(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】導体接合治具
(51)【国際特許分類】
H01B 13/00 20060101AFI20220928BHJP
H01R 43/02 20060101ALI20220928BHJP
B23K 3/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H01B13/00 501Z
H01R43/02 A
B23K3/00 310R
(21)【出願番号】P 2019039124
(22)【出願日】2019-03-05
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】391017540
【氏名又は名称】東芝ITコントロールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 崇行
(72)【発明者】
【氏名】青島 宏之
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-176828(JP,A)
【文献】特開2011-003382(JP,A)
【文献】国際公開第2014/192832(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0105005(US,A1)
【文献】特開平02-299187(JP,A)
【文献】特開2013-004406(JP,A)
【文献】特開平09-260829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/00
H01R 43/02
B23K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の線材からなる多芯線材と、平らな接合面を有する平角導体とを接合するための導体接合治具であって、
複数の前記線材を整列させる整列溝が、前記線材の径以下の深さに彫り込まれ、前記多芯線材をフラット状に成型したフラット導体を成型するためのフラット導体の成型ブロックと、
前記フラット導体及び前記平角導体を接合させる接合溝が、前記フラット導体とハンダ材と前記平角導体とを重ね合わせた形状に彫り込まれた接合ブロックと、
前記接合溝内に前記フラット導体と前記ハンダ材と前記平角導体とを重ね合わせて収容した状態で、前記ハンダ材を加熱して前記フラット導体と前記平角導体とをハンダ付けするヒータと、
を備えた導体接合治具。
【請求項2】
前記接合溝内に重ね合わされた前記フラット導体、前記ハンダ材及び前記平角導体に対し固定力を付与する加圧部材を、前記接合ブロックに取り付けた請求項1に記載の導体接合治具。
【請求項3】
前記接合ブロックに設置された熱電対と、
前記熱電対の測定値に基づいて前記ヒータを制御するヒータ制御部と、を備えた請求項1又は2に記載の導体接合治具。
【請求項4】
前記接合溝は、直線部あるいは曲線部を含む請求項1~3のいずれかに記載の導体接合治具。
【請求項5】
前記接合ブロックは、ハンダ溶融し難い難ハンダ付け材からなる請求項1~4のいずれかに記載の導体接合治具。
【請求項6】
前記接合溝は、前記フラット導体又は前記平角導体に対して前記ハンダ材を挟んで補強用銅板を重ね合わせた形状に彫り込んだ溝である請求項1~5のいずれかに記載の導体接合治具。
【請求項7】
前記接合溝は、前記平角導体の接合面の両面に対して前記ハンダ材を挟んで前記フラット導体を重ね合わせた形状に彫り込んだ溝である請求項1~6のいずれかに記載の導体接合治具。
【請求項8】
前記ハンダ材は、シート状、ボール状及びパウダー状のいずれかの部材からなる請求項1~7のいずれかに記載の導体接合治具。
【請求項9】
前記接合ブロックは、当該接合ブロックの中央に前記接合溝を設け、
前記ヒータは、前記接合ブロックの中央部から水平方向に外側に向かって複数設け、中央部側に位置するヒータから加熱を開始して、徐々に外側に位置するヒータが加熱するように構成した請求項1~8のいずれかに記載の導体接合治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数の線材からなる多芯線材と平らな接合面を有する平角導体とを接合するための導体接合治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機器内の導体同士を接合させたものとして、複数の線材からなる多芯線材と平角導体とを接合させた接合導体が知られている。