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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】水中油型睫毛用化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/891 20060101AFI20220928BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20220928BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
A61K8/891
A61K8/06
A61K8/92
A61K8/81
A61Q1/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018239745
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2020100590
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】森 洋輔
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-193490(JP,A)
【文献】特開2008-088112(JP,A)
【文献】特開2012-232914(JP,A)
【文献】特開2006-257052(JP,A)
【文献】国際公開第2018/066559(WO,A1)
【文献】特表2018-510882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(D);
(A)曳糸性を有する(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー
(B)ワックス
(C)水性エマルションポリマー
(D)ポリビニルアルコール
を含有し、
前記成分(A)の含有量が0.001~2質量%、前記成分(B)の含有量が2~20質量%、前記成分(C)の含有量が固形分換算で2~30質量%、前記成分(D)の含有量が0.1~5質量%であり、前記成分(C)のガラス転移温度(Tg)が35℃以下である、水中油型睫毛用化粧料。
【請求項2】
前記成分(A)および前記成分(B)の含有質量割合が、(A)/(B)=0.005~3である、請求項1に記載の水中油型睫毛用化粧料。
【請求項3】
前記成分(A)および前記成分(C)の含有質量割合が、(A)/(C)=0.002~3である、請求項1または2に記載の水中油型睫毛用化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睫毛化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水中油型睫毛用化粧料は睫毛を太く長く見せる化粧料であり、目元を美しく際立たせるために睫毛を上向きに固定させる化粧効果(カールキープ力)が求められるものである。近年は、塗布時に化粧膜を美しく仕上げための伸び広がりの良さや、仕上がりのツヤ感が求められている。また睫毛が束づいたり、髪の毛や空気中の塵が化粧膜に付着しないように塗布後にべたつきのないことが求められている。加えて、水中油型睫毛用化粧料を落とす際には目の周りが黒ずむことなく、水でも簡単に除去できる易水洗性が求められてきている
【0003】
これまでにも、睫のカール固定力とツヤ効果に優れる睫毛用化粧料として、シリコーン化多糖類を用いて、デキストリン脂肪酸エステル、タルク及びカオリンの粉体、水、4mm以上のファイバーを含有する技術(例えば特許文献1参照)が検討されている。また、特定量のプルランを含有し、曳糸性を有するカールアップ効果やぬるま湯でのクレンジング性の高い水中油型睫用化粧料の技術(例えば特許文献2参照)が検討されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-079211号公報
【文献】特開2012-232914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献の技術のようにシリコーン化多糖類は多糖類の構造を有するため親水性が高く、空気中の水分等を吸湿してしまい、化粧膜の硬さが弱くなりカールキープ力に関して十分と言えず、乾燥速度が遅くなる傾向があり、べたつきを感じる場合があった。特許文献2の技術のように水溶性のプルランを用いた場合は、曳糸性を有するため、ツヤ感や軽い伸び広がりは優れるが、化粧膜の乾燥速度が遅く、仕上がりの化粧膜にべたつきを感じる場合があった。またプルランは水溶性であるため、水で洗い流す場合に目周りが黒ずんでしまい、落しやすさに関しては改善の余地があった。
【0006】
