(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】タングステン含有表面を処理するのに有用な化学機械研磨組成物及びタングステンを含む表面を含む基材を化学機械研磨する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220928BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20220928BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20220928BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622X
B24B37/00 H
C09G1/02
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
(21)【出願番号】P 2018519726
(86)(22)【出願日】2016-10-21
(86)【国際出願番号】 US2016058036
(87)【国際公開番号】W WO2017074800
(87)【国際公開日】2017-05-04
【審査請求日】2019-10-02
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-01
(32)【優先日】2015-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500397411
【氏名又は名称】シーエムシー マテリアルズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】ケビン ドッカリー
(72)【発明者】
【氏名】ホアン ヘリン
(72)【発明者】
【氏名】フー リン
(72)【発明者】
【氏名】ティナ リー
【合議体】
【審判長】瀧内 健夫
【審判官】恩田 春香
【審判官】棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-302255(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/267082(US,A1)
【文献】国際公開第2015/143270(WO,A1)
【文献】特開2012-33887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/304
C09K3/14
C09G1/02
B24B37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体キャリアと、
前記液体キャリア中に分散された研磨剤粒子であって、6mV~50mVの範囲の永久正電荷を有するコロイダルシリカ粒子である研磨剤粒子と、
α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンまたはこれらの組み合わせから選択されるシクロデキストリンと、
カチオンを有し、かつ前記カチオンから延びて少なくとも7個の炭素原子を含む鎖を含む疎水性尾部を有するカチオン性界面活性剤であって、スラリー中で前記シクロデキストリンと複合体を形成することができる前記カチオン性界面活性剤と
を含む、タングステン含有表面を処理するのに有用な化学機械研磨組成物。
【請求項2】
前記カチオン性界面活性剤が次の構造:
【化1】
(式中、
nは、少なくとも1であり、
Xは、P
+またはN
+であり、
R
1は、少なくとも7個の炭素原子を含有する、任意選択により置換され、任意選択により不飽和を含有する、直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、
R
2、R
3及びR
4は、
水素、
置換または無置換であってよく、任意選択によりヘテロ原子、荷電基またはその両方を含んでよい、飽和または不飽和の環状基、及び
任意選択により不飽和、ヘテロ原子または荷電基のうちの1つ以上を含んでよい線状または分岐状のアルキル基、ならびに
R
2、R
3及びR
4のうちの2つまたは3つから形成され、任意選択により置換された飽和または不飽和の環状構造から独立して選択することができる)
を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
R
1が、7~20個の炭素原子の線状アルキルである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
R
2が、6個以下の炭素原子を含むアルキル基である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
R
3及びR
4のそれぞれが、独立して、1~6個の炭素原子を有するアルキルである、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記カチオン性界面活性剤がジカチオン性である、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤が、次式:
【化2】
(式中、
R
1は、8~20個の炭素原子を有するアルキル基であり、
各R
3、R
4、R
5、R
6及びR
7は、独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、
Zは、1~5個の炭素原子を有する二価連結基である)
を有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前
記カチオン性界面活性剤が、N,N,N’,N’,N’-ペンタメチル-N-タロー-1,3-プロパンジアンモニウムジクロリドである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記カチオン性界面活性剤が、次式:
【化3】
(式中、
nは、少なくとも1であり、
Xは、P
+またはN
+であり、
R
1は、少なくとも7個の炭素原子を含有し、任意選択により不飽和を含有する、直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、
R
8、R
9、R
10、R
11及びR
12は、
水素、
置換または無置換であってよく、任意選択によりヘテロ原子、荷電基またはその両方を含んでよい、飽和または不飽和の環状基、及び
任意選択により不飽和、ヘテロ原子または荷電基のうちの1つ以上を含んでよい線状または分岐状のアルキル基から独立して選択することができる)
を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
R
8、R
9、R
11及びR
12のそれぞれが、水素であり、R
10が、置換または無置換であってよく、任意選択によりヘテロ原子(例えば、窒素)、荷電基(例えば、荷電した窒素ヘテロ原子)またはその両方を含んでよい不飽和環状基である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
組成物の総重量に基づいて、0.001~0.5重量%の前記カチオン性界面活性剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
組成物の総重量に基づいて、0.01~2重量%の前記β-シクロデキストリンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記β-シクロデキストリンと前記カチオン性界面活性剤とが会合したカチオン性界面活性剤-シクロデキストリン複合体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
0.001~0.5重量%の前記カチオン性界面活性剤-βシクロデキストリン複合体を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記研磨剤粒子が、pH1~6の前記スラリー中で少なくとも6ミリボルト(mV)の正電荷を有するシリカ研磨剤粒子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記シリカ研磨剤粒子の30%以上が、3つ以上の凝集した一次粒子を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記シリカ研磨剤粒子が、前記粒子中に組み込まれたカチオン性化合物を含み、前記カチオン性化合物が、荷電性窒素含有化合物または荷電性リン含有化合物である、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記シリカ研磨剤粒子が少なくとも10ミリボルトの永久正電荷を有する、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
前記シリカ研磨剤粒子が、30~70ナノメートルの範囲の平均粒径を有する、請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
1~4重量%の研磨剤粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
0.001~1重量%の阻害剤と、
0.001~0.5重量%の触媒と
を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記触媒が可溶性鉄含有触媒である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
酸化剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
タングステンを含む表面を含む基材を化学機械研磨する方法であって、
(a)前記基材を、
液体キャリアと、
前記液体キャリア中に分散されたシリカ研磨剤粒子であって、pH1~6のスラリー中で6mV~50mVの範囲の永久正電荷を有するコロイダルシリカ粒子である研磨剤粒子と、
α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンまたはγ-シクロデキストリンまたはこれらの組み合わせから選択されるシクロデキストリンと、
カチオンを有し、かつ前記カチオンから延びる疎水性末端を有するカチオン性界面活性剤であって、前記スラリー中で前記シクロデキストリンと複合体を形成することができる前記カチオン性界面活性剤とを含む研磨組成物と接触させることと、
(b)前記スラリーを前記基材に対して移動させることと、
(c)前記基材を削って前記タングステンの一部を前記基材から除去することと
を含む、前記方法。
【請求項25】
前記カチオン性界面活性剤が、次の構造:
【化4】
(式中、
nは、少なくとも1であり、
Xは、P
+またはN
+であり、
R
1は、少なくとも7個の炭素原子を含有する、任意選択により置換され、任意選択により不飽和を含有する、直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、
R
2、R
3及びR
4は、
水素、
置換または無置換であってよく、任意選択によりヘテロ原子、荷電基またはその両方を含んでよい、飽和または不飽和の環状基、及び
任意選択により不飽和、ヘテロ原子または荷電基のうちの1つ以上を含んでよい線状または分岐状のアルキル基、ならびに
R
2、R
3及びR
4のうちの2つまたは3つから形成され、任意選択により置換された飽和または不飽和の環状構造から独立して選択することができる)
を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記界面活性剤が、次式:
【化5】
(式中、
R
1は、8~20個の炭素原子を有するアルキル基であり、
各R
3、R
4、R
5、R
6及びR
7は、独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、
Zは、1~5個の炭素原子を有する二価連結基である)
を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記カチオン性界面活性剤がN,N,N’,N’,N’-ペンタメチル-N-タロー-1,3-プロパンジアンモニウムジクロリドである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記研磨組成物が、
0.001~1重量%の阻害剤と、
0.001~0.5重量%の触媒と
を更に含む、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属、特にタングステンを含有する基材表面を化学機械研磨する(または平坦化する)ための方法に有用なスラリーに関する。
【背景技術】
【0002】
基材の化学機械研磨(CMP)または平坦化に有用な方法、材料及び機器は、非常に多様であり、種々の表面及び最終用途を有する広範な基材の処理に使用されている。CMP法によって処理される基材は、様々な製造段階のいずれかにある光学製品及び半導体基材を含む。広範囲のCMP装置、スラリー、研磨パッド及び方法がよく知られており、新しい製品が継続的に開発されている。
【0003】
各種組成物(研磨スラリー、CMPスラリー及びCMP組成物としても知られる)は、半導体基材の表面を処理する(例えば、研磨、平坦化する)ように設計される。このような表面の一部は、タングステンなどの金属を含有する。研磨スラリーは、特定の種類の基材を処理するために、例えば、金属を含有しない表面またはタングステンとは異なる金属を含有する表面ではなく、タングステン含有表面を研磨するために特別に選択される化学成分を含有し得る。このような化学成分の例には、化学触媒、阻害剤、キレート剤、界面活性剤、酸化剤及び他のものが挙げられ、そのそれぞれは、基材表面の金属成分または非金属成分の望ましい処理を改善するように選択され得る。加えて、研磨組成物は、典型的に研磨剤粒子を含有する。研磨剤粒子の種類もまた、処理される基材の種類に基づいて選択され得る。ある種の研磨剤粒子は、タングステン含有基材表面を研磨するのに有用であり得るが、他のCMP基材表面の処理に対しては有用でない場合がある。
【0004】
いくつかのスラリーは、連続した金属または連続した誘電体材料などの単一材料で完全に作られた表面を処理するために設計される。他のスラリーは、異なる材料の組み合わせからなるフィーチャを有する基材、例えば、誘電体材料全体に分散された金属フィーチャを有する表面を処理するために設計され得る。
【0005】
