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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】手術用ロボット
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/35 20160101AFI20220928BHJP
   A61B 17/29 20060101ALI20220928BHJP
   B25J 18/06 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
A61B34/35
A61B17/29
B25J18/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017526786
(86)(22)【出願日】2015-07-09
(86)【国際出願番号】 JP2015003487
(87)【国際公開番号】W WO2017006376
(87)【国際公開日】2017-01-12
【審査請求日】2018-06-14
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構「未来医療を実現する先端医療機器・システム研究開発 先端医療機器の開発 高い安全性と更なる低侵襲化及び高難度治療を可能にする軟性内視鏡手術システムの研究開発」の委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514063179
【氏名又は名称】株式会社メディカロイド
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅 和俊
【合議体】
【審判長】村上 聡
【審判官】倉橋 紀夫
【審判官】栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/157001(WO,A1)
【文献】特開2010-227600(JP,A)
【文献】特表2013-510664(JP,A)
【文献】国際公開第2014/069003(WO,A1)
【文献】特開2012-120884(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0144656(US,A1)
【文献】特開2008-284214(JP,A)
【文献】特表2012-531943(JP,A)
【文献】国際公開第2015/093602(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/35
A61B 17/00 - 17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1モータを含む手首関節駆動部、第2モータを含むエンドエフェクタ駆動部および第3モータを含む曲げ関節駆動部を含むロボット本体駆動機構と、ロボット本体と、を備えており、
前記ロボット本体は、
前記ロボット本体駆動機構に着脱可能に固定されるベースと、
手術時に近位端が患者の体外において前記ベースに連なる可撓性を有しており関節を備えていない中空の筒状体からなる可撓性シャフト、手術時に前記患者の体内において、近位端が前記可撓性シャフトの遠位端に連なって配置され、その軸線と直交する方向に曲げ動作可能である曲げ関節および前記曲げ関節の遠位端に連なって配置され、前記曲げ関節の遠位端の軸線周りに回動する手首関節を有するアームと、
前記手首関節に取り付けられたエンドエフェクタと、
前記可撓性シャフトに挿通されて遠位端が前記手首関節に取り付けられている中空の可撓性を有するトルク伝達チューブを有する手首関節駆動力伝達部と、
前記トルク伝達チューブに挿通され、遠位端が前記エンドエフェクタに取り付けられているエンドエフェクタ操作ケーブルと、
前記第モータの駆動力によって前記エンドエフェクタ操作ケーブルを前記エンドエフェクタ操作ケーブルの延在方向に移動させるエンドエフェクタ駆動力伝達部と、
遠位端が前記曲げ関節に取り付けられており、前記可撓性シャフトと前記トルク伝達チューブとの間の空間に挿通されている曲げ関節操作ケーブルと、
前記第3モータの駆動力によって前記曲げ関節操作ケーブルを前記曲げ関節操作ケーブルの延在方向に移動させる曲げ関節駆動力伝達部と、を備え、
前記手首関節駆動部は、前記ベースを前記ロボット本体駆動機構に取り付けることによって、前記手首関節駆動力伝達部と接続され、前記第モータの駆動力により前記トルク伝達チューブを該トルク伝達チューブの軸線周りに回動させるように構成され、且つ前記ベースを前記ロボット本体駆動機構から取り外すことによって、前記手首関節駆動力伝達部と切り離されるように構成されており、
前記エンドエフェクタは、前記エンドエフェクタ操作ケーブルが前記エンドエフェクタ操作ケーブルの延在方向に移動することによって動作するように構成され、
前記エンドエフェクタ駆動部は、前記ベースを前記ロボット本体駆動機構に取り付けることによって、前記エンドエフェクタ駆動力伝達部と接続され、前記第モータの駆動力により前記エンドエフェクタ操作ケーブルを移動させるように構成され、且つ前記ベースを前記ロボット本体駆動機構から取り外すことによって、前記エンドエフェクタ駆動力伝達部と切り離されるように構成されており、
前記曲げ関節は、前記曲げ関節操作ケーブルが前記曲げ関節操作ケーブルの延在方向に移動することによって曲げ動作を行うように構成され、
前記曲げ関節駆動力伝達部は、前記ベースを前記ロボット本体駆動機構に取り付けることによって、前記曲げ関節駆動部と接続され、前記第3モータの駆動力により前記曲げ関節操作ケーブルを移動させるように構成され、且つ前記ベースを前記ロボット本体駆動機構から取り外すことによって、前記曲げ関節駆動部と切り離されるように構成されている、手術用ロボット。
【請求項2】
前記エンドエフェクタ駆動力伝達部は、その回動によって前記エンドエフェクタ操作ケーブルを前記エンドエフェクタ操作ケーブルの延在方向に移動させるエンドエフェクタ操作ケーブル牽引プーリを含む、請求項1に記載の手術用ロボット。
【請求項3】
前記手首関節駆動部は、駆動軸の回転によって回転する駆動側手首関節駆動回動体を有し、
前記エンドエフェクタ駆動部は、駆動軸の回転によって回転する駆動側エンドエフェクタ駆動回動体を有し、
前記手首関節駆動力伝達部は、前記トルク伝達チューブの近位端に固定され、前記トルク伝達チューブの近位端の軸線周りに回動可能に前記ベースに支持され、内部空間が前記トルク伝達チューブの内部空間と連通する中空の連結部と、該連結部に固定され、前記トルク伝達チューブの近位端の軸線上に延在する貫通孔を有し、前記ベースを前記ロボット本体駆動機構に取り付けることによって前記駆動側手首関節駆動回動体と接続される従動側手首関節駆動回動体と、を有し、
前記エンドエフェクタ駆動力伝達部は、前記連結部の内部空間に配設され、その回動によって前記エンドエフェクタ操作ケーブルを前記エンドエフェクタ操作ケーブルの延在方向に移動させるエンドエフェクタ操作ケーブル牽引プーリと、前記エンドエフェクタ操作ケーブル牽引プーリに固定され、前記トルク伝達チューブの近位端の軸線周りに回動可能に前記ベースに支持され、前記従動側手首関節駆動回動体の貫通孔に挿通されている回動軸と、前記回動軸に固定され、前記ベースを前記ロボット本体駆動機構に取り付けることによって、前記駆動側エンドエフェクタ駆動回動体と接続される従動側エンドエフェクタ駆動回動体と、を有する、請求項1に記載の手術用ロボット。
【請求項4】
前記エンドエフェクタは、鉗子である、請求項1乃至3の何れかに記載の手術用ロボット。
【請求項5】
前記手術用ロボットは、複数の前記ロボット本体駆動機構と、複数の前記ロボット本体と、前記複数の前記ロボット本体の複数の前記シャフトを集束する集束菅と、を備える、請求項1乃至4の何れかに記載の手術用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
低侵襲手術に用いることができるマニピュレータシステムであって、マニピュレータをマニピュレータ本体から取り外すことができるマニピュレータシステムが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このマニピュレータシステムは、アームを介してマピュレータ本体に取り付け可能なマニピュレータを有する。マニピュレータは、縫合糸や針等を把持する把持部(術具)と、先端部と、先端部とともに第2関節を形成する中間部と、筒部を有し、中間部とともに第1関節を形成する根元部とを有する。そして、アームは、筒部を筒部の軸回りに回転させる機構を有する。そして、筒部を筒部の軸周りに回転させることによって、把持部を筒部の軸回りに回転させることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-122286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、把持部で縫合糸を掴む動作を行うとき、把持部の開閉方向を縫合糸の延在方向と直交する方向に合わせる必要があり、このため、把持部の軸線周りの把持部の角度位置を調整する必要がある。