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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20220928BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H01L21/30 572B
H01L21/304 651A
H01L21/304 643A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018246813
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020107779
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 亨
(72)【発明者】
【氏名】谷川 紘太
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-056405(JP,A)
【文献】特開2014-209600(JP,A)
【文献】特開2010-010422(JP,A)
【文献】特開2013-074090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に固着している対象物を薬液で剥離する基板処理装置であって、
基板を水平姿勢に保持する基板保持具と、
前記基板保持具に保持されている基板を、前記基板の中央部を通る鉛直方向の回転軸線まわりに回転させる回転モータと、
薬液を吐出する吐出口を有するノズルと、
前記ノズルを前記回転軸線に直交する第1方向に移動させる移動モータと、
前記基板の表面を撮像対象領域に含むカメラと、
前記カメラによって得られる撮影画像において、前記基板の前記表面における、対象物が剥離された剥離領域と前記対象物が固着している未剥離領域との境界を検出する境界検出部と、
前記移動モータに接続され、前記境界検出部によって検出された前記境界の位置に応じて前記ノズルを前記第1方向に移動させる制御部と、
を備え
前記制御部は、
所定の時間間隔ごとに前記境界の前記第1方向に沿う径方向における移動速度を導出し、導出した前記境界の前記移動速度に応じて前記ノズルの移動速度を決定し、
前記ノズルからの硫酸過酸化水素水混合液が前記境界に対して前記第1方向とは反対側の前記剥離領域内に着液するように前記ノズルを移動させる、基板処理装置。
【請求項2】
請求項1の基板処理装置であって、
前記ノズルの移動速度は前記境界の移動速度に一致する、基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2の基板処理装置であって、
前記ノズルの前記吐出口が前記第1方向とは反対向きの第2方向に向けられている、基板処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか1項の基板処理装置であって、
前記第1方向が、前記回転軸線から離れる方向である、基板処理装置。
【請求項5】
請求項の基板処理装置であって、
前記制御部は、前記ノズルからの前記薬液が前記基板に着液する着液位置を前記回転軸線の位置から前記第1方向へ移動させる、基板処理装置。
【請求項6】
請求項の基板処理装置であって、
前記境界検出部は、前記撮影画像における前記回転軸線に対して前記第1方向とは反対の第2方向側の判定領域の画像部分に対して画像処理を行って、前記境界を検出する、基板処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか1項の基板処理装置であって、
前記基板保持具および前記ノズルを内部に収容する処理室と、
前記処理室の雰囲気を外部に排出する排気ダクトを含む排気部と、
をさらに備え
前記基板保持具に保持された前記基板の周囲の領域は、第1領域と、前記回転軸線を挟んで前記第1領域の反対側の領域である第2領域とを含み、前記第1領域は前記第2領域よりも前記排気ダクトに近く、
前記境界検出部は、前記撮影画像において前記第1領域よりも前記第2領域に近い判定領域の画像部分に対して画像処理を行って、前記境界を検出する、基板処理装置。
【請求項8】
請求項の基板処理装置であって、
前記排気部は、前記基板の径方向外側において吸引力を発生させる、基板処理装置。
【請求項9】
請求項1から請求項のいずれか1項の基板処理装置であって、
前記ノズルに接続され、第1流体が流通する第1配管と、
前記ノズルに接続され、第2流体が流通する第2配管と、
をさらに備え、
前記ノズルは、前記第1流体と前記第2流体とを混合して前記吐出口から吐出する、基板処理装置。
【請求項10】
請求項の基板処理装置であって、
前記第1配管からの前記第1流体の流量と、前記第2配管からの前記第2流体の流量を変更する流量変更部、を含む、基板処理装置。
【請求項11】
請求項または請求項10の基板処理装置であって、
前記第1流体が硫酸を含み、
前記第2流体が過酸化水素水を含む、基板処理装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項の基板処理装置であって、
前記基板保持具に保持される前記基板よりも下方に設けられている排液配管と、
前記基板保持具に保持される前記基板よりも下方に設けられている回収配管と、
前記薬液が流入する配管を、前記排液配管および回収配管の間で切り換える切換部と、
をさらに備える、基板処理装置。
【請求項13】
基板の表面に固着している対象物を薬液で剥離する基板処理方法であって、
a) 基板を水平姿勢に保持する工程と、
b) 前記工程a)の後、前記基板を鉛直方向の回転軸線まわりに回転させる工程と、
c) 前記工程b)の後、前記基板の表面に薬液を供給する工程と、
を含み、
前記工程c)は、
c-1) 前記基板の前記表面における、対象物が剥離された剥離領域と前記対象物が固着している未剥離領域との境界を検出する工程と、
c-2) 前記工程c-1)によって検出される前記境界の位置に応じて、前記薬液が前記基板の前記表面に着液する着液位置を前記回転軸線に直交する第1方向に移動させる工程と、
を含み、
前記c-2)工程は、
所定の時間間隔ごとに前記境界の前記第1方向に沿う径方向における移動速度を導出し、導出した前記境界の前記移動速度に応じてノズルの移動速度を決定し、
前記ノズルからの硫酸過酸化水素水混合液が前記境界に対して前記第1方向とは反対側の前記剥離領域内に着液するように前記ノズルを移動させる、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板に固着している対象物を薬液で剥離する基板処理装置および基板処理方法に関する。処理対象となる基板には、例えば、半導体基板、液晶表示装置および有機EL(Electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板、プリント基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイス製造の一工程であるフォトレジスト工程においては、基板である半導体ウエハ(以下、ウエハという)の表面にレジスト(感光性ポリマー)を塗布し、露光後に現像してレジストパターンを作成している。ウエハの表面に固着しているレジストは、現像後にウエハの表面を所定の薬液で処理することによって、ウエハから剥離される。
【0003】
また、半導体デバイス製造においては,デバイスにp/n接合などを形成するために、ウエハに塗布されたレジストをマスクにして、ウエハに砒素イオンなどのイオンビームを照射するイオン注入工程が行われる場合がある。ここで使用されるレジストも、最終的にはウエハから除去されるが、イオン注入されたレジストは除去が困難であることが知られている。この原因は、イオン注入によってレジストの表面が硬質化し、薬液に対する反応性が低下するためと考えられている。
【0004】
特許文献1では、基板を回転させながら洗浄ノズルから基板の中心部にレジストを剥離するための洗浄液を吐出し、遠心力により基板の表面全体に広げている。その後、基板を回転させたまま基板上の洗浄液の吐出位置を、基板の中心部からずれた偏心位置に変更すると共に、洗浄液の吐出位置におけるガス吐出位置側界面と、ガスノズルによるガスの吐出位置における洗浄液吐出位置側界面との距離を9mm~15mmに設定した状態でガスノズルから基板の中心部にガスを吐出して、洗浄液の乾燥領域を形成する。そして、洗浄液の供給位置を、前記乾燥領域が外に広がる速度よりも遅い速度で基板の周縁に向けて移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-142617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、単に乾燥領域の広がりに応じた速度でノズルを移動させる。すなわち、ノズルの移動は、ガスノズルの移動によって制御される。このため、基板からレジストが充分に除去されないために、残渣が発生するおそれがあった。また、イオン注入が行われたレジストの場合、表面が硬質化することによって、剥離処理後に残渣が発生しやすい。このため、基板に固着したレジストを適切に剥離する技術が求められている。
