(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】光線方向制御装置及び光線方向制御素子の駆動方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/167 20190101AFI20220928BHJP
G02F 1/1685 20190101ALI20220928BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G02F1/167
G02F1/1685
G09F9/00 313
(21)【出願番号】P 2018157714
(22)【出願日】2018-08-24
【審査請求日】2021-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2017237002
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303018827
【氏名又は名称】Tianma Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲史
(72)【発明者】
【氏名】益村 和敬
(72)【発明者】
【氏名】塩田 国弘
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-062091(JP,A)
【文献】特開2010-169721(JP,A)
【文献】特開2011-180536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/165-1/1685
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの主面が対向するように配置された第1の透明基板及び第2の透明基板と、
前記第1及び第2の透明基板の主面側にそれぞれ配置された第1の透明導電膜及び第2の透明導電膜と、
前記第1及び第2の透明導電膜と電気的に接続された第1の電極及び第2の電極と、
前記第1及び第2の透明基板上に配置された複数の光線透過領域と、
隣接する前記各光線透過領域の間に配置されて、特定の電荷を帯び且つ遮光性の電気泳動粒子と透過性の分散媒から構成される光線吸収領域と、
前記第1及び第2の透明導電膜の間の電位差を制御する制御回路と、を有し、
前記制御回路は、前記電位差を調整することにより、前記電気泳動粒子の分散状態を変化させて、前記各光線透過領域及び分散媒を透過する光の出射方向の範囲を変化させ、
前記出射方向の範囲を広い状態へ遷移させるときには、前記第1の電極と第2の電極へ所定の電圧を印加し、前記出射方向の範囲を狭い状態へ遷移させるときには、
前記第1の電極と第2の電極の間を所定の期間でショート状態とした後に、前記第1の電極と第2の電極の間を電気的にオープン状態とし、当該オープン状態を保持することにより、前記出射方向の範囲が狭い状態を維持する
ことを特徴とする光線方向制御装置。
【請求項2】
互いの主面が対向するように配置された第1の透明基板及び第2の透明基板と、
前記第1及び第2の透明基板の主面側にそれぞれ配置された第1の透明導電膜及び第2の透明導電膜と、
前記第1及び第2の透明導電膜と電気的に接続された第1の電極及び第2の電極と、
前記第1及び第2の透明基板上に配置された複数の光線透過領域と、
隣接する前記各光線透過領域の間に配置されて、特定の電荷を帯び且つ遮光性の電気泳動粒子と透過性の分散媒から構成される光線吸収領域と、
前記第1及び第2の透明導電膜の間の電位差を制御する制御回路と、を有し、
前記制御回路は、前記電位差を調整することにより、前記電気泳動粒子の分散状態を変化させて、前記各光線透過領域及び分散媒を透過する光の出射方向の範囲を変化させ、
前記出射方向の範囲を広い状態へ遷移させるときには、前記第1の電極と第2の電極へ所定の電圧を印加し、前記出射方向の範囲を狭い状態へ遷移させるときには、前記第1の電極と第2の電極の間に前記所定の電圧と逆極性の電圧を所定の期間で印可した後に、前記第1の電極と第2の電極の間を電気的にオープン状態とし、当該オープン状態を保持することにより、前記出射方向の範囲が狭い状態を維持する
ことを特徴とする光線方向制御装置。
【請求項3】
互いの主面が対向するように配置された第1の透明基板及び第2の透明基板と、
前記第1及び第2の透明基板の主面側にそれぞれ配置された第1の透明導電膜及び第2の透明導電膜と、
前記第1及び第2の透明導電膜と電気的に接続された第1の電極及び第2の電極と、
前記第1及び第2の透明基板上に配置された複数の光線透過領域と、
隣接する前記各光線透過領域の間に配置されて、特定の電荷を帯び且つ遮光性の電気泳動粒子と透過性の分散媒から構成される光線吸収領域と、
前記第1及び第2の透明導電膜の間の電位差を制御する制御回路と、を有し、
前記制御回路は、前記電位差を調整することにより、前記電気泳動粒子の分散状態を変化させて、前記各光線透過領域及び分散媒を透過する光の出射方向の範囲を変化させ、
前記出射方向の範囲を広い状態へ遷移させるときには、前記第1の電極と第2の電極へ所定の電圧を印加し、前記出射方向の範囲を狭い状態へ遷移させるときには、前記第1の電極と第2の電極の間に前記所定の電圧と逆極性の電圧を所定の期間で印加した後に、前記第1の電極と第2の電極の間を所定の期間でショート状態とした後に前記第1の電極と第2の電極の間を電気的にオープン状態とし、当該オープン状態を保持することにより、前記出射方向の範囲が狭い状態を維持する
ことを特徴とする光線方向制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかひとつに記載の光線方向制御装置であって、
前記第1の透明基板が対向する主面と前記光線吸収領域の間には、第1の絶縁膜を有し、前記第2の透明基板が対向する主面と前記光線吸収領域の間には第2の絶縁膜を有する
ことを特徴とする光線方向制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光線方向制御装置であって、
前記第1の透明導電膜、あるいは、前記第2の透明導電膜の少なくとも1つは、前記光線吸収領域のパターン形状に対応したパターン形状を有する
ことを特徴とする光線方向制御装置。
【請求項6】
互いの主面が対向するように配置された第1の透明基板及び第2の透明基板と、
前記第1及び第2の透明基板の主面側にそれぞれ配置された第1の透明導電膜及び第2の透明導電膜と、
前記第1及び第2の透明導電膜と電気的に接続された第1の電極及び第2の電極と、
前記第1及び第2の透明基板上に配置された複数の光線透過領域と、
隣接する前記各光線透過領域の間に配置されて、特定の電荷を帯び且つ遮光性の電気泳動粒子と透過性の分散媒から構成される光線吸収領域と、
前記第1及び第2の透明導電膜の間の電位差を制御する制御回路と、を有する光線方向制御装置の駆動方法であって、
前記制御回路は、前記電位差を調整することにより、前記電気泳動粒子の分散状態を変化させて、前記各光線透過領域及び分散媒を透過する光の出射方向の範囲を変化させ、
前記制御回路は、前記出射方向の範囲を広い状態へ遷移させるときには、前記第1の電極と第2の電極へ所定の電圧を印加し、
前記制御回路は、前記出射方向の範囲を狭い状態へ遷移させるときには、前記第1の電極と第2の電極の間を所定の期間でショート状態とした後に、前記第1の電極と第2の電極の間を電気的にオープン状態とし、当該オープン状態を保持することにより、前記出射方向の範囲が狭い状態を維持する
ことを特徴とする光線方向制御素子の駆動方法。
【請求項7】
互いの主面が対向するように配置された第1の透明基板及び第2の透明基板と、
前記第1及び第2の透明基板の主面側にそれぞれ配置された第1の透明導電膜及び第2の透明導電膜と、
前記第1及び第2の透明導電膜と電気的に接続された第1の電極及び第2の電極と、
前記第1及び第2の透明基板上に配置された複数の光線透過領域と、
隣接する前記各光線透過領域の間に配置されて、特定の電荷を帯び且つ遮光性の電気泳動粒子と透過性の分散媒から構成される光線吸収領域と、
前記第1及び第2の透明導電膜の間の電位差を制御する制御回路と、を有する光線方向制御装置の駆動方法であって、
前記制御回路は、前記電位差を調整することにより、前記電気泳動粒子の分散状態を変化させて、前記各光線透過領域及び分散媒を透過する光の出射方向の範囲を変化させ、
前記制御回路は、前記出射方向の範囲を広い状態へ遷移させるときには、前記第1の電極と第2の電極へ所定の電圧を印加し、
前記制御回路は、前記出射方向の範囲を狭い状態へ遷移させるときには、前記第1の電極と第2の電極の間に前記所定の電圧と逆極性の電圧を所定の期間で印加した後に、前記第1の電極と第2の電極の間を電気的にオープン状態とし、当該オープン状態を保持することにより、前記出射方向の範囲が狭い状態を維持する
ことを特徴とする光線方向制御素子の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光線方向制御装置及び光線方向制御素子の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル表示装置は、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、ATM(Automatic Teller Machine)、パーソナルコンピュータ等といった種々の情報処理装置における表示装置として用いられている。
【0003】
こうしたフラットパネル表示装置としては、背面から入射される光の出射方向を調整する光学素子を内部に搭載すると共に、この光学素子に向けて一様に光を射出するバックライトと、映像を表示する液晶ディスプレイと、を有する構成が一般的に知られている。
【0004】
また、フラットパネル表示装置には、大型ディスプレイ化・多目的化に伴い、様々な配光特性が要求されるようになってきている。
【0005】