タングステン含有基材を研磨する方法は、半導体処理の高度なノードにとって重要となっている。基材のタングステンフィーチャを作製するステップにおいて、出発基材は、タングステンの充填を必要とするチャネル、ホール、ギャップ、トレンチなどの三次元スペースを含有する、パターン化された(非平坦)非タングステン(例えば、誘電体)材料の表面を含み得る。タングステンは、スペースを充填するだけでなく、スペースの完全な充填を確保するために不連続表面上に過剰のタングステン連続層を形成するような形で、パターン化された材料を覆うように堆積させることができる。過剰のタングステンは、その後、除去され、パターン化された材料の間のスペース内にタングステンフィーチャが堆積された元のパターン化された材料の表面を露出させる必要がある。
【0006】
タングステン(または別の金属)フィーチャが誘電体フィーチャ間に配置された基材の一例は、誘電体材料のフィーチャ間に備えられたタングステン「プラグ」及び「インターコネクト」構造を含む半導体基材である。タングステンは、このような構造を作製するために、少なくとも部分的に誘電体材料、例えば、酸化ケイ素から作られたパターン化構造を含有する表面を覆うように適用される。パターン化された誘電体表面は、構造化されており、すなわち、非平坦である。これは、ホール、チャネル、トレンチなどのスペースが存在することによって中断され、不連続となっていることを除いて、実質的に平面または平坦である表面を含むことを意味する。構造化された誘電体含有表面にタングステンを適用すると、スペースがタングステンで充填され、また過剰のタングステン連続層が形成される。次のステップは、過剰のタングステンを除去して、下にある誘電体層を露出させ、誘電体材料のスペース内に金属が配置された平坦な表面を生成することである。
【0007】
いくつかの方法では、誘電体表面を露出させる単一ステップでタングステンが除去される。他の方法では、「2ステップ」プロセスが使用され得る。第1のステップで、過剰のタングステンの大部分が除去されるが、誘電体層は露出されない。このステップは、一般に「バルク」除去ステップと呼ばれ、このステップ中には高タングステン除去速度が望まれる。後続ステップ(第2のステップ)を使用して、残りのタングステンの最終部分を除去し、誘電体フィーチャ間のスペースがタングステンで満たされている下にある誘電体材料を最終的に露出させることができる。このステップは、「研磨」ステップと呼ばれることもあり、高タングステン除去速度も重要であり得るが、他の性能要件も重要となる。
【0008】
研磨ステップは、基材のタングステンと誘電体フィーチャの両方に影響する。両種のフィーチャの最終状態は、許容される平坦性と「トポグラフィー」の両方を示さなければならない。
【0009】
研磨された基材のトポグラフィー特徴には、酸化物の「エロージョン」及び金属の「ディッシング」と呼ばれる物理的現象、ならびに「段差」と呼ばれるこれらの複合作用が含まれる。一般にラインアンドスペース(L&S)パターンと呼ばれるパターンの1種において、パターンは、酸化ケイ素などの誘電体材料のフィールドに、金属と酸化物(酸化ケイ素など)からなるラインアレイを含んでいる。ラインアレイは、任意の密度またはサイズ、例えば、交互に並ぶ幅1マイクロメートルの金属ラインと幅1マイクロメートルの酸化物ライン、すなわち、50% 1マイクロメートルアレイ、または、異なるサイズもしくは密度の交互ライン、例えば、幅1マイクロメートルの金属ラインと幅3マイクロメートルの酸化物ライン、すなわち、25% 1×3マイクロメートルアレイであり得る。
【0010】
誘電体フィールドは、比較として、典型的に寸法がより大きく、TEOSなどの酸化ケイ素などの誘電体材料からなる。例えば、フィールドは、100um×100umの領域であり得る。研磨後のパターン性能を評価するために、市販の装置を使用した光学的方法などにより、フィールドの絶対酸化物損失(除去された材料)が決定される。フィールドは、アレイにおけるディッシング及びエロージョンの相対的パターン測定の基準として使用される。例えば、交互に並んだタングステン金属及びTEOS酸化物ラインからなる50% 1×1マイクロメートルラインアレイは、フィールド酸化物に対して、形状測定装置またはAFMによって測定することができる。エロージョンは、フィールド酸化物と比較したときのラインアレイにおける酸化物(例えば、1マイクロメートルのTEOSライン)の相対的高さの差によって特徴付けられる。正のエロージョン値は、フィールドと比較したときの酸化物ラインの相対的凹みと解釈される。金属ディッシングは、典型的に、アレイ中の酸化物ラインと比較したときの金属ラインの相対的高さを指す。例えば、50% 1×1マイクロメートルのラインアレイにおいて、200オングストロームのディッシング値は、酸化物ラインと比較してタングステンラインの200オングストロームの凹みと解釈される。エロージョン及びディッシングが加わると、この場合、凹んだ部分(ディッシングされたタングステン)からフィールド酸化物までの全体的な段差が生じる。アレイにおける酸化物または金属の合計損失量は、上述のとおり、ディッシング値及びエロージョン値と、フィールドについて決定された絶対酸化物減少値とを組み合わせることによって決定することができる。
【0011】
商業的CMP研磨プロセスは、好ましくは、基材表面に許容されないエロージョン、ディッシングまたは他の望ましくないトポグラフィー作用をもたらさず、スクラッチ及び残渣などの欠陥が低レベルの状態で、ある量の金属(例えば、タングステン)を除去するのに有効であり得る。
【0012】
上記に鑑みて、半導体加工産業では、タングステン及び酸化物(例えば、TEOS)の有用なまたは高い除去速度を変わらずに提供しつつ、研磨表面の平坦性、トポグラフィー欠陥(ディッシング及びエロージョンを含む)の減少、及び研磨表面における他の欠陥減少(スクラッチ減少及び残渣減少など)の分野で有用なまたは改善された性能を提供する、タングステン含有基材を研磨するのに有用なCMPスラリーが引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【0013】
本発明者らは、化学機械研磨技術によってタングステン含有基材の表面を処理するための新規かつ発明的な研磨組成物を見出した。これらの組成物は、本明細書中、「スラリー組成物」、「CMPスラリー」、「スラリー」、「化学機械研磨スラリー」、「CMP組成物」などと呼ばれることもある。新規研磨組成物は、液体キャリア(例えば、水)、研磨剤粒子、シクロデキストリン及びカチオン性界面活性剤を含有する。カチオン性界面活性剤は、研磨組成物中にある間、シクロデキストリンと複合体を形成することができる。
【0014】
これまで、カチオン性界面活性剤は、研磨剤粒子、特に荷電性コロイダルシリカ粒子などの荷電性粒子の不安定性を生じさせることがあるため、また、CMPスラリー中のカチオン性界面活性剤がCMP処理中に高レベルで欠陥をもたらす傾向があり得るため、種々のCMP組成物に有用でないことがわかっていた。本発明の記載によれば、選択されたカチオン性界面活性剤は、研磨剤粒子を含み、更に荷電性コロイダルシリカ粒子を含み得るCMPスラリーに有用であり得、高レベルの欠陥性をもたらすことも、荷電性コロイダルシリカ研磨剤粒子の不安定性を生じさせることもない。これらのカチオン性界面活性剤は、シクロデキストリンと組み合わせてスラリー中に含めた場合、シクロデキストリンを含まないスラリー中に含めることができるカチオン性界面活性剤のレベル(濃度)よりも高いレベルで含めることができる。本記載のスラリーはまた、望ましい除去速度及び処理基材の良好なまたは有利に改善されたトポグラフィー特性などの他の重要な性能特性を示す。
【0015】
記載される研磨組成物において、1分子のカチオン性界面活性剤と1分子のシクロデキストリンが会合して、「シクロデキストリン-カチオン性界面活性剤複合体」(または短縮して「複合体」)を形成する。シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンまたはγ-シクロデキストリンであり得る。カチオン性界面活性剤は、研磨組成物中で複合体を形成することができる種類のものであり、これにより得られるスラリー(カチオン性界面活性剤、シクロデキストリン及び複合体を含有する)は、基材のタングステン含有表面を処理する(例えば、研磨する)のに有効である。
【0016】
シクロデキストリンと複合体を形成することができるカチオン性界面活性剤の例は、カチオンと、そのカチオンから延びる疎水性尾部とを有し、その尾部は少なくとも7個の炭素原子を含む、カチオン性界面活性剤が挙げられる。尾部は、シクロデキストリンと会合して複合体を形成することができる炭化水素、置換炭化水素またはヘテロ原子含有炭化水素基であり得る。好ましい尾部基は、比較的疎水性であり得、シクロデキストリンと会合するように空間的に適合し得るものである(例えば、線状であるか、過度に分岐していない)。例には、不飽和を有しないか、わずかな不飽和(例えば、1または2個の炭素-炭素二重結合)しかない直鎖アルキル(無置換及び非電荷)基が挙げられる。水素原子、または任意の有用な化学的性質及び構造であり得る水素以外の基(直鎖アルキル、置換もしくは分枝鎖アルキル、またはヘテロ原子(例えばカチオン)含有直鎖もしくは分岐鎖アルキルを含み、これらはいずれも不飽和を含んでもよい)もまたカチオンに連結される。任意選択により、カチオン性界面活性剤のカチオンは、ヘテロ原子としてカチオンを含有する飽和または芳香環構造の一部であってもよく、環は、任意選択により置換されていてもよい。
【0017】
好ましい実施形態において、シクロデキストリンをカチオン性界面活性剤とともに研磨組成物中に含めることにより、カチオン性界面活性剤が過度の有害な影響を及ぼすことなくスラリー中に有利に存在(または増加した量で存在)できることがここで判明した。カチオン性界面活性剤は、所望のトポグラフィー特性(エロージョン、ディッシングの低減)を改善するために、CMPスラリーに有用である可能性があることが特定されている。しかし、カチオン性化合物などの多くの化学化合物は、タングステンもしくは酸化物の除去速度に悪影響を及ぼすことがあり、または保管中の粒子沈降、もしくは保管もしくは使用中の粒径成長をもたらすことなどによって懸濁粒子の不安定性を引き起こすことがある。
【0018】
本発明の記載によれば、シクロデキストリンの存在により、カチオン性界面活性剤が研磨組成物中に低悪影響で存在できることが見出された。本記載のスラリーの特定の実施形態において、カチオン性界面活性剤は、ディッシングまたはエロージョンの低減などの望ましいまたは改善した性能効果をもたらすが、保管中または使用中における過度のスラリー不安定性などの過度の有害な影響がなく、除去速度の減少または処理基材の欠陥性のレベル上昇などの異なる性能特徴の低下を引き起こすことのない量で含まれ得る。好ましいカチオン性界面活性剤は、トポグラフィー(例えば、エロージョンまたはディッシング)の改善をもたらすことができ、シクロデキストリンとともに存在する場合、スラリーの他の物性または性能特性に有害な影響を及ぼすことなく改善がもたらされ得る。例えば、タングステンまたは酸化物除去速度の好ましくない減少または低下;保管中または使用中のいずれかにおけるスラリー安定性の低下(例えば、保管中における粒子沈降または保管もしくは使用中における粒径成長の増加によって測定した場合);あるいは処理されたウェハの表面上に存在するスクラッチまたは残渣という形態での欠陥性の増大をもたらさない。
【0019】
記載される研磨組成物は、タングステン含有基材表面を処理(例えば、研磨またはバフ研磨)するのに有用である。研磨組成物は、カチオン性界面活性剤、シクロデキストリン、複合体、水性媒体中に分散された研磨剤粒子、及び任意選択により触媒、安定剤、阻害剤または他の任意選択の微量成分のうちの1つ以上を含む。好ましい研磨組成物は、タングステン含有基材のCMP研磨において使用されるとき、タングステン及び誘電体材料(例えば、TEOSまたは他の酸化材料)の良好な除去速度;有用なまたは低いレベルの欠陥性(低レベルのスクラッチ、残渣または好ましくは両方を含む);ならびに有用または有利なトポグラフィー特性(低レベルのディッシング及びエロージョンを含む)の所望の組み合わせを示す。好ましい研磨組成物は、平坦化または研磨プロセス中における粒径成長レベルの低下を示すことによって、改善した安定性(例えば、使用中)を示し得、この結果、処理基材のスクラッチという形態での欠陥のレベル低下がもたらされる。これは、(非永久的な)正に帯電したコロイダルシリカを安定化させるために特に該当し得る。特定の特に好ましい研磨組成物において、これらの性能特性のうちの1つ以上が、シクロデキストリン、カチオン性界面活性剤及びシクロデキストリン-カチオン性界面活性剤複合体を含有しないということ以外は同一の研磨組成物の同じ性能特性と比較して改善され得る。
【0020】
好ましい研磨剤粒子の例には、粒子表面での正電荷、粒子内部での正電荷またはその両方を有し得、かつ好ましくは少なくとも6、例えば少なくとも8ミリボルトの正電荷を示し得る、正に帯電したシリカ粒子が挙げられ、この電荷は、好ましくは永久的である。研磨スラリーは、非凝集粒子、凝集粒子またはその両方を含み得、例えば、少なくとも30、40または50%が凝集粒子である。他の種類及び形態の研磨剤粒子も有用であり得、例えば、金属酸化物粒子、セリア粒子、ジルコニア粒子または所望される他のものが含まれる。
【0021】
また、タングステンを含有する表面を含む基材を化学機械研磨するための方法についても記載される。方法は、本明細書に記載される研磨組成物と基材を接触させることと、研磨組成物を基材に対して移動させることと、基材を削ってタングステンの一部を基材から除去することによって基材を研磨することとを含む。
【0022】
一態様において、本発明は、タングステン含有表面を処理するのに有用な研磨組成物に関する。研磨組成物は、液体キャリア、液体キャリア中に分散された研磨剤粒子、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンまたはこれらの組み合わせから選択されるシクロデキストリン、及びカチオンを有し、かつそのカチオンから延びて少なくとも7個の炭素原子を含む鎖を含む疎水性尾部を有するカチオン性界面活性剤を含む。カチオン性界面活性剤は、スラリー中でシクロデキストリンと複合体を形成することができる。
【0023】
別の態様において、本発明は、タングステンを含む表面を含む基材を化学機械研磨する方法に関する。方法は、液体キャリアと、液体キャリア中に分散されたシリカ研磨剤粒子であって、pH1~6のスラリー中で少なくとも6ミリボルト(mV)の正電荷を有する粒子と、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンまたはγ-シクロデキストリンから選択されるシクロデキストリンと、カチオンを有し、かつそのカチオンから延びる疎水性末端を有するカチオン性界面活性剤であって、研磨組成物中でシクロデキストリンと複合体を形成することができるカチオン性界面活性剤とを含有する研磨組成物と基材を接触させることを含む。方法はまた、スラリーを基材に対して移動させることと、基材を削ってタングステンの一部を基材から除去することとを含む。