この多芯線材は一般的に整列処理を施さないとバラ線となる。そのため、接合相手の平角導体との密着性を確保することが困難である。平角導体は、平らな接合面を有する平角線材からなる導体である。これらの導体同士を接合させる方法としては、最も簡便であるためハンダ付けによるハンダ溶融が広く利用されている。また最近では、超音波接合や拡散接合、電子ビーム接合さらにはスポット溶接なども用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、直流大電流回路などでは、接合する導体同士の接合抵抗を可能な限り小さくすることが要求される。導体同士の接合抵抗を小さくするためには、導体同士を強く密着させる必要がある。しかし、既に述べたように多芯線材は一般的に整列処理を施さないとバラ線となるため、接合相手の平角導体との密着性を確保することが困難であった。従って、導体同士の密着度を高いレベルで維持したまま、多芯線材と平角導体とを接合させることは難しく、安定した低抵抗接合を施工することは困難であった。
【0005】
また、フラット導体と平角導体との接合導体では、導体同士の密着度を高めると共に、機械的強度を確保することも求められている。さらに、フラット導体と平角導体とを接合させる方法としては前述したように超音波接合や拡散接合などの接合技術があるが、これらの接合技術では、高額の専用設備が不可欠である。そのため、初期の投資費用が増大してコストの高騰を招いていた。
【0006】
本発明の実施形態は、上記の問題を解決するためになされたものであり、導体同士の密着度を高めて接合抵抗を低く抑えることにより低抵抗接合の施工の安定化を図ると共に、機械的強度の確保と投資費用の低コスト化とを実現させる、信頼性及び経済性に優れた導体接合治具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の実施形態は、複数の線材からなる多芯線材と、平らな接合面を有する平角導体とを接合するための導体接合治具であって、次の構成要素(1)~(3)を有する。
(1)複数の前記線材を整列させる整列溝が、前記線材の径以下の深さに彫り込まれた、前記多芯線材をフラット状に成型したフラット導体を成型するための前記フラット導体の成型ブロック。
(2)前記フラット導体及び前記平角導体を接合させる接合溝が、前記フラット導体とハンダ材と前記平角導体とを重ね合わせた形状に彫り込まれた接合ブロック。
(3)前記接合溝内に前記フラット導体と前記ハンダ材と前記平角導体とを重ね合わせて収容した状態で、前記ハンダ材を加熱して前記フラット導体と前記平角導体とをハンダ付けするヒータ。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
(構成)
以下、
図1~
図3を参照して、第1の実施形態の構成について具体的に説明する。第1の実施形態に係る導体接合治具1は、フラット導体3と、平らな接合面4を有する平角導体5とを接合するための治具である。フラット導体3は、複数の線材2からなる多芯線材をフラット状に成型した導体である。
図1は、導体接合治具1全体の斜視図である。
図1に示すように、導体接合治具1は、成型ブロック11と、接合ブロック12とを備えている。
【0010】
(成型ブロック11)
成型ブロック11は、フラット導体3を成型するための薄い直方体状のブロックである。なお、
図1では、成型ブロック11及び接合ブロック12にフラット導体3を取り付けた状態では、見やすさを優先して、フラット導体3を構成する線材2の図示は省略する。
【0011】
成型ブロック11の中央には、当該成型ブロック11の長手方向に沿って直線状の整列溝13が設けられている。整列溝13は、複数の線材2をフラット状に一列に整列させる幅寸法を有している。
図2に示すように、整列溝13は、その深さ寸法aが線材2の径b以下となるように浅い彫り込み加工によって形成されている(b≧a)。但し、整列溝13の深さ寸法は、整列溝13から複数の線材2が容易に転がり出ない程度には深く設定されている。
【0012】
成型ブロック11において、整列溝13の長手方向の両端部及び中央部には、整列溝13に直交して固定金具14が3つ取り付けられている。固定金具14は、その両端部を成型ブロック11にねじ止めすることにより、整列溝13に整列させた線材2を、上方から固定する。整列溝13に整列させた線材2の表面は、固定金具14に覆われる部分と、固定金具14に覆われずに露出する部分に分かれる。線材2の露出部分には、整列した全ての線材2にわたって、ハンダこてによるハンダ付け部6が所定の間隔を持って設けられる。
