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特許7148414PD-L1特異的抗体およびそれを使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】PD-L1特異的抗体およびそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220928BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220928BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220928BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220928BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220928BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220928BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P37/04
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K35/17 Z
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2018567904
(86)(22)【出願日】2017-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 US2017039810
(87)【国際公開番号】W WO2018005682
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-04-08
(31)【優先権主張番号】62/356,105
(32)【優先日】2016-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518452582
【氏名又は名称】チェックポイント セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】ベルク,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】シャーキー,ネイサン,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ゴレリック,レオニド
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-535691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
A61P
A61K
C12N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)と結合する抗体またはその機能的フラグメントであって、
a)CDRH1が配列番号2のアミノ酸配列を含み、CDRH2が配列番号9のアミノ酸配列を含み、CDRH3が配列番号15のアミノ酸配列を含み、
CDRL1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、CDRL2が配列番号21のアミノ酸配列を含み、CDRL3が配列番号22のアミノ酸配列を含む、
b)CDRH1が配列番号3のアミノ酸配列を含み、CDRH2が配列番号10のアミノ酸配列を含み、CDRH3が配列番号15のアミノ酸配列を含み、
CDRL1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、CDRL2が配列番号21のアミノ酸配列を含み、CDRL3が配列番号22のアミノ酸配列を含む、
c)CDRH1が配列番号4のアミノ酸配列を含み、CDRH2が配列番号11のアミノ酸配列を含み、CDRH3が配列番号15のアミノ酸配列を含み、
CDRL1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、CDRL2が配列番号21のアミノ酸配列を含み、CDRL3が配列番号22のアミノ酸配列を含む、
d)CDRH1が配列番号5のアミノ酸配列を含み、CDRH2が配列番号12のアミノ酸配列を含み、CDRH3が配列番号15のアミノ酸配列を含み、
CDRL1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、CDRL2が配列番号21のアミノ酸配列を含み、CDRL3が配列番号22のアミノ酸配列を含む、
e)CDRH1が配列番号6のアミノ酸配列を含み、CDRH2が配列番号13のアミノ酸配列を含み、CDRH3が配列番号15のアミノ酸配列を含み、
CDRL1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、CDRL2が配列番号21のアミノ酸配列を含み、CDRL3が配列番号22のアミノ酸配列を含む、
f) CDRH1が配列番号7のアミノ酸配列を含み、CDRH2が配列番号14のアミノ酸配列を含み、CDRH3が配列番号15のアミノ酸配列を含み、
CDRL1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、CDRL2が配列番号21のアミノ酸配列を含み、CDRL3が配列番号22のアミノ酸配列を含む、または、
g)CDRH1が配列番号2のアミノ酸配列を含み、CDRH2が配列番号9のアミノ酸配列を含み、CDRH3が配列番号15のアミノ酸配列を含み、
CDRL1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、CDRL2が配列番号21のアミノ酸配列を含み、CDRL3が配列番号75のアミノ酸配列を含む、
抗体またはその機能的フラグメント。
【請求項2】
可変重鎖フレームワーク領域1が、配列番号26のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはその機能的フラグメント。
【請求項3】
可変重鎖フレームワーク領域1が、配列番号27のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはその機能的フラグメント。
【請求項4】
可変重鎖フレームワーク領域2が、配列番号28のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはその機能的フラグメント。
【請求項5】
可変重鎖フレームワーク領域3が、配列番号29のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはその機能的フラグメント。
【請求項6】
可変重鎖フレームワーク領域4が、配列番号30のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはその機能的フラグメント。
【請求項7】
可変軽鎖フレームワーク領域1が、配列番号31のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはその機能的フラグメント。
【請求項8】
可変軽鎖フレームワーク領域2が、配列番号32のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはその機能的フラグメント。
【請求項9】
可変軽鎖フレームワーク領域3が、配列番号33、配列番号77、または配列番号78のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはその機能的フラグメント。
【請求項10】
可変軽鎖フレームワーク領域4が、配列番号34のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはその機能的フラグメント。
【請求項11】
可変重鎖領域が、配列番号36、37、38、39、40および41からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはその機能的フラグメント。
【請求項12】
可変重鎖領域が、配列番号51、52、53、54、55および56からなる群から選択されるアミノ酸配列を含
可変軽鎖領域が、配列番号42のアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載の抗体またはその機能的フラグメント。
【請求項13】
可変重鎖領域が、配列番号51のアミノ酸配列を含み、
可変軽鎖領域が、配列番号42のアミノ酸配列を含む、
請求項12に記載の抗体またはその機能的フラグメント。
【請求項14】
可変軽鎖領域が、配列番号42のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはその機能的フラグメント。
【請求項15】
請求項1に記載の抗体またはその機能的フラグメントを含む医薬組成物。
【請求項16】
重鎖可変領域が配列番号36,37,38,39,40又は41のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖可変領域が配列番号42を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項17】
重鎖可変領域が配列番号36のアミノ酸配列を含む、請求項16に記載の抗体。
【請求項18】
重鎖可変領域が配列番号37のアミノ酸配列を含む、請求項16に記載の抗体。
【請求項19】
重鎖可変領域が配列番号38のアミノ酸配列を含む、請求項16に記載の抗体。
【請求項20】
重鎖可変領域が配列番号39のアミノ酸配列を含む、請求項16に記載の抗体。
【請求項21】
重鎖可変領域が配列番号40のアミノ酸配列を含む、請求項16に記載の抗体。
【請求項22】
重鎖可変領域が配列番号41のアミノ酸配列を含む、請求項16に記載の抗体。
【請求項23】
CDRH1が配列番号2のアミノ酸配列を含み、CDRH2が配列番号9のアミノ酸配列を含み、CDRH3が配列番号15のアミノ酸配列を含み、
CDRL1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、CDRL2が配列番号21のアミノ酸配列を含み、CDRL3が配列番号22のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項24】
CDRH1が配列番号2のアミノ酸配列を含み、CDRH2が配列番号9のアミノ酸配列を含み、CDRH3が配列番号15のアミノ酸配列を含み、
CDRL1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、CDRL2が配列番号21のアミノ酸配列を含み、CDRL3が配列番号75のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項25】
CDRH1が配列番号3のアミノ酸配列を含み、CDRH2が配列番号10のアミノ酸配列を含み、CDRH3が配列番号15のアミノ酸配列を含み、
CDRL1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、CDRL2が配列番号21のアミノ酸配列を含み、CDRL3が配列番号22のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項26】
CDRH1が配列番号4のアミノ酸配列を含み、CDRH2が配列番号11のアミノ酸配列を含み、CDRH3が配列番号15のアミノ酸配列を含み、
CDRL1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、CDRL2が配列番号21のアミノ酸配列を含み、CDRL3が配列番号22のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項27】