【0007】
本発明は、回転する基板の表面に固着している対象物を薬液で適切に剥離する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1態様は、基板の表面に固着している対象物を薬液で剥離する基板処理装置であって、基板を水平姿勢に保持する基板保持具と、前記基板保持具に保持されている基板を、前記基板の中央部を通る鉛直方向の回転軸線まわりに回転させる回転モータと、薬液を吐出する吐出口を有するノズルと、前記ノズルを前記回転軸線に直交する第1方向に移動させる移動モータと、前記基板の表面を撮像対象領域に含むカメラと、前記カメラによって得られる撮影画像において、前記基板の前記表面における、対象物が剥離された剥離領域と前記対象物が固着している未剥離領域との境界を検出する境界検出部と、前記移動モータに接続され、前記境界検出部によって検出された前記境界の位置に応じて前記ノズルを前記第1方向に移動させる制御部とを備え、前記制御部は、所定の時間間隔ごとに前記境界の前記第1方向に沿う径方向における移動速度を導出し、導出した前記境界の前記移動速度に応じて前記ノズルの移動速度を決定し、前記ノズルからの硫酸過酸化水素水混合液が前記境界に対して前記第1方向とは反対側の前記剥離領域内に着液するように前記ノズルを移動させる
【0009】
第2態様は、第1態様の基板処理装置であって、前記ノズルの移動速度は前記境界の移動速度に一致する。
【0011】
態様は、第1態様または第2態様の基板処理装置であって、前記ノズルの前記吐出口が前記第1方向とは反対向きの第2方向に向けられている。
【0012】
態様は、第1態様から第態様のいずれか1つの基板処理装置であって、前記第1方向が、前記回転軸線から離れる方向である。
【0013】
態様は、第態様の基板処理装置であって、前記制御部は、前記ノズルからの前記薬液が前記基板に着液する着液位置を前記回転軸線の位置から前記第1方向へ移動させる。
【0014】
態様は、第態様の基板処理装置であって、前記境界検出部は、前記撮影画像における前記回転軸線に対して前記第1方向とは反対の第2方向側の判定領域の画像部分に対して画像処理を行って、前記境界を検出する。
【0015】
態様は、第1態様から第態様のいずれか1つの基板処理装置であって、前記基板保持具および前記ノズルを内部に収容する処理室と、前記処理室の雰囲気を外部に排出する排気ダクトを含む排気部とをさらに備え、前記基板保持具に保持された前記基板の周囲の領域は、第1領域と、前記回転軸線を挟んで前記第1領域の反対側の領域である第2領域とを含み、前記第1領域は前記第2領域よりも前記排気ダクトに近く、前記境界検出部は、前記撮影画像において前記第1領域よりも前記第2領域に近い判定領域の画像部分に対して画像処理を行って、前記境界を検出する
【0016】
態様は、第態様の基板処理装置であって、前記排気部は、前記基板の径方向外側において吸引力を発生させる。
【0017】
態様は、第1態様から第態様のいずれか1つの基板処理装置であって、前記ノズルに接続され、第1流体が流通する第1配管と、前記ノズルに接続され、第2流体が流通する第2配管と、をさらに備え、前記ノズルは、前記第1流体と前記第2流体とを混合して前記吐出口から吐出する。
【0018】
10態様は、第態様の基板処理装置であって、前記第1配管からの前記第1流体の流量と、前記第2配管からの前記第2流体の流量を変更する流量変更部を含む。
【0019】
11態様は、第態様または第10態様の基板処理装置であって、前記第1流体が硫酸を含み、前記第2流体が過酸化水素水を含む。
【0020】
12態様は、第1態様から第11態様のいずれか1つの基板処理装置であって、前記基板保持具に保持される前記基板よりも下方に設けられている排液配管と、前記基板保持具に保持される前記基板よりも下方に設けられている回収配管と、前記薬液が流入する配管を、前記排液配管および回収配管の間で切り換える切換部とをさらに備える。
【0021】
13態様は、基板の表面に固着している対象物を薬液で剥離する基板処理方法であって、a)基板を水平姿勢に保持する工程と、b)前記工程a)の後、前記基板を鉛直方向の回転軸線まわりに回転させる工程と、c)前記工程b)の後、前記基板の表面に薬液を供給する工程と、を含み、前記工程c)は、c-1)前記基板の前記表面における、対象物が剥離された剥離領域と前記対象物が固着している未剥離領域との境界を検出する工程と、c-2)前記工程c-1)によって検出される前記境界の位置に応じて、前記薬液が前記基板の前記表面に着液する着液位置を前記回転軸線に直交する第1方向に移動させる工程とを含み、前記c-2)工程は、所定の時間間隔ごとに前記境界の前記第1方向に沿う径方向における移動速度を導出し、導出した前記境界の前記移動速度に応じてノズルの移動速度を決定し、前記ノズルからの硫酸過酸化水素水混合液が前記境界に対して前記第1方向とは反対側の前記剥離領域内に着液するように前記ノズルを移動させる
【発明の効果】
【0022】
第1態様および第2態様の基板処理装置によると、剥離領域と未剥離領域との境界を検出し、その境界の位置に応じてノズルを移動させる。このため、対象物の剥離状況に応じて薬液の着液位置を移動させることができるため、基板に固着している対象物を有効に剥離できる。
【0023】
また未剥離領域に薬液を供給できる。
【0024】
また、第1方向における境界の移動速度に基づいてノズルの移動速度を決定することにより、対象物の剥離に適した速度でノズルを移動させることができる。
【0025】
態様の基板処理装置によると、薬液を鉛直下方に吐出する場合よりも鉛直方向に交差する方向に吐出することによって、薬液が基板に着液するときの速度を緩和できる。
【0026】
態様の基板処理装置によると、ノズルを回転軸線から離れる方向に移動させることによって、薬液の着液位置を基板の内側から外側へ向けて移動する。これにより、基板の内側から外側にかけて徐々に対象物を剥離できる。
【0027】
態様の基板処理装置によると、基板の回転中心から外側にかけて徐々に対象物を基板から剥離できる。
【0028】
態様の基板処理装置によると、ノズルや剥離によって生じるヒュームによって、境界の検出が妨げられることを抑制できる。
【0029】
態様の基板処理装置によると、剥離によって発生するヒュームを外部に排出できる。これにより、基板の表面における境界領域の検出精度を向上できる。
【0030】
態様の基板処理装置によると、剥離によって基板の上方に発生したガスを基板の径方向外側に移動させることができる。これにより、基板の表面における境界領域の検出精度を向上できる。
【0031】
態様の基板処理装置によると、第1流体と第2流体とを混合して生成される薬液をノズルに供給できる。これにより、活性を有する薬液を基板に供給できる。
【0032】
10態様の基板処理装置によると、第1流体と第2流体との混合比を変更できる。これにより、第1流体および第2流体の濃度が異なる薬液を、基板に供給できる。
【0033】
11態様の基板処理装置によると、硫酸と過酸化水素水を混合させることによってSPM(sulfuric acid / hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水混合液)を生成し、これを基板に供給できる。これにより、基板に固着しているレジストを剥離できる。
【0034】
12態様の基板処理装置によると、使用済みの薬液の流入先を排液配管と回収配管との間で切り換えできる。これにより、不要な薬液を排出できるとともに、必要な薬液を回収できる。
【0035】
13態様の基板処理方法によると、剥離領域と未剥離領域との境界を検出し、その境界の位置に応じてノズルを移動させる。このため、対象物の剥離状況に応じて薬液の着液位置を移動させることができるため、基板に固着している対象物を有効に剥離できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】実施形態の基板処理装置1の内部レイアウトを説明するための図解的な平面図である。
図2】実施形態の処理ユニット2の構成例を説明するための図解的な断面図である。
図3】実施形態のSPMノズル18の先端部を図解的に示す断面図である。
図4】基板処理装置1の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
図5】処理ユニット2による基板処理例を説明するための流れ図である。
図6】第1SPM工程S31における処理ユニット2を概略的に示す斜視図である。
図7】第1SPM工程S31においてカメラ153で取得される撮影画像PI1の一例を示す図である。
