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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】測距装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20220928BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20220928BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
G02B26/10 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018045650
(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公開番号】P2019158598
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】落合 孝典
(72)【発明者】
【氏名】白戸 琢也
(72)【発明者】
【氏名】出田 亮
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 琢麿
【審査官】九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0323562(US,A1)
【文献】特開2018-132524(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0231640(US,A1)
【文献】特開2012-226020(JP,A)
【文献】特開2018-036543(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0059408(US,A1)
【文献】特開2014-219250(JP,A)
【文献】特開2014-115182(JP,A)
【文献】特開平06-109847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 -17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出射光を出射する光源前記出射光の方向を可変に偏向する出射光反射部材を有する出射光偏向素子及び前記出射光が外部に出射する開口を含む投光部と、
各々が前記投光部の開口の中心軸である投光中心軸に対する垂直方向において前記投光部と離間して配され、かつ前記出射光が対象物で反射した反射光の方向を可変に偏向する反射光反射部材を有する反射光偏向素子及び前記反射光偏向素子によって偏向された前記反射光を受光する受光素子を各々が含む複数の受光部と、
を有し、
前記複数の受光部は、各々の受光部の受光面から垂直方向に伸びる中心軸である受光中心軸が前記投光中心軸上の複数の位置で前記投光中心軸と交わることを特徴とする測距装置。
【請求項2】
前記複数の受光部は、前記投光中心軸に対して垂直な方向に沿って列状に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項3】
前記投光中心軸と前記受光中心軸とが交わる位置は、前記投光部からの前記受光部の距離に応じて異なることを特徴とする請求項1又は2に記載の測距装置。
【請求項4】
前記複数の受光部の各々は、前記投光部から離れている前記受光部ほど、前記受光中心前記投光部から遠い前記投光中心軸上で交わることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の測距装置。
【請求項5】
前記複数の受光部は、
各々の受光中心軸が一の領域で前記投光中心軸と交わる一対の受光部を含む一の受光部群と、
各々の受光中心軸が他の領域で前記投光中心軸と交わる一対の受光部を含む他の受光部群と、を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の測距装置。
【請求項6】
前記一の受光部群及び前記他の受光部群の各々における前記一対の受光部を構成する受光部は、前記投光中心軸を挟んで互いに対向する位置に配されていることを特徴とする請求項に記載の測距装置。
【請求項7】
前記受光部の各々の前記反射光反射部材は、前記投光部の前記出射光反射部材と連動して揺動することを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物までの距離を計測する測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学測距装置は、例えば、レーザ光を対象領域内で走査して対象物までの距離を計測する、すなわち測距する。
【0003】