CDRH1が配列番号5のアミノ酸配列を含み、CDRH2が配列番号12のアミノ酸配列を含み、CDRH3が配列番号15のアミノ酸配列を含み、
CDRL1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、CDRL2が配列番号21のアミノ酸配列を含み、CDRL3が配列番号22のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項28】
CDRH1が配列番号6のアミノ酸配列を含み、CDRH2が配列番号13のアミノ酸配列を含み、CDRH3が配列番号15のアミノ酸配列を含み、
CDRL1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、CDRL2が配列番号21のアミノ酸配列を含み、CDRL3が配列番号22のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項29】
CDRH1が配列番号7のアミノ酸配列を含み、CDRH2が配列番号14のアミノ酸配列を含み、CDRH3が配列番号15のアミノ酸配列を含み、
CDRL1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、CDRL2が配列番号21のアミノ酸配列を含み、CDRL3が配列番号22のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる配列表を含む。2017年6月19日に作成された前記ASCIIコピーは、099263-0802_SL.txtの名称で、43,085バイトのサイズである。
【0002】
発明の分野
本開示は、概してプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)と結合する抗体およびその機能的結合フラグメントに関する。特に、本開示の抗体およびフラグメントは、ヒトPD-L1と結合し、新規の相補性決定領域(CDR)を含む。最後に、本開示は、本開示の抗体およびフラグメントを、がんを有する対象に投与し、それによりがんの進行または増殖を処置することまたは遅らせることに関する。
【背景技術】
【0003】
PD-L1(以前はB7-H1)は、抗原提示細胞(「APC」)および活性化T細胞を含む、多くの細胞種において発現するB7ファミリーメンバーである(Yamazakiら、(2002年)J.Immunol.169:5538)。PD-L1は、PD-1(CD279)およびB7-1の両方と結合する。PD-L1によるT細胞発現B7-1との結合およびB7-1によるT細胞発現PD-L1との結合の両方がT細胞阻害をもたらす(Butteら、(2007年)Immunity 27:111)。その他のB7ファミリーメンバーと同様に、PD-L1も共刺激シグナルをT細胞に与えることができる証拠もある(Subudhiら、(2004年)J.Clin.Invest.113:694;Tamuraら、(2001年)Blood 97:1809)。さらに、細胞表面におけるPD-L1の発現は、IFN-γ刺激により上方制御されることも示された。
【0004】
PD-1とそのリガンドパートナー、PD-L1(B7-H1;CD274)およびPD-L2(B7-DC;CD273)との間の相互作用は、T細胞活性化の制御に関与する重要な負の共刺激シグナル伝達経路である。PD-1は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラーT細胞、活性化単球および樹状細胞(DC)において発現する場合がある。PD-1は、活性化ヒトCD4およびCD8T細胞、B細胞および骨髄細胞によって発現するが、無刺激のヒトCD4およびCD8T細胞、B細胞および骨髄細胞によっては発現しない。Nishimuraら、Int.Immunol.8:773~80(1996年);Boettlerら、J.Virol.80:3532~40(2006年)。(i)エクソン2、(ii)エクソン3、(iii)エクソン2および3または(iv)エクソン2から4を欠く転写物を含む、活性化ヒトT細胞からクローン化されたPD-1の少なくとも4つの変異体が存在する。Nielsenら、Cell.Immunol.235:109~16(2005年)。
【0005】
扁桃腺、胎盤、ならびに肺および肝臓におけるマクロファージ様細胞の小さな部分を除く、正常なヒト組織が、その細胞表面にPD-L1タンパク質をほとんど発現しないことは、正常な生理的条件下では、PD-L1 mRNAが厳しい転写後制御下にあることを示唆する。際立って対照的に、Chen & Han, Anti - PD-1 / PD-L1 therapy of human cancer:past, present, and future.J.Clin.Invest.125、3384~3391(2015年)に示されているとおり、PD-L1タンパク質は種々のヒトがんの細胞表面に豊富に発現している。
【0006】
PD-L2発現は、一方では、PD-L1よりも制限される。例えば、PD-L2は、DC、マクロファージ、および骨髄由来肥満細胞に誘導的に発現する。
【0007】
さらに、いくつかの研究は、PD-1に非依存的なPD-L1に対する受容体を示している。B7.1もPD-L1に対する結合パートナーと特定された。Butteら、Immunity 27:111~22(2007年)。化学的架橋研究は、PD-L1とB7.1がIgV様ドメインを介して相互作用する可能性があることを示唆している。B7.1:PD-L1相互作用は、T細胞に阻害シグナルを誘導することが可能である。B7.1によるCD4+T細胞上のPD-L1とのライゲーションまたはPD-L1によるCD4+T細胞上のB7.1とのライゲーションは、阻害シグナルを送達する。CD28およびCTLA-4のないT細胞は、抗CD3プラスB7.1被覆ビーズによって刺激されると、増殖およびサイトカイン産生の低減を示す。B7.1に対するすべての受容体(すなわち、CD28、CTLA-4およびPD-L1)がないT細胞では、T細胞増殖およびサイトカイン産生は抗CD3プラスB7.1被覆ビーズによってももはや阻害されない。これは、B7.1がCD28およびCTLA-4の不在下においてT細胞に対してPD-L1を介して特異的に作用することを示す。同様に、PD-1のないT細胞は、抗CD3プラスPD-L1被覆ビーズの存在下において刺激されると、増殖およびサイトカイン産生の低減を示し、これは、T細胞上のB7.1に対するPD-L1のライゲーションの阻害効果を実証する。PD-L1に対するすべての公知の受容体がT細胞にない(すなわち、PD-1およびB7.1がない)場合、T細胞増殖は、抗CD3プラスPD-L1被覆ビーズによってももはや損なわれない。このように、PD-L1は、B7.1またはPD-1のいずれによってもT細胞に対する阻害効果を発揮することが可能である。
【0008】
ヒト疾患との関連で、PD-L1発現は、ヒト肺、卵巣および結腸癌ならびにさまざまな骨髄腫を含む、いくつかのマウスおよびヒトがんで見出された(Iwaiら、(2002年)PNAS 99:12293~7;Ohigashiら、(2005年)Clin Cancer Res 11:2947~53)。PD-L1は、抗原特異的なT細胞クローンのアポトーシスを増加させることによって腫瘍免疫に関与することが示唆された(Dongら、(2002年)Nat Med 8:793~800)。PD-L1が腸管粘膜炎症に関与している可能性があり、PD-L1の阻害が大腸炎に関連する消耗性疾患を抑制することも示唆された(Kanaiら、(2003年)J Immunol 171:4156~63年)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
結果として、PD-L1の治療標的化は、医学的関心が集中する分野である。PD-L1シグナル伝達の阻害が、がん(例えば、腫瘍免疫)ならびに急性および慢性(例えば、持続的)の両方の感染症を含む、感染症の処置に対してT細胞免疫を増強する手段として提案されてきた。しかしながら、今までにたった1つの標的化された抗PD-L1治療薬しかFDAからの販売認可を受けていないため、満たされていない大きな医学的ニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、PD-L1と結合し、望ましい治療特性を示す単離抗体、特に、ヒト抗体を提供する。これらの特性は、PD-L1、特に、ヒトPD-L1との高親和性結合を含む。
【0011】
一態様において、本開示は、ヒトプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)と結合する抗体またはその機能的フラグメントであって、配列番号1のアミノ酸1~3および7~9を含むCDRH1(アミノ酸4~6はSSYではない)、配列番号8のアミノ酸9~17を含むCDRH2、および配列番号15を含むCDRH3を含む重鎖と、配列番号20を含むCDRL1、配列番号21を含むCDRL2、および配列番号22、配列番号75、もしくは配列番号76を含むCDRL3を含む軽鎖とを含む、抗体またはその機能的フラグメントに関する。
【0012】
いくつかの実施形態において、CDRH1領域は、配列番号2、3、4、5、6、および7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、いくつかの実施形態において、CDRH2領域は、配列番号8、9、10、11、12、13および14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、可変重鎖フレームワーク領域1は、配列番号26または配列番号27を含む。いくつかの実施形態において、可変重鎖フレームワーク領域2は、配列番号28を含み、可変重鎖フレームワーク領域3は、配列番号29を含み、および/または可変重鎖フレームワーク領域4は、配列番号30を含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、可変軽鎖フレームワーク領域1は、配列番号31を含み、可変軽鎖フレームワーク領域2は、配列番号32を含み、可変軽鎖フレームワーク領域3は、配列番号33、配列番号77、または配列番号78を含み、および/または可変軽鎖フレームワーク領域4は、配列番号34を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、可変重鎖配列は、配列番号36、37、38、39、40および41からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。他の実施形態において、可変重鎖配列は、配列番号51、52、53、54、55、および56からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、可変軽鎖配列は、配列番号42を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、抗体またはその機能的フラグメントは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を示すか、抗体またはその機能的フラグメントは、抗腫瘍活性を示すか、抗体またはその機能的フラグメントは、PD-L1のPD-1への結合を阻害するか、あるいは抗体またはその機能的フラグメントは、PD-1が媒介するT細胞活性化の阻害を妨げる。
【0018】
いくつかの実施形態において、抗体またはその機能的フラグメントは、低フコース抗体またはその機能的フラグメントであり、いくつかの実施形態において、抗体またはその機能的フラグメントは、脱フコシル化されているか、またはフコシル化されていない。
【0019】
別の態様において、本開示は、配列番号35を含む重鎖を含む、ヒトプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)と結合する抗体またはその機能的フラグメントに関する。
