面側に装着された複数の回転翼(ロータ)、図3では平面視で略矩形状をなす胴体部11の側面の4つの角部から、それぞれ外方に向かって延在するアーム12の上面に装着された4つの回転翼13を有する。
【0018】
また、無人航空機10の内部構造については図面には表れていないが、無人航空機10は、回転翼12を駆動するモータと、各部に電力を供給する電池と、各部を制御する制御装置と、操縦者が操作する操縦装置の発信機(図示せず)から発信した電波を受信する受信機等が搭載されている。さらに、無人航空機10は、必要に応じて画像を撮影するためカメラや、各種検知センサ等を搭載していてもよい。加えて、無人航空機10は、上昇移動、水平移動および下降移動などが行える通常の機能を有していればよく、例えば市販されているドローンやマルチコプタを用いることができる。
【0019】
回転体20は、軸部21と回転部22を有し、軸部21の一端が無人航空機10の胴体部11の側面側に装着され、軸部21が略水平方向外方に延在し、また、回転部22が、軸部21の他端に、軸部21を中心として回転自在に連結されている。さらに、回転体20は、回転部22の外周23の位置に、回転部22とともに回転し、紐状体Wを分離可能に取り付ける回転係合部24を有している。
【0020】
本実施形態の回転係合部付き無人航空機1は、このような回転体20を備えることによって、例えば高所にある対象物に紐状体(例えばロープ)Wを引っ掛ける作業を行うため、回転係合部付き無人航空機1を上昇移動、水平移動および下降移動を含むあらゆる方向に移動(飛行)させたとしても、回転係合部24が、無人航空機10から離隔した位置で、回転係合部付き無人航空機1の移動方向に応じて、回転部22とともに適正な回転部22の外周位置に回転することができる。
【0021】
例えば、回転係合部付き無人航空機1が上昇移動する場合には、回転係合部24は、図5(a)に示すように、回転部22の下側外周に位置するように回転部22を回転させた状態で、紐状体Wを引き上げることができ、また、回転係合部付き無人航空機1が下降移動する場合には、回転係合部24は、図5(b)に示すように、回転部22の上側外周に位置するように回転部22を回転させた状態で、紐状体Wを引き下げることができる。この結果、紐状体Wは、回転係合部付き無人航空機1の移動の方向に関係なく、無人航空機10の回転翼13と接触することを有効に防止することができる。
【0022】
本実施形態の回転体20は、無人航空機10の胴体部11の両側面からそれぞれ互いに逆向きの略水平方向外方に延在する2本の軸部21、21と、これら2本の軸部21、21の他端に回転自在に連結される回転部22とで構成されるとともに、回転部22を、外気の出入りが可能な状態で無人航空機10を収容する筒状の回転ケージ22の形状にした場合を示している。ここで、回転部22を回転ケージのように、無人航空機10の周りを包囲するように構成した場合、(1)無人航空機10の揚力を発生させる風の流れに影響を与えないこと、(2)回転係合部付き無人航空機1が引上げることができる紐状体Wの重量に相当する最大引上げ力(N)を高めるために、回転体20の重量をできるだけ軽量にすること、(3)ロータの駆動による無人航空機1の発熱による温度上昇を抑えるために冷却できること、が好ましく、これらの観点から、回転部22を回転ケージで構成する場合には、外気の出入りが可能な状態、より具体的には、回転ケージを複数の棒状部材または網状部材で構成することが好ましい。回転ケージの具体的な構成例としては、例えば、水平方向および垂直方向のうち、少なくとも1方の方向に間隔をおいて延在するように配設した複数の棒状部材で構成するか、あるいは後述するような網状部材で構成することが好ましい。本実施形態では、間隔をおいて水平方向に延在するように配設した複数の棒状部材で構成した場合を示している。
【0023】
