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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】角落し吊冶具
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/22 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
E02B7/22
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018190688
(22)【出願日】2018-10-09
(65)【公開番号】P2020060003
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000207403
【氏名又は名称】大同機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107467
【弁理士】
【氏名又は名称】員見 正文
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 靖男
(72)【発明者】
【氏名】井藤 雄二郎
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-018038(JP,U)
【文献】実開昭63-136025(JP,U)
【文献】特開2017-149561(JP,A)
【文献】特開平08-053830(JP,A)
【文献】実開平01-018086(JP,U)
【文献】実開平02-120522(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
角落しを吊るための角落し吊冶具(10)であって、
棒状のリフティングビーム(11)と、
前記リフティングビームの中央部の下方に取り付けられた吊フック連結棒(14)と、
前記吊フック連結棒の左右端部にそれぞれ取り付けられた2つの吊フック(15)と、
前記吊フック連結棒の中央部に取り付けられた、かつ、前記吊フック連結棒を介して前記2つの吊フックに掛け方向モーメントおよび脱方向モーメントを作用させるためのウエイト(16)と、
前記リフティングビームの左右端部に下方に向けてそれぞれ取り付けられた2つのストッパ取付部材(17)と、
前記2つのストッパ取付部材に取外し可能にそれぞれ取り付けられた2つのストッパ(18)と、
を具備することを特徴とする、角落し吊冶具。
【請求項2】
前記リフティングビームの中央部に下方に向けて取り付けられた吊りフック連結棒支持部材(12)と、
前記リフティングビームの左右端部に下方に向けてそれぞれ取り付けられた2つの吊フック支持部材(13)とをさらに具備し、
前記吊フック連結棒が、前記リフティングビームと平行になるように中央部が前記吊りフック連結棒支持部材に回転可能に支持されているとともに、左右端部が前記2つの吊フック支持部材にそれぞれ回転可能に支持されており、
前記2つの吊フックの上端部が、前記吊フック連結棒の左右端部にキー止めされて前記2つの吊フック支持部材にそれぞれ支持されており、
前記2つの吊フックの下端部が、前記角落し吊冶具の表面向きのフック部とされている、
ことを特徴とする、請求項1記載の角落し吊冶具。
【請求項3】
前記ウエイトに、前記2つの吊フックに前記掛け方向モーメントおよび前記脱方向モーメントを作用させるための引揚ワイヤー(16a)の下端部が固定されていることを特徴とする、請求項1または2記載の角落し吊冶具。
【請求項4】
前記引揚ワイヤーを操作して前記吊フック連結棒を回転軸として前記ウエイトを回転させて前記角落し吊冶具の裏面側に倒すことにより、前記掛け方向モーメントが前記2つの吊フックに作用され、
前記引揚ワイヤーを操作して前記吊フック連結棒を回転軸として前記ウエイトを回転させて前記角落し吊冶具の表面側に倒すことにより、前記脱方向モーメントが前記2つの吊フックに作用される、
ことを特徴とする、請求項3記載の角落し吊冶具。
【請求項5】
前記2つの吊フック支持部材がそれぞれ、
横方向に所定の間隔をもって互いに対向する一対の板状部材と、
