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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】舵板、及び船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 25/38 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
B63H25/38 C
B63H25/38 102
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018164607
(22)【出願日】2018-09-03
(65)【公開番号】P2020037302
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】503218067
【氏名又は名称】住友重機械マリンエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】高井 通雄
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-295794(JP,A)
【文献】特開2011-240793(JP,A)
【文献】特開昭62-018395(JP,A)
【文献】特開昭59-102697(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0097703(KR,A)
【文献】特開昭63-149290(JP,A)
【文献】実開昭48-087791(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 25/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延在する翼部と、
前記翼部に設けられている端板と、を備える舵板であって、
前記端板が前記翼部に収められた第1の状態と、
前記端板が前記翼部から広げられた第2の状態と、を切り替え
前記端板は、前記翼部の側面に沿って配置された前記第1の状態と、前記端板の主面が水平方向に広がるように前記翼部から横方向に延在する前記第2の状態と、を切り替え可能なように前記翼部に対して可動に設けられる、舵板。
【請求項2】
前記端板は、前記翼部に対して回転することによって、前記第1の状態と前記第2の状態とを切り替える、請求項1に記載の舵板。
【請求項3】
上下方向に延在する翼部と、
前記翼部に設けられている端板と、を備える舵板であって、
前記端板が前記翼部に収められた第1の状態と、
前記端板が前記翼部から広げられた第2の状態と、を切り替え、
前記端板は、前記翼部に対して回転部周りに回転することによって、前記第1の状態と前記第2の状態とを切り替え、
前記回転部の回転軸線は、前後方向に延びるように配置されている、舵板。
【請求項4】
前記舵板が搭載された船舶が直進する際には前記第1の状態となり、前記船舶が旋回する際には前記第2の状態となる、請求項1~3の何れか一項に記載の舵板。
【請求項5】
上下方向に延在する翼部と、前記翼部に設けられている端板と、を備えた舵板を有する船舶であって、
前記舵板を、前記端板が前記翼部に収められた第1の状態と、
前記端板が前記翼部から広げられた第2の状態と、に切り替え可能であり、
前記端板は、前記翼部の側面に沿って配置された前記第1の状態と、前記端板の主面が水平方向に広がるように前記翼部から横方向に延在する前記第2の状態と、を切り替え可能なように前記翼部に対して可動に設けられる、船舶。
【請求項6】
上下方向に延在する翼部と、前記翼部に設けられている端板と、を備えた舵板を有する船舶であって、
前記舵板を、前記端板が前記翼部に収められた第1の状態と、
前記端板が前記翼部から広げられた第2の状態と、に切り替え可能であり、
前記端板は、前記翼部に対して回転部周りに回転することによって、前記第1の状態と前記第2の状態とを切り替え、
前記回転部の回転軸線は、前後方向に延びるように配置されている、船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舵板、及び船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の舵板として、特許文献1に記載されたものが知られている。この舵板は、上下方向に延在する翼部と、翼部の下端及び上端に設けられている端板と、を備える。端板は、翼部の端部において、水平方向に延びるように設けられている。これにより、揚力を増加させることで、旋回時における舵板の舵力を大きくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-74303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、舵板に端板を設けた場合、舵力を増加することができるものの、水流に対する抵抗力が増加してしまうため、推進力という点においては、当該推進力を低下させる原因となる。このように、上述の舵板では、状況によっては性能が低下する場合があった。従って、状況に応じた性能を発揮することができる舵板が求められていた。
