(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】潤滑剤用添加剤用途のために改善された粘度指数を有するポリ(メタ)アクリレート
(51)【国際特許分類】
C08F 220/12 20060101AFI20220928BHJP
C10M 145/14 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
C08F220/12
C10M145/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018089062
(22)【出願日】2018-05-07
【審査請求日】2021-04-26
(32)【優先日】2017-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ユンワン・カク
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-524965(JP,A)
【文献】特開2000-313865(JP,A)
【文献】特開平05-287028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/12
C10M 145/14
C10N 20/02
C10N 20/04
C10N 40/04
C10N 40/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油組成物中の粘度調整剤に好適なポリマーであって、前記ポリマーが、
1~4個の炭素のアルキル鎖長を有する短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位、及び12~20個の炭素のアルキル鎖長を有する長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位を少なくとも含む、88~96モルパーセントのアルキル(メタ)アクリレートモノマー単位であって、前記長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位と、前記短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位とのアルキルモル比が、2.0超及び5.5未満である、アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位と、0.1~6モルパーセントの2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートモノマー単位と、を含み、
前記ポリマーが100~500kg/モルの重量平均分子量を有する、ポリマー。
【請求項2】
下記要件(a)~(c)の少なくとも1つを満たす、請求項1に記載のポリマー:
(a) 前記ポリマーが、15~30モルパーセントの前記短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位、及び58~81モルパーセントの前記長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位を含む、
(b) 前記アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位が、メチル(メタ)アクリレート
モノマー単位、及びラウリル(メタ)アクリレート
モノマー単位の両方を含み、かつ前記ポリマーが、95モルパーセント以下の前記メチル(メタ)アクリレート
モノマー単位と、前記ラウリル(メタ)アクリレート
モノマー単位と、を組み合わせたものを含む、
(c)
前記アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位が、メチル(メタ)アクリレートモノマー単位、及びラウリル(メタ)アクリレートモノマー単位の両方を含み、かつ前記メチル(メタ)アクリレートモノマー単位、及び前記ラウリル(メタ)アクリレートモノマー単位のモルパーセントの合計と、前記2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートモノマー単位のモルパーセントとの(メタ)アクリレート比が、14超である。
【請求項3】
前記(メタ)アクリレート比が、16~20であり、前記ポリマーが、280以上330以下の粘度指数を有する、請求項2に記載のポリマー。
【請求項4】
前記ポリマーが、5~6モルパーセントの前記2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートモノマー単位を含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項5】
下記要件(d)及び(e)の少なくとも1つを満たす、請求項2に記載のポリマー:
(d) 前記アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位が、ブチル(メタ)アクリレートモノマー単位、または16~20個の炭素のアルキル鎖長を有する長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位のうちの1つ以上をさらに含み、かつ前記ポリマーが、15モルパーセント以下の前記ブチル(メタ)アクリレート
モノマー単位、及び7.5モルパーセント以下の16~20個の炭素の平均アルキル鎖長を有する前記アルキル(メタ)アクリレート
モノマー単位を含む、
(e) 前記ポリマーにおいて、5~9個の炭素のアルキル鎖長を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー単位が0.5モルパーセント未満であ
る。
【請求項6】
前記ポリマーが、15~30モルパーセントのメチル(メタ)アクリレート
モノマー単位、60~75モルパーセントのラウリル(メタ)アクリレート
モノマー単位、0~15モルパーセントのブチル(メタ)アクリレート
モノマー単位、0~7.5モルパーセントの16~20個の炭素のアルキル鎖長を有する長鎖アルキル(メタ)アクリレート
モノマー単位、及び0~7.5モルパーセントの窒素含有モノマー単位を含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項7】
潤滑油組成物であって、
50重量%超の基油と、重合したモノマー単位として、1~4個の炭素のアルキル鎖長を有する短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位、及び12~20個の炭素のアルキル鎖長を有する長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位の両方を含む、88~96モルパーセントのアルキル(メタ)アクリレートモノマー単位と、0.1~6モルパーセントの2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートモノマー単位と、を有する(メタ)アクリレートポリマーを含む、粘度指数向上剤と、を含み、前記長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位と、前記短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位とのアルキルモル比が、2.0超及び5.5未満であり、前記ポリマーが100~500kg/モルの重量平均分子量を有する、潤滑油組成物。
【請求項8】
下記要件(f)~(h)の少なくとも1つを満たす、請求項7に記載の潤滑油組成物:
(f) 前記(メタ)アクリレートポリマーが、15~30モルパーセントの前記短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位、及び58~81モルパーセントの前記長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位を含む、
(g) 前記アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位が、メチル(メタ)アクリレートモノマー単位、及びラウリル(メタ)アクリレートモノマー単位の両方を含み、かつ前記(メタ)アクリレートポリマーが、95モルパーセント以下の前記メチル(メタ)アクリレート
モノマー単位と、前記ラウリル(メタ)アクリレートモノマー単位と、を組み合わせたものを含む、
(h)
前記アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位が、メチル(メタ)アクリレートモノマー単位、及びラウリル(メタ)アクリレートモノマー単位の両方を含み、かつ前記メチル(メタ)アクリレートモノマー単位、及び前記ラウリル(メタ)アクリレートモノマー単位のモルパーセントの合計と、前記2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートモノマー単位のモルパーセントとの(メタ)アクリレート比が、14超である。
【請求項9】
前記(メタ)アクリレートモル比が、14超~20であり、前記(メタ)アクリレートポリマーが、280以上330以下の粘度指数を有する、請求項8に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
前記(メタ)アクリレートポリマーが、5~6モルパーセントの前記2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートモノマー単位を含む、請求項7に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
前記アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位が、ブチル(メタ)アクリレートモノマー単位、及び16~20個の炭素のアルキル鎖長を有する長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位のうちの1つ以上をさらに含み、かつ前記(メタ)アクリレートポリマーが、15モルパーセント以下の前記ブチル(メタ)アクリレートモノマー単位、及び7.5モルパーセント以下の16~20個の炭素のアルキル鎖長を有する前記長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位を含む、請求項7に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
下記要件(i)及び(j)の少なくとも1つを満たす、請求項7に記載の潤滑油組成物:
(i) 前記(メタ)アクリレートポリマーが、15~30モルパーセントのメチル(メタ)アクリレート
モノマー単位、60~75モルパーセントのラウリル(メタ)アクリレート
モノマー単位、0~15モルパーセントのブチル(メタ)アクリレート
モノマー単位、0~7.5モルパーセントの16~20個の炭素のアルキル鎖長を有する長鎖アルキル(メタ)アクリレート
モノマー単位、及び0~7.5モルパーセントの窒素含有モノマー単位を含む、
(j) 前記ポリマーにおいて、5~9個の炭素のアルキル鎖長を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー単位が0.5モルパーセント未満であ
る。
【請求項13】
前記基油組成物中の前記(メタ)アクリレートポリマーの処理率が、1~10重量パーセントである、請求項7に記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、潤滑油組成物中の粘度指数向上剤に好適なポリマーに関し、さらにこのようなポリマーを含む油組成物に関する。本開示はまた、(メタ)アクリレートモノマー由来のポリマー組成物、及び粘度調整剤として使用するのに好適なポリマー中の(メタ)アクリレートモノマー単位の種々のモル比にも関する。
【背景技術】
【0002】
鉱物油及び合成油潤滑剤、例えばドライブライン流体、エンジン油、または自動変速装置流体(ATF)は、広い温度変化にわたって必ずしも同じ機能を果たすわけではない。このような潤滑剤は、例えば、熱がこれらの粘度及び皮膜形成能力を低下させるため、高温において効果が低下する可能性がある。代替的に、潤滑剤はまた、潤滑剤の粘度が上昇するので、低温において効果が低下する可能性もある。この問題は、多くの油潤滑剤に共通しており、温度変化による潤滑油の粘度の変化に関する任意の尺度である、「粘度指数」(VI)に関して特徴付けることができる。VIが低いほど、温度変化による油の粘度変化が大きく、逆もまた同様である。潤滑剤の粘度は、その摩擦を減らす能力に密接に関連する。一般的に、依然として2つの移動表面を引き離す、最も粘度の低い潤滑剤が要望されている。潤滑剤の粘度が高すぎる場合、表面を移動させるのに大量のエネルギーを必要とし、潤滑剤の粘度が低すぎる場合、表面が接触し、摩擦が増加する。多くの潤滑剤用途、例えばエンジン油、ドライブライン流体、または自動変速装置流体の潤滑は、広範囲の温度にわたって一貫して作用する潤滑剤を必要とする。しかしながら、多くの潤滑剤は、自動車に必要とされる広範囲の温度にわたる一貫性を保つために十分に高いVIを本質的に有しない。
