(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】クロスフロー型デュアルバルブおよびクロスフロー型デュアルバルブの筐体の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16K 27/00 20060101AFI20220928BHJP
F16K 27/04 20060101ALI20220928BHJP
F16K 11/22 20060101ALI20220928BHJP
F16K 11/044 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
F16K27/00 D
F16K27/04
F16K11/22 Z
F16K11/044 Z
(21)【出願番号】P 2018156993
(22)【出願日】2018-08-24
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000219989
【氏名又は名称】アズビルTACO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】大島 章義
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-309104(JP,A)
【文献】特開2018-76941(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0155016(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106195350(CN,A)
【文献】実開昭54-63890(JP,U)
【文献】特開2000-346003(JP,A)
【文献】特開2002-305010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00-27/12
F16K 11/00-11/24
F15B 11/00-11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体本体内で第1の方向に延びる供給通路と、
前記筐体本体内で前記供給通路から前記第1の方向と直交する第2の方向に離れて位置し、前記第1の方向に延びる出口通路と、
前記第2の方向に延びて前記供給通路と前記出口通路とを連通する第1および第2の弁孔と、
前記第1の弁孔の前記供給通路側と前記第2の弁孔の前記出口通路側とを連通する第1の交差通路と、
前記第2の弁孔の前記供給通路側と前記第1の弁孔の前記出口通路側とを連通する第2の交差通路と、
前記第1の弁孔の供給通路側端部を開閉する第1の弁体を有しかつ前記第2の交差通路から前記第1の弁孔を経て前記出口通路に至る第1の通路を開閉する第1のスプールを有する第1の弁と、
前記第2の弁孔の供給通路側端部を開閉する第2の弁体を有しかつ前記第1の交差通路から前記第2の弁孔を経て前記出口通路に至る第2の通路を開閉する第2のスプールを有する第2の弁とを備え、
前記第1および第2の交差通路は、前記第1の方向および前記第2の方向と交差する方向に開放されるように前記筐体本体に設けられた溝と、この溝の開放部分を閉塞するように前記筐体本体に取付けられた蓋体とによって形成されていることを特徴とするクロスフロー型デュアルバルブ。
【請求項2】
鋳造によって筐体本体を成型する成型ステップと、
前記筐体本体に第1および第2の弁孔を機械加工によって形成する加工ステップと、
前記筐体本体に板状の蓋体を取付けて筐体を形成する組立ステップとを有し、
前記成型ステップにおいては、
前記筐体本体内で第1の方向に延びる供給通路と、
前記筐体本体内で前記第1の方向と直交する第2の方向に離れて位置し、前記第1の方向に延びる出口通路と、
前記第1の方向および前記第2の方向と直交する方向に向けて開放されて前記第1の方向に延び、一端部が前記供給通路側に位置しかつ他端部が前記出口通路側に位置する第1の溝と、
前記第1の方向および前記第2の方向と直交する方向に向けて開放されて前記第1の方向に延び、一端部が前記出口通路側に位置しかつ他端部が前記供給通路側に位置する第2の溝とが形成され、
前記加工ステップにおいては、
前記筐体本体内を前記第2の方向に延びて前記供給通路と前記出口通路とを貫通し、かつ前記第1の溝の一端部と前記第2の溝の一端部とに接続される第1の弁孔と、
前記筐体本体内を前記第2の方向に延びて前記供給通路と前記出口通路とを貫通し、かつ前記第1の溝の他端部と前記第2の溝の他端部とに接続される第2の弁孔とが形成され、
前記組立ステップにおいては、