特に、情報漏洩の観点から、他人に覗き込まれないように可視範囲を制限したいという要求や、不必要な方向には光を出射しないようにしたいとの要求があり、これに応える光学素子としては、ディスプレイの可視範囲(又は出射範囲)を制限することが可能な光学フィルムが提案され実用化されている。
【0006】
しかし、上記光学フィルムを採用したフラットパネル表示装置においては、複数の方向から同時にディスプレイを見る場合に、該光学フィルムをその都度取り外す必要があり、このことは、ユーザに煩雑な処理を課すと共に時間のロスを招くため、取り外すといった手間を掛けることなく、広い可視範囲と狭い可視範囲の各状態を任意のタイミングで実現したい、という要求が高まっている。
【0007】
このため、かかる要求に応じて、ディスプレイの可視範囲を広視野モードと狭視野モードとの間で切り替え可能な光学素子が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0008】
特許文献1では、透明基板上に光線透過領域と光線方向を制御する電気泳動素子を設け、光線透過領域を透過する光の視野角を制御する光線方向制御素子が開示されている。特許文献1では、着色荷電粒子を液体に封入した電気泳動素子の両端に透明電極を設け、直流電圧を印加することで着色荷電粒子を移動させて広視野角状態を得る。また、透明電極に交流電圧を印加することで、着色荷電粒子を電気泳動素子内で分散させて狭視野角状態を得る。
【0009】
電気泳動素子を制御する技術としては、例えば、特許文献2が知られている。特許文献2には、電気泳動素子を用いた電気泳動装置で、画像を保持する性能を向上させる技術が開示され、電気泳動粒子の色による表示状態に遷移させた後に、2つの電極のいずれか一方をハイインピーダンス状態にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第7751667号明細書
【文献】特開2011-170192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1では、電気泳動素子を用いて視野角を制御することは可能であるが、広視野状態と狭視野状態を切り替える詳細な駆動方法は開示されていない。したがって、広視野状態と狭視野状態の切り替え時間を短縮することが困難であった。また、広視野状態と狭視野状態ともに電圧印加が必要であり、低電力化が難しい、という問題があった。更に、上記特許文献2は、電気泳動素子を表示デバイスとして用いる技術であって、広視野状態と狭視野状態を切り替え、低消費電力化を達成することについては開示や示唆はない。
【0012】
そこで本開示は、電気泳動素子を用いて広視野状態と狭視野状態を迅速に切り替え、低消費電力化を達成する光線方向制御装置及び光線方向制御素子の駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示は、互いの主面が対向するように配置された第1の透明基板及び第2の透明基板と、前記第1及び第2の透明基板の主面側にそれぞれ配置された第1の透明導電膜及び第2の透明導電膜と、前記第1及び第2の透明導電膜と電気的に接続された第1の電極及び第2の電極と、前記第1及び第2の透明基板上に配置された複数の光線透過領域と、
隣接する前記各光線透過領域の間に配置されて、特定の電荷を帯び且つ遮光性の電気泳動粒子と透過性の分散媒から構成される光線吸収領域と、前記第1及び第2の透明導電膜の間の電位差を制御する制御回路と、を有し、前記制御回路は、前記電位差を調整することにより、前記電気泳動粒子の分散状態を変化させて、前記各光線透過領域及び分散媒を透過する光の出射方向の範囲を変化させ、前記出射方向の範囲を広い状態へ遷移させるときには、前記第1の電極と第2の電極へ所定の電圧を印加し、前記出射方向の範囲を狭い状態へ遷移させるときには、前記第1の電極と第2の電極の間を所定の期間でショート状態とした後に、前記第1の電極と第2の電極の間を電気的にオープン状態とし、当該オープン状態を保持することにより、前記出射方向の範囲が狭い状態を維持する。
【発明の効果】
【0014】
本実施の形態の一態様によれば、光線方向制御素子の広視野状態と狭視野状態を的確に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施形態における、光線方向制御装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態における、光線透過領域と光線吸収領域の上面図である。
【
図3A】第1の実施形態における、電界が存在する場合の電気泳動粒子の分布状態の一例を示す図である。
【
図3B】第1の実施形態における、電界が存在しない場合の電気泳動粒子の分布状態の一例を示す図である。
【
図4A】第1の実施形態における、狭視野状態での光線方向制御素子から出射できる光線角を示す断面図である。
【
図4B】第1の実施形態における、広視野状態での光線方向制御素子から出射できる光線角を示す断面図である。
【
図5A】第1の実施形態における、狭視野状態での光線方向制御素子から出射できる光線角を示す断面図である。
【
図5B】第1の実施形態における、狭視野状態時の出射光線の角度-透過率分布を示す図である。
【
図6A】第1の実施形態における、広視野状態時の光線方向制御素子から出射できる光線角を示す断面図である。
【
図6B】第1の実施形態における、広視野状態時の出射光線の角度-透過率分布を示す図である。
【
図7A】第1の実施形態における、狭視野状態時の光線方向制御素子から出射できる光線角を示す断面図である。
【
図7B】第1の実施形態における、広視野状態時の光線方向制御素子から出射できる光線角を示す断面図である。
【
図7C】第1の実施形態における、広視野状態時と狭視野状態時の光線方向制御素子から出射できる光線角と透過率の関係を示すグラフである。
【
図8】第1の実施形態における、光線方向制御素子への印加電圧を変化させた時の、それに対応した
図7Aで測定される角度αの透過率の過渡変化を計測した結果を示すグラフである。
【
図9】第1の実施形態における、制御回路の一例を示すブロック図である。
【
図10】第2の実施形態における、光線方向制御素子の断面図である。
【
図11】第3の実施形態における、光線方向制御素子への印加電圧を変化させた時の、それに対応した
図7Aで測定される角度αの透過率の過渡変化を計測した結果を示すグラフである。
【
図12】第3の実施形態における、制御回路の構成の一例を示すブロック図である。
【
図13】第3の実施形態における、制御の一例を示すフローチャートである。
【
図14】第4の実施形態における、光線方向制御素子への印加電圧を変化させた時の、それに対応した
図7Aで測定される角度αの透過率の過渡変化を計測した結果を示すグラフである。
【
図15】第4の実施形態における、制御回路の構成の一例を示すブロック図である。
【
図16】第4の実施形態における、制御の一例を示すフローチャートである。
【
図17】第5の実施形態における、光線方向制御素子への印加電圧を変化させた時の、それに対応した
図7Aで測定される角度αの透過率の過渡変化を計測した結果を示すグラフである。
【
図18】第5の実施形態における、制御回路の構成の一例を示すブロック図である。
【
図19】第5の実施形態における、制御の一例を示すフローチャートである。
【
図20】第6の実施形態における、光線方向制御素子への印加電圧を変化させた時の、それに対応した
図7Aで測定される角度αの透過率の過渡変化を計測した結果を示すグラフである。
【
図21】第6の実施形態における、光線方向制御素子への印加電圧を変化させた時の、それに対応した
図7Aで測定される角度αの透過率の過渡変化を計測した結果を示すグラフである。
【
図22】第6の実施形態における、制御回路の構成の一例を示すブロック図である。
【
図23】第6の実施形態における、制御の一例を示すフローチャートである。
【
図24】第8の実施形態における、光線方向制御素子の断面図である。
【
図25】第9の実施形態における、電気泳動粒子の変化の一例を示す図である。
【
図26】第9の実施形態における、制御回路の構成の一例を示すブロック図である。
【
図27】第9の実施形態における制御の1例を示すフローチャートである。
【
図28】第9の実施形態における、LUTの一例を示す表である。
【
図29】第9の実施形態における、光線方向制御素子への印加電圧を変化させた時の、それに対応した
図7Aで測定される角度αの透過率の過渡変化を計測した結果を示すグラフである。
【
図30】第10の実施形態における、光線方向制御素子への印加電圧を変化させた時の、それに対応した
図7Aで測定される角度αの透過率の過渡変化を計測した結果を示すグラフである。
【
図31】第11の実施形態における、光線方向制御素子への印加電圧を変化させた時の、それに対応した
図7Aで測定される角度αの透過率の過渡変化を計測した結果を示すグラフである。
【
図32】第11の実施形態における、制御回路の構成の一例を示すブロック図である。
【
図33】第7の実施形態における、光線方向制御素子への印加電圧を変化させた時の、それに対応した
図7Aで測定される角度αの透過率の過渡変化を計測した結果を示すグラフである。
【
図34】第7の実施形態における、光線方向制御素子への印加電圧を変化させた時の、それに対応した
図7Aで測定される角度αの透過率の過渡変化を計測した結果を示すグラフである。
【
図35】第7の実施形態における、光線方向制御素子への印加電圧を変化させた時の、それに対応した
図7Aで測定される角度αの透過率の過渡変化を計測した結果を示すグラフである。
【
図36】第7の実施形態における、光線方向制御素子への印加電圧を変化させた時の、それに対応した
図7Aで測定される角度αの透過率の過渡変化を計測した結果を示すグラフである。
【
図37】第7の実施形態における、光線方向制御素子への印加電圧を変化させた時の、それに対応した
