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  • 特許-化粧料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20220928BHJP
   A61K 8/03 20060101ALI20220928BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 8/20 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/03
A61Q19/00
A61K8/20
A61K8/73
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019015560
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020121953
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】小谷 康祐
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-088569(JP,A)
【文献】特開平01-002620(JP,A)
【文献】Guinot, France,Face Serum,Mintel GNPD [online],2017年04月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#4775741, [検索日:2022.4.11], 製品詳細, 製品情報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油層と水層が分離している層を有する化粧料であって
(A)ブチレングリコール脂肪酸エステルを化粧料全量に対して0.01~40質量%
(B)無機塩類を化粧料全量に対して0.03~1質量%
(C)水
を含有する化粧料。
【請求項2】
(A)ブチレングリコール脂肪酸エステルがジイソノナン酸ブチレングリコール、ラウリン酸ブチレングリコール、セスキイソステアリン酸ブチレングリコール及びステアリン酸ブチレングリコールから選択される1以上の物質である請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
さらに(A)以外の(D)油剤を含有し、(A)ブチレングリコール脂肪酸エステルと(D)油剤の合計量が化粧料当たり0.01~40質量%である請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】
(E)水溶性増粘剤を含有する請求項1~3のいずれかに記載の化粧料。
【請求項5】
(E)水溶性増粘剤がセルロースガム、カルボキシメチルデキストランナトリウム、キサンタンガム及びタマリンドガムから選択される1以上の物質である請求項4に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油層と水層分離型の化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
油層と水層が二層や多層に分離した化粧料が市販されている。このような化粧料は、通常、使用時に軽く振盪することで、油層と水層を乳化混合させて、使用時に均一な化粧料として肌に塗布する。この分離型の化粧料には、界面活性剤を配合したものと、配合しないものがあるが、二層とも透明とするか、一方を乳白濁とするかなど、求める外観性状により適宜設計されている。界面活性剤を実質的に配合しない場合には、界面活性剤に由来する皮膚刺激感がなく、安全性の高い化粧料となることが知られている(特許文献1、2)。また界面活性剤を配合した場合であっても、比較的少量であることが多く安全性が高い化粧料となる。いずれも使用時に振盪して均一にしてから肌に塗布するので、肌に対して乳液に近い保湿効果とみずみずしい使用感を得られる化粧料として普及している。
さらに、保存状態(静置状態)では分離しているので、水溶性薬効成分と油溶性の薬効成分を安定的に配合することができるメリットがある。