前記第1および第2の溝の開放部分が前記蓋体によって閉塞されるように前記蓋体が前記筐体本体に取付けられることを特徴とするクロスフロー型デュアルバルブの筐体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、プレス機械のエアクラッチ・エアブレーキなどを制御するクロスフロー型デュアルバルブおよびこのクロスフロー型デュアルバルブの筐体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プレス機械のエアクラッチ・エアブレーキなどを制御するデュアルバルブとしては、例えば特許文献1に記載されているようなパラレルフロー型のものと、クロスフロー型のものとがある。パラレルフロー型のデュアルバルブにおいては、
図10に示すように、一対の弁1,2が個々に弁孔3,3に挿通され、弁1,2が
図10において下に移動して開くことによって、供給通路4から空気が弁孔3,3を通って出口通路5に流れる。弁孔3,3は、筐体6の一端部(
図10においては上端部)に開口するように筐体6に穿設されている。出口通路5にエアクラッチ・エアブレーキ(図示せず)などが接続されている。
【0003】
出口通路5は、弁孔3,3を介して排気通路7と連通されている。
図10に示す弁1,2は、弁孔3,3の供給通路側端部を開閉する下部弁体8と、弁孔3,3の排気通路側端部を下部弁体8とは開閉状態が反対になるように開閉する上部弁体9と、上部弁体9に一体的に設けられたピストン10とを有している。ピストン10は、電磁弁からなるパイロット弁部11,12から送られた圧縮空気の圧力を受けるものである。弁1,2は、ピストン10が圧縮空気の圧力を受けることにより
図10において下に移動して開く。また、弁1,2は、ピストン10を押す空気圧が消失することによって、下部弁体8を上に付勢するばね部材13のばね力によって押されて閉じる。
【0004】
クロスフロー型のデュアルバルブは、
図11に示すように、一対の弁孔3,3どうしを連通する第1および第2の交差通路14,15を有している。
図11において実線で示す第1の交差通路14は、一対の弁孔3,3のうち
図11において左側に位置する第1の弁孔3aの供給通路側と、
図11において右側に位置する第2の弁孔3bの出口通路側とを連通している。第2の交差通路15は、第1の弁孔3aの出口通路側と第2の弁孔3bの供給通路側とを連通している。
クロスフロー型デュアルバルブに用いられる弁1,2は、それぞれスプール16を有している。
図11において左側に位置する弁1のスプール16は、第2の交差通路15から第1の弁孔3aを経て出口通路5に至る通路を開閉する。他方の弁2のスプール16は、第1の交差通路14から第2の弁孔3bを経て出口通路5に至る通路を開閉する。
【0005】
従来のクロスフロー型デュアルバルブの筐体6は、複雑な構造の第1の交差通路14と第2の交差通路15とを有しているために、
図12に示すように、第1および第2の弁孔3a,3bを有する筐体本体17と、この筐体本体17に取付けられた流路部品18とによって構成されている。筐体本体17に流路部品18が取付けられることにより筐体6が完成する。筐体本体17には第1および第2の弁孔3a,3bと、通路形成用の複数の凹部17a~17fとが形成されている。流路部品18には通路形成用の複数の凹部18a~18fと、供給通路4の入口4aと、出口通路5の出口5aと、排気通路7の排気口7aとが形成されている。
【0006】
図12に示す筐体6の第1の交差通路14は、筐体本体17に第1の弁孔3aと第2の弁孔3bとに接続されるように形成された凹部17d,17eと、これらの凹部17d,17eに接続されるように流路部品18に形成された凹部18d,18eなどによって形成されている。凹部18dと凹部18eは、流路部品18に穿設された穴19によって互いに連通されている。
第2の交差通路15は、筐体本体17に第1の弁孔3aから第2の弁孔3bに延びるように形成された溝状の凹部17cと、この凹部17cに接続されるように流路部品18に形成された凹部18cとによって形成されている。流路部品18は、構造が複雑になるためにダイカスト鋳造法によって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のクロスフロー型デュアルバルブの筐体6は、第1および第2の弁孔3a,3bを有する筐体本体17の他にダイカスト成形品からなる流路部品18が必要で、製造コストが高くなるという問題があった。また、ダイカスト成形品からなる流路部品18は、成形時の収縮によりいわゆる「ヒケ」が発生することがある。