(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】モールド型静止誘導機器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/08 20060101AFI20220928BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20220928BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20220928BHJP
H01F 27/02 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H01F27/08 153
H01F27/28 176
H01F27/32 170
H01F27/02 150
(21)【出願番号】P 2021035387
(22)【出願日】2021-03-05
(62)【分割の表示】P 2017153291の分割
【原出願日】2017-08-08
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】高井 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】▲陦▼ 裕介
(72)【発明者】
【氏名】中前 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】城条 雅之
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-278708(JP,A)
【文献】実公昭30-010830(JP,Y1)
【文献】実開昭60-081615(JP,U)
【文献】実開平06-021227(JP,U)
【文献】特開2015-225894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/08
H01F 27/28
H01F 27/32
H01F 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密に構成された容器内に収納された、
鉄心と、
前記鉄心の外周に装着された複数の巻線と、
前記巻線方向に送風可能に構成される送風機と、
前記巻線の下部に位置して設けられた案内板とを備え、
前記案内板は前記巻線の下部端面に接する位置に配置されて開口部を備え、
前記巻線内部には巻線内流路が設けられており、
前記開口部は、前記巻線の外径よりも大きな外径を有する窓部であり、
前記容器は前記案内板により、下部室及び上部室に分けられ、
前記上部室に接続される上部連通路と、及び、前記下部室に接続される下部連通路とを介して接続される冷却器と、
を更に備え、
前記送風機により、下部室,巻線内流路,上部室,上部連通路,冷却器,下部連通路,を順次経て前記下部室に戻るように循環して流れる冷却媒体の循環経路が形成され、
前記開口部は、略円形状の窓部と、前記窓部に対して同心円状に構成された環状のスリット部からなり、
前記スリット部は、前記巻線内流路の直下に、前記巻線内流路の位置に対応して配置され、
最外周のスリット部は、前記巻線の外周壁の外側に位置するように配置されて
おり、
前記案内板は、平板板状であり、その外周が、前記容器の内壁に固定された案内板支えの内縁部に重なる状態でクッション材を介して固定され、
前記案内板支え、前記クッション材、及び前記案内板は、前記開口部を除けば気密に構成されているモールド型静止誘導機器。
【請求項2】
前記容器内には大気圧を超える圧力の空気が封入されている請求項
1記載のモールド型静止誘導機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、モールド型静止誘導機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、モールド型静止誘導機器は、より高電圧化、大容量化を可能とするため、大気圧を上回る圧力の冷却媒体を封入する密閉容器にモールド型静止誘導機器本体を収納し、冷却媒体を冷却する熱交換器と、冷却媒体を循環させる送風機を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、冷却媒体を循環させるだけではモールド型静止誘導機器を効率よく冷却できない。また、モールド型静止誘導機器の点検、修理などの保守を容易にする必要がある。