【発明を実施するための形態】
【0024】
タングステン含有基材のCMP処理(平坦化、研磨)に有用な化学機械研磨組成物が以下に記載される。これらの研磨組成物は、本明細書中、「CMPスラリー」、「研磨スラリー」、「タングステン-研磨スラリー」、「研磨組成物」、「組成物」、「平坦化組成物」などと呼ばれ得る。研磨組成物は、液体キャリア、液体キャリア中に分散された研磨剤粒子(好ましくは正に帯電したコロイダルシリカ研磨剤粒子)、カチオン性界面活性剤及びシクロデキストリンを含む。研磨組成物は、任意選択により、好ましくは、他の添加剤または微量成分、特に、触媒、酸化剤、阻害剤、pH調整剤などを含有し得る。
【0025】
研磨剤粒子は、化学機械研磨において有用な任意の種類の研磨剤粒子であり得る。例には、ジルコニア;金属酸化物、例えばアルミナ;セリア;及びシリカの各種形態が挙げられ、これらはいずれもドープされていてもドープされていなくてもよく、各種粒子のための様々な既知の方法のいずれかによって調製されてよい。好ましい研磨剤粒子は、コロイダルシリカ粒子、特に、スラリーの環境下で正電荷を示すコロイダルシリカ粒子を含む。
【0026】
本明細書で使用されるとき、「コロイダルシリカ粒子」という用語は、構造的に異なる粒子を生成する熱分解プロセスまたは火炎加水分解プロセスではなく、湿式プロセス(沈降または縮合重合シリカ)を使用して調製されたシリカ粒子を指す。荷電性コロイダルシリカ研磨剤粒子は、液体キャリア全体にわたって分散または懸濁している。様々な種類のコロイダルシリカ粒子(例えば、荷電、凝集、非荷電、非凝集)が知られており、市販されている。
【0027】
研磨組成物中に存在するとき、コロイダルシリカ研磨剤粒子は、好ましくは、正電荷を示し得る。また、研磨組成物中に存在するとき、荷電性コロイダルシリカ研磨剤粒子は、任意選択により、好ましくは、凝集粒子と、非凝集粒子とを含む。非凝集粒子は、球状または球状に近い形状であり得る個々の粒子であるが、概ね楕円形、正方形または長方形の断面などの他の形状を有することもできる。非凝集粒子は、一次粒子と呼ばれる。凝集粒子は、複数の別個の一次粒子が、あまり多くない数(例えば、2、3、4または5個の一次粒子)で、クラスター化するか、一緒に結合して、複数の粒子から単一の粒子を形成した粒子であり、この単一粒子は、概ね不規則な形状を有する。
【0028】
正に帯電し、任意選択により凝集したコロイダルシリカ粒子の種々の実施形態は、本出願人による同時係属中の2014年3月21日に出願された米国特許出願第14/222,086号、2014年3月24日に出願された同第14/222,736号、及び2015年6月24日に出願された同第14/750,204号、ならびに付与された米国特許第9,127,187号に記載されている。これらの特許出願に記載されている荷電性コロイダルシリカ研磨剤粒子は、本明細書に記載される研磨組成物において有用であり得、凝集していても凝集していなくてもよい。記載される研磨組成物は、CMPプロセスにおいて使用される前には、凝集コロイダルシリカ粒子、非凝集コロイダルシリカ粒子またはその両方を含み得る。凝集粒子は、有用または有利であるが、過剰でない濃度で存在し得る。すなわち、処理中に、スクラッチなどの欠陥を高レベルでもたらさない濃度で存在し得る。特定の実施形態において、研磨組成物の正に帯電したコロイダルシリカ粒子(CMPプロセスにおける使用前)は、部分的に凝集していてもよい。例えば、研磨組成物中に分散されたコロイダルシリカ粒子の最大30、40または50%が、3つ以上の凝集した一次粒子、例えば、3、4または5つの凝集した一次粒子を含むことができ、粒子の残部または実質的な残部は、一次粒子の形態で存在する。凝集粒子は、処理中にスクラッチなどの欠陥を高レベルで引き起こすほど大きくないサイズ及び濃度のものである。例えば、凝集粒子は、主に、10個以下の一次粒子を含有する凝集粒子であり得、言い換えれば、凝集粒子の大部分は、好ましくは0.5μm(マイクロメートル)(すなわち、500nm)より小さい。
【0029】
研磨剤粒子の粒径は、その粒子を取り囲む最小の球の直径である。部分的に凝集した分散体中の粒子は、任意の好適な粒径、例えば、約5~約150nmの範囲の平均粒径(凝集体サイズ)を有し得る。研磨剤粒子は、約20nm以上(例えば、約25nm以上、約30nm以上、約40nm以上または約45nm以上)の平均粒径(凝集体サイズ)を有し得る。研磨剤粒子は、約100nm以下(例えば、約90nm以下、約80nm以下、約70nm以下または約65nm以下)の平均粒径(凝集体サイズ)を有し得る。したがって、研磨剤粒子は、約20nm~約90nm(例えば、約25nm~約90nmまたは約30nm~約90nm)の平均粒径(凝集体サイズ)を有し得る。好ましくは、研磨剤粒子は、約40~約70nmの範囲または約45~約65nmの範囲の平均粒径を有し得る。コロイダルシリカ粒子の粒径は、Malvern Instruments(登録商標)(Worcestershire,UK)から入手可能なZetasizer(登録商標)などの動的光散乱装置を使用して測定することができる。
【0030】
研磨組成物は、任意の好適な量の研磨剤粒子、例えば、荷電性コロイダルシリカ研磨剤粒子を含み得る。好ましい研磨組成物は、約0.01重量%以上(例えば、約0.05重量%以上)のコロイダルシリカを含み得る。より典型的には、好ましい研磨組成物は、約0.1重量%以上(例えば、約1重量%以上、約5重量%以上、約7重量%以上、約10重量%以上または約12重量%以上)コロイダルシリカ粒子を含み得る。コロイダルシリカ粒子の量は、約30重量%以下、より典型的には、約20重量%以下(例えば、約15重量%以下、約10重量%以下、約5重量%以下、約3重量%以下または約2重量%以下)であり得る。好ましくは、研磨組成物中のコロイダルシリカ粒子の量は、約0.01重量%~約20重量%、より好ましくは約0.05重量%~約15重量%(例えば、約0.1重量%~約10重量%、約0.1重量%~約4重量%、約0.1重量%~約3重量%、約0.1重量%~約2重量%または約0.2重量%~約2重量%)の範囲内である。
【0031】
好ましいコロイダルシリカ粒子は、研磨組成物中で少なくとも6、例えば、少なくとも8ミリボルト(mV)の正電荷を有する。コロイダルシリカ粒子などの分散された粒子上の電荷は、一般に、ゼータ電位(または界面動電位)と呼ばれる。粒子のゼータ電位は、粒子を取り囲むイオンの電荷と研磨組成物のバルク溶液(例えば、液体キャリア及び液体キャリア中に溶解している任意の他の構成成分)の電荷との間の電位差を指す。ゼータ電位は、典型的に水性媒体のpHに依存する。所与の研磨組成物について、粒子の等電点は、ゼータ電位がゼロであるpHとして定義される。pHが等電点から離れて増加または減少するにつれて、表面電荷(したがって、ゼータ電位)は、それに応じて減少または増加する(負または正のゼータ電位値に)。研磨組成物のゼータ電位は、Dispersion Technologies,Inc.(Bedford Hills,NY)から入手可能なModel DT-1202 Acoustic and Electro-acoustic spectrometerを使用して得ることができる。
【0032】
例示的なコロイダルシリカ粒子は、スラリー中にあるとき、約6mV以上(例えば、約8もしくは10mV以上、約15mV以上、約20mV以上、約25mV以上または約30mV以上)の正電荷を有し得る。スラリー中のコロイダルシリカ粒子は、約50mV以下(例えば、約45mV以下、約40mV以下または約35mV以下)の正電荷を有し得る。好ましくは、コロイダルシリカ粒子は、約6mV~約50mV(例えば、約10mV~約45mV、約15mV~約40mVまたは約20mV~約40mV)の範囲の正電荷を有する。
【0033】
コロイダルシリカ粒子の正電荷は、永久的であり得る。これは、その電荷が、例えば、フラッシング、希釈、濾過などによって容易に可逆にならないことを意味する。永久正電荷は、例えば、粒子の外表面の下の粒子の内側部分上に、または内側部分中にカチオン性化合物を組み込むことの結果であり得る。カチオン性化合物は、例えば、金属カチオン、アミンなどの窒素含有化合物、ホスホニウム化合物またはこれらの2つ以上の組み合わせを含み得る。永久正電荷は、例えば、粒子とカチオン性化合物との間の共有結合相互作用から生じるものであり得、例えば、粒子とカチオン性化合物との間の静電相互作用の結果であり得る可逆性正電荷とは対照的なものである。本開示が、永久正電荷を得る任意の特定の手段に限定されないことは理解されるであろう。
【0034】
ただし、本明細書で使用されるとき、少なくとも6mV(例えば、8mV以上)の永久正電荷とは、次の3ステップの濾過試験後にコロイダルシリカ粒子のゼータ電位が6mV超(または以上)のままであることを意味する。ある体積(例えば、200ml)の研磨組成物をMillipore Ultracell再生セルロース限外濾過ディスク(例えば、100,000ダルトンのMWカットオフ及び6.3nmの孔径を有するもの)に通して濾過する。残存した分散体(限外濾過ディスクに保持されたおよそ65mlの分散体)を回収し、pH調整済み脱イオン水を補充する。脱イオン水を硝酸などの好適な無機酸を使用して研磨組成物の元のpHにpH調整する。この手順を合計3回の濾過サイクルで繰り返す。次いで、3回濾過し補充した分散体のゼータ電位を測定し、元の研磨組成物のゼータ電位と比較することができる。
【0035】
理論に拘束されることを望むものではないが、限外濾過ディスクに保持された分散体(保持分散体)は、シリカ粒子と、その粒子中に存在することができ、またはその粒子の表面と会合できる(例えば、粒子表面との結合、付着、静電相互作用または接触ができる)任意の化学構成成分(例えば、正に帯電した種)とを含むと考えられる。液体キャリアと、液体キャリア中に溶解している化学構成成分の少なくとも一部は、限外濾過ディスクを通過する。保持分散体を元の体積にまで補充することは、元の研磨組成物の平衡を壊すことと考えられ、これにより、粒子表面と会合している化学構成成分が新たな平衡に傾き得る。粒子の内部にあるか、粒子表面と強く会合している(例えば、共有結合している)構成成分は、粒子とともに残ることから、その正のゼータ電位における変化は、あったとしても、わずかしかない傾向にある。対照的に、粒子表面との会合が弱い(例えば、静電相互作用)構成成分の一部は、系が新たな平衡に傾くときに溶液に戻り得、これにより、正のゼータ電位が減少する。このプロセスを合計3回の限外濾過と補充のサイクルで繰り返すことは、上記の作用を増幅すると考えられる。
【0036】
元の研磨組成物中のコロイダルシリカ粒子のゼータ電位と上記の3ステップ濾過試験後の分散体中のコロイダルシリカ粒子のゼータ電位との間の差がわずかであることが好ましい(濾過試験に起因するイオン強度差を補正した後)。例えば、元の研磨組成物中のコロイダルシリカ粒子のゼータ電位は、3ステップ濾過試験の後で、コロイダルシリカ粒子のゼータ電位よりも約10mV未満大きい(例えば、約7mV未満大きい、約5mV未満大きい、または更に約2mV未満大きい)ことが好ましい。別の言い方をすれば、3ステップ濾過試験後のコロイダルシリカ粒子のゼータ電位は、元の研磨組成物中のコロイダルシリカ粒子のゼータ電位よりも10mV未満小さい(または7mV未満小さい、または5mV未満小さい、または2mV未満小さい)ことが好ましい。例えば、元の研磨組成物中のコロイダルシリカ粒子のゼータ電位が30mVである実施形態において、3ステップ濾過試験後のコロイダルシリカ粒子のゼータ電位は、好ましくは20mVよりも大きい(または23mVよりも大きい、または25mVよりも大きい、または28mVよりも大きい)。
【0037】
コロイダルシリカ粒子及び荷電性コロイダルシリカ粒子は、種々の方法によって調製することができ、そのいくつかの例は、商業的に使用され、既知である。有用なコロイダルシリカ粒子には、沈降または縮合重合シリカが含まれ、これらは、既知の方法を使用して、例えば、「ゾルゲル」法として知られる方法によって、またはケイ酸塩イオン交換によって調製することができる。縮合重合シリカ粒子は、多くの場合、Si(OH)4を縮合して実質的に球状の粒子を形成することによって調製される。前駆体のSi(OH)4は、例えば、高純度アルコキシシランの加水分解によって、またはケイ酸塩水溶液の酸性化によって得ることができる。米国特許第5,230,833号は、溶液中でコロイダルシリカ粒子を調製する方法を記載している。
【0038】
分散体中のコロイダルシリカ粒子の30%以上が3つ以上の凝集した一次粒子を含む、部分的に凝集した分散体は、例えば、’833号特許に記載されているように、最初に一次粒子を溶液中で成長させる多段階ステップを使用して調製することができる。次いで、溶液のpHを所定の時間にわたって酸性の値に調整して部分的な凝集を促進することができる。任意の最終ステップにより、凝集体(及び任意の残存する一次粒子)の更なる成長を可能にしてもよい。本出願人による同時係属中の2014年3月21日に出願された米国特許出願第14/222,086号を参照されたい。
【0039】
正電荷を示すコロイダルシリカ粒子を生成するために、粒子は、正電荷を示すことができる化学化合物(すなわち、カチオン性化合物)を粒子表面または粒子内部に配置することを含む方法で調製することができる。例えば、正電荷を示すシリカ粒子は、カチオン性化合物を粒子の外側表面に配置することによって調製することができる。このタイプの表面荷電性コロイダルシリカ研磨剤粒子を含むCMP組成物は、例えば、米国特許第7,994,057号及び同第8,252,687号に記載されている。
【0040】
代替的な実施形態において、カチオン性化合物は、コロイダルシリカ研磨剤粒子の外表面の下の内部に組み込むことができる。カチオン性化合物は、例えば、窒素含有化合物またはリン含有化合物、例えば、アミノシランまたはホスホニウムシラン化合物であり得る。このような内部荷電性粒子の例は、本出願人による同時係属中の2015年6月25日に出願された米国特許出願第14/750,204号に記載されている。
【0041】
カチオン性化合物が窒素含有化合物である場合、カチオン性化合物は、好ましくは、アミン化合物またはアンモニウム化合物を含む。カチオン性化合物がリン含有化合物である場合、カチオン性化合物は、好ましくは、ホスフィン化合物またはホスホニウム化合物を含む。アンモニウム化合物はR1R2R3R4N+を含み得、ホスホニウム化合物はR1R2R3R4P+を含み得、式中、各R1、R2、R3及びR4は、独立して、水素、C1~C6アルキル、C7~C12アリールアルキルまたはC6~C10アリールを表す。これらの基は、1つ以上のヒドロキシル基で更に置換され得る。
【0042】
