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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】自律型無人潜水機を用いた作業方法
(51)【国際特許分類】
   B63C 11/00 20060101AFI20220928BHJP
   B63C 11/48 20060101ALI20220928BHJP
   B63B 49/00 20060101ALI20220928BHJP
   B63B 45/08 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
B63C11/00 C
B63C11/48 D
B63B49/00 Z
B63B45/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018085821
(22)【出願日】2018-04-26
(65)【公開番号】P2019189112
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向田 峰彦
(72)【発明者】
【氏名】岡矢 紀幸
(72)【発明者】
【氏名】福井 厚市
(72)【発明者】
【氏名】立浪 史貴
(72)【発明者】
【氏名】加賀 裕樹
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-526148(JP,A)
【文献】米国特許第05844159(US,A)
【文献】特許第2898050(JP,B2)
【文献】特許第4779810(JP,B2)
【文献】特開2011-143907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 11/00
B63C 11/48
B63B 49/00
B63B 45/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中または水底に位置する作業対象物と帰還先との間で自律型無人潜水機を往復させながら、前記自律型無人潜水機を用いて前記作業対象物について作業する、自律型無人潜水機を用いた作業方法であって、
自律型無人潜水機を前記作業対象物に沿って航走させながら、前記自律型無人潜水機が有する作業装置で前記作業対象物について作業するステップと、
トランスポンダを投下して水底に沈めるステップと、
前記自律型無人潜水機を前記帰還先に向けて航走させるステップと、
水底に沈めた前記トランスポンダを利用した音響測位により得られた情報に基づいて、前記自律型無人潜水機を前記帰還先から、前記作業対象物についての作業を中断した作業中断位置の近傍まで航走させ、前記作業対象物についての作業を再開するステップと、を有し、
前記トランスポンダを投下するステップにおいて、下記条件(i)~(iii)の少なくとも1つが満たされたときに、前記トランスポンダを投下する、自律型無人潜水機を用いた作業方法。
(i)前記自律型無人潜水機のバッテリ残量が設定値を下回ったとき
(ii)前記自律型無人潜水機の移動距離が所定の距離を上回ったとき
(iii)前記自律型無人潜水機が行う作業に所定のデータの記憶が含まれる場合、前記自律型無人潜水機が記憶可能なデータ残容量が、設定量を下回ったとき
【請求項2】
前記トランスポンダを投下するステップにおいて、作業の中断を予定する位置の近傍または作業を中断した位置の近傍に向けて投下する、請求項1に記載の自律型無人潜水機を用いた作業方法。
【請求項3】
前記自律型無人潜水機を前記帰還先に向けて航走させるステップの前に、水底に沈めた前記トランスポンダを利用した音響測位により得られた情報に基づいて、前記作業対象物についての作業を中断した作業中断位置を記憶するステップを有する、請求項1または2に記載の自律型無人潜水機を用いた作業方法。
【請求項4】
前記自律型無人潜水機の上方を航行する水上船で、前記帰還先としての水中ステーションを曳航するステップを有し、
前記トランスポンダを投下するステップにおいて、前記水上船、前記水中ステーションまたは前記自律型無人潜水機から前記トランスポンダを投下する、請求項1~3のいずれか1項に記載の自律型無人潜水機を用いた作業方法。
【請求項5】
前記作業対象物についての作業を再開するステップの後に、前記トランスポンダを水上に浮上させるステップを有する、請求項1~のいずれか1項に記載の自律型無人潜水機を用いた作業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律型無人潜水機を用いた、例えば検査等の作業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、海底に敷設された海底パイプラインの検査や、海底地形図の作成等の水中での作業を行うための装置として、内蔵バッテリを動力源として水中を自律航走する自律型無人潜水機(AUV:Autonomous Underwater Vehicle。以下、AUVともいう。)の開発が進められている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5806568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、AUVを用いて水中作業を行う場合、例えばAUVの内蔵バッテリの充電や、作業途中段階までにAUVが取得したデータの確認、AUVが備える作業装置の取り替えなど様々な理由により、AUVに作業を中断させて、水上船または水中ステーションに一旦帰還させることが想定される。この場合、作業対象物と帰還先との間でAUVを往復させながら作業を進めることになる。
