(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】電気機器
(51)【国際特許分類】
H05K 7/14 20060101AFI20220928BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20220928BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20220928BHJP
【FI】
H05K7/14 F
H05K5/03 A
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2018100924
(22)【出願日】2018-05-25
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 崇
(72)【発明者】
【氏名】百武 哲也
(72)【発明者】
【氏名】梅田 大貴
【審査官】柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-207914(JP,A)
【文献】特開2015-023087(JP,A)
【文献】特開2013-004759(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0343017(US,A1)
【文献】特開2003-249775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/14
H05K 5/03
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が取り付けられている基板と、
前記基板が固定されているケースと、
前記基板を覆うように前記ケースに固定されているカバーと、
を備えており、
前記ケースの前記基板と対向する面に、前記基板の外周領域内で前記基板に当接する押付ボスが設けられているとともに、前記外周領域の内側で前記基板に当接する締結ボスが設けられており、
前記基板は、前記基板を貫通するネジで前記締結ボスに固定されているとともに、前記押圧ボスと前記カバーで挟まれて
おり、
前記締結ボスの基板中心から放射方向に沿った断面における締結ボス根元の幅が、前記放射方向に対して直交する方向の断面における前記締結ボス根元の幅よりも短く、
前記押付ボスの前記放射方向に沿った断面における押付ボス根元の幅が、前記放射方向に対して直交する方向の断面における前記押付ボス根元の幅よりも短い、
電子機器。
【請求項2】
前記カバーの端部が中央よりも厚くなっており、前記カバーは前記端部で前記ケースに固定されているとともに前記端部と前記押付ボスとの間に前記基板が挟まれている、請求項1に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、電子部品が取り付けられている基板がケースに固定されている電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器では、電子部品が取り付けられている基板がケースに取り付けられている。通常は、基板とケースの線膨張係数は異なる。このため、ケースと基板を複数のネジで堅固に固定してしまうと、線膨張係数の差に起因して基板に高い応力が発生するおそれがある。線膨張係数の差に起因して基板に生じる応力を緩和する技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1には、ケース内部の金属板に基板が雄ネジで固定されているインバータが開示されている。金属板には、基板の四隅に対応する位置に第1ボスが設けられているとともに、4個の第1ボスを結ぶ矩形の内側に第2ボスが設けられている。基板は、ゴムワッシャを介して第1ボスと第2ボスの夫々に雄ネジで固定されている。弾性体であるゴムワッシャが変形することによって、金属板と基板の線膨張率の差に起因して基板に生じる応力が緩和される。特許文献1には、矩形の内側の一つの第2ボスと基板の間にゴムワッシャを挟まず雄ネジで堅固に固定されていてもよいことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書は、ケースと基板の線膨張率の差に起因して基板に生じる応力を従来よりもコスト効率よく、緩和する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する電子機器は、電子部品が取り付けられている基板と、基板が固定されているケースと、ケースに固定されているカバーを備えている。ケースの基板と対向する面には、基板の外周領域内で基板に当接する押付ボスが設けられているとともに、外周領域の内側で基板に当接する締結ボスが設けられている。基板は、基板を貫通するネジで締結ボスに固定されているとともに、押圧ボスとカバーで挟まれている。上記の構造によると、基板の外周領域は、カバーと押付ボスに挟持されて固定される。これにより、冷熱時における変形量が大きい基板の外周領域が、冷熱時において、面方向に摺動できるため、ゴムワッシャ等を採用することなく、基板とケースの線膨張係数の差に起因して基板に生じる応力を緩和することができる。
【0007】
