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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】貼布剤用布帛および貼布剤
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/02 20060101AFI20220928BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220928BHJP
【FI】
A61F13/02 310A
A61F13/02 370
A61F13/02 390
A61K9/70 401
A61K47/34
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017007565
(22)【出願日】2017-01-19
(65)【公開番号】P2018114151
(43)【公開日】2018-07-26
【審査請求日】2019-10-31
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】檜垣 昌裕
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】八木 誠
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-59489(JP,A)
【文献】特開2008-231600(JP,A)
【文献】特開2002-201529(JP,A)
【文献】特開2013-216999(JP,A)
【文献】特開2011-184846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/00-13/14
A61F15/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貼布剤用布帛であって、着色剤を含む繊維を含み、
前記繊維が着色剤を繊維重量対比0.1~6.0重量%含み、
前記繊維がポリエチレンテレフタレート原着糸であり、
前記繊維が仮撚捲縮加工糸であり、
前記繊維において、単繊維繊度が3.0dtex以下であり、
前記繊維において、伸度が15%以上であり、
前記繊維において、捲縮率が19~40%の範囲内であり、
布帛が編地であり、
布帛の目付けが150g/m以下であり、
布帛が前記繊維のみからなることを特徴とする貼布剤用布帛。
【請求項2】
請求項1に記載の貼布剤用布帛を用いてなる貼布剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
染色工程を省略することができ、染色工程で発生する汚れ欠点を排除することができる貼布剤用布帛およびその製造方法および貼布剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パップ剤などの貼布剤用布帛が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。また、かかる布帛は、使用の際に目立たないよう、茶色やベージュ色に染色加工を施されることが多い。
しかしながら、染色工程において、汚れ欠点が発生し工程ロスとなることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-59489号公報
【文献】特開2008-231600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は染色工程を省略することができ、染色工程で発生する汚れ欠点を排除することができる貼布剤用布帛およびその製造方法および貼布剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、着色剤を含む繊維を用いることにより染色工程を省略することができ、染色工程で発生する汚れ欠点を排除することができることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0006】
かくして、本発明によれば「貼布剤用布帛であって、着色剤を含む繊維を含み、
前記繊維が着色剤を繊維重量対比0.1~6.0重量%含み、
前記繊維がポリエチレンテレフタレート原着糸であり、
前記繊維が仮撚捲縮加工糸であり、
前記繊維において、単繊維繊度が3.0dtex以下であり、
前記繊維において、伸度が15%以上であり、
前記繊維において、捲縮率が19~40%の範囲内であり、
布帛が編地であり、
布帛の目付けが150g/m以下であり、
布帛が前記繊維のみからなることを特徴とする貼布剤用布帛。」が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、前記の貼布剤用布帛を用いてなる貼布剤が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、染色工程を省略することができ、染色工程で発生する汚れ欠点を排除することができる貼布剤用布帛およびその製造方法および貼布剤が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。まず、本発明において、着色剤は特に限定されず、カーボンブラック、弁柄、群青等の無機系顔料、フタロシアニン系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、ジオキサジン系、ペリレン系、ペリノン系等の有機系顔料が挙げられる。上記着色剤を適宜選定し、単独または複数をブレンドして使用すればよい。
着色剤の含有量としては、繊維重量に対して0.1~6.0重量%(より好ましくは0.5~3.0重量)であることが好ましい。
