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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】繊維含有複合材の接合
(51)【国際特許分類】
   F16B 7/20 20060101AFI20220928BHJP
   B64C 1/00 20060101ALI20220928BHJP
   B64C 13/30 20060101ALI20220928BHJP
   B29C 70/68 20060101ALI20220928BHJP
   B29C 65/00 20060101ALI20220928BHJP
   B64C 13/40 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
F16B7/20 A
B64C1/00 A
B64C13/30 B
B64C1/00 B
B29C70/68
B29C65/00
B64C13/40
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018167876
(22)【出願日】2018-09-07
(65)【公開番号】P2020041566
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】安井 努
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-187458(JP,A)
【文献】特開2017-087841(JP,A)
【文献】特開2001-153115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 7/20
B64C 1/00
B64C 13/30
B29C 70/68
B29C 65/00
B64C 13/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿って延びる穴が形成された第1の部材と、
繊維含有複合材から前記穴に適合する形状に形成された中空の軸部材を有し、前記軸方向への移動が規制されるように前記軸部材を介して前記第1の部材に接合された第2の部材と、
を備え
前記第1の部材に形成された前記穴は、前記軸部材の前記軸方向に対して傾斜する傾斜面によって少なくともその一部が画定されており、
前記軸部材は、前記傾斜面に沿って延伸し前記傾斜面と接する傾斜部を有し、前記傾斜部の外周面及び内周面はいずれも、前記軸部材の前記軸方向に対して傾斜しており、
前記軸部材は、前記軸方向における前記穴から脱落する方向への移動が前記第1の部材の前記傾斜面によって規制されるように前記穴に配置されている、
接合構造体。
【請求項2】
前記軸部材は、前記軸方向における第1の位置において第1の幅を有し、前記軸方向における前記第1の位置よりも先端側の第2の位置において前記第1の幅よりも大きな第2の幅を有する、請求項1に記載の接合構造体。
【請求項3】
前記軸部材は、前記軸方向における前記第2の位置よりも先端側の第3の位置において前記第2の幅よりも小さな第3の幅を有する、請求項2に記載の接合構造体。
【請求項4】
前記第1の部材は、前記軸方向における前記第2の位置において、前記第1の位置よりも幅広の幅広部を有し、
前記軸部材は、前記幅広部に受け入れられる突出部を有し、
前記突出部は、強化繊維を含んでいる、
請求項2又は3に記載の接合構造体。
【請求項5】
前記軸部材は、前記軸方向における第1の位置において第1の幅を有し、前記軸方向における前記第1の位置よりも先端側の第2の位置において前記第1の幅よりも大きな第2の幅を有し、前記軸方向における前記第1の位置よりも基端側の第4の位置において前記第1の幅よりも大きな第4の幅を有する、請求項1に記載の接合構造体。
【請求項6】
前記第1の部材は、前記軸方向における前記第2の位置において、前記第1の位置よりも幅狭の膨出部を有し、
前記軸部材は、前記膨出部を受け入れる凹部を有し、
前記凹部は、強化繊維を含んでいる、
請求項5に記載の接合構造体。
【請求項7】
前記軸部材は、前記軸方向に垂直な方向の断面が非円形となるように形成される、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の接合構造体。
【請求項8】
前記第1の部材は、前記穴を画定する筒状部材を有しており、
前記筒状部材は、前記軸方向の基端における肉厚が、前記基端よりも前記軸方向の先端側における肉厚よりも薄くなるように形成されている、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の接合構造体。
【請求項9】
前記筒状部材は、金属製である、請求項に記載の接合構造体。
【請求項10】
前記軸部材は、第1の方向に延びる第1の強化繊維を有し、
前記軸部材は、前記軸方向において前記筒状部材と重なり合う接合部と、前記軸方向において前記接合部と重なり合わない非接合部と、を有し、
前記接合部において前記軸方向に対して前記第1の方向が為す角度は、前記非接合部において前記軸方向に対して前記第1の方向が為す角度よりも大きい、請求項8又は請求項に記載の接合構造体。
【請求項11】
前記軸部材は、前記第1の方向とは異なる方向である第2の方向に延び、前記第1の強化繊維に編み込まれた第2の強化繊維をさらに有し、
前記接合部において前記軸方向に対して前記第2の方向が為す角度は、前記非接合部において前記軸方向に対して前記第2の方向が為す角度よりも小さい、請求項10に記載の接合構造体。
【請求項12】
前記非接合部に、前記軸方向を囲む周方向に配向された強化繊維を含む繊維強化プラスチックからなる補強部材が設けられた、請求項10又は請求項11に記載の接合構造体。
【請求項13】
航空機の動翼に直接的または間接的に取り付けられ前記動翼を駆動させるアクチュエータを摺動可能に支持するブッシュと、
繊維含有複合材からなる軸部材を有し、前記ブッシュに接合されるリンク本体と、
を備え、
前記ブッシュには、前記軸部材の軸方向に沿って延びる穴が形成されており、
前記軸部材は、前記穴に適合する形状に形成されており、前記軸方向への移動が規制されるように前記穴に配されている、
前記ブッシュには、前記軸部材の前記軸方向に対して傾斜する傾斜面によって少なくともその一部が画定される穴が形成されており、
前記軸部材は、前記傾斜面に沿って延伸し前記傾斜面と接する傾斜部を有し、前記傾斜部の外周面及び内周面はいずれも、前記軸部材の前記軸方向に対して傾斜しており、
前記軸部材は、前記軸方向における前記穴から脱落する方向への移動が前記ブッシュの前記傾斜面によって規制されるように前記穴に配置されている、
航空機用リアクションリンク。
【請求項14】
請求項13に記載の航空機用リアクションリンクと、
前記アクチュエータと
を備える動翼駆動装置。
【請求項15】
軸方向に沿って延びる穴が形成された第1の部材を、繊維含有複合材からなる軸部材を有する第2の部材に接合する接合方法であって、
前記第1の部材を準備する工程(A)と、
芯材を準備する工程(B)と、
前記芯材に繊維含有複合材層を形成して積層体を得る工程(C)と、
前記積層体の少なくとも一部を前記第1の部材の前記穴に挿入する工程(D)と、
前記芯材を膨張させる工程(E)と、
前記繊維含有複合材層を硬化させて前記穴に適合する形状の前記軸部材を得る工程(F)と、
を備え
前記工程(C)において、前記芯材の外表面に剥離層を設け、前記繊維含有複合材層を前記剥離層に形成する、接合方法。
【請求項16】
前記芯材を除去する工程をさらに備える、請求項15に記載の接合方法。
【請求項17】
航空機の動翼に取り付けられ、前記動翼を駆動させるアクチュエータに連結される航空機用リアクションリンクの製造方法であって、
前記アクチュエータを摺動可能に支持するように構成されており、軸方向に沿って延びる穴が形成されたブッシュを準備する工程(A)と、
芯材を準備する工程(B)と、
前記芯材に繊維含有複合材層を形成して積層体を得る工程(C)と、
前記積層体の少なくとも一部をブッシュの穴に挿入する工程(D)と、
前記芯材を膨張させる工程(E)と、
前記繊維含有複合材層を硬化させてリンク本体を得る工程(F)と、
を備え
前記工程(C)において、前記芯材の外表面に剥離層を設け、前記繊維含有複合材層を前記剥離層に形成する、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、繊維含有複合材と他の部材との接合に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維含有複合材からなる複合部材に他の部材を接合するために、ボルトなどの締結部材が用いられている。特開2014-237429号公報に開示されている接合構造においては、航空機用リアクションリンクのリンク本体が繊維含有複合材から形成されており、当該リンク本体がボルト状の締結部材によってブッシュと接合されている。
