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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】炭酸飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
A23L2/00 T
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018060457
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019170194
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】名倉 香澄
【審査官】飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-086721(JP,A)
【文献】特開2015-006167(JP,A)
【文献】特開2017-104046(JP,A)
【文献】特開2015-180218(JP,A)
【文献】特開2016-158624(JP,A)
【文献】特開2015-136302(JP,A)
【文献】特開2014-060956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
甘味料と酸味料とを含み、さらに、トランス-2-ヘキセナール、ヘキサナール、及びシス-3-ヘキセノールからなる群より選択される1種以上の青葉の香りの香気成分を含み、酸度が0.01~0.08であり、甘味度が0.3~7.0であり、pHが5.0以下である、炭酸飲料。
【請求項2】
前記青葉の香りの香気成分を0.01~1.0ppm含有する、請求項1に記載の炭酸飲料。
【請求項3】
ガスボリュームが2.0~4.5である、請求項1又は2に記載の炭酸飲料。
【請求項4】
高甘味度甘味料を含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載の炭酸飲料。
【請求項5】
高甘味度甘味料を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の炭酸飲料。
【請求項6】
前記高甘味度甘味料がアセスルファムカリウムである、請求項5に記載の炭酸飲料。
【請求項7】
甘酸比が20~600である、請求項1~6のいずれか一項に記載の炭酸飲料。
【請求項8】
甘味料と酸味料とを含む炭酸飲料において、さらに、トランス-2-ヘキセナール、ヘキサナール、及びシス-3-ヘキセノールからなる群より選択される1種以上の青葉の香りの香気成分を含有させ、酸度を0.01~0.08に調整し、甘味度を0.3~7.0に調整し、pHを5.0以下に調整する、炭酸飲料の製造方法。
【請求項9】
甘味料と酸味料とを含む炭酸飲料において、さらに、トランス-2-ヘキセナール、ヘキサナール、及びシス-3-ヘキセノールからなる群より選択される1種以上の青葉の香りの香気成分を含有させ、酸度を0.01~0.08に調整し、甘味度を0.3~7.0に調整し、pHを5.0以下に調整する、炭酸飲料の苦味を改善させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸に由来する苦味の後引きが改善された炭酸飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸飲料は、飲用適の水に二酸化炭素を圧入した飲料や、これに甘味料、酸味料、フレーバリング等を加えた飲料である。フレーバリングには、果汁や香料等が主に使用されている。炭酸飲料の多くは、ラムネやコーラ、ジンジャーエールのように、甘味と酸味の両方が強いが、近年の健康志向、低カロリーへの訴求から、甘味が弱く、水のようにすっきりと飲める炭酸飲料のニーズが高まっている。
【0003】
水様の呈味の薄い炭酸飲料では、味の濃い炭酸飲料よりも、原料等に由来する様々な異臭や異味の影響を受けやすい。例えば、特許文献1には、水のように甘味、酸味、塩味が薄い炭酸飲料に対して難消化性デキストリンを含有させた場合に問題となる異臭を、難消化性デキストリンの含有量とガス圧を特定の範囲に調整することによって抑制する方法が開示されている。
【0004】