【0013】
(接合ブロック12)
接合ブロック12は、フラット導体3と平角導体5とを接合するための薄い直方体状のブロックである。接合ブロック12は、ハンダ溶融し難い難ハンダ付け材、例えばアルミなどからなる。
【0014】
接合ブロック12の中央には、当該ブロック12の長手方向全体にわたって、直線状の接合溝15が形成されている。接合溝15は、断面が凹状であり、フラット導体3と、シート状のハンダ材であるハンダシート7と、平角導体5と、を重ね合わせた形状に彫り込まれている。接合溝15の幅寸法は、フラット導体3、平角導体5及びハンダシート7の幅寸法とほぼ同一に設定されている。
【0015】
接合溝15には、下から、平角導体5、ハンダシート7、フラット導体3の順番で重ね合わされた状態で収容される。3つの部材5、7、3が接合溝15に収容された時に、最も上側に配置されるフラット導体3の上面が、接合ブロック12の上面を若干超える程度に、接合溝15の深さ寸法が設定されている。
【0016】
接合ブロック12において、接合溝15の長手方向の両端部及び中央部には、接合溝15に直交して固定金具16が3つ取り付けられている。固定金具16は、その両端部を接合ブロック12にねじ止めすることにより、接合溝15に収納されたフラット導体3、ハンダシート7及び平角導体5を、上方から固定する。
【0017】
(ヒータ17a~17c)
図3に示すように、接合ブロック12の内部には、接合ブロック12の長手方向に直交して、長方形状のヒータ17a~17c(以下、ヒータ17とも称する)が互いに平行に埋め込まれている。ヒータ17aは、接合ブロック12の中央部に配置されており、ヒータ17bは、接合ブロック12の一方の短辺の縁部(
図3では右側)付近に配置され、ヒータ17cは、接合ブロック12の他方の短辺の縁部(
図3では左側)付近に配置されている。これらのヒータ17a~17cは、中央部側に位置するヒータ17aから加熱を開始して、次に外側に位置するヒータ17b、17cが加熱するように構成されている。
【0018】
(作用)
導体接合治具1を用いてフラット導体3と平角導体5とを接合する方法について、
図1~
図3を用いて説明する。まず、整列溝13に複数の線材2を平行に並べてフラット状に整列させる(
図2参照)。そして、3つの固定金具14を均一に締めることで、線材2のフラット状態を確保する(
図1の上段参照)。成型ブロック11では、整列溝13に整列させた線材2同士をハンダこてにより、複数のハンダ付け部6にてハンダ付けする。これにより、成型ブロック11において、整列した線材2同士が密着したフラット導体3を成型する。フラット導体3を成型した後、成型ブロック11の整列溝13からフラット導体3を取り出す。
【0019】
次に、接合ブロック12の接合溝15に、成型したフラット導体3と、ハンダシート7と平角導体5とを順次重ね合わせて収容する(
図1の中段参照)。そして、3つの固定金具16を均一に締めて、フラット導体3とハンダシート7と平角導体5とを接合溝15に固定する(
図1の下段参照)。
【0020】
続いて、ヒータ17によって接合溝15に収容されたハンダシート7を加熱し、ハンダシート7を溶融させてフラット導体3と平角導体5とをハンダ付けする(
図3参照)。このとき、フラット導体3及び平角導体5の中心部分、つまり接合ブロック12の中央部のヒータ17aから加熱を始め、次いで接合ブロック12の両方の縁部付近に配置されたヒータ17b、17cを加熱する。
【0021】
このため、接合ブロック12の中央部側から外側に向かって水平方向にハンダシート7が加熱されていく。以上のようにして、フラット導体3と平角導体5とをハンダ接合させて、フラット導体3と平角導体5との接合導体を得る。なお、
図3中の左右方向への矢印は、ヒータ17による伝熱方向を示している。
【0022】
(効果)
第1の実施形態の効果は次の通りである。第1の実施形態に係る導体接合治具1は、複数の線材2からなる多芯線材をフラット状に成型したフラット導体3を成型するためのフラット導体3の成型ブロック11と、フラット導体3と平角導体5の接合ブロック12と、を備え、成型ブロック11には複数の線材2をフラット状に整列させる整列溝13を形成し、接合ブロック12にはフラット導体3、ハンダシート7及び平角導体5を重ね合わせる接合溝15を形成し、さらに、接合ブロック12には接合溝15内にフラット導体3とハンダシート7と平角導体5とを収容した状態でハンダシート7を加熱してフラット導体3と平角導体5とをハンダ付けするヒータ17と、を備える。
