(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】流量制御弁および蒸発燃料処理装置
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
F02M25/08 D
F02M25/08 311G
(21)【出願番号】P 2018231056
(22)【出願日】2018-12-10
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】592056908
【氏名又は名称】浜名湖電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 浩史
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-121790(JP,A)
【文献】特開昭58-191383(JP,A)
【文献】特開2017-44336(JP,A)
【文献】特開2014-92172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
F16K 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク(11)と、前記燃料タンク内で発生した蒸発燃料を吸着するキャニスタ(12)とを備える蒸発燃料処理装置(101)において、前記キャニスタと前記燃料タンクとをつなぐべーパ通路(16)に設けられる流量制御弁であって、
燃料タンク側流路(26)からキャニスタ側流路(27)へと蒸発燃料が流れる流路を有するハウジング(21)と、
前記キャニスタ側流路へ蒸発燃料が通過しないように前記燃料タンク側流路と前記キャニスタ側流路とを遮断する、または前記キャニスタ側流路へ蒸発燃料が通過するように前記燃料タンク側流路と前記キャニスタ側流路とを連通させるために、前記ハウジングの弁座(28)に当接または離間可能に設けられるバルブ部材(22,51)と、
前記バルブ部材が前記弁座に当接または離間可能に往復移動するように駆動する駆動部(23)と、
前記駆動部と前記バルブ部材とを動力伝達可能に連結する動力伝達軸(24,54)に設けられ、送りねじ機構を構成する駆動部側ねじ部(38)と、
前記バルブ部材に設けられ前記駆動部側ねじ部にねじ結合し、前記駆動部側ねじ部と共に前記送りねじ機構を構成するバルブ側ねじ部(37)と、
前記駆動部に設けられ、前記バルブ部材の軸回りの回転を規制する回り止め機構を構成する駆動部側回り止め部(43)と、
前記駆動部側回り止め部に係合し、前記駆動部側回り止め部と共に前記回り止め機構を構成するバルブ側回り止め部(45)と、
を備え、
前記バルブ部材が前記弁座に当接するように移動する方向を正方向とした場合、前記駆動部側回り止め部における前記弁座側の端部(M1)を始点とし前記駆動部側ねじ部における前記弁座側の結合端部(M2)までの軸方向距離に正負を付した値をL1とし、前記バルブ側回り止め部における前記駆動部側の端部(V1)を始点とし前記バルブ側ねじ部における前記駆動部側の結合端部(V2)までの軸方向距離に正負を付した値をL2とすると、L1<L2の関係が成立する流量制御弁。
【請求項2】
前記バルブ部材は、閉弁時に前記弁座に当接するシール部(33)を有する底壁部(31)と、前記底壁部から前記駆動部側に延びて形成される筒状部(32)を有し、
前記バルブ側回り止め部は、前記筒状部の前記駆動部側の開口端部(44)に形成され、
前記バルブ側ねじ部は、前記筒状部の内周に形成され、
前記筒状部の内周であって、前記開口端部と前記バルブ側ねじ部との間には、前記駆動部側ねじ部とねじ結合不能に前記動力伝達軸(24)を収容する逃がし部(34)が形成されている請求項1に記載の流量制御弁。
【請求項3】
前記駆動部側回り止め部または前記バルブ側回り止め部のうちいずれか一方は、前記バルブ部材の往復動方向に直交する径方向において外側に張り出した係合凸部(45)であり、他方は、前記係合凸部と係合可能であり前記径方向において内側へ凹となる係合凹部(43)である請求項2に記載の流量制御弁。
【請求項4】
前記駆動部側ねじ部における前記弁座側の前記結合端部の位置は、前記駆動部側回り止め部における前記弁座側の前記端部よりも、軸方向において負側の位置にある請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載の流量制御弁。
【請求項5】
前記燃料タンク(11)と、
前記燃料タンク内で発生した蒸発燃料を吸着する前記キャニスタ(12)と、
請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の前記流量制御弁(1,10)と、