そこで、冷却効率を高め、保守が容易なモールド型静止誘導機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係るモールド型静止誘導機器は、気密に構成された容器内に収納された、鉄心と、前記鉄心の外周に装着された複数の巻線と、前記巻線に送風可能に構成された送風機と、前記巻線の下部に位置して設けられた案内板とを備え、前記案内板は前記巻線の下部端面に接する位置に配置されて開口部を備え、前記巻線内部には巻線内流路が設けられており、前記開口部は、前記巻線の外径よりも大きな外径を有する窓部であり、前記容器は前記案内板により、下部室及び上部室に分けられ、前記上部室に接続される上部連通路と、及び、前記下部室に接続される下部連通路とを介して接続される冷却器とを更に備え、前記送風機により、下部室,巻線内流路,上部室,上部連通路,冷却器,下部連通路,を順次経て前記下部室に戻るように循環して流れる冷却媒体の循環経路が形成される。そして、前記開口部は、略円形状の窓部と、前記窓部に対して同心円状に構成された環状のスリット部からなり、前記スリット部は、前記巻線内流路の直下に、前記巻線内流路の位置に対応して配置され、最外周のスリット部は、前記巻線の外周壁の外側に位置するように配置されている。
また、前記案内板は、平板板状であり、その外周が、前記容器の内壁に固定された案内板支えの内縁部に重なる状態でクッション材を介して固定され、前記案内板支え、前記クッション材、及び前記案内板は、前記開口部を除けば気密に構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係るモールド型静止誘導機器の概略構成を示す縦断面図
【
図2】モールド型静止誘導機器の概略構成を示す縦断面図
【
図3】モールド型静止誘導機器の概略構成を示す横断面図
【
図5】第2実施形態に係る案内板の概略構成を示す平面図
【
図6】第3実施形態に係るモールド型静止誘導機器の構成を示す上視図
【
図7】第4実施形態に係るモールド型静止誘導機器の構成を示す上視図
【
図8】第5実施形態に係るモールド型静止誘導機器の構成を示す上視図
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について図面に基づいて説明する。実施形態の説明において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。また、下記説明及び図において、上下方向は、変圧器1を設置した際の上下方向を意味しており、鉄心10及び巻線12の軸方向が上下方向となる。
【0008】
(第1実施形態)
図1から
図4は、第1実施形態に係るモールド型静止誘導機器の一例として示す変圧器1の概略構成を示す図である。
図1は変圧器1の概略構成を示す縦断面図であり、
図3のE-E線における縦断面図を示している。
図2は、
図1のB-B線、C-C線、又はD-D線における変圧器1の概略構成を示す断面図であり、冷却器16の概略構成も示している。
図3は、
図1のA-A線における変圧器1の概略構成を示す横断面図である。
【0009】
図1及び
図2に示すように、変圧器1は、鉄心10と、鉄心10の外周に巻回されて装着される巻線12とを備えている。これら鉄心10、巻線12等は変圧器1の筐体である容器2の内部に収納されている。容器2は内部を気密に保持して構成される。容器2の内部には、絶縁ガスなどの絶縁冷却媒体が充填されている。本実施形態では、冷却媒体は空気(気体)である。
【0010】
鉄心10は上部に上ヨーク10a、下部に下ヨーク10bを備えている。鉄心10は、上ヨーク10a及び下ヨーク10b部において図示しないクランプによって挟持固定されている。巻線12は上下から図示しない巻線押えにより固定されている。
【0011】
巻線12は全体として円柱形状を呈しており、巻線12の内部には、上下方向に貫通する巻線内流路13が設けられている。巻線内流路13は巻線12内に、巻線12の軸方向であって、巻線12の中心軸に対して同心円状に構成された間隙である。巻線内流路13には冷却媒体を流通させることが可能である。冷却媒体が巻線内流路13内を流通することにより、巻線12を内部から冷却することができる。巻線内流路13に図示しないスペーサを備えるようにして、間隙を保持するようにしてもよい。
【0012】
図3に示すように、巻線12は横断面において円形状を呈している。巻線12の中心には、横断面において円形状の空洞部12cが存在しており、この空洞部12cに鉄心10が配置されている。
図3に例示する巻線12では、巻線内流路13が、空洞部12cと同心円状に3重に設けられている。なお、巻線12の形状は、上記形状に限定されることはなく、横断面の形状が角部が丸くされた長方形であり、中心に空洞部を備える四角柱形状、あるいは、横断面の形状が楕円であり、中心に空洞部を備える円柱形状であってもよい。
【0013】
図1から