【0003】
繊維含有複合材からなる複合部材にボルトを挿通するためのボルト孔を開けると、当該複合部材に含まれている強化繊維が切断されてしまい、その結果、当該複合部材の強度が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-237429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、上述した従来の問題の少なくとも一部を緩和又は解決することができる新規の接合構造を提供することを目的とする。
【0006】
本開示のより具体的な目的の一つは、繊維含有複合材からなる複合部材に含まれる強化繊維を切断することなく、当該複合部材を他の部材に接合することである。本開示の上記以外の目的は、本明細書の記載全体を通じて明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態による接合構造体は、軸方向に沿って延びる穴が形成された第1の部材と、繊維含有複合材から前記穴に適合する形状に形成された軸部材を有し、前記軸方向への移動が規制されるように前記軸部材を介して前記第1の部材に接合された第2の部材と、を備える。
【0008】
当該実施形態によれば、第1の部材に形成された穴に第2の部材の軸部材を配することにより、当該第2の部材が当該第1の部材に接合される。よって、第2の部材の軸部材に含まれる強化繊維を切断することなく、当該第2の部材を第1の部材に接合することができる。これにより、当該第2の部材の繊維含有複合材からなる軸部材の強度低下を防止することができる。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記軸部材は、前記軸方向における第1の位置において第1の幅を有し、前記軸方向における前記第1の位置よりも先端側の第2の位置において前記第1の幅よりも大きな第2の幅を有する。
【0010】
当該実施形態によれば、第1の部材は、軸方向の第1の位置にある部位により、第2の部材を軸方向において支持することができる。これにより、第1の部材は、当該軸方向の第1の位置にある部位により、第2の部材に対して軸部材の先端から基端に向かう向きに作用する引張荷重に対抗することができる。よって、当該実施形態によれば、第1の部材と第2の部材とをより強固に接合することができる。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記軸部材は、前記軸方向において前記第2の位置よりも先端側の第3の位置において前記第2の幅よりも小さな第3の幅を有する。
【0012】
当該実施形態によれば、第1の部材は、軸方向の第3の位置にある部位により、第2の部材を軸方向に支持することができる。これにより、当該実施形態によれば、第1の部材と第2の部材とをより強固に接合することができる。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記軸部材は、前記軸方向において前記第1の位置よりも基端側の第4の位置において前記第1の幅よりも大きな第4の幅を有する。
【0014】
当該実施形態によれば、第1の部材は、軸方向の第1の位置にある部位により、第2の部材を軸方向に支持することができる。これにより、当該実施形態によれば、第1の部材と第2の部材とをより強固に接合することができる。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記軸部材は中空に形成されている。
【0016】
当該実施形態によれば、第2の部材を軽量化することができる。
【0017】
本発明の一実施形態において、前記軸部材は、前記軸方向に垂直な方向の断面が非円形となるように形成される。
【0018】
当該実施形態によれば、第1の部材と第2の部材との間で偶力を伝達することができる。
【0019】
本発明の一実施形態において、前記第1の部材は、前記穴を画定する筒状部材を有しており、前記筒状部材は、前記軸方向の基端における肉厚が、前記基端よりも前記軸方向の先端側における肉厚よりも薄くなるように形成されている。
【0020】
当該実施形態によれば、筒状部材のうち薄肉に形成されている部位が弾性変形することにより、軸部材から当該筒状部材に作用する応力を逃がすことができる。これにより、リンク本体に大きな応力が作用しても、筒状部材が破壊されにくくなる。
【0021】
本発明の一実施形態において、前記筒状部材は、金属製である。
【0022】
当該実施形態によれば、繊維含有複合材からなる軸部材と金属製の筒状部材とを、繊維含有複合材に含まれる強化繊維を破壊するボルト等の接合用部材を用いることなく接合することができる。
【0023】
本発明の一実施形態において、前記軸部材は、第1の方向に延びる第1の強化繊維を有する。また、当該軸部材は、前記軸方向において前記筒状部材と重なり合う接合部と、前記軸方向において前記接合部と重なり合わない非接合部と、を有する。当該実施形態において、前記接合部において前記軸方向に対して前記第1の方向が為す角度は、前記非接合部において前記軸方向に対して前記第1の方向が為す角度よりも大きい。
【0024】
本発明の一実施形態において、前記軸部材は、前記第1の方向とは異なる方向である第2の方向に延び、前記第1の強化繊維に編み込まれた第2の強化繊維をさらに有し、前記接合部において前記軸方向に対して前記第2の方向が為す角度は、前記非接合部において前記軸方向に対して前記第2の方向が為す角度よりも小さい。
【0025】
当該実施形態によれば、軸部材において、第1の強化繊維に第2の強化繊維が編み込まれているので、当該軸部材の強度を高めることができる。また、第2の強化繊維の延伸方向(第2の方向)が軸方向に対して為す角度は、軸部材の接合部においてより大きくなっている。よって、軸部材は、非接合部よりも接合部において幅方向への変形が容易である
。これにより、軸部材を穴へ適合する形状に加工することが容易となる。
【0026】
本発明の一実施形態においては、前記軸部材の前記非接合部に、前記軸方向を囲む周方向に配向された強化繊維を含む繊維含有複合材からなる補強部材が設けられている。
【0027】
当該実施形態によれば、当該補強部材により、軸部材の非接合部を補強することができる。
【0028】
本発明の一実施形態による航空機用リアクションリンクは、航空機の動翼に直接的または間接的に取り付けられ前記動翼を駆動させるアクチュエータを摺動可能に支持するブッシュと、繊維含有複合材からなる軸部材を有し、前記ブッシュに接合されるリンク本体と、を備える。当該実施形態において、前記ブッシュには、前記軸部材の軸方向に沿って延びる穴が形成されており、前記軸部材は、前記穴に適合する形状に形成されており、前記軸方向への移動が規制されるように前記穴に配されている。
【0029】
当該実施形態によれば、航空機用リアクションリンクにおいて、リンク本体の強度を低下させることなく、当該リンク本体とブッシュとを接合することができる。
【0030】
本発明の一実施形態による動翼駆動装置は、上記航空機用リアクションリンクと、航空機の動翼に直接的または間接的に取り付けられ前記動翼を駆動させるアクチュエータと、を備える。
【0031】
当該実施形態によれば、リンク本体とブッシュとの接合が改善された航空機用リアクションリンクを備える動翼駆動装置が得られる。
【0032】
本発明の一実施形態は、軸方向に沿って延びる穴が形成された第1の部材を、繊維含有複合材からなる軸部材を有する第2の部材に接合する接合方法に関する。当該接合方法は、前記第1の部材を準備する工程(A)と、芯材を準備する工程(B)と、前記芯材に繊維含有複合材層を形成して積層体を得る工程(C)と、前記積層体の少なくとも一部を前記第1の部材の前記穴に挿入する工程(D)と、前記芯材を膨張させる工程(E)と、前記繊維含有複合材層を硬化させて前記穴に適合する形状の前記軸部材を得る工程(F)と、を備える。
【0033】
当該実施形態によれば、繊維含有複合材からなる軸部材の強度を低下させることなく、当該軸部材を有する第2の部材を第1の部材に接合することができる。
【0034】
本発明の一実施形態における接合方法は、前記芯材を除去する工程をさらに備える。
【0035】
当該実施形態によれば、芯材が除去されるため、接合構造体を軽量化することができる。
【0036】
本発明の一実施形態においては、前記芯材の外表面に剥離層を設け、前記繊維含有複合材層を前記剥離層に形成する。
【0037】
当該実施形態によれば、芯材の除去が容易となる。
【0038】
