IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム株式会社の特許一覧

特許7148380駆動モジュール、電源制御装置、スイッチング電源
<>
  • 特許-駆動モジュール、電源制御装置、スイッチング電源 図1
  • 特許-駆動モジュール、電源制御装置、スイッチング電源 図2
  • 特許-駆動モジュール、電源制御装置、スイッチング電源 図3
  • 特許-駆動モジュール、電源制御装置、スイッチング電源 図4
  • 特許-駆動モジュール、電源制御装置、スイッチング電源 図5
  • 特許-駆動モジュール、電源制御装置、スイッチング電源 図6
  • 特許-駆動モジュール、電源制御装置、スイッチング電源 図7
  • 特許-駆動モジュール、電源制御装置、スイッチング電源 図8
  • 特許-駆動モジュール、電源制御装置、スイッチング電源 図9
  • 特許-駆動モジュール、電源制御装置、スイッチング電源 図10
  • 特許-駆動モジュール、電源制御装置、スイッチング電源 図11
  • 特許-駆動モジュール、電源制御装置、スイッチング電源 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】駆動モジュール、電源制御装置、スイッチング電源
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
H02M3/155 W
H02M3/155 P
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018230994
(22)【出願日】2018-12-10
(65)【公開番号】P2020096409
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤穂 直史
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-049847(JP,A)
【文献】特開2007-020315(JP,A)
【文献】特開2018-169731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力トランジスタと同期整流トランジスタをオン/オフして入力電圧から出力電圧を生成するスイッチング電源用の駆動モジュールであって、
前記同期整流トランジスタのオン時に流れるインダクタ電流のゼロクロスを検出するゼロクロス検出回路と;
制御信号が第1論理レベルであるときに前記出力トランジスタをオンして前記同期整流トランジスタをオフし、前記制御信号が第2論理レベルであるときに前記出力トランジスタをオフして前記同期整流トランジスタをオンする一方、前記ゼロクロスが検出されたときに前記出力トランジスタと前記同期整流トランジスタ双方をオフする駆動論理回路と;
前記ゼロクロスが検出されたときに前記制御信号を前記第1論理レベルでも前記第2論理レベルでもない第3論理レベルに切り替える論理レベル切替回路と;
を単一のパッケージに集積化して成ることを特徴とする駆動モジュール。
【請求項2】
前記出力トランジスタと前記同期整流トランジスタも前記パッケージに集積化して成ることを特徴とする請求項1に記載の駆動モジュール。
【請求項3】
前記パッケージは、WLCSP[wafer level chip size package]であり、
前記出力トランジスタと前記同期整流トランジスタの双方に接続されるスイッチ端子群の少なくとも一部は、前記パッケージの平面視において、入力電圧端子群と接地電圧端子群との間に配列されていることを特徴とする請求項2に記載の駆動モジュール。
【請求項4】
出力トランジスタと同期整流トランジスタをオン/オフして入力電圧から出力電圧を生成するスイッチング電源用の電源制御装置であって、
前記出力トランジスタをオンして前記同期整流トランジスタをオフするときに制御信号を第1論理レベルとし、前記出力トランジスタをオフして前記同期整流トランジスタをオンするときに前記制御信号を第2論理レベルとする一方、前記制御信号を前記第2論理レベルとした後に入力待受状態となる入出力回路と;
前記入力待受状態で前記制御信号が前記第1論理レベルでも前記第2論理レベルでもない第3論理レベルに切り替えられたことを検出して軽負荷モードに移行する制御回路と;
を有することを特徴とする電源制御装置。
【請求項5】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の駆動モジュールと、
請求項4に記載の電源制御装置と、
を有し、
入力電圧から出力電圧を生成して負荷に供給することを特徴とするスイッチング電源。
【請求項6】
前記駆動モジュールは、前記駆動モジュールがイネーブルとされるまで前記制御信号を機種毎の論理レベルに固定する論理レベル固定回路をさらに有し、
前記電源制御装置は、前記駆動モジュールをイネーブルとするまで前記入出力回路を前記入力待受状態とし、前記制御信号の論理レベルから前記駆動モジュールの機種判別ないし接続判定を行うことを特徴とする請求項5に記載のスイッチング電源。
【請求項7】
前記電源制御装置は、前記駆動モジュールをディセーブルとするときに前記駆動モジュールのイネーブル信号を第1論理レベルとし、前記駆動モジュールを第1動作モードでイネーブルとするときに前記イネーブル信号を第2論理レベルとし、前記駆動モジュールを第2動作モードでイネーブルとするときに前記イネーブル信号を第3論理レベルとすることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のスイッチング電源。
【請求項8】
前記駆動モジュールは、n相並列(ただしn≧2)に設けられており、
前記電源制御装置は、各相の前記駆動モジュールを2π/nずつ位相をずらして駆動することを特徴とする請求項5~請求項7のいずれか一項に記載のスイッチング電源。
【請求項9】