【0010】
前記繊維の種類としては特に制限されず、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維、アセテート繊維、さらには、綿、ウール、絹などの天然繊維やこれらを複合したものが使用可能である。特にポリエステル繊維またはナイロン繊維が好ましい。かかるポリエステル繊維(すなわち、ポリエステル原着糸)は、少なくともポリエステル成分を含む複合繊維を含む。かかる複合繊維としては、サイドバイサイド型複合繊維、偏心芯鞘型複合繊維、芯鞘型複合繊維、海島型複合繊維などが例示される。また、ナイロン繊維は、ナイロン6繊維やナイロン66繊維を含む。
【0011】
前記ポリエステルとしては、テレフタル酸を主たる酸成分とし、炭素数2~6のアルキレングリコール、すなわちエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールからなる群より選ばれた少なくとも1種を主たるグリコール成分とするポリエステルが好ましい。なかでも、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)またはトリメチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステル(ポリトリメチレンテレフタレート)が特に好ましい。
【0012】
かかるポリエステルには、必要に応じて少量(通常30モル%以下)の共重合成分を有していてもよい。その際、使用されるテレフタル酸以外の二官能性カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β-ヒドロキシエトキシ安息香酸、p-オキシ安息香酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のごとき芳香族、脂肪族、脂環族の二官能性カルボン酸をあげることができる。また、上記グリコール以外のジオール化合物としては、例えばシクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSのごとき脂肪族、脂環族、芳香族のジオール化合物およびポリオキシアルキレングリコール等をあげることができる。
【0013】
前記ポリエステルは任意の方法によって合成したものでよい。例えばポリエチレンテレフタレートの場合について説明すると、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルのごときテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるかまたはテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させるかしてテレフタル酸のグリコールエステルおよび/またはその低重合体を生成させる第1段階の反応と、第1段階の反応生成物を減圧下加熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第2段階の反応によって製造されたものでよい。また、前記ポリエステルは、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステル、または、特開2004-270097号公報や特開2004-211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルであってもよい。さらには、ポリ乳酸やステレオコンプレックスポリ乳酸などの生分解性を有するポリエステルでもよい。
【0014】
前記ポリエステルには、着色剤のほか、紫外線吸収剤がポリエステル重量対比0.1重量%以上(好ましくは0.1~5.0重量%)含まれていると、布帛に紫外線遮蔽性が付加され好ましい。かかる紫外線吸収剤としては、ベンゾオキサジン系有機紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系有機紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系有機紫外線吸収剤、サリチル酸系有機紫外線吸収剤などが例示される。なかでも、紡糸の段階で分解しないという点からベンゾオキサジン系有機紫外線吸収剤が特に好ましい。
【0015】
また、前記ポリエステルには、必要に応じて、艶消し剤(二酸化チタンなど)、微細孔形成剤(有機スルホン酸金属塩など)、熱安定剤、難燃剤(三酸化二アンチモンなど)、蛍光増白剤、帯電防止剤(スルホン酸金属塩など)、吸湿剤(ポリオキシアルキレングリコールなど)、抗菌剤、その他の無機粒子の1種以上が含まれていてもよい。
繊維に着色剤を含有させる方法としては、繊維の溶融紡糸方法および前述のマスターバッチ方式、リキッドカラー方式等による製造方法が任意に適用される。たとえば、繊維形成性ポリマーと原着マスターチップまたは着色剤(顔料)を溶融混合して紡糸口金から吐出して巻き取った後、必要に応じて延伸や熱処理を施す方法によって製造される。
【0016】
また、前記繊維は、ひじやひざなどに対して追従性をよくする上でストレッチ性を有することが好ましく、仮撚捲縮加工糸であることが好ましい。
ここで、仮撚捲縮加工糸には第1ヒーター域で仮撚をセットした、いわゆるone heater仮撚捲縮加工糸と、該糸をさらに第2ヒーター域に導入して弛緩熱処理した、いわゆるsecond heater仮撚捲縮加工糸とがあり、どちらを用いてもよい。
前記繊維において、捲縮率が10%以上(より好ましくは10~40%)であることが好ましい。該捲縮率が10%未満では十分なストレッチ性が得られないおそれがある。
