(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】組織分類装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/01 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
A61B5/01 350
(21)【出願番号】P 2018544798
(86)(22)【出願日】2017-02-25
(86)【国際出願番号】 IB2017051109
(87)【国際公開番号】W WO2017145125
(87)【国際公開日】2017-08-31
【審査請求日】2019-12-25
(32)【優先日】2016-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518298027
【氏名又は名称】ニラマイ・ヘルス・アナリティックス・ピーブイティー・エルティーディ
(74)【代理人】
【識別番号】100107847
【氏名又は名称】大槻 聡
(72)【発明者】
【氏名】シバクマール・ガヤトリ
(72)【発明者】
【氏名】シャーマ・シュブヒ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ・マドゥ・ヒマーンシュ
(72)【発明者】
【氏名】パルタサラティ・アラン・コーシク
(72)【発明者】
【氏名】ベンカタラマニ・クリティカ
(72)【発明者】
【氏名】カキレティ・シヴァ・テジャ
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0312136(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0257650(US,A1)
【文献】特開2015-134170(JP,A)
【文献】米国特許第04407292(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/01
A61B 9/00 -10/06
G06T 7/00 - 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胸部の熱画像内の組織を腫瘍として分類する組織分類装置であって、
乳癌検診用の患者の胸部の熱画像を受信する手段と、
前記熱画像内において複数の画素で構成される少なくとも1つの画素ブロックを特定する手段と、
前記画素ブロックを分類する手段と、
前記分類する手段による分類を表示装置へ送信する手段とを備え、
前記分類する手段は、
前記画素ブロックのうちk
1%が、前記画素ブロック内の画素の温度分布に基づく第1閾値θ
1を越える温度を有するか否かを判定し(R
1)、
前記画素ブロックのうちk
2%が、T
maxを前記患者の最高体温とした場合の第2閾値(T
max-θ
2)を越える温度を有するか否かを判定し(R
2)、
前記画素ブロックのうちk
3%が正常表面体温に基づく閾値θ
3未満の温度を有するか否かを判定し(R
3)、
前記画素ブロック内におけるエッジ長が前記画素ブロックの外周長のk
4%であるか否かを判定し(R
4)、
前記判定(R
1、R
2、R
3、R
4)の結果に基づく判定ルールを用いて、前記組織を腫瘍及び非腫瘍のいずれかに分類することを特徴とする組織分類装置。
【請求項2】
前記判定ルールでは、前記判定(R
1、R
2、R
3、R
4)の結果の荷重和が用いられ
ることを特徴とする請求項1に記載の組織分類装置。
【請求項3】
前記判定ルールでは、前記判定(R
1、R
2、R
3、R
4)の結果の多数決が用いられることを特徴とする請求項1に記載の組織分類装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医師が患者の胸部の熱画像で特定された組織を腫瘍組織として手動又は自動で分類できるようにするソフトウェアツールに関する。
【背景技術】
【0002】
