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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 37/14 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
H02K37/14 535X
H02K37/14 535B
H02K37/14 535Y
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018193677
(22)【出願日】2018-10-12
(65)【公開番号】P2020061911
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100104204
【弁理士】
【氏名又は名称】峯岸 武司
(72)【発明者】
【氏名】古林 一美
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-095947(JP,A)
【文献】特開2008-035648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 37/00-37/24
H02K 5/00-5/26
H02K 1/00-1/16
H02K 1/18-1/26
H02K 1/28-1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸にロータマグネットが保持されたロータと、
前記ロータマグネットに径方向外側で対向するステータと、
を有し、
前記ステータは、端子台を備えたボビンの筒状胴部に巻き回されたコイルと、前記コイルに対してモータ軸線方向の両側に配置されたステータコアとのステータ組を2組有し、
2組の前記ステータ組の内の一方の前記ステータ組を構成する他方の前記ステータ組側に位置する前記ステータコア、および、2組の前記ステータ組の内の他方の前記ステータ組を構成する一方の前記ステータ組側に位置する前記ステータコアがそれらの外周の少なくとも1箇所の溶接箇所で共に溶接されて相互に固定され、
前記溶接箇所は、2組の前記ステータ組の内の少なくとも一方の前記ステータ組を構成する前記ボビンが備える前記端子台に、所定間隔をあけて径方向外側で覆われる
モータ。
【請求項2】
前記溶接箇所で溶接される一対の前記ステータコアまたは前記溶接箇所を覆う前記端子台に前記所定間隔をあける逃げ部が設けられることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記逃げ部は、前記溶接箇所で溶接される一対の前記ステータコアに設けられることを特徴とする請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記逃げ部は、前記溶接箇所で溶接される一対の前記ステータコアの外周が、前記溶接箇所に盛り上がって形成される溶接痕の高さより深く窪んで設けられることを特徴とする請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記溶接箇所は、2組の前記ステータ組の双方を構成する各前記ボビンが備える一対の前記端子台に、所定間隔をあけて径方向外側で覆われることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項6】
前記溶接箇所は、一対の前記ステータコアの外周の複数箇所に存在することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項7】
前記溶接箇所は、前記端子台に覆われる一対の前記ステータコアの外周と、モータ軸線を中心に前記外周と点対称に位置する一対の前記ステータコアの外周との2箇所に存在することを特徴とする請求項6に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルとステータコアとのステータ組を2組有して、ステータがロータマグネットに径方向外側で対向するモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のモータとしては、例えば、特許文献1に開示されたステッピングモータがある。
【0003】