例示的なアンモニウム化合物には、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム及びジエチルジメチルアンモニウムを挙げることができる。特定の実施形態において、アンモニウム化合物は、好ましくは、アンモニアまたはアンモニウム(NH3またはNH4
+)ではない。
【0043】
例示的なホスホニウム化合物には、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラプロピルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、メチルトリフェニルホスホニウム、エチルトリフェニルホスホニウム、ブチルトリフェニルホスホニウム、ベンジルトリフェニルホスホニウム、ジメチルジフェニルホスホニウム、ヒドロキシメチルトリフェニルホスホニウム及びヒドロキシエチルトリフェニルホスホニウムを挙げることができる。例示的なホスホニウム化合物には、ホスホニウムシラン化合物も挙げることができる。
【0044】
窒素含有カチオン性化合物は、一級アミン、二級アミン、三級アミンまたは四級アミン化合物などのアミノ基を有する物質を含み得る。このような窒素含有カチオン性化合物は、アミノ酸、例えば、リジン、グルタミン、グリシン、イミノ二酢酸、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン及びスレオニンなどの1~8個の炭素原子を有するアミノ酸を含み得る。
【0045】
あるいは、カチオン性化合物は、アミノシラン化合物であり得る。このようなアミノシラン化合物は、一級アミノシラン、二級アミノシラン、三級アミノシラン、四級アミノシラン及びマルチポーダル(例えば、ダイポーダル)アミノシランを含み得る。アミノシラン化合物は、実質的に任意の好適なアミノシラン、例えば、プロピル基含有アミノシラン、またはプロピルアミンを含むアミノシラン化合物を含み得る。好適なアミノシランの例には、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、ジエチルアミノメチルトリアルコキシシラン、(N,N-ジエチル-3-アミノプロピル)トリアルコキシシラン)、3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノプロピルトリアルコキシシラン、アミノプロピルトリアルコキシシラン、(2-N-ベンジルアミノエチル)-3-アミノプロピルトリアルコキシシラン)、トリアルコキシシリルプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、N-(トリアルコキシシリルエチル)ベンジル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、(ビス(メチルジアルコキシシリルプロピル)-N-メチルアミン、ビス(トリアルコキシシリルプロピル)尿素、ビス(3-(トリアルコキシシリル)プロピル)-エチレンジアミン、ビス(トリアルコキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリアルコキシシリルプロピル)アミン、3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、(N-トリアルコキシシリルプロピル)ポリエチレンイミン、トリアルコキシシリルプロピルジエチレントリアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリアルコキシシラン塩酸塩、4-アミノブチルトリアルコキシシラン及びこれらの混合物を挙げることができる。当業者であれば、アミノシラン化合物が水性媒体中で一般に加水分解(または部分的に加水分解)されることを容易に認識するであろう。したがって、アミノシラン化合物の列挙では、アミノシラン及び/またはその加水分解された(または部分的に加水分解された)種及び/または縮合された種がコロイダルシリカ研磨剤粒子中に組み込まれ得ることが理解されるであろう。
【0046】
コロイダルシリカ研磨剤粒子は、粒子の内部中に組み込まれているか、粒子の表面に位置するか、またはその両方であり得る上記カチオン性化合物のうちの2つ以上を含み得ることが理解されるであろう。例えば、正に帯電したコロイダルシリカ粒子の一実施形態において、第1の組み込みカチオン性化合物は、アミノシラン化合物を含み得、第2の組み込みカチオン性化合物は、四級アミンなどのアンモニウム化合物を含み得る。第1のカチオン性化合物がアミノシラン化合物であり、第2のカチオン性化合物が四級アミンである実施形態において、第1のカチオン性化合物の第2のカチオン性化合物に対するモル比は、好ましくは約5~1未満である。
【0047】
正に帯電したコロイダルシリカ研磨剤粒子は、本出願人による同時係属中の2015年6月25日に出願された特許出願第14/750,204号に記載されている特定の方法に従って、カチオン性化合物を研磨剤粒子中に組み込むステップによって調製することができる(すなわち、カチオン性化合物は、粒子表面の下の粒子内部に位置することになる)。正電荷をもたらす内部カチオン性化合物を有するコロイダルシリカ研磨剤粒子は、例えば、カチオン性化合物を含有する液体溶液中で研磨剤粒子を成長させ、その成長中に、カチオン性化合物がコロイダルシリカ粒子の少なくとも一部中に組み込まれるようにすることによって製造することができる。内部荷電性コロイダルシリカ粒子の代替的実施形態は、従来のコロイダルシリカ粒子をカチオン性化合物で処理した後、カチオン性化合物を覆うように追加のシリカを成長させることにより、カチオン性化合物を追加のシリカで被覆することによって調製することができる。カチオン性化合物は、コロイダルシリカ研磨剤粒子の内部に組み込まれるが、ある量のカチオン性化合物が粒子表面または表面近くにも存在し得ることから、カチオン性化合物は、表面内部と表面との両方に存在することが理解されよう。
【0048】
このような一実施形態では、内部カチオン性化合物を有するコロイダルシリカ研磨剤粒子は、例えば、(i)液体溶液(例えば、所定のpHで水を含む)を準備することと、(ii)液体溶液をシリカ生成化合物及びカチオン性化合物と合わせて、液体溶液中でコロイダルシリカ粒子を成長させることにより、粒子中にカチオン性化合物が組み込まれたコロイダルシリカ粒子を含む分散体を得ることとによって調製することができる。あるいは、カチオン性化合物は、(i)で準備される液体溶液中に含まれていてもよい。シリカ生成化合物は、例えば、オルトケイ酸テトラメチル(TMOS)、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、ケイ酸、ケイ酸アルカリもしくはケイ酸アンモニウムまたは四ハロゲン化ケイ素を含み得る。この方法は、アルカリ触媒を含む母液にTMOSを連続的に加える米国特許第8,529,787号に開示されている方法と類似している(類似点は、シリカ生成化合物を液体溶液と合わせてコロイダルシリカ粒子を生成する点である)。
【0049】
カチオン性化合物は、カチオン性化合物をコロイダルシリカ粒子中に組み込むのに十分である実質的に任意の好適な量で液体溶液に添加することができる(必ずしもそうではないが、好ましくは、10重量%未満のカチオン性化合物が粒子中に組み込まれた粒子を有する)。液体水溶液は、任意選択により、アルカリ触媒、例えば、エーテルアミン、エチレンアミン、テトラアルキルアミン、アルコールアミンまたはこれらの2つ以上を更に含み得る。好適なアルカリ触媒は、有機塩基触媒、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、アンモニア、尿素、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、テトラメチルグアニジン、水酸化テトラエチルアンモニウム、アミノプロピルモルホリン、ヘキシルオキシプロピルアミン、エチルオキシプロピルアミン(EOPA)、ジェファーミンHK-511またはこれらの組み合わせを含み得る。アルカリ触媒は、代替的または追加的に、水酸化カリウム(KOH)を含み得る。アルカリ触媒の添加量は、液体水溶液のpHが概ね約7~約14の範囲、好ましくは約9~約12の範囲になるように選択することができる。
【0050】
液体溶液は、任意選択により、コロイダルシリカが成長するための核形成部位として作用することが意図されるコロイダルシリカ粒子を更に含み得る。このような実施形態において、最終的なコロイダルシリカは、コアシェル構造(または多層構造)を有するものとみなすことができ、コアは、液体溶液に最初に添加されたコロイダルシリカ粒子を含み、シェル(外層)は、コアを覆って成長したシリカを含み、かつ内部カチオン性化合物(アミノシランなど)を含む。
【0051】
別法によれば、内部カチオン性化合物を有する正に帯電したコロイダルシリカ研磨剤粒子は、(i)pHの高いケイ酸塩溶液(例えば、ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウム溶液)を準備することと、(ii)ケイ酸塩溶液を処理して(例えば、溶液に酸を添加すること、または溶液をイオン交換カラムに通すことによって)ケイ酸アニオンをプロトン化してケイ酸を形成し、それにより、反応容器中でコロイダルシリカ粒子の析出及び成長を引き起こすことと、(iii)カチオン性化合物を反応容器に添加して、カチオン性化合物が成長中のコロイダルシリカ粒子中に取り込まれるようにすることとによって調製され得る。ケイ酸塩溶液は、好ましくは、約11~約13の範囲のpHを有する。ケイ酸塩溶液は、イオン交換カラムを通して反応容器中に入れてもよく、これは、pHを約2~約5の範囲の値に低下させるのに役立つ。カチオン性化合物は、十分な量のカチオン性化合物がコロイダルシリカ粒子中に組み込まれるような実質的に任意の好適な量及び実質的に任意の好適な割合で反応容器に添加することができる(必ずしもそうではないが、好ましくは、10重量%未満のカチオン性化合物が粒子中に組み込まれた粒子を有する)。
【0052】
更なる別法によれば、正に帯電したコロイダルシリカ研磨剤粒子は、従来の(例えば、非荷電性)コロイダルシリカ粒子をカチオン性化合物で処理(例えば、表面処理)し、次いで、処理をしたコロイダルシリカを覆うように(すなわち、カチオン性化合物を覆うように)追加のシリカを成長させることによって調製することができる。例えば、四級アミン化合物またはアミノシラン化合物などの窒素含有化合物をコロイダルシリカ含有分散体に添加することができる(例えば、米国特許第7,994,057号及び同第8,252,687号に教示されているとおり)。TMOS、TEOS、ケイ酸、ケイ酸アルカリもしくはケイ酸アンモニウムまたは四ハロゲン化ケイ素などのシリカ生成化合物は、窒素化合物がコロイダルシリカ粒子と会合する(例えば、化学的に結合するまたは静電的に会合する)のに十分な時間の後、分散体に添加することができる。分散体は、任意選択により、コロイダルシリカ粒子の更なる成長を加速して、カチオン性(例えば、窒素含有)化合物(表面処理剤)が粒子内部で粒子中に組み込まれるように、加熱(例えば、45℃まで)してもよい。このような正に帯電したコロイダルシリカ粒子は、コアと、コアを覆う多層またはコーティング、すなわち、コア上にあるカチオン性化合物の第1の内層(すなわち、カチオン性化合物で処理されたコロイダルシリカコア)及びカチオン性化合物を覆うように堆積したシリカの外層を有するものとみなすことができ、これにより、カチオン性化合物が粒子の内部に配置される。
【0053】
内部カチオン性化合物を有する正に帯電したコロイダルシリカ粒子を調製するための上記方法は、液体キャリア中にコロイダルシリカ粒子が懸濁している分散体を生成することが理解されるであろう。本明細書中の化学機械研磨組成物を調製する際、この分散体は、所定のコロイダルシリカ粒子の濃度に希釈することができる。更に、所望の場合、他の化学化合物を分散体に添加してもよい(希釈の前または後に)。
【0054】
内部荷電性コロイダルシリカ粒子は、CMP処理中における使用前または使用開始時に、任意の好適な凝集度を有し得るが、凝集粒子の凝集度及びサイズは、CMP処理中に望ましくないレベルの欠陥をもたらすものであってはならない。正に帯電したコロイダルシリカ粒子は、CMP処理の開始前に、主に一次粒子を含む実質的な非凝集であってもよいし、粒子は、部分的に凝集していてもよい。部分的に凝集しているとは、コロイダルシリカ研磨剤粒子の50%以上が2つ以上の凝集した一次粒子(例えば、3、4または5つの凝集した粒子)を含むこと、またはコロイダルシリカ粒子の30%以上(または45%以上)が3つ以上(例えば、4または5つ)の凝集した一次粒子を含むことであり得る。このような部分的に凝集したコロイダルシリカ研磨剤は、例えば、米国特許第5,230,833号に記載されているように、例えば、最初に一次粒子を溶液中で成長させる多段階ステップを使用して調製することができる。次いで、例えば、米国特許第8,529,787号に記載されているように、溶液のpHを所定の時間にわたって酸性の値に調整して凝集を促進することができる。任意の最終ステップにより、凝集体(及び任意の残存する一次粒子)の更なる成長を可能にしてもよい。
【0055】
正に帯電したコロイダルシリカ研磨剤粒子は、更に、コロイダルシリカ研磨剤粒子の20%以上が3つ未満の一次粒子を含み(すなわち、単量体及び二量体とも呼ばれる、非凝集の一次粒子または2つの一次粒子しか有しない凝集粒子)、コロイダルシリカ研磨剤粒子の50%以上が3つ以上の凝集した一次粒子を含むような凝集体分布を有し得る。
【0056】
研磨組成物は、処理(例えば、研磨、平坦化などの)対象となる基材の表面への研磨組成物の研磨剤粒子及び化学成分及び添加物の適用を容易にする液体キャリアを含む。液体キャリアは、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノールなど)、エーテル(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、水またはこれらの混合物などの任意の好適なキャリア(例えば、溶媒)であり得る。好ましくは、液体キャリアは、水(より好ましくは脱イオン水)を含むか、これらから本質的になるか、これらからなる。水から本質的になるキャリアは、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノールなど)、エーテル(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなど)などの水以外の溶媒を3、2、1、0.5、0.1または0.05重量%まで(以下)含有し得る。
【0057】
研磨組成物は、酸性であり、約7未満のpHを有する。研磨組成物は、典型的に、約1以上(例えば、約2以上または約3以上)のpHを有する。研磨組成物は、約6以下(例えば、約5以下または約4以下)のpHを有し得る。
【0058】