女性の乳癌発生率は比較的高い。西洋諸国ではおよそ8人に1人の女性が、インドではおよそ11人に1人の女性が乳癌になる。西洋諸国では女性に最も多い癌である。例えば、インドでは子宮頸癌に次いで2番目である。進行段階では死亡率が高いため、生存のためには早期発見が肝要である。乳癌を検出するための非侵襲で非接触の新たな検診方法として出現したのが、サーモグラフィである。人体からの7~10μmの波長範囲の赤外線放射率が、サーマルイメージングにより取り込まれる。周辺組織に比べ腫瘍領域では血管新生中に新たな血管が不均衡に成長することで腫瘍が増殖しており、このような腫瘍の増殖による胸部組織の熱活動の検出にサーマルイメージング装置が役立つ。腫瘍の増殖に関連する皮膚表面下での生物物理学的な活動の増大により、代謝率が高くなり、当該組織の温度が上昇する。これが当該組織を含む熱画像でホットスポットとして表出する。最近では乳癌検診の取り組みとして、サーマルカメラの解像度及び技術が向上したサーモグラフィへの関心が再燃してきた。放射線科医やサーモグラフィ技術者を支援するためには、より強力なソフトウェアインターフェースツールがますます求められている。
【0003】
このため、腫瘍組織の存在を確認するために医師が手動又は自動で胸部組織領域の熱画像を分析できるようにするより高度なソフトウェアツールが当該技術では必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
腫瘍組織の存在を確認するために、医師が手動又は自動で胸部組織領域の熱画像を分析できるようにするソフトウェアツールを開示する。一実施形態において開示するソフトウェアインターフェースツールは、ユーザが患者情報を入力、編集、閲覧、保存及び検索することができる患者詳細画面を表示可能にするユーザが選択可能な患者詳細オブジェクトを含む。選択可能な熱分析オブジェクトにより、ユーザは乳癌検診の際に表示された患者の胸部の熱画像を分析し、当該熱画像において特定された組織を腫瘍と分類することができる。モダリティオブジェクトは、患者評価に結論を下し、当該ツールの別のセクションから収集したデータを全て維持し、文書化を目的として報告書を作成する。その後、このデータは全て乳癌検診患者全員の記録を含むデータベースに格納される。当該情報をデータベースから取り込み、ツールを用いて更に編集し分析することができる。また、全ての関連データを含む報告書が医師の参照用に作成される。
【0005】
上記ソフトウェアインターフェースの構成及び効果は、以下の詳細な説明及び添付図面から直ちに明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本書に記載された発明の上記及びその他の構成及び効果は、以下の詳細な説明と添付図面とを併せて明らかにされる。
【0007】
図1には、女性患者の胸部の熱画像の一例が示されている。
【0008】
図2には、本ソフトウェアインターフェースツールの一実施形態が示されている。
【0009】
図3には、
図1の熱画像が乳癌検診用に表示される本ソフトウェアインターフェースツールの一実施形態が示されている。
【0010】
図4には、乳癌検診用の本ソフトウェアインターフェースツールを様々な構成で実施することができるネットワーク化されたコンピューティング環境の一例が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
腫瘍組織の存在を確認するために、医師が手動又は自動で胸部組織領域の熱画像を分析できるようにするソフトウェアツールを開示する。
非限定的定義
【0012】
「人」は、男性又は女性のいずれかを指す。性別代名詞は、添付の請求項の範囲を厳密に女性に限定するものではない。また、本開示の全体を通して、「人」や「患者」という用語を同じ意味で使用するが、乳癌検診を受診する人は、例えば霊長類のような人間以外のものであってもよいと理解しなければならない。このため、こうした用語の使用は、添付の請求項の範囲を人間に限定するものではない。
【0013】
「サーマルイメージングシステム」は、レンズ付きカメラであり、画素単位で赤外線エネルギーを電気信号に変換する専用センサの配列上に現場の被験体からの赤外線エネルギーの焦点を合わせ、熱波長帯域についての熱画像における被験体の表面温度に対応する色値を有する画素の配列で構成される。サーマルイメージングシステムは、熱領域の単帯域赤外線カメラや多帯域赤外線カメラ、熱領域のハイパースペクトル赤外線カメラのいずれかである。サーマルカメラ内の専用処理装置が複数の画素色値を異なる温度と関連付け、結果として生じる熱画像において各画素の出力色値が示される。サーマルカメラの解像度は、実際には画素サイズである。画素が少ない場合、同じ対象領域の画像により多くの画素が使われ、結果として生じる画像の解像度が高くなり、空間鮮明度が良くなる。被験体から放射される黒体放射量は被験体の温度に合わせて上昇するため、被験体の温度変化を熱画像で観察することができる。通常、サーマルカメラは次のような5つの主要な構成要素1)~5)からなる。