このような場合には、筐体本体17と流路部品18との間をシールするガスケット(図示せず)の圧縮が不十分になってエア漏れが生じるおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、ダイカスト成形品からなる流路部品が不要になるとともに、エア漏れが生じ難いクロスフロー型デュアルバルブを提供することを第1の目的とする。また、ダイカスト成形品からなる流路部品を使用することなく第1および第2の交差通路を形成することが可能なクロスフロー型デュアルバルブの筐体の製造方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために本発明に係るクロスフロー型デュアルバルブは、筐体本体内で第1の方向に延びる供給通路と、前記筐体本体内で前記供給通路から前記第1の方向と直交する第2の方向に離れて位置し、前記第1の方向に延びる出口通路と、前記第2の方向に延びて前記供給通路と前記出口通路とを連通する第1および第2の弁孔と、前記第1の弁孔の前記供給通路側と前記第2の弁孔の前記出口通路側とを連通する第1の交差通路と、前記第2の弁孔の前記供給通路側と前記第1の弁孔の前記出口通路側とを連通する第2の交差通路と、前記第1の弁孔の供給通路側端部を開閉する第1の弁体を有しかつ前記第2の交差通路から前記第1の弁孔を経て前記出口通路に至る第1の通路を開閉する第1のスプールを有する第1の弁と、前記第2の弁孔の供給通路側端部を開閉する第2の弁体を有しかつ前記第1の交差通路から前記第2の弁孔を経て前記出口通路に至る第2の通路を開閉する第2のスプールを有する第2の弁とを備え、前記第1および第2の交差通路は、前記第1の方向および前記第2の方向と交差する方向に開放されるように前記筐体本体に設けられた溝と、この溝の開放部分を閉塞するように前記筐体本体に取付けられた蓋体とによって形成されているものである。
【0011】
本発明に係るクロスフロー型デュアルバルブの筐体の製造方法は、鋳造によって筐体本体を成型する成型ステップと、前記筐体本体に第1および第2の弁孔を機械加工によって形成する加工ステップと、前記筐体本体に板状の蓋体を取付けて筐体を形成する組立ステップとを有し、前記成型ステップにおいては、前記筐体本体内で第1の方向に延びる供給通路と、前記筐体本体内で前記第1の方向と直交する第2の方向に離れて位置し、前記第1の方向に延びる出口通路と、前記第1の方向および前記第2の方向と直交する方向に向けて開放されて前記第1の方向に延び、一端部が前記供給通路側に位置しかつ他端部が前記出口通路側に位置する第1の溝と、前記第1の方向および前記第2の方向と直交する方向に向けて開放されて前記第1の方向に延び、一端部が前記出口通路側に位置しかつ他端部が前記供給通路側に位置する第2の溝とが形成され、前記加工ステップにおいては、前記筐体本体内を前記第2の方向に延びて前記供給通路と前記出口通路とを貫通し、かつ前記第1の溝の一端部と前記第2の溝の一端部とに接続される第1の弁孔と、前記筐体本体内を前記第2の方向に延びて前記供給通路と前記出口通路とを貫通し、かつ前記第1の溝の他端部と前記第2の溝の他端部とに接続される第2の弁孔とが形成され、前記組立ステップにおいては、前記第1および第2の溝の開放部分が前記蓋体によって閉塞されるように前記蓋体が前記筐体本体に取付けられる方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、第1および第2の交差通路が筐体本体の溝と板状の蓋体とによって形成されるから、筐体本体の他にダイカスト成形品を使用することなく筐体を形成することができる。板状の蓋体は加工時に歪みが生じ難いため、筐体本体と蓋体との間でエア漏れが生じ難い。したがって、本発明によれば、従来のクロスフロー型デュアルバルブと較べて製造コストが低くかつエア漏れが生じ難いクロスフロー型デュアルバルブを提供することができる。
本発明に係るクロスフロー型デュアルバルブの筐体の製造方法においては、鋳造によって形成された筐体本体に板状の蓋体を取付けることによって筐体が製造される。このため、この方法によれば、クロスフロー型デュアルバルブの筐体を安価にかつエア漏れが生じ難いように形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るクロスフロー型デュアルバルブの斜視図である。
【
図2】本発明に係るクロスフロー型デュアルバルブの斜視図である。
【
図9】筐体の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図10】従来のパラレルフロー型デュアルバルブの構成を示す断面図である。
【
図11】従来のクロスフロー型デュアルバルブの構成を示す断面図である。
