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特許7148492ガスタービンからの煙道ガスを使用して炭化水素ストリームを分解する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】ガスタービンからの煙道ガスを使用して炭化水素ストリームを分解する方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 9/36 20060101AFI20220928BHJP
   F01K 23/10 20060101ALI20220928BHJP
   F02G 5/02 20060101ALI20220928BHJP
   C10G 9/14 20060101ALI20220928BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20220928BHJP
   C07C 11/06 20060101ALI20220928BHJP
   C07C 4/04 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
C10G9/36
F01K23/10 Z
F02G5/02 A
F02G5/02 C
C10G9/14
C07C11/04
C07C11/06
C07C4/04
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019503949
(86)(22)【出願日】2017-07-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 IB2017054476
(87)【国際公開番号】W WO2018020399
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-07-06
(31)【優先権主張番号】16180943.9
(32)【優先日】2016-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ヴィリゲンブルク,ヨリス
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0080970(US,A1)
【文献】特開昭62-148591(JP,A)
【文献】特表2015-511654(JP,A)
【文献】特開昭59-199792(JP,A)
【文献】特開昭58-104993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 9/36
F01K 23/10
F02G 5/02
C10G 9/14
C07C 11/04
C07C 11/06
C07C 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素ストリームを分解するための方法であって、
(a)ガスタービン内において圧縮空気の存在下で燃料を燃焼して煙道ガスを生成する工程であって、前記煙道ガスはタービンを駆動して接続された発電機またはワーク内において接続された回転装置に動力供給するための電気を提供する工程、
(b)前記煙道ガスの第1部分を熱交換器に供給する工程、
(c)前記煙道ガスの前記第1部分によって加熱されるべく前記熱交換器に環境空気を供給して加熱空気を提供する工程、
(d)放射部と対流部とを備えるスチームクラッキングユニットの炉の前記放射部に、燃料と前記煙道ガスの第2部分と工程(c)によって得た前記加熱空気との混合物を供給する工程
(e)前記スチームクラッキングユニットの炉の前記対流部に、当該スチームクラッキングユニット中の前記炉の対流コイルを介して炭化水素フィードストリームを供給して、前記炭化水素フィードストリームをスチーム分解する工程、および、
(f)前記煙道ガスまたは前記煙道ガスの前記第2部分の酸素含有率を高める工程、を備え、
前記第1部分と前記第2部分との比率が40:60~60:40であり、
工程(a)で得られる前記煙道ガスは、体積比で酸素を13%~15%含有し、
前記炭化水素フィードストリームは、前記炉の前記対流部および前記炉の前記放射部の両方によって予熱され、
前記工程(a)において得られる前記煙道ガスは300℃~800℃の温度を有し、
前記混合物は300℃~800℃の温度を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ここにその全体を参考文献として合体させる、2016年7月25日出願のヨーロッパ特許出願第16180943.9号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、ガスタービンからの煙道ガスを使用して炭化水素ストリームを分解する方法に関する。最も好適な実施例において、分解は、スチームクラッカによって行われる。
【背景技術】
【0003】
熱分解とも称されるスチームクラッキングは、長い間、種々の炭化水素フィードストックを、オレフィン類、好ましくは、エチレン、プロピレン、ブテン類、などの軽質オレフィン類に分解するために使用されてきた。従来のスチームクラッキングは、二つの主要部分、すなわち対流部および放射部を備える熱分解炉を利用する。炭化水素フィードストックは、通常、炉の対流部に、液体として入り(蒸気として入る軽質フィードストックを除く)、そこで、それは放射部からの高温煙道ガスとの間接的接触とスチームとの直接接触とによって加熱、気化される。その後、気化されたフィードストックおよびスチーム混合物は、放射部に導入されて、ここで分解(cracking)が行われる。それによって得られるオレフィン類を含む生成物は、急冷を含むさらなる下流側処理のために熱分解炉を出る。
【0004】
