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特許7148341浴室用品用エラストマー組成物及び浴室用品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】浴室用品用エラストマー組成物及び浴室用品
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20220928BHJP
   C08K 5/47 20060101ALI20220928BHJP
   C08K 5/56 20060101ALI20220928BHJP
   A47K 4/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K5/47
C08K5/56
A47K4/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018179459
(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2020050718
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】松本 悠
(72)【発明者】
【氏名】本澤 匠
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-139242(JP,A)
【文献】特開平04-270742(JP,A)
【文献】特開昭63-196657(JP,A)
【文献】特開2018-111683(JP,A)
【文献】特開2014-062149(JP,A)
【文献】特開2017-113970(JP,A)
【文献】特開2002-001829(JP,A)
【文献】特表2010-501671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
A01P 1/00-23/00
A47K 4/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマー、チアベンダゾール及びピリチオン金属塩を含み、
軟質部と、基材又はフレームを含む硬質部と、を有する浴室用品の、前記軟質部として用いられることを特徴とする浴室用品用エラストマー組成物。
【請求項2】
前記軟質部は、前記基材と一体成形されている請求項1に記載の浴室用品用エラストマー組成物。
【請求項3】
前記浴室用品が、浴槽用手すり、浴室用手すり、シャワーベンチ、浴室椅子、浴槽台、シャワーヘッド又は浴室マットである請求項1又は2に記載の浴室用品用エラストマー組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性エラストマー全体を100質量部とした場合に、前記チアベンダゾール及び前記ピリチオン金属塩を合計で0.05~10質量部含む請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の浴室用品用エラストマー組成物。
【請求項5】
前記チアベンダゾールと前記ピリチオン金属塩とのモル比が、1/9~9/1である請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の浴室用品用エラストマー組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性エラストマーが、スチレン系共重合体及びエチレン系共重合体のうちの少なくとも1種である請求項1乃至のうちのいずれかに記載の浴室用品用エラストマー組成物。
【請求項7】
前記スチレン系共重合体が、ビニル芳香族モノマーとジエン系モノマーとの共重合体、及び、その水素添加物からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記エチレン系共重合体が、ビニルモノマーとαオレフィンモノマーとの共重合体、ビニルモノマーとα置換ビニルモノマーとの共重合体、及び、それらの水素添加物からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項に記載の浴室用品用エラストマー組成物。
【請求項8】
前記ピリチオン金属塩が、ジンクピリチオン及びピリチオンナトリウムのうちの少なくとも1種である、請求項1乃至のうちのいずれかに記載の浴室用品用エラストマー組成物。
【請求項9】
前記チアベンダゾール及び前記ピリチオン金属塩は、体積基準メジアン径が1~100μmである造粒物として含有されている請求項1乃至のうちのいずれかに記載の浴室用品用エラストマー組成物。
【請求項10】
無機金属系抗菌剤を含む請求項1乃至のうちのいずれかに記載の浴室用品用エラストマー組成物。
【請求項11】
軟化剤を含まず、A硬度が20~90である請求項1乃至10のうちのいずれかに記載の浴室用品用エラストマー組成物。
【請求項12】
前記軟質部は、発泡成形されている請求項1乃至11のうちのいずれかに記載の浴室用品用エラストマー組成物
【請求項13】
基材と、前記基材に一体成形された軟質部と、を有する浴室用品であって、
前記軟質部が、請求項1乃至11のうちのいずれかに記載の浴室用品用エラストマー組成物からなることを特徴とする浴室用品。
【請求項14】
前記軟質部は、発泡成形されている請求項13に記載の浴室用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室用品用エラストマー組成物及び浴室用品に関する。更に詳しくは、浴室において使用される浴室用品用エラストマー組成物及び浴室用品に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室において、浴室用品には、栄養分を含んだ浴湯や浴水等がかかり、長時間にわたって濡れた状態が保たれること、更に、人にとって快適な温度が保たれること、などから、何ら対策していない浴室用品にカビが発生することは避けられない。カビの発生を抑え、または、発生したとしても除去しやすくすることを目的として、ステンレスや銅などの金属材料や窯業材料を活用した浴室用品も知られている。しかしながら、体温調節機能や握力、バランス調整力などの体力が衰えた高齢者にとっては、これらの材料を用いた浴室用品は、冷たく、重く、滑りやすい等の問題があり、社会の高齢化と共に、触感がやさしく、温かく、軽く、滑りにくい等の性状を付与できるゴムや熱可塑性エラストマー等の軟質な材料を用いた浴室用品が求められている。しかしながら、これらの軟質な材料には、カビの菌糸が潜り込みやすく、カビに侵されやすいという性質がある。その対策として、防カビ剤を用いた防カビ処理が知られている。防カビ剤としては、下記特許文献1及び2が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2015-516381号公報
【文献】特開平7-41409号公報
【0004】
上記特許文献1には、軟質熱可塑性樹脂として古くから多用されてきた軟質塩化ビニル樹脂について、可塑剤及びその他の添加剤の添加割合が高いためにカビが生えやすく、防カビ剤としてチアベンダゾール(以下、単に「TBZ」ともいう)とヨード系の防カビ剤とを併用する方法が開示されている。
また、上記特許文献2には、TBZのドデシルベンゼンスルホン酸塩とヨード系の防カビ剤を併用すると、人畜への毒性が少ない一方で、高い防カビ性能が長期にわたって発揮でき、プラスチックやゴムなどの防カビに有効であることが開示されている。