このような測距装置としては、例えば、光走査装置の光反射面を揺動駆動する駆動部が位相差変更部及び振幅変更部の少なくとも一方を備えた光測距装置が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-053137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーザ光は対象物に照射されると散乱する。このため、対象物が測距装置から遠くなるにつれて測距装置が受光するレーザ光の強度が弱くなる。したがって、測距装置から遠方に位置する対象物の測距を行うためには、対象物から反射された光をより多く受光することが望まれる。
【0006】
しかし、より多くの光を受光するようにすると、背景光などのノイズを受光する光量も増加する。ここで、測距装置のシグナル比(SN比)は、受光系の開口の大きさに伴って変化する。具体的には、受光系の開口が大きくなるにつれてSN比も大きくなる。しかし、受光系の開口を大きくすると、装置が大型化する問題が課題の1つとして挙げられる。
【0007】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、十分なSN比を有し且つ、装置の小型化を図ることが可能な測距装置を提供することを課題の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願請求項1に記載の測距装置は、出射光を出射する光源、及び前記出射光の方向を可変に偏向する出射光反射部材を有する出射光偏向素子を含む投光部と、各々が前記投光部の光軸に対する垂直方向において前記投光部と離間して配され、かつ前記出射光が対象物で反射した反射光の方向を可変に偏向する反射光反射部材を有する反射光偏向素子及び前記反射光偏向素子によって偏向された前記反射光を受光する受光素子を各々が含む複数の受光部と、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1に係る測距装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施例1に係る測距装置の投光系の動作原理を説明する説明図である。
図3】実施例1に係る測距装置の受光系の動作原理を説明する説明図である。
図4図1の投光部と受光部の配置例を示す概念図である。
図5】実施例2に係る測距装置の投光部と受光部の配置例を示す概念図である。
図6】実施例3に係る測距装置の投光部と受光部の配置例を示す概念図である。
図7】実施例4に係る測距装置の距離測定部が受光部を選択する処理フロー図である。
図8】実施例5に係る測距装置の距離測定部が受光部を選択する処理フロー図である。
図9】実施例6に係る測距装置の距離測定部が受光部を選択する処理フロー図である。
図10】実施例7に係る測距装置の距離測定部が受光部を選択する処理フロー図である。
図11】実施例8に係る測距装置の投光部と受光部の配置例を示す概念図である。
図12図11の受光部が生成した受光信号を示す概念図である。
図13図12の受光信号を合成した信号を示す概念図である。
図14図11の受光部が生成した受光信号の補正例を示す概念図である。
図15図14の受光信号を合成した信号を示す概念図である。
図16図11の受光部が生成した受光信号の他の補正例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
図1は、本実施例に係る測距装置100を示している。
【0011】
投光部10は、出射光を出射する発光装置である。投光部10の光源11は、例えば出射光としてパルス光を出射可能なレーザ素子である。
【0012】
出射光偏向素子12は、光反射面(図示せず)を含む出射光反射部材を有している。出射光偏向素子12は、当該光反射面にてパルス光を反射して、走査対象となる所定の領域(以下、走査対象領域とする)に向けて走査光を出射可能である。言い換えれば、出射光偏向素子12は、出射光の方向を可変に偏向させることができる。走査対象領域に存在する物体に反射された走査光は、測距装置100に向けて反射光として戻ってくる。尚、出射光偏向素子12は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラー装置、ポリゴンミラー等を用いることができる。
【0013】
受光部20は、反射光を受光して受光信号を生成する受光装置である。測距装置100は、互いに同一の構成を有する複数の受光部20を有する。受光部20の反射光偏向素子としての反射光偏向素子21は、光反射面(図示せず)を含む反射光反射部材を有しており、当該光反射面にて反射光を受光素子22に向けて反射可能である。言い換えれば、反射光偏向素子21は、反射光の方向を可変に偏向させることができる。尚、反射光偏向素子21は、MEMSミラー装置、ポリゴンミラー等を用いることもできる。