図7Aで測定される角度αの透過率の過渡変化を計測した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を説明する。本実施形態は本開示を実現するための一例に過ぎず、技術的範囲を限定するものではないことに注意すべきである。各図において共通の構成については同一の参照符号が付されている。
【0017】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態における、光線方向制御装置の一例を示すブロック図である。
【0018】
光線方向制御装置は、視野角を制御する光線方向制御素子1と、制御装置2とを含む。光線方向制御素子1は、透明導電膜12(第1の電極)と透明導電膜15(第2の電極)とを含む。
【0019】
制御装置2は、電源回路3と制御回路4とを含む。制御回路4は上位の制御装置(不図示)から光線方向制御信号を受信する。制御回路4は、電源回路3から電力の供給を受け、光線方向制御信号に基づいて、透明導電膜12(第1の電極)と透明導電膜15(第2の電極)の間の印加電圧または接続状態を制御する。
【0020】
また、
図1には、光線方向制御素子1の断面構造の一例を示している。透明基板11(第1の透明基板)の主面に透明導電膜12(第1の電極)があり、透明基板16(第2の透明基板)の主面に透明導電膜15(第2の電極)がある。透明基板11と透明基板16は、上記それぞれの主面が対向するように配置されている。
【0021】
相互に対向する透明導電膜12と透明導電膜15の間には、光線透過領域13と光線吸収領域14が交互に配置されている。
【0022】
図2は、第1の実施形態の光線方向制御素子1(透明基板11)の主面の法線方向において見た、光線透過領域13と光線吸収領域14の上面図(平面図)の一例である。矩形の光線透過領域13が所定の間隔で図中上下及び左右方向に配置されている。隣り合う光線透過領域13の間には光線吸収領域14が配置されている。
【0023】
なお、光線透過領域13や光線吸収領域14の平面形状は
図2の例に限定されるものではなく、所望の形状を採用することができる。なお、
図2のように格子状に光線吸収領域14を配置し、上下、左右の視野角制御を行うものだけでなく、例えば、光線吸収領域14を縦縞状に配置した平面形状とし、左右方向のみの視野角を制御する光線方向制御素子1や、光線吸収領域14を横縞状に配置した平面形状とし、上下のみの視野角を制御する光線方向制御素子を実現してもよい。上下の視野角制御は、例えば、車の表示器のフロントガラスへの映り込み量を制御できる。
【0024】
光線透過領域13は光を透過する透明部材(例えば樹脂)で形成され、高さは、3[μm]~300[μm]の範囲が好適であり、第1の実施形態では、これを60[μm]とする例を示す。また、光線透過領域13の幅(光線透過パターン幅)は、1[μm]~150[μm]の範囲が好適であり、第1の実施形態では、これを20[μm]とする例を示す。さらに、光線透過領域13の相互間の幅(遮光パターン幅)は、0.25[μm]~40[μm]の範囲が好適であり、本第1の実施形態では、これを5[μm]とする例を示す。
【0025】
光線吸収領域14の内部には、電気泳動素子が封入される。電気泳動素子は、特定の電荷を帯び且つ遮光性の電気泳動粒子140(着色荷電粒子)と、分散媒141の混合物である。電気泳動粒子140は遮光機能を発現させるため、光を吸収する黒色であることが好ましい。例えば、電気泳動粒子140は、帯電したカーボンブラックの微粒子である。以下に説明する例では、マイナスに帯電されているカーボンブラックを用いる。分散媒141は光を透過させるために透明であり、かつ、光線透過領域13との界面反射を抑えるため、光線透過領域13を形成する透明部材と同程度の屈折率であることが好ましい。
【0026】
本実施形態の電気泳動素子は、荷電x粒子間に働く引力より、電荷による反発力が上回るように設計される。このため、
図3Aに模式的に示すように、マイナスに帯電された電気泳動粒子140は、電界が存在する場合には、電位の高い側の電極に集まる。一方、
図3Bに模式的に示すように、電界が存在しない場合、電気泳動粒子140の最も安定な状態は、互いの反発力により分散し、巨視的に密度が均一となった状態である。
【0027】
上述のように構成された光線方向制御装置によって、広視野状態と狭視野状態の切り替えが可能となる。はじめに広視野と狭視野の定常状態について説明し、次に広視野状態と狭視野状態の切り替えの過渡応答について説明する。
【0028】
図4A及び
図4Bは、第1の実施形態における光線方向制御素子1の背面に表示パネル5を配置し、表示パネル5に表示された広域の視野角を有する画像を、光線方向制御素子1を介して観察する場合の模式図である。なお、光線方向制御素子1は、面状光源装置の前側に配置されてもよい。例えば液晶表示装置のようにバックライトを含む表示装置において、光線方向制御素子1は、液晶表示パネルとバックライトとの間に配置されてもよい。
【0029】
図4Aは狭視野状態を示し、電気泳動粒子140は、分散媒141内で均等に分散している。
図4Bは広視野状態を示し、電気泳動粒子140は、一方の透明導電膜15(第2電極)近傍において偏在している。制御装置2は、光線方向制御素子1に含まれる電気泳動粒子140の分布状態を変化させることで、表示画像が観察できる視野角の狭視野と広視野とを切り替える。
【0030】
制御装置2により視野角制御についてより具体的に説明する。
図5Aは狭視野状態で光線方向制御素子1の出射面から出射できる光線角を示す断面図であり、
図5Bは、出射光線の角度-透過率分布を示す図である。狭視野状態において、制御装置2は、透明導電膜12(第1電極)と透明導電膜15(第2電極)との間をショートまたはオープンの状態とすることで、電気泳動素子に電界を与えないようにする。
【0031】
このため、電気泳動粒子140は光線吸収領域14内で完全に分散した状態となる。電気泳動粒子140は遮光性を有する黒色であるため、光線方向制御素子1の入射面からの入射光線のうち、電気泳動粒子140にぶつかる光線は吸収され、光線方向制御素子1から出射しない。このため、出射光の角度透過率分布は、
図5Bのようになる。
【0032】
図6Aは、広視野状態で光線方向制御素子1の出射面からから出射できる光線角を示す断面図であり、
図6Bは、出射光線の角度-透過率分布を示す図である。広視野状態において、制御装置2は、透明導電膜12(第1の電極)と透明導電膜15(第2の電極)に電位差(電圧)を与えることで、電気泳動素子に電界を与える。
【0033】
透明導電膜12(第1の電極)より透明導電膜15(第2の電極)が高電位となる電圧を与えると、マイナスに帯電した電気泳動粒子140は、透明導電膜15(第2の電極)の近傍で偏在する。したがって、
図6Aに示すように、
図5Aと比べ、入射面からの入射光線のうち電気泳動粒子140にぶつかる光線は減る。分散媒141は前述のように透明であるため、狭視野時に電気泳動粒子140によって阻まれた角度の入射光線も、光線方向制御素子1を通過する。このため、出射光の角度透過率分布は
図6Bのようになる。
【0034】
なお、
図6Aでは光線吸収領域14の内部の電気泳動粒子140を、透明導電膜15側に偏在させたが、透明導電膜12側に電気泳動粒子140を偏在させてもよい。透明導電膜12側に電気泳動粒子140を偏在させても広視野状態にできる。
【0035】
次に広視野状態と狭視野状態の間の切り替えの過渡応答について説明する。
【0036】
図7A及び7Bに示すように、光線方向制御素子1を狭視野状態と広視野状態の間で切り替えて、所定の角度αにおいて光線方向制御素子1を透過する光線の輝度を輝度計6によって計測した。
図7Aは、狭視野状態での測定を模式的示し、
図7Bは広視野状態での測定を模式的に示す。輝度計6は、透明基板11の正面(出射面)から所定の距離に設置され、透明基板11の主面の法線方向に対して角度αで配置される。所定の角度αは、例えば、55度とする。
【0037】
さらに、透過率を計算して、狭視野状態から広視野状態、または広視野状態から狭視野状態への状態遷移における透過率の過渡応答を評価した。これは、
図7Cに示すグラフにおいて、角度αでの、狭視野状態の透過率Aと広視野状態の透過率Bとの間での過渡応答である。
【0038】
光線方向制御素子1の透過率は、光源単体(
図7A及び7Bにおいて、光線方向制御素子1が無い状態)の白の輝度をYbaseとし、輝度計6の測定値をYとしたとき、次の式で表される。
【0039】
透過率=Y/Ybase
【0040】
はじめに、広視野状態から狭視野状態への切り替えについて説明する。透過率の計測は、
図3A、
図3Bを参照して説明したように設計された電気泳動粒子140を使った光線方向制御素子1を使用した。透明導電膜12(第1の電極)と透明導電膜15(第2の電極)に電位差を与えた状態(広視野状態)から、両導電膜12、15間をショートした場合の透過率の過渡応答と、オープンにした場合の透過率の過渡応答とを、計測した。
【0041】
図8は、過渡応答の計測結果を示し、具体的には、光線方向制御素子1に印加される電圧の時間変化のグラフ及び透過率の時間変化のグラフを示す。
図8において、透明導電膜12、15に所定の電圧(第1の電圧)V1を印加した後、ショートまたはオープンに切り替える時間を時間0とする。
【0042】
図8に示す二つのグラフにおける時間0からの破線は、それぞれ、透明導電膜12、15間をショートさせた場合の電圧及び透過率の時間変化を示す。二つのグラフにおける実線は、それぞれ、透明導電膜12、15間を電気的に切り離し、オープン(ハイインピーダンス)にした場合の電圧及び透過率の時間変化を示す。
【0043】
図8に示すように、ショートとオープンで透過率の過渡応答が大きく異なることが明らかになった。具体的には、透明導電膜12、15間をショートさせた場合、透過率(破線)は、時間t1までは急速に減少し、オープンにした場合よりも速く透過率は減少する。しかし、時間t1の後、透過率は再び増加に転じ、時間t2において一定値に達した後、緩やかに減少する。透過率は、時間t3において一定値に達し、以降、狭視野状態が定常化する。このように、ショートの場合、透過率は減少して極小値を示した後に増加し、再び減少することが明らかになった。