また、本実施形態では、回転体20は、軸部21を固定軸とし、回転部22だけを回転させるように構成した場合を示しているが、軸部21を胴体部11に回転自在に連結して、回転部22を軸部21とともに回転自在に構成することもできる。
【0024】
加えて、回転部22を回転ケージの形状で構成した場合、回転部22が何らかのトラブルで適正に回転しなかったとしても、回転ケージ22が、紐状体Wと無人航空機10の回転翼13との間に位置する隔壁として機能するため、紐状体Wが無人航空機10の回転翼13に接触することを有効に防止することができる。
【0025】
回転部22の最上外周位置にあるときの回転係合部24の高さ位置H2は、図5(b)に示すように、無人飛行機10の回転翼13の高さ位置H1よりも上方にあることが好ましい。この構成によって、紐状体Wが無人航空機10の回転翼13に接触することをより一層防止することができる。
【0026】
回転係合部24は、本実施形態では、回転部22の外周面上でかつその母線の中点位置に配置した場合を示しているが、かかる構成には限定されず、回転部の外周面上の位置であればよい。
【0027】
また、回転係合部24に取り付けられる紐状体Wとしては、対象物Tに引っ掛けることができる程度の長さ、例えば対象物の高さ寸法の2倍以上の長さを有する紐状のものであればよく、特に限定はしないが、例えば、麻、木綿などの天然ロープ、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ビニロンなどの化学繊維ロープ、ワイヤロープ等が挙げられるが、さらに、これらのロープよりも軽量なリード紐をロープの先端側に連結した構成でもよい。
【0028】
<第2の実施形態>
図6は、本発明に従う第2の実施形態の回転係合部付き無人航空機1Aの概略構成を示した斜視図であり、図7(a)、(b)および(c)は、それぞれ図6の回転係合部付き無人航空機の平面図、正面図および側面図である。なお、第2の実施形態の回転係合部付き無人航空機1Aの各構成部材は、第1の実施形態の回転係合部付き無人航空機1の各構成部材と同じ場合には、同じ符号を付している。
【0029】
第2の実施形態の回転係合部付き無人航空機1Aは、無人航空機10と回転体20Aとで主に構成されている。
【0030】
本実施形態では、回転体20Aの回転部22Aが、回転ケージで構成されている点では、第1実施形態と同じ構成であるが、回転ケージが、網状部材で構成されている点が第1実施形態とは異なっている。このような回転体20Aを備えることによって、例えば高所にある対象物に紐状体(例えばロープ)Wを引っ掛ける作業を行うため、回転係合部付き無人航空機1Aを上昇移動、水平移動および下降移動を含むあらゆる方向に移動(飛行)させたとしても、回転係合部24が、無人航空機10から離隔した位置で、回転係合部付き無人航空機1Aの移動方向に応じて、回転部22Aとともに適正な回転部22Aの外周位置に回転することができる。
【0031】
尚、本実施形態では、回転部22Aの外周面上に、90°間隔ごとの4カ所の位置に、所定面積の網状部材を部分的に配置した場合を示しているが、かかる構成だけには限定されず、網状部材を回転部22Aの外周面の全面にわたって配置することもできる。
【0032】
<第3の実施形態>
図8は、本発明に従う第3の実施形態の回転係合部付き無人航空機1Bの概略構成を示したものである。なお、第3の実施形態の回転係合部付き無人航空機1Bの各構成部材は、第1の実施形態の回転係合部付き無人航空機1の各構成部材と同じ場合には、同じ符号を付している。
【0033】
第3の実施形態の回転係合部付き無人航空機1Bは、無人航空機10と回転体20Bとで主に構成されている。
【0034】