例えば、二層化粧料として両層とも透明とする場合では、水層と油層がそれぞれ透明な美しい外観になること、くっきりとした界面になることが設計品質として求められる。
【0003】
油層と水層に分離した保存状態から使用するために振盪するが、この時の乳化させやすさと、振盪後の層の分離しやすさとは、トレードオフの関係にある。
振盪して乳化させやすい場合は、乳化後は二層に分離しにくく、界面が不明瞭となったり、両層の透明性がそれぞれ低下したりして、美観が損ねられがちであった。一方、振盪後に油層と水層を分離させやすい場合は、振盪による混合乳化がしにくかったり、均一な化粧料になったとしても分離速度が速すぎて、使用時に均一な化粧料ではなくなっていたりして、問題があった。
一方、化粧料としての使用感や使用性を重視して、化粧料の粘性を上げることがあるが、この場合はさらに上記の問題を解決させることが難しくなった。つまり、粘性があることにより、より一層、油層と水層の分離能が低下し、両層あるいは一方の外観が、にごっていると認識されて、著しく美観を低下させることになった。
さらに、粘性をつけた化粧料では、分離しきれなかった油層の一部が油滴として容器壁へ付着し、この油滴による容器の汚れも美観の低下をもたらす要因として問題視されてきた。
【0004】
このような中、様々なタイプの多層化粧料の提案がなされている。特許文献3には、(a)25℃における粘度が30~400mm/sである非揮発性炭化水素油、(b)25℃における粘度が30~400mm/sであるシリコーン油、(c)水、(d)イソステアリン酸とポリグリセリンのエステルからなる3層の化粧料が記載されている。この多層化粧料は、油層と水層の分離速度のコントロールと、油相と水相の間にシリコーン油を挟むことで極性油を油相に含有させても水相と直接触れず白濁層を生じることがない美しい層状の化粧料となる技術である。しかし、水相の粘度が高い場合の各層の分離性については、何も記載されていない。
【0005】
特許文献4には、HLBが2~7の非イオン界面活性剤と、油性成分と、水を含有する、油層、水層、乳化層で構成される3層構造の化粧料が提案されている。透明な油層と水層の間に、不透明な乳化層をはさむ構成となっている。使用時に浸透することで全体が白濁した乳化液となるが、いずれかの層の粘度を高くすると、静置しても乳化層、油層、水層にきれいに分離せず、水層及び油層が白濁してしまう恐れがある。
【0006】
特許文献5には、天然油を少なくとも5%含む油層と、多糖及びヒアルロン酸ナトリウムからなる群から選択されるポリマーを0.01%~0.25%含む水層からなる液状多層化粧組成物が記載されている。当該化粧料は、界面活性剤を含有せず、撹拌すると乳化可能であり、単回塗布中に製品が分離することなく、かつ油層と水層との間に乳濁層が形成されることなく、容易に分離する特性を有している。しかし、当該発明を実施すると油滴が容器壁に付着し、化粧品として重要な品質である外観の美しさが達成できないという問題があった。さらに、化粧料の粘性を高くしたときに油層と水層の分離性に問題が生じる恐れがあった。
【0007】
特許文献6には、特定のジグリセリル基を有する非イオン界面活性剤、特定のリン酸基を有するアニオン界面活性剤、水溶性塩又は有機酸、液体油、及び水を特定の割合で配合することによって、振盪により容易に均一に混合して白濁のローション状になり、静置すると速やかに分離する多層化粧料が記載されている。なかでも、水を70~95質量%含み、(A)ジグリセリンモノパルミチン酸エステル、ジグリセリンモノラウリン酸エステル、ジグリセリンモノラウリルエーテル、ジグリセリンモノミリスチン酸エステル及びジグリセリンモノイソステアリン酸エステルから選ばれる、ジグリセリル基を有する非イオン界面活性剤 0.05~1質量%、(B)炭素数10~18のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩又は分岐アルキルリン酸塩であるリン酸基を有するアニオン界面活性剤 0.01~1質量%、(C)水溶性塩又は有機酸 0.01~3質量%、(D)液体油 1~10質量%を含有する組成物は、振盪によって白濁したローション状の化粧料が、静置時に透明な水層と油層に分離することが記載されている。