カバーの端部が中央よりも厚くなっており、カバーは端部でケースに固定されているとともにカバーの端部と押付ボスとの間に基板が挟まれているように構成されていてもよい。カバー全体の厚みを大きくするのではなく、端部だけ厚みを大きくすることで、カバー全体の重量増加は抑えつつ、基板を固定する部位のカバーの剛性を高めることができる。例えば、カバーが金属板で作られている場合、金属板の端を折り返すことで、中央よりも端部の厚みを大きくしてもよい。
【0008】
締結ボスの基板中心から放射方向に沿った断面における締結ボス根元の幅が、放射方向に対して直交する方向の断面における締結ボス根元の幅よりも短くてもよい。また、押付ボスの放射方向に沿った断面における押付ボス根元の幅が、放射方向に対して直交する方向の断面における押付ボス根元の幅よりも短くてもよい。この特徴により、締結ボス/押付ボスの基板放射方向の剛性を放射方向に交差する方向の剛性よりも低くすることができる。基板とケースの線膨張係数の差は、基板とケースの放射方向のずれにおいて顕著に現れる。即ち、線膨張係数の差に起因して基板に生じる応力は放射方向で顕著となる。締結ボス/押付ボスの放射方向に交差する方向の剛性は維持しつつ放射方向の剛性を下げることで、強度低下を抑えつつ、基板に生じる応力を緩和することができる。
【0009】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】第1実施例の電気機器のケースの平面図である。
【
図3】
図2におけるIII-III線に沿った断面図である。
【
図5】第3実施例の電気機器のケースの平面図である。
【
図6】
図5におけるVI-VI線に沿った断面図である。
【
図7】
図5におけるVII-VII線に沿った断面図である。
【
図8】第4実施例の電気機器のケースの平面図である。
【
図9】
図8におけるIX-IX線に沿った断面図である。
【
図10】
図8におけるX―X線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施例)
図1-
図3を参照して第1実施例の電気機器1を説明する。
図1に、電気機器1の分解斜視図を示し、
図2にケース13の平面図を示す。電気機器1は、電気自動車に搭載されている電力制御装置である。電気機器1は、車載のバッテリの電力を、走行用のモータの駆動電力に変換するデバイスである。
【0012】
電気機器1は、カバー11と、基板12と、ケース13と、基板12をケース13に固定するネジ14と、カバー11をケース13に固定するネジ15を有している。ケース13には外壁に支持された中仕切板133が設けられている。
図1では、ケース13における基板12の固定部位がよく見えるように、ケース13の中仕切板133を実線で描き、外壁部134を仮想線で描いてある。電気機器1のケース13には、基板12のほかにも、電力変換の主要部品であるパワーモジュールなど様々な部品が収容されているが、それらは図示を省略した。
図2では、ケース13が良く見えるよう、カバー11、基板12、ネジ14及びネジ15は描かず、ケース13のみの平面図とした。
【0013】
基板12には、様々な電子部品が取り付けられている。基板12の表面には、電子部品が実装されているほか、電子部品を電気的に接続するプリント配線が描かれているが、電子部品及びプリント配線の図示は省略した。様々な電子部品は、パワーモジュールを制御する制御回路を構成する。基板12(制御回路)は、ケース13の下に配置される電流センサ(不図示)からセンサデータを受け取り、センサデータに基づいてパワーモジュールを制御する。
【0014】
基板12は、複数のネジ14によってケース13の中仕切板133に固定されている。基板12は、樹脂で作られている。ケース13は、樹脂とは線膨張係数が異なる材質(例えばアルミニウム)で作られている。このため、基板12をケース13に堅固に固定してしまうと、熱膨張したときに基板12に大きな応力が発生してしまい、基板12がダメージを受けるおそれがある。電気機器1では、基板12とケース13の線膨張係数の差に起因して基板に生じる応力が低くなるように、基板12をケース13に固定している。
【0015】
基板12は、ケース13の中仕切板133に取り付けられている。ケース13の基板12と対向する面(即ち中仕切板133)には、基板12の外周領域内で基板12に当接する押付ボス132が設けられているとともに、基板12の外周領域の内側で基板12に当接する締結ボス131が設けられている。ここで、外周領域とは、所定の幅(例えば30mm)で基板の外周を一巡する領域を指す。
【0016】
図3は、
図2のIII-III線に沿った断面図である。別言すれば、
図3は、第1実施例のカバー11、基板12、ケース13の固定部位における断面を示す。基板12の外周領域の内側において、基板12は、中仕切板133(ケース13)の締結ボス131と、基板12を貫通するネジ14によって堅固に固定されている。このため、基板12にかかる冷熱時の変形による応力は、基板12の外周領域に近づくに連れて大きくなる。
【0017】