【0044】
一方、透明導電膜12、15間をオープンにした場合、透過率はショートのように極小値を示すことなく緩やかに減少し、時間t3において一定の透過率に達し、以降、狭視野状態が定常化することが明らかになった。
【0045】
図8に示すように、ショートさせる駆動を適用した光線方向制御装置では、オープンさせる駆動と比べ、時間t1までは透過率の減少が大きいため、覗き見防止を早期に実現できる。しかし、時間t1以降再び透過率が増加するため、視認を制限することを意図している角度においても薄っすらと表示画像が見え、覗き見されてしまう懸念がある。
【0046】
このため、第1の実施形態では、光線方向制御素子1を広視野状態から狭視野状態へ遷移させる場合、制御回路4は透明導電膜12、15間をオープンにする。これにより、広視野状態から狭視野状態への遷移過程において、一旦下減少した透過率が再び増加する変動を無くし、スムーズに広視野状態から狭視野状態へ遷移させることが可能となる。
【0047】
図9は、第1の実施形態における、制御回路4の一例を示すブロック図である。制御回路4はスイッチSW1と、コントローラ40を含む。コントローラ40には、図示しないプロセッサとメモリ及びインタフェースを含んで、光線方向制御信号を受け付けるとスイッチSW1を制御する。
【0048】
制御回路4は、電源回路3の電圧V1(第1の電圧)と透明導電膜(第2の電極)15との接続を制御する。制御回路4は、透明導電膜12(第1の電極)を接地しているため、制御回路4が電圧V1と透明導電膜(第2の電極)15とを接続すると、透明導電膜12、15間に電圧V1が印加される。制御回路4が電圧V1と透明導電膜(第2の電極)15との接続を解除すると、透明導電膜(第2の電極)15は電気的にフローティングの状態となる。したがって、このとき、透明導電膜12、15間はオープンとなる。
【0049】
制御回路4のコントローラ40は、外部から広視野状態を指示する光線方向制御信号(広視野信号)を受信すると、スイッチSW1を制御して、透明導電膜15(第2の電極)に電圧V1を印加する。これにより、透明導電膜12、15の間に電圧V1が印加され、電気泳動粒子140は第2の電極である透明導電膜15側に集まる。したがって、光線方向制御素子1は広視野状態になる。
【0050】
また、制御回路4のコントローラ40は、外部から狭視野状態を指示する光線方向制御信号(狭視野信号)を受信すると、スイッチSW1を制御して、電圧V1と透明導電膜15(第2の電極)との接続を解除する。これにより、透明導電膜12、15間はオープンとなり、電気泳動粒子140は自身の電荷によって自発的に分散を開始する。この結果、しばらく経つと光線方向制御素子1は狭視野状態になる。
【0051】
以上のように、第1の実施形態では、制御回路4は、広視野状態から狭視野状態への遷移のために、透明導電膜12、15間をオープンにする。これにより、透過率はスムーズに漸減し、狭視野状態へ遷移させることが可能となる。また、狭視野状態では電力を消費しないので、光線方向制御素子1の消費電力を低減できる。
【0052】
なお、
図9に示すブロック図は、一例であり、透明導電膜12(第1の電極)と透明導電膜(第2の電極)15の間に所定の電圧V1を印加する状態と、透明導電膜12、15間を電気的にオープン状態とを、切り替え可能な構成であれば、どのような回路構成であってもよい。例えば、スイッチSW1は、透明導電膜12(第1の電極)と接続されていてもよい。さらには、透明導電膜(第2の電極)15と接続するスイッチSW1に加え、透明導電膜12(第1の電極)と接続するスイッチが存在してもよい。
【0053】
<第2の実施形態>
図10は、第2の実施形態における、光線方向制御素子1の断面図である。第2の実施形態の光線方向制御素子1は、第1の実施形態の
図1に示した構成において、透明導電膜12、15を覆う絶縁膜17、18を含む。その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0054】
透明導電膜12(第1の電極)と光線透過領域13及び光線吸収領域14との間には、透明の絶縁膜17が配置される。また、透明導電膜15(第2の電極)と光線透過領域13及び光線吸収領域14の間には、透明の絶縁膜18が配置される。絶縁膜18には例えばSiO2を用いる。すなわち、相互に対向する透明基板11と透明基板16それぞれの主面と、光線吸収領域14との間には、絶縁膜17と絶縁膜18が配置される。
【0055】
図10において、透明の絶縁膜17、18はSiO
2を用いる例を示したが、これに限定されるものではなく、他の透明の絶縁材料で構成することができる。
【0056】
なお、絶縁膜17と絶縁膜18は、透明基板11と透明基板16の主面に設けた透明導電膜12(第1の電極)及び透明導電膜15(第2の電極)と光線吸収領域14との間にのみ配置され、光線透過領域13と透明導電膜12(第1の電極)及び透明導電膜15(第2の電極)との間に存在しなくてもよい。
【0057】
第2の実施形態では、透明導電膜12、15と光線吸収領域14の間に絶縁膜17、18を挿入することで、電気泳動粒子140が長時間に渡って透明電極の近傍に偏在することによって起こり得る、電気泳動粒子140が透明導電膜12、あるいは、15に固着するのを防ぐことができる。これより、広視野状態と狭視野との間の遷移特性を、一層安定させることが可能となる。
【0058】
<第3の実施形態>
図11~
図13は、第3の実施形態を示す。第3の実施形態は、光線方向制御素子1を広視野状態から狭視野状態へ遷移させる際に、透明導電膜12(第1の電極)と透明導電膜15(第2の電極)を一時的にショートさせた後、オープンにする。
【0059】
第1の実施形態の
図8で示したように、光線方向制御素子1の広視野状態から狭視野状態への遷移は、透明導電膜12、15をショートさせた方が、オープンの場合と比べて短時間で透過率を減少させることができる。しかし、制御回路4が透明導電膜12、15をショートさせると、透過率が減少した後に増加するため、狭視野状態への遷移がスムーズに行われず、また、透過率増加後の覗き見防止効果が低減される。
【0060】
これに対して第3の実施形態では、
図11を参照して後述するように、所定の期間(一時的)だけ透明導電膜12、15をショートさせた後にオープンにすることで、短時間に広視野状態から狭視野状態へ遷移させることが可能であることを見出した。
【0061】
図11は、第3の実施形態における、光線方向制御素子1への印加電圧の変化に対応した、
図7A、
図7Bに示す角度αで測定される、透過率の過渡応答の計測結果を示すグラフである。具体的には、光線方向制御素子1に印加される電圧の時間変化のグラフ及び透過率の時間変化のグラフを示す。
図8と同様に、透明導電膜12、15に所定の電圧V1を印加した後、ショートに切り替える時間を時間0とする。
【0062】
電圧の時間変化のグラフにおける時間0から時間t1までの実線は、透明導電膜12、15間をショートさせている期間の印加電圧を示す。時間t1からの破線は、透明導電膜12、15間を電気的に切り離し、オープン(ハイインピーダンス)にしている期間の印加電圧を示す。
【0063】
図11に示すように、透明導電膜12、15をショートさせている期間(0~t1)において、透過率は、
図8のショートと同様に、オープンより速く減少する。計測において、
図8でショートにおける透過率が極小値となる時間t1で、透明導電膜12、15間の接続状態を、ショートからオープンに切り替えた。
【0064】
透明導電膜12、15間の接続状態をオープンとした時間t1以降、透過率は増加することなく非常に緩やかに漸減することがわかった。つまり、実施形態3の透明導電膜12、15間の接続状態の変更は、
図8のショートのように、透過率を極小値を示した後に増加させることなく、さらに、
図8のオープンのより速く、狭視野状態を定常化させることが可能であることが分かった。
【0065】
図12は、第3の実施形態の制御回路4の構成の一例を示すブロック図である。第3の実施形態の光線方向制御装置は、
図1に示すように光線方向制御素子1と制御装置2から構成される。制御回路4の構成以外の説明は省略する。なお、光線方向制御素子1は、
図10に示す第2実施形態の光線方向制御素子の構成を有してもよい。
【0066】
図12に示すように、第3の実施形態の制御回路4は、スイッチSW1と、スイッチSW2と、コントローラ40を含む。コントローラ40には、図示しないプロセッサとメモリ及びインタフェースを含んで、光線方向制御信号を受け付けるとスイッチSW1とSW2を制御する。なお、制御回路4は、他の回路構成を有してもよい。
【0067】
透明導電膜15(第2の電極)に接続された制御回路4は、SW1及びSW2を制御して、光線方向制御素子1の広視野状態を維持するための所定の電圧V1(第1の電圧)、接地(ショート)状態、及びオープン状態を切り替える。また、制御回路4は、透明導電膜12(第1の電極)を接地させる。
【0068】
コントローラ40は、外部から広視野状態を指示する光線方向制御信号(広視野信号)を受信すると、SW1を制御して、透明導電膜15(第2の電極)へ印加する電圧を所定の電圧V1に切り替える。第1の実施形態と同様に透明導電膜12、15の間に電圧V1が印加され、
図4Bで示したように、光線吸収領域14の電気泳動粒子(着色荷電粒子)140は第2の電極である透明導電膜15側に偏在する。これにより光線方向制御素子1は広視野状態に切り替わる。
【0069】
次に、第3の実施形態の特徴である、狭視野状態を指示する光線方向制御信号(狭視野信号)に対する、コントローラ40の動作を説明する。コントローラ40は、外部から狭視野信号を受信すると、
図13に示すフローチャートを実行する。
図13は、第3の実施形態における、狭視野信号に対する制御処理の一例を示す。
【0070】
