(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
G01K 7/24 20060101AFI20220928BHJP
H03M 3/02 20060101ALI20220928BHJP
G01R 27/02 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G01K7/24 D
H03M3/02
G01R27/02 R
(21)【出願番号】P 2018247124
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】奥田 益央
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 明美
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-257877(JP,A)
【文献】特開2013-167520(JP,A)
【文献】特開2007-333574(JP,A)
【文献】実開平1-57825(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 7/24
G01R 27/02
H03M 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準抵抗の一端が接続される第1の端子と、
前記基準抵抗の他端が接続される第2の端子と、
前記第2の端子と接続され、かつ、センサ抵抗の一端及び第1のコンデンサの一端が接続される第3の端子と、
前記センサ抵抗の他端及び第2のコンデンサの他端が接続される第4の端子と、
前記第1の端子に第1の基準電圧を出力する第1のバッファと、
前記第4の端子に第2の基準電圧を出力する第2のバッファと、
前記第3の端子を介して入力される入力電圧を増幅してアナログ信号を生成するプリバッファと、
前記第1の基準電圧及び前記第2の基準電圧を参照し、前記アナログ信号をデジタル値に変換して、前記アナログ信号の信号レベルを示すデジタルコードを含む出力データを出力するアナログデジタル変換回路と、を有し、
前記第1の基準電圧は、高電位側基準電圧と低電位側基準電圧との一方に電圧値が時分割で切り替えられ、
前記第2の基準電圧は、高電位側基準電圧と低電位側基準電圧との他方に電圧値が時分割で切り替えられ、
前記アナログデジタル変換回路は、
前記第1の基準電圧として前記高電位側基準電圧が与えられ、前記第2の基準電圧として前記低電位側基準電圧が与えられる第1の変換フェイズで得られる第1の出力データと、
前記第1の基準電圧として前記低電位側基準電圧が与えられ、前記第2の基準電圧として前記高電位側基準電圧が与えられる第2の変換フェイズで得られる第2の出力データと、
を前記出力データとして出力し、
前記第1の出力データと前記第2の出力データは、前記センサ抵抗の抵抗値の算出に用いられる半導体装置。
【請求項2】
前記第1のバッファの反転端子と出力端子とを接続する帰還配線に挿入される第1のスイッチと、
前記第1のバッファの反転端子と前記第3の端子との間に設けられる第2のスイッチと、
前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチの開閉状態を制御するスイッチ制御回路と、を有し、
前記スイッチ制御回路は、
前記第1の基準電圧及び前記第2の基準電圧として与えられる電圧値が切り替えられたあとの第1のプリチャージ期間に前記第1のスイッチをオフ、前記第2のスイッチをオンとし、
前記第1のプリチャージ期間終了後は、前記第1のスイッチをオン、前記第2のスイッチをオフとする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
第1の基準電圧として高電位側基準電圧と低電位側基準電圧の一方を出力し、第2の基準電圧として前記高電位側基準電圧と前記低電位側基準電圧の他方を出力し、前記第1の基準電圧として出力する電圧及び前記第2の基準電圧として出力する電圧を時分割で切り替えるリファレンス電圧生成回路を有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第3の端子と前記プリバッファとを接続する入力配線に設けられる入力抵抗と、
第3のコンデンサの一端が接続され、前記第3のコンデンサの他端を前記入力抵抗と前記プリバッファの入力端子とを接続する配線に接続する第5の端子と、
前記入力抵抗を一時的にバイパスする経路を構成するバイパス回路と、を有し、
前記バイパス回路は、
前記入力抵抗に並列に接続される第3のスイッチと、
前記入力抵抗の前記第3の端子側の端子に反転端子が接続され、正転端子が前記入力抵抗の前記プリバッファ側の端子に接続されるオペアンプと、
前記オペアンプの出力端子と、前記オペアンプの正転端子との間に接続される第4のスイッチと、を有し、
前記スイッチ制御回路は、
前記第1のプリチャージ期間に前記第3のスイッチをオフ、前記第4のスイッチをオンとし、
前記第1のプリチャージ期間の直後に設定される第2のプリチャージ期間において、前記第1のスイッチ、前記第3のスイッチをオン、前記第2のスイッチ及び前記第4のスイッチをオフとし、
前記第2のプリチャージ期間終了後は、前記第1のスイッチをオン、前記第2のスイッチ、前記第3のスイッチ及び前記第4のスイッチをオフとする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記センサ抵抗は、複数のセンサ抵抗を含み、
前記第3の端子及び前記第4の端子は、前記複数のセンサ抵抗に対応した個数が設けられ、
前記複数のセンサ抵抗の何れか1つを時分割で選択して、選択した前記センサ抵抗から得られる前記入力電圧を前記プリバッファに伝達するマルチプレクサを有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1の基準電圧から前記マルチプレクサのオン抵抗に起因して生じる誤差電圧を減算して、第3の基準電圧を生成し、前記第3の基準電圧を前記第1の基準電圧に代えて前記アナログデジタル変換回路に与える減算回路を有する請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記アナログデジタル変換回路は、
前記アナログ信号とフィードバック信号とを加算する加算器と、
前記加算器の出力を平滑化するループフィルタと、
前記ループフィルタの出力信号をデジタル出力値に変換するデジタル変換部と、
前記デジタル出力値をデコードしてフィードバックデジタル値を出力するデコーダと、
前記第1の基準電圧と前記第2の基準電圧を参照し、前記フィードバックデジタル値をアナログ値に変換して前記フィードバック信号を生成するデジタルアナログ変換回路と、を有し、
前記デコーダは、前記第1の変換フェイズの期間に用いる第1のデコードルールと、前記第2の変換フェイズの期間に用いる第2のデコードルールと、を有し、前記第1のデコードルールと前記第2のデコードルールは、互いに出力結果が反転する関係を有する請求項1に記載に半導体装置。
【請求項8】
前記デジタルアナログ変換回路は、複数のビット値から構成される前記フィードバックデジタル値に基づき前記フィードバック信号を生成する請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1の基準電圧と前記第2の基準電圧の大小関係に基づき前記デコーダが適用するデコードルールを指定するデコード制御回路を有する請求項7に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記デジタル出力値に対してフィルタ処理を施すデジタルフィルタと、
前記デジタルフィルタで処理された前記デジタル出力値に基づき前記アナログ信号のアナログ値の大きさに応じたデジタルコードを含む出力データを生成する出力ロジック回路と、
を更に有する請求項7に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1の変換フェイズにおいて出力される前記第1の出力データと、前記第2の変換フェイズにおいて出力される前記第2の出力データと、の平均値に基づき前記センサ抵抗の抵抗値を算出する演算回路を更に有する請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記アナログデジタル変換回路は、
前記アナログ信号とフィードバック信号とを加算する加算器と、
前記加算器の出力を平滑化するループフィルタと、
前記ループフィルタの出力信号をデジタル出力値に変換するデジタル変換部と、
前記第1の基準電圧と前記第2の基準電圧を参照し、前記デジタル出力値をアナログ値に変換して前記フィードバック信号を生成するデジタルアナログ変換回路と、