図4に示されるように、案内板6は巻線12の下部に位置して設けられている。案内板6は、容器2の内壁側面に固定された案内板支え4にクッション材5を介して固定されている。案内板支え4は中心に開口部を備える矩形枠形状の平板であり、例えば鉄で構成されている。案内板支え4は、例えば溶接により容器2の内壁側面に固定されており、容器2の内壁側面とは気密に固定されている。クッション材5は矩形枠形状の平板形状に構成された部材であり、例えば弾性体により形成されている。案内板6は絶縁材料で構成されている。クッション材5は案内板支え4と案内板6との隙間を埋めることにより案内板支え4と案内板6の間の隙間を埋め、冷却媒体が案内板支え4と案内板6の間の隙間から漏れ出すことを防止する機能を有している。これにより、容器2と案内板支え4とクッション材5と案内板6の間で気密に構成されている。以下、容器2のうち、案内板6の下部を下部室2a、案内板6の上部を上部室2bと称する。容器2は、案内板6により、下部室2aと上部室2bとに分けられている。
【0014】
図2に示すように、変圧器1は、容器2の上部室2bに設けられた上部連通路18と、容器2の下部室2aに設けられた下部連通路20を介して接続された冷却器16を備えている。冷却器16は熱交換器であり、冷却器16に封入される冷却媒体を冷却する機能を備えている。上部連通路18及び下部連通路20により、容器2内の冷却媒体は、冷却器16と連通可能となっている。巻線12において熱せられた冷却媒体は上部室2bから上部連通路18を通過して冷却器16内に入り、冷却器16によって冷却された後、冷却直後の冷却媒体が下部連通路20を通過して容器2の下部室2aに流入する。下部連通路20には送風機22が設けられている。送風機22により、冷却器16内の冷却媒体を下部室2aに効率的に送風して輸送することが可能となる。容器2と、容器2に上部連通路18及び下部連通路20を介して接続された冷却器16の内部は気密に構成されている。冷却媒体は大気圧を超える圧力で容器2及び冷却器16に封入されている。内部に封入される冷却媒体の圧力を高めることで、冷却性能を向上させることができる。また、冷却媒体としては空気を用いている。これにより、変圧器1の保守等の際に、容器2内の減圧、容器2内への侵入、冷却媒体の再封入等の作業が容易となる。従って、変圧器1の点検、修理等の保守作業が容易となる。
【0015】
図3、
図4に示すように、案内板6は矩形の平板板状の部材である。案内板6の外周は、案内板支え4の内縁部に重なるように構成されており、この重なり部分にクッション材5を狭在させることにより案内板支え4と案内板6とを接続している。案内板6には、巻線12の真下位置に対応するように、巻線12の形状に対応して構成される開口部6a、この場合、略円形状の窓部である開口部6aが設けられている。変圧器1の設置状態において、開口部6aには鉄心10が貫通している。開口部6aの大きさは、巻線12の外壁にも冷却媒体が流通するように、巻線12の外径よりも少し大きな直径となるように構成されている。容器2と案内板支え4、クッション材5、及び案内板6は、開口部6aを除けば、気密に構成されており、容器2と案内板支え4、クッション材5、及び案内板6の間では気体の漏れが無いように構成されている。
【0016】
図1及び
図2に示すように、送風機14は、巻線12の直下に位置するように配置されている。すなわち、送風機14は、案内板6の開口部6aの直下に位置するように配置されている。送風機14は容器2の下部すなわち下部室2aに配置されている。送風機14は、冷却器16によって冷却された直後の冷却媒体を下から上方向に移動させている。送風機14の真上には開口部6aと、巻線12及び巻線内流路13とが位置している。送風機14により、冷却媒体は真上方向に吹き付けられ、案内板6の開口部6aを通過し、主として巻線内流路13、巻線12の内側壁12a及び外側壁12bを通過するように送風される。このように、送風機14によって作り出された冷却媒体の流れは、開口部6aによって効率的に巻線12方向に進むように方向づけられ、巻線内流路13、巻線12の内側壁12a及び外側壁12bを通過する。なお、
図1及び
図2に示される送風機14は、断面位置の関係から、鉄心10の左右前後前後にしか配置されていないように見えるが、断面に示されない位置にも配置されていてもよい。つまり、送風機14は設置場所が許す限り多く配置するようにすればよい。
【0017】
また、上記のような開口部6aを備えた案内板6と、開口部6aの直下に備えられた送風機14により、送風機14により生じた冷却媒体の流れを、巻線12方向に集中させることができる。すなわち、冷却媒体を、巻線内流路13、巻線12の内側壁12a(すなわち巻線12と鉄心10との間隙)及び外側壁12b方向に集中させて送風することができるため、巻線12を効率的に冷却することができる。