本発明の一実施形態は、航空機の動翼に取り付けられ、前記動翼を駆動させるアクチュエータに連結される航空機用リアクションリンクの製造方法に関する。当該製造方法は、前記アクチュエータを摺動可能に支持するように構成されており、軸方向に沿って延びる穴が形成されたブッシュを準備する工程(A)と、芯材を準備する工程(B)と、前記芯材に繊維含有複合材層を形成して積層体を得る工程(C)と、前記積層体の少なくとも一部をブッシュの穴に挿入する工程(D)と、前記芯材を膨張させる工程(E)と、前記繊維含有複合材層を硬化させてリンク本体を得る工程(F)と、を備える。
【0039】
当該実施形態によれば、リンク本体の強度を低下させることなくリンク本体とブッシュとが接合された航空機用リアクションリンクが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の一実施形態による動翼駆動装置を搭載した翼の一部の斜視図である。
図2図1の翼の側面図である。
図3図1の航空機用リアクションリンクの斜視図である。
図4図1の航空機用リアクションリンクのI-I断面図である。
図5図4の航空機用リアクションリンクのII-II断面図である。
図6図1の航空機用リアクションリンクが備えるブッシュの斜視図である。
図7図1の航空機用リアクションリンクの一部を拡大して示す拡大断面図である。この拡大断面図には、図1の航空機用リアクションリンクが備える軸部材とブッシュとの接合構造が示されている。
図8図1の航空機用リアクションリンクが備えるリンク本体の一方の先端を拡大して模式的に示す模式図である。説明の便宜上、ブッシュ50aは破断されている。
図9】本発明の他の実施形態による航空機用リアクションリンクの一部を拡大して示す拡大断面図である。この拡大断面図には、当該他の実施形態による航空機用リアクションリンクが備える軸部材とブッシュとの接合構造が示されている。
図10】本発明の他の実施形態による航空機用リアクションリンクが備えるリンク本体の一方の先端を拡大して模式的に示す模式図である。説明の便宜上、ブッシュ50aは破断されている。
図11】本発明の他の実施形態による航空機用リアクションリンクを長手軸方向に垂直な面で切断した断面図である。
図12】本発明の他の実施形態による航空機用リアクションリンクを長手軸方向に垂直な面で切断した断面図である。
図13】本発明の他の実施形態による航空機用リアクションリンクの斜視図である。
図14】本発明の一実施形態による航空機用リアクションリンクの製造方法を示すフローチャートである。
図15a図15aから図15fは、本発明の一実施形態による航空機用リアクションリンクの製造方法を示すための模式図である。図15aは、芯材を示す。
図15b】芯材に繊維含有複合材層を形成して得られた積層体の斜視図である。
図15c図15bの積層体を長手軸方向に垂直な面で切断した断面図である。
図15d】積層体に一方のブッシュを取り付けることにより得られた複合積層体及び当該複合積層体を成形するための成形金型を示す。
図15e】成形金型に設置された複合積層体の先端付近を拡大して示す模式図である。
図15f】成形金型内で芯材を膨張させた後の複合積層体を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。なお、複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。各図面においては、説明の都合上、一部の構成要素が省略されることがある。
【0042】
本発明の一実施形態による動翼駆動装置について、図1及び図2を主に参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態による動翼駆動装置を搭載した翼の一部を模式的に示す斜視図であり、図2は、当該翼の側面図である。動翼駆動装置1は、航空機に搭載され、航空機の翼100の動翼101を駆動させるように構成及び配置される。動翼101は、例えば、補助翼(エルロン)、方向舵(ラダー)、及び昇降舵(エレベータ)などの主操縦翼面、または、フラップ及びスポイラーなどの二次操縦翼面である。
【0043】
動翼駆動装置1は、アクチュエータ10及びリアクションリンク20を備える。アクチュエータ10は、動翼101を駆動させるように構成及び配置される。リアクションリンク20は、アクチュエータ10により動翼101を駆動させたときの動翼101からの反力を支持するように構成及び配置される。
【0044】
アクチュエータ10は、翼100に設けられた支持機構102と、動翼101の連結軸103とのそれぞれに連結されている。動翼101は、支点軸104により翼100に対して回転可能に支持されている。アクチュエータ10は、支点軸104を中心として動翼101を回転させる。ロッド12の先端部は、連結軸103に回転可能に連結されている。すなわちアクチュエータ10は、動翼101に直接的に連結されている。なお、ロッド12の先端部は、動翼101に連結されたホーンアーム(図示略)に連結されてもよい。すなわちアクチュエータ10は、動翼101に間接的に連結されてもよい。
【0045】
アクチュエータ10は、作動油等の作動流体がシリンダ11に給排されることによりロッド12がその軸方向に往復移動する流体圧駆動式のリニアアクチュエータである。アクチュエータ10は、流体圧駆動式以外の駆動方式で駆動されるアクチュエータであってもよい。例えば、アクチュエータ10は、電動モータを備えた電気機械式のリニアアクチュエータであってもよい。
【0046】
図1に示されるように、アクチュエータ10は、リアクションリンク20および支持部102と連結される連結部13を備える。連結部13は、シリンダ11においてロッド12が突出する側とは反対側に設けられている。連結部13は、ロッド12の軸方向と直交する支持軸Jの方向に延びる軸13Aを備える。本明細書においては、軸13Aの延びる方向を支持軸方向ということがある。
【0047】
リアクションリンク20は、支点軸104と、連結部13の軸13Aとのそれぞれに回転可能に連結されている。リアクションリンク20は、アクチュエータ10により動翼101を駆動させたとき、その反力が動翼101から翼100に対して直接作用しないように機能する。リアクションリンク20は、動翼101と直接連結されてもよく間接的に連結されてもよい。リアクションリンク20は、アクチュエータ10と直接連結されてもよく間接的に連結されてもよい。リアクションリンク20が動翼101又はアクチュエータ10と間接的に接続される場合には、リアクションリンクは、動翼101又はアクチュエータ10とリンク機構を介して連結される。
【0048】
このように構成された動翼駆動装置1は次のように動作する。フライトコントローラ(図示略)の指令に基づいて、アクチュエータ10に作動流体を供給する流体圧装置(図示略)が作動することにより、アクチュエータ10のシリンダ11に対して作動流体の給排が行われる。これにより、図2に示されるように、ロッド12がシリンダ11に対して突出または縮退するため、連結軸103を介してロッド12に連結された動翼101が支点軸104を中心として回転する。この動翼101の回転にともない、リアクションリンク20は、支点軸104を中心に揺動する。また、リアクションリンク20は、軸13Aを中心に揺動する。リアクションリンク20は、このような運動により、アクチュエータ10により動翼101を駆動させたときの動翼101からの反力を受ける。
【0049】
次に、図3から図8を参照して、本発明の一実施形態によるリアクションリンク20についてさらに説明する。これらの図に示されるように、リアクションリンク20は、平面視でU字型に形成されたリンク本体30を備える。リンク本体30の形状は、U字状以外に、直線状またはJ字状であってもよい。
【0050】
このリンク本体30は、長手軸Aに沿って直線状に延びる軸部材31aと、この長手軸Aと平行に延びる長手軸Bに沿って直線状に延びる軸部材31bと、を備える。長手軸A及び長手軸Bは、リンク本体30の長手方向を示す。軸部材31aと軸部材31bとは、互いに間隔を置いて平行な方向に延伸する。軸部材31aと軸部材31bとは、概ね同じ形状に形成される。本明細書における軸部材31aに関する説明は、文脈上または本発明の性質に照らして別に解されるべき場合を除き、軸部材31bにも当てはまる。本明細書においては、長手軸Aに沿う方向を長手軸A方向ということがあり、長手軸Bに沿う方向を長手軸B方向ということがある。長手軸A方向と長手軸B方向とを総称して単に軸方向ということもある。本明細書において、各部材の基端及び先端について言及する際には、
文脈上別に解される場合を除き、長手軸A(又は長手軸B)に沿う方向において、図4の上側を先端といい、図4の下側を基端という。
【0051】