【
図12】従来のクロスフロー型デュアルバルブの筐体の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るクロスフロー型デュアルバルブおよびクロスフロー型デュアルバルブの筐体の製造方法の一実施の形態を
図1~
図9を参照して詳細に説明する。
図1に示すクロスフロー型デュアルバルブ21(以下、単にデュアルバルブという)は、例えばプレス機械(図示せず)のエアクラッチやエアブレーキなどの動作を制御するためのバルブである。このデュアルバルブ21は、
図1において上側に位置するパイロット弁部22と、このパイロット弁部22によって動作が切替えられる主弁部23とを備えている。
【0015】
プレス機械の動作を制御するデュアルバルブ21は、高い信頼性が要求されるものである。このため、このデュアルバルブ21のパイロット弁部22および主弁部23は、それぞれ主要な構成部品が2組ずつ設けられている。
パイロット弁部22は、第1の電磁弁24と第2の電磁弁25とを有している。第1の電磁弁24は、主弁部23に設けられている第1の弁31の動作を切替えるものである。第2の電磁弁25は、主弁部23に設けられている第2の弁32の動作を切替えるものである。以下において、このデュアルバルブ21の構成を説明するうえで方向を示すにあたっては、便宜上、
図1において斜め左下方を指向する面を前面21aとし、この前面21aと向き合うようにデュアルバルブ21を見た状態で上側をデュアルバルブ21の上側、右側をデュアルバルブ21の右側として説明する。
【0016】
第1の電磁弁24と第2の電磁弁25は、それぞれ弁部24a,25aとソレノイド部24b,25bとによって構成されており、第1の弁31と第2の弁32の最上部に駆動用空気が供給される駆動形態と、駆動用空気の供給が停止して第1および第2の弁31,32の最上部から空気が排出される非駆動形態とのいずれか一方の形態が採られる。駆動用空気は、主弁部23に供給源(図示せず)から供給される圧縮空気が用いられる。
【0017】
主弁部23は、一つの筐体33と、この筐体33の中に設けられた第1および第2の弁31,32とを備えている。筐体33は、
図1および
図2に示すように、供給口34(
図1参照)、出口35(
図2参照)および排気口36(
図1参照)などが開口する筐体本体37と、この筐体本体37の後面37aに複数の取付ボルト38(
図2参照)によって取付けられた蓋体39とによって構成されている。筐体本体37は、鋳造と機械加工とによって所定の形状に形成されている。蓋体39は、板材料(図示せず)を所定の形状、大きさに切断して形成されている。
【0018】
供給口34は、筐体本体37の右側の端部に形成されており、
図3に示すように、筐体本体37の下端部内で左右方向に延びる供給通路41に接続されている。この実施の形態においては、
図3において左右方向が本発明でいう「第1の方向」に相当する。
出口35は、筐体本体37の左側の端部に形成されており、供給通路41より上側で左右方向に延びる出口通路42に接続されている。出口通路42は、供給通路41から上下方向に離れて位置している。この実施の形態においては、上下方向が本発明でいう「第1の方向と直交する第2の方向」に相当する。すなわち、出口通路42は、筐体本体37内で供給通路41から第2の方向に離れて位置し、第1の方向に延びている。
【0019】
排気口36は、筐体本体37の前部に形成されており、出口通路42より上側で左右方向に延びる排気通路43に接続されている。
供給通路41と、出口通路42および排気通路43は、
図4および
図5に示すように、筐体本体37の後面37aにも開口するように形成されている。筐体本体37の後面37aに開口する供給通路41の開口41aと、出口通路42の開口42aと、排気通路43の開口43aは、筐体本体37に蓋体39が取り付けられることによって閉塞される。
【0020】
供給通路41と出口通路42とは、
図3に示すように、筐体本体37内で上下方向に延びる第1および第2の弁孔44,45によって互いに連通されている。この実施の形態による第1および第2の弁孔44,45は、開口形状が円形の孔で、筐体本体37を上下方向に貫通するように形成されている。このため、排気通路43は、第1および第2の弁孔44,45を介して出口通路42に連通されている。第1および第2の弁孔44,45は、鋳造後の筐体本体37に機械加工によって形成されている。
【0021】