前記一対の板状部材のうち内側の板状部材の前記ウエイト側の面の下端部に取り付けられた吊フック連結棒端部支持部材(13a)とを備え、
前記一対の板状部材の上端部が、前記リフティングビームの下面の左右端部にそれぞれ取り付けられており、
前記吊フック連結棒の左右端部が前記2つの吊フック支持部材の前記吊フック連結棒端部支持部材にそれぞれ回転可能に支持されており、
前記2つの吊フックの上端部が、前記一対の板状部材に挟まれて前記吊フック連結棒の左右端部にそれぞれ支持されている、
ことを特徴とする、請求項1乃至4いずれかに記載の角落し吊冶具。
【請求項6】
前記2つのストッパが、角落し保管場所(122)に平積み保管された前記角落し(50,60,70)を前記角落し吊冶具を用いてそれぞれ吊り上げる際には、予め前記2つのストッパ取付部材からそれぞれ取り外され、前記角落しが前記角落し吊冶具を用いてそれぞれ吊り上げられると前記角落し保管場所で前記2つのストッパ取付部材にそれぞれ取り付けられることを特徴とする、請求項1乃至5いずれかに記載の角落し吊冶具。
【請求項7】
前記2つのストッパが、縦置き保管された前記角落し(111)を前記角落し吊冶具で吊り上げる際に、前記2つのストッパ取付部材にそれぞれ取り付けられたままとされることを特徴とする、請求項1乃至5いずれかに記載の角落し吊冶具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水取水路用の角落しを吊るのに好適な角落し吊冶具に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所や原子力発電所では、冷却用の海水を取り入れるための海水取水路が敷設されており、通常時には角落し(海水止水板)をクレーンで吊って海水取水口の戸溝(以下、「角落し戸溝」と称する。)から引き抜いて海水を取り入れ、海水取水路の点検や清掃等を行う際には角落しをクレーンで吊って角落し戸溝に挿入して海水を堰き止めている。
【0003】
また、海水取水路の点検や清掃等の完了後には、角落し戸溝から引き抜いた角落しを、海水取水口から遠く離れた角落し保管場所に他の海水取水路で使用している角落しと一緒に縦に立てて保管(以下、「縦置き保管」と称する。)している。
【0004】
例えば、後述する上段,中段および下段角落し50,60,70(図3参照)と同じ寸法および荷重の6個の角落し111(横5m×縦1.6m×幅0.5m、荷重約5t)を縦横3個ずつ並べて縦置き保管する場合には、図6(a)に示すように、コンクリート基礎112(横4.1m×縦12m×深さ0.5m=24.6m3)の上に、角落し111の転倒を防止するために、16個の固定用コンクリート113a(横1m×高さ1m×幅0.5m×16個=8m3)を縦横4個ずつ格子状に立設して転倒防止用側壁113を設置するとともに、縦置き保管された角落し111を保護するために、固定用コンクリート113aの角落し111と対向する面の両側端部に2個のゴム製緩衝材113bを取り付ける。
【0005】
なお、下記の特許文献1には、リフティングビームの中央部に角落しゲート(角落し)の上端に固着したフックに係合または離脱するピンを取り付けるとともに、リフティングビームの両端部にストッパを取り付けて、角落しゲートをガイド溝(角落し戸溝)に入れる際にはストッパによって角落しゲートの下降を停止させてピンをフックから外してリフティングビームを角落しゲートから分離させるとともに、角落しゲートをガイド溝から抜き出す際にはピンをフックと係合させて角落しゲートを吊り上げられるようにした、角落しゲートの吊下装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭61-117317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、海水取水口から遠く離れた角落し保管場所に角落しを保管する場合には、海水取水口と角落し保管場所との間を運搬車等で角落しを運ぶことになるため、角落しを吊り替える必要があった。