しかしながら、特許文献6に開示された化粧料は、100mPa・s未満の低粘度を示す溶液であり、100mPa・sを超える高粘度になった場合の水層と油層の分離性については何も記載されていない。なお、特に水層が高粘度になると水相と油層の分離性が低下することは,当業者間では周知であり、解決すべき課題として認識されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-203764号公報
【文献】特開2017-088569号公報
【文献】特許第6262584号公報
【文献】特開2002-003339号公報
【文献】特表2018-510885号公報
【文献】特許第4045237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、透明な油層と、透明な水層を有する分離型の層状化粧料であって、さらに高粘度の水層を構成要素とする化粧料とした場合であっても、振盪による乳化状態から、速やかに油層と水層が分離する化粧料を提供することを課題とする。また本発明は、透明な油層と水層を有する層状化粧料に発生する化粧料容器壁への油滴の付着による美観の低下が抑制された化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
(1)少なくとも油層と水層が分離している層を有する化粧料であって
(A)ブチレングリコール脂肪酸エステル
(B)無機塩類
(C)水
を含有する化粧料。
(2)(A)ブチレングリコール脂肪酸エステルがジイソノナン酸ブチレングリコール、ラウリン酸ブチレングリコール、セスキイソステアリン酸ブチレングリコール及びステアリン酸ブチレングリコールから選択される1以上の物質である(1)に記載の化粧料。
(3)さらに(A)以外の(D)油剤を含有し、(A)ブチレングリコール脂肪酸エステルと(D)油剤の合計量が化粧料当たり0.002~40質量%である(1)又は(2)に記載の化粧料。
(4)(E)水溶性増粘剤を含有する(1)~(3)のいずれかに記載の化粧料。
(5)(E)水溶性増粘剤がセルロースガム、カルボキシメチルデキストランナトリウム、キサンタンガム及びタマリンドガムから選択される1以上の物質である(4)に記載の化粧料。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、透明な油層と、透明な水層を有する分離型の層状化粧料が得られる。さらに、水層に水溶性増粘剤を配合して粘性を有する化粧料とした場合においても、振盪による乳化状態から、速やかに油層と水層が分離する層状化粧料が提供される。また本発明の化粧料は、使用後も油層と水層の透明性と、界面の明確さが保たれ、容器壁に油滴が付着しないため、使用後の外観性状が美しい状態が維持される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の層状化粧料を構成している水層と油層の透明性を評価する基準の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、透明な油層と透明な水層を有する層状化粧料に関する。
本願明細書でいう化粧料の「透明」とは、直径4cmのPET容器に充填した化粧料層を通して、18ポイントの文字を判読できる場合を「透明」と定義する。
【0014】
本発明の構成成分(配合成分)について説明する。
(A)成分:ブチレングリコール脂肪酸エステル
本発明の(A)成分であるブチレングリコール脂肪酸エステルは、ブチレングリコールと脂肪酸とのエステル結合反応により得られる化合物である。
(A)成分を構成する脂肪酸としては、炭素数8~22の飽和、不飽和のいずれの脂肪酸でも良く、直鎖状、分岐状のいずれでもかまわず、これらの混合物でも良い。これらの脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸、セスキイソステアリン酸、イソノナン酸、ジイソノナン酸、などが好ましい脂肪酸として例示できる。なおブチレングリコール脂肪酸エステルのエステル化度は特に限定されず、複数種のエステル化度の混合物でも良い。
【0015】