【0023】
このような第1の実施形態では、成型ブロック11に整列溝13が線材2の径以下の深さに彫り込まれているので、線材2全体が整列溝13の中にすっぽりと埋没することがなく、整列溝13の中で線材2が垂直方向に重なる心配がない。そのため、整列溝13は、線材2同士をフラット状に容易に整列させることができる。
【0024】
また、成型ブロック11では、固定金具14を締めながら、フラット状に整列させた線材2同士を密着させたまま、ハンダ付け部6にてハンダ付けすることができる。従って、成型されたフラット導体3は線材2同士の密着度が高く、ハンダ付け部6における抵抗値を低く抑えることができる。従って、従来では多芯線材が整列処理を施さないとバラ線となり平角導体5との密着性を確保することが困難であったが、本実施形態に係る成型ブロック11によれば、多芯線材に整列処理を施してフラット状の多芯線材を確実に成形することが可能となり、接合相手の平角導体5との密着性を確保することができる。
【0025】
さらに第1の実施形態では、接合ブロック12に、接合溝15が、フラット導体3とハンダシート7と平角導体5とを重ね合わせた形状に彫り込まれている。そのため、フラット導体3とハンダシート7と平角導体5とを重ね合わせた状態のまま、これらの部材を接合溝15に対してスムーズに収容することができ、作業効率が高い。
【0026】
しかも、接合溝15の形状と、フラット導体3とハンダシート7と平角導体5とを重ね合わせた形状とは互い一致するように形成されているので、接合溝15に収容されたフラット導体3、ハンダシート7及び平角導体5は、接合溝15の中で、ずれることがない。そのため、フラット導体3、ハンダシート7及び平角導体5の密着度が低下する心配がなく、ハンダシート7によるハンダ接合部分において低抵抗接合を実現することができる。これにより、低抵抗接合の施工の安定化が図れる。
【0027】
さらに第1の実施形態では、フラット導体3とハンダシート7と平角導体5とを接合溝15に収容した後、3つの固定金具16を締める。この時、最も上側に配置されるフラット導体3の上面が、接合ブロック12の上面を若干超える程度に接合溝15の深さ寸法が設定されている。そのため、固定金具16を接合ブロック12に締めることにより、フラット導体3、ハンダシート7及び平角導体5に対し強い密着力を与えることができる。
【0028】
そして、接合ブロック12では、接合溝15内にフラット導体3とハンダシート7と平角導体5とを重ね合わせて収容した状態で、ヒータ17によりハンダシート7を加熱してフラット導体3と平角導体5とのハンダ付けを行う。従って、フラット導体3、ハンダシート7及び平角導体5の密着度を、高いレベルで維持したまま、ハンダ付けすることができ、安定した低抵抗接合の施工が可能となる。
【0029】
しかも、第1の実施形態では、接合ブロック12の中央部のヒータ17aから加熱を始め、次いで接合ブロック12の短辺付近に配置されたヒータ17b、17cを加熱する。このため、接合ブロック12の中央部側が先に加熱されて、徐々に外側に向かって水平方向にハンダシート7が加熱されていくことになる。
【0030】
従って、ハンダ―シート7と、その上下に位置するフラット導体3及び平角導体5との隙間に空気があったとしても、ヒータ17による伝熱方向と空気が逃げる方向が一致することになる(
図3の矢印参照)。従って、接合ブロック12におけるハンダ付け作業に際して、空気を中心側から外側に向けて効率良く逃がすことができる。その結果、ハンダシート7の周囲に空隙が生じるおそれがなくなり、ハンダシート7とその上下に位置するフラット導体3及び平角導体5との密着度を維持することができる。これにより、ハンダ接合部分における抵抗値を低く抑えることができ、低抵抗接合の施工をいっそう安定して実施することが可能となる。
【0031】
また、第1の実施形態では、ハンダシート7を挟んでフラット導体3と平角導体5とを接合させているので、3枚のシート状部材が重なり合っており、機械的強度の確保が容易である。さらに、第1の実施形態によれば、超音波接合や拡散接合、電子ビーム接合、スポット溶接といった接合技術を利用する必要が無い。そのため、高価な専用設備が不要であり、投資費用が安価になり、経済的に有利である。また、接合ブロック12は、ハンダ溶融し難いアルミからなるので、接合ブロック12に対してフラット導体3及び平角導体5がハンダづけされるおそれがなく、ハンダ付けの作業効率を高めることができる。