第1の弁孔44と第2の弁孔45は、供給通路41と出口通路42との間で後述する第1および第2の交差通路46,47によって互いに連通されている。第1の弁孔44における供給通路41と出口通路42との間に位置する中央部の供給通路41側は、第1の交差通路46を介して第2の弁孔45の出口通路42側に接続されている。第1の弁孔44の中央部の出口通路42側は、第2の交差通路47を介して第2の弁孔45の供給通路41側に接続されている。
【0022】
これらの第1および第2の交差通路46,47は、
図4および
図5に示すように、筐体本体37に形成された第1および第2の溝48,49を用いて形成されている。第1および第2の溝48,49は、それぞれ後方に向けて開放されるように形成されている。後方とは、左右方向(本発明でいう第1の方向)および上下方向(本発明でいう第2の方向)と直交する方向である。
【0023】
これらの第1および第2の溝48,49の開放部分は、筐体本体37の後面37aに取付けられた蓋体39によって閉塞される。すなわち、筐体本体37に蓋体39を取付けることによって、第1の溝48からなる第1の交差通路46が実現されるとともに、第2の溝49からなる第2の交差通路47が実現される。
第1の溝48は、
図4に示すように、第1の弁孔44の供給通路41側であって右側(
図4においては左側)の半部に接続された一端部48aから上方に延び、さらに、出口通路42に沿って第2の弁孔45側に延びている。この第1の溝48の他端部48bは、第2の弁孔45の出口通路42側であって右側の半部に接続されている。すなわち、第1の溝48は、一端部48aが供給通路41側に位置しかつ他端部48bが出口通路42側に位置するように左右方向に延びている。
【0024】
第2の溝49は、
図5に示すように、第1の弁孔44の出口通路42側であって左側(
図5においては右側)の半部に接続された一端部49aから下方に延び、さらに、供給通路41に沿って第2の弁孔45側に延びている。この第2の溝49の他端部49bは、第2の弁孔45の供給通路41側であって左側の半部に接続されている。すなわち、第2の溝49は、一端部49aが出口通路42側に位置しかつ他端部49bが供給通路41側に位置するように左右方向に延びている。
この実施の形態においては、これらの第1および第2の溝48,49が請求項1記載の発明でいう「溝」に相当する。
【0025】
ここで、上述したように各種の通路や第1および第2の弁孔44,45などを有する筐体33の製造方法を
図9に示すフローチャートを参照して説明する。
この実施の形態によるデュアルバルブ21の筐体33を製造するためには、先ず、
図9のフローチャートの成型ステップS1において、筐体本体37を鋳造によって所定の形状に形成する。
この鋳造は、図示していない金型を用いてダイカスト鋳造法や重力鋳造法などで実施される。この鋳造を行うにあたっては、必要に応じて中子が使用される。この成型ステップS1においては、供給通路41と、出口通路42と、排気通路43と、第1の溝48と、第2の溝49などが成型される。なお、この成型ステップS1においては、第1および第2の弁孔44,45が形成される部分に金型や中子を使用して予め小径の穴を成型しておくことができる。
【0026】
次に、加工ステップS2において、鋳造後の筐体本体37に第1および第2の弁孔44,45が形成される。これらの第1および第2の弁孔44,45は、回転する刃(図示せず)を用いる機械加工によって形成される。第1の弁孔44は、筐体本体37内を上下方向に延びて供給通路41と出口通路42とを貫通し、かつ第1の溝48の一端部と第2の溝49の一端部とに接続される。
第2の弁孔45は、筐体本体37内を上下方向に延びて供給通路41と出口通路42とを貫通し、かつ第1の溝48の他端部と第2の溝49の他端部とに接続される。
加工ステップS2においては、筐体本体37の後面37aに蓋体39を取付けるためにねじ孔50が形成される。
【0027】
加工ステップS2が終了した後、組立ステップS3が実施される。組立ステップS3においては、先ず、筐体本体37の第1の弁孔44に後述する第1の弁31が組み込まれるとともに、第2の弁孔45に後述する第2の弁32が組み込まれる。その後、筐体本体37の後面に蓋体39が取付ボルト38によって取付けられる。蓋体39は、供給通路41の開口41aと、出口通路42の開口42aと、排気通路43の開口43aと、第1および第2の溝48,49の開放部分とが閉塞されるように筐体本体37に取付けられる。蓋体39を筐体本体37に取付けるにあたっては、図示してはいないが、筐体本体37と蓋体39との間にシール部材が設けられる。
【0028】
第1の弁31と第2の弁32は、
図6に示すように構成されている。これらの第1の弁31と第2の弁32は同一のものである。
