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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/24 20060101AFI20220928BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20220928BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
E02F9/24 B
E02F9/26 A
E02F9/20 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019227569
(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公開番号】P2021095739
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2021-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】塩飽 晃司
(72)【発明者】
【氏名】山本 慎二郎
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-172883(JP,A)
【文献】国際公開第2019/172424(WO,A1)
【文献】特開平04-052330(JP,A)
【文献】特開平05-321304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/24
E02F 9/26
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の周囲の物体を検出する検出装置と、前記検出装置の検出結果に基づき前記機体を作動させるアクチュエータの停止または減速を行う制御装置とを有した作業機械において、
前記制御装置は、
前記検出装置の状態を演算する検出装置状態演算部と、
前記検出装置状態演算部の演算結果に基づき前記検出装置の検出性能を変更する検出性能変更制御部と、
前記検出性能変更制御部で変更した検出性能に応じて前記機体の動作を演算する機体動作演算部と、
前記機体動作演算部で演算した前記機体の動作に基づき前記アクチュエータを制御する動作制御部と、
を備えたことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
前記検出装置状態演算部は前記検出装置の状態として通信情報負荷を演算し、前記検出性能変更制御部は変更する検出性能として前記検出装置の通信情報量を変更することを特徴とする、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記機体は前記検出装置に電力を供給する蓄電装置を有し、
前記検出装置状態演算部は前記検出装置の状態として前記蓄電装置の蓄電量を演算し、前記検出性能変更制御部は該蓄電量に応じて検出性能を変更することを特徴とする、請求項1または2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記検出性能変更制御部が変更する検出性能の変更に関する情報及び前記機体動作演算部で演算した前記機体の動作の内容を表示する表示装置を備えたことを特徴とする、請求項1に記載の作業機械。
【請求項5】
前記機体動作演算部で演算した前記機体の動作を解除する操作装置を有し、
前記制御装置は、前記操作装置の操作に基づき前記機体動作演算部で演算した前記機体の動作を解除する解除制御部を備えたことを特徴とする、請求項1に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に係り、詳しくは安全装置を備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械において、作業機械の周囲にある物体(例えば、人)を検出装置により検出し、自動で作業機械の減速動作や停止動作を行う安全装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような安全装置において、所望の減速動作や停止動作を実現するため、検出装置により周囲にある物体を検出する範囲については、作業機械の動作、周辺地形、物体の予測挙動等を考慮して設定することが望ましい。
【0004】
しかしながら、上記従来のシステムにおいては、検出範囲が複数の要因、例えば情報処理上の遅延、電力不足、周囲環境等によって変化し、検出装置が仕様通りの検出性能を維持できない場合がある。このような場合、安全システムは周囲にある物体に関して所望の減速動作や停止動作を実現することができず、安全装置として十分とは言い難い。
【0005】
一方で、周囲にある物体の検出および警報を行う監視システムにおいて、検出装置の検出性能を変更することで、例えば上記課題となる情報処理上の遅延を解決可能とする方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-59752号公報
