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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】光波長変換装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20220928BHJP
   F21V 29/502 20150101ALI20220928BHJP
   F21V 29/70 20150101ALI20220928BHJP
   F21V 9/30 20180101ALI20220928BHJP
【FI】
F21S2/00 373
F21V29/502 100
F21V29/70
F21V9/30
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018119828
(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公開番号】P2020004497
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】千藤 彰大
(72)【発明者】
【氏名】八谷 洋介
(72)【発明者】
【氏名】荒川 竜一
(72)【発明者】
【氏名】田中 智雄
(72)【発明者】
【氏名】勝 祐介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼久 翔平
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-226986(JP,A)
【文献】特開2014-194895(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0094181(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 29/502
F21V 29/70
F21V 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した光の波長を変換するセラミックス蛍光体を有する光波長変換部材と、
前記光波長変換部材よりも放熱性に優れた放熱部材と、
を備える光波長変換装置であって、
前記光波長変換部材は、
光が入射する入射面と、
前記入射面とは反対側の底面と、
前記入射面と前記底面とをつなぐ側面と、
を有し、
前記放熱部材は、
前記光波長変換部材の前記底面側に配置される基部と、
前記基部から、前記光波長変換部材の前記側面の少なくとも一部を囲うように延伸する枠部と、
を有し、
前記基部及び前記枠部は、それぞれ、前記光波長変換部材に、前記光波長変換部材よりも熱伝導性に優れると共に、金属を主成分とする接合部を介して接合される、光波長変換装置。
【請求項2】
前記枠部は、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、及び鉄のうち少なくとも1種を含む、請求項1に記載の光波長変換装置。
【請求項3】
前記基部は、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、及び鉄のうち少なくとも1種を含む、請求項1又は請求項2に記載の光波長変換装置。
【請求項4】
前記接合部は、焼結組織を有する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の光波長変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光波長変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドランプ、各種照明機器、レーザープロジェクター等では、発光ダイオード(LED、Light Emitting Diode)や半導体レーザー(LD、Laser Diode)等の青色光を光波長変換部材である蛍光体によって波長変換することにより白色を得ている。
【0003】
この蛍光体としては、樹脂系やガラス系などが知られているが、レーザーを用いた光源の高出力化に対応するため、耐久性に優れたセラミックス蛍光体が光波長変換装置に使用されつつある。
【0004】
また、蛍光体は、光の照射によって発熱する。蛍光体が発熱し高温となると、蛍光体が発する光の強度(すなわち、発光強度:蛍光強度)等の蛍光機能が低下する温度消光が発生する。そのため、効率よく蛍光体を発光させるためには、蛍光体から外部への排熱が必要となる。
【0005】
そこで、はんだ等の接合部を用いて光波長変換部材の底面に放熱部材を接合した光波長変換装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2014/065051号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記構成では、光波長変換部材の底面に接合された放熱部材を介して、光波長変換部材の排熱が行われる。しかしながら、さらなる光源の高出力化に対応するためには、排熱効率を向上させる必要がある。