【0018】
また、送風機14及び送風機22により、下部室2a→巻線12すなわち巻線内流路13→上部室2b→上部連通路18→冷却器16→下部連通路20→下部室2a、のような経路で循環して流れる冷却媒体の循環経路が形成される。
第1実施形態の静止誘導機器によれば以下の効果を奏する。
【0019】
巻線12の下部に位置するように設けられた開口部6aを備える案内板6と、開口部6aの下部、好ましくは直下に位置するように送風機14が配置されている。送風機14により、冷却媒体は上方向、すなわち巻線12方向に送風される。また、巻線12には巻線内流路13が設けられており、巻線内流路13を冷却媒体が通過する。開口部6aは巻線12外径よりも少し大きく開口するように構成されている。この構成により、巻線12の巻線内流路13、巻線12の内側壁12a及び外側壁12b方向に集中して冷却媒体を送風することが可能となるため、巻線12の冷却効率を向上させることができる。
【0020】
また、容器2は案内板6により下部室2aと上部室2bとに分けられて隔てられる。下部室2aには冷却器16により冷却された冷却媒体が送風されており、この冷却された冷却媒体を送風機14により巻線12方向に送風することができる。巻線12を冷却することにより暖められた冷却媒体は上部室2bに送風される。上部室2bの冷却媒体は上部連通路18を介して冷却器16に送られ、冷却器16により冷却される。この構成により、冷却された直後の冷却媒体が巻線12により暖められた冷却媒体と混ざり合うことがない。このため、温度の低い冷却媒体を効率的に巻線12に送風することができるため、巻線12の冷却効率を向上させることが可能となる。
【0021】
また、容器2の下部室2aに連通する下部連通路20には送風機22が備えられている。これにより、冷却器16によって冷却された直後の冷却媒体を効率的に下部室2aに送風することができる。また、下部室2aには、送風方向を上方向すなわち巻線12方向に設定された複数個の送風機14が備えられている。これにより、冷却器16で冷却された冷却媒体が送風機22により下部室2aに送風され、この冷却された冷却媒体が送風機14により巻線12方向すなわち巻線内流路13、巻線12の内側壁12a及び外側壁12b方向に集中的に送風される。このように、冷却器16により冷却された冷却媒体を下部室2aに送風する送風機22と、下部室2aに配置され巻線12方向に冷却媒体を送風する送風機14により、冷却された直後の冷却媒体を冷却対象である巻線12方向に効率的に送風することができるため、巻線12を効率的に冷却することが可能となる。このため、巻線12の冷却効率を向上させることができる。この場合、下部連通路20及び送風機22を複数個設ければ、さらに巻線12の冷却効率を向上させることが可能となる。また、送風機14及び送風機22により、冷却媒体の循環を促進するため、これによっても巻線12の冷却効率を向上させることができる。
【0022】
また、案内板6は、容器2の内壁に固定された案内板支え4にクッション材5を介して固定されている。この場合、クッション材5は案内板支え4と案内板6との隙間を埋めて冷却媒体が案内板支え4と案内板6の間から漏れ出すことを防止する機能を有している。この構成により、冷却器16から下部室2aに送風されて輸送された冷却された直後の冷却媒体が漏れ出すことがなくなり、巻線12方向に送風される冷却直後の冷却媒体の損失を抑制することができる。このため、巻線12の冷却効率の低下を抑制することができる。
【0023】
また、冷却媒体は温度が高いと密度が低く、温度が低いと密度が高くなる。そのため、送風機14及び送風機22が停止した場合であっても、冷却器16により冷却された冷却媒体の温度による密度差で対流が生じるため、冷却媒体は上記循環経路で循環する。これにより、送風機14及び送風機22が停止した場合でも冷却器16により生じる対流によって巻線12の冷却が行われる。また、この場合においても、開口部6aの直上に位置する巻線12方向に集中的に冷却媒体が流れ込むため、巻線内流路13、内側壁12a、及び外側壁12bに冷却媒体を集中的に送風することができる。このため、送風機14及び送風機22が停止した状態であっても、巻線12の冷却効率を向上させることが可能となる。
【0024】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。
図5は、案内板6の変形例の概略構成を示す平面図である。第2実施形態においては、巻線12直下に位置する案内板6に、巻線内流路13及び外側壁12bに向けたスリット部70を設けるというものである。