前記電源制御装置から前記駆動モジュールまでの第1配線長は、前記駆動モジュールから前記負荷までの第2配線長よりも大きいことを特徴とする請求項5~請求項8のいずれか一項に記載のスイッチング電源。
【請求項10】
前記電源制御装置は、リモートセンス方式で検出された前記負荷の両端間電圧に応じて出力帰還制御を行うことを特徴とする請求項5~請求項9のいずれか一項に記載のスイッチング電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、スイッチング電源用の駆動モジュール及び電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スイッチング電源の構成部品として、スイッチ出力段を形成する一対のMOSFET[metal-oxide-semiconductor field effect transistor]と、これらを駆動するための駆動論理回路とを1パッケージに集積化した駆動モジュール(いわゆるDrMOS)が実用化されている。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-195768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の駆動モジュールを用いたスイッチング電源では、軽負荷モード(=軽負荷時にスイッチ出力段を出力ハイインピーダンス状態(HiZ)としてスイッチング損失を低減する動作モード)を実装するために必要な信号や外付け部品が多い、という課題があった。以下、具体例を挙げて簡単に説明する。
【0006】
図11は、スイッチング電源の第1従来例を示す図である。本従来例のスイッチング電源100では、電源制御装置120のゼロクロス検出回路123でインダクタ電流ILのゼロクロスが検出されると、制御回路121にスキップ信号SKIPが伝達され、出力回路122から駆動モジュール110への制御信号PWMがLレベル(例えばGND)からMレベル(例えばHレベルとLレベルの中間値)に切り替えられる。その結果、駆動論理回路112によりトランジスタM1及びM2双方がオフされ、スイッチ出力段111が出力ハイインピーダンス状態(HiZ)となる。ただし、本従来例のスイッチング電源100では、電流検出用の外付け部品(抵抗R1とキャパシタC1)が必要となる。また、1相(1チャネル)の駆動モジュール110毎に、3本の信号(制御信号PWM、電流検出信号IS+及びIS-)が必要となる。
【0007】
図12は、スイッチング電源の第2従来例を示す図である。本従来例のスイッチング電源200では、スイッチ電圧SWを監視してインダクタ電流ILのゼロクロスを検出するゼロクロス検出回路213が駆動モジュール210に集積化されている。従って、先出の抵抗R1やキャパシタC1が不要となる。また、駆動モジュール110毎に必要な信号を3本(PWM、IS+、IS-)から2本(PWM、SKIP)に減らすこともできる。ただし、信号本数の削減については、更なる改善の余地があった。
【0008】
本明細書中に開示されている発明は、本願の発明者により見出された上記課題に鑑み、必要な信号や外付け部品の少ない駆動モジュール及び電源制御装置、並びに、これらを用いたスイッチング電源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書中に開示されている駆動モジュールは、出力トランジスタと同期整流トランジスタをオン/オフして入力電圧から出力電圧を生成するスイッチング電源用であり、前記同期整流トランジスタのオン時に流れるインダクタ電流のゼロクロスを検出するゼロクロス検出回路と;制御信号が第1論理レベルであるときに前記出力トランジスタをオンして前記同期整流トランジスタをオフし、前記制御信号が第2論理レベルであるときに前記出力トランジスタをオフして前記同期整流トランジスタをオンする一方、前記ゼロクロスが検出されたときに前記出力トランジスタと前記同期整流トランジスタ双方をオフする駆動論理回路と;前記ゼロクロスが検出されたときに前記制御信号を前記第1論理レベルでも前記第2論理レベルでもない第3論理レベルに切り替える論理レベル切替回路と;を単一のパッケージに集積化して成る構成(第1の構成)とされている。
【0010】
なお、上記第1の構成から成る駆動モジュールは、前記出力トランジスタと前記同期整流トランジスタも前記パッケージに集積化して成る構成(第2の構成)にするとよい。
【0011】
また、上記第2の構成から成る駆動モジュールにおいて、前記パッケージは、WLCSP[wafer level chip size package]であり、前記出力トランジスタと前記同期整流トランジスタの双方に接続されるスイッチ端子群の少なくとも一部は、前記パッケージの平面視において、入力電圧端子群と接地電圧端子群との間に配列されている構成(第3の構成)にするとよい。
【0012】
また、本明細書中に開示されている電源制御装置は、出力トランジスタと同期整流トランジスタをオン/オフして入力電圧から出力電圧を生成するスイッチング電源用であり、前記出力トランジスタをオンして前記同期整流トランジスタをオフするときに制御信号を第1論理レベルとし、前記出力トランジスタをオフして前記同期整流トランジスタをオンするときに前記制御信号を第2論理レベルとする一方、前記制御信号を前記第2論理レベルとした後に入力待受状態となる入出力回路と;前記入力待受状態で前記制御信号が前記第1論理レベルでも前記第2論理レベルでもない第3論理レベルに切り替えられたことを検出して軽負荷モードに移行する制御回路;を有する構成(第4の構成)とされている。
【0013】
また、本明細書中に開示されているスイッチング電源は、上記第1~第3いずれかの構成から成る駆動モジュールと、上記第4の構成から成る電源制御装置と、を有し、入力電圧から出力電圧を生成して負荷に供給する構成(第5の構成)とされている。
【0014】