【0014】
受光素子22は、反射光を受光して、電気信号である受光信号を生成可能な光検出器である。受光素子22としては、例えば、アバランシェフォトダイオード(APD)等を採用することができる。
【0015】
制御部30は、光源11から出射するパルス光の制御及び出射光偏向素子12、反射光偏向素子21の光反射面の角度の制御を行う。
【0016】
光源制御部31は、光源11の発光制御を行う。具体的には、例えば、光源11がパルス発光をするように発光タイミングを規定したテーブル(図示せず)を参照して、その発光を制御する。
【0017】
ミラー制御部32は、出射光偏向素子12及び反射光偏向素子21の光反射面の傾きの角度を制御する。具体的には、ミラー制御部32は、光源11によって出射されて光反射面(図示せず)によって反射されたパルス光によって、走査対象領域の走査がなされるように出射光偏向素子12を制御する。また、ミラー制御部32は、出射光偏向素子12の出射光反射部材の光反射面の方向と反射光偏向素子21の反射光反射部材の光反射面の方向が連動するように反射光偏向素子21を制御する。
【0018】
測距部としての距離測定部40は、測距装置100と走査対象領域内にある物体との距離を算出する。測距装置100と走査対象領域内にある物体との距離の算出は、受光部20によって生成された受光信号に基づいて行われ、例えばタイムオブフライト法が用いられる。
【0019】
具体的には、距離測定部40は、光源11によって出射された1のパルス光の出射時刻と、当該1のパルス光が走査対象領域内の物体によって反射されて反射光として複数の受光部20の各々で検出された受光時刻を取得する。そして、当該出射時刻と当該受光時刻の時刻差に基づいて、当該1のパルス光が光源11から出射されて受光部20に受光されるまでの光経路の長さを算出し、当該長さに基づいて測距装置100と物体との距離を算出する。
【0020】
図2は、測距装置100の投光系の動作を示す概念図である。図2において、光源11から出射された出射光ELは、出射光偏向素子12に入射される。出射光偏向素子12は、入射した出射光ELを走査対象領域Rに向けて反射させる。
【0021】
具体的には、出射光偏向素子12は、可動部MRを揺動して走査する態様で光ビームを走査対象領域R内に向けて反射させる。この結果、出射光偏向素子12によって反射された出射光ELの照射方向が変化する。具体的には、出射光ELは、出射光ELの反射方向にある仮想の面である仮想面VSにおいて、リサージュ軌跡が描かれるように出射光偏向素子12で反射される。測距装置100は、走査対象領域Rに存在する対象物OBの測距を行う。尚、仮想面VSは実在するものではない。また、仮想面VSで描かれる軌跡は、リサージュ軌跡でなくてもよい。仮想面VSで描かれる軌跡は、例えば、ラスタ走査による軌跡であってもよい。
【0022】
図3は、測距装置100の受光系の動作を示す概念図である。図3において、走査対象領域Rに対象物OBが存在すると、対象物OBから反射された反射光RLが反射光偏向素子21に入射され、受光素子22に入射される。受光素子22は、入射された反射光RLに基づいて電気信号に変換し距離測定部40に供給する。距離測定部40は、光ビームを出射した時刻と光ビームを受光した時刻に基づいて、対象物OBまでの距離を計測する。
【0023】
図4は、投光部10と受光部20の配置例を示している。図4に示すように、受光部20の各々は、投光部10の光軸FXに対する垂直方向において投光部10と離間して配置されている。具体的には、投光部10の光軸FXを中心軸として対称となる位置に一対の受光部20が配置されている。この一対の受光部20は、互いに異なる3カ所に設けられている。
【0024】
受光部20の各々は、投光部10の光軸FX上の所定の点P1を中心とする円の円弧AR上に配されている。受光部20の各々は、投光部10の光軸FX上の所定の領域RA内の点P1と各々の受光部20とを結ぶ線L1~L6の長さが等しくなる位置に配置されている。
【0025】
線L1と投光部10の光軸FX上の点P1における光軸FXとが成す角度を角度θ1とする。線L2と投光部10の光軸FX上の点P1における光軸FXとが成す角度を角度θ2とする。線L3と投光部10の光軸FX上の点P1における光軸FXとが成す角度を角度θ3とする
言い換えれば、角度θ1は、投光部10からの距離が最も遠い受光部20と点P1を結ぶ線L1が投光部10の光軸FXと成す角である。角度θ2は、線L1の受光部20よりも投光部10に近い受光部20と点P1を結ぶ線L2が投光部10の光軸FXと成す角である。角度θ3は、線L2の受光部20よりも投光部10に近い受光部20と点P1を結ぶ線L3が投光部10の光軸FXと成す角である。
【0026】