【0003】
この欠点に対処するための試みにおいて、粘度指数向上剤(「VII」)が、潤滑剤に添加され得る。粘度指数向上剤は、通常ポリマーであり、高温及び低温での潤滑剤の粘度変化を低減するために添加される。粘度指数向上剤が、低粘度油に添加される場合、粘度指数向上剤は、温度が上昇するにつれて、油を効果的に増粘させる。このことは、鉱物油の潤滑効果が、広範囲の温度にわたって広大され得ることを意味する。
【0004】
場合によっては、自動変速装置流体(ATF)は、変速機の時間に対する摩擦係数の変化(dμ/dt<0)の関数であると考えられる、シャダーの最小化(すなわち、耐シャダー特性)に役立つ。その上、自動変速装置のシフト特性は、ATFの摩擦特性に主に依存する。ATF流体は、典型的には、流体の寿命にわたる高くかつ安定した摩擦性能、良好な耐シャダー性能、及び広い温度範囲にわたる耐摩耗性能を有する必要がある。これらの特性は、しばしば、今日のATF潤滑剤組成物が、整備間隔を最大化する、またはさらに良好には、装置の寿命の間、油の整備を回避する必要もあるという要件とのバランスをとるための課題となる。これは、業界では、ライフタイムフィル(lifetime fill)または「フィルフォーライフ(fill-for-life)」流体と称される。したがって、経時的なATFの摩擦特性の維持、すなわち摩擦耐久性もまた、流体の所望の特性であり得る。
【0005】
潤滑剤成分、例えば粘度指数向上剤などの添加または濃度の増加を含む、潤滑油の摩擦特性を改善するうえでの幾つかの先の努力が試みられた。一例として、VIIの1つの型は、ポリ(メタ)アクリレート(PMA)ポリマーである。成分の添加または濃度の増加は、製造の複雑性を増大させ、かつ製品コストを増加させ得る。PMA添加剤が、VIIとして使用されてきたが、既知の例は、高度な構造を有し、製造コストを引き上げる高度な技術に依存し、粘度指数に関して中程度の効果しかもたらさない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】PMAポリマー中の、長鎖アルキル(メタ)アクリレートと、短鎖アルキル(メタ)アクリレートと、のアルキル比の関数としての、代表的なPMAポリマーの改善された粘度指数(VI)のグラフである。
【
図2】PMAポリマー中の、ラウリル(メタ)アクリレートと、メチル(メタ)アクリレートと、の合計と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)と、の(メタ)アクリレート比の関数としての、代表的なPMAポリマーの改善された粘度指数(VI)のグラフである。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、高い増粘力、高い粘度指数、及び/またはより良好な(より低い)ブルックフィールド粘度を有する、潤滑油組成物中の粘度調整剤に好適なポリマーに関する。一態様において、ポリマーは、1~4個の炭素のアルキル鎖長を有する短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位と、12~20個の炭素のアルキル鎖長を有する長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位と、を少なくとも含む、約88~約96モルパーセントのアルキル(メタ)アクリレートモノマー単位を含むことができる。ポリマーは、2.0超及び5.5未満である、長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位と、短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位と、のアルキルモル比を示すことができ、約0.1~約6モルパーセントの2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートモノマー単位をさらに含む。
【0008】
前項のポリマーはまた、1つ以上の追加の特徴と、個別にまたは組み合わせて、組み合わされ得る。これらの追加の特徴は、以下、ポリマーが、約15~約30モルパーセントの短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位、及び約58~約81モルパーセントの長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位を含むこと;アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位が、メチル(メタ)アクリレート、及びラウリル(メタ)アクリレートの両方を含み、ポリマーが、約95モルパーセント以下のメチル(メタ)アクリレートと、ラウリル(メタ)アクリレートと、を組み合わせたものを含むこと;メチル(メタ)アクリレートモノマー単位、及びラウリル(メタ)アクリレートモノマー単位のモルパーセントの合計と、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートモノマー単位のモルパーセントとの(メタ)アクリレート比が、約14超であること;(メタ)アクリレート比が、約16~約20であり、ポリマーが、約280以上の粘度指数を有すること;ポリマーが、約5~約6モルパーセントの2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートモノマー単位を含むこと;アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位が、ブチル(メタ)アクリレートモノマー単位、または16~20個の炭素のアルキル鎖長を有する長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位のうちの1つ以上をさらに含み、ポリマーが、15モルパーセント以下のブチル(メタ)アクリレート、及び約7.5モルパーセント以下の16~20個の炭素のアルキル鎖長を有するアルキル(メタ)アクリレートを含むこと;ポリマーが、5~9個の炭素のアルキル鎖長を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー単位を含まないこと;ポリマーが、少なくとも約100kg/モルの重量平均分子量を有すること;ポリマーが、少なくとも約150kg/モルの重量平均分子量を有すること;ポリマーが、少なくとも約200kg/モルの重量平均分子量を有すること;ポリマーが、約150~約500kg/モルの重量平均分子量を有すること;アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位が、メチル(メタ)アクリレートモノマー単位、ラウリル(メタ)アクリレートモノマー単位、任意選択でブチル(メタ)アクリレートモノマー単位、及び任意選択で16~20個の炭素の平均アルキル鎖長を有する長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位を含むこと;ポリマーが、約15~約30モルパーセントのメチル(メタ)アクリレート、約60~約75モルパーセントのラウリル(メタ)アクリレート、約0~約15モルパーセントのブチル(メタ)アクリレート、及び約0~約7.5モルパーセントの16~20個の炭素のアルキル鎖長を有する長鎖アルキル(メタ)アクリレートを含むこと;ポリマーが、約0~約7.5モルパーセントの分散剤モノマー単位を含むこと;及び/またはポリマーが、約1.5~約4.0の多分散性指数を示すこと、のうちの1つ以上を含む。
【0009】
別の態様において、本開示はまた、本明細書では、粘度指数向上剤を含む潤滑油組成物も提供する。一手法において、潤滑油組成物は、50重量%超である基油と、重合したモノマー単位として、1~4個の炭素のアルキル鎖長を有する短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位と、12~20個の炭素のアルキル鎖長を有する長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位と、の両方を含む、約88~約96モルパーセントのアルキル(メタ)アクリレートモノマー単位と、約0.1~約6モルパーセントの2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートモノマー単位と、を有する(メタ)アクリレートポリマーを含む粘度指数向上剤と、を含む。ポリマーは、2.0超及び5.5未満である、長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位と、短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位と、のアルキルモル比を有する。
【0010】
前項の潤滑油組成物はまた、1つ以上の任意選択の特徴と、個別にまたは組み合わせて、組み合わされ得る。これらの任意選択の特徴は、以下、(メタ)アクリレートポリマーが、約15~約30モルパーセントの短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位、及び約58~約81モルパーセントの長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位を含むこと;アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位が、メチル(メタ)アクリレートモノマー単位、及びラウリル(メタ)アクリレートモノマー単位の両方を含み、(メタ)アクリレートポリマーが、約95モルパーセント以下のメチル(メタ)アクリレートと、ラウリル(メタ)アクリレートモノマー単位と、を組み合わせたものを含むこと;メチル(メタ)アクリレートモノマー単位、及びラウリル(メタ)アクリレートモノマー単位のモルパーセントの合計を、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートモノマー単位のモルパーセントで割った値が、約14超の(メタ)アクリレートモル比であること;(メタ)アクリレートモル比が、14超~約20であり、(メタ)アクリレートポリマーが、約280以上の粘度指数を有すること;(メタ)アクリレートポリマーが、約5~約6モルパーセントの2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートモノマー単位を含むこと;アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位が、ブチル(メタ)アクリレートモノマー単位、及び16~20個の炭素のアルキル鎖長を有する長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位のうちの1つ以上をさらに含み、(メタ)アクリレートポリマーが、15モルパーセント以下のブチル(メタ)アクリレートモノマー単位、及び約7.5モルパーセント以下の16~20個の炭素のアルキル鎖長を有する長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位を含むこと;アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位が、メチル(メタ)アクリレートモノマー単位、12~15個の炭素のアルキル鎖長を有するラウリル(メタ)アクリレートモノマー単位、任意選択のブチル(メタ)アクリレートモノマー単位、及び任意選択の16~20個の炭素のアルキル鎖長を有する長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位を含み、(メタ)アクリレートポリマーが、約15~約30モルパーセントのメチル(メタ)アクリレート、約60~約75モルパーセントのラウリル(メタ)アクリレート、約0~約15モルパーセントのブチル(メタ)アクリレート、及び約0~約7.5モルパーセントの16~20個の炭素のアルキル鎖長を有する長鎖アルキル(メタ)アクリレートを含むこと;ポリマーが、約0~約7.5モルパーセントの分散剤モノマー単位を含むこと;ポリマーが、5~9個の炭素のアルキル鎖長を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー単位を含まないこと;ポリマーが、少なくとも約100kg/モルの重量平均分子量を有すること;ポリマーが、少なくとも約150kg/モルの重量平均分子量を有すること;ポリマーが、少なくとも約200kg/モルの重量平均分子量を有すること;ポリマーが、約150~約500kg/モルの重量平均分子量を有すること;潤滑油組成物中の(メタ)アクリレートポリマーの処理率が、約1~約10重量パーセントであること;及び/または(メタ)アクリレートポリマーが、約1.5~約4の多分散性指数を有すること、のうちの1つ以上を含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、独自のモノマーの組み合わせから合成される、改善された、高い粘度指数(VI)を提供する、新規の種類のポリ(メタ)アクリレート(「PMA」)ポリマーを説明する。これらのポリマーは、ドライブライン流体、エンジン油、及び/または自動変速装置流体を含むが、これらに限定されない潤滑油組成物での使用に特に好適である。ポリマー用の選択されたモノマーは、本明細書では、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルを含み、長鎖アルキルエステル及び短鎖アルキルエステルと、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(「HEMA」)との組み合わせの選択された量を含む。具体的には、ポリマーは、本明細書では、より簡単で低コストの直鎖状ランダムコポリマー技術に基づき、高い粘度指数を有するPMAを提供する。本明細書で記載される長鎖及び短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位の選択された濃度を有する、HEMA含有PMA粘度指数向上剤(「VII」)は、ポリマー主鎖中にアルキル官能基のみ、または本明細書で見出される、選択された関係の範囲内にないアルキル官能基を含有する、類似のPMAと比較して、より高いVIをもたらすことが、予想外に決定された。