また、炭酸飲料における様々な呈味等の品質を改善する方法として様々な方法が知られている。例えば、特許文献2には、メントールを含む炭酸飲料において問題とされるメントールの苦味を、トランス-2-ヘキセナール(trans-2-hexenal)等の香気成分を添加することによって抑制し、後味のキレを改善する方法が記載されている。また、特許文献3には、所定の割合以上のリンゴ果汁を含有する炭酸飲料において、果実感を損なうことなく、炭酸によって強化されてしまうリンゴ果汁に由来する苦味と渋味を、糖酸比及びエステルとアルデヒドの比を特定の範囲内に調整することによって抑制できることが記載されている。その他、特許文献4には、ミネラルウォーターにおいて、有機酸塩及び/又はアミノ酸塩を含有させ、かつ酸度を特定の範囲内に調整することによって、水様の香味を保持しつつ、保存安定性を改善する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-174552号公報
【文献】特開2015-6168号公報
【文献】特開2014-60956号公報
【文献】特開2015-136302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
すっきりとした水様の風味を有する炭酸飲料を提供するための方法の一つとして、甘味を下げる(甘さを控える)ことが考えられる。しかし、炭酸飲料においては、甘味の強さが小さくなると、炭酸そのものに由来する苦味の後引きが強く感じられるようになる、という問題がある。
【0007】
本発明においては、微糖設計の炭酸飲料において、炭酸に由来する苦味の後引きが改善された炭酸飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、微糖設計の炭酸飲料において、甘味度の低い炭酸飲料に青葉の香りの香気成分を含有させることにより、炭酸に由来する苦味の後引きを抑え、後味を改善させられることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明に係る炭酸飲料、炭酸飲料の製造方法、及び炭酸飲料の苦味を改善させる方法は、下記[1]~[9]である。
[1] 甘味料と酸味料とを含み、さらに、トランス-2-ヘキセナール、ヘキサナール、及びシス-3-ヘキセノールからなる群より選択される1種以上の青葉の香りの香気成分を含み、酸度が0.01~0.08であり、甘味度が0.3~7.0であり、pHが5.0以下である、炭酸飲料。
[2] 前記青葉の香りの香気成分を0.01~1.0ppm含有する、前記[1]の炭酸飲料。
[3] ガスボリュームが2.0~4.5である、前記[1]又は[2]の炭酸飲料。
[4] 高甘味度甘味料を含まない、前記[1]~[3]のいずれかの炭酸飲料。
[5] 高甘味度甘味料を含む、前記[1]~[3]のいずれかの炭酸飲料。
[6] 前記高甘味度甘味料がアセスルファムカリウムである、前記[5]の炭酸飲料。
[7] 甘酸比が20~600である、前記[1]~[6]のいずれかの炭酸飲料。
[8] 甘味料と酸味料とを含む炭酸飲料において、さらに、トランス-2-ヘキセナール、ヘキサナール、及びシス-3-ヘキセノールからなる群より選択される1種以上の青葉の香りの香気成分を含有させ、酸度を0.01~0.08に調整し、甘味度を0.3~7.0に調整し、pHを5.0以下に調整する、炭酸飲料の製造方法。
[9] 甘味料と酸味料とを含む炭酸飲料において、さらに、トランス-2-ヘキセナール、ヘキサナール、及びシス-3-ヘキセノールからなる群より選択される1種以上の青葉の香りの香気成分を含有させ、酸度を0.01~0.08に調整し、甘味度を0.3~7.0に調整し、pHを5.0以下に調整する、炭酸飲料の苦味を改善させる方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、甘味が弱く、水様の風味を備えるにもかかわらず、炭酸に由来する苦味の後引きが改善され、後味が改善された炭酸飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明及び本願明細書において、「炭酸飲料」とは、炭酸ガスを含有する飲料を意味する。本発明に係る炭酸飲料は、アルコール飲料であってもよく、アルコール含量が1容量%未満であるいわゆるノンアルコール飲料又はローアルコール飲料であってもよい。