【0020】
別の態様において、本開示は、ヒトプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)と結合する抗体またはその機能的フラグメントであって、配列番号16を含むCDRH1、配列番号17を含むCDRH2、および配列番号18のアミノ酸6~13を含むCDRH3を含む重鎖と、配列番号23を含むCDRL1、配列番号24を含むCDRL2、および配列番号25を含むCDRL3を含む軽鎖とを含む、抗体またはその機能的フラグメントに関する。
【0021】
いくつかの実施形態において、CDRH3は、配列番号18を含み、いくつかの実施形態において、CDRH3は、配列番号19を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、可変重鎖フレームワーク領域1は、配列番号49を含み、可変重鎖フレームワーク領域2は、配列番号28を含み、可変重鎖フレームワーク領域3は、配列番号50を含み、および/または可変重鎖フレームワーク領域4は、配列番号30を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、可変軽鎖フレームワーク領域1は、配列番号45を含み、可変軽鎖フレームワーク領域2は、配列番号46を含み、可変軽鎖フレームワーク領域3は、配列番号47を含み、および/または可変軽鎖フレームワーク領域4は、配列番号34を含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、可変重鎖配列は、配列番号48または49を含み、いくつかの実施形態において、可変軽鎖配列は、配列番号50を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、抗体またはその機能的フラグメントは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を示すか、抗体またはその機能的フラグメントは、抗腫瘍活性を示すか、抗体またはその機能的フラグメントは、PD-L1のPD-1への結合を阻害するか、あるいは抗体またはその機能的フラグメントは、PD-1が媒介するT細胞活性化の阻害を妨げる。
【0026】
いくつかの実施形態において、抗体またはその機能的フラグメントは、低フコース抗体またはその機能的フラグメントであり、いくつかの実施形態において、抗体またはその機能的フラグメントは、脱フコシル化されているか、またはフコシル化されていない。
【0027】
いくつかの実施形態は、本開示の抗体またはその機能的フラグメントを含む医薬組成物に関する。
【0028】
別の態様において、本開示は、対象におけるがん細胞増殖を阻害する方法であって、本開示の抗体またはその機能的フラグメントを、がんを有する対象に投与することを含む方法に関する。例えば、いくつかの実施形態において、本開示は、対象における腫瘍細胞増殖を阻害する方法であって、少なくとも2.50×10-8のKDでヒトPD-L1と結合し、CDRH3が配列番号18のアミノ酸6~13を含む抗体またはその機能的フラグメントを、がんを有する対象に投与することを含む方法に関する。同様に、いくつかの実施形態において、本開示は、対象におけるがん細胞増殖を阻害する方法であって、少なくとも8.30×10-9のKDでヒトPD-L1と結合し、CDRH3が配列番号15を含む抗体または機能的フラグメントを、がんを有する対象に投与することを含む方法に関する。
【0029】
いくつかの実施形態において、がんは、血液がん、神経系がん、乳がん、胃腸がん、腎細胞癌、または尿生殖器がんである。特に、いくつかの実施形態において、胃腸がんは結腸がんであり、尿生殖器がんは、卵巣がん、前立腺がんまたは膀胱がんであり、血液がんは、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、または多発性骨髄腫であり、あるいは腎細胞癌は、腎明細胞癌である。
【0030】
いくつかの実施形態において、がんは、メラノーマ、肺がん(非小細胞肺がんなど)、頭頸部がん、肝がん、膵がん、骨がん、または血管のがんである。
【0031】
いくつかの実施形態において、がんは、高免疫原性の癌であるか、またはがんは、PD-L1を発現するがんである。
【0032】
いくつかの実施形態において、本方法は、対象に追加の治療用化合物を投与するステップをさらに含む。例えば、いくつかの実施形態において、追加の治療用化合物は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞、腫瘍標的化抗体、免疫応答増強モダリティー、または小分子薬物である。
【0033】
いくつかの実施形態において、免疫応答増強モダリティーは、抗GITR抗体、抗OX40抗体、抗CD137抗体、またはTLRアゴニストである。
【0034】
いくつかの実施形態において、腫瘍標的化抗体は、抗CAIX抗体である。
【0035】
いくつかの実施形態において、小分子薬物は、BTK阻害剤、EGFR阻害剤、PARP阻害剤、BET阻害剤、BRAF阻害剤、またはPI3Kデルタ阻害剤などの腫瘍標的化小分子薬物である。
【0036】
前述の概括的な説明および以下の詳細な説明は、例示的かつ説明的なものであり、特許請求される本開示のさらなる説明を提供することが意図される。他の目的、利点、および新規の特長は、本開示の以下の図面の簡単な説明および詳細な説明から当業者に容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】抗PD-L1抗体によるPD-L-1+細胞とのPD-1の結合の阻害パーセントを示すグラフである。結果は、FACS分析を使用して得た。
図2A】例示的な抗PD-L1抗体CTI-48の(A)ヒトPD-L1に対する結合動態を示すグラフである。
図2B】例示的な抗PD-L1抗体CTI-48の(B)マウスPD-L1に対する結合動態を示すグラフである。
図2C】例示的な抗PD-L1抗体CTI-48の(C)カニクイザルPD-L1に対する結合動態を示すグラフである。
図3】例示的な抗PD-L1抗体CTI-48がプライマリーNK細胞によりPD-L1+リンパ腫細胞に対してADCC活性を示すことを示すグラフである。
図4】選択された抗PD-L1抗体を用いた免疫遮断のレポーター(NFAT)バイオアッセイにおけるPD-L1によるT細胞阻害の逆転を示すグラフである。
図5】CTI-48および臨床対照mAbによるPD-L1のB7.1との結合の遮断を示すグラフである。
図6】IFN-γ産生に対する本開示の抗体の効果を示すグラフである。抗体を10μg/mLの濃度の混合リンパ球反応(MLR)培養物に与えた。データをビヒクル対照に対して正規化し、平均+SEM(n=6)と組み合わせて示している。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001は、ダネットの多重比較事後検定を用いて通常の一元配置分散分析法を使用した適切なアイソタイプ対照(hIgG1)と比較した場合の統計的有意性を示す。この図は、CTI-48および臨床対照mAbの対照比較を示している。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本開示の組成物および方法は、別に指示がある場合を除いて、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来技術を使用し、これらは、当技術分野の技術の範囲内である。そのような技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(Sambrookら、1989年);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984年);Animal Cell Culture(R.I.Freshney編、1987年);Methods in Enzymology(Academic Press, Inc.);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、1987年、および定期的な更新版);PCR:The Polymerase Chain Reaction、(Mullisら編、1994年);A Practical Guide to Molecular Cloning(Perbal Bernard V.、1988年);Phage Display:A Laboratory Manual(Barbasら、2001年)などの文献において完全に説明されている。
【0039】
I.定義
方法は、記載されている特定の実施形態に限定されないため、変化する場合もあることが理解されるべきである。本明細書中で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、限定することを意図しないことも理解されるべきである。本技術の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになる。
【0040】
本明細書中で使用される場合、特定の用語は、以下の定義される意味を有する場合もある。本明細書および請求項において使用される、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに別のことを規定していない限り、単数および複数の言及を含む。例えば、「ある細胞(a cell)」という用語は、それらの混合物を含む、1つの細胞ならびに複数の細胞を含む。
【0041】
本明細書中で使用される場合、「含むこと(comprising)」という用語は、組成物および方法が挙げられた要素を含むが、その他を除外しないことを意味することが意図される。組成物および方法を定義するために使用される場合、「本質的に~からなること(Consisting essentially of)」は、組成物または方法に本質的に重要ないかなる他の要素も除外することを意味するものとする。「からなること(Consisting of)」は、その特許請求される組成物および実質的な方法ステップに対する他の成分のわずかではない要素を除外することを意味するものとする。これらの移行語のそれぞれによって定義される実施形態は、本開示の範囲内である。したがって、方法および組成物は、追加のステップおよび構成要素を含んでもよい(含むこと)、あるいは重要でないステップおよび組成物を含む(本質的に~からなること)、あるいは明記される方法ステップまたは組成物のみからなることが意図される。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「約」は、プラスまたはマイナス10%を意味する。
【0043】
本明細書中で使用される場合、「任意の」または「任意に」は、次に記載される事象または状況が起こっても、または起こらなくてもよいこと、さらに説明が前記事象または状況が起こる例およびそれが起こらない例を含むことを意味する。
【0044】
本明細書中で使用される場合、「個体」、「患者」または「対象」という用語は、個々の生物、脊椎動物、哺乳動物(例えば、ウシ、イヌ、ネコ、もしくはウマ)、またはヒトであってもよい。好適な実施形態において、個体、患者、または対象はヒトである。
【0045】
本明細書中で使用される場合、「単離抗体」という用語は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない(例えば、PD-L1と特異的に結合する単離抗体は、PD-L1と結合しない抗体を実質的に含まない)抗体を指すことが意図される。ただし、PD-L1のエピトープと特異的に結合する単離抗体は、PD-L2またはPD-1、ならびに異なる種由来のタンパク質などの他のタンパク質との交差反応性を有する場合もある。しかしながら、抗体は、好ましくは常にヒトPD-L1と結合する。さらに、単離抗体は、一般にはその他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まない。