まず、ステップS1で、コントローラ40が、狭視野信号を受信する。次に、ステップS2では、コントローラ40が、SW1及びSW2を制御して、透明導電膜15(第2の電極)を接地させる。これにより、透明導電膜12、15は共に接地されてショートとなる。透明導電膜12、15間のショートによって、角度αでの透過率は減少を開始する。
【0071】
次に、ステップS3では、コントローラ40が、所定時間t1が経過するまで待機する。この期間において、角度αでの透過率は急速に減少する。所定時間t1が経過すると、ステップS4で、コントローラ40が、透明導電膜15(第2の電極)と透明導電膜12(第1の電極)との接続状態をショートからオープンに切り替える。透明導電膜12、15間のショートからオープンへの切り替えによって、角度αでの透過率は増加に転じることなく、ゆっくりと漸減する。
【0072】
なお、所定時間t1の情報は、コントローラ40に予め設定されている。光線方向制御装置の設計者は、透明導電膜12、15の間に所定電圧を印加させた後にショートさせ、透過率の時間変動を観察することで、適切な時間t1を特定できる。
【0073】
以上のように、第3の実施形態によれば、光線方向制御素子1の広視野状態から狭視野状態への遷移をスムーズかつ、迅速に行うことが可能となる。
【0074】
<第4の実施形態>
図14~
図16は、第4の実施形態を示す。第4の実施形態では、広視野状態から狭視野状態へ遷移させる際に、広視野状態のとき印加した電圧の逆極性の電圧を印加する。透明導電膜12、15間への逆極性の電圧印加により発生した電界により、電気泳動粒子140は逆向きの力を受け、透明導電膜15(第2の電極)から透明導電膜12(第1の電極)へ向けて急速に動く。このため、角度αの透過率を第3の実施形態より速く減少させることが可能となる。
【0075】
図14は、第4の実施形態における、光線方向制御素子1への印加電圧の変化に対応した、
図7A、
図7Bに示す角度αで測定される、透過率の過渡応答の計測結果を示すグラフである。具体的には、光線方向制御素子1への印加電圧の時間変化のグラフ及び透過率の時間変化のグラフを示す。透明導電膜12、15に所定の電圧V1を印加した後、逆極性電圧に切り替える時間を時間0とする。
【0076】
印加電圧の時間変化のグラフにおける時間0から時間tinvまでの実線は、透明導電膜12、15間に印加されている、電圧V1に対して逆極性の所定電圧Vinvを示す。時間tinvからの破線は、透明導電膜12、15間を電気的に切り離し、オープン(ハイインピーダンス)にしている期間の印加電圧を示す。透過率の時間変化のグラフにおいて、破線は、第3の実施形態における透過率の時間変化を示す。実線は、
図14における印加電圧の時間変化に応じた、透過率の時間変化を示す。
【0077】
図14に示すように、透明導電膜12、15に所定の逆極性電圧Vinvを印加している期間(0~tinv)、透過率が第3の実施形態(図中破線)より速く減少する。逆極性電圧を印加し続けると、電気泳動粒子140はやがて透明導電膜12(第1の電極)の近傍に偏在し、結果、透過率が増加する。このため、透過率の計測において、透過率がほぼ最少となる時間(tinv)で、透明導電膜12、15間をオープンにした。すると、時間tinv以降、透過率の増加は生じず、狭視野状態を定常化させることが可能であることが分かった。
【0078】
図15は、本第4の実施形態の制御回路4の構成の一例を示すブロック図である。第4の実施形態の光線方向制御装置は、
図1に示すように光線方向制御素子1と制御装置2から構成される。制御回路4の構成以外の説明は省略する。なお、光線方向制御素子1は、
図10に示す第2実施形態の光線方向制御素子の構成を有してもよい。
【0079】
図15に示すように、第4の実施形態の制御回路4は、スイッチSW1と、スイッチSW2と、コントローラ40を含む。コントローラ40には、図示しないプロセッサとメモリ及びインタフェースを含んで、光線方向制御信号を受け付けるとスイッチSW1とSW2を制御する。なお、制御回路4は、他の回路構成を有してもよい。
【0080】
透明導電膜15(第2の電極)に接続された制御回路4は、光線方向制御素子1の広視野状態を維持するための所定の電圧V1(第1の電圧)と、所定の負電圧(逆極性電圧Vinv)と、オープン状態を切り替える。また、制御回路4は、透明導電膜12(第1の電極)を接地させる。
【0081】
コントローラ40は、外部から広視野状態を指示する光線方向制御信号(広視野信号)を受信すると、SW1を制御して、透明導電膜15(第2の電極)に所定の電圧V1を与える。第1の実施形態と同様に、透明導電膜12、15の間に電圧V1が印加され、
図4Bで示したように、光線吸収領域14の電気泳動粒子140は第2の電極である透明導電膜15側に偏在する。これにより光線方向制御素子1は広視野状態になる。
【0082】
次に、第4の実施形態の特徴である、狭視野状態を指示する光線方向制御信号(狭視野信号)に対する、コントローラ40の動作を説明する。コントローラ40は、外部から狭視野信号を受信すると、
図16に示すフローチャートを実行する。
図16は、第4の実施形態における、狭視野信号に対する制御処理の一例を示す。
【0083】
まず、ステップS11では、コントローラ40が、狭視野信号を受信する。次に、ステップS12では、コントローラ40は、SW1及びSW2を制御して、透明導電膜15(第2の電極)に印加する電圧を、電圧V1から、負電圧(逆極性電圧Vinv)に切り替える。透明導電膜12、15間の電位差が逆極性となったため、電気泳動粒子140が分散を開始する。これにより、角度αでの透過率が減少し始める。
【0084】
次に、ステップS13では、コントローラ40が、所定時間tinvが経過するまで待機する。この期間において、透明導電膜12、15間の電位差が逆極性に維持されている。したがって、電気泳動粒子140が、急速に分散する。これにより、角度αでの透過率が急速に減少する。
【0085】
所定時間tinvが経過すると、ステップS14で、コントローラ40は、SW2を制御して、透明導電膜15(第2の電極)と透明導電膜12(第1の電極)との接続状態をオープンにする。これにより、角度αでの透過率が一定値に達し、光線方向制御素子1(光線方向制御素子1)は、定常の狭視野状態になる。
【0086】
なお、所定時間tinvの情報は、コントローラ40に予め設定されている。光線方向制御装置の設計者は、透明導電膜12、15間に逆極性電圧を印加させた後、透過率の時間変動を観察することで、適切な時間tinvを特定できる。
【0087】
以上のように、第4の実施形態によれば、光線方向制御素子1の広視野状態から狭視野状態への遷移をさらに迅速に行うことが可能となる。
【0088】
<第5の実施形態>
図17~
図19は、第5の実施形態を示す。第5の実施形態では、第4の実施形態の逆極性電圧Vinvを印加させる期間の後に、一時的に透明導電膜12、15間をショートさせる期間を設け、その後オープンにする。透明導電膜12、15間への逆極性の電圧印加により発生した電界により、電気泳動粒子140は逆向きの力を受け、透明導電膜15(第2の電極)から透明導電膜12(第1の電極)へ向けて急速に動く。このため、角度αの透過率を第3の実施形態より速く減少させることが可能となる。
【0089】
図17は、第5の実施形態における、光線方向制御素子1への印加電圧の変化に対応した、
図7A、
図7Bに示す角度αで測定される、透過率の過渡応答の計測結果を示すグラフである。具体的には、光線方向制御素子1への印加電圧の時間変化のグラフ及び透過率の時間変化のグラフを示す。透明導電膜12、15に所定の電圧V1を印加した後、逆極性電圧に切り替える時間を時間0とする。
【0090】
印加電圧の時間変化のグラフにおける時間0から時間tinv2までの実線は、透明導電膜12、15間に印加されている、電圧V1に対して逆極性の所定電圧Vinvを示す。時間tinv2から時間tshまでの実線は、透明導電膜12、15間をショートにしている期間の印加電圧を示す。時間tinv2からの破線は、透明導電膜12、15間を電気的に切り離し、オープン(ハイインピーダンス)にしている期間の印加電圧を示す。
【0091】
透過率の時間変化のグラフにおいて、破線は、第3の実施形態における透過率の時間変化を示す。実線は、
図17における印加電圧(透明導電膜12、15間の接続状態)の時間変化に応じた、透過率の時間変化を示す。
【0092】
図17に示すように、透明導電膜12、15に所定の逆極性電圧Vinvを印加している期間(0~tinv2)、第4の実施形態と同様に、透過率が第3の実施形態より速く減少する。逆極性電圧を印加し続けると、電気泳動粒子140はやがて透明導電膜12(第1の電極)の近傍に偏在し、結果、透過率が増加する。
【0093】
このため、透過率の計測において、透過率がほぼ最少となる時間(tinv2)で、透明導電膜12、15間を一旦ショートした後に、オープンした。すると、ショートからオープンへの切り替え時間tsh以降、透過率の増加は生じず、狭視野状態を定常化させることが可能であることが分かった。
【0094】
図18は、第5の実施形態の制御回路4の構成の一例を示すブロック図である。第5の実施形態の光線方向制御装置は、
図1に示すように光線方向制御素子1と制御装置2から構成される。制御回路4の構成以外の説明は省略する。なお、光線方向制御素子1は、
図10に示す第2実施形態の光線方向制御素子の構成を有してもよい。
【0095】
図18に示すように、第4の実施形態の制御回路4は、スイッチSW1と、スイッチSW2と、スイッチSW3と、コントローラ40を含む。コントローラ40には、図示しないプロセッサとメモリ及びインタフェースを含んで、光線方向制御信号を受け付けるとスイッチSW1、SW2及びSW3を制御する。なお、制御回路4は、他の回路構成を有してもよい。
【0096】
透明導電膜15(第2の電極)に接続された制御回路4は、光線方向制御素子1の広視野状態を維持するための所定の電圧V1(第1の電圧)と、所定の負電圧(逆極性電圧Vinv)と、ショート状態(接地)と、オープン状態を切り替える。また、制御回路4は、透明導電膜12(第1の電極)を接地させる。