【0005】
しかしながら、本発明者等の検討から、長時間水に濡れたままとなり、尚且つ、直射日光などの強い光照射がない浴室環境では、ヨード系の防カビ剤を利用した浴室用品は、黄変することを分かった。即ち、水濡れが不可避で光の少ない環境である浴室で用いることを前提とした浴室用品のためのエラストマー組成物には、ヨード系の防カビ剤を配合できないことが分かって来た。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、浴室環境での使用において、防カビ性能に優れるとともに変色を防止できる浴室用品用エラストマー組成物及び浴室用品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の通りである。
〔1〕熱可塑性エラストマー、チアベンダゾール及びピリチオン金属塩を含むことを特徴とする浴室用品用エラストマー組成物。
〔2〕前記熱可塑性エラストマー全体を100質量部とした場合に、前記チアベンダゾール及び前記ピリチオン金属塩を合計で0.05~10質量部含む〔1〕に記載の浴室用品用エラストマー組成物。
〔3〕前記チアベンダゾールと前記ピリチオン金属塩とのモル比が、1/9~9/1である〔1〕又は〔2〕に記載の浴室用品用エラストマー組成物。
〔4〕前記熱可塑性エラストマーが、スチレン系共重合体及びエチレン系共重合体のうちの少なくとも1種である〔1〕乃至〔3〕のうちのいずれかに記載の浴室用品用エラストマー組成物。
〔5〕前記スチレン系共重合体が、ビニル芳香族モノマーとジエン系モノマーとの共重合体、及び、その水素添加物からなる群から選択される少なくとも1種であり、前記エチレン系共重合体が、ビニルモノマーとαオレフィンモノマーとの共重合体、ビニルモノマーとα置換ビニルモノマーとの共重合体、及び、それらの水素添加物からなる群から選択される少なくとも1種である〔4〕に記載の浴室用品用エラストマー組成物。
〔6〕前記ピリチオン金属塩が、ジンクピリチオン及びピリチオンナトリウムのうちの少なくとも1種である〔1〕乃至〔5〕のうちのいずれかに記載の浴室用品用エラストマー組成物。
〔7〕前記チアベンダゾール及び前記ピリチオン金属塩は、体積基準メジアン径が1~100μmである造粒物として含有されている〔1〕乃至〔6〕のうちのいずれかに記載の浴室用品用エラストマー組成物。
〔8〕無機金属系抗菌剤を含む〔1〕乃至〔7〕のうちのいずれかに記載の浴室用品用エラストマー組成物。
〔9〕軟化剤を含まず、A硬度が20~90である〔1〕乃至〔8〕のうちのいずれかに記載の浴室用品用エラストマー組成物。
〔10〕前記〔1〕乃至〔9〕のうちのいずれかに記載の浴室用品用エラストマー組成物からなることを特徴とする浴室用品。
〔11〕発泡成形されている〔10〕に記載の浴室用品。
〔12〕基材と、前記基材に一体成形された軟質部と、を有する浴室用品であって、前記軟質部が〔1〕乃至〔9〕のうちのいずれかに記載の浴室用品用エラストマー組成物からなることを特徴とする浴室用品。
〔13〕前記軟質部は、発泡成形されている〔12〕に記載の浴室用品。
【発明の効果】
【0008】
本発明の浴室用品用エラストマー組成物は、熱可塑性エラストマー、チアベンダゾール及びピリチオン金属塩を含む。この結果、浴室環境において長期にわたり優れ防カビ性能を発揮しながらも変色を防止できる。
更に、本発明の浴室用品用エラストマー組成物が、前記熱可塑性エラストマー全体を100質量部とした場合に、チアベンダゾール及びピリチオン金属塩を合計で0.05~10質量部含む場合には、浴室環境において長期にわたり優れ防カビ性能を発揮しながらも変色を防止できるという上記効果に加えて、更に、長期にわたってブルームの発生を抑制して外観品質を維持することができる。
また、本発明の浴室用品は、前述の浴室用品用エラストマー組成物からなるため、前述の浴室用品用エラストマー組成物による効果を浴室用品においてもそのまま得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】浴槽用手すりの一例を示す斜視図である。
図2図1におけるA-A断面の一例を示す断面図である。
図3】浴槽用手すりの使用態様の一例を示す説明図である。
図4】シャワーベンチの一例を示す斜視図である。
図5図4のシャワーベンチの分解斜視図である。
図6】浴槽台の一例を示す斜視図である。
図7図6の浴槽台の分解斜視図である。
図8】浴槽台の使用態様の一例を示す説明図である。
図9】浴槽台の使用態様の他例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1]浴室用品用エラストマー組成物
本発明において「浴室」とは、人体に湯や水を接触させる目的で設けられた施設の総称であり、シャワーや浴槽、排水機能を備えた洗い場などのうち、少なくとも一つを備えたものを意味する。
また、「浴室用品」は、浴室において用いるものを総称している。従って、例えば、浴槽用手すり、浴室用手すり、シャワーベンチ、浴室椅子、浴槽台、シャワーヘッド、浴室マット及びこれらを構成する部品などを挙げることができるが、これらに限られるものではない。
【0011】
本発明の浴室用品用エラストマー組成物は、熱可塑性エラストマー、チアベンダゾール及びピリチオン金属塩を含む。
【0012】
(1)熱可塑性エラストマー
上記「熱可塑性エラストマー」(以下、単に「TPE」ともいう)は、浴室用品用エラストマー組成物を構成する主成分であり、通常、浴室用品用エラストマー組成物全体の50質量%以上を占めている。
浴室用品用エラストマー組成物に含まれるTPEの種類は限定されないが、例えば、スチレン系共重合体、オレフィン系共重合体、ポリアミド系共重合体、ポリエステル系共重合体、ウレタン系共重合体等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0013】
このうち、オレフィン系共重合体は、エチレン系共重合体(エチレン系共重合体ゴム)を含む。更に、オレフィン系樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレン等)をマトリックスとして、当該マトリックス中にエチレン系共重合体が分散含有された熱可塑性エラストマーを含む。
【0014】
上述のうち、本発明の浴室用品用エラストマー組成物に用いる熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系共重合体及びエチレン系共重合体のうち少なくとも1種が好ましい。尚、これらの共重合体は、エラストマー性を発現できればよく、共重合形態は限定されず、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0015】
上記「スチレン系共重合体」は、芳香族ビニル化合物に由来する構成単位を有する共重合体である。通常、芳香族ビニル化合物に由来する構成単位を含んだブロックはハードセグメントを構成する。
ハードセグメントを構成する単量体は、芳香族ビニル化合物であればよく、その種類は限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン等のアルキル置換スチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどを挙げることができる。これらの芳香族ビニル化合物は1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0016】