1)電磁(EM)スペクトルの赤外領域の所定波長(約7.5~約14μm)に応答する専用の焦点面アレイ(FPA)を含む光学系、2)赤外領域の放射線を検出する検出器、3)受信した放射線を増幅する増幅器、4)撮像画像を閲覧するためのディスプレイ、5)データを解釈し赤外線画像を構築する数学的アルゴリズムを実施するためのCPU、メモリ、記憶装置等の信号処理ハードウェアからなる。一般的なサーマルイメージングシステムには、InSb、InGaAs、HgCdTe、QWIP FPAが含まれる。比較的新しい技術では、非冷却マイクロボロメータをFPAセンサとして活用している。サーマルカメラは、温度設定のダイナミックレンジが比較的大きい。しかし、ここでの目的のために好ましいことは、カメラの温度範囲を被験者の身体表面温度を中心として相対的に狭くし、画素色変化の観点から小さな温度変化を増幅させ、温度変化をより良く測定することである。サーマルカメラは各種流通で容易に入手できる。熱画像はサーマルイメージングシステムにより撮像される。
【0014】
「熱画像」は複数の画素で構成され、各画素は関連する対応温度値を有する。温度値が高い熱画像の画素は第1色で表示され、温度値が低い熱画像の画素は第2色で表示される。低温度値と高温度値の間の温度値の画素は、第1色と第2色の間の色の階調で表示される。
図1は患者の胸部のサーマルカメラ100を示す。熱画像は、ワークステーションにより受信され、ここに開示するソフトウェアインターフェースの機能の種々の態様で操作される。ここでは熱画像を白黒で示しているが、熱画像は色付きであると理解しなければならない。熱画像はサーマルイメージング装置のメモリ又は記憶装置から検索可能、あるいは、ネットワーク上の遠隔装置から取得可能である。CD-ROM又はDVD等の媒体から熱画像を検索してもよい。このような画像を処理用に提供するウェブベースのシステムから熱画像をダウンロードしてもよい。携帯セルラー装置で広く利用することができるようなアプリケーションを用いて熱画像を検索し、ユーザの携帯電話、その他のiPadやタブレット等の携帯コンピュータ装置で処理することもできる。熱画像は、患者の胸部領域に関するものであり、胸部自体の組織を包含し、周辺の非胸部組織の部分を更に含めてもよい。胸部組織の領域は、熱画像において自動又は手動で特定され、分析される。
【0015】
「ソフトウェアインターフェースツール」とは、コンピュータワークステーションのタッチスクリーンディスプレイ等の表示装置上に表示されるユーザが選択可能な機能の複合である。
図2に本ソフトウェアインターフェースツール200の実施形態の一例を示す。乳癌検診ツールにより、ユーザは熱画像を分析して乳房腫瘍を半自動で検出及び分類することができる。ツールは、3つのセクション、つまり、1)患者データの取得、2)熱データ分析、3)モダリティ、結論、データ記憶及び報告書作成からなる。本ソフトウェアインターフェースツールは各種実施形態においてユーザ選択可能な複数の機能オブジェクトを含む。
【0016】
「ユーザ選択可能機能オブジェクト」は、図形ウィジェットであり、例えばボタン等のようなソフトウェア分野で周知の各種形態をとることができる。ユーザが、例えばマウスをそこでクリックし、あるいは、接触感知表示画面に触れて選択すると、特定の「オブジェクト」と関連付けられた機械実行可能プログラム命令が特定の機能を実行する。
【0017】
「患者詳細」オブジェクト201は、画面表示を行うことができ、当該画面において、ユーザは、例えば、氏名、年齢、日付、病歴、診断詳細、患者の訴え等の患者情報を入力、編集、閲覧、記憶及び検索することができる。ソフトウェアツールのこのセクションは、患者の分類と結論の前提条件として必要な関連情報を取り込む。当該セクションにより、ユーザは、患者の人口統計情報、患者の癌歴、家族の癌歴、患者の病歴、患者の訴え及び臨床検査を入力することができる。このセクションに取り込まれた情報は、患者の乳癌発生率の評定に役立つ。例えば、患者及び/又はその家族に癌歴があれば将来の癌発生率が増大する。患者の病歴は患者の最終診断において重要な役割を果たす。例えば妊娠中又授乳中の母親というような病歴は、熱画像で観察される温度上昇を招くかもしれないことを示唆している。また、患者の病歴は、癌に至る良性状態への洞察を与える。患者の訴え及び臨床検査/診断は、患者の現状の関連情報を与え、これにはホルモンレベル、乳房小結節及びその他要因に関する重要なデータが含まれる。全患者情報取得画面は、データを取り込み、患者の状態の総合評定を支援する。