前記第1の変換フェイズと前記第2の変換フェイズのいずれの期間においても、前記デジタルアナログ変換回路に与える基準電圧の大小関係に電圧値に変化が生じないように、前記第1の基準電圧と前記第2の基準電圧の大小関係に基づき前記第1の基準電圧と前記第2の基準電圧を前記デジタルアナログ変換回路に伝達する経路を切り替える基準電圧入れ替え回路と、を有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記デジタル出力値に対してフィルタ処理を施すデジタルフィルタと、
前記デジタルフィルタで処理された前記デジタル出力値に基づき前記アナログ信号のアナログ値の大きさに応じたデジタルコードを含む出力データを生成する出力ロジック回路と、
を更に有する請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第1の変換フェイズにおいて出力される前記第1の出力データと、前記第2の変換フェイズにおいて出力される前記第2の出力データと、の平均値に基づき前記センサ抵抗の抵抗値を算出する演算回路を更に有する請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
直列に接続される第1の抵抗と第2の抵抗との接続点の電圧が入力されるアナログデジタル変換回路と、
前記アナログデジタル変換回路の出力データから、前記第2の抵抗の抵抗値を算出する演算部と、を有し、
前記アナログデジタル変換回路は、
第1の基準電圧と前記第1の基準電圧よりも低い第2の基準電圧の一方を第1のノードから出力し、前記第1の基準電圧との基準電圧と前記第2の基準電圧の他方を第2のノードから出力し、前記第1のノード及び第2のノードから出力する基準電圧を時分割で切り替えるリファレンス電圧生成回路と、
前記第1のノードの電圧を前記第1の抵抗に出力する第1のバッファと、
前記第2のノードの電圧を前記第2の抵抗に出力する第2のバッファと、を有し、
前記第1の抵抗に
前記第1の基準電圧を与え、前記第2の抵抗に
前記第2の基準電圧を与える第1の変換フェイズにおいて第1の出力データを出力し、
前記第1の抵抗に前記第2の基準電圧を与え、前記第2の抵抗に前記第1の基準電圧を与える第2の変換フェイズにおいて第2の出力データを出力し、
前記演算部は、前記第1の出力データと前記第2の出力データとの平均値に基づき前記第2の抵抗の抵抗値を算出する半導体装置。
【請求項16】
前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との接続点と、前記アナログデジタル変換回路との間に設けられるプリバッファを更に有する請求項15に記載の半導体装置。
【請求項17】
直列に接続される第1の抵抗と第2の抵抗との接続点の電圧が入力されるアナログデジタル変換回路と、
前記アナログデジタル変換回路の出力データから、前記第2の抵抗の抵抗値を算出する演算部と、を有し、
前記アナログデジタル変換回路は、
第1の基準電圧入力端子と第2の基準電圧入力端子とに与えられる電圧を参照して動作するデジタルアナログ変換回路と、
前記アナログデジタル変換回路への入力信号と前記デジタルアナログ変換回路との出力信号とを加算する加算器と、
前記加算器の出力信号をデジタル値に変換する比較部と、
前記比較部が出力するデジタル出力値を所定のルールに基づき変換して前記デジタルアナログ変換回路に出力するデコーダと、を有し、
前記アナログデジタル変換回路は、
前記第1の基準電圧入力端子に与えられる第1の基準電圧が前記第1の抵抗に与えられ、前記第2の基準電圧入力端子に与えられ、前記第1の基準電圧よりも低い第2の基準電圧が前記第2の抵抗に与えられる第1の変換フェイズにおいて、前記デコーダが出力する
前記デジタル出力値を第1の出力データとして出力し、
前記第1の基準電圧入力端子に与えられる前記第2の基準電圧が前記第1の抵抗に与えられ、前記第2の基準電圧入力端子に与えられる前記第1の基準電圧が前記第2の抵抗に与える第2の変換フェイズにおいて前記デコーダが出力する前記デジタル出力値を第2の出力データとして出力し、
前記演算部は、前記第1の出力データと前記第2の出力データとの平均値に基づき前記第2の抵抗の抵抗値を算出する半導体装置。
【請求項18】
前記第1のバッファの帰還配線に設けられる第1のスイッチと、
前記第1の抵抗と前記第2の抵抗の接続点から前記アナログデジタル変換回路を接続する入力配線と、前記第1のバッファの反転端子と、の間に設けられる第2のスイッチと、
前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチの開閉状態を制御するスイッチ制御回路と、を有し、
前記スイッチ制御回路は、
前記第1の基準電圧及び前記第2の基準電圧として与えられる電圧値が切り替えられたあとの第1のプリチャージ期間に前記第1のスイッチをオフ、前記第2のスイッチをオンとし、
前記第1のプリチャージ期間終了後は、前記第1のスイッチをオン、前記第2のスイッチをオフとする請求項
15に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置に関し、例えば抵抗値の変化によってセンス対象の変化を検出する抵抗値変化型センサの検出信号をデジタル値に変換して出力する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温度を測定するセンサとしてサーミスタが広く利用されている。このサーミスタは、温度により抵抗値が変化する抵抗性部品の1つである。このようなサーミスタの利用形態の1つが自動車である。自動車では、吸気温度、排気温度、エンジンルーム温度等を測定して、温度に応じた制御が行われる。このような用途では、サーミスタから得られる温度をより精度良く、かつ、短い測定周期で監視することが求められる。
【0003】
このようなサーミスタの抵抗値を測定する技術の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された測定回路では、プルアップ抵抗に直列に測定対象の抵抗性部品を接続し、プルアップ抵抗の上端に高電位側基準電圧Vpを与え、抵抗性部品の下端に低電位側基準電圧Vnを与える。そして、プルアップ抵抗と抵抗性部品との間に生じる入力電圧を三角波信号を用いてモニタして、抵抗性部品の抵抗値に応じたデューティー比を有するPWM信号を生成する。このとき、抵抗性部品の抵抗値によって、PWM信号のデューティー比が変化するため、このデューティー比をデジタル回路でカウントして、ディーティー比とプルアップ抵抗の抵抗値とに基づき抵抗性部品の抵抗値を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、測定時間が、測定分解能、カウンタ周波数、プルアップ抵抗と抵抗性部品の抵抗値との分圧比で決まる。この特許文献1に記載の技術を用いて、1Ω~1MΩの測定レンジを実現しようとすると概算で十数msecの測定時間が必要となる。また、特許文献1に記載の技術では三角波を生成する為に用いるコモン電圧の調整にPI制御を行う必要があり、このコモン電圧の調整にも時間を要する。このようなことから、特許文献1に記載の技術では、抵抗値の測定に多くの時間を要する問題がある。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態によれば、半導体装置は、直列接続された基準抵抗とセンサ抵抗とに対して、基準抵抗の一端に第1の基準電圧を与え、センサ抵抗の一端に第2の基準電圧を与え、基準抵抗とセンサ抵抗との接続点に生じる入力電圧の電圧レベルに対応するデジタル値を有する出力データを生成するアナログデジタル変換回路を有し、第1の基準電圧として高電位側基準電圧が与えられ、第2の基準電圧として低電位側基準電圧が与えられる第1の変換フェイズで得られる第1の出力データと、第1の基準電圧として低電位側基準電圧が与えられ、第2の基準電圧として高電位側基準電圧が与えられる第2の変換フェイズで得られる第2の出力データと、を用いてセンサ抵抗の抵抗値を算出する。
【発明の効果】
【0008】
前記一実施の形態によれば、半導体装置は、センサ抵抗の抵抗値を精度良く、かつ、短時間に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1にかかる半導体装置のブロック図である。
【
図2】実施の形態1にかかるリファレンス電圧生成回路の一例を示す回路図である。
【
図3】実施の形態1にかかる半導体装置のΔΣアナログデジタル変換回路のブロック図である。
【
図4】実施の形態1にかかるデコーダのデコードルールを説明する表及びデコーダの一例を示す回路図である。
【
図5】実施の形態1にかかる半導体装置の1変換サイクルの動作を説明する図である。
【
図6】実施の形態1にかかる半導体装置のポジティブ変換フェイズの動作を説明するタイミングチャートである。
【
図7】実施の形態1にかかる半導体装置のネガティブ変換フェイズの動作を説明するタイミングチャートである。
【