本実施形態では、回転体20Bの回転部22Bが、回転ケージで構成されている点では、第1実施形態と同じ構成であるが、回転ケージが、複数の棒状部材を、間隔をおいて垂直方向に延在するように配置して構成されている点が第1実施形態とは異なっている。このような回転体20Bを備えることによって、例えば高所にある対象物に紐状体(例えばロープ)Wを引っ掛ける作業を行うため、回転係合部付き無人航空機1Bを上昇移動、水平移動および下降移動を含むあらゆる方向に移動(飛行)させたとしても、回転係合部24が、無人航空機10から離隔した位置で、回転係合部付き無人航空機1Bの移動方向に応じて、回転部22Bとともに適正な回転部22Bの外周位置に回転することができる。
【0035】
<第4の実施形態>
図9は、本発明に従う第4の実施形態の回転係合部付き無人航空機1Cの概略構成を示したものである。なお、第4の実施形態の回転係合部付き無人航空機1Cの各構成部材は、第1の実施形態の回転係合部付き無人航空機1の各構成部材と同じ場合には、同じ符号を付している。
【0036】
第3の実施形態の回転係合部付き無人航空機1Cは、無人航空機10と回転体20Cとで主に構成されている。
【0037】
本実施形態では、回転体20Cの回転部22Cが、回転ケージで構成されている点では、第1実施形態と同じ構成であるが、回転ケージが、複数の棒状部材を、垂直方向と水平方向に間隔をおいて格子状に配置して構成されている点が、第1実施形態とは異なっている。このような回転体20Cを備えることによって、例えば高所にある対象物に紐状体(例えばロープ)Wを引っ掛ける作業を行うため、回転係合部付き無人航空機1Cを上昇移動、水平移動および下降移動を含むあらゆる方向に移動(飛行)させたとしても、回転係合部24が、無人航空機10から離隔した位置で、回転係合部付き無人航空機1Cの移動方向に応じて、回転部22Cとともに適正な回転部22Cの外周位置に回転することができる。
【0038】
<第5の実施形態>
図10は、本発明に従う第5の実施形態の回転係合部付き無人航空機1Dの概略構成を示したものである。なお、第5の実施形態の回転係合部付き無人航空機1Dの各構成部材は、第1の実施形態の回転係合部付き無人航空機1の各構成部材と同じ場合には、同じ符号を付している。
【0039】
第3の実施形態の回転係合部付き無人航空機1Dは、無人航空機10と回転体20Dとで主に構成されている。
【0040】
本実施形態では、回転体20Dの回転部22Dが、回転ケージで構成されている点では、第1実施形態と同じ構成であるが、回転ケージが、網状部材で構成されている点が、第1実施形態とは異なっている。網状部材は、回転ケージの全面にわたって配置されているか、または回転ケージの複数の位置に点在するように配置されていることが好ましい。図10に示す第5の実施形態の回転係合部付き無人航空機1Dでは、網状部材が、回転ケージの複数の位置に点在するように配置されている実施形態の一例として、回転ケージが、網状部材を市松模様状に配置して構成されている場合を示している。このような回転体20Dを備えることによって、例えば高所にある対象物に紐状体(例えばロープ)Wを引っ掛ける作業を行うため、回転係合部付き無人航空機1Dを上昇移動、水平移動および下降移動を含むあらゆる方向に移動(飛行)させたとしても、回転係合部24が、無人航空機10から離隔した位置で、回転係合部付き無人航空機1Dの移動方向に応じて、回転部22Dとともに適正な回転部22Dの外周位置に回転することができる。また、網状部材が回転ケージの複数の位置に点在するように配置されている他の変形例としては、例えば、図11(a)~(c)に示すように、網状部材を種々の位置に点在するように配置する場合が挙げられ、あらゆる配置を採用することができる。さらに、回転ゲージを構成する各網状部材の形状についても、矩形だけには限定されず、三角形や、五角形以上の多角形、円形、楕円形、さらにはこれらを組み合わせた形状など、種々の形状を採用することができる。
【0041】
<第6の実施形態>
図12は、本発明に従う第6の実施形態の回転係合部付き無人航空機1Eの概略構成を示したものである。なお、第6の実施形態の回転係合部付き無人航空機1Eの各構成部材は、第1の実施形態の回転係合部付き無人航空機1の各構成部材と同じ場合には、同じ符号を付している。