軸部材31aの長手軸A方向における基端と軸部材31bの長手軸B方向における基端とは、連結部32により接続されている。連結部32は、長手軸A及び長手軸Bと直交する方向に延びる直線部33と、直線部33の両端に設けられた屈曲部34とを備える。一対の軸部材31a,31bと連結部32とは、一体的に形成されてもよい。
【0052】
本発明の一実施形態において、軸部材31aは、図4及び図5に示されているように中空である。軸部材31aは、中実に形成されてもよい。軸部材31aを中空に形成することにより、軸部材31aひいてはリンク本体30を軽量化することができる。本発明の一実施形態において、軸部材31aは、図5に示すように、断面視で円形または略円形となるように形成されている。軸部材31aの断面形状は、円形または略円形には限られない
。軸部材31aの変形例については後述する。
【0053】
軸部材31aの上には、不図示の上層が形成されてもよい。この上層は、様々な目的で付与され得る。例えば、当該上層は、リンク本体30に耐候性を付与するため、リンク本体30の強度を高めるため、リンク本体30の装飾性向上のため、耐雷機能を付与するため、又はこれら以外の目的のために設けられ得る。この上層は、繊維含有複合材より形成されてもよく、繊維含有複合材以外の材料から形成されてもよい。当該上層用の繊維強化プラスチックは、強化繊維としてガラス繊維を含んでも良い。耐雷機能を有する上層は、例えば、金属メッシュにより形成されてもよい。耐雷機能を付与するためには、軸部材31aの表面にアース線を取り付けてもよい。
【0054】
軸部材31aの長手軸A方向における先端にはブッシュ50aが設けられ、軸部材31bの長手軸B方向における先端にはブッシュ50bが設けられる。
【0055】
ブッシュ50a,50bは、例えば、金属材料から形成される。ブッシュ50a,50b用の金属材料としては、チタニウム合金、クロムモリブデン鋼、ニッケル・クロムモリブデン鋼、ステンレス鋼、及びこれら以外の公知の金属材料を用いることができる。ブッシュ50a,50bは、金属材料以外の材料から形成されてもよい。例えば、ブッシュ50a,50bは、セラミック材料、CFRP等の繊維強化プラスチック、または各種樹脂材料から形成され得る。
【0056】
本発明の一実施形態において、リンク本体30は、繊維を含有する複合材(「繊維含有複合材」)からなる。繊維含有複合材は、例えば、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)である。リンク本体30に含まれる強化繊維として様々な素材からなる強化繊維を用いることができる。例えば、リンク本体30は、強化繊維として炭素繊維を含む炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)により形成され得る。炭素繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、又はこれら以外の公知の任意の炭素繊維を用いることができる。リンク本体30は、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、ガラス長繊維強化プラスチック(GMT)、ボロン繊
維強化プラスチック(BFRP)、アラミド繊維強化プラスチック(AFRP、KFRP)、ポリエチレン繊維強化プラスチック(DFRP)、ザイロン強化プラスチック(ZFRP)、又はこれら以外の任意の繊維強化プラスチックにより形成されてもよい。
【0057】
リンク本体30は、その全部が繊維含有複合材により形成されてもよく、その一部が繊維含有複合材により形成されてもよい。例えば、リンク本体30のうち、軸部材31a,31bのみが繊維含有複合材により形成されてもよい。この場合、連結部32は、繊維含有複合材以外の材料、例えば金属材料により形成されてもよい。また、リンク本体30は、一対の軸部材31a,31bの先端側の一部のみを繊維含有複合材により形成されてもよい。リンク本体30は、複数の種類の繊維が組み合された繊維含有複合材で構成してもよく、複数の種類の繊維含有複合材を組み合わせて構成してもよい。
【0058】
上記のように、本発明の一実施形態において、軸部材31a,31bは、繊維含有複合材からなる。本明細書において、繊維含有複合材からなる軸部材は、軸部材の全部が繊維含有複合材からなる態様と、軸部材の一部が繊維含有複合材からなる態様と、を含む。すなわち、本明細書において、繊維含有複合材からなる軸部材は、その少なくとも一部分が繊維含有複合材からなる軸部材を意味する。例えば、軸部材31aは、ブッシュ50aと接合される部位(後述する接合部35a)が繊維含有複合材により形成され、それ以外の部位(後述する非接合部36a)が繊維含有複合材以外の材料により形成されてもよい。
【0059】
軸部材31aにおける強化繊維の配向について図8を参照してさらに説明する。図8に示されるように、軸部材31aは、複数の強化繊維60を備える。強化繊維60の隙間にはマトリクス樹脂が含浸されている。強化繊維を明瞭に示すために、図8においては、マトリクス樹脂の図示を省略している。
【0060】
強化繊維60は、第1の強化繊維61、第2の強化繊維62、および、第3の強化繊維63を含む。第1の強化繊維61、第2の強化繊維62、および、第3の強化繊維63のそれぞれは、多数の単繊維で構成された繊維束である。第1の強化繊維61、第2の強化繊維62、および、第3の強化繊維63のそれぞれは、単繊維、ステープル紡績により得られる糸であるステープルヤーン、フィラメント、またはトウにより構成される編紐であるブレードでもよい。第1の強化繊維61、第2の強化繊維62、および、第3の強化繊維63のそれぞれの材料は、互いと同じでもよく、互いに異なっていてもよい。
【0061】
第1の強化繊維61は、長手軸Aと異なる第1の方向D1に延びている。第2の強化繊維62は、長手軸Aおよび第1の方向D1とは異なる方向である第2の方向D2に延びている。第3の強化繊維63は、長手軸Aと平行な第3の方向D3に延びている。図示の実施形態においては、第1の方向D1が長手軸Aに対して成す鋭角は、例えば、45°であり、第2の方向D2が長手軸Aに対して成す鋭角は、例えば、第1の方向D1とは反対方向に45°である。第1の方向D1及び第2の方向D2は、長手軸Aに対して任意の角度を為すことができる。
【0062】
図示の実施形態において、第1の強化繊維61、第2の強化繊維62、および、第3の強化繊維63は、互いに編み込まれている。各繊維61~63は、互いに編み込まれずに、例えば第1の強化繊維61、第2の強化繊維62、および、第3の強化繊維63の順に積層されてもよい。第1の強化繊維61、第2の強化繊維62、および、第3の強化繊維63の積層の順序は、任意に変更可能である。
【0063】
図8に示されているように、一実施形態において、軸部材31aの接合部35aにおいて第1の強化繊維61の角度D1が長手軸Aに対して為す角度は、軸部材31aの非接合部36aにおいて第1の強化繊維61の角度D1が長手軸Aに対して為す角度よりも大きい。つまり、第1の強化繊維61の延伸方向は、非接合部36aよりも接合部35aにおいて、より長手軸Aに対して垂直な方向を向いている。同様に、軸部材31aの接合部35aにおいて第2の強化繊維62の角度D2が長手軸Aに対して為す角度は、軸部材31aの非接合部36aにおいて第2の強化繊維62の角度D2が長手軸Aに対して為す角度よりも大きい。つまり、第2の強化繊維62の延伸方向は、非接合部36aよりも接合部35aにおいて、より長手軸Aに対して垂直な方向を向いている。
【0064】
リンク本体30の基端にはヘッド40が設けられる。このヘッド40は、支点軸104と連結される。図示の実施形態において、ヘッド40は、連結部32の直線部33の中央に連結されている。ヘッド40は、第1の本体41と、第2の本体42と、を備える。第1の本体41には、連結部32が挿入される取付孔41aが形成されている。第2の本体42には、取付孔41aと同じ方向に延びる貫通孔42aが形成されている。貫通孔42aには、不図示の軸受が取り付けられ得る。貫通孔42aは、軸受を介して、支点軸104を回転可能に支持する。
【0065】
上記のように、リンク本体30の軸部材31aの先端にはブッシュ50aが接合されている。リンク本体30とこのリンク本体30に接合されたブッシュ50aとにより構成される接合構造体は、本発明による接合構造体の一実施形態である。同様に、リンク本体30の軸部材31bの先端にはブッシュ50bが接合されている。リンク本体30とこのリンク本体30bに接合されたブッシュ50bとにより構成される接合構造体も、本発明による接合構造体の一例である。
【0066】