このステッピングモータにおけるステータは、コイルおよびステータコアを備えた第1ステータ組と、コイルおよびステータコアを備えた第2ステータ組と備え、ケースに収納される。ケースには、コイルが巻き回されるボビンに設けられた端子台を径方向外側に突出させる開口部が形成されている。第1ステータ組および第2ステータ組の互いに近接する一対のステータコアと、ケースとは、ケースの開口部の周方向の両側で、開口部の縁または開口部の近傍に設けられた溶接箇所で固定される。このため、開口部付近でケースが振動しにくくなり、異音の発生が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-85818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のモータでは、一対のステータコアとケースとを固定する溶接箇所がケースの開口部の縁または開口部の近傍に露出して設けられるため、人や物の触れることが可能な位置に溶接箇所がある。このため、溶接箇所に人や物が触れ、溶接箇所が破損するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、回転軸にロータマグネットが保持されたロータと、ロータマグネットに径方向外側で対向するステータと、を有し、ステータは、端子台を備えたボビンの筒状胴部に巻き回されたコイルと、コイルに対してモータ軸線方向の両側に配置されたステータコアとのステータ組を2組有し、2組のステータ組の内の一方のステータ組を構成する他方のステータ組側に位置するステータコア、および、2組のステータ組の内の他方のステータ組を構成する一方のステータ組側に位置するステータコアがそれらの外周の少なくとも1箇所の溶接箇所で共に溶接されて相互に固定され、溶接箇所が、2組のステータ組の内の少なくとも一方のステータ組を構成するボビンが備える端子台に、所定間隔をあけて径方向外側で覆われるモータを構成した。
【0007】
本構成によれば、2組のステータ組の内の近接する位置にある一対のステータコア同士は、それらの外周における少なくとも1箇所の溶接箇所で固定される。そして、この溶接箇所は、2組のステータ組の内の少なくとも一方のステータ組を構成するボビンが備える端子台に、所定間隔をあけて径方向外側で覆われる。したがって、一対のステータコア同士を固定する少なくとも1箇所の溶接箇所は、径方向外側でこれを覆う端子台により、人や物からの接触が防がれる。このため、少なくとも1箇所の溶接箇所において、溶接箇所に人や物が触れ、溶接箇所が破損するおそれがなくなる。よって、一対のステータコア同士は、少なくとも1箇所のこの溶接箇所において、相互の固定が確実に維持される。
【0008】
また、本発明は、前記溶接箇所で溶接される一対のステータコアまたは前記溶接箇所を覆う端子台に前記所定間隔をあける逃げ部が設けられることを特徴とする。
【0009】
本構成によれば、溶接される一対のステータコアまたは溶接箇所を覆う端子台に逃げ部が設けられ、この逃げ部により、溶接箇所を収容して端子台が覆う空間が形成される。
【0010】
また、本発明は、逃げ部が、前記溶接箇所で溶接される一対のステータコアに設けられることを特徴とする。
【0011】
逃げ部を溶接箇所を覆う端子台に設けると、端子台を設ける位置が径方向外側へ追いやられる。一方、端子台が径方向外側へ張り出すことの許容される突出量は、モータの外形寸法の制約から限られる。したがって、端子台の径方向長さは短くなり、コイル巻線の端部が絡げられるピンの端子台への十分な圧入代を確保することが難しくなる。しかし、溶接される一対のステータコアに逃げ部を設ける本構成によれば、端子台を設ける位置を径方向外側へ追いやることなく、逃げ部を設けることができる。したがって、端子台が径方向外側へ張り出すことなく、しかも、端子台へのピンの圧入代を確保しながら、溶接箇所を収容して端子台が覆う空間を確保することができる。
【0012】
また、本発明は、前記溶接箇所で溶接される一対のステータコアの外周が、前記溶接箇所に盛り上がって形成される溶接痕の高さより深く窪んで、逃げ部が設けられることを特徴とする。
【0013】
本構成によれば、溶接痕が溶接箇所に盛り上がって形成されても、その溶接痕は逃げ部によって形成される空間内に収容される。このため、溶接箇所を径方向外側で覆うことで、人や物を溶接箇所に接触させない端子台の機能が担保される。
【0014】
また、本発明は、溶接箇所が、2組のステータ組の双方を構成する各ボビンが備える一対の端子台に、所定間隔をあけて径方向外側で覆われることを特徴とする。
【0015】
本構成によれば、溶接箇所が一対の端子台に覆われることで、溶接箇所を端子台が覆う面積が増え、人や物が溶接箇所に接触する可能性が抑制される。
【0016】
また、本発明は、溶接箇所が、一対のステータコアの外周の複数箇所に存在することを特徴とする。
【0017】
本構成によれば、一対のステータコア同士がそれらの外周の複数箇所で溶接されるため、ステータコア同士の固定は堅固に行われ、モータに衝撃等が加わってもステータコア同士の固定部分は容易に破損しなくなる。