【0046】
本明細書中で使用される場合、「ヒト化抗体」という用語は、ヒト以外の哺乳動物由来の抗体のCDR、ならびにヒト抗体のフレームワーク(FR)領域および定常領域を含む抗体を指す。人体におけるヒト化抗体の抗原性が低下するため、ヒト化抗体は本開示による治療用薬剤中の有効な構成成分として有用である。
【0047】
本明細書中で使用される場合、「組換えヒト抗体」という用語は、組換え手段によって調製するか、発現させるか、作り出すか、または単離するすべてのヒト抗体を含み、以下に限定されるものではないが、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子に関するトランスジェニックまたは染色体導入動物(例えば、マウス)またはそれから調製されるハイブリドーマから単離された抗体、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から(例えば、トランスフェクトーマから)単離された抗体、(c)組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、および(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列とスプライシングすることを含む任意の他の手段によって調製するか、発現させるか、作り出すか、または単離する抗体が挙げられる。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列および/または非生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変領域および定常領域を有する。しかしながら、特定の実施形態において、そのような組換えヒト抗体は、インビトロ突然変異誘発(またはヒトIg配列に関するトランスジェニック動物が使用される場合、インビボにおける体細胞突然変異誘発)に供されてもよく、それにより、組換え抗体のVH領域およびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VHおよびVL配列に由来するならびにそれに関連するが、インビボにおけるヒト抗体生殖系列レパートリー内に本来存在しない可能性のある配列である。
【0048】
本明細書中で使用される場合、「グリコシル化パターン」という用語は、タンパク質と、より具体的には免疫グロブリンタンパク質と共有結合した炭水化物単位のパターンと定義される。
【0049】
本明細書中で使用される場合、「治療有効量」および「治療レベル」という語句は、それぞれ薬物投与量または対象中の血漿中濃度を意味し、これは、処置、すなわち、がん、悪性疾患またはがん細胞増殖の症状または影響を低減するか、回復させるか、または排除するために処置を必要とする対象において、薬物が投与される特定の薬理学的効果をもたらす。当該投与量が治療有効量であると当業者が考えても、治療有効量または治療レベルの薬物が、本明細書に記載されている状態/疾患を処置する際に常に有効である訳ではないことを強調する。治療有効量は、数ある要素のなかでも投与経路および剤形、対象の年齢および体重、ならびに/またはがん、悪性疾患、もしくはがん細胞増殖の種類およびステージを含む、対象の状態に基づいて変化することもある。
【0050】
「高免疫原性のがん」という用語は、T細胞もしくはリンパ球が浸潤しているか、または類似のリンパ応答を持つようになったがんを指す。多くの場合に、腫瘍免疫原性は、増加した突然変異率と関連づけられると考えられている。このように、腫瘍が多くの突然変異を有する程、腫瘍抗原が免疫応答を引き起こすことができる確率が高い。
【0051】
「処置」または「処置すること」という用語は、がん、悪性疾患、またはがん細胞増殖に関して本明細書中で使用される場合、がん、悪性疾患、またはがん細胞増殖の1つまたは複数の症状または影響を低減するか、回復させるか、あるいは排除することを指す。
【0052】
II.抗PD-L1抗体
数ある理由のなかでもとりわけ、がんを処置するために使用することができる抗PD-L1抗体が、本明細書において提供される。本開示の抗PD-L1抗体は、PD-L1に起因する少なくとも1つの負の共刺激シグナルの拮抗作用により宿主免疫応答の共刺激を増強させると考えられている。
【0053】
本開示の抗PD-L1抗体およびその機能的フラグメントは、がんまたは悪性疾患を処置するためのさまざまな機能特性を有することになり、以下に限定されるものではないが、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を有すること、抗腫瘍活性を有すること、PD-L1のPD-1との結合を阻害すること、およびPD-1が媒介するT細胞活性化の阻害を妨げることが挙げられる。
【0054】
さらに、PD-L1がPD-1、B7.1のいずれか、またはその両方と相互作用するのを遮断することを含む、PD-L1によるシグナル伝達の拮抗作用の結果として、本開示の抗体および機能的フラグメントは、PD-L1が負の共刺激シグナルをT細胞および他の抗原提示細胞に送るのを妨げることになり、それにより、抗腫瘍免疫およびがんおよび悪性疾患に対する免疫学的防御を増強する。さらに、本開示の抗PD-L1抗体および機能的フラグメントは、以下に限定されるものではないが、CAR T細胞(例えば、抗CD19、抗CAIX、抗IL13Ra2、または抗PD-L1 CARを発現する改変T細胞)、その他の腫瘍標的化抗体(例えば、抗CAIX抗体)、免疫応答増強モダリティー(例えば、抗GITR抗体、抗OX40抗体、抗CD137抗体、またはTLRアゴニスト)および小分子薬物(例えば、BTK阻害剤、EGFR阻害剤、BET阻害剤、PI3Kデルタ阻害剤、BRAF阻害剤、またはPARP阻害剤)を含む、追加の治療用化合物と組み合わされてもよい。
【0055】
本開示の抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト、部分的もしくは完全ヒト化、および/または組換え型であってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、ポリクローナル抗体またはPD-L1と結合するその機能的フラグメントである。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、モノクローナル抗体またはPD-L1と結合するその機能的フラグメントである。いくつかの実施形態において、抗体およびその機能的フラグメントは、ヒト、カニクイザル、および/またはマウスのPD-L1と結合することができる。
【0056】
ポリクローナル抗体は、選択した動物をPD-L1抗原を用いて免疫化し、その動物から血清を収集し、血清から抗体を単離および/または精製することなどにより、当技術分野において公知の方法によって得ることができる。モノクローナル抗体(mAb)は、例えば、抗体産生細胞を不死化細胞と融合してハイブリドーマを得ることにより、および/またはコンビナトリアル抗体ライブラリー技法を使用して免疫した動物の骨髄および脾臓細胞から抽出したmRNAからmAbを生成することにより、当技術分野において公知の方法によって得ることができる。組換え抗体は、例えば、ファージもしくは酵母菌ディスプレイ技法を使用して、および/または抗体ポリペプチドを発現もしくは同時発現させて、当技術分野において公知の方法によって得ることができる。抗体を作製するためのその他の技術は、当技術分野において公知であり、本明細書に記載されている方法に使用される抗体を得るために使用することができる。
【0057】
一般に、抗体は、同一の2つのコピーの重(H)鎖ポリペプチドおよび2つのコピーの軽(L)鎖ポリペプチドの4つのポリペプチドからなる。一般に、それぞれの重鎖は、1つのN末端可変(VH)領域および3つのC末端定常(CH1、CH2およびCH3)領域を含み、それぞれの軽鎖は、1つのN末端可変(VL)領域および1つのC末端定常(CL)領域を含む。軽鎖および重鎖の各組の可変領域が抗体の抗原結合部位を形成する。
【0058】
「PD-L1と結合する機能的フラグメント」または「機能的フラグメント」という用語は、本明細書中で使用される場合、PD-L1と結合する能力を保持する抗PD-L1抗体の1つまたは複数のフラグメントを指す。結合フラグメントの例としては、(i)Fabフラグメント(VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価フラグメント);(ii)F(ab’)2フラグメント(ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって結びつけられた2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント);(iii)Fdフラグメント(VHおよびCH1ドメインを含む);(iv)Fvフラグメント(抗体の1つのアームのVLおよびVHドメインを含む)、(v)dAbフラグメント(VHドメインを含む);および(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、例えば、VH CDR3が挙げられる。その他の例としては、単鎖Fv(scFv)構築物が挙げられる。例えば、Birdら、Science、242:423~26(1988年);Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85:5879~83(1988年)を参照。その他の例としては、(i)免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドと融合したPD-L1結合ドメインポリペプチド(重鎖可変領域、軽鎖可変領域、またはリンカーペプチドにより軽鎖可変領域と融合した重鎖可変領域など)、(ii)ヒンジ領域と融合した免疫グロブリン重鎖CH2定常領域、および(iii)CH2定常領域と融合した免疫グロブリン重鎖CH3定常領域を含む、PD-L1結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質が挙げられる。
【0059】
本開示の抗体のヒンジ領域は、二量体形成を妨げるために1つまたは複数のシステイン残基を、例えば、セリン残基で置き換えることによって改変されてもよい。例えば、米国特許出願公開第2003/0118592号、米国特許出願公開第2003/0133939号を参照。さらに、いくつかの実施形態において、本開示の抗体は、以下に限定されるものではないが、点突然変異S239D/I332E、S239D、もしくはI332E、またはその任意の組み合わせを有するIgG1の変異Fc部分、あるいは点突然変異S228Pを有するIgG4の変異Fc部分を含む、他の突然変異を含んでもよい。そのような改変は、本開示の抗体および機能的フラグメントのFc受容体(FcR)との結合を変えることができ、いくつかの実施形態において、抗体は、さらに安定するよう改変されてもよく、いくつかの実施形態において、抗体は、ADCC機能を増強させるために改変されてもよい。残基の番号を決定する場合、「標準的な」Kabat番号が付けけられた配列を有する抗体の配列の相同領域におけるアライメントによって所与の抗体に関する残基のKabat番号付けが決定されてもよい。
【0060】
いくつかの実施形態において、本開示の抗体のグリコシル化パターンは改変されてもよく、または変えられてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、本開示の抗体およびその機能的フラグメントは、低フコース抗体であってもよく、または脱フコシル化されていてもよく、あるいは抗体にフコースが完全にない(すなわち、フコシル化されない)ような方法で抗体を発現させてもよく、または作製してもよい。抗体または機能的フラグメントのフコース含有量の改変は、当技術分野において公知のさまざまな手段、例えば、FUT8欠損であるか、またはFUT8の突然変異型を有する細胞中で抗体または機能的フラグメントを発現させることにより達成することができる。低フコース抗体または脱フコシル化抗体および機能的フラグメントは、ADCC活性が増加する。フコースの変更に加えて、本開示の抗体および機能的フラグメントは、グリコシル化パターンにその他の機能的改変を含んでもよい。例えば、位置297(例えば、N297AおよびN297Q)の改変は、Fc領域のグリコシル化を完全に防ぎ、それによりFc機能、ADCC、およびCDCを排除することができる。