なお、上記第5の構成から成るスイッチング電源において、前記駆動モジュールは、前記駆動モジュールがイネーブルとされるまで前記制御信号を機種毎の論理レベルに固定する論理レベル固定回路をさらに有し、前記電源制御装置は、前記駆動モジュールをイネーブルとするまで前記入出力回路を前記入力待受状態とし、前記制御信号の論理レベルから前記駆動モジュールの機種判別ないし接続判定を行う構成(第6の構成)にするとよい。
【0015】
また、上記第5または第6の構成から成るスイッチング電源において、前記電源制御装置は、前記駆動モジュールをディセーブルとするときに前記駆動モジュールのイネーブル信号を第1論理レベルとし、前記駆動モジュールを第1動作モードでイネーブルとするときに前記イネーブル信号を第2論理レベルとし、前記駆動モジュールを第2動作モードでイネーブルとするときに前記イネーブル信号を第3論理レベルとする構成(第7の構成)にするとよい。
【0016】
また、上記第5~第7いずれかの構成から成るスイッチング電源において、前記駆動モジュールは、n相並列(ただしn≧2)に設けられ、前記電源制御装置は、各相の前記駆動モジュールを2π/nずつ位相をずらして駆動する構成(第8の構成)にするとよい。
【0017】
また、上記第5~第8いずれかの構成から成るスイッチング電源において、前記電源制御装置から前記駆動モジュールまでの第1配線長は、前記駆動モジュールから前記負荷までの第2配線長よりも大きい構成(第9の構成)にするとよい。
【0018】
また、上記第5~第9いずれかの構成から成るスイッチング電源において、前記電源制御装置は、リモートセンス方式で検出された前記負荷の両端間電圧に応じて出力帰還制御を行う構成(第10の構成)にするとよい。
【発明の効果】
【0019】
本明細書中に開示されている発明によれば、必要な信号や外付け部品の少ない駆動モジュール及び電源制御装置、並びに、これらを用いたスイッチング電源を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】スイッチング電源の全体構成を示す図
図2】スイッチング電源の要部構成を示す図
図3】論理レベル切替回路の一構成例を示す図
図4】論理レベル固定回路の第1構成例(プルダウン型)を示す図
図5】論理レベル固定回路の第2構成例(プルダウン型)を示す図
図6】入出力回路の一構成例を示す図
図7】スイッチング電源の一動作例を示す図
図8】位相シフト制御の一例を示す図
図9】駆動モジュール(小電流型)の端子配置例を示す図
図10】駆動モジュール(大電流型)の端子配置例を示す図
図11】スイッチング電源の第1従来例を示す図
図12】スイッチング電源の第2従来例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
<スイッチング電源(全体構成)>
図1は、スイッチング電源の全体構成を示す図である。本構成例のスイッチング電源1は、入力電圧PVINから出力電圧Voを生成して負荷Z(CPU[central processing unit]など)に供給する多相(本図では4相)型の降圧DC/DCコンバータであり、4相並列に接続された駆動モジュール10(1)~10(4)と、電源制御装置20と、インダクタL1(1)~L1(4)と、キャパシタCi及びCoと、を有する。
【0022】
駆動モジュール10(1)~10(4)は、それぞれ、スイッチ出力段を形成する一対のMOSFETと、これらを駆動するための駆動論理回路(いずれも不図示)とを1パッケージに集積化した半導体装置(いわゆるDrMOS)である。
【0023】
上記一対のMOSFETは、入力電圧PVINの印加端と接地電圧PGNDの印加端との間に接続されており、基本的に、制御信号PWM(1)~PWM(4)に応じてオン/オフ制御される。その結果、駆動モジュール10(1)~10(4)から、入力電圧PVINと接地電圧PGNDとの間でパルス駆動されるスイッチ電圧SW(1)~SW(4)が出力され、これらをインダクタL1(1)~L1(4)及びキャパシタCoで合算、整流及び平滑することにより、負荷Zへの出力電圧Voが生成される。
【0024】
なお、駆動モジュール10(1)~10(4)を用いることにより、上記一対のMOSFETや駆動論理回路を個別に設けた場合と比べて、スイッチング電源1の回路規模を大幅に縮小することが可能となる。
【0025】
また、負荷Zに大きい出力電流Io(例えばAオーダー)を流す必要がある場合、駆動モジュール10(1)~10(4)は、できるだけ負荷Zの近傍に配置することが望ましい。言い換えると、電源制御装置20から駆動モジュール10(1)~10(4)までの配線長(=制御信号PWM(1)~PWM(4)の伝送経路長)は、駆動モジュール10(1)~10(4)から負荷Zまでの配線長(=インダクタ電流IL(1)~IL(4)の伝送経路長)よりも大きくし、制御信号PWM(1)~PWM(4)をできるだけ長く引き回して、インダクタ電流IL(1)~IL(4)の流れる経路を短縮する方が良い。
【0026】
このような構成であれば、駆動モジュール10(1)~10(4)の後段で生じる配線抵抗由来の電圧降下を極力抑えることができるので、出力電圧Voの安定性を高めることが可能となる。
【0027】
電源制御装置20は、スイッチング電源1の制御主体となる半導体装置(いわゆるPMIC[power management IC])である。例えば、電源制御装置20は、リモートセンス方式で検出された負荷Zの両端間電圧(=リモートセンス信号S+及びS-の差分値)に応じて、駆動モジュール10(1)~10(4)それぞれの制御信号PWM(1)~PWM(4)を生成することにより、所望の出力電圧Voを得るための出力帰還制御を行う。
【0028】
また、電源制御装置20は、駆動モジュール10(1)~10(4)それぞれに共通する3値(H/M/L)のイネーブル信号ENを出力する機能も備えている。
【0029】
EN=L(例えばGND)であるときには、駆動モジュール10(1)~10(4)がディセーブルとされる。
【0030】
EN=H(例えばVCC)であるときには、駆動モジュール10(1)~10(4)が第1動作モード(=常に制御信号PWM(1)~PWM(4)に応じてスイッチ電圧SW(1)~SW(4)のパルス駆動を行う動作モード)でイネーブルとされる。
