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特許7148243車両用の衝突までの時間の改善された計算
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】車両用の衝突までの時間の改善された計算
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20220928BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20220928BHJP
   B60R 21/013 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60R21/00 360
B60R21/013 320
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017563161
(86)(22)【出願日】2016-06-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-08-02
(86)【国際出願番号】 DE2016200272
(87)【国際公開番号】W WO2017000942
(87)【国際公開日】2017-01-05
【審査請求日】2019-02-05
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-18
(31)【優先権主張番号】102015212250.6
(32)【優先日】2015-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503355292
【氏名又は名称】コンティ テミック マイクロエレクトロニック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Conti Temic microelectronic GmbH
【住所又は居所原語表記】Sieboldstrasse 19, D-90411 Nuernberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】グートマン・クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ディーポルダー・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シュヌル・クレメンス
【合議体】
【審判長】河端 賢
【審判官】山本 信平
【審判官】鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-544203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方を走行中の車両との衝突時点を割り出すための、自車両用の方法であって、
当該自車両は、前方を走行中の前記車両の当該自車両に対する車間および相対速度を捕捉するための捕捉ユニット又は捕捉ユニットとしてのレーダー乃至カメラ手段;
前方を走行中の前記車両の減速を割り出すための割り出しユニット;並びに、
計算ユニット
を包含する装置を有し、
以下のステップ:
前記捕捉ユニットが、前方を走行中の前記車両の前記自車両に対する車間を割り出すステップ;
前記捕捉ユニットが、前方を走行中の前記車両の前記自車両に対する相対速度を割り出すステップ;
前記割り出しユニットが、前方を走行中の前記車両の減速を割り出すステップ;
を包含する方法において
前記計算ユニットが、
以下のステップ:
前方を走行中の前記車両の減速の割り出し時点から減速の終了までの減速の継続時間であって、前方を走行中の前記車両が減速により停止に至るまでよりも短い所定の継続時間を想定するステップ;
前方を走行中の前記車両との第一の衝突時点を、前記割り出された相対速度、車間、減速、並びに、想定した該減速の前記継続時間から算出するステップ;
を包含する方法を実施する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
想定した減速の前記継続時間の経過中に、前方を走行中の前記車両に対する間隔、前方を走行中の前記車両と前記自車両間の相対速度、前方を走行中の前記車両の減速が、改めて割り出され;
前方を走行中の前記車両の減速の新たな継続時間が想定される;と共に、
前記改めて割り出された相対速度、間隔、減速、並びに、該減速の前記新たな継続時間から、前方を走行中の前記車両との最新の衝突時点が、割り出される;
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前方を走行中の前記車両の一つの仮定の挙動に対して一つの実現確率を想定し;
さらに、
前方を走行中の前記車両と前記自車両との車間と相対速度から、付加的な衝突時点が割り出され;且つ、
該付加的な衝突時点と前記第一乃至最新の衝突時点から、前方を走行中の前記車両の仮定の挙動に対する実現確率を補正する補正値が算出される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
想定される減速の前記継続時間が、前方を走行中の前記車両において想定される速度低下に依存している
ことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
想定される前記速度低下の度合いが、10m/s未満或いは3m/sよりも大きい
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
想定される減速の前記継続時間が、前方を走行中の前記車両の減速の度合い乃至車間に依存している