そこで本発明では、睫毛を上向きに固定させキープさせるカールキープ効果が高く、化粧落しの際は化粧膜がきれいに膜となって剥離することで目周りが黒ずむことなく、水でも簡単に除去できる易水洗性に優れ、さらに塗布時には軽い伸び広がりを有し、塗布後の化粧膜はツヤ感とべたつきのなさに優れた水中油型睫毛用化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記実情に鑑み鋭意検討をおこなったところ、曳糸性を有する(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーとワックス、水溶性のエマルジョンポリマー、及びポリビニルアルコールを含有する水中油型睫化粧料が、ワックスによる伸び広がりの重さや、ベタツキを低減し、軽い伸び広がりとツヤ感、べたつきのなさ、カールキープ力を有し、落とす際には水で簡便に落とすことができる易洗性に優れることを見出し本発明を完成させた。
【0008】
すなわち本発明は、以下の技術を包含するものである。
[1]以下の(A)~(D)を含有するを含有する水中油型睫毛用化粧料。
(A)曳糸性を有する(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー
(B)ワックス
(C)水性エマルションポリマー
(D)ポリビニルアルコール
[2]前記成分(A)の含有量が0.001~2質量%である水中油型睫毛用化粧料。
[3]前記成分(B)の含有量が2~20質量%である水中油型睫毛用化粧。
[4]前記成分(C)の含有量が固形分換算で2~30質量%である水中油型睫毛用化粧料。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水中油型睫毛用化粧料は、カールキープ効果が高く、化粧落しの際は化粧膜がきれいに膜となって剥離することで目周りが黒ずむことなく、水でも簡単に除去できる易水洗性に優れ、さらに軽い伸び広がりとツヤ感、べたつきのなさに優れた水中油型睫毛用化粧料を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」はその前後の数値を含む範囲を意味し、特に記載がない場合の「%」は「質量%」を指すものとする。
【0011】
本発明に用いられる成分(A)は(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーの中でも曳糸性を有するものである。本願において曳糸性とは、液体の中へ棒を入れて手早くひき上げたときに,液体が糸をひく性質である。本願の成分(A)の曳糸性は、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーの5%メチルポリシロキサン(動粘度25℃:約2mm/s)に、直径3mmの金属棒を1cm侵入し垂直に秒速5cmの速さにて引き上げたとき、3cm以上の糸ひき(溶液が金属棒に付着したまま切れないこと)が起きるものを、曳糸性を有する(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーとする。本発明における動粘度は、日本工業規格に規定される原油及び石油製品動粘度試験方法および粘度指数算出方法(JIS K2283)に準拠して測定される。
【0012】
本発明に用いられる成分(A)は、曳糸性を有するジビニルジメチルポリシロキサンで架橋したジメチルポリシロキサンであれば特に制限されず、いずれのものも使用することができ、必要に応じ、1種又は2種以上を使用することができる。成分(A)の市販品としては、例えば3901 LIQUID SATIN BLEND (東レ・ダウコーニング社製)が挙げられる。
【0013】
本発明における成分(A)の含有量は、特に限定されないが、0.001~2%が好ましく、0.1~0.7%がより好ましく、0.15~0.4%がさらに好ましい。この範囲であれば、カールキープ力及び塗布時の軽い伸び広がりに優れ、ツヤ感のある化粧膜及びべたつきのない化粧膜が得られる点においてより好ましい。
【0014】
本発明に用いられる成分(B)のワックスは、通常化粧料に用いられるものであれば、特に制限されず、合成炭化水素系、天然及び合成ロウ系等が挙げられる。具体的には、パラフィンワックス、セレシンワックス、オゾケライトワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、エチレン・プロピレンコポリマー、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ビーズワックス、ライスワックス、モクロウ、ゲイロウ、ジロウ、モンタンワックス、ステアリル変性メチルポリシロキサン、ベヘニル変性メチルポリシロキサン等が挙げられ、これらの成分(B)は必要に応じ、1種又は2種以上を用いることができる。成分(B)としては、特にカールキープ力と易水洗性の観点から、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、ミツロウ、モクロウ等の極性を有するワックスを用いることが好ましく、カルナバワックス、ビーズワックスを用いることがより好ましい。
