IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧
<>
  • 特許-マイクロ流体デバイス 図1
  • 特許-マイクロ流体デバイス 図2
  • 特許-マイクロ流体デバイス 図3
  • 特許-マイクロ流体デバイス 図4
  • 特許-マイクロ流体デバイス 図5
  • 特許-マイクロ流体デバイス 図6
  • 特許-マイクロ流体デバイス 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】マイクロ流体デバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20220928BHJP
   G01N 21/05 20060101ALI20220928BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N21/05
G01N37/00 101
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018213135
(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公開番号】P2019095441
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2017224540
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 勤
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼松 辰典
(72)【発明者】
【氏名】乾 延彦
(72)【発明者】
【氏名】小原 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】河野 隆昌
(72)【発明者】
【氏名】今村 一彦
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-011974(JP,A)
【文献】国際公開第2013/175833(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/08
G01N 21/05
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体である試料中の成分を試薬と反応させて分析するためのマイクロ流体デバイスであって、
前記流体である試料が送液され、かつ前記試料中の成分と前記試薬とが反応される反応部が設けられている流路構造を有するデバイス本体と、
前記流路構造内に設けられており、特定の波長で吸光度を呈する物質を含有している試薬とを備え、前記反応部は、前記試料中の成分と前記試薬との反応の結果を分析するための分析部を有し、
前記吸光度を呈する物質を含有している前記試薬が、前記流路構造において、前記分析部または前記分析部とは異なる位置に配置されており、
前記反応部において、前記吸光度が測定されることにより、前記試料の前記反応部への流入が検出される、マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
前記吸光度を呈する物質を含有している前記試薬が、前記流路構造において、前記分析部とは異なる場所に配置されている、請求項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
前記吸光度を呈する物質を含有している前記試薬が、前記流路構造において前記分析部よりも上流側に配置されている、請求項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
前記吸光度を呈する物質を含有している前記試薬の一部が、前記流路構造において前記分析部よりも上流側に配置されており、前記試薬の残りの部分が、前記分析部に配置されている、請求項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
流体である試料中の成分を試薬と反応させて分析するためのマイクロ流体デバイスであって、
前記流体である試料が送液され、かつ前記試料中の成分と前記試薬とが反応される反応部が設けられている流路構造を有するデバイス本体と、
前記流路構造内に設けられており、特定の波長で吸光度を呈する物質を含有している試薬とを備え、前記反応部は、前記試料中の成分と前記試薬との反応の結果を分析するための分析部を有し、
前記吸光度を呈する物質を含有している前記試薬が、乾燥状態で前記流路構造に保持されており、
前記反応部において、前記吸光度が測定されることにより、前記試料の前記反応部への流入が検出される、マイクロ流体デバイス。
【請求項6】
流体である試料中の成分を試薬と反応させて分析するためのマイクロ流体デバイスであって、
前記流体である試料が送液され、かつ前記試料中の成分と前記試薬とが反応される反応部が設けられている流路構造を有するデバイス本体と、