そこで、図6(b)に示すように、海水取水口121付近(クレーン131の旋回範囲の緑地帯)に角落し保管場所122を確保し、海水取水口121と角落し保管場所122との間にクレーン131(例えば、80tクレーン)を置いて、角落し111を吊り替えなくても海水取水口121と角落し保管場所122との間を移動させるようにして、作業性の向上を図りたいという要請があった。
【0008】
また、角落し保管場所122を海水取水口121付近に設けても、複数個の角落し111を縦置き保管する場合には転倒防止用側壁113に強度を持たせるために広い敷地での大掛かりな工事を必要とするため、角落し111を横に倒し平積みして保管(以下、「平積み保管」と称する。)しても使用できる角落し吊冶具を必要としていた。
【0009】
なお、上記の特許文献1に開示された角落しゲートの吊下装置は、縦置き保管された角落しに使用することを前提としたものである。
【0010】
本発明の目的は、平積み保管された角落しに使用することができる角落し吊冶具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の角落し吊冶具は、角落しを吊るための角落し吊冶具(10)であって、棒状のリフティングビーム(11)と、前記リフティングビームの中央部の下方に取り付けられた吊フック連結棒(14)と、前記吊フック連結棒の左右端部にそれぞれ取り付けられた2つの吊フック(15)と、前記吊フック連結棒の中央部に取り付けられた、かつ、前記吊フック連結棒を介して前記2つの吊フックに掛け方向モーメントおよび脱方向モーメントを作用させるためのウエイト(16)と、前記リフティングビームの左右端部に下方に向けてそれぞれ取り付けられた2つのストッパ取付部材(17)と、前記2つのストッパ取付部材に取外し可能にそれぞれ取り付けられた2つのストッパ(18)とを具備することを特徴とする。
ここで、前記リフティングビームの中央部に下方に向けて取り付けられた吊りフック連結棒支持部材(12)と、前記リフティングビームの左右端部に下方に向けてそれぞれ取り付けられた2つの吊フック支持部材(13)とをさらに具備し、前記吊フック連結棒が、前記リフティングビームと平行になるように中央部が前記吊りフック連結棒支持部材に回転可能に支持されているとともに、左右端部が前記2つの吊フック支持部材にそれぞれ回転可能に支持されており、前記2つの吊フックの上端部が、前記吊フック連結棒の左右端部にキー止めされて前記2つの吊フック支持部材にそれぞれ支持されており、前記2つの吊フックの下端部が、前記角落し吊冶具の表面向きのフック部とされていてもよい。
前記ウエイトに、前記2つの吊フックに前記掛け方向モーメントおよび前記脱方向モーメントを作用させるための引揚ワイヤー(16a)の下端部が固定されていてもよい。
前記引揚ワイヤーを操作して前記吊フック連結棒を回転軸として前記ウエイトを回転させて前記角落し吊冶具の裏面側に倒すことにより、前記掛け方向モーメントが前記2つの吊フックに作用され、前記引揚ワイヤーを操作して前記吊フック連結棒を回転軸として前記ウエイトを回転させて前記角落し吊冶具の表面側に倒すことにより、前記脱方向モーメントが前記2つの吊フックに作用されてもよい。
前記2つの吊フック支持部材がそれぞれ、横方向に所定の間隔をもって互いに対向する一対の板状部材と、前記一対の板状部材のうち内側の板状部材の前記ウエイト側の面の下端部に取り付けられた吊フック連結棒端部支持部材(13a)とを備え、前記一対の板状部材の上端部が、前記リフティングビームの下面の左右端部にそれぞれ取り付けられており、前記吊フック連結棒の左右端部が前記2つの吊フック支持部材の前記吊フック連結棒端部支持部材にそれぞれ回転可能に支持されており、前記2つの吊フックの上端部が、前記一対の板状部材に挟まれて前記吊フック連結棒の左右端部にそれぞれ支持されていてもよい。
前記2つのストッパが、角落し保管場所(122)に平積み保管された前記角落し(50,60,70)を前記角落し吊冶具を用いてそれぞれ吊り上げる際には、予め前記2つのストッパ取付部材からそれぞれ取り外され、前記角落しが前記角落し吊冶具を用いてそれぞれ吊り上げられると前記角落し保管場所で前記2つのストッパ取付部材にそれぞれ取り付けられてもよい。
前記2つのストッパが、縦置き保管された前記角落し(111)を前記角落し吊冶具で吊り上げる際に、前記2つのストッパ取付部材にそれぞれ取り付けられたままとされてもよい。