【0012】
本発明及び本願明細書において、炭酸飲料の「すっきり感」とは、喫飲後の口腔内の後味の残り難さを意味する。炭酸飲料のすっきり感が向上したとは、喫飲後の味の後引きが弱くなっており、特に炭酸に由来するエグ味や渋味が弱くなったことを意味する。
【0013】
炭酸飲料を含む清涼飲料水においては、一般的に、甘味と酸味のバランスが重要である。このため、一般的には、低カロリー化のために砂糖の配合量を低下させて甘味を弱めようとした場合には、甘酸比は一定の範囲内に維持されるように、甘味の低下に合わせて酸味も低下させる。例えば、サイダーやジンジャーエール、コーラといった一般的な炭酸飲料の甘酸比は30~140程度であるが、従来は、これらの炭酸飲料について甘味を低下させる場合には、甘酸比が大きく変動しないよう、酸味も一緒に低下させている。しかしながら、炭酸飲料において、水様の風味となるように甘味と酸味を大幅に低下させると、甘酸比を一定の範囲内に維持したままでは後味において炭酸に由来するエグ味や渋味が目立ってしまうことを、本発明者は見出した。炭酸に由来するエグ味や渋味は、甘味や酸味が十分に強い従来の炭酸飲料では感知されない味である。
【0014】
本発明に係る炭酸飲料は、甘味料と酸味料とを含み、酸度が0.01~0.08であり、甘味度が0.3~7.0であり、pHが5.0以下であり、さらに、トランス-2-ヘキセナール、ヘキサナール、及びシス-3-ヘキセノールからなる群より選択される1種以上の青葉の香りの香気成分を含む。酸度が0.01~0.08、かつ甘味度が0.3~7.0である、甘味と酸味が抑えられた炭酸飲料において、青葉の香りの香気成分を含有させることによって、炭酸に由来する苦味の後引きが抑制され、後味が良好な炭酸飲料が得られる。すなわち、甘味料と酸味料とを含む炭酸飲料において、酸度0.01~0.08に調整し、甘味度を0.3~7.0に調整し、pHを5.0以下に調整し、さらに青葉の香りの香気成分を含有させることにより、水のような飲みやすさを損なうことなく、苦味の後引きを改善し、後味を改善させることができる。
【0015】
本発明及び本願明細書において、「青葉の香りの香気成分」とは、トランス-2-ヘキセナール、ヘキサナール、又はシス-3-ヘキセノールである。本発明に係る炭酸飲料が含む青葉の香りの香気成分は、トランス-2-ヘキセナール、ヘキサナール、又はシス-3-ヘキセノールのいずれか1種類であってもよく、これらからなる群より選択される2種以上であってもよい。青葉の香りの香気成分の含有量としては、0.005~1.00ppmの範囲内であることが好ましく、0.01~1.0ppmの範囲内であることがより好ましく、0.01~0.80ppmの範囲内であることがさらに好ましく、0.01~0.50ppmの範囲内であることがよりさらに好ましく、0.01~0.30ppmの範囲内であることが特に好ましい。なお、炭酸飲料中の青葉の香りの香気成分の含有量とは、トランス-2-ヘキセナール、ヘキサナール、及びシス-3-ヘキセノールの総含有量を意味する。青葉の香りの香気成分の含有量が前記範囲内であることにより、炭酸に由来する苦味の後引きを改善することができる。さらに炭酸に由来するエグ味や渋味を抑えてすっきり感も改善し、かつ口当たりもなめらかにできるという観点から、青葉の香りの香気成分の含有量は、0.10~0.50ppmが好ましく、0.30~0.50ppmがより好ましい。
【0016】
本発明に係る炭酸飲料が含有する甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、砂糖(ショ糖やグラニュー糖を含む)、果糖、高果糖液糖、ぶどう糖、オリゴ糖、乳糖、はちみつ、水飴(麦芽糖)、糖アルコール、高甘味度甘味料等が挙げられる。高甘味度甘味料としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、キシリトール、グリチルリチン酸二ナトリウム、サッカリン、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、スクラロース、ネオテーム、アラビノース、カンゾウ抽出物、キシロース、ステビア、タウマチン、ラカンカ抽出物、ラムノース及びリボースが挙げられる。これらの甘味料は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を用いてもよい。