【0005】
帰還先から作業対象物における作業中断位置近傍に向けてAUVを航走させる方法としては、AUVに搭載された慣性航法装置(INS:Inertial Navigation System。)により帰還前のAUVの位置と方位(すなわち、作業を中断したAUVの位置と方位)を測定し、帰還先からAUVを当該測定した位置に戻すことが考えられる。ところが、慣性航法装置の位置情報は、時間と共に計測される誤差が累積するため、慣性航法装置を用いた位置計測では、帰還先から作業対象物の作業中断位置近傍に向けて精度良くAUVを航走させることが非常に困難である。
【0006】
そこで、本発明は、水中または水底に位置する作業対象物と帰還先との間でAUVを往復させながら作業対象物について作業する作業方法において、帰還先から作業対象物の作業中断位置近傍に向けて精度良くAUVを航走させることができる、AUVを用いた作業方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るAUVを用いた作業方法は、水中または水底に位置する作業対象物と帰還先との間でAUVを往復させながら、前記AUVを用いて前記作業対象物について作業する、AUVを用いた作業方法であって、AUVを前記作業対象物に沿って航走させながら、前記AUVが有する作業装置で前記作業対象物について作業するステップと、トランスポンダを投下して水底に沈めるステップと、前記AUVを前記帰還先に向けて航走させるステップと、水底に沈めた前記トランスポンダを利用した音響測位により得られた情報に基づいて、前記AUVを前記帰還先から、前記作業対象物についての作業を中断した作業中断位置の近傍まで航走させ、前記作業対象物についての作業を再開するステップと、を有する。
【0008】
上記の作業方法によれば、トランスポンダを投下して水底に沈めた後に、AUVに作業を帰還先に向けて航走させ、当該トランスポンダを利用した音響測位により得られた情報に基づいて、AUVを帰還先から作業中断位置近傍まで航走させる。このため、帰還先から作業対象物の作業中断位置近傍に向けて精度良くAUVを航走させることができる。
【0009】
上記の作業方法は、前記トランスポンダを投下するステップにおいて、作業の中断を予定する位置の近傍または作業を中断した位置の近傍に向けて投下してもよい。この作業方法によれば、AUVを帰還先から水底のトランスポンダに向けて航走させれば、容易にAUVを作業中断位置近傍まで航走させることができる。
【0010】
上記の作業方法は、前記AUVを前記帰還先に向けて航走させるステップの前に、水底に沈めた前記トランスポンダを利用した音響測位により得られた情報に基づいて、前記作業対象物についての作業を中断した作業中断位置を記憶するステップを有してもよい。この作業方法によれば、トランスポンダが着底した位置が作業中断位置から離れている場合でも、帰還先からAUVを作業中断位置近傍まで航走させることを可能にする。
【0011】
上記の作業方法は、前記AUVの上方を航行する水上船で、前記帰還先としての水中ステーションを曳航するステップを有し、前記トランスポンダを投下するステップにおいて、前記水上船、前記水中ステーションまたは前記AUVから前記トランスポンダを投下してもよい。
【0012】
上記の作業方法は、前記トランスポンダを投下するステップにおいて、下記条件(i)~(iii)の少なくとも1つが満たされたときに、前記トランスポンダを投下してもよい。
(i)前記AUVのバッテリ残量が設定値を下回ったとき
(ii)前記AUVの移動距離が所定の距離を上回ったとき
(iii)前記AUVが行う作業に所定のデータの記憶が含まれる場合、前記AUVが記憶可能なデータ残容量が、設定量を下回ったとき
【0013】
上記の作業方法は、前記作業対象物についての作業を再開するステップの後に、前記トランスポンダを水上に浮上させるステップを有してもよい。この作業方法によれば、作業対象物についての作業を再開させた後に、水底に沈んだトランスポンダを水上に浮上させるため、当該トランスポンダを水上船から回収することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水中または水底に位置する作業対象物と帰還先との間でAUVを往復させながら作業対象物について作業する作業方法において、帰還先から作業対象物の作業中断位置近傍に向けて精度良くAUVを航走させることができる、AUVを用いた作業方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る作業方法を実施する作業システムの概略構成図である。
図2】第1実施形態に係る作業方法における、パイプライン検査の流れを示すフローチャートである。
図3】第1実施形態に係る作業方法における、AUVが作業中断位置から水中ステーションに向かって航走する流れを説明する模式図である。
図4】第1実施形態に係る作業方法における、AUVが水中ステーションから作業中断位置へと航走し検査を再開する流れを説明する模式図である。
図5】第2実施形態に係る作業方法における、パイプライン検査作業の流れを示すフローチャートである。
図6】第2実施形態に係る作業方法における、AUVが作業中断位置から水上船に向かって航走する流れを説明する模式図である。