分解炉において高温の酸素リッチな排気ガスを燃焼空気として利用しながら動力を作り出すためにガスタービン(GT)を使用することは、エチレン単位生成当たりのエネルギ要件を低減するための非常に魅力的な手段である。このような方法は、たとえば、Integrating Gas Turbines with Cracking Heaters in Ethylene Plants, International Journal of Engineering Research & Technology (UERT), Vol. 3 Issue 6, June-2014, p.820-825(非特許文献1)から知られ、そこに説明されている。タービン排気(TEG)の利用は、高レベルの予熱を提供してヒータの燃料要件を低減する効果的な手段である。しかしながら、空気予熱システムと異なり、TEGの低い酸素含有率により、炉を通過する煙道ガスの総質量流は増加する。これによって、熱分解モジュールの対流(熱回収)部分におけるスチーム生成が増加する。
【0005】
国際公開第2015/128035号(特許文献1)は、タービン排気を利用することによるガスタービン統合を通じて処理炉エネルギ効率を増大させる方法を開示している。排気は、熱回収ユニットに供給される。特許文献1のシステムは、予熱された空気を使用することによって火炎温度が高まり、煙道ガス中の燃焼後において形成される不要なNOxの量が増大するという問題がある。
【0006】
その要約によれば米国特許出願公開第2006/0080970号明細書(特許文献2)は、触媒を必要とするスチームメタン改質装置と使用されるガスタービンと一体化された流体ヒータ内において流体を加熱する方法を記載している。
【0007】
エネルギ効率が高く、かつ、NOxの量が低減される方法が求められている。また、炉によるスチーム生成を増大させるのではなく炉によって燃やされる燃料を節約するエネルギ効率増大方法も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2015/128035号
【文献】米国特許出願公開第2006/0080970号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】Integrating Gas Turbines with Cracking Heaters in Ethylene Plants, International Journal of Engineering Research & Technology (UERT), Vol. 3 Issue 6, June-2014, p.820-825
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、ガスタービンからの煙道ガスを使用して炭化水素ストリームを分解する方法であって、エネルギ効率が高く、かつ、NOxの量が低減される方法を提供することにある。その炉によるスチーム生成を増大させるのではなく、スチームクラッキングユニットの炉によって燃やされる燃料を節約するエネルギ効率増大方法を提供することも本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、炭化水素ストリームを分解する方法を提供し、当該方法は、ガスタービン内で圧縮空気の存在下で燃料を燃焼して煙道ガスを生成する工程であって、煙道ガスはタービンを駆動して接続された発電機またはワーク内において接続された回転装置に動力供給するための電気を提供する工程、煙道ガスの第1部分を熱交換器に供給する工程、熱交換器に環境空気を供給して煙道ガスの第1部分によって加熱して加熱空気を提供する工程、および、炉に対して、燃料と、煙道ガスの第2部分と工程(c)によって得られた加熱空気との混合物とを供給し、そして、スチームクラッキングユニットの炉内において炭化水素ストリームを分解する工程、を備える。
【0012】
本発明は、さらに、炭化水素ストリームを分解するためのシステムを提供し、当該システムは、圧縮空気の存在下で燃料を燃焼して煙道ガスを生成するためのガスタービンであって、煙道ガスはタービンを駆動して接続された発電機またはワーク内において接続された回転装置に動力供給するための電気を提供するガスタービン、煙道ガスの第1部分と環境空気とが供給される熱交換器であって、環境空気は煙道ガスの第1部分によって加熱されて加熱空気を提供する熱交換器、および、炭化水素ストリームを分解するためのスチームクラッキングユニットの炉であって、炉には燃料と煙道ガスの第2部分と加熱空気との混合物とが供給されるスチームクラッキングユニットの炉、を備える。炉は、好ましくは、スチームクラッキングユニット(スチームクラッカ)の一部である。
【0013】
本発明の方法およびシステムによれば、ガスタービンによって作り出された煙道ガス(ガスタービン排気)は、スチームクラッキングユニットの炉に供給される環境空気を加熱するのに使用される第1部分と、炉に供給される第2部分とに分割される。したがって、スチームクラッキングユニットの炉に供給される燃焼空気は、煙道ガスの第2部分と、煙道ガスの第1部分によって加熱された空気との混合物である。
【0014】
煙道ガスは環境空気よりも低い酸素含有率を有する。したがって、もしも炉に供給される燃焼空気が煙道ガスからなるならば、炉の火炎温度は低いものとなるであろう。もしも炉に供給される燃焼空気が空気からなるならば、炉の火炎温度は高いものとなるであろう。また、炉に供給される燃焼空気の温度が高いことによって炉の火炎温度は高くなる。
【0015】
以下は、本明細書全体を通じて使用される様々な用語と語句の定義を含む。
【0016】
用語「約(about)」または「概算で(approximately)」は、当業者によって理解されるものに近いものとして定義される。一つの非限定的実施例において、これらの用語は、10%以内、好ましくは5%以内、より好ましくは1%以内、最も好ましくは0.5%以内、と定義される。
【0017】
用語「重量%(wt.%)」、「体積%(vol.%)」または「モル%(mol.%)」は、それぞれ、当該成分を含む材料の、総重量、総体積、または総モル数、に基づく成分の重量、体積またはモル比率を指す。非限定的例において、100モルの材料中の10モルの成分は10モル%の成分である。