を備える蒸発燃料処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御弁および蒸発燃料処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料タンクの蒸発燃料(以下、ベーパとも言う)を回収し内燃機関の吸気系に供給可能な蒸発燃料処理装置が知られている。こうした蒸発燃料処理装置は、燃料タンクと、キャニスタと、燃料タンクとキャニスタとをつなぐベーパ通路に設けられる流量制御弁等を有している。流量制御弁は、車両の駐車中はベーパ通路を閉じ、給油中はベーパ通路を開ける等の動作をする。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の流量制御弁は、ステッピングモータを有し、送りネジ機構を介してバルブ体を駆動させ、バルブ体下部のシート部材を弁座に当接させたり弁座から離間させたりすることで流路を開閉する。バルブ体は、ステッピングモータ軸と一緒に回転しない様に、回り止め手段により軸回りに回り止めされた状態で、軸方向に移動可能に配置されている。回り止め手段は、例えば、駆動部側に形成される凹部に、バルブ体側に形成される凸部が周方向に係合することで構成される。
【0004】
送りねじ機構は、ステッピンクモータ軸に形成される雄ねじ部と、バルブ体が有する筒部の内周に形成される雌ねじ部とが螺合することで構成されている。ステッピンクモータ軸の先端は、回り止め手段よりも弁座側に突出した位置にあり、弁座側の先端まで雄ねじが形成されている。一方、雌ねじ部は、筒部においてステッピングモータ側の先端まで形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載の流量制御弁では、ステッピンクモータ軸とバルブ体の組み付けの際に、構造上、回り止め手段が結合するより先に送りねじ機構が結合する。このため、弁装置を組み付けるためには、雄ネジ側と雌ネジ側が同時に回転しないよう、どちらか一方の回転を規制する必要がある。よって、回り止め手段が結合するまでの間、例えばバルブ体の回転を規制する治具等が必要となる。すなわち、組み付け作業が繁雑であり時間もかかるため、非効率的であるという問題が生じていた。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、組み付け作業性を向上させることができる流量制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
流量制御弁は、燃料タンク(11)と、燃料タンク内で発生した蒸発燃料を吸着するキャニスタ(12)とを備える蒸発燃料処理装置(101)において、キャニスタと燃料タンクとをつなぐべーパ通路(16)に設けられる。
【0009】
流量制御弁は、ハウジング(21)と、バルブ部材(22,51)と、駆動部(23)と、駆動部側ねじ部(38)と、バルブ側ねじ部(37)と、駆動部側回り止め部(43)と、バルブ側回り止め部(45)と、を備える。ハウジングは、燃料タンク側流路(26)からキャニスタ側流路(27)へと蒸発燃料が流れる流路を有する。バルブ部材は、キャニスタ側流路へ蒸発燃料が通過しないように燃料タンク側流路とキャニスタ側流路とを遮断する、またはキャニスタ側流路へ蒸発燃料が通過するように燃料タンク側流路とキャニスタ側流路とを連通させるために、ハウジングの弁座(28)に当接または離間可能に設けられる。
【0010】
駆動部は、バルブ部材が弁座に当接または離間可能に往復移動するように駆動する。駆動部側ねじ部(38)は、駆動部とバルブ部材とを動力伝達可能に連結する動力伝達軸(24,54)に設けられ、送りねじ機構を構成する。バルブ側ねじ部は、バルブ部材に設けられ駆動部側ねじ部にねじ結合し、駆動部側ねじ部と共に送りねじ機構を構成する。駆動部側回り止め部は、駆動部に設けられ、バルブ部材の軸回りの回転を規制する回り止め機構を構成する。バルブ側回り止め部は、駆動部側回り止め部に係合し、駆動部側回り止め部と共に回り止め機構を構成する。
【0011】
バルブ部材が弁座に当接するように移動する方向を正方向とした場合、駆動部側回り止め部における弁座側の端部(M1)を始点とし駆動部側ねじ部における弁座側の結合端部(M2)までの軸方向距離に正負を付した値をL1とし、バルブ側回り止め部における駆動部側の端部(V1)を始点としバルブ側ねじ部における駆動部側の結合端部(V2)までの軸方向距離に正負を付した値をL2とすると、L1<L2の関係が成立する。
【0012】
本構成によれば、回り止め機構と送りねじ機構の位置を、L1<L2の関係が成立するように構成することで、弁を組み付ける際には、まず回り止め機構が係合した後に送りねじ機構が結合する。よって、例えば、回り止め機構が係合するまでの間、バルブ部材の軸回りの回転を規制する必要がなく、回転を規制するための治具等も不要である。すなわち、組み付け作業が容易かつ効率的となり、組み付け作業性を向上させることができる