図8】各工程における各ガード43,44の動作を説明するため図解的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0038】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「に沿って」「平行」「直交」「中心」「同軸」等)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表す。また、「に移動する」との表現は、特に断らない限り、特定の方向に平行に移動させることだけではなく、その特定の方向とその特定の方向に直交する方向との合成方向に移動させることも含む。
【0039】
等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」等)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」等)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸や面取り等を有する形状も表すものとする。一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「~上」との表現は、特に断らない限り、2つの要素が接している場合のほか、2つの要素が離れている場合も含む。
【0040】
<1. 実施形態>
図1は、実施形態の基板処理装置1の内部レイアウトを説明するための図解的な平面図である。基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。
【0041】
基板処理装置1は、基板Wを収容する複数の基板収容器Cを保持する複数のロードポートLPと、複数のロードポートLPから搬送された基板Wを薬液等の処理液で処理する複数(例えば12台)の処理ユニット2と、複数のロードポートLPから複数の処理ユニット2に基板Wを搬送する搬送ロボットと、基板処理装置1を制御する制御装置3とを含む。搬送ロボットは、ロードポートLPと処理ユニット2との間の経路上で基板Wを搬送するインデクサロボットIRと、インデクサロボットIRと処理ユニット2との間の経路上で基板Wを搬送する基板搬送ロボットCRとを含む。
【0042】
基板処理装置1は、バルブ等を収容する複数の流体ボックス4と、硫酸を貯留する硫酸タンク27(図2参照)等を収容する貯留ボックス6とを含む。処理ユニット2および流体ボックス4は、基板処理装置1のフレーム5の中に配置されており、基板処理装置1のフレーム5で覆われている。貯留ボックス6は、図1の例では、基板処理装置1のフレーム5の外に配置されているが、フレーム5の中に収容されていてもよい。貯留ボックス6は、複数の流体ボックス4に対応する1つのボックスであってもよいし、流体ボックス4に一対一対応で設けられた複数のボックスであってもよい。
【0043】
12台の処理ユニット2は、平面視において基板搬送ロボットCRを取り囲むように配置された4つの塔を形成している。各塔は、上下に積層された3台の処理ユニット2を含む。4台の貯留ボックス6は、4つの塔のそれぞれに対応している。同様に、4台の流体ボックス4は、それぞれ4つの塔に対応している。各貯留ボックス6内の硫酸タンク27に貯留されている硫酸は、その貯留ボックス6に対応する流体ボックス4を介して、この貯留ボックス6に対応する3台の処理ユニット2に供給される。
【0044】
図2は、実施形態の処理ユニット2の構成例を説明するための図解的な断面図である。処理ユニット2は、内部空間を有する箱形のチャンバ7と、チャンバ7の内部で一枚の基板Wを水平姿勢で保持して、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック(基板保持ユニット)8と、スピンチャック8に保持されている基板Wの上面に硫酸(HSO)および過酸化水素水(H)の混合液であるSPM(sulfuric acid / hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水混合液)を供給するSPM供給ユニット9と、基板Wから排出されるSPMに含まれるレジスト残渣を検知する異物検知ユニット150と、スピンチャック8に保持されている基板Wの上面にリンス液を供給するためのリンス液供給ユニット10と、スピンチャック8を取り囲む筒状の処理カップ11とを含む。チャンバ7は、各挟持部材17およびSPMノズル18を収容する収容室の一例である。
【0045】
以下の説明では、回転軸線A1に直交する方向を「径方向」という。また、径方向において回転軸線A1に向かう方向(回転軸線A1に近づく方向)を「径方向内方」といい、径方向において回転軸線A1側とは反対側に向かう方向(回転軸線A1から離れる方向)を「径方向外方」という。回転軸線A1まわりの回転方向を「周方向」と称する場合がある。
【0046】
チャンバ7は、箱状の隔壁12と、隔壁12の上部から隔壁12内(チャンバ7内に相当)に清浄空気を送る送風ユニットとしてのFFU(ファン・フィルタ・ユニット)14と、隔壁12の下部からチャンバ7内の気体を排出する排気装置(図示しない)とを含む。
【0047】
図2に示すように、FFU14は隔壁12の上方に配置されており、隔壁12の天井に取り付けられている。FFU14は、隔壁12の天井からチャンバ7内に清浄空気を送る。排気装置(図示しない)は、処理カップ11内に接続された排気ダクト13を介して処理カップ11の底部に接続されており、処理カップ11の底部から処理カップ11の内部を吸引する。FFU14および排気装置(図示しない)により、チャンバ7内にダウンフロー(下降流)が形成される。排気ダクト13は、チャンバ7の内部の雰囲気を外部に排出する排出部を構成する。
【0048】
スピンチャック8として、基板Wを水平方向に挟んで基板Wを水平に保持する挟持式のチャックが採用されている。具体的には、スピンチャック8は、スピンモータ(回転ユニット)Mと、このスピンモータMの駆動軸と一体化されたスピン軸15と、スピン軸15の上端に略水平に取り付けられた円板状のスピンベース16とを含む。
【0049】
スピンベース16は、基板Wの外径よりも大きな外径を有する水平な円形の上面16aを含む。上面16aには、その周縁部に複数(3つ以上。例えば6つ)の挟持部材17が配置されている。複数個の挟持部材17は、スピンベース16の上面周縁部において、基板Wの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けて例えば等間隔に配置されている。
【0050】
SPM供給ユニット9は、SPMノズル18と、SPMノズル18が先端部に取り付けられたノズルアーム19と、ノズルアーム19を移動させることにより、SPMノズル18を移動させるノズル移動ユニット20とを含む。ノズル移動ユニット20は、回転軸線A1に直行する水平方向に移動させる移動モータを有する。SPMノズル18は、例えば、連続流の状態でSPMを吐出するストレートノズルである。SPMノズル18は、例えば、基板Wの上面に垂直な方向に処理液を吐出する垂直姿勢でノズルアーム19に取り付けられている。ノズルアーム19は水平方向に延びている。ノズル移動ユニット20が備える移動モータは制御装置3に接続され、制御装置3の制御下で動作できる。
【0051】
ノズル移動ユニット20は、揺動軸線まわりにノズルアーム19を水平移動させることにより、SPMノズル18を水平に移動させる。ノズル移動ユニット20は、SPMノズル18から吐出されたSPMが基板Wの上面に着液する基板Wの処理位置と、SPMノズル18が平面視でスピンチャック8の周囲に設定された退避位置との間で、SPMノズル18を水平に移動させる。この実施形態では、処理位置は、例えば、SPMノズル18から吐出されたSPMが基板Wの上面中央部に着液する中心位置L1を含む。
【0052】
SPM供給ユニット9は、さらに、SPMノズル18に硫酸を供給する硫酸供給ユニット21と、SPMノズル18に過酸化水素水を供給する過酸化水素水供給ユニット22とをさらに含む。硫酸供給ユニット21は、SPMノズル18に一端が接続された硫酸配管23と、硫酸配管23を開閉するための硫酸バルブ24と、硫酸配管23の開度を調整して、硫酸配管23を流通する硫酸の流量を調整する硫酸流量調整バルブ25と、硫酸配管23の他端が接続された硫酸供給部26とを含む。硫酸バルブ24および硫酸流量調整バルブ25は、流体ボックス4に収容されている。硫酸供給部26は貯留ボックス6に収容されている。各バルブ25,26は制御装置3に接続されて、制御装置3の制御下で動作できる。
【0053】
硫酸流量調整バルブ25は、弁座が内部に設けられたバルブボディと、弁座を開閉する弁体と、開位置と閉位置との間で弁体を移動させるアクチュエータとを含む。他の流量調整バルブについても同様である。
【0054】