【0005】
そこで、本発明は、状況に応じた性能を発揮することができる舵板及び船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る舵板は、上下方向に延在する翼部と、翼部に設けられている端板と、を備える舵板であって、端板が翼部に収められた第1の状態と、端板が翼部から広げられた第2の状態と、を切り替える。
【0007】
このような舵板は、端板が翼部に収められた第1の状態と、端板が翼部から広げられた第2の状態と、を切り替えることができる。端板が広げられた状態では、舵板の舵力を増加することができ、端板が翼部に収められた状態では、端板による抵抗力の増加を抑制できる。従って、状況によって舵板に求められる性能が異なる場合に、舵板は第1の状態と第2の状態を切り替えることで、各状況に対応することができる。以上より、舵板は、状況に応じた性能を発揮することができる。
【0008】
本発明に係る舵板において、端板は、翼部の側面に沿って配置された第1の状態と、翼部から横方向に延在する第2の状態と、を切り替え可能なように翼部に対して可動に設けられてよい。このように、第1の状態において端板が翼部の側面に沿って配置されるため、翼部に対して複雑な構造を設けることなく、端板を翼部に収めることができる。また、このような構成は、端板を下方へ延ばす構造に比して、船体の最低部(底部)が低くなることを回避することができるため、喫水制限に対する影響を及ぼさない。
【0009】
本発明に係る舵板において、端板は、翼部に対して回転することによって、第1の状態と第2の状態とを切り替えてよい。これにより、端板はシンプルな動作にて、速やかに第1の状態と第2の状態とを切り替えることができる。
【0010】
本発明に係る舵板において、端板は、翼部内に格納された第1の状態と、翼部の下端から突出し、上下方向に延在する第2の状態と、を切り替え可能なように翼部に対して可動に設けられてよい。このように第1の状態において端板が翼部内に格納されるため、端板による抵抗力の影響を更に低減することができる。
【0011】
本発明に係る舵板において、端板は、翼部に対してスライドすることによって、第1の状態と第2の状態とを切り替えてよい。これにより、端板はシンプルな動作にて、速やかに第1の状態と第2の状態とを切り替えることができる。
【0012】
本発明に係る舵板において、舵板が搭載された船舶が直進する際には第1の状態となり、船舶が旋回する際には第2の状態となってよい。船舶の直進時には、舵板は第1の状態となることで、端板による抵抗力の増加を抑制することで、推進力を向上する事ができる。一方、船舶の旋回時には、舵板は第2の状態となることで、舵力を向上できる。
【0013】
本発明に係る船舶は、上下方向に延在する翼部と、翼部に設けられている端板と、を備えた舵板を有する船舶であって、舵板を、端板が翼部に収められた第1の状態と、端板が翼部から広げられた第2の状態と、に切り替え可能である。
上述の舵板が搭載されている。
【0014】
この船舶によれは、上述の舵板の作用・効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、状況に応じた性能を発揮することができる舵板及び船舶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る舵板を備える船舶を示す側面図である。
図2図1の船舶の船尾部分を示す拡大図である。
図3】舵板を前側から見た図である。
図4】舵板を上方から見た図である。
図5】操舵機を用いて端板を開閉させるための駆動機構を示す斜視図である。
図6】変形例に係る舵板を示す図である。
図7】変形例に係る舵板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る舵板を備える船舶を示す側面図である。図2は、図1の船舶の船尾部分を示す拡大図である。図1に示すように、本実施形態の船舶1は、タンカー等であり、船体2、推進軸系3及び舵4を備えている。なお、以降の説明において、船首側の方向を「前」と称し、船尾側の方向を「後」と称する場合がある。
【0019】
船体2は、船尾側に機関室6を有している。機関室6は、メインエンジン等の機器を配置するためのスペースである。メインエンジンは、推進軸系3のプロペラを駆動するものである。船体2は、機関室6よりも船尾側に上から順に舵機室7、舵機室下スペース8、及び船尾構造9を有している。舵機室7は、舵4を操舵するための操舵機構や駆動部などを配置するためのスペースである。舵機室下スペース8は、舵機室7の下側に設けられるスペースである。船尾構造9は、舵機室下スペース8の下側に設けられ、推進軸系3の一部を構成する部分である。なお、機関室6の船首側には、ポンプ室、荷油槽、バラストタンクなどが設けられる。
【0020】