【0008】
本開示の一局面は、光波長変換部材の排熱を効率的に行える光波長変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、入射した光の波長を変換するセラミックス蛍光体を有する光波長変換部材と、光波長変換部材よりも放熱性に優れた放熱部材と、を備える光波長変換装置である。光波長変換部材は、光が入射する入射面と、入射面とは反対側の底面と、入射面と底面とをつなぐ側面と、を有する。放熱部材は、光波長変換部材の底面側に配置される基部と、基部から、光波長変換部材の側面の少なくとも一部を囲うように延伸する枠部と、を有する。基部及び枠部は、それぞれ、光波長変換部材に、直接接触するか、又は光波長変換部材よりも熱伝導性に優れた接合部を介して接合される。
【0010】
このような構成によれば、放熱部材の枠部によって、光波長変換部材の底面以外の部分からも排熱が行われるため、光波長変換部材の排熱を効率的に行うことができる。その結果、セラミックス蛍光体の温度消光が抑制できる。
【0011】
本開示の一態様では、枠部は、光波長変換部材の入射面の一部を覆うと共に、入射面に、直接接触するか、又は接合部を介して接合されてもよい。このような構成によれば、光波長変換部材の中心部から放熱部材までの経路が短縮できるため、光波長変換部材の排熱がより効率よく行える。
【0012】
本開示の一態様では、枠部は、入射面に直接接触してもよい。このような構成によれば、枠部と光波長変換部材の入射面との間に接合部が介在しないため、光波長変換部材の排熱がより効率よく行える。
【0013】
本開示の一態様では、枠部は、光波長変換部材の側面に、直接接触するか、又は接合部を介して接合されてもよい。このような構成によれば、光波長変換部材内において、底面からの距離に依存せずに放熱部材までの経路が短縮できるため、光波長変換部材の排熱がより効率よく行える。
【0014】
本開示の一態様では、枠部は、側面に直接接触してもよい。このような構成によれば、枠部と光波長変換部材の側面との間に接合部が介在しないため、光波長変換部材の排熱がより効率よく行える。
【0015】
本開示の一態様では、枠部は、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、及び鉄のうち少なくとも1種を含んでもよい。このような構成によれば、枠部の剛性と熱伝導性とを両立して高めることができる。
【0016】
本開示の一態様では、基部は、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、及び鉄のうち少なくとも1種を含んでもよい。このような構成によれば、基部の熱伝導性が向上するので、光波長変換部材の排熱がより効率よく行える。
【0017】
本開示の一態様では、接合部は、金属を主成分としてもよい。このような構成によれば、接合部を用いて放熱部材を接合した場合における光波長変換部材の排熱効率を高めることができる。
【0018】
本開示の一態様では、接合部は、焼結組織を有してもよい。このような構成によれば、ナノ粒子の焼結によって、接合部を容易かつ確実に形成できる。さらに、接合部の熱伝導性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態の光波長変換装置の模式的な断面図である。
図2図2A及び図2Bは、それぞれ、図1の光波長変換装置の模式的な平面図である。
図3図1とは異なる実施形態の光波長変換装置の模式的な断面図である。
図4図1及び図3とは異なる実施形態の光波長変換装置の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す光波長変換装置1は、光波長変換部材2と、放熱部材3と、接合部4とを備える。
【0021】
<光波長変換部材>
光波長変換部材2は、板状のセラミックス蛍光体21と、反射膜22と、反射防止膜23とを有する。また、光波長変換部材2は、光の入射する入射面2Aと、入射面2Aと対向すると共に入射面2Aとは反対側に配置された底面2Bと、入射面2Aと底面2Bとをつなぐ側面2Cとを有する。
【0022】
(セラミックス蛍光体)
セラミックス蛍光体21は、入射した光の波長を変換する。セラミックス蛍光体21は、蛍光性を有する結晶粒子を主体とする蛍光相と、透光性を有する結晶粒子を主体とする透光相とを有するセラミックス焼結体である。
【0023】
「蛍光相」とは、蛍光性を有する結晶粒子を主体とする相であり、「透光相」とは、透光性を有する結晶粒子、詳しくは蛍光相の結晶粒子とは異なる組成の結晶粒子を主体とする相である。
【0024】