硫酸供給部26は、硫酸配管23に供給すべき硫酸を貯留する硫酸タンク27と、新液の硫酸を硫酸タンク27に補充する硫酸補充配管28と、回収タンク29と、回収タンク29に貯留されている硫酸を硫酸タンク27に送るための送液配管30とを含む。ここでは、「新液」とは、処理ユニット2における基板Wの処理に使用されていない状態の液をいう。硫酸供給部26は、回収タンク29の内部の硫酸を送液配管30に移動させる第1の送液装置31と、硫酸タンク27と硫酸配管23とを接続する硫酸供給配管32と、硫酸供給配管32を流通する硫酸を加熱して温度調整する温度調整器33と、硫酸タンク27の内部の硫酸を硫酸供給配管32に移動させる第2の送液装置34とを含む。
【0055】
温度調整器33は、硫酸タンク27のHSO内に浸漬されていてもよいし、図2に示すように硫酸供給配管32の途中部に介装されていてもよい。また、硫酸供給部26は、硫酸供給配管32を流れる硫酸をろ過するフィルタ、および/または硫酸供給配管32を流れる硫酸の温度を計測する温度計をさらに備えていてもよい。なお、この実施形態では、硫酸供給部26が2つのタンクを有しているが、回収タンク29の構成が省略され、処理カップ11から回収された硫酸が直接に硫酸タンク27に供給される構成を採用してもよい。第1および第2の送液装置31,34は、例えばポンプである。ポンプは、硫酸タンク27内の硫酸を吸い込み、その吸い込んだ硫酸を吐出する。
【0056】
過酸化水素水供給ユニット22は、SPMノズル18に接続された過酸化水素水配管35と、過酸化水素水配管35を開閉するための過酸化水素水バルブ36と、過酸化水素水バルブ36の開度を調整して、過酸化水素水バルブ36を流通する過酸化水素水の流量を調整する過酸化水素水流量調整バルブ37とを含む。過酸化水素水バルブ36および過酸化水素水流量調整バルブ37は、流体ボックス4に収容されている。過酸化水素水配管35には、貯留ボックス6に収容された過酸化水素水供給源から、温度調整されていない常温(約23℃)程度の過酸化水素水が供給される。各バルブ36,37は制御装置3に接続され、制御装置3の制御下で動作できる。
【0057】
硫酸バルブ24および過酸化水素水バルブ36が開かれると、硫酸配管23からの硫酸および過酸化水素水配管35からの過酸化水素水が、SPMノズル18のケーシング(不図示)内へと供給され、ケーシング内において十分に混合(攪拌)される。この混合によって、硫酸と過酸化水素水とが均一に混ざり合い、硫酸および過酸化水素水の混合液であるSPMが生成される。SPMは、酸化力が強いペルオキソ一硫酸(Peroxymonosulfuric acid;HSO)を含み、混合前の硫酸および過酸化水素水の温度よりも高い温度(100℃以上。例えば160~220℃)まで昇温される。生成された高温のSPMは、SPMノズル18のケーシングの先端(例えば下端)に開口した吐出口182(図3参照)から吐出される。SPMノズル18のケーシングは、接続部混合部の一例である。
【0058】
図3は、実施形態のSPMノズル18の先端部を図解的に示す断面図である。SPMノズル18は内部に鉛直方向に延びる流路181を有しており、その流路181の先端が吐出口182に連通している。吐出口182は、SPMを吐出するために設けられており、SPMノズル18の下端の側面部に設けられており、水平方向に向けられている。SPM供給ユニット9からSPMノズル18に供給されたSPMは、流路181を通過することによって鉛直方向に移動し、その後、SPMノズル18の下端部で吐出口182を通って水平方向に吐出される。吐出口182から吐出されたSPMは、重力によって鉛直下方に落下する。SPMノズル18が基板Wの上方に配置されている場合、SPMノズル18から吐出されたSPMは基板Wの表面に着液する。
【0059】
このようにSPMノズル18において、SPMの吐出方向を水平方向にすることによって、SPMノズル18の下方にある基板Wに対するSPMが着地するときの速度(着液速度)を緩やかにできる。これにより、基板Wの上面に所定のパターン(配線パターンなど)が形成されている場合に、SPMの着液によって当該パターンが倒壊することを抑制できる。また、吐出口182が水平方向を向いているため、開口が鉛直下方を向いているときよりも、ぼた落ちを低減できる。「ぼた落ち」とは、ここではSPMノズル18から液体が吐出されないように制御されているとき(例えば、バルブ24,36が閉じられているとき)に、SPMノズル18から液体が液滴として落下することをいう。なお、吐出口182は、水平方向にまっすぐに向けられていることは必須ではなく、鉛直方向に交差する方向に向けられているとよい。したがって、例えば、吐出口182が鉛直方向下方と水平方向との合成方向に向けることによって、SPMが斜め下方に吐出されるようにしてもよい。
【0060】
硫酸流量調整バルブ25および過酸化水素水流量調整バルブ37によって、硫酸配管23および過酸化水素水配管35の開度が調整されることにより、SPMノズル18から吐出されるSPMの硫酸濃度を所定の範囲で調整できる。例えば、SPMノズル18から吐出されるSPMの硫酸濃度(混合比)は、流量比で、HSO:H=20:1(硫酸リッチな高濃度状態)~2:1(過酸化水素水リッチな低濃度状態)の範囲内、より好ましくは、HSO:H=20:1~3:1の範囲内で調整される。硫酸流量調整バルブ25および過酸化水素水流量調整バルブ37の動作は、制御装置3によって制御される。硫酸流量調整バルブ25、過酸化水素水流量調整バルブ37、および制御装置3は、流量変更部の一例である。
【0061】
硫酸供給部26は、処理カップ11から回収されたSPMを硫酸として再利用する。処理カップ11から回収されたSPMは回収タンク29に供給され、回収タンク29に溜められる。経時によって、SPMに含まれる過酸化水素水が分解し、回収タンク29に溜められたSPMは硫酸に変化する。但し、SPMから変化した硫酸は水を多く含むため、濃度が適宜調整される。硫酸供給部26において、回収タンク29の内部の硫酸は、硫酸タンク27に送られ、硫酸タンク27においてその濃度が調整される。これにより、SPMが硫酸として再利用される。
【0062】
リンス液供給ユニット10は、リンス液ノズル47を含む。リンス液ノズル47は、例えば、連続流の状態で液を吐出するストレートノズルであり、スピンチャック8の上方で、その吐出口を基板Wの上面中央部に向けて固定的に配置されている。なお、リンス液ノズル47は、制御装置3の制御下で動作するモータの作用によって、水平または鉛直方向に移動する可動ノズルであってもよい。制御装置3は、リンス液ノズル47を水平方向に移動させることによって、基板Wの上面内をリンス液で走査してもよい。
【0063】
リンス液ノズル47には、リンス液供給源からのリンス液が供給されるリンス液配管48が接続されている。リンス液配管48の途中部には、リンス液ノズル47からのリンス液の供給/供給停止を切り換えるためのリンス液バルブ49が介装されている。リンス液バルブ49が開かれると、リンス液配管48からリンス液ノズル47に供給されたリンス液が、リンス液ノズル47の下端に設定された吐出口から吐出される。また、リンス液バルブ49が閉じられると、リンス液配管48からリンス液ノズル47へのリンス液の供給が停止される。リンス液は、例えば脱イオン水(DIW)であるが、DIWに限定されない。リンス液は、例えば炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、アンモニア水および希釈濃度(例えば、10ppm~100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。また、リンス液は常温で使用してもよいし、ヒータで加熱して温水にしてから使用してもよい。
【0064】
処理カップ11は、スピンチャック8に保持されている基板Wよりも外方(回転軸線A1から離れる方向)に配置されている。処理カップ11は、例えば、絶縁材料を用いて形成されている。処理カップ11は、スピンベース16の側方を取り囲んでいる。スピンチャック8が基板Wを回転させている状態で、処理液が基板Wに供給されると、基板Wに供給された処理液が基板Wの周囲に振り切られる。処理液が基板Wに供給されるとき、上向きに開いた処理カップ11の上端部11aは、スピンベース16よりも上方に配置される。したがって、基板Wの周囲に排出された薬液や水などの処理液は、処理カップ11によって受け止められる。そして、処理カップ11に受け止められた処理液は、回収タンク29または図示しない廃液装置に送られる。
【0065】
処理カップ11は、円筒部材40と、円筒部材40の内側においてスピンチャック8を2重に取り囲むように固定的に配置された複数のカップ41,42と、基板Wの周囲に飛散した処理液(薬液またはリンス)を受け止めるための複数のガード43~45(第1、第2および第3のガード43,44,45)と、個々のガード43~45を独立して昇降させるガード昇降ユニット(流通先切り換えユニット)46とを含む。ガード昇降ユニット46は、例えばボールねじ機構で構成され、各ガード43~45を昇降させる昇降モータを含む。当該昇降モータは制御装置3に接続され、制御装置3の制御下で動作できる。