【0031】
また、EN=M(例えばVCC/2)であるときには、駆動モジュール10(1)~10(4)が第2動作モード(=インダクタ電流IL(1)~IL(4)のゼロクロス検出時において、制御信号PWM(1)~PWM(4)を自らMレベルに切り替えると共に、スイッチ電圧SW(1)~SW(4)を自ら出力ハイインピーダンス状態(HiZ)とする動作モード)でイネーブルとされる。
【0032】
さらに、電源制御装置20は、EN=LまたはEN=Mであるときに、適宜、制御信号PWM(1)~PMW(4)の入力待受状態となり、それぞれの論理レベルを検出することによって、重負荷モード(PWM[pulse width modulation]モード)から軽負荷モード(PFM[pulse frequency modulation]モード)への移行処理を行ったり、或いは、駆動モジュール10(1)~10(4)の機種判別ないしは接続判定を行ったりする機能も備えている(詳細は後述)。
【0033】
インダクタL1(1)~L1(4)それぞれの第1端は、それぞれ、駆動モジュール10(1)~10(4)それぞれの出力端に接続されている。インダクタL1(1)~L1(4)それぞれの第2端は、いずれも、出力電圧Voの印加端(=負荷Zの高電位端)に接続されている。なお、インダクタL1(1)~L1(4)には、それぞれ、インダクタ電流IL(1)~IL(4)が流れるので、これらを足し合わせた出力電流Io(=IL(1)+IL(2)+IL(3)+IL(4))を負荷Zに供給することができる。
【0034】
キャパシタCiは、入力電圧PVINの印加端と接地電圧PGNDの印加端との間に接続されており、入力電圧PVINを平滑化する。
【0035】
キャパシタCoは、出力電圧Voの印加端と接地電圧PGNDの印加端との間(=負荷Zの両端間)に接続されており、出力電圧Voを平滑化する。
【0036】
<スイッチング電源(要部構成)>
図2は、スイッチング電源1の要部構成(特に、駆動モジュール10及び電源制御装置20の内部構成)を示す図である。なお、駆動モジュール10は、4相(4チャネル)の駆動モジュール10(1)~10(4)のうち、いずれと理解してもよい。制御信号PWM、スイッチ電圧SW、インダクタL1、インダクタ電流ILについても同様であり、それぞれ、制御信号PWM(1)~PWM(4)、スイッチ電圧SW(1)~SW(4)、インダクタL1(1)~L1(4)、インダクタ電流IL(1)~IL(4)のいずれかに相当する。
【0037】
まず、駆動モジュール10について説明する。本構成例の駆動モジュール10は、スイッチ出力段11と、駆動論理回路12と、ゼロクロス検出回路13と、論理レベル切替回路14と、を単一のパッケージに集積化して成る。
【0038】
スイッチ出力段11は、出力トランジスタM1(例えばPチャネル型MOS電界効果トランジスタ)と、同期整流トランジスタM2(例えばNチャネル型MOS電界効果トランジスタ)と、を含む。トランジスタM1のソースは、入力電圧PVINの印加端に接続されている。トランジスタM1及びM2それぞれのドレインは、スイッチ電圧SWの印加端(=駆動モジュール10の出力端)に接続されている。トランジスタM2のソースは、接地電圧PGNDの印加端に接続されている。
【0039】
トランジスタM1及びM2それぞれのゲートには、それぞれ、ゲート信号G1及びG2が入力されている。なお、トランジスタM1は、G1=Lであるときにオンし、G1=Hであるときにオフする。また、トランジスタM2は、G2=Lであるときにオンし、G2=Hであるときにオンする。
【0040】
例えば、トランジスタM1をオンしてトランジスタM2をオフしたときには、SW=H(≒PVIN)となる。逆に、トランジスタM1をオフしてトランジスタM2をオンしたときには、SW=L(≒PGND)となる。また、トランジスタM1及びM2双方をオフしたときには、SW=HiZ(出力ハイインピーダンス状態)となる。
【0041】
なお、トランジスタM1としては、PMOSFETに代えてNMOSFETを用いても構わない。ただし、その場合には、ゲート信号G1のHレベルを入力電圧PVINよりも高めるための昇圧手段(チャージポンプ回路やブートストラップ回路)が必要となる。
【0042】
また、トランジスタM1及びM2は、駆動モジュール10の後段に外付けしてもよい。
【0043】
駆動論理回路12は、制御信号PWMとゼロクロス検出信号ZXに応じて、ゲート信号G1及びG2を生成する。より具体的に述べると、駆動論理回路12は、基本的に、PWM=H(例えばVCC)であるときにG1=G2=Lとし、トランジスタM1をオンしてトランジスタM2をオフする一方、PWM=L(例えばGND)であるときにG1=G2=Hとし、トランジスタM1をオフしてトランジスタM2をオンする。
【0044】
ただし、トランジスタM2のオン期間(PWM=L、G1=G2=H)において、ゼロクロス検出信号ZXがHレベル(=ゼロクロス検出時の論理レベル)となった場合、駆動論理回路12は、G1=H、G2=Lとし、トランジスタM1及びM2双方をオフする。
【0045】
ゼロクロス検出回路13は、トランジスタM2のオン時に流れるインダクタ電流ILのゼロクロス(=インダクタ電流ILがゼロ値またはその近傍値となった状態)を検出し、その検出結果としてゼロクロス検出信号ZXを生成する。例えば、ゼロクロス検出信号ZXは、ゼロクロス未検出時にLレベルとなり、ゼロクロス検出時にHレベルとなる。
【0046】
論理レベル切替回路14は、インダクタ電流ILのゼロクロス検出時(ZX=H)に、制御信号PWMをHレベル(例えばVCC)でもLレベル(例えばGND)でもないMレベル(例えばVCC/2)に切り替える(詳細は後述)。
【0047】