【0097】
コントローラ40は、外部から広視野状態を指示する光線方向制御信号(広視野信号)を受信すると、SW1を制御して、透明導電膜15(第2の電極)に所定の電圧V1を与える。第1の実施形態と同様に、透明導電膜12、15の間に電圧V1が印加され、
図4Bで示したように、光線吸収領域14の電気泳動粒子140は第2の電極である透明導電膜15側に偏在する。これにより光線方向制御素子1は広視野状態になる。
【0098】
次に、第5の実施形態の特徴である、狭視野状態を指示する光線方向制御信号(狭視野信号)に対する、コントローラ40の動作を説明する。コントローラ40は、外部から狭視野信号を受信すると、
図19に示すフローチャートを実行する。
図19は、第5の実施形態における、狭視野信号に対する制御処理の一例を示す。
【0099】
まず、ステップS21では、コントローラ40が、狭視野信号を受信する。次に、ステップS22では、コントローラ40は、SW1、SW2及びSW3を制御して、透明導電膜15(第2の電極)に印加する電圧を、電圧V1から、負電圧(逆極性電圧Vinv)に切り替える。透明導電膜12、15間の電位差が逆極性となったため、電気泳動粒子140が分散を開始する。これにより、角度αでの透過率が減少し始める。
【0100】
次に、ステップS13では、コントローラ40が、所定時間tinv2が経過するまで待機する。この期間において、透明導電膜12、15間の電位差が逆極性に維持されている。したがって、電気泳動粒子140が、急速に分散する。これにより、角度αでの透過率が急速に減少する。
【0101】
所定時間tinv2が経過すると、ステップS24で、コントローラ40は、SW2及びSW3を制御して、透明導電膜15(第2の電極)を接地させて、透明導電膜15(第2の電極)と透明導電膜12(第1の電極)との接続状態をショートにする。次に、ステップS25では、コントローラ40が、所定時間tshが経過するまで待機する。
【0102】
所定時間tshが経過すると、ステップS26で、コントローラ40は、SW2及びSW3を制御して、透明導電膜15(第2の電極)と透明導電膜12(第1の電極)との接続状態をオープンにする。これにより、角度αでの透過率が一定値に達し、光線方向制御素子1(光線方向制御素子1)は、定常の狭視野状態になる。
【0103】
なお、所定時間tinv2、tshの情報は、コントローラ40に予め設定されている。光線方向制御装置の設計者は、透明導電膜12、15間に逆極性電圧を印加させた後、透過率の時間変動を観察することで、適切な時間tinv2、tshを特定できる。
【0104】
以上のように、第5の実施形態によれば、光線方向制御素子1の広視野状態から狭視野状態への遷移をさらに迅速に行うことが可能となる。また、第4実施形態と比べ逆電圧印加後にショートを追加することで、逆電圧印加期間tinv2がtiv1に比べ短い期間、あるいは小さい電圧とすることが出来る場合がある。この場合は、第4実施形態と比較し低電力化が可能である。
【0105】
<第6の実施形態>
図20~
図23は、第6の実施形態を示す。本実施形態は、光線方向制御素子1の広視野状態のための印加電圧を、狭視野状態から広視野状態に遷移させる際の印加電圧と、広視野状態を維持する電圧とに分けることを特徴とする。
【0106】
図20は、第6の実施形態における、光線方向制御素子1への印加電圧の変化に対応した、
図7A、
図7Bに示す角度αで測定される、透過率の過渡応答の計測結果を示すグラフである。具体的には、光線方向制御素子1への印加電圧の時間変化のグラフ及び透過率の時間変化のグラフを示す。透明導電膜12、15間がオープンでの狭視野状態から、広視野状態への切り替えのために、透明導電膜12、15に所定電圧を印加し始める時間を、時間0とする。
【0107】
印加電圧の時間変化のグラフにおける時間0からの実線は、透明導電膜12、15間に印加されている、所定の第1電圧V1を示す。時間0からの破線は、透明導電膜12、15間に印加されている、第1電圧V1より高い所定の第2電圧V2を示す。透過率の時間変化における時間0からの実線は、透明導電膜12、15間に第1電圧V1が印加されている間の、透過率の時間変化を示す。時間0からの破線は、透明導電膜12、15間に第2電圧V1が印加されている間の、透過率の時間変化を示す。
【0108】
第1の電圧V1を印加した場合、角度αの透過率は緩やかに時間t2まで増加し、時間t2で定常の広視野状態に達した。一方、第2の電圧V2を印加した場合、角度αの透過率は第1の電圧V1より速く増加し、時間t2よりも早い時間t1で、定常の広視野状態に達した。
【0109】
第6の実施形態での計測から、透明導電膜12、15間への印加電圧が異なる場合、角度αでの透過率の増加速度は変化するが、到達する最大の透過率に大きな違いがないことが判明した。このことは、広視野状態の維持についてはより低い第1の電圧V1でも可能であることを示す。
【0110】
したがって、本実施形態においては、狭視野状態から広視野状態の遷移をより迅速に行うために、はじめに、透明導電膜12、15間へ第2の電圧V2を印加する。その後、時間t1で広視野状態に到達した後、第2の電圧V2より低い第1の電圧V1を透明導電膜12、15間へ印加し、広視野状態を維持する。
【0111】
このように狭視野状態から広視野状態に遷移させる際の印加電圧と、広視野状態を維持する電圧とに分けることで、状態遷移を迅速に行い、かつ、消費電力を低減することが可能となる。
【0112】
図21は、第6の実施形態における、光線方向制御素子1への印加電圧の変化に対応した、
図7A、
図7Bに示す角度αで測定される、透過率の過渡応答の計測結果を示すグラフである。具体的には、光線方向制御素子1への印加電圧の時間変化のグラフ及び透過率の時間変化のグラフを示す。透明導電膜12、15間がオープンでの狭視野状態から、広視野状態への切り替えのために、透明導電膜12、15に所定電圧V2を印加し始める時間を、時間0とする。
【0113】
印加電圧の時間変化のグラフにおける時間0より前の破線は、透明導電膜12、15間がオープンであることを示す。印加電圧の時間変化のグラフにおける時間0からの実線は、透明導電膜12、15間の印加電圧の時間変化を示す。
【0114】
本実施形態では、光線方向制御素子1を狭視野状態から広視野状態へ遷移させる際に、時間0から時間t1の期間で透明導電膜12、15の間に第2の電圧V2を印加し、時間t1a以降は、第2の電圧V2より低い第1の電圧V1を印加する。
【0115】
図22は、第6の実施形態の制御回路4の構成の一例を示すブロック図である。第6の実施形態の光線方向制御装置は、
図1に示すように光線方向制御素子1と制御装置2から構成される。制御回路4の構成以外の説明は省略する。なお、光線方向制御素子1は、
図10に示す第2実施形態の光線方向制御素子の構成を有してもよい。
【0116】
図22に示すように、第6の実施形態の制御回路4は、スイッチSW1と、スイッチSW2と、スイッチSW3と、コントローラ40を含む。コントローラ40には、図示しないプロセッサとメモリ及びインタフェースを含んで、光線方向制御信号を受け付けるとスイッチSW1、SW2及びSW3を制御する。なお、制御回路4は、他の回路構成を有してもよい。
【0117】
透明導電膜15(第2の電極)に接続された制御回路4は、光線方向制御素子1を狭視野状態から広視野状態に変化させるための所定の第2の電圧V2と、広視野状態を維持するための所定の第1の電圧V1と、所定の負電圧と、オープン状態を切り替える。また、制御回路4は、透明導電膜12(第1の電極)を接地させる。
【0118】
コントローラ40は、狭視野状態を指示する光線方向制御信号(狭視野信号)を受信すると、例えば第4の実施形態で説明した動作によって、光線方向制御素子1を広視野状態から狭視野状態に遷移させる。
【0119】
次に、第6の実施形態の特徴である、広視野状態を指示する光線方向制御信号(広視野信号)に対する、コントローラ40の動作を説明する。コントローラ40は、外部から広視野信号を受信すると、
図23に示すフローチャートを実行する。
図23は、第6の実施形態における、広視野信号に対する制御処理の一例を示す。
【0120】
まず、ステップS31では、コントローラ40が、広視野信号を受信する。次に、ステップS32では、コントローラ40が、SW1及びSW2を制御して、透明導電膜15(第2の電極)に印加する電圧を第2の電圧V2に切り替える。これにより、透明導電膜12、15間には第2の電圧V2が印加される。第2の電圧V2によって、光線吸収領域14の電気泳動粒子140は、透明導電膜15(第2の電極)に向かって移動を開始する。
【0121】
ステップS33では、コントローラ40は、所定時間t1aが経過するまで待機する。時間0から時間t1aまでの期間において、電気泳動粒子140は、印加されている第2の電圧V2によって、透明導電膜15(第2の電極)の近傍に偏在する。これにより、光線方向制御素子1が狭視野状態から広視野状態に遷移する。
【0122】
所定時間t1aが経過すると、コントローラ40は、ステップS34で、SW3を制御して、透明導電膜15(第2の電極)に印加する電圧を、より低い第1の電圧V1に切り替える。これにより、透明導電膜12、15間に低電圧の第1の電圧V1が印加される。電気泳動粒子140は、透明導電膜15(第2の電極)の近傍に偏在した状態で維持される。第1の電圧V1により、消費電力を抑制ながら、定常の広視野状態を維持することができる。
【0123】
以上のように、第6の実施形態によれば、光線方向制御素子1は狭視野状態から広視野状態への遷移を迅速に行い、かつ、低消費電力で広視野状態を維持することができる。
【0124】
<第7の実施形態>
図33~
図37は、第7の実施形態を示す。第7の実施形態では、第6の実施形態と同様に光線方向制御素子1を狭視野状態から広視野状態に迅速に遷移させ、かつ、低消費電力で広視野状態を維持することを目的とするが、広視野状態の維持に、透明導電膜12、15間をオープンにする期間を用いることを特徴とする。