【0066】
処理カップ11は折り畳み可能であり、ガード昇降ユニット46が3つのガード43~45のうちの少なくとも一方を昇降させることにより、処理カップ11の展開および折り畳みが行われる。第1のカップ41は、円環状をなし、スピンチャック8と円筒部材40との間でスピンチャック8の周囲を取り囲んでいる。第1のカップ41は、基板Wの回転軸線A1に対してほぼ回転対称な形状を有している。第1のカップ41は、断面U字状をなしており、基板Wの処理に使用された処理液を集めて排液するための第1の溝50を区画している。第1の溝50の底部の最も低い箇所には、排液口51が開口しており、排液口51には、第1の排液配管52が接続されている。第1の排液配管52に導入される処理液は、排液装置(不図示)に送られ、当該装置で処理される。
【0067】
第2のカップ42は、円環状をなし、第1のカップ41の周囲を取り囲んでいる。第2のカップ42は、基板Wの回転軸線A1に対してほぼ回転対称な形状を有している。第2のカップ42は、断面U字状をなしており、基板Wの処理に使用された処理液を集めて回収するための第2の溝53を区画している。第2の溝53の底部の最も低い箇所には、排液/回収口54が開口しており、排液/回収口54には、共用配管55が接続されている。共用配管55には、回収配管56および第2の排液配管57がそれぞれ分岐接続されている。回収配管56の他端は、硫酸供給部26の回収タンク29に接続されている。回収配管56には回収バルブ58が介装されており、第2の排液配管57には排液バルブ59が介装されている。排液バルブ59を閉じながら回収バルブ58を開くことにより、共用配管55を通る液が回収配管56に導かれる。また、回収バルブ58を閉じながら排液バルブ59を開くことにより、共用配管55を通る液が第2の排液配管57に導かれる。すなわち、回収バルブ58および排液バルブ59は、共用配管55を通る液の流通先を、回収配管56と第2の排液配管57との間で切り換える切り換えユニットとして機能する。第2の排液配管57は、第2のガード44の内壁44a、第2のカップ42および共用配管55を洗浄する際に、その洗浄液を捨てるために専ら用いられる。
【0068】
最も内側の第1のガード43は、スピンチャック8の周囲を取り囲み、スピンチャック8による基板Wの回転軸線A1に対してほぼ回転対称な形状を有している。第1のガード43は、スピンチャック8の周囲を取り囲む円筒状の下端部63と、下端部63の上端から外方(基板Wの回転軸線A1から遠ざかる方向)に延びる筒状部64と、筒状部64の上面外周部から鉛直上方に延びる円筒状の中段部65と、中段部65の上端から内方(基板Wの回転軸線A1に近づく方向)に向かって斜め上方に延びる円環状の上端部66とを含む。下端部63は、第1の溝50上に位置し、第1のガード43と第1のカップ41とが最も近接した状態で、第1の溝50の内部に収容される。上端部66の内周端は、平面視で、スピンチャック8に保持される基板Wよりも大径の円形をなしている。また、上端部66は、図2に示すようにその断面形状が直線状であってもよいし、また、例えば滑らかな円弧を描きつつ延びていてもよい。
【0069】
第1のガード43は、例えば耐薬性の樹脂材料(例えば、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素樹脂)を用いて形成されている。第1のガード43の内壁43aを含む全域は、白色を呈している。白色は、アイボリー、クリーム色、オフホワイト、きなり色、ライトグレー、カスタードクリーム色、ベージュなどを含む。
【0070】
内側から2番目の第2のガード44は、第1のガード43の外側にいて、スピンチャック8の周囲を取り囲み、スピンチャック8による基板Wの回転軸線A1に対してほぼ回転対称な形状を有している。第2のガード44は、第1のガード43と同軸の円筒部67と、円筒部67の上端から中心側(基板Wの回転軸線A1に近づく方向)斜め上方に延びる上端部68とを有している。上端部68の内周端は、平面視で、スピンチャック8に保持される基板Wよりも大径の円形をなしている。なお、上端部68は、図2に示すようにその断面形状が直線状であってもよいし、また、例えば滑らかな円弧を描きつつ延びていてもよい。上端部68の先端は、処理カップ11の上端部11aの開口を区画している。
【0071】
円筒部67は、第2の溝53上に位置している。また、上端部68は、第1のガード43の上端部66と上下方向に重なるように設けられ、第1のガード43と第2のガード44とが最も近接した状態で上端部66に対して微少な隙間を保って近接するように形成されている。第2のガード44は、例えば耐薬性の樹脂材料(例えば、PFA、PCTFE、PTFEなどのフッ素樹脂)を用いて形成されている。第2のガード44の内壁44aを含む全域は、白色を呈している。白色は、アイボリー、クリーム色、オフホワイト、きなり色、ライトグレー、カスタードクリーム色、ベージュ等を含む。
【0072】
最も外側の第3のガード45は、第2のガード44の外側において、スピンチャック8の周囲を取り囲み、スピンチャック8による基板Wの回転軸線A1に対してほぼ回転対称な形状を有している。第3のガード45は、第2のガード44と同軸の円筒部70と、円筒部70の上端から中心側(基板Wの回転軸線A1に近づく方向)斜め上方に延びる上端部71とを有している。上端部71の内周端は、平面視で、スピンチャック8に保持される基板Wよりも大径の円形をなしている。なお、上端部71は、図2に示すようにその断面形状が直線状であってもよいし、また、例えば滑らかな円弧を描きつつ延びていてもよい。
【0073】
第3のガード45は、例えば耐薬性の樹脂材料(例えば、PFA、PCTFE、PTFEなどのフッ素樹脂)を用いて形成されている。第3のガード45の内壁を含む全域は、白色を呈している。白色は、アイボリー、クリーム色、オフホワイト、きなり色、ライトグレー、カスタードクリーム色、ベージュ等を含む。
【0074】
この実施形態では、第1のカップ41の第1の溝50、第1のガード43の内壁43aおよびスピンチャック8のケーシングの外周によって、基板Wの処理に用いられた薬液が導かれる第1の流通空間(換言すると、排液空間)101が区画されている。また、第2のカップ42の第2の溝53、第1のガード43の外壁43bおよび第2のガード44の内壁44aによって、基板Wの処理に用いられた薬液が導かれる第2の流通空間(換言すると、回収空間)102が区画されている。第1の流通空間101と第2の流通空間102とは互いに隔離されている。
【0075】
ガード昇降ユニット46は、ガードの上端部が基板Wより上方に位置する上位置と、ガードの上端部が基板Wより下方に位置する下位置との間で、各ガード43~45を昇降させる。ガード昇降ユニット46は、上位置と下位置との間の任意の位置で各ガード43~45を保持できる。基板Wへの処理液の供給や基板Wの乾燥は、いずれかのガード43~45が基板Wの周端面に対向している状態(捕獲可能位置に配置されている状態)で行われる。
【0076】
最も内側の第1のガード43を基板Wの周端面に対向させる、処理カップ11の第1のガード対向状態(図8(a)参照)では、第1~第3のガード43~45の全てが上位置に配置される。内側から2番目の第2のガード44を基板Wの周端面に対向させる、処理カップ11の第2のガード対向状態(図8(b)参照)では、第2および第3のガード44,45が上位置に配置され、かつ第1のガード43が下位置に配置される。最も外側の第3のガード45を基板Wの周端面に対向させる、処理カップ11の第3のガード対向状態(図8(c)参照)では、第3のガード45が上位置に配置され、かつ第1および第2のガード43,44が下位置に配置される。全てのガードを、基板Wの周端面から退避させる退避状態(図2参照)では、第1~第3のガード43~45の全てが下位置に配置される。
【0077】
異物検知ユニット150は、基板Wから排出されるSPMを撮像する撮像ユニット152を含む。異物検知ユニット150は、撮像ユニット152によって撮像された画像に含まれる薬液の色に基づいて、基板Wから排出されるSPMに含まれるレジスト残渣を検知する。異物検知ユニット150は、撮像ユニット152の他、制御装置3の次に述べる、画像処理部3Bおよび撮像制御装置3Cを含む。
【0078】