【0061】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、CTI-07、CTI-09、CTI-48、CTI-49、CTI-50、CTI-76、CTI-77、CTI-78、CTI-57、もしくはCTI-58またはその機能的フラグメントである。表1および2は、本開示の抗PD-L1抗体およびその機能的フラグメントの例示的なCDR配列を提供する。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
さらに、本開示の抗体および機能的フラグメントはまた、さまざまなフレームワーク領域を含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態において、本開示の抗体および機能的フラグメントは、配列番号26~34および/または43~47を含む。いくつかの実施形態において、フレームワーク領域に対する特定の変更は、特に有利である場合もある。例えば、抗体の重鎖の一方にあるフレームワーク領域の第1の位置のグルタミン(Q)をグルタミン酸(E)で置換すると、製造製品の安定有効性を増加させることができる。したがって、本開示の抗体およびフラグメントのいくつかの実施形態は、この改変を含むことになる。このように、いくつかの実施形態において、本開示の抗体または機能的フラグメントの重鎖は、配列番号36~41を含むことになるが、他の実施形態において、本開示の抗体または機能的フラグメントの重鎖は、配列番号48~49または51~56を含むことになる。さらに、いくつかの実施形態において、本開示の抗体または機能的フラグメントの重鎖は、配列番号71~72、または配列番号59~68を含む核酸配列によってコードされるポリペプチドを含むことになる。
【0065】
いくつかの実施形態において、本開示の抗体または機能的フラグメントの軽鎖は、配列番号42または50を含むことになる。さらに、いくつかの実施形態において、本開示の抗体または機能的フラグメントの軽鎖は、配列番号69~70を含む核酸配列によってコードされるポリペプチドを含むことになる。
【0066】
本開示の抗PD-L1抗体および機能的フラグメントの結合親和性または機能を損なうことなく、特定の変更を本開示の配列に行うことができることを当業者は理解するであろう。したがって、いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体または機能的フラグメントは、本開示の配列と約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を共有することになる。
【0067】
いくつかの実施形態において、本開示は、抗PD-L1抗体またはその機能的フラグメントをコードする単離された核酸配列、例えば、配列番号59~70を提供する。
【0068】
本開示の抗体およびその機能的フラグメントは、配列によって、または機能的特徴によって定義することができる。例えば、本開示の抗体およびその機能的フラグメントは、少なくとも3.0×10-8、少なくとも2.5×10-8、少なくとも2.0×10-8、少なくとも1.5×10-8、少なくとも1.0×10-8、少なくとも0.5×10-8、少なくとも9.95×10-9、少なくとも9.90×10-9、少なくとも9.85×10-9、少なくとも9.80×10-9、少なくとも9.75×10-9、少なくとも9.70×10-9、少なくとも9.65×10-9、少なくとも9.60×10-9、少なくとも9.55×10-9、少なくとも9.5×10-9、少なくとも9.45×10-9、少なくとも9.40×10-9、少なくとも9.35×10-9、少なくとも9.30×10-9、少なくとも9.25×10-9、少なくとも9.20×10-9、少なくとも9.15×10-9、少なくとも9.10×10-9、少なくとも9.05×10-9、少なくとも9.0×10-9、少なくとも8.95×10-9、少なくとも8.90×10-9、少なくとも8.85×10-9、少なくとも8.80×10-9、少なくとも8.75×10-9、少なくとも8.70×10-9、少なくとも8.65×10-9、少なくとも8.60×10-9、少なくとも8.55×10-9、少なくとも8.5×10-9、少なくとも8.45×10-9、少なくとも8.40×10-9、少なくとも8.35×10-9、少なくとも8.30×10-9、少なくとも8.25×10-9、少なくとも8.20×10-9、少なくとも8.15×10-9、少なくとも8.10×10-9、少なくとも8.05×10-9、少なくとも8.0×10-9、少なくとも7.95×10-9、少なくとも7.90×10-9、少なくとも7.85×10-9、少なくとも7.80×10-9、少なくとも7.75×10-9、少なくとも7.70×10-9、少なくとも7.65×10-9、少なくとも7.60×10-9、少なくとも7.55×10-9、少なくとも7.5×10-9、少なくとも7.45×10-9、少なくとも7.40×10-9、少なくとも7.35×10-9、少なくとも7.30×10-9、少なくとも7.25×10-9、少なくとも7.20×10-9、少なくとも7.15×10-9、少なくとも7.10×10-9、少なくとも7.05×10-9、少なくとも7.0×10-9、少なくとも6.95×10-9、少なくとも6.90×10-9、少なくとも6.85×10-9、少なくとも6.80×10-9、少なくとも6.75×10-9、少なくとも6.70×10-9、少なくとも6.65×10-9、少なくとも6.60×10-9、少なくとも6.55×10-9、少なくとも6.5×10-9、少なくとも6.45×10-9、少なくとも6.40×10-9、少なくとも6.35×10-9、少なくとも6.30×10-9、少なくとも6.25×10-9、少なくとも6.20×10-9、少なくとも6.15×10-9、少なくとも6.10×10-9、少なくとも6.05×10-9、少なくとも6.0×10-9、少なくとも5.95×10-9、少なくとも5.90×10-9、少なくとも5.85×10-9、少なくとも5.80×10-9、少なくとも5.75×10-9、少なくとも5.70×10-9、少なくとも5.65×10-9、少なくとも5.60×10-9、少なくとも5.55×10-9、少なくとも5.5×10-9、少なくとも5.45×10-9、少なくとも5.40×10-9、少なくとも5.35×10-9、少なくとも5.30×10-9、少なくとも5.25×10-9、少なくとも5.20×10-9、少なくとも5.15×10-9、少なくとも5.10×10-9、少なくとも5.05×10-9、少なくとも5.0×10-9、少なくとも4.95×10-9、少なくとも4.90×10-9、少なくとも4.85×10-9、少なくとも4.80×10-9、少なくとも4.75×10-9、少なくとも4.70×10-9、少なくとも4.65×10-9、少なくとも4.60×10-9、少なくとも4.55×10-9、少なくとも4.5×10-9、少なくとも4.45×10-9、少なくとも4.40×10-9、少なくとも4.35×10-9、少なくとも4.30×10-9、少なくとも4.25×10-9、少なくとも4.20×10-9、少なくとも4.15×10-9、少なくとも4.10×10-9、少なくとも4.05×10-9、少なくとも4.0×10-9、少なくとも3.95×10-9、少なくとも3.90×10-9、少なくとも3.85×10-9、少なくとも3.80×10-9、少なくとも3.75×10-9、少なくとも3.70×10-9、少なくとも3.65×10-9、少なくとも3.60×10-9、少なくとも3.55×10-9、少なくとも3.5×10-9、少なくとも3.45×10-9、少なくとも3.40×10-9、少なくとも3.35×10-9、少なくとも3.30×10-9、少なくとも3.25×10-9、少なくとも3.20×10-9、少なくとも3.15×10-9、少なくとも3.10×10-9、少なくとも3.05×10-9、少なくとも3.0×10-9、少なくとも2.95×10-9、少なくとも2.90×10-9、少なくとも2.85×10-9、少なくとも2.80×10-9、少なくとも2.75×10-9、少なくとも2.70×10-9、少なくとも2.65×10-9、少なくとも2.60×10-9、少なくとも2.55×10-9、少なくとも2.5×10-9、少なくとも2.45×10-9、少なくとも2.40×10-9、少なくとも2.35×10-9、少なくとも2.30×10-9、少なくとも2.25×10-9、少なくとも2.20×10-9、少なくとも2.15×10-9、少なくとも2.10×10-9、少なくとも2.05×10-9、少なくとも2.0×10-9、少なくとも1.95×10-9、少なくとも1.90×10-9、少なくとも1.85×10-9、少なくとも1.80×10-9、少なくとも1.75×10-9、少なくとも1.70×10-9、少なくとも1.65×10-9、少なくとも1.60×10-9、少なくとも1.55×10-9、少なくとも1.5×10-9、少なくとも1.45×10-9、少なくとも1.40×10-9、少なくとも1.35×10-9、少なくとも1.30×10-9、少なくとも1.25×10-9、少なくとも1.20×10-9、少なくとも1.15×10-9、少なくとも1.10×10-9、少なくとも1.05×10-9、少なくとも1.0×10-9、少なくとも0.95×10-9、少なくとも0.90×10-9、少なくとも0.85×10-9、少なくとも0.80×10-9、少なくとも0.75×10-9、少なくとも0.70×10-9、少なくとも0.65×10-9、少なくとも0.60×10-9、少なくとも0.55×10-9、少なくとも0.5×10-9、少なくとも0.45×10-9、少なくとも0.40×10-9、少なくとも0.35×10-9、少なくとも0.30×10-9、少なくとも0.25×10-9、少なくとも0.20×10-9、少なくとも0.15×10-9、少なくとも0.10×10-9、少なくとも0.05×10-9、少なくとも9.5×10-10、少なくとも9.0×10-10、少なくとも8.5×10-10、少なくとも8.0×10-10、またはその間の任意の値のKを有してもよい。例えば、本開示の抗体およびその機能的フラグメントは、8.2×10-10、2.31×10-09、8.24×10-09、3.25×10-09、3.46×10-09、1.91×10-09、7.97×10-08、2.41×10-08、9.5×10-10、または8.6×10-10のK値を有してもよい。
【0069】
同様に、本開示の抗体およびその機能的フラグメントは、4.0×10-5μg/mlから9.5×10-7μg/mlの間またはその間の任意の値のIC50値を有してもよい。例えば、本開示の抗体およびその機能的フラグメントは、9.19×10-7、4.156×10-5、9.985×10-7、1.037×10-6、または3.463×10-6のIC50値を有してもよい。
【0070】
抗PD-L1抗体またはPD-L1と結合するその機能的フラグメントは、下でより詳細に論じるとおり、標的の対象に意図される投与経路によって投与するのに適した医薬組成物に製剤化されてもよい。
【0071】
III.医薬組成物および製剤
本明細書に記載されている方法に使用するのに適した医薬組成物は、治療的に活性な薬剤(例えば、抗PD-L1抗体またはその機能的フラグメント)および薬学的に許容される担体または希釈剤を含んでもよい。
【0072】