なお、駆動モジュール10には、上記回路ブロック以外にも、例えば、電源電圧VCCから内部基準電圧REFを生成する基準電圧生成回路、ないしは、各種保護回路(UVLO[under voltage lock out]、OCP[over current protection]、並びに、TSD[thermal shut down]など)を集積化してもよい。
【0048】
次に、電源制御装置20について説明する。本構成例の電源制御装置20は、制御回路21と入出力回路22を集積化して成る。
【0049】
制御回路21は、入力電圧PVINから所望の出力電圧Voが得られるように、制御信号PWMの出力帰還制御(オンデューティ制御)を行う主体である。また、制御回路21は、入出力回路22を入力待受状態として制御信号PWMの論理レベルを監視し、その監視結果に応じてスイッチング電源1の動作モード切替や駆動モジュール10の機種判別ないしは接続判定を行う機能も備えている(詳細は後述)。
【0050】
入出力回路22は、制御信号PWMの入出力を行う回路ブロックであり、制御回路21からの指示に応じて、その動作状態(出力状態または入力待受状態)が切り替えられる。入出力回路22が出力状態とされている場合、入出力回路22は、トランジスタM1をオンしてトランジスタM2をオフするときにPWM=Hとし、トランジスタM1をオフしてトランジスタM2をオンするときにPWM=Lとする。一方、入出力回路22が入力待受状態とされている場合、入出力回路22は、制御信号PWMの論理レベル(H/L/M)を検出し、その検出結果を制御回路21に出力する(詳細は後述)。
【0051】
<論理レベル切替回路(Mレベル出力回路)>
図3は、論理レベル切替回路14の一構成例を示す図である。論理レベル切替回路14は、抵抗141~143と、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタ144及び145と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ146と、インバータ147と、を含む。
【0052】
抵抗141及び143それぞれの第1端とトランジスタ145のソース及びバックゲートは、電源電圧VCC(例えば3V)の印加端に接続されている。抵抗141の第2端と抵抗142の第1端は、中間電圧VM(例えばVCC/2=1.5V)の印加端として、トランジスタ144のゲートに接続されている。抵抗142の第2端とトランジスタ144のドレインは、接地電圧GNDの印加端に接続されている。抵抗143の第2端とトランジスタ144のソース及びバックゲートは、トランジスタ146のゲートに接続されている。トランジスタ146のドレインは、トランジスタ145のドレインに接続されている。トランジスタ146のソースとバックゲートは、制御信号PWMの印加端に接続されている。トランジスタ145のゲートは、インバータ147の出力端に接続されている。インバータ147の入力端は、ゼロクロス検出信号ZXの印加端(=ゼロクロス検出回路13を構成するコンパレータ131の出力端)に接続されている。コンパレータ131の非反転入力端(+)は、スイッチ電圧SWの印加端に接続されている。コンパレータ131の反転入力端(-)は、接地電圧PGNDの印加端に接続されている。
【0053】
トランジスタM2のオン期間(PWM=L、G1=G2=H)において、正方向(=トランジスタM2からインダクタL1に向かう方向)のインダクタ電流ILが流れているときには、SW<PGNDとなるので、ZX=Lとなる。従って、トランジスタ145がオフするので、トランジスタ146にドレイン電流が流れず、PWM=L(例えばGND)のままとなる。
【0054】
一方、インダクタ電流ILが負方向(=インダクタL1からトランジスタM2に向かう方向)に流れ始めると、SW>PGNDとなるので、ZX=Hとなる。従って、トランジスタ145がオンするので、トランジスタ146にドレイン電流が流れて、そのソースが中間電圧VM(=VM+Vth-Vth)にバイアスされる。このような動作により、制御信号PWMがLレベル(GND)からMレベル(VM)に切り替えられる。
【0055】
<論理レベル固定回路>
また、駆動モジュール10には、機種毎の識別情報(例えば、駆動モジュール10が大電流出力型であるのか、小電流出力型であるのかを識別するための情報)を電源制御装置20に通知する手段として、プルダウン型(図4)またはプルアップ型(図5)の論理レベル固定回路15をさらに集積化しておくとよい。以下、各図を参照しながら、それぞれの回路構成及び動作について説明する。
【0056】
図4は、論理レベル固定回路15の第1構成例(プルダウン型)を示す図である。本構成例の論理レベル固定回路15は、例えば、大電流出力型(Io=15A)の駆動モジュール10に集積化される回路ブロックであり、抵抗151と、インバータ152と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ153と、インバータ154と、を含む。
【0057】
抵抗151の第1端は、制御信号PWMの印加端に接続されている。抵抗151の第2端とインバータ152の入力端は、トランジスタ153のドレインに接続されている。インバータ152の出力端は、駆動論理回路12の入力端に接続されている。トランジスタ153のソース及びバックゲートは、接地電圧GNDの印加端に接続されている。トランジスタ153のゲートは、インバータ154の出力端に接続されている。インバータ154の入力端は、イネーブル信号ENの印加端に接続されている。
【0058】
イネーブル信号ENがHレベルまたはMレベル(=駆動モジュール10のイネーブル時における論理レベルであり、例えばVCCまたはVCC/2)であるときには、トランジスタ153がオフする。従って、制御信号PWMは、プルダウンされることなく、駆動論理回路12に入力される。
【0059】
一方、イネーブル信号ENがLレベル(=駆動モジュール10のディセーブル時における論理レベルであり、例えばGND)であるときには、トランジスタ153がオンする。従って、制御信号PWMは、Lレベル(≒GND)にプルダウンされる。
【0060】