撮像ユニット152は、カメラ153と光源(不図示)を含む。カメラ153は、レンズと、このレンズによって結像された光学像を電気信号に変換する撮像素子と、変換の電気信号に基づいて画像信号を生成して、制御装置3の画像処理部3B(図4参照)に送信する撮像回路とを含む。撮像素子は、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等を含む。カメラ153は、1秒間に数千~数万枚の速度で撮像可能な高速度カメラであってもよいし、1秒間に10枚~100枚程度の速度で撮像可能な一般的なカメラであってもよい。撮像画像は、静止画に限られず、動画であってもよい。カメラ153のレンズは、スピンベース16の上面に向けられている。カメラ153が撮像する撮像対象領域は、例えば、各挟持部材17に保持されている基板Wの上面全体、および処理位置にあるSPMノズル18を含んでいてもよい。ただし、カメラ153は、後述する判定領域JA1のみを撮像するように設置されてもよい。光源は、スピンベース16よりも上方に配置されており、各挟持部材17に保持される基板Wの上面を照明する。光源は、例えば白色光の光源である。
【0079】
図4は、基板処理装置1の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。制御装置3は、例えばマイクロコンピュータを用いて構成されている。制御装置3はCPU等の演算ユニット、固定メモリデバイス、ハードディスクドライブ等の記憶ユニット、および入出力ユニットを有している。記憶ユニットは、演算ユニットが実行するコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を含む。記録媒体には、制御装置3に後述するレジスト除去処理を実行させるようにステップ群が組み込まれている。
【0080】
制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、スピンモータM(回転モータ)、ノズル移動ユニット20(移動モータ)、ガード昇降ユニット46、第1および第2の送液装置31,34、温度調整器33等の動作を制御する。また、制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、硫酸バルブ24、過酸化水素水バルブ36、リンス液バルブ49等の開閉動作を制御する。また、制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、硫酸流量調整バルブ25、過酸化水素水流量調整バルブ37の開度を調整する。
【0081】
制御装置3は、画像処理部3B、撮像制御装置3C、およびノズル移動制御装置3Dを含む。これらの機能処理部は、例えば、制御装置3が所定のプログラム処理を実行することによってソフトウエア的に実現される。
【0082】
制御装置3には、カメラ153が接続されている。撮像制御装置3Cは、カメラ153の撮像動作を制御する。カメラ153からの画像信号は、画像処理部3Bに入力される。画像処理部3Bは、この画像信号が示す撮影画像に対して画像処理を行う。画像処理部3Bは、撮影画像上において、基板Wの上面に固着している対象物(レジストまたはレジストのうち硬化した上層部)が剥離された剥離領域R1と、当該対象物が未剥離である未剥離領域R2との境界B1を検出する。ノズル移動制御装置3Dは、検出された境界B1の位置に応じて、ノズル移動ユニット20の移動モータを制御する。これらの各処理については、後に詳述する。
【0083】
<動作説明>
図5は、処理ユニット2による基板処理例を説明するための流れ図である。図5に示す基板処理例は、基板Wの上面(主面)からレジストを除去するレジスト除去処理である。図5に示す基板処理は、特に断らない限り、制御装置3の制御下で行われるものとする。本例における除去対象物であるレジストは、例えば樹脂(ポリマー)、感光剤、添加剤、溶剤を主成分としている。
【0084】
レジスト除去処理は、搬入工程S1、回転開始工程S2、第1SPM工程S31、第2SPM工程S32、リンス工程S4、乾燥工程S5、回転停止工程S6、および搬出工程S7を含む。以下、各工程について説明する。
【0085】
搬入工程S1では、チャンバ7の内部に処理対象の基板Wが搬入される。ここで処理対象とされる基板Wは、イオン注入工程に適用可能なレジストが塗布された基板であって、かつイオン注入工程後の基板であるものとする。イオン注入工程後の基板Wは、上から順に、硬質化した上層部と、硬質化していない下層部とを有する。硬質化した上層部は、硬質化していない下層部よりも、SPMによる除去が相対的に困難である。また、対象物であるレジスト(上層部および下層部)が、基板Wの上面全体に固着しているものとする。さらに、チャンバ7に搬入される基板Wは、レジストをアッシングするための処理を受けていないものとする。
【0086】
搬入工程S1では、制御装置3は、SPMノズル18等が全てスピンチャック8の上方から退避している状態で、基板Wを保持している基板搬送ロボットCR(図1参照)のハンドをチャンバ7の内部に進入させることにより、基板Wがその表面(デバイス形成面)を上方に向けた状態でスピンチャック8に受け渡され、スピンチャック8に保持される(基板保持工程)。
【0087】
搬入工程S1の後、回転開始工程S2が行われる。回転開始工程S2では、制御装置3が、スピンモータMを制御して基板Wの回転を開始させる。基板Wの回転速度は既定の液処理速度(150~1500rpmの範囲内、より好ましくは150~300rpmの範囲内)まで上昇され、その液処理速度に維持される。
【0088】
回転開始工程S2によって基板Wの回転速度が液処理速度に達すると、第1および第2SPM工程S31,S32(薬液供給工程)が行われる。ここでは、先に第1SPM工程S31が行われ、その後、第2SPM工程S32が行われる。
【0089】
図6は、第1SPM工程S31における処理ユニット2を概略的に示す斜視図である。図6(a)~(d)では、回転軸線A1まわりに回転する基板Wと、その基板Wの上方を移動するSPMノズル18を示している。また、図6(a)および(b)は、SPMノズル18が中心位置L1にあるときを示しており、図6(c)は、SPMノズル18が中心位置L1から周縁位置L2との間の中間位置L12にあるときを示しており、図6(d)はSPMノズル18が周縁位置L2にあるときを示している。
【0090】
第1SPM工程S31では、制御装置3がノズル移動ユニット20を制御して、SPMノズル18を退避位置から処理位置である中心位置L1に移動させる。図6(a)に示すように、中心位置L1は、SPMノズル18から吐出されたSPMが基板Wの上面に着液する位置(以下、この位置を「着液位置LP1」とも称する。)が基板Wの回転中心に一致するときのノズル位置である。基板Wの回転中心は、複数の挟持部材17の回転中心である回転軸線A1に一致する水平位置である。SPMノズル18が中心位置L1に移動すると、制御装置3がバルブ24,36を同時に開くことによって、硫酸および過酸化水素水をSPMノズル18に供給する。SPMノズル18の内部において硫酸と過酸化水素水とが混合され、高温(例えば、160~220℃)のSPMが生成される。SPMは、SPMノズル18の吐出口182から吐出され、基板Wの上面中央部に着液する。ここでは、第1SPM工程S31の全期間に亘って、SPMの濃度が一定に保たれる。なお、第1SPM工程S31では、制御装置3がバルブ25,37を制御することによって、過酸化水素水リッチなSPM(例えば、流量比でHSO:H=3:1~5:1の範囲)が基板Wに供給される。
【0091】
SPMノズル18から吐出されたSPMは、基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。そのため、SPMが基板Wの上面全域に供給され、基板Wの上面全域を覆うSPMの液膜が基板W上に形成される。これにより、レジストとSPMとが化学反応し、基板W上のレジストがSPMによって基板Wから除去される。基板Wの周縁部に移動したSPMは、基板Wの周縁部から基板Wの側方に向けて飛散する。
【0092】
SPMノズル18が中心位置L1に固定された状態で、SPMが基板Wの表面中央部に供給されると、図6(b)に示すように、基板Wの中央部に剥離領域R1が形成される。基板Wは回転軸線A1まわりに回転するため、剥離領域R1は平面視においてほぼ円形である。第1SPM工程S31では、制御装置3は、ノズル移動ユニット20を制御して、SPMノズル18を中心位置L1から中間位置L12を経由して周縁位置L2まで移動させる。図6(d)に示すように、周縁位置L2は、着液位置LP1が基板Wの周縁部に一致するノズル位置である。基板Wの周縁部は基板Wの外周端から僅かに内側(例えば2~3mm内側)までの環状領域である。ノズル移動ユニット20は、SPMノズル18を、径方向外方である第1方向D1に移動させる。これにより、SPMの着液位置LP1も、第1方向D1に移動する。硫酸と過酸化水素水とを混合して生成されるペルオキソ一硫酸は時間の経過とともにレジストに対する反応性が低下し、かつ温度低下によっても反応性が低下する。このため、基板Wに対するSPMの着液位置LP1を移動させることによって、高活性を有するSPMを基板Wの全域に順次供給できる。
【0093】