【0025】
図5に示すように、案内板60は、全体として矩形形状の平板である。案内板60は円形の窓部である開口部61、及び開口部61と同心円状に配置された複数のスリット部70を備えている。スリット部70は例えば約90度の角度範囲の4つの扇形領域に配置されている。各スリット部70は、開口部61に近いほうから、スリット部71、72、73、74の順に並んでいる。それぞれのスリット部70は、扇形領域の境界領域に設けられたブリッジ部8を介して円周方向に隣接するように配置されている。各スリット部70は同心円状に配列されており、ブリッジ部8により分断された4つの環状のスリットを構成している。
【0026】
案内板60を変圧器1に設置した状態で、案内板60は巻線12の真下に配置されている。この場合、開口部61は鉄心10を貫通させることができる程度の内径を備えており、開口部61は鉄心10を貫通させて設置されている。また、この場合、内側から3つのスリット部71、72、73は巻線12の各巻線内流路13の真下位置に、巻線内流路13の配置に対応して配置されている。最外周のスリット部74は、巻線12の外側壁12bのやや外側に位置するように配置されている。
【0027】
送風機14は案内板60の下部に配置されており、送風機14によって冷却媒体が上方向に送風されるため、送風機14によって送風された冷却媒体は、巻線内流路13の真下に位置するスリット部70を通過し、巻線内流路13及び外側壁12b方向に集中的に送風される。また、開口部61を通過した冷却媒体は鉄心10と巻線12の内側壁12aとの間の間隙を通過することにより巻線12の内側壁12aに送風されて輸送される。
【0028】
その他の構成は、第1実施形態に係る変圧器1と同様の構成である。
第2実施形態に係る案内板60を用いた変圧器1によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する他、以下の効果を奏する。
【0029】
案内板60に設けられたスリット部70(71、72、73、74)は、案内板60が変圧器1に設置された状態で、巻線12の巻線内流路13及び外側壁12bの直下の位置となるように構成されている。また、開口部61は鉄心10と内側壁12aとの間の間隙の直下の位置に配置されている。従って、冷却媒体が送風機14により上方に送風される結果、冷却媒体は巻線12の巻線内流路13、内側壁12a、及び外側壁12bに向けて集中的に送風されて輸送される。このようにして、容器2の下部室2a内の冷却直後の冷却媒体を、巻線12方向すなわち巻線内流路13、巻線12の内側壁12a及び外側壁12b方向に集中して送風することができるため、巻線12の冷却効率を向上させることができる。
【0030】
また、この構成によれば、案内板60のスリット部70及び開口部61を通過した冷却媒体は、巻線12の底部部分等に向かって送風されることがない。従って、送風機14によって送付される冷却媒体が冷却媒体の流れを妨げる構造物に向かって流れることがないため、送風効率が低下することがない。従って、巻線12の冷却効率を向上させることができる。
【0031】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について
図6を参照して説明する。
図6は、巻巻線25を上方から臨む図であり、巻線25の下方に配置される送風機26(26a、26b)を上から透視した状態で示している。第3実施形態における巻線25は、中心部分に空洞部25cを備え、上方から見ると角が丸まった略四角形状(略長方形)を呈しており、長方形の短辺側Fと長辺側、及び角部である領域Gを備える。短辺側Fのうち領域G間の領域を領域Hとし、長辺側の領域G間の領域を領域Jとする。巻線25は上述の巻線12と同様に、内側壁25a、外側壁25bを備えている。また、
図6において、巻線内流路13は省略しているが実際には存在している。その他は、第1及び第2実施形態と同じである。
【0032】
この略長方形の巻線25において、巻線25を備えた変圧器1の運転時には、短辺側Fの発熱が大きいという性質を有する。また、略長方形の巻線25の短辺側Fにおいて、特に角部である領域Gの発熱が大きいという性質を有する。領域Jの発熱は、短辺側Fの領域G及び領域Hよりも大きくない。
【0033】
そこで、まず、領域Gに送風機26aを配置する。領域Gに送風機26aを配置することで、巻線25の中で最も発熱が大きく温度が高い領域Gに向けて送風することができるため、冷却効率を向上させることができる。
【0034】
また、領域Hに送風機26bを配置する。領域Hに送風機26bを配置することで、巻線25において領域Gの次に発熱が大きく温度が高い領域Hに向けて送風することができるため、冷却効率を向上させることができる。