前記流路構造内に設けられており、特定の波長で吸光度を呈する物質を含有している試薬とを備え、前記反応部は、前記試料中の成分と前記試薬との反応の結果を分析するための分析部を有し、
前記試薬が配置されている前記流路構造の深さが2.0mm以下であり、
前記反応部において、前記吸光度が測定されることにより、前記試料の前記反応部への流入が検出される、マイクロ流体デバイス。
【請求項7】
流体である試料中の成分を試薬と反応させて分析するためのマイクロ流体デバイスであって、
前記流体である試料が送液され、かつ前記試料中の成分と前記試薬とが反応される反応部が設けられている流路構造を有するデバイス本体と、
前記流路構造内に設けられており、特定の波長で吸光度を呈する物質を含有している試薬とを備え、前記反応部は、前記試料中の成分と前記試薬との反応の結果を分析するための分析部を有し、
前記反応部において、上流側から下流側にかけて、複数の場所に、前記吸光度を呈する物質を含有している前記試薬が配置されており、
前記反応部において、前記吸光度が測定されることにより、前記試料の前記反応部への流入が検出される、マイクロ流体デバイス。
【請求項8】
前記複数の場所の位置が、前記分析部の上流側の位置と、前記分析部の下流側の位置とを含み、前記分析部に存在していなくともよい、請求項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項9】
前記吸光度を呈する物質が、色素、酸化還元発色剤及び蛍光物質からなる群から選択された少なくとも1種である、請求項1~のいずれか1項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項10】
前記吸光度を呈する物質は、前記試料中の前記成分が前記試薬と反応した後に吸光度が変動する物質である、請求項1~のいずれか1項に記載のマイクロ流体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の成分と試薬とを反応させて分析するのに用いられるマイクロ流体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体試料の分析において、小型の分析デバイスが種々提案されている。
【0003】
流体を用いたマイクロ流体デバイスでは、小型化をより一層進めることができる。また、検体である試料を少なくすることもできる。この種のマイクロ流体デバイスでは、流体である液状の試料と、試薬とを反応させる。それによって、試料に含まれている成分の濃度を測定する。この場合、試料が反応部に流入しなかった場合には、正確な濃度を検出することができない。従って、反応部への試料の流入を検出する必要がある。
【0004】
下記の特許文献1では、マイクロ流体デバイスではないが、流体の流路内への流入を、圧力センサにより検出する構成が開示されている。また、下記の特許文献2では、流体を用いた流路チップにおいて、電流測定を行うことにより、流路への流体の流入が検出されている。
【0005】
下記の特許文献3では、発光半導体ナノクリスタルを用いることにより、液体の流入を検出する方法が開示されている。特許文献3では、試薬は、液体の状態で封入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-176707号公報
【文献】特開2013-108769号公報
【文献】特開2005-538353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1や特許文献2に記載の流体の流入の検出方法では、圧力センサを設けたり、電流測定に必要な構造を設けたりしなければならなかった。従って、構造が複雑になり、試料中の成分を検出するための反応に不要な材料を設けなければならなかった。また、特許文献1や特許文献2に記載の検出方法では、液体の流入の検出精度を高めるには、流路の大きさをある程度を大きくしなければならない。従って、マイクロ流体デバイスのような流体が送液される流路では、検出精度を高めることが困難であった。
【0008】
特許文献3に記載の発光半導体ナノクリスタルを用いた方法では、液体の試料と試薬とを混和した後、別の場所に分液し、反応させている。液体の試料の存在のみを直接的に検出するものではないため、液体試料の流入を高精度に検出することはできなかった。
【0009】
本発明の目的は、流体である試料の流入を高精度に検出することができ、かつ反応に必要でない余分な構造を設ける必要がない、マイクロ流体デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るマイクロ流体デバイスは、流体である試料中の成分を試薬と反応させて分析するためのマイクロ流体デバイスであって、前記流体である試料が送液され、かつ前記試料中の成分と前記試薬とが反応される反応部が設けられている流路構造を有するデバイス本体と、前記流路構造内に設けられており、特定の波長で吸光度を呈する物質を含有している試薬とを備え、前記反応部は、前記試料中の成分と前記試薬との反応の結果を分析するための分析部を有し、前記反応部において、前記吸光度が測定されることにより、前記試料の前記反応部への流入が検出される。