【0012】
長鎖アルキルエステルモノマー(またはポリマー中のモノマー単位)は、エステル、例えばラウリル(メタ)アクリレート(「LMA」)、及びセチル-エイコシル(メタ)アクリレート(「CEMA」)などを含み、これらのモノマー及びモノマー単位は、下記に明記される。短鎖アルキルエステルモノマー(またはポリマー中のモノマー単位)は、エステル、例えばメチル(メタ)アクリレート(「MMA」)、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、及びn-ブチル(メタ)アクリレート(「n-BMA」)などを含む。一手法において、モノマーまたはモノマー単位の組み合わせは、約88モルパーセント~約96モルパーセントのアルキルエステルモノマーまたはモノマー単位、及び約10モルパーセント以下のHEMAモノマーまたはモノマー単位、及び好ましくは約0.1~約6モルパーセントのHEMAモノマーまたはモノマー単位、及び下記に明記される他の範囲、を含む。長鎖及び短鎖アルキルエステルの選択された比率と組み合わされたHEMAの存在からの、PMA主鎖中の2-ヒドロキシエチル官能基は、結果として生じるポリマーにより高いVIを与え、低温でPMAの収縮、高温でPMAの膨張を高めることができ、ポリマーの粘度指数値を高めることができる。本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリレート」は、用途の必要に応じて、メタクリレート及び/またはアクリレート両方のモノマーまたはモノマー単位(または混合物)を指す。
【0013】
高いVIのPMAポリマー及びこのようなポリマーを含む潤滑剤は、広範囲の温度にわたって改善された、一貫した性能を有し、したがって、自動車に利益、例えば燃費性能の向上などを提供することができる。上記のように、成分の添加または濃度の増加は、製造の複雑性を増大させ、かつ製品コストを増加させ得る。しかしながら、高いVIのPMA添加剤は、本明細書では、(ポリマーの高いVIによって)広範囲の温度にわたって利益、例えばこれらに限定されないが、具体的には自動変速装置における、車両燃費性能など、を提供する。これらの利益は、潤滑油中のVIIのより低い処理率で達成することができる。PMA添加剤は、当該技術分野において既知であるが、既知の例は高度な構造を有し、製造コストを引き上げる高度な技術に依存し、先のPMA添加剤はまた、高いVI向上を達成する能力が限られている、または同様の結果を達成するためにより高い処理率を必要し得る。本開示のPMA系VIIは、一方では、より簡単で低コストの直鎖状ランダムコポリマー技術を提供し、モノマーの関係の独自の選択を通して、先のポリマーよりもさらに高いVIを達成する。すなわち、本明細書で開示されるPMA粘度指数向上剤は、直鎖状ポリマーであるのが好ましく、長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位、短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位、及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)モノマー単位の混合物を、選択された量及び比率で含む。本開示は、本明細書で記載されるモノマーまたはモノマー単位の新規な組み合わせを含む、PMAポリマー(及びこのようなポリマーを含有する潤滑油)をさらに含み、PMAポリマーは、当該技術分野において既知の他のPMA系VIIに対して、驚いたことに、予想外に高い粘度指数を提供する。
【0014】
本開示のPMA系VIIの主要な長鎖官能基は、ラウリル(メタ)アクリレートまたはLMAモノマー単位であるが、これらの長鎖官能基はまた、より長い鎖、例えばセチル-エイコシル(メタ)アクリレートまたはCEMAモノマー単位なども含むことができる。同様に、本開示のPMA系VIIの主要な短鎖官能基は、メチル(メタ)アクリレートまたはMMAモノマー単位であるが、これらの短鎖官能基はまた、他の短鎖、例えばエチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、及びn-ブチル(メタ)アクリレートまたはn-BMAモノマー単位なども含むことができる。本開示のPMA系VII中に存在する場合、CEMAの存在量は、典型的には、10モルパーセント以下(好ましくは7.5モルパーセント未満)である。同様に、本開示のPMA系VII中に存在する場合、n-BMAの存在量は、典型的には、15モルパーセント以下(好ましくは10モルパーセント以下)である。
【0015】
さらに、本開示のPMA系VIIは、典型的には、5~9個の炭素の炭素鎖長を有する、中間アルキル鎖長官能基を備えた、モノマー及びモノマー単位を含まない。本明細書で使用される場合、「含まない」は、一般的には、約0.5モルパーセント未満、他の手法において、約0.25モルパーセント未満、他の手法において、約0.1モルパーセント未満、他の手法において、なしを意味する。
【0016】
本開示のPMA系VIIは、典型的には、合成されて、少なくとも10kg/モルの重量平均分子量、他の手法において、少なくとも約100kg/モル、他の手法において、少なくとも約150kg/モル、及びさらに別の手法において、少なくとも約200kg/モルを有する。他の実施形態において、本開示のPMA系VIIは、合成されて、約500kg/モル以下の重量平均分子量、他の手法において、約10~約500kg/モル、他の手法において、約150~約500kg/モル、及びさらに他の手法において、約200~約500kg/モルを有する。さらに他の実施形態において、本開示のPMA系VIIはまた、約10~約50kg/モルの重量平均分子量、他の手法において、約50~約100kg/モル、他の手法において、約100~約400kg/モル、他の手法において、約150~約400kg/モル、及びさらなる手法において、約200~約400kg/モルも有することができる。
【0017】
本開示はまた、基油、及び本明細書で記載されるようなPMA系VIIを含む、潤滑油組成物も含む。PMA系VIIは、典型的には、約1~約10重量パーセント(他の手法において、約3~約6重量パーセント、さらなる手法において、約3.5~約5.5重量パーセント)で、潤滑油組成物中に存在する。本明細書で使用される場合、PMA系VIIの重量パーセントは、潤滑油中のポリマー固体の重量パーセントを指し、潤滑油組成物に添加される際に、このようなポリマーに通常関連する、キャリア油または他の希釈剤を指すものではない(すなわち、油を含まないベースにおいて)。
【0018】
粘度指数向上剤ポリマー
【0019】
より詳細に見ると、一態様において、本開示は、潤滑油組成物中の粘度指数向上剤(VII)に好適なポリマーを含む。ポリマーは、長鎖及び短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーの両方と、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートモノマーとを組み合わせた選択された量の直鎖状ランダムポリマーの形態の、反応生成物を含む。幾つかの手法において、反応生成物(及び結果として生じるポリマー)は、1~4個の炭素のアルキル鎖長を有する短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー(またはモノマー単位)と、12~20個の炭素のアルキル鎖長を有する長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー(またはモノマー単位)と、の両方を少なくとも含む、約88~約96モルパーセントのアルキル(メタ)アクリレートモノマー(または結果として生じるポリマー中のモノマー単位)と、約10モルパーセント以下の2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートまたはHEMAモノマー(またはモノマー単位)と、の組み合わせを含み、他の手法において、約0.1~約10モルパーセントのHEMA、さらに他の手法において、約0.1~約6モルパーセントのHEMA、さらなる手法において、約1~約6モルパーセントのHEMAを含む。HEMAモノマーまたはモノマー単位のさらなる範囲は、下記で検討される。一手法において、ポリマーはまた、5~9個の炭素の中間アルキル鎖長を有する、アルキル(メタ)アクリレートモノマー(またはモノマー単位)を含まない。
【0020】
上記のように、ポリマーは、潤滑油中に相対的に低濃度のVIIを用いて、予想外に高い粘度指数及び増粘力を達成するために、種々のモノマーまたはモノマー単位間の選択された関係を含む。
【0021】
アルキル比:典型的には、本開示のPMA系VIIは、HEMAモノマー単位との組み合わせで、短鎖アルキル官能基と比較して、長鎖アルキル官能基のより高い存在量を有する。例えば、幾つかの手法において、ポリマーは、長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーまたはモノマー単位(すなわち、LMA及び/またはCEMA)と、短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーまたはモノマー単位(すなわち、MMA及び/またはn-BMA)と、のアルキルモル比、長鎖アルキル/短鎖アルキルモノマー単位のアルキル比として、約5.5未満、他の手法において、約2~約5.5、さらに他の手法において、約2.5から、約4未満または4未満を有する。本明細書では、HEMA濃度(及び好ましくは、約6モルパーセント未満のHEMA)とポリマー中で組み合わされる場合、この関係は、約280超、他の手法において、約280~約330、さらなる手法において、約290~約330の粘度指数を有するポリマーをもたらした。
【0022】
図1は、従来技術のポリマーと比較して、本開示のポリマーのこのアルキルモル比のグラフ表示を示す。
図1は、本開示のポリマーの(長鎖/短鎖モノマー単位のモルパーセントに関する)アルキルモル比が、4以上のアルキル比を有する従来技術のVII添加剤と比較して、VIにおいて約5~30ポイントの劇的な改善を引き起こすことができることを示す。従来技術のポリマーは、より高濃度のHEMAを含んでいた。
【0023】
他の実施形態において、本発明のPMA系VII中の長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーと、短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーと、のモル比は、約2超及び約5.5未満(例えば約2.5超及び約4未満、約2.0、約2.1、約2.2、約2.8、約3.2、約3.4、約3.5、または約3.8)である。
【0024】