また、第1SPM工程S31では、制御装置3は、SPMノズル18を中心位置L1から周縁位置L2まで移動させる場合、剥離領域R1と未剥離領域R2の境界B1の位置に応じてSPMノズル18を移動させる。具体的には、制御装置3の画像処理部3Bが、カメラ153によって取得される撮影画像を処理することによって、境界B1を検出する。画像処理部3Bは、境界検出部の一例である。ノズル移動制御装置3Dは、画像処理部3Bによって検出された境界B1の径方向における位置(以下、「径方向位置」と称する。)に応じて、SPMノズル18を移動させる。このため、第1SPM工程S31では、SPMノズル18が中心位置L1から周縁位置L2に向けて移動する間の移動速度は、必ずしも一定ではなく、境界B1の径方向位置(すなわち、レジストの剥離状況)に応じて変動し得る。
【0094】
図7は、第1SPM工程S31においてカメラ153で取得される撮影画像PI1の一例を示す図である。図7に示すように、ノズル移動制御装置3Dは、撮影画像PI1に像として写る基板Wの上面と重なる位置に、判定領域JA1を設定する。判定領域JA1は、ここでは、基板Wの上面における、回転軸線A1を挟んで第1方向D1とは反対の第2方向D2側に設定されており、第1方向D1と平行に延びる長方形状に設定されている。第2方向D2は、第1方向D1に平行であってかつ第1方向D1とは反対向きである。判定領域JA1は、ここでは回転軸線A1を含むように設けられているが、これは必須ではない。
【0095】
SPMが未剥離領域R2のレジストと反応すると、図7に示すように、未剥離領域R2の内側に剥離領域R1が形成される。画像処理部3Bは、判定領域JA1において、剥離領域R1と未剥離領域R2との境界B1を検出する。境界B1の検出は、撮影画像PI1のうち判定領域JA1の画像部分に対して、公知の画像処理を適用して行われるとよい。この画像処理としては、例えば、剥離領域R1に対応する輝度値と未剥離領域R2に対応する輝度値との差を大きくなるように変換するコントラスト調整、2値化処理、または剥離領域R1と未剥離領域R2とのエッジを抽出する処理(ケニーフィルタまたはソーベルフィルタ等を用いたエッジ検出))を採用してもよい。
【0096】
図7に示すように、撮影画像PI1の判定領域JA1においては、境界B1は、径方向外方に凸する湾曲線状に並ぶ画素群として現れる。そこで、この湾曲線状の画素群のうち、最も径方向外方の画素の径方向位置、最も径方向内方の画素の径方向位置を、境界B1の径方向位置としてもよい。あるいは、複数の画素の径方向位置を平均するなどして、複数の画素から境界B1の径方向位置が導出されてもよい。
【0097】
ノズル移動制御装置3Dは、所定の時間間隔毎に、境界B1の移動速度を適宜導出し、その移動速度に応じてSPMノズル18を移動させてもよい。例えば、SPMノズル18の移動速度を、導出された境界B1の移動速度に一致させてもよい。この場合、着液位置LP1を境界B1に追従するようにSPMノズル18を移動させることができる。
【0098】
なお、図6(a)のように基板Wの上面に剥離領域R1が無い初期状態から図6(b)のように所定の大きさの剥離領域R1が形成される状態となるまでは、境界B1の移動速度を精度良く求めることが困難な場合がある。この場合、例えば境界B1の径方向位置が既定の位置となってから、境界B1の移動速度を求めるようにしてもよい。これにより、剥離領域R1が既定の大きさとなってから、SPMノズル18の移動を開始することになるため、残渣の発生を抑制しつつ剥離領域R1を良好に広げることができる。
【0099】
また、ノズル移動制御装置3Dは、検出された境界B1の径方向位置から、SPMノズル18を配置する位置を導出してもよい。例えば、ノズル移動制御装置3Dは、所定の時間間隔毎に、着液位置LP1が境界B1から第2方向D2に所定距離dだけ離れた位置となるノズル位置を導出し、そのノズル位置にSPMノズル18を移動させてもよい。この場合も、ノズル移動制御装置3Dは、着液位置LP1が境界B1に追従するようにSPMノズル18を移動させることができる。
【0100】
また、本例では、SPMノズル18の吐出口182は、そのSPMノズル18の移動方向(スキャン方向)である第1方向D1とは反対向きの第2方向D2に向けられている。このため、SPMノズル18からは、第2方向D2にSPMが吐出される。これにより、径方向内方にSPMを供給できるため、径方向外方に供給する場合よりも基板Wの上面におけるSPMの滞在時間を延長できる。したがって、良好にレジストを剥離できる。なお、吐出口182が第2方向D2に向けられていることは必須ではなく、第1方向D1に向けられていてもよい。
【0101】
基板Wの表面のレジスト(硬化した上層部を含む。)とSPMとが反応すると、ヒュームが発生する場合がある。ヒュームとはSPMおよびレジストの反応に由来するガスまたはミストである。本実施形態では、排気ダクト13が基板Wの周囲(基板Wよりも径方向外側の領域)において径方向外方の吸引力を発生させることにより、基板Wの上方に発生したヒュームが径方向外方に移動する。このため、判定領域JA1における境界B1の検出が、ヒュームによって妨げられることが抑制される。
【0102】
処理ユニット2では、基板Wの周囲の領域には、第1領域SA1と第2領域SA2とを含む(図7参照)。第2領域SA2は、回転軸線A1を挟んで第1領域SA1とは反対側にある領域である。第1領域SA1は第2領域SA2よりも排気ダクト13に近い領域であるため、第1領域SA1における上記吸引力は、第2領域SA2よりも大きい。本例では、第1SPM工程S31において、SPMノズル18が第1領域SA1に近づくように移動する。そして、判定領域JA1は、基板Wの表面のうち、第1領域SA1よりも第2領域SA2に近い領域に設定されている。基板Wの上面で発生したヒュームは、第2領域SA2よりも吸引力の強い第1領域SA1の方へ移動しやすい。このため、レジストとSPMと反応によってヒュームが発生したとしても、第2領域SA2に近い判定領域JA1ではヒュームが軽減される。したがって、判定領域JA1における境界B1の検出がヒュームによって困難となることを抑制できる。
【0103】
SPMノズル18が周縁位置L2に移動すると、制御装置3は、バルブ24,36を閉じることによって、SPMノズル18からのSPMの吐出を停止させる。これにより、第1SPM工程S31が終了する。続いて、第2SPM工程S32が行われる。
【0104】
第2SPM工程S32では、制御装置3がSPMノズル18を中心位置L1に移動させる。SPMノズル18が中心位置L1に配されると、制御装置3が硫酸バルブ24および過酸化水素水バルブ36を同時に開くことによって、硫酸および過酸化水素水をSPMノズル18に供給する。また、第2SPM工程S32では、制御装置3がバルブ25,37を制御することによって、硫酸リッチなSPM(例えば、流量比でHSO:H=20:1)が基板Wに供給される。
【0105】
第2SPM工程S32では、制御装置3がSPMノズル18を中心位置L1から周縁位置L2に移動させる。これにより、基板Wの表面中央部から周縁部にかけて、硫酸リッチなSPMが供給される。その後、制御装置3は、ノズル移動ユニット20(図2参照)を制御して、SPMノズル18を退避位置に戻させる。
【0106】
この処理例では、先の第1SPM工程S31において過酸化水素水リッチなSPMで基板Wを処理する。このため、第1SPM工程S31において、基板Wにおけるレジストの硬質化した上層部はほぼ除去される。このため、第1SPM工程S31の後、基板Wにレジストが残存していたとしても、当該レジストは比較的容易に剥離可能である。このため、第2SPM工程S32においては、硫酸リッチなSPMで処理することにより、残存するレジストを良好に除去できる。
【0107】
第2SPM工程S32の後、制御装置3は、リンス工程S4を行う。リンス工程S4では、リンス液を基板Wに供給される。具体的には、制御装置3は、リンス液バルブ49を開いて、基板Wの上面中央部に向けてリンス液ノズル47からリンス液を吐出させる。リンス液ノズル47から吐出されたリンス液は、SPMによって覆われている基板Wの上面中央部に着液する。基板Wの上面中央部に着液したリンス液は、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの上面上を基板Wの周縁部に向けて流れる。これにより、基板W上のSPMが、リンス液によって外方に押し流され、基板Wの周囲に排出される。これにより、基板Wの上面の全域において残存するSPMおよびレジスト(つまり、レジスト残渣)が洗い流される。レジスト残渣は、例えば炭化物である。リンス工程S4の開始から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、リンス液バルブ49を閉じて、リンス液ノズル47からのリンス液の吐出を停止させる。
【0108】