【0018】
また、本発明は、溶接箇所が、端子台に覆われる一対のステータコアの外周と、モータ軸線を中心に前記外周と点対称に位置する一対のステータコアの外周との2箇所に存在することを特徴とする。
【0019】
本構成によれば、モータ軸線を中心に溶接箇所が点対称の2箇所に存在することで、ステータコア同士は少ない溶接箇所で効率的に堅固に固定される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、溶接箇所に人や物が触れることで、溶接箇所が破損するおそれのない、ステータコア同士の固定が確実に維持されるモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施の形態によるステッピングモータの分解斜視図である。
図2図1に示すステッピングモータからプレートを取り外した状態の外観斜視図である。
図3】(a)は図1に示すステッピングモータの縦断面図、(b)は横断面図である。
図4】(a)は、図2に示すステッピングモータから配線基板および各ボビンの図示を省いたステッピングモータの外観斜視図、(b)は、図2に示すステッピングモータを配線基板が設けられる側と反対側から見たステッピングモータの外観斜視図である。
図5図2に示すステッピングモータから配線基板の図示を省いたステッピングモータの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明によるモータをステッピングモータに適用した際における本発明を実施するための形態について説明する。
【0023】
なお、以下の説明において、モータ軸線Lの方向のうち、回転軸2がステータ5から突出している側を出力側L1とし、回転軸2がステータ5から突出している側とは反対側を反出力側L2として説明する。
【0024】
(全体構成)
図1は、本発明の一実施の形態によるステッピングモータ1の分解斜視図、図2は、図1に示すステッピングモータ1からプレート21を取り外した状態を出力側L1からみた外観斜視図である。図3(a)は、図2に示すステッピングモータ1をモータ軸線LおよびIIIa-IIIa線を含む面で切断して矢示方向に見た縦断面図、図3(b)は、モータ軸線Lに直交してIIIb-IIIb線を含む面で切断して矢示方向に見た横断面図である。
【0025】
ステッピングモータ1は、例えば、DVDやブルーレイディスク等の光ディスク駆動装置における光ヘッドの駆動や、情報をミラーで反射させて車のフロントウィンドウに映し出すHUD(ヘッドアップディスプレイ)におけるミラーの駆動等に用いられ、回転軸2にロータマグネット3が保持されたロータ4と、ロータマグネット3に径方向外側で対向するステータ5とを有している。
【0026】
(ステータの構成)
ステータ5は、コイル6aが筒状胴部に巻き回される第1のボビン7aとコイル6bが筒状胴部に巻き回される第2のボビン7bとがモータ軸線Lの方向に重ねて配置されて構成される。第1のボビン7aにおけるモータ軸線Lの方向の両側には、ケースを兼ねる外ステータコア8aと内ステータコア9aとが重ねて配置され、第2のボビン7bにおけるモータ軸線Lの方向の両側には、ケースを兼ねる外ステータコア8bと内ステータコア9bとが重ねて配置される。すなわち、ステータ5は、第1のボビン7aに巻き回されるコイル6aと、コイル6aに対してモータ軸線Lの方向の両側に配置される外ステータコア8aおよび内ステータコア9aとの第1ステータ組51と、第2のボビン7bに巻き回されるコイル6bと、コイル6bに対してモータ軸線Lの方向の両側に配置される外ステータコア8bおよび内ステータコア9bとの第2ステータ組52との2組のステータ組を有する。
【0027】
第1のボビン7aの筒状胴部内周面では、外ステータコア8aおよび内ステータコア9aの複数の極歯8a1および9a1が周方向に並び、第2のボビン7bの筒状胴部内周面では、外ステータコア8bおよび内ステータコア9bの複数の極歯8b1および9b1が周方向に並ぶ。ステータ5は筒状に構成されており、ステータ5の径方向内側にはロータ4が同軸状に配置されている。本実施形態では、第1のボビン7aおよび第2のボビン7bは樹脂製の絶縁部材からなり、第1のボビン7aおよび第2のボビン7bには端子台7a1,7b1が一体に形成されている。各端子台7a1,7b1にはそれぞれ2個の端子ピン10が圧入されて固定されている。各端子ピン10には、各コイル6a,6bの線材の巻き始めおよび巻き終わりの端部がそれぞれ絡げられる。これら端子台7a1,7b1は、ボビン7a,7bの同一の角度位置に形成されており、モータ軸線Lの方向からみたときに重なっており、外ステータコア8a,8bにそれぞれ形成された切り欠き8a2,8b2から外ステータコア8a,8bの外側に突出する。突出した端子台7a1,7b1に圧入された各端子ピン10は、配線基板11に形成された穴に挿入され、配線基板11に形成された配線パターン11aに電気的に接続される。