従って、送風機26の配置としては、領域G、領域H、領域Jの順に優先的に配置することが望ましい。領域Jに送風機26を配置しても構わない。
【0035】
第3実施形態に係る構成により、第1及び第2実施形態と同様の効果を得る。また、第3実施形態に係る構成により、巻線12の冷却効率を更に向上させることができる。
【0036】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について
図7を参照して説明する。
図7は、巻線27を上方から臨む図であり、巻線27の下方に配置される送風機26を上から透視した状態で示している。第4実施形態における巻線27は、上方から見ると長径と短径を備える楕円形を呈しており、長径方向の二つの端部に領域Kを備える。領域K間の領域を領域Lとする。巻線27は、内側壁27a、外側壁27bを備えている。また、
図7において、巻線内流路13は省略しているが実際には存在している。その他の構成は、第1~第3実施形態と同じである。
【0037】
この楕円形の巻線27において、巻線27を備えた変圧器1の運転時には、長辺方向の端部領域である領域Kの発熱が大きいという性質を有する。領域Lの発熱は、領域Kよりも大きくない。
【0038】
そこで、まず、領域Kに送風機26を配置する。領域Kに送風機26を配置することで、巻線27の中で最も発熱が大きく温度が高い領域Kに向けて送風することができるため、冷却効率を向上させることができる。
従って、送風機26の配置としては、領域K、領域Lの順に優先的に配置することが望ましい。領域Lに送風機26を配置しても構わない。
【0039】
第4実施形態に係る構成により、第1から第3実施形態と同様の効果を得る。また、第4実施形態に係る構成により、巻線27の冷却効率を更に向上させることができる。
【0040】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について
図8を参照して説明する。
図8は、3個の巻線25により構成された三相変圧器1の変圧器本体を上方から臨む図であり、巻線25の下方に配置される送風機26を上から透視した状態で示している。
【0041】
図8は、第3実施形態で例示した巻線25すなわち角が丸く形成された略四角形状(略長方形)を呈する巻線25を3個並べて三相の変圧器1を構成した例を例示している。巻線25のその他の構成は第3実施形態と同じである。この巻線25が三個、長辺部分である領域Jを対向させるように3個並べて配置されており、中心の空洞部25cには鉄心10が貫通して配置されている。
【0042】
第5実施形態に係る変圧器1においては、第3実施形態と同様に、送風機26は、
図6における短辺側Fの領域G及び領域Hに配置されている。また、第5実施形態では、巻線間30に冷却媒体を送風するための送風機28が更に設けられている。送風機28は、巻線間30を望む位置に配置されている。例えば、送風機28は、横から斜め上方向の巻線間30に向けて配置さる。これにより、送風機28は、矢印29のように冷却媒体を巻線間30方向に送風可能に構成される。なお、送風機28は巻線間30を両側から挟むような位置で配置されているが、片方の配置としてもよい。
【0043】
ここで、送風機28は必ずしも巻線25の下方に配置される必要はない。また、第5実施形態においては、案内板6は必ずしも必要ではない。案内板6が無くても、巻線25の下方に配置された送風機26、及び、巻線間30に送風可能に配置された送風機28により、巻線25の冷却効率を向上させることができる。
上記のように第1実施形態及び第2実施形態について説明したが、以下のような変形を行うことができる。
【0044】
第1及び第2実施形態においては、モールド型静止誘導機器として変圧器1を例示して説明したがこれに限定されない。例えば、リアクトルに適用してもよい。また、巻線12は3つの巻線内流路13を備える構成を例示したが、これに限定されない。巻線内流路13は一つでもよいし、さらに多くの巻線内流路13を備える巻線12としてもよい。
【0045】
以上のように、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1…変圧器、2…容器、2a…下部室、2b…上部室、4…案内板支え、5…クッション材、6、60…案内板、6a、61…開口部、70、71、72、73、74…スリット部、8…ブリッジ部、10…鉄心、12、25、27、30…巻線、12a、25a、27a…内側壁、12b、25b、27b…外側壁、12c、25c…空洞部、13…巻線内流路、14、22、26、26a、26b、28…送風機、16…冷却器、18…上部連通路、20…下部連通路