ことを特徴とする、請求項1乃至4いずれかに記載の角落し吊冶具。
【発明の効果】
【0012】
本発明の角落し吊冶具は、以下に示す効果を奏する。
(1)角落しを吊り上げる前に2つのストッパを2つのストッパ取付部材からそれぞれ取り外しておくことにより、平積み保管された角落しに使用することができる。
(2)角落しを複数に分割して平積み保管することにより、角落し保管場所を海水取水口付近に設けても広い敷地での大掛かりな工事を必要としないため、吊替作業なしで海水取水口と角落し保管場所との間をクレーンで角落しを移動させることができるので、作業工程を短縮して作業性の向上を図れるという効果を奏する。
(3)縦置き保管された角落しについても、2つのストッパを2つのストッパ取付部材にそれぞれ取り付けたままで使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例による角落し吊冶具10の構成を示す正面図であり、(a)は2つのストッパ18を2つのストッパ取付部材17にそれぞれ取り付けた状態を示す図であり、(b)は2つのストッパ18を2つのストッパ取付部材17からそれぞれ取り外した状態を示す図である。
図2】三分割式の角落し40の構成を示す正面図である。
図3】上段、中段および下段角落し50,60,70の構成を示す図であり、(a),(b)は上段角落し50の構成を示す正面図および右側面図であり、(c),(d)は中段角落し60の構成を示す正面図および右側面図であり、(e),(f)は下段角落し70の構成を示す正面図および右側面図である。
図4】ウエイト16の機能について説明するための角落し吊冶具10の右側面側から見た概要図であり、(a)は上段角落し50を角落し戸溝に挿入する場合について説明するための図であり、(b)は上段角落し50を角落し戸溝から引き抜く場合について説明するための図である。
図5】角落し吊冶具10の使用方法について説明するための概要図であり、(a)~(f)は平積み保管された角落し40をクレーン131で吊る際の作業の流れを示す概要図である。
図6】従来の角落し保管方法について説明するための図であり、(a)は6個の角落し111を縦置き保管する場合の角落し保管場所の一構成例を示す図であり、(b)は従来の角落し保管方法の問題点について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記の目的を、2つのストッパをリフティングビームから取り外せるようにすることにより実現した。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明の角落し吊冶具の実施例について図面を参照して説明する。
まず、三分割式の角落し40について図2および図3(a)~(c)を参照して説明する。
角落し40は、図2に示すように、上段、中段および下段角落し50,60,70に縦方向に3分割されている。
【0016】
上段角落し50は、図3(a),(b)に示すように、H鋼からなる枠体の表面側に鋼板が取り付けられた構造の上段角落し扉体51(横5m×縦1.6m×幅0.5m、荷重約5t)と、上段角落し扉体51の上面の左右端部にそれぞれ取り付けられた2つの上段吊金具52と、上段角落し扉体51の裏面(鋼板の裏面)の左右下端部にそれぞれ取り付けられた2つの上段吊リング53とを備える。
上段角落し扉体51の下面には、2つの上段切欠部51aが2つの上段吊金具52の真下にそれぞれ形成されている。
2つの上段吊金具52はそれぞれ、軸方向が上段角落し扉体51の横方向と平行にされた上段吊ピン52aを備える。
2つの上段吊リング53は、上段角落し扉体51の下面から同じ高さに取り付けられている。
【0017】
同様に、中段角落し60は、図3(c),(d)に示すように、H鋼からなる枠体の表面側に鋼板が取り付けられた構造の中段角落し扉体61(横5m×縦1.6m×幅0.5m、荷重約5t)と、中段角落し扉体61の上面の左右端部にそれぞれ取り付けられた2つの中段吊金具62と、中段角落し扉体61の裏面(鋼板の裏面)の左右下端部にそれぞれ取り付けられた2つの中段吊リング63とを備える。
中段角落し扉体61の下面には、2つの中段切欠部61aが2つの中段吊金具62の真下にそれぞれ形成されている。