第1の弁31は、第1の弁孔44の下端部に固定された第1の支持プラグ51と、この第1の支持プラグ51に上下方向へ移動自在に支持された第1のロッド52と、この第1のロッド52と一体に移動する複数の機能部品と、これらの複数の機能部品を上方に付勢する第1のばね部材53などによって構成されている。第1の弁31の複数の機能部品とは、下から順に記載すると、第1の下部弁体54と、第1のスプール55と、第1の上部弁体56および第1のピストン57などである。
【0029】
第2の弁32は、第2の弁孔45の下端部に固定された第2の支持プラグ61と、この第2の支持プラグ61に上下方向へ移動自在に支持された第2のロッド62と、この第2のロッド62と一体に移動する複数の機能部品と、これらの複数の機能部品を上方に付勢する第2のばね部材63などによって構成されている。第2の弁32の複数の機能部品とは、下から順に記載すると、第2の下部弁体64と、第2のスプール65と、第2の上部弁体66および第2のピストン67などである。
【0030】
第1および第2の下部弁体54,64は、それぞれゴム材料によって円板状に形成されている。第1の下部弁体54は、
図6に示すように、第1の弁31が筐体本体37に対して上昇することによって、供給通路41の上壁71に当接し、第1の弁孔44の供給通路41側端部を閉じる。また、第1の下部弁体54は、
図7に示すように、第1の弁31が筐体本体37に対して下降することにより上壁71から離れて第1の弁孔44の供給通路41側端部を開く。このため、第1の下部弁体54は、第1の弁孔44の供給通路41側端部を開閉する。
【0031】
一方、第2の下部弁体64は、第1の下部弁体54と同様に、第2の弁32が筐体本体37に対して昇降することにより第2の弁孔45の供給通路41側端部を開閉する。以下においては、第1の下部弁体54が第1の弁孔44を閉じることを単に「第1の弁31が閉じる」といい、第1の下部弁体54が第1の弁孔44を開くことを単に「第1の弁31が開く」という。また、第2の下部弁体64が第2の弁孔45を閉じることを単に「第2の弁32が閉じる」といい、第2の下部弁体64が第2の弁孔45を開くことを単に「第2の弁32が開く」という。この実施の形態においては、第1の下部弁体54が本発明でいう「第1の弁体」に相当し、第2の下部弁体64が本発明でいう「第2の弁体」に相当する。
【0032】
第1のスプール55および第2のスプール65は、それぞれ円柱状に形成されている。第1のスプール55は、第1の弁孔44における供給通路41と出口通路42とを連通する中央部に移動自在に嵌合している。また、第1のスプール55は、
図6に示すように、第1の弁31が閉じた状態においては、第1の弁孔44に開口する第2の交差通路47の開口部を塞ぐ。また、第1のスプール55は、
図7に示すように第1の弁31が開いた状態においては、第1の弁孔44に開口する第2の交差通路47の開口部を閉塞することがない位置まで下降する。このため、第1のスプール55は、第2の交差通路47から第1の弁孔44を経て出口通路42に至る第1の通路72(
図3参照)を開閉する。
【0033】
第2のスプール65は、第2の弁孔45における供給通路41と出口通路42とを連通する中央部に移動自在に嵌合している。また、第2のスプール65は、
図6に示すように第2の弁32が閉じた状態においては、第2の弁孔45に開口する第1の交差通路46の開口部を塞ぐ。また、第2のスプール65は、
図7に示すように、第2の弁32が開いた状態においては、第2の弁孔45に開口する第1の交差通路46の開口部を閉塞することがない位置まで下降する。このため、第2のスプール65は、第1の交差通路46から第2の弁孔45を経て出口通路42に至る第2の通路73(
図3参照)を開閉する。
【0034】
第1の上部弁体56と第2の上部弁体66は、それぞれゴム材料によって円板状に形成されている。第1の上部弁体56は、
図6に示すように、第1の弁31が閉じることによって、出口通路42と排気通路43との間の隔壁74から上方に離間し、第1の弁孔44の排気通路43側端部を開く。また、第1の上部弁体56は、
図7に示すように第1の弁31が開くことにより隔壁74に接触して第1の弁孔44の排気通路43側端部を閉じる。このため、第1の上部弁体56は、第1の弁孔44の排気通路43側端部を開閉する。一方、第2の上部弁体66は、第1の上部弁体56と同様に、第2の弁32が閉じることにより第2の弁孔45の排気通路43側端部を開き、第2の弁32が開くことにより第2の弁孔45の排気通路43側端部を閉じる。
【0035】