本発明の(A)成分であるブチレングリコール脂肪酸エステルの具体的化合物としては、ジイソノナン酸ブチレングリコール、ラウリン酸ブチレングリコール、セスキイソステアリン酸ブチレングリコール、ステアリン酸ブチレングリコールなどが挙げられる。中でも、1,3-ブチレングリコールとの脂肪酸エステルが好ましく、ジイソノナン酸ブチレングリコール、ラウリン酸ブチレングリコール、セスキイソステアリン酸ブチレングリコール、ステアリン酸ブチレングリコールが特に好ましい。
上記のブチレングリコール脂肪酸エステルは、いずれも化粧品用や医薬品用或いは食品用原料として市販されており容易に入手可能である。
【0016】
(A)成分であるブチレングリコール脂肪酸エステルの配合量は、特に限定されないが、化粧料全量に対して0.001~40質量%、好ましくは0.005~10質量%、さらに好ましくは0.01~10質量%であると好ましい。(A)成分であるブチレングリコール脂肪酸エステルは、単独で油層を形成してよい。使用感のバリエーション化を考慮すると、本発明の化粧料には(A)成分であるブチレングリコール脂肪酸エステルとは別に、さらにブチレングリコール脂肪酸エステル以外の(D)油剤を配合すると好ましい。(A)成分とは別に、さらに(D)油剤を配合する場合には、(A)ブチレングリコール脂肪酸エステルとブチレングリコール脂肪酸エステル以外の(D)油剤の合計量は化粧料当たり0.002~40質量%となることが好ましく、このうち(A)成分のブチレングリコール脂肪酸エステルは0.001~0.1質量%の配合量で、各層の良好な分離効果を十分に発揮する。(A)成分であるブチレングリコール脂肪酸エステルを、油層の一部として配合する(D)油剤に溶解して配合すると、(D)油剤のみでは十分な透明性、分離性を確保できない場合であっても(A)ブチレングリコール脂肪酸エステルの配合により油層と水層の分離状態が良好になる。
【0017】
(B)成分:無機塩類
本発明には、(B)成分として無機塩類を配合する。無機塩類は、化粧料や食品に配合可能な物質であって、水に可溶性であれば特に限定されない。無機塩類として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウムなどの塩酸塩及び硫酸塩などが挙げられる。塩化ナトリウムが好ましい。
本発明の化粧料には、無機塩類を化粧料全量に対して0.005~5質量%、好ましくは0.01~1質量%、特に好ましくは0.03~0.7質量%配合すると好ましい。無機塩類は、水層に溶解して油層と水層の分離状態を良好にする。
【0018】
(C)成分:水
本発明の化粧料には、水層を構成する必須成分として水を含有する。化粧料全量を100とするとき、例えば(A):ブチレングリコール脂肪酸エステル、(B):無機塩類、(D):油剤、(E)水溶性増粘剤、任意成分としてジプロピレンリコールを配合する場合は、これらの合計量(A+B+D+E+任意成分(ジプロピレングリコール))以外の残余量を水として配合する。水は、本発明の化粧料全量当たり、5~90質量%含有すると好ましい。
【0019】
(D)成分:油剤
本発明の化粧料においては、前述のとおり、(A)成分であるブチレングリコール脂肪酸エステルは、単独で油層を形成できる。しかしながら使用感のバリエーション化を考慮すると、本発明の化粧料には(A)成分であるブチレングリコール脂肪酸エステルとは別に、さらにブチレングリコール脂肪酸エステル以外の(D)成分:油剤を配合すると好ましい。(A)成分:ブチレングリコール脂肪酸エステルに加えて、さらに(D)成分:油剤を配合して、油層を構成すると好ましい。本発明に用いる(D)成分:油剤としては、化粧品、医薬品、医薬部外品に用いられる物質であれば特に制限されない。(D)成分:油剤としては、常温で液状の油剤が好ましい。液状の油剤としては、植物油、エステル油、炭化水素油、シリコーン油などが例示できる。具体的には、オリーブ油・アボガド油・月見草油・ホホバ油、スクワラン、トリエチルヘキサノイン、流動パラフィン、ジメチルポリシロキサン・メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン・デカメチルシクロペンタシロキサン・シクロペンタシロキサンなどが挙げられる。(D)成分:油剤は一種又は二種以上を組み合わせて用いることが出来る。本発明には、常温でペースト状や半固形状又は固形状の油剤であっても、他に配合する油剤に相溶して液状となれば配合しても構わない。