【文献】特開2018-172883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示の技術では、安全装置に搭載された検出装置の検出性能を検出装置依存の特性で変更しているに過ぎず、作業機械の動作等を考慮して検出範囲を設定している場合、検出装置の検出性能を変更した後の検出範囲と作業機械の動作等を考慮して設定した検出範囲とが乖離することとなり、やはり所望の減速動作や停止動作を実現することができず、安全装置として十分とは言い難い。
【0008】
例えば、特許文献2に開示の技術では、検出装置の検出性能を低下させて検出範囲を狭めることが可能であるが、この場合、周囲にある物体が作業機械の近くに来るまで物体を検出できず、物体を検出したときには作業機械の減速動作や停止動作が十分に実施されないおそれがあり、好ましいことではない。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、周囲にある物体を検出する検出装置の検出性能が低下する場合であっても、減速動作や停止動作を十分に実施可能な安全装置を備えた作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の作業機械は、機体の周囲の物体を検出する検出装置と、前記検出装置の検出結果に基づき前記機体を作動させるアクチュエータの停止または減速動作を行う制御装置とを有した作業機械において、前記制御装置は、前記検出装置の状態を演算する検出装置状態演算部と、前記検出装置状態演算部の演算結果に基づき前記検出装置の検出性能を変更する検出性能変更制御部と、前記検出性能変更制御部で変更した検出性能に応じて前記機体の動作を演算する機体動作演算部と、前記機体動作演算部で演算した前記機体の動作に基づき前記アクチュエータを制御する動作制御部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
その他の態様として、前記検出装置状態演算部は前記検出装置の状態として通信情報負荷を演算し、前記検出性能変更制御部は変更する検出性能として前記検出装置の通信情報量を変更するのが好ましい。
【0012】
その他の態様として、前記機体は前記検出装置に電力を供給する蓄電装置を有し、前記検出装置状態演算部は前記検出装置の状態として前記蓄電装置の蓄電量を演算し、前記検出性能変更制御部は該蓄電量に応じて検出性能を変更するのが好ましい。
【0013】
その他の態様として、前記検出性能変更制御部が変更する検出性能の変更に関する情報及び前記機体動作演算部で演算した前記機体の動作の内容を表示する表示装置を備えるのが好ましい。
【0014】
その他の態様として、前記機体動作演算部で演算した前記機体の動作を解除する操作装置を有し、前記制御装置は、前記操作装置の操作に基づき前記機体動作演算部で演算した前記機体の動作を解除する解除制御部を備えるのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の作業機械によれば、検出装置状態演算部の演算結果により検出装置の検出性能が低下すると考えられる状態下にあっては、検出性能変更制御部において検出装置の検出性能を変更し、当該検出性能に応じて機体動作演算部において機体の動作、ひいてはアクチュエータの動作を演算し、この演算結果に基づき動作制御部においてアクチュエータを制御するよう制御装置を構成している。
【0016】
従って、周囲にある物体を検出する検出装置において検出性能が低下する異常な状態下であっても、検出装置の検出性能を低下側に変更し、これに応じてアクチュエータの動作、例えば動作速度を低下側に変更することで、継続して制御装置を適切に機能させて減速動作や停止動作を十分に実施でき、機体を安全に作動させ続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る作業機械を示す側面図である。
図2】本発明に係る作業機械を示す平面図である。
図3】油圧回路の一部を概略的に示す図である。
図4】コントローラの第1実施形態に係るブロック図である。
図5】コントローラが実行する第1実施形態に係る制御ルーチンを示すフローチャートである。
図6】コントローラが実行する第1実施形態に係る制御ルーチンのサブルーチンを示すフローチャートである。
図7】検出装置の情報量と検出装置の検出性能との関係を示すマップである。
図8】検出性能と停止可能動作速度Vaとの関係を示すマップである。
図9】アクチュエータを目標動作速度Vt或いは動作速度Voで作動させる場合の各検出装置による検出範囲D0a~D0dと旋回フレームの動作範囲M0a及びM0bとを模式的に示す図である。
図10】アクチュエータを停止可能動作速度Vaで作動させる場合の各検出装置による検出範囲D1a~D1dと旋回フレームの動作範囲M1a及びM1bとを模式的に示す図である。
図11】検出装置の電力消費と検出装置の走査出力との関係(a)、検出装置の走査出力と検出装置の検出性能との関係(b)、検出装置の電力消費と検出装置の検出性能との関係(c)を示す図である。
図12】検出装置の温度と検出装置の走査出力との関係(a)、検出装置の走査出力と検出装置の検出性能との関係(b)、検出装置の温度と検出装置の検出性能との関係(c)を示す図である。