【0028】
外ステータコア8a,8bおよび内ステータコア9a,9bは磁性金属製であり、導電性を有している。外ステータコア8a,8bには、モータ軸線Lを挟んで切り欠き8a2,8b2に対向する位置に、切り欠き8a2,8b2より小さな切り欠き8a3,8b3(後述する図4(b)参照)がそれぞれ形成されている。第1ステータ組51および第2ステータ組52の2組のステータ組の内の一方のステータ組である第1ステータ組51を構成する内ステータコア9aは、他方のステータ組である第2ステータ組52側に位置する。また、2組のステータ組の内の他方のステータ組である第2ステータ組52を構成する内ステータコア9bは、一方のステータ組である第1ステータ組51側に位置する。
【0029】
(溶接箇所の構成)
第1ステータ組51および第2ステータ組52間で近接する位置に配置されるこれら内ステータコア9a,9b同士の外周は、図4(a),(b)に斜線付きの楕円で示す2箇所の溶接箇所14,15において、共に溶接されて相互に固定される。図4(a)は、図2に示すステッピングモータ1から配線基板11並びに第1および第2の各ボビン7a,7bの図示を省いたステッピングモータ1の外観斜視図、図4(b)は、図2に示すステッピングモータ1を配線基板11が設けられる側と反対側から見たステッピングモータ1の外観斜視図である。また、ケースを構成する外ステータコア8a,8b同士は、それらの外周の適宜の突き合わせ箇所で、共に溶接されて相互に固定される。
【0030】
2箇所の溶接箇所14,15のうちの一方の溶接箇所14は、図4(a)に示すように、外ステータスコア8a,8bによって構成されるケースの切り欠き8a2,8b2で形成される大きな開口部12の略中央に位置する。また、他方の溶接箇所15は、図4(b)に示すように、外ステータスコア8a,8bによって構成されるケースの切り欠き8a3,8b3で形成される小さな開口部13に露出する位置にある。
【0031】
これら2箇所の溶接箇所14,15のうち、開口部12に位置する1箇所の溶接箇所14は、2組のステータ組51,52の内の少なくとも一方のステータ組を構成するボビン7aまたは7bが備える端子台7a1または7b1に、所定間隔をあけて径方向外側で覆われる。本実施形態では、図3および図5に示すように、溶接箇所14は、2組のステータ組51,52の双方を構成する各ボビン7aおよび7bが備える一対の端子台7a1,7b1に、所定間隔をあけて径方向外側で覆われる。図5は、図2に示すステッピングモータ1から配線基板11の図示を省いたステッピングモータ1の外観斜視図である。開口部13に露出する溶接箇所15は、端子台7a1,7b1に覆われる溶接箇所14と、モータ軸線Lを中心にした点対称な位置に存在する。
【0032】
溶接箇所14を収容し、所定間隔をあけて端子台7a1,7b1が覆う空間は、溶接される一対の内ステータコア9a,9bに逃げ部16が設けられことで、形成される。逃げ部16は、一対の内ステータコア9a,9bの外周が、溶接箇所14に盛り上がって形成される溶接痕の高さより深く窪む、図3(b)および図4(a)に示すような径方向外側に向かって広がる台形形状に設けられる。なお、逃げ部16の形状は台形形状に限られることはなく、半円形状等でもよい。逃げ部16により、溶接箇所14における内ステータコア9a,9bと端子台7a1,7b1との間には、図3(b)に示すように寸法Aの所定間隔があく。
【0033】
逃げ部16は、内ステータコア9a,9bの円環部9a2,9b2の外周に突出する一対の突出部9a3,9b3間に形成され、溶接箇所14は一対の突出部9a3,9b3間にある。円環部9a2,9b2の外周には、ケースの大きな切り欠き8a2,8b2に突出する突出部9a3,9b3の他に、ケースの小さな切り欠き8a3,8b3に突出する突出部9a4,9b4があり、円環部9a2,9b2の外周には複数の突出部9a3,9b3、9a4,9b4がある。また、突出部9a3,9b3には端子台7a1,7b1に当接する一対の直線部Dがあり、また、溶接箇所14が設けられる直線部Eがある。逃げ部16は突出部9a3,9b3より径方向内側に凹み、直線部Eは円環部9a2,9b2の外周が描く点線で示す円Fの径方向内側にあり、溶接箇所14は円環部9a2,9b2の外周が描く円Fと略同等の位置にある。
【0034】