一方、ソフトセグメントを構成するブロックは、エラストマー性を発現し、ソフトセグメントとして機能することができればよく、どのような単量体を用いて形成されていてもよいが、共役ジエンを用いることが好ましい。このようなソフトセグメントを形成する共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-オクタジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-シクロヘキサジエン等が挙げられる。これらの共役ジエンは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
このようなスチレン系共重合体としては、スチレン-イソプレン-スチレンブロック(SIS)共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック(SBS)共重合体、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック(SEBS)共重合体、スチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック(SEPS)共重合体等が挙げられる。更に、これらの例示した共重合体のスチレンに由来する構成単位の一部又は全部はα-メチルスチレン等のスチレン誘導体に由来する構成単位に置き換えることができる。また、これらの例示した共重合体は水素添加物であってもよい。このようなスチレン系共重合体は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0018】
スチレン系共重合体(スチレン系熱可塑性エラストマー)の具体例としては、クレイトンポリマージャパン社製の商品名「クレイトンG」(G1642、G1652、G1730等)、クレイトンポリマージャパン社製の商品名「クレイトンD」(D1101、D1102、D1155、D1192、D1161、D1171、DKX405、DKX410、DKX415等)、JSR社製の商品名「JSR-TR」(JSR-TR1086、JSR-TR1600等)、JSR社製の商品名「JSR-SIS」、JSR社製の商品名「ダイナロン」、旭化成社製の商品名「タフテック」(タフテックHシリーズ及びタフテックPシリーズ等)、旭化成社製の商品名「タフプレン」(タフプレンA、タフプレン125、タフプレン126S等)、旭化成社製の商品名「アサプレン」、旭化成社製の商品名「ソルプレン」、クラレ社製の商品名「セプトン」、クラレ社製の商品名「ハイブラー」、住友化学社製の商品名「エスポレックスSB」、三菱化学社製の商品名「ラバロン」、電気化学社製の商品名「電化STR」、日本ゼオン社製の商品名「クインタック」、ケンテクノス社製の商品名「レオストマーリ」等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0019】
上記「エチレン系共重合体」は、エチレンに由来する構成単位を有する共重合体である。即ち、例えば、エチレンとビニルモノマーとの共重合体、エチレンとα置換ビニルモノマーとの共重合体、エチレンとαオレフィンモノマー(例えば、炭素数3~20のαオレフィン)との共重合体等が含まれる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上述のうち、ビニルモノマーとしては、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル等が挙げられる。α置換ビニルモノマーとしては、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等が挙げられる。また、α-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキサン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0020】
従って、より具体的には、エチレン系共重合体としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-プロピレン共重合体(EPR)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDR)、エチレン-プロピレン-エチルデンノルボルネン共重合体、エチレン-プロピレン-ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-1,4ヘキサジエン共重合体等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。また、エチレン系共重合体には、共役ジエンモノマーに由来する単量体を有する共重合体も含まれる。具体的には、エチレン-プロピレン-エチリデン共重合体及びエチレン-プロピレン-ジエン共重合体等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0021】
上述のうちでも特にエチレン-酢酸ビニル共重合体の具体例としては、東ソー社製の商品名「ウルトラセン」、クラレ社製の商品名「エバール」、三井・デュポンポリケミカル社製の商品名「エバフレックス」等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0022】
(2)チアベンダゾール及びピリチオン金属塩
上記チアベンダゾール(以下、単に「TBZ」ともいう)及びピリチオン金属塩(以下、単に「MPT」ともいう)は、本発明の浴室用品用エラストマー組成物における防カビ成分であり、本発明の浴室用品用エラストマー組成物内において、チアベンダゾールとピリチオン金属塩とは共存されている。
【0023】
発明者らは、チアベンダゾール及びピリチオン金属塩それぞれ単独でも防カビ成分として優れていることは、知悉していたが、今回、鋭意検討した結果、チアベンダゾールとピリチオン金属塩とを併用することにより、それぞれの成分を単に寄せ集めただけの効果ではなく、相乗的に優れた効果を奏することを知見するに至った。即ち、それぞれの成分単独では、耐久性試験に耐えることができないのに対して、併用した場合には、耐久性試験に耐えることができるようになり、浴室環境において長期にわたり優れ防カビ性能を発揮できることが分かった。この知見は後述の実施例において立証される。
【0024】
上記「チアベンダゾール」(TBZ)は、次の化学式(1)で表される化合物である。
【化1】
【0025】
このTBZは、皮膚刺激性が小さく、且つ、水への溶解度が小さく、安定性に優れていることが知られているが、MPTとの併用により、浴室環境における耐久性が相乗的に高くなることは知られていない。
尚、当然ながら、TBZの一部又は全部に代えて、同等の防カビ性能を発揮する限りTBZ誘導体(TBZの各部に置換基が導入された化合物)を利用できる。
【0026】
上記「ピリチオン金属塩」(MPT)は、次の化学式(2)又は化学式(3)で表される化合物である。このMPTを示す化学式(2)において「M」は金属イオンを表わし、化学式(3)において「M」は金属イオンを表わす。
【化2】
【化3】
このMPTも、TBZと同様に、人体への害が少なく、皮膚刺激性が小さく、且つ、水への溶解度が小さく、安定性に優れていることが知られているが、TBZとの併用により、浴室環境における耐久性が相乗的に高くなることは知られていない。