本発明に係る炭酸飲料としては、青葉の香りの香気成分による炭酸由来の苦味の改善効果がより強く得られ、甘酸比を制御することによる後味改善効果がより十分に得られることから、高甘味度甘味料を含まない炭酸飲料であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る炭酸飲料において、甘味度は0.3~7.0の範囲内にある。甘味度は、製造する炭酸飲料の目的の製品品質に合わせて適宜調整することができる。ここで、飲料の甘味度とは、ショ糖の甘味の強さを標準とし、甘味の強さが同じショ糖水溶液のショ糖濃度に相当する。例えば、甘味度1とは、20℃における1g/100mL ショ糖水溶液と同じ甘味の強度であることを意味する。高甘味度甘味料を配合した飲料では、配合した高甘味度甘味料の甘味度の換算係数と配合比率に基づいて算出することができる。各甘味料の甘味度の換算係数は、ショ糖が1であり、ブドウ糖は0.7、果糖は1.3、乳糖は0.3、アセスルファムカリウムは200、総アスパルテームは200、スクラロースは600、エリスリトールは0.8、ステビアは400、ステビオサイドは200、レバウジオサイドAは270である。
【0018】
本発明に係る炭酸飲料が含有する酸味料としては、例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、コハク酸、氷酢酸、フマル酸、フィチン酸、リン酸及びそれらの塩等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0019】
本発明に係る炭酸飲料において、酸度は0.01~0.08である。ここで、酸度は、炭酸飲料中に含まれている酸の量をクエン酸の相当量として換算した値、すなわち、クエン酸酸度(g/100mL)として表した数値を指す。
【0020】
ここで、本明細書において、クエン酸酸度は、具体的には、フェノールフタレイン指示薬と水酸化ナトリウムとを用いて、以下の手順で滴定することにより求められるものである。
(1)スターラーを用いて、飲料中の炭酸ガスを常法により、除去する。
(2)200mL三角フラスコに対して5~15gの飲料を正確に秤量し、水を用いて50mL程度まで希釈する。
(3)希釈した前記飲料に対して1%フェノールフタレイン指示薬を数滴加えて撹拌する。
(4)三角フラスコ内の希釈飲料溶液をマグネティックスターラーで撹拌しながら、25mL容ビューレットに入れた0.1Mの水酸化ナトリウムを前記飲料溶液に滴下し、滴定試験を実施する。この滴定試験は、三角フラスコ内の飲料溶液の色が、30秒間赤色を持続した点を終点とする。
(5)クエン酸酸度(%)の値を、滴定試験の結果に基づき、次式によって算出する。
【0021】
クエン酸酸度(%)=A×f×(100/W)×0.0064 式(1)
[(式1)において、Aは、0.1M 水酸化ナトリウム溶液の滴定量(mL)を、fは、0.1M 水酸化ナトリウム溶液の力価を、Wは、飲料試料の質量(g)を示す。また、式(1)において乗算している「0.0064」という値は、1mLの0.1M 水酸化ナトリウム溶液に相当する無水クエン酸の質量(g)を指す。]
【0022】
なお、前記滴定試験においては、フェノールフタレイン指示薬に代えて、水素イオン濃度計を用いて実施してもよい。この場合、滴定試験の終点は、三角フラスコ内の飲料溶液のpHが8.1になった時とする。
【0023】
本発明に係る炭酸飲料の甘酸比は、炭酸由来の後味に残る苦味を十分に抑制できるため、20~600が好ましく、20~500がより好ましく、150~500がさらに好ましい。さらに、本発明に係る炭酸飲料が高甘味度甘味料を含む場合、高甘味度甘味料に由来する苦味の後引きの改善効果も高いことから、本発明に係る炭酸飲料の甘酸比は、200~500が好ましく、200~400がより好ましい。
【0024】
本発明に係る炭酸飲料は、pHが5.0以下である。pHが前記範囲内であることにより、甘酸比を前記範囲内に比較的容易に調整することができる。本発明に係る炭酸飲料のpHとしては、炭酸に由来する苦味の後引きとすっきり感の改善効果がより良好であることから、2.5~4.5の範囲内であることが好ましく、2.8~4.2の範囲内であることがより好ましく、2.8~4.2の範囲内であることがさらに好ましい。