【0018】
明細書および/または請求項に使用されている用語としての用語「有効(effective)」とは、所望の、予期される、または意図される結果を達成するのに適していることを意味する。
【0019】
請求項または明細書中の用語「含む(comprising)」とともに使用される冠詞「a」または冠詞「an」は「一つ」を意味しうるが、「単数または複数(one or more)」、「少なくとも一つ(at least one)」および「一つまたはそれ以上(one or more than one)」とも矛盾しない。
【0020】
用語「comprising(および、comprise、comprisesなどのすべての語形)」、「having(および、have、hasなどの全ての語形)」、「including(および、includes、includeなどの全ての語形)」または「containing”(および、contains、containなどの全ての語形)は、包合的でオープンエンド的であり、追加の記載されていない要素または方法または工程を排除するものではない。
【0021】
本発明の方法は、本明細書全体に開示されている、特定の成分、コンポーネント、組成物、工程などを、「含む(comprise)」、「から実質的な構成(consist essentially of)」、または「から成る(consist of)」ものとすることができる。また、あるコンポーネントを含む製品/組成物/システムに関する記載は、これらのコンポーネントから成る製品/組成物/方法/システム、も開示するものであると理解される。これらのコンポーネントから成る製品/組成物/方法/システムは、たとえば、それによって、製品/組成物の調製のためのより単純で、より経済的な方法を提供する点において有利でありうる。同様に、たとえば、ある種の工程を含む方法に関する記載は、これらの工程から成る方法をも開示するものであると理解される。これらの工程から成る方法は、それによって、より単純で、より経済的な方法が提供される点において有利でありうる。
【0022】
値があるパラメータの下限と上限に関して記載される時において、これらの下限値の複数の値と上限値の複数の値との組み合わせによって構成される範囲も開示されているものと理解される。
【0023】
本発明の文脈において、以下、13の態様が記載される。第1の態様は炭化水素ストリームをスチームクラッキングするための方法である。この方法は、以下の工程を有する。すなわち、(a)ガスタービン内において圧縮空気の存在下で燃料を燃焼して煙道ガスを生成する工程であって、煙道ガスはタービンを駆動して接続された発電機またはワーク内において接続された回転装置に動力供給するための電気を提供する工程、(b)煙道ガスの第1部分を熱交換器に供給する工程、(c)煙道ガスの第1部分によって加熱される環境空気を熱交換器に供給して加熱空気を提供する工程、(d)スチームクラッキングユニットの炉の放射部に燃料と煙道ガスの第2部分と工程(c)によって得た加熱空気との混合物を供給する工程、および、(e)スチームクラッキングユニットの炉の対流部に、当該スチームクラッキングユニット中の炉の対流コイルを介して炭化水素フィードストリームを供給する工程、である。第2の態様は、第1の態様の方法であって、ここで、スチームクラッキングされる炭化水素フィードストリームは、炉の対流部、炉の放射部、またはこれらの両方、によって予熱される。第3の態様は第1の態様または第2の態様の方法であって、ここで、第1部分と第2部分との重量比は、1:99~99:1、たとえば、10:90~90:10、20:80~80:20、30:70~70:30、または40:60~60:40である。第4の態様は第1~3の態様のいずれかの方法であって、ここで、工程(a)において得られる煙道ガスは、体積比で酸素を、約5%~約18%、約10%~約16%、または約13%~約15%含有する。第5の態様は、第1~4の態様のいずれかの方法であって、ここで、工程(a)において得られる煙道ガスは、約300℃~約800℃、約350℃~約700℃、または約400℃~約650℃の温度を有する。第6の態様は、第1~5の態様のいずれかの方法であって、ここで、混合物は、約300℃~約800℃、約350℃~約700℃、または約400℃~約650℃の温度を有する。
【0024】
第7の態様は、炭化水素ストリームをスチームクラッキングするためのシステムである。当該システムは、(a)圧縮空気の存在下で燃料を燃焼して煙道ガスを生成するためのガスタービンであって、煙道ガスはタービンを駆動して接続された発電機またはワーク内において接続された回転装置に動力供給するための電気を提供するガスタービン、(b)煙道ガスの第1部分と環境空気とが供給される熱交換器であって、煙道ガスの第1部分によって環境空気が加熱されて加熱空気を提供する熱交換器、および、(c)炭化水素ストリームを分解するための炉を含むスチームクラッキングユニットであって、炉には燃料と煙道ガスの第2部分と加熱空気との混合物とが供給され、炉は放射部と対流部とを有するスチームクラッキングユニット、を備える。第8の態様は、実施例のシステムであって、ここで、熱交換器に供給される空気は、当該熱交換器に供給される前に加圧される。第9の態様は、第7~8の態様のいずれかのシステムであって、ここで、システムは、さらに、煙道ガスまたは煙道ガスの第2部分の酸素含有率を高めるための手段を有する。第10の態様は、第7~9の態様のいずれかのシステムであって、ここで、熱交換器は、フィード予熱、ボイラ供給水予熱、およびスチーム過熱の少なくとも一つの追加機能を有する。第11の態様は、第7~10の態様のいずれかのシステムであって、ここで、システムは、さらに、煙道ガスを第1部分と第2部分とに分割する前に、ガスタービンからの煙道ガスの一部を引き込むためのバイパススタックを有する。第12の態様は、第7~11の態様のいずれかのシステムであって、ここで、システムは炉を複数有し、ここで、これら炉のそれぞれに、燃料とガスタービンからの煙道ガスの一部分と熱交換器から加熱空気の一部分との混合物とが供給される。第13の態様は、第7~12の態様のいずれかのシステムであって、ここで、システムは炉を複数と、対応する数の熱交換器とを有し、ここで、これら炉のそれぞれに、燃料とガスタービンからの煙道ガスの一部分と各熱交換器からの加熱空気との混合物とが供給される。