第1のピストン57は、第1の弁孔44の上端部内に移動自在に嵌合し、第2のピストン67は、第2の弁孔45の上端部内に移動自在に嵌合している。第1および第2の弁孔44,45の上端部は、筐体本体37にパイロット弁部22が取付けられることによって、それぞれパイロット弁部22により閉塞されて実質的にシリンダ75,76を構成するようになる。パイロット弁部22は、駆動形態であるときにこれらのシリンダ75,76の中に駆動用空気を供給し、非駆動形態であるときにこれらのシリンダ75,76内から駆動用空気を排出する。
【0036】
第1および第2のピストン57,67の受圧面積の大きさは、駆動用空気の圧力がピストン57,67に加えられたときにピストン57,67を含む第1および第2の弁31,32の可動部品が第1および第2のばね部材53,63のばね力に抗して下がるように設定されている。このため、パイロット弁部22が非駆動形態のときは、
図6に示すように、第1および第2の弁31,32が第1および第2のばね部材53,63のばね力によって上昇して閉じる。この場合は、供給通路41内の圧縮空気が第1および第2の弁孔44,45や第1および第2の交差通路46,47などを通って出口通路42に流れることはない。また、この閉弁時には、第1および第2の上部弁体56,66が第1および第2の弁孔44,45の出口通路42側端部を開くために、出口通路42内の圧縮空気が排気通路43に排出される。
【0037】
一方、パイロット弁部22が駆動形態になると、
図7に示すように、第1および第2の弁31,32が駆動用空気の圧力によって第1および第2のばね部材53,63のばね力に抗して開く。この場合は、供給通路41内の圧縮空気が第1の弁孔44から第1の交差通路46と第2の弁孔45(第1の通路72)とを通って出口通路42に流入するとともに、第2の弁孔45から第2の交差通路47と第1の弁孔44(第2の通路73)とを通って出口通路42に流れる。この場合は、第1の上部弁体56が第1の弁孔44の排気通路43側端部を閉じるとともに、第2の上部弁体66が第2の弁孔45の排気通路43側端部を閉じる。このため、出口通路42に送られた圧縮空気は、排気通路43側に漏洩することなく図示していないプレス機械に供給される。
【0038】
このデュアルバルブ21において、第1の弁31と第2の弁32とのいずれか一方に何らかの不具合が生じて第1の弁31または第2の弁32が閉じることができなくなった場合は、パイロット弁部22が駆動形態から非駆動形態に移行したとしても
図8に示すように一方の弁が開いた状態に保たれるようになる。
図8は、第1の弁31が開いて第2の弁32が閉じる状態を示している。この場合は、供給通路41内の圧力が第1の弁孔44から第1の交差通路46に伝播される。
【0039】
しかし、第1の交差通路46の他端部は第2の弁32の第2のスプール65によって閉じられているから、このときに第1の交差通路46を通って第2の弁孔45に流入する圧縮空気は、第2のスプール65と第2の弁孔45の孔壁面との間の微小な隙間を通過した少量の空気である。このように第2の弁孔45に漏れ出た圧縮空気は、第2の弁孔45から出口通路42に流入する。しかし、このときは第2の上部弁体66が上昇していて第2の弁孔45の排気通路43側端部が開いているから、このときに出口通路42に流入した圧縮空気は、排気通路43を通ってデュアルバルブ21の外に排出される。
【0040】
このように構成されたデュアルバルブ21においては、第1および第2の交差通路46,47が筐体本体37の第1および第2の溝48,49と板状の蓋体39とによって形成されている。このため、筐体本体37の他にダイカスト成形品を使用することなく筐体33を形成することができる。板状の蓋体39は加工時に歪みが生じ難いため、筐体本体37と蓋体39との間でエア漏れが生じ難い。
したがって、この実施の形態によれば、従来のクロスフロー型デュアルバルブと較べて製造コストが低くかつエア漏れが生じ難いクロスフロー型デュアルバルブを提供することができる。
【0041】
この実施の形態による筐体33の製造方法においては、鋳造によって形成された筐体本体37に板状の蓋体39を取付けることによって筐体33が製造される。このため、この方法によれば、クロスフロー型デュアルバルブの筐体を安価にかつエア漏れが生じ難いように形成することができる。
【符号の説明】
【0042】
21…クロスフロー型デュアルバルブ、31…第1の弁、32…第2の弁、37…筐体本体、39…蓋体、41…供給通路、42…出口通路、44…第1の弁孔、45…第2の弁孔、46…第1の交差通路、47…第2の交差通路、48…第1の溝、49…第2の溝、54…第1の下部弁体、55…第1のスプール、64…第2の下部弁体、65…第2のスプール、72…第1の通路、73…第2の通路、S1…成型ステップ、S2…加工ステップ、S3…組立ステップ。