以下では、主に図6及び図7を参照して、リンク本体30の軸部材31aとブッシュ50aとの接合構造及びリンク本体30の軸部材31bとブッシュ50bとの接合構造について説明する。軸部材31bとブッシュ50bとの接合構造は、軸部材31aとブッシュ50aとの接合構造と実質的に同じであるため、以下では、主に軸部材31aとブッシュ50aとの接合構造について説明し、軸部材31bとブッシュ50bとの接合構造についての説明は省略する。
【0067】
まず、ブッシュ50aについて説明する。図6は、リンク本体30から取り外されているブッシュ50aの斜視図であり、図7は、航空機用リアクションリンク20の一部を拡大して示す拡大断面図である。この拡大断面図には、航空機用リアクションリンク20が備える軸部材31aとブッシュ50aとの接合構造が示されている。
【0068】
図示のように、ブッシュ50aは、ブッシュ本体51aと、ブッシュ本体51aから長手軸Aの基端側に向かって延びる筒状部材52aと、を備える。ブッシュ本体51aと筒状部材52aとは一体に形成されてもよい。
【0069】
ブッシュ本体51aには、貫通孔51a1が形成されている。貫通孔51a1は、軸13Aの軸方向Jに沿ってブッシュ本体51aを貫通している。
【0070】
筒状部材52aは、ブッシュ本体51aに接続された筒状の基部53aと、この基部53aから長手軸Aの基端側に向かって延伸し、長手軸Aの基端側に向かって開口する開口部54aと、を有する。筒状部材52aには、長手軸Aに沿って延びる穴55aが形成されている。
【0071】
図示の実施形態において、基部53aは、ほぼ一定の外幅及び内幅を有するリング状の側壁53a1と、側壁53a1の長手軸A方向の先端に設けられた底壁53a2と、を有する。このように、基部53aは、底壁53a2を有する有底の筒状に形成されている。基部53aは、底壁53a2において、ブッシュ本体51aと接続されている。
【0072】
図示の実施形態において、開口部54aは、リング状の側壁54a1を有する。この側壁54a1は、基部53aの側壁53a1の長手軸A方向の基端と接続されている。側壁54a1は、側壁53a1との接続位置から開口端54a2まで概ね長手軸Aに沿って延伸している。図示の実施形態において、側壁54a1は、長手軸A方向の基端に近い基端部において、当該基端部よりも長手軸A方向において先端側にある先端部よりも、その外幅(長手軸A方向と直交する幅方向における寸法)が小さくなるように構成されている。一実施形態において、開口部54aは、長手軸Aの基端に近く付くほどその外幅(長手軸A方向と直交する幅方向における寸法)が小さくなるように構成されている。これにより、開口部54aは、長手軸A方向の基端における肉厚(つまり、開口端54a2における肉厚)が、長手軸A方向において開口端54a2よりも先端寄りの位置における肉厚よりも薄くなるように構成されている。当該実施形態によれば、筒状部材52aのうち薄肉に形成されている開口端54a2付近が弾性変形することにより、軸部材31aが長手軸A方向に移動したとしても、その移動によって軸部材31aから筒状部材52aに作用する応力を逃がすことができる。これにより、軸部材31a及び筒状部材52aが破壊されにくくなる。筒状部材52aは、その肉厚が長手軸A方向の基端に近づくほど薄肉となるように形成されてもよい。
【0073】
図示の実施形態において、筒状部材52aに形成された穴55aは、開口部54aの開口端54a2から基部53aの底壁53a2まで概ね長手軸A方向に沿って延びている。穴55aは、基部53aの側壁53a1及び底壁53a2の内表面、並びに、開口部54aの側壁54a1の内表面によって画定される。
【0074】
図示の実施形態において、穴55aの内表面は、開口端54a2から長手軸Aと平行な方向に延伸する第1の内表面55a1と、第1の内表面55a1の長手軸A方向の先端から長手軸Aに対して傾斜して延伸する第2の内表面55a2と、第2の内表面55a2の長手軸A方向の先端から長手軸Aと平行な方向に延伸する第3の内表面55a3と、第3の内表面55a3の長手軸A方向の先端から長手軸Aに対して傾斜して延伸する第4の内表面55a4と、第4の内表面55a4の長手軸A方向の先端から長手軸Aと平行な方向に延伸する第5の内表面55a5と、を有する。内表面55a2は、長手軸A方向において先端に向かうにつれて長手軸Aから離れる方向に傾斜している。内表面55a4は、長手軸A方向において先端に向かうにつれて長手軸Aに近づく方向に傾斜している。第1の
内表面55a1、第2の内表面55a2、第3の内表面55a3、第4の内表面55a4、及び第5の内表面55a5はそれぞれ、長手軸Aの方向に、長さl1、l2、l3、l4、及びl5だけ延伸している。
【0075】
本発明の一実施形態において、穴55aは、長手軸A方向における位置によってその幅(長手軸A方向と直交する幅方向における寸法)が変わるように形成されている。つまり、筒状部材52aは、長手軸A方向における位置によってその幅が変わるように形成されている。図示の実施形態では、穴55aは、長手軸A方向における位置P1において第1の幅d1を有し、長手軸A方向における位置P2において第2の幅d2を有し、長手軸A方向における位置P3において第3の幅d3を有している。位置P1は、長手軸Aの方向において、第1の内表面55a1が延在している範囲にある。位置P2は、位置P1よりも長手軸A方向において先端側の位置にあり、例えば長手軸A方向において第3の内表面55a3が延在している範囲にある。位置P3は、位置P2よりも長手軸A方向において先端側にあり、例えば長手軸A方向において第5の内表面55a5が延在している範囲にある。図示の実施形態では、第2の幅d2は、第1の幅d1及び第3の幅d3よりも大きい。第3の幅d3は、第1の幅d1と同じであってもよいし、第1の幅d1よりも小さくても大きくてもよい。このように、図示の実施形態において、筒状部材52aに形成された穴55aは、第3の内表面55a3に相当する位置において、他の位置よりも幅広に形成されている。本明細書において、筒状部材52aのうち長手軸A方向において内表面55a3に対応する部位を幅広部52a1と称することがある。本明細書において、ブッシュ50aの構成部材または穴55aの幅は、当該構成部材または穴55aの長手軸A方向と直交する幅方向における寸法を意味してもよい。例えば、穴55aの位置P1における第1の幅d1は、穴55aの位置P1における幅方向の寸法を意味してもよい。長手軸A方向における位置P1は、第1の位置の例であり、位置P2は、第2の位置の例であり、位置P3は、第3の位置の例である。
【0076】
ブッシュ50bは、ブッシュ本体51bと、軸部材31bの先端に接合された取付具52bと、を備える。ブッシュ本体51bは、締結部材53bにより取付具52bに締結される。ブッシュ本体51bには、貫通孔51b1が形成されている。貫通孔51b1は、軸13Aの軸方向Jに沿ってブッシュ本体51bを貫通している。
【0077】
ブッシュ50bの取付具52bには、軸方向Bに沿って延びる穴55bが形成されている。穴55bは、取付具52bを軸方向Bに沿って貫通している。穴55bの内周面の形状は、穴55aの内周面の形状と同様に形成されるので、その詳細な説明は省略する。
【0078】
軸部材31aは、その先端にある接合部35aが筒状部材52aの穴55a内に収容されている。本明細書においては、軸部材31aのうち筒状部材52aに覆われている部位を接合部35aと呼び、軸部材31aのうち筒状部材52aに覆われていない部位を非接合部36aと呼ぶことがある。
【0079】
軸部材31aの接合部35aは、筒状部材52aの穴55aに適合する形状に形成されている。図示の実施形態において、接合部35aは、長手軸A方向において筒状部材52aの開口端54a2に対応する位置から長手軸Aと平行な方向に延伸する第1の部分35a1と、第1の部分35a1の長手軸A方向の先端から長手軸Aに対して傾斜して延伸する第2の部分35a2と、第2の部分35a2の長手軸A方向の先端から長手軸Aと平行な方向に延伸する第3の部分35a3と、第3の部分35a3の長手軸A方向の先端から長手軸Aに対して傾斜して延伸する第4の部分35a4と、第4の部分35a4の長手軸A方向の先端から長手軸Aと平行な方向に延伸する第5の部分35a5と、を有する。一実施形態において、第1の部分35a1、第2の部分35a2、第3の部分35a3、第