【0025】
本発明のその他の課題、特徴および利点は、以下の図面、詳細説明、および例、から明らかになるであろう。本発明は、ここに記載される特徴の可能なすべての組み合わせ、特に、好適には、請求項に含まれる特徴の全ての組み合わせ、に関するものであると銘記される。したがって、本発明による組成物、方法、システムに関連する特徴の全ての組み合わせ、すなわち、本発明による方法に関連する特徴の全ての組み合わせと本発明によるシステムおよびに関連する特徴の全ての組み合わせ、および本発明による方法に関連する特徴の全ての組み合わせ、がここに記載されていることが理解されるであろう。ただし、図面、詳細説明、および例は、本発明の具体的実施例を示すものではあるが、これらは、例示的に提供されているものに過ぎず、限定的であることが意図されたものではないと理解されなければならない。さらに、本発明の要旨および範囲内の変形および改造は、本詳細説明から当業者にとって明らかであろうと考慮される。別実施例において、特定の実施例からの特徴は、他の実施例からの特徴と組み合わせることが可能である。たとえば、一つの実施例からの特徴を、他の任意の実施例からの特徴と組み合わせることができる。別実施例において、ここに記載される具体的実施例に対して追加の特徴を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の利点は、下記の詳細説明によって、そして添付の図面を参照することによって当業者にとって明らかにされる。
【0027】
図1】炉内の煙道ガスの熱発生プロットを図示している。
図2】燃料が非加熱燃焼空気とともに供給される炉を有するシステムの具体例の略図を示している。
図3】燃料が予熱燃焼空気とともに供給される炉を有するシステムの具体例の略図を示している。
図4】燃料が予熱燃焼空気とともに供給される炉を有するシステムの具体例の略図を示している。
図5】本発明による燃料が予熱燃焼空気とともに供給される炉を有するシステムの具体例の略図を示している。
図6】温度が対流部と煙道ガスの全ての要素に関する伝達される熱の関数としてプロットされている熱発生プロットを図示している。
図7】温度が対流部と煙道ガスの全ての要素に関する伝達される熱の関数としてプロットされている熱発生プロットを図示している。
図8】温度が対流部と煙道ガスの全ての要素に関する伝達される熱の関数としてプロットされている熱発生プロットを図示している。
図9】温度が対流部と煙道ガスの全ての要素に関する伝達される熱の関数としてプロットされている熱発生プロットを図示している。
図10図6図9の対流部におけるフィードストリーム予熱部材によって吸収される熱を図示している。
図11】燃料が予熱燃焼空気とともに供給される炉を有するスチームクラッカを含む本発明によるシステムの具体例の略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明によれば、煙道ガスと当該煙道ガスによって加熱された空気との混合物による燃焼空気の形成によって炉に供給される燃焼空気の温度と酸素含有率の制御が可能となる。また、これによって、炉内の火炎温度が制御される。これにより、NOxの形成を許容可能なレベルに制限しながら燃料消費を最適化することが可能となる。
【0029】
もう一つの重要な利点は、本発明によれば、分解条件、または、炉における燃焼の前に燃焼空気に加えられる熱から独立して、対流部への煙道ガスの流れを制御することが可能となることにある。本発明によれば、対流部における熱伝達を変更することなく、分解条件および/または燃焼空気予熱を変えること、あるいはその逆に、分解条件に影響を与えることなく対流部における熱伝達を変えること、が可能となる。一つの具体的利点は、高温ガスタービン排気による燃焼空気予熱を、炉によるスチーム生成を変更することなく、適用できることにある。これは、より多くのスチームが望ましくない場合に有利である。
【0030】
第1部分と第2部分との重量比は、任意の範囲、たとえば、1:99~99:1とするこができ、たとえば、10:90~90:10、20:80~80:20、30:70~70:30、40:60~60:40、などとすることができる。
【0031】
燃料は、空気の存在下での燃焼反応用に適した燃料とすることができ、たとえば、燃料は、石油、ガソリン、ディーゼル、天然ガス、または燃料ガスなどの炭化水素混合物とすることができ、これはエチレンプラントの副生物として生産されうる。たとえば、燃料ガスは水素とメタンとを含みうる。いくつかの実施例において、燃料ガスは、一酸化炭素と水素とを含むシンガス(合成ガス)とすることができる。シンガスは、石炭または石油製品のガス化によって作り出すことができる。
【0032】
ガスタービンによって得られる煙道ガスは、酸素、二酸化炭素、スチーム、および未燃焼燃料を含みうる。たとえば、煙道ガスは、体積比で約5%~約18%、約10%~約16%、または約13%~約15%の酸素を含有しうる。
【0033】
ガスタービンによって得られる煙道ガスは、約300℃~約800℃、約350℃~約700℃、または約400℃~約650℃の温度を有しうる。いくつかの実施例において、煙道ガスの温度は、たとえば、ダクトバーナを使用して、高めることができる。たとえば、煙道ガスの温度は約850℃まで高めることができる。
【0034】
熱交換器において、煙道ガスの第1部分から空気へと熱が伝達される。熱交換器によって得られる加熱空気は、100~800℃の温度を有しうる。その最終温度は、ガスタービン排気の温度と熱交換器構成とに依存する。
【0035】