図8】実施の形態1にかかる半導体装置におけるプリチャージ動作の有無によるプリチャージ時間の違いを説明するグラフである。
【
図9】実施の形態2にかかる半導体装置のブロック図である。
【
図10】実施の形態2にかかる半導体装置のポジティブ変換フェイズの動作を説明するタイミングチャートである。
【
図11】実施の形態2にかかる半導体装置のネガティブ変換フェイズの動作を説明するタイミングチャートである。
【
図12】実施の形態3にかかる半導体装置のブロック図である。
【
図13】実施の形態4にかかる半導体装置のΔΣアナログデジタル変換回路のブロック図である。
【
図14】実施の形態4にかかるデコーダの動作ルールを説明する表及びデコーダの一例を示す回路図である。
【
図15】実施の形態5にかかる半導体装置のΔΣアナログデジタル変換回路のブロック図である。
【
図16】実施の形態6にかかる半導体装置のΔΣアナログデジタル変換回路のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、その他の回路で構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0011】
また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0012】
実施の形態1
図1に実施の形態1にかかる半導体装置1のブロック図を示す。
図1に示すように、実施の形態1にかかる半導体装置1は、第1の抵抗(例えば、基準抵抗Rref)及び第2の抵抗(例えば、センサ抵抗Rth)がディスクリート部品として設けられる。そして、半導体装置1は、センサ抵抗Rthから得られる入力電圧に対応するデジタル値を用いて、センサ抵抗Rthの抵抗値に対応する出力データDoを出力する。なお、このセンサ抵抗Rthは、例えば、サーミスタ等の周囲環境に応じて抵抗値が変化する抵抗性部品の抵抗成分を表すものである。また、基準抵抗Rrefは、予め決定された抵抗値を有するものである。
【0013】
図1に示すように、実施の形態1にかかる半導体装置1は、リファレンス電圧生成回路10、第1のバッファ(例えば、オペアンプ11)、第2のバッファ(例えば、オペアンプ12)、プリバッファ13、アナログデジタル変換回路(例えば、ΔΣADC14)、スイッチ制御回路15を有する。また、半導体装置1は、第1のスイッチ(例えば、スイッチSW1)、第2のスイッチ(例えばスイッチSW2)を有する。
【0014】
また、実施の形態1にかかる半導体装置1は、第1の端子Ti1、第2の端子Ti2、第3の端子Ti3、第4の端子Ti4、出力端子Toを有する。そして、第1の端子Ti1には、基準抵抗Rrefの一端が接続される。第2の端子Ti2には、基準抵抗Rrefの他端が接続される。第3の端子Ti3は、半導体装置1内で第2の端子Ti2と接続され、かつ、センサ抵抗Rthの一端及び第1のコンデンサC1の一端が接続される。第4の端子Ti4は、センサ抵抗Rthの他端及び第2のコンデンサC2の他端が接続される。ここで、第1のコンデンサC1及び第2のコンデンサC2は、EMI(Electro Magnetic Interference)ノイズ対策のために設けられるコンデンサであり、他端が接地端子に接続される。
【0015】
なお、実施の形態1で説明する半導体装置1と同じ構成をディスクリート部品で構成することも可能である。この場合、
図1において半導体装置1で示される範囲内の構成要素のそれぞれをディスクリート部品とし、ユニバーサル基板、或いは、プリント基板に組み付けることで以下で説明する半導体装置1と同等の機能を実現することができる。
【0016】
リファレンス電圧生成回路10は、第1の基準電圧V1及び第2の基準電圧V2を出力する。また、リファレンス電圧生成回路10は、第1の基準電圧V1として高電位側基準電圧Vpと低電位側基準電圧Vnの一方を出力し、第2の基準電圧V2として高電位側基準電圧Vpと低電位側基準電圧Vnの他方を出力し、第1の基準電圧V1として出力する電圧及び第2の基準電圧V2として出力する電圧を時分割で切り替える。
【0017】
より具体的には、実施の形態1にかかる半導体装置1では、基準抵抗Rref及びセンサ抵抗Rthに与える基準電圧の大小関係を入れ替えた2つの変換フェイズで生成される2つの出力データDoを用いて1つのセンサ抵抗Rthの抵抗値を得る。そこで、リファレンス電圧生成回路10は、第1の変換フェイズにおいては第1の基準電圧V1として高電位側基準電圧Vpを出力し、第2の基準電圧V2として低電位側基準電圧Vnを出力する。また、リファレンス電圧生成回路10は、第2の変換フェイズにおいては、第1の基準電圧V1として低電位側基準電圧Vnを出力し、第2の基準電圧V2として高電位側基準電圧Vpを出力する。センサ抵抗Rthの算出方法の詳細は後述する。
【0018】
ここで、
図2に実施の形態1にかかるリファレンス電圧生成回路10の一例を示す回路図を示す。
図2に示すように、リファレンス電圧生成回路10は、抵抗R11、R12、R13、スイッチSW11、SW12を有する。抵抗R11の一端には、高電圧電源VHが供給される。抵抗R11の他端は、抵抗R12の一端が接続される。抵抗R11と抵抗R12とを接続する接続点に高電位側基準電圧Vpが生じる。抵抗R12の他端は、抵抗R13の一端に接続される。抵抗R12と抵抗R13とを接続する接続点に低電位側基準電圧Vnが生じる。抵抗R13の他端には低電圧電源VLが供給される。
【0019】
スイッチSW11は、入力端子が抵抗R11と抵抗R12との接続点に接続され、2つの出力端子の一方は第1の基準電圧V1が出力される出力端子(例えば第1のノード)に設定され、他方は第2の基準電圧V2が出力される出力端子(例えば第2のノード)に設定される。スイッチSW12は、入力端子が抵抗R12と抵抗R13との接続点に接続され、2つの出力端子の一方は第1の基準電圧V1の出力端子に設定され、他方は第2の基準電圧V2の出力端子に設定される。そして、スイッチSW11、SW12は、一方が入力される電圧を第1の基準電圧V1として出力すること選択している期間は、他方は入力される電圧を第2の基準電圧V2として出力することを選択する。スイッチSW11、SW12は、図示を省略したが、スイッチ制御回路15により制御される。
【0020】
なお、
図1に示す半導体装置1では、リファレンス電圧生成回路10は半導体装置内に設けたが、リファレンス電圧生成回路10は半導体装置1の外部に設けられていても良い。
【0021】
図1を参照して、実施の形態1にかかる半導体装置1について更に説明する。
図1に示すように、オペアンプ11は、反転端子と出力端子とが帰還配線により接続され、正転端子に第1の基準電圧V1が入力される。つまり、オペアンプ11は、第1の基準電圧V1の電圧を維持して、出力端子から正側基準電圧Vpuとして出力する第1のバッファとして機能する。オペアンプ11は、第1の端子Ti1を介して正側基準電圧Vpuを基準抵抗Rrefの一端に与える。また、オペアンプ11の反転端子と出力端子とを接続する帰還配線にはスイッチSW1が挿入される。このスイッチSW1は、スイッチ制御回路15により開閉状態が制御される。
【0022】
オペアンプ12は、反転端子と出力端子とが帰還配線により接続され、正転端子に第2の基準電圧V2が入力される。つまり、オペアンプ12は、第2の基準電圧V2の電圧を維持して、出力端子から負側基準電圧Vpdとして出力する第2のバッファとして機能する。オペアンプ12は、第4の端子Ti4を介して負側基準電圧Vpdをセンサ抵抗Rthの他端に与える。
【0023】
プリバッファ13は、反転端子に負側基準電圧Vpdが入力され、正転端子に入力電圧Vinが入力される。そして、プリバッファ13は、入力電圧Vinを増幅してアナログ信号Ainを生成する。ΔΣADC14は、正側基準電圧Vpu及び負側基準電圧Vpdを参照し、アナログ信号Ainの信号レベルに応じたデジタル値を有する出力データDoを出力する。ここで、ΔΣADC14は、ΔΣ型のアナログデジタル変換回路としたが、アナログ値をデジタル値に変換する他の形式のアナログデジタル変換回路を用いることもできる。ΔΣADC14の詳細については後述する。
【0024】
スイッチSW2は、オペアンプ11の反転端子と第3の端子Ti3との間に設けられる。スイッチ制御回路15は、決められたシーケンスに応じてスイッチSW1、SW2の開閉状態を制御するシーケンサである。スイッチ制御回路15の動作の詳細は後述する。
【0025】
ここで、ΔΣADC14の詳細について説明する。上記したように、実施の形態1にかかる半導体装置1では、ΔΣADC14に与えられる正側基準電圧Vpu及び負側基準電圧Vpdの大小関係がリファレンス電圧生成回路10により第1の基準電圧V1及び第2の基準電圧V2の電圧値が切り替えられることで切り替えられる。そのため、ΔΣADC14は、この基準電圧の切り替えに寄らず正しく動作するための構成を有する。そこで、
図3に実施の形態1にかかる半導体装置のΔΣアナログデジタル変換回路のブロック図を示す。