また、「主体」とは、各相において、最も多く存在する成分を意味する。例えば、蛍光相は、蛍光性を有する結晶粒子が50体積%以上、好ましくは90体積%以上含まれる。また、例えば、透光相には、透光性を有する結晶粒子が50体積%以上、好ましくは90体積%以上含まれる。
【0025】
セラミックス蛍光体21を構成するセラミックス焼結体の各結晶粒子やその粒界には、蛍光相及び透光相以外の不可避不純物が含まれていてもよい。セラミックス焼結体には、蛍光相及び透光相がセラミックス焼結体の50体積%以上、好ましくは90体積%以上含まれる。
【0026】
セラミックス蛍光体21の材質は特に限定されないが、例えば、透光相の結晶粒子が化学式(1)Alで表される組成を有し、蛍光相の結晶粒子が化学式(2)A12:Ceで表される組成(つまりガーネット構造)を有するとよい。
【0027】
なお、「A12:Ce」とは、A12中にCeが固溶し、元素Aの一部がCeに置換されていることを示す。蛍光相の結晶粒子は、Ceの固溶により、蛍光特性を示す。
【0028】
化学式(1)中の元素A及び化学式(2)中の元素Bは、それぞれ下記の元素群から選択される少なくとも1種の元素から構成されている。
A:Sc、Y、ランタノイド(但し、Ceは除く)
(但し、Aとして更にGdを含んでいてもよい)
B:Al(但し、Bとして更にGaを含んでいてもよい)
【0029】
セラミックス蛍光体21として、上記セラミックス焼結体を使用することで、蛍光相と透光相との界面での光の散乱が起き、光の色の角度依存性を減らすことができる。その結果、色の均質性を向上できる。
【0030】
また、上記セラミックス焼結体は、熱伝導率が優れているため、レーザー光の照射によって発生した熱を放熱部材3に排しやすい。そのため、レーザーの高出力域でも蛍光機能を維持することができる。
【0031】
一方で、セラミックス蛍光体21が単一組成であると、光の散乱が起こらないため、光の色の角度依存性が大きくなり、光の色のムラが生じるおそれがある。また、蛍光体として樹脂を用いると、熱伝導率が低下し、放熱が十分にできずに温度消光が起きるおそれがある。
【0032】
セラミックス蛍光体21は、光の入射する入射面と、入射面と対向すると共に放熱部材3と接合される側に配置された底面とを有する。
セラミックス蛍光体21の平均厚み(つまり、入射面から底面までの平均距離)としては、100μm以上500μm以下が好ましい。
【0033】
(反射膜)
反射膜22は、セラミックス蛍光体21の底面(つまり、放熱部材3側の面)に配置されている。
【0034】
反射膜22は、セラミックス蛍光体21内部で発生する光を反射することで、この光を光波長変換部材2の外部に効率よく放射させる。これにより、光波長変換部材2の発光強度が向上する。
【0035】
反射膜22の材質としては、例えば、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ランタン、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化ガドリニウム、酸化タングステン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、窒化ケイ素等の酸化物が採用できる。
【0036】
反射膜22の平均厚みとしては、0.1μm以上2μm以下が好ましい。また、反射膜22は、単一の層で構成されてもよいし、複数の層で構成されてもよい。
なお、後述する放熱部材3の取付面31Aが反射機能を奏する場合は、光波長変換部材2は、必ずしも反射膜22を有さなくてもよい。
【0037】
(反射防止膜)
反射防止膜23は、セラミックス蛍光体21の入射面(つまり、放熱部材3とは反対側の面)に配置されている。
【0038】
反射防止膜23は、セラミックス蛍光体21の表面での光の反射を抑制するための反射防止コーティング(ARコーティング)である。反射防止膜23により、セラミックス蛍光体21に光を効率よく吸収させることができる。また、セラミックス蛍光体21の内部で発生する光を効率よく外部に取り出すことができる。その結果、光波長変換部材2の発光強度が向上する。
【0039】
反射防止膜23の材質としては、例えば、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化マグネシウム等が採用できる。
【0040】
反射防止膜23の平均厚みとしては、0.01μm以上1μm以下が好ましい。また、反射防止膜23は、単一の層で構成されてもよいし、複数の層で構成されてもよい。
なお、光波長変換部材2は、必ずしも反射防止膜23を有さなくてもよい。
【0041】
<放熱部材>
放熱部材3は、光波長変換部材2よりも放熱性に優れた部材である。放熱部材3は、基部31と、枠部32とを有する。
【0042】
放熱部材3により、セラミックス蛍光体21においてレーザー光の照射によって生じた熱の排熱が促進される。これにより、高出力域でのセラミックス蛍光体21の蛍光機能が維持される。
【0043】
(基部)