例えば常温でペースト状・半固形状の油剤としては、アミノ酸系油剤が例示できる。味の素株式会社製からはペースト状油として「エルデュウ(登録商標)」が市販されており、エルデュウCL-301:N-ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、エルデュウCL-202: N-ラウロイルグルタミン酸ジ( コレステリル/オクチルドデシル)、エルデュウPS-203: N-ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、エルデュウPS-304: N-ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、エルデュウPS-306: N-ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、エルデュウAPS-307:ミリストイルメチルアラニン(フィトステリル/デシルテトラデシル)が好ましく例示できる 。固形状油剤としては、パーム油が例示でき、イエナ商事株式会社から、カロチーノ・ピュアオレイン(パーム油)が市販されている。
本発明において、(A):ブチレングリコール脂肪酸エステル以外に(D):油剤を配合する場合は、(A):ブチレングリコール脂肪酸エステルとの合計量として化粧料全量に対して0.002~40質量%となるように配合すると好ましい。
【0020】
(E)成分:水溶性増粘剤
本発明の化粧料は、使用時に振盪して油層と水層を混合して乳液状にして化粧料とする。この時、より好ましい使用感とするため、さらに水溶性増粘剤を配合することができる。(E):水溶性増粘剤としては、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カラギナン、タマリンドガム、ジェランガム、セルロースガム、カルボキシメチルデキストラン塩、グアガム、スクレロチウムガム、シロキクラゲ多糖体、スイゼンジノリ多糖体、寒天、ペクチン、プルランなどの増粘性多糖類、コラーゲン、カゼイン、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー(CARBOPOL等)等のビニル系高分子、ベントナイト等を挙げることができる。なかでも増粘性多糖類であるキサンタンガム、ローカストビーンガム、カラギナン、タマリンドガム、ジェランガム、セルロースガム、カルボキシメチルデキストラン塩、グアガム、スクレロチウムガム、シロキクラゲ多糖体、スイゼンジノリ多糖体、寒天、ペクチン、プルランが好ましく、セルロースガム、カルボキシメチルデキストラン塩、キサンタンガム、タマリンドガムが特に好ましい。
【0021】
本発明の化粧料は、(E):水溶性増粘剤を配合する場合、水層の粘度が、B型粘度計を用いて25℃の温度管理下、条件(1号ローター、12又は30rpm、30秒)で測定するとき、100~350 mPa・sにすると好ましい。100mpa・s未満であると、水溶性高分子を配合することで期待される使用感の改善効果が得られ難くなる恐れがある。350 mPa・sを超えると、使用後に濁りがない状態にまで2層を分離させるのにかかる時間が24時間を超える恐れがある。水溶性増粘剤を配合する場合、その配合量は、増粘剤の種類及び化粧料の水層容量に依存するため、適宜設定すればよいが、使用感の改善効果も考慮すると化粧料全量に対して水溶性増粘剤を0.01~2質量%、好ましくは0.05~1.5質量%、特に好ましくは0.1~1質量%配合すると好ましい。
【0022】
(任意成分)
本発明の化粧料には、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、通常化粧料に配合される成分を任意に配合することができる。例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ソルビトール、マルチトールなどの多価アルコール類、防腐剤、殺菌剤、紫外線吸収剤、キレート剤、酸化防止剤、染料・顔料等の色剤、香料、pH調整剤、ヒアルロン酸ナトリウム、ビタミン類などの薬剤などを挙げることができる。
【0023】