2つの中段吊金具62はそれぞれ、軸方向が中段角落し扉体61の横方向と平行にされた中段吊ピン62aを備える。
2つの中段吊リング63は、中段角落し扉体61の下面から同じ高さに取り付けられている。
【0018】
下段角落し70は、図3(e),(f)に示すように、H鋼からなる枠体の表面側に鋼板が取り付けられた構造の下段角落し扉体71(横5m×縦1.6m×幅0.5m、荷重約5t)と、下段角落し扉体71の上面の左右端部にそれぞれ取り付けられた2つの下段吊金具72と、下段角落し扉体71の裏面(鋼板の裏面)の左右下端部にそれぞれ取り付けられた2つの下段吊リング73とを備える。
2つの下段吊金具72はそれぞれ、軸方向が下段角落し扉体71の横方向と平行にされた下段吊ピン72aを備える。
2つの下段吊リング73は、下段角落し扉体71の下面から同じ高さに取り付けられている。
なお、上段および中段角落し50,60では、積み重ねる際に2つの中段吊金具62を2つの上段切欠部51aにそれぞれ挿入させるとともに2つの下段吊金具72を2つの中段切欠部61aにそれぞれ挿入させる必要があるが、下段角落し70ではこのような必要がないため、下段角落し扉体71の下面には下段切欠部は形成されていない。
【0019】
次に、本発明の一実施例による角落し吊冶具10について図1(a),(b)を参照して説明する。
本実施例による角落し吊冶具10は、図1(a)に示すように、棒状のリフティングビーム11と、吊りフック連結棒支持部材12と、2つの吊フック支持部材13と、吊フック連結棒14と、2つの吊フック15と、ウエイト16(カウンターウエイト)と、2つのストッパ取付部材17と、2つのストッパ18と、2つの吊金具19と、2本の吊ワイヤー20と、吊リング21とを具備する。
【0020】
ここで、リフティングビーム11は、棒状のビーム本体11aと、ビーム本体11aの左右端部にそれぞれ取り付けられた2つのガイド部材11bとを備える。
2つのガイド部材11bは、角落し吊冶具10で上段、中段および下段角落し50,60,70を吊って角落し戸溝に挿入したり角落し戸溝から引き抜いたりする際に角落し戸溝に挿入される。
そのため、2つのガイド部材11bは、裏面側が上下に分離された側面視コの字状とされ、裏面(分離された上下部分の端面)には角落し吊冶具10を角落し戸溝に沿って案内させるための案内ローラ(不図示)が1個ずつ取り付けられている。
【0021】
吊りフック連結棒支持部材12は、上端部がビーム本体11aの下面の中央部に取り付けられて、リフティングビーム11の中央部に下方に向けて取り付けられている。
【0022】
2つの吊フック支持部材13はそれぞれ、横方向に所定の間隔をもって互いに対向する一対の板状部材と、一対の板状部材のうち内側の板状部材の外側面(ウエイト16側の面)の下端部に取り付けられた吊フック連結棒端部支持部材13aとを備える。
2つの吊フック支持部材13は、一対の板状部材の上端部がビーム本体11aの左右端部にそれぞれ取り付けられて、リフティングビーム11の左右端部に下方に向けてそれぞれ取り付けられている。
【0023】
吊フック連結棒14は、ビーム本体11aと平行になるように中央部が吊フック連結棒支持部材12に回転可能に支持されるとともに、左右端部が2つの吊フック支持部材13の吊フック連結棒端部支持部材13aにそれぞれ回転可能に支持されて、リフティングビーム11の中央部の下方に取り付けられている。
【0024】
2つの吊フック15は、上端部が2つの吊フック支持部材13の一対の板状部材に挟まれて吊フック連結棒14の左右端部にキー止めされてそれぞれ支持されて、吊フック連結棒14の左右端部にそれぞれ取り付けられている。
2つの吊フック15の下端部は、上段、中段および下段角落し50,60,70の2つの上段、中段および下段吊ピン52a,62a,72aに掛止して上段、中段および下段角落し50,60,70を吊れるように、角落し吊冶具10の表面向きのフック部とされている。
【0025】
ウエイト16は、吊フック連結棒14を介して2つの吊フック15に掛け方向および脱方向モーメントを作用させるためのものであり、吊フック連結棒14の中央部(フック連結棒支持部材12の右隣り)に取り付けられている。