基部31は、光波長変換部材2の底面2B側に配置されている。本実施形態では、基部31は、接合部4を介して光波長変換部材2に接合されている。
【0044】
基部31は、光波長変換部材2の底面2Bと対向する平らな取付面31Aを有する板状の部位である。取付面31Aの面積は、光波長変換部材2の底面2Bの面積よりも大きい。後述する接合部4は、取付面31Aの中央部に固定されている。
【0045】
基部31の材質は、金属である。基部31は、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、及び鉄のうち少なくとも1種を含むとよい。これらの金属を基部31が含むことで、基部31の熱伝導性が向上し、光波長変換部材2の排熱がより効率よく行える。
【0046】
なお、基部31の取付面31A以外の面(例えば、取付面31Aとは反対側の面)に、基部31から突出する少なくとも1つの放熱フィンが取り付けられてもよい。放熱フィンと基部31との接合方法としては、摩擦撹拌接合(FSW)を用いるとよい。FSWは、被接合材を一体化させる接合法であり、接合界面での熱抵抗の上昇を抑えられる。そのため、接合界面での放熱効果の低減が抑制できる。
【0047】
(枠部)
枠部32は、基部31の取付面31Aから、取付面31Aと垂直な方向(つまり、取付面31Aから光波長変換部材2における入射面2A側へ向かう方向)に延伸している。枠部32は、基部31と共に、光波長変換部材2を収納する空間を形成している。
【0048】
枠部32は、光波長変換部材2の側面2C全体を囲っている。枠部32は、光波長変換部材2の側面2Cには当接しておらず、光波長変換部材2の側面2Cと枠部32との間には空隙が形成されている。
【0049】
枠部32と、光波長変換部材2の側面2Cとの距離は、光波長変換部材2の周方向に沿って一定である。したがって、平面視(つまり、光波長変換部材2の入射面2Aと垂直な方向から視て)、枠部32において光波長変換部材2の側面2Cと対向する内面32Aの形状は、光波長変換部材2の形状と相似である。
【0050】
例えば、光波長変換部材2の平面視形状(つまり入射面2Aの形状)が四角形の場合(図2A参照)、枠部32の内面32Aの平面視形状も四角形である。また、例えば、光波長変換部材2の平面視形状が円形の場合(図2B参照)、枠部32の内面32Aの平面視形状も円形である。
【0051】
ただし、光波長変換部材2の平面視形状は四角形又は円形に限定されず、四角形以外の多角形のほか、楕円形等としてもよい。また、枠部32の内面32Aの平面視形状は、光波長変換部材2の平面視形状と必ずしも相似でなくてもよい。
【0052】
また、枠部32は、光波長変換部材2の入射面2Aの一部を覆っている。具体的には、枠部32は、光波長変換部材2の入射面2Aのうち、入射面2Aの端部から一定距離の領域を入射面2Aの周方向全体(つまり、縁全体)にわたって覆っている。枠部32は、光波長変換部材2の入射面2Aに直接接触している。
【0053】
枠部32は、光波長変換部材2の入射面2Aの一部を露出させる開口32Bを有する。したがって、光波長変換部材2の入射面2Aの中央領域は枠部32によって被覆されていない。開口32Bの形状は、入射面2Aの形状と相似である。
【0054】
光波長変換部材2は、例えば、接合部4によって基部31に固定した後、枠部32を光波長変換部材2の周囲を囲むように配置することで、基部31と結合された枠部32の内部空間に挿入される。
【0055】
枠部32の材質は、金属である。枠部32は、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、及び鉄のうち少なくとも1種を含むとよい。これらの金属を枠部32が含むことで、枠部32の剛性と熱伝導性とを両立して高めることができる。
【0056】
枠部32と基部31とは、例えば、上述のFSW等によって接合される。また、例えば、枠部32及び基部31を貫通する複数のボルトによって、枠部32と基部31とが締結されてもよい。
【0057】
また、放熱部材3は、基部31と枠部32とが一体形成された単一の部材であってもよい。さらに、枠部32は、光波長変換部材2の側面2Cを囲う第1板部と、光波長変換部材2の入射面2Aを覆う第2板部とに分割されていてもよい。
【0058】
なお、放熱部材3は、接合部4と接合される表面(本実施形態では基部31の取付面31A)上に形成された金属の酸化被膜を有していてもよい。この酸化被膜によって、接合部4との接合強度が高められる。
【0059】
<接合部>
接合部4は、光波長変換部材2と放熱部材3とを接合するための部材であり、光波長変換部材2よりも熱伝導性に優れる。
【0060】
本実施形態では、接合部4は、光波長変換部材2の底面2Bと放熱部材3の基部31における取付面31Aとの間に配置され、これら2つの面を接合している。なお、接合部4は、光波長変換部材2の底面2Bよりも大きい範囲で配置されてもよく、例えば、基部31の取付面31A全体を覆うように配置されてもよい。
【0061】