本組成物は、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、口腔、経鼻、肺、眼、経膣、または直腸投与のために製剤化されてもよい。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体またはその機能的フラグメントは、静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内投与のために液剤、懸濁剤、乳剤、リポソーム製剤などに製剤化される。本医薬組成物は、当技術分野において公知の技術を使用して即時放出組成物、持続放出組成物、遅延放出組成物などであるように製剤化されてもよい。
【0073】
さまざまな剤形のための薬理学的に許容される担体は、当技術分野において公知である。例えば、固体調製物のための賦形剤、滑沢剤、結合剤、および崩壊剤が公知であり、液体調製物のための溶媒、可溶化剤、懸濁化剤、等張剤、バッファー、および無痛化剤が公知である。いくつかの実施形態において、本医薬組成物は、1つまたは複数の保存料、酸化防止剤、安定化剤などの1つまたは複数の追加の構成成分を含む。
【0074】
さらに、本開示の医薬組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、または高薬物濃度に適したその他の指示された構造として製剤化されてもよい。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、ならびに適したそれらの混合物を含有する溶媒または分散媒であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散系の場合は必要とされる粒子径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。いくつかの実施形態において、組成物中に等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを含むのが好ましい。注射可能な組成物の長期の吸収は、組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを含ませることによってもたらすことができる。
【0075】
滅菌した注射可能な溶液は、上で挙げた1つの成分または成分の組み合わせを含む適切な溶媒に必要とされる量の活性化合物を組み込み、必要に応じて、滅菌精密ろ過を行うことによって調製することができる。概して、分散液は、基礎の分散媒および上で挙げたものからの必要とされる他の成分を含む滅菌したビヒクルに活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌した注射可能な溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)であり、予め滅菌ろ過したその溶液から活性成分プラス任意の追加の所望の成分の粉末を得る。
【0076】
本開示の医薬組成物は、その他の治療薬と組み合わせて投与されてもよい。例えば、併用療法は、少なくとも1つの本開示の抗PD-L1抗体またはその機能的フラグメントを、以下に限定されないが、CAR T細胞(例えば、抗CD19、抗Her2、抗BCMA、抗CS-1、抗PSCA、抗CAIX、抗IL13R、または抗PD-L1 CARを発現する改変T細胞)、その他の腫瘍標的化抗体(例えば、抗CAIX抗体)、免疫応答増強モダリティー(例えば、抗GITR抗体、抗OX40抗体、抗CD137抗体、またはTLRアゴニスト)、および小分子薬物(例えば、BTK阻害剤、EGFR阻害剤、BET阻害剤、PI3Kデルタ阻害剤、BRAF阻害剤、またはPARP阻害剤)を含む、少なくとも1つまたは複数の追加の治療用薬剤とともに含む医薬組成物を含んでもよい。本開示の医薬組成物はまた、放射線療法と併せて投与されてもよい。
【0077】
IV.がんを処置する方法
本開示の抗PD-L1抗体を用いてがん、悪性疾患、またはがん細胞増殖を処置する方法が本明細書において提供される。さらに具体的には、本開示は、治療有効量の任意の上記の抗PD-L1抗体または組成物を投与することを含む、T細胞の機能および抗腫瘍免疫を増強する方法を提供する。
【0078】
T細胞の機能および抗腫瘍免疫を増強することは、がん、悪性疾患、またはがん細胞増殖を処置することに対する広範囲のアプローチを提供する。したがって、多くの種類のがんを、本開示の抗PD-L1抗体およびその機能的フラグメントを投与することによって処置することができる。例えば、いくつかの実施形態において、がんは、血液がん(例えば、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、もしくは多発性骨髄腫)、神経系がん、乳がん、胃腸がん(例えば、結腸がん)、腎細胞癌(例えば、腎明細胞癌)、または尿生殖器がん(例えば、卵巣がん)である。いくつかの実施形態において、がんは、メラノーマ、肺がん(例えば、非小細胞肺がん)、頭頸部がん、肝がん、膵がん、骨がん、前立腺がん、膀胱がん、または血管のがんである。
【0079】
いくつかの実施形態において、本開示の方法により処置されるがんは、高免疫原性の癌である。さらに、いくつかの実施形態において、本開示の方法により処置されるがんは、PD-L1を発現するがんである。
【0080】
投与計画は、最適な所望の応答(例えば、腫瘍退縮または寛解のような治療応答)をもたらすよう調節される。例えば、いくつかの実施形態において、1回の急速投与で投与されてもよいが、いくつかの実施形態においては、いくつかの分割された用量が時間をかけて投与されてもよく、あるいは用量は、状況によって示されるとおり、比例的に低減されてもよく、または増加されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、本開示の抗体または機能的フラグメントは、皮下または静脈内注射によって週に1回または2回投与されてもよい。いくつかの実施形態において、本開示の抗体または機能的フラグメントは、皮下注射によって月に1回または2回投与されてもよい。いくつかの実施形態において、本開示の抗体または機能的フラグメントは、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、2か月に1回、3か月に1回、4か月に1回、5か月に1回、または6か月に1回投与されてもよい。
【0081】
例示的な用量は、処置される個体の大きさおよび健康、ならびに処置される状態により変化することがある。例えば、いくつかの実施形態において、本開示の抗体または機能的フラグメントは、1~100mg/kgの用量で投与されてもよい。いくつかの実施形態において、本開示の抗体および機能的フラグメントは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100mg/kgの用量で投与されてもよい。
【0082】
さらに、本開示の処置の方法は、抗PD-L1抗体またはその機能的フラグメントに加えて、第2の治療用化合物の投与をさらに含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態において、追加の治療用化合物は、CAR-T細胞、腫瘍標的化抗体、免疫応答増強モダリティー、または小分子薬物である。
【0083】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、さまざまな機能的特徴を有する抗体およびその機能的フラグメントを利用することができる。例えば、本開示の方法は、少なくとも3.0×10-8、少なくとも2.5×10-8、少なくとも2.0×10-8、少なくとも1.5×10-8、少なくとも1.0×10-8、少なくとも0.5×10-8、少なくとも9.95×10-9、少なくとも9.90×10-9、少なくとも9.85×10-9、少なくとも9.80×10-9、少なくとも9.75×10-9、少なくとも9.70×10-9、少なくとも9.65×10-9、少なくとも9.60×10-9、少なくとも9.55×10-9、少なくとも9.5×10-9、少なくとも9.45×10-9、少なくとも9.40×10-9、少なくとも9.35×10-9、少なくとも9.30×10-9、少なくとも9.25×10-9、少なくとも9.20×10-9、少なくとも9.15×10-9、少なくとも9.10×10-9、少なくとも9.05×10-9、少なくとも9.0×10-9、少なくとも8.95×10-9、少なくとも8.90×10-9、少なくとも8.85×10-9、少なくとも8.80×10-9、少なくとも8.75×10-9、少なくとも8.70×10-9、少なくとも8.65×10-9、少なくとも8.60×10-9、少なくとも8.55×10-9、少なくとも8.5×10-9、少なくとも8.45×10-9、少なくとも8.40×10-9、少なくとも8.35×10-9、少なくとも8.30×10-9、少なくとも8.25×10-9、少なくとも8.20×10-9、少なくとも8.15×10-9、少なくとも8.10×10-9、少なくとも8.05×10-9、少なくとも8.0×10-9、少なくとも7.95×10-9、少なくとも7.90×10-9、少なくとも7.85×10-9、少なくとも7.80×10-9、少なくとも7.75×10-9、少なくとも7.70×10-9、少なくとも7.65×10-9、少なくとも7.60×10-9、少なくとも7.55×10-9、少なくとも7.5×10-9、少なくとも7.45×10-9、少なくとも7.40×10-9、少なくとも7.35×10-9、少なくとも7.30×10-9、少なくとも7.25×10-9、少なくとも7.20×10-9、少なくとも7.15×10-9、少なくとも7.10×10-9、少なくとも7.05×10-9、少なくとも7.0×10-9、少なくとも6.95×10-9、少なくとも6.90×10-9、少なくとも6.85×10-9、少なくとも6.80×10-9、少なくとも6.75×10-9、少なくとも6.70×10-9、少なくとも6.65×10-9、少なくとも6.60×10-9、少なくとも6.55×10-9、少なくとも6.5×10-9、少なくとも6.45×10-9、少なくとも6.40×10-9、少なくとも6.35×10-9、少なくとも6.30×10-9、少なくとも6.25×10-9、少なくとも6.20×10-9、少なくとも6.15×10-9、少なくとも6.10×10-9、少なくとも6.05×10-9、少なくとも6.0×10-9、少なくとも5.95×10-9、少なくとも5.90×10-9、少なくとも5.85×10-9、少なくとも5.80×10-9、少なくとも5.75×10-9、少なくとも5.70×10-9、少なくとも5.65×10-9、少なくとも5.60×10-9、少なくとも5.55×10-9、少なくとも5.5×10-9、少なくとも5.45×10-9、少なくとも5.40×10-9、少なくとも5.35×10-9、少なくとも5.30×10-9、少なくとも5.25×10-9、少なくとも5.20×10-9、少なくとも5.15×10-9、少なくとも5.10×10-9、少なくとも5.05×10-9、少なくとも5.0×10-9、少なくとも4.95×10-9、少なくとも4.90×10-9、少なくとも4.85×10-9、少なくとも4.80×10-9、少なくとも4.75×10-9、少なくとも4.70×10-9、少なくとも4.65×10-9、少なくとも4.60×10-9、少なくとも4.55×10-9、少なくとも4.5×10-9、少なくとも4.45×10-9、少なくとも4.40×10-9、少なくとも4.35×10-9、少なくとも4.30×10-9、少なくとも4.25×10-9、少なくとも4.20×10-9、少なくとも4.15×10-9、少なくとも4.10×10-9、少なくとも4.05×10-9、少なくとも4.0×10-9、少なくとも3.95×10-9、少なくとも3.90×10-9、少なくとも3.85×10-9、少なくとも3.80×10-9、少なくとも3.75×10-9、少なくとも3.70×10-9、少なくとも3.65×10-9、少なくとも3.60×10-9、少なくとも