研磨組成物のpHは、任意の好適な手段で達成または維持することができる。研磨組成物は、任意の好適なpH調整剤または緩衝系を実質的に含み得る。例えば、好適なpH調整剤は、硝酸、硫酸、リン酸、フタル酸、クエン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、水酸化アンモニウムなどを含み得、一方、好適な緩衝剤は、リン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、マロン酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩、アンモニウム塩などを含み得る。
【0059】
研磨組成物は、シクロデキストリンを含む。シクロデキストリンは、複数の糖分子からなる、環状構造に形成された既知の化合物のファミリーであり、このような化合物は、環状オリゴ糖と呼ばれることもある。シクロデキストリンは、α-D-グルコピラノシド分子単位からなり、各単位間が1-4連結(以下の図参照)で接続されている。記載される研磨組成物に有用なシクロデキストリンの形態は、6員環であるα(アルファ)-シクロデキストリン、7員環であるβ(ベータ)-シクロデキストリン及び8員環であるγ(ガンマ)-シクロデキストリンを含む。
【化1】
【0060】
シクロデキストリンは、組成物中に所望量のシクロデキストリン-カチオン性界面活性剤複合体の存在をもたらすのに有効な量であり、かつ、同時に、研磨組成物に対して有用であるまたは改善された処理特性(例えば、所望の除去速度)ならびに処理基材の望ましい有用なトポグラフィー及び欠陥性を付与する量で、研磨組成物中に存在し得る。スラリー中のシクロデキストリンの具体的な量は、処理される(例えば、研磨される)特定の基材、ならびにスラリー中に存在する他の成分、例えば、研磨剤粒子、触媒、酸化剤、阻害剤などの種類及び量などの要因によって変わり得る。特定の有用な実施形態において、シクロデキストリンは、組成物の総重量に基づいて、約0.01~約2重量%、例えば、約0.02~約1.5重量%の範囲のシクロデキストリンの量で、スラリー中に存在し得る。これは、CMPプロセスにおける使用時点での組成物、すなわち、「使用組成物」中を意味する。この濃度は、組成物が保存、輸送、及びCMPプロセスにおける使用の前に希釈されることが意図される濃縮形態である場合、より高くなり得る。
【0061】
カチオン性界面活性剤は、スラリーの環境中で、シクロデキストリン-カチオン性界面活性剤複合体(以下参照)を形成し、かつ、同時に、基材のタングステン含有表面を処理するのに有効なCMP組成物をもたらす、任意の種類のものであり得る。カチオン性界面活性剤は、好ましくは、カチオン性界面活性剤、シクロデキストリン及びシクロデキストリン-カチオン性界面活性剤複合体を含有し、かつ処理中の処理特性(例えば、除去速度)と処理基材のトポグラフィー及び低欠陥レベルとの有用または有益な組み合わせを示すスラリー(研磨剤粒子などの本明細書に記載される他のスラリー成分も含有する)をもたらすように選択することができる。
【0062】
タングステン含有基材表面を処理する(例えば、研磨する)ためのCMPスラリーの成分選択の考慮事項には、特定の窒素含有化合物(特定のカチオン性界面活性剤を含む)などの特定の種類の化学材料が、CMP処理中に、タングステン、誘電体材料、例えば、酸化物(例えば、TEOS)またはその両方の除去を阻害するように機能することがある点が含まれる。したがって、特定の種類のカチオン性界面活性剤などの窒素含有化合物は、そのカチオン性化合物がタングステン、酸化物(例えば、TEOS)またはその両方の除去速度を過度に減少させない場合にのみ、タングステン含有表面を研磨するためのスラリー中に含めることができる。本発明によれば、シクロデキストリンとともに(シクロデキストリン-カチオン性界面活性剤複合体の形成をもたらすような形で)CMPスラリー中に含めると、カチオン性界面活性剤、シクロデキストリン及びその複合体を含有しないということ以外は同一であるスラリーと比較して、トポグラフィーの改善及び欠陥の減少などの望ましいまたは有益な性能特性を示し、同時に、タングステン及び酸化物(例えば、TEOS)の有用な除去速度を依然として示すCMP研磨スラリーをもたらす、様々な種類の窒素含有カチオン性界面活性剤が特定された。
【0063】
良好な性能特性を有する研磨組成物中でシクロデキストリンと複合体を形成することができるカチオン性界面活性剤のいくつかの非限定的な例には、式I:
【化2】
(式中、
nは、少なくとも1であり、
Xは、P
+またはN
+であり、
R
1は、少なくとも7個の炭素原子、好ましくは8~18個の炭素原子、例えば12~18個の炭素原子を含有する、任意選択により置換され、任意選択により不飽和を含有する、直鎖または分岐鎖(好ましくは直鎖)のアルキル基であり、
R
2、R
3及びR
4は、
水素、
置換または無置換であってよく、任意選択によりヘテロ原子、荷電基またはその両方を含んでよい、飽和または不飽和の環状基、
任意選択により不飽和、ヘテロ原子または荷電基のうちの1つ以上を含んでよい線状または分岐状のアルキル基、ならびに
R
2、R
3及びR
4のうちの2つまたは3つから形成され、任意選択により置換された飽和または不飽和の環状構造から独立して選択することができる)の構造を有する化合物が挙げられる。
【0064】
式I中、X原子は、スラリーのpHに起因して、CMPプロセスでの使用時にスラリー中でカチオンに帯電され、例えば、X原子は、使用時のスラリー中に存在するとき、N+またはP+である。カチオン性界面活性剤は、NO3-、OH-、Br-、Cl-などの任意の有用な対イオンとの塩としてスラリー中に導入することができる。「アルキル」という用語は、飽和である基または不飽和を含む基を含む、置換されていない(特に指定のない限り)分岐鎖または直鎖の炭化水素基を指す。「置換された」基(例えば、置換アルキル、置換シクロアルキル、置換アリール)は、炭素結合水素がハロゲン化物などの水素以外の原子によって、またはアミン、水酸化物などの官能基などによって置き換えられている基を指す。
【0065】
特定の実施形態において、R1は、R1~R4の各基のなかで最も大きく、研磨組成物中にあるとき、シクロデキストリン分子と会合してシクロデキストリン-カチオン性界面活性剤複合体を形成するのに有効なアルキル基または置換アルキル基(任意選択により不飽和を含む)である。例えば、R1は、7~30個の炭素原子、例えば、8~18個の炭素原子または10~18個の炭素原子を含むことができ、主鎖に沿って、または炭素結合水素原子を置き換える置換基の一部として、1つ以上のヘテロ原子を任意選択により含み得、飽和であってもよいし、不飽和を含んでもよい。R1のシクロデキストリン分子との会合を促進するために、R1は、好ましくは、飽和またはほぼ飽和である置換のない非電荷線状アルキル基、例えば、7~20個、例えば、8~18個、例えば、10~18個の炭素原子の線状アルキルであり得る。
【0066】
特定の好ましい実施形態において、R2、R3及びR4は、その全てが水素ではない。
【0067】
特定の実施形態において、R2は、水素ではなく、R1より少ない炭素原子、例えば、12、10もしくは8個以下の炭素原子、例えば、1~10個の炭素原子、または1~8、1~6もしくは1~4個の炭素原子を含有するアルキル基である。R2は、主鎖に沿って、または主鎖の長さに沿ったペンダント官能基の一部として、1つ以上のヘテロ原子を任意選択により含み得、線状、分岐状、飽和であってもよいし、不飽和を含んでもよい。また、任意選択により、R2は、使用時のスラリー中に存在するとき、例えば、N+またはP+などの荷電ヘテロ原子の存在に起因して、カチオン電荷を含み得る。
【0068】
R3及びR4は、独立して水素であってもよいし、R2に関してまさに上で特定した構造であってもよい。特定の実施形態において、R3、R4またはその両方は、R2よりも小さくてよく、すなわち、R2と比較して少ない炭素原子を含有し、例えば、H、または1~6個の炭素原子、例えば、1~3個もしくは1~4個の炭素原子を有する線状または分岐状アルキルなどの低級飽和アルキルを含有する。
【0069】
式Iに従った有用なまたは好ましいカチオン荷電性界面活性剤の例には、R1が飽和アルキル基であり、R2、R3及びR4が独立して水素または低級アルキルである、カチオン性化合物が挙げられる。例には、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTABまたは臭化セトリモニウム)、ミリスチルトリアルキルアンモニウム及びその塩、ならびにラウリルトリアルキルアンモニウム及びその塩が挙げられる。
【0070】
特定の他の実施形態において、R
1またはR
2は、カチオン性界面活性剤をジカチオン性、トリカチオン性などにする、1つ以上の追加のカチオン電荷を含む基であり得る。このような化合物の例は、米国特許第7,695,637号に記載されており、その全体を本明細書に援用する。R
2は、カチオン性窒素などの第2のカチオン性原子に延びる二価連結基(-Z-)を含み得、すなわち、R2=-Z-N
+-(-R5)(-R6)(-R7):
【化3】
である。
【0071】
カチオン性化合物は、式II:
【化4】
の構造を有する。
式II中、Zは、飽和アルキル、不飽和アルキルであり得、あるいは、代替的にまたは追加的に主鎖もしくは置換基の一部であるヘテロ原子(N、O)または別の種類の置換(ハロゲン、水酸化物)を含み得る、二価連結基である。Zの例には、直鎖の二価(アルキレン)基、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどが挙げられる。これらの実施形態において、式IのR
3及びR
4と、R
5、R
6及びR
7とは、それぞれ好ましくは独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり得る。
【0072】
ジカチオン荷電性界面活性剤の一例は、N,N,N’,N’,N’,-ペンタメチ-N-タロー-1,3-プロパン-ジアンモニウムジクロリドである。
【0073】
ジカチオン性界面活性剤化合物は、スラリー中にあるとき、ジカチオンに帯電された状態で存在することができ、任意の有用な対イオン(複数可)を有する塩の形態でスラリーに導入することができ、またはスラリー外で存在することができる。化合物の2つのカチオン性原子のそれぞれに対する2つの対イオンは、同一であっても異なっていてもよい。
【0074】
シクロデキストリンと複合体を形成することができ、良好な性能特性を有するCMPスラリーに使用することができる本明細書に記載されるカチオン性界面活性剤の非限定的な例の別の群には、X原子が不飽和複素環構造の一部である化合物、すなわち、R
2、R
3及びR
4が結合して不飽和環構造を形成する化合物が挙げられる。環の置換基のうちの少なくとも1つ(例えば、必ずしもそうではないが、X原子に結合しているR
1基)は、少なくとも7個の炭素原子、好ましくは8~18個の炭素原子、例えば12~18個の炭素原子を含有し、任意選択により置換され、任意選択により不飽和を含有し、かつシクロデキストリン分子と本明細書に記載される複合体を形成することができる、直鎖または分岐鎖(好ましくは直鎖)のアルキル基であり得る。例示的な化合物には置換または無置換の6員複素環が挙げられ、式III:
【化5】
(式中、
nは、少なくとも1であり、
Xは、P
+またはN
+であり、
R
1は、少なくとも7個の炭素原子を含有し、任意選択により不飽和を含有する、直鎖または分岐鎖(好ましくは直鎖)のアルキル基であり、
R
8、R
9、R
10、R
11及びR
12は、
水素、
置換または無置換であってよく、任意選択によりヘテロ原子、荷電基またはその両方を含んでよい、飽和または不飽和の環状基、及び
任意選択により不飽和、ヘテロ原子または荷電基のうちの1つ以上を含んでよい線状または分岐状のアルキル基から独立して選択することができる)によって定義される構造を有するものを含む。
【0075】
特定の好ましい実施形態によれば、R8、R9、R11及びR12のそれぞれは、水素であり、R10は、置換または無置換であってよく、任意選択によりヘテロ原子(例えば、窒素)、荷電基(例えば、荷電した窒素ヘテロ原子)またはその両方を含んでよい不飽和環状基である。
【0076】
式IIIの特定の化合物は、スラリー中で好ましい性能を示すことが特定されている。例としては、N,N’-ジオクチル4,4’-ビピリジニウム(DOBPB)、C16-N-アルキルピリジニウム(N-ヘキサデシルピリジニウム)、1-ヘプチル-4-(4-ピリジル)ピリジニウムブロミド(HPPB)などが挙げられる。
【0077】
理論に拘束されるものではないが、相対的に高い疎水性、相対的に高い電荷またはその両方を示すカチオン性界面活性剤は、相対的に低い疎水性、相対的に低い電荷またはその両方を示すカチオン性界面活性剤と比較して、カチオン性界面活性剤として使用するのに好ましい場合がある。相対的に低い疎水性、相対的に低い電荷またはその両方を示す特定の化合物には、水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、N-ヘキシルピリジニウム(C6py)、臭化ヘキサメトニウム(HMB)が含まれる。これらの化合物は、より高い疎水性、より高い電荷またはその両方を有する化合物、例えば、記載のように、次のもの:臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTABまたは臭化セトリモニウム)、N,N,N’,N’,N’,-ペンタメチ-N-タロー-1,3-プロパン-ジアンモニウムジクロリド、N,N’-ジオクチル4,4’-ビピリジニウム(DOBPB)、C16 N-アルキルピリジニウム(N-ヘキサデシルピリジニウム)及びN-ヘプチル-4,4’ビピリジニウム(HPPB)と比較してあまり好ましくないか、あまり有用でないことが判明した。
【0078】
シクロデキストリンと複合体を形成することができ、良好な性能特性を有する研磨組成物に使用することができる本明細書に記載されるカチオン性界面活性剤の非限定的な例の別の群には、X原子が飽和複素環構造の一部である化合物、すなわち、R
2、R
3及びR
4のうちの2つが結合して飽和環構造を形成する化合物が挙げられる。飽和環の置換基のうちの少なくとも1つ(例えば、必ずしもそうではないが、X原子に結合しているR
1基)は、少なくとも7個の炭素原子、好ましくは8~18個の炭素原子、例えば12~18個の炭素原子を含有し、任意選択により置換され、任意選択により不飽和を含有し、かつシクロデキストリン分子と本明細書に記載される複合体を形成することができる、直鎖または分岐鎖(好ましくは直鎖)のアルキル基であり得る。例示的な化合物には置換または無置換の飽和複素6員環が挙げられ、式IV:
【化6】
(式中、
nは、少なくとも1であり、