ことを特徴とする請求項1から5のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前方を走行中の前記車両の想定される減速の前記継続時間が、少なくとも1秒である
ことを特徴とする請求項1から6のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記付加的な衝突時点又は前記第一の衝突時点若しくは前記最新の衝突時点のいずれか、乃至、前記補正値を、前記自車両の対応のために、特にドライバーへの警告メッセージに用いる
ことを特徴とする請求項3または請求項3を直接的または間接的に引用する請求項4から7のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記自車両の対応、特に、ドライバーへの警告メッセージの出力が、前記第一乃至最新の衝突時点に依存して或いは前記補正値に依存して遅延される
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
以下:
前方を走行中の車両との車間乃至相対速度を捕捉するための、捕捉ユニット(51)、又は捕捉ユニットとしてのレーダー乃至カメラ手段;
前方を走行中の前記車両の減速を割り出すための割り出しユニット(53);
並びに、
請求項1から9のうちいずれか一項に記載の方法を実施するための計算ユニット(55)
を包含することを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方を走行中の車両との衝突タイミングを計算する装置、並びに、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
緊急ブレーキ・アシスタントやアダプティブな速度調整(ACC)など様々なドライバー・アシスタント・システムが、各々の機能の制御に、障害物との衝突までの時間(TTC, time to collison)を採用している。
【0003】
TTCの計算に必要な値の割り出しは、例えば、レーダーやライダー・センサー、或いは、カメラセンサー・ユニット、及び/或いは、車両周辺部の情報を提供する無線ベースのC2Xセンサー類など周辺把握センサー類によって実施される。この情報は、例えば、他の車両乃至外部のインフラストラクチャー(交通標識、ビーコン、サーバーなど)から送られてくる。
【0004】
特許文献1からは、例えば、衝突回避・警告システムが既知であるが、これは、対象車両とのTTCを、二台の車両の速度、加速、並びに、それらの間隔から割り出すものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第8527172号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、本発明の課題は、TTCの算出を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、独立請求項に係る方法と装置によって解決される。更なる、好ましい形態は、従属請求項の対象である。
【0008】
本発明によれば、前方を走行中の車両との第一衝突時点が、以下のステップによって割り出される:前方を走行中の車両までの間隔の割り出し、前方を走行中の車両に対する自車両の相対速度の割り出し、前方を走行中の車両の減速の割り出し、前方を走行中の車両の減速の継続時間の想定;並びに、相対速度、間隔、減速、並びに、想定した減速の継続時間を基にした前方を走行中の車両との第一衝突時点の割り出し。
【0009】
この際、該減速は、前方を走行中の車両が停止に至るまでは持続されないと仮定することが好ましい。なぜなら、前方を走行中の車両は、例えば、右左折する際、ある一定の継続時間だけ減速し、その後、該車両の走行レーンから出て行く。また、制限速度がより低速に制限された際も、要求されている速度値まで減速したいだけであるため、前方を走行中の車両は、似たような挙動を取る。
【0010】
前方を走行中の車両がブレーキをかけた時点においては、これら右左折や減速は、前方を走行中の車両に対してそれぞれ憶測し仮定した挙動である。それぞれの仮定の挙動は、前方を走行中の車両が、右左折したいのか、単に減速したいだけなのかを選択するために、実現確率を用いて評価される。該選択が実施された後に前方を走行中の車両の挙動であって、確率が高い仮定の挙動に対する自車両の対応が実施される。
【0011】
本発明のある他の実施形態においては、想定した減速の継続時間が経過中に、前方を走行中の車両に対する間隔、前方を走行中の車両と自車両間の相対速度、前方を走行中の車両の減速が、改めて割り出され、前方を走行中の車両の減速の新たな継続時間が想定されると共に、相対速度、間隔、減速、並びに、該減速の新たな継続時間から、最新の前方を走行中の車両との衝突時点が、割り出される。
【0012】
この様にすることには、衝突時点が、間隔や相対速度、減速の最新の値と新たな想定継続時間から割り出されると言う利点がある。更にこの様にすることには、連続的に衝突時点を算出し続けることも可能であると言う利点がある。
【0013】
尚、前方を走行中の車両のそれぞれの仮定の挙動毎に、一つの実現確率を想定することが好ましい。
【0014】
本発明の好ましい形態においては、前方を走行中の車両の自車両に対する間隔と相対速度から、付加的な衝突時点が割り出され、この付加的な衝突時点と第一、乃至、最新の衝突時点から、前方を走行中の車両の仮定の挙動に対する実現確率を補正するための補正値が計算される。通常、実現確率は、小さくなる。
【0015】
前方を走行中の車両の想定挙動に対する実現確率は、補正値によって可変であることが好ましい。該補正値は、前方を走行中の車両の仮定の挙動への対応のシチュエーションに依存した微調整を可能にする。