図7】第2実施形態に係る作業方法における、AUVが水上船から作業中断位置へと航走し検査を再開する流れを説明する模式図である。
図8】変形例に係る作業方法における、AUVからの投下用トランスポンダを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る作業方法について説明する。
【0017】
(作業システムの構成)
図1は、第1実施形態に係る作業方法を実施する作業システム100の概略構成図である。本実施形態の作業システム100は、AUV1、水上船2、および水中ステーション3を備える。本実施形態の作業システム100は、海底において例えば数十キロあるいは数百キロに亘って敷設された海底パイプライン(以下、「パイプライン」と呼ぶ。)L(図3および図4参照)について、その全長に亘ってAUV1を用いて検査作業を行うシステムである。
【0018】
AUV1は、パイプラインLに沿って航走しながら、パイプラインLを検査する。AUV1は、図略のボディを有する。AUV1のボディには、推進装置11、対象物検出装置12、検査装置14、受電装置15、バッテリ16、音響測位装置17、および音響通信装置18が設けられている。
【0019】
推進装置11は、AUV1のボディを水中で移動させる推力を発生させる。推進装置11は、例えばAUV1のボディを前方へ移動させるための主推進用スラスタ、AUV1のボディを上下方向に移動させるための垂直スラスタ、AUV1のボディを左右方向に移動させるための水平スラスタなど、複数の推進器およびAUV1の進路を変更する舵装置を含む。ただし、推進装置11は、これに限定されず、例えば推力を発生させる方向を変更可能な首振り式のスラスタを有していてもよい。
【0020】
対象物検出装置12は、作業対象物であるパイプラインLを検出して、当該パイプラインLの近傍に位置するAUV1のボディとパイプラインLとの位置関係を示す作業対象物情報を取得する。そして、制御装置13は、AUV1のボディがパイプラインLに対して一定の範囲内にある状態を維持しながらAUV1が当該パイプラインLに沿って航走するように、対象物検出装置12により取得した作業対象物情報に基づいて、推進装置11を制御する。
【0021】
対象物検出装置12は、例えばマルチビームソーナである。対象物検出装置12は、例えばAUV1のボディの前側下部に設けられ、AUV1の中距離前方のパイプラインLの曲がり具合やパイプラインL上の異物の有無に関する情報を、作業対象物情報として取得する。ただし、対象物検出装置12は、マルチビームソーナでなくてもよく、AUV1がパイプラインLを辿りながら航走することを可能にする情報を取得できるものであればよい。例えば対象物検出装置12は、形状把握用レーザでもよいし、マルチビームソーナと形状把握用レーザの双方を含んでもよい。また、対象物検出装置12が設けられる位置や個数も特に限定されない。
【0022】
検査装置14は、作業対象物であるパイプラインLを検査するための装置である。本実施形態では、検査装置14は、パイプラインLの上面または側面を撮像する撮像用カメラ(例えばテレビカメラ)である。AUV1のボディには、上述の制御装置13により制御される可動アームが設けられており、検査装置14は、当該可動アームの先端に設けられる。検査装置14である撮像用カメラで撮像した映像データは、作業者が目視検査するための検査データ(作業データ)として利用される。検査装置14は、本発明の「作業装置」に相当する。
【0023】
なお、検査装置14は、撮像用カメラに限定されない。検査装置14は、撮像用カメラの代わりにまたは撮像用カメラに加えて、例えばパイプラインLの全長に亘って防食処置(例えば防食塗装)の劣化の程度を検査する防食検査器、および腐食の程度や損傷の有無を検査するためにパイプラインLの肉厚を検査する肉厚検査器の一方または双方を含んでもよい。
【0024】
なお、本願の明細書および特許請求の範囲において、AUVが行う作業には、作業者が作業対象物の劣化の程度や異常の有無などを確認するための検査データ(作業データ)の取得が含まれる。すなわち、AUV自体が、作業対象物の劣化の程度や異常の有無などを判定してもよいし、判定しなくてもよい。
【0025】
受電装置15は、水中ステーション3が有する後述の給電装置33から供給される電力を受電する。受電装置15が受電した電力に基づき、バッテリ16が充電される。バッテリ16が蓄積する電力は、推進装置11などAUV1が備える上述の要素の作動に使用される。
【0026】
音響測位装置17は、後述する投下用トランスポンダ41またはトランスポンダ32とともに、投下用トランスポンダ41またはトランスポンダ32に対するAUV1の相対位置を測定する音響測位システムを構成する。音響測位装置17の詳細は後述する。
【0027】
音響通信装置18は、水上船2が備える後述の音響通信装置25との間で、音響を用いて通信を行う。音響通信装置18により、AUV1が有する各種装置が取得した情報(例えば、AUV1の位置、AUV1の機首方位、バッテリ16の残量など)をAUV1から水上船2に送信できる。後述する作業中断信号の送信または受信も、音響通信装置18または音響通信装置25により行われる。なお、音響測位装置17と音響通信装置18とは、一体的に構成されていてもよいし、別体であってもよい。
【0028】