図13】検出装置に加わる振動ノイズの周波数と検出装置のフィルタ処理の応答速度との関係(a)、検出装置のフィルタ処理の応答速度と検出装置の検出性能との関係(b)、検出装置に加わる振動ノイズの周波数と検出装置の検出性能との関係(c)を示す図である。
図14】検出装置に加わる電磁波ノイズの周波数と検出装置の通信ボーレートとの関係(a)、検出装置の通信ボーレートと検出装置の検出性能との関係(b)、検出装置に加わる電磁波ノイズの周波数と検出装置の検出性能との関係(c)を示す図である。
図15】コントローラの第2実施形態に係るブロック図である。
図16】コントローラが実行する第2実施形態に係る制御ルーチンのサブルーチンを示すフローチャートである。
図17】二次電池の蓄電量と検出装置の検出性能との関係を示すマップである。
図18】コントローラの第3実施形態に係るブロック図である。
図19】表示装置の表示内容を示す図である。
図20】コントローラの第4実施形態に係るブロック図である。
図21】コントローラが実行する第4実施形態に係る制御ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る作業機械の一実施形態について図面に基づき説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明に係る作業機械の側面図を示し、図2は平面図を示している。本実施形態では、作業機械としてクローラ式の油圧ショベルを例に挙げて説明する。
【0019】
図1に示すように、油圧ショベルは、走行体1と、この走行体1上に配置され、主として旋回フレーム3からなる旋回体2と、この旋回体2に取り付けられ、土砂の掘削作業等を行う作業装置4とを備えて機体が構成されている。
【0020】
作業装置4は、旋回フレーム3に上下方向で回動可能に取り付けられるブーム5と、このブーム5の先端に上下方向で回動可能に取り付けられるアーム6と、さらにこのアーム6の先端に上下方向で回動可能に取り付けられるバケット7とを含んで構成されている。この作業装置4には、ブーム5を駆動するブームシリンダ5a、アーム6を駆動するアームシリンダ6a、およびバケット7を駆動するバケットシリンダ7aが含まれている。
【0021】
旋回フレーム3上には、前側位置にオペレータが油圧ショベルの運転操作を行うための運転室8が設けられており、後側位置には重量バランスを確保するカウンタウエイト2aが設けられている。また、運転室8とカウンタウエイト2aの間には機械室9が設けられている。
【0022】
機械室9内には、圧油を供給する油圧ポンプ20や、油圧ポンプ20を駆動し、機体を稼働させるためのエンジン10が設置されている。エンジン10は、例えばディーゼルエンジンである。油圧ポンプ20は、可変容量式油圧ポンプであり、例えば斜板の傾転角を可変操作することで圧油の吐出量を調整可能な斜板式の傾転ポンプである。
【0023】
油圧ポンプ20より吐出された圧油は、走行体1に設けられた走行モータ12や旋回体2に設けられた旋回モータ14へ供給され、これにより走行体1による油圧ショベルの自走が可能であり、旋回体2が作業装置4とともに旋回軸周りで旋回可能である。また、圧油は、作業装置4に設けられたブームシリンダ5a、アームシリンダ6a、バケットシリンダ7aへも供給される。
【0024】
走行モータ12や旋回モータ14、さらにブームシリンダ5a、アームシリンダ6a、バケットシリンダ7a(以下、纏めてアクチュエータ70とも言う)へ供給される圧油は、各々対応して設けられた油圧制御弁16によって流量が制御され、これにより圧油の供給度合い、即ち油圧が調整され、油圧に応じて走行体1、旋回体2、ブーム5、アーム6、バケット7がそれぞれ駆動される。油圧制御弁16は電磁式であって運転室8内に設けられたコントローラ80に電気的に接続されている。コントローラ80は、さらに運転室8内の操作装置18に電気的に接続されており、これより、油圧制御弁16は、操作装置18の操作に応じて適宜切換制御される。操作装置18は、オペレータがアクチュエータ70を操作するための操作レバー18aや安全装置の作動、非作動を切り換えるための操作ボタン18b等により構成されている。
【0025】
旋回フレーム3上の作業装置4を挟んで運転室8とは反対側位置には、エンジン10に供給される燃料を貯蔵するための燃料タンク30が配設され、燃料タンク30と機械室9との間には、油圧ポンプ20に作動油を供給するための作動油タンク40が配設されている。
【0026】
さらに、旋回フレーム3上には、側部及び後部のカウンタウエイト2a上に位置して、複数の検出装置50が配設されている。ここでは、機体の側部と後部とにそれぞれ左右一対の検出装置50a、50b及び検出装置50c、50dが配設されている。検出装置50は、機体の周囲の物体(例えば、人)を検出するとともに物体までの距離を測定可能に構成されている。検出装置50は、撮像カメラであってもよいし、LIDAR、ミリ波センサ、RFタグ等、目標とした対象物を検出し且つ対象物までの距離を測定可能なセンサ等であればその形態は問わない。
【0027】
また、機械室9内には、エンジン10や油圧ポンプ20の他、検出装置50、油圧制御弁16、コントローラ80等の各種装置類に電力を供給するための二次電池(蓄電装置)60が設けられている。