角度θ1は、角度θ2及び角度θ3よりも大きい。また、角度θ2は、角度θ3よりも大きい。従って、線L1,L2,L3が投光部10の光軸FXと成す角度θ1、θ2、θ3は、受光部20と投光部10との距離が遠くなるにつれて大きくなる。
【0027】
投光部10の光軸FX上の所定の点P1から各受光部20の距離が一定となるように、受光部20が配置されていることで、所定の点P1から各受光部20までのタイムオブフライト、すなわち、投光部10から出射光ELが出射されてから各々の受光部20が反射光RLを受光するまでの時間を一定にすることができる。
【0028】
以上のように本実施例の測距装置によれば、複数の受光部20が、投光部10の光軸FXに対する垂直方向において投光部10と離間して配され、複数の受光部20の各々が、反射光偏向素子21及び反射光RLを受光する受光素子22を含む。すなわち、複数の受光部20で測距装置100の受光系を構成することにより、1つの受光部20で受光系を構成した場合よりも各受光部20が有する開口を小さくすることができる。したがって、個々の受光部20を小さく構成することが可能となり、測距装置100の小型化を図ることが可能となる。
【0029】
また、測距装置100は、個々の受光部20によって生成された受光信号に基づいて測距を行うことにより、個々の受光部20の有する開口は小さくても、結果として、測距装置100の受光系が高い開口を有することができる。従って、測距装置100は、十分なSN比を有し且つ、装置の小型化を図ることが可能となる。
【0030】
尚、本実施例においては、投光部10は、光源11と、出射光偏向素子12を有するように説明したが、投光部10は、受光素子22を有して構成してもよい。このように、投光部10を構成した場合は、出射光ELと反射光RLとを分割するビームスプリッタを備えるようにするとよい。
【実施例2】
【0031】
実施例2に係る測距装置100について説明する。実施例2に係る測距装置100は、実施例1の測距装置100とは、受光部20の投光部10に対する配置位置が異なる。尚、実施例1と同一の構成については同一箇所に同一符号を付すことによって説明を省略し、以後同様とする。
【0032】
図5は、本実施例に係る測距装置100の投光部10と受光部20の配置例を示している。図5に示すように、受光部20と点P1を結ぶ線L2,L5は、投光部10の光軸FX上の所定の領域RA内の点P1において交わる。また、受光部20と点P2を結ぶ線L3,L4は、投光部10の光軸FX上の所定の領域RAから投光部10に近づく方向に位置する領域RB内の光軸FX上の点P2において交わる。さらに、受光部20と点P3を結ぶ線L1,L6は、投光部10の光軸FX上の所定の領域RAよりも投光部10から離れた方向に位置する領域RC内の光軸FX上の点P3において交わる。
【0033】
すなわち、測距装置100は、線L2,L5が領域RA内の点P1で投光部10の光軸FXと交わる2つの受光部20を含む一の受光部群G1を有する。また、測距装置100は、線L3,L4が領域RB内の点P2で投光部10の光軸FXと交わる2つの受光部20を含む一の受光部群G2を有する。さらに、測距装置100は、線L1,L6が領域RC内の点P3で投光部10の光軸FXと交わる2つの受光部20を含む一の受光部群G3を有する。
【0034】
以上のように、投光部10の光軸FXと受光部20と所定の点とを結ぶ線が交わる領域RA,RB、RCは、それぞれ投光部10からの受光部20の距離に応じて異なっている。すなわち、測距装置100は、3つの受光部群G1、G2,G3を有している。
【0035】
このため、投光部10の光軸FX上の点P1付近に対象物OBが存在する場合、受光部群G1に含まれる2つの受光部20が生成した受光受信に基づいて測距を行うことができる。同様に、光軸FX上の点P2付近に対象物OBが存在する場合、受光部群G2に含まれる2つの受光部20が生成した受光信号に基づいて測距を行うことができる。また、光軸FX上の点P3付近に対象物OBが存在する場合、受光部群G3に含まれる2つの受光部20が生成した受光信号に基づいて測距を行うことができる。
【0036】
したがって、本実施例に係る測距装置100によれば、投光部10の光軸FX上の点P1付近、点P2付近、点P3付近のいずれかに対象物OBが存在する場合、受光部群G1、G2,G3で受光する反射光RLのタイムオブフライトを一定にすることができる。このため、受光部群G1、G2,G3のいずれかに含まれる受光部20において生成される受光信号のピーク位置を揃えることが可能となる。したがって、測距装置100の測距の精度を高めることが可能となる。
【実施例3】
【0037】
実施例3に係る測距装置100について説明する。実施例3に係る測距装置100は、実施例1又は2の測距装置100とは、受光部20の投光部10に対する配置位置が異なる。
【0038】