本実施形態において、水上船2は、海上におけるAUV1の上方を航行して、適宜AUV1を支援する海上支援船である。具体的には、水上船2は、海上におけるパイプラインLの上方で水中ステーション3を曳航している。そして、この水中ステーション3を用いて、水上船2に揚収することなくAUV1への電力供給が可能である。
【0029】
なお、海上におけるAUV1の上方を航行する水上船2は、AUV1の真上に位置する必要はなく、AUV1を支援可能な範囲でパイプラインLに沿って航行すればよい。通常、AUV1に対して水上船2の速度は大きい。このため、水上船2は、AUV1が航走中に常に航行している必要ない。例えば、水上船2は、AUV1が航走中であっても、当該AUV1までの距離が当該AUV1を支援可能な範囲に収まりさえすれば、航行と停留とを繰り返してもよい。
【0030】
水上船2は、通信装置21、推進装置22、GPS(Global Positioning System)装置23、音響測位装置24、および音響通信装置25を備える。通信装置21は、水中ステーション3が備える後述の通信装置31と通信するための装置である。推進装置22は、水上を航行するための推力を発生させる装置である。GPS装置23は、海上における水上船2の位置情報を取得する装置である。
【0031】
音響測位装置24は、後述する投下用トランスポンダ41またはトランスポンダ32とともに、投下用トランスポンダ41またはトランスポンダ32に対する水上船2の相対位置を測定する音響測位システムを構成する。音響測位装置24の詳細は後述する。
【0032】
音響通信装置25は、AUV1が備える上述の音響通信装置18との間で、音響を用いて通信を行う。音響通信装置25により、AUV1が有する各種装置が取得した情報(例えば、AUV1の位置、AUV1の機首方位、バッテリ16の残量など)をAUV1から受信できる。なお、音響測位装置24と音響通信装置25とは、一体的に構成されていてもよいし、別体であってもよい。
【0033】
また、水上船2には、海中に投下可能な投下用トランスポンダ41(本発明の「トランスポンダ」に相当)が搭載されている。投下用トランスポンダ41は、AUV1が充電等のために作業を中断してパイプラインL近傍から水中ステーション3に帰還しなければならない場合に、AUV1がパイプラインLの検査作業を中断した位置(作業中断位置)を測位するためのものである。
【0034】
投下用トランスポンダ41には、海中に投下された後に海底に沈むように、例えばロープなどにより錘42(図3および図4参照)が結合されている。錘42が着底することにより、投下用トランスポンダ41の海底に対する位置、すなわち、投下用トランスポンダ41のパイプラインLに対する位置は一定となる。
【0035】
こうして海底における位置が定まった投下用トランスポンダ41に対して、作業中断位置にいるAUV1の音響測位装置17は、音波を送る。そして、その音波を検出した投下用トランスポンダ41は、音響測位装置17に応答波を送る。音響測位装置17は、投下用トランスポンダ41からの応答波に基づき、投下用トランスポンダ41に対するAUV1の位置、すなわちパイプラインLにおけるAUV1が作業を中断した作業中断位置を測定する。計測された作業中断位置(情報)は、AUV1が有する図略の記憶部に記憶される。
【0036】
なお、本実施形態における音響測位システムは、USBL(Ultra Short Base Line)方式の測位システムである。すなわち、音響測位装置17は、送波器と受波アレイとを有し、送波器から音波を送り、それを検出した投下用トランスポンダ41から送られる応答波を受波アレイで受ける。音響測位装置17は、投下用トランスポンダ41との間の音波の往復時間から投下用トランスポンダ41までの距離を計算するとともに、受波アレイ内の各素子へ到達した応答音波の位相差をもとに投下用トランスポンダ41の方位を特定する。また、水上船2が備える音響測位装置24も、音響測位装置17と同様にUSBL方式を採用した構成であるため、説明を省略する。
【0037】
このように、記憶される作業中断位置(情報)は、パイプラインLにおけるAUV1が作業を中断した位置を特定できる情報であればよく、音響測位装置17から投下用トランスポンダ41までの距離(情報)とあらかじめ測定しているAUV1の方位または音響測位装置17に対する投下用トランスポンダ41の方位(情報)とで構成される情報であってもよい。また、作業中断位置(情報)は、マップ等における座標情報などでもよい。
【0038】
なお、本実施形態の音響測位システムは、USBL方式の測位システムに限定されない。例えば、音響測位装置17は、AUV1のボディに3つ以上の受波器を互いに離間するように設けて、これらが受ける応答波の到達時間差をもとにAUVに対する投下用トランスポンダ41の方位を特定するSBL(Short Base Line)方式などでもよい。
【0039】
さらに、投下用トランスポンダ41は、所定のタイミングで浮上させて、水上船2に回収できるように構成されている。具体的には、投下用トランスポンダ41には、所定の音響信号を受信して、投下用トランスポンダ41から錘42を切り離す(すなわち、錘42と投下用トランスポンダ41との結合状態を解除する)切離し装置と、錘42から切り離された投下用トランスポンダ41を海上に浮上させる浮体物とが設けられている(いずれも図示略)。
【0040】
本実施形態において、水中ステーション3は、水上船2から延びるケーブル4に接続されており、水上船2が海上を航行すると、ケーブル4に引っ張られて曳航される。このケーブル4は、水上船2から水中ステーション3に電気を送るための送電線および水上船2と通信するための通信線を含む。