【0025】
本発明に係る炭酸飲料のガスボリューム(炭酸ガスの圧力)は特に限定されるものではないが、充分な炭酸感が得られるため、2.0~4.5であることが好ましい。また、炭酸に由来する苦味の後引きとすっきり感の改善効果がより良好であることから、本発明に係る炭酸飲料のガスボリュームは2.5~4.2がより好ましく、3.0~4.0がさらに好ましい。
【0026】
ガスボリュームは、標準状態(1気圧、0℃)において、炭酸飲料全体の体積に対して、炭酸飲料に溶けている炭酸ガスの体積を表したものであるまた、炭酸飲料中のガスボリュームは公知の方法で測定することができる。例えば、市販の測定器(京都電子工業製ガスボリューム測定装置GVA-500A)を用いて測定することができる。
【0027】
また、本発明に係る炭酸飲料は、青葉の香りの香気成分以外の香料であって通常の飲料に用いられる香料(フレーバー)、果汁、香草、酸化防止剤、塩類などのミネラル、苦味料、着色料、酵母エキス、栄養強化剤、pH調整剤、消泡剤、乳化剤などを含んでもよい。
【0028】
例えば、香料としては、天然香料であってもよく、合成香料であってもよい。具体的には、フルーツフレーバー、植物フレーバー、ミルクフレーバー、ヨーグルトフレーバー、又はこれらの混合物が挙げられる。フルーツフレーバーにおける「フルーツ」や果汁が由来する「フルーツ」としては、例えば、レモン、オレンジ、蜜柑、グレープフルーツ、シークヮーサー、柚及びライム等の柑橘類、苺、桃、葡萄、林檎、パイナップル、マンゴー、メロン、及びバナナ等が挙げられる。これら香料は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を用いてもよい。
【0029】
栄養強化剤としては、ヒトをはじめとする動物が摂取することによりいずれかの生理機能が改善することが期待される成分であれば特に限定されるものではない。当該成分としては、例えば、水溶性食物繊維、ポリフェノール、カテキン類、等が挙げられる。これら栄養強化剤は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を用いてもよい。
【0030】
水溶性食物繊維とは、水に溶解し、かつヒトの消化酵素により消化されない又は消化され難い炭水化物を意味する。水溶性食物繊維としては、例えば、大豆食物繊維(可溶性大豆多糖類)、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、ガラクトマンナン、イヌリン、グアーガム分解物、ペクチン、アラビアゴム等が挙げられる。
【0031】
消泡剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン系消泡剤等が挙げられる。
乳化剤としては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、スクロース脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート等が挙げられる。
【0032】
本発明に係る炭酸飲料が容器詰飲料である場合、本発明に係る炭酸飲料を充填する容器としては、特に限定されるものではない。具体的には、ガラス瓶、缶、可撓性容器等が挙げられる。可撓性容器としては、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の可撓性樹脂を成形してなる容器が挙げられる。可撓性容器は、単層樹脂からなるものであってもよく、多層樹脂からなるものであってもよい。
【0033】
本発明に係る炭酸飲料は、一般的には、各原料を混合する方法(調合法)によって製造できる。例えば、具体的には、各原料を混合することにより、調合液を調製する調合工程と、得られた調合液に炭酸ガスを加えるガス導入工程と、により製造することができる。
【0034】
まず、調合工程において、原料を混合することにより、調合液を調製する。調合工程においては、炭酸ガス以外の全ての原料を混合した調合液を調製することが好ましい。各原料を混合する順番は特に限定されるものではない。原料水に、全ての原料を同時に添加してもよく、先に添加した原料を溶解させた後に残る原料を添加する等、順次原料を添加してもよい。また、例えば、原料水に、固形(例えば粉末状や顆粒状)の原料を混合してもよく、固形原料を予め水溶液としておき、これらの水溶液、必要に応じて原料水を混合してもよい。さらに、原料水に原料を加熱したものを入れてもよく、調製した調合液を加熱してもよい。
