(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】ガス電磁弁
(51)【国際特許分類】
F23K 5/00 20060101AFI20220928BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20220928BHJP
F16K 49/00 20060101ALI20220928BHJP
F23N 1/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
F23K5/00 301D
F16K31/06 385F
F16K49/00 B
F16K31/06 305Z
F23N1/00 102D
(21)【出願番号】P 2019044518
(22)【出願日】2019-03-12
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】岸 隆行
(72)【発明者】
【氏名】宇於崎 充
(72)【発明者】
【氏名】安井 繁明
(72)【発明者】
【氏名】小松 靖司
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-114276(JP,A)
【文献】実開昭57-005576(JP,U)
【文献】特開2007-138972(JP,A)
【文献】特開平11-166992(JP,A)
【文献】特開平07-269741(JP,A)
【文献】特開平08-013149(JP,A)
【文献】米国特許第03575199(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0178064(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 5/00
F16K 31/06
F16K 49/00
F23N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流路に介設されるガス電磁弁であって、弁筐内の弁座に対向する弁体と、弁体に弁軸を介して連結されるアーマチュアと、アーマチュアに対向するように配置され、アーマチュアを吸着することで弁体を弁座から離れた開弁位置又は弁座に着座する閉弁位置に保持する電磁石と、弁体を電磁石からアーマチュアが離れる方向に付勢する付勢手段とを備えるものにおいて、
アーマチュアの電磁石に対する当接面と電磁石のアーマチュアに対する当接面とを加熱する加熱手段を備え
、ガス電磁弁の雰囲気温度がガスに混入した気体状異物の凝縮を生ずる可能性のある所定温度以下に低下したときに加熱手段を作動させることを特徴とするガス電磁弁。
【請求項2】
弁筐の外面に装着するヒータで加熱手段が構成され、ヒータにより弁筐を介してアーマチュアの電磁石に対する当接面と電磁石のアーマチュアに対する当接面とが加熱されることを特徴とする請求項1記載のガス電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスコンロ等のガス器具のガス流路に介設されるガス電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のガス電磁弁は、弁筐内の弁座に対向する弁体と、弁体に弁軸を介して連結されるアーマチュアと、アーマチュアに対向するように配置され、アーマチュアを吸着することで弁体を弁座から離れた開弁位置又は弁座に着座する閉弁位置に保持する電磁石と、弁体を電磁石からアーマチュアが離れる方向に付勢する付勢手段とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、様々な温度変化があった場合、アーマチュアの電磁石に対する当接面や電磁石のアーマチュアに対する当接面に、ガスに何らかの原因で混入した気体状の異物が凝縮して結露することがある。そして、結露液がこれら当接面に付着したまま放置されると、これら当接面が腐食し、アーマチュアの吸着不良を生ずることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、アーマチュアの電磁石に対する当接面や電磁石のアーマチュアに対する当接面の結露液による腐食を防止できるようにしたガス電磁弁を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、ガス流路に介設されるガス電磁弁であって、弁筐内の弁座に対向する弁体と、弁体に弁軸を介して連結されるアーマチュアと、アーマチュアに対向するように配置され、アーマチュアを吸着することで弁体を弁座から離れた開弁位置又は弁座に着座する閉弁位置に保持する電磁石と、弁体を電磁石からアーマチュアが離れる方向に付勢する付勢手段とを備えるものにおいて、アーマチュアの電磁石に対する当接面と電磁石のアーマチュアに対する当接面とを加熱する加熱手段を備え、ガス電磁弁の雰囲気温度がガスに混入した気体状異物の凝縮を生ずる可能性のある所定温度以下に低下したときに加熱手段を作動させることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、アーマチュアの電磁石に対する当接面や電磁石のアーマチュアに対する当接面に付着した結露液は、加熱手段によるこれら当接面の加熱で蒸発する。そのため、結露液によるこれら当接面の腐食を防止でき、腐食に起因するアーマチュアの吸着不良を防止できる。