【0041】
水中ステーション3は、通信装置31、トランスポンダ32、および給電装置33を備える。通信装置31は、水上船2が備える上述の通信装置21と通信するための装置である。水中ステーション3の通信装置31と水上船2の通信装置21とは、ケーブル4を介して通信する。ただし、水中ステーション3の通信装置31と水上船2の通信装置21とは、無線で通信してもよい。
【0042】
トランスポンダ32は、AUV1が水中ステーション3にアプローチするために、音響測位装置17が水中ステーション3に対するAUV1の位置を測定するためのものである。AUV1が充電等のために作業を中断してパイプラインL近傍から水中ステーション3に帰還しなければならない場合、音響測位装置17は、トランスポンダ32に音波を送り、その音波を検出したトランスポンダ32は、音響測位装置17に応答波を送る。音響測位装置17は、トランスポンダ32からの応答波に基づき、トランスポンダ32に対するAUV1の位置を測定する。制御装置13は、トランスポンダ32にAUV1が近づくよう推進装置11を制御する。
【0043】
給電装置33は、AUV1の受電装置15に電力を供給する。本実施形態では、水中ステーション3は、AUV1とドッキング可能に構成されている。AUV1が水中ステーション3にアプローチし、水中ステーション3に対してドッキングすると、水中ステーション3の給電装置33からAUV1の受電装置15に電力供給可能な状態となる。本実施形態では、給電装置33は、受電装置15に非接触に電力を供給する非接触式の給電装置である。ただし、水中ステーション3とAUV1とをつなぐコネクタ等を介して電力を供給する接触式の給電装置であってもよい。
【0044】
(AUVを用いた作業の流れ)
次に、本実施形態に係る作業方法によるパイプラインLについての検査作業の流れについて、図2図4を参照しながら説明する。図2は、本実施形態に係る作業方法によるパイプラインLの検査の流れを示すフローチャートである。図3は、AUV1が作業中断位置から水中ステーション3に向かって航走する流れを説明する模式図である。図4は、AUV1が水中ステーション3から作業中断位置へと航走し検査作業を再開する流れを説明する模式図である。
【0045】
図2に示すように、本実施形態に係る作業方法では、まずAUV1をパイプラインLの検査作業を開始する作業開始位置に位置付ける(ステップS1)。
【0046】
ここで、AUV1をパイプラインLの作業開始位置に位置付ける方法の一例を説明する。パイプラインの検査作業では、パイプラインLがどの位置に配置されているかを示すマップ(以下、「パイプラインマップ」)を用意して、パイプラインLの作業開始位置と作業終了位置を予め決定する。作業開始時に、まずパイプラインマップとGPS装置23に基づき、パイプラインLの作業開始位置の上方に水上船2を位置づける。次に、水上船2とケーブルで繋がれた無人潜水機(ROV:Remotely Operated Vehicle。以下、ROVともいう。)を、水上船2から投下し、遠隔操作してパイプラインLの作業開始位置に位置付ける。その後、ROVを操作して、海底における作業開始位置近傍にトランスポンダを設置したあと、ROVを水上船2に揚収する。最後に、AUV1を水上船2から投下し、作業開始位置近傍に設置したトランスポンダを利用した音響測位により得られた情報に基づいて、AUV1を作業開始位置に航走させる。
【0047】
こうして、AUV1を、パイプラインLにおける作業開始位置に位置付けた後、図3(A)に示すように、AUV1をパイプラインLに沿って航走させながら、AUV1が有する検査装置14でパイプラインLを検査する。一方、水上船2は、上述のパイプラインマップとGPS装置23により得られる情報に基づいてパイプラインLに沿ってAUV1の上方を航行する。図3(A)に示すように、水上船2は水中ステーション3を曳航する(ステップS2)。
【0048】
その後、AUV1を水中ステーション3に帰還させる必要が生じたときに、水上船2から投下用トランスポンダ41を投下する。本実施形態では、AUV1のバッテリ16のバッテリ残量(情報)、パイプラインLにおけるAUV1が検査作業を行った部分の距離(移動距離)、および検査装置14により取得した検査データを記憶する記憶部における検査データを記憶可能なデータ残容量に基づいて、投下用トランスポンダ41を投下する(ステップS3)。具体的には、下記条件(i)~(iii)の少なくとも1つが満たされたときに、投下用トランスポンダ41を投下する。
(i)AUV1のバッテリ16のバッテリ残量が設定値を下回ったとき
(ii)AUV1の移動距離が所定の距離を上回ったとき
(iii)検査装置14の記憶部における検査データを記憶可能なデータ残容量が、設定量を下回ったとき
【0049】
具体的には、AUV1の制御装置13は、バッテリ16のバッテリ残量、AUV1の移動距離、検査装置14の記憶部のデータ残容量をモニタリングする。そして、AUV1の制御装置13は、上記条件(i)~(iii)の少なくとも1つが満たされたときに、AUV1の作業中断タイミングを示す信号(以下、「作業中断信号」と呼ぶ。)を、水上船2に、直接または水中ステーション3を介して送る。なお、「移動距離」は、AUV1が作業開始位置からパイプラインLに沿って作業した距離、あるいは、AUV1が作業中断位置から作業を再開した場合には、AUV1が当該作業中断位置からパイプラインLに沿って作業した距離である。