【0011】
本発明に係るマイクロ流体デバイスでは、前記吸光度を呈する物質を含有している前記試薬が、前記流路構造において、前記分析部または前記分析部とは異なる位置に配置されている。
【0012】
本発明に係るマイクロ流体デバイスでは、好ましくは、前記吸光度を呈する物質を含有している前記試薬が、前記流路構造において、前記分析部とは異なる場所に配置されている。
【0013】
本発明に係るマイクロ流体デバイスでは、より好ましくは、前記吸光度を呈する物質を含有している前記試薬が、前記流路構造において前記分析部よりも上流側に配置されている。
【0014】
本発明に係るマイクロ流体デバイスでは、前記吸光度を呈する物質を含有している前記試薬の一部が、前記流路構造において前記分析部よりも上流側に配置されており、前記試薬の残りの部分が、前記分析部に配置されている。
【0015】
本発明に係るマイクロ流体デバイスでは、好ましくは、前記吸光度を呈する物質を含有している前記試薬が、乾燥状態で前記流路構造に保持されている。
【0016】
本発明に係るマイクロ流体デバイスでは、好ましくは、前記試薬が配置されている前記流路構造の深さが2.0mm以下の浅いものである。その場合、試薬と送液される流体の総接触面積が大きくなるため試薬の溶解性が著しく高くなる。さらに好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.8mm以下、特に好ましくは0.5mm以下である。
【0017】
本発明に係るマイクロ流体デバイスでは、より好ましくは、前記反応部において、上流側から下流側にかけて、複数の場所に、前記吸光度を呈する物質を含有している前記試薬が配置されている。
【0018】
本発明に係るマイクロ流体デバイスでは、前記複数の位置が、前記分析部の上流側の位置と、前記分析部の下流側の位置とを含み、前記分析部に存在していなくともよい。
【0019】
本発明に係るマイクロ流体デバイスでは、好ましくは、前記吸光度を呈する物質が、色素、酸化還元発色剤及び蛍光物質からなる群から選択された少なくとも1種である。
【0020】
本発明に係るマイクロ流体デバイスでは、より好ましくは、前記吸光度を呈する物質は、前記試料中の前記成分が前記試薬と反応した後に吸光度が変動する物質である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るマイクロ流体デバイスによれば、流体である試料の反応部への流入を高精度に検出することができ、かつ流入の検出に、余分な構造を必要としない。よって、小型であり、試料の流入の検出精度の高いマイクロ流体デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るマイクロ流体デバイスの外観を示す略図的斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るマイクロ流体デバイス内の流路構造を説明するための模式的平面図である。
図3図2に示した流路構造における分岐流路からなる反応セルを説明するための斜視図である。
図4図3のA-A線に沿う部分の断面図である。
図5】流路と試薬との位置関係を示す分岐流路の横断面図である。
図6】実施例1における反応セル内の試薬が設けられている位置と、分析部との関係を示す図である。
図7】実施例2における反応セル内の試薬が設けられている位置と、分析部との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るマイクロ流体デバイスの外観を示す略図的斜視図であり、図2は、このマイクロ流体デバイス内の流路構造を説明するための模式的平面図である。
【0025】
図1に示すように、マイクロ流体デバイス1は、デバイス本体2を有する。デバイス本体2は、複数の合成樹脂層を積層した構造を有する。複数の合成樹脂層の一部は、ガラスなどにより構成されていてもよい。いずれにしても、後述する反応部において、吸光度を測定するには、反応部が臨む部分は、透光性を有する樹脂やガラスからなることが望ましい。
【0026】
マイクロ流体デバイス1では、流路構造3内に、流体である試料が送液される。この流体は、0.5μL~5μL程度の容積を有する。
【0027】
図2に示すように、流路構造3は、流入口4及び流出口5を有する。主流路6は、流入口4と流出口5とを結んでいる。主流路6に、反応部を構成している複数の分岐流路7の流入端が接続されている。分岐流路7の流入端とは反対側の端部に、断面積がより小さい流路抵抗部8が連ねられている。流路抵抗部8の下流端が、流路9に接続されている。流路9は、流入もしくは流出口10,11に接続されている。
【0028】
上記流入口4,流出口5,流入もしくは流出口10,11には、図示しないバルブが接続されている。これらのバルブを閉じた状態とすることにより、流路構造3内を封止することができる。
【0029】
複数の分岐流路7は、反応部を構成している。すなわち、分岐流路7は、試料中の成分と、試薬とが反応する反応部すなわち反応セルを構成している。
【0030】