(メタ)アクリレート比:他の手法において、本明細書では、ポリマーはまた、選択された(メタ)アクリレート比によって、部分的に高いVIも達成する。(メタ)アクリレート比は、メチル(メタ)アクリレートモノマーまたはモノマー単位、及びラウリル(メタ)アクリレートモノマーまたはモノマー単位のモルパーセントの合計と、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートモノマー及びモノマー単位のモルパーセントと、の比率(例えば、(MMA+LMA)/HEMA)である。例えば、この(メタ)アクリレート比は、好ましくは約14超、他の手法において、約14超~約20、さらに他の手法において、約16~約20、及びさらに他の手法において、約16~約19であり得る。代替の手法において、(メタ)アクリレート比は、約12未満、他の手法において、約11未満、さらに他の手法において、約7~約11であり得る。選択されたHEMAの量とポリマー中で組み合わされる場合、この(メタ)アクリレート関係は、約280超、他の手法において、約280~約330、さらなる手法において、約290~約330の粘度指数を有するポリマーをもたらした。
【0025】
図2は、従来技術のポリマーと比較して、本開示のポリマーのこの(メタ)アクリレート比(すなわち、(LMA+MMA)/HEMA)のグラフ表示を示す。
図2は、本開示のポリマーの約14超の(メタ)アクリレート比が、13~14の間の(メタ)アルキル比(すなわち、(LMA+MMA)/HEMA)比を有する従来技術のVII添加剤と比較して、VIにおいて約5~30ポイントの改善を引き起こすことができることを示す。ポリマー中のHEMA量と比較して、モノマーの選択された関係は、ポリマーの粘度指数のこのような劇的な上昇を引き起こすであろうことは予想外であった。
【0026】
より具体的には、
図1及び/または
図2は、当該技術分野において既知のPMAポリマーのVIは、一般的には、約275以下であり、一方で本開示のPMAのVIは、約280以上の範囲で、場合によっては、約280~約330であることを示す。したがって、このデータは、当該技術分野において既知のPMAの予期されるVIと比較して、本開示のPMAの予想外に改善されたVIの強い証拠を示す。
【0027】
短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーまたはモノマー単位:一実施形態において、ポリマーは、約10~約40モルパーセントの短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーまたはモノマー単位、他の手法において、約15~約30モルパーセント、及びさらに他の手法において、約15~約25モルパーセントの短鎖アルキル(メタ)アクリレートを含むことができる。短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーまたはモノマー単位は、1~4個の炭素原子のアルキル鎖長を有するものを含み、例えば下記の構造で示される、メチル(メタ)アクリレート、及びn-ブチル(メタ)アクリレートを含む。
【0028】
【0029】
式中、Rは、モノマーまたはその繰り返し単位がアクリレートの場合、水素原子であり、またはモノマーまたはその繰り返し単位がメタクリレートの場合、CH3であり、R1は、C1~C4炭素鎖である。他の手法において、ポリマーは、少なくとも約20モルパーセントの、本明細書で検討される他のモノマーまたは単位と組み合わされる、短鎖アルキル(メタ)アクリレート(さらに他の手法において、約20モルパーセント、約21.8モルパーセント、約25モルパーセント、または約30モルパーセント)を含むことができる。
【0030】
長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー:ポリマーはまた、約50~約85モルパーセント、他の手法において、約58~約81モルパーセントの長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーまたはモノマー単位も含むことができる。長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、下記の構造で示される12~20個の炭素のアルキル鎖長を有するものを含み、ラウリル(メタ)アクリレートまたはLMA(下記に定義されるように)、及びセチル-エイコシル(メタ)アクリレートまたはCEMA(下記に定義されるように)を含むことができる。
【0031】
【0032】
式中、Rは、モノマーまたはその繰り返し単位がアクリレートの場合、水素原子であり、またはモノマーまたは繰り返し単位がメタクリレートの場合、CH3であり、R2は、C12~C20アルキル鎖であり、R3は、C16~C20アルキル鎖、またはブレンド中のアルキル鎖の大部分がC16及び/またはC18であるC16~C20のブレンドであり、及びR4が、C12~C15アルキル鎖、またはブレンド中の大部分がC12であるC12~C15のブレンドである。さらに別の手法において、ポリマーは、少なくとも約60モルパーセントの、長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーまたはその繰り返し単位(例えば約60モルパーセント、約62.5モルパーセント、約65モルパーセント、約67.5モルパーセント、約69.8モルパーセント、約70モルパーセント、または約75モルパーセント)を含むことができる。
【0033】
幾つかの手法において、本明細書で使用される場合、長鎖アルキル(メタ)アクリレートLMAまたはラウリル(メタ)アクリレートは、C12~C15の範囲のアルキル鎖長を有する、(メタ)アクリレートモノマーまたはモノマー単位のブレンド、具体的には、ブレンド中に12、14、及び15個の炭素のアルキル鎖を含む。例えば、LMAまたはLMAブレンドは、多量のC12鎖を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーまたはモノマー単位を含むことができ、ブレンドに混合された少量のC14及びC15鎖を有するモノマーまたはモノマー単位をさらに含む。一手法において、LMAは、約67~約75モルパーセントのC12アルキル鎖を有するアルキル(メタ)アクリレート(他の手法において、約69~約75モルパーセントのC12鎖)を含むことができ、また約24~約30モルパーセントのC14アルキル鎖を有するアルキル(メタ)アクリレート(他の手法において、約25~約29のC14鎖)、約0~約3モルパーセントのC15アルキル鎖を有するアルキル(メタ)アクリレート(他の手法において、約1~約2モルパーセントのC15鎖)も含む。特に規定がない限り、この開示が、LMAまたはラウリル(メタ)アクリレートに言及する場合、上記モノマーまたはモノマー単位のブレンドが意図され、ブレンドのすべてのモノマーは、ランダムモノマー単位またはランダム繰り返しとしてのそれぞれの量で、ポリマー主鎖にランダムに重合される。
【0034】
幾つかの手法において、本明細書で使用される場合、長鎖アルキル(メタ)アクリレートCEMAまたはセチル-エイコシル(メタ)アクリレートは、C16~C20の範囲のアルキル鎖長を有する、(メタ)アクリレートモノマーまたはモノマー単位のブレンド、具体的には、16、18、及び20個の炭素を含む。例えば、CEMAモノマーブレンドまたはモノマー単位ブレンドは、多量のC16及びC18鎖と、少量のC20鎖を含むことができる。簡略化するために、本明細書では、CEMAモノマーまたはモノマー単位は、たとえそれが多量のC16及び/またはC18アルキル鎖を含有し得ても、C18アルキル鎖を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーまたはモノマー単位と称され得る。一手法において、CEMAモノマーは、約29~約36モルパーセントのC18アルキル鎖を有するアルキル(メタ)アクリレート(他の手法において、約30~約35モルパーセントのC18鎖)を含むことができ、また約46~約54モルパーセントのC16アルキル鎖を有するアルキル(メタ)アクリレート(他の手法において、約47~約53モルパーセントのC16鎖)、及び約9~約17モルパーセントのC20アルキル鎖を有するアルキル(メタ)アクリレート(他の手法において、約10~約16モルパーセントのC20鎖)も含む。幾つかの手法において、CEMAはまた、約4.5モルパーセント以下のC16より短いアルキル鎖を有する(メタ)アクリレートと、3モルパーセント以下のC20超のアルキル鎖と、を含むことができる。特に規定がない限り、この開示が、CEMAまたはセチル-エイコシル(メタ)アクリレートに言及する場合、上記モノマーまたはモノマー単位のブレンドが意図され、ブレンドのすべてのモノマーは、ランダムモノマー単位またはランダム繰り返し単位としてのそれぞれの量で、ポリマーにランダムに重合される。
【0035】
HEMA:HEMAまたは2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートは、下記に示される構造を有するヒドロキシエステル(メタ)アクリレートである。
【0036】
【0037】
式中、Rは、モノマーまたはその繰り返し単位がアクリレートの場合、水素であり、モノマーまたはその繰り返し単位がメタクリレートの場合、CH3である。一手法において、ポリマーは、約0.1~約10モルパーセントのHEMA、他の手法において、約0.1~約7.5モルパーセント、さらに他の手法において、約0.1~約6モルパーセント、及びさらに他の手法において、約1~約6モルパーセントを含む。さらに他の実施形態において、ポリマーは、約2~約6モルパーセントのHEMA、約3~約6モルパーセントのHEMA、約4~約6モルパーセントのHEMA、または約5~約6モルパーセントのHEMAを含有することができる。他の実施形態において、ポリマーは、約7.5~約10モルパーセントのHEMA、他の手法において、約5モルパーセント、約7.5モルパーセント、約8.4モルパーセント、または約10モルパーセントの2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含むことができる。さらなる手法において、ポリマーは、約0.1~6モルパーセントのHEMA、及びさらなる手法において、約1~6モルパーセントのHEMAを含むことができる。さらなる実施形態において、ポリマーは、約2~約4モルパーセントのHEMA、約2~約3モルパーセントのHEMA、または約1~約4モルパーセントのHEMAを含有することができる。幾つかの手法において、HEMAは、アミンまたは他の窒素含有化合物を含まない、またはこれらによって官能基化されていない。
【0038】
重合中、反応混合物中のモノマーは、モノマーオレフィン官能基で炭素-炭素結合をランダムに形成して、元の反応混合物中のモノマーの濃度に一致する、官能部分を有する炭素鎖(PMA)または側鎖の繰り返し単位またはモノマー単位を有する、直鎖状ランダムポリマーを形成する。種々のモノマーは、下記でさらに検討されるフリーラジカル重合または可逆的付加フラグメンテーション連鎖移動重合のどちらかを使用して、重合されて、下記の一般構造のランダムポリマーを形成する。
【0039】
【0040】
式中、Rは水素またはメチル基であり、aは約15~約30モルパーセントのMMAモノマー単位を提供するのに足りる整数であり、bは約1~約6モルパーセントのHEMAモノマー単位を提供するのに足りる整数であり、cは約0~約15モルパーセントのn-BMAモノマー単位を提供するのに足りる整数であり、dは約50~約75モルパーセントまたは約60~約75モルパーセントのLMAモノマー単位を提供するのに足りる整数であり、eは約0~約7.5モルパーセントのCEMAモノマー単位を提供するのに足りる整数である。R3及びR4は、先に記載された通りである。任意選択で、ポリマーはまた、分散剤モノマー単位も含むことができ、式中、R5は分散剤官能基を提供する部分であり、したがって、fは約0~約7.5モルパーセントの分散剤モノマー単位をポリマーに提供するのに足りる整数である。任意選択の分散剤モノマー単位は、下記でさらに検討される。上記の構造はまた、本明細書に記載されるようなこれらのモノマー単位の他の範囲を提供するのに足りる整数a、b、c、d、及びeも含むことができる。
【0041】
本明細書で使用される場合、モノマーは、一般的には、重合前の反応混合物内の化合物を指し、モノマー単位または(代替的に)繰り返し単位は、ポリマー主鎖内の重合されたモノマーを指す。種々のモノマーは、本明細書では、モノマー単位または繰り返し単位として主鎖内でランダムに重合される。検討がモノマーに言及する場合、ポリマー中のその得られたモノマー単位も意味する。同様に、検討がモノマー単位または繰り返し単位に言及する場合、関連モノマーまたは内部の繰り返し単位を有するポリマーを形成するのに使用されるモノマー混合物も意味する。
【0042】
一実施形態において、ポリマーは、少なくとも10kg/モルの重量平均分子量、他の手法において、少なくとも約100kg/モル、他の手法において、少なくとも約150kg/モル、及びさらに他の手法において、少なくとも約200kg/モルを有する。ポリマーはまた、約10kg/モル~約500kg/モル、他の手法において、約10kg/モル~約50kg/モル、さらなる手法において、約50~約100kg/モル、さらなる手法において、約100kg/モル~約500kg/モル、他の手法において、約150kg/モル~約500kg/モル、さらに他の手法において、約200~約500kg/モルの範囲の重量平均分子量を有することができる。