【0018】
「熱分析」オブジェクト202は、画面表示を行うことができ、当該画面において、ユーザは、患者の胸部の熱画像を分析し乳癌検診を行うことができる。患者は正常、良性、悪性、両側性に分類される。熱分析画面を表示した一実施形態を
図3に示す。
【0019】
「モダリティ」オブジェクト203は、画面表示を行うことができ、当該画面において、ユーザは、例えば患者の外科手術、マンモグラフィーの詳細、ソノマモグラフィーの所見、X線、生検、病理報告、医師の記録等の情報を入力、編集、閲覧、記憶及び検索することができる。当該ツールのこのセクションは患者評価の結論を下し、当該ツールの別のセクションから収集した全てのデータを保持し、文書化を目的として報告書を作成する。その後、全てのデータが、乳癌検診患者全員の記録を含むデータベースに記憶される。当該ツールを用いて、情報をデータベースから取り込み、更に編集や分析を行うことができる。また、医師の参照用に全ての関連データを含む報告書が作成される。
熱分析画面
【0020】
サーモグラフィデータは、例えば解像度が690×478画素のMeditherm社のカメラにより取得できる。被験者のサーモグラフィ画像を取り込むための具体的なプロトコルがある。被験者はゆったりしたガウンを着用し、AC室で15分間待機するように求められ、体温が正常化され、外部熱状態が最小化される。その後、被験者はサーモグラフィカメラから所定の距離で回転椅子上に着座させられる。カメラの焦点がズームインされることにより、被験者の身体の関連領域のみ、首の下から乳房下溝の直下までが取り込まれる。被験者の椅子も回転するため、取込角度は、斜め45°で、つまり、左右に傾斜した左右横方向で真正面になる。サーモグラフィカメラの温度範囲も被験者ごとに8°Cの範囲内で校正され、この範囲の最高温度はその人の最高体温に相当する。これにより、その人の最高体温が、画像の最高体温に対応した色(本例では白)で観察できる。これにより放射線科医/サーモグラフィ技術者による画像の視覚認識を支援する。Meditherm社のカメラのデフォルトビューは等温線図であり、画素の色が0.5°C範囲毎に異なる。サーモグラフィ技術者/放射線科医はこの等温線図を活用し、一般にほとんどの所見がこの図に基づき作成される。
【0021】
左右胸部の一方又は両方で特定された組織は、癌又は何らかの異常の有無を判定するのに使用される。乳房下溝は、通常、
摩擦により高温であることから考慮しない。腋窩領域のリンパ節も乳癌の転移があり得る領域であり、一般的にはソノマモグラムで検査される。サーモグラムにおいて、腋窩領域は、通常、摩擦とリンパ節の存在により高温となる。一般的には単体の癌に対し6つの熱画像が取り込まれる。一旦カメラで取り込まれた熱画像は熱分析画面にアップロードされる。
図2のオブジェクト202をユーザが選択すると表示される画面300の一実施形態では以下のようなユーザ選択可能機能オブジェクトを動作させる。
【0022】
「読み込み」オブジェクト301により、ユーザは異なる図に取り込まれた患者の熱画像をアップロードすることができる。
【0023】
「切り取り」オブジェクト302により、ユーザは腫瘍を分類するために表示熱画像から画素ブロックを切り取ることができる。
【0024】
「自動検出」オブジェクト303により、ユーザは腫瘍自動検出アルゴリズムを開始することができる。何らかの疑わしい腫瘍が検出されると、アルゴリズムは腫瘍領域を強調し、最良の図で表示し、「疑わしい悪性腫瘍検出」というメッセージを表示する。疑わしい腫瘍が検出されない場合は「腫瘍なし」というメッセージと共に熱画像の正面図を表示する。ツールは自動検出アルゴリズムの出力が正しいか否かの確認機能をユーザに提供する。これは自動検出腫瘍アルゴリズムの精度を向上させるのに重要である。
【0025】
「手動選択」オブジェクト304により、ユーザは所望の切り取り領域を2D又は3Dのいずれかの輪郭図で表示することを選択でき、更にユーザは疑わしい腫瘍領域をマーキングすることができる。これにより、疑わしい腫瘍領域が強調された最良の熱画像図を表示することが可能になる。ユーザは、何らかの腫瘍があると疑う場合にのみ手動選択処理を行う。
【0026】
「コメント」オブジェクト305により、ユーザは、取り込んだ熱画像に関し、その他の必要な医学的な関連コメントとともに、患者の熱生物学的スコアと、右胸部及び左胸部の四象限に関するコメントとを入力することができる。
腫瘍分類方法
【0027】