4の部分35a4、及び第5の部分35a5はそれぞれ、対応する第1の内表面55a1、第2の内表面55a2、第3の内表面55a3、第4の内表面55a4、及び第5の内表面55a5に沿って延伸する。一実施形態において、第1の部分35a1、第2の部分35a2、第3の部分35a3、第4の部分35a4、及び第5の部分35a5の各々の外表面は、対応する第1の内表面55a1、第2の内表面55a2、第3の内表面55a3、第4の内表面55a4、及び第5の内表面55a5に密着するように形成される。接合部35aの幅(外幅)は、穴55aの内表面の幅(内幅)と等しい。穴55aは、上記のように、長手軸A方向における位置P1において第1の幅d1を有し、長手軸A方向における位置P2において第2の幅d2を有し、長手軸A方向における位置P3において第3の幅d3を有しているので、接合部35aは、位置P1にある第1の部分35a1の幅がd1であり、位置P2にある第3の部分35a3の幅がd2であり、位置P3にある第5の部分35a5の幅がd3となるように形成される。このように、軸部材31aの接合部35aは、長手軸A方向における位置P1において幅d1を有し、この位置P1よりも先端側にある位置P2において幅d1よりも大きな幅d2を有するように構成される。また、軸部材31aの接合部35aは、長手軸A方向における位置P2よりも先端側にある位置P3において幅d2よりも小さな幅d3を有するように構成される。
【0080】
接合部35aは、穴55aを画定する筒状部材52aの内表面に適合する形状に形成されているので、長手軸Aの任意の位置において、接合部35aの幅(外幅)は穴55aの幅(内幅)と等しくなる。よって、接合部35aの幅は、長手軸Aにおける位置P1においてd1であり、位置P2においてd2であり、長手軸Aにおける位置P3においてd3となる。
【0081】
以上説明したリンク本体30とブッシュ50aとの接合構造においては、リンク本体30の軸部材31aが穴55aと適合する形状に形成されており、このような形状に形成された軸部材31aが穴55aに配されている。これにより、軸部材31aは、穴55a内において長手軸A方向への移動が規制され、穴55aから脱落しない。よって、リンク本体30は、軸部材31aに含まれる強化繊維を切断することなく、軸部材31aを介してブッシュ50aと接合される。このように、リンク本体30とブッシュ50aとが接合された接合構造体において、繊維強化プラスチックからなる軸部材31aの強度低下を防止することができる。これと同様に、リンク本体30は、軸部材31bに含まれる強化繊維を切断することなく、軸部材31bを介してブッシュ50bに接合される。軸部材31aとブッシュ50aとの接合、及び、軸部材31bを介してブッシュ50bとの接合には、接着材を用いることもできる。接着材を使用しても、軸部材31a及び軸部材31bに含まれる強化繊維は切断されない。
【0082】
以上説明したリンク本体30とブッシュ50aとの接合構造においては、ブッシュ50aは幅広部52a1を有しており、この幅広部52a1が軸部材31aのうち幅広に形成されている第3の部分35a3を受け入れている。これにより、ブッシュ50aは、幅広部52a1よりも長手軸A方向の基端にある部位により、軸部材31aの第3の部分35a3を長手軸A方向において支持している。具体的には、リンク本体30に対して長手軸A方向の基端に向かう引張荷重が作用したときに、当該引張荷重は、ブッシュ50aの穴55aの傾斜している内周面55a2で受けられる。したがって、リンク本体30に対して長手軸A方向の基端に向かう引張荷重が作用したときに、ブッシュ50aは、内周面55a2により、当該引張荷重に対抗することができる。これにより、軸部材31aの穴55aからの脱落をより確実に防止できるので、リンク本体30とブッシュ50aとをより強固に接合できる。
【0083】
また、ブッシュ50aは、幅広部52a1よりも長手軸A方向の先端にある部位により、軸部材31aの第3の部分35a3を長手軸A方向において支持している。具体的には、リンク本体30に対して長手軸A方向の先端に向かう圧縮荷重が作用したときに、当該圧縮荷重は、ブッシュ50aの穴55aの傾斜している内周面55a4で受けられる。したがって、リンク本体30に対して長手軸A方向の先端に向かう圧縮荷重が作用したときに、ブッシュ50aは、内周面55a4により、当該圧縮荷重に対抗することができる。これにより、リンク本体30とブッシュ50aとをより強固に接合できる。また、内周面55a4によってリンク本体30に作用する圧縮荷重に対抗することにより、軸部材31aの先端への応力の集中を防止できる。これにより、圧縮荷重による軸部材31aの座屈を防止できる。
【0084】
上記の実施形態では、接合部35aにおいて軸部材31aに含まれる第1の強化繊維61が長手軸A方向と為す角度は、非接合部36aにおいて当該第1の強化繊維61が長手軸A方向と為す角度よりも大きくなっている。よって、軸部材31aは、非接合部36aよりも接合部35aにおいて幅方向への変形が容易である。これにより、軸部材31aを穴35aへ適合する形状に加工することが容易となる。
【0085】
上記の実施形態において、第1の強化繊維61は、第2の強化繊維62と編み込まれている。これにより、軸部材31aの強度を高めることができる。また、接合部35aにおいて第2の強化繊維62が長手軸A方向と為す角度は、非接合部36aにおいて当該第2の強化繊維61が長手軸A方向と為す角度よりも小さくなっている。これにより、軸部材31aを穴35aへ適合する形状に加工することが容易となる。
【0086】
上記の実施形態における軸部材31aと穴55aとの接合構造は、本発明の一実施形態に過ぎず、穴55aの形状及びそれに適合する軸部材31aの形状は適宜変更可能である。リンク本体30とブッシュとを接合する接合構造の他の実施形態の例について、図9を参照して説明する。図9は、本発明の他の実施形態における軸部材と穴との接合構造を示す。
【0087】
図9に示されているように、本発明の他の実施形態による接合構造において、筒状部材52aには、穴55aに代えて穴155aが形成されている。図示のように、穴155aの内表面は、開口端54a2から長手軸Aと平行な方向に延伸する第1の内表面155a1と、第1の内表面155a1の長手軸A方向の先端から長手軸Aに対して傾斜して延伸する第2の内表面155a2と、第2の内表面155a2の長手軸A方向の先端から長手軸Aと平行な方向に延伸する第3の内表面155a3と、第3の内表面155a3の長手軸A方向の先端から長手軸Aに対して傾斜して延伸する第4の内表面155a4と、第4の内表面155a4の長手軸A方向の先端から長手軸Aと平行な方向に延伸する第5の内表面155a5と、を有する。内表面155a2は、長手軸A方向において先端に向かう
につれて長手軸Aに近づく方向に傾斜している。内表面155a4は、長手軸A方向において先端に向かうにつれて長手軸Aから離れる方向に傾斜している。よって、図9に示されている実施形態において、ブッシュ50aは、穴155aの幅方向内方に膨出する膨出部152a1を有している。
【0088】
図示の実施形態では、穴155aは、長手軸A方向における位置P11において第1の幅d11を有し、長手軸A方向における位置P12において第2の幅d12を有し、長手軸A方向における位置P13において第3の幅d13を有している。位置P11は、長手軸Aの方向において、第1の内表面155a1が延在している範囲にある。位置P12は、位置P11よりも長手軸A方向において先端側の位置にあり、例えば長手軸A方向において第3の内表面155a3が延在している範囲にある。位置P13は、位置P12よりも長手軸A方向において先端側にあり、例えば長手軸A方向において第5の内表面155a5が延在している範囲にある。図示の実施形態では、第2の幅d12は、第1の幅d11及び第3の幅d13よりも小さい。第3の幅d13は、第1の幅d11と同じであってもよいし、第1の幅d11よりも小さくても大きくてもよい。このように、図示の実施形態において、筒状部材152aに形成された穴155aは、第3の内表面155a3に相当する位置において、他の位置よりも幅狭に形成されている。長手軸A方向における位置P12は、第1の位置の例であり、位置P13は、第2の位置の例であり、位置P11は、第4の位置の例である。
【0089】