しかし、特許文献1に記載のマニピュレータシステムは、把持部の開閉方向を変更するには、筒部の軸回りにマニピュレータ全体を回転させる必要があり、特に第1関節及び第2関節を屈曲させている状態など、筒部の軸線と把持部の軸線とが一致していない状態においては、把持部が筒部の軸を中心とする円周方向に大きく移動してしまい、操作性が悪いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のある態様に係る手術用ロボットは、第1モータを含む手首関節駆動部、第2モータを含むエンドエフェクタ駆動部および第3モータを含む曲げ関節駆動部を含むロボット本体駆動機構と、ロボット本体と、を備えており、前記ロボット本体は、前記ロボット本体駆動機構に着脱可能に固定されるベースと、手術時に近位端が患者の体外において前記ベースに連なる可撓性を有しており関節を備えていない中空の筒状体からなる可撓性シャフト、手術時に前記患者の体内において、近位端が前記可撓性シャフトの遠位端に連なって配置され、その軸線と直交する方向に曲げ動作可能である曲げ関節および前記曲げ関節の遠位端に連なって配置され、前記曲げ関節の遠位端の軸線周りに回動する手首関節を有するアームと、前記手首関節に取り付けられたエンドエフェクタと、前記可撓性シャフトに挿通されて遠位端が前記手首関節に取り付けられている中空の可撓性を有するトルク伝達チューブを有する手首関節駆動力伝達部と、前記トルク伝達チューブに挿通され、遠位端が前記エンドエフェクタに取り付けられているエンドエフェクタ操作ケーブルと、前記第モータの駆動力によって前記エンドエフェクタ操作ケーブルを前記エンドエフェクタ操作ケーブルの延在方向に移動させるエンドエフェクタ駆動力伝達部と、遠位端が前記曲げ関節に取り付けられており、前記可撓性シャフトと前記トルク伝達チューブとの間の空間に挿通されている曲げ関節操作ケーブルと、前記第3モータの駆動力によって前記曲げ関節操作ケーブルを前記曲げ関節操作ケーブルの延在方向に移動させる曲げ関節駆動力伝達部と、を備え、前記手首関節駆動部は、前記ベースを前記ロボット本体駆動機構に取り付けることによって、前記手首関節駆動力伝達部と接続され、前記第モータの駆動力により前記トルク伝達チューブを該トルク伝達チューブの軸線周りに回動させるように構成され、且つ前記ベースを前記ロボット本体駆動機構から取り外すことによって、前記手首関節駆動力伝達部と切り離されるように構成されており、前記エンドエフェクタは、前記エンドエフェクタ操作ケーブルが前記エンドエフェクタ操作ケーブルの延在方向に移動することによって動作するように構成され、前記エンドエフェクタ駆動部は、前記ベースを前記ロボット本体駆動機構に取り付けることによって、前記エンドエフェクタ駆動力伝達部と接続され、前記第モータの駆動力により前記エンドエフェクタ操作ケーブルを移動させるように構成され、且つ前記ベースを前記ロボット本体駆動機構から取り外すことによって、前記エンドエフェクタ駆動力伝達部と切り離されるように構成されており、前記曲げ関節は、前記曲げ関節操作ケーブルが前記曲げ関節操作ケーブルの延在方向に移動することによって曲げ動作を行うように構成され、前記曲げ関節駆動力伝達部は、前記ベースを前記ロボット本体駆動機構に取り付けることによって、前記曲げ関節駆動部と接続され、前記第3モータの駆動力により前記曲げ関節操作ケーブルを移動させるように構成され、且つ前記ベースを前記ロボット本体駆動機構から取り外すことによって、前記曲げ関節駆動部と切り離されるように構成されている。
【0007】
この構成によれば、ベースをロボット本体駆動機構から取り外し、駆動力伝達機構とロボット本体駆動機構とを切り離すことができるように構成されているので、患者に接触するロボット本体をロボット本体駆動機構から取り外し、ロボット本体の滅菌処理を行うことができる。したがって、手術用ロボットの滅菌処理作業を効率的に行うことができる。
【0008】
また、ベースをロボット本体駆動機構に取り付けることによって、手首関節駆動部は、トルク伝達チューブの近位端と接続され、トルク伝達チューブをトルク伝達チューブの軸線周りに回動させることができる。これによって、アームの遠位端に設けられたエンドエフェクタをアームの遠位端の軸線周りに回動させることができる。よって、アームが曲がっている状態においても、前記エンドエフェクタのアームの遠位端の軸線周りの角度位置を変更することができ、手術用ロボットの操作性を向上させることができる。
【0010】
更に、シャフト及びトルク伝達チューブを曲げて、患者の臓器等を迂回し、エンドエフェクタを処置部位の近傍に導入することができる。また、手首関節を精確に回転させることができる。また、前記エンドエフェクタのアームを曲げ、手術用ロボットの操作性を向上させることができる。更に、エンドエフェクタの動作及び手首関節の動作から独立して曲げ関節を動作させることができる。
【0011】
前記エンドエフェクタ駆動力伝達部は、その回動によって前記エンドエフェクタ操作ケーブルを前記エンドエフェクタ操作ケーブルの延在方向に移動させるエンドエフェクタ操作ケーブル牽引プーリを含んでいてもよい。
【0012】
この構成によれば、シャフトを曲げることによってエンドエフェクタ操作ケーブルが動かされ、エンドエフェクタが動作することを防止することができる。
【0013】
前記手首関節駆動部は、駆動軸の回転によって回転する駆動側手首関節駆動回動体を有し、前記エンドエフェクタ駆動部は、駆動軸の回転によって回転する駆動側エンドエフェクタ駆動回動体を有し、前記手首関節駆動力伝達部は、前記トルク伝達チューブの近位端
に固定され、前記トルク伝達チューブの近位端の軸線周りに回動可能に前記ベースに支持され、内部空間が前記トルク伝達チューブの内部空間と連通する中空の連結部と、該連結部に固定され、前記トルク伝達チューブの近位端の軸線上に延在する貫通孔を有し、前記ベースを前記ロボット本体駆動機構に取り付けることによって前記駆動側手首関節駆動回動体と接続される従動側手首関節駆動回動体と、を有し、前記エンドエフェクタ駆動力伝達部は、前記連結部の内部空間に配設され、その回動によって前記エンドエフェクタ操作ケーブルを前記エンドエフェクタ操作ケーブルの延在方向に移動させるエンドエフェクタ操作ケーブル牽引プーリと、前記エンドエフェクタ操作ケーブル牽引プーリに固定され、前記トルク伝達チューブの近位端の軸線周りに回動可能に前記ベースに支持され、前記従動側手首関節駆動回動体の貫通孔に挿通されている回動軸と、前記回動軸に固定され、前記ベースを前記ロボット本体駆動機構に取り付けることによって、前記駆動側エンドエフェクタ駆動回動体と接続される従動側エンドエフェクタ駆動回動体と、を有していてもよい。
【0014】
この構成によれば、従動側鉗子駆動回動体及び従動側手首関節駆動回動体を同時に回転させることによって、エンドエフェクタを動作させることなく、エンドエフェクタのアームの遠位端の軸線周りの角度位置を変更することができる。
【0015】
また、駆動側鉗子駆動回動体及び従動側手首関節駆動回動体は、同一軸線上に配設されているので、ベースをコンパクトに構成することができる。
【0020】
前記エンドエフェクタは、鉗子であってもよい。
【0021】
この構成によれば、対象物の把持を行う作業に手術用ロボットを適用することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、手術用ロボットの操作性を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態に係る手術用ロボットを備える手術用ロボットシステムの構成例を概略的に示す図である。
図2図1の手術用ロボットの手術用ロボットの構成例を示す図である。
図3図1の手術用ロボットのロボット本体の近位端及びロボット本体駆動機構の構成例を示す斜視図である。
図4図1の手術用ロボットのロボット本体の近位端の構成例を示す断面図である。
図5図1の手術用ロボットのロボット本体の近位端の構成例を示すA-A矢視図である。
図6A図1の手術用ロボットのロボット本体の遠位端の構成例を示す図であり、ロボット本体の関節部を真っ直ぐに伸ばした状態を示す図である。
図6B図1の手術用ロボットのロボット本体の遠位端の構成例を示す図であり、ロボット本体の関節部を曲げた状態を示す図である。
図7図1の手術用ロボットのロボット本体の手首関節の構成例を示す一部破断図である。
図8A図1の手術用ロボットのロボット本体の遠位端の構成例を示す図であり、第1曲げ関節操作ケーブルの構成例を示す図である。
図8B図1の手術用ロボットのロボット本体の遠位端の構成例を示す図であり、第2曲げ関節操作ケーブルの構成例を示す図である。
図9A図1の手術用ロボットのロボット本体の遠位端の構成例を示すB-B矢視図である。
図9B図1の手術用ロボットのロボット本体の遠位端の構成例を示すC-C矢視図である。
図10図1の手術用ロボットの制御系統の構成例を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、全ての図を通じて、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態に係る手術用ロボット1を備える手術用ロボットシステム100の構成例を概略的に示す図である。図2は、手術用ロボット1の構成例を示す図である。
【0026】
図1に示すように、手術用ロボットシステム100は、術者Wが手術台111上の患者Pの体内に挿入した手術用ロボット1の遠位端に設けられた術具を外部から遠隔的に操作することによって、低侵襲手術を行うシステムである。
【0027】
手術用ロボットシステム100は、例えば、1以上の手術用ロボット1と、内視鏡101と、を備える。
【0028】
手術用ロボット1は、手術台111に取り付けられた手術用ロボット支持台113に支持されている。そして、手術用ロボット1は、細長く形成されたアームを有し、アームの遠位端に術具を有する。そして、この術具によって、患者Pの体内の処置部位の処置を行う。本実施の形態において、手術用ロボット1は、アームの遠位端に鉗子を有するロボットである。しかし、アームの遠位端の術具は鉗子に限られるものではなく、種々の術具を適用することができる。
【0029】
内視鏡101は、術者Wが患者Pの体内を視認するためのものであり、遠位端にビデオカメラ及び照明を有する。そして、内視鏡101のビデオカメラによって撮影した画像は、表示装置114に表示される。これによって、術者Wは、患者Pの体内に位置するアームの遠位端及び術具の状態、並びに処置部位の状態を視認しながら、手術用ロボット1を操作し、手術を行うことができる。
【0030】
そして、図2に示すように、手術用ロボット1は、集束管102に挿入され、集束される。集束管102は、可撓性を有し、中空の筒状に形成されている。
【0031】
[ロボット本体の構成例]
図3は、ロボット本体2の近位端及びロボット本体駆動機構51の構成例を示す斜視図である。図4は、ロボット本体2の近位端の構成例を示す断面図である。図5は、ロボット本体2の近位端の構成例を示すA-A矢視図である。
【0032】
図2に示すように、手術用ロボット1は、ロボット本体2と、駆動部3と、制御器4(図1参照)と、操作部5(図1参照)とを備える。また、本実施の形態において、手術用ロボット1は、案内管6を備える。
【0033】
ロボット本体2は、ベース23と、近位端21aがベース23に連なるアーム21と、アーム21の遠位端21bに設けられたエンドエフェクタ(鉗子)22と、駆動力伝達機構24と、を有する。なお、「連なる」とは、2つのものが直接接続されている場合のみならず、2つのものの間に他のものが介在し、間接的に接続されている場合も含む。
【0034】
ベース23は、駆動部3の後述するロボット本体駆動機構51に着脱可能に固定される。これによって、ロボット本体2を駆動部3に連結することができる。図3及び図4に示すように、ベース23は、筒状に形成された筒状部75と、筒状部75のベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けた状態におけるロボット本体駆動機構51側(駆動部3側)の周縁に取り付けられた駆動部側端板76と、筒状部75のアーム21側の周縁に取り付けられたアーム側端板77と、を有する。