接合部4は、熱伝導性の観点から、金属を主成分とすることが好ましい。ここで、「主成分」とは、90質量%以上含まれる成分を意味する。接合部4は、金、銀、及び銅のうち少なくとも1種を含むとよい。
【0062】
接合部4は、例えば、上述した金属のナノ粒子を焼結することで容易に形成することができる。つまり、接合部4は、熱伝導性が高い金属のナノ粒子の焼結組織を有することが好ましい。この焼結組織では、焼結により互いに結合したナノ粒子間の空隙によって気孔が構成される。なお、ナノ粒子とは、ナノサイズオーダーの粒子を含む、平均粒径が数ナノメートルから数マイクロメートルの粒子群である。
【0063】
また、接合部4は、錫-銀-銅はんだ、銀-錫はんだ等のはんだで構成されてもよい。さらに、接合部4は、導電性接着剤で構成されてもよい。つまり、光波長変換部材2は、はんだ又は導電性接着剤によって、放熱部材3に接合されていてもよい。
【0064】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)放熱部材3の枠部32によって、光波長変換部材2の底面2B以外の部分からも排熱が行われるため、光波長変換部材2の排熱を効率的に行うことができる。その結果、セラミックス蛍光体21の温度消光が抑制できる。
【0065】
(1b)枠部32が光波長変換部材2の入射面2Aの一部に接触しているため、光波長変換部材2の中心部から放熱部材3までの経路が短縮できる。その結果、光波長変換部材2の排熱がより効率よく行える。
【0066】
(1c)枠部32が光波長変換部材2の入射面2Aに直接接触しており、枠部32と光波長変換部材2との間に接合部4が介在しないため、光波長変換部材2の排熱がより効率よく行える。
【0067】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
図3に示す光波長変換装置101は、光波長変換部材2と、放熱部材103と、接合部4とを備える。光波長変換部材2及び接合部4は、図1の光波長変換装置1と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0068】
<放熱部材>
放熱部材103は、基部31と、枠部132とを有する。基部31は、図1の光波長変換装置1における放熱部材3の基部31と同じものである。
【0069】
枠部132は、光波長変換部材2の側面2Cに接触している点を除いて、図1の放熱部材3の枠部32と同じものである。具体的には、枠部132は、光波長変換部材2の側面2C全体に直接接触している。
【0070】
[2-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)光波長変換部材2内において、底面2Bからの距離に依存せずに放熱部材103までの経路が短縮できるため、光波長変換部材2の排熱がより効率よく行える。
【0071】
[3.第3実施形態]
[3-1.構成]
図4に示す光波長変換装置201は、光波長変換部材2と、放熱部材203と、接合部204とを備える。光波長変換部材2は、図1の光波長変換装置1と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0072】
<放熱部材>
放熱部材203は、基部31と、枠部232とを有する。基部31は、図1の光波長変換装置1における放熱部材3の基部31と同じものである。枠部232は、図1の放熱部材3の枠部32と同じ材質である。
【0073】
枠部232は、基部31の取付面31Aから、取付面31Aと垂直な方向に延伸している。枠部232は、光波長変換部材2の側面2C全体を囲っている。枠部232の内面232Aは、光波長変換部材2の側面2C全体に接合部204を介して接合されている。
【0074】
一方、枠部232は、光波長変換部材2の入射面2Aを覆っていない。つまり、枠部232は、光波長変換部材2の側面2Cのみに接合されている。ただし、枠部232は、基部31の取付面31Aに対し、光波長変換部材2の入射面2Aよりも遠い位置(つまり、入射面2Aよりも光源に近い位置)まで延伸してもよい。
【0075】
<接合部>
接合部204は、図1の接合部4と同じ材質であり、光波長変換部材2よりも熱伝導性に優れる。
【0076】
本実施形態では、接合部204は、光波長変換部材2の底面2Bと基部31の取付面31Aとの間、及び光波長変換部材2の側面2Cと枠部232の内面232Aとの間に配置されている。
【0077】
[3-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(3a)放熱部材203の枠部232が光波長変換部材2の側面2Cのみを覆っているので、比較的容易に光波長変換装置201を製造することができる。
【0078】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0079】