【0042】
第3の実施形態の回転係合部付き無人航空機1Eは、無人航空機10と回転体20Eとで主に構成されている。
【0043】
本実施形態では、回転体20Eが、無人航空機1Eの両側面に連結され、それぞれ逆方向に延在する1対の軸部21E、21Eと、これらの軸部21E、21Eの他端に回転自在に連結され、回転リングからなる1対の回転部22E、22Eとで構成され、紐状体Wをいずれかの回転部22Eの回転係合部24に係合させる点が、第1実施形態とは異なっている。このような回転体20Eを備えることによって、例えば高所にある対象物に紐状体(例えばロープ)Wを引っ掛ける作業を行うため、回転係合部付き無人航空機1Eを上昇移動、水平移動および下降移動を含むあらゆる方向に移動(飛行)させたとしても、回転係合部24が、無人航空機10から離隔した位置で、回転係合部付き無人航空機1Eの移動方向に応じて、回転部22Eとともに適正な回転部22Eの外周位置に回転することができる。
【0044】
<回転係合部付き無人航空機を用いた紐状体の引っ掛け方法>
次に、本発明の回転係合部付き無人航空機1を用いて、高所にある対象物(例えば電線T)に紐状体を引っ掛ける方法の例を以下で説明する。
【0045】
まず、紐状体Wを回転係合部付き無人航空機無人航空機1の回転係合部24に取り付ける。
【0046】
次に、回転係合部付き無人航空機無人航空機1を、電線Wの一方側に位置する空間領域内を電線Wよりも上方の位置まで上昇移動させる。このとき、紐状体Wを取り付けた回転係合部24は、回転部22の外周下方、すなわち無人航空機10の下方に位置しているので、紐状体Wが無人飛行機10の回転翼13と接触することはない(図5(a))。
【0047】
その後、回転係合部付き無人航空機無人航空機1を、電線Tの上方を通過させた後に、電線Tの他方側に位置する空間領域内を下方に下降移動させて、回転係合部付き無人航空機無人航空機1を地上に着陸させることによって、電線Tに紐状体Wを引っ掛けることができる。このとき、回転係合部付き無人航空機無人航空機1は、電線Tの上方での水平移動による通過距離を短くし、その後、垂直に近い角度で下降移動させたとしても、紐状体Wを取り付けた回転係合部24は、回転部22の外周上方、すなわち無人航空機10の上方に位置しているので、紐状体Wが無人飛行機10の回転翼13と接触することはない(図5(b))。
【0048】
また、回転係合部付き無人航空機1は、水平方向の移動スペースが狭い場合であっても、紐状体が回転翼に接触することなく、例えば垂直近くの角度で下降移動することが必要な高所の対象物Tに対しても、紐状体Wの引っ掛け作業を安定して行うことができる。
【0049】
加えて、高度な操縦技術も必要とせず、比較的簡単に操縦することができるので、簡便かつ効率よく紐状体の引っ掛け作業を行うことができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【符号の説明】
【0051】
1、1A、1B、1C、1D、1D-1、1D-2、1D-3、1E 回転係合部付き無人航空機
10 無人航空機
11 胴体部
12 アーム
13 回転翼(またはロータ)
20、20A、20B、20C、20D、20E 回転体
21、21E 軸部
22、22A、22B、22C、22D、22D-1、22D-2、22D-3、22E 回転部
100 無人航空機
101 係止部
102 胴体部
103 回転翼
H1 無人飛行機の回転翼の高さ位置
H2 回転部の最上外周位置にあるときの回転係合部の高さ位置
P 水平方向
R 地上に向かう方向
S 左下斜め方向
T 対象物(または電線)
W 紐状体(またはロープ)
X 距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12