【0016】
特に好ましくは、前方を走行中の車両に対して憶測され仮定された挙動への対応は、補正値を用いて、ある特定の閾まで延期される。
【0017】
既知及び改善されたTTCの間の差が小さい時、該補正値は、特に好ましくは、1に近い値である、即ち、実現確率が、僅かにだけ下げられる。一方、差が大きい場合、補正ファクターは、略0であり、仮定の挙動用の実現確率が、該補正ファクターによって低減され、該仮定の挙動は、あまり考慮されなくなる。この様にすることにより、各々の仮定の挙動への対応を制限する、乃至、阻止することができる。
【0018】
本発明のある他の好ましい実施形態においては、想定される減速の継続時間は、前方を走行中の車両において想定される速度低下に相関させることができる。好ましくは、該想定される減速の継続時間は、前方を走行中の車両の想定される速度低下と割り出された減速値から算出できる。該想定される速度低下とは、前方を走行中の車両のブレーキをかける前と、後での速度差を示す値である。速度差を、一定な減速を伴う制動の継続時間から得られるように安定して一定な制動として仮定することが特に好ましい。
【0019】
尚、減速の想定される継続時間は、前方を走行中の車両の減速の度合いや車間に依存することが好ましい。
【0020】
減速の度合いが大きい場合、減速の継続時間は、短いと考え得る一方、減速の度合いが小さいときは、減速の継続時間が長くなると考え得る。想定した減速の継続時間は、十分に長く、しかし、適度に短く選択できるように、特に好ましくは、車間も考慮される。
【0021】
本発明のある他の好ましい実施形態においては、該減速は、10m/s未満或いは3m/sよりも大きい。最大減速値までは、前方を走行中の車両の制動は、停止に至る前にやめられると考えることが好ましい。更に、最低減速値を3m/sとすることにより測定精度に対する公差を考慮できる。
【0022】
好ましくは、前方を走行中の車両の減速の想定した継続時間は、少なくとも1秒とすることができる。衝突時点の時間枠の間、最新の値を用いて再計算することが理に適っている。
【0023】
本発明のある他の好ましい実施形態においては、衝突時点、乃至、その補正値を、自車両の対応のために、特にドライバーへの警告メッセージに用いることができる。これにより、自車両は、該憶測され仮定された前方を走行中の車両の挙動に対しては反応しなくても済む様になるため理に適っている。例えば、高い確率で誤認警告になるであろうことから、ドライバーへの警告を出さなくて済む。
【0024】
好ましくは、自車両の対応、特に、ドライバーへの警告メッセージの出力は、第一乃至最新の衝突時点に依存して或いは補正値分遅延されることができる。実現確率は、改善されたTTCの継続的割り出しによって更新され、警告メッセージは、前方を走行中の車両に対して憶測され仮定された挙動に対する実現確率が十分に大きくなるまで遅延されることが好ましい。更には、一つの対応として自車両の制動も実施されることが可能であり、特に、これにより快適な制動が可能になる。
【0025】
本発明に係る装置は、前方を走行中の車両との車間と相対速度を捕捉するための捕捉ユニット、前方を走行中の車両の制動を割り出すための割り出し手段、並びに、改善されたTTCを計算するための計算ユニットを包含している。
【0026】
該捕捉ユニットは、レーダー乃至カメラ手段として構成されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】前方を走行中の車両との車間が異なっている場合の、二つのTTCの推移を例示する図である。
図2】前方を走行中の車両との車間が短い場合の改善されたTTCの推移を示す図である。
図3】前方を走行中の車両との車間が長い場合の改善されたTTCの推移を示す図である。
図4】前方を走行中の車両の制御の度合いと車間に依存した制動の想定継続時間を表す曲線群を示す図である。
図5】前方を走行中の車両の将来的挙動に関して選ばれた想定が実際に起こる確率を適合させるための補正ファクターの推移の例を示す図である。
図6】改善されたTCCを算出するための装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
障害物としての前方を走行中の車両との衝突までの二つのTTC(time to collison)の典型的推移が、図1に示されている。y座標には、前方を走行中の車両の制動が、プロットされ、x座標は、時間軸である。座標系の起点1において、前方を走行中の車両が認識される。時間軸に対するTTC・A,Bの推移が例示されている。実線Bと点棒線Aは、それぞれ、TTCを示しているが、検出時点3における前方を走行中の車両までの車間は、TTC・Bの方がTTC・Aよりも大きい。破線7は、検出時点4においてゼロである前方を走行中の車両の減速を示している。時点5において、前方を走行中の車両が突然急激に減速し、その減速6を維持する。前方を走行中の車両に対する相対速度が減少し、それにとも立ってTTC・A,B用の値も減少9する。前方を走行中の車両が、減速を維持するため、TTC・A,Bは、その後の推移において、可及的衝突、乃至、停止12,13に至るまで直線10,11である。双方のTTCは、平行に推移しているが、TTC・Aにおける衝突は、車間が短いためTTC・Bよりも前に発生する。
【0029】