【0015】
本発明における成分(B)の含有量は、特に限定されないが2~20%が好ましく、更に好ましくは7~13%である。この範囲であれば、カールキープ力及び塗布時の軽い伸び広がりに優れ、べたつきのない化粧膜が得られる点においてより好ましい。
【0016】
本発明において、特に限定されないが、成分(A)と成分(B)の含有質量割合は(A)/(B)=0.005~3であることが好ましく、0.2~1であることがより好ましい。この範囲であるとカールキープ力及び塗布時の滑らかな伸び広がりに優れ、ツヤ感のある塗布膜が得られる点においてより好ましい。
【0017】
本発明に用いられる成分(C)水性エマルションポリマーは、水性溶媒にポリマー粒子が安定に分散したものである。成分(C)中のポリマーは、乳化重合法や、コアシェル重合法、ラジカル重合法等の一般的な重合法で得た重合物を水性溶媒に分散させて用いることができる。ここでいう水性溶媒とは、水を主成分とし、多価アルコール等を含有していてもよい。具体例としては、(メタ)アクリル酸アルキル重合体エマルション、(メタ)アクリル酸アルキル共重合体エマルション、(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸アルキル共重合体エマルション、(メタ)アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション、酢酸ビニル含有共重合体エマルション、ビニルピロリドン・スチレン共重合体エマルション、シリコーン含有重合体エマルション、シリコーン含有共重合体エマルション等が挙げられ、これらは必要に応じ、1種又は2種以上を使用することができる。
【0018】
成分(C)の市販品としては、アクリル酸アルキル共重合体エマルションのACURYN33A(ロームアンドハース社製)、ヨドゾールGH800、ヨドゾールGH810、ヨドゾールGH41F(以上、日本エヌエスシー社製)、酢酸ビニル重合体エマルションのビニブランGV-5651(日信化学工業社製)、ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合体エマルションとしてはPVP/VAE-735(ISP社製)、アクリル酸・メタクリル酸・アクリル酸エチルヘキシル共重合体エマルションとしてはダイトゾール5000SJ(大東化成工業社製)、ビニルピロリドン・スチレン共重合体エマルションとしては、ANTARA430(ISP社製)等が挙げられる。
【0019】
成分(C)は易水洗性と滑らかな伸び広がりの観点から、エマルション中のポリマーのガラス転位温度(Tg)が35℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがさらに好ましい。また成分(C)含有量は、固形分換算で2~30%が好ましく、8~20%がより好ましい。この範囲であるとカールキープ力及び塗布時の滑らかな伸び広がりに優れ、ツヤ感のある塗布膜が得られる点においてより好ましい。
【0020】
本発明において、特に限定されないが、成分(A)と成分(C)の含有質量割合は(A)/(C)=0.002~3であることが好ましく、0.15~0.8であることがより好ましい。この範囲であるとカールキープ力及び塗布時の滑らかな伸び広がりに優れ、ツヤ感のある塗布膜が得られる点においてより好ましい。
【0021】
本明細書においてガラス転移温度(Tg)とは、共重合体のガラス転移温度を意味し、下記計算式に示したFoxの式より求め、摂氏換算することができる。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
前記式中、Tgは求める共重合体のガラス転移温度(K)を示し、Wiは、各モノマーの質量分率を示し、Tgiは対応するモノマーの単独重合体のガラス転移温度(K)を示す。単独重合体のTgは、「POLYMER HANDBOOK」(第4版;John Wiley & Sons,Inc.発行)等の刊行物に記載されている数値を採用すればよい。
【0022】
本発に用いられる成分(D)のポリビニルアルコールは、例えばポリ酢酸ビニルを鹸化して得ることができ、化粧料原料として公知の物質であり、通常化粧料に使用されるものであれば特に制限されず、いずれのものも使用することができる。市販品としては、例えば、PVA-205、PVA-217、クラレポバール PVA124(以上、クラレ社製)、PVA-EG25、PVA-EG40、PVA-GL05S、PVA-EG05(以上、日本合成化学工業社製)等が挙げられる。これらの成分(D)は必要に応じ、1種又は2種以上を使用することができる。
【0023】
本発明に使用される成分(D)の含有量は、0.1~5%が好ましく、0.3~1%がより好ましい。この範囲であれば、べたつきのない塗布膜が得られ、かつ化粧膜がきれいに膜となって剥離することで、簡便できれいに化粧落としができる易水洗性に優れる点においてより好ましい。