ウエイト16には、2つの吊フック15に掛け方向および脱方向モーメントを作用させるための引揚ワイヤー16aの下端部が固定されている。
すなわち、引揚ワイヤー16aを手で操作して吊フック連結棒14を回転軸としてウエイト16を回転させて角落し吊冶具10の裏面側に倒すと、2つの吊フック15を吊フック連結棒14に対して略垂直に垂れ下がった状態として、掛け方向モーメントを2つの吊フック15に作用させることができる(図4(a)の左側の図参照)。
また、引揚ワイヤー16aを手で操作して吊フック連結棒14を回転軸としてウエイト16を回転させて角落し吊冶具10の表面側に倒すと、2つの吊フック15を吊フック連結棒14に対して角落し吊冶具10の裏面側に約45°下向きに倒れた状態として、脱方向モーメントを2つの吊フック15に作用させることができる(図4(a)の左から3番目および4番目の図参照)。
【0026】
2つのストッパ取付部材17は、上端部がビーム本体11aの下面の左右端部に2つの吊フック支持部材13を挟んでそれぞれ取り付けられて、リフティングビーム11の左右端部に下方に向けてそれぞれ取り付けられている。
【0027】
2つのストッパ18は、上段、中段および下段角落し50,60,70を角落し戸溝から引き抜くために角落し吊冶具10を角落し戸溝に挿入していく際に、上段、中段および下段角落し扉体51,61,71に当接させて、2つの上段、中段および下段吊ピン52a,62a,72aと2つの吊フック15のフック部との間に若干の隙間が生じる位置で角落し吊冶具10の下降を停止させるためのものである(図4(b)の右から2番目の図参照)。
また、図1(b)に示すように2つのストッパ18を2つのストッパ取付部材17からそれぞれ取り外せるように、4隅にボルト孔が形成された矩形状フランジが2つのストッパ取付部材17の下面および2つのストッパ18の上面に取り付けられており、4組のボルトおよびナットを用いて2つのストッパ18を2つのストッパ取付部材17にそれぞれ取り付けられるようにされている。
【0028】
2つの吊金具19は、リフティングビーム11のビーム本体11aの上面の2つの吊フック支持部材13の真上にそれぞれ取り付けられている。
【0029】
2本の吊ワイヤー20および吊リング21は、角落し吊冶具10をクレーンで2点吊りするためのものであり、2本の吊ワイヤー20の下端部は2つの吊金具19にそれぞれ取り付けられており、2本の吊ワイヤー20上端部は吊リング21に取り付けられている。
【0030】
次に、ウエイト16の機能について、上段角落し50を角落し戸溝に挿入したり角落し戸溝から引き抜いたりする場合を例として図4(a),(b)を参照して詳細に説明する。
【0031】
上段角落し50を角落し戸溝に挿入する際には、図4(a)の左側の図に矢印で示すように角落し吊冶具10を用いて吊った上段角落し50を下降させていく。
このとき、ウエイト16を引揚ワイヤー16aによって角落し吊冶具10の裏面側(同図紙面の右側)に倒して、掛け方向モーメント(同図で時計回りのトルク)を2つの吊フック15に吊フック連結棒14を介して作用させておく。
これにより、2つの吊フック15が2つの上段吊ピン52aからそれぞれ外れないようにすることができる。
【0032】
上段角落し50が中段角落し60に当接したのち、角落し吊冶具10を若干下降させるとともに、引揚ワイヤー16aによって左から2番目および3番目の図に矢印で示すようにウエイト16を角落し吊冶具10の表面側(同図紙面の左側)に倒して、脱方向モーメント(同図で反時計回りのトルク)を2つの吊フック15に吊フック連結棒14を介して作用させる。
これにより、脱方向モーメントが2つの吊フック15に作用して、2つの吊フック15が2つの上段吊ピン52aからそれぞれ外れるため、左から4番目の図に矢印で示すように角落し吊冶具10を上段角落し50から外して引き上げることができる。
【0033】
上段角落し50を角落し戸溝から引き抜く際には、図4(b)の左側の図に矢印で示すように角落し吊冶具10を角落し戸溝に挿入していく。
このとき、ウエイト16を引揚ワイヤー16aによって角落し吊冶具10の裏面側に倒して、掛け方向モーメント(時計回りのトルク)を2つの吊フック15に吊フック連結棒14を介して作用させておく。
【0034】