本発明の化粧料は、少なくとも透明な油層部分、透明な水層部分を有し、その界面が明瞭な2層を有する化粧料となる。
【0024】
本発明の化粧料は、水層溶液と油層溶液を常法により調製し、調製した水層溶液と油層溶液を容器に充填し、油層と水層が分離した化粧料を得る。
【実施例
【0025】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明する。
なお以下の実施例、比較例において示す配合量は、いずれも質量%である。
<実施例1、比較例1、2>
(A)成分:ブチレングリコール脂肪酸エステルとしてジイソノナン酸ブチレングリコール、(B)成分:無機塩類として塩化ナトリウム、(C)成分:水として精製水、(D)成分:油剤としてスクワラン及びトリエチルヘキサノインを配合した2層化粧料(実施例1)を調製した。比較例として(A)成分に替えてブチレングリコール脂肪酸エステルに類似の特性を有するジイソステアリン酸ポリグリセリル-2、ジイソステアリン酸ポリグリセリルを用いた2層化粧料(比較例1、2)を調製した。組成を表1に示す。水層の粘度、得られた化粧料の評価は次のとおり行った。
[粘度]
水層の粘度は、B型粘度計を用いて25℃の温度管理下、条件(1号ローター、12又は30rpm、30秒)で測定した。
なお、実施例1、比較例1及び2は、E成分:水溶性増粘剤を含まない組成であり、その水層粘度はいずれもB型粘度計の測定限界以下であったため、表1の水層の粘度の欄の記載は「-」と表記した。
[評価]
化粧料の評価は、各化粧料を直径4cmの蓋付PET容器に充填し、充分に振盪して界面を消失させた後、容器壁面への油滴の付着、水層と油層の透明性を目視評価した。評価は、次のとおり行った。
容器壁面の油滴の付着:油滴の壁面への付着状態を、付着がない場合を「〇」評価、付着がある場合を「×」評価とした。
4時間後の水層の濁りの有無:4時間静置して、水層を通して18ポイントの活字が明確に読み取れる場合(見える)を「〇」評価、明確に読み取れない場合(見えない)を「×」評価とした。
24時間後の油層の濁りの有無:24時間静置して、油層を通して18ポイントの活字が明確に読み取れる場合(見える)を「〇」評価、明確に読み取れない場合(見えない)を「×」評価とした。
前記評価項目のいずれか一つでも×評価の場合は、分離性が不良であると判断した。
評価基準を図1に示す。
各化粧料の評価結果を表1の下段に示した。
【0026】
【表1】
【0027】
表1に示すとおり、本発明が必須とする(A:ブチレングリコール脂肪酸エステル+B:無機塩類+C:水)に、D:油剤を含む実施例1の組成は、振盪して混合後に静置し、一定時間経過後に目視評価したところ水層、油層ともに濁りがなく○評価であった。そして水層と油層の分離が極めて明瞭であり、また容器壁面への油滴の付着もなく、分離性が良好であると判断した。しかし本発明の(A)成分:ブチレングリコール脂肪酸エステルを欠く比較例1及び2の組成(B+C+D)は、共に24時間経過後の油層の透明性が十分に得られず(×評価)、分離性が不良と判断した。実施例1及び比較例1、2の化粧料は、振盪する前の油層はいずれも濁りがなく透明であったことから、振盪して使用し、使用後は静置して次の使用時(一般的な使用方法では4~24時間後)には良好に分離し美しい外観を呈していることが重要な品質となる分離型の化粧料とするためには、(A):ブチレングリコール脂肪酸エステルの配合が重要であることが分かった。
次に、本発明の構成(A+B+C)に(D)油剤を含み、さらに(E):水溶性増粘剤を配合した組成について同様に試験した。油層と水層が分離した層状の化粧料において、水層に水溶性増粘剤を配合すると使用感が良好となるが、粘度が高くなるため振盪後の乳化状態から良好な分離状態に戻すことが難しくなる。
【0028】
<実施例2~8、比較例3~10>
(A)成分:ブチレングリコール脂肪酸エステルとしてジイソノナン酸ブチレングリコール又はラウリン酸ブチレングリコール、(B)成分:無機塩類として塩化ナトリウム、(C)成分:水として精製水、(D)成分:油剤としてスクワラン及びトリエチルヘキサノイン、(E)成分:水溶性増粘剤としてセルロースガム、カルボキシメチルデキストランNa、キサンタンガム、タマリンドガムのいずれかを配合した実施例2~8の2層化粧料(A+B+C+D+E)を調製した。実施例2~8の2層化粧料は、水層の粘度を100~350mPa・s(B型粘度計で25℃測定時)に調整した。