図6は、本実施例に係る測距装置100の投光部10と受光部20の配置例を示している。図6において、複数の受光部20は、投光部10の光軸FXに対して垂直方向に沿って列状に配列されている。
【0039】
受光部20の光軸RX2,RX5が、投光部10の光軸FX上の所定の領域RAにおいて交わるように、一対の受光部20が配置されている。受光部20の光軸RX3,RX4が、投光部10の光軸FX上の所定の領域RBにおいて交わるように、一対の受光部20が配置されている。受光部20の光軸RX1,RX6が、投光部10の光軸FX上の所定の領域RCにおいて交わるように、一対の受光部20が配置されている。
【0040】
複数の受光部20の各々は、投光部10の光軸FX上の所定の領域RAとは異なる領域RB又はRCにおいて、複数の受光部20の光軸RX3,RX4又はRX1、RX6が互いに交わるように配置されている。具体的には、投光部10の光軸FXに対する垂直方向において、投光部10から離れている受光部20の光軸ほど投光部10から遠い投光部10の光軸FX上で交わるように各々の受光部20が配置されている。
【0041】
すなわち、測距装置100は、各々の光軸RX2,RX5が領域RA内の点P1で投光部10の光軸FXと交わる2つの受光部20を含む一の受光部群G1を有する。また、測距装置100は、各々の光軸RX3,RX4が領域RB内の点P2で投光部10の光軸FXと交わる2つの受光部20を含む一の受光部群G2を有する。さらに、測距装置100は、各々の光軸RX1,RX6が領域RC内の点P3で投光部10の光軸FXと交わる2つの受光部20を含む一の受光部群G3を有する。このように、投光部10から離れている受光部20の光軸ほど投光部10から遠い投光部10の光軸FX上で交わっている。
【0042】
また、各受光部20の受光面20aから垂直方向に伸びる光軸RX1~RX6と投光部10の光軸FXとは、鋭角の角度を有するように配されている。なお、各受光部20の受光面20aから垂直方向に伸びる光軸RX1~RX6と投光部10の光軸FXとが成す角度は、投光部10から離れるにつれて小さくなる。
【0043】
以上のように、複数の受光部20は、投光部10の光軸FXに対して垂直方向に沿って列状に配列されている。したがって、本実施例に係る測距装置100によれば、複数の受光部20を配置するスペースを小さくすることができ、装置の小型化を図ることが可能となる。
【0044】
また、受光部20の受光面20aから垂直方向に伸びる光軸RX1~RX6と投光部10の光軸FXとが成す角度は、投光部10から離れるにつれて小さくなる。すなわち、投光部10の光軸FX上の所定の位置で光軸RXが交わるように、各受光部群G1~G3に対応する受光部20の受光面20aを傾けて配置することによって、反射光偏向素子21の光反射面の角度を大きくすることなく、受光する反射光RLの光量を増加させることができる。したがって、設計可能な反射光偏向素子21の光反射面の最大角度に制限されることなく、測距装置100が受光する反射光RLの強度を高めることが可能となりSN比を高めることができる。
【実施例4】
【0045】
実施例4に係る測距装置100について説明する。実施例4に係る測距装置100は、実施例1乃至3の測距装置100とは、距離測定部40の処理が異なる。具体的には、距離測定部40は、受光部20の反射光RLの受光状況に応じて複数の受光部20を異なった態様で選択して測距をする。
【0046】
図7は、距離測定部40が受光部20を選択する処理フローを示している。
【0047】
図7に示すように、距離測定部40は、受光部20から受光信号を受信すると、受光信号に含まれる背景光の光量が予め定めた基準値を超えるか否かを判断する(ステップS101)。
【0048】
距離測定部40は、受光信号に含まれる背景光が予め定めた基準値を超えないと判断した場合(ステップS101:N)、当該受光部20が生成した受光信号を測距に用いる受光信号として選択する(ステップS102)。
【0049】
距離測定部40は、受光信号に含まれる背景光の光量が予め定めた基準値を超えると判断した場合(ステップS101:Y)、当該受光部20が生成した受光信号を測距に用いる受光信号から除外する。(ステップS103)。
【0050】
距離測定部40は、全ての受光部20で生成された受光信号の選択が完了したか判断する(ステップS104)。
【0051】
距離測定部40は、ステップS104の判断において、受光信号の選択が完了していないと判断した場合(ステップS104:N)、ステップS101の判断に戻る。
【0052】
距離測定部40は、ステップS104の判断において、受光信号の選択が完了したと判断した場合(ステップS104:Y)、ステップS102において選択した受光信号を用いて測距する(ステップS105)。
【0053】