【0035】
調合工程において調製された調合液に、不溶物が生じた場合には、ガス導入工程の前に、当該調合液に対して濾過等の不溶物を除去する処理を行うことが好ましい。不溶物除去処理は、特に限定されるものではなく、濾過法、遠心分離法等の当該技術分野で通常用いられている方法で行うことができる。本発明においては、不溶物は濾過除去することが好ましく、濾過法により除去することがより好ましい。
【0036】
次いで、ガス導入工程として、調合工程により得られた調合液に炭酸ガスを加える。これにより、炭酸飲料を得る。なお、炭酸ガスの添加は、常法により行うことができる。例えば、調合工程により得られた調合液、及び炭酸水を混合してよく、調合工程により得られた調合液に炭酸ガスを直接加えて溶け込ませてもよい。
【実施例
【0037】
次に実施例及び参考例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。
【0038】
<炭酸飲料の炭酸に由来する苦味の後引きと後味のすっきり感の評価>
炭酸のガスボリュームを調整した炭酸水(炭酸を圧入しただけの水)について、後味のすっきり感と炭酸に由来する苦味を評価した。
具体的には、まず、炭酸圧入前の水(ガスボリュームが0.0)と、ガスボリュームが2.5及び3.5の炭酸水を調製した。次いで、炭酸に由来する苦味と後味のすっきり感について、ガスボリュームが0.0の水を基準(評点7)として、ガスボリュームが2.5及び3.5の炭酸水について、4人の専門パネルにより、表1に記載の基準で評価した。さらに、おいしさをガスボリュームが0.0の水を基準(評点4)として、7段階(1点は美味しくない、4点はどちらともいえない、7点が非常に美味しい)で評価した。なお、後味のすっきり感の評価のうち、「非常にすっきり(水と同程度)」とは、炭酸に由来する後味に残るエグ味や渋味が感じられないことを意味し、「非常にすっきりしない」とは、炭酸に由来する後味に残るエグ味や渋味が非常に強いことを意味する。評価結果を表2に示す。表2中、「GV」はガスボリュームである。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
以降の実験において、特に記載のない限り、ガスボリューム0.0の水を苦味とすっきり感の強度の評点の基準とした。すなわち、以降の実施例においては、ガスボリューム0.0の水を基準とした表1の評価基準に基づいて評価した。
【0042】
[参考例1]
市販されているサイダー2種(市販品A、E)、コーラ1種(市販品B)、オレンジ風味炭酸飲料2種(市販品C、D)について、糖度、酸度、甘味度、甘酸比、及び糖酸比を測定した。結果を表3に示す。なお、サイダーとしては、市販品Aが最もシェアが多い製品である。
【0043】
【表3】
【0044】
[実施例1]
甘味度と酸味度の低い炭酸飲料に、トランス-2-ヘキセナールを添加し、すっきり感と炭酸由来の苦味に対する影響を調べた。
具体的には、下記表4に記載の組成であるガスボリューム3.5の炭酸飲料を調製し、すっきり感と炭酸由来の苦味を評価した。評価結果を表5に示す。
【0045】
【表4】
【0046】
【表5】
【0047】
サンプル1~4の炭酸飲料の評点を比較すると、炭酸由来の苦味は、トランス-2-ヘキセナールの含有量依存的に改善された。
【0048】
[実施例2]
表6の組成でガスボリュームが3.5である炭酸飲料について、苦味等を官能評価した。なお、香料としては、青葉の香りの香気成分を含まない柑橘フレーバーを使用した。官能評価は、サンプル2~4の評価はサンプル1(表4のサンプル1に香料を配合した炭酸飲料)の評点を4点とし、サンプル6~11の評価はサンプル5の評点を4点として、5人の評価パネルによって行い、その平均値を各サンプルの評点とした。甘味料の後引きについては、7段階(1点は非常に強く後を引く、4点はどちらともいえない、7点が全く後引きがない)でそれぞれ評価した。評価結果を表7に示す。
【0049】
【表6】
【0050】
【表7】
【0051】