図3を参照すると、アクチュエータ70を作動させる圧油が循環する油圧回路の一部が概略的に示されている。
【0028】
同図に示すように、油圧回路は、エンジン10により駆動される油圧ポンプ20、油圧制御弁16、アクチュエータ70及び作動油タンク40が油路17により接続されて構成されており、油圧制御弁16がコントローラ80によって出位置と戻位置と停止位置とに切換制御されることでアクチュエータ70の作動方向が切り換えられる。また、油圧制御弁16は流量制御弁としても機能しているため、コントローラ80によって制御される油圧制御弁16の弁開度に応じて圧油の流量制御が行われ、これによりアクチュエータ70の動作速度が調整される。図3では、アクチュエータ70が旋回モータ14である場合を例示しているが、油路17は分岐しており、これにより圧油は走行モータ12、ブームシリンダ5a、アームシリンダ6a、バケットシリンダ7aにも各々個別に設けられた油圧制御弁16を介して同様に供給されている。
【0029】
コントローラ80はエンジン10に電気的に接続されており、コントローラ80からの情報に基づきエンジン10の出力が可変操作されることで油圧ポンプ20の回転速度、ひいては圧油の吐出量が調整される。また、コントローラ80は油圧ポンプ20に電気的に接続されており、コントローラ80からの情報に基づき斜板の傾転角が可変操作されることで油圧ポンプ20からの圧油の吐出量が調整される。
【0030】
なお、エンジン10は動力発生装置の一例であり、電動モータ等、動力を発生可能であればその形態は問わない。また、油圧制御弁16は流量を制御できれば弁のパイロット圧を電磁弁で間接的に制御する油圧パイロット式の制御弁であってもよい。
【0031】
図4を参照すると、コントローラ80の本発明の第1実施形態に係るブロック図が示されている。
コントローラ80の入力側には、操作装置18及び検出装置50が電気的に接続されており、出力側には、エンジン10、油圧ポンプ20及び油圧制御弁16が電気的に接続されている。
【0032】
コントローラ(制御装置)80は、安全装置として機能し、検出装置50からの情報に基づきアクチュエータ70の作動を減速或いは停止、即ち機体を減速動作及び停止動作させるべく通常の速度制限を行う主安全装置部82、検出装置50の状態、例えば検出装置50における通信情報負荷を演算する検出装置状態演算部84、検出装置状態演算部84により検出された検出装置50の状態に基づき、検出装置50の検出性能、例えば検出装置50の検出精度、検出距離、検出範囲等を変更する検出性能変更制御部86、検出性能変更制御部86により変更された検出装置50の検出性能に基づき、機体のアクチュエータ70が停止可能な最大作動速度を制限速度である停止可能動作速度Vaとして演算する機体動作演算部88、操作装置18からの操作情報と機体動作演算部88により演算されたアクチュエータ70の制限速度と主安全装置部82における速度制限とに基づいてアクチュエータ70の動作を決定し、エンジン10、油圧ポンプ20及び油圧制御弁16に動作制御指令を出力する動作制御部90を有している。
【0033】
図5を参照すると、コントローラ80が実行する本発明の第1実施形態に係る制御ルーチンがフローチャートで示されており、以下同フローチャートに基づき、本発明に係る安全装置の作用について説明する。
【0034】
まず、ステップS10では、検出装置状態演算部84からの情報に基づき、検出性能変更制御部86において検出装置50の性能を変更するとともに、機体動作演算部88においてアクチュエータ70の停止可能動作速度Vaを演算する。
【0035】
図6を参照すると、ステップS10のサブルーチンがフローチャートで示されており、当該フローチャートに沿ってアクチュエータ70の停止可能動作速度Vaの演算を行う。
【0036】
ステップS30では、検出装置状態演算部84において検出装置50の状態を演算により求める。具体的には、搭載された別機器による通信情報負荷が増加して過負荷状態になると、検出装置50からコントローラ80へ送られる情報の失報が発生することがあり、例えば現在の通信状況に基づき検出装置50の通信情報負荷、ひいては通信可能な情報量を演算する。
【0037】
そして、ステップS32で、検出装置50が通信可能な情報量に基づき、検出性能変更制御部86において検出装置50の検出性能を変更する。実際には、図7に示すように、検出装置50の情報量と検出装置50の検出性能との関係を示すマップが予め設定されており、当該マップに基づき検出装置50の検出性能を変更する。図7によれば、検出装置50が通信可能な情報量が大であるほど検出性能は低下すると考えられることから、検出装置50の検出性能を小さい側に変更する。具体的には、通信情報負荷を低減させるべく、例えば通信情報送信周期の低下或いは通信情報精度の低下により検出装置50の通信情報量を低下させて検出性能を小さい側に変更する。これにより、検出精度、検出距離、検出範囲等が変更される。
【0038】
ステップS34では、機体動作演算部88において、ステップS32で変更した検出装置50の検出性能に基づき、アクチュエータ70が停止可能な最大作動速度、即ちアクチュエータ70の停止可能動作速度Vaを演算する。実際には、図8に示すように、検出性能と停止可能動作速度Vaとの関係を示すマップが予め設定されており、当該マップに基づき停止可能動作速度Vaを求める。即ち、検出装置50の検出性能が低下するほどアクチュエータ70の停止可能動作速度Vaが小さくなるように演算する。