炉は、好ましくはスチームクラッキング用の炉である。この炉は、放射部および対流部を有する。燃料および燃焼空気は放射部に入り、燃料が燃焼されてスチームクラッキング用の高い温度に達する。放射部は、1600~2200℃、たとえば1800~2000℃の断熱火炎温度を有しうる。
【0036】
フィード予熱、ボイラ供給水予熱、およびスチーム過熱が、通常、対流部において行われる。煙道ガスの第2部分(バイパス流と称される場合もある)の減少によって、断熱火炎温度が高くなり、放射部への熱が多くなり、対流部において熱回収のために利用可能な熱が少なくなる。したがって、いくつかの実施例において、熱交換器は、空気を加熱する機能に加えて、フィード予熱、ボイラ供給水予熱、およびスチーム過熱の少なくとも一つの追加機能を有する。これは、煙道ガスの第1部分に対する第2部分の比率が低い状況において特に有用である。
【0037】
好ましくは、システムは、熱交換器に供給される第1部分の量を制御するための手段を有する。
【0038】
好ましくは、システムは、加熱空気と混合される第2部分の量を制御するための手段を有する。
【0039】
好ましくは、熱交換器に供給される環境空気は、熱交換器に供給される前に加圧される。これによって、熱交換器によって作り出される圧力低下が克服される。これによって、新鮮空気側においてより大きな圧力降下を起こす熱交換器をよりコンパクトな構成にすることが可能となる。もしも圧力降下を低くする必要があるのであれば、気流速度が低いことが必要であり、これによって、パイプの直径が増大しパイプがよりコスト高になる。ある程度の圧力降下が許容される場合には、気流速度はもっと高いものであってよく、鉄の必要量が少なくなる。
【0040】
システムは、さらに、煙道ガスの第2部分の酸素含有率を高めるための手段を含みうる。
【0041】
いくつかの実施例において、本発明によるシステムは、さらに、煙道ガスを第1部分と第2部分とに分割する前に、ガスタービンからの煙道ガスの一部を引き込むためのバイパススタックを有する。これにより、スチームクラッカが運転休止中である場合、または、低負荷運転中である場合に、所望の負荷で電気または仕事(work)生産のためのガスタービンを使用することが可能となる。このようなバイパススタックは、当該バイパススタックへの空気流を制御するためのバルブ/エアレジスタ、を含む。
【0042】
いくつかの実施例において、本発明によるシステムは、複数の炉を有し、ここで、これら炉のそれぞれに、燃料とガスタービンからの煙道ガスの一部分と熱交換器から加熱空気の一部分との混合物とが供給される。いくつかの実施例において、ガスタービンからの煙道ガスは、複数の炉のそれぞれが、煙道ガスの一部分を供給され、かつ熱交換器が煙道ガスの一部分を供給されるように分割される。熱交換器からの加熱空気は、複数の炉のそれぞれが加熱空気の一部を供給されるように分割される。
【0043】
いくつかの実施例において、本発明によるシステムは、複数の炉と、対応する数の熱交換器とを有し、ここで、これら炉のそれぞれに、燃料とガスタービンからの煙道ガスの一部分と各熱交換器から加熱空気との混合物とが供給される。これらの実施例において、ガスタービンからの煙道ガスは、複数の炉のそれぞれが、煙道ガスの一部分を供給され、かつ熱交換器が煙道ガスの一部分を供給されるように分割される。熱交換器からの加熱空気は、各炉に供給される。
【0044】
本発明の一態様によれば、本発明は、本発明によるシステムによって炉内で炭化水素ストリームを分解するための方法を提供する。
【0045】
炭化水素フィードストリームは、パラフィン類、オレフィン類、ナフタレン類、および/または芳香族化合物類、を含みうる。炭化水素フィードストックは、軽質または重質であってよく、すなわち、約30℃~約500℃の沸点を有するものとすることができる。炭化水素フィードストックは、エタン、プロパンおよび/またはブタンを含むガスであってよい。炭化水素フィードストックは、水素化処理装置または水素分解装置から得られるハイドロワックス(未転換油またはハイドロクラッカ底部(bottom)とも称される)であってもよい。いくつかの実施例において、フィードストックは、オレフィン類、パラフィン類、イソパラフィン類、および/またはナフタレン類が豊富な炭化水素ストリームであってよい。フィードストックは、さらに、最大で約30重量%の芳香族化合物類を含みうる。いくつかの実施例において、約0重量%~約30重量%のオレフィン類、および/または、約0重量%~約100重量%のn-パラフィン類、および/または、約0重量%~約100重量%のイソパラフィン類、および/または、約0重量%~約30重量%の芳香族化合物類を含みうる。炭化水素フィードストックは、様々な供給源、たとえば、天然ガス凝縮物、石油留分、コールタール留分、ピート、および/または、再生可能供給源、など由来のものとすることができる。たとえば、炭化水素フィードストックは、軽質ナフサ、重質ナフサ、直留ナフサ、フルレンジナフサ、水素化処理ナフサ、ディレードコーキングナフサ、ハイドロクラッカナフサ、ガス凝縮物、コーカー燃料オイルおよび/またはガスオイル(たとえば、軽質コーカーガスおよび重質コーカーガスオイルなどのガスオイル)、を含みうる。さらに、たとえば、炭化水素フィードストックは、シンガスの合成(たとえば、フィッシャー・トロプッシュ合成)および/または炭化水素材料のガス化からの炭化水素生成生物を含みうる。
【0046】
炭化水素フィードストリームは、(スチーム)分解されて生成物ストリームを作り出す。たとえば、炭化水素フィードストリームは、スチームクラッキング炉の放射部においてスチーム分解することができる。フィードストリームをスチーム分解して、そこで、それは約600℃~約1000℃、約700℃~約900℃、または約750℃~約850℃の温度で反応器(チューブ)出口から出る。
【0047】