【0043】
ポリマーはまた、約1.5~約4.0、他の手法において、約1.5~約3.5、さらに他の手法において、約2~約4、さらに他の手法において、約2~約3.5の多分散性指数(PDI)を有することができる。
【0044】
一実施形態において、アルキル(メタ)アクリレートモノマーまたはモノマー単位は、メチル(メタ)アクリレート及びラウリル(メタ)アクリレートの両方を含み、ポリマーは、約95モルパーセント以下(他の手法において、90モルパーセント以下)のメチル(メタ)アクリレートモノマー単位と、ラウリル(メタ)アクリレートモノマー単位と、を組み合わせたものを含む。他の手法において、ポリマーは、約75モルパーセント~約95モルパーセント(例えば、75モルパーセント、77.5モルパーセント、80モルパーセント、82.5モルパーセント、85モルパーセント、88.3モルパーセント、及び90モルパーセント)のメチル(メタ)アクリレートと、ラウリル(メタ)アクリレートと、を組み合わせたものを含む。
【0045】
別の実施形態において、アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、ブチル(メタ)アクリレートモノマー単位、及び16~20個の炭素の平均アルキル鎖長を有する長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位の1つまたは両方をさらに含み、ポリマーは、15モルパーセント以下(他の手法において、約0~約15モルパーセント、約5~約15モルパーセント、約7.5~約12.5モルパーセント、または約10モルパーセント)のブチル(メタ)アクリレートと、7.5モルパーセント以下(他の手法において、約0~約7.5モルパーセント、約2~約7.5モルパーセント、約2~約5モルパーセント、約3.3モルパーセント、または約5モルパーセント)の16~20個(16及び/または18炭素が優位を占める)の炭素の平均アルキル鎖長を有するアルキル(メタ)アクリレートと、を含む。
【0046】
分散剤モノマー及び他のモノマー単位:ポリ(メタ)アクリレートポリマーは、本明細書では、(メタ)アクリル及び1つ以上の分散剤モノマーまたはモノマー単位を含む、他のモノマー及びモノマー単位によって任意選択で官能基化され得る。例えば、ポリマーは、ポリマー主鎖内に重合された、約0~約7.5モルパーセント(他の手法において、約1~約7.5モルパーセント)の1つ以上の分散剤モノマーもしくはモノマー、または他の(メタ)アクリルモノマーもしくはモノマー単位、の他のモノマー単位を含むことができ、分散剤官能基または他の官能基をポリマーに提供する。他の手法において、ポリマーは、約2~約6、約3~約4、または約3~約5モルパーセントの分散剤または他のモノマー単位を含むことができる。一手法において、分散剤モノマーまたはモノマー単位は、窒素含有モノマーまたはその単位であってもよい。使用される場合、このようなモノマーは、分散剤官能基をポリマーに付与することができる。
【0047】
幾つかの手法において、窒素含有モノマーは、(メタ)アクリルモノマー、例えばメタクリレート、メタクリルアミドなどであってもよい。幾つかの手法において、窒素含有部分とアクリル部分との結合は、窒素原子または代替的に酸素原子を通してのものであってもよい。この場合、モノマーの窒素は、モノマーの他の場所に配置される。窒素含有モノマーはまた、(メタ)アクリルモノマー以外、例えばビニル置換窒素複素環式モノマー及びビニル置換アミンなどであってもよい。窒素含有モノマーは、よく知られており、例としては、例えば、US6,331,603に開示されている。他の好適な分散剤モノマーとしては、ジアルキルアミノアルキルアクリレート、ジアルキルアミノアルキルメタクリレート、ジアルキルアミノアルキルアクリルアミド、ジアルキルアミノアルキルメタクリルアミド、N-第三級アルキルアクリルアミド、及びN-第三級アルキルメタクリルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。ここで、アルキル基またはアミノアルキル基は、独立して1~8個の炭素原子を含有することができる。例えば、分散剤モノマーは、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートであってもよい。窒素含有モノマーは、例えばt-ブチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルイミダゾール、またはN-ビニルカプロラクタムであってもよい。窒素含有モノマーまたは、WO2005/087821に開示されている、4-フェニルアゾアニリン、4-アミノジフェニルアミン、2-アミノベンズイミダゾール、3-ニトロアニリン、4-(4-ニトロフェニルアゾ)アニリン、N-(4-アミノ-5-メトキシ-2-メチル-フェニル)-ベンズアミド、N-(4-アミノ-2,5-ジメトキシ-フェニル)-ベンズアミド、N-(4-アミノ-2,5-ジエトキシ-フェニル)-ベンズアミド、N-(4-アミノ-フェニル)-ベンズアミド、4-アミノ-2-ヒドロキシ-安息香酸フェニルエステル、及びN、N-ジメチル-フェニレンジアミンを含む、任意の芳香族アミンに基づく、(メタ)アクリルアミドであってもよい。
【0048】
増粘力:本開示の独自のPMA系VIIは、予想外により高い増粘力を有する。すなわち、潤滑油中のVIIポリマーの低い処理率で、より高い粘度を提供する。ポリマー鎖中に重合されたHEMAを有するポリマーは(ならびに本明細書で記載される他の特定のモノマー及びモノマー単位の関係を使用した場合)、本明細書では、VIIポリマーのより低い処理率で、潤滑油を目標のKV100粘度まで増粘する。
【0049】
本明細書で使用される場合、増粘力は、潤滑油組成物の目標のKV100粘度、例えば、潤滑油中のPMA系VIIポリマーの相対的により低い処理率で、約5.9~約6.1cStなどを達成するための、粘度指数向上剤ポリマーの能力を指す。例えば、典型的な基油は、約2.2~約2.4cStの粘度を有することができる。通常のDI添加剤パッケージ(すなわち、分散剤、洗剤、他の添加剤など)で処理された基油は、約2.6~約2.8cStのKV100粘度を有することができる。したがって、本明細書で使用される場合、粘度指数向上剤の増粘力は、潤滑油のKV100粘度を、目標のKV100粘度、例えば本明細書では、油の約5.9~6.1cStなどに、最も少ないVIIの添加量を用いて、さらに上昇させるためのVIIポリマーの能力である。例えば、(本明細書に記載されるような、これらのモノマー単位の選択されたモノマー単位、及び比率、及び関係を有する)本開示のPMA系VIIの増粘力は、約0.59cSt/重量パーセント超であり、他の手法において、約0.59~約0.96cSt/重量パーセントである。増粘力は、特定の温度で、基油組成物中のVIIポリマー固形の同じ重量パーセント当たりの、潤滑油の粘度上昇を指す。増粘力は、ΔKV100(目標のKV100-基油及びDIパッケージのKV100)を、VIIの処理率で割ることにより算出される。ポリマーの例示的な増粘力は、本明細書では、下記の表5に見出すことができる。
【0050】
潤滑油組成物
【0051】
別の態様において、本開示は、上記に記載された独自のPMA系VIIを含む、潤滑油組成物を含む。潤滑油組成物は、ドライブライン油、自動車変速装置流体、エンジン油などであってもよい。一手法において、潤滑油組成物は、50重量%超の基油、及び少なくとも本明細書で記載されるポリ(メタ)アクリレートポリマーを含む、粘度指数向上剤を含む。潤滑油組成物はまた、下記でさらに検討されるように、他の添加剤または成分も含むことができる。
【0052】
この態様の一実施形態において、潤滑油組成物中の(メタ)アクリレートポリマーの(油を含まないベースでの)処理率は、約1~約10重量パーセント、他の手法において、約1~約5重量パーセント、さらに他の手法において、約2.5~約7.5重量パーセントである。幾つかの手法において、潤滑油組成物は、約3.4%、約3.5%、約3.7%、約4.0%、約4.2%、約4.3%、約4.6%、約4.8%、約4.9%、約5.2%、約5.3%、約5.4%、または約5.6%の粘度指数向上剤としての(メタ)アクリレートポリマーを含むことができる。
【0053】
本明細書で使用される場合、「油組成物」、「潤滑組成物」、「潤滑油組成物」、「潤滑油」、「潤滑剤組成物」、「完全に配合された潤滑剤組成物」、及び「潤滑剤」という用語は、同義語で、完全に互換性のある用語と見なされ、多量の基油、及び少量の粘度指数向上剤、及び他の任意選択の成分を含む、完成された潤滑生成物を指す。幾つかの手法において、潤滑油組成物は、自動変速装置流体であってもよく、このような用途において、約30,000cP(センチポアズ、動的粘度の単位)以下の、幾つかの手法において、約5,000~約20,000cPの間の、ASTM-2983を使用した、-40℃でのブルックフィールド粘度を有し得る。他の手法において、これらの潤滑油組成物の100℃での動粘度は、約3.5~約7.0cStの範囲である。
【0054】
基油:本明細書で使用される場合、「基油」という用語は、American Petroleum Institute(API)カテゴリー群の群I-V油に分類された油、ならびに動物油、植物油(例えば、ヒマシ油及びラード油)、石油、鉱物油、合成油、及び石炭または頁岩由来の油を一般的に指す。American Petroleum Instituteは、これらの異なるベースストック型を、以下のように分類している。群I、0.03重量パーセント超の硫黄、及び/または90体積パーセント未満の飽和脂肪酸、80~120の間の粘度指数;群II、0.03重量パーセント以下の硫黄、及び90体積パーセント以上の飽和脂肪酸、80~120の間の粘度指数;群III、0.03重量パーセント以下の硫黄、及び90体積パーセント以上の飽和脂肪酸、120超の粘度指数;群IV、すべてのポリα-オレフィン。水素化処理されたベースストック及び触媒的に脱ろうされたベースストックは、これらの低い硫黄及び芳香族化合物含有量のため、一般的に群II及び群IIIカテゴリーに入る。ポリα-オレフィン(群IVのベースストック)は、種々のα-オレフィンから調製された合成基油であり、硫黄及び芳香族化合物を実質的に含まない。
【0055】
群I、II、及びIIIは鉱物油プロセスストックである。群IVの基油は、オレフィン性不飽和炭化水素の重合によって生成される、正真正銘の合成分子種を含有する。多くの群Vの基油はまた、正真正銘の合成生成物であり、ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、アルキル化芳香族化合物、ポリホスフェートエステル、ポリビニルエーテル、及び/またはポリフェニルエーテルなどを含むことができるが、自然発生油、例えば植物油などであってもよい。群IIIの基油は、鉱物油由来であるが、これらの流体が受ける厳しい処理が、幾つかの正真正銘の合成物、例えばPAOなどに非常に類似している、これらの物理的特性を引き起こす。したがって、群IIIの基油由来の油は、業界では合成流体と称され得ることもあり得る。
【0056】
開示された潤滑油組成物中に使用される基油は、鉱物油、動物油、植物油、合成油、またはこれらの混合物であってもよい。好適な油は、水素化分解、水素化、水素化仕上げ、未精製、精製、再精製油またはこれらの混合物由来であってもよい。
【0057】
未精製油は、わずかなさらなる精製処理の有無にかかわらず、天然、鉱物、または合成供給源由来のものである。精製油は、これらが1つ以上の特性の改善をもたらし得る、1つ以上の精製工程によって処理されたことを除き、未精製油と類似している。好適な精製技術の例としては、溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、濾過、パーコレーションなどがある。食用油の品質にとって、精製油は有用であるかもしれないし、ないかもしれない。食用油はまた、ホワイトオイルとも称され得る。幾つかの実施形態において、潤滑剤組成物は食用油またはホワイトオイルを含まない。
【0058】
再精製油はまた、再生油(reclaimed oil)または再加工油(reprocessed oil)としても知られている。これらの油は、同じまたは同様のプロセスを使用して、精製油を得るために使用されるものと同様の様式で得られる。これらの油は、使用済み添加剤及び油分解生成物の除去を対象とする技術によって、しばしば追加の処理がなされる。
【0059】