【0050】
水上船2では、作業中断信号をAUV1から受信した後に、図3(B)に示すように、投下用トランスポンダ41を投下して水底に沈める。投下用トランスポンダ41の投下は、水上船2の甲板などから船員の手作業で海中に投下される。ただし、投下用トランスポンダ41を投下する投下装置を水上船2に設けてもよく、この場合、投下装置による投下動作は、AUV1からの作業中断信号で自動的に実行されてもよいし、作業中断信号を受信したことを知った船員の手動操作により実行されてもよい。
【0051】
投下用トランスポンダ41が海底に到達した後、AUV1の音響測位装置17が、投下用トランスポンダ41を利用した音響測位により得られた情報に基づいて、パイプラインLの作業を中断した作業中断位置(正確に言えば、作業中断位置に対するトランスポンダ41の位置)を記憶する(ステップS4)。
【0052】
AUV1の音響測位装置17が、投下用トランスポンダ41を利用した音響測位により得られた情報に基づいて位置測定するタイミングは、特に制限されない。
【0053】
例えば、ステップS3で、AUV1は、作業中断信号を水上船2に送る時点で、AUV1は航走および作業を中断してもよい。この場合、AUV1は、投下用トランスポンダ41が投下されて海底に到達するまで、その場に待機する。そして、投下用トランスポンダ41(より詳しくは錘42)が海底に到達した後に、音響測位装置17は、作業中断位置を測定する。なお、投下用トランスポンダ41が海底に到達したことは、投下用トランスポンダ41の動きが十分に小さくなったことを検出して判断する。
【0054】
あるいは、例えば、ステップS3で、作業中断信号は、AUV1が航走および作業を中断することを予告するものであってもよい。例えば、AUV1が当該信号を水上船2に送ったときの位置から所定距離だけ航走したときに、AUV1は航走および作業を中断してもよいし、AUV1が当該信号を水上船2に送った時点から所定時間だけ航走したときに、AUV1は航走および作業を中断してもよい。この場合、水上船2では、作業中断信号を受信した後、AUV1が作業を中断する位置を予測して、その予測した位置にできるだけ近い位置に着底するよう投下用トランスポンダ41を投下してもよい。
【0055】
作業中断位置を記憶した後、図3(C)に示すように、AUV1の音響測位装置17と水中ステーション3のトランスポンダ32とで構成される音響測位システムにより得られた情報に基づいて、AUV1を、帰還先である水中ステーション3に向かって航走させる(ステップS5)。
【0056】
そして、図3(D)に示すように、AUV1が水中ステーション3に対してドッキングした後、AUV1と水中ステーション3とはその状況に応じた動作を実行する。例えば、バッテリ残量が少なくなったこと(言い換えれば、条件(i)が満たされたこと)に起因して、AUV1が水中ステーションに帰還した場合、水中ステーション3の給電装置33からAUV1の受電装置15に電力供給が行われ、バッテリ16が充電される。なお、AUV1が水中ステーション3に帰還した場合には必ずバッテリ16の充電を行なってもよい。水中ステーション3に対してドッキングしたAUV1は、作業途中段階までに取得した作業データを水中ステーション3に送信してもよいし、あるいは、次回の作業についてのAUV1への指示を水中ステーション3から受信してもよい。
【0057】
バッテリ16の充電が完了した後、図4(A)に示すように、投下用トランスポンダ41を利用した音響測位により得られた情報に基づいて、AUV1を水中ステーション3から作業中断位置まで航走させる。AUV1は、作業中断位置の近傍を、旋回しながらパイプラインを探索してもよい。そして、図4(B)に示すように、パイプラインLの検査作業を再開する(ステップS6)。
【0058】
なお、ステップS6で、AUV1を水中ステーション3から作業中断位置まで航走させる際に、AUV1の音響測位装置17と投下用トランスポンダ41との間で通信不能となった場合には、再びAUV1の音響測位装置17と水中ステーション3のトランスポンダ32との音響測位により得られた情報に基づいて、AUV1を水中ステーション3に戻す。
【0059】
AUV1がパイプラインLの作業を再開した後、図4(C)に示すように、投下用トランスポンダ41を海上に浮上させ、水上船2に回収する(ステップS7)。
【0060】
具体的には、投下用トランスポンダ41に設けられた切離し装置に、水上船2から所定の音響信号を送る。音響信号を受信した切離し装置は、投下用トランスポンダ41から錘42を切り離す。そして、当該切離し装置と投下用トランスポンダ41とは、当該投下用トランスポンダ41と結合した浮体物の浮力により海上に浮上する。浮上した投下用トランスポンダ41は、例えば、水上船2の音響測位装置24により得られた情報に基づいて位置を特定された後、船員に発見されて回収される。ただし、投下用トランスポンダ41を浮上させるための構成は、上述したものに限定されない。
【0061】
以上のステップS2~S7を、AUV1がパイプラインLにおける作業終了位置に到達するまで繰り返す(ステップS8:NO)。AUV1がパイプラインLにおける作業終了位置に到達すると(ステップS8:YES)、パイプライン検査作業を終了する。
【0062】