【0027】
MPTを構成する金属イオン(M及びM)をなす金属の種類は、防カビ性能を発揮できる範囲において限定されないが、例えば、Mとしては、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)等が挙げられる。また、Mとしては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
尚、当然ながら、MPTの一部又は全部に代えて、同等の防カビ性能を発揮する限りMPT誘導体(MPTの各部に置換基が導入された化合物)を利用できる。
【0028】
本発明の浴室用品用エラストマー組成物では、MPTとしては、上述のなかでも、MがZnである亜鉛ビス[1,2‐ジヒドロ‐2‐チオキソピリジン‐1‐オラート](いわゆるジンクピリチオン)(下記化学式(4)参照)と、2‐(ソジオチオ)ピリジン‐1‐オキシド(いわゆるピリチオンナトリウム)(下記化学式(5)参照)と、が防カビ性能の観点から好ましい。また、特にこれらはTBZとの併用による効果を得る観点から好ましい。更に、これらのなかでも本発明の浴室用品用エラストマー組成物では、ジンクピリチオン(以下、単に「ZPT」ともいう)が、TBZとの併用による効果を得る観点からとりわけ好ましい。
【化4】
【化5】
【0029】
これらのTBZ及びMPTは、互いにどのような比率で含まれてもよいが、例えば、モル比においてTBZ:MPTは1:9~9:1の範囲で含有することが好ましい。この範囲ではこれらを併用することによる効果、即ち、水と接触する環境において高い防カビ性能を維持できるという効果を得ることができる。この比率は、1:7~7:1がより好ましく、1:5~5:1が更に好ましく、1:4~4:1が特に好ましい。
【0030】
TBZは、皮膚刺激性が小さく、安定性に優れていることが知られているが、僅かながら水に溶解する。このため、TBZを水と接触する環境で利用すると防カビ性能は徐々に低下してしまう。このことは、後述する実施例(複合劣化試験)において示されている。
また、MPTも、TBZと同様に、人体への害が少なく、皮膚刺激性が小さく、安定性に優れていることが知られているが、M以外の部分が、加水分解により、易水溶性の成分(下記化学式(6)で表されるピリジン-N-オキシド-2-スルホン酸や、下記化学式(7)で表される2-ピリジンスルホン酸)に変化し得る。このため、MPTを水と接触する環境で利用すると防カビ性能は徐々に低下してしまう。このことは、同様に、後述する実施例(複合劣化試験)において示されている。
【化6】
【化7】
【0031】
一方で、後述する実施例に示されるように、TBZとMPTとを併用した場合には、水と接触する環境で利用しても防カビ性能は低下しないか、又は、各々を単独で利用する場合に比べて高い防カビ性を示す。この理由としては、以下の機序を考えることができる。
即ち、化学式(6)や化学式(7)で表される成分は、スルホン酸基を有する。他方、TBZはイミダゾール構造を有する塩基性物質である。このため、水と接触する浴室環境においては、MPTから溶出された化学式(6)や化学式(7)で表される成分と、TBZと、が塩ないし会合物質を生成して流出が防止され、本発明の浴室用品用エラストマー組成物や浴室用品の表面に留まることができるというメカニズムが考えられる。この機序は、後述する実施例における複合劣化試験においてTBZとMPTとのモル比が1/1により近い程、高い防カビ性を示していることからも裏付けられる。
【0032】
TBZ及びMPTは、本発明の浴室用品用エラストマー組成物内に、各々別個に含有されてもよいが、TBZとMPTとが共存されるように、これらの両方を含有した造粒物として含有されることが好ましい。即ち、TBZとMPTとの混合造粒物であることが、上記作用効果を発揮するうえでも好ましい。これら2種の防カビ成分が共存された1つの造粒物とされていることにより、各防カビ成分が単独で本発明の浴室用品用エラストマー組成物内に分散して含有されている場合に比べて高い防カビ性能を発揮できるとともに、造粒によって徐放性をより高度に制御することができる。このため、浴室環境においてより長期にわたって優れ防カビ性能を発揮させることができる。
【0033】
TBZ及びMPTの造粒物の形態は限定されないが、例えば、TBZ及びMPTの各粉末のみを固めた造粒物とすることもできるし、TBZ、MPT及び増量剤の各粉末を固めた造粒物とすることもできる。また、重合液内にTBZ及びMPTを分散させたのち重合させてTBZ及びMPTが取り込まれた重合体粒子として造粒することもできる。更に、担体にTBZ及びMPTを担持させた造粒された造粒物とすることもできる。担体としては、無機物を利用してもよく有機物を利用してもよい。更には、これら以外の方法による造粒物であってもよい。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0034】
TBZ及びMPTを含んだ造粒物の大きさは限定されないが、例えば、体積基準メジアン径において、1μm以上100μm以下とすることができる。体積基準メジアン径を1μm以上にすることにより、造粒物の分散性が向上し、効果をより顕著に得ることができる。即ち、TBZ及びMPTの共存による高い相乗効果をより効果的に発揮させることができる。一方、体積基準メジアン径を100μm以下にすることにより、本発明の浴室用品用エラストマー組成物を用いて得られる浴室用品の表面性が向上させることができる。
この体積基準メジアン径は、更に5μm以上80μm以下とすることができ、更には10μm以上50μm以下にすることができる。
【0035】
上述の体積基準メジアン径は、JIS Z8825:2013(粒子径解析-レーザ回折・散乱法)に従い、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用い、イオン交換水を測定溶媒とし、測定対象である造粒物の屈折率は0とし、分散媒である水の屈折率は1.33として測定される光散乱パターンを、体積基準で換算した粒子径分布においてd50の値として算出される。
【0036】
また、本発明の浴室用品用エラストマー組成物は、前述の通り、熱可塑性エラストマー、TBZ及びMPTを含めばよく、TBZ及びMPTの含有量は限定されないが、例えば、熱可塑性エラストマー全体を100質量部とした場合に、TBZ及びMPTを合計で0.05質量部以上10質量部以下含むことができる。この範囲では、優れた防カビ性を発揮させることができる。
TBZ及びMPTの含有量は、更に、0.05質量部以上5質量部以下が好ましく、0.05質量部以上3質量部以下がより好ましく、0.05質量部以上2.5質量部以下が更に好ましい。特に0.05質量部以上2.5質量部以下の範囲ではブルームの発生を抑えて利用できる。更に、0.1質量部以上1.3質量部以下の範囲ではブルームの発生を防止して、極めて優れた外観品質を長期にわたって維持することができる。
【0037】
(3)その他の成分
本発明の浴室用品用エラストマー組成物は、熱可塑性エラストマー、TBZ及びMPT以外に、他の成分を含むことができる。他の成分としては、無機金属系抗菌剤が挙げられる。無機金属系抗菌剤は、抗菌性金属成分を、固体状態(粉末状、皮膜状、めっき状、板状等)、イオン状態(溶液等)等として含有する抗菌剤であり、全体が無機成分から構成された抗菌剤である。抗菌性金属成分としては、銅、銀、ニッケル、マグネシウム、亜鉛、白金、金等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0038】