鉱物油は、掘削で得られた油、または植物及び動物からの油、及びこれらの混合物を含むことができる。例えば、このような油としては、ヒマシ油、ラード油、オリーブ油、ピーナッツ油、トウモロコシ油、大豆油、及びアマニ油、ならびに鉱物潤滑油、例えば液体石油、及びパラフィン系、ナフテン系、または混合パラフィン-ナフテン型の溶媒処理されたまたは酸処理された鉱物潤滑油などを挙げることができるが、これらに限定されない。このような油は、必要に応じて、部分的にまたは完全に水素化されてもよい。石炭または頁岩由来の油もまた、有用であり得る。
【0060】
有用な合成潤滑油としては、炭化水素油、例えばポリマー化、オリゴマー化、インターポリマー化オレフィンなど(例えばポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー);ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、1-デセンの三量体またはオリゴマー、例えばポリ(1-デセン)、しばしばαオレフィンと称されるこのような材料、及びこれらの混合物;アルキル-ベンゼン(例えばドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ-(2-エチルヘキシル)-ベンゼン);ポリフェニル(例えばビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル);ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド、及びこれらの誘導体、類似体及び同族体、またはこれらの混合物を挙げることができる。
【0061】
他の合成潤滑油としては、リン含有酸のポリオールエステル、ジエステル、液状エステル(例えばトリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート、及びデカンホスホン酸のジエチルエステル)、またはポリマー性テトラヒドロフランが挙げられる。合成油は、フィッシャー・トロプシュ反応によって生成され得、水素異性化されたフィッシャー・トロプシュ炭化水素またはワックスが、典型的であり得る。実施形態において、油は、フィッシャー・トロプシュ気体-液体合成手順によって、ならびに他の気体-液体油から調製することができる。
【0062】
存在する基油または潤滑油の量は、本明細書で言及される粘度指数向上剤、ならびに同様に本明細書で言及される任意のさらなる任意選択の性能向上添加剤の、合計量100重量%から差し引いた残量であってもよい。例えば、完成された流体中に存在し得る、基油または潤滑油は多量、例えば約50重量%超、約60重量%超、約70重量%超、約80重量%超、約85重量%超、または約90重量%超であってもよい。
【0063】
潤滑剤はまた、特定の用途の必要に応じて、他の任意選択の添加剤も含むことができる。幾つかの通常の任意選択の添加剤が、本明細書で言及される。
【0064】
任意選択の添加剤成分
【0065】
上記に定める基油及び粘度指数向上剤に加えて、潤滑剤組成物、例えば自動変速装置潤滑組成物はまた、潤滑流体に要求される1つ以上の機能を実行するための他の添加剤を含むことができる。さらに、言及した添加剤の1つ以上は、多機能であり得、本明細書で規定される機能に加えて、または規定される機能以外の他の機能を提供する。
【0066】
例えば、本明細書では、組成物は、追加の粘度指数向上剤、分散剤、洗剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、腐食防止剤、発泡防止剤、シール膨潤剤、錆防止剤、極圧添加剤、摩耗防止剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの成分の1つ以上を含むことができる。他の性能向上添加剤はまた、上記で特定されたものに加えて、金属不活性化剤、無灰TBNブースター、解乳化剤、乳化剤、流動点降下剤、及びこれらの混合物のうちの1つ以上を含むことができる。典型的には、完全に配合された潤滑油は、これらの性能向上添加剤のうちの1つ以上を含有する。幾つかの通常の任意選択の添加剤成分の例が、下記に定められる。
【0067】
追加の粘度調整剤:潤滑油組成物はまた、本明細書では、1つ以上の追加または補足の粘度指数向上剤を、任意選択で含有することができる。好適な補足の粘度指数向上剤としては、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、α-オレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、またはこれらの混合物を挙げることができる。粘度指数向上剤としては、星形ポリマー、くし型ポリマーを挙げることができ、好適な例が、米国特許出願公開第2012/0101017(A1)号に記載されている。
【0068】
潤滑油組成物はまた、本明細書では、上記で検討されたPMA粘度指数向上剤に加えて、1つ以上の分散剤粘度指数向上剤も、任意選択で含有することができる。好適な分散剤粘度指数向上剤は、官能基化ポリオレフィン、例えば、アシル化剤の反応の反応生成物(例えば、無水マレイン酸など)またはアミンで官能基化されたエチレン-プロピレンコポリマー;アミンまたはアミンと反応したエステル化された無水マレイン酸-スチレンコポリマーで官能基化されたポリ(メタ)アクリレートを含むことができる。
【0069】
使用される場合、任意の追加の粘度調整剤は、潤滑剤中に約0.01~約10重量パーセントで提供され得る。
【0070】
分散剤:潤滑剤組成物は、1つ以上の選択された分散剤またはこれらの混合物を含む。分散剤は、無灰型の分散剤としてしばしば知られている、なぜなら、潤滑油組成物を混合する前に、灰分形成金属を含有しない、かつ潤滑剤に添加される際に、通常どんな灰にも寄与しないためである。無灰型分散剤は、相対的に高分子量の炭化水素鎖に結合した極性基によって特徴付けられる。本開示で見出された特定の無灰分散剤として、ホウ素化及びリン酸化されたN-置換長鎖アルキレンスクシンイミドが挙げられる。
【0071】
N-置換長鎖アルケニルスクシンイミドは、較正基準として(180~約18,000の数平均分子量を有する)ポリスチレンを使用して、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって決定される、約1300~約2300の範囲のポリイソブチレン置換基の数平均分子量を有するポリイソブチレン(PIB)置換基を含むことができる。分散剤に使用されるPIB置換基はまた、ASTM 0445を使用して決定される、100℃で、約2100~約2700cStの粘度を有する。スクシンイミド分散剤及びこれらの調製は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,897,696号、及び米国特許第4,234,435号において記載されている。スクシンイミド分散剤は、ポリアミン、典型的には、ポリ(エチレンアミン)から形成されるイミドが典型的である。分散剤は、典型的には、ポリアミンによって結合された、2つのスクシンイミド部分を含む。ポリアミンは、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、他の高窒素エチレンジアミン種及び/またはこれらの混合物であってもよい。ポリアミンは、直鎖状、分岐鎖状、環状アミンの混合物であってもよい。PIB置換基は、各スクシンイミド部分に結合され得る。
【0072】
N-置換ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤はまた、本明細書では、所望の摩擦特性を達成するために、ホウ素化及びリン酸化され得る。これらの分散剤は、一般的には、i)少なくとも1つのリン化合物及び/またはホウ素化合物、及びii)少なくとも1つの無灰分散剤の反応生成物である。
【0073】
分散剤を形成するのに有用な好適なホウ素化合物は、本明細書では、ホウ素含有種を無灰分散剤に導入することができる、任意のホウ素化合物またはホウ素化合物の混合物を含む。そのような反応を受けることができる、任意のホウ素化合物、有機化合物または無機化学物質が、使用され得る。したがって、酸化ホウ素、酸化ホウ素水和物、三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素、HBF4ホウ素酸、例えばボロン酸など(例えばアルキル-B(OH)2、またはアリール-B(OH)2)、ホウ酸(すなわちH3BO3)、四ホウ酸(すなわちH2B5O7)、メタホウ酸(すなわちHBO2)、このようなボロン酸のアンモニウム塩、及びこのようなボロン酸のエステルを使用することができる。三ハロゲン化ホウ素とエーテル、有機酸、無機酸、または炭化水素の錯体の使用は、ホウ素反応物質を反応混合物に導入するのに好都合な手段である。このような錯体は知られており、三フッ化ホウ素-ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素-フェノール、三フッ化ホウ素-リン酸、三塩化ホウ素-クロロ酢酸、三臭化ホウ素-ジオキサン、及び三フッ化ホウ素-メチルエチルエーテルが例示される。
【0074】
分散剤を形成するための好適なリン化合物は、本明細書では、リン含有種を無灰分散剤に導入することができる、リン化合物またはリン化合物の混合物を含む。そのような反応を受けることができる、任意のリン化合物、有機化合物または無機化学物質が、したがって使用され得る。したがって、無機リン酸、及び水和物を含む無機リン酸化物のような無機リン化合物を使用することができる。典型的な有機リン化合物としては、亜リン酸の完全及び部分エステル、例えばリン酸、チオリン酸、ジチオリン酸、チオリン酸、及びテトラチオリン酸のモノ-、ジ-及びトリエステル;亜リン酸、チオ亜リン酸、ジチオ亜リン酸、及びトリチオ亜リン酸のモノ-、ジ-及びトリエステル;トリヒドロカルビルホスフィンオキシド:トリヒドロカルビルホスフィンスルフィド;モノ-及びジヒドロカルビルホスホネート、(RPO(OR’)(OR”)、式中、R及びR’はヒドロカルビルであり、R”は水素原子またはヒドロカルビル基である)、及びこれらのモノ-、ジ-、及びトリチオ類似体;モノ-及びジヒドロカルビルホスホナイト、(RP(OR’)(OR”)、式中、R及びR’はヒドロカルビルであり、R”は水素原子またはヒドロカルビル基である)、及びこれらのモノ-、及びジチオ類似体、などが挙げられる。したがって、このような化合物、例えば亜リン酸(H3PO3、H2(HPO3)と示されることもあり、オルト亜リン酸またはホスホン酸と称されることもある)、リン酸(H3PO4、オルトリン酸と称されることもある)、次亜リン酸(H4P2O6)、メタリン酸(HPO3)、ピロリン酸(H4P2O7)、次亜リン酸(H3PO2、ホスフィン酸と称されることもある)、ピロ亜リン酸(H4P2O5、ピロホスホン酸と称されることもある)、亜ホスフィン酸(H3PO)、トリポリリン酸(H5P3O10)、テトラポリリン酸(H5P4O13)、トリメタリン酸(H3P3O9)、三酸化リン、四酸化リン、五酸化リンなどを使用することができる。部分または全硫黄類似体、例えばホスホロテトラチオ酸(H3PS4)、ホスホロモノチオ酸(H3PO3S)、ホスホロジチオ酸(H3PO2S2)、ホスホロトリチオ酸(H3POS3)、セスキ硫化リン、七硫化リン、及び五硫化リン(P2S5、P4S10と称されることもある)なども、本開示の分散剤の形成に使用され得る。無機リンハロゲン化合物、例えばPCl3、PBr3、POCl3、PSCl3なども、あまり好ましくないが使用可能である。
【0075】
同様に、リン酸のモノ-、ジ-、及びトリエステル(例えばトリヒドロカルビルホスフェート、ジヒドロカルビル一酸ホスフェート、モノヒドロカルビル二酸ホスフェート、及びこれらの混合物)、亜リン酸のモノ-、ジ-及びトリエステル(例えばトリヒドロカルビルホスファイト、ジヒドロカルビル水素ホスファイト、ヒドロカルビル二酸ホスファイト、及びこれらの混合物)、ホスホン酸のエステル((「第一級」、RP(O)(OR)2、及び「第二級」、R2P(O)(OR)の両方)、ホスフィン酸のエステル、ホスホニルハライド(例えばRP(O)Cl2及びR2P(O)Cl)、ハロホスファイト(例えば(RO)PCl2及び(RO)2PCl)、ハロホスフェート(例えばROP(O)Cl2及び(RO)2P(O)Cl)、三級ピロリン酸エステル(例えば(RO)2P(O)-O-P(O)(OR)2)、及び任意の前記有機リン化合物の全または部分硫黄類似体などのような有機リン化合物を使用することができ、各ヒドロカルビル基は、約100以下の炭素原子、好ましくは約50以下の炭素原子、より好ましくは約24以下の炭素原子、最も好ましくは約12以下の炭素原子を含有する。ハロホスフィンハライド(例えばヒドロカルビルリン四ハロゲン化物、ジヒドロカルビルリン三ハロゲン化物、及びトリヒドロカルビルリン二ハロゲン化物)及びハロホスフィン(モノハロホスフィン及びジハロホスフィン)も、あまり好ましくないが使用可能である。