図2に示すように、舵機室下スペース8は、船体2の船尾側の後端部2aから、船首側へ向かって下方へ傾斜する傾斜部8aを有している。従って、船尾構造9の後端部9aは、船体2の後端部2aよりも船首側に配置される。船尾構造9の後端部9aは、船尾側へ突出する形状を有しており、当該突出形状の先端部に推進軸系3のプロペラ11が設けられる。
【0021】
推進軸系3は、船舶1の推進力を発生する機構である。推進軸系3は、船尾構造9に対して設けられる。推進軸系3は、舵機室下スペース8の傾斜部8aの下方に配置され、船舶1の運転時に少なくとも水面よりも低い位置に配置される。推進軸系3は、プロペラ11と、回転軸12と、を備える。プロペラ11は、回転軸12の回転に伴って回転することで、後側へ向かって水流を発生させる。回転軸12は、プロペラ11から船首側へ向かって船尾構造9内を水平方向に延びる。回転軸12の船首側の端部は、機関室6(図1参照)内のエンジンから回転力を付与される。
【0022】
舵4は、船舶1の方向転換を行うための機構である。舵4は、舵板20と、回転軸21と、を備える。舵板20は、舵機室下スペース8の傾斜部8aの下方に配置され、船舶1の運転時に少なくとも水面よりも低い位置に配置される。また、舵板20は、プロペラ11に対して船尾側で対向する位置に配置される。
【0023】
舵板20は、前後方向に広がった状態で、上下方向に延在している。舵板20は、上端部20aにて回転軸21に接続されている。舵板20の詳細な構造については、後述する。回転軸21は、舵板20の上端部20aから上方へ向かって延びる。回転軸21は、傾斜部8aを貫通して船体2の内部まで延びる。回転軸21は、舵機室7まで延びており、当該舵機室7内に設けられた操舵機22と接続されている。回転軸21は、回転することによって、当該回転軸21周りに舵板20を回転させて向きを変更することができる。
【0024】
なお、操舵機22は、制御部25と接続されている。操舵機22は、当該制御部25からの制御信号に基づき、指示された回転方向へ指示された量だけ回転する。制御部25は、操縦者によって操舵操作が行われた場合、その旋回方向及び旋回量に基づいた回転方向及び回転量の情報を含む制御信号を操舵機22へ送信する。
【0025】
次に、図2図4を参照して、本実施形態に係る舵板20の構成について説明する。図3は、舵板を前側から見た図である。図4は、舵板を上方から見た図である。図2図4に示すように、舵板20は、上下方向に延在する翼部30と、翼部30に設けられている一対の端板40,40と、を備える。
【0026】
翼部30は、舵板20の本体部を構成している。翼部30は、前側において上下方向に延びる前端31と、後側において上下方向に延びる後端32と、上側において前後方向に延びる上端33と、下側において前後方向に延びる下端34と、を有する(図2参照)。また、翼部30は、上下方向及び前後方向に広がる側面35,35を有する(図3及び図4参照)。ここでは、上下方向及び前後方向と直交する方向を「横方向」と称する。また、側面35,35から舵板20の横方向における中心線CL(図3参照)に向かう方向を「横方向における内側」と称し、反対側を「横方向における外側」と称する。なお、翼部30は、上下方向から見て(図4に示す様子)流線形を描くような形状を有してもよいが、本実施形態では、構造の理解を容易とするために、単なる長方形をなしているものとして説明を行う。
【0027】
図3に示すように、翼部30の側面35,35は、当該側面35,35の下端34付近の領域以外の略全域を占める主面35a,35aを有する。また、翼部30の側面35,35は、下端34付近に段差部を有することにより、段差面35b,35bと、段差底面35c,35cと、を有する。段差面35b,35bは、主面35a,35aの下端から横方向における翼部30の内側へ延びる。段差底面35c,35cは、段差面35b,35bの横方向における内側の端部から下方へ向かって下端34まで延びる。主面35a,35aと段差底面35c,35cとは、略平行をなすように形成される。段差面35b,35bの横方向の寸法、すなわち段差の深さは、端板40の厚さと略同一に設定されてよい。段差面35b,35b及び段差底面35c,35cは、前後方向に延びている。段差面35b,35b及び段差底面35c,35cは、端板40を収納するための収納部36として機能する。
【0028】
端板40,40は、翼部30に対して可動に設けられる。端板40,40は、翼部30の下端34付近に取り付けられる、前後方向に延びる帯状の板材によって構成される。端板40,40の幅方向における一方の端部は、回転部41を介して、翼部30に取り付けられる。端板40,40の幅方向における他方の端部は、自由端部40a,40aとして、翼部30に対して近接及び離間することができる。このような構成により、端板40,40は、翼部30に対して、回転部41周りに回転することができる。回転部41は、下端34と段差底面35c,35cとの間の角部に設けられている。回転部41の回転軸線は、前後方向に延びるように配置されている。従って、端板40,40は、前後方向から見たときに、自由端部40a,40aが回転部41の回転軸線を中心とした円弧を描くように、回転する。