一般的に癌性腫瘍は「高温」であり、周辺組織に比べて顕著に高温である。癌増殖初期段階の小さい腫瘍は「温かい」。表面体温を観察すると被験者により摂氏数度のばらつきがあるため、「高温」領域を判定する温度閾値は、被験者に依存し、熱画像の所与の画素ブロック全体の温度分布に基づく必要がある。腫瘍の周辺では、温度マップに弱いエッジも得られるが、当該エッジは、閉じた境界線を有していない場合もある。温度分布に基づく温度閾値と腫瘍周辺エッジにより腫瘍領域を検出することができる。以下のルールを用いて熱画像の特定画素ブロックを分類する。ルール1:(R1)、熱画像において特定された組織の画素ブロックのうちk1%が温度分布に基づく閾値θ1を越える温度である場合、当該特定組織を腫瘍と分類する。ルール2:(R2)、熱画像の画素ブロックのうちk2%が、Tmaxを最高体温とする場合の閾値(Tmax-θ2)を越える温度である場合、当該特定組織を腫瘍と分類する。ルール3:(R3)、熱画像の画素ブロックのうちk3%が、正常表面体温に基づく閾値θ3未満の温度である場合、当該特定組織を正常と分類する。ルール4:(R4)、画素ブロックのエッジ長が当該ブロックの外周長のk4%である場合、当該組織を腫瘍と分類する。これらのブロック判定を組み合わせ、1つの判定ルールを用いることにより、腫瘍検出及び分類を最大化するとともに、誤検出を最小化することができる。一実施形態において判定ルールは(R1、R2、R3、R4)の多数決である。別の実施形態において判定ルールは(R1、R2、R3、R4)を重み付けした和であり、重みは腫瘍検出と医療経験におけるこれらの特性の相互依存に基づく。
【0028】
このアルゴリズムは、経験に基づき調整することができ、被験者の腫瘍検出及び分類を最大化することができる。エラーのうち、つまり、自動化アルゴリズムにより疑わしいと宣言された正常/良性腫瘍の事例について、(a)14事例のうち12事例において、定期検診を行って悪性腫瘍を否定する必要があり、放射線科医が3ヵ月後、6ヵ月後又は1年にわたる繰り返し調査を求め、(b)9事例において、外部熱状体が身体の一部の温度上昇の原因であり、(c)3被験者でホルモン反応が高く危険性が高かった。分類段階を追加して被験者を再分類することができる。更に、外部要因により発生する熱を排除するために被験者を冷却するなどして撮像プロトコルを改善して検診を向上させることができる。過剰ホルモン反応を有する危険性の高い被験者を判定し、決めにくい疑わしい事例を別のカテゴリーに分けるアルゴリズムを追加することにより、特定性を向上させることができる。
【0029】
本乳癌検診ツールは、今後の修正により、サーモグラフィデータとともに年齢や病歴を考慮に入れて感度や特定性を向上させることもできる。撮像プロトコルの修正や、被験者への質問の追加により、外部熱状態を排除することができる。この冷却プロトコルを追加しても熱が残存するなら、それは悪性腫瘍、炎症又は感染によるものであろう。被験者が熱の発生原因となる何らかの外的状態にさらされたかどうかを質問に含めてもよい。
ネットワーク化された環境例
【0030】
ネットワーク化されたコンピューティング環境の一例を示す
図4を参照すれば、乳癌検診用の本ソフトウェアインターフェースツールの各種構成により用途がわかる。以下では、様々な医師が本ソフトウェアインターフェースツールを用いた乳癌検診を同時に行うための適切にネットワーク化されたコンピューティング環境について一般的な説明を行うことを意図している。その他のコンピューティング環境でも本書に示す各種構成を同様に提供することができると理解しなければならない。
【0031】
図4のコンピューティング環境では、インターネットのようなネットワーク400上で互いに通信する複数のコンピュータシステム402及び406(計算装置と総称する)が設置される。ネットワーク化された環境には、患者の結果及び報告を印刷可能な文書複製装置404も含まれる。ネットワーク化された各計算装置は、通常、マウスと、キーボードと、CRT、LCD、タッチスクリーンディスプレイ等の表示装置とを含む。各計算装置には、機械読取可能プログラム命令を実行可能なプロセッサも含まれる。プロセッサは、データを記憶するメインメモリとデジタル通信し、メインメモリにはRAM、DRAM等が含まれてもよい。また、各計算装置は、フロッピーディスク、磁気テープ、光学ディスク、CD-ROM、DVD等の記憶媒体に対し読み書き可能なハードドライブ及びリムーバブルストレージユニットを含む。また、各計算装置は、ルーティング装置(不図示)を介してインターネット400に対し情報を送信可能な内部ネットワークインターフェースを含む。計算装置には、例えばケーブルモデムを使用してインターネットに接続するためのイーサネットカードや同様のネットワークインターフェースカードが含まれてもよい。典型的なネットワークインターフェースは、ローカルエリアネットワーク(LAN)や無線エリアネットワーク(WAN)等の専用システムを含む。患者の記録を送受信可能なネットワーク化されたコンピューティング環境は、