図5は、論理レベル固定回路の第2構成例(プルアップ型)を示す図である。本構成例の論理レベル固定回路15は、例えば、小電流出力型(Io=5A)の駆動モジュール10に集積化される回路ブロックであり、抵抗151と、インバータ152と、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタ155と、を含む。
【0061】
抵抗151の第1端は、制御信号PWMの印加端に接続されている。抵抗151の第2端とインバータ152の入力端は、トランジスタ155のドレインに接続されている。インバータ152の出力端は、駆動論理回路12の入力端に接続されている。トランジスタ155のソース及びバックゲートは、電源電圧VCCの印加端に接続されている。トランジスタ155のゲートは、イネーブル信号ENの印加端に接続されている。
【0062】
イネーブル信号ENがHレベルまたはMレベル(=駆動モジュール10のイネーブル時における論理レベルであり、例えばVCCまたはVCC/2)であるときには、トランジスタ155がオフする。従って、制御信号PWMは、プルアップされることなく、駆動論理回路12に入力される。
【0063】
一方、イネーブル信号ENがLレベル(=駆動モジュール10のディセーブル時における論理レベルであり、例えばGND)であるときには、トランジスタ155がオンする。従って、制御信号PWMは、Hレベル(≒VCC)にプルアップされる。
【0064】
このように、論理レベル固定回路15は、駆動モジュール10がディセーブル(EN=L)とされている間、言い換えれば、駆動モジュール10がイネーブル(EN=HないしはEN=M)とされるまでの間、制御信号PWMを機種毎の論理レベル(HレベルまたはLレベル)に固定する。
【0065】
<入出力回路>
図6は、入出力回路22の一構成例を示す図である。本構成例の入出力回路22は、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタ221と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ222及び223と、抵抗224と、論理レベル検出部225と、を含む。
【0066】
トランジスタ221のソース及びバックゲートは、電源電圧VCCの印加端に接続されている。トランジスタ221及び222それぞれのドレインと抵抗224の第1端は、制御信号PWMの入出力端に接続されている。抵抗224の第2端は、トランジスタ223のドレインに接続されている。トランジスタ222及び223それぞれのソース及びバックゲートは、接地電圧GNDの印加端に接続されている。
【0067】
なお、トランジスタ221~223それぞれのゲートには、制御回路21からゲート信号S1~S3が入力されている。
【0068】
例えば、制御信号PWMのHレベル出力時には、S1=S2=S3=Lとされる。その結果、トランジスタ221がオンしてトランジスタ222及び223がオフするので、PWM=H(≒VCC)となる。一方、制御信号PWMのLレベル出力時には、S1=S2=HかつS3=Lとされる。その結果、トランジスタ222がオンしてトランジスタ221及び223がオフするので、PWM=L(≒GND)となる。
【0069】
また、制御信号PWMの入力待受時には、S1=S3=HかつS2=Lとされる。その結果、トランジスタ221及び222がオフしてトランジスタ223がオンするので、制御信号PWMが抵抗224を介してプルダウンされる。従って、制御信号PWMは、論理レベル切替回路14(図3)または論理レベル固定回路15の動作状態、若しくは、駆動モジュール15の接続状態に応じた論理レベルとなる(詳細は後述)。
【0070】
論理レベル検出部225は、入出力回路22が入力待受状態とされているときに、制御信号PWMの論理レベル(H/L/M)を検出し、その検出結果を論理レベル検出信号S4として制御回路21に出力する。
【0071】
<タイミングチャート>
図7は、スイッチング電源1の一動作例(起動シーケンス)を示すタイミングチャートであり、上から順に、電源電圧VCC、イネーブル信号EN、制御信号PWM(上段:論理レベル固定回路15がプルダウン型(図4)である場合、下段:論理レベル固定回路15がプルアップ型(図5)である場合)、スイッチ電圧SW、ゼロクロス検出信号ZX、並びに、内部基準電圧REFが描写されている。
【0072】
時刻t1以前には、イネーブル信号ENがLレベルとされている。このとき、電源制御装置20の入出力回路22は、先述の入力待受状態となるので、制御信号PWMの論理レベル(H/L/M)が検出される。
【0073】
ここで、PWM=Lであるときには、論理レベル固定回路15がプルダウン型(図4)であることから、例えば、駆動モジュール10を大電流出力型と判別することができる。一方、PWM=Hであるときには、論理レベル固定回路15がプルアップ型(図5)であることから、例えば、駆動モジュール10を小電流出力型と判別することができる。
【0074】
このような駆動モジュール10の機種判別を行うことにより、電源制御装置20における制御パラメータ(出力電流帰還ループのフィードバック係数や位相補償量など)を最適値に切り替えることが可能となる。
【0075】
また、スイッチング電源1の最大駆動相数は4相であるが、負荷Zに必要な出力電流Ioが小さいときには、電流供給能力のオーバースペックを解消するために、スイッチング電源1の駆動相数を減らす場合もあり得る。その場合、駆動モジュール10が接続されない入出力回路22の入出力端(=制御信号PWMの入出力端)は、HレベルでもLレベルでもないMレベル(例えばVCC/2)にプルアップすることが望ましい。
【0076】
このような構成とすることにより、EN=L時の入力待受状態において、PWM=Mである相については、駆動モジュール10が接続されていないと判定することができる。従って、実際の駆動相数(駆動チャネル数)に応じた位相シフト制御(詳細は後述)を行うことが可能となる。
【0077】