【0026】
図3に示すように、ΔΣADC14は、ADCコア20、デジタルフィルタ21a、出力ロジック回路21b、通信インタフェース回路21c、システム制御ロジック23を有する。また、ADCコア20は、加算器24、ループフィルタ25、アナログデジタル変換回路26、デコーダ27、DAC28を有する。なお、
図3で示したΔΣADC14は、アナログ信号Ainが互いに反転する関係を有するアナログ信号Ainp、Ainnを含む信号として入力される例である。また、
図3で示す例では、DAC28は、1ビットの入力値に応じて出力するフィードバック信号のアナログ値を決定する1ビットDACであるものとする。
【0027】
図1では、センサ抵抗Rthの抵抗値を算出する演算を行う演算部の一例として、半導体装置1の外部に設けられるMCU(Micro Controller Unit)22を示した。MCU22は、プログラムを実行可能な演算部を有し、ΔΣADC14が出力する出力データDoを内蔵するメモリに格納し、メモリに格納された出力データDoを参照してセンサ抵抗Rthを算出する。また、出力ロジック回路21bは、さらに上位に位置する上位システムに算出したセンサ抵抗Rthの抵抗値を通知する。
【0028】
加算器24は、アナログ信号Ainp、Ainnと、DAC28が出力するフィードバック信号とを加算してループフィルタ25に出力する。また、加算器24は、サンプルホールドスイッチとして、スイッチSW21、SW22、SW23、SW24を有する。スイッチSW21、SW22は、出力端子が互いに接続されループフィルタ25に接続される。また、スイッチSW21の入力端子にはDAC28が出力するフィードバック信号の一方が入力される。スイッチSW22の入力端子には、アナログ信号Ainpが入力される。スイッチSW23、SW24は、出力端子が互いに接続されループフィルタ25に接続される。また、スイッチSW23の入力端子にはDAC28が出力するフィードバック信号の他方が入力される。スイッチSW24の入力端子には、アナログ信号Ainnが入力される。
【0029】
ループフィルタ25は、加算器24で加算された信号のそれぞれに対して平滑化処理を施してアナログデジタル変換回路26に伝達する。ループフィルタ25は、オペアンプOP、コンデンサC21、C22、C23、C24を有する。コンデンサC21の一端は、スイッチSW21、SW22の出力端子に接続される。コンデンサC21の他端は、オペアンプOPの正転端子に接続される。コンデンサC22は、オペアンプOPの正転端子と出力端子との間に設けられる。コンデンサC23の一端は、スイッチSW23、SW24の出力端子に接続される。コンデンサC23の他端は、オペアンプOPの反転端子に接続される。コンデンサC24は、オペアンプOPの反転端子と出力端子との間に設けられる。
【0030】
アナログデジタル変換回路26は、ループフィルタ25の出力信号をデジタル出力値Dadcに変換する。アナログデジタル変換回路26はコンパレータCOMPを有する。このコンパレータCOMPは、オペアンプOPの2つの出力信号の大小関係に応じてデジタル出力値Dadcの論理レベルを切り替える。
【0031】
ここで、ΔΣADC14では、動作制御回路として、システム制御ロジック23及びデコーダ27を用いる。ΔΣADC14では、システム制御ロジック23及びデコーダ27を用いることで、第1の基準電圧V1(例えば、正側基準電圧Vpu)及び第2の基準電圧V2(例えば、負側基準電圧Vpd)の大小関係によらずデジタル出力値Dadcとフィードバック信号のアナログ値との対応関係を同一に維持する。
【0032】
デコーダ27は、デジタル出力値をデコードしてフィードバックデジタル値を出力する。このデコーダ27は、2つのデコードルールを有し、半導体装置1の1変換サイクル中に設定される2つの変換フェイズに応じて、適用するデコードルールを切り替える。2つのデコードルールのうち第1のデコードルールは、正側基準電圧Vpuとして高電位側基準電圧Vpが出力され、負側基準電圧Vpdとして低電位側基準電圧Vnが出力される第1の変換フェイズにおいて用いられる。第2のデコードルールは、正側基準電圧Vpuとして低電位側基準電圧Vnが出力され、負側基準電圧Vpdとして高電位側基準電圧Vpが出力される第2の変換フェイズにおいて用いられる。また、第1のデコードルールと第2のデコードルールは、互いに出力結果が反転する関係を有する。
図3に示す例では、第1の変換フェイズと第2の変換フェイズ切り替わりに応じて制御信号Sswの論理レベルを切り替えるシステム制御ロジック23が設けられる。デコーダ27は、システム制御ロジック23が出力する制御信号Sswに応じて適用するデコードルールを切り替える。デコーダ27のデコードルールの詳細は後述する。
【0033】
DAC28は、正側基準電圧入力端子に正側基準電圧Vpuが入力され、正側基準電圧入力端子に負側基準電圧Vpdが入力され、入力された正側基準電圧Vpu及び負側基準電圧Vpdを参照し、フィードバックデジタル値をアナログ値に変換してフィードバック信号を生成する。この正側基準電圧Vpu及び負側基準電圧Vpdは、変換フェイズの切り替わりに応じて電圧値の大小関係が切り替わる。
【0034】
デジタルフィルタ21aは、デジタル出力値Dadcに対してフィルタ処理を施す。出力ロジック回路21bは、デジタルフィルタで処理されたデジタル出力値Dadcを用いて入力電圧Vinの電圧レベルに対応するデジタルコードに変換する。通信インタフェース回路21cは、出力ロジック回路21bが生成したデジタルコードを外部に設けられる出力ロジック回路21bに伝達する。通信インタフェース回路21cは、例えば、SPI(Serial Peripheral Interface)通信を行う通信回路である。通信インタフェース回路21cが行う通信の方式は、MCU22が出力データDoを受信する際に用いる通信方式に合わせたものであればSPI通信に限られない。また、MCU22は、半導体装置1の外部に設けられたものに限らず、半導体装置1を構成する半導体基板上に設けられていても良い。
【0035】
MCU22における合成処理について説明する。実施の形態1にかかる半導体装置1では、第1の基準電圧V1と第2の基準電圧V2との電圧値を入れ替えた2つの変換フェイズのそれぞれで出力データDoが生成される。そこでMCU22では、(1)式及び(2)式に基づきセンサ抵抗Rthの抵抗値を算出する。
【数1】
【数2】
【0036】
ここで、(1)式のdN_v1は、第1の変換フェイズで得られる入力電圧Vinに対応する出力データDoであり、dN_v2は、第2の変換フェイズで得られる入力電圧Vinに対応する出力データDoであり、dNaveは、これら2つの値の平均値である。(2)式のADCresolutionは、ΔΣADC14の分解能であり、Rrefは、基準抵抗Rrefの抵抗値、Rthは、センサ抵抗Rthの抵抗値である。
【0037】
実施の形態1にかかる半導体装置1では、このように2つの変換フェイズで得られる出力データDoの平均値に基づきセンサ抵抗Rthの抵抗値を算出することで、半導体装置1を構成する回路に生じるオフセット電圧等の影響をキャンセルした高精度な抵抗値を得ることができる。
【0038】
ここで、デコーダ27のデコードルールについて説明する。そこで、
図4に実施の形態1にかかるデコーダ27のデコードルールを説明する表及びデコーダ27の一例を示す回路図を示す。
【0039】
図4に示すように、デコーダ27は、切り替え制御信号Sswの値が0である場合の第1のデコードルールと、切り替え制御信号Sswの値が1である場合の第2のデコードルールとを有する。第1のデコードルールでは、アナログデジタル変換回路26の出力信号Dadcとデコーダ27の出力値が同じ値となる。一方、第2のデコードルールでは、デコーダ27の出力値がアナログデジタル変換回路26の出力信号Dadcに対して反転した値となる。また、
図4に示した表の動作は、例えば排他的論理和回路により実現することができる。
【0040】
ΔΣADC14では、このようなデコードルールを有するデコーダ27を用いることで、DAC28に与えられる正側基準電圧Vpuと負側基準電圧Vpdとの電圧値が入れ替わった場合においてもΔΣADC14の動作を破綻させないようにする。正側基準電圧Vpuと負側基準電圧Vpdとの電圧値が入れ替わった場合、同じデジタル出力値Dadcに対するフィードバック信号の値が反転してしまい、本来の伝達関数を維持することができず、ΔΣADC14の動作が破綻する問題が発生する。しかしながら、デコーダ27を用いることで、正側基準電圧Vpuと負側基準電圧Vpdとの電圧値が入れ替わった場合であっても、ΔΣADC14の伝達関数を維持することが出来るため、ΔΣADC14の動作を破綻させずに済む。
【0041】
続いて、実施の形態1にかかる半導体装置1の動作について説明する。そこで、
図5に実施の形態1にかかる半導体装置1の1変換サイクルの動作を説明する図を示す。