図3は、図2に示した流路構造における分岐流路からなる反応セルを説明するための斜視図であり、図4図3のA-A線に沿う部分の断面図である。
【0031】
図3及び図4に示すように、分岐流路7は、平面視において、細長い矩形形状を有し、かつ横断面も矩形とされている。図4に示すように、分岐流路7の底面7aには、溝7bが設けられている。この溝7bは、底面7aの全幅に至るように設けられている。溝7bが設けられている部分が、後述する分析部Xを構成している。
【0032】
そして、上記底面7aにおいて、複数の試薬12が反応部としての分岐流路7の長さ方向に沿って、分散配置されている。なお、図4では、複数の試薬12は、分析部Xには設けられていない。もっとも、試薬12は、分析部Xにおいて配置されていてもよい。
【0033】
上記試薬12は、流体である試料中の成分と反応させるために設けられている。また、マイクロ流体デバイス1では、試薬12は、乾燥された状態で、分岐流路7の底面7a及び/または溝7b内に保持されている。
【0034】
なお、試薬12は、分岐流路7内において、流体である試料中の成分と反応し得るように、分岐流路7の他の位置に設けられてもよい。
【0035】
上記試薬12は、流体である試料中の成分と反応するものであるが、この試薬は、特定の波長で吸光度を呈する物質を含有している。上記試料中の成分と反応する試薬としては、該成分に応じて、適宜の試薬を用いることができる。
【0036】
このような試薬としては、例えば、緩衝剤、酵素、有機塩などが挙げられる。
【0037】
また、上記特定の波長で吸光度を呈する物質としては、特に限定されないが、色素、酸化還元発色剤及び蛍光物質からなる群から選択された少なくとも1種が好適に用いられる。
【0038】
このような色素としては、特に限定されないが、食用青色1号、食用赤色3号、タートラジンなどが挙げられる。酸化還元発色剤についても特に限定されないが、フェノール、3,3’,5,5’-Tetramethylbenzidine、2-(4-Iodophenyl)-3-(4-nitrophenyl)-5-phenyl-2H-tetrazolium chloride、N-Ethyl-N-(2-hydroxy-3-sulfopropyl)-3,5-dimethoxyaniline sodium saltなどが挙げられる。蛍光物質についても、特に限定されないが、6-Carboxyrhodamine 6G、Citrine、5-Carboxyfluorescein、NirFP、Resorufinなどを挙げることができる。
【0039】
また、吸光度を呈する物質が、試料中の成分が試薬と反応した後に吸光度が変動する物質であることが好ましい。その場合、吸光度の変化により、試料中の成分と試薬との反応の有無をも検出することができる。
【0040】
上述したように、試薬12は、乾燥された状態で、流路構造3内に保持されている。この場合、流体である試料と接触した場合、試薬が溶解する。従って、吸光度を速やかに測定することができる。よって、流体である試料が反応部としての分岐流路7に流入してきたことを確実に検出することができる。
【0041】
なお、複数の試薬12は、分析部Xと異なる位置に配置されているが、分析部Xに配置されていてもよい。
【0042】
好ましくは、試薬12の少なくとも1つが、分析部Xよりも流路構造において上流側に配置されていることが望ましい。その場合には、試料が分析部Xに至る前に吸光度を呈する物質による吸光度を測定し得る。よって、流路構造3内に、特に分岐流路7内に試料が流入してきたことを速やかに検出することができる。従って、試料の流入を確認した上で、分析部Xにおける反応結果に基づき、試料中の成分の濃度の測定などを行うことができる。
【0043】
また、図4に示すように、反応セルとしての分岐流路7において、上流側から下流側にかけて、複数の場所に、試薬12が配置されていることが望ましい。それによって、試料の流入をより確実に検出することができる。
【0044】
上記複数の場所に試薬12を配置する場合、図4に示したように、分析部Xの上流側の位置と、分析部Xの下流側の位置の双方に設けられていることが望ましい。
【0045】
より好ましくは、図4に示すように、分析部Xに、試薬12が設けられていないことが望ましい。それによって、同じ大きさであれば、分析部の面積を十分大きくすることができ、試料中の成分の分析をより高精度に行い得る。これを、以下の実施例1及び実施例2を説明することにより明らかにする。
【0046】
上記試薬12が配置される流路構造の深さは、2.0mm以下であることが望ましい。その場合、試薬12と、送液される流体との総接触面積が大きくなる。したがって、試薬の溶解性を効果的に高めることができる。上記流路構造の深さは、さらに好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.8mm以下、特に好ましくは0.5mm以下である。
【0047】