【0035】
筒状部75は、アーム21の後述するトルク伝達チューブ44の近位端44aの軸線L1方向に延在するようにアーム21に連なっている。図4に示すように、筒状部75の内部には、支持部75aが設けられている。支持部75aは、図4の手前方向及び奥行き方向に伸びる棒状体であり、両端部は支持部75aの内周面に固定されている。そして、支持部75aは、後述する連結部70の一方の端部を支持している。
【0036】
駆動部側端板76は、駆動部側端板76の外側面及び内側面を接続する第1貫通孔76aを有する。第1貫通孔76aは、後述する軸線L3上に形成されている。第1貫通孔76aには、内部に後述する従動側第1曲げ関節駆動回動体62が配置されている。また、駆動部側端板76は、駆動部側端板76の外側面及び内側面を接続する第2貫通孔76bを有する。第2貫通孔76bは、後述する軸線L4上に形成されている。第2貫通孔76bは、内部に後述する従動側第2曲げ関節駆動回動体65が配置されている。第2貫通孔76bは、第1貫通孔76aを軸線L1を中心に略180度回転させた位置に形成されている。
【0037】
更に、駆動部側端板76は、ベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けた状態におけるロボット本体駆動機構51側に突出する中空の突出部76cが形成されている。突出部76cは、軸線L1上に形成されている。すなわち、突出部76cは、第1貫通孔76aと第2貫通孔76bとの間に位置している。突出部76cは、軸線L1を中心とする円周方向に延在する周壁76dを有する。周壁76dの内側の空間は、筒状部75の内部空間と連通している。そして、周壁76dの内側の空間には、後述する従動側エンドエフェクタ駆動回動体68及び従動側手首関節駆動回動体71が配設されている。そして、第1貫通孔76aを軸線L1を中心に略90度回転させた位置と、後述する従動側エンドエフェクタ駆動回動体68及び従動側手首関節駆動回動体71との間の周壁76dは、除去され、当該従動側エンドエフェクタ駆動回動体68及び従動側手首関節駆動回動体71の歯が露出している。また、第2貫通孔76bを軸線L1を中心に略90度回転させた位置と、後述する従動側エンドエフェクタ駆動回動体68及び従動側手首関節駆動回動体71との間の周壁76dは、除去され、当該従動側エンドエフェクタ駆動回動体68及び従動側手首関節駆動回動体71の歯が露出している。
【0038】
また、図4及び図5に示すように、ベース23は、筒状部75の内周面に取り付けられた一対の第1曲げ関節操作ケーブル方向変換プーリ78及び一対の第2曲げ関節操作ケーブル方向変換プーリ79を有する。一対の第1曲げ関節操作ケーブル方向変換プーリ78は、後述する第1曲げ関節操作ケーブル41の延在方向を、変更するプーリである。第2曲げ関節操作ケーブル方向変換プーリ79は、後述する第2曲げ関節操作ケーブル42の延在方向を、変更するプーリである。
【0039】
そして、第1曲げ関節操作ケーブル方向変換プーリ78及び第2曲げ関節操作ケーブル方向変換プーリ79は、軸線L1方向における位置が相違するように配置されている。すなわち、本実施の形態において、第1曲げ関節操作ケーブル方向変換プーリ78は、第2曲げ関節操作ケーブル方向変換プーリ79よりもアーム21側(図4の紙面において左方)に配置されている。
【0040】
図6Aは、ロボット本体2の遠位端の構成例を示す図であり、関節部26を真っ直ぐに伸ばした状態を示す図である。図6Bは、ロボット本体2の遠位端の構成例を示す図であり、関節部26を曲げた状態を示す図である。
【0041】
図4図5図6A、及び図6Bに示すように、アーム21は、中空の可撓シャフト(シャフト)25と、関節部26とを有する。
【0042】
可撓シャフト25は、例えば、可撓性を有する筒状体である。そして、図4に示すように、可撓シャフト25の近位端25aは、ベース23のアーム側端板77に取り付けられ、固定されている。すなわち、可撓シャフト25の近位端25aは、ベース23に連なっている。そして、可撓シャフト25の内部空間は、ベース23の内部空間と連通している。
【0043】
図6A及び図6Bに示すように、関節部26は、近位端(第1曲げ関節27の近位端27a)が可撓シャフト25の遠位端25bに連なる。関節部26は、中空の筒状体であり、内部空間は、可撓シャフト25の内部空間と連通している。
【0044】
本実施の形態において、関節部26は、第1曲げ関節27と、第2曲げ関節28と、接続部29と、手首関節30とを有する。第1曲げ関節27と、第2曲げ関節28と、接続部29と、手首関節30とは、同一軸線上に配設されている。関節部26は、外周面が図示しないカバーによって覆われ、可撓シャフト25と略同一の径を有する。
【0045】
第1曲げ関節27は、中空の筒状体であり、近位端27aが可撓シャフト25の遠位端25bに連なるように取り付けられている。
【0046】
図9Aは、ロボット本体2の遠位端の構成例を示すB-B矢視図である。図9Bは、ロボット本体2の遠位端の構成例を示すC-C矢視図である。
【0047】
第1曲げ関節27は、関節部26の軸線方向に一列に連なった複数のコマ部材31を有する。コマ部材31は、関節部26の軸線方向に延在する円柱状に形成されている。そして、コマ部材31は、コマ部材31の軸線及び後述する第1曲げ関節27の曲げ方向と直交する方向から見て(すなわち、後述するピン31fの延在方向から見て)、コマ部材31の軸線から離れるに従ってコマ部材31の軸線方向の厚さ寸法が小さくなるテーパー状に形成されている。すなわち、コマ部材31は、図6Aにおいて、上方及び下方に向かうに従って薄くなるように形成されている。これによって、第1曲げ関節27を曲げたときにコマ部材31の端面と当該端面に対峙する隣接するコマ部材31の端面との干渉を回避している。
【0048】
そして、図9A及び図9Bに示すように、コマ部材31は、第1挿通孔31aと、一対の第2挿通孔31bと、一対の第3挿通孔31cとを有する。
【0049】
第1挿通孔31aは、コマ部材31の軸線上に形成され、後述するトルク伝達チューブ44が挿通されている。そして、一列に連なった複数のコマ部材31の第1挿通孔31aがアーム21の延在方向に延在する第1経路R1を構成している。
【0050】
一対の第2挿通孔31bは、コマ部材31の両端面を接続し、コマ部材31の軸線と平行に延在している。一対の第2挿通孔31bのうち一方は、コマ部材31の軸線及び後述する第1曲げ関節27の曲げ方向と直交する方向から見て(すなわち、後述するピン31fの延在方向から見て)、コマ部材31の軸線に対して一対の第2挿通孔31bのうち他方が位置する側と反対側に位置している。すなわち、図6Aにおいて、一対の第2挿通孔31bのうち一方は、後述するピン31fよりも上方に形成され、他方は後述するピン31fよりも下方に形成されている。そして、後述する第1曲げ関節操作ケーブル41の両端部が一対の第2挿通孔31bにそれぞれ挿通されている。そして、一列に連なった複数のコマ部材31の一対の第2挿通孔31bがアーム21の延在方向に延在する一対の第2経路R2を構成している。したがって、一対の第2経路R2のうち一方は、後述するピン31fの延在方向から見て、コマ部材31の軸線に対して一対の第2経路R2のうち他方が位置する側と反対側に位置している。
【0051】
一対の第3挿通孔31cは、コマ部材31の両端面を接続し、コマ部材31の軸線と平行に延在している。一対の第3挿通孔31cのうち一方は、コマ部材31の軸線及び後述する第1曲げ関節27の曲げ方向と直交する方向から見て、コマ部材31の軸線に対して一対の第3挿通孔31cのうち他方が位置する側と反対側に位置している。すなわち、図6Aにおいて、一対の第3挿通孔31cのうち一方は、後述するピン31fよりも上方に形成され、他方は後述するピン31fよりも下方に形成されている。そして、後述する第2曲げ関節操作ケーブル42の両端部が一対の第3挿通孔31cにそれぞれ挿通されている。そして、一列に連なった複数のコマ部材31の一対の第3挿通孔31cがアーム21の延在方向に延在する一対の第3経路R3を構成している。したがって、一対の第3経路R3のうち一方は、後述するピン31fの延在方向から見て、コマ部材31の軸線に対して一対の第3経路R3のうち他方が位置する側と反対側に位置している。
【0052】
また、コマ部材31の一方の端面からコマ部材31の延在方向外側に向かって突出する一対の第1突出部31dが形成され、更に、コマ部材31の他方の端面からコマ部材31の延在方向外側に向かって突出する一対の第2突出部31eが形成されている。一対の第1突出部31dと隣り合うコマ部材31の一対の第2突出部31eとは、一直線上に並ぶ一対のピン31fによって連結されている。これによって、各コマ部材31は、隣接するコマ部材31に対して一対のピン31fの軸線(揺動軸線)周りに揺動可能に連結されている。そして、コマ部材31の各揺動軸線は互いに平行となるように構成され、第1曲げ関節27は、コマ部材31の軸線及び揺動軸線と直交する方向(以下、曲げ方向ともいう。)に第1曲げ関節27の遠位端27bが向かうように曲げ動作を行うように構成されている。なお、図6Aにおいて、コマ部材31の軸線とは紙面の左右方向に延在する軸線であり、揺動軸線とは紙面の奥行方向に延在する軸線である。
【0053】
上述の通り、一対の第2経路R2のうち一方は、後述するピン31fの延在方向から見て、コマ部材31の軸線に対して一対の第2経路R2のうち他方が位置する側と反対側に位置しているので、第1曲げ関節27が曲げ動作を行うと一対の第2経路R2のうち曲げ方向内側に位置する第2経路R2の経路長は短くなり、曲げ方向外側に位置する第2経路R2は長くなる。同様に、一対の第3経路R3のうち一方は、後述するピン31fの延在方向から見て、コマ部材31の軸線に対して一対の第3経路R3のうち他方が位置する側と反対側に位置しているので、第1曲げ関節27が曲げ動作を行うと一対の第3経路R3のうち曲げ方向内側に位置する第3経路R3の経路長は短くなり、曲げ方向外側に位置する第3経路R3は長くなる。
【0054】
第2曲げ関節28は、第1曲げ関節27と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0055】
接続部29は、中空の筒状体であり、第1曲げ関節27と第2曲げ関節28とを接続している。
【0056】