抗菌性金属成分は、上記の金属をそのまま用いてもよいが、別個の担持体に担持させ、その全体として無機金属系抗菌剤として機能させることもできる。担体を用いる場合、担体の種類は限定されず、例えば、珪酸塩(ゼオライト、珪酸カルシウム、メタ珪酸マグネシウム等)、シリカゲル、ガラス、リン酸塩(リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム等)、金属酸化物(酸化チタン、酸化亜鉛等)、チタン酸塩(チタン酸カリウム等)、セラミックス等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
抗菌性金属成分としては、例えば、ノバロン(東亜合成)、バクテキラー(カネボウ)、バイカムAK(大塚化学)、ゼオミック(シナネンゼオミック)、シルウェル(富士シリシア)等が挙げられる。
【0039】
他の成分としては、更に、充填剤を用いることができる。充填材の種類は限定されず、例えば、無機充填材、有機充填材及び繊維状充填材等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
このうち、無機充填材としては、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等)、硫酸塩(硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等)、水酸化物(水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等)、酸化物(酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、ジルコニア)、ケイ酸塩(ケイ酸カルシウム等)、リン酸塩(リン酸カルシウム)等の他、珪藻土、タルク、ドロマイト、マイカ、ベントナイト、石膏、焼成クレー、ホワイトカーボン、カーボンブラック、金属粉、石粉、スラグ、フライアッシュ等が挙げられる。有機充填材としては、木粉、ヤシ粉、クルミ粉等が挙げられる。繊維充填材としては、天然繊維(木綿、麻、獣毛)、樹脂繊維、無機繊維(ガラス繊維等)が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0040】
本発明の浴室用品用エラストマー組成物は、どのようにして得てもよく、結果的に、上述の熱可塑性エラストマー、TBZ及びMPTが含まれればよい。具体的には、バンバリーミキサー、ブラベンダーミキサー、一軸又は二軸押出機、ニーダー、ミキシングロール等の周知の混練機(混合機)を用いて、例えば、ペレット状の熱可塑性エラストマーと、TBZ及びMPTと、を熱可塑性エラストマーが溶融する条件で混合することによって製造され得る。組成物中の成分の均一性を高めるために、上記混錬機に投入する前に、あらかじめ、TBZ及びMPTと、他の成分の少なくとも一部とを混合しておくこともよく、また、熱可塑性エラストマーが溶融しない条件であらかじめ混合しておくこともよい。このような混合には、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー、コニカルミキサーなどの比較的剪断力の弱いミキサーが適しており、熱可塑性エラストマーの表面にTBZ及びMPTをあらかじめ均一に付着させることができるため、混錬後に、より均質な浴室用品用エラストマー組成物を得ることができる。
【0041】
本発明の浴室用品用エラストマー組成物の硬度は限定されないが、例えば、軟化剤を含まない状態において、JIS K6253に示されるA硬度において20以上90以下の範囲とすることができる。A硬度を20以上することにより優れた耐スリップ性を得ることができる。一方で、90以下とすることにより十分な柔らかさを維持しつつ、優れたグリップ性を得ることができる。このA硬度は、更に、30以上90以下とすることができ、特に40以上85以下とすることができる。
【0042】
[2]浴室用品
本発明の浴室用品は、浴室用品用エラストマー組成物からなるか、又は、基材と、基材に一体成形された軟質部と、を有し、軟質部が浴室用品用エラストマー組成物からなる。
浴室用品は、浴室で用いる物であって、本発明の浴室用品用エラストマー組成物からなるもの、又は、本発明の浴室用品用エラストマー組成物からなる軟質部を有するものであれば、特に限定はなく、種々の浴室用品とすることができる。
【0043】
尚、基材と一体成形された軟質部としては、基材に一体に軟質部が成形された形態を有することを意味する。即ち、例えば、基材を芯材としてインサート成形することで、基材を被覆する軟質部を形成した形態、溶融したエラストマー組成物に基材を浸漬したのち引上げて、基材に付着されたエラストマー組成物を固化するディップコート成形した形態、溶融したエラストマー組成物に基材に垂らしたのち、基材に付着されたエラストマー組成物を固化するカーテンコート成形した形態、などが挙げられる。また、基材とは、軟質部と比較した場合に、より硬質である。このため、例えば、芯材として機能し得る部材である。
【0044】
(1)浴槽用手すり
浴槽用手すり1(図1図3参照)は、グリップ部11と万力式の鞍状をなす取付部15とを備える。
このうち、グリップ部11は、基材としてのパイプ状の芯材11bを有する。更に、芯材11bを被覆する軟質部としての被覆層11aを有する(図2参照)。芯材(基材)11bと被覆層(軟質部)11aとは、インサート成形によって一体に成形されている。
一方、取付部15は、一対の芯材11bが挿着固定される固定部材17と、固定部材17と対向する可動部材16と、固定部材17と可動部材16の上端同士をつなぐスライド板18と、を備える(図1参照)。
このうち、可動部材16の外面には、可動部材16を固定部材17と対向する方向に移動させるためのハンドル19が設けられている。更に、可動部材16の外面に内グリップ12が固着されている。この内グリップ12は、図示しない基材としてのパイプ状の芯材とその芯材を被覆する軟質部としての被覆層12aとを備える。この芯材と被覆層12aとは、インサート成形によって一体に成形されている。
【0045】
被覆層11a及び12aは、本発明の浴室用品用エラストマー組成物からなる軟質部であることから、浴室環境において長期にわたり優れ防カビ性能を発揮しながらも、被覆層11a及び12aの変色を防止することができる。
また、この浴槽用手すり1は、例えば、図3に示す態様により使用することができる。即ち、固定部材17の内面17aと、可動部材16の内面16aとで浴槽50の上端部51を挟着し、ハンドル19を回転させて可動部材16を移動させ、固定部材17の内面17aと、可動部材16の内面16aとで上端部51を挟持固定することにより、浴槽50に取り付けることができる。
浴槽用手すり1を使用する際には、図3に示すように、両手でグリップ部11を把持することができる。これにより、浴槽50に安全に出入りすることができる。また、入浴中は、内グリップ12を把持することで、浴槽内で安全に過ごすことができる。
【0046】
尚、被覆層11a及び12aを構成する浴室用品用エラストマー組成物に含まれる樹脂成分は、SEBS又はSBSが好ましい。SEBS及びSBSは、手になじみやすく、触感が良好であり、耐スリップ性に優れている。