2つの吊フック15のフック部が上段角落し50の2つの上段吊ピン52aにそれぞれ当接すると、2つの吊フック15は、左から2番目の図に矢印で示すようにウエイト16の掛け方向モーメントによる付勢力に抗して反時計回りに回転し始める。
2つの吊フック15のフック部の先端部が2つの上段吊ピン52aの下方にくると、2つの吊フック15は、左から3番目の図に矢印で示すようにウエイト16の掛け方向モーメントによって2つの上段吊ピン52aにそれぞれ掛止する。
また、右側の図に矢印で示すように上段角落し50を吊り上げていく際に、ウエイト16によって掛け方向モーメントを2つの吊フック15に作用させることができるため、2つの吊フック15が2つの上段吊ピン52aからそれぞれ外れないようにできる。
【0035】
次に、角落し吊冶具10の使用方法について図5を参照して説明する。
なお、上段、中段および下段角落し50,60,70(角落し40)は、海水取水口121付近(クレーン131の旋回範囲の緑地帯)の角落し保管場所122に(図6(b)参照)、図5(a)に示すように表面を上にして尺角31で緩衝させて下からこの順に平積みされているものとする。
【0036】
海水取水路の点検や清掃等を行うためにまず下段角落し70をクレーン131で吊る際には、作業員は、角落し吊冶具10をクレーン131に2本の吊ワイヤー20を用いて吊り下げる。
このとき、ウエイト16は、角落し吊冶具10の裏面側に倒して掛け方向モーメントが2つの吊フック15に作用するようにしておく。
また、2つのストッパ18は、2つの吊フック15を2つの下段吊りピン72aに掛止する際に下段角落し扉体71に当たらないように、2つのストッパ取付部材17からそれぞれ取り外しておく。
【0037】
その後、作業員は、クレーン131を操作して、2つの吊フック15が2つの下段吊ピン72aにそれぞれ当接するように角落し吊冶具10を下降させていく。
これにより、2つの吊フック15が2つの下段吊ピン72aにそれぞれ掛止する(図4(b)および図5(b)参照)。
【0038】
その後、作業員は、図5(b)に示すように、上端部がクレーン131に取り付けられた2本の子吊ワイヤー32(同図には1本の子吊ワイヤー32のみ図示)の下端部を下段角落し扉体71の裏面側(鋼板の裏面側)から2つの下段吊りリング73にそれぞれ取り付ける。
【0039】
その後、作業員は、クレーン131を操作して、図5(c)に矢印で示すように下段角落し70を横向きのまま吊り上げたのち、下段角落し70を立てても中段角落し60に当たらない位置まで下段角落し70を移動させる。
【0040】
その後、作業員は、クレーン131を操作して2本の子吊ワイヤー32を下げていき、図5(d),(e)に矢印で示すように下段角落し扉体71の下端部を下げていって、下段角落し70を垂直に吊り下げる。
【0041】
その後、作業員は、2本の子吊ワイヤー32の下端部を2つの下段吊りリング73からそれぞれ取り外すとともに、2つのストッパ18を2つのストッパ取付部材17にそれぞれ取り付けたのち、クレーン131を操作して、図5(f)に矢印で示すように下段角落し70を海水取水口121の角落し戸溝の上方まで移動させる。
【0042】
その後、作業員は、クレーン131を操作して、下段角落し70を角落し戸溝に挿入していく。
【0043】
作業員は、2つのストッパ18が下段角落し扉体71の上面に当接したことを確認すると、引揚ワイヤー16aを手で操作してウエイト16を角落し吊冶具10の表面側に倒す。
これにより、2つの吊フック15が2つの下段吊ピン72aからそれぞれ外れる(図4(a)参照)。
【0044】
その後、作業員は、クレーン131を操作して、角落し吊冶具10を引き上げ、角落し保管場所122の上方に移動させたのち、同様の手順で中段角落し60および上段角落し50の順で角落し戸溝に挿入していく。
【0045】
海水取水路の点検や清掃等の完了後にまず上段角落し50を角落し戸溝から引き抜く際には、作業員は、クレーン131を操作して、クレーン131で吊った角落し吊冶具10を角落し戸溝の上方に移動させる。
このとき、2つのストッパ18は2つのストッパ取付部材17にそれぞれ取り付けておく。
また、引揚ワイヤー16aを手で操作してウエイト16を角落し吊冶具10の裏面側に倒して、掛け方向モーメントが2つの吊フック15に作用するようにしておく。