【0032】
(第2の実施形態)
(構成)
図4に示すように、第2の実施形態には、サラバネ18が接合ブロック12の固定金具16に取り付けられている。サラバネ18は、接合溝15内に重ね合わされたフラット導体3、ハンダシート7及び平角導体5に対して固定力を付与する加圧部材である。
【0033】
(作用及び効果)
以上の構成を有する第2の実施形態によれば、接合ブロック12の固定金具16にサラバネ18を取り付けたので、フラット導体3、ハンダシート7及び平角導体5に対して固定力を付与することができ、フラット導体3及び平角導体5の密着度をより高めることができる。従って、抵抗値をさらに低く抑えることができ、低抵抗接合の施工の安定化を、より進めることが可能である。
【0034】
(第3の実施形態)
(構成)
図5に示すように、第3の実施形態に係る接合ブロック12には、ヒータ17a~17cに近接して、接合ブロック12の温度を測定する熱電対19a~19cが設置されている。熱電対19a~19cは接合ブロック12の温度を測定するものである。熱電対19a~19cには、ヒータ17a~17cに制御信号を与えるコントローラ20が接続されている。コントローラ20は、熱電対19a~19cの測定値に基づいてヒータ17a~17cを制御する部分である。
【0035】
(作用及び効果)
第3の実施形態では、熱電対19a~19cにて接合ブロック12の温度を測定し、熱電対19a~19cの測定値に基づいてコントローラ20がヒータ17a~17cを制御する。つまり、接合ブロック12の温度測定を実施して、その測定値をコントローラ20にフィードバックすることで、ヒータ17a~17cによる加熱を高品位に制御することが可能である。従って、ハンダシート7の溶融温度とその保持時間などを的確に管理することができ、ハンダシート7の溶融を安定して行うことができる。これにより、低抵抗接合の施工をより安定して実施することが可能となる。
【0036】
(第4の実施形態)
(構成)
図6に示すように、第4の実施形態では、接合ブロック12の中央に、接合溝21が形成されている。第4の実施形態に係る接合溝21は、平角導体5の上面にハンダシート7を挟んでフラット導体3を重ね合わせ、さらにフラット導体3の上面にハンダシート7を挟んで補強用銅板8を重ね合わせた形状に彫り込まれている。接合溝21の幅寸法は、フラット導体3、平角導体5、ハンダシート7及び補強用銅板8の幅寸法とほぼ同一に設定されている。
【0037】
接合溝21には、下から、平角導体5、ハンダシート7、フラット導体3、ハンダシート7、補強用銅板8という順番で、5枚の部材が重ね合わされた状態で収容される。5枚の部材5、7、3、7、8が接合溝21に収容された時に、最も上側に配置される補強用銅板8の上面が、接合ブロック12の上面を若干超える程度に接合溝21の深さ寸法が設定されている。
【0038】
(作用及び効果)
第4の実施形態では、ハンダシート7を挟んでフラット導体3と補強用銅板8とを接合させたので、機械的強度がいっそう向上するという利点がある。また、接合ブロック12の接合溝21が、平角導体5、ハンダシート7、フラット導体3、ハンダシート7、補強用銅板8という5枚の部材を重ね合わせた形状に彫り込まれているため、5枚の部材を重ね合わせた状態のままで接合溝21にスムーズに収容することができ、上記第1の実施形態と同じく、優れた作業効率が得られる。
【0039】
さらに、接合溝21の形状と、フラット導体3、ハンダシート7、平角導体5及び補強用銅板8を重ね合わせた形状とが一致するので、接合溝21の中で5枚の部材がずれることがなく、補強用銅板8により機械的強度の向上を図りつつ、部材同士の密着度低下を抑えることができ、低抵抗接合を確実に実現することができる。
【0040】
第4の実施形態では、フラット導体3とハンダシート7と平角導体5と補強用銅板8とを接合溝21に収容した後、3つの固定金具16を締める。この時、最も上側に配置される補強用銅板8の上面が、接合ブロック12の上面を若干超える程度に接合溝21の深さ寸法が設定されている。
【0041】
そのため、固定金具16を接合ブロック12に締めることにより、フラット導体3、ハンダシート7、平角導体5及び補強用銅板8に対し強い密着力を与えることができる。従って、フラット導体3、ハンダシート7及び平角導体5の密着度を、より向上させることが可能である。
【0042】
(第5の実施形態)
(構成)