図9の実施形態において、軸部材31aの接合部35aは、筒状部材52aの穴155aに適合する形状に形成されている。具体的には、図示の実施形態において、接合部35aは、長手軸A方向において筒状部材52aの開口端54a2に対応する位置から長手軸Aと平行な方向に延伸する第1の部分135a1と、第1の部分135a1の長手軸A方向の先端から長手軸Aに対して傾斜して延伸する第2の部分135a2と、第2の部分135a2の長手軸A方向の先端から長手軸Aと平行な方向に延伸する第3の部分135a3と、第3の部分135a3の長手軸A方向の先端から長手軸Aに対して傾斜して延伸する第4の部分135a4と、第4の部分135a4の長手軸A方向の先端から長手軸Aと平行な方向に延伸する第5の部分135a5と、を有する。一実施形態において、第1の部分135a1、第2の部分135a2、第3の部分135a3、第4の部分135a4、及び第5の部分135a5はそれぞれ、対応する第1の内表面155a1、第2の内表面155a2、第3の内表面155a3、第4の内表面155a4、及び第5の内表面155a5に沿って延伸する。一実施形態において、第1の部分135a1、第2の部分135a2、第3の部分135a3、第4の部分135a4、及び第5の部分135a5の々の外表面は、対応する第1の内表面155a1、第2の内表面155a2、第3の内表面155a3、第4の内表面155a4、及び第5の内表面155a5に密着するように形成される。接合部135aの幅(外幅)は、穴155aの内表面の幅(内幅)と等しい。よって、接合部135aは、位置P11にある第1の部分135a1の幅がd11であり、位置P12にある第3の部分135a3の幅がd12であり、位置P3にある第5の部分35a5の幅がd13となるように形成される。このように、軸部材131aの接合部135aは、長手軸A方向における位置P12において幅d12を有し、この位置P2よりも先端側にある位置P13において幅d12よりも大きな幅d13を有するように構成される。また、軸部材131aの接合部135aは、長手軸A方向における位置P12よりも基端側にある位置P11おいて幅d12よりも大きい幅d11を有するように構成される。
【0090】
当該実施形態の接合構造においては、ブッシュ50aは膨出部152a1を有しており、この膨出部152a1が軸部材31aのうち幅狭に形成されている第3の部分135a3に受け入れられている。これにより、ブッシュ50aは、その膨出部152a1よりも長手軸A方向の先端にある部位により、軸部材35a1の第1の部分135a1を長手軸A方向において支持している。具体的には、リンク本体30に対して長手軸A方向の先端に向かう圧縮荷重が作用したときに、当該圧縮荷重は、ブッシュ50aの穴155aの傾斜している内周面155a2で受けられる。したがって、リンク本体30に対して長手軸A方向の先端に向かう圧縮荷重が作用したときに、ブッシュ50aは、内周面155a2により、当該圧縮荷重に対抗することができる。したがって、リンク本体30に対して長手軸A方向の先端に向かう圧縮荷重が作用したときに、ブッシュ50aは、内周面155a2により当該圧縮荷重に対抗することができる。これにより、これにより、リンク本体30とブッシュ50aとを強固に接合できる。また、内周面155a2によってリンク本体30に作用する圧縮荷重に対抗することにより、圧縮荷重による軸部材31aの座屈を防止できる。
【0091】
また、ブッシュ50aは、膨出部152a1よりも長手軸A方向の先端にある部位により、軸部材31aの第5の部分135a5を長手軸A方向において支持している。具体的には、リンク本体30に対して長手軸A方向の基端に向かう引張荷重が作用したときに、当該引張重は、ブッシュ50aの穴155aの傾斜している内周面155a4で受けられる。したがって、リンク本体30に対して長手軸A方向の先端に向かう引張荷重が作用したときに、ブッシュ50aは、内周面155a4により、当該引張荷重に対抗することができる。これにより、リンク本体30とブッシュ50aとをより強固に接合できる。
【0092】
図9に示した実施形態以外にも、本発明が適用される接合構造は、様々な態様を取り得る。例えば、筒状部材52aは、幅広部52a1以外にも、幅広に形成された部位を有していてもよい。また、筒状部材52aは、膨出部152a1以外にも、幅方向内方に突出するように形成された部位を有していてもよい。穴55a及び穴155aは、軸部材31aを受け入れ可能な様々な形状に形成され得る。
【0093】
続いて、図10ないし図12を参照して、リンク本体30の変形例を説明する。図10は、本発明の他の実施形態による航空機用リアクションリンクが備えるリンク本体の一方の先端を拡大して模式的に示す模式図であり、図11は、本発明の他の実施形態による航空機用リアクションリンクを長手軸A方向に垂直な面で切断した断面図であり、図12は、本発明の他の実施形態による航空機用リアクションリンクを長手軸A方向に垂直な面で切断した断面図である。
【0094】
図10に示すように、本発明の他の実施形態によるリンク本体30は、補強部材70を備える。補強部材70は、繊維強化プラスチックのシートからなる。補強部材70は、例えば軸部材31aの周方向に配向された強化繊維を含む繊維強化プラスチックシートから形成される。補強部材70に含まれる強化繊維としては、強化繊維61と同じものを用いることができる。一実施形態において、補強部材70は、リンク本体30において、軸部材31aの接合部35a以外の部位に設けられる。例えば、補強部材70は、連結部32及び/又は軸部材31aの非接合部36aに設けられる。補強部材70を接合部35a以外の部位に設けることにより、接合部35aを穴55aに適合する形状に形成する際に、補強部材70により接合部35aの加工が妨げられなくなる。
【0095】
図11及び図12に示されるように、リンク本体30の軸部材31aは、長手軸A方向に垂直な断面が非円形となるように形成されてもよい。例えば、図11に示されているように、軸部材31aは、長手軸A方向に垂直な断面が方形となるように形成されてもよい。軸部材31aの断面が方形に形成される際には、その角は、直角に形成される必要はなく、図示のように実用上適切な程度に丸みを有していてもよい。図12に示されているように、軸部材31aは、長手軸A方向に垂直な断面が楕円形となるように形成されてもよい。
【0096】
軸部材31aの長手軸A方向に垂直な断面を非円形とすることにより、ブッシュ50aと軸部材31aとの間で偶力を伝達することができる。
【0097】
続いて、図13を参照して、本発明の他の実施形態によるリアクションリンクについて説明する。図13は、本発明の他の実施形態による航空機用リアクションリンク120を示す斜視図である。航空機用リアクションリンク120は、かしめピン121を備える点で航空機用リアクションリンク20と異なっている。かしめピン121は、軸部材31aとブッシュ50aとの結合をより強固にするための部材である。具体的には、本実施形態においては、軸部材31aに小径の軸部材貫通孔が形成され、ブッシュ50aにおいて軸部材貫通孔と向かい合う位置にブッシュ貫通孔が形成される。軸部材貫通孔及びブッシュ貫通孔はいずれも、長手軸Aを通り当該長手軸Aに垂直な方向に伸びるように形成されて
もよい。ブッシュ50aが軸部材31aに取り付けられると、ブッシュ貫通孔と軸部材貫通孔とが連通される。ブッシュ貫通孔と軸部材貫通孔とが連通された貫通孔をピン用貫通孔と呼ぶ。かしめピン121は、このピン用貫通孔に挿通される。かしめピン121は、当該ピン用貫通孔に挿通された後、軸部材31aとブッシュ50aとの接合を強化するように塑性変形される。軸部材31aに形成される軸部材貫通孔は、軸部材31aに含まれる強化繊維を切断しないように形成される。例えば、軸部材31aに含まれる強化繊維が図8に示すように複数の繊維束を編み込んで形成される場合、軸部材貫通孔は、その直径がこの編み込まれた強化繊維のピッチよりも小さくなるように形成される。これにより、かしめピン121は、強化繊維と干渉せずに、軸部材貫通孔に挿通され得る。かしめピン
121は、円柱形状に形成されてもよい。かしめピン121は、軸方向の一部に小径部を有していてもよい。当該小径部は、その径がかしめピン121の他の部分の径よりも小さくなるように形成される。かしめピン121は、軸部材31aとブッシュ50aとを接合するために塑性変形された後、当該小径部において切断されてもよい。
【0098】
以上説明した各実施形態は、航空機用リアクションリンク及び動翼駆動装置に本発明を適用した実施形態である。本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、航空機用リアクションリンク及び動翼駆動装置以外にも適用可能である。本発明は、穴が形成された第1の部材と、繊維含有複合材からなる軸部材を有する第2の部材との接合構造に広く適用される。
【0099】
続いて、本発明の一実施形態によるリアクションリンク20の製造方法について図14及び図15aないし図15fを用いて説明する。
【0100】
まず、工程ST1において、ブッシュを準備する。このブッシュは、例えば、上述した実施形態におけるブッシュ50a,50bである。
【0101】
次に、工程ST2において、芯材81を準備する。芯材81は、図15aに例示されているように、リンク本体30に近いU字形状に形成される。ただし、芯材81には、第3の部分35a3に相当する膨らみは形成されていない。芯材81は、一組の脚81a,81bと、当該一組の脚81a,81bの基端同士を連結する連結部81cと、を有する。脚81aの端は閉塞されており、脚81bの端は開口している。芯材81は、一方の脚81bが他方の脚81aよりも長くなるように形成されている。脚81a及び脚81bは、その軸方向の任意の位置の断面において、ほぼ同一の径を有するように形成される。芯材81は、中空に形成される。中空の芯材81は、例えば、合成樹脂製のチューブである。芯材81の材料となる合成樹脂は、例えば、ナイロン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、又はこれら以外の公知の合成樹脂材料である。