生成物ストリームは、(スチーム)分解生成物を含むことができる。たとえば、生成物ストリームは、種々のアルケン類(たとえば、エチレンなどの軽質オレフィン類)を含みうる。生成物ストリームは、さらに、他のオレフィン類(たとえば、プロピレンおよびブテン)、パラフィン類(たとえば、メタン、エタン、プロパン、およびブタン)、ジエン類(たとえば、ブタジエン)、ならびに/または、アルキン類(たとえば、アセチレン、メチルアセチレン、およびビニルアセチレン)、を含みうる。いくつかの実施例において、生成物ストリームは、さらに、その他の成分、たとえば、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン類、エチルベンゼン、スチレン、熱分解ガソリン、および/または、熱分解燃料オイルも含みうる。
【0048】
図面を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
【0049】
図1は、図2図3、および図4の実施例に対応する炉中の煙道ガスの熱発生プロットを図示している。すべてのケースにおいて、炉は、放射部において類似の熱要件(154MWth)を有している。
【0050】
図2は、燃料が非加熱燃焼空気とともに供給される炉を有するシステムの一例の略図を示している。炉には、燃料(104)と環境空気(105)とが供給される。燃料(104)は純粋メタンである。環境空気は、温度32℃、酸素含有率21体積%である。燃料(104)は、環境空気(105)で燃焼される。もしも燃焼の熱が即座に放射されないのであれば、それは位置101において断熱火炎温度の温度に達し、そこで、それは、放射部において熱(154MW)を放出する。煙道ガスは1200℃(102)の温度で放射部を出て、追加の熱が対流部(103)で回収される。煙道ガスは、この部から120℃(106)の温度で出る。煙道ガス中の酸素含有率は2モル%である。
【0051】
対応する熱収支および物質収支が表1によって提供され、これが図1のプロットを作成するために使用される。図1において中レベルの傾き(三角形のマーカ)を有する線がこの例に対応する。放射部の初めにおける温度は1850℃であり、対流部での熱発生は379Mwthである。
【0052】
【表1】
【0053】
なお、101の温度は実際には生じず、これはいわゆる、断熱火炎温度である。
【0054】
図3は、燃料が予熱燃焼空気とともに供給される炉を有するシステムの例の略図を示している。この例において、燃焼空気(404)は、ガスタービン(428)からの煙道ガス(414)によって加熱される環境空気である。炉に供給される燃焼空気空気(404)は、図2の例における燃焼空気よりも高い温度を有し、その酸素含有率は同じである。
【0055】
この例において、環境空気(407)はコンプレッサ(408)内において圧縮空気(409)へと圧縮され、燃焼チャンバ(410)においてさらに加熱され、そこで燃料(411)が燃焼されて高温加圧煙道ガス(412)が生成され、これが膨張されてターボエキスパンダ(413)において仕事(ワーク)を提供する。ターボエキスパンダからの仕事(ワーク)は、同じ軸(427)上で機械接続されたコンプレッサ(408)と発電機(423)とを駆動するために使用される。上記コンポーネントの構成は、通常、高温タービン排気(414)と電気(424)とを作り出すガスタービン発電機(パッケージ)(428)と呼ばれる単一パッケージ化ユニットとして提供される。ターボエキスパンダ(413)からの高温排気(414)は、熱交換器(419)において冷却され、この装置からストリーム421として出る。発生された熱は、分解炉への予熱燃焼空気(404)として使用される空気(420)を予熱するために使用される。空気(404)は燃料(405)と混合されバーナで燃焼されてスチームクラッキング炉の放射部(401)に熱を提供する。熱交換器(419)によって(420)から(404)にかけていくらかの圧力低下が生じるので、空気コンプレッサ(426)を使用して環境空気(425)をの圧力を十分に上げることによってこの圧力低下を克服する。
【0056】
対応する熱収支および物質収支が表2によって提供され、これを使用して図1のプロットが作成される。最も急な傾斜(Xマーカ)を有する線がこの例に対応する。
【0057】
【表2】
【0058】
なお、401の温度は実際には生じず、これはいわゆる、断熱火炎温度である。
【0059】
炉に供給される燃焼空気の高い温度により、この解決構成は高い燃料節約を達成するが、火炎温度も高くなる。高い火炎温度によって、NOx形成が増大する。現実には起こるものではないが、断熱火炎温度は、インジケータを計算するのが比較的易しい。この場合、それ(401)は2158℃であるのに対して、基本ケースではそれ(101)は1850℃であった。対流部での熱発生は図2の例よりも低く、305MWthである。この燃焼空気予熱方法が改変オプションと見なされる場合、恐らく利用可能な熱が遥かに少なくなって、それによって、スチーム温度が過度に低くなり、フィードストックの蒸発が過度に少なくなり、あるいは、混合フィードが反応器チューブに供給される前の予熱温度が低くなり過ぎる。
【0060】
図4は、燃料が予熱燃焼空気とともに供給される炉を有するシステムの例の略図を示している。この例において、燃焼空気は、ガスタービンからの煙道ガスである。炉に供給される燃焼空気は、図2および3の例における燃焼空気よりも高い温度を有し、その酸素含有率は低い(13.3体積%)。これ(図示せず)にいくらかの新しい環境空気を混合してストリーム304の酸素含有率を高めることができる。
【0061】
対応する熱収支および物質収支が表3によって提供され、これを使用して図1のプロットを作る。図1中のもっと傾斜の小さい(四角形マーカ)線がこの例に対応する。
【0062】
表3:図4の熱収支および物質収支
【表3】
【0063】
なお、301の温度は実際には生じず、これはいわゆる、断熱火炎温度である。
【0064】
このシステムの主要な欠点は、バーナの燃料節約が少ないことにある。炉に供給される燃焼空気の酸素含有率が低いことにより、放射部の断熱火炎温度は低くなる(1629℃)。単位空気当たりの放射部の熱発生量は少ない。放射部において同じ熱発生量を達成するためには、より多くの煙道ガス流が必要である。その結果、これによって炉の対流部における熱発生が多くなる(498MWth)。