Xは、P
+またはN
+であり、
R
1は、少なくとも7個の炭素原子を含有し、任意選択により不飽和を含有する、直鎖または分岐鎖(好ましくは直鎖)のアルキル基であり、
R
13、R
14、R
15、R
16、R
17及びR
18は、
水素、
置換または無置換であってよく、任意選択によりヘテロ原子、荷電基またはその両方を含んでよい、飽和または不飽和の環状基、及び
任意選択により不飽和、ヘテロ原子または荷電基のうちの1つ以上を含んでよい線状または分岐状のアルキル基から独立して選択することができる)によって定義される構造を有するものを含む。
【0079】
カチオン性界面活性剤は、タングステン含有基材表面を処理したときに、望ましいスラリー処理性能特性を付与するのに有効な量で、研磨組成物中に含めることができる。かかる性能には、望ましいタングステン除去速度;望ましい酸化物(例えば、TEOS)除去速度;有用なまたは低い粒径成長;望ましいトポグラフィー(エロージョン低減、ディッシング低減またはその両方を含む);及び有用なまたは低い欠陥性(スクラッチまたは残渣によって測定したとき)のうちの1つ以上が含まれる。シクロデキストリンも研磨組成物中に存在することから、この量のカチオン性界面活性剤は、除去速度の減少または粒子不安定性の点で過度の有害な影響を及ぼすことなく、これらの改善のうちの1つ以上を提供することができる。カチオン性界面活性剤の具体的な量は、処理される(例えば、研磨される)特定の基材、ならびにスラリー中の他の成分、例えば、研磨剤粒子、触媒、阻害剤などの種類及び量などの要因によって変わり得る。
【0080】
研磨組成物に(シクロデキストリンとともに)含まれるカチオン性界面活性剤の量は、過度の有害な影響を及ぼすことなく望ましい性能改善を提供する量であってよい。カチオン性界面活性剤及びシクロデキストリンを含有する好ましい研磨組成物は、カチオン性界面活性剤の存在により、エロージョン、ディッシングまたはその両方の低減という形で、処理基材のトポグラフィー改善などの有用なまたは改善した性能特性を示す。カチオン性界面活性剤は、シクロデキストリンも存在する場合、スラリーの他の望ましい特性または性能に過度の低下をもたらさない。例えば、除去速度(タングステン及び誘電体材料の除去速度)が過度に減少せず、スラリーの粒子安定性が許容可能である(粒径成長によって測定したときの保存中、または使用中)。
【0081】
いくつかの実施形態において、シクロデキストリンは、研磨組成物が、シクロデキストリンを含まないということ以外は同一である組成物中に含有され得る、同じカチオン性界面活性剤の量と比較して、カチオン性界面活性剤を相対的に高い量(濃度)で含めるようにする。カチオン性界面活性剤の量は、有利には、シクロデキストリンの存在により、好ましくはスラリーの他の物性または性能特性に有害な影響を及ぼすことなく、増加させることができる。スラリー中のカチオン性界面活性剤の量の増加は、その増加量が、改善を上回り得る別の有害な影響を及ぼすことなく、エロージョンまたはディッシングの低減などのトポグラフィーの改善を提供することなどによって性能改善の向上をもたらす程度であることが望ましい場合がある。
【0082】
特定の有用な実施形態において、カチオン性界面活性剤は、CMP処理中の使用時点で、組成物の総重量に基づいて、約0.001~約0.5重量%のカチオン性界面活性剤、例えば、組成物の総重量に基づいて、約0.01~約0.5重量%のカチオン性界面活性剤の範囲の量でスラリー中に存在し得る。
【0083】
カチオン性界面活性剤の量は、シクロデキストリンに対して、研磨組成物中で所望量の複合体を形成できる量、例えば、ほぼ化学量論量のシクロデキストリン及びカチオン性界面活性剤であり得る量、すなわち、ほぼ等モル量であり得る。例えば、カチオン性界面活性剤とシクロデキストリンのモル比は、シクロデキストリン1モル当たりカチオン性界面活性剤0.5~1.5モル、例えば、シクロデキストリン1モル当たりカチオン性界面活性剤0.75~1.25モル、またはシクロデキストリン1モル当たりカチオン性界面活性剤約0.9~1.1モルの範囲内であってよい。
【0084】
記載される研磨組成物において、炭素長7以上のR置換基を少なくとも1つ有するカチオン性界面活性剤は、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンまたはγ-シクロデキストリンとの複合体を形成することができる。理論に拘束されるものではないが、少なくとも7個の炭素原子を有し、好ましくはまた不飽和を有しないか、わずかな不飽和しかない、非電荷の無置換線状アルキル基である少なくとも1つの基(例えば、必ずしもそうではないが、本明細書に記載されるR1基)は、その炭素長7以上のアルキル基によって1つのシクロデキストリン分子と会合し、シクロデキストリン分子環の内側に位置することができる。シクロデキストリン分子との会合におけるカチオン性界面活性剤分子の組み合わせは、本明細書において、「シクロデキストリン-カチオン性界面活性剤複合体」または単に「複合体」と呼ばれる。複合体は、シクロデキストリン環状構造から延びるカチオンを含有するカチオン性界面活性剤の部分を含み、炭素長7以上のアルキル基は、シクロデキストリン分子環の内側に位置する。
【0085】
研磨組成物中に存在する複合体の量は、研磨組成物中のカチオン性界面活性剤の量及びシクロデキストリンの量、他の成分の量及び種類、ならびにカチオン性界面活性剤の化学的性質及び研磨組成物の条件でシクロデキストリンと会合し複合体を形成するその傾向、すなわち、2つの別個のカチオン性界面活性剤及びシクロデキストリン分子とその複合体との間の平衡定数に応じて決まる。概して、複合体は、タングステン含有基材表面を研磨したときに、研磨組成物の望ましい処理性能特性を付与するのに有効な量で存在し得、かかる性能には、望ましいタングステン除去速度;望ましい酸化物(例えば、TEOS)除去速度;有用なまたは低い粒径成長;及び有用なまたは低い欠陥性(スクラッチまたは残渣によって測定したとき)のうちの1つ以上が含まれる。複合体の具体的な量は、処理される(例えば、研磨される)特定の基材及び研磨組成物中の他の成分などの要因によって変わり得る。特定の有用な実施形態において、カチオン性界面活性剤は、組成物の総重量に基づいて、約0.001~約0.5重量%のカチオン性界面活性剤、例えば、組成物の総重量に基づいて、約0.01~約0.5重量%のカチオン性界面活性剤の範囲の量で研磨組成物中に存在し得る。
【0086】
研磨組成物の実施形態は、任意選択により、好ましくは、基材のタングステン含有表面を処理する(例えば、研磨する)のに有効な触媒を含み得る。触媒は、金属を含有してよく、鉄などの任意の金属であり得る。タングステンのCMP実施時にタングステンの除去速度を上げるのに有効な鉄含有触媒は、よく知られている。可溶性鉄含有触媒の例は、米国特許第5,958,288号及び同第5,980,775号に記載されており、これらの文書の全体を参照により本明細書に援用する。このような鉄含有触媒は、液体キャリアに可溶であり得、例えば、硝酸鉄、硫酸鉄、ハロゲン化鉄(フッ化鉄、塩化鉄、臭化鉄及びヨウ化鉄ならびに過塩素酸鉄、過臭素酸鉄及び過ヨウ素酸鉄を含む)などの第二鉄(鉄III)または第一鉄(鉄II)化合物、及び酢酸鉄、アセチルアセトン鉄、クエン酸鉄、グルコン酸鉄、マロン酸鉄、シュウ酸鉄、フタル酸鉄及びコハク酸鉄などの有機鉄化合物、ならびにこれらの混合物を含み得る。
【0087】
研磨組成物はまた、米国特許第7,029,508号及び同第7,077,880号に開示されているものなどの、コロイダルシリカ粒子の表面に会合する(例えば、被覆または結合する)鉄含有触媒を含んでもよい。当該記載の実施形態において、研磨剤粒子は、鉄含有触媒とともにホウ素含有安定剤を含有し得る。このような実施形態において、安定剤及び触媒は、コロイダルシリカ粒子上の利用可能な表面部位のうち、実質的に任意のパーセンテージ、例えば、利用可能な表面部位の1%超、50%超または80%超を占有し得る。
【0088】
研磨組成物中の鉄含有触媒の量は、酸化剤(ある場合、以下参照)の存在及び種類ならびに触媒の化学形態に応じて変化し得る。過酸化水素(または類似体)が酸化剤として使用され、鉄含有触媒(硝酸第二鉄など)が使用される場合、触媒は、組成物の総重量に基づいて、約0.1~約3000ppmの範囲のFeを与えるのに十分な量で組成物中に存在し得る。研磨組成物は、好ましくは、約1ppm以上(例えば、約5ppm以上、約10ppm以上または約20ppm以上)のFeを含む。研磨組成物は、好ましくは、約500ppm以下(例えば、約200ppm以下、約100ppm以下または約50ppm以下)のFeを含む。したがって、研磨組成物は、約1~約500ppm(例えば、約3~約200ppm、約5~約100ppmまたは約10~約50ppm)の範囲のFeを含み得る。
【0089】
鉄含有触媒を含む研磨組成物は、安定剤も含み得る。安定剤を含まない場合、鉄含有触媒及び酸化剤は、酸化剤を経時的に迅速に分解するように反応し得る。安定剤の添加は、鉄含有触媒の有効性を低下させる傾向があるため、研磨組成物に添加される安定剤の種類及び量の選択は、CMP性能に大きな影響を及ぼし得る。安定剤の添加は、触媒が酸化剤(例えば、過酸化水素)と反応することを妨げる安定剤-触媒複合体の形成につながるが、それと同時に、触媒が十分な活性を維持し、迅速なタングステン研磨速度を促進することを可能にする。
【0090】
例示的な安定剤には、リン酸、有機酸、ホスホン酸化合物、ニトリル、及び触媒化合物の金属に結合し、酸化剤(例えば、過酸化水素)分解に対するその反応性を低下させる他の配位子が含まれる。酸安定剤は、その共役型で使用されてもよく、例えば、カルボン酸の代わりにカルボン酸塩を使用することができる。本出願上、有用な安定剤を記載するために使用される「酸」という用語は、酸安定剤の共役塩基も意味する。例えば、「アジピン酸」という用語は、アジピン酸及びその共役塩基を意味する。安定剤は、単独で使用しても組み合わせて使用してもよく、過酸化水素などの酸化剤が分解する速度を大幅に低下させる。
【0091】
好ましい安定剤には、リン酸、酢酸、フタル酸、クエン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、アスパラギン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、グルタコン酸、ムコン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、プロピレンジアミン四酢酸(PDTA)及びこれらの混合物が含まれる。好ましい安定剤は、記載される組成物中に、鉄含有触媒に対して約1当量~約3.0重量%以上の範囲の量で含めることができる。本明細書で使用されるとき、「鉄含有触媒に対して~当量」という用語は、組成物中の鉄イオン1つ当たり1分子の安定剤を意味する。例えば、鉄含有触媒に対して2当量の安定剤とは、各触媒イオンにつき2分子の安定剤を意味する。
【0092】
研磨組成物は、任意選択により、好ましくは、酸化剤を含み得る。酸化剤は、スラリー製造工程中に、またはCMP実施の直前に(例えば、半導体製造設備に配置されたタンク中に)、研磨組成物に添加することができる。例示的な酸化剤は、無機及び有機のペル化合物を含む。ペル化合物は、Hawley’s Condensed Chemical Dictionaryにより定義されるように、少なくとも1つのペルオキシ基(-O--O-)を含有する化合物、または最も高い酸化状態にある元素を含有する化合物である。少なくとも1つのペルオキシ基を含有する化合物の例には、過酸化水素及びその付加物、例えば、尿素過酸化水素及び過炭酸塩、有機過酸化物、例えば、過酸化ベンゾイル、過酢酸及びジ-t-ブチルペルオキシド、モノ過硫酸塩(SO5
=)、ジ過硫酸塩(S2O8
=)及び過酸化ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。最も高い酸化状態にある元素を含有する化合物の例には、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、過臭素酸、過臭素酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩、過ホウ酸及び過ホウ酸塩ならびに過マンガン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。多くの場合、好ましい酸化剤は、過酸化水素である。
【0093】
研磨組成物はまた、阻害剤化合物、例えば、固体タングステンの可溶性タングステン化合物への変換を抑制するのに有効であり、それと同時に、CMP処理中の固体タングステンの有効な除去速度を可能にする窒素含有阻害剤化合物を含有し得る。阻害剤は、式Iの化合物とは異なる窒素含有阻害剤化合物であってよい。式Iのカチオン性界面活性剤と同様に、窒素含有阻害剤は、研磨中にタングステン、酸化物(例えば、TEOS)またはその両方の望ましい除去速度を示すスラリーをもたらすように選択することができる。窒素含有阻害剤はまた、スラリーがCMP処理中に過度の粒径成長を示さず、その結果、処理中の粒子成長によって生じる残渣またはスクラッチなどの欠陥増加をもたらさないように選択することができる。
【0094】
タングステンエッチングの有用な阻害剤である化合物のクラスには、窒素含有複素環、アルキルアンモニウムイオン、アミノアルキル及びアミノ酸などの窒素含有官能基を有する化合物が含まれる。有用なアミノアルキル腐食阻害剤には、例えば、ヘキシルアミン、テトラメチル-p-フェニレンジアミン、オクチルアミン、ジエチレントリアミン、ジブチルベンジルアミン、アミノプロピルシラノール、アミノプロピルシロキサン、ドデシルアミン、これらの混合物、ならびに合成及び天然アミノ酸(例えば、リジン、チロシン、グルタミン、グルタミン酸、シスチン、グリシン(アミノ酢酸)を含む)が含まれる。
【0095】
研磨組成物の特定の実施形態において、アミン化合物は、ポリカチオン性アミンを含み得る。ジ四級アミン化合物には、例えば、N,N’-メチレンビス(ジメチルテトラデシルアンモニウムブロミド)、1,1,4,4-テトラブチルピペラジンジイウムジブロミド、ジメチル-1,5-ジアゾニアビシクロ(3.2.2)ノナンジブロミド、ジドデシル-テトラメチル-1,4-ブタンジアミニウムジヨージドまたはN(1),N(6)-ジドデシル-N(1),N(1),N(6),N(6)-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミニウムジヨージドが含まれ得る。
【0096】