基板12の外周領域において、基板12は、ケース13の押付ボス132とカバー11により、挟持されることにより固定されている。それゆえ、冷熱時において、基板12の外周領域は面方向に摺動することができ、基板12とケース13の線膨張係数の差に起因して基板に生じる応力を緩和することができる。さらに基板12の外周領域の外側において、ケース13とカバー11はカバー11を貫通するネジ15によりケース13の外壁部134に固定されているため、基板12の外周領域に車両の振動が伝わることを抑制することができる。また、基板12とカバー11の当接部位に、シール材やゴム等を挟んでもよい。これにより、カバー11が基板12を押付ける力を均一にすることができる。
【0018】
(第2実施例)
図4を参照して第2実施例の電気機器1aを説明する。カバー11aが例えば金属板の場合、カバー11aの端を折り返すことで、カバー11aの端部の厚みが大きくなる。これにより、カバー11a全体の重量増加は抑えつつ、基板を固定する部位のカバーの剛性を高めることができる。
【0019】
(第3実施例)
図5-
図7を参照して第3実施例の電気機器1bを説明する。
図5にケース13bの平面図を示す。
図5では基板は図示を省略しているが、基板は、中仕切板133bに対向するように取り付けられる。
図2のケース13とは、締結ボスの配置が異なるが、
図2のケース13同様、基板の外周領域の内側において、基板は、ケース13bの締結ボス131bと、基板を貫通するネジによって堅固に固定されている。このため、冷熱時における変形量は、基板中心から放射状方向に離れるに連れ大きくなる。従って線膨張係数の差に起因して基板に生じる応力は、放射方向で顕著となる。
【0020】
図6に、
図5のVI-VI線に沿った断面を示し、
図7に、
図5のVII-VII線に沿った断面を示す。
図6は、締結ボス131bの基板中心から放射方向に沿った断面を示している。
図7は、放射方向に対して交差する方向の断面を示している。締結ボス131bの
図6における根本の幅d1(即ち、放射方向における根本の幅)は、
図7における根本の幅d2(即ち、放射方向に交差する方向の根本の幅)よりも短い。図示は省略するが、同様に、押付ボス132bの放射方向に沿った断面における押付ボス132b根元の幅が、放射方向に対して直交する方向の断面における押付ボス根元の幅よりも短い。
【0021】
これにより締結ボス131b/押付ボス132bの基板放射方向の剛性を放射方向に交差する方向の剛性よりも低くすることができるため、線膨張係数の差に起因して基板に生じた応力によりケース13bの締結ボス131b/押付ボス132bが放射方向により変形しやすくなる。それゆえ、ケース13bの強度低下を抑えつつ、基板に生じる応力を緩和することができる。
【0022】
(第4実施例)
図8-
図10を参照して第4実施例の電気機器1cを説明する。
図8にケース13cの平面図を示す。
図8では基板は図示を省略しているが、基板は、中仕切板133cに対向するように取り付けられる。
図5のケース13bとは、締結ボスの配置は同じであるため、第3実施例の電気機器1b同様に線膨張係数の差に起因して基板に生じる応力は、放射方向で顕著となる。
【0023】
中仕切133cには、リブ135が設けられており、締結ボス131cは、リブ135と一体に形成されている。リブ135は、基板中心からの放射方向に対して交差する方向に延びている。
図9に、
図8のIX-IX線に沿った断面を示し、
図10に、
図8のX-X線に沿った断面を示す。
図9は、締結ボス131cの基板中心から放射方向に沿った断面を示しており、
図10は、放射方向に対して交差する方向の断面を示している。
【0024】
図9に、締結ボス131cの基板中心から放射方向に沿った断面における締結ボス131cの根元の幅d3を示す。また、締結ボス131cは、リブ135と一体に作られている。リブ135は、ケース13cの中仕切板133cに設けられている。これにより、放射方向に交差する方向における締結ボス131cの根本の幅は、リブ135の長手方向の長さがこれに相当する。従って、実施例の電気機器1cにおいても、締結ボス131cの基板中心から放射方向に沿った断面における締結ボス131cの根元の幅d3は、放射方向に対して直交する方向の断面における前記締結ボス131cの根元の幅(リブ135の長手方向長さ)よりも短い。従って、第4実施例の電気機器1cも、第3実施例の電気機器1bと同様に、締結ボス131cの基板放射方向の剛性を放射方向に交差する方向の剛性よりも低くすることができる。従って、線膨張係数の差に起因して基板に生じた応力によりケース13cの締結ボス131cが放射方向により変形しやすくなる。それゆえ、ケース13cの強度を向上させつつ、基板に生じる応力を緩和することができる。
【0025】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。締結ボス/押付ボスの形状及び配置は、本明細書が開示する技術の一例に相当する。電子機器の外形や、電流センサ等の周辺部品との関係により締結ボス/押付ボスの形状及び配置は変更されてもよい。
【0026】
本明細書が開示する技術は、電力変換器以外の電気機器に適用されてもよい。
【0027】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0028】
1、1a、1b、1c:電子機器
11、11a:カバー
12:基板
13、13b、13c:ケース
14、15:ネジ
131、131b、131c:締結ボス
132、132b:押付ボス