【0125】
第6の実施形態において、
図20を用いて説明したように、狭視野状態から広視野状態への遷移は、透明導電膜12、15間に印加する電圧(第2の電圧)が高いほど速くなる。
【0126】
任意の印加電圧における角度αで計測される透過率の時間変化、すなわち光線方向制御素子1の応答特性は、光線吸収領域14の構造(幅、高さ)や、印加電圧手段の構造や特性(透明導電膜12、15上への絶縁膜17、18の有無、絶縁膜17、18の厚さや抵抗値、屈折率といった特性)、光線吸収領域14の内部に封入される電気泳動粒子の特性(着色荷電粒子や分散媒141の特性)によって決定される。
【0127】
応答特性が遅い光線方向制御素子1に対して、迅速に狭視野から広視野へ状態遷移させるための遷移電圧(第2の電圧)の高電圧化は有効な手段であるが、遷移電圧の高電圧化に伴い、維持電圧(第1の電圧)も高くしなければならないことがわかった。
【0128】
図33に、高電圧化した遷移電圧V2(第2の電圧)に対して、維持電圧(第1の電圧)V1が不十分な場合の角度αで測定される透過率の過渡応答を示し、
図34に維持電圧(第1の電圧)V1が十分高い場合の透過率の過渡応答を示す。
【0129】
図33に示すように、維持電圧(第1の電圧)V1が不十分な場合、遷移電圧V2から維持電圧V1に切り替えた時刻t1以降では、透過率が減少する。ここで、人間が知覚する角度αの透過率変動をΔTrαとすると、
図33による光線方向制御素子1の駆動では、使用者は一旦広視野状態に切り替わったあと、すぐに視野角が狭くなる変動を知覚し違和感が生じる。
【0130】
図34に示すように、維持電圧(第1の電圧)V1を十分高くすれば、第6の実施形態で説明したように、広視野状態を維持できるが、第1の電圧の高電圧化により、低消費電力化の効果は減ることになる。
【0131】
図8を用いて第1の実施形態で説明したように、透明導電膜12、15間を電圧が印加された状態からオープンにしたときの透過率の減少は、ショートに比べ緩やかである。
【0132】
図35に
図33、
図34で印加した遷移電圧V2と同じ電圧を印加した後、透明導電膜12、15間をオープンとした場合の透過率の過渡応答を示す。
図35に示すように、時刻t1で透明導電膜12、15間をオープンにした後の透過率の減少は緩やかであり、
図33と比べ透過率の変動がΔTrαを下回るまでの時間が長いことを見出した。つまり、光線方向制御素子1の特性によっては、広視野状態への電圧を印加後、オープンにしても、広視野状態をある一定期間維持できる。
【0133】
しかしながら、
図35に示すように、広視野状態にするために透明導電膜12、15間に遷移電圧V2を印加した後、時刻t1以降でオープン状態を続ければ、透過率は減少し続け、変動はΔTrαを下回り、いずれは狭視野状態になってしまう。
【0134】
そこで、
図36に示すように、時刻t1でオープンとした後、透過率がΔTrα減少する前に、再び遷移電圧V2を印加する。再び遷移電圧V2を印加するまでの時間(周期)、及び印加する時間(期間)は、測定によって決定できる。
【0135】
なお、
図37に示すように、透明導電膜12、15間をオープンとした後、透過率がΔTrαまで減少する前に、遷移電圧V2より低い維持電圧V1を印加してもよい。維持電圧V1に相応しい電圧値、及び維持電圧V1の印加時間は測定により決定すればよい。
【0136】
上述のように遷移電圧V2を印加した後にオープン状態を用いるため、広視野状態の維持における低消費電力化が可能となる。
【0137】
なお、第7の実施形態における制御回路4の一例としては、
図22に示す第6の実施形態の制御回路4を用いることができる。
【0138】
以上のように、第7の実施形態によれば、光線方向制御素子1の狭視野状態から広視野状態への遷移を迅速に行い、かつ、低消費電力で広視野状態を維持することができる。
【0139】
なお、狭視野状態から広視野状態へ遷移させるときには、狭視野状態の経過時間に応じて、制御装置2が透明導電膜12、15に印加する電圧を変更するようにしてもよい。
【0140】
<第8の実施形態>
図24は、第8の実施形態に係る光線方向制御素子1の断面構造を示す。第8の実施形態では、光線方向制御素子1の透明導電膜15はパターン電極である。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0141】
透明基板16(第2の透明基板)上には、絶縁膜18を挟んで光線吸収領域14と対向する領域に、透明導電膜15Aが形成されている。透明導電膜15Aはパターン電極であり、一例において、透明導電膜15Aのパターン形状は、平面視において、光線吸収領域14のパターン形状に一致している。透明導電膜15Aの膜厚は、10[nm]~1000[nm]の範囲が適当であり、例えば、300[nm]である。透明導電膜15Aをパターン電極とすることで、透明導電膜15Aの面積を低減し、光線方向制御素子1の光透過率を改善できる。
【0142】
なお、透明導電膜15Aは、透明導電膜12より透過率が低くてもよい。透明導電膜15Aに代えて、光反射金属で構成されたパターン電極が使用されてもよい、透明導電膜12は、透明導電膜15Aのように、光線吸収領域14のパターン形状に対応したパターン形状を有するパターン電極であってもよい。光線方向制御素子1は、第1の実施形態における連続する面状の透明導電膜15と、パターン電極である透明導電膜12とを含んでもよい。この構成において、透明導電膜12の透過率は、透明導電膜15より低くてもよい。透明導電膜12に代えて、光反射金属で構成されたパターン電極が使用されてもよい。また、
図24に示す構成において、絶縁膜17、18は省略されてもよい。
【0143】
<第9の実施形態>
図3A、
図3Bに示したように、本開示の光線方向制御素子1は、電界印加による電気泳動粒子140の偏在により広視野状態が達成され、電界なしでの電気泳動粒子140の拡散により狭視野状態が達成される。第1の実施形態において、巨視的に電気泳動粒子140の密度が均一となった状態が最も安定な状態と説明した。しかし、電気泳動粒子140は、安定な状態となるまでには、流体力学的効果や静電相互作用の影響により複雑な挙動を示す。
【0144】
簡易モデルとして、電気泳動粒子140の減衰振動の振る舞いを仮定し、
図25に電気泳動粒子140の挙動を図示する。電極間にかかる電界がなくなることにより、電気泳動粒子140は、その近傍に偏在していた電極と対向する電極へ拡散を始める(t11)。この後、対向電極側の電気泳動粒子140の粒子密度が、もとの電極側の粒子密度より高くなる。そのため、反発力により、もとの電極側に動く電気泳動粒子140が現れる(t12)。
【0145】
ある程度の時間経過後に電気泳動粒子140全体が均一な分布になっているように見えても、個々の電気泳動粒子140は振動していると考えられる(t13、t14)。つまり、電界のない状態で、透過する光線の角度分布が変化しない状態(狭視野)になっても、各々の電気泳動粒子140の細かい振動は続いていると考えられる。なお
図25で示すような現象は、他の実施形態でも観察され得るものである。
【0146】
このため、再び、電界を印加し電気泳動粒子140(光線方向制御素子1)を広視野状態に遷移させるとき、電気泳動粒子140の振動の程度によって、応答時間が変化する。具体的には、完全に停止している電気泳動粒子140より、少しでも動いている電気泳動粒子140が、より速く動く。つまり、長い間狭視野状態であった光線方向制御素子1を広視野状態にするとき、狭視野状態が短い状態から広視野状態にするときと同じ電圧を同じ時間印加しても所望の透過率を達成しない。
【0147】
この状況を防ぐためには、狭視野状態の期間(経過時間)に応じて、広視野状態にする駆動を補正すればよい。本実施形態では、狭視野状態となってからの経過時間を計測し、その経過時間に対応した電圧値を印加することによって透過率の低下を回避する。
【0148】
図26は、第9の実施形態の制御回路4の構成の一例を示すブロック図である。コントローラ40はLook Up Table(LUT)45を含む。他の部分は、
図22に示す構成例と同様である。コントローラ40は、内蔵されているタイマによって狭視野状態の経過時間ETを計測し、LUT45を参照し、経過時間ETに対応した電圧値を得る。コントローラ40は、LUT45から得た電圧値に応じて第1の電極と第2の電極間に印加する電圧を補正することによって、所望の透過率を維持することが出来る。
【0149】
図27は、第9の実施形態における制御の1例を示すフローチャートである。まず、ステップS41では、コントローラ40が、狭視野信号を受信する。次に、ステップS42では、コントローラ40が、狭視野信号を受信してからの経過時間ETの計測を開始する。
【0150】
ステップS43では、コントローラ40が、SW1及びSW2を制御して、前記第1実施形態と同様に、透明導電膜15(第2の電極)と透明導電膜12(第1の電極)との接続状態をオープンに切り替える。透明導電膜12、15間のオープンへの切り替えによって、角度αでの透過率はゆっくりと漸減する。なお、狭視野状態への遷移は、前記第1実施形態に限定されるものではなく、前記第3実施形態や前記第4実施形態または第5実施形態で述べたような制御を行うことができる。
【0151】
ステップS44では、コントローラ40が、広視野信号を受信する。ステップS45では、コントローラ40が、経過時間ETを取得する。ステップS46では、コントローラ40が、
図28に示すLUT45を参照して、経過時間ETに対応する第1の印加電圧と第2の印加電圧を取得する。
【0152】
ステップS47では、コントローラ40が、上記取得した第2の印加電圧と第1の印加電圧を用いて、後述するように透明導電膜15(第2の電極)と透明導電膜12(第1の電極)へ印加する。これにより、狭視野状態の経過時間ETに応じて、コントローラ40が透明導電膜12、15に印加する電圧を変更することができる。
【0153】
LUT45には、狭視野状態からの経過時間ETに対応する電圧が予め設定される。