【0024】
本発明の水中油型睫毛用化粧料に用いられる水は、特に限定されず、例えば、精製水、蒸留水、温泉水、海洋深層水、ラベンダー花水等、種々の水をあげることができ、必要に応じて、これらの1種又は2種以上を組合わせて使用することができる。また、本発明における水の含有量は、特に限定されないが、40~80%であることが好ましく、60~70%であることがより好ましい。この範囲であれば、本発明の水中油型睫毛用化粧料の効果を最大に引き出すことができる点から、より好ましい。
【0025】
本発明の水中油型睫毛用化粧料は、前記の成分(A)~(D)の他に、さらに、通常化粧料に使用される成分、例えば成分(A)及び(B)以外の油性成分、粉体成分、繊維、界面活性剤、成分(C)及び(D)以外の皮膜形成性剤、水性成分、紫外線吸収剤、保湿剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料などを本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有することができる。
【0026】
成分(A)及び(B)以外の油性成分としては、化粧料に使用できるものであれば特に制限されず、動物油、植物油、合成油等の起源、及び、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類等が挙げられる。
【0027】
具体的には、流動パラフィン、イソドデカン、水添ポリイソブテン、スクワラン、ワセリン、ポリブテン等の炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル類、低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン、ジメチコノール等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の油性ゲル化剤類等が挙げられる。これらの油性成分は必要に応じて1種又は2種以上用いることができる。
【0028】
また本発明における成分(A)及び(B)以外の油性成分の含有量は、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。この範囲であれば、本発明の水中油型睫毛用化粧料の効果を最大に引き出すことができる点から、より好ましい。
【0029】
粉体成分としては、板状、紡錘状、針状等の形状、粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類、等が挙げられる。具体的には、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム、無水ケイ酸、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、無水ケイ酸被覆雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、酸化チタン被覆ガラス末、酸化チタン・酸化鉄被覆ガラス末、酸化チタン・無水ケイ酸被覆ガラス末、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、N-アシルリジン、ナイロン等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いることができる。また、これら粉体は1種又は2種以上を複合化したものを用いても良く、フッ素化合物、シリコーン系油剤、金属石ケン、ロウ、界面活性剤、油脂、炭化水素等を用いて公知の方法により表面処理を施したものであっても良い。
【0030】
繊維としては、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル等の合成繊維、レーヨン等の人造繊維、セルロース等の天然繊維、アセテート人絹等の半合成繊維等が挙げられ、形状は特に限定されず、断面が円状、楕円状、多角形、井形、T型、Y型等いずれのものも使用することができる。更に、これらの繊維は、必要に応じて着色剤で着色したり、表面処理剤の種類としてはフッ素化合物、シリコーン油、粉体、油剤、ゲル化剤、エマルションポリマー、界面活性剤等で表面処理を施したりして使用してもよい。
【0031】