【0065】
対流部の熱収支の変化により、これらの技術によって既存の炉を改変するためのスチームクラッカにおけるガスタービン統合のためのこれらの方法が複雑化する。
【0066】
図5は、本発明によるシステムの略図を示している。当該システムは、空気と燃料を燃焼して電力を作り出すガスタービン発電機を含む。このガスタービン発電機は、コンプレッサ(208)、燃焼チャンバ(210)およびタービン(ターボエキスパンダ)(213)を有する。コンプレッサとタービンとは一つの軸(227)上で作動される。
【0067】
コンプレッサ(208)において環境空気(207)を加圧空気(209)へと圧縮し、燃焼チャンバ(210)でさらに加熱し、ここで、燃料(211)を燃焼して、高温の加圧煙道ガス(212)を作り、これを使用してターボエキスパンダ(213)中においてワーク(仕事)を提供する。ターボエキスパンダからの仕事を使用して、同じ軸(227)上に機械接続されたコンプレッサ(208)と発電機(223)とを駆動する。上記コンポーネントの構成は、通常、高温タービン排気(214)(=煙道ガス(212))と電気(224)とを作り出すガスタービン発電機(パッケージ)(228)と呼ばれる単一パッケージ化ユニットとして提供される。煙道ガス(214)は、ガスタービン(228)において行われる燃焼反応からの燃焼生成物と余剰空気との混合物である。ターボエキスパンダ(213)からの高温煙道ガス(214)は、ストリーム215とストリーム216とに分割される。この実施例において、システムは、煙道ガス(214)を第1部分(215)と第2部分(216)とに分割する前に煙道ガス(214)の一部分(229)を取り出すバイパススタックを有する。ストリーム216は、高温煙道ガス(216)からの熱を、その熱交換器から昇温(222)で出る新鮮空気(220)へ伝達する熱交換器(219)に送られる。ストリーム215は、バイパスされ、混合予熱燃焼空気混合物(204)へとストリーム222と混合されるガスタービン排気の部分である。熱交換器(219)によって220から204にかけていくらかの圧力低下が生じるので、空気コンプレッサ(226)を使用して環境空気(225)の圧力を十分に上げることによってこの圧力低下を克服する。
【0068】
あるガスタービン作動ポイントに対してストリーム215とストリーム216との間の比率、環境空気条件、熱交換器(219)構成などが、ストリーム204の温度と酸素含有率の所望の組み合わせで制御されるとき、分解ヒータを、ガスタービン統合がない場合(たとえば図2)と全く同様に、ただし、バーナの燃料消費を少なくして、作動させることができる。
【0069】
ストリーム204と205との混合物の燃焼から得られる高温煙道ガスは、分解炉の反応器チューブで行われるスチーム分解反応のための熱を提供する。これを行うことにより、これらのガスは冷却し、位置202で放射部を出る。この位置でいわゆるブリッジ壁温度を測定することができ、煙道ガスはこれらのガスからの熱回収が行われる対流部へと流れる。これは通常、炭化水素スチーム反応器を予熱し、また、ボイラ供給水を予熱し、超高圧スチームを過熱することによって達成されるが、熱回収のその他の手段も可能である。対応する熱収支および物質収支は表4によって提供される。
【0070】
【表4】
【0071】
表4から、熱交換器219の周囲でのガスタービン流を331/560=59%バイパスすることによって、図2のポイント101において、ポイント201と同じ断熱火炎温度1849℃が達成される(その差は僅かに1℃)ことが観察される。
【0072】
したがって、本発明による方法によって、炉に供給される燃焼空気の温度と酸素含有率とを制御することが可能となり、また、それによって、炉の火炎温度が制御される。これによってNOx形成を合理的なレベルに制限しながら燃料消費を最適化することが可能となる。
【0073】
表5は、さらに、タービン排気の温度と第1流と第2流との比率とを変化させることによって所望の断熱火炎温度を得ることが可能であることを示している。バイパス流(215)を増加することによって断熱火炎温度が上昇することが理解できる。
【0074】
【表5】
【実施例
【0075】
スチーム対オイル比率0.4、炭化水素フィードストック45t/hの炉スチーム分解に関して、厳密なシミュレーションを行う。炉は、床および壁バーナを有し、熱入力の80%は床バーナによって、20%は壁バーナによって提供される。環境空気温度は32℃であり、相対湿度45t/hのである。シミュレーションは、Protec EFPSバージョン6ソフトウエアによって行われる。4つのケースがモデル化される。
【0076】
ケース0:基本ケース(図2に対応)。炉は、設計条件で設計構成において予熱空気無しで運転される。
【0077】
ケース1:図3に図示のシステムを使用して、床バーナのみに予熱空気を使用して炉を運転する。ガスタービン排気を使用して環境空気を495℃へ予熱する。
【0078】
ケース2:図5に図示のシステム(本発明による)を使用して、床バーナのみに予熱空気を使用して炉を運転する。このガスは表4のストリーム204の組成と533℃の温度を有する。
【0079】
ケース3:図5に図示のシステム(本発明による)を使用して、床バーナと壁バーナとに予熱空気を使用して炉を運転する。このガスは表4のストリーム204の組成と533℃の温度を有する。
【0080】
炉は、対流部において以下の要素を有する(上から下に)。
【0081】
FPH:フィード予熱装置、炭化水素フィードストックを加熱し部分的に気化する。
【0082】
ECO:それをスチームドラムに供給する前にボイラ供給水を予熱する。
【0083】
UMP:上方混合予熱。FPHからの炭化水素フィードストックと希釈スチームとの混合物を加熱。
【0084】
SSH1:スチームドラムからのスチームを過熱。