図5に示すように、実施の形態1にかかる半導体装置1では、1つの測定結果を得る1変換サイクル中に2つの変換フェイズを有する。第1の変換フェイズは、第1の基準電圧V1(及び正側基準電圧Vpu)として高電位側基準電圧Vpが出力され、第2の基準電圧V2(及び負側基準電圧Vpd)として低電位側基準電圧Vnが出力されるポジティブ変換フェイズである。第2の変換フェイズは、第1の基準電圧V1(及び正側基準電圧Vpu)として低電位側基準電圧Vnが出力され、第2の基準電圧V2(及び負側基準電圧Vpd)として高電位側基準電圧Vpが出力されるネガティブ変換フェイズである。
【0042】
実施の形態1にかかる半導体装置1では、ポジティブ変換フェイズで得られる出力値dN_v1とネガティブ変換フェイズで得られる出力値dN_v2とを上記した(1)式及び(2)式に適用してセンサ抵抗Rthを得る。ここで、実施の形態1にかかる半導体装置1では、ポジティブ変換フェイズ及びネガティブ変換フェイズの開始直後にスイッチSW1、SW2を操作してプリチャージ動作を行うことで各変換フェイズに要する時間を短縮する。そこで、ポジティブ変換フェイズとネガティブ変換フェイズにおける半導体装置1の動作について説明する。
【0043】
図6に実施の形態1にかかる半導体装置のポジティブ変換フェイズの動作を説明するタイミングチャートを示す。
図6に示すように、ポジティブ変換フェイズでは、まず、タイミングT10からタイミングT11のフェイズ切り替え期間で、第1の基準電圧V1及び第2の基準電圧V2として出力する基準電圧を設定する。具体的には、ポジティブ変換フェイズでは、第1の基準電圧V1として高電位側基準電圧Vpを出力し、第2の基準電圧V2として低電位側基準電圧Vnを出力する。
【0044】
続いて、半導体装置1は、タイミングT11からタイミングT12の第1のプリチャージ期間において、スイッチSW1をオフ、スイッチSW2をオンとする。これにより、オペアンプ11は、センサ抵抗Rthの第3の端子Ti3側の電圧を高電位側基準電圧Vp側に引き上げるように動作する。
【0045】
続いて、半導体装置1は、タイミングT12からタイミングT13のセトリング期間において、スイッチSW1をオン、スイッチSW2をオフに切り替える。これにより、半導体装置1は、オペアンプ11により基準抵抗Rrefの一端に高電位側基準電圧Vpを与え、オペアンプ12によりセンサ抵抗Rthの他端に低電位側基準電圧Vnを与えた状態で、入力電圧Vinをセンサ抵抗Rthの抵抗値に応じた目標電圧Vtgtに整定する。
【0046】
続いて、半導体装置1は、タイミングT13からタイミングT14のアナログデジタル変換処理期間において、スイッチSW1、SW2の状態をセトリング期間と同じに維持した状態で入力電圧Vinに対するアナログデジタル変換処理を行う。
【0047】
次に、
図7に実施の形態1にかかる半導体装置のネガティブ変換フェイズの動作を説明するタイミングチャートを示す。
図7に示すように、ネガティブ変換フェイズでは、まず、タイミングT20からタイミングT21のフェイズ切り替え期間で、第1の基準電圧V1及び第2の基準電圧V2として出力する基準電圧を設定する。具体的には、ネガティブ変換フェイズでは、第1の基準電圧V1として低電位側基準電圧Vnを出力し、第2の基準電圧V2として高電位側基準電圧Vpを出力する。
【0048】
続いて、半導体装置1は、タイミングT21からタイミングT22の第1のプリチャージ期間において、スイッチSW1をオフ、スイッチSW2をオンとする。これにより、オペアンプ11は、センサ抵抗Rthの第3の端子Ti3側の電圧を低電位側基準電圧Vn側に引き下げるように動作する。
【0049】
続いて、半導体装置1は、タイミングT22からタイミングT23のセトリング期間において、スイッチSW1をオン、スイッチSW2をオフに切り替える。これにより、半導体装置1は、オペアンプ11により基準抵抗Rrefの一端に低電位側基準電圧Vnを与え、オペアンプ12によりセンサ抵抗Rthの他端に高電位側基準電圧Vpを与えた状態で、入力電圧Vinをセンサ抵抗Rthの抵抗値に応じた目標電圧Vtgtに整定する。
【0050】
続いて、半導体装置1は、タイミングT23からタイミングT24のアナログデジタル変換処理期間において、スイッチSW1、SW2の状態をセトリング期間と同じに維持した状態で入力電圧Vinに対するアナログデジタル変換処理を行う。
【0051】
ここで、実施の形態1にかかる半導体装置1では、第1のプリチャージ期間において、外付け部品として設けられる第1のコンデンサC1及び第2のコンデンサC2に対する充電を急速に行うことでプリチャージ時間を短縮する。そこで、第1のプリチャージ期間を設けることによる充電時間の短縮効果を説明する。そこで、
図8に実施の形態1にかかる半導体装置におけるプリチャージ動作の有無によるプリチャージ時間の違いを説明するグラフを示す。
【0052】
図8に示す例では、整定時間(settling time)とセンサ抵抗Rthの抵抗値との関係を示す曲線をプリチャージ無しの時と、プリチャージ有りの時と比較するように示した。プリチャージ無しの時の曲線は、第1のプリチャージ期間のようにスイッチSW1をオフし、かつ、スイッチSW2をオンする動作を行わない時のものである。一方。プリチャージ有りの時の曲線は、第1のプリチャージ期間のようにスイッチSW1をオフし、かつ、スイッチSW2をオンする動作を行った時のものである。
【0053】
図8に示すように、第1のプリチャージ期間の動作を行うことで、例えば、センサ抵抗Rthが40kΩの時で約30%の時間短縮を実現できる。また、センサ抵抗Rthが1MΩの時で約40%の時間短縮を実現できる。
【0054】
上記説明より、実施の形態1にかかる半導体装置1では、測定時間が、入力電圧Vinの目標電圧Vtgtへの整定に要する時間と、ΔΣADC14の変換速度と、により決定される。つまり、実施の形態1にかかる半導体装置1では、測定分解能、カウンタ周波数、プルアップ抵抗と抵抗性部品の抵抗値との分圧比によらず測定時間が変動しない。ここでΔΣADC14の変換速度は、一般的に、特許文献1に記載のカウンタ方式に比べ大幅に高速な変換速度を実現することができる。また、実施の形態1にかかる半導体装置1では、特許文献1に記載の技術のように三角波を用いないため、三角波の生成する為に用いるコモン電圧の調整にPI制御を行う必要がなく、測定時間をより短くすることができる。
【0055】
実施の形態1にかかる半導体装置1では、オペアンプ11の帰還経路にスイッチSW1を設け、かつ、オペアンプ11の反転端子とセンサ抵抗Rthが接続される第3の端子Ti3との間にスイッチSW2を設ける。そして、変換フェイズの初期に設定される第1のプリチャージ期間において、スイッチSW1をオフ、かつ、スイッチSW2をオンとすることで、センサ抵抗Rthに付随して設けられる第1のコンデンサC1及び第2のコンデンサC2への充電を早め、入力電圧Vinが目標電圧Vtgtに整定するために要する時間を短縮することができる。また、入力電圧Vinが目標電圧Vtgtに整定するために要する時間を短縮することで、1変換サイクルの時間を短縮することができる。
【0056】
実施の形態1にかかる半導体装置1では、センサ抵抗Rthに第1のコンデンサC1及び第2のコンデンサC2を接続し、かつ、ポジティブ変換フェイズとネガティブ変換フェイズで基準電圧の入れ替えを行う。また、センサ抵抗Rthは、1Ωから1MΩ程度まで大きな変動範囲を有する。ここで、センサ抵抗Rthの抵抗値が基準抵抗Rrefの抵抗値よりも十分に大きい場合、第3の端子Ti3に発生する電圧(例えば、目標電圧Vtgt)は限りなく正側基準電圧Vpuに近づく。そのため、第3の端子Ti3の電圧が接地電圧付近の電圧から目標電圧Vtgtへと整定する場合(例えば、ポジティブ変換フェイズ)、第1のコンデンサC1と基準電圧Rrefとセンサ抵抗Rthの合成抵抗の抵抗値とにより決定される時定数と、基準抵抗Rrefとセンサ抵抗Rthの分圧電圧として決定される目標電圧Vtgtと、に基づき決定される整定時間はセンサ抵抗Rthが大きさに比例して長くなる。また、第3の端子Ti3の電圧が電源電圧付近の電圧から目標電圧Vtgtへと整定するネガティブ変換フェイズにおいても、ポジティブ変換フェイズと同様に第3の端子Ti3の電圧の整定時間は、センサ抵抗Rthの大きさに比例して大きくなる。
【0057】
そして、実施の形態1にかかる半導体装置1では、第1のプリチャージ期間を設け、予め第3の端子Ti3の電圧を正側基準電圧Vpu側にチャージすることで、センサ抵抗Rthが高い抵抗値を示す時の第3の端子Ti3の電圧整定時間を短縮することが可能になる。上記したように、実施の形態1にかかる半導体装置1では、測定すべき入力電圧Vinの大きさがポジティブ変換フェイズとネガティブ変換フェイズとで大きく変動するため、第1のプリチャージ期間を設けない場合、入力電圧Vinが目標電圧Vtgtに整定するために要する時間が長くなる傾向にある。そのため、実施の形態1にかかる半導体装置1のように、第1のプリチャージ期間を設けることによる各変換フェイズの時間短縮を行うことは1変換サイクルに要する時間の短縮に大きく貢献する。