【0029】
舵板20は、端板40,40が翼部30に収められた第1の状態と、端板40,40が翼部30から広げられた第2の状態と、を切り替える。端板40,40が翼部30に収められた状態とは、端板40,40が翼部30の一部分を構成する部材として当該翼部30に組み込まれた状態である。従って、端板40,40が翼部30に収められた状態では、端板40,40がプロペラ11(図2参照)からの水流に対して実質的に影響を及ぼさないため、端板40,40としての機能が停止又は抑制されている。端板40,40が翼部30から広げられた状態とは、端板40,40が翼部30から離間した位置に配置されることで、翼部30から独立した部材として水中に配置された状態である。従って、端板40,40が翼部30から広げられた状態では、端板40,40がプロペラ11(図2参照)からの水流に対して影響を及ぼすため、端板40,40としての機能が発揮されている。
【0030】
本実施形態では、図3(a)が第1の状態を示し、図3(b)が第2の状態を示す。本実施形態では、端板40,40は、翼部30の側面35,35に沿って配置された第1の状態と、翼部30から横方向に延在する第2の状態と、を切り替え可能なように翼部30に対して可動に設けられる。また、端板40,40は、翼部30に対して回転することによって、第1の状態と第2の状態とを切り替える。
【0031】
図3(a)に示すように、第1の状態では、端板40,40は、側面35,35に沿って配置される。すなわち、端板40,40は、主面40b,40bと側面35,35とが重ね合わせられるように接触した状態で、側面35,35に沿って延びた状態にて配置される。ここでは、端板40,40は、翼部30の収納部36,36に収納されている。このとき、端板40,40は、収納部36,36の空間を埋めるような部材として機能する。端板40,40の主面40b,40bは段差底面35c,35cと重ね合わせられるように接触する。反対側の主面40c,40cは、水中に露出するように配置される。主面40c,40cは、翼部30の主面35a,35aと略連続したような面として機能する。すなわち、主面40c,40cは、翼部30の側面35,35の下端34付近の領域の一部分として機能する。端板40,40の自由端部40a,40aは、段差面35b,35bと対向するように配置される。この状態では、端板40,40は、水流に対して抵抗を増加させる部材としては影響しない(あるいは、当該影響は抑制されている)。すなわち、第1の状態の舵板20と、翼部30のみで構成される舵板との水流に対する抵抗は、略同一となる。
【0032】
図3(b)に示すように、第2の状態では、端板40,40は、翼部30から横方向に延在するように配置される。すなわち、端板40,40は、第1の状態から回転部41,41を中心として下方へ略90°回転した位置に保持される。これにより、端板40,40は、収納部36,36から翼部30の外部に展開され、主面40b,40bが段差底面35c,35cから離間する。これにより、端板40,40の主面40b,40bと、主面40c,40cが両方とも水中で水平方向に広がるように配置される。第2の状態では、端板40,40は、翼部30の下端34付近にて、翼部30の側面35,35に対して舵面積を拡張する部材として機能する。第2の状態では、端板40,40による流体力学的鏡像効果によって、舵板20のアスベクト比が第1の状態に比して実質的に増加し、大きな揚力が得られ(約3~10%の増加)るので、舵力が大きくなり、操船し易くなる。
【0033】
図4(a)は第1の状態を示し、図4(b)は第2の状態を示す。図4に示すように、舵板20は、当該舵板20が搭載された船舶1が直進する際には第1の状態となり、船舶1が旋回する際には第2の状態となる。図4(a)に示すように、船舶1が直進する際には、翼部30前後方向に真っ直ぐ延びるような姿勢となる。これにより、翼部30は、プロペラ11の回転によって前方から後方へ向かう水流Wに沿った姿勢で配置される。このとき、端板40,40は、翼部30に収められているため、水流Wに対して影響を与えない。これにより、舵板20は、端板40,40による水流Wに対する抵抗力の増加の影響を抑制し、推進力を高めることができる。
【0034】
図4(b)に示すように、船舶1が旋回する際には、翼部30が回転して、前後方向に対して傾斜する姿勢となる。これにより、翼部30は、水流Wに対して傾斜した姿勢で配置される。このとき、端板40,40は、翼部30から広げられているため、舵面積を拡張する機能を発揮する。これにより、舵板20は、端板40,40が追加された分だけ舵力を増加することができる。
【0035】