手首関節30は、エンドエフェクタ22をアーム21の遠位端21bの軸線L2周りに回転させる。手首関節30は、アーム21の軸線(関節部26の軸線)と直交する平面上に延在する板状体であり、中央部に手首関節30の近位端側の面と遠位端側の面を接続する貫通孔30aが設けられている。貫通孔30aは、後述するエンドエフェクタ操作ケーブル43が挿通される孔であり、アーム21の遠位端21bの軸線上に形成されている。そして、手首関節30は、図示しない軸受けを介して、第2曲げ関節28の遠位端28bに連なるように取り付けられている。したがって、手首関節30は、可撓シャフト25、第1曲げ関節27、及び第2曲げ関節28に対して、アーム21の遠位端21bの軸線L2周りに回動可能に構成されている。
【0057】
また、手首関節30の近位端側の面であって、貫通孔30aの周縁部には、後述するトルク伝達チューブ44の遠位端44bが固定されている(図7参照)。
【0058】
エンドエフェクタ22は、術具であり、本実施の形態において、鉗子である。エンドエフェクタ22は、手首関節30の遠位端側の面に取り付けられている。すなわち、エンドエフェクタ22は、関節部26の遠位端(第2曲げ関節28の遠位端28b)に連なる。
【0059】
また、エンドエフェクタ22は、操作ケーブル連結部を有する図示しない開閉動作作動機構を備える。操作ケーブル連結部は、後述するエンドエフェクタ操作ケーブル43の遠位端43bが連結される部分である。エンドエフェクタ22の開閉動作作動機構は、操作ケーブル連結部が所定方向に動かされると、その移動量に応じて鉗子を所定量開閉する機構である。また、操作ケーブル連結部は、図示しない付勢機構によって、エンドエフェクタ操作ケーブル43の近位端43aから遠位端43bに向かう方向に付勢されている。これによって、エンドエフェクタ操作ケーブル43を遠位端43bから近位端43aに向かう方向に牽引すると、操作ケーブル連結部は、上記付勢機構の付勢力に抗してエンドエフェクタ操作ケーブル43の遠位端43bの移動方向に動かされ、例えば閉動作を行い、対象物の把持動作を行う。また、エンドエフェクタ操作ケーブル43を近位端43aから遠位端43bに向かう方向に送り出すと、エンドエフェクタ操作ケーブル43は撓むが、付勢機構がこの撓みを吸収するように、操作ケーブル連結部を上記エンドエフェクタ操作ケーブル43の遠位端43bの移動方向とは反対方向に移動させ、例えば開動作を行い、対象物の解放動作を行う。
【0060】
このように、アーム21の近位端21aから遠位端21bまでの内部空間は連通しており、内部に後述する駆動力伝達機構24の第1曲げ関節操作ケーブル41、第2曲げ関節操作ケーブル42、エンドエフェクタ操作ケーブル43、及びトルク伝達チューブ44が挿通されている。
【0061】
駆動力伝達機構24は、駆動部3の後述するロボット本体駆動機構51の駆動力を可撓シャフト25の遠位端25bに連なる機構、すなわち第1曲げ関節27、第2曲げ関節28、手首関節30、及びエンドエフェクタ22に伝達する機構である。図4に示すように、駆動力伝達機構24は、第1曲げ関節駆動力伝達部45と、第2曲げ関節駆動力伝達部46と、エンドエフェクタ駆動力伝達部47と、手首関節駆動力伝達部48と、を有する。
【0062】
第1曲げ関節駆動力伝達部45は、駆動部3の後述する第1曲げ関節駆動部35(図3参照)の駆動力を第1曲げ関節27に伝達する機構である。第1曲げ関節駆動力伝達部45は、第1曲げ関節操作ケーブル41と、第1回動軸63と、第1曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ61と、従動側第1曲げ関節駆動回動体62と、を有する。第1回動軸63、第1曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ61、及び従動側第1曲げ関節駆動回動体62は、ベース23の内部に設けられている。
【0063】
図8Aは、ロボット本体2の遠位端の構成例を示す図であり、第1曲げ関節操作ケーブル41の構成例を示す図である。
【0064】
第1曲げ関節操作ケーブル41は、図8Aに示すように、両端部41bが第1曲げ関節27の遠位端27bに位置するコマ部材31に固定されている。
【0065】
そして、第1曲げ関節操作ケーブル41は、一方の端部41bから中間部41aに向かって延びる部分が、第1曲げ関節27の一対の第2経路R2のうち一方、及び可撓シャフト25の内部空間を通り、ベース23の内部空間まで延びている。そして、図4及び図5に示すように、ベース23の内部空間において、第1曲げ関節操作ケーブル41は、一対の第1曲げ関節操作ケーブル方向変換プーリ78の一方に巻き掛けられ、この巻き掛けられた部分から中間部41aに亘る部分は、軸線L1と直交する仮想の平面上において延在している。
【0066】
また、他方の端部41bから中間部41aに向かって延びる部分が、第1曲げ関節27の一対の第2経路R2のうち他方、及び可撓シャフト25の内部空間を通り、ベース23の内部空間まで延びている。そして、ベース23の内部空間において、第1曲げ関節操作ケーブル41は、一対の第1曲げ関節操作ケーブル方向変換プーリ78の他方に巻き掛けられ、この巻き掛けられた部分から中間部41aに亘る部分は、前記軸線L1と直交する平面と同一の仮想の平面上において延在している。
【0067】
第1回動軸63は、軸線L1と平行な軸線L3方向に延在する軸であり、両端部が軸受けを介してベース23に取り付けられ、ベース23に対して軸線L3周りに回動可能に支持されている。
【0068】
第1曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ61は、その回動によって第1曲げ関節操作ケーブル41を第1曲げ関節操作ケーブル41の延在方向に移動させる。本実施の形態において、第1曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ61は、第1曲げ関節操作ケーブル41の一対の第1曲げ関節操作ケーブル方向変換プーリ78に巻き掛けられた部分から中間部42aに亘る部分が延在する仮想の平面上に配設されている。そして、第1曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ61は、第1回動軸63の端部のうち、ベース23のアーム側端板77側に位置する端部に固定され、第1回動軸63と一体的に軸線L3回りに回動可能に構成されている。第1曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ61には、第1曲げ関節操作ケーブル41の中間部41aが巻き掛けられ、固定されている。これによって、第1曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ61による第1曲げ関節操作ケーブル41の駆動を円滑に行うことができる。
【0069】
従動側第1曲げ関節駆動回動体62は、第1回動軸63の端部のうち、駆動部側端板76側に位置する端部に固定され、駆動部側端板76の第1貫通孔76aに位置している。従動側第1曲げ関節駆動回動体62は、円板状に形成され、ベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けた状態におけるロボット本体駆動機構51に対峙する面には従動側係合部62aが設けられている。従動側係合部62aは、後述する駆動側第1曲げ関節回動体91の駆動側係合部91a(図3参照)と係合する部分である。本実施の形態において、従動側係合部62aは、軸線L1方向に突出する2つの突起である。そして、後述する第1曲げ関節駆動部35の駆動力によって、従動側第1曲げ関節駆動回動体62が所定の回転方向に回転すると、従動側第1曲げ関節駆動回動体62及び第1曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ61が一体的に所定の回転方向に回転し、第1曲げ関節操作ケーブル41の中間部41aから何れか一方の端部41bに亘る部分が牽引され、当該一方の端部41bがアーム21の近位端21aに向かって移動する。これによって、第1曲げ関節27の一対の第2経路R2のうち、第1曲げ関節操作ケーブル41の中間部41aから前記一方の端部41b側の部分が挿通されている一方の経路長が短くなり、第1曲げ関節27は、当該一方の第2経路R2が位置する側に曲がるように曲げ動作を行う。また、第1曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ61の回動によって、第1曲げ関節操作ケーブル41の中間部41aから他方の端部41bに亘る部分は送り出され、一対の第2経路R2のうち経路長が長くなった他方の経路に送り込まれる。また、後述する第1曲げ関節駆動部35の駆動力によって、従動側第1曲げ関節駆動回動体62が上記所定の回転方向とは反対方向に回転すると、第1曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ61が上記所定の回転方向とは反対方向に回転し、第1曲げ関節操作ケーブル41の中間部41aから他方の端部41bに亘る部分が牽引され、当該他方の端部41bがアーム21の近位端21aに向かって移動する。これによって、第1曲げ関節27の一対の第2経路R2のうち、第1曲げ関節操作ケーブル41の中間部41aから前記他方の端部41bが挿通されている他方の経路長が短くなり、第1曲げ関節27は、当該他方の第2経路R2が位置する側に曲がるように曲げ動作を行う。また、第1曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ61の回動によって、第1曲げ関節操作ケーブル41の中間部41aから一方の端部41bに亘る部分は送り出され、経路長が長くなった一対の第2経路R2のうち一方の経路に送り込まれる。
【0070】
第2曲げ関節駆動力伝達部46は、駆動部3の後述する第2曲げ関節駆動部36(図3参照)の駆動力を第2曲げ関節28に伝達する機構である。第2曲げ関節駆動力伝達部46は、第2曲げ関節操作ケーブル42と、第2回動軸66と、第2曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ64と、従動側第2曲げ関節駆動回動体65と、を有する。第2回動軸66、第2曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ64、及び従動側第2曲げ関節駆動回動体65は、ベース23の内部に設けられている。
【0071】
図8Bは、ロボット本体2の遠位端の構成例を示す図であり、第2曲げ関節操作ケーブル42の構成例を示す図である。
【0072】