また、前記繊維において、単繊維繊度が3.0dtex以下(好ましくは0.00002~3.0dtex、特に好ましくは0.1~0.9dtex)であることが好ましい。
また、前記繊維が、総繊度33~220dtex(より好ましくは33~60dtex)、フィラメント数50~300本(より好ましくは100~300本)のマルチフィラメントであることが好ましい。
【0017】
本発明の貼布剤用布帛は前記の繊維を含む。特に、布帛が前記繊維のみからなることが好ましい。
前記布帛の目付けとしては、150g/m以下(より好ましくは80~120g/m)の範囲内であることが好ましい。
前記布帛の厚さとしては、1mm以下(より好ましくは100~800μm)であることが好ましい。
前記布帛において、布帛組織は特に限定されないが、ストレッチ性を得る上で編地が好ましい。その際、編組織は特に限定されず、経編、丸編(緯編)いずれでもよい。層数も単層でもよいし、2層以上の多層であってもよい。例えば、天竺、ニットミス、スムース、フライス、鹿の子、そえ糸編、デンビー、ハーフなどが好適に例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本発明の貼布剤用布帛は、前記捲縮繊維を用いて(必要に応じて他の繊維も用いて)常法により製編織(好ましくは製編)することにより得られる。
次いで、精練を施すことが好ましい。その際、前記精練工程の温度としては85~99℃であることが好ましい。その際、液流染色機を用いることが好ましい。
次いで、乾熱ファイナルセットを施すことが好ましい。その際、乾熱ファイナルセットの温度としては150~200℃(より好ましくは160~180℃)、時間としては1~3分の範囲内であることが好ましい。
かくして得られた貼布剤用布帛は、前記の繊維を用いているので、染色工程を省略することができ、染色工程で発生する汚れ欠点を排除することができる。
次に、本発明の貼布剤は前記の貼布剤用布帛を用いてなる貼布剤である。かかる貼布剤の片面には、例えば、特開2004-59489号公報に記載されているような薬物を含有した粘着剤が塗布されている。
【実施例
【0019】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の各物性は下記の方法により測定したものである。
(1)捲縮率
供試糸条を、周長が1.125mの検尺機のまわりに巻きつけて、乾繊度が3333dtexのかせを調製した。前記かせを、スケール板の吊り釘に懸垂して、その下部分に6gの初荷重を付加し、さらに600gの荷重を付加したときのかせの長さL0を測定する。その後、直ちに、前記かせから荷重を除き、スケール板の吊り釘から外し、このかせを沸騰水中に30分間浸漬して、捲縮を発現させる。沸騰水処理後のかせを沸騰水から取り出し、かせに含まれる水分をろ紙により吸収除去し、室温において24時間風乾する。この風乾されたかせを、スケール板の吊り釘に懸垂し、その下部分に、600gの荷重をかけ、1分後にかせの長さL1aを測定し、その後かせから荷重を外し、1分後にかせの長さL2aを測定する。供試フィラメント糸条の捲縮率(CP)を、下記式により算出する。
CP(%)=((L1a-L2a)/L0)×100
(2)伸度
JIS L1013:2010により測定する。
(3)目付け
JISL1018-1998 6.4により測定する。
(4)厚さ
JISL1018-1998 6.5により測定する。
【0020】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート(着色剤(RENOL-BROWN CLARIANT社製)の含有率3.0重量%)を用いて通常の紡糸装置から280℃で溶融紡糸し、3200m/分の速度で引取り、延伸することなく巻取り、半延伸されたポリエステル糸条(単糸繊維の断面形状:丸断面)を得た。
次いで、該ポリエステル糸条を用いて、延伸倍率1.6倍、仮撚数2500T/m、ヒーター温度180℃、糸速350m/分の条件で同時延伸仮撚捲縮加工を行い、仮撚捲縮加工糸(単繊維繊度0.5dtex、総繊度55dtex、フィラメント数110本、捲縮率19%、伸度22%)を得た。
次いで、該仮撚捲縮加工糸のみを用いて丸編機を使用して丸編物を得た。
次いで、液流染色機を使用して90℃で精練し、温度170℃で乾熱ファイナルセットし、目付け98g/m、厚さ0.500mmの貼布剤用布帛を得た。かかる布帛において、染色工程に起因する汚れがなく品位が良好であった。
【0021】
[比較例1]
ポリエチレンテレフタレート(着色剤の含有率0重量%)を用いて通常の紡糸装置から280℃で溶融紡糸し、3200m/分の速度で引取り、延伸することなく巻取り、半延伸されたポリエステル糸条(単糸繊維の断面形状:丸断面)を得た。
次いで、該ポリエステル糸条を用いて、延伸倍率1.6倍、仮撚数2500T/m、ヒーター温度180℃、糸速350m/分の条件で同時延伸仮撚捲縮加工を行い、仮撚捲縮加工糸(単繊維繊度0.5dtex、総繊度55dtex、フィラメント数110本、捲縮率18%、伸度21%)を得た。
次いで、該仮撚捲縮加工糸のみを用いて丸編機を使用して丸編物を得た。
次いで、液流染色機を使用して90℃で精練し、次いで、温度130℃でベージュ色に染色加工を施した後、温度170℃で乾熱ファイナルセットし、目付け95g/m、厚さ0.510mmの貼布剤用布帛を得た。かかる布帛において、染色工程に起因する染料凝集による汚れ欠点が1.1%発生した。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によれば、染色工程を省略することができ、染色工程で発生する汚れ欠点を排除することができる貼布剤用布帛およびその製造方法および貼布剤が提供され、その工業的価値は極めて大である。