【0046】
その後、作業員は、クレーン131を操作して、角落し吊冶具10を角落し戸溝に挿入していく。
【0047】
2つの吊フック15が上段角落し50の2つの上段吊ピン52aにそれぞれ当接すると、2つの吊フック15が2つの上段吊ピン52aにそれぞれ掛止する(図4(b)参照)。
【0048】
その後、作業員は、2つのストッパ18が上段角落し扉体51の上面に当接したことを確認すると、クレーン131を操作して、上段角落し50を角落し戸溝から引き抜いたのち角落し保管場所122の上方に移動させる。
【0049】
その後、作業員は、クレーン131を操作して、上段角落し50を下降させたのち、2本の子吊ワイヤー32の下端部を上段角落し扉体51の裏面側(鋼板の裏面側)から2つの上段吊りリング53にそれぞれ取り付けるとともに、2つのストッパ18を2つのストッパ取付部材17からそれぞれ取り外す。
【0050】
その後、作業員は、クレーン131を操作して、2本の子吊ワイヤー32を引き上げて表面を上にして上段角落し50を横向きにしたのち、横向きにされた上段角落し50を下げていき尺角31の上に置く。
【0051】
その後、作業員は、引揚ワイヤー16aを手で操作して、ウエイト16を角落し吊冶具10の表面側に倒す。
これにより、2つの吊フック15が2つの上段吊ピン72aからそれぞれ外れる(図4(a)参照)。
【0052】
その後、作業員は、2本の子吊ワイヤー32を2つの上段吊りリング53からそれぞれ取り外したのち、クレーン131を操作して角落し吊冶具10を吊り上げたのち、2つのストッパ18を2つのストッパ取付部材17にそれぞれ取り付ける。
また、作業員は、引揚ワイヤー16aを手で操作してウエイト16を角落し吊冶具10の裏面側に倒し、掛け方向モーメントが2つの吊フック15に作用するようにする。
【0053】
その後、作業員は、クレーン131を操作して、角落し吊冶具10を角落し戸溝の上方に移動させる。
【0054】
その後、作業員は、同様に手順で、中段角落し60を角落し戸溝から引き抜いて、角落し保管場所122に保管された上段角落し50の上に尺角31を介して平積みしたのち、下段角落し70を角落し戸溝から引き抜いて、角落し保管場所122に保管された中段角落し60の上に尺角31を介して平積みする。
【0055】
以上の説明では、三分割式の角落し40について角落し吊冶具10を使用したが、縦に複数個に分割された角落しを平積み保管する場合にも角落し吊冶具10を使用することができる。
【0056】
また、縦置き保管された角落し111についても、角落し吊冶具10を用いて、角落し111を図4(b)に示した手順で吊り上げたり、図4(a)に示した手順で角落し111を角落し戸溝に挿入したりできるとともに、図4(b)に示した手順で上段角落し50を角落し戸溝から引き抜いたり、図4(a)に示した手順で角落し111を縦置き保管したりできる。
この場合には、2つのストッパ18は、角落し111に角落し吊冶具10を取り付ける際に問題となることはないため、2つのストッパ取付部材17にそれぞれ取り付けたままとすることができる。
【符号の説明】
【0057】
10 角落し吊冶具
11 リフティングビーム
11a ビーム本体
11b ガイド部材
12 吊りフック連結棒支持部材
13 吊フック支持部材
13a 吊フック連結棒端部支持部材
14 吊フック連結棒
15 吊フック
16 ウエイト
16a 引揚ワイヤー
17 ストッパ取付部材
18 ストッパ
19 吊金具
20 吊ワイヤー
21 吊リング
31 尺角
32 子吊ワイヤー
40 角落し
50,60,70 上段,中段および下段角落し
51,61,71 上段,中段および下段角落し扉体
51a,61a 上段および中段切欠部
52,62,72 上段,中段および下段吊金具
52a,62a,72a 上段,中段および下段吊ピン
53,63,73 上段,中段および下段吊リング
111 角落し
112 コンクリート基礎
113 転倒防止用側壁
113a 固定用コンクリート
113b ゴム製緩衝材
121 海水取水口
122 角落し保管場所
131 クレーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6