第2曲げ関節操作ケーブル42は、図8Bに示すように、両端部42bが第2曲げ関節28の遠位端28bに位置するコマ部材31に固定されている。そして、第2曲げ関節操作ケーブル42は、一方の端部42bから中間部42aに向かって延びる部分が、第2曲げ関節28の一対の第3経路R3のうち一方、接続部29、第1曲げ関節27の一対の第3経路R3のうち一方、及び可撓シャフト25の内部空間を通り、ベース23の内部空間まで延びている。そして、図4及び図5に示すように、ベース23の内部空間において、第2曲げ関節操作ケーブル42は、一対の第2曲げ関節操作ケーブル方向変換プーリ79の一方に巻き掛けられ、この巻き掛けられた部分から中間部42aに亘る部分は、軸線L1と直交する仮想の平面上において延在している。
【0073】
また、他方の端部42bから中間部42aに向かって延びる部分が、第2曲げ関節28の一対の第3経路R3のうち他方、接続部29、第1曲げ関節27の一対の第3経路R3のうち他方、及び可撓シャフト25の内部空間を通り、ベース23の内部空間まで延びている。そして、ベース23の内部空間において、第2曲げ関節操作ケーブル42は、一対の第2曲げ関節操作ケーブル方向変換プーリ79の他方に巻き掛けられ、この巻き掛けられた部分から中間部42aに亘る部分は、前記軸線L1と直交する平面と同一の仮想の平面上において延在している。
【0074】
第2回動軸66は、軸線L1と平行な軸線L4方向に延在する軸であり、両端部が軸受けを介してベース23に取り付けられ、ベース23に対して軸線L4周りに回動可能に支持されている。軸線L4は、軸線L1を中心に軸線L3を略180度回転させた位置に位置する。
【0075】
第2曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ64は、その回動によって第2曲げ関節操作ケーブル42を第2曲げ関節操作ケーブル42の延在方向に移動させる。本実施の形態において、第2曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ64は、第2曲げ関節操作ケーブル42の一対の第2曲げ関節操作ケーブル方向変換プーリ79に巻き掛けられた部分から中間部42aに亘る部分が延在する仮想の平面上に配設されている。そして、第2曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ64は、第2回動軸66の端部のうち、ベース23のアーム側端板77側に位置する端部に固定され、第2回動軸66と一体的に軸線L4回りに回動可能に構成されている。第2曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ64には、第2曲げ関節操作ケーブル42の中間部42aが巻き掛けられ、固定されている。これによって、第2曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ64による第2曲げ関節操作ケーブル42の駆動を円滑に行うことができる。
【0076】
そして、上述の通り、一対の第1曲げ関節操作ケーブル方向変換プーリ78及び一対の第2曲げ関節操作ケーブル方向変換プーリ79は、軸線L1方向における位置が相違するように配置され、第1曲げ関節操作ケーブル41の一対の第1曲げ関節操作ケーブル方向変換プーリ78に巻き掛けられた部分から中間部41aに亘る部分が延在する仮想の平面と、第2曲げ関節操作ケーブル42の一対の第2曲げ関節操作ケーブル方向変換プーリ79に巻き掛けられた部分から中間部42aに亘る部分が延在する仮想の平面とが相違するように構成されている。したがって、第1曲げ関節操作ケーブル41及び第2曲げ関節操作ケーブル42の接触を防止することができる。
【0077】
従動側第2曲げ関節駆動回動体65は、第2回動軸66の端部のうち、駆動部側端板76側に位置する端部に固定され、駆動部側端板76の第2貫通孔76bに位置している。従動側第2曲げ関節駆動回動体65は、円板状に形成され、ベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けた状態におけるロボット本体駆動機構51側に対峙する面には従動側係合部65aが複数設けられている。従動側係合部65aは、後述する駆動側第2曲げ関節回動体92の駆動側係合部92a(図3参照)と係合する部分である。
【0078】
本実施の形態において、従動側係合部65aは、軸線L1方向に突出する二つの突起である。そして、後述する第2曲げ関節駆動部36の駆動力によって、従動側第2曲げ関節駆動回動体65が所定の回転方向に回転すると、従動側第2曲げ関節駆動回動体65及び第2曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ64が一体的に所定の回転方向に回転し、第2曲げ関節操作ケーブル42の中間部42aから何れか一方の端部42bに亘る部分が牽引され、当該一方の端部42bがアーム21の近位端21aに向かって移動する。これによって、第2曲げ関節28の一対の第3経路R3のうち、第2曲げ関節操作ケーブル42の中間部42aから前記一方の端部42b側の部分が挿通されている一方の経路長が短くなり、第2曲げ関節28は、当該一方の第3経路R3が位置する側に曲がるように曲げ動作を行う。また、第2曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ64の回動によって、第2曲げ関節操作ケーブル42の中間部42aから他方の端部42bに亘る部分は送り出され、一対の第3経路R3のうち経路長が長くなった他方の経路に送り込まれる。
【0079】
また、後述する第2曲げ関節駆動部36の駆動力によって、従動側第2曲げ関節駆動回動体65が上記所定の回転方向とは反対方向に回転すると、第2曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ64が上記所定の回転方向と反対方向に回転し、第2曲げ関節操作ケーブル42の中間部42aから他方の端部42bに亘る部分が牽引され、当該他方の端部42bがアーム21の近位端21aに向かって移動する。これによって、第2曲げ関節28の一対の第3経路R3のうち、第2曲げ関節操作ケーブル42の中間部42aから前記他方の端部42bが挿通されている他方の経路長が短くなり、第2曲げ関節28は、当該他方の第3経路R3が位置する側に曲がるように曲げ動作を行う。また、第2曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ64の回動によって、第2曲げ関節操作ケーブル42の中間部42aから一方の端部42bに亘る部分は送り出され、経路長が長くなった一対の第3経路R3のうち一方の経路に送り込まれる。
【0080】
エンドエフェクタ駆動力伝達部47は、駆動部3の後述するエンドエフェクタ駆動部37(図3参照)の駆動力をエンドエフェクタ22に伝達する機構である。エンドエフェクタ駆動力伝達部47は、エンドエフェクタ操作ケーブル43と、第3回動軸69と、エンドエフェクタ操作ケーブル牽引プーリ67と、従動側エンドエフェクタ駆動回動体68と、を有する。第3回動軸69、エンドエフェクタ操作ケーブル牽引プーリ67、及び従動側エンドエフェクタ駆動回動体68は、ベース23の内部に設けられている。
【0081】
エンドエフェクタ操作ケーブル43は、上述の通り、遠位端43bがエンドエフェクタ22に連結されている。そして、エンドエフェクタ操作ケーブル43は、遠位端43bから近位端43aに向かって延びる部分が、手首関節30の貫通孔30a(図7参照)、及びトルク伝達チューブ44の内部空間(関節部26及び可撓シャフト25の内部空間)を通り、近位端43aが、ベース23の内部空間に位置している。すなわち、エンドエフェクタ操作ケーブル43は、トルク伝達チューブ44に挿通されている。
【0082】
第3回動軸69は、軸線L1方向に伸びる軸であり、ベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けた状態においてロボット本体駆動機構51側に位置する一方の端部は、軸受けを介してベース23の突出部76cに取り付けられ、ベース23に対して軸線L1周りに回動可能に支持されている。また、第3回動軸69の他方の端部よりも一方の端部寄りの部分は、軸受けを介して後述する手首関節駆動力伝達部48の連結部70に取り付けられて支持され、軸線L1周りに回動可能に構成されている。連結部70は、後述する通り、ベース23に対して軸線L1周りに回動可能に構成されているので、第3回動軸69の他方の端部は、連結部70を介して間接的にベース23に取り付けられ、ベース23に対して軸線L1周りに回動可能に支持されている。そして、第3回動軸69の他方の端部は、連結部70の内部に位置している。
【0083】
エンドエフェクタ操作ケーブル牽引プーリ67は、その回動によってエンドエフェクタ操作ケーブル43をエンドエフェクタ操作ケーブル43の延在方向に移動させる。本実施の形態において、エンドエフェクタ操作ケーブル牽引プーリ67は、第3回動軸69の上記他方の端部に固定され、ベース23に対して軸線L1周りに回動可能に構成されている。したがって、エンドエフェクタ操作ケーブル牽引プーリ67は、連結部70の内部空間に配設されている。エンドエフェクタ操作ケーブル牽引プーリ67には、エンドエフェクタ操作ケーブル43の近位端43aが保持され巻き付けられている。したがって、エンドエフェクタ操作ケーブル牽引プーリ67は、その回動によってエンドエフェクタ操作ケーブル43の近位端43aの巻き込み及び巻き戻しを行う。
【0084】
従動側エンドエフェクタ駆動回動体68は、例えば平歯車であり、第3回動軸69の上記一方の端部に固定され、突出部76cの内部に位置している。そして、従動側エンドエフェクタ駆動回動体68の歯は突出部76cの周壁76dが除去された部分から露出している。従動側エンドエフェクタ駆動回動体68は、ベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けた状態において、後述する駆動側エンドエフェクタ駆動回動体94(図3参照)の歯と噛み合い、接続される。そして、後述するエンドエフェクタ駆動部37の駆動力によって、従動側エンドエフェクタ駆動回動体68が所定の回転方向に回転すると、従動側エンドエフェクタ駆動回動体68及びエンドエフェクタ操作ケーブル牽引プーリ67が一体的に所定の回転方向に回転し、エンドエフェクタ操作ケーブル43が牽引される。これによって、エンドエフェクタ22が把持動作を行うように構成されている。また、後述するエンドエフェクタ駆動部37の駆動力によって、従動側エンドエフェクタ駆動回動体68が所定の回転方向とは反対方向に回転すると、エンドエフェクタ操作ケーブル牽引プーリ67が上記所定の回転方向とは反対方向に回転し、エンドエフェクタ操作ケーブル43の近位端43aが送り出される。これによって、エンドエフェクタ22が解放動作を行う。
【0085】