研磨組成物は、実質的に任意の好適な濃度の阻害剤化合物を含み得る。一般に、濃度は、望ましくは、適切なエッチング抑制を与えるのに十分に高いが、化合物が溶解でき、タングステン研磨速度を許容可能レベル以下に低下させないように十分に低いものである。溶解できるとは、化合物が液体キャリア中に完全に溶解すること、または化合物が液体キャリア中でミセルを形成するか、ミセル中に保持されることを意味する。阻害剤化合物の濃度は、例えば、化合物の溶解性、化合物中のアミン基の数、アルキル基の長さ、エッチング速度抑制と研磨速度抑制との関係、使用される酸化剤、酸化剤の濃度などを含む、種々の要因に応じて変更することが必要になる場合もある。特定の望ましい実施形態において、研磨組成物中のタングステン阻害剤化合物の濃度は、約0.1μM~約10mM(すなわち、約10-7~約10-2モル濃度)の範囲内であり得る。例えば、高分子量を有するアミン系ポリマーを使用する実施形態において、濃度は、範囲の下限(例えば、約10-7~約10-4モル濃度)であり得る。比較的単純なアミン化合物(アミン基が少なく、分子量が低いもの)を使用する他の実施形態において、濃度は、範囲の上限(例えば、約10-5~約10-2モル濃度)であり得る。
【0097】
特定の化学機械研磨用途(例えば、浅いトレンチ用途)において、タングステン及び酸化ケイ素は、窒化ケイ素(SiN)などのケイ素窒素材料と合わせて研磨することができる。特定用途において、酸化ケイ素とケイ素窒素材料の両方に対して高い除去速度を達成する(例えば、TEOS:SiNの研磨速度選択性が約15:1未満であり、TEOS及びSiNの研磨速度がタングステン研磨速度よりも大きくなるようにする)のが望ましい場合がある。したがって、化学機械研磨組成物は、任意選択により、ケイ素窒素研磨促進剤を更に含み得る。ケイ素窒素研磨促進剤は、例えば、ポリカルボン酸、ポリホスホン酸またはこれらの混合物などの実質的に任意の好適なポリ酸を含み得る。例示的なポリカルボン酸には、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、酒石酸、スルホコハク酸及びフタル酸を挙げることができる。このようなポリカルボン酸は、一般に、その共役型で使用されてもよく、例えば、カルボン酸の代わりにカルボン酸塩を使用することができることが理解されよう。本出願上、有用なケイ素窒素促進剤を記載するために使用される「酸」という用語は、酸安定剤の共役塩基(複数可)も意味する。
【0098】
好適なポリホスホン酸には、例えば、メチレンホスホン酸化合物及び1-ヒドロキシエチリデン-1,1,-ジホスホン酸などのジホスホン酸化合物、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びビス(ヘキサメチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸))が含まれ得る。このようなポリホスホン酸は、一般に、その共役型で使用されてもよく、例えば、ホスホン酸の代わりにホスホン酸塩を使用することができることが理解されよう(カルボン酸に関する上の記載のとおり)。上記ポリホスホン酸化合物の好適な例は、Dequest(登録商標)の商品名で市販されているものである(Italmatch Chemicals(Genova、Italy))。
【0099】
研磨組成物は、任意選択により、研磨速度のウェハ内均一性(例えば、ウェハエッジ部と中央部の研磨速度比または差)を改善するポリエチレングリコールなどの均一性添加剤を更に含み得る。
【0100】
研磨組成物は、任意選択により、殺生物剤を更に含み得る。殺生物剤は、任意の好適な殺生物剤、例えば、イソチアゾリノン殺生物剤を含み得る。研磨組成物中の殺生物剤の量は、約1ppm~約50ppm、好ましくは約1ppm~約20ppmの範囲内であり得る。
【0101】
本記載の研磨組成物の特定の実施形態は、研磨組成物の電気伝導率が低いときに、より大きい二酸化ケイ素(TEOS)研磨速度を達成することが観察された。このような実施形態は、タングステンバフ研磨用途に有利に利用することができる。したがって、例示的な研磨組成物は、有利には、2000μS/cm未満(例えば、1500μS/cm未満、1000μS/cm未満、800μS/cm未満、500μS/cm未満、または400μS/cm未満、または300μS/cm未満)の電気伝導率を有し得る。
【0102】
タングステン含有基材表面を処理するために特別に設計された研磨組成物の特定の実施形態は、他の種類の基材を処理するために設計されたCMPスラリー中に存在する成分を排除または最小にすることもできる。このような他の種類の成分は、多くても低量またはわずかである量で、例えば、タングステン研磨CMPプロセスなどのCMPプロセスにおけるスラリーの性能に顕著な有害な影響を及ぼさない程度に十分低い量で存在する。
【0103】
例えば、本記載の研磨組成物の特定の実施形態は、本明細書で定義されるカチオン性界面活性剤とは異なる界面活性剤を完全に排除にすることができ、または多くても極めて低い量で含むことができる。これらの実施形態は、アニオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤、例えば、ポリビニルアルコール界面活性剤、ポリエチレングリコール界面活性剤、ポリアクリレート界面活性剤、ポリオキシエチレン界面活性剤を多くても低濃度またはわずかな濃度で含み得る。例えば、これらの実施形態は、組成物の総重量に基づいて、これらの非カチオン性界面活性剤のいずれを0.1、0.05、または0.01重量%以下で、別個に、または組み合わせて含み得る。任意選択により、本明細書に記載されるスラリーから排除することができ、または低濃度もしくは極めて低濃度で使用され得る、本明細書に記載されるカチオン性界面活性剤とは異なる特定の界面活性剤の例は、米国特許第6,979,252号に記載されている(その開示を参照により本明細書に援用する)。
【0104】
別の例として、特定の実施形態はまた、KNO3などの電解質を多くても低濃度またはわずかな濃度で含むことができる。このような実施形態は、0.1、0.05、0.01または0.001重量%以下のKNO3を含み得る。
【0105】
別の例として、特定の研磨組成物実施形態はまた、記載されるシクロデキストリンと複合体を形成することができないか、記載される研磨組成物に別様に有用でない(例えば、カチオン性化合物が、研磨剤粒子の不安定性(例えば、荷電性コロイダルシリカ粒子の不安定性)を生じさせ得るか、CMP処理中に粒径成長を引き起こし得るか、タングステンまたは酸化物(例えば、TEOS)の除去速度を過度に低下させ得るか、CMP処理中に組成物に許容されない性能をもたらし得るために有用でない)カチオン性化合物を多くても低濃度またはわずかな濃度で含むことができる。このようなカチオン性化合物の例には、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、N-ドデシルピリジニウム、N-ヘキシルピリジニウム及び臭化ヘキサメトニウムを挙げることができる。したがって、特定の実施形態によれば、好ましい研磨組成物は、これらのカチオン性化合物のうちのいずれか1つ以上を0.1、0.05、0.01または0.001重量%以下含み得る。
【0106】
別の例として、特定の研磨組成物実施形態は、本明細書に記載される好ましいコロイダルシリカ粒子とは異なる研磨剤粒子を完全に排除にすることができ、または多くても低濃度もしくは極めて低い濃度で含むことができる。換言すれば、これらの特定の実施形態の研磨剤粒子は、本記載のカチオン性界面活性剤とシクロデキストリンとの組み合わせにおいて有用なコロイダルシリカ研磨剤粒子を含み得、かつ任意の他の種類の研磨剤粒子を完全に排除することができ、または多くても少量もしくは微量で含むことができる。すなわち、スラリーの研磨剤粒子は、コロイダルシリカ研磨剤粒子(例えば、記載される荷電性コロイダルシリカ粒子)からなるか、これらから本質的になり得る。本明細書で使用されるとき、コロイダルシリカ粒子から「本質的になる」研磨剤粒子とは、その研磨剤粒子が任意の他の種類の研磨剤粒子を低量もしくは微量を超えて含有しない(例えば、研磨組成物中の研磨剤粒子の総重量に基づいて、3、2または1%以下、例えば、0.5、0.1、0.05または0.01重量%以下の別の種類の研磨剤粒子)ことを意味する。
【0107】
研磨組成物は、任意の好適な技術を使用して調製することができ、それらの多くは、半導体材料分野の当業者に知られている。研磨組成物は、バッチプロセスまたは連続プロセスで調製することができる。一般に、研磨組成物は、その構成成分を任意の順序で合わせることによって調製することができる。本明細書で使用される「構成成分」という用語は、組成物の個々の成分、例えば、コロイダルシリカまたはその分散体、カチオン性界面活性剤、任意選択の触媒(例えば、鉄含有触媒)など)を指す。
【0108】
正に帯電したコロイダルシリカ研磨剤粒子は、水性液体キャリア中で粒子を成長させることを含むステップと、粒子(依然として分散状態)の内部または表面に化学化合物を組み込んで本明細書に記載されるような電荷のある粒子をもたらすこととを含むステップによって調製することができる。次いで、得られた分散体を希釈し、pHを、例えば、酸を添加することによって、所定の値に調整することができる。次いで、カチオン性界面活性剤、任意選択の触媒、任意選択の安定剤及び任意選択の阻害剤などの他の構成成分を添加し、これらの添加構成成分を研磨組成物中に均一に組み込むのに有用な任意の方法によって混合することができる。酸化剤は、研磨組成物の調製中の任意の時点で添加することができる。例えば、研磨組成物は、酸化剤などの1つ以上の構成成分を、CMP作業における研磨組成物の使用直前(例えば、CMP作業の約1分以内、または約10分以内、または約1時間以内、または約1日以内、または約1週間以内)に添加して、使用前に調製することができる。研磨組成物はまた、CMP作業中に、基材の表面(例えば、研磨パッド上)で構成成分を混合することによって調製することもできる。
【0109】
研磨組成物は、荷電性コロイダルシリカ粒子、カチオン性界面活性剤、任意選択の触媒(例えば、鉄含有触媒)、任意選択の阻害剤、任意選択の安定剤、任意選択の殺生物剤及び水を含有する1パッケージシステムとして供給することができる。特定の実施形態において、酸化剤は、研磨組成物の他の構成成分とは別個に供給され、使用直前(例えば、使用前1週間以内、使用前1日以内、使用前1時間以内、使用前10分以内、または使用前1分以内)に、例えば、エンドユーザによって、研磨組成物の他の構成成分と合わせられる。
【0110】
研磨組成物は、有利には、CMP処理における使用前に「使用組成物」を形成するために、適切な量の水で希釈されることが意図された濃縮物として提供することができる。このような実施形態において、研磨組成物濃縮物は、適切な量の水で濃縮物を希釈したときに、研磨組成物の各構成成分が各構成成分について上に列挙した適切な範囲内の量で研磨組成物中に存在するような量で、荷電性コロイダルシリカ研磨剤粒子及び他の任意選択の構成成分を含み得る。例えば、コロイダルシリカ研磨剤粒子は、各構成成分について上に列挙した濃度よりも約2倍(例えば、約3倍、約4倍、約5倍または更には約10倍)多い量で研磨組成物中に存在し得る。これにより、当量の水(あるいは、それぞれ2、3、4または更には9倍当量の水)で濃縮物を希釈したとき、各構成成分は、上に記載した範囲内の量で研磨組成物中に存在することになる。更に、理解されるように、濃縮物は、他の構成成分が少なくとも部分的または完全に濃縮物中に溶解するのを確実にするために、最終研磨組成物中に存在する適切な少量の水を含有し得る。
【0111】
一実施形態において、好適な濃縮物は、カチオン性界面活性剤、シクロデキストリン及び他の任意選択の成分とともに、水系液体キャリア中に分散されたコロイダルシリカ研磨剤粒子(例えば、粒子の外表面に対して内部に組み込まれたアミノシラン化合物などの窒素含有化合物またはホスホニウムシラン化合物などのリン含有化合物を含むコロイダルシリカ)を少なくとも5または10重量%含む。コロイダルシリカ粒子は、少なくとも6、8または10mVの永久正電荷を有し得る。濃縮された組成物は、鉄含有触媒及び上記の他の任意選択の構成成分を更に含み得る。更に、組成物のpHは、約1~約6、例えば、2~約5の範囲内であり得る。
【0112】
本発明の研磨組成物は、任意の基材を研磨するために使用することができるが、研磨組成物は、タングステンを含む少なくとも1つの金属と少なくとも1つの誘電体材料とを含む基材表面を研磨するのに特に有用である。タングステン層は、1つ以上のバリア層、例えば、チタンまたは窒化チタン(TiN)の上に堆積され得る。誘電体層は、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)から得られる酸化ケイ素層などの金属酸化物、多孔質金属酸化物、多孔質もしくは非多孔質炭素ドープ酸化ケイ素、フッ素ドープ酸化ケイ素、ガラス、有機ポリマー、フッ化有機ポリマーまたは他の好適な高kもしくは低k絶縁層であってよい。
【0113】
記載される研磨組成物は、化学機械研磨(CMP)装置を使用する研磨法で使用することができる。典型的に、装置は、プラテンを含み、このプラテンは、使用時に動いて、軌道運動、直線運動または円運動から生じる速度を有する。研磨パッドは、プラテンと接触し、動作時、プラテンとともに動く。キャリアは、研磨される基材の表面を研磨パッドの表面に対して接触させ、移動させることによって、基材を保持する。基材表面の処理は、基材を研磨パッド及び研磨組成物と接触するように配置し、次いで、研磨パッドを基材表面に対して移動させて基材の少なくとも一部分(本明細書に記載されるタングステン、チタン、窒化チタン及び/または誘電体材料など)を削ることによって行われる。
【0114】
有用なプロセスは、タングステン含有表面を有する研磨される基材(ウェハ)をキャリア(研磨ヘッド)上に取り付け、次に、これをキャリアアセンブリ上に取り付けた後、CMP装置(研磨ツール)の研磨パッドと接触するように配置する、タングステン研磨CMPプロセスであり得る。キャリアアセンブリは、基材に対して制御可能な圧力をかけ、基材を研磨パッドに対して押し付ける。基材及びパッドは、外部駆動力によって互いに対して移動する。基材及びパッドの相対運動が基材の表面から材料を削り取り、除去することによって、基材を研磨する。材料の研磨及び除去は、研磨組成物(例えば、研磨スラリー中に存在する触媒、酸化剤などによって)の化学的作用と研磨組成物中に懸濁している研磨剤粒子の機械的作用との相乗効果に基づき得る。
【0115】
基材は、任意の好適な研磨パッド(例えば、研磨表面)を用いて化学機械研磨組成物により平坦化または研磨することができる。好適な研磨パッドには、例えば、織布及び不織布の研磨パッドが含まれる。更に、好適な研磨パッドは、様々な密度、硬度、厚さ、圧縮性、圧縮への反発性及び圧縮弾性率を有する任意の好適なポリマーを含み得る。好適なポリマーには、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ナイロン、フルオロカーボン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレン、これらの共成形体及びこれらの混合物が含まれる。