【0076】
潤滑剤は、本明細書では、上記に定める分散剤要件が潤滑剤中で依然満たされている限り、上記に定める1つ以上のホウ素化及びリン酸化された分散剤と、ホウ素化及びリン酸化されていない分散剤を組み合わせた混合物を含むことができる。
【0077】
使用される場合、上記に記載された分散剤の処理率は、潤滑剤中に、約1~約15重量パーセント、他の手法において、約2~約13重量パーセント、さらに他の手法において、約4~約10重量パーセントで提供される。
【0078】
洗剤:潤滑剤組成物はまた、1つ以上の洗剤または混合物も含む。一手法によって、洗剤は、金属含有洗剤、例えば中性から過塩基洗剤などである。好適な洗剤基質としては、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、カリキサラート、サリキサレート、サリチレート、カルボン酸、亜リン酸、モノ-及び/またはジ-チオリン酸、アルキルフェノール、硫黄結合アルキルフェノール化合物、及びメチレン架橋フェノールが挙げられる。好適な洗剤及びこれらの調製方法は、米国特許第7,732,390号及びそこに引用された参考文献を含む、多数の特許公報において、詳細に記載されている。一手法において、洗剤は、中性から過塩基のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩を含む、スルホネート、フェネートまたはカルボキシレートである。洗剤は、直鎖状または分岐鎖状、例えば直鎖状または分岐鎖状スルホネートであってもよい。直鎖状洗剤は、結合している側鎖を有しない直鎖を含み、典型的には、1つまたは2つの他の炭素原子とのみ結合している炭素原子を含むものである。分岐鎖状洗剤は、分子の主鎖に結合している1つ以上の側鎖を有すものであり、1、2、3または4つの他の炭素原子と結合している炭素原子を含むことができる。一実施形態において、スルホネート洗剤は、主に直鎖状のアルキルベンゼンスルホネート洗剤であってもよい。幾つかの実施形態において、直鎖状アルキル(またはヒドロカルビル)基は、アルキル基の直鎖のどの位置でも、しかし多くの場合、直鎖の2、3または4の位置、場合によっては、主に2の位置で、ベンゼン環に結合していてもよい。他の実施形態において、アルキル(またはヒドロカルビル)基は、分岐していてもよい。すなわち、分岐したオレフィン、例えばプロピレンまたは1-ブテンまたはイソブテンなどから形成される。直鎖状及び分岐鎖状アルキル基の混合物を有するスルホネート洗剤も、使用され得る。
【0079】
洗剤基質は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えば、これらに限定されないが、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、またはこれらの混合物で塩化されてもよい。幾つかの実施形態において、洗剤はバリウムを含まない。好適な洗剤としては、石油スルホン酸、及びアリール基がベンジル、トリル、及びキシリルのうちの1つである、長鎖モノ-またはジ-アルキルアリールスルホン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩を挙げることができる。
【0080】
過塩基洗剤添加剤は当該技術分野においてよく知られており、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の過塩基洗剤添加剤であってもよい。このような洗剤添加剤は、金属酸化物または金属水酸化物と、基質及び二酸化炭素ガスとを反応させることによって調製することができる。基質は、典型的には、酸、例えば酸、例えば脂肪族置換スルホン酸、脂肪族置換カルボン酸、または脂肪族置換フェノールなどである。一般的には、「過塩基」という用語は、金属塩、例えばスルホネート、カルボキシレート、及びフェネートの金属塩などを指し、存在する金属の量は、化学量論的量を超過する。このような塩は、100%を超える変換レベルを有することができる(すなわち、このような塩は、酸を「正の」「中性の」塩に変換するのに必要な金属の理論量の100%超を含むことができる)。よくMRと省略される「金属比」という表現は、既知の化学反応性及び化学量論性に基づいて、過塩基塩中の金属の総化学等量と、中性塩中の金属の総化学等量の比率を指定するために使用される。正塩または中性塩において、金属比は1であり、過塩基において、MRは1超である。このような塩は、通常過塩基、ハイパー塩基、またはスーパー塩基塩と称され、有機硫黄酸、カルボン酸、またはフェノールの塩であってもよい。洗剤はまた、約27~約450、他の手法において、約200~約400の総塩基数(TBN)を示すことができる。
【0081】
使用される場合、洗剤の処理率は、潤滑剤組成物の総重量を基準として、約0.05重量パーセント~約7重量パーセントであってもよい。
【0082】
摩擦調整剤:潤滑油組成物はまた、本明細書では、1つ以上の摩擦調整剤も、任意選択で含有することができる。好適な摩擦調整剤としては、金属含有及び金属を含有しない摩擦調整剤を含むことができ、イミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、第四級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアニジン、アルカノールアミド、ホスホネート、金属含有化合物、グリセロールエステル、硫化脂肪族化合物及びオレフィン、ヒマワリ油及び他の天然に存在する植物油または動物油、ポリオール及び1つ以上の脂肪族または芳香族カルボン酸のジカルボン酸エステル、エステルまたは部分エステル、などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0083】
好適な摩擦調整剤としては、直鎖状、分岐鎖状、または芳香族ヒドロカルビル基、またはこれらの混合物から選択される、飽和でも不飽和でもよい、ヒドロカルビル基を含有することができる。ヒドロカルビル基は、炭素及び水素、またはヘテロ原子、例えば硫黄または酸素などから構成されてもよい。ヒドロカルビル基は、約12~約25個の炭素原子の範囲であってもよい。実施形態において、摩擦調整剤は、長鎖脂肪酸エステルであってもよい。実施形態において、長鎖脂肪酸エステルは、モノ-エステル、またはジ-エステル、または(トリ)グリセリドであってもよい。摩擦調整剤としては、長鎖脂肪酸アミド、長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪酸エポキシ誘導体、または長鎖イミダゾリンであってもよい。
【0084】
他の好適な摩擦調整剤としては、有機、無灰(金属を含まない)、窒素を含まない有機摩擦調整剤を挙げることができる。このような摩擦調整剤としては、カルボン酸及び無水物と、アルカノールを反応させることによって形成されるエステルを含むことができ、一般的には、親油性炭化水素鎖に共有結合している極性末端基(例えばカルボキシルまたはヒドロキシル)を含む。有機無灰窒素を含まない摩擦調整剤の例は、一般的には、オレイン酸のモノ-、ジ-、トリ-エステルを含有することができる、グリセロールモノオレエート(GMO)として知られている。他の好適な摩擦調整剤は、米国特許第6,723,685号において記載されている。
【0085】
アミン系摩擦調整剤としては、アミンまたはポリアミンを挙げることができる。このような化合物は、直鎖状、飽和もしくは不飽和のいずれか、またはこれらの混合物であるヒドロカルビル基を有することができ、約12~約25炭素原子を含有することができる。好適な摩擦調整剤のさらなる例としては、アルコキシル化アミン及びアルコキシル化エーテルアミンが挙げられる。このような化合物は、直鎖状、飽和もしくは不飽和のいずれか、またはこれらの混合物であるヒドロカルビル基を有することができる。このような化合物は、約12~約25個の炭素原子を含有することができる。例としては、エトキシル化アミン及びエトキシル化エーテルアミンが挙げられる。
【0086】
アミン及アミドは、それ自体、またはホウ素化合物、例えば酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタボラート、ホウ酸、またはモノ-、ジ-、トリ-ホウ酸アルキルとの付加または反応生成物の形態で使用することができる。他の好適な摩擦調整剤は、米国特許第6,300,291号において記載されている。
【0087】
酸化防止剤:潤滑油組成物はまた、本明細書では、1つ以上の酸化防止剤も、任意選択で含有することができる。酸化防止剤化合物は、知られており、例えばフェネート、フェネートスルフィド、硫化オレフィン、ホスホ硫化テルペン、硫化エステル、芳香族アミン、アルキル化ジフェニルアミン(例えばノニルジフェニルアミン、ジ-ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ-オクチルジフェニルアミン)、フェニル-α--ナフチルアミン、アルキル化フェニル-α-ナフチルアミン、ヒンダード非芳香族アミン類、フェノール、ヒンダードフェノール、油溶性モリブデン化合物類、高分子酸化防止剤、またはこれらの混合物が挙げられる。酸化防止剤は、単独で、または組み合わせで使用することができる。
【0088】
腐食防止剤:自動変速装置潤滑剤は、追加の腐食防止剤をさらに含むことができる(他の記載された成分の幾つかも、銅腐食防止特性を有し得ることに注目すべきである)。好適な追加の銅腐食防止剤としては、エーテルアミン、ポリエトキシル化化合物、例えばエトキシル化アミン及びエトキシル化アルコールなど、イミダゾリン、モノアルキル及びジアルキルチアジアゾールなどが挙げられる。
【0089】
チアゾール、トリアゾール及びチアジアゾールも、潤滑剤中で使用することができる。例としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、オクチルトリアゾール、デシルトリアゾール、ドデシルトリアゾール、2-メルカプトベンゾトリアゾール、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプト-5-ヒドロカルビルチオ-1,3,4-チアジアゾール、及び2-メルカプト-5-ヒドロカルビルチオ-1,3,4-チアジアゾールが挙げられる。好ましい化合物は、1,3,4-チアジアゾール、特に2-ヒドロカルビルジチオ-5-メルカプト-1,3,4-ジチアジアゾールであり、幾つかが商業物品として入手可能である。
【0090】
発泡防止剤/消泡剤:消泡/界面活性剤はまた、本開示による流体中に含むことができる。種々の剤がこのような使用に関して知られている。エチルアクリレート及びヘキシルエチルアクリレートのコポリマー、例えばSolutiaから入手可能なPC-1244などが特に好ましい。シリコーン流体、例えば4%DCFが好ましい。消泡剤の混合物が特に好ましい。
【0091】
シール膨潤剤:本開示の自動変速装置流体は、シール膨潤剤をさらに含むことができる。シール膨潤剤、例えばエステル、アジペート、セバケート、アゼラート、フタレート、スルホン、アルコール、アルキルベンゼン、置換スルホラン、芳香族化合物、または鉱物油などは、エラストマー材料の膨潤を引き起こし、エンジン及び自動変速装置内でシールとして使用される。
【0092】
アルコール型シール膨潤剤は、一般的には、低揮発性直鎖状アルキルアルコール、例えばデシルアルコール、トリデシルアルコール、及びテトラデシルアルコーツなどである。シール膨潤剤として有用なアルキルベンゼンとしては、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼンなどが挙げられる。置換スルホラン(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,029,588号に記載されているもの)は、同様に、本発明による組成物中にシール膨潤剤として有用である。本開示においてシール膨潤剤として有用な鉱物油としては、高いナフテン系化合物または芳香族化合物含有量を有する低粘度鉱物油が挙げられる。芳香族化合物シール膨潤剤としては、市販のExxon Aromatic 200 NDシール膨潤剤が挙げられる。鉱物油シール膨潤剤の市販品の例としては、Exxon(登録商標)Necton(登録商標)-37(FN 1380)及びExxon(登録商標)Mineral Seal Oil(FN 3200)が挙げられる。
【0093】
防錆剤:種々の既知の防錆剤または添加剤は、変速装置流体に使用することが知られており、本開示による流体に使用するのに好適である。アルキルポリオキシアルキレンエーテル、例えばMazawet(登録商標)77など、C-8酸、例えばNeofat(登録商標)8など、オキシアルキルアミン、例えばTomah PA-14など、3-デシルオキシプロピルアミン、及びポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックコポリマー、例えばPluronic(登録商標)L-81などが、特に好ましい。