比較例として(A)成分:ブチレングリコール脂肪酸エステルを含有しない組成(B+C+D+E)の2層化粧料(水層粘度は100~350mPa・s)を調製した(比較例3~10)。各化粧料の組成を表2に示す。
化粧料の評価は、実施例1と同様にして評価した。
評価結果を表2の実施例、比較例の各組成の下段に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
表2に示すとおり、実施例2~8の各化粧料は、使用後の静置により、油層と水層が其々濁りがない文字が見えるレベルの透明(○評価)となった。そして油滴の容器への付着もなかった。そして、いずれも優れた使用感であった。一方(A)成分:ブチレングリコール脂肪酸エステルを配合しない比較例3~10の化粧料は、いずれも振盪混合後、静置により油層は濁りがない文字が見えるレベルの透明(○評価)となったが、容器壁へ油滴が付着しており×評価となった。そして水層の濁り(透明性)も×評価であった。
油層(D)と水層(B+C)を有する層状化粧料において、さらに(E):水溶性増粘剤を配合した組成とすることで、使用感は良好となるが、水層の粘度が高くなるため振盪後の乳化状態から良好な分離状態にすることが難しくなる。しかし(A)成分:ブチレングリコール脂肪酸エステルを配合することで、(E):水溶性増粘剤を配合した組成であっても、良好な分離状態(水層と油層が共に濁らず、容器壁への油滴の付着がない)が得られることがわかった。
次にA成分の代替成分として脂肪酸エステル類を配合した試験を行った。
【0031】
<実施例9~10、比較例11~16>
(A)成分:ブチレングリコール脂肪酸エステルとしてステアリン酸ブチレングリコール又はセスキイソステアリン酸ブチレングリコール、(B)成分:無機塩類として塩化ナトリウム、(C)成分:水として精製水、(D)成分:油剤としてスクワラン及びトリエチルヘキサノイン、(E)成分:水溶性増粘剤としてセルロースガムを配合した実施例9及び10の2層化粧料を調製した。実施例9及び10の2層化粧料は、水層の粘度を100~350mPa・s(B型粘度計で25℃測定時)に調整した。
比較例として(A)成分の代替成分として、脂肪酸エステル類を配合した組成の比較例11~16の2層化粧料を調製した。各化粧料の組成を表3に示す。
化粧料の評価は、実施例1と同様にして評価した。
評価結果を表3の実施例、比較例の各組成の下段に示す。
【0032】
【表3】
【0033】
表3に示すとおり、実施例9及び実施例10の化粧料は、使用して静置後の評価で、良好な分離状態(水層と油層が共に濁らず、容器壁への油滴の付着がない)と評価され、好ましい2層化粧料であることが分かった。しかし比較例11~16は、使用して静置後の評価で、いずれも水層及び油層の濁りが観察された。特にPEG-60水添ヒマシ油を配合した比較例15、ステアリン酸ソルビタンを配合した比較例16は、振盪後の静置によっても2層化粧料の状態に回復せず乳化状態を保っていた。
このように(A)成分である、ブチレングリコール脂肪酸エステルを他の脂肪酸エステルに置換しても、求められる品質(良好な分離状態:水層と油層が共に濁らず、容器壁への油滴の付着がない)の2層化粧料が得られないことが明らかとなった。良好な分離状態(水層と油層が共に濁らず、容器壁への油滴の付着がない)を得るためには、(A)成分:ブチレングリコール脂肪酸エステルの配合が重要であることが分かった。
次に、(E)成分が配合された系において(D)成分:油剤が配合されていなくても、本発明の構成(A+B+C)をとることで好ましい分離型の化粧料が得られること、また、(D)成分:油剤の種類とその組み合わせによらずに本発明の効果が得られることを確認する試験を行った。
【0034】
<実施例11~18>