以上説明したように、本実施形態に係る作業方法によれば、投下用トランスポンダ41を投下して水底に沈めた後に、当該投下用トランスポンダ41を利用した音響測位により得られた情報に基づいて、パイプラインLの検査作業を中断した作業中断位置を記憶するとともに、当該投下用トランスポンダ41を利用した音響測位により得られた情報に基づいて、AUV1を帰還先である水中ステーション3から作業中断位置近傍まで航走させる。このため、帰還先から作業対象物の作業中断位置近傍に向けて精度良くAUV1を航走させることができる。
【0063】
また、本実施形態では、AUV1のバッテリ残量情報に基づいて、作業を中断できるため、充電タイミングを適正化して作業時間を短縮することができるとともに、バッテリ切れによりAUV1が航走不能となることを防ぐことができる。
【0064】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る作業方法について、図5図7を参照しながら説明する。本実施形態に係る作業方法を実施する作業システムは、第1実施形態の作業システム100とは、水上船2が水中ステーション3を曳航しない点で異なる。すなわち、本実施形態では、AUV1が水中ステーション3に帰還する代わりに、水上船2に帰還する。本実施形態および後述の変形例において、第1実施形態の作業方法と異なる点について主に説明し、第1実施形態と同じ要素については同一の符号を付して説明を省略する。
【0065】
図5は、本実施形態に係る作業方法によるパイプラインLの検査作業の流れを示すフローチャートである。図6は、AUV1が作業中断位置から水上船2に帰還する流れを説明する模式図である。図7は、AUV1が水上船2から作業中断位置へと航走し作業を再開する流れを説明する模式図である。
【0066】
図6および図7に示すように、水上船2には、トランスポンダ27が設けられている。トランスポンダ27は、AUV1が水上船2にアプローチするために、音響測位装置17が水上船2に対するAUV1の位置を測定するためのものである。
【0067】
図5に示すように、本実施形態に係るパイプラインLの作業方法では、第1実施形態と同様、まずAUV1をパイプラインLの作業開始位置に位置付ける(ステップT1)。
【0068】
AUV1を、パイプラインLにおける作業開始位置に位置付けた後、図6(A)に示すように、AUV1をパイプラインLに沿って航走させながら、AUV1が有する作業装置14でパイプラインLを検査する。一方、水上船2は、上述のパイプラインマップとGPS装置23により得られた情報に基づいてパイプラインLに沿ってAUV1の上方を航行する(ステップT2)。
【0069】
その後、第1実施形態と同様に、上述した条件(i)~(iii)の少なくとも1つが満たされたときに、図6(B)に示すように、投下用トランスポンダ41を投下する(ステップT3)。
【0070】
また、第1実施形態と同様に、投下用トランスポンダ41が海底に到達した後、AUV1の音響測位装置17が、投下用トランスポンダ41を利用した音響測位により得られた情報に基づいて、パイプラインLの検査作業を中断した作業中断位置を記憶する(ステップT4)。
【0071】
作業中断位置を記憶した後、図6(C)に示すように、AUV1の音響測位装置17と水上船2のトランスポンダ27とで構成される音響測位システムにより得られた情報に基づいて、AUV1を、水上船2に向かって航走させる。すなわち、AUV1を水上船2の近傍に浮上させ、その後、水上船2に揚収し、バッテリ16の充電を行う(ステップT5)。
【0072】
なお、AUV1を水上船2に帰還させる方法は、上述したものに限定されない。例えば、AUV1にトランスポンダを予め設けておき、AUV1を海上に浮上させた後で、水上船2が備える音響測位装置24により得られた情報に基づいてAUV1の位置を特定し、AUV1を揚収してもよい。
【0073】
バッテリ16の充電が完了した後、図7(A)に示すように、投下用トランスポンダ41を利用した音響測位により得られた情報に基づいて、水上船2から投下されたAUV1を作業中断位置まで航走させ、図7(B)に示すように、パイプラインLの検査作業を再開する(ステップT6)。
【0074】
第1実施形態と同様に、AUV1が検査作業を再開した後、図7(C)に示すように、投下用トランスポンダ41を海上に浮上させ、水上船2に回収する(ステップT7)。以上のステップT2~T7を、AUV1がパイプラインLにおける作業終了位置に到達するまで繰り返す(ステップT8:NO)。AUV1がパイプラインLにおける作業終了位置に到達すると(ステップT8:YES)、パイプライン検査作業を終了する。
【0075】
本実施形態でも、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0076】
(その他の実施形態)
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0077】
例えば上記実施形態では、AUVを用いた作業方法として、パイプラインLの検査作業が説明されたが、本発明に係るAUVを用いた作業方法はこれに限定されない。例えば、AUVを用いた作業方法は、検査作業でなくてもよく、パイプラインL等の作業対象物に対して補修、修理、メンテナンス、塗装、または、清掃を行う作業や、海底地形図を作成する作業などにも適用可能である。作業対象物は、海底パイプラインLであったが、作業対象物はこれに限定されず、海底に埋設された海底ケーブルなど、水中または水底に位置するものであればよい。AUVを用いた作業方法が、海底地形図を作成する作業に適用する場合、「水中または水底に位置する作業対象物」は、海底自体である。