【0094】
極圧剤:潤滑油組成物はまた、本明細書では、1つ以上の極圧剤も、任意選択で含有することができる。油溶性である極圧(EP)剤としては、硫黄及びクロロ硫黄含有EP剤、塩素化炭化水素EP剤、及びリンEP剤が挙げられる。このようなEP剤の例としては、塩素化ワックス;有機硫化物及び多硫化物、例えばジベンジルジスルフィド、ビス(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、及び硫化ディールス-アルダー付加生成物など;ホスホ硫化炭化水素、例えば硫化リンとテルペンチンまたはオレイン酸メチルの反応生成物など;リンエステル、例えばジヒドロカルビル及びトリヒドロカルビルホスファイトなど、例えばジブチルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジシクロヘキシルホスファイト、ペンチルフェニルホスファイト;ジペンチルフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、ジステアリルホスファイト及びポリプロピレン置換フェニルホスファイト;金属チオカルバメート、例えばジオクチルジチオカルバミン酸亜鉛、及びバリウムヘプチルフェノール二酸;例えばジアルキルジチオリン酸とプロピレンオキシドの反応生成物のアミン塩を含む、アルキル及びジアルキルリン酸のアミン塩、;及びこれらの混合物が挙げられる。
【0095】
耐摩耗剤:潤滑油組成物はまた、本明細書では、1つ以上の耐摩耗剤も、任意選択で含有することができる。好適な耐摩耗剤の例としては、金属チオホスフェート;ジアルキルジチオリン酸金属塩;リン酸エステルまたはその塩;リン酸エステル(複数可);亜リン酸塩;リン含有カルボン酸エステル、エーテル、またはアミド;硫化オレフィン;チオカルバメートエステル、アルキレンカップリングチオカルバメート、及びビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドを含む、チオカルバメート含有化合物;及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好適な耐摩耗剤は、モリブデンジチオカルバメートであってもよい。リン含有耐摩耗剤は、欧州特許第612839号においてより詳細に記載されている。ジアルキルジチオホスフェート塩中の金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、チタン、または亜鉛であってもよい。有用な耐摩耗剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛であってもよい。
【0096】
好適な耐摩耗剤のさらなる例としては、チタン化合物、酒石酸塩、酒石酸イミド、リン化合物の油溶性アミン塩、硫化オレフィン、ホスファイト(例えば、ジブチルホスファイトなど)、ホスホネート、チオカルバメート含有化合物、例えばチオカルバメートエステル、チオカルバメートアミド、チオカルバミン酸エーテル、アルキレンカップリングチオカルバメート、及びビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドなどが挙げられる。酒石酸塩または酒石酸イミドは、アルキル-エステル基を含有することができ、アルキル基の炭素原子の合計は、少なくとも8個であってもよい。一実施形態において、耐摩耗剤としてはシトレートを挙げることができる。
【0097】
耐摩耗剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約15重量%、他の手法において、約0.01重量%~約10重量%、さらに他の手法において、約0.05重量%~約5重量%、さらなる手法において、約0.1重量%~約3重量%を含む範囲で存在することができる。
【0098】
本明細書で使用される場合、「粘度指数」という用語は、温度の変化に伴う粘度の変化に関する任意の尺度である。粘度指数は、次式を使用して算出することができる。VI=100*[(L-U)/(L-H)]、式中、
●L=100℃で同じ動粘度を有する粘度指数0の油の40℃での動粘度、油の粘度指数は、mm2/s(cSt)で算出される。
●H=100℃で同じ動粘度を有する粘度指数100の油の40℃での動粘度、油の粘度指数は、mm2/s(cSt)で算出される。
●U=粘度指数が、mm2/s(cSt)で算出される油の40℃での動粘度。
【0099】
本明細書で測定されるように、KV100を測定する条件は、約7.7の重量パーセントDIパッケージ、及びPMA系VIIポリマー添加後の約6cStの目標のKV100を有する、約2.3cStの群3の基油(UltraS2)を使用することである。
【0100】
本明細書で使用される場合、「処理率」という用語は、潤滑油中の成分の重量パーセントを指す。例えば、油組成物中の特定のポリマーの処理率は、組成物中のポリマーの重量パーセントである。処理率=(油を含まないベースにおけるポリマーの重量)/(組成物全体の重量)×100%。上記のように、ポリマーの処理率は、本明細書では、油または重合時に使用したキャリア流体を含まないポリマーの固形を指す。
【0101】
本明細書で使用される場合、「多分散性指数」という用語は、「分散度」という用語と同義語であり、(重量平均分子量)/(数平均分子量)と等しい。
【0102】
上記の検討に基づき、様々な潤滑組成物成分の例示的な範囲を、下記の表1に記載する。
【0103】
【0104】
本明細書で記載される粘度指数向上剤は、自動車用に設計された潤滑剤、例えばドライブライン流体、エンジン油、及び/または自動変速装置流体などに特に好適である。幾つかの手法において、好適な自動変速装置は、湿式摩擦クラッチ変速装置を含むことができ、典型的には、複数のクラッチ板(少なくとも3つ、及び6つ以下であってもよい)、例えばセルロース系のブレーキライニングを有するもの、作用ピストンと開放バネの間の、筐体内で一緒に詰め込まれた、関連した鉄製リアクションプレートを有する各々などを有する。このような変速装置はまた、他の一般的な部品、例えば波板またはクッション板、スペーサー板、及び/または保持リングなども含むことができる。湿式摩擦クラッチは、潤滑変速装置流体、及び本明細書で記載される粘度指数向上剤を使用して、流体圧力の選択した適用によって、従来の様式で操作される。
【0105】
本開示及びその多くの利益のより良好な理解を、以下の実施例を用いて、明らかにすることができる。以下の実施例は、例示的であって、その範囲または精神のいずれも限定するものではない。当業者は、これらの実施例に記載される成分、方法、工程、及び装置の変更が使用可能であることを、容易に理解する。特に断りのない限り、本開示で言及されるすべてのパーセント、比率、及び部は、重量である。
【実施例】
【0106】
材料及び方法
【0107】
下記実施例におけるラウリル(メタ)アクリレート(LMA)、メチル(メタ)アクリレート(MMA)、n-ブチル(メタ)アクリレート(n-BMA)、及びセチル-エイコシル(メタ)アクリレート(CEMA)は、Evonik Oil Additives USAから入手可能である。実施例における2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)は、Sigma Aldrichから入手可能である。
【0108】
下記実施例におけるChemoursのVazo(商標)67、(2.2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル))は、重合開始剤として使用された。重合反応用の基油は、ConocoPhillipsの80N、群2の基油(KV100は約3.0cStである)であった。ブレンド研究に使用された基油は、2ULTRAS(PHILLIPS66、群3の基油)であった。
【0109】
全般的な合成方法
【0110】
【0111】
計画1:フリーラジカル重合(FRP)経路、及び可逆性付加フラグメンテーション連鎖移動(RAFT)経路を介するPMA合成の全般的な手順。
【0112】
上記全般的な計画において、モノマーは、溶媒中(例えば、Conoco Phillipsの80N、群2の基油)で、高温(例えば、80~85℃)で、上記で言及された開始剤と一緒に、1)FRP経路を介する、連鎖移動剤、例えばドデシルメルカプタンなど、または2)RAFT経路を介する、RAFT剤、例えば4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸などを使用して反応する。結果として生じるポリ(メタ)アクリレート(PMA)ポリマー生成物が、上記の計画において提供され、a、b、c、d、及びeは、元の反応混合物中のモノマーの相対濃度を基準として、最終PMA製品中の各モノマーの相対量を示す。本開示において、c及びeはゼロであり得る。任意選択で、分散剤モノマー、例えばジメチルアミノプロピルメタクリルアミドなどがまた、添加され得る。
【0113】
実施例1:
【0114】
この実施例は、本開示による、FRPまたはRAFT重合手順のいずれかを使用するポリ(メタ)アクリレートポリマーの形成を説明する。直鎖状ランダムコポリマーを有するPMAを、表2によるモル比で、従来のフリーラジカル重合(FRP)または可逆性付加フラグメンテーション連鎖移動(RAFT)重合のいずれかによって合成した。
【0115】
FRP手順:
【0116】
FRPによるPMAを、以下の全般的な手順によって、典型的に合成した。反応物質の量を表2に示す。
【0117】
MMA、LMA、n-BMA、HEMA、及びCEMAの適切な量を、ガラス製反応器に仕込んだ。従来の連鎖移動剤、例えばn-ドデカンチオールの0~0.05重量%に等しい量、及び80Nの基油を、反応器にさらに仕込んだ。反応器は、0.3SCFHでフローする窒素入口、中間速度の機械的攪拌機、熱電対、及び水冷式コンデンサを備えていた。次いで、反応混合液を、N2下で30分間撹拌して、混合を確実にし、次いで、混合液を、83℃に加熱し、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)を添加し、次いで、同じ温度で4時間撹拌した。完了を確実にするために、試料を分析した後、追加の油を必要に応じて添加して、均質な混合物を作製した。結果として生じるポリマー生成物の分子量を、RI検出器を備えたゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって、較正基準としてポリ(メチルメタクリレート)を使用して、測定した。重量平均分子量(Mw)及び多分散性について得られた結果を、表4に示す。合成されたPMAを、2ultra基油中で、同じ処理率の関連するDIパッケージとブレンドし、PMA性能について分析した。
【0118】
RAFT手順:
【0119】
RAFT重合によるPMAを、従来の連鎖移動剤が、約0~約0.15重量%のRAFT剤、例えば4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸に置き換えられた以外は、FRPに関して上記に記載された以下の同じ手順によって合成した。
【0120】
実施例2:
【0121】
下記の表2において、実施例1に基づいて合成した、本開示の19の代表的なPMA試料のデータを示し、従来技術のポリマーと比較する。モノマー、LMA、MMA、HEMA、n-BMA、及びCEMAに対応する値を、モルパーセントで、表2に表す。PMA試料2、5、7、9、14、16、及び19を、フリーラジカル重合(FRP)によって合成し、PMA試料1、3、4、6、8、10~13、15、17、及び18を、可逆性付加フラグメンテーション連鎖移動(RAFT)重合を使用して合成した。
【0122】
【0123】
下記の表3は、本明細書では、例えば、高い粘度指数値を有し、潤滑油組成物に使用するのに好適なポリマーを調製するために見出された、様々な選択された関係、及びモノマーの比率を示す。表は、LMAとCEMAモノマーのモルパーセントの合計を、MMAとn-BMAモノマーのモルパーセントで割った比率である、アルキル比を含む。(メタ)アクリレート比とは、LMAとMMAモノマーのモルパーセントの合計を、HEMAモノマーのモルパーセントで割った比率である。これらの比率はまた、潤滑剤の粘度指数に対して、
図1及び2においても図示される。表4は、形成されたポリマーの、重量平均分子量及び多分散性指数を含む、特性を示し、表5は、形成された潤滑剤の特性を示す。
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
本開示のポリマー及び潤滑剤は、本明細書において、その詳細な説明及び要約に関連して記載されている。上記の記載は、例示することを意図しており、添付の特許請求の範囲によって定義される、開示の範囲を限定するものではない。他の態様、利益、及び変更は、請求項の範囲内である。