(A)成分:ブチレングリコール脂肪酸エステルとしてジイソノナン酸ブチレングリコールを0.01~10質量%、(B)成分:無機塩類として塩化ナトリウム、(D)成分:油剤としてスクワラン、トリエチルヘキサノイン、シクロペンタシロキサン、オリーブ果実油から組み合わせて2種配合し、さらに(E)成分:水溶性増粘剤としてセルロースガムを配合して、実施例11~16の2層化粧料を調製した(実施例11~16)。実施例17は(A)成分:ブチレングリコール脂肪酸エステル以外の油剤を含まない組成で2層化粧料を調製した。実施例18は、(D)成分:油剤として固形油(パーム油)を含む組成である。実施例11~18の2層化粧料は、水層の粘度を100~350mPa・s(B型粘度計で25℃測定時)に調整した。
各化粧料の組成を表4に示す。
化粧料の評価は、実施例1と同様にして評価した。
評価結果を表4下段に示す。
【0035】
【表4】
【0036】
表4に示すとおり、実施例17の化粧料(A+B+C+E)は本発明でいう(D)成分:油剤(A成分以外の油剤)を含まないが、他の実施例と同様に好ましい分離効果を有した2層化粧料であった。本発明において(D)成分:油剤は、使用感のバリエーション化のためには配合した方が良いが、良好な分離性を得るための必須成分ではないことが、確認できた。
A成分以外の油剤(D)を含む実施例11~16、及び18の化粧料(A+B+C+D+E)は、使用して静置後の外観目視評価で、良好な分離状態(水層と油層が共に濁らず、容器壁への油滴の付着がない)と評価され、好ましい2層化粧料であった。
A成分以外の油剤(D)を含む組成において、A成分を配合しない組成の試験は、前述のとおり比較例1~16で試験している。そして比較例1~16のいずれも分離性が不良と評価されたが、実施例11~16及び18から、(A)成分:ブチレングリコール脂肪酸エステルを0.01~0.05質量%配合することにより、配合しない場合に生じた分離性の問題(水層や油層の濁り:比較例1~16)を解決し、二層化粧料に求められる好ましい分離効果を発揮できることが確認された。(A)成分:ブチレングリコール脂肪酸エステルは安全性が高く、また化粧料に単独で配合しても好ましい使用感であるため、配合量の上限はあえて設定しなくても良いが、配合量の目安としては、(A)成分:ブチレングリコール脂肪酸エステルを0.001~40質量%、好ましくは0.005~10質量%、さらに好ましくは0.01~10質量%配合し、その他油剤との合計量が化粧料全量に対して0.002~40質量%となるように配合すると好ましいと考えられた。
また(D)成分の油剤として配合したスクワラン、トリエチルヘキサノイン、シクロペンタシロキサン、オリーブ果実油、パーム油はいずれも、本発明の化粧料に配合する目的に適していた。
次に、本発明における(B):無機塩類の効果を確認するための試験を行った。
【0037】
<比較例17~18>
(B):無機塩類に相当する塩化ナトリウムを配合しない組成の2層化粧料(比較例17、18)を調製した。
比較例17:(A)成分としてジイソノナン酸ブチレングリコールを0.1質量%、(D)成分としてスクワラン及びトリエチルヘキサノインをそれぞれ5質量%、(E)成分としてセルロースガムを1質量%配合し、水層の粘度を100~350mPa・s(B型粘度計で25℃測定時)に調整した2層化粧料。
比較例18:(A)成分に替えてジイソステリン酸ポリグリセリル-2を0.1質量%とした以外は比較例17と同様の組成の2層化粧料。
各化粧料の組成を表5に示す。
化粧料の評価は、実施例1と同様にして評価した。
評価結果を表5下段に示す。
【0038】
【表5】
【0039】
比較例17は、水層の濁りが認められた。また比較例18は水層の濁り及び油層の濁りが認められた。比較例17の結果から、無機塩類を配合しないと(A):ブチレングリコール脂肪酸エステルを配合しても、良好な分離性を有した二層化粧料が得られないことが分かった。
【0040】
以上、実施例、比較例の結果から、透明な油層と透明な水層を有した層状化粧料において、振盪して使用後の混合した状態から、静置後に、水層、油層共に濁りの無い透明な外観であって、かつ油滴の容器付着を防ぐためには、(A)成分:ブチレングリコール脂肪酸エステル、(B)成分:無機塩類の配合が重要であることが判明した。特に水層の粘度を高めると、分離性が悪くなることから、一層水層及び油層の透明性が低下する問題が発生するが、このような問題を解決するためにも、(A)成分:ブチレングリコール脂肪酸エステルと(B)成分:無機塩類の配合が有効であることがわかった。
図1