また、図3に示す床マット60も、本発明の浴室用品用エラストマー組成物から形成できる。この場合にも、SEBS又はSBSを使用することが好ましい。本発明の浴室用品用エラストマー組成物からなる床マット60、又は、本発明の浴室用品用エラストマー組成物からなる軟質部を備えた床マット60は、浴室環境において長期にわたり優れ防カビ性能を発揮しながらも、被覆層11a及び12aの変色を防止することができる。
【0047】
(2)シャワーベンチ
シャワーベンチ2(図4及び図5参照)は、背もたれ部21と、ひじ掛け部22と、座部23と、脚部24とを備える。
このうち、背もたれ部21は、背もたれフレーム21bと、背もたれフレーム21bに装着される背もたれクッション21aとを備える。また、ひじ掛け部22は、基材としてのひじ掛けフレーム22bと、ひじ掛けフレーム22bに対してインサート成形により一体に形成された軟質部であるひじ掛けグリップ22aと、を備える(図5参照)。
一方、座部23は、座部フレーム23bと、座部フレーム23bに装着される座部クッション23aと、を備える(図4及び図5参照)。
更に、脚部24は、脚部フレーム24bと、脚部フレーム24bに装着される脚部カバー24aとを備える(図4及び図5参照)。
【0048】
上述のうち、背もたれクッション21a、座部クッション23a、及び、脚部カバー24aは、各々、本発明の浴室用品用エラストマー組成物からなる浴室用品であり、例えば、各々所定の金型を用いて射出成形により形成できる。得られた背もたれクッション21a、座部クッション23a、及び、脚部カバー24aは、各部において、例えば、適切な接着剤を用いて対応する部位に接合され得る。これらは本発明の浴室用品用エラストマー組成物からなるため、浴室環境において長期にわたり優れ防カビ性能を発揮しながらも、変色を防止することができる。
【0049】
更に、ひじ掛けグリップ22aを構成する浴室用品用エラストマー組成物に含まれる樹脂成分は、SEBS又はSBSであることが好ましい。SEBS及びSBSは、手になじみやすく、触感が良好であり、耐スリップ性に優れている。
また、背もたれクッション21a及び座部クッション23aを構成する浴室用品用エラストマー組成物に含まれる樹脂成分は、EVAであることが好ましく、特に背もたれクッション21a及び座部クッション23aは、前述した防カビ成分を含有する発泡EVAであることが好ましい。発泡EVAを利用することにより、クッション性に優れ、耐スリップ性を有すると共に、触感がソフトであるため、くつろぎ易いものとすることができる。
そして、脚部カバー24aを構成する浴室用品用エラストマー組成物に含まれる樹脂成分は、SBRであることが好ましい。SBRであれば、耐スリップ性を有すると共に、強度に優れる。
【0050】
(3)浴槽台
浴槽台3(図6図9参照)は、台座部31と、台座部31の下方に接続した脚部32とを備える。
このうち、台座部31は、台座フレーム31bと、台座フレーム31b上に接合された軟質な天板31aとを備える。
また、脚部32は、脚部フレーム32bと、脚部フレーム32bに装着された脚部カバー32aと、を備える。
上述のうち、天板31a及び脚部カバー32aは、本発明の浴室用品用エラストマー組成物からなる浴室用品であり、例えば、所定の金型を用いて射出成形により形成できる。得られた天板31aは台座フレーム31bの対応する部位に、また、得られた脚部カバー32aは脚部フレーム32bの対応する部位に、例えば、各々適切な接着剤を用いて接合され得る。
【0051】
また、天板31aを構成する浴室用品用エラストマー組成物に含まれる樹脂成分は、EVAであることが好ましく、特に天板31aは、前述した防カビ成分を含有する発泡EVAであることが好ましい。発泡EVAを利用することにより、クッション性に優れ、耐スリップ性を有すると共に、触感がソフトであるため、くつろぎ易いものとすることができる。また、脚部カバー32aを構成する浴室用品用エラストマー組成物に含まれる樹脂成分は、SBRであることが好ましい。SBRであれば、耐スリップ性を有すると共に、強度に優れる。
このような浴槽台3は、例えば、図8に示すように、浴槽50付近の床に載置し、入浴する際の踏み台として使用することができる。また、例えば、図9に示すように、浴槽台3は、浴槽50の底部に載置して、浴槽50において椅子として使用することができる。
【0052】
尚、本浴室用品は、非発泡品であってもよいが、発泡品とすることができる。その場合には、前述した本発明の浴室用品用エラストマー組成物に発泡に必要な発泡剤等の成分を含有させて適宜発泡させることができる。
発泡剤を用いる場合、その種類は限定されず、結果的に発泡されるものであればよい。発泡剤としては、無機系発泡剤、有機系発泡剤、熱膨張性微粒子等が挙げられる。無機系発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム(重曹)、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、アジド類等が挙げられる。
有機系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、p,p-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等を用いることができる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0053】
但し、前述した通り浴室用品用エラストマー組成物は、TBZ及びMPTを両方含む。このTBZ及びMPTの両方を含む場合には、発泡剤の組合せによっては発泡不足になる場合がある為、適宜発泡剤の量を調節するか、発泡不足にならない発泡剤を用いることができる。具体的には、DPTのみを利用せず、DTP以外の発泡剤を併用するか、又は、DTP以外の発泡剤を利用することが好ましい。
発泡剤を用いる場合、その量比は適宜の値にすることができるが、例えば、熱可塑性エラストマー全体を100質量部とした場合に、発泡剤は、発泡体積を高める観点から、0.1質量部以上、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。また、微細な発泡セルを得る観点から、20質量部以下、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【実施例
【0054】
以下、本発明に係る浴室用品用エラストマー組成物及び浴室用品についての実施例について説明する。
[1]浴室用品用エラストマー組成物についての評価試験
(1)防カビ試験
表1~表3に示した防カビ成分(各種及び各配合割合)を配合した各浴室用品用エラストマー組成物を作成した。その後、これらの組成物を用いて試験片を作成し、防カビ試験を行った(実施例1~8及び比較例1~12)。試験方法は、以下の通りである。
【0055】
(1-1)試験片の作成
表1~表3に示す各成分を、下記要領により、2mm厚のプレート形状又は5mm厚の発泡成形体に成形した。試験片は、このプレート形状品又は発泡成形品からその都度切り取って利用した。
尚、上述の混錬の際には、それぞれの熱可塑性エラストマーごとに、次の成分を混合した。また、チアベンダゾール及びピリチオン金属塩は、多孔質ケイ酸カルシウム(富田製薬社製フローライトR)に湿式担持させた造粒物として含有させた。
また、この造粒物は、イオン交換水に分散させて、マルバーン社製レーザー回折式粒度分布測定装置「MS2000」を用いて粒度分布を測定した結果、体積基準メジアン径が25μmであった。