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】蒸発燃料処理装置の構成の概略を示す図である。
【
図2】第1実施形態による閉弁時の流量制御弁を模式的に示す断面図である。
【
図4】第1実施形態による開弁時の流量制御弁を模式的に示す断面図である。
【
図5】第1実施形態によるバルブ部材をモータに組み付ける前の状態を示す図である。
【
図6】第1実施形態によるバルブ部材をモータに組み付ける途中の状態を示し、回り止め機構が係合した段階を示す図である。
【
図7】第1実施形態によるバルブ部材をモータに組み付ける途中の状態を示し、送りねじ機構が結合した段階を示す図である。
【
図8】第2実施形態による閉弁時の流量制御弁を模式的に示す断面図である。
【
図9】第2実施形態によるバルブ部材をモータに組み付ける前の状態を示す図である。
【
図10】第2実施形態によるバルブ部材をモータに組み付ける途中の状態を示し、回り止め機構が係合した段階を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
〈第1実施形態〉
[構成]
第1実施形態の構成について、
図1~
図3を参照しつつ説明する。
図1に示すように、蒸発燃料処理装置101は、流量制御弁1、燃料タンク11、キャニスタ12、パージ弁13、及びECU14などを備えている。
【0015】
燃料タンク11は、車両に搭載され、内燃機関18に供給される燃料を貯留する。キャニスタ12は、燃料タンク11内で発生する蒸発燃料を回収する不図示の吸着材を有する。キャニスタ12は、大気通路15を介して取り入れた空気を、ベーパ通路16を通ってキャニスタ12の吸着材に吸着された蒸発燃料と共に、パージ通路17を介して内燃機関18の吸気通路19へと送るパージ処理を行う。ベーパ通路16は、燃料タンク11とキャニスタ12をつなぐ通路であり、このベーパ通路16に流量制御弁1が設けられている。また、パージ通路17にはパージ弁13が設けられている。パージ弁13の開度に応じて、キャニスタ12から吸気通路19にパージされる蒸発燃料の量が調整される。
【0016】
ここで、例えば車両の駐車中では、流量制御弁1は、閉弁状態が維持されるため、燃料タンク11の蒸発燃料がキャニスタ12内に流入することはない。また、例えばタンクキャップが開けられ、燃料タンク11への給油が開始され、給油が終了するまでの間は、流量制御弁1は、開弁状態が維持される。このため、給油の際に、燃料タンク11内の蒸発燃料がベーパ通路16を通ってキャニスタ12内の吸着材に吸着される。このように、流量制御弁1は、燃料タンク11とキャニスタ12とを連通させるかどうかを制御するものである。ECU14は、流量制御弁1やパージ弁13と電気的に接続しており、各弁1,13の開閉動作を制御する。
【0017】
次に、流量制御弁1の構成について、
図2を参照しつつ説明する。なお、
図2は、基本的に切断面の後ろに見える線については省略した切断端面図であり、閉弁時の状態を示している。流量制御弁1は、ハウジング21、バルブ部材22、モータ23、モータシャフト24等を備えている。ハウジング21は、略円筒状の形状をなし、燃料タンク側流路26からキャニスタ側流路27へと蒸発燃料が流れる流路を有している。ハウジング21において、燃料タンク側流路口の縁部から、バルブ部材22の移動方向と直交する方向に延びる平面は、弁座28という。
【0018】
バルブ部材22は、キャニスタ側流路27へ蒸発燃料が通過しないように燃料タンク側流路26とキャニスタ側流路27とを遮断する、またはキャニスタ側流路27へ蒸発燃料が通過するように燃料タンク側流路26とキャニスタ側流路27とを連通させるための部材である。
【0019】
図2に示すように、バルブ部材22は、円板状をなす底壁部31と、筒状部32とを有している。底壁部31と筒状部32とは、共通の中心軸Cを有している。底壁部31は、筒状部32に対して弁座28側に位置しており、筒状部32と一体に設けられている。底壁部31の弁座28側には、ゴムシール部材33が底壁部31と一体に溶着されている。
【0020】
筒状部32の中心には、モータ23側から、シャフト挿入大径孔34と、シャフト挿入小径孔35とが、同軸上に連続して底壁部31まで形成されている。シャフト挿入大径孔34は、シャフト挿入小径孔35より径が大きい。シャフト挿入大径孔34の弁座側端部は、シャフト挿入小径孔35になだらかに連続するテーパ部36として形成されている。シャフト挿入小径孔35の内周には、雌ねじ部37が形成されている。雌ねじ部37は、「バルブ側ねじ部」に相当する。