図2は、TTC・C0の改善された推移を、既知の、検出時点3における前方を走行中の車両までの車間が短いTTC・Aの推移と、衝突12に至るまで、比較して示している。y座標には、前方を走行中の車両の制動が、プロットされ、x座標は、時間軸である。座標系の起点1において、前方を走行中の車両が認識される。図1同様、破線7は、検出時点4においてゼロである前方を走行中の車両の減速を示している。時点5において、前方を走行中の車両が突然急激に減速し、その減速6を維持する。ここでも、従来の技術との比較のために図1のTTC・Aの推移が(点棒線として)示されている。前方を走行中の車両が制動5した直後、相対速度が低下し、TTC・AとTTC・C0の値が下がる9。
【0030】
前方を走行中の車両との車間が短い場合、改善されたTTC・C0の計算と、既知のTTC・Aとの差は、僅かである。よって、双方のTTCの推移は、制動5の時点まで同じである。
【0031】
図3は、TTC・C1の改善された推移を、既知の、検出時点3における前方を走行中の車両までの車間が長いTTC・Bの推移と、衝突13に至るまで、比較して示している。y座標には、前方を走行中の車両の制動が、プロットされ、x座標は、時間軸である。座標系の起点1において、前方を走行中の車両が認識される。図1と2同様、破線7は、検出時点4においてゼロである前方を走行中の車両の減速を示している。時点5において、前方を走行中の車両が減速し、その減速6を維持する。ここでも、従来の技術との比較のために図1のTTC・Bの推移が(点棒線として)示されている。前方を走行中の車両が制動5した直後、相対速度が低下し、TTC・BとTTC・C1の値が下がる9。
【0032】
TTC・C1の改善された計算は、前方を走行中の車両との車間が長い場合、前方を走行中の車両の制動9の直後23、異なっている。改善されたTCC・C1は、TTC・Bと比較して緩やかに下がる。TTC・C1の緩やかになった降下の根拠は、前方を走行中の車両は、制動しているが、該減速は、短期的なものであり、静止に至るまで維持されるものではないであろうと言う想定である。
【0033】
図4は、これらに基づいて改善されたTCCが計算される曲線群30に属する二本の曲線が例示されている。相対速度から算出される前方を走行中の車両の速度の変化から、前方を走行中の車両のリアルタイムな制動が、割り出され、前方を走行中の車両の速度低下が想定される。速度低下の度合いに関する想定は、割り出された前方を走行中の車両の減速の度合いと車間を基準としている。該想定的速度低下と割り出された減速から前方を走行中の車両が、該想定的速度低下に達するのに必要な継続時間を算出することができる。算出された減速の継続時間が、該想定的速度低下を基準としているため、この継続時間も想定にすぎない。図4の符号37は、その時点では、減速されていないゼロ点である。
【0034】
曲線31は、車間を25mとした時の、制動の想定された継続時間である。例えば、前方を走行中の車両が、車間が25mの時に、10m/s分減速すると仮定する。割り出された前方を走行中の車両の減速に応じて、減速の継続時間は、図4の様になる。仮に減速が10m/s・35であったとすると前方を走行中の車両は、想定した値に速度を落とすのに、1s・33必要とする。減速の想定された継続時間が経過した後、改めて最新の値(制動、車間)が求められ、減速の継続時間、乃至、速度低下の度合いに関する新しい想定が、曲線群30に従って割り出される。
【0035】
更なる曲線39は、車間が100mの時の前方を走行中の車両の減速の想定された継続時間と割り出された減速との相関関係を示している。
【0036】
車間が短い場合(例えば、曲線31の場合25m)、大きな速度低下が想定されるため、穏やかな減速の場合は、長い減速の継続時間が想定される。車間が短いため、長くなるであろうと想定された減速の継続時間では、制動が、静止状態まで維持されるであろうと言う仮定に基づいたTTC計算をすることになる。よって、TTCの改善された計算は、車間が短い場合は、減速が、停止に至るまで維持されるものとして実施される既知のTTC計算と近いものになる。
【0037】
一方、車間39が長い場合、僅かな速度低下が想定される為、制動の継続時間は、短いと想定される。前方を走行中の車両までの車間が長いため、想定された制動の継続時間の経過後、改めたTTCの計算が可能である。ここでは、減速の継続時間は、短く、その後は、減速されないと想定されるため、TTCが、長くなり、対策なしでは短いはずのTTCへの対応が遅延して実行されるようになる。一方、減速が、前方を走行中の車両の停止に至るような場合は、制動時間が非常に長くなると想定され、TTCが短縮される。
【0038】
想定された減速の継続時間が経過した後、新しく割り出した値を用いてTTCの計算が改めて実施される。これにより、停止に至る減速では、改善されたTTCは、既知のTTCと類似している。言い換えれば、減速が長く維持されればされるほど、改善された計算は、既知の計算により似通る。
【0039】
図5は、既知のTTCと改善されたTTCから、例えば、以下の式を用いて算出される補正ファクターの特性曲線40を示している。
【0040】
【数1】
【0041】
該補正ファクターは、前方を走行中の車両の次に考え得る挙動に関する仮定の確率を減らすために用いられる。既知のTTCと改善されたTTCの差が小さいときは、補正ファクター41は、略1である、即ち、確率は、僅かにだけ下げられる。一方、その差が大きいときは、確率は、小さな値43によって抑制され、該仮定に対する対応は、制限、乃至、阻止される。
【0042】
図5の装置50は、前方を走行中の車両との車間と相対速度を測定するレーダー・センサー51を包含している。その際、該レーダー・センサー51は、ドップラー効果を応用している。割り出しユニット53が、相対速度を割り出し、その経時的偏差から前方を走行中の車両の制動を割り出す。計算ユニット55が、測定され、割り出された情報に基づいて改善されたTTCを算出する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6