手首関節駆動力伝達部48は、駆動部3の後述する手首関節駆動部38(図3参照)の駆動力を手首関節30に伝達する機構である。手首関節駆動力伝達部48は、トルク伝達チューブ44と、連結部70と、従動側手首関節駆動回動体71と、を有する。連結部70及び従動側手首関節駆動回動体71は、ベース23の内部に設けられている。
【0086】
図7は、手首関節30の構成例を示す一部破断図である。
【0087】
トルク伝達チューブ44は、可撓性を有し、筒状に形成されている。そして、トルク伝達チューブ44は、近位端44aにかかるトルクを任意の方向に向けた遠位端44bに伝達することができるものである。すなわち、トルク伝達チューブ44は、近位端44aを回動させることによって、任意の形状に曲げた中間部分を介して、遠位端44bを近位端44aの回動量に応じて回動させるように構成されている。そして、トルク伝達チューブ44は、図7に示すように、遠位端44bが手首関節30の貫通孔30aの周縁部に固定されている。そして、トルク伝達チューブ44は、遠位端44bから近位端44aに向かって延びる部分が、第2曲げ関節28の第1経路R1、接続部29、第1曲げ関節27の第1経路R1、及び可撓シャフト25の内部空間を通り、近位端44aが、ベース23の内部空間に位置している。
【0088】
なお、上記エンドエフェクタ操作ケーブル43は、エンドエフェクタ22から手首関節30の貫通孔30aを通ってトルク伝達チューブ44の遠位端44bからトルク伝達チューブ44の内部空間に引き込まれ、このトルク伝達チューブ44の内部空間を通ってベース23まで延び、ベース23の内部空間において、トルク伝達チューブ44の近位端44aからトルク伝達チューブ44の外側に引き出されている。したがって、エンドエフェクタ操作ケーブル43は、トルク伝達チューブ44の中心軸又はその近傍に沿って延在している。トルク伝達チューブ44の近位端44aから遠位端44bまでの中心軸沿いの経路長は、アーム21を伸ばした状態と曲げた状態において殆ど変化しないので、アーム21を曲げることによって、エンドエフェクタ操作ケーブル43がその延在方向に動かされ、エンドエフェクタ22が動作することを防止することができる。また、エンドエフェクタ操作ケーブル43が第1曲げ関節操作ケーブル41及び第2曲げ関節操作ケーブル42と接触することを防止することができ、第1曲げ関節操作ケーブル41又は第2曲げ関節操作ケーブル42が動作したときに、予期せずエンドエフェクタ操作ケーブル43が動作することを防止することができる。
【0089】
また、第1曲げ関節操作ケーブル41及び第2曲げ関節操作ケーブル42は、可撓シャフト25とトルク伝達チューブ44との間に位置する空間を通ってベース23まで延びている。したがって、第1曲げ関節操作ケーブル41及び第2曲げ関節操作ケーブル42の動作とエンドエフェクタ操作ケーブル43及びトルク伝達チューブ44の動作とを分離することができる。したがって、エンドエフェクタ22の動作及び手首関節30の動作から独立して第1曲げ関節27及び第2曲げ関節28を動作させることができる。
【0090】
そして、トルク伝達チューブ44の近位端44aと遠位端44bとの間の部分は、可撓性を有しているので、可撓シャフト25と共に曲げることができる。
【0091】
連結部70は、軸線が軸線L1方向に延在する筒状体であり、ベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けた状態においてロボット本体駆動機構51側に位置する一方の端部は、軸受けを介してエンドエフェクタ駆動力伝達部47の第3回動軸69に取り付けられて支持されている。第3回動軸69は、上述の通り、ベース23に対して軸線L1周りに回動可能に構成されているので、連結部70の一方の端部は、第3回動軸69を介して間接的にベース23に取り付けられ、ベース23に対して軸線L1周りに回動可能に支持されている。また、連結部70の他方の端部は、軸受けを介してベース23の支持部75aに取り付けられ、ベース23に対して軸線L1周りに回動可能に支持されている。したがって、連結部70は、ベース23に対して、エンドエフェクタ駆動力伝達部47の動作から独立して軸線L1周りに回動可能に構成されている。
【0092】
そして、連結部70は、上記他方の端部側の周縁にトルク伝達チューブ44の近位端44aが固定され、トルク伝達チューブ44の内部空間及び連結部70の内部空間が連通するように構成されている。そして、連結部70の内部空間において、エンドエフェクタ駆動力伝達部47のエンドエフェクタ操作ケーブル牽引プーリ67に、トルク伝達チューブ44の近位端44aから引き出されたエンドエフェクタ操作ケーブル43が巻き付けられている。そして、連結部70は、連結部70の内周面に取り付けられたエンドエフェクタ操作ケーブル方向変換プーリ72を有する。エンドエフェクタ操作ケーブル方向変換プーリ72は、トルク伝達チューブ44の近位端44aから引き出された部分において軸線L1方向に延在するエンドエフェクタ操作ケーブル43の延在方向を、軸線L1を中心とする径方向に変換するプーリである。これによって、エンドエフェクタ操作ケーブル牽引プーリ67によるエンドエフェクタ操作ケーブル43の巻き込み及び巻き戻しを円滑に行うことができる。
【0093】
従動側手首関節駆動回動体71は、例えば平歯車であり、軸線L1方向において、連結部70と従動側エンドエフェクタ駆動回動体68との間に位置している。そして、従動側手首関節駆動回動体71は、連結部70に固定され、突出部76cの内部に位置している。したがって、従動側手首関節駆動回動体71は、連結部70と共に軸線L1周りに回動可能に構成されている。すなわち、従動側手首関節駆動回動体71は、従動側エンドエフェクタ駆動回動体68と同一軸線上で回動可能に構成されている。したがって、ベース23をコンパクトに構成することができる。そして、従動側手首関節駆動回動体71の歯は周壁76dから露出している。従動側手首関節駆動回動体71は、ベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けた状態において、後述する駆動側手首関節駆動回動体93(図3参照)の歯と噛み合い、接続される。そして、後述する手首関節駆動部38の駆動力によって、従動側手首関節駆動回動体71が所定の回転方向に回転すると、トルク伝達チューブ44の近位端44aが所定の回転方向に回転する。これによって、トルク伝達チューブ44の遠位端44bが従動して所定の回転方向に回転し、手首関節30が所定の回転方向に回転するように構成されている。また、後述する手首関節駆動部38の駆動力によって、従動側手首関節駆動回動体71が上記所定の回転方向とは反対方向に回転すると、トルク伝達チューブ44の近位端44aが上記所定の回転方向とは反対方向に回転する。これによって、トルク伝達チューブ44の遠位端44bが従動して上記所定の回転方向とは反対方向に回転し、手首関節30が上記所定の回転方向とは反対方向に回転するように構成されている。
【0094】
そして、従動側手首関節駆動回動体71は、軸線L1方向に連結部70を貫通して形成された貫通孔71aを有する。貫通孔71aには、第3回動軸69が挿通されている。
【0095】
図2に示すように、案内管6は、可撓性の筒状体であり、可撓シャフト25及び関節部26の径寸法と略同一の内径寸法を有する。また、案内管6の長さ寸法は、可撓シャフト25の長さ寸法よりも短く形成されている。したがって、案内管6の近位端からロボット本体2の遠位端を送り込むことによって、ロボット本体2の遠位端を案内管6の遠位端に向かって送り込むことができる。そして、案内管6は、挿入された各手術用ロボット1及び内視鏡101を案内管6の延在方向に滑らかに動かすことができるように構成され、また、挿入された各手術用ロボット1及び内視鏡101を案内管6の軸線周りに滑らかに回動させることができるように構成されている。
【0096】
本実施の形態において、案内管6は、集束管102と別体であるが、集束管102と一体的に構成されていてもよい。
【0097】
[駆動部の構成例]
図2に示すように、駆動部3は、ロボット本体2を駆動するロボット本体駆動機構51を有する。
【0098】
図3に示すように、ロボット本体駆動機構51は、第1曲げ関節駆動部35、第2曲げ関節駆動部36、手首関節駆動部38、エンドエフェクタ駆動部37、及びこれらを収容する筐体39を有する。第1曲げ関節駆動部35、第2曲げ関節駆動部36、手首関節駆動部38、及びエンドエフェクタ駆動部37は、例えばサーボモータを含む。
【0099】
第1曲げ関節駆動部35は、ベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けることによって、第1曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ61(図4参照)と接続され、第1曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ61を回動させるように構成されている。また、第1曲げ関節駆動部35は、ベース23をロボット本体駆動機構51から取り外すことによって、第1曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ61と切り離されるように構成されている。
【0100】
本実施の形態において、第1曲げ関節駆動部35は、ロボット本体2のベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けた状態において、駆動軸が、ロボット本体2のベース23に向かって伸延し、且つ軸線L3上において延在するように筐体39に対して取り付けられている。そして、第1曲げ関節駆動部35は、駆動軸の先端に駆動側第1曲げ関節回動体91が固定されている。したがって、駆動側第1曲げ関節回動体91は、第1曲げ関節駆動部35の駆動軸の回動によって回動する。駆動側第1曲げ関節回動体91は、円板状に形成され、ロボット本体2のベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けた状態においてロボット本体2のベース23に対峙する面には、駆動側係合部91aが設けられている。駆動側係合部91aは、従動側第1曲げ関節駆動回動体62の従動側係合部62aと係合する部分である。本実施の形態において、駆動側係合部91aは、二つの窪みである。
【0101】
第2曲げ関節駆動部36は、ベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けることによって、第2曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ64(図4参照)と接続され、第2曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ64を回動させるように構成されている。また、第2曲げ関節駆動部36は、ベース23をロボット本体駆動機構51から取り外すことによって、第2曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ64と切り離されるように構成されている。