なお、上記した駆動モジュール10の機種判別並びに接続判定は、電源電圧VCCが十分に立ち上がり、制御信号PWMの論理レベルが確定した後に実施することが望ましく、例えば、図中の破線枠で示したように、イネーブル信号ENをLレベルからHレベルに立ち上げるタイミング(時刻t1)で実施するとよい。
【0078】
時刻t1において、イネーブル信号ENがHレベルに立ち上げられると、内部基準電圧REFの生成が開始される。ただし、イネーブル信号ENがハイレベルに立ち上げられた後も、内部基準電圧REFの起動待機時間Twait(例えば64μs)が経過する時刻t2までは、駆動モジュール10が動作停止状態(出力ハイインピーダンス状態)に維持されたままとなる。
【0079】
次に、時刻t2~t3(EN=H)に着目して、駆動モジュール10が第1動作モード(=常に制御信号PWMに応じてスイッチ電圧SWのパルス駆動を行う動作モード)でイネーブルとされているときの動作説明を行う。
【0080】
この場合、電源制御装置20の入出力回路22は、常に出力状態(=図6のトランジスタ223がオフされるとともに、論理レベル検出部225が無効とされた状態)に固定される。従って、負荷Zが軽くなっても、スイッチング電源1が重負荷モード(PWMモード)から軽負荷モード(PFMモード)に切り替えられることはなく、一定のスイッチング周波数で制御信号PWMのスイッチングパルスが生成し続けられることになる。
【0081】
次に、時刻t3~t4(EN=M)に着目して、駆動モジュール10が第2動作モード(=インダクタ電流ILのゼロクロス検出時において、制御信号PWMを自らMレベルに切り替えるとともに、スイッチ電圧SWを自ら出力ハイインピーダンス状態(HiZ)とする動作モード)でイネーブルとされているときの動作説明を行う。
【0082】
この場合、電源制御装置20の入出力回路22は、制御信号PWMがHレベルからLレベルに切り替わった後、適切なタイミングで入力待受状態(=図6のトランジスタ221及び223がいずれもオフされ、かつ、トランジスタ223がオンされるとともに、論理レベル検出部225が有効とされた状態)に切り替えられ、制御信号PWMの論理レベル(H/L/M)を検出する状態となる。
【0083】
従って、トランジスタM2のオン期間において、ゼロクロス検出信号ZXがHレベルに立ち上がり、制御信号PWMがLレベルからMレベルに切り替えられた場合、電源制御装置20(特に制御回路21)では、駆動モジュール10でインダクタ電流ILのゼロクロスが検出されたことを認識し、スイッチング電源1を重負荷モード(PWMモード)から軽負荷モード(PFMモード)に遅滞なく移行させることができる。従って、制御信号PWMのスイッチングパルスを間引くなどして軽負荷時の効率を高めることが可能となる。
【0084】
なお、ゼロクロス検出信号ZXが再びLレベルに立ち下がった後、制御信号PWMは、論理レベル切替回路14のソース能力のみでMレベルに維持された状態となる。従って、これ以降における制御信号PWMのパルス駆動に支障を来すことはない。
【0085】
また、当然のことながら、駆動モジュール10が第2動作モード(EN=M)でイネーブルとされた場合でも、ゼロクロス検出信号ZXがHレベルに立ち上がらなければ、制御信号PWMがMレベルに切り替えられることはなく、スイッチング電源1が重負荷モード(PWMモード)から軽負荷モード(PFMモード)に切り替えられることもない。
【0086】
以上で説明したように、駆動モジュール10にゼロクロス検出回路13と論理レベル切替回路14(Mレベル出力回路)を組み込むと共に、電源制御装置20に3値(H/M/L)対応の入出力回路22を組み込んだ構成であれば、既存の制御信号PWMを流用して駆動モジュール10から電源制御装置20へのゼロクロス検出通知を行うことができる。
【0087】
従って、電流検出用の外付け部品(抵抗やキャパシタ)が不要となることはもちろん、1相(1チャネル)の駆動モジュール10毎に必要な信号本数を僅か1本にまで削減することが可能となる。
【0088】
<位相シフト制御>
図8は、駆動相数(駆動チャネル数)に応じた位相シフト制御の一例を示すタイミングチャートであり、上から順番に、4相駆動時の制御信号PWM(1)~PWM(4)、3相駆動時の制御信号PWM(1)~PWM(3)、2相駆動時の制御信号PWM(1)及びPWM(2)、並びに、1相駆動時の制御信号PWM(1)が描写されている。
【0089】
スイッチング周期をT(=2π)とした場合、4相駆動時には、制御信号PWM(1)~PWM(4)がT/4(=π/2)ずつ位相をずらして生成される。また、3相駆動時には、制御信号PWM(1)~PWM(3)がT/3(=2π/3)ずつ位相をずらして生成され、2相駆動時には、制御信号PWM(1)及びPWM(2)がT/2(=π)ずつ位相をずらして生成される。すなわち、電源制御装置20は、n相(ただしn≧2)の駆動モジュール10(1)~10(n)を2π/nずつ位相をずらして駆動する。なお、1相駆動時には、制御信号PWM(1)のみが生成される。
【0090】
<端子配置>
プリント配線基板上における駆動モジュール10の実装面積を縮小するためには、駆動モジュール10のパッケージとして、例えば、ボンディングワイヤを用いた内部配線を行うことなく半導体チップの一部をそのまま露出したWLCSPを用いることが望ましい。以下では、WLCSP採用時の端子配置について説明する。
【0091】
図9は、駆動モジュール10(小電流出力型)の端子配置例を示す図であり、駆動モジュール10を表面側から透視したときの端子配置が描写されている。以下、紙面の上下左右方向を駆動モジュール10の上下左右方向と定義して説明する。
【0092】
駆動モジュール10の裏面には、縦5行(上から下に、第A行、第B行、第C行、第D行、第E行)×横6列(左から右に、第1列~第6列)に複数の外部端子が配置されている。以下の説明では、第x行×第y列の位置を「位置xy」と呼ぶ。
【0093】