【0039】
図5に戻り、ステップS11では、安全装置が作動中か否か、即ち操作ボタン18bが作動側に操作され、主安全装置部82においてアクチュエータ70の作動を減速或いは停止させるべく速度制限が実施されているか否かを判別する。判別結果が真(Yes)で安全装置が作動中と判定された場合には、ステップS12に進む。
【0040】
ステップS12では、検出装置50が機体の周りに物体を検出したか否かを判別する。判別結果が真(Yes)で機体の周りに物体が存在していることが検出装置50によって検出された場合には、ステップS13に進む。一方、判別結果が偽(No)で機体の周りに物体が存在していることが検出されない場合には、ステップS10に戻る。
【0041】
ステップS13では、安全装置における減速及び停止の目標動作を実現するアクチュエータ70の通常の目標動作速度Vtを演算し、ステップS14に進む。
ステップS14では、安全装置におけるアクチュエータ70の通常の目標動作速度Vtが上記停止可能動作速度Va以下か否かを判別する。判別結果が真(Yes)で目標動作速度Vtが停止可能動作速度Va以下と判定された場合には、ステップS15に進む。ステップS15では、アクチュエータ70の動作速度Vが安全装置における通常の目標動作速度Vtとなるように、少なくともエンジン10、油圧ポンプ20及び油圧制御弁16のいずれか一つを制御する。
【0042】
一方、ステップS14の判別結果が偽(No)で目標動作速度Vtが停止可能動作速度Vaより大きいと判定された場合には、ステップS17に進む。ステップS17では、アクチュエータ70の動作速度Vが停止可能動作速度Vaとなるように、少なくともエンジン10、油圧ポンプ20及び油圧制御弁16のいずれか一つを制御する。
【0043】
操作ボタン18bが非作動側に操作されており、上記ステップS11の判別結果が偽(No)で安全装置が作動中ではないと判定された場合には、ステップS20に進む。ステップS20では、通常のオペレータの操作レバー18aの操作によるアクチュエータ70の動作速度、即ちオペレータ動作速度Voが停止可能動作速度Va以上か否かを判別する。判別結果が真(Yes)でオペレータ動作速度Voが停止可能動作速度Va以上である場合には、ステップS17に進み、上述したと同様に、アクチュエータ70の動作速度Vが停止可能動作速度Vaとなるように、少なくともエンジン10、油圧ポンプ20及び油圧制御弁16のいずれか一つを制御する。
【0044】
一方、ステップS20の判別結果が偽(No)でオペレータ動作速度Voが停止可能動作速度Va未満である場合には、ステップS22に進み、アクチュエータ70の動作速度Vがオペレータ動作速度Voとなるように、少なくともエンジン10、油圧ポンプ20及び油圧制御弁16のいずれか一つを制御する。
【0045】
図9を参照すると、安全装置におけるアクチュエータ70の通常の目標動作速度Vtが停止可能動作速度Va以下であって、アクチュエータ70を目標動作速度Vtで作動させる場合、或いはオペレータの操作によるアクチュエータ70の動作速度Voが停止可能動作速度Va未満であってアクチュエータ70を動作速度Voで作動させる場合の各検出装置50a~50dによるそれぞれの検出範囲D0a~D0dと走行モータ12及び旋回モータ14による旋回フレーム3の動作範囲M0a及びM0bとがそれぞれ模式的に示されている。
【0046】
図9に示す状況は、検出装置50が正常な状態であり、検出装置50の検出性能はアクチュエータ70の動作速度Vを停止可能動作速度Vaに下げるほどまでは低下していないような状況である。この場合には、各検出装置50a~50dの検出性能は周囲の物体を十分に検出可能な検出範囲D0a~D0dであり、目標動作速度Vtや動作速度Voでアクチュエータ70を作動させると、安全に停止できる走行モータ12及び旋回モータ14による旋回フレーム3の動作範囲は、慣性による作動の範囲を含めて、動作範囲M0a及びM0bのように十分に大きな範囲とされる。
【0047】
一方、図10を参照すると、安全装置におけるアクチュエータ70の通常の目標動作速度Vtが停止可能動作速度Vaより大きく、或いはオペレータの操作によるアクチュエータ70の動作速度Voが停止可能動作速度Va以上であって、アクチュエータ70を停止可能動作速度Vaで作動させる場合の各検出装置50a~50dによるそれぞれの検出範囲D1a~D1dと走行モータ12及び旋回モータ14による旋回フレーム3の動作範囲M1a及びM1bがそれぞれ模式的に示されている。
【0048】
図10に示す状況は、検出装置50が異常な状態であり、検出装置50の検出性能がアクチュエータ70の動作速度Vを停止可能動作速度Vaに下げるほど低下している状況である。この場合には、検出性能を低下させるため、各検出装置50a~50dの検出性能は小さな検出範囲D1a~D1dとなり、停止可能動作速度Vaでアクチュエータ70を作動させて安全に停止できる走行モータ12及び旋回モータ14による旋回フレーム3の動作範囲は、慣性による作動の範囲を含めて、動作範囲M1a及びM1bのように小さい範囲に制限される。