また、図5に示すように、上記試薬12が配置される分岐流路7の幅方向両端7a1,7a2に、試薬12が接触しないことが望ましい。分岐流路7の幅方向寸法を1とした場合、幅方向に沿う試薬12の寸法は0.95以下が好ましく、0.9以下がより好ましく、0.8以下がさらに好ましく、0.7以下が特に好ましい。流路構造の幅方向両端では、流体が滞留しやすい。したがって、試薬が溶けにくくなることがある。これに対して、試薬12が分岐流路7の幅方向の両端7a1,7a2に接触していない場合には、試薬12が流体に確実に溶解することとなる。
【0048】
(実施例1)
図6は、実施例1における反応セル内の試薬が設けられている位置と、分析部との関係を示す図である。分析部Xの上流側に、試薬12a~12dが、下流側に試薬12e、12fが配置されている。なお、図6の分岐流路7の右側に示す数値は各部分の長さ(mm)の数値である。すなわち、隣り合う試薬間の中心間距離は、0.9mmとした。また、分析部Xの長さ方向寸法は、0.67mmとした。分岐流路7の幅は1.2mmとした。
【0049】
実施例1では、試薬12d,12eの一部が、底面7aから溝7bに至るように設けられている。すなわち、試薬12d,12eは、溝7b内にも位置している。
【0050】
(実施例2)
図7は、実施例2における反応セル内の試薬が設けられている位置と、分析部との関係を示す図である。
【0051】
実施例2では、溝7bの長さ方向寸法は2.0mmとした。すなわち、分析部Xの上流側及び下流側にも溝7bが至るように溝7bを設けた。
【0052】
試薬12a~12c,12dは、分析部Xの上流側に位置している。試薬12a~12cの試薬中心間距離は、0.75mmとした。溝7b内に試薬12d,12eが保持されている。なお、試薬12cの中心と、溝7bの上流側端部との間の長さ方向寸法は0.75mmとした。試薬12dの中心は、溝7bの上流側端部から0.25mm隔てられており、分析部Xの上流側端部と0.40mm隔てられている。同様に、試薬12eの中心は、分析部Xの下流側端部との長さ方向寸法は0.40mm、試薬12eの中心と、溝7bの下流側端部との間の長さ方向寸法は0.25mmとした。試薬12fは、溝7bよりも下流側において、底面7a上に設けられている。
【0053】
実施例2では、溝7b内に試薬12d,12eが配置されているが、試薬12d,12eは分析部Xには位置していない。
【0054】
実施例1及び実施例2において、試薬12a~12fは以下のようにして、反応セルとしての分岐流路7内に保持させた。
【0055】
各成分の濃度が下記の表1に示す組成のプライマープローブ混合溶液を調製した。
【0056】
【表1】
【0057】
上記プライマープローブ混合溶液を、PCR反応を行うための反応セルとしての各分岐流路7内にディスペンサーを用いて、0.1μLずつ分注した。次に、モレキュラーシーブスにおいて4日間乾燥させた。このようにして、試薬12a~12fが乾燥状態で保持されている分岐流路7を得た。
【0058】
TaqMan Fast Virus 1-Step Master Mix(Thermo Fisher Scientific社製)を5μL、精製水を12μL及びウィルスRNAを1μL混和し、試料を得た。この試料をマイクロ流体デバイス1において、反応セルとしての分岐流路7に送液し、直後の分析部Xにおける蛍光強度を測定した。
【0059】
実施例1及び実施例2のいずれにおいても、並列に配置された第1~第3の分岐流路7において、上記吸光度の測定を行った。なお、試料流入前の吸光度と、試料流入直後の吸光度を測定した。実施例1の結果を下記の表2に、実施例2の結果を下記の表3に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
また、実施例1及び実施例2のマイクロ流体デバイスを用いた場合の試料流入検出結果を以下の観点で評価した。まず、検出(1)として、複数のポイントにおける吸光度を測定し、流入後の吸光度が0.1を超えるものがあれば、試料が流入したと判断した。この場合には、下記の表4において、○を付した。0.1以下であれば、検出できずとして、×を付した。
【0063】
検出(2)として、複数のポイントで吸光度を測定し、マイナスの吸光度が存在しなければ、流入を検出したとして、下記の表4において、○を付した。また、マイナスの吸光度がある場合には、×を付した。
【0064】
また、実施例1及び実施例2のマイクロ流体デバイスにおける試料中の成分と試薬との反応が十分に進行したか否かを、蛍光分析装置により確認した。反応が進行した場合には、下記の表4において○を付した。
【0065】
【表4】
【0066】
上記の通り、実施例1及び実施例2のいずれにおいても、流体である試料の反応セルとしての分岐流路7への流入を確実に検出し得ることがわかる。特に、実施例2のように、試薬12a~12fが分析部Xに位置していない場合には、より効果的に試薬の流入を検出し得ることがわかる。
【符号の説明】
【0067】
1…マイクロ流体デバイス
2…デバイス本体
3…流路構造
4…流入口
5…流出口
6…主流路
7…分岐流路
7a…底面
7a1,7a2…両端
7b…溝
8…流路抵抗部
9…流路
10,11…流入もしくは流出口
12,12a~12f…試薬
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7