以上のように、距離測定部40は、各々の受光部20が生成した受光信号のノイズの量に応じて受光信号を選択して測距する。したがって、本実施例に係る測距装置100によれば、距離測定部40が測距する処理において受光信号のノイズ量を減少させる、すなわちSN比を高めることができる。この結果、測距装置100の測距精度を高めることが可能となる。
【実施例5】
【0054】
実施例5に係る測距装置100について説明する。実施例5に係る測距装置100は、実施例4の測距装置100とは、距離測定部40の処理が異なる。具体的には、距離測定部40は、出射光ELが出射されてから各々の受光部20が反射光RLを受光するまでの時間(以下、計測時間とする)に応じて複数の受光部20を異なった態様で用いて測距をする。
【0055】
図8は、実施例5に係る測距装置100の距離測定部40が受光部20を選択する処理フローを示している。図8に示すように、距離測定部40は、受光部20から受光信号を受信すると、計測時間が予め定めた規定時間を超えるか否かを判断する(ステップS201)。
【0056】
距離測定部40は、計測時間が予め定めた規定時間を超えないと判断した場合(ステップS201:N)、当該受光部20が生成した受光信号を測距に用いる受光信号として選択する(ステップS202)。
【0057】
距離測定部40は、計測時間が予め定めた規定時間を超えると判断した場合(ステップS201:Y)、当該受光部20が生成した受光信号を測距に用いる受光信号から除外する(ステップS203)。
【0058】
距離測定部40は、全ての受光部20で生成された受光信号の選択が完了したか判断する(ステップS204)。
【0059】
距離測定部40は、ステップS204の判断において、受光信号の選択が完了していないと判断した場合(ステップS204:N)、ステップS201の判断に戻る。
【0060】
距離測定部40は、ステップS204の判断において、受光信号の選択が完了したと判断した場合(ステップS204:Y)、ステップS202において選択した受光信号を用いて測距する(ステップS205)。
【0061】
以上のように、距離測定部40は、計測時間に応じて、受光部20が生成した受光信号を選択して対象物OBまでの距離を測定する。すなわち、距離測定部40は、対象物OBまでの距離に応じて測距処理に使用する受光信号を選択する。
【0062】
したがって、本実施例に係る測距装置100によれば、タイムオブフライトが近い受光信号を用いて測距することができる。この結果、測距装置100の測距の精度を高めることが可能となる。
【実施例6】
【0063】
実施例6に係る測距装置100について説明する。実施例6に係る測距装置100は、実施例5の測距装置100とは、距離測定部40の処理が異なる。具体的には、距離測定部40は、計測時間に応じて、複数の受光部20の各々で計測された受光信号に対して重み付けを行い、対象物OBまでの距離を測定する。
【0064】
図9は、実施例6に係る測距装置100の距離測定部40が受光部20を選択する処理フローを示している。図9に示すように、距離測定部40は、受光部20から受光信号を受信すると、計測時間が予め定めた規定時間を超えるか否かを判断する(ステップS301)。
【0065】
距離測定部40は、計測時間が予め定めた規定時間を超えないと判断した場合(ステップS301:N)、当該受光部20が生成した受光信号に対して重み付けを行う(ステップS302)。
【0066】
距離測定部40は、全ての受光部20で生成された受光信号に対して重み付けが完了したか判断する(ステップS303)。
【0067】
距離測定部40は、ステップS303の判断において、受光信号に対して重み付けが完了していないと判断した場合(ステップS303:N)、ステップS301の判断に戻る。
【0068】
距離測定部40は、ステップS303の判断において、受光信号に対する重み付けが完了したと判断した場合(ステップS303:Y)、重み付けされた複数の受光信号を用いて測距する(ステップS304)。ここで重み付けとは、計測時間が規定時間よりも短い受光信号に対しては測距の処理に当該受光信号を使用する割合を減らす、又は、計測時間が規定時間よりも短い受光信号に対しては当該規定時間を超える計測時間に近付けるように計測時間が短い受光信号に補正を加える等である。
【0069】
ステップS301の判断において、距離測定部40は、計測時間が予め定めた規定時間を超えると判断した場合(ステップS301:N)、ステップS303の処理を行う。
【0070】
以上のように、測距装置100は、計測時間が規定時間よりも短い受光信号に対して重み付けを行い、測距する。したがって、本実施例に係る測距装置100によれば、データの信頼性を考慮して測距することができるため、精度が高い測距を行うことができる。
【実施例7】
【0071】