3.55×10-9、少なくとも3.5×10-9、少なくとも3.45×10-9、少なくとも3.40×10-9、少なくとも3.35×10-9、少なくとも3.30×10-9、少なくとも3.25×10-9、少なくとも3.20×10-9、少なくとも3.15×10-9、少なくとも3.10×10-9、少なくとも3.05×10-9、少なくとも3.0×10-9、少なくとも2.95×10-9、少なくとも2.90×10-9、少なくとも2.85×10-9、少なくとも2.80×10-9、少なくとも2.75×10-9、少なくとも2.70×10-9、少なくとも2.65×10-9、少なくとも2.60×10-9、少なくとも2.55×10-9、少なくとも2.5×10-9、少なくとも2.45×10-9、少なくとも2.40×10-9、少なくとも2.35×10-9、少なくとも2.30×10-9、少なくとも2.25×10-9、少なくとも2.20×10-9、少なくとも2.15×10-9、少なくとも2.10×10-9、少なくとも2.05×10-9、少なくとも2.0×10-9、少なくとも1.95×10-9、少なくとも1.90×10-9、少なくとも1.85×10-9、少なくとも1.80×10-9、少なくとも1.75×10-9、少なくとも1.70×10-9、少なくとも1.65×10-9、少なくとも1.60×10-9、少なくとも1.55×10-9、少なくとも1.5×10-9、少なくとも1.45×10-9、少なくとも1.40×10-9、少なくとも1.35×10-9、少なくとも1.30×10-9、少なくとも1.25×10-9、少なくとも1.20×10-9、少なくとも1.15×10-9、少なくとも1.10×10-9、少なくとも1.05×10-9、少なくとも1.0×10-9、少なくとも0.95×10-9、少なくとも0.90×10-9、少なくとも0.85×10-9、少なくとも0.80×10-9、少なくとも0.75×10-9、少なくとも0.70×10-9、少なくとも0.65×10-9、少なくとも0.60×10-9、少なくとも0.55×10-9、少なくとも0.5×10-9、少なくとも0.45×10-9、少なくとも0.40×10-9、少なくとも0.35×10-9、少なくとも0.30×10-9、少なくとも0.25×10-9、少なくとも0.20×10-9、少なくとも0.15×10-9、少なくとも0.10×10-9、少なくとも0.05×10-9、少なくとも9.5×10-10、少なくとも9.0×10-10、少なくとも8.5×10-10、少なくとも8.0×10-10、またはその間の任意の値のKを有する抗PD-L1抗体およびその機能的フラグメントを含んでもよい。例えば、本開示の方法は、8.2×10-10、2.31×10-09、8.24×10-09、3.25×10-09、3.46×10-09、1.91×10-09、7.97×10-08、2.41×10-08、9.5×10-10、または8.6×10-10のK値を有する抗PD-L1抗体およびその機能的フラグメントを含んでもよい。
【0084】
同様に、本開示の方法は、4.0×10-5μg/mlから9.5×10-7μg/mlの間またはその間の任意の値のIC50値を有する抗PD-L1抗体およびその機能的フラグメントを含んでもよい。例えば、本開示の方法は、9.19×10-7、4.156×10-5、9.985×10-7、1.037×10-6、または3.463×10-6のIC50値を有する抗PD-L1抗体およびその機能的フラグメントを含んでもよい。
【0085】
いくつかの実施形態において、免疫応答促進モダリティーは、抗GITR抗体、抗OX40抗体、抗CD137抗体、TLRアゴニスト、または抗CD40抗体を含んでもよい。
【0086】
いくつかの実施形態において、腫瘍標的化抗体は、抗CAIX抗体、抗BCMA、抗CS-1、抗CD20(例えば、ウブリツキシマブ)、抗Her2、抗PCSA、または抗FcRL5を含んでもよい。
【0087】
いくつかの実施形態において、小分子薬物は、腫瘍標的化小分子薬物、または、例えば、BTK阻害剤(例えば、イブルチニブ)、EGFR阻害剤(例えば、CK-101)、BET阻害剤(例えば、CK-103)、PARP阻害剤(例えば、オラパリブもしくはCK-102)、PI3Kデルタ阻害剤(例えば、TGR-1202)、またはBRAF阻害剤(例えば、ベムラフェニブ)を含んでもよい。
【0088】
特定の処置計画は、所与の患者の予後が改善するかどうかにより評価されてもよく、これは、処置計画が再発のリスクを低下させるか、または所与のがんの無増悪生存期間の可能性を増加させることを意味する。
【0089】
したがって、本開示の目的では、望ましい臨床結果を含む1つまたは複数の有益な結果または所望の結果が得られるなら、対象は処置される。例えば、有益な臨床結果または所望の臨床結果としては、以下のものの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されるものではない:疾患の結果として生じる1つまたは複数の症状を低減すること、疾患を患っている個体の生活の質を高めること、疾患を処置するのに必要とされる他の医薬の用量を低減すること、疾患の進行を遅延させること、および/または個体の生存期間を延長すること。
【0090】
さらに、方法の対象は一般にがん患者であるが、患者の年齢は限定されない。本開示の方法は、すべての年齢群およびコホートにわたりさまざまな再発および予後の転帰を有するがん、悪性疾患、またはがん細胞増殖を処置するのに有用である。したがって、いくつかの実施形態において、対象は小児対象であってもよいが、他の実施形態においては、対象は成人対象であってもよい。
【0091】
以下の実施例は、本発明を説明するために示される。ただし、本発明がこれらの実施例に記載されている特定の条件または詳細に限定されないことが理解されるべきである。
【実施例1】
【0092】
本開示の抗PD-L1抗体を用いたがん患者の処置
この実施例は、がんの処置に抗PD-L1抗体を使用する方法を説明する。
【0093】
がんを有することがわかっているか、またはその疑いがある患者に抗PD-L1抗体を含む治療有効量の医薬組成物を静脈内注射または皮下注射によって投与する。疼痛、虚弱などが挙げられるが、それらに限定されない、がんに関連する徴候および症状の存在および/または重症度に関して患者を評価し、1つまたは複数の徴候/症状が低減されるか、回復されるか、または排除されるまで患者を処置する。任意に、処置後のがんの進行を監視するために患者からサンプルを採取してもよい。任意に、徴候/症状が持続する場合および/またはがんが進行もしくは再発する場合、別の用量の医薬組成物を投与する。
【実施例2】
【0094】
最適化抗体の作製
PierceのEZ-Link Sulfo-NHS-Biotinylation Kitを使用して抗原をビオチン化した。ヤギ抗ヒトF(ab’)2カッパ-FITC(LC-FITC)、Extravidin-PE(EA-PE)およびストレプトアビジン-633(SA-633)を、それぞれSouthern Biotech、SigmaおよびMolecular Probesから入手した。ストレプトアビジンマイクロビーズおよびMACS LC分離カラムをMiltenyi Biotecから購入した。
【0095】
親和性成熟
ナイーブなクローンの結合最適化は、以下の3つの成熟方法を利用して行った:VH CDRH1/CDRH2の多様化、VH遺伝子のPCR突然変異誘発およびCDRH3に重点を置いたVH突然変異誘発。
【0096】
CTI-07系列
最適化の第1のサイクルは、当技術分野において公知の技術を使用した突然変異誘発PCRによってCTI-07VH遺伝子を多様化したライブラリーから改善された結合体を選択することに重点を置いた。ラウンド1:酵母菌の表面に完全長CTI-07 IgGのVH変異型を提示することによって選択を行った。これらのライブラリーを100nMのビオチン化PD-L1とともにインキュベーションした後、抗LC FITC試薬(IgG発現)およびSA-633(抗原結合の検出)によってIgG発現ならびにヨウ化プロピジウム染色によって生細胞を検出した。上位の抗原結合/IgG発現細胞をFACSによって選択した。ラウンド2:ラウンド1に従って選択を行ったが、抗原結合の識別のために10nMのビオチン化PD-L1を使用した。ラウンド3:ラウンド1および2に従ってライブラリー発現を行った。ラウンド3は、選択生成物から非特異的抗体を除去するために多特異性試薬(PSR)の使用を採用した(Y.Xuら、「Addressing Polyspecificity of Antibodies Selected from an in vitro Yeast Presentation System:a FACS-based, High-Throughput Selection and Analytical Tool.」PEDS 26.10(2013年):663~70)。これらのライブラリーを1:10希釈のビオチン化PSR試薬とともにインキュベーションし、抗LC FITC試薬(IgG発現)によってIgG発現を検出し、EA-PE(抗原結合の検出)によってPSR結合およびヨウ化プロピジウム染色によって生細胞を検出した。IgG陽性、PSR陰性、PI陰性細胞の上位1~2%を選別し、ラウンド4に持ち越した。ラウンド4:ラウンド2に従って選択を行ったが、抗原結合の識別のために1nMのビオチン化PD-L1を使用した。上位のクローンを播き、固有のIgG配列を決定するために配列決定を行った。固有のIgG配列を抗体作製、精製および特徴づけのために提示した。
【0097】
最適化の第2のサイクルは、CDRH3内の突然変異誘発率を増加させるために、変性したCDRH3オリゴも利用しながら突然変異誘発PCRによってVH遺伝子を多様化したライブラリーから改善された結合体を選択することに焦点を置いた。この増幅技術は、当技術分野において周知の技術を使用して実施した。ラウンド1:酵母菌の表面に完全長親IgGのVH変異型を提示することによって選択を行った。これらのライブラリーを10nMのビオチン化PD-L1とともにインキュベーションした後、抗LC FITC試薬(IgG発現)およびSA-633(抗原結合の検出)によってIgG発現ならびにヨウ化プロピジウム染色によって生細胞を検出した。上位の抗原結合/IgG発現細胞をFACSによって選択した。ラウンド2:ラウンド1に従って選択を行ったが、抗原結合の識別のために2nMのビオチン化PD-L1を使用した。上位のクローンを播き、固有のIgG配列を決定するために配列決定を行った。固有のIgG配列を抗体作製、精製および特徴づけのために提示した。
【0098】
CTI-09系列