また、モル比は、チアベンダゾールを分子量201、亜鉛ピリチオンを分子量318として換算した。
・「SEBS混練時」:PP(ポリプロピレン)10質量部、炭酸カルシウム10質量部、青色顔料(銅フタロシアニン顔料)
・「SBS混練時」:PP(ポリプロピレン)10質量部、青色顔料(銅フタロシアニン顔料)
・「SBR混練時」:炭酸カルシウム10質量部、ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ジイソプロピルベンゼン1.8質量部、青色顔料(銅フタロシアニン顔料)
・「EVA混練時」:発泡剤(アゾジカルボンアミド)2質量部、ステアリン酸1質量部、架橋剤0.6質量部、酸化亜鉛0.5質量部、青色顔料(銅フタロシアニン顔料)
【0056】
上記プレート形状品の作製態様は、以下の通りである。
(1)SEBS、SBS又はSBRを用いた実施例及び比較例
各熱可塑性エラストマー(SEBS、SBS又はSBR)のペレットに、青色顔料と、チアベンダゾール、亜鉛ピリチオン、これらを含んだ造粒物、又はジヨードメチル-p-トリルスルホンから選択されるいずれかの防カビ成分と、その他の成分と、を各々配合した後、コニカルミキサーで10分間撹拌して、熱可塑性エラストマーのペレットの表面に各添加剤を付着させた。
次いで、各添加剤が付着されたペレットを以下の条件で、押出機(連続式混練機)を用いて溶融混練し、ストランドに押出し、冷水中で冷却しつつカッターを用いて直径3mm程、厚さ3mm程に切断し、浴室用品用エラストマー組成物からなるペレットを得た。
〔溶融混練条件〕
押出機:(株)テクノベル製、品名「KZW32TW-60MG-NH」
シリンダー温度:180~230℃
スクリュー回転数:300r/min
その後、得られた浴室用品用エラストマー組成物からなるペレットを、下記の条件で射出成形し、幅125mm×長さ125mm×厚さ2mmのプレートを作製した。
〔射出成形条件〕
射出成形機:三菱重工業(株)製、品名「100MSIII-10E」
射出成形温度:200℃
射出圧力:30%
射出時間:10sec
金型温度:40℃
【0057】
(2)EVAを用いた実施例及び比較例
熱可塑性エラストマー(EVA)のペレットに、青色顔料と、チアベンダゾール、亜鉛ピリチオン、これらを含んだ造粒物、又はジヨードメチル-p-トリルスルホンから選択されるいずれかの防カビ成分と、その他の成分と、を各々配合した後、コニカルミキサーで10分間撹拌して、熱可塑性エラストマーのペレットの表面に各添加剤を付着させた。
次いで、各添加剤が付着されたペレットを以下の条件で、射出成形した。射出完了後、すぐに金型を開いて(保圧:0sec、0%、冷却:0sec)発泡成形体を得た。
〔射出成形条件〕
射出成形機:三菱重工業(株)製、品名「100MSIII-10E」
射出成形温度:200℃
射出圧力:30%
射出時間:10sec
金型温度:40℃
金型寸法:厚さ5mm、幅95mm、長さ123mm
【0058】
(1-2)試験方法
下記の複合劣化試験を課す前に、実施例1~8及び比較例1~12の各試験片に対してJIS Z2911(防カビ抵抗性試験方法)に準拠した試験を課した。即ち、寒天培地上の各試験片に5菌複合の懸濁液を滴下し、既定の温度・湿度内で4週間培養し、試験品上の菌糸の発育状態を評価した。
次いで、下記の複合劣化試験を課した後、再び、各試験片に対してJIS Z2911(防カビ抵抗性試験方法)に準拠した試験を課した。
【0059】
(1-3)複合劣化試験
各試験片に対して、下記の耐熱試験、耐薬品試験、耐温水試験、耐塩素試験、対候試験の5つの強制劣化試験項目を順に課すことを1サイクルとして、合計5サイクルを課した。
・耐熱試験:温度60℃、湿度100%の環境下で3日間放置
・耐薬品試験:常温の中性洗剤に1日浸漬
・耐塩素試験:50Lの40℃温水に風呂水洗浄剤(花王社製、品名「ふろ水ワンダー」)を1錠入れ、4時間浸漬
・耐温水試験:60℃の温水に15時間浸漬
・耐候試験:キセノンランプを8時間照射
【0060】
(1-4)評価方法
下記の0~5の6段階に評価した。
「0」:肉眼及び顕微鏡下でカビの発育が認められない。
「1」:肉眼でカビの発育が認められず、顕微鏡下で明らかに確認できる。
「2」:肉眼でカビの発育が認められ、発育面積が試料全面積の25%未満である。
「3」:肉眼でカビの発育が認められ、発育面積が試料全面積の25%以上50%未満である。
「4」:菌糸がよく発育し、発育面積が試料全面積の50%以上である。
「5」:菌糸の発育が激しく、試料全面をカビが覆っている。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
(1-5)試験結果
実施例1~8及び比較例1~12の各試験片に対し、複合劣化試験前の防カビ評価を行った結果、いずれも肉眼及び顕微鏡下でのカビの発育は認められなかった。
その後、複合劣化試験を課し、複合劣化試験後の防カビ評価を行った。その結果、表1~表3に示すように、実施例1~4、実施例6~7及び比較例9~12については、いずれも肉眼及び顕微鏡下でのカビの発育は認められなかったものの、実施例5、実施例9及び比較例1~8においては、カビの発育が認められた。
この結果から、上記のような使用環境を模した複合劣化試験によって防カビ成分が影響を受けることが分かる。更に、ZPTを単独で配合した場合(比較例1~4)、及び、TBZを単独で配合した場合(比較例5~8)には、複合劣化試験前に優れた防カビ性能を発揮するものの、複合劣化試験を課すことで防カビ性能が低下することが分かる。
その一方、ZPTとTBZとを併用した場合(実施例1~4)、ジヨードメチル-P-トリルスルホンを配合した場合(比較例9~12)には、複合劣化試験前後で防カビ性能の変化が認められず、浴室用品用エラストマー組成物内において優れた防カビ耐久性を発揮できることが分かる。更に、TBZとMPTとも配合比は、モル比において1/1に近い程、防カビ性が優れることが分かる。
【0065】
(2)水への浸漬試験
表1及び表3に示した各浴室用品用エラストマー組成物(実施例1~4及び比較例1~12)を用いた試験片に対して、水への浸漬試験を行った。試験方法は、以下の通りである。
(2-1)試験方法
実施例1~4及び比較例1~12の各試験片(各5個)を、60℃のイオン交換水に24時間浸漬し、その前後のLab値を、色彩色差計(日本電色工業株式会社製、品名「SZ-Σ80」)を用いて測定した。そして、各5個の試験片の浸漬前後のb値の変化量を測定し、その平均値をΔbとして表4に示した。
同様に、実施例1~4及び比較例1~12の各試験片(各5個)を、60℃の水道水(初期残量塩素濃度0.4mg/L)に24時間浸漬し、その前後のLab値を、色彩色差計(日本電色工業株式会社製、品名「SZ-Σ80」)を用いて測定した。そして、各5個の試験片の浸漬前後のb値の変化量を測定し、その平均値をΔbとして表4に示した。
【0066】
【表4】
【0067】
(2-2)試験結果
表4の結果から、実施例1~4及び比較例1~8のΔb変化(水道水浸漬によるΔbとイオン交換水浸漬によるΔbとの差)は、いずれも0.1未満であり、変色が認められなかった。これに対して、比較例9~12のΔb変化は、2.40~3.02であり、水道素浸漬において変色が認められることが分かった。
即ち、上記(1-5)試験結果の通り、比較例9~12は、複合劣化試験前後で防カビ性能の変化が認められず、浴室用品用エラストマー組成物内において優れた防カビ耐久性を発揮できるものであったが、水道水との接触により変色することが分かった。