第1ステータ組51における内ステータコア9aと外ステータコア8aとは、切り欠き8a2と一対の突出部9a3との周方向における一対の接触箇所G,H、および、切り欠き8a3と突出部9a4との周方向における一対の接触箇所I,Jで接触している。コイル6aによって形成される磁束は、これら接触箇所G,H,I,Jを通って、内ステータコア9aおよび外ステータコア8a間を流れる。また、第2ステータ組52における内ステータコア9bと外ステータコア8bとは、切り欠き8b2と一対の突出部9b3との周方向における一対の接触箇所G,H、および、切り欠き8b3と突出部9b4との周方向における一対の接触箇所I,Jで接触している。コイル6bによって形成される磁束は、これら接触箇所G,H,I,Jを通って、内ステータコア9bおよび外ステータコア8b間を流れる。
【0035】
(ロータの構成)
ロータ4における回転軸2はモータ軸線Lの方向に延在しており、回転軸2の反出力側L2寄りの位置には永久磁石からなるロータマグネット3が接着剤により固定されている。本実施形態においては、回転軸2は、ステンレスや真鍮等の金属材料からなり、導電性を有している。回転軸2の外周面のうち、ステータ5から突出する側(出力側L1)の外周面には螺旋溝2aが形成されており、図示しないラックとともに回転-直動変換機構を構成している。ロータマグネット3は、高分子材料からなるバインダー中に磁石粒子が配合されたボンド磁石からなる。
【0036】
このロータマグネット3は、モータ軸線Lの方向における両側に位置する大径部3a,3b、および中央に位置する小径部3cからなる円筒形状をしている。2つの大径部3a,3bはモータ軸線Lの方向で離間した位置に設けられており、大径部3aの外周面は、第1ステータ組51の外ステータコア8aおよび内ステータコア9aの径方向の内側で、それらの極歯8a1,9a1と所定の間隔を介して対向する。大径部3bの外周面は、第2ステータ組52の外ステータコア8bおよび内ステータコア9bの径方向の内側で、それらの極歯8b1,9b1と所定の間隔を介して対向する。
【0037】
(軸受構造)
第1ステータ組51を構成する外ステータコア8aの出力側L1の端面にはプレート21の連結板部21aが溶接等により固定されている。プレート21は金属製であり、導電性を有している。プレート21の先端側屈曲部分21bには、回転軸2の出力側L1の端部2bをモータ軸線Lの方向およびそれに直交する径方向で回転可能に支持する出力側L1の軸受機構が構成されている。これに対して、第2ステータ組52を構成する外ステータコア8bの反出力側L2の端面には円盤状の底板22が固定され、この底板22の反出力側L2の端面における穴22aには、焼結金属製の円筒状の軸受ホルダ23が溶接等で固定される。軸受ホルダ23の内側では、軸受ホルダ23を利用して、回転軸2の反出力側L2の端部2cをモータ軸線Lの方向およびそれに直交する径方向で回転可能に支持する反出力側L2の軸受機構が保持されている。なお、軸受ホルダ23として樹脂製のものが用いられることもある。
【0038】
回転軸2は、軸受ホルダ23の内側でモータ軸線Lの方向に移動可能に構成されており、軸受ホルダ23に対して反出力側L2に配置された板バネ状の付勢部材24によって出力側L1に向けて付勢されている。付勢部材24は、軸受ホルダ23の反出力側L2の面に重なる端板部24aと、端板部24aの一辺から反出力側L2に向けて突出した側板部24bとを有している。端板部24aには軸受ホルダ23の小径部に嵌合する半円状の切り欠きが形成されており、付勢部材24は、端板部24aの切り欠きが軸受ホルダ23の小径部に嵌合した状態で、軸受ホルダ23と共に底板22に溶接等で固定される。側板部24bの出力側L1の端面には回転軸2の反出力側L2の端部2cの先端が当接しており、回転軸2は、側板部24bが持つ弾性により出力側L1に向けて付勢される。出力側L1には、回転軸2の出力側L1の端部2bをモータ軸線Lの方向および径方向で回転可能に支持する出力側L1の上述の軸受機構が構成されている。従って、回転軸2は、出力側L1の端部2bが出力側L1の軸受機構に当接するように付勢された状態にあるため、回転軸2が回転した際、回転軸2のモータ軸線Lの方向でのがたつきが防止される。
【0039】
(作用・効果)
このような本実施形態によるステッピングモータ1によれば、2組のステータ組51,52の内の近接する位置にある一対の内ステータコア9a,9b同士は、それらの外周における少なくとも1箇所の溶接箇所14で固定される。そして、この溶接箇所14は、2組のステータ組51,52の内の少なくとも一方のステータ組51または52を構成するボビン7aまたは7bが備える端子台7a1または7b1に、所定間隔をあけて径方向外側で覆われる。したがって、一対の内ステータコア9a,9b同士を固定する少なくとも1箇所の溶接箇所14は、径方向外側でこれを覆う端子台7a1または7b1により、人や物からの接触が防がれる。このため、少なくとも1箇所の溶接箇所14において、溶接で盛り上がった固定箇所の溶接痕に人や物が触れ、溶接痕が剥がれて溶接が破損するおそれがなくなる。よって、一対の内ステータコア9a,9b同士は、少なくとも1箇所のこの溶接箇所14において、相互の固定が確実に維持される。