図4の環境以外の様々なネットワーク化環境で発生し得ることを当業者は容易に認識するであろう。
【0032】
無定形雲として描かれたインターネット400の特性の多くは、一般に知られている。このため、インターネットの作用に関する詳細な説明は省略した。敢えていうなら、データパケットは、複数の通信リンクを介して接続された専用サーバのネットワークにより送信される。データは、例えば、電気的、電子的、電磁気的、光学的又はその他の信号という信号形態で伝送される。こうした信号は、電線、ケーブル、ファイバ光学系、電話線、セルラーリンク、RF、衛星、その他の周知の媒体や通信リンクにより送信される。インターネットにアクセスする計算装置は、確立した通信プロトコルを使って、インターネットにアクセスする他の計算装置と通信する。
【0033】
図4のネットワーク化された環境では、コンピュータシステム406は、要求に応じて患者記録の記憶及び検索が可能なデータベース405も含む。データベースは、新規データ記録の追加、記憶している記録の更新、記憶しているデータの表示、及び、データベースエンジンにより入手可能なその他情報の表示を行うこともできる。データベースの構築、要求処理の最適化、インデックス化の方法、記録検索の技術及びアルゴリズムは周知技術であるため、具体的なデータベース実装に関する詳細な説明は省略する。当業者は、その技術分野で知られているデータベースエンジンを取得し、各計算装置及び印刷システムと通信するデータベースを設置することができる。ここで提供されるデータベースは、図示したネットワーク化装置のいずれかを用いて情報の記憶及び検索を行うものと理解しなければならない。コンピュータ406がデータベースを実装することは一つの構成にすぎない。データベースがどのネットワーク化装置にインターネット上で関連づけられるとしても、ネットワーク400に接続された全ての装置へ情報を送信できると理解しなければならない。
【0034】
本書の教示は、当業者が、既知の又は後に開発されるシステム、構造、装置及び/又はソフトウェアを用いて、過度の実験をすることなく、本書に示す機能的説明と関連技術の一般知識から、ハードウェア又はソフトウェアにおいて実施可能である。また、本書に示す方法は、プラグイン、ドライバ等に埋め込まれたルーチンのように、パソコンに埋め込まれたルーチンとして、あるいは、サーバやワークステーションに存在するリソースとして実施可能である。本書に示す教示はオブジェクトを用いたソフトウェアにおいて、又は各種コンピュータ、ワークステーション、サーバ、ネットワーク、その他ハードウェアプラットフォーム上で使用可能な携帯ソースコードを提供するオブジェクト指向のソフトウェア開発環境において、一部又は全てを実施してもよい。本書に示す特性の1つ又は複数をWindows(登録商標)やJava(登録商標)等のオペレーティングシステムやその他専用プログラムが提供する仮想環境でエミュレートしてもよい。
【0035】
本書に開示した教示の1つまたは複数の態様が製品に組み込まれることを意図しており、これにはコンピュータ使用可能媒体や機械読取可能媒体を備えた1つ又は複数のコンピュータプログラム製品が含まれる。製品は、本書に記載の方法を実行できる実行可能プログラム命令を具体化する機械のアーキテクチャにより読み取り可能な少なくとも1つの記憶装置上に含まれてもよい。製品を出荷、販売、リースしてもよく、あるいは、別々に単体で、又は付属品、更新、アップグレード、又は製品一式の一部として提供してもよい。
【0036】
上記開示構成や機能、その他構成や機能、又はその代案は、これとは別の多くのシステムやアプリケーションに組み合わされることが望ましいと認識される。このため、現時点では予想外又は想定外の各種代案、修正、変更又は改善が明らかになることもあり、及び/又は当業者により後に実施されてもよく、これらは以下の請求項に含まれるものとする。よって、上記記載の実施形態は例証であり限定ではない。発明の精神と範囲から逸脱することなく上記実施形態を変更してもよい。
【0037】
特許及び特許出願を含む印刷刊行物の教示は、それぞれが別々に、その全体が引用により取り込まれる。