【0021】
各挿入孔34,35内には、モータシャフト24が挿入されており、モータシャフト24の外周に形成された雄ねじ部38とシャフト挿入小径孔35の雌ねじ部37とがねじ結合している。雄ねじ部38は、「駆動部側ねじ部」に相当する。雄ねじ部38と雌ねじ部37とで、バルブ部材22を軸方向に往復動可能な送りねじ機構が構成されている。シャフト挿入大径孔34の内周には雌ねじ部37が形成されておらず、雄ねじ部38とねじ結合不能である。すなわち、シャフト挿入大径孔34は、雄ねじ部38とねじ結合不能にモータシャフト24を収容する「逃がし部」に相当する。
【0022】
モータ23は、ハウジング21の上壁部に接した状態で、ハウジング21の外側に設けられている。モータ23の駆動により、モータシャフト24が特定の方向に回転することで、バルブ部材22が弁座28に接近する閉方向、または弁座28から離間する開方向に動く。このようなバルブ部材22の往復移動によって、バルブ部材22のゴムシール部材33が、弁座28に当接または離間するようになっている。
図4は、バルブ部材22が弁座28に対して最も離間している開状態を示している。また、
図4中の矢印付きの曲線は、蒸発燃料の移動経路の一例を示している。
【0023】
再び、
図2、
図3を参照する。モータ23の底部には、モータシャフト24を収容する有底円筒状の円筒凸部41が、ハウジング21内部側へ突出して形成されている。円筒凸部41の底部の中心には、バルブ部材22の筒状部32を収容する収容孔42(
図3参照)が形成されている。収容孔42の外縁には、係合凹部43が、中心から径方向外側へ底部を一部切り欠くようにして形成されている。係合凹部43は、軸方向断面が矩形状をなし、中心軸Cを対称軸として180度対称位置に2つ設けられている。係合凹部43は、「駆動部側回り止め部」に相当する。
【0024】
バルブ部材22の筒状部32のモータ23側の開口端部44には、係合凸部45が、バルブ部材の往復動方向に直交する径方向において外側に張り出すように突出して形成されている。係合凸部45は、係合凹部43に係合可能に対応した形状であって、軸方向断面が係合凹部43と同様の矩形状をなし、中心軸を対称軸として180度対称位置に2つ設けられている。係合凸部45は、「バルブ側回り止め部」に相当する。
【0025】
係合凸部45が係合凹部43に係合することで、バルブ部材22は、モータシャフト24と一緒に回転しない様に、軸回りに回り止めされた状態で、軸方向に移動可能となっている。つまり、係合凸部45と係合凹部43とで、バルブ部材22の回り止め機構が構成されている。モータシャフト24は、モータ23の回転力をバルブ部材22に動力伝達可能にモータ23とバルブ部材22とを連結する。
【0026】
ここで、バルブ部材22が弁座28に当接するように移動する方向を正方向とする。正方向は、
図2では下方向である。係合凹部43の弁座28側の端部M1(以下、単に「モータ側回り止め端部M1」という)を始点とし、雄ねじ部38の弁座28側の結合端部M2(以下、単に「モータ側ねじ端部M2」という)までの軸方向距離に正負を付した値をL1とする。係合凸部45のモータ23側の端部V1(以下、単に「バルブ側回り止め端部V1」という) を始点とし、雌ねじ部37のモータ23側の結合端部V2(以下、単に「バルブ側ねじ端部V2」という)までの軸方向距離に正負を付した値をL2とする。このとき、L1<L2の関係が成り立っている。
【0027】
本実施形態において、モータシャフト24の突出端部、すなわちモータ側ねじ端部M2は、モータ側回り止め端部M1よりも、弁座28側へ、すなわち正方向へ突出している。また、L2は、シャフト挿入大径孔34の軸方向距離と一致する。
【0028】
[組み付け手順]
次に、上記流量制御弁1の組み付け手順について説明する。モータ23とバルブ部材22とを組み付ける際には、
図5に示すように、モータ23と離間した状態にあるバルブ部材22を、組付機等によりモータ23に徐々に接近させていく。このとき、モータシャフト24とバルブ部材22のシャフト挿入孔とは、概ね軸方向に対応した位置にある。
【0029】
図6は、回り止め機構が係合し始めた段階を示す図である。やがて、
図6に示すように、バルブ側回り止め端部V1と、モータ側回り止め端部M1とが軸方向において同じ位置となる。このとき、係合凸部45と係合凹部43の位置が軸方向に対応していれば、両者はそのまま係合する。また、係合凸部45と係合凹部43とが、軸方向において対応する位置になければ、バルブ部材22またはモータ23は適度に軸回りに回転されて、係合凸部45と係合凹部43とが位置合わせされる。そして、係合凸部45と係合凹部43とが係合する。
【0030】