【0008】
また、本発明においては、弁筐の外面に装着するヒータで加熱手段が構成され、ヒータにより弁筐を介してアーマチュアの電磁石に対する当接面と電磁石のアーマチュアに対する当接面とが加熱されることが望ましい。これによれば、加熱手段の構造及び取付けが簡素化され、コストアップを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態のガス弁装置の切断側面図。
【
図2】実施形態のガス弁装置の電磁石を励磁した状態の切断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示す本発明の実施形態のガス電磁弁は、安全弁として用いられるものであり、ガス流入口11とガス流出口12とを有する弁筐1内に設けられた弁座13の軸方向一方に対向する弁体2と、弁体2に軸方向一方にのびる弁軸21を介して連結されたアーマチュア3と、アーマチュア3の軸方向一方に対向するように配置され、アーマチュア3を吸着することで弁体2を弁座13から離れた開弁位置に保持する電磁石4と、弁体2を電磁石4からアーマチュア3が離れる方向(軸方向他方)に付勢する付勢手段5とを備えている。電磁石4は、一対のコア41,41と、一方のコア41に外装した電磁コイル42とで構成されている。
【0011】
弁座13は、アルミダイキャスト製の弁筐1内に内挿される樹脂製の内ケース14に形成されている。また、弁筐1内の軸方向他方の端部近傍には、ガス流出口12の上流側の元弁用弁座15が設けられている。そして、弁筐1内に、軸方向他方の端部から挿入される操作ロッド6を設け、この操作ロッド6に、元弁用弁座15の軸方向一方に対向する元弁用弁体7を固定し、更に、操作ロッド6を戻しバネ61により元弁用弁体7を介して軸方向他方に付勢している。
【0012】
操作ロッド6は、点火操作時に軸方向一方に押動操作される。そして、この押動操作により、元弁用弁体7が元弁用弁座15から離間して元弁が開弁すると共に、操作ロッド6がガス電磁弁の弁体2に当接して、弁体2をアーマチュア3が電磁石4に当接する開弁位置まで押動させる。この状態で電磁コイル42に通電して電磁石4を励磁し、アーマチュア3を一対のコア41,41に跨るようにして吸着し、弁体2を開弁位置に保持する。その後、操作ロッド6を、弁体2に対する押圧は解除するが、元弁は開弁状態に維持される
図2に示す位置まで復動させ、この状態に待機させる。バーナが失火したときは、電磁コイル42への通電を停止し、電磁石4に対するアーマチュア3の吸着を解除して、弁体2を付勢手段5の付勢力で弁座13に着座する閉弁位置に復帰させる。
【0013】
ところで、様々な温度変化があった場合、アーマチュア3の電磁石4に対する当接面3a(アーマチュア3の
図1、
図2で右端面)や電磁石4のアーマチュア3に対する当接面4a(各コア41の
図1、
図2で左端面)に、ガスに何らかの原因で混入した気体状の異物が凝縮して結露することがある。そして、結露液がこれら当接面3a,4aに付着したまま放置されると、これら当接面3a,4aが腐食し、アーマチュア3の吸着不良を生ずることがある。
【0014】
そこで、本実施形態では、アーマチュア3の電磁石4に対する当接面3aと電磁石4のアーマチュア3に対する当接面4aとを加熱する加熱手段を設けている。より具体的には、弁筐1の外面に加熱手段たるヒータ8を装着し、このヒータ8により弁筐1を介してアーマチュア3の電磁石4に対する当接面3aと電磁石4のアーマチュア3に対する当接面4aとが加熱されるようにしている。
【0015】
これによれば、上記当接面3a,4aに付着した結露液は、当接面3a,4aの加熱で蒸発する。そのため、結露液による当接面3a,4aの腐食を防止でき、腐食に起因するアーマチュア3の吸着不良を防止できる。更に、加熱手段を弁筐1の外面に装着するヒータ8で構成することにより、加熱手段の構造及び取付けが簡素化され、コストアップを抑制することができる。尚、ヒータ8の通電加熱は、ガス電磁弁の雰囲気温度がガスに混入した気体状異物の凝縮を生ずる可能性のある所定温度以下に低下したときに行う。
【0016】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態のガス電磁弁は、アーマチュア3を電磁石4に吸着することで弁体2を弁座13から離れた開弁位置に保持する常閉型の弁であるが、アーマチュアを電磁石に吸着することで弁体を弁座に着座する閉弁位置に保持する常開型の弁にも同様に本発明を適用できる。また、電磁石をモータにより進退自在とし、弁体が閉弁位置に存する状態で電磁石を前進させてアーマチュアに当接させ、電磁石の励磁でアーマチュアを吸着した状態で電磁石を後退させて、弁体を付勢手段に抗して開弁位置に移動保持する、所謂モータ安全弁のようなガス電磁弁にも同様に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0017】
1…弁筐、13…弁座、2…弁体、21…弁軸、3…アーマチュア、3a…アーマチュアの電磁石に対する当接面、4…電磁石、4a…電磁石のアーマチュアに対する当接面、5…付勢手段、8…ヒータ(加熱手段)。