リンス工程S4の後、基板Wを乾燥させる乾燥工程S5が行われる。乾燥工程S5では、制御装置3は、スピンモータMを制御することにより、第1および第2SPM工程S31,S32並びにリンス工程S4における基板Wの回転速度よりも大きい乾燥回転速度(例えば数千rpm)まで基板Wを加速させ、乾燥回転速度で基板Wを回転させる。これにより、大きな遠心力が基板W上の液に加わり、基板Wに付着している液が基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wから液が除去され、基板Wが乾燥する。
【0109】
乾燥工程S5において基板Wの高速回転が開始されてから所定時間が経過すると、回転停止工程S6が行われる。回転停止工程S6では、制御装置3が、スピンモータMを制御することにより、スピンチャック8による基板Wの回転を停止させる。回転停止工程S6の後、搬出工程S7が行われる。搬出工程S7では、制御装置3が、基板搬送ロボットCRのハンドをチャンバ7の内部に進入させ、基板搬送ロボットCRのハンドにスピンチャック8上の基板Wを保持させる。その後、制御装置3は、基板搬送ロボットCRのハンドをチャンバ7内から退避させる。これにより、上面(デバイス形成面)からレジストが除去された基板Wがチャンバ7から搬出される。
【0110】
図8は、各工程における各ガード43,44の動作を説明するため図解的な側面図である。図8(a)は第1SPM工程S31を説明するための図解的な図であり、図8(b)は第2SPM工程S32を説明するための図解的な図であり、図8(c)は乾燥工程S5を説明するための図解的な図である。
【0111】
上述したように、第1SPM工程S31でレジストの除去が可能であるため、第2SPM工程S32で基板に供給されるSPMは、レジストの除去にほとんど寄与しない場合がある。このようなSPMについては、環境への配慮、コストなどの観点から、廃棄せずに回収することが望ましい場合がある。そこで、ここでは、第2SPM工程S32において、SPMの回収が図られる。
【0112】
第1SPM工程S31では、図8(a)に示すように、制御装置3が、処理カップ11を制御して、第1のガード対向状態とする。第2SPM工程S32では、図8(b)に示すように、制御装置3が、処理カップ11を制御して、第2のガード対向状態とする。
【0113】
第1SPM工程S31では、基板Wの表面に多くのレジストが剥離するため、この期間に基板Wから飛散する(排出される)SPMには、多量のレジストが含まれる。この多量のレジストを含むSPMは再利用に適さないため、回収せずに廃棄されるのが好ましい。そこで、第1SPM工程S31では、SPMノズル18が処理位置に配置された後、制御装置3は、ガード昇降ユニット46を制御して、第1~第3のガード43~45を上位置に上昇させる。これにより、図8(a)に示すように、第1のガード43を基板Wの周端面に対向させる。これにより、第1のガード対向状態となる。
【0114】
第1のガード状態では、基板Wの周縁部から飛散するSPMが、第1のガード43の内壁43a(中段部65の内壁43a)に着液する。内壁43aに捕獲されたSPMは、第1のガード43の内壁43aを伝って流下し、第1のカップ41に受けられ、第1の排液配管52に送られる。第1の排液配管52に送られたSPMは、機外の廃棄処理設備に送られる。
【0115】
前述のように、第1SPM工程S31では、基板Wから飛散する(排出される)SPMには多量のレジストが含まれる。このため、基板Wから排出されるレジストを含むSPMが、第1の流通空間101を通って排液される。すなわち、回収して再利用されることはない。
【0116】
第2SPM工程S32が開始されると、制御装置3は、ガード昇降ユニット46を制御して、第1のガード43を上位置から下位置まで下降させる。これによって、図8(b)に示すように、処理カップ11を第2のガード対向状態とする。第2SPM工程S32では、基板Wの周縁部から飛散するSPMが、第2のガード44の内壁44aに捕獲される。そして、第2のガード44の内壁44aを流下するSPMは、第2のカップ42、共用配管55および回収配管56を通って、硫酸供給部26の回収タンク29に送られる。すなわち、基板Wの周縁部から飛散するSPMは、第2の流通空間102を通って回収され、再利用に供される。
【0117】
第2SPM工程S32の後、リンス工程S4が開始されると、制御装置3は、第1のガード43を上位置まで上昇させることによって、処理カップ11を第1のガード対向状態とする(図8(a)参照)。続いて、乾燥工程S5が開始されると、制御装置3は第1および第2のガード43,44を下位置まで下降させる。これによって、処理カップ11が、図8(c)に示すように、第3のガード対向状態とされる。さらに、搬出工程S7が開始されると、制御装置3は、第3のガード45を、下位置まで下降させる。これにより、第1~第3のガード43~45の全てが下位置に配置される。これにより、基板搬送ロボットCRが、第1~第3のガード43~45に干渉することなく基板Wをチャンバ7から搬出できる。
【0118】
以上のように、第2SPM工程S32では、処理カップ11が第1のガード対向状態から第2のガード対向状態に変遷することによって、基板Wから排出されるSPMの流通先が、第1の排液配管52から回収配管56に切り換えられる。これにより、基板Wから排出されるSPMの流通先を、排液から回収に切り換えできる。
【0119】
<2. 変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0120】
上記実施形態では、第1SPM工程S31において、ノズル移動制御装置3DがSPMノズル18を中心位置L1から周縁位置L2へ径方向外方(回転軸線A1から離れる方向)に移動させているが、これは必須ではない。例えば、ノズル移動制御装置3DがSPMノズル18を周縁位置L2から中心位置L1へ径方向内方(回転軸線A1に近づく方向)に移動させてもよい。この場合においても、ノズル移動制御装置3Dが境界B1の位置に応じてSPMノズル18を移動させることによって、レジストの剥離を剥離状況に応じて良好に行うことができる。これにより、基板Wの上面にレジスト残渣が生じることを低減できる。また、第2SPM工程S32においても、SPMノズル18を回転軸線A1に近づけるように移動させてもよい。
【0121】
上記実施形態では、基板処理装置1において、第1SPM工程S31の後、第2SPM工程S32が行われるが、第2SPM工程S32が実行されることは必須ではない。例えば、第1SPM工程S31の後、第2SPM工程S32をスキップしてリンス工程S4が行われてもよい。
【0122】
上記実施形態では、基板Wの上面全体に除去対象物であるレジストが固着している基板について、説明したが、必ずしも上面全体にレジストが固着している基板Wに限定されない。例えば、処理ユニット2において、基板Wの上面のうち一部の領域にだけ除去対象物であるレジストが固着していてもよい。このような基板Wにおいても、境界B1の位置に応じてSPMノズル18を移動させることにより、対象物であるレジストを良好に除去できる。また、この場合、レジストが固着している領域にSPMが供給されるようにSPMノズル18の移動範囲を限定してもよい。
【0123】
基板処理装置1において処理対象となる基板はイオン注入工程後の基板Wに限定されるものではなく、例えば一般的な露光処理後の基板であってもよい。
【0124】
また、基板Wの上面全体のレジストを除去することは必須ではない。例えば、基板Wの上面全体のうち、一部だけを除去対象領域に設定されてもよい。この場合、その除去対象領域の範囲内にSPMが着液するように、制御装置3がSPMノズル18を移動させるとよい。
【0125】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0126】
1 基板処理装置
2 処理ユニット
3 制御装置
7 チャンバ(処理室)
8 スピンチャック
9 SPM供給ユニット
11 処理カップ
13 排気ダクト(排気部)
153 カメラ
16 スピンベース
17 挟持部材(基板保持具)
18 SPMノズル
182 吐出口
19 ノズルアーム
20 ノズル移動ユニット
21 硫酸供給ユニット
22 過酸化水素水供給ユニット
23 硫酸配管
24 硫酸バルブ
25 硫酸流量調整バルブ
26 硫酸供給部
35 過酸化水素水配管
36 過酸化水素水バルブ
37 過酸化水素水流量調整バルブ
3B 画像処理部(境界検出部)
3C 撮像制御装置
3D ノズル移動制御装置
41,42 カップ
43,44,45 ガード
46 ガード昇降ユニット
51 排液口
54 回収口
56 回収配管
A1 回転軸線
B1 境界
D1 第1方向
D2 第2方向
JA1 判定領域
L1 中心位置
L2 周縁位置
LP1 着液位置
M スピンモータ(回転モータ)
PI1 撮影画像
R1 剥離領域
R2 未剥離領域
SA1 第1領域
SA2 第2領域
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8