実施例7に係る測距装置100について説明する。実施例7に係る測距装置100は、実施例6の測距装置100とは、距離測定部40の処理が異なる。具体的には、距離測定部40は、計測時間が長くなるにつれて選択する受光部20を多くする。尚、本実施例においては、測距装置100は、6つの受光部20を有しているものとして説明する。
【0072】
図10は、実施例7に係る測距装置100の距離測定部40が受光部20を選択する処理フローを示している。図10に示すように、距離測定部40は、受光部20から受光信号を受信すると、計測時間が、予め定めた第1の規定時間を超えるか否かを判断する(ステップS401)。
【0073】
距離測定部40は、計測時間が予め定めた第1の規定時間を超えると判断した場合(ステップS401:Y)、6つの受光部20が生成した受光信号のうち全ての受光信号を選択する(ステップS402)。距離測定部40は、ステップS402において選択した受光信号を用いて測距する(ステップS403)。
【0074】
距離測定部40は、計測時間が予め定めた第1の規定時間を超えないと判断した場合(ステップS401:N)、計測時間が第1の規定時間よりも短い第2の規定時間を超えるか否かを判断する(ステップS404)。
【0075】
距離測定部40は、計測時間が予め定めた第2の規定時間を超えると判断した場合(ステップS404:Y)、6つの受光部20が生成した受光信号のうち相対的に計測時間が短い3つの受光信号を選択する(ステップS405)。距離測定部40は、ステップS405において選択した受光信号を用いて測距する(ステップS403)。
【0076】
距離測定部40は、計測時間が、予め定めた第2の規定時間を超えないと判断した場合(ステップS404:N)、計測時間が第2の規定時間よりも短い第3の規定時間を超えるか否かを判断する(ステップS406)。
【0077】
距離測定部40は、計測時間が予め定めた第3の規定時間を超えると判断した場合(ステップS405:Y)、6つの受光部20が生成した受光信号のうち相対的に計測時間が短い2つの受光信号を選択する(ステップS407)。距離測定部40は、ステップS407において選択した受光信号を用いて測距する(ステップS403)。
【0078】
距離測定部40は、計測時間が予め定めた第3の規定時間を超えないと判断した場合(ステップS405:N)、6つの受光部20が生成した受光信号のうち相対的に計測時間が短い1つの受光信号を選択する(ステップS408)。距離測定部40は、ステップS408において選択した受光信号を用いて測距する(ステップS403)。
【0079】
以上のように、距離測定部40は、計測時間に応じて測距に用いる受光信号を選択する。すなわち、計測時間が長い場合、測距装置100から対象物OBまでの距離は遠いため各々の受光部20の計測時間の差は短くなる。したがって、測距装置100が有している全ての受光部20の受光信号を用いて測距することにより、高い信号強度で測距することが可能となる。
【0080】
また、第1の規定時間よりも短く第2の規定時間よりも長い計測時間においては、各々の受光部20の計測時間の差が測距に影響を与える。そこで、距離測定部40は、計測時間が相対的に短い受光信号を用いて測距を行うことで、測距の精度を高めることができる。
【0081】
このように、距離測定部40は、計測時間に応じて測距に用いる受光部20を選択することで、誤差の少ない受光信号によって測距を行う。したがって、測距装置100は、精度が高い測距を行うことができる。なお、本発明では、受光信号の選択において上記の実施例には限定されない。例えば、計測時間が第1の規定時間を超える場合に選択する受光信号、計測時間が第2の規定時間を超える場合に選択する受光信号、計測時間が第3の規定時間を超える場合に選択する受光信号及び計測時間が第3の規定時間を超えない場合に選択する受光信号の各々の数は、順に小さくなっていることを条件に、任意に決めてもよい。
【実施例8】
【0082】
実施例8に係る測距装置100について説明する。実施例8に係る測距装置100は、実施例1乃至7の測距装置100とは、距離測定部40が行う測距処理が異なる。
【0083】
距離測定部40は、出射光ELの出射角度に応じて複数の受光部20が生成した受光信号の各々を異なる態様で用いて測距する。
【0084】
図11は、本実施例に係る測距装置100の投光部10と受光部20の配置例を示している。図11に示すように、投光部10は、中心軸CX上に配置されている。受光部20A~20Dは、中心軸CXの垂直方向において列状に配置されている。具体的には、中心軸CXに対して対称となる位置に一対の受光部20A、20Dが配置されている。また、中心軸CXに対して対称となる位置であって一対の受光部20A、20Dの間に一対の受光部20B,20Cが配置されている。
【0085】
投光部10は、中心軸CXに対する角度θEにおいて、出射光ELを出射する。対象物OBで反射された出射光ELは、反射光RLとして各受光部20A~20Dに入射する。
【0086】