【0040】
本実施形態によるステッピングモータ1では、溶接箇所14が一対の端子台7a1および7b1に覆われることで、溶接箇所14を端子台7a1および7b1が覆う面積が増え、人や物を溶接箇所14に接触する可能性を抑制している。
【0041】
また、本実施形態によるステッピングモータ1では、内ステータコア9a,9b同士が、それらの外周の複数箇所に存在する溶接箇所14,15で溶接されて固定されるため、内ステータコア9a,9b同士の固定は堅固に行われ、ステッピングモータ1に衝撃等が加わっても、内ステータコア9a,9b同士の固定部分は容易に破損しなくなる。
【0042】
特に、本実施形態によるステッピングモータ1では、モータ軸線Lを中心に溶接箇所14,15が点対称の2箇所に存在することで、内ステータコア9a,9b同士は少ない溶接箇所で効率的に堅固に固定される。
【0043】
また、本実施形態によるステッピングモータ1では、溶接箇所14で溶接される一対の内ステータコア9a,9bの外周に逃げ部16が設けられ、溶接痕が溶接箇所14に盛り上がって形成されても、その溶接痕は逃げ部16によって形成される空間内に収容される。このため、溶接箇所14を径方向外側で覆うことで、人や物を溶接箇所14に接触させない端子台7a1,7b1の機能が担保される。
【0044】
また、本実施形態では、溶接される一対の内ステータコア9a,9bに逃げ部16が設けられる場合について説明した。しかし、溶接箇所14を収容し、所定間隔をあけて端子台7a1,7b1が覆う空間は、溶接箇所14を覆う端子台7a1,7b1に逃げ部が設けられことでも、形成される。
【0045】
しかし、逃げ部16を溶接箇所14を覆う端子台7a1,7b1に設けると、端子台7a1,7b1を設ける位置が径方向外側へ追いやられる。一方、端子台7a1,7b1が径方向外側へ張り出すことの許容される突出量は、ステッピングモータ1の外形寸法の制約から限られる。したがって、端子台7a1,7b1の径方向長さB(図3(b)参照)は短くなり、コイル6a,6bの線材の端部が絡げられる端子ピン10の端子台7a1,7b1への十分な圧入代C(図3(b)参照)を確保することが難しくなる。しかし、溶接される一対の内ステータコア9a,9bに逃げ部16を設ける本実施形態によるステッピングモータ1によれば、端子台7a1,7b1を設ける位置を径方向外側へ追いやることなく、逃げ部16を設けることができる。したがって、端子台7a1,7b1が径方向外側へ張り出すことなく、しかも、端子台7a1,7b1への端子ピン10の圧入代Cを確保しながら、溶接箇所14を収容して端子台7a1,7b1が覆う空間を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
上記実施の形態では、外ステータコア8a,8bがケースを構成する場合について説明したが、外ステータコアおよび内ステータコアがこれらとは別体のケースに収容されて構成されるステッピングモータにも、本発明は同様に適用することができる。この場合、上記実施形態の開口部12,13と同様な開口部をケースに形成し、これら開口部に、2組のステータ組の内の近接するステータコア同士の、溶接する外周を位置させ、一方の溶接箇所を端子台が覆うように構成する。また、上記実施の形態では、ステッピングモータに本発明を適用したが、ステッピングモータ以外のモータに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…ステッピングモータ、2…回転軸、2a…螺旋溝、2b,2c…端部、3…ロータマグネット、3a,3b…大径部、3c…小径部、4…ロータ、5…ステータ、51…第1ステータ組、52…第2ステータ組、6a,6b…コイル、7a,7b…ボビン、7a1,7b1…端子台、8a,8b…外ステータスコア、9a,9b…内ステータスコア、8a1,9a1,8b1,9b1…極歯、8a2,8b2,8a3,8b3…切り欠き、9a2,9b2…円環部、9a3,9b3,9a4,9b4…突出部、10…端子ピン、11…配線基板、11a…配線パターン、12,13…開口部、14,15…溶接箇所、16…逃げ部、21…プレート、21a…連結板部、21b…先端側屈曲部分、22…底板、22a…穴、23…軸受ホルダ、24…付勢部材、24a…端板部、24b…側板部、51…第1ステータ組、52…第2ステータ組
図1
図2
図3
図4
図5