【0102】
本実施の形態において、第2曲げ関節駆動部36は、ロボット本体2のベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けた状態において、駆動軸が、ロボット本体2のベース23に向かって伸延し、且つトルク伝達チューブ44の近位端44aの軸線L1と平行な軸線L4上において延在するように筐体39に対して取り付けられている。そして、第2曲げ関節駆動部36は、駆動軸の先端に駆動側第2曲げ関節回動体92が固定されている。したがって、駆動側第2曲げ関節回動体92は、第2曲げ関節駆動部36の駆動軸の回動によって回動する。駆動側第2曲げ関節回動体92は、円板状に形成され、ロボット本体2のベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けた状態においてロボット本体2のベース23に対峙する面には、駆動側係合部92aが設けられている。駆動側係合部92aは、従動側第2曲げ関節駆動回動体65の従動側係合部65aと係合する部分である。本実施の形態において、駆動側係合部92aは、二つの窪みである。
【0103】
手首関節駆動部38は、ベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けることによって、トルク伝達チューブ44の近位端44a(図4参照)と接続され、トルク伝達チューブ44をトルク伝達チューブの軸線周りに回動させるように構成されている。また、手首関節駆動部38は、ベース23をロボット本体駆動機構51から取り外すことによって、トルク伝達チューブ44と切り離されるように構成されている。
【0104】
本実施の形態において、手首関節駆動部38は、ロボット本体2のベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けた状態において、駆動軸が、ロボット本体2のベース23に向かって伸延し、且つトルク伝達チューブ44の近位端44aの軸線L1と平行な軸線L5上において延在するように筐体39に対して取り付けられている。そして、手首関節駆動部38は、駆動軸の先端に駆動側手首関節駆動回動体93が固定されている。したがって、駆動側手首関節駆動回動体93は、手首関節駆動部38の駆動軸の回動によって回動する。駆動側手首関節駆動回動体93は、例えば歯車であり、外周縁に従動側手首関節駆動回動体71(図4参照)の歯と噛み合う歯(図示せず)が形成されている。
【0105】
エンドエフェクタ駆動部37は、ベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けることによって、エンドエフェクタ操作ケーブル牽引プーリ67(図4参照)と接続され、エンドエフェクタ操作ケーブル牽引プーリ67を回動させるように構成されている。また、エンドエフェクタ駆動部37は、ベース23をロボット本体駆動機構51から取り外すことによって、エンドエフェクタ操作ケーブル牽引プーリ67と切り離されるように構成されている。
【0106】
本実施の形態において、エンドエフェクタ駆動部37は、ロボット本体2のベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けた状態において、駆動軸が、ロボット本体2のベース23に向かって伸延し、且つトルク伝達チューブ44の近位端44aの軸線L1と平行な軸線L6上において延在するように筐体39に対して取り付けられている。そして、エンドエフェクタ駆動部37は、駆動軸の先端に駆動側エンドエフェクタ駆動回動体94が固定されている。したがって、駆動側エンドエフェクタ駆動回動体94は、エンドエフェクタ駆動部37の駆動軸の回動によって回動する。駆動側エンドエフェクタ駆動回動体94は、例えば歯車であり、外周縁に従動側エンドエフェクタ駆動回動体68(図4参照)の歯と噛み合う歯(図示せず)が形成されている。
【0107】
したがって、ロボット本体2のベース23の軸線と、ロボット本体駆動機構51の軸線を一致させて、ベース23を軸線方向に移動させることによって、ベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けることができる。なお、ベース23及び駆動部筐体50には、図示しない留め部材が設けられており、留め部材によってベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けた状態が維持されるようになっている。
【0108】
そして、ベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けた状態においては、従動側第1曲げ関節駆動回動体62の従動側係合部62aは駆動側第1曲げ関節回動体91の駆動側係合部91aと係合し、駆動側第1曲げ関節回動体91は従動側第1曲げ関節駆動回動体62と接続される。そして、従動側第1曲げ関節駆動回動体62は、駆動側第1曲げ関節回動体91に対する軸線L3周りの回動が規制される。したがって、第1曲げ関節駆動部35の駆動力によって、駆動側第1曲げ関節回動体91が回動すると、従動側第1曲げ関節駆動回動体62が回動し、第1曲げ関節駆動部35の駆動力が、第1曲げ関節駆動力伝達部45を介して第1曲げ関節27に伝達される。
【0109】
また、ベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けた状態においては、従動側第2曲げ関節駆動回動体65の従動側係合部65aは駆動側第2曲げ関節回動体92の駆動側係合部92aと係合し、駆動側第2曲げ関節回動体92は従動側第2曲げ関節駆動回動体65と接続される。そして、従動側第2曲げ関節駆動回動体65は、駆動側第2曲げ関節回動体92に対する軸線L4周りの回動が規制される。したがって、第2曲げ関節駆動部36の駆動力によって、駆動側第2曲げ関節回動体92が回動すると、従動側第2曲げ関節駆動回動体65が回動し、第2曲げ関節駆動部36の駆動力が、第2曲げ関節駆動力伝達部46を介して第2曲げ関節28に伝達される。
【0110】
更に、ベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けた状態においては、駆動側エンドエフェクタ駆動回動体94の歯は従動側エンドエフェクタ駆動回動体68の歯と噛み合い、駆動側エンドエフェクタ駆動回動体94は従動側エンドエフェクタ駆動回動体68と接続される。したがって、エンドエフェクタ駆動部37の駆動力によって、駆動側エンドエフェクタ駆動回動体94が回動すると、従動側エンドエフェクタ駆動回動体68が回動し、エンドエフェクタ駆動部37の駆動力が、エンドエフェクタ駆動力伝達部47を介してエンドエフェクタ22に伝達される。
【0111】
また、ベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けた状態においては、駆動側手首関節駆動回動体93の歯は従動側手首関節駆動回動体71の歯と噛み合い、駆動側手首関節駆動回動体93は従動側手首関節駆動回動体71と接続される。したがって、手首関節駆動部38の駆動力によって、駆動側手首関節駆動回動体93が回動すると、従動側手首関節駆動回動体71が回動し、手首関節駆動部38の駆動力が、手首関節駆動力伝達部48を介して手首関節30に伝達される。
【0112】
また、ロボット本体2を交換するときは、ロボット本体2のベース23をロボット本体駆動機構51を取り外し、他のロボット本体2のベース23をロボット本体駆動機構51に装着することができる。したがって、ロボット本体2の交換を迅速に行うことができる。
【0113】
[制御器及び操作部の構成例]
図10は、制御器4の構成例を示すブロック図である。
【0114】
ロボット本体2が備える制御器4は、例えば、CPU等の演算器を有する制御部81と、ROM及びRAM等のメモリを有する記憶部82とを備えている。制御部81は、集中制御する単独の制御器で構成されていてもよく、互いに協働して分散制御する複数の制御器で構成されてもよい。制御部81は、操作部5から受信したデータに基づいて各手術用ロボット1のロボット本体駆動機構51の第1曲げ関節駆動部35、第2曲げ関節駆動部36、エンドエフェクタ駆動部37、及び手首関節駆動部38の動作を制御し、手術用ロボット1の動作を制御する。また、制御部81は、内視鏡101から受信した画像データを処理し、表示装置114に送信する。記憶部82には所定の制御プログラムが記憶されていて、制御部81がこれらの制御プログラムを読み出して実行することにより、手術用ロボット1の動作が制御される。
【0115】
操作部5は、術者Wが操作して、手術用ロボット1によって実行されるべき動作命令を入力するためのものである。操作部5は、制御部81と通信可能に構成されている。そして、操作部5は、術者Wによって入力された手術用ロボット1によって実行されるべき動作命令をデータに変換し、制御部81に送信する。制御部81は、受信した手術用ロボット1によって実行されるべき動作命令に基づいて、第1曲げ関節駆動部35、第2曲げ関節駆動部36、エンドエフェクタ駆動部37、及び手首関節駆動部38のそれぞれによって実行されるべき動作を生成し、当該生成した動作にしたがって、第1曲げ関節駆動部35、第2曲げ関節駆動部36、エンドエフェクタ駆動部37、及び手首関節駆動部38の動作を制御する。
【0116】
[使用例]
次に、手術用ロボット1の使用例を説明する。
【0117】
まず、図2に示すように、1以上の案内管6を集束管102の近位端102aの開口から集束管102に挿入し、集束管102の遠位端102bから案内管6の遠位端6bが突出するまで送り込む。また、内視鏡101についても同様に、集束管102の遠位端102bから内視鏡101の遠位端が突出するまで送り込む。
【0118】
次に、患者Pの体表の1以上の手術用ロボット1及び内視鏡101を挿入する部位にトロッカー110を留置する。
【0119】
次に、患者Pの体表に留置したトロッカー110に集束管102を挿入し、内視鏡101によって患者Pの体内を視認し、集束管102の遠位端102bを患者Pの処置部位の近傍に位置させる。なお、集束管102、内視鏡101、及び案内管6は、可撓性を有するので、トロッカー110が留置されている部位と処置部位とを通る仮想の直線上に、例えば患者Pの臓器が位置する場合であっても、集束管102、内視鏡101、及び案内管6を湾曲させることによって、この臓器を迂回し集束管102の遠位端102bを処置部位の近傍に導入することができる。