【0116】
タングステン(または別の金属)フィーチャが誘電体フィーチャ間に配置された基材の一例は、誘電体材料のフィーチャ間に備えられたタングステン「プラグ」及び「インターコネクト」構造を含む半導体基材である。このような構造体を作製するために、構造化された誘電体表面を含む基材が準備される。構造化された誘電体表面は、非平坦である。これは、ホール、チャネル、トレンチなどのスペースが存在することによって中断され、不連続となっていることを除いて、実質的に平面または平坦である表面を含むことを意味する。タングステンは、構造化された誘電体表面を覆うように適用され、スペースをタングステンで充填し、構造化された誘電体材料の上に過剰のタングステン連続層を生成する。次のステップは、過剰のタングステンを除去し、更に、下にある誘電体層を露出させて、構造化された誘電体材料のフィーチャ間に配置されたタングステンの平坦な表面を生成することである。
【0117】
いくつかの方法では、誘電体表面を露出させる単一ステップでタングステンが除去される。他の方法では、「2ステップ」プロセスが使用され得る。第1のステップで、過剰のタングステンの大部分が除去されるが、誘電体層は露出されない。このステップは、一般に「バルク」除去ステップと呼ばれ、このステップ中には高タングステン除去速度が望まれる。後続ステップ(第2のステップ)を使用して、残りのタングステンの最終部分を除去し、誘電体フィーチャ間のスペースがタングステンで満たされている下にある誘電体材料を露出させることができる。このステップは、「バフ」研磨ステップと呼ばれることもあり、高タングステン除去速度も重要であり得るが、他の性能要件、例えば、エロージョンまたはディッシングのない形態でのトポグラフィー、タングステン及び誘電体材料の良好な除去速度、ならびにスクラッチなどの欠陥が低レベルであることも重要となる。
【0118】
一実施形態において、タングステン及びケイ素酸素材料(TEOSなど)を含む基材を化学機械研磨する方法は、例えば、酸性pH及び約4重量%未満のコロイダルシリカ研磨剤粒子を有する本開示の研磨組成物のうちの1つを使用する。このような実施形態において、TEOSの平均除去速度は、2.0psiの下向きの力で100Å/分超であってよい(または更に500Å/分超、更に1000Å/分以上)。更に、TEOSの除去速度は、タングステンの除去速度を超えるものであってよい(すなわち、TEOS:W選択性は、1より大きくてよい)。基材がケイ素窒素材料を更に含む実施形態において、ケイ素窒素材料の除去速度は、同様に、タングステンの除去速度を超えるものであってよい。
【0119】
別の実施形態において、タングステン及びケイ素酸素材料(TEOSなど)を含む基材を化学機械研磨する方法は、例えば、4未満のpH及び約2重量%未満のコロイダルシリカ研磨剤粒子を有する本開示の研磨組成物のうちの1つを使用する。このような実施形態において、タングステンの平均除去速度は、2.5psiの下向きの力で200Å/分超(または更に500Å/分超であってよい。このような研磨速度は、実質的に任意の好適な直径を有するウェハ、例えば、直径200mmのウェハ、直径300mmのウェハまたは直径450mmのウェハ上で達成することができる。
【0120】
本開示は、多数の実施形態を含むことが理解されるであろう。これらの実施形態には、以下の付番した実施形態が含まれるが、これらに限定されない。
【0121】
1.液体キャリアと、
液体キャリア中に分散された研磨剤粒子と、
α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンまたはこれらの組み合わせから選択されるシクロデキストリンと、
カチオンを有し、かつそのカチオンから延びて少なくとも7個の炭素原子を含む鎖を含む疎水性尾部を有するカチオン性界面活性剤であって、スラリー中でシクロデキストリンと複合体を形成することができるカチオン性界面活性剤と
を含む、タングステン含有表面を処理するのに有用な化学機械研磨組成物。
【0122】
2.カチオン性界面活性剤が、次の構造:
【化7】
(式中、
nは、少なくとも1であり、
Xは、P
+またはN
+であり、
R
1は、少なくとも7個の炭素原子を含有する、任意選択により置換され、任意選択により不飽和を含有する、直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、
R
2、R
3及びR
4は、
水素、
置換または無置換であってよく、任意選択によりヘテロ原子、荷電基またはその両方を含んでよい、飽和または不飽和の環状基、及び
任意選択により不飽和、ヘテロ原子または荷電基のうちの1つ以上を含んでよい線状または分岐状のアルキル基、ならびに
R
2、R
3及びR
4のうちの2つまたは3つから形成され、任意選択により置換された飽和または不飽和の環状構造から独立して選択することができる)
を有する、実施形態1に記載の研磨組成物。
【0123】
3.R1が、7~20個の炭素原子の線状アルキルである、実施形態2に記載の研磨組成物。
【0124】
4.R2が、6個以下の炭素原子を含むアルキル基である、実施形態2または3に記載の研磨組成物。
【0125】
5.R3及びR4のそれぞれが、独立して、1~6個の炭素原子を有するアルキルである、実施形態2~4のいずれかに記載の研磨組成物。
【0126】
6.カチオン性界面活性剤がジカチオン性である、実施形態2に記載の研磨組成物。
【0127】
7.界面活性剤が、次式:
【化8】
(式中、
R
1は、8~20個の炭素原子を有するアルキル基であり、
各R
3、R
4、R
5、R
6及びR
7は、独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、
Zは、1~5個の炭素原子を有する二価連結基である)
を有する、実施形態6に記載の研磨組成物。
【0128】
8.ジカチオン性界面活性剤がN,N,N’,N’,N’-ペンタメチル-N-タロー-1,3-プロパンジアンモニウムジクロリドである、実施形態7に記載の研磨組成物。
【0129】
9.カチオン性界面活性剤が次式:
【化9】
(式中、
nは、少なくとも1であり、
Xは、P
+またはN
+であり、
R
1は、少なくとも7個の炭素原子を含有し、任意選択により不飽和を含有する、直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、
R
8、R
9、R
10、R
11及びR
12は、
水素、
置換または無置換であってよく、任意選択によりヘテロ原子、荷電基またはその両方を含んでよい、飽和または不飽和の環状基、及び
任意選択により不飽和、ヘテロ原子または荷電基のうちの1つ以上を含んでよい線状または分岐状のアルキル基から独立して選択することができる)
を有する、実施形態1に記載の研磨組成物。
【0130】
10.R8、R9、R11及びR12のそれぞれが、水素であり、R10が、置換または無置換であってよく、任意選択によりヘテロ原子(例えば、窒素)、荷電基(例えば、荷電した窒素ヘテロ原子)またはその両方を含んでよい不飽和環状基である、実施形態9に記載の研磨組成物。
【0131】
11.スラリーの総重量に基づいて、約0.001~約0.5重量%のカチオン性界面活性剤を含む、実施形態1~10のいずれかに記載の研磨組成物。
【0132】
12.スラリーの総重量に基づいて、約0.01~約2重量%のβ-シクロデキストリンを含む、実施形態1~11のいずれかに記載の研磨組成物。
【0133】
13.β-シクロデキストリンとカチオン性界面活性剤とが会合したカチオン性界面活性剤-シクロデキストリン複合体を含む、実施形態1~12のいずれかに記載の研磨組成物。
【0134】
14.約0.001~約0.5重量%のカチオン性界面活性剤-βシクロデキストリン複合体を含む、実施形態13に記載の研磨組成物。
【0135】
15.研磨剤粒子が、pH1~6のスラリー中で少なくとも6ミリボルト(mV)の正電荷を有するシリカ研磨剤粒子である、実施形態1~14のいずれかに記載の研磨組成物。
【0136】
16.シリカ研磨剤粒子の30%以上が3つ以上の凝集した一次粒子を含む、実施形態15に記載の研磨組成物。
【0137】
17.シリカ研磨剤粒子が、粒子中に組み込まれたカチオン性化合物を含み、カチオン性化合物が、荷電性窒素含有化合物または荷電性リン含有化合物である、実施形態15または16に記載の研磨組成物。
【0138】
18.シリカ研磨剤粒子が少なくとも10ミリボルトの永久正電荷を有する、実施形態15~17のいずれかに記載の研磨組成物。
【0139】
19.シリカ研磨剤粒子が少なくとも10ミリボルトの非永久正電荷を有する、実施形態15~17のいずれかに記載の研磨組成物。
【0140】
20.シリカ研磨剤粒子が、約30~約70ナノメートルの範囲の平均粒径を有する、実施形態15~19のいずれかに記載の研磨組成物。
【0141】
21.約1~約4重量%の研磨剤粒子を含む、実施形態1~20のいずれかに記載の研磨組成物。
【0142】
22.約2~約5の範囲のpHを有する、実施形態1~21のいずれかに記載の研磨組成物。
【0143】
23.約0.001~約1重量%の阻害剤と、
約0.001~約0.5重量%の触媒と
を含む、実施形態1~22のいずれかに記載の研磨組成物。
【0144】
24.触媒が可溶性鉄含有触媒である、実施形態23に記載の研磨組成物。
【0145】
25.酸化剤を含む、実施形態1~24のいずれかに記載の研磨組成物。
【0146】
26.タングステンを含む表面を含む基材を化学機械研磨する方法であって、
(a)基材を、
液体キャリアと、
液体キャリア中に分散されたシリカ研磨剤粒子であって、pH1~6のスラリー中で少なくとも6ミリボルト(mV)の正電荷を有する粒子と、
α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンまたはγ-シクロデキストリンから選択されるシクロデキストリンと、
カチオンを有し、かつそのカチオンから延びる疎水性末端を有するカチオン性界面活性剤であって、スラリー中でシクロデキストリンと複合体を形成することができるカチオン性界面活性剤とを含むスラリーと接触させることと、
(b)スラリーを基材に対して移動させることと、
(c)基材を削ってタングステンの一部を基材から除去することと
を含む、方法。
【0147】
27.タングステンを含む表面を含む基材を化学機械研磨する方法であって、
(a)基材を実施形態1~25のいずれかに記載のスラリーと接触させることと、
(b)スラリーを基材に対して移動させることと、
(c)基材を削ってタングステンの一部を基材から除去することと
を含む、方法。
【0148】
28.基材が、誘電体フィーチャのアレイの間に分散されたタングステンフィーチャのアレイを含む表面を有する、実施形態26または27に記載の方法。
【実施例】
【0149】
以下の実施例は、本発明を更に例示するものであるが、当然のことながら、いかなる意味においても、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0150】
実施例1
本実施例は、タングステンバフ研磨用途における本発明の研磨組成物のパターン研磨性能に関する利点を実証するものである。比較の配合物及び本発明の配合物を含む研磨組成物を表1に示す。比較例1-Aは、特別設計のコロイダルシリカ粒子(シリカ-A)、硝酸鉄及びマロン酸からなる鉄触媒、加えて、ジカチオン性界面活性剤化合物N,N,N’,N’,N’-ペンタメチル-N-タロー-1,3-プロパンジアンモニウムジクロリドならびに過酸化水素を含有する。シリカ-A粒子は、約50nmの二次粒径及び約12mVの電荷を有する荷電性コロイダルシリカ粒子である。
【0151】
本発明の組成物である1Bは、等しい濃度の同じ特別設計のコロイダルシリカ粒子(シリカ-A)、同じ鉄触媒及び同じカチオン性化合物及び過酸化水素を含有するが、本発明の組成物には、本明細書に記載されるように、複合体を形成するシクロデキストリンが配合される。
【0152】
組成物1Cは、代替の特別設計のコロイド粒子(シリカ-B)を配合した本発明の組成物の一例を提供する。シリカ-B粒子は、約55nmの二次粒径及び約25mVの電荷を有するコロイダルシリカ粒子である。
【0153】
粒子は両種類(シリカ-A及びシリカ-B)とも、「発明を実施するための形態」に記載されているように、粒子中に組み込まれている「内部」荷電性物質により帯電する。
【表1】
【0154】
比較例及び本発明のスラリーのパターン研磨性能を表2に示す。本発明のスラリーが、エロージョン値の減少の点で、比較例のスラリーよりも多くの利点を有することが明らかである。例えば、本発明の組成物1Bは、比較例のスラリー1Aに対して10分の1のエロージョン値しかなく、また本発明の組成物1Cは、比較例1Aに対して5分の1のエロージョン値しかない。
【表2】
【0155】
実施例2
本実施例は、シクロデキストリンと、シクロデキストリンと複合体を形成することができるカチオン性化合物とを含有する本発明の組成物の欠陥に関する利点を比較配合物と比較して実証するものである。各セットにおいて、比較例及び本発明のスラリーを、シクロデキストリン化合物が存在するという点を除き、同じように調製した。組成物について表3に記載する。
【表3】
【表4】
【0156】
表4に示す情報から、本発明のスラリー3-Bは、比較例のスラリー3-Aよりも極めて良好な欠陥性能を有することが明らかである。HF処理後、本発明のスラリーで研磨したTEOSウェハは、比較例のスラリーで研磨したTEOSウェハと比較すると、110nmを超える大きさの欠陥数が8分の1未満であることが観察された。
【0157】
実施例3
本実施例は、コロイダルシリカ(Fuso Inc.から入手)を研磨剤として使用して本発明に従って配合した本発明の研磨組成物の粒子安定性に関する利点を示すものである。
【表5】
【表6】
【0158】
本発明の配合物の安定性に関する利点を表6に示す。タングステン研磨用に配合されたシクロデキストリンを含まないスラリー中に疎水性尾部を有するカチオン性界面活性剤CTABまたはNPMNTPDACを組み込むと、粒径成長及び沈降が観察される。これは、CTABについては実施例5A、NPMNTPDACについては実施例5Cに示されている。これらのスラリーを、βシクロデキストリンとの複合体が形成され得るように本発明に従って配合すると、両スラリーは、優れた安定性を示す。例えば、本発明のスラリー5Bは、保存後(45℃、2週間)に沈降を示さず、粒子安定性は、保存後も0.1μmのままである。同様に、本発明のスラリー5Dは、保存後(45℃、1週間)に沈降を示さず、粒子安定性は、保存後も0.1μmのままである。