界面活性剤としては、化粧料一般に用いられている界面活性剤であればいずれのものも使用でき、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。非イオン界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物、ポリオキシアルキレンアルキル共変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸のような脂肪酸の無機及び有機塩、アルキルベンゼン硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アシルメチルタウリン塩、N-メチル-N-アルキルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキル燐酸塩、等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、ポリアミン及びアルカノールアミン脂肪酸誘導体、アルキル四級アンモニウム塩、環式四級アンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、アミノ酸タイプやベタインタイプのカルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型のものが挙げられる。これらの界面活性剤は、必要に応じ、1種又は2種以上を使用することができる。
【0032】
成分(C)及び(D)以外の皮膜形成剤としては、化粧料一般に用いられている皮膜形成剤であれば特に制限されないが、具体的には水添ロジン酸ペンタエリスリチル、水添アビエチン酸グリセリル等のテルペン系樹脂、トリメチルシロキシケイ酸、(アクリル酸アルキル/ジメチコン)コポリマー、アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー等のアクリル-シリコーングラフト共重合体、ポリメチルシルセスキオキサン等のシリコーン系樹脂、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリイソブチレン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0033】
水性成分は、水及び水に可溶な成分であれば何れでもよく、例えば、エチルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液、グアーガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、アルキル付加カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、タンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等が挙げられる。
【0034】
紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸等の安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸メチル等のアントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸メチル等のサリチル酸系紫外線吸収剤、パラメトキシケイ皮酸オクチル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ウロカニン酸エチル等のウロカニン酸系紫外線吸収剤等が挙げられる。また、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ジメチコジエチルベンジルマロネート、2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]-フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、メチレンビスベンゾトリアゾルテトラメチルブチルフェノール、4-tert-ブチル-4'-メトキシベンゾイルメタン、オクトクリレン、オクチルトリアゾン等を用いることができる。酸化防止剤としては、例えばα-トコフェロール、アスコルビン酸等、ビタミン類、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0035】
本発明の水中油型睫毛用化粧料は、連続相を水とするものであり、剤型は特に限定されないが、マスカラ、マスカラオーバーコート、マスカラ下地等が挙げられる。また、性状としては液状、ゲル状、クリーム状等が挙げられ、いずれの性状でも良い。
【実施例
【0036】
以下に実施例をあげて本発明を詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0037】
実施例1~16および比較例1~6:水中油型睫毛用化粧料
下記表1及び2に示す処方の水中油型睫毛用化粧料を調製し、べたつきのなさ、カールキープ力、滑らかな伸び広がり、化粧膜のツヤ感、易水洗性について下記の方法により評価した。その結果も併せて表に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
*1 3901 LIQUID STAIN BLEND(東レ・ダウコーニング社製)(固形分濃度6.4%)
5%メチルポリシロキサン(動粘度25℃:約2mm/s)溶液に25℃の環境下において、直径3mmの金属棒を1cm侵入し垂直に秒速5cmの速さにて引き上げたときの糸引きは70cm。