実施例1と同様に、サンプル1~4の炭酸飲料、サンプル5~9の炭酸飲料、サンプル10~11の炭酸飲料を比較すると、炭酸由来の苦味は、トランス-2-ヘキセナールの添加により改善され、その改善効果はトランス-2-ヘキセナールの含有量依存的に強い傾向が観察された。また、甘味料の後引きも、トランス-2-ヘキセナールの添加により改善された。トランス-2-ヘキセナールによる炭酸由来の苦味の改善効果と甘味料の後引きの改善効果は、いずれも甘酸比が380のサンプルのほうが、127のサンプルよりも改善幅が大きかった。甘酸比が76のサンプルでは、トランス-2-ヘキセナールの添加により、炭酸由来の苦味は改善されたものの、甘味料の後引きは改善されず、おいしさもかえって損なわれる傾向にあった。
【0052】
[実施例3]
表8の組成でガスボリュームが3.5である炭酸飲料について、苦味等を官能評価した。なお、香料は、実施例2と同じものを使用した。官能評価は、実施例2のサンプル1(表4のサンプル1に香料を配合した炭酸飲料)の評点を4点として、5人の評価パネルによって行い、その平均値を各サンプルの評点とした。評価結果を表9に示す。
【0053】
【表8】
【0054】
【表9】
【0055】
実施例1と同様に、いずれの甘酸比のサンプルであっても、炭酸由来の苦味は、トランス-2-ヘキセナールの添加により改善され、おいしさも良好となった。特に、サンプル1とサンプル2の比較、サンプル3とサンプル4の比較、及びサンプル5及びサンプル6の比較から、甘酸比が400以下の比較的低い炭酸飲料(サンプル1~4)のほうが、甘酸比が490と比較的高い炭酸飲料(サンプル5~6)よりも、トランス-2-ヘキセナールの添加による炭酸由来の苦味の改善効果が高いことがわかった。
【0056】
[実施例4]
高甘味度甘味料を含まない表10の組成でガスボリュームが3.5である炭酸飲料について、苦味等を官能評価した。なお、香料は、実施例2と同じものを使用した。官能評価は、サンプル2~5の評価はサンプル1の評点を4点とし、サンプル7~10の評価はサンプル6の評点を4点として、5人の評価パネルによって行い、その平均値を各サンプルの評点とした。なめらかな口当たりについては、7段階(1点は口当たりがなめらかではない、4点はどちらともいえない、7点が非常になめらかな口当たりである)でそれぞれ評価した。評価結果を表11に示す。
【0057】
【表10】
【0058】
【表11】
【0059】
高甘味度甘味料を含まない炭酸飲料においても、実施例1と同様に、炭酸由来の苦味は、トランス-2-ヘキセナールの添加量依存的に改善された。また、炭酸飲料のすっきり感、口当たりのなめらかさ、及びおいしさも、トランス-2-ヘキセナールの添加により改善されたが、トランス-2-ヘキセナールの添加量が1ppmの炭酸飲料ではこれらの評点は4点以下となった。すなわち、すっきり感、口当たりのなめらかさ、及びおいしさに対するトランス-2-ヘキセナールによる改善効果には、至適濃度があることがわかった。また、本実施例で確認された炭酸飲料におけるトランス-2-ヘキセナールによる炭酸の苦味の評点の向上幅は、実施例1~3のアセスルファムカリウムを含む炭酸飲料における向上幅よりも大きく、トランス-2-ヘキセナールによる炭酸の苦味改善効果は、アセスルファムカリウムのような高甘味度甘味料を含まない炭酸飲料のほうがより効果的に得られるといえた。
【0060】
[実施例5]
青葉の香りの香気成分として、トランス-2-ヘキセナールにかえてヘキサナール又はシス-3-ヘキセノールを含有させた表12の組成でガスボリュームが3.5である炭酸飲料について、苦味等を官能評価した。なお、香料は、実施例2と同じものを使用した。官能評価は、サンプル1の評点を4点として、5人の評価パネルによって行い、その平均値を各サンプルの評点とした。評価結果を表13に示す。
【0061】
【表12】
【0062】
【表13】
【0063】
サンプル1~4の炭酸飲料、サンプル1と5~7の炭酸飲料を比較すると、実施例1等のトランス-2-ヘキセナールを含有させた炭酸飲料と同様に、ヘキサナール又はシス-3-ヘキセノールを含有させた炭酸飲料も、これらの香気成分の含有量依存的に炭酸由来の苦味が改善されることが確認された。また、炭酸飲料のすっきり感、口当たりのなめらかさ、及びおいしさも、ヘキサナール又はシス-3-ヘキセノールの添加により改善されたが、これらの改善効果に対するヘキサナール又はシス-3-ヘキセノールの添加量には至適濃度があることが示唆された。