【0068】
比較例9~12による変色の理由は定かではないものの、以下の通りに考えることができる。即ち、比較例9~12で利用した防カビ成分であるジヨードメチル-p-トリルスルホン(ヨウ素化合物)は、下記化学式(8)で示される。
【化8】
このジヨードメチル-p-トリルスルホンから、ヨウ素イオン(I、無色)が遊離され、遊離されたヨウ素イオンが酸化されてヨウ素(I、褐色)を形成することで変色(黄変)を生じるものと考えられる。更に、この際のヨウ素イオンの酸化は、水道水に含まれた塩素が促進したものと考えられる。従って、例えば、浴湯の消毒を目的として添加され得る次亜塩素酸化合物や塩素含有化合物等に起因して、同様の変色を来すことが考えられることから、優れた防カビ性を有するものの浴室用品用エラストマー組成物に対してジヨードメチル-p-トリルスルホン等のヨウ素化合物を利用するのは難しいことが分かる。
【0069】
尚、上述の変色は、光が多く照射され得る環境では生じないため、光の照射によりヨウ素イオン(I)の遊離が抑制されるか、或は、酸化されてヨウ素(I)を生じたとしてもヨウ素イオン(I)へと還元されているために変色を生じないのではないかと考えられる。
この点、浴室用品用エラストマー組成物は、浴室用品の製造に利用されるエラストマーであり、浴室環境では、上記の変色を抑制するほどの光照射が得られるとは期待し難い。従って、浴室用品用エラストマー組成物に対して利用する防カビ成分として、ジヨードメチル-p-トリルスルホン等のヨウ素化合物は適さないものと考えられる。
【0070】
(3)ブルーム試験
(3-1)試験片の作成
実施例1(1-1~1-4)に加え、表5に示すように実施例1-5及び1-6の各浴室用品用エラストマー組成物を作成した。実施例1-5及び1-6の浴室用品用エラストマー組成物の作成方法及び試験片の作成は実施例1の場合と同様である。その後、これらの試験片(実施例1-1~1-6)をブルーム試験に供した。
【0071】
(3-2)試験方法
試験片を、恒温恒湿槽(温度:40℃、相対湿度:80%)に、192時間放置した後、3N(約300g)の荷重をかけた黒画用紙でシート表面を軽くこすり、シート表面に粉吹き、オイル等の付着物の有無を目視により観察してブルーム発生状態の観察を行った。
(3-2)評価方法
ブルーム発生状態の評価は、目視にて行い以下の規準とした。
「0」:ブルームの発生が全く認められない。
「1」:ブルームの発生が極僅かに認められる。
「2」:ブルームの発生が認められる。
【0072】
【表5】
【0073】
(3-4)試験結果
表5に示すように、防カビ成分の添加量を1.5質量部未満以下にすることでブルームを抑制できることが分かる。更に、防カビ成分の添加量を0.5質量部以下にすることでブルームを防止できることが分かる。
【0074】
(4)発泡試験
(4-1)試験片の作成
実施例5~9及び比較例13の発泡成形品(発泡試験用の試験片)を作成した。そして、発泡成形体の厚みを金型中央及び四角から10mm中心寄りの5か所で測定し、その平均値/成形金型の厚み(5mm)の値から発泡倍率を算出した。即ち、発泡が起きなかったときの発泡倍率は1.0であり、発泡後の平均厚みが10.0となったときの発泡倍率は2.0である。
各発泡成形品の構成成分は以下の通りである。
【0075】
実施例5:
EVA(90質量部)、オレフィン系TPE(10質量部)、炭酸カルシウム(40質量部)、防カビ成分{チアベンダゾール0.75質量部+ジンクピリチオン0.75質量部}(1.5質量部)架橋剤(1.5質量部)、架橋助剤(0.5質量部)、発泡剤{ADCA+酸化亜鉛}(7質量部)。発泡倍率1.87。
尚、ADCAは、アゾジカルボンアミドであり(以下同様)、熱分解型発泡剤である。
【0076】
実施例6:
EVA(90質量部)、オレフィン系TPE(10質量部)、炭酸カルシウム(40質量部)、防カビ成分{チアベンダゾール0.75質量部+ジンクピリチオン0.75質量部}(1.5質量部)架橋剤(1.5質量部)、架橋助剤(0.5質量部)、発泡剤{ADCA+酸化亜鉛+DPT+尿素}(6.4質量部)。発泡倍率1.75。
尚、DPTは、ジニトロソペンタメチレンテトラミンであり(以下同様)、熱分解型発泡剤である。
【0077】
実施例7:
EVA(90質量部)、オレフィン系TPE(10質量部)、炭酸カルシウム(40質量部)、防カビ成分{チアベンダゾール0.75質量部+ジンクピリチオン0.75質量部}(1.5質量部)架橋剤(1.5質量部)、架橋助剤(0.5質量部)、発泡剤{ADCA+DPT+尿素}(6.4質量部)。発泡倍率1.68。
【0078】
実施例8:
EVA(90質量部)、オレフィン系TPE(10質量部)、炭酸カルシウム(40質量部)、防カビ成分{チアベンダゾール0.75質量部+ジンクピリチオン0.75質量部}(1.5質量部)架橋剤(1.65質量部)、架橋助剤(0.5質量部)、発泡剤{ADCA+OBSH}(4.4質量部)。発泡倍率1.61。
尚、OBSHは、p,p-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドであり、熱分解型発泡剤である。
【0079】
実施例9:
EVA(90質量部)、オレフィン系TPE(10質量部)、炭酸カルシウム(40質量部)、防カビ成分{チアベンダゾール0.75質量部+ジンクピリチオン0.75質量部}(1.5質量部)架橋剤(1.3質量部)、架橋助剤(0.5質量部)、発泡剤{DPT+尿素}(5.7質量部)。発泡倍率1.36。
【0080】
比較例13:
EVA(90質量部)、オレフィン系TPE(10質量部)、炭酸カルシウム(40質量部)、架橋剤(1.3質量部)、架橋助剤(0.5質量部)、発泡剤{DPT+尿素}(5.7質量部)。発泡倍率1.75。
【0081】
(4-2)試験結果
上記(4-1)の結果から、最も発泡倍率の大きかった実施例5に対して実施例6~9及び比較例13の発泡倍率は上記の通りであった。その結果、実施例5~8及び比較例13に比べて、実施例9の発泡は弱く、発泡倍率の大きい発泡成形品を得ようとした場合は、発泡不足となり得ることが分かった。この結果から、熱可塑性エラストマーとチアベンダゾールとピリチオン金属塩を含む浴室用品用エラストマー組成物を発泡成形する場合には、発泡剤として少なくともADCAを含むことが好ましいことが分かる。
【0082】
尚、本発明においては、上記の具体的な実施例に記載されたものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
【符号の説明】
【0083】
1;浴槽用手すり、
11;グリップ部、11a;被覆層(軟質部)、11b;芯材(基材)、
12;内グリップ(基材)、12a;被覆層(軟質部)、
15;取付部、
16;可動部材、16a;内面、
17;固定部材、17a;内面、
19;ハンドル、
2;シャワーベンチ、
21;背もたれ部、21a;背もたれクッション、21b;背もたれフレーム、
22;ひじ掛け部、22a;ひじ掛けグリップ(軟質部)、22b;ひじ掛けフレーム(基材)、
23;座部、23a;座部クッション、23b;座部フレーム、
24;脚部、24a;脚部カバー、24b;脚部フレーム、
3;浴槽台、
31;台座部、31a;天板、31b;台座フレーム、
32;脚部、32a;脚部カバー、32b;脚部フレーム、
50;浴槽、
51;上端部、
60;床マット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9