ステップS15或いはステップS22を実行したら、上記ステップS10に戻り、当該ルーチンを繰り返し実行する。
【0049】
以上、説明したように、本発明の作業機械によれば、機体の周囲の物体を検出するとともに物体までの距離を測定可能な検出装置50を備え、検出装置50の検出性能が低下すると考えられる状態下にあっては、検出装置50の検出性能を変更して低下させるようにし、当該検出性能の低下度合に応じてアクチュエータ70が停止可能な最大速度である停止可能動作速度Vaを求め、アクチュエータ70の動作速度Vを安全装置におけるアクチュエータ70の通常の目標動作速度Vtから停止可能動作速度Vaに制限するようにして安全装置を構成している。これにより、例えば検出装置50の通信可能な情報量に関し、通信情報負荷が増加して過負荷状態となり失報が発生するような異常な状態下であっても、検出装置50の通信情報量を低下させて検出性能を低下させ且つアクチュエータ70の動作速度Vを制限することで、継続して安全装置を適切に機能させ、機体、即ち走行体1、旋回体2、ブーム5、アーム6、バケット7を安全に作動させ続けることができる。
【0050】
また、安全装置を作動させないような状況であっても(図5のステップS11の判別結果が偽(No)の場合)、検出装置50の検出性能が低下するような状態下では、やはりアクチュエータ70の動作速度Vをオペレータによるアクチュエータ70の動作速度であるオペレータ動作速度Voから停止可能動作速度Vaに制限するようにしたので、安全装置の作動、非作動に拘わらず、走行体1、旋回体2、ブーム5、アーム6、バケット7を常に安全に作動させることも可能である。
【0051】
なお、ここでは、検出装置50の検出性能が低下する要因となる検出装置50の状態として現在の通信状況に基づく検出装置50の通信情報負荷、ひいては通信可能な情報量を求め、これに対し検出装置50の変更する検出性能として検出装置50の通信情報量、例えば通信情報送信周期や通信情報精度を例示したが、検出装置50の検出性能が低下する要因となる検出装置50の状態と検出装置50の変更する検出性能については、上記の他、低下することで検出装置50における別の状態が改善するいわゆるトレードオフ関係にあるような検出装置50の検出性能と状態変化の関係の全てを適用対象とすることができる。
【0052】
例えば、図11(a)~(c)に検出装置50の電力消費と検出装置50の走査出力と検出装置50の検出性能との関係を示し、図12(a)~(c)に検出装置50の温度と検出装置50の走査出力と検出装置50の検出性能との関係を示すように、検出装置50の電力消費や温度の変化に対して検出装置50の走査出力(走査周期やレーザ出力)を変更してもよく、図13(a)~(c)に検出装置50に加わる振動ノイズの周波数と検出装置50のフィルタ処理の応答速度と検出装置50の検出性能との関係を示すように、検出装置50に加わる振動ノイズの周波数の変化に対して検出装置50のフィルタ処理の応答速度を変更してもよく、図14(a)~(c)に検出装置50に加わる電磁波ノイズの周波数と検出装置50の通信ボーレートと検出装置50の検出性能との関係を示すように、電磁ノイズの周波数の変化に対して検出装置50の通信ボーレートを変更してもよい。
【0053】
なお、これら検出装置50の検出性能が低下する要因となる検出装置50の状態と検出装置50の変更する検出性能との複数の関係については、単独で用いて検出性能を変更してもよく、いずれか2つ以上の関係を組み合わせて検出性能を変更するようにしてもよい。2つ以上の関係を組み合わせて検出性能を変更する場合には、相対的にいずれか小さくなる検出性能を選択して採用してもよいし、例えば一つの関係における検出性能によって他の関係における検出性能を補正するようにしてもよい。
【0054】
[第2実施形態]
第2実施形態では、検出装置状態演算部84において、通信の情報量に加え、二次電池60の蓄電量情報に基づいて検出装置50の検出性能を演算している点が第1実施形態と異なっており、以下、第1実施形態と共通する部分については説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0055】
図15を参照すると、コントローラ(制御装置)180の第2実施形態に係るブロック図が上記図4と同様に示されている。同図に示すように、コントローラ180には、二次電池60の蓄電量情報が入力されるよう構成されている。例えば、二次電池60には二次電池60の蓄電電圧を計測する電圧計(図示せず)が設けられており、コントローラ180には、当該電圧計からの電圧情報が入力される。
【0056】
図16を参照すると、コントローラ180が実行する第2実施形態に係る制御ルーチンのサブルーチンがフローチャートで示されている。
第2実施形態では、上記第1実施形態における図6のステップS30の後、ステップS31を実行する。ステップS31では、検出装置状態演算部84において、さらに二次電池60の蓄電量情報に基づいて二次電池60の蓄電量、ひいては検出装置50に供給される電力量を演算する。
【0057】