【0058】
また、実施の形態1にかかる半導体装置1では、第1の基準電圧V1と第2の基準電圧V2として与える基準電圧をポジティブ変換フェイズとネガティブ変換フェイズとで入れ替え、ポジティブ変換フェイズとネガティブ変換フェイズで得られた出力データDoの平均値に基づきセンサ抵抗Rthの抵抗値を得ることで、システムに含まれるオフセット等の誤差をキャンセルすることができる。
【0059】
また、実施の形態1にかかる半導体装置1では、ΔΣADC14にデコーダ27を設けることで基準電圧の切り替えに伴うΔΣADC14の動作の破綻を防止する。そして、デコーダ27は、例えば、アナログスイッチ回路を用いてDAC28に与える基準電圧を反転させる構成(例えば、アナログスイッチ構成)よりも回路規模を小さくし、かつ、変換精度を高精度に維持することができる。アナログスイッチ構成では、アナログスイッチ介して基準電圧をDAC28に伝達するが、アナログスイッチのオン抵抗に起因する誤差が発生する。また、アナログスイッチ構成では、アナログスイッチによる基準電圧の伝達経路の経路切替時の電圧収束時間の影響を考慮しなければならない問題も発生する。さらに、アナログスイッチ構成では、経路を構成するトランジスタのオン抵抗を低減するために素子サイズを大きくする等の設計上の配慮が必要になる。しかしながら、デコーダ27は、1つの論理回路(例えば、
図4の排他的論理和回路)のみで構成できるためアナログスイッチ構成で発生する問題を全て解決することができる。
【0060】
また、実施の形態1にかかる半導体装置1では、ΔΣADC14に入力する基準電圧とセンサ抵抗Rthに与える基準電圧とを同一の電圧源から供給する。これにより、変換時に生じる誤差を生じさせることなく出力データDoの誤差を更に低減させることができる。
【0061】
つまり、実施の形態1にかかる半導体装置1では、1変換サイクル中にポジティブ変換フェイズとネガティブ変換フェイズとを設け、それぞれの変換フェイズにおいて得られる出力値を平均化することで、高精度かつ広測定レンジでの抵抗値を測定することができる。
【0062】
実施の形態2
実施の形態2では、実施の形態1にかかる半導体装置1の変形例となる半導体装置2について説明する。なお、実施の形態2の説明において、実施の形態1と同じ構成要素については、実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0063】
図9に実施の形態2にかかる半導体装置2のブロック図を示した。
図9に示すように、実施の形態2にかかる半導体装置2は、実施の形態1にかかる半導体装置1に入力抵抗R1、バイパス回路16、第5の端子Ti5を追加したものである。また、第5の端子Ti5には、第3のコンデンサC3が接続される。そして、第3のコンデンサC3は、第5の端子Ti5を介してプリバッファ13の正転端子に接続される。実施の形態2にかかる半導体装置2では、抵抗R1及び第3のコンデンサC3により入力電圧Vinが伝達される入力配線のEMIノイズを低減する。
【0064】
入力抵抗R1は、第3の端子Ti3とプリバッファ13の正転端子とを接続する入力配線に挿入される。バイパス回路16は、入力抵抗R1に並列に設けられる。そして、バイパス回路16は、入力抵抗R1を一時的にバイパスする経路を構成する。
【0065】
ここで、バイパス回路16は、第3のスイッチ(例えば、スイッチSW3、第4のスイッチ(例えば、スイッチSW4)、オペアンプ17を有する。ここで、スイッチSW3及びスイッチSW4は、スイッチ制御回路15aによって開閉状態が制御される。スイッチ制御回路15aは、スイッチ制御回路15にスイッチSW3、SW4を制御する機能を追加したものである。
【0066】
スイッチSW3は、入力抵抗に並列に接続される。オペアンプ17は、入力抵抗R1の第3の端子Ti3側の端子に反転端子が接続され、正転端子が入力抵抗R1のプリバッファ13側の端子に接続される。スイッチSW4は、オペアンプ17の出力端子と、オペアンプ17の正転端子との間に接続される。
【0067】
ここで、実施の形態2にかかる半導体装置2では、第3のコンデンサC3を追加したことでアナログデジタル変換処理が行われる前の期間に設定される入力電圧Vinが目標電圧Vtgtに整定するために要する時間が長くなることが考えられる。しかしながら、実施の形態2にかかる半導体装置2では、バイパス回路16を設けることで入力電圧Vinが目標電圧Vtgtに整定するために要する時間を短縮する。そこで、実施の形態2にかかる半導体装置2の動作について以下で説明する。なお、実施の形態2にかかる半導体装置2においてもポジティブ変換フェイズとネガティブ変換フェイズが設けられるため、以下の説明では、変換フェイズ毎に半導体装置2の動作を説明する。
【0068】
図10に実施の形態2にかかる半導体装置のポジティブ変換フェイズの動作を説明するタイミングチャートを示す。
図10に示すように、ポジティブ変換フェイズでは、まず、タイミングT30からタイミングT31のフェイズ切り替え期間で、第1の基準電圧V1及び第2の基準電圧V2として出力する基準電圧を設定する。具体的には、ポジティブ変換フェイズでは、第1の基準電圧V1として高電位側基準電圧Vpを出力し、第2の基準電圧V2として低電位側基準電圧Vnを出力する。
【0069】
続いて、半導体装置2は、タイミングT31からタイミングT32の第1のプリチャージ期間において、スイッチSW1、SW3をオフ、スイッチSW2、SW4をオンとする。これにより、オペアンプ11は、センサ抵抗Rthの第3の端子Ti3側の電圧(つまり、入力配線の電圧)を低電位側基準電圧Vn側に引き下げるように動作する。また、実施の形態2では、この第1のプリチャージ期間にオペアンプ17が第3のコンデンサC3への充電を行う。
【0070】
続いて、半導体装置2は、タイミングT32からタイミングT33の第2のプリチャージ期間において、スイッチSW1、SW3をオン、スイッチSW2、SW4をオフに切り替える。これにより、半導体装置2は、オペアンプ11により基準抵抗Rrefの一端に高電位側基準電圧Vpを与え、オペアンプ12によりセンサ抵抗Rthの他端に低電位側基準電圧Vnを与えた状態で、入力電圧Vinをセンサ抵抗Rthの抵抗値に応じた目標電圧Vtgtとする。また、この第2のプリチャージ期間では、スイッチSW3が入力抵抗R1をバイパスさせる経路を構成するため、オペアンプ11による第3のコンデンサC3が促進され、入力電圧Vinの電圧上昇速度の鈍りが小さくなる。
【0071】
続いて、半導体装置2は、タイミングT33からタイミングT34のセトリング期間において、スイッチSW1をオン、スイッチSW2、SW3、SW4をオフに切り替える。これにより、半導体装置2は、オペアンプ11により基準抵抗Rrefの一端に高電位側基準電圧Vpを与え、オペアンプ12によりセンサ抵抗Rthの他端に低電位側基準電圧Vnを与えた状態で、入力電圧Vinをセンサ抵抗Rthの抵抗値に応じた目標電圧Vtgtに整定する。また、このセトリング期間では、入力抵抗R1が有効に機能する。
【0072】
続いて、半導体装置2は、タイミングT34からタイミングT35のアナログデジタル変換処理期間において、スイッチSW1、SW2、SW3、SW4の状態をセトリング期間と同じに維持した状態で入力電圧Vinに対するアナログデジタル変換処理を行う。
【0073】
次に、
図11に実施の形態2にかかる半導体装置のネガティブ変換フェイズの動作を説明するタイミングチャートを示す。
図11に示すように、ネガティブ変換フェイズでは、まず、タイミングT40からタイミングT41のフェイズ切り替え期間で、第1の基準電圧V1及び第2の基準電圧V2として出力する基準電圧を設定する。具体的には、ネガティブ変換フェイズでは、第1の基準電圧V1として低電位側基準電圧Vnを出力し、第2の基準電圧V2として高電位側基準電圧Vpを出力する。
【0074】
続いて、半導体装置2は、タイミングT41からタイミングT42の第1のプリチャージ期間において、スイッチSW1、SW3をオフ、スイッチSW2、SW4をオンとする。これにより、オペアンプ11は、センサ抵抗Rthの第3の端子Ti3側の電圧(つまり、入力配線の電圧)を高電位側基準電圧Vp側に引き下げるように動作する。また、実施の形態2では、この第1のプリチャージ期間にオペアンプ17が第3のコンデンサC3からの放電を行う。
【0075】