【0102】
次に、工程ST3において、この芯材81の表面に繊維含有複合材層82が形成される。具体的には、まず、マトリクス樹脂が貯留された含浸液槽が用意される。マトリクス樹脂として、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、もしくはフェノール樹脂などの熱硬化型樹脂、メチルメタアクリレートなどの熱可塑性樹脂、紫外線硬化型樹脂、光硬化型樹脂、又はこれら以外の公知のマトリクス樹脂を用いることができる。本実施形態においては、マトリクス樹脂として不飽和ポリエステルが用いられるものとする。この含浸液槽に、ブレーディングマシンに取り付けられた複数本の強化繊維が含浸される。この複数本の強化繊維は、上述した実施形態における強化繊維61,62,63にそれぞれ対応するものであってもよい。マトリクス樹脂が含浸された3本の強化繊維が、ブレーディングマシンにより芯材81に製織される。これにより、図15b及び図15cに示されている積層体83が形成される。積層体83は、芯材81と、その芯材81の上に形成された繊維含有複合材層82と、を有する。繊維含有複合材層82は、脚81a及び連結部81cの全部と、脚81bの一部と、を覆うように形成される。脚81bの先端には繊維含有複合材層82が形成されない。強化繊維は、芯材81に直接巻き付けられても良く、剥離層を介して間接的に巻き付けられても良い。例えば、剥離層は、強化繊維を芯材81に巻き付ける前に、芯材の外表面に形成される。剥離層は、例えばシリコーン樹脂からなる。剥離層を設けることにより、芯材の除去が容易となる。また、積層体83の外表面に剥離層を設けても良い。積層体83の外表面に剥離層を設けることにより、後述する成形金型との離型性を向上させることができる。繊維含有複合材層82は、ブレーディングマシン以外の強化繊維の製織に適した公知の装置を用いて形成することができる。繊維含有複合材層82は、2層以上形成されてもよい。
【0103】
次に、工程ST4において、上記のようにして得られた積層体83の一方の先端にブッシュ50aを取り付ける。具体的には、積層体83の当該一方の先端が、ブッシュ50aに形成された穴55aに挿入される。積層体83の他端には、ブッシュ50bの構成要素である取付具52bが取り付けられる。具体的には、積層体83の当該他方の先端が、取付具52bに形成された穴55bに挿入される。このようにして、図15dに示されているように、積層体83にブッシュ50a及び取付具52bが取り付けられた複合積層体84が得られる。
【0104】
次に、工程ST5において、複合積層体84が成型金型90に配置される。成型金型90は、図15dに示されているように、上型91と下型92とを有する。上型91には、複合積層体84に沿った形状のキャビティ91aが形成されている。同様に、下型92には、複合積層体84に沿った形状のキャビティ92aが形成されている。成型金型90に配置された複合積層体84とブッシュ50aの穴55aの内表面との間、及び、成型金型90に配置された複合積層体84と取付具52bの穴55bの内表面との間には、空隙Gが存在する。中空の芯材81の開口端81dには、不図示の口金が取り付けられる。芯材81は、この口金及びパイプを介して不図示のポンプと接続される。
【0105】
次に、成形金型90を閉じる。閉じられた成形金型90は、不図示のプレス機にセットされる。ステップST6においては、このプレス機にセットされた成形金型90を加熱するとともに、中空の芯材81の内部にポンプから圧縮空気が送り込まれる。芯材81の開口端81dと反対側の端は閉塞されているため、芯材81には、ポンプから送り込まれた圧縮空気によって内圧が発生する。この内圧により、芯材81は、幅方向外方に膨張する。また、芯材81の膨張に伴って、繊維含有複合材層82も幅方向外方に向かって繊維含有複合材層82と穴55a及び穴55bとの間の空隙Gが消滅するまで膨張する。これにより、繊維含有複合材層82は、穴55aの内表面及び穴55bの内表面に密着する。繊維含有複合材層82は、穴55aの内表面及び穴55bの内表面に密着したまま硬化する。
【0106】
次に、工程ST7において、硬化された複合積層体84を成形金型90から取り外し、当該複合積層体84から芯材81を除去する。芯材81は、取付具52bから露出している部位を把持して引張り出すことにより、複合積層体84から除去される。これにより、先端にブッシュ50a及び取付具52bが取り付けられたリンク本体30が得られる。芯材81を除去することにより、完成品である航空機用リアクションリンクを軽量化できる。
【0107】
最後に、工程ST8において、取付具52bにブッシュ本体51bを取り付けてブッシュ50bを得る。ブッシュ本体51bは、例えば、締結部材53bにより取付具52bへ締結される。また、ヘッド40がリンク本体30に取り付けられる。
【0108】
以上により、リンク本体の強度を低下させることなくリンク本体とブッシュとが接合された航空機用リアクションリンクが得られる。
【0109】
図14に示されているフロー図は、本発明が適用された航空機用リアクションリンクの製造方法の一例であり、本発明は、図14に示されている具体的なフローに限定されない。
【0110】
図14のフローの一部の工程は、本発明の趣旨から逸脱しない限り省略可能である。例えば、芯材を除去する工程ST7は省略可能である。
【0111】
図14に記載されていない工程が必要に応じて実行され得る。この図14に記載されていない工程は、図14に記載されている工程に追加的に又は図14に示されている工程の一部を代替するものとして実行され得る。例えば、ST3で形成された積層体83の表面に研磨処理を行っても良い。
【0112】
図14に記載されている各工程は、本発明の趣旨から逸脱しない限り、随時順番を入れ替えて実行され得る。例えば、ブッシュを準備する工程ST1は、芯材を準備する工程ST2より後に行われても良い。ヘッド40をリンク本体30に取り付ける工程は、工程ST4の後で工程ST5の前に行われても良い。
【0113】
図14に記載されている各工程の一部は、可能であれば、同時に又は並行して実行され得る。例えば、ブッシュを準備する工程ST1及び芯材を準備する工程ST2は、並行して実行され得る。これ以外の工程も同時に又は並行して実行され得る。
【0114】
芯材81は、熱膨張性樹脂組成物から中実に形成されてもよい。中実の芯材81用の熱膨張性樹脂組成物は、バインダー樹脂に熱膨張性黒鉛を含む樹脂組成物である。
【0115】
上記実施形態は、航空機用リアクションリンクの製造方法に本発明を適用した実施形態である。よって、本発明は、上記実施形態に限定されない。本発明は、航空機用リアクションリンク以外の物品の製造方法にも適用可能である。本発明は、本明細書の開示から明らかなように、軸方向に沿って延びる穴が形成された第1の部材を、繊維含有複合材からなる軸部材を有する第2の部材に接合する接合方法に広く適用される。
【0116】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、配置、及び工程は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、配置、及び工程を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0117】
1 動翼駆動装置
10 アクチュエータ
11 シリンダ
12 ロッド
13 連結部
20 航空機用リアクションリンク
30 リンク本体
31a,31b 軸部材
32 連結部
33 直線部
34 屈曲部
35a 接合部
35a1 第1の部分
35a2 第2の部分
35a3 第3の部分
35a4 第4の部分
35a5 第5の部分
36a 非接合部
40 ヘッド
41 第1の本体
42 第2の本体
42a 貫通孔
50a,50b ブッシュ
51a ブッシュ本体
51a1 貫通孔
55a,155a 穴
55a1 第1の内表面
55a2 第2の内表面
55a3 第3の内表面
55a4 第4の内表面
55a5 第5の内表面
60 強化繊維
61 第1の強化繊維
62 第2の強化繊維
63 第3の強化繊維
121 かしめピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15a
図15b
図15c
図15d
図15e
図15f