図2に示すように、船舶1は、端板40,40を開閉させることで、第1の状態と第2の状態とを切り替える駆動部50と、駆動部50に対する動力源51と、を備える。駆動部50は、例えば操舵機などの電動機、油圧シリンダなどである。動力源51は、駆動部50が電動機である場合は、電源によって構成され、駆動部50に対して電力を供給する。動力源51は、駆動部50が油圧シリンダである場合は、ポンプによって構成され、駆動部50に対して作動油を供給する。特に配置は限定されるものではないが、図2では、駆動部50は舵板20の翼部30の内部に配置され、動力源51は水面よりも高い舵機室7内に配置される。動力源51は、回転軸21内を通過する電線やパイプなどを介して、駆動部50に電力や作動油を供給する。制御部25は、動力源51に制御信号を送信することで、駆動部50の動作を制御することができる。制御部25は、船舶1の直進の際には、操舵機22に制御信号を送信して、翼部30を前後方向に真っ直ぐな状態とすると共に、動力源51に制御信号を送信して、端板40を翼部30に収めた第1の状態とする(図4(a)参照)。制御部25は、船舶1の旋回の際には、操舵機22に制御信号を送信して、翼部30を前後方向に対して傾斜した状態とすると共に、動力源51に制御信号を送信して、端板40を翼部30から広げた第2の状態とする(図4(b)参照)。
【0036】
図5を参照して、端板40を開閉させるための駆動機構の一例について説明する。図5は、モータを用いて端板を開閉させるための駆動機構を示す斜視図である。図5では、翼部30のうち、下端34を構成する壁部だけが実線で示され、他の壁部は仮想線で示されている。なお、図5では、駆動機構の理解が容易となるように、端板40の厚みを薄くした状態で示し、各構成要素間の隙間も大きく強調した状態で示している。回転部41は、端板40に固定された回転軸61と、回転軸61の両端を回転可能に支持する軸受部62,62と、を備える。回転軸61の両端部は、前後方向に互いに対向する段差面35d,35dを介して翼部30の内部に配置される。回転軸61の一方の端部には、傘歯車66が設けられる。駆動部50は、翼部30の内部に配置されたモータ63によって構成される。モータ63のシャフトは横方向に延びており、その先端には傘歯車64が設けられる。傘歯車64は、回転軸61の傘歯車66と噛み合うように配置される。これにより、モータ63の回転力は傘歯車64,66を介して回転軸61の回転力に変換される。
【0037】
なお、駆動部50として油圧シリンダを採用する場合、翼部30の内部から、油圧シリンダのシャフトを側面35から外部へ貫通させて、当該シャフト(またはそれに接続されたリンク機構)によって端板40の開閉を行ってよい。
【0038】
次に、本実施形態に係る舵板20及び船舶1の作用・効果について説明する。
【0039】
本実施形態に係る舵板20は、上下方向に延在する翼部30と、翼部30に設けられている端板40と、を備える舵板20であって、端板40が翼部30に収められた第1の状態と、端板40が翼部30から広げられた第2の状態と、を切り替える。
【0040】
このような舵板20は、端板40が翼部30に収められた第1の状態と、端板40が翼部30から広げられた第2の状態と、を切り替えることができる。端板40が広げられた状態では、舵板20の舵力を増加することができ、端板40が翼部30に収められた状態では、端板40による抵抗力の増加を抑制できる。従って、状況によって舵板20に求められる性能が異なる場合に、舵板20は第1の状態と第2の状態を切り替えることで、各状況に対応することができる。以上より、舵板20は、状況に応じた性能を発揮することができる。
【0041】
本実施形態に係る舵板20において、端板40は、翼部30の側面35に沿って配置された第1の状態と、翼部30から横方向に延在する第2の状態と、を切り替え可能なように翼部30に対して可動に設けられる。このように、第1の状態において端板40が翼部30の側面に沿って配置されるため、翼部30に対して複雑な構造を設けることなく、端板40を翼部30に収めることができる。例えば、後述の図7に示す舵板120では、端板140を格納するための内部構造やシール構造を設ける必要があるが、本実施形態に係る舵板20では、端板40を側面35に沿って配置するだけで、端板40を翼部30に収めることができる。また、このような構成は、端板を下方へ延ばす構造(図7に示す構成)に比して、船体の最低部(底部)が低くなることを回避することができるため、喫水制限に対する影響を及ぼさない。
【0042】
本実施形態に係る舵板20において、端板40は、翼部30に対して回転することによって、第1の状態と第2の状態とを切り替える。これにより、端板40はシンプルな動作にて、速やかに第1の状態と第2の状態とを切り替えることができる。
【0043】
本実施形態に係る舵板20において、舵板20が搭載された船舶1が直進する際には第1の状態となり、船舶1が旋回する際には第2の状態となる。船舶1の直進時には、舵板20は第1の状態となることで、端板40による抵抗力の増加を抑制することで、推進力を向上する事ができる。一方、船舶1の旋回時には、舵板20は第2の状態となることで、舵力を向上できる。
【0044】
本実施形態に係る船舶1には、上述の舵板20が搭載されている。
【0045】
この船舶1によれは、上述の舵板20の作用・効果を奏することができる。
【0046】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0047】