*2 KSG-6(信越化学工業社製)(固形分濃度60%)
*3 ダイトゾール5000SJ(大東化成工業社製)(固形分濃度50%)Tg -14℃
*4 ビニブラン GV-5651(日信化学工業社製)(固形分濃度36.4%)Tg 30℃
*5 アコーンKS(大阪有機化学社製)(固形分濃度50%)
【0041】
(製造方法)
A.成分(1)~(11)を110℃まで加熱し、均一に混合する。
B.Aに成分(12)を加え、均一に分散する。
C.成分(13)~(22)を均一に分散する。
D.BにCを加え乳化する。
E.Dを容器に充填して製品とする。
【0042】
(評価方法)
下記の評価項目について各々下記方法により評価を行った。
(評価項目)
a.べたつきのなさ
b.カールキープ力
c.滑らかな伸び広がり
d.化粧膜のツヤ感
e.易水洗性
【0043】
評価項目a~eついては、各試料について専門パネル10名による使用テストを行い、パネル各人が下記絶対評価基準にて7段階に評価し評点を付け、各試料のパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。また、評価項目a.べたつきのなさについては、各試料を睫毛に塗布した後、化粧膜にべたつきを感じたかを評価した。評価項目b.のカールキープ力については、各試料を睫毛に塗布し、パネルに通常の生活をしてもらい、6時間後に塗布直後に比べカール力が低下したかどうかを評価した。評価項目c.滑らかな伸び広がりについては各試料を睫毛に塗布する際に抵抗が少なく伸び広げやすいかどうかを評価した。評価項目d.化粧膜のツヤ感については、各試料を睫毛に塗布した後、化粧膜にツヤ感を感じたかを評価した。評価項目e.の易水洗性については、水道水を含浸したコットンを用いて、睫毛を水にぬらしながら除去する際に、簡便にかつ、目の周りが黒ずむことなく、コットン上に化粧塗膜が膜を形成しながら剥離していることが確認できるかどうかを評価した。
【0044】
(絶対評価基準)
(評点):(評価)
6 :非常に良い
5 :良い
4 :やや良い
3 :普通
2 :やや悪い
1 :悪い
0 :非常に悪い
【0045】
(4段階判定基準)
(判定):(評点の平均点)
◎ :5点を超える :非常に良好
○ :3点を超える5点以下:良好
△ :1点を超える3点以下:やや不良
× :1点以下 :不良
【0046】
表1、2の結果から明らかなように、本発明の実施例1~16の水中油型睫毛用化粧料は、比較例1~6の水中油型睫毛用化粧料に比べ、べたつきのなさ、カールキープ力、滑らかな伸び広がり、化粧膜のツヤ感、易水洗性の全てにおいて優れたものであった。これに対して、成分(A)の代わりに曳糸性を有しない(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーを用いた比較例1では、糸を引く性質がないため、滑らかな伸び広がりに劣り、膜の平滑性が損なわれ、満足のいく化粧膜のツヤ感も得られないものであった。また成分(A)の代わりにトリメチルシロキシケイ酸を用いた比較例2では、軽い伸び広がりに劣り、また形成された化粧膜の易水洗性に関しても満足のいくものではなかった。成分(A)の代わりに曳糸性のある高重合ポリエチレングリコールを用いた比較例3では、化粧膜にべたつきを感じてしまい、またカールキープ力に関しても満足のいくものはなかった。成分(B)の代わりにトリメチルシロキシケイ酸を用いた比較例4では、化粧膜の柔軟性が失われてしまい、カールキープ力に関して満足のいくものではなかった。また易水性に関しても落しにくくなってしまい満足のいくものではなかった。成分(C)の代わりに水溶性ポリマーである(ビニルピロリドン/VA)コポリマーを用いた比較例5では、形成された化粧膜の耐水性が低く、水道水を含浸したコットンを用いて、睫毛を水にぬらした際に目周りが黒ずんでしまい、易水洗性に関して満足のいくものではなかった。またべたつきのなさに関しても満足のいくものではなかった。成分(D)を含まない比較例6では、睫毛を水にぬらした際に化粧膜が膜のように落ちず、易水洗性に関して満足のいくものが得られなかった。
【0047】
実施例17:水中油型マスカラ
(成分) (%)
(1)(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー微架橋物*1 3
(2)ステアリン酸 1
(3)パルミチン酸 0.5
(4)パルミチン酸デキストリン 1
(5)カルナウバロウワックス 7
(6)ポリエチレンワックス 1
(7)ワセリン 0.1
(8)スクワラン 0.1
(9)セトステアリルアルコール 0.5
(10)セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
(11)モノオレイン酸ポリオキシエチレン 1
(12)水添アビエチン酸グリセリル 0.2
(13)ショ糖脂肪酸エステル 1.5