ステップS132では、検出装置50が通信可能な情報量及び二次電池60の蓄電量に基づき、検出性能変更制御部86において検出装置50の検出性能を変更する。具体的には、図17に示すように、二次電池60の蓄電量と検出装置50の検出性能との関係を示すマップについても予め設定されており、上述の図7に示す検出装置50の情報量と検出性能との関係を示すマップと図17に示す二次電池60の蓄電量と検出性能との関係を示すマップとに基づいて検出装置50の検出性能を変更する。図17によれば、二次電池60の蓄電量が少ないほど検出装置50に供給される電力は減少して検出装置50の検出性能は低下すると考えられることから、通信可能な情報量が大であるほど検出性能を小さい側に変更するとともに、二次電池60の蓄電量が少ないほど検出性能を小さい側に変更する。
【0058】
この場合、検出装置50の情報量に応じて変更した検出性能と蓄電量に応じて変更した検出性能のいずれか小さい方に検出装置50の検出性能を変更してもよいし、検出装置50の情報量に応じて変更した検出性能を蓄電量に応じて変更した検出性能で補正するようにしてもよい。
【0059】
そして、ステップS34において、ステップS132で変更した検出装置50の検出性能に基づき、アクチュエータ70の停止可能動作速度Vaを演算する。
これより、本発明の第2実施形態に係る作業機械によれば、二次電池60の蓄電量の減少による電力の供給不足が発生するような状況下においても、検出装置50の検出性能を低下させ、当該検出性能の低下に応じて、アクチュエータ70の動作速度Vを安全装置におけるアクチュエータ70の通常の目標動作速度Vtから停止可能動作速度Vaに制限するようにしたので、電力の供給不足による各機器の作動停止を防止しながら、やはり走行体1、旋回体2、ブーム5、アーム6、バケット7を安全に作動させ続けることができる。
【0060】
なお、ここでは、上記第1実施形態における検出装置50の情報量に応じて変更した検出性能と併せて蓄電量に応じて変更した検出性能に基づいてアクチュエータ70の動作速度Vを停止可能動作速度Vaに制限するようにしているが、蓄電量に応じて変更した検出性能にのみ基づいてアクチュエータ70の動作速度Vを停止可能動作速度Vaに制限するようにしてもよい。
【0061】
[第3実施形態]
第3実施形態では、検出性能変更制御部86及び機体動作演算部88からの情報に基づき、検出装置50の検出性能の変更に関する情報及び機体の動作の内容を表示可能に構成した点が第1及び第2実施形態と異なっており、以下、第1及び第2実施形態と共通する部分については説明を省略し、第1及び第2実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0062】
図18を参照すると、コントローラ(制御装置)280の第3実施形態に係るブロック図が上記図4と同様に示されている。同図に示すように、コントローラ280には、表示部92が設けられており、コントローラ280の出力側には、さらに表示装置100が電気的に接続されている。
【0063】
表示部92は、検出性能変更制御部86からの情報に基づき、検出装置50の検出性能を変更する理由として検出性能低下原因を表示可能に画像処理するとともに、機体動作演算部88からの情報に基づき、各検出装置50a~50dによる各検出範囲D1a~D1dと走行モータ12及び旋回モータ14による旋回フレーム3の各動作範囲M1a~M1dとを機体動作範囲として模式的に表示可能に画像処理を行う。
【0064】
表示装置100は、図2に示すように、オペレータが視認可能なように運転室8内に設けられており、図19に示すように、例えば、表示部92にて画像処理した検出性能低下原因及び機体動作範囲を表示する。図19では、例えば、二次電池60の蓄電量が少ないために検出装置50の検出性能を変更し、アクチュエータ70の動作速度Vを停止可能動作速度Vaに下げた場合の機体動作範囲を表示している。この場合、機体動作範囲は図10と同様に図示され、検出性能低下原因は例えば「電力不足」と表示される。
【0065】
これより、本発明の第3実施形態に係る作業機械によれば、検出装置50の検出性能を変更した場合において、機体動作範囲や検出性能低下原因をオペレータが視認可能に表示装置100に表示するようにしたので、オペレータに対し現在の安全装置の状態、即ち現在の検出装置50の状態とともにアクチュエータ70の作動状況を伝えるようにできる。
【0066】
なお、表示装置100に表示する内容は機体動作範囲や検出性能低下原因に限られるものではなく、検出装置50の検出性能の変更内容を表示するようにしてもよい。検出装置50の通信情報量に基づいて検出装置50の検出性能を変更する場合には、例えば「通信情報量」等と表示される。
【0067】
[第4実施形態]
第4実施形態では、オペレータによる操作によって機体動作演算部88におけるアクチュエータ70の速度制限を解除する点が第1実施形態と異なっており、以下、第1実施形態と共通する部分については説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0068】
図20を参照すると、コントローラ(制御装置)380の第4実施形態に係るブロック図が上記図4と同様に示されている。同図に示すように、コントローラ380の入力側には、さらに操作装置18の一部としてオペレータがアクチュエータ70の速度制限の解除、即ち制限解除を行うための操作ボタン18cが電気的に接続されており、コントローラ380には解除制御部94が設けられている。