CTI-09最適化は、CDRH1およびCDRH2の多様化の使用を採用した:CTI-09のCDRH3をPCRによって増幅した後、1×10の多様性のCDRH1およびCDRH2変異体を含む予め作製したベクターライブラリーに再結合させた。ラウンド1:酵母菌の表面に完全長CTI-09 IgGのVH変異型を提示することによって選択を行った。これらのライブラリーを100nMのビオチン化PD-L1とともにインキュベーションした。Miltenyi MACSシステムによる磁気分離によって抗原陽性細胞を選択した。要するに、b-PD-L1とともにインキュベーションしたライブラリーを、ストレプトアビジン磁気ビーズとともにインキュベーションした。酵母菌/ビーズ複合体がMACS LSカラムにおいて捕捉され、非標識細胞は廃棄物にまで通過した。b-PD-L1結合細胞を、その後、選択プロセスのラウンド2のための増殖用培地に溶出した。ラウンド2:酵母菌の表面に完全長CTI-07 IgGのVH変異型を提示することによって選択を行った。これらのライブラリーを20nMのビオチン化PD-L1とともにインキュベーションした後、抗LC FITC試薬(IgG発現)およびSA-633(抗原結合の検出)によってIgG発現ならびにヨウ化プロピジウム染色によって生細胞を検出した。上位の抗原結合/IgG発現細胞をFACSによって選択した。ラウンド3:ラウンド1および2に従ってライブラリーの発現を行った。ラウンド3は、選択生成物から非特異的抗体を除去するために多特異性試薬(PSR)の使用を採用した(Y.Xuら、「Addressing Polyspecificity of Antibodies Selected from an in vitro Yeast Presentation System:a FACS-based, High-Throughput Selection and Analytical Tool.」PEDS 26.10(2013年):663~70)。これらのライブラリーを1:10希釈のビオチン化PSR試薬とともにインキュベーションし、抗LC FITC試薬(IgG発現)によってIgG発現を検出し、EA-PE(抗原結合の検出)によってPSR結合およびヨウ化プロピジウム染色によって生細胞を検出した。IgG陽性、PSR陰性、PI陰性細胞の上位1~2%を選別し、ラウンド4に持ち越した。ラウンド4:誘導されたラウンド3の生成物を20nMのb-PD-L1とともにインキュベーションした。細胞をペレット状にし、残ったあらゆるb-PD-L1を除去するために洗浄した。この細胞ペレットを1uMの非標識PD-L1に再懸濁させた。長い期間b-PD-L1抗原を保持する能力によって上位の抗原結合体を識別した。上位のクローンを播き、固有のIgG配列を決定するために配列決定を行った。固有のIgG配列を抗体作製、精製および特徴づけのために提示した。
【0099】
抗体作製および精製
酵母菌クローンを飽和状態まで成長させた後、振盪しながら30℃で48時間誘導した。誘導後、酵母菌細胞をペレット状にし、その上清を精製のために回収した。プロテインAカラムを使用してIgGを精製し、酢酸、pH2.0で溶出した。Fabフラグメントをパパイン消化によって生成し、KappaSelect(GE Healthcare LifeSciences)により精製した。
【実施例3】
【0100】
PD-L1抗体を用いた競合的FACS
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を、PD-L1発現ベクターによりトランスフェクトし、続いてタンパク質の発現(PD-L1+細胞)に関して選択した。そのCHO細胞を1μg/mlのビオチン標識PD-1とともに1時間インキュベーションした。
【0101】
ビオチン標識PD-1とのインキュベーション後、抗PD-L1抗体を10μm/mlから開始して4倍希釈で上清に添加し、1時間インキュベーションした。その細胞を洗浄した後、ストレプトアビジン-PEと接触させた。ストレプトアビジン-PE染色をフローサイトメトリーによって分析して、抗PD-L1抗体によるPD-1結合の阻害パーセントを求めた。
【0102】
【表3】
【0103】
(配列番号73によって表されるVHドメインおよび配列番号74によって表されるVLドメインによって定義される)臨床対照mAb、CTI-09、CTI-48、CTI-50、およびCTI-58を含む、いくつかの抗体のIC50値を算出し、それらは、表3で見出すことができる。図1は、この研究の結果を示す。
【実施例4】
【0104】
抗体結合動態、特異性、および選択性
抗体結合動態を評価するための親和性測定値を求める際にOctetデータ解析を使用した。2mLの充填サンプルを、動態バッファー中において20ug/mL(デフォルト濃度)で調製した。黒い96ウェルプレートに少なくとも200uLずつ等分する。サンプルの濃度範囲は、(利用可能であれば)相互作用の推定されるKに基づくものとした。一般に、段階希釈は、0.1Kから10Kの範囲であった。サンプル希釈液として動態バッファーを使用して、7段階希釈をサンプルカラムに行った。サンプルカラムの最後のウェルを、後でデータ解析において参照ウェルとして使用し、これは動態バッファーのみを含んでいなければならない。
【0105】
バイオセンサーを動態バッファー(1×PBS、0.1%BSA、0.02%Tween20、0.05%アジ化ナトリウム)中、室温で10分間水和させた。
【0106】
【表4】
【0107】
1つの例示的な抗PD-L1抗体、CTI-48に関する動態値を表4に見出すことができ、実験結果を図2に示す。
【実施例5】
【0108】
抗体結合親和性
ForteBio親和性測定を、概して以前に記載されたとおり実施した(例えば、Estepら、2013年を参照)。簡単にいえば、ForteBio親和性測定は、IgGをオンラインでAHQセンサーにローディングすることによって実施した。センサーをオフラインでアッセイバッファー中において30分間平衡化した後、ベースライン確立のためにオンラインで60秒間監視した。ローディングしたIgGを伴うセンサーを100nMの抗原に5分間曝露した後、それを解離速度測定のために5分間アッセイバッファーに移した。1:1結合モデルを使用して動態を分析した。
【0109】
【表5】
【0110】
いくつかの例示的な抗体に関する結合値を表5に示す。
【実施例6】
【0111】
抗PD-L1抗体のADCC活性
本開示の抗PD-L1抗体の抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を決定するためにレポーターバイオアッセイを実施した。アッセイには、SUDHL-1リンパ腫細胞およびドナーPBMCを利用した。さまざまな抗体を1または3ug/mlの濃度で試験した。
【0112】
図3において例示的な抗PD-L1抗体CTI-48に関して示しているこの研究の結果は、本開示の抗体との4時間のインキュベーション後の細胞傷害性パーセントによって表されている。
【実施例7】
【0113】
免疫遮断レポーターアッセイ
96ウェルプレートにおいてPD1/PD-L1遮断アッセイキット(Promega、CS187111)を使用して免疫遮断アッセイを実施した。このアッセイにおいて3つの主要な事象が生じる。事象1:操作されたジャーカットPD-1エフェクター細胞およびaAPC(人工的な抗原提示細胞)PD-L1細胞がTCR/TCR活性化因子相互作用により結合すると、TCRが媒介するNFAT活性化が生じる。事象2:遮断抗体が存在しない場合のPD-1:PD-L1のライゲーションによるNFATシグナルの阻害。事象3:抗PD-1または抗PD-L1遮断抗体の添加によるNFATシグナルの回復。
【0114】
アッセイの前日に、2.5mLのFBSを22.5mLのF-12に添加することによって、25mLの細胞回復培地(10% FBS/F-12)をThaw-and-Use PD-L1細胞用の50mLのコニカルチューブ中に作製した。Thaw-and-Use PD-L1細胞(CS187103)の1つのバイアルを冷凍庫から取り出し、ドライアイス上の台に移した。細胞がちょうど解凍されるまで(約3~4分間)、37℃の水浴においてバイアルを解凍した。細胞懸濁液を、ピペットを上下することによってバイアル中で穏やかに混合し、すべての細胞(0.5mL)を14.5mLの細胞回復培地を入れた「PD-L1細胞」のラベルを貼ったチューブに移し、続いて穏やかに逆さまにした。細胞懸濁液を滅菌した試薬リザーバーに移した。すぐに、マルチチャネルピペットを使用して、アッセイプレートに対して外側のウェルに1ウェル当たり100μLの細胞回復培地を添加した。そのプレートをCO2インキュベーター中、37℃で一晩インキュベーションした。
【0115】
アッセイの日に、新しいアッセイバッファー(RPMI 1640+1%FBS)を調製し、2×最終濃度の試験抗体のそれぞれに対して7段階3倍段階希釈をアッセイバッファーにおいて行った。95μLの培地をアッセイプレートのすべてのウェルから除去し、40μLの試験抗体の段階希釈液をPD-L1細胞を入れたウェルに添加した。1ウェル当たり80μLのアッセイバッファーを各プレートに対して外側のウェルに添加した。
【0116】
Thaw-and-Use PD-1エフェクター細胞(CS187105)をアッセイプレートに移し、そのプレートをCO2インキュベーター中において37℃で6時間インキュベーションした。6時間の誘導後、そのアッセイプレートをCO2インキュベーターから取り出し、周囲温度で5~10分間平衡化させた。80μLのBio-Glo(商標)試薬をすべての試験ウェルに添加し、そのプレートを周囲温度でさらに5~10分間インキュベーションした。0.5秒のインテグレーションでPOLARstar Omegaプレートリーダーにおいて発光を測定した。
【0117】
以下の抗体を10μg/mL、3.33μg/mL、1.11μg/mL、0.37μg/mL、0.123μg/mL、0.041μg/mL、および0.014μg/mLの最終濃度で試験した:CTI-2、臨床対照mAb、CTI-09、CTI-48、CTI-50、CTI-07、およびCTI-58。
【0118】
臨床対照mAb、CTI-48、およびCTI-49を含む、例示的な抗体に関する結果を下記表6に示す。
【0119】
【表6】
【実施例8】
【0120】
PD-L1/B7.1阻害剤スクリーニングアッセイ
本開示の抗体の相互作用およびPD-L1/B7.1相互作用をスクリーニングし、プロファイルするために市販のアッセイキットを使用した。キットは、100の結合反応用のビオチン標識B7-1(CD80)、精製PD-L1、ストレプトアビジン標識HRP、およびアッセイバッファーを伴う、96ウェル形式で売られている。ストレプトアビジン-HRPによってビオチン標識B7.1を検出するためにキットを使用した。
【0121】
まず、PD-L1で96ウェルプレートをコーティングした。次に、本開示の抗体、陽性対照、基質対照、またはブランクのいずれか1つをそれぞれのウェルに添加し、インキュベーションした後にB7.1-ビオチンを添加した。最後に、そのプレートをストレプトアビジン-HRPで処理し、続いてHRP基質を添加して、化学発光をもたらし、その発光は、その後、化学発光リーダーを使用して測定することができる。
【0122】
以下の抗体をPD-L1とB7.1の結合に対するその阻害効果に関して30μg/mL、10μg/mL、3.33μg/mL、1.11μg/mL、0.37μg/mL、および0.123μg/mLの濃度で試験した:CTI-1、CTI-2、CTI-33、CTI-48、およびCTI-55。
【0123】
例示的な結果は、本開示の抗体の結合阻害に関するIC50が0.1816から0.5056μg/mLの間に及んでいることを示す。例えば、CTI-48のIC50は、0.1816μg/mLであると算出された。CTI-48と臨床対照mAbの活性の比較を図5に示す。
【実施例9】
【0124】
抗体のIFN-γ産生に対する効果
IFN-γ産生に対する本開示の抗体の効果を判断するために、混合リンパ球反応(MLR)培養物に抗体を与えた。10μg/mLの濃度の抗体とのMLR培養の4日後にIFN-γの産生における倍率変化を求めた。例示的な結果は、適切なアイソタイプ対照(hIgG1)のものを含む。図6に示したとおり、CTI-48は臨床対照mAbと同等の応答を誘導し、試験抗体の多くが、対照レベルに対してCTI-33およびCTI-55によるおおよそ10倍の増加を含む、IFN-γ産生の統計学的に有意な増加を引き出した。
【0125】
本明細書において言及されるすべての特許および刊行物は、本開示が属する分野の当業者のレベルを示す。すべての特許および刊行物は、それぞれ個々の刊行物が参照により組み込まれることを具体的におよび個別に示されたのと同程度まで参照によって本明細書に組み込まれる。
【0126】
さらに、当業者は、目的を果たすためならびに言及される目的および利点ならびにそれに固有のものを得るために本開示が十分に適合されることを容易に理解する。当業者ならその改変およびその他の使用を思いつくであろう。これらの改変は、本開示の趣旨の範囲内に包含され、本開示の非限定的実施形態を記載する特許請求の範囲によって定義される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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