続いて、半導体装置2は、タイミングT42からタイミングT43の第2のプリチャージ期間において、スイッチSW1、SW3をオン、スイッチSW2、SW4をオフに切り替える。これにより、半導体装置2は、オペアンプ11により基準抵抗Rrefの一端に低電位側基準電圧Vnを与え、オペアンプ12によりセンサ抵抗Rthの他端に高電位側基準電圧Vpを与えた状態で、入力電圧Vinをセンサ抵抗Rthの抵抗値に応じた目標電圧Vtgtとする。また、この第2のプリチャージ期間では、スイッチSW3が入力抵抗R1をバイパスさせる経路を構成するため、オペアンプ11による第3のコンデンサC3が促進され、入力電圧Vinの電圧低下速度の鈍りが小さくなる。
【0076】
続いて、半導体装置2は、タイミングT43からタイミングT44のセトリング期間において、スイッチSW1をオン、スイッチSW2、SW3、SW4をオフに切り替える。これにより、半導体装置2は、オペアンプ11により基準抵抗Rrefの一端に低電位側基準電圧Vnを与え、オペアンプ12によりセンサ抵抗Rthの他端に高電位側基準電圧Vpを与えた状態で、入力電圧Vinをセンサ抵抗Rthの抵抗値に応じた目標電圧Vtgtに整定する。また、このセトリング期間では、入力抵抗R1が有効に機能する。
【0077】
続いて、半導体装置2は、タイミングT44からタイミングT45のアナログデジタル変換処理期間において、スイッチSW1、SW2、SW3、SW4の状態をセトリング期間と同じに維持した状態で入力電圧Vinに対するアナログデジタル変換処理を行う。
【0078】
上記説明より、実施の形態2にかかる半導体装置2では、外付け部品として、第3のコンデンサC3を設けることで、EMIノイズへの耐性が向上する。そして、バイパス回路16を設けることで、第3のコンデンサC3を追加したことよる入力電圧Vinが目標電圧Vtgtに整定するために要する時間の長さの伸びを抑制して、変換サイクル時間を短くする。
【0079】
実施の形態3
実施の形態3では、実施の形態2にかかる半導体装置2の変形例となる半導体装置3について説明する。なお、実施の形態3の説明において、実施の形態1、2と同じ構成要素については、実施の形態1、2と同じ符号を付して説明を省略する。
【0080】
図12に実施の形態3にかかる半導体装置3のブロック図を示す。実施の形態3にかかる半導体装置3は、
図12では図示を省略しているが、センサ抵抗Rthに相当する複数の抵抗性部品が外付け部品として接続される。そして、実施の形態3にかかる半導体装置3は、時分割で複数の抵抗性部品の1つを選択し、選択した抵抗性部品の抵抗値を測定する。なお、
図12では、図示を省略しているが半導体装置3は、複数の抵抗性部品に合わせて第3の端子Ti3及び第4の端子Ti4を複数組有する。
【0081】
図12に示すように、実施の形態3にかかる半導体装置3は、実施の形態2にかかる半導体装置2に対して、マルチプレクサ30a~30d、バッファ31、減算回路32を追加したものである。マルチプレクサ30a~30dは、第2の端子Ti2、オペアンプ12、プリバッファ13等の内部回路と外部に設けられる複数の抵抗性部品の何れか一つを接続するか否かを切り替える。
【0082】
具体的には、マルチプレクサ30aは、第2の端子Ti2と第3の端子Ti3とを接続する配線上に設けられる。マルチプレクサ30bは、第3の端子Ti3とプリバッファ13とを接続する配線上に設けられる。マルチプレクサ30cは、オペアンプ12の出力端子と第4の端子Ti4との間に設けられる。マルチプレクサ30dは、オペアンプ12の反転端子と第4の端子とを接続する帰還配線上に設けられる。
【0083】
なお、マルチプレクサ30a~30dによるセンサ抵抗Rthの選択は、
図6のタイミングT10~T11或いは
図10のタイミングT30~T31の期間に行われる。
【0084】
バッファ31は、入力電圧Vinを減算回路32に伝達するバッファ回路である。減算回路32は、第1の基準電圧V1(例えば、オペアンプ11が出力する正側基準電圧Vpu)からマルチプレクサ30a~30dのオン抵抗に起因して生じる誤差電圧を減算して、第3の基準電圧Vxを生成し、第3の基準電圧Vxに代えて正側基準電圧VpuをΔΣADC14に与える。
【0085】
ここで、減算回路32は、バッファ33、オペアンプ34、抵抗R11~R14を有する。バッファ33は、第2の端子Ti2に生じる電圧Vswを抵抗R11の一端に与える。抵抗R11は、他端がオペアンプ34の反転端子に接続される。抵抗R14は、オペアンプ34の反転端子と出力端子との間に設けられる。抵抗R12は、一端にバッファ31が出力する電圧Vemiが与えられ、他端がオペアンプ34の正転端子に接続される。抵抗R13は、一端にオペアンプ11が出力する正側基準電圧Vpuが与えられ、他端がオペアンプ34の正転端子に接続される。そして、オペアンプ34は、第3の基準電圧Vxを出力する。
【0086】
ここで、減算回路32が出力する第3の基準電圧Vxについて説明する。まず、実施の形態3にかかる半導体装置3の入力電圧Vinに相当する電圧Vemiは、マルチプレクサ30a~30dに起因する誤差電圧をVerror、第2の端子Ti2の電圧をVswとすると、(3)式により表される。
【数3】
そして、第3の基準電圧は、減算回路32において(4)式に基づき生成される。
【数4】
【0087】
このように、ΔΣADC14に与える基準電圧の一方から誤差電圧Verrorを減算することで、入力電圧Vinに重畳した誤差電圧がΔΣADC14の動作においてキャンセルされ、最終的に出力する出力データDoから誤差電圧Verrorの影響を取り除くことが出来る。
【0088】
上記説明より、実施の形態3にかかる半導体装置3では、複数の抵抗性部品(例えば、複数のセンサ)からの検出信号を1つの半導体装置でデジタル値に変換することができる。このとき、実施の形態3にかかる半導体装置3では、マルチプレクサ30a~30dに起因して生じる誤差電圧をバッファ31及び減算回路32を用いてキャンセルする。これにより、実施の形態3にかかる半導体装置3では、複数の抵抗性部品の抵抗値を高精度かつ高速に得ることが可能になる。
【0089】
実施の形態4
実施の形態4では、実施の形態1にかかるΔΣADC14の変形例となるΔΣADC14aについて説明する。なお、実施の形態4の説明において実施の形態1で説明した構成要素と同じ構成要素については実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0090】
図13に実施の形態4にかかる半導体装置のΔΣADC14aのブロック図を示す。
図13に示すように、ΔΣADC14aは、
図3で示したΔΣADC14のデコーダ27及びDAC28をデコーダ27a及びDAC28aに置き換えたものである。DAC28aは、多ビット(例えば、2ビット)のフィードバックデジタル値に基づきフィードバック信号を生成するマルチビットDACである。そこで、デコーダ27aは、多ビットのフィードバックデジタル信号のデコード機能を備える。そこで、デコーダ27aのデコードルールについて説明する。
【0091】
図14に実施の形態4にかかるデコーダ27aの動作ルールを説明する表及びデコーダ27aの一例を示す回路図を示す。
図14に示すように、デコーダ27aにおいても、切り替え制御信号Sswの値が0である場合の第1のデコードルールと、切り替え制御信号Sswの値が1である場合の第2のデコードルールとを有する。第1のデコードルールでは、アナログデジタル変換回路26の出力信号Dadcとデコーダ27の出力値が同じ値となる。一方、第2のデコードルールでは、デコーダ27の出力値がアナログデジタル変換回路26の出力信号Dadcに対して反転した値となる。また、
図14に示した表の動作は、例えば一方の入力端子に切り替え制御信号Sswが入力される2つの排他的論理和回路により実現することができる。このとき、デコーダ27aでは、一方の排他的論理和回路の他方の入力端子には0ビット目のアナログデジタル変換回路26の出力値が入力され、他方の排他的論理和回路の他方の入力端子には1ビット目のアナログデジタル変換回路26の出力値が入力される。
【0092】
上記説明より、実施の形態4にかかるΔΣADC14aでは、DAC28aを用いた場合であっても、デコーダ27aを多ビットに対応させることで、基準電圧の切り替えを行う場合であってもΔΣADC14aの動作を破綻させることなく動作させることができる。
【0093】
実施の形態5
実施の形態5では、実施の形態1にかかるΔΣADC14の変形例となるΔΣADC14bについて説明する。なお、実施の形態5の説明において実施の形態1で説明した構成要素と同じ構成要素については実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0094】
図15に実施の形態5にかかる半導体装置のΔΣADC14bのブロック図を示す。
図15に示すように、ΔΣADC14bでは、システム制御ロジック23に替えてコンパレータ23aを有する。ΔΣADC14bでは、動作制御回路として、コンパレータ23a及びデコーダ27を用いる。コンパレータ23aは、第1の基準電圧V1(例えば、正側基準電圧Vpu)と第2の基準電圧V2(例えば、負側基準電圧Vpd)との大小関係に応じて出力する切り替え制御信号Sswの論理レベルを切り替える。つまり、コンパレータ23aは、システム制御ロジック23と同じ動作を行うアナログ回路により実現したものである。