【0069】
また、図21を参照すると、コントローラ380が実行する本発明の第4実施形態に係る制御ルーチンがフローチャートで示されており、以下同フローチャートに基づき説明する。
【0070】
第4実施形態では、第1実施形態の図5のフローチャートと異なり、ステップS14の判別結果が真(Yes)の場合とステップS20の判別結果が真(Yes)の場合においてそれぞれステップS16とステップS21の判別を行うように構成されている。
【0071】
ステップS16とステップS21では、共にオペレータによる操作ボタン18cの操作によって制限解除が行われて制限解除有の状態か否かを判別する。ステップS16の判別結果が真(Yes)で制限解除が行われたと判定された場合には、ステップS15に進み、アクチュエータ70の動作速度Vが安全装置における通常の目標動作速度Vtとなるように、少なくともエンジン10、油圧ポンプ20及び油圧制御弁16のいずれか一つを制御する。ステップS21の判別結果が真(Yes)で制限解除が行われたと判定された場合には、ステップS22に進み、アクチュエータ70の動作速度Vがオペレータが操作する動作速度Voとなるように、少なくともエンジン10、油圧ポンプ20及び油圧制御弁16のいずれか一つを制御する。
【0072】
一方、ステップS16の判別結果やステップS21の判別結果が偽(No)でアクチュエータ70の速度制限が行われている場合には、共にステップS17に進み、アクチュエータ70の動作速度Vを停止可能動作速度Vaに制限する。
【0073】
即ち、オペレータによる操作装置18の操作ボタン18cの操作によって制限解除が行われた場合には、検出装置50の検出性能が低下しているような状況であっても、即ちアクチュエータ70の動作速度Vを停止可能動作速度Vaに制限すべき状況であっても、オペレータの意思を優先し、安全装置におけるアクチュエータ70の通常の目標動作速度Vtでの運転、或いはオペレータによるアクチュエータ70の通常のオペレータ動作速度Voでの運転が実行されるようにする。
【0074】
これより、本発明の第4実施形態に係る作業機械によれば、検出装置50の検出性能を変更するような場合であっても、オペレータによる操作装置18の操作によって制限解除が行われた場合には、安全装置におけるアクチュエータ70の通常の目標動作速度Vtでの運転、或いはオペレータによるアクチュエータ70の通常のオペレータ動作速度Voでの運転が優先的に実行されるようにしているので、緊急時等において、オペレータの操作装置18の操作によってアクチュエータ70の作動状態を速やかに制限のない通常の作動状態に戻すことができる。
【0075】
以上で本発明に係る作業機械の説明を終えるが、本発明の実施形態は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記各実施形態では、図7図8図11図14及び図17に示すように、それぞれ検出装置50の検出性能が低下する要因となる検出装置50の状態と検出装置50の変更する検出性能との関係が予めマップとして設定され、検出装置50の検出性能と停止可能動作速度Vaとの関係が予めマップとして設定されており、これらマップに基づいて検出装置50の検出性能を変更し、停止可能動作速度Vaを求めるようにしているが、コントローラ80、180、280、380の検出性能変更制御部86及び機体動作演算部88において、所定の演算式を用いて直接計算によって検出性能の値や停止可能動作速度Vaの値を求めるようにしてもよい。
【0076】
また、上記各実施形態では、検出装置50として機体の側部と後部とにそれぞれ左右一対の検出装置50a、50b及び検出装置50c、50dを配設し、これら検出装置50a、50b及び検出装置50c、50dの検出性能を変更して走行モータ12や旋回モータ14の動作速度Vを変更するようにしているが、検出装置50の数や配設位置はこれらに限定されるものではなく、アクチュエータ70のうち動作速度Vを変更する対象もこれらに限定されるものではない。従って、例えば検出装置50を機体の前部にも配設し、検出装置50の状態に応じて検出装置50の検出性能を変更し、ブームシリンダ5a、アームシリンダ6a及びバケットシリンダ7aの動作速度Vを変更することも可能である。
また、上記各実施形態では、作業機械としてクローラ式の油圧ショベルを例に挙げて説明したが、作業機械はこれに限られるものではない。
【符号の説明】
【0077】
1 走行体
2 旋回体
3 旋回フレーム
10 エンジン
12 走行モータ
14 旋回モータ
16 油圧制御弁
18 操作装置
18c 操作ボタン
20 油圧ポンプ
50 検出装置
60 二次電池(蓄電装置)
70 アクチュエータ
80、180、280、380 コントローラ(制御装置)
82 主安全装置部
84 検出装置状態演算部
86 検出性能変更制御部
88 機体動作演算部
90 動作制御部
92 表示部
94 解除制御部
100 表示装置
図1
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