上述の実施形態では、第2の状態において、端板40,40は、横方向に延びるように配置されていた。これに代えて、図6(a)に示すように、第2の状態において、端板40,40は、下方に延びるように配置されてよい。この場合、端板40,40は、第1の状態から回転部41を中心に略180°回転することで、自由端部40a,40aを下方に向けるように配置される。このように配置された場合であっても、端板40,40は、第1の状態に比して舵板20の舵面積を拡張することができるため、舵力を増加させることができる。
【0048】
また、上述の実施形態では、翼部30が収納部36を有し、第2の状態では端板40,40が収納部36に収納されることによって翼部30に収められていた。これに代えて、図6(b)に示すように、収納部36を有さない翼部30が採用されてもよい。この翼部30は、下端34付近においても、主面35a,35aを有している。第1の状態において、端板40,40は、主面40b,40bと主面35a,35aとが重ね合わされるように接触する。端板40,40は、当該端板40,40の厚み分だけ主面35a,35aから突出した状態となる。このような状態であっても、端板40,40による抵抗力は低く抑えることができる。すなわち、このような状態も、端板40,40が翼部30に収められた状態に該当する。
【0049】
また、上述の実施形態では、端板40,40は、翼部30の側面35,35に沿って配置された第1の状態と、翼部30から横方向に延在する第2の状態と、を切り替え可能なように翼部30に対して可動に設けられていた。これに代えて、図7に示すような舵板120を採用してもよい。図7に示すように、端板140は、翼部130内に格納された第1の状態と、翼部130の下端134から突出し、上下方向に延在する第2の状態と、を切り替え可能なように翼部130に対して可動に設けられる。図7(a)に示すように、第1の状態では、端板140は、翼部130の内部空間SPの内側に配置される。端板140は、内部空間SPにおいて上側に配置された油圧シリンダ150と接続されている。なお、油圧シリンダ150と端板140との間は、壁部136が設けられている。壁部136には、シール性を確保した状態で、油圧シリンダ150のシャフト151が貫通している。これにより、壁部136は、下端134の開口部から翼部130の内部空間SPの下側領域に入り込んだ海水が、油圧シリンダ150が配置されている領域に入り込むことを防止できる。図7(b)に示すように、端板140は、油圧シリンダ150のシャフト151に押されることによって、下方へ移動する。これにより、端板140は、翼部130の下端134の開口部から、下方へ向かって延びた状態となる。すなわち、端板140は、翼部130に対してスライドすることによって、第1の状態と第2の状態とを切り替える。
【0050】
このように、変形例に係る舵板において、端板140は、翼部130内に格納された第1の状態と、翼部130の下端から突出し、上下方向に延在する第2の状態と、を切り替え可能なように翼部130に対して可動に設けられている。このように第1の状態において端板140が翼部130内に格納されるため、端板140による抵抗力の影響を更に低減することができる。
【0051】
変形例に係る舵板において、端板140は、翼部130に対してスライドすることによって、第1の状態と第2の状態とを切り替える。これにより、端板140はシンプルな動作にて、速やかに第1の状態と第2の状態とを切り替えることができる。
【0052】
また、上述の実施形態及び変形例では、翼部内に端板を移動させる駆動部が設けられていた。これに代えて、駆動部が船体2側に設けられる構成を採用してもよい。例えば、操舵機や油圧シリンダなどの駆動部が舵機室7に設けられ、駆動部の駆動力が、リンク機構や歯車機構などの組み合わせによって、端板に伝達されてよい。このような駆動力の伝達機構は、回転軸21内を通過してよい。また、舵板に対する操舵機22(図2参照)の回転力が、リンク機構や歯車機構を介して端板の駆動力に変換されるような変換機構を設けてもよい。これにより、船舶の旋回時に操舵機22が舵板を回転させるタイミングにて、端板を広げることができる。
【0053】
また、上述の実施形態及び変形例では、下端のみに端板が設けられていたが、これに代えて、またはこれに加えて、上端にも端板を設けてもよい。この場合、上端に対する端板にも、上述の端板と同趣旨の切り替え構造を採用してよい。あるいは、上端の端板と及び下端の端板の一方のみに切り替え構造を採用してもよい。
【0054】
また、上記実施形態においては、特に好適であるとして、船舶をタンカーとしているが、油だけでなく鉱石や石炭等の固形貨物(バルク)も積める兼用船に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…船舶、20,120…舵板、30,130…翼部、40,140…端板。
図1
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図7