図28にLUT45の一例を示す。
図28に示すように、LUT45には、経過時間ETに応じて印加する第2の電圧と第1電圧が格納されている。LUT45は光線方向制御素子1の応答特性を測定し、作成することができる。
図29は、ある経過時間ETにおいて、光線方向制御素子1への印加電圧を変化させた時の、それに対応した透過率の過渡変化を計測した結果を示すグラフである。破線は電圧V3を印加した場合、実線は電圧V3よりも高い電圧V4を印加した場合である。印加電圧がV3では、時間t1においても、それ以降の時間においても十分な透過率を得ていない状況であった。しかし、印加電圧を電圧V4にした場合は、時間t1において所望の透過率を達成することが可能となった。したがって、このときの経過時間ETにおける印加電圧はV4と定めることができる。このように、LUT45は、経過時間ET毎に透過率の過渡変化を計測し作成する。また、前述の実施形態のように、制御回路4は、第1の電圧として電圧V3とし、第2の電圧を電圧V3よりも高い電圧V4とし、第1の電圧と第2の電圧を切り替えて透明導電膜15(第2の電極)へ印加することができる。
【0154】
つまり、時間t1以降の印加電圧を電圧V4から電圧V3にしてもよい。広視野状態を維持する電圧が低くなるため、低消費電力化が可能となる。なお、時間t1を電圧V4から電圧V3へ変更する時間とする場合は、狭視野状態の経過時間ETに応じて時間t1の値を変化させても良い。この場合、LUT45に狭視野状態の経過時間ETに応じた時間t1の値を設定しておけばよい。
【0155】
上記例では、コントローラ40は二つの電圧値V3、V4から選択した一方の電圧値を電極間に与える。これと異なり、コントローラ40は、狭視野状態の経過時間ETに応じて3以上の電圧値から選択した電圧値を、電極間に与えてもよい。これにより、より細かい補正が可能となる。
【0156】
例えば、LUT45は、狭視野状態の経過時間ETに対応する3以上の電圧値を示す。
図26の例において、SW3は、3以上の多入力から一つを選択するように構成される。コントローラ40は、LUT45を参照して、狭視野状態の経過時間ETに応じた電圧値を決定し、その電圧値を選択するようにSW3を制御する。
【0157】
<第10の実施形態>
本実施形態は第9の実施形態と同様に狭視野状態の経過時間に対する駆動の補正を実施する。本実施形態の場合、所定の電圧を印加しても所望の透過率を達成しない状況に対し、所定の期間、交流電圧を印加する。
【0158】
図26において、Look Up Table(LUT)45がコントローラ40内に用意されている。LUT45には、交流電圧を印加する期間を規定するt1およびt2、印加する電圧値が設定されている。狭視野状態からの経過時間に対応する交流電圧が予め設定される。
図26の例では、制御回路4の第1の電圧を+V5とし、負電圧を-V5とすればよい。コントローラ40は、内蔵されているタイマにより狭視野状態の経過時間を計測する。コントローラ40は、LUT45が当該経過時間に電圧値V5の交流電圧を対応付けている場合、LUT45が示すように電圧を制御する。
【0159】
この動作は、印加電圧値をV5としたとき、±V5となる電位を時間t1から時間t2の期間だけ印加する。このようにすることによって電気泳動粒子140を拡散させ、所定の透過率を得ることが出来る。
【0160】
図30は、本実施形態における、光線方向制御素子1への印加電圧を変化させた時の、それに対応した透過率の過渡変化を計測した結果を示すグラフである。長破線V31は、狭視野状態の経過時間が短い場合に、V5(DC電圧)を印加した場合である。また、短破線V32は、狭視野状態の経過時間が長い場合に、V5(DC電圧)を印加した場合である。更に実線V5は、狭視野状態の経過時間が長い場合に、V5の交流電圧を一定期間(t1からt2)印加し、時間t2からV5(DC電圧)を印加した場合である。
【0161】
狭視野状態の経過時間が短いときは、長破線V31に示すように、経過時間t2において十分な透過率を得ることが出来る。しかし、狭視野状態の経過時間が長い場合、短破線V32に示すように、電圧を印加して無十分透過率は上昇しない状況となってしまう。
【0162】
これを改善する方法として、時間t1において、負電圧を含む交流電圧を印加すると、透過率の改善が可能であることが明らかになった。すなわち、電気泳動粒子は時間t1までと異なる逆向きに動くことによって、透過率は一旦減少する。その後、電気泳動粒子がこの動作によって動きやすくなり、次の正電圧の印加によって電気泳動粒子がより速く動くことが可能となり、透過率の増加も速くなる。このように交流電圧の印加により、応答特性が大幅に改善する。なお、この交流電圧の周波数は図示しているものは一例であり、任意である。
【0163】
交流電圧印加を行った結果、印加電圧V3で一定としたときは、時間T2においても、それ以降の時間においても十分な透過率を得ていない状況であった。しかし、交流電圧を印加した場合は、時間T2において所望の透過率を達成することが可能となった。
【0164】
<第11の実施形態>
上記の実施形態において、狭視野状態の経過時間に応じて、光線方向制御素子1は応答特性が変化することを説明し、その課題に対応を実施した。光線方向制御素子1の応答特性は、温度によっても変化する。本実施形態は、環境温度に応じて駆動の補正を実施する。
電界における電気泳動粒子140の動きは、移動度(電気泳動移動度μ)によって決まる。
【0165】
電気泳動粒子(帯電粒子)140の動作は、電荷量qの荷電粒子は電場EからqEの力を受けて加速するが、やがて液体(分散媒141)の粘性抵抗と釣り合い等速運動となる。半径aの帯電粒子が粘性率ηの液体中を速度vで動くとき、6πηavの抵抗力を受ける。また、速度vをEで割った値が、電気泳動移動度μである。したがって、以下の(1)式~(3)式が成立する。
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
ここで、液体の粘性率は液体の温度に依存する。したがって、電気泳動粒子140の移動度は、温度依存性を有する。
【0170】
図31に示すように、透過率特性は、同じ印加電圧であっても、環境温度の低下に応じて、実線(T-0)から破線(T-1)のように変化する。本実施形態の光線方向制御装置は、
図32に示すように、光線方向制御素子1の温度を検出する温度センサ50を少なくとも一つ備える。
【0171】
温度センサにより、検出された温度情報は制御回路4に入力される。制御回路4のコントローラ40内には、
図32において、Look Up Table(LUT)45を用意し、コントローラ40は温度センサ50から得られた温度でLUT45を参照し、温度に対応する電圧を読み出して電圧を補正し、透明導電膜12(第1の電極)と透明導電膜15(第2の電極間)の電圧に反映させることによって、透過率を補正する。LUT45は、より低い温度に対してより高い印加電圧を対応付ける。
【0172】
補正方法は、実施形態8と同様の電圧でもよいし、実施形態9と同様に交流電圧であってもよい。なお、温度と経過時間を組合せたLUT45を作成し、対応させてもよい。制御回路4は、温度センサ50で測定した温度に応じて透明導電膜12(第1の電極)と透明導電膜15(第2の電極)に印加する電圧を補正することで、光線方向制御素子1の透過率特性を補償することができる。
【0173】
<まとめ>
なお、上記第1~第11の実施形態において、透明基板11、16は、ガラス基板製,PET(Poly Ethylene Terephthalate)製,PC(Poly Carbonate)製,又はPEN(Poly Ethylene Naphthalate)製のものを採用することができる。
【0174】
なお、第1~第11の実施形態において、透明導電膜12、15の膜厚は、10[nm]から1000[nm]の範囲内が適当であり、例えば、100[nm]とすることができる。また、透明導電膜12、15の構成材料としては、ITO、ZnO、又はIGZO等を採用することができる。
【0175】
以上、各実施形態において説明した光線方向制御素子1は、液晶表示装置だけではなく、
図4Aで示したように、表示パネル5として他の表示装置、例えば有機ELディスプレイや無機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ等にも適用することができる。また、光線方向制御素子1の使用形態としては、表示パネル5の表面に直接貼り付けて使用する形態、表示装置内に搭載する形態、表示パネルとバックライトの間に配置する形態など、種々の使用形態を想定することができる。
【0176】
なお、前記第3~第11の実施形態において、光線方向制御素子1の構成は、前記第2実施形態の
図10で示したように、光線透過領域13と光線吸収領域14を挟むように絶縁膜17、18を設けたものを採用することができる。
【0177】
なお、前記第1~第5の実施形態において、光線方向制御素子1を狭視野状態から広視野状態に遷移させる場合には、前記第7の実施形態を適用して、制御装置2が遷移電圧V2を印加した後に、透明導電膜12、15間をオープン(ハイインピーダンス状態)に切り替えるようにしてもよい。
【0178】
光線方向制御素子1の表面には、傷つきを抑制するハードコート層や、外光の写りこみを防止する反射防止層等を形成するようにしてもよい。本開示にかかる光線方向制御素子1は、携帯電話機、ノート型パーソナルコンピュータ、フィーチャーフォン、スマートフォン、タブレット、又はPDA等といった携帯型の情報処理端末にも、広く適用することができる。
【0179】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本開示の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0180】
1 光線方向制御素子
2 制御装置
4 制御回路
11、16 透明基板
12、15 透明導電膜
13 光線透過領域
14 光線吸収領域
17、18 絶縁膜
40 コントローラ