ここで、測距装置100から対象物OBまでの距離を距離Zとする。図中において、各受光部20A~20Dから対象物OBまでの距離はそれぞれ異なる。具体的には、受光部20A~20Dから対象物OBまでの距離は、受光部20A、受光部20B、受光部20C、受光部20Dの順に長くなっている。
【0087】
図12は、受光部20Aが生成した受光信号A、受光部20Bが生成した受光信号B、受光部20Cが生成した受光信号C、及び受光部20Dが生成した受光信号Dを示している。図12において、受光信号A~DのピークPKの位置は、受光部20A~20Dから対象物OBまでの距離に応じて異なる。また、各受光信号A~DのピークPKの強度は弱く、ノイズNよりもわずかに強度が高い。
【0088】
図13は、図12の受光信号A~Dを加算して生成した合成信号を示している。図13に示すように、受光信号A~Dを全て加算して合成すると、各受光信号A~DのピークPKがノイズNに埋もれてしまいピークPKの位置を判別するのが困難である。また、各々の受光信号A~DのピークPKの位置がずれており、正確に対象物OBの測距をすることが困難である。
【0089】
距離測定部40は、出射光ELの出射角度に応じて複数の受光部20A~20Dが生成した受光信号A~Dの各々を補正して測距する。具体的には、距離測定部40は、出射光偏向素子12の出射角度θEに対する測定装置100と対象物OBまでの距離Zと、各受光部20に対する基準時刻からの計測時間の補正量を示した値を記憶したテーブルを有している。
【0090】
例えば、表1に示すように、出射角度θE1において、測距装置100から対象物OBまでの距離がZ1であるとき、一の受光部20に対する基準時刻からの補正量はΔTA1秒である。同条件での他の受光部20に対する基準時刻からの補正量はΔTB1秒である。このように、距離測定部40は、各受光部20の設置位置に応じた基準時刻からの補正量を示す値を記憶したテーブルを有している。
【0091】
【表1】
【0092】
図14は、受光部20A~20Dが生成した受光信号A~Dの補正例を示している。図14において、距離測定部40は、表1のテーブルを参照して各受光信号A~Dに対する基準時刻からの補正量に応じて受光信号A~Dを重ね合わせる。これにより、距離測定部40は、重ね合わされた受光信号に含まれる対象物OBからの反射光RLの信号強度が最大となった信号に基づいて、測距を行う。
【0093】
具体的には、距離測定部40は、受光信号Aについて基準時刻からの補正量ΔTA1を進めた位置に補正する。距離測定部40は、受光信号Bについて基準時刻からの補正量ΔTB1を進めた位置に補正する。距離測定部40は、受光信号Cについて基準時刻からの補正量ΔTC1を進めた位置に補正する。距離測定部40は、受光信号Dについて基準時刻からの補正量ΔTD1を進めた位置に補正する。
【0094】
図15は、図14の受光信号A~Dを加算して生成した合成信号を示している。図15に示すように、補正後の受光信号A~Dを全て加算して合成されると、合成信号のピークPKの強度が所定の位置でノイズよりも大きくなる。したがって、ピークPKを判別することが容易となる。また、各々の受光信号A~DのピークPKの位置が一致することにより、正確に対象物OBの測距をすることが可能である。
【0095】
このように、距離測定部40は、受光信号を揃えることにより、対象物OBからの反射光RLの信号強度を大きくすることで、反射光RLに対するノイズ量の軽減を図ることが可能となる。したがって、本実施例の測距装置によれば、高い精度で測距することが可能となる。なお、表1のテーブルは上記に限定されず、基準となる受光部20が計測した基準時刻から各受光部20にそれぞれ対応する当該基準時刻からの時間の補正量を示した値を記憶させてもよい。
【0096】
図16は、受光信号A~Dの他の補正例を示している。図16において、距離測定部40は、受光信号Aを基準時刻とし、受光信号B~Dに対して基準時刻からの時間の補正を行う。具体的には、距離測定部40は、受光信号Bについて基準時刻からの補正量ΔTB2を進めた位置に補正する。距離測定部40は、受光信号Cについては、基準時刻からの補正量ΔTC2を進めた位置に補正する。距離測定部40は、受光信号Dについて基準時刻からの補正量ΔTD2を進めた位置に補正する。
【0097】
このように受光信号A~Dの補正を行っても、受光信号A~Dのピークの位置を揃えることが可能となり、測距装置100は、高い精度で測距を行うことができる。
【符号の説明】
【0098】
100 測距装置
10 投光部
11 光源
12 出射光偏向素子
20 受光部
21 反射光偏向素子
22 受光素子
40 距離測定部
FX 投光部の光軸
RX1~RX6 受光部の光軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16