図7に示すように、第5の実施形態では、接合ブロック12の中央に接合溝22が形成されている。第5の実施形態に係る接合溝22は、平角導体5の上面及び下面にハンダシート7を挟んでフラット導体3を重ね合わせ、下側のフラット導体3のさらに下側に補強用銅板8を重ね合わせ、上側のフラット導体3のさらに上側に補強用銅板8を重ね合わせた形状に彫り込まれている。接合溝22の幅寸法は、フラット導体3、平角導体5、ハンダシート7及び補強用銅板8の幅寸法とほぼ同一に設定されている。
【0043】
図8に示すように、接合溝22には、下から順に、補強用銅板8、フラット導体3、ハンダシート7、平角導体5、ハンダシート7、フラット導体3、補強用銅板8という順番で、7枚の部材が重ね合わされた状態で収容される。つまり、平角導体5を中心に上下対称に、平角導体5に近い方から順に、ハンダシート7と、フラット導体3と、補強用銅板8とが、重ね合わされている。なお、7枚の部材8、3、7、5、7、3、8が接合溝22に収容された時に、最も上側に配置される補強用銅板8の上面は、接合ブロック12の上面を若干超える程度に接合溝22の深さ寸法が設定されている。
【0044】
(作用及び効果)
第5の実施形態では、平角導体5の両側にフラット導体3を配置させたことで、平角導体5の表面積を最大限に活用して、大量のフラット導体3を効率良く平角導体5に密着、接合することができ、低抵抗接合を実現できる。しかも、第5の実施形態では、ハンダシート7を挟んで2枚のフラット導体3を備え、さらに各フラット導体3の外側に補強用銅板8を接合させている。つまり、補強用銅板8、フラット導体3、ハンダシート7、平角導体5、ハンダシート7、フラット導体3、補強用銅板8という7枚の部材を重ね合わせている。そのため、機械的強度がいっそう向上する。
【0045】
第5の実施形態では、接合ブロック12の接合溝22は、補強用銅板8、フラット導体3、ハンダシート7、平角導体5、ハンダシート7、フラット導体3、補強用銅板8という7枚の部材を重ね合わせた形状に彫り込まれている。そのため、7枚の部材を重ね合わせた状態のままで、接合溝22に7枚の部材をスムーズに収容することができ、優れた作業効率を得ることができる。
【0046】
また、第5の実施形態では、接合溝22の形状と、補強用銅板8、フラット導体3、ハンダシート7、平角導体5、ハンダシート7、フラット導体3及び補強用銅板8を重ね合わせた形状とが一致しているので、接合溝22の中で7枚の部材同士がずれることがない。そのため、フラット導体3、ハンダシート7、平角導体5及び補強用銅板8における相互の密着度が低下する心配がなく、低抵抗接合をより安定して施工することができる。
【0047】
(他の実施形態)
以上説明した実施形態は、本発明の実施形態の一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。本発明の実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等な範囲に含まれる。
【0048】
例えば、ハンダ材としては、上記のハンダシート7に限らず、小径のボール状あるいはパウダー状からなるものであってもよい。小径のボール状あるいはパウダー状からなるハンダ材では、ハンダ材同士の間に距離があるため、ハンダ接合部分の空気が逃げ易い。そのため、ハンダ接合部分の空隙を減少させることができ、フラット導体3と平角導体5との密着度がより向上する。
【0049】
上記の実施形態に係る整列溝13及び接合溝15、21、22は、それぞれ成型ブロック11及び接合ブロック12に、1つだけ形成したが、整列溝13及び接合溝15、21、22は、各ブロック11、12に、複数形成するようにしてもよい。さらに、接合ブロック12において、接合溝15、21、22は、直線部のみを有する溝であったが、例えば
図9に示すように、曲線部23aを有する接合溝23としてもよい。また、上記の実施形態では、成型ブロック11及び接合ブロック12は、直方体状であったが、これに限定されるものではなく、例えば、ディスク状の部材であってもよく、ディスクの周囲に整列溝13や接合溝15などを形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…導体接合治具
2…線材
3…フラット導体
4…接合面
5…平角導体
6…ハンダ付け部
7…ハンダシート
8…補強用銅板
11…成型ブロック
12…接合ブロック
13…整列溝
14、16…固定金具
15、21、22、23…接合溝
17a~17c…ヒータ
18…サラバネ
19a~19c…熱電対
20…コントローラ