(4a)上記実施形態の光波長変換装置1,101,201において、基部31は、接合部を介さず光波長変換部材2の底面2Bに直接接触していてもよい。また、上記実施形態の光波長変換装置1,101において、枠部32,132は、接合部を介して光波長変換部材2に接合されていてもよい。さらに、上記実施形態の光波長変換装置201において、枠部232は、接合部を介さず光波長変換部材2の側面2Cに直接接触していてもよい。
【0080】
例えば、図1の光波長変換装置1において枠部32と光波長変換部材2の入射面2Aとの間に接合部を設けた第1変形例、図1の光波長変換装置1又は上記第1変形例において接合部4をなくして光波長変換部材2と基部31とを直接接触させた第2変形例、図3の光波長変換装置101において枠部132と光波長変換部材2の入射面2A及び/又は側面2Cとの間に接合部を設けた第3変形例、図3の光波長変換装置101又は上記第3変形例において接合部4をなくして光波長変換部材2と基部31とを直接接触させた第4変形例、図4の光波長変換装置201において接合部204の一部をなくして放熱部材203と光波長変換部材2とを部分的に直接接触させた第5変形例も本開示の意図する構成である。
【0081】
(4b)上記実施形態の光波長変換装置1,101,201において、枠部32,132,232は、必ずしも光波長変換部材2の側面2C全体を囲わなくてもよい。つまり、枠部32,132,232は、光波長変換部材2の厚み方向又は周方向において、光波長変換部材2の側面2Cの一部のみを囲っていてもよい。また、上記実施形態の光波長変換装置1,101において、枠部32,132は、必ずしも光波長変換部材2の入射面2Aを周方向全体にわたって被覆しなくてもよい。
【0082】
(4c)上記実施形態の光波長変換装置1,101,201及び上述の変形例では、基部の一部及び枠部の一部が、光波長変換部材2の底面2B及び側面2Cに直接接触するか、光波長変換部材2の底面2B及び側面2Cに接合部を介して接合されていればよい。
【0083】
(4d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0084】
[5.実施例]
以下に、本開示の効果を確認するために行った試験の内容とその評価とについて説明する。
【0085】
<実施例1>
1mm角、平均厚み0.22mmのセラミックス蛍光体21を用いて、図1の光波長変換装置1を作製した。セラミックス蛍光体21は、YAG(YAl12)を30体積%含み、セラミックス蛍光体21のCe濃度は、YAG中のYに対して0.3mol%である。基部31及び枠部32の材質は銅とした。また、接合部4として、樹脂性接着剤を使用した。以上を用いて図1の光波長変換装置1を作製した。
【0086】
<実施例2>
実施例1と同じセラミックス蛍光体21を用いて、図3の光波長変換装置101を作製した。基部31及び枠部132の材質は銅とした。また、接合部4として、樹脂性接着剤を使用した。
【0087】
<実施例3>
接合部として、はんだを用いた点以外は、実施例2と同じ構成の光波長変換装置を作製した。
【0088】
<実施例4>
接合部として、銀のナノ粒子を焼結したものを用いた点以外は、実施例2と同じ構成の光波長変換装置を作製した。
【0089】
<比較例1>
実施例1の光波長変換装置から枠部を取り除いた(つまり、放熱部材3が基部31のみを有する)光波長変換装置を作製した。
【0090】
<排熱性の評価>
実施例1-4及び比較例1の装置に対して、出力5W(照射面積0.2mm)のレーザー光を光波長変換部材の中心に60秒間照射した後の光波長変換部材の中心温度をサーモグラフィで測定した。その結果を表1に示す。表1中の評価において、中心温度が50℃未満をA、中心温度が50℃以上80℃未満をB、中心温度が80℃以上をCとした。
【0091】
【表1】
【0092】
<考察>
表1に示されるように、実施例1では、中心温度が80℃未満に抑えられており、枠体を有する放熱部材によって光波長変換部材の排熱が効率的に行なわれている。枠体を有しない比較例1では、中心温度が80℃を超えており、排熱が十分ではない。
【0093】
また、実施例2では、枠体を光波長変換部材の入射面及び側面の双方に接触させることで排熱性がより高まるため、中心温度が実施例1よりも低下している。さらに、接合部としてはんだを用いた実施例3では、実施例2よりも排熱性が促進されている。さらに、接合部が焼結組織を有する実施例4では、中心温度が50℃未満となり、排熱性がさらに高まっている。
【符号の説明】
【0094】
1…光波長変換装置、2…光波長変換部材、2A…入射面、2B…底面、2C…側面、
3…放熱部材、4…接合部、21…セラミックス蛍光体、22…反射膜、
23…反射防止膜、31…基部、31A…取付面、32…枠部、32A…内面、
32B…開口、101…光波長変換装置、103…放熱部材、132…枠部、
201…光波長変換装置、203…放熱部材、204…接合部、232…枠部、
232A…内面。
図1
図2
図3
図4