【0078】
また、上記実施形態では、水上船2やそれに曳航される水中ステーション3をAUV1の帰還先とする例を説明したが、AUV1の帰還先は、これらに限定されず、例えば、水中または水底に設けられた構造体(例えば、水底設置型の水中ステーション)であってもよい。
【0079】
また、AUV1は作業中断位置から作業を再開しなくてもよく、作業中断位置の近傍から作業を再開できればよい。例えば、AUV1は、作業中断位置ではなく、作業中断位置よりも所定の距離だけ後方(AUV1が作業対象物に沿って航走する方向における後方)の位置から作業を再開してもよい。これにより、音響測位の誤差を吸収して、切れ目ない作業が可能となる。
【0080】
また、上記実施形態では、水上船2から投下用トランスポンダ2を投下したが、図8に示すように、AUV1から投下用トランスポンダ41を投下してもよい。この場合、AUV1の作業中断位置に極めて近い位置に投下用トランスポンダ41を位置づけることができ、AUV1を水中ステーション3または水上船2からより精度良く作業中断位置へと航走させることができる。また、水中ステーション3から投下用トランスポンダ41を投下してもよい。
【0081】
また、複数の投下用トランスポンダ41を投下して水底に沈めてもよい。この場合、複数の投下用トランスポンダ41を水上船2から互いに異なる方向に射出または放出することにより投下してもよいし、AUV1、および水中ステーション3のうちの少なくとも2つから投下用トランスポンダ2を投下してもよい。この場合、音響測位装置17は、各トランスポンダ41からの応答波の到達時間から得られる各トランスポンダ41との距離に基づき、AUV1の位置を測定してもよい(つまり、LBL方式を採用してAUV1の位置を測定してもよい)。
【0082】
また、本発明における「水底に沈めた(投下用)トランスポンダを利用した音響測位」には、USBLやSBL方式の音響測位システムを採用して、音響測位装置17から投下用トランスポンダ41までの距離(情報)と音響測位装置17に対する投下用トランスポンダ41の方位(情報)を取得するものの他、投下用トランスポンダ41と音響測位装置17との距離(情報)のみを取得することも含む。この場合、音響測位装置17は、投下用トランスポンダ41までの距離を取得し、当該距離と、投下用トランスポンダ41とパイプラインLの位置関係および/またはAUV1が備える慣性航法装置から取得する情報などに基づき、パイプラインLの検査作業を中断した作業中断位置を割り出してもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、上述の条件(i)~(iii)の少なくとも1つが満たされたときに、投下用トランスポンダ41を投下したが、投下用トランスポンダ41を投下するタイミングは、これに限定されない。例えば、AUV1の制御装置13は、バッテリ16のバッテリ残量、AUV1の移動距離、検査装置14の記憶部のデータ残容量のうちの1つまたは2つをモニタリングしてもよい。または、投下用トランスポンダ41を投下するタイミングを決定するための別の条件を設けてもよい。例えば、上述の条件(i)~(iii)に別の条件(例えば予め設定された目標地点にAUVが到達したとき)を加えて、それらのうちの少なくとも1つが満たされたときに、投下用トランスポンダ41を投下してもよい。
【0084】
また、AUVは、作業中断位置を必ず記憶しなくてもよい。この場合でも、作業中断位置の近傍にトランスポンダを投下させれば、AUVを帰還先から水底のトランスポンダに向けて航走させることで、AUVを作業中断位置近傍まで航走させることができる。
【0085】
また、上記実施形態では、AUV1の制御装置13が投下用トランスポンダ41を投下するタイミングを判定(具体的には、上述の条件(i)~(iii)の少なくとも1つが満たされるか否かの判定)を行なったが、投下用トランスポンダ41を投下するタイミングをAUV1側で判定しなくてもよい。例えば、AUV1から定期的にバッテリ残量情報などを水上船2に送り、水上船2または水中ステーション3に搭載された判定装置または水上船2上の作業者が、AUV1から送られてきた情報に基づき、投下用トランスポンダ41を投下するタイミングを判定または決定してもよい。水上船2または水中ステーション3にて投下用トランスポンダ41を投下するタイミングを判定または決定した場合、水上船2または水中ステーション3からAUV1に作業中断信号を送ることにより、AUV1に作業を中断するよう指示してもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、投下用トランスポンダ41を回収するために水上に浮上させたが、本発明の作業方法において、投下用トランスポンダ41は浮上させなくてもよい。例えば、AUV1から投下用トランスポンダ41を投下する場合、さらにAUV1は、投下したトランスポンダ41を回収する回収装置を備えてもよい。
【0087】
AUVは、ROVモードや手動運転モードに切り替え可能なものであってもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 :AUV(自律型無人潜水機)
2 :水上船
3 :水中ステーション(帰還先)
16 :バッテリ
17 :音響測位装置
41 :投下用トランスポンダ(トランスポンダ)
L :パイプライン(作業対象物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8