【0120】
次に、1以上の手術用ロボット1のロボット本体2のアーム21を案内管6の近位端6aの開口から案内管6に挿入し、案内管6の遠位端6bからアーム21の遠位端21bが突出するまで送り込む。これによって、1以上の手術用ロボット1及び内視鏡101は、集束管102によって集束され、これらを一体的に患者Pの処置部位の近傍に導入することができる。
【0121】
次に、ベース23をロボット本体駆動機構51に取り付け、ロボット本体2の駆動力伝達機構24と、ロボット本体駆動機構51とを連結する。これによって、ロボット本体駆動機構51の駆動力が駆動力伝達機構24の第1曲げ関節駆動力伝達部45、第2曲げ関節駆動力伝達部46、エンドエフェクタ駆動力伝達部47、及び手首関節駆動力伝達部48を介して、第1曲げ関節27、第2曲げ関節28、エンドエフェクタ22、及び手首関節30に伝達されるようになる。
【0122】
次に、術者Wは、内視鏡101のビデオカメラによって撮影され、表示装置114に表示される画像を確認しながら、操作部5を操作する。そして、制御部81は、操作部5から受信したデータに基づいてロボット本体駆動機構51の第1曲げ関節駆動部35、第2曲げ関節駆動部36、エンドエフェクタ駆動部37、及び手首関節駆動部38の動作を制御し、手術用ロボット1の動作を制御する。
【0123】
このとき、制御部81は、手術用ロボット1によって実行されるべき動作命令に、第1曲げ関節27を曲げる動作命令が含まれていると判定すると、制御部81は、ロボット本体駆動機構51の第1曲げ関節駆動部35を駆動し、第1曲げ関節27を曲げる。これによって、エンドエフェクタ22は、第1曲げ関節27の曲げ方向に移動する。
【0124】
また、制御部81は、手術用ロボット1によって実行されるべき動作命令に、第2曲げ関節28を曲げる動作命令が含まれていると判定すると、制御部81は、ロボット本体駆動機構51の第2曲げ関節駆動部36を駆動し、第2曲げ関節28を曲げる。これによって、エンドエフェクタ22は、第2曲げ関節28の曲げ方向に移動する。
【0125】
更に、制御部81は、手術用ロボット1によって実行されるべき動作命令に、エンドエフェクタ22に把持動作又は解放動作を行わせる動作命令が含まれていると判定すると、制御部81は、ロボット本体駆動機構51のエンドエフェクタ駆動部37を駆動し、エンドエフェクタ22に把持動作又は解放動作を行わせる。
【0126】
また、制御部81は、手術用ロボット1によって実行されるべき動作命令に、手首関節30を回動させる動作命令が含まれていると判定すると、制御部81は、ロボット本体駆動機構51の手首関節駆動部38を駆動し、手首関節30を回動させる。このように、任意の形状に曲げた中間部分を介して、遠位端44bを近位端44aの回動量に応じて回動させることができるトルク伝達チューブ44の回動によって手首関節30を回動させるので、可撓シャフト25及びトルク伝達チューブ44が曲げられた状態であっても、また、可撓シャフト25及びトルク伝達チューブ44を曲げながらでも手首関節30を精確に回転させることができる。
【0127】
ところで、エンドエフェクタ22の把持動作及び解放動作は、連結部70の軸線L1周りの角度位置に対するエンドエフェクタ操作ケーブル牽引プーリ67の軸線L1周りの角度位置を制御部81が制御することによって行う。例えば、エンドエフェクタ22に把持動作又は解放動作を行わせずに手首関節30のみを回動させるときは、制御部81は、従動側エンドエフェクタ駆動回動体68に対する従動側手首関節駆動回動体71の角度位置が変化しないように従動側エンドエフェクタ駆動回動体68及び従動側手首関節駆動回動体71を同期して回動させる。これによって、エンドエフェクタ駆動力伝達部47のエンドエフェクタ操作ケーブル牽引プーリ67に対する手首関節駆動力伝達部48の連結部70に取り付けられているエンドエフェクタ操作ケーブル方向変換プーリ72の軸線L1周りの角度位置が変化しないので、エンドエフェクタ操作ケーブル43の巻き込み又は巻き戻しが行われず、手首関節30のみが回動する。また、エンドエフェクタ22に把持動作又は解放動作を行わせながら、手首関節30を回動させるときは、制御部81は、手首関節駆動部38によって連結部70を回動させながら、当該回動する連結部70(のエンドエフェクタ操作ケーブル方向変換プーリ72)に対するエンドエフェクタ操作ケーブル牽引プーリ67の軸線L1周りの角度位置が所定の角度位置に位置するようにエンドエフェクタ駆動力伝達部47の差動制御を行う。これによって、エンドエフェクタ22を軸線L1周りに回動させながら、エンドエフェクタ22の把持動作又は解放動作を行うことができる。
【0128】
そして、手術中に一の術具を別の術具に交換するときは、ベース23をロボット本体駆動機構51から取り外し、案内管6から上記一の術具を備える手術用ロボット1を引き抜く。そして、上記別の術具を備える手術用ロボット1を案内管6に挿し込む。このように、交換する術具以外の術具を備える他の手術用ロボット及び内視鏡101を処置部位の近傍に位置させたまま、一部の術具を交換することができるので、術具の交換を速やかに行うことができ、患者Pの身体の負担を軽減することができ、また、術者Wの作業負担を軽減することができる。
【0129】
更に、ロボット本体2をロボット本体駆動機構51から取り外し、ロボット本体2のオートクレーブ滅菌等の滅菌処理を行うことができる。すなわち、サーボモータ等の電力機器を含むためオートクレーブ滅菌等の滅菌処理に適さないロボット本体駆動機構51と、電力機器を含まないロボット本体2とを分離し、患者Pに接触するロボット本体2の滅菌処理を確実に行うことができる。
【0130】
以上に説明したように、本発明の手術用ロボット1は、ベース23をロボット本体駆動機構51から取り外し、駆動力伝達機構24とロボット本体駆動機構51とを切り離すことができるように構成されているので、ロボット本体2をロボット本体駆動機構51から取り外し、オートクレーブ滅菌等の滅菌処理を行うことができる。すなわち、サーボモータ等の電力機器を含みサーボモータ等のオートクレーブ滅菌等の滅菌処理に適さないロボット本体駆動機構51と、電力機器を含まないロボット本体2とを分離し、患者Pに接触するロボット本体2の滅菌処理を確実に行うことができる。また、術具の交換を速やかに行うことができ、患者Pの身体の負担を軽減することができ、更に、術者Wの作業負担を軽減することができる。
【0131】
また、ベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けることによって、手首関節駆動部38は、トルク伝達チューブ44の近位端44aと連結部70及び従動側手首関節駆動回動体71を介して接続され、トルク伝達チューブ44をトルク伝達チューブ44の軸線周りに回動させることができる。これによって、アーム21の遠位端21bに設けられたエンドエフェクタ22をアーム21の遠位端21bの軸線L2周りに回動させることができる。よって、エンドエフェクタ22の軸線L2周りの角度位置を変更することができる。したがって、アーム21が曲がっている状態においても、手術用ロボット1の操作性を向上させることができる。
【0132】
<変形例>
上記実施の形態において、従動側エンドエフェクタ駆動回動体68、及び従動側手首関節駆動回動体71の外径(歯先円の径)は略同一に形成されている。しかし、これに限られるものではなく、従動側手首関節駆動回動体71の外径が従動側エンドエフェクタ駆動回動体68の外径に対して大きくなるように従動側手首関節駆動回動体71及び従動側エンドエフェクタ駆動回動体68を形成してもよい。これによって、ベース23をロボット本体駆動機構51に対し容易に着脱することができる。また、この場合には、駆動側手首関節駆動回動体93及び駆動側エンドエフェクタ駆動回動体94の回動速度を調整し、従動側エンドエフェクタ駆動回動体68と従動側手首関節駆動回動体71の回転速度を同期させてもよい。これによって、手首関節30のみを回転させることができる。
【0133】
また、上記実施の形態において、従動側係合部62a及び従動側係合部65aは、二つの突起であり、駆動側係合部91a及び駆動側係合部92aは、それぞれ従動側係合部62a及び従動側係合部65aと係合する二つの窪みであるがこれに限られるものではない。これに代えて、従動側係合部62a及び従動側係合部65aは、径方向に延在する1つの長い突起であってもよく、また、駆動側係合部91a及び駆動側係合部92aは、それぞれ従動側係合部62a及び従動側係合部65aと係合する径方向に延在する1つの長い窪みであってもよい。
【0134】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【符号の説明】
【0135】
1 手術用ロボット
2 ロボット本体
3 駆動部
4 制御器
5 操作部
6 案内管
21 アーム
22 エンドエフェクタ
23 ベース
24 駆動力伝達機構
25 可撓シャフト
26 関節部
27 第1曲げ関節
28 第2曲げ関節
29 接続部
30 手首関節
31 コマ部材
32 操作ケーブル連結部
33 操作ケーブル連結部
35 第1曲げ関節駆動部
36 第2曲げ関節駆動部
37 エンドエフェクタ駆動部
38 手首関節駆動部
41 第1曲げ関節操作ケーブル
42 第2曲げ関節操作ケーブル
43 エンドエフェクタ操作ケーブル
44 トルク伝達チューブ
45 第1曲げ関節駆動力伝達部
46 第2曲げ関節駆動力伝達部
47 エンドエフェクタ駆動力伝達部
48 手首関節駆動力伝達部
50 駆動部筐体
51 ロボット本体駆動機構
61 第1曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ
62 従動側第1曲げ関節駆動回動体
63 第1回動軸
64 第2曲げ関節操作ケーブル牽引プーリ
65 従動側第2曲げ関節駆動回動体
66 第2回動軸
67 エンドエフェクタ操作ケーブル牽引プーリ
68 従動側エンドエフェクタ駆動回動体
69 第3回動軸
70 連結部
71 従動側手首関節駆動回動体
72 エンドエフェクタ操作ケーブル方向変換プーリ
75 筒状部
76 駆動部側端板
77 アーム側端板
78 第1曲げ関節操作ケーブル方向変換プーリ
79 第2曲げ関節操作ケーブル方向変換プーリ
81 制御部
82 記憶部
91 駆動側第1曲げ関節回動体
92 駆動側第2曲げ関節回動体
93 駆動側手首関節駆動回動体
94 駆動側エンドエフェクタ駆動回動体
100 手術用ロボットシステム
101 内視鏡
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10