【0095】
実施の形態5にかかるΔΣADC14bでは、システム制御ロジック23は、コンパレータ23aのようなアナログ回路であっても実現できることを説明した。また、コンパレータ23aを動作制御回路の一部として設けることで、上位のシステムから変換フェイズの切り替わりを示す信号をもらうことなくΔΣADC14cの動作を維持することができる。なお、
図15に示したDAC28は、1ビットDACとマルチビットDACとのいずれであっても構わない。
【0096】
実施の形態6
実施の形態6では、実施の形態1にかかるΔΣADC14の変形例となるΔΣADC14cについて説明する。実施の形態6では、例えば、ΔΣADC14として、デコーダ27を内蔵していないディスクリート部品のΔΣADCを用いて半導体装置1を構成する例について説明する。なお、実施の形態6の説明において実施の形態1で説明した構成要素と同じ構成要素については実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0097】
図16に実施の形態6にかかる半導体装置のΔΣADC14bのブロック図を示す。
図16に示すように、ΔΣADC14cでは、ΔΣADCチップCHPに、基準電圧入れ替え回路29及びコンパレータ23bが接続される。ΔΣADCチップCHPには、ΔΣADC14からデコーダ27及びシステム制御ロジック23を除く構成が搭載されている。また、ΔΣADCチップCHPは、端子Tm1~Tm4を介して外部に設けられる他の構成要素と接続される。基準電圧入れ替え回路29は、動作制御回路であり、コンパレータ23bの出力信号に応じて、正側基準電圧VpuをΔΣADCチップCHP内のDAC28の正側基準電圧入力端子(例えば、端子Tm2)に入力するのか、DAC28の負側基準電圧入力端子(例えば、端子Tm3)に入力するのか、を切り替える。また、基準電圧入れ替え回路29は、コンパレータ23bの出力信号に応じて、負側基準電圧VpdをΔΣADCチップCHP内のDAC28の正側基準電圧入力端子に入力するのか、DAC28の負側基準電圧入力端子に入力するのか、を切り替える。また、ΔΣADC14cでは、システム制御ロジック23に替えてコンパレータ23bを有する。このコンパレータ23bは、
図15で説明したコンパレータ23aと同じものである。
【0098】
そして、基準電圧入れ替え回路29は、スイッチSWpp、SWpn、SWnp、SWnnを有する。スイッチSWppは、正側基準電圧VpuをDAC28の正側基準電圧入力端子に入力するか否かを切り替える。スイッチSWpnは、正側基準電圧VpuをDAC28の負側基準電圧入力端子に入力するか否かを切り替える。スイッチSWnpは、負側基準電圧VpdをDAC28の正側基準電圧入力端子に入力するか否かを切り替える。スイッチSWnnは、負側基準電圧VpdをDAC28の負側基準電圧入力端子に入力するか否かを切り替える。
【0099】
そして、基準電圧入れ替え回路29は、コンパレータ23bが出力する切り替え制御信号Sswがポジティブ変換フェイズを示している場合、スイッチSWpp、SWnnをオン、スイッチSWpn、SWnpをオフにする。一方、基準電圧入れ替え回路29は、コンパレータ23bが出力する切り替え制御信号Sswがネガティブ変換フェイズを示している場合、スイッチSWpp、SWnnをオフ、スイッチSWpn、SWnpをオンにする。
【0100】
実施の形態6にかかるΔΣADC14cでは、ΔΣADC14として、ディスクリート部品としてデコーダ27を含まない状態で完成された部品を用いた場合においても外付け部品として基準電圧入れ替え回路29及びコンパレータ23bを用いることでΔΣADC14cの動作を破綻させることなく、半導体装置1を動作させることができることを説明した。なお、コンパレータ23bに代えてシステム制御ロジック23を用いることもできる。
【0101】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0102】
(付記1)
測定対象の抵抗性部品に与える第1の基準電圧と第2の基準電圧の大小関係を周期的に切り替えながら、前記抵抗性部品から得られるアナログ信号をデジタル値により構成される出力データに変換するセンサ制御システムにおいて、前記アナログ信号を前記出力データに変換するアナログデジタル変換回路であって、
前記アナログ信号とフィードバック信号とを加算する加算器と、
前記加算器の出力を平滑化するループフィルタと、
前記ループフィルタの出力信号をデジタル出力値に変換するデジタル変換部と、
前記第1の基準電圧と前記第2の基準電圧を参照し、前記デジタル出力値をアナログ値に変換して前記フィードバック信号を生成するデジタルアナログ変換回路と、
前記第1の基準電圧及び前記第2の基準電圧の大小関係によらず前記デジタル出力値と前記フィードバック信号のアナログ値との対応関係を同一に維持する動作制御回路と、を有するアナログデジタル変換回路。
【0103】
(付記2)
前記第1の基準電圧として高電位側基準電圧が与えられ、前記第2の基準電圧として低電位側基準電圧が与えられる期間を第1の変換フェイズ、前記第1の基準電圧として前記低電位側基準電圧が与えられ、前記第2の基準電圧として前記高電位側基準電圧が与えられる期間を第2の変換フェイズとした場合、
前記第1の変換フェイズの期間に用いる第1のデコードルールと、前記第2の変換フェイズの期間に用い、前記第1のデコードルールとは互いに反転した関係の出力を行う第2のデコードルールと、を有し、前記デジタル出力値に代えて前記デジタル出力値をデコードすることで得られるフィードバックデジタル値を出力するデコーダを有し、
前記動作制御回路は、前記第1の変換フェイズと前記第2の変換フェイズとの違いに応じて前記デコーダに変換フェイズの種類を示す制御信号を出力する付記1に記載のアナログデジタル変換回路。
【0104】
(付記3)
前記デジタルアナログ変換回路は、複数のビット値から構成される前記デジタル出力値に基づき前記フィードバック信号を生成する付記1に記載のアナログデジタル変換回路。
【0105】
(付記4)
前記第1の基準電圧として高電位側基準電圧が与えられ、前記第2の基準電圧として低電位側基準電圧が与えられる期間を第1の変換フェイズ、前記第1の基準電圧として前記低電位側基準電圧が与えられ、前記第2の基準電圧として前記高電位側基準電圧が与えられる期間を第2の変換フェイズとした場合、
前記動作制御回路は、
前記第1の変換フェイズと前記第2の変換フェイズのいずれの期間においても、前記デジタルアナログ変換回路に与える基準電圧の大小関係に電圧値に変化が生じないように、前記第1の基準電圧と前記第2の基準電圧の大小関係に基づき前記第1の基準電圧と前記第2の基準電圧を前記デジタルアナログ変換回路に伝達する経路を切り替える付記1に記載のアナログデジタル変換回路。
【0106】
(付記5)
前記デジタル出力値に対してフィルタ処理を施すデジタルフィルタと、
前記デジタルフィルタで処理された前記デジタル出力値に基づき前記アナログ信号のアナログ値の大きさに応じたデジタルコードを含む出力データを生成する出力ロジック回路と、
を更に有する付記1に記載のアナログデジタル変換回路。
【0107】
(付記6)
前記第1の基準電圧として高電位側基準電圧が与えられ、前記第2の基準電圧として低電位側基準電圧が与えられる期間を第1の変換フェイズ、前記第1の基準電圧として前記低電位側基準電圧が与えられ、前記第2の基準電圧として前記高電位側基準電圧が与えられる期間を第2の変換フェイズとした場合、
前記第1の変換フェイズにおいて出力される第1の出力データと、前記第2の変換フェイズにおいて出力される第2の出力データと、の平均値に基づき前記センサ抵抗の抵抗値を算出する演算回路を更に有する付記5に記載のアナログデジタル変換回路。
【符号の説明】
【0108】
1~3 半導体装置
10 リファレンス電圧生成回路
11 オペアンプ
12 オペアンプ
13 プリバッファ
14、14a~14c ΔΣADC
15 スイッチ制御回路
16 バイパス回路
17 オペアンプ
20、20a~20c ADCコア
21a デジタルフィルタ
21b 出力ロジック回路
21c 通信インタフェース回路
22 MCU
23 システム制御ロジック
23a、23b コンパレータ
24 加算器
25 ループフィルタ
26 アナログデジタル変換回路
27、27a デコーダ
28、28a DAC
29 基準電圧入れ替え回路
30a~30d マルチプレクサ
31 バッファ
32 減算回路
33 バッファ
34 オペアンプ
Rref 基準抵抗
Rth センサ抵抗
R1 入力抵抗
C1、C2、C3 コンデンサ
SW1~SW4 スイッチ
V1 第1の基準電圧
V2 第2の基準電圧
Vp 高電位側基準電圧
Vn 低電位側基準電圧
CHP ΔΣADCチップ