回り止め機構が係合すると、バルブ部材22をさらにモータ23側へ挿入することが可能となる。そして、さらにバルブ部材22がモータ23側へ挿入されると、
図7に示すように、バルブ側ねじ端部V2がモータ側ねじ端部M2に当接する。すなわち、この段階にきてから送りねじ機構が結合し、組み付けが完了となる。このように、本実施形態では、まず回り止め機構が係合した後、送りねじ機構が結合する。
【0031】
[効果]
第1実施形態では、シャフト挿入大径孔34の内周は、雄ねじ部38とねじ結合不能にモータシャフト24を収容する逃がし部として形成されている。そして、L1<L2の関係が成立することから、組み付け時には、まず回り止め機構が係合した後に送りねじ機構が結合する。
【0032】
よって、例えば、回り止め機構が係合するまでの間、バルブ部材22の軸回りの回転を規制する必要がなく、回転を規制するための治具等も不要である。すなわち、組み付け作業を容易かつ効率的にすることができる。
【0033】
また、バルブ部材22の筒状部32において、雌ねじ部37が形成されていない逃がし部を形成するという簡単な構成で、好適に実施できる。
【0034】
〈第2実施形態〉
次に、第2実施形態の流量制御弁10について、
図8~
図10を参照して説明する。なお、第1実施形態と実質同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
図8に示すように、第2実施形態のバルブ部材51の筒状部52の中心には、シャフト挿入孔53が、モータ23側から底壁部31まで形成されている。シャフト挿入孔53の内周には、雌ねじ部37が形成されている。雌ねじ部37は、「バルブ側ねじ部」に相当する。第1実施形態の流量制御弁1において「逃がし部」に相当するシャフト挿入大径孔34は、第2実施形態の流量制御弁10においては形成されていない。
【0035】
さらに、モータシャフト54の突出端部、すなわちモータ側ねじ端部M2は、モータ側回り止め端部M1よりも、負側に位置している。第2実施形態において、バルブ側回り止め端部V1とバルブ側ねじ端部V2の軸方向位置は同じであり、L2は0である。ただし、L1は負の値であり、第1実施形態と同様に、L1<L2の関係が成り立っている。
【0036】
第2実施形態によれば、
図9に示すように、モータ23と離間した状態にあるバルブ部材51を組み付ける際に、
図10に示すように、送りねじ機構が結合する前に、まず回り止め機構が係合する。よって、第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0037】
〈他の実施形態〉
上記各実施形態において、回り止め機構を構成する係合凸部45と係合凹部43とを、中心軸Cを対称に2つ設けたが、軸対称の位置でなくても良いし、その数も、1つもしくは3つ以上の複数でも良い。また、係合凸部45と係合凹部43の軸方向断面形状は、矩形状でなくても良い。バルブ部材22の軸回りの回転が規制できるように、周方向に係合可能であれば良く、その他種々の形態が可能である。
【0038】
第2実施形態では、バルブ部材51において雌ねじ部37が形成されず、逃がし部を有さない構成としたが、逃がし部を有していても良い。すなわち、L1<L2の関係が成り立っていれば良く、その他、種々の形態が可能である。
【0039】
上記各実施形態の流量制御弁1,10は、蒸発燃料処理装置101においてキャニスタ12と燃料タンク11とをつなぐベーパ通路16に設けられるものとしたが、その他の流量制御弁として実施しても良いし、流体も蒸発燃料に限られない。
【0040】
上記各実施形態において、バルブ部材22,51は、底壁部31と筒状部32,52とを有するものとしたが、この形態に限られない。また、ねじ部のバックラッシュを防止する方向にバルブ部材22,51を付勢するコイルスプリングを、ハウジング21内に設けても良いし、バルブ部材22,51やハウジング21の形態は種々変更可能である。
【0041】
上記各実施形態では、モータシャフト24,54とバルブ部材22,51とが直接的に接続するものとしたが、例えばウォームギア機構やシャフト等の伝達機構を介して、モータ23の回転力をバルブ部材22,51に伝達するようにしても良い。この場合、一端がウォームギア機構に接続し、他端がバルブ部材22,51に接続するシャフトが「動力伝達軸」に相当する。
【0042】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 ・・・流量制御弁
22 ・・・バルブ部材
23 ・・・モータ(駆動部)
24 ・・・モータシャフト(動力伝達軸)
28 ・・・弁座
37 ・・・雌ねじ部(バルブ側ねじ部)
38 ・・・雄ねじ部(駆動部側ねじ部)
43 ・・・係合凹部(駆動部側回り止め部)
45 ・・・係合凸部(バルブ側回り止め部)