第1列に着目すると、位置A1及びE1には、CRN端子(=不使用のコーナー端子)が配置されている。位置B1には、ISENSE端子(=OCP用の電流検出端子)が配置されている。位置C1には、GND端子(=接地電圧GNDの印加端子)が配置されている。位置D1には、TEMP端子(=TSD用の温度検出端子)が配置されている。
【0094】
第2列に着目すると、位置A2には、EN端子(=イネーブル信号ENの入力端子)が配置されている。位置B2は、ブランクとされている。位置C2及びD2には、RSVD端子(=不使用のリザーブ端子)が配置されている。位置E2には、PWM端子(=制御信号PWMの入出力端子)が配置されている。
【0095】
第3列に着目すると、位置A3、位置B3、位置C3、及び、位置D3には、PVIN端子群(=入力電圧PVINの印加端子群)が配置されている。位置E3には、VCC端子(=電源電圧VCCの印加端子)が配置されている。
【0096】
第4列及び第5列には、SW端子群(=スイッチ電圧SWの出力端子群)が配置されている。第6列には、PGND端子(=接地電圧PGNDの印加端子)が配置されている。
【0097】
本図で示すように、SW端子群の少なくとも一部(位置A4及びA5、位置B4及びB5、位置C4及びC5、位置D4及びD5)は、パッケージの平面視において、PVIN端子群(位置A3、位置B3、位置C3、位置D3)とPGND端子群(位置A6、位置B6、位置C6、位置D6)との間に配列されている。
【0098】
このような端子配置を採用することにより、駆動モジュール10が実装されるプリント配線基板上では、PVIN端子群及びPGND端子群にそれぞれ接続されるメタル配線ML1及びML2を駆動モジュール10の上方向に延出するように敷設し、SW端子群に接続されるメタル配線ML3を駆動モジュール10の下方向に延出するように敷設することができる。従って、メタル配線ML1及びML2とメタル配線ML3の相互干渉を考慮する必要がないので、配線レイアウトの自由度が高まる。また、メタル配線ML1及びML2相互間には、SW端子群を挟んだ分だけギャップが存在するので、キャパシタCiを駆動モジュール10の近傍に配置することも容易となる。
【0099】
図10は、駆動モジュール10(大電流出力型)の端子配置例を示す図であり、駆動モジュール10を表面側から透視したときの端子配置が描写されている。以下、紙面の上下左右方向を駆動モジュール10の上下左右方向と定義して説明する。
【0100】
駆動モジュール10の裏面には、縦5行(上から下に、第A行、第B行、第C行、第D行、第E行)×横10列(左から右に、第1列~第10列)に複数の外部端子が配置されている。以下の説明では、第x行×第y列の位置を「位置xy」と呼ぶ。
【0101】
第1列~第4列の端子配置は、図9と同様であるので、重複した説明を割愛する。
【0102】
第5列には、PVIN端子群が配置されている。第6列及び第7列には、SW端子群が配置されている。第8列には、PGND端子群が配置されている。第9列には、SW端子群が配置されている。
【0103】
第10列に着目すると、位置A10及びE10には、CRN端子(=不使用のコーナー端子)が配置されている。位置B10、位置C10、及び、位置D10には、PGND端子群が配置されている。
【0104】
このように、PVIN端子群、SW端子群、及び、PGND端子群の本数を増やすことにより、大きな出力電流Ioを流すことが可能となる。また、先の図9と同じく、SW端子群の少なくとも一部(第6列及び第7列)は、パッケージの平面視において、PVIN端子群(第5列)とPGND端子群(第8列)との間に配列されている。従って、駆動モジュール10が実装されるプリント配線基板上では、PVIN端子群及びPGND端子群にそれぞれ接続されるメタル配線ML4及びML5とSW端子群に接続されるメタル配線ML6との相互干渉を考慮せずに済むので、配線レイアウトの自由度が高まる。また、メタル配線ML4及びML5相互間のギャップにキャパシタCiを実装すれば、駆動モジュール10とキャパシタCiとの距離を縮めることもできる。
【0105】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本明細書中に開示されている発明は、例えば、大電流を消費する負荷(CPUなど)に電力供給を行う多相型のスイッチング電源に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0107】
1 スイッチング電源
10、10(1)~10(4) 駆動モジュール(DrMOS)
11 スイッチ出力段
12 駆動論理回路
13 ゼロクロス検出回路
131 コンパレータ
14 論理レベル切替回路
141~143 抵抗
144、145 Pチャネル型MOS電界効果トランジスタ
146 Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ
147 インバータ
15 論理レベル固定回路
151 抵抗
152 インバータ
153 Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ
154 インバータ
155 Pチャネル型MOS電界効果トランジスタ
20 電源制御装置(PMIC)
21 制御回路
22 入出力回路
221 Pチャネル型MOS電界効果トランジスタ
222、223 Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ
224 抵抗
225 論理レベル検出部
Ci、Co キャパシタ
L1、L1(1)~L1(4) インダクタ
M1 出力トランジスタ(Pチャネル型MOS電界効果トランジスタ)
M2 同期整流トランジスタ(Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ)
ML1~ML6 メタル配線
Z 負荷(CPU)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12