(14)レシチン 0.1
(15)パンテノール 0.1
(16)ツバキ種子油 0.1
(17)黒酸化鉄 7
(18)マイカ 1
(19)タルク 0.5
(20)精製水 残量
(21)ポリビニルアルコール 1
(22)水溶性コラーゲン 0.1
(23)コレステロール 0.1
(24)エタノール 0.5
(25)1,3-BG 1
(26)アイクリレーツ 1.5
(27)トリエタノールアミン 1.2
(28)EDTA 0.1
(29)デヒドロ酢酸ナトリウム 0.1
(30)無水ケイ酸 2
(31)パラオキシ安息香酸メチル 0.2
(32)フェノキシエタノール 0.3
(33)(アクリレーツ/VA)コポリマーエマルション*6 25
(34)(アクリレーツコポリマーエマルション*7 2
(35)レーヨン繊維 1
(36)ナイロン繊維 0.5
*6:ビニゾール2140L(大同化成工業社製)(固形分濃度42.7%)Tg -9℃
*7:COVACRYL MS11WP(SENSIENT社製)(固形分濃度54.5%) Tg 0℃
【0048】
(製造方法)
A.成分(1)~(16)を110℃まで加熱し、均一に混合する。
B.Aに成分(17)~(19)を加え、均一に分散する。
C.成分(19)~(34)を均一に分散する。
D.BにCを加え乳化する。
E.Dに成分(35)~(36)を加え、均一に分散する。
F.Eを容器に充填して製品とする。
【0049】
実施例17の水中油型マスカラは、べたつきのなさ、カールキープ力、滑らかな伸び広がり、化粧膜のツヤ感、易水洗性の全てにおいて優れたものであった。
【0050】
実施例18:水中油型マスカラ下地
(成分) (%)
(1)(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー微架橋物*1 3
(2)ジヒドロコレスー30 2
(3)合成ワックス 2
(4)カルナバワックス 5
(5)キャンデリラワックス 1
(6)ヒマワリワックス 1
(7)セトステアリルアルコール 1.3
(8)セスキオレイン酸ソルビタン 0.9
(9)モノオレイン酸ポリオキシエチレン 1
(10)ミネラルオイル 0.5
(11)黄酸化鉄 0.1
(12)赤酸化鉄 0.1
(13)雲母チタン 1
(14)ラウロイルリシン 0.3
(15)精製水 残量
(16)ポリビニルアルコール 0.2
(17)1,3-BG 1
(18)クオタ二ウム-18ヘクトライト 2
(19)EDTA 0.1
(20)デヒドロ酢酸ナトリウム 0.1
(21)無水ケイ酸 2
(22)パラオキシ安息香酸メチル 0.2
(23)フェノキシエタノール 0.3
(24)アクリレーツコポリマーエマルジョン*8 20
(25)クロロフェネシン 0.3
(26)レモン果実エキス 0.1
(27)マリツカ花エキス 0.1
*8:YODOSOL GH810F(アクゾノーベル社製)(固形分濃度46%)Tg 20℃
【0051】
(製造方法)
A.成分(1)~(10)を110℃まで加熱し、均一に混合する。
B.成分(11)~(27)を均一に分散する。
C.BにCを加え乳化する。
D.Cを容器に充填して製品とする。
【0052】
実施例18の水中油型マスカラ下地は、軽い伸び広がりで、セパレート効果及びカール効果に優れ、化粧膜の均一性に優れたものであった。
【0053】
実施例19:水中油型マスカラオーバーコート
(成分) (%)
(1)(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー微架橋物*1 3
(2)カルナバワックス 10
(3)ミツロウ 1
(4)自己乳化型モノステアリン酸グリセリル 1
(5)ポリステアリン酸スクロース 1.5
(6)(エイコセン/ビニルピロリドン)コポリマー 1.5
(7)セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
(8)ステアリン 2
(9)ポリソルベート80 1
(10)精製水 残量
(11)1,3-BG 1
(12)PG 1
(13)ポリ酢酸ビニル 5
(14)シリカ 3
(15)ポリビニルアルコール 1
(16)トリエタノールアミン 1.2
(17)アクリル酸アルキルコポリマー 0.3
(18)アクリレーツコポリマーエマルジョン*9 30
(19)EDTA 0.1
(20)デヒドロ酢酸ナトリウム 0.1
(21)フェノキシエタノール 0.3
(22)ヒアルロン酸 0.1
*9:YODOSOL GH800F(アクゾノーベル社製)(固形分濃度46%)Tg-15℃
【0054】
(製造方法)
A.成分(1)~(9)を110℃まで加熱し、均一に混合する。
B.成分(10)~(22)を均一に分散する。
C.BにCを加え乳化する
D.Cを容器に充填して製品とする。
【0055】
実施例19の水中油型マスカラオーバーコートは、べたつきのなさ、カールキープ力、滑らかな伸び広がり、化粧膜のツヤ感、易水洗性の全てにおいて優れたものであった。