【0085】
SSH2:SSH1からのスチームをさらに過熱し、所望の条件へ急冷する。
【0086】
LMP:下方混合予熱。UMPからの混合物を、反応チューブに送る前にさらに加熱する。
【0087】
全てのケースについて対流部における熱伝達の結果が、熱発生プロット(QT図)として提供され、ここで、温度は、図6(ケース0)、図7(ケース1)、図8(ケース2)、および図9(ケース3)による対流部の全ての要素と煙道ガスについて伝達された熱の関数としてプロットされている。
【0088】
図6~9の熱発生プロット/QT図から、ケース0、2、および3に関して、熱伝達は非常に類似していることが観察される。総デューティは39~40MWthであり、LMPの出口は僅かに600℃より高い。ただしケース1に関しては、デューティは遥かに少なく(36MWth)、LMPの出口は600℃を遥かに下回る。
【0089】
対流部の要素のデューティは、表6にまとめられている。表6から、対流部の高い位置の要素(FPH、ECOおよびUMP)は、ケース1の運転モードから大きな損失を受けることが観察される。これは、特に、FPHに当てはまり、ここでは、本発明によるケース3および4と比較して(6.8-4.3)/6.8×100%=37%少ない熱がフィードストックに加えられる。
【0090】
表6:対流部の要素の熱デューティの計算値
【表6】
【0091】
炉の放射部に関するさらなる結果が表7によって提供される。
【0092】
表7:炉の放射部の運転結果
【表7】
【0093】
表7から、ケース3が燃料供給熱のもっとも大きな低減をもたらした(したがって、最大の省エネルギポテンシャル)のに対して、ケース2および3は、ケース0(基本ケース)と比較して放射部において非常に類似する作動を有することが観察される。
【0094】
ケース1は、高い最高読み取りガス温度を報告しており、これは、運転の最初においてより大きなNOx形成と、反応器コイルのより高いチューブ材料温度(TMT)とをもたらす。運転中、TMTは反応器チューブ中のコークス形成により増加する。TMTが高温に達すると、炉の熱出力を低下させるか、デコーキングすることが必要となる。ケース1において、これはケース2およびケース3よりも早期に生じる。ケース2およびケース3は、恐らく、基本ケース0との比較で類似の運転長さを達成するであろう。
【0095】
本発明による方法のもう一つの利点は、熱交換器219に対するバイパスの比率を変えることによって、対流部の熱収支に影響を与えることができることにある。FPHによって吸収された熱が図10にプロットされている。この図から、FPHによる観察されたデューティはケース1とケース2との間で異なることが観察される。ただし、熱交換器219周りのバイパスを調節することによって、ケース3とケース1との間の任意の作動ポイントを実現することが可能である。これは、異なるタイプのフィードストックに関しても所望の温度と気化率を達成可能である点で有用である。
【0096】
図11は、燃料(605)が予熱燃焼空気(604)とともに供給されるスチームクラッキングユニット(600)を有するシステムの例の略図を示している。「スチームクラッキング」およびスチームクラッカは、飽和炭化水素がより小さな炭化水素類(特に、エチレンやプロピレンなどのアルケン類)に分解される石油化学処理である。炭化水素のスチームクラッキングにおいて、炭化水素フィード690(たとえば、ガスオイル、ナフサ、液化石油ガス(LPG)またはエタン)が、スチーム(680)で希釈され、スチームクラッキングユニット(600)の炉640内で酸素の不在下で短時間加熱される。通常、クラッキング反応温度は750℃~950℃であり、より好ましくは800℃~900℃である。滞留時間は1秒以下、ミリ秒、にもすることができる。クラッキング温度に到達すると、通常、ガスを急冷して、熱交換器の伝達ラインまたは急冷オイルを使用する急冷ヘッダ内で反応を停止させる。反応において生成される生成物は、フィードの組成、スチームに対する炭化水素の比率、ならびに、分解温度および炉滞留時間、に応じて異なる。エタン、LPGまたは軽質ナフサなどの軽質炭化水素フィードからは、エチレン、プロピレン、およびブタジエンを含む、軽質ポリマーグレードオレフィン類が豊富な生成物ストリームが得られる。重質炭化水素(フルレンジで重質のナフサおよびガスオイル分)も、芳香炭化水素類が豊富な生成物を提供する。この例において、燃焼空気(604)は、ガスタービン(628)からの煙道ガス(614)によって加熱される環境空気である。炉に供給される燃焼空気(604)は、図2の例における燃焼空気よりも高い温度を有し、その酸素含有率は同じである。
【0097】
この実施例において、環境空気(607)はコンプレッサ(608)内において圧縮空気(609)へと圧縮され、燃焼チャンバ(610)においてさらに加熱され、そこで、燃料(611)が燃焼され、それによって、高温加圧煙道ガス(612)が生成されて、これが膨張されてターボエキスパンダ(613)において仕事(ワーク)を提供する。ターボエキスパンダからの仕事(ワーク)は、同じ軸(627)上で機械接続されたコンプレッサ(608)と発電機(623)とを駆動するために使用される。上記コンポーネントの構成は、通常、高温タービン排気(614)と電気(624)とを作り出すガスタービン発電機(パッケージ)(628)と呼ばれる単一パッケージ化ユニットとして提供される。ターボエキスパンダ(613)からの高温排気(614)は、熱交換器(619)において冷却され、この装置からストリーム(621)として出る。発生された熱は、放射部(601)と対流部(602)を含むスチームクラッキング炉への予熱燃焼空気(604)として使用される空気(620)を予熱するために使用される。予熱燃焼空気(604)は燃料(605)と混合され、スチームクラッキングユニット(600)の炉(640)の放射部(601)のバーナで燃焼されてスチームクラッキング炉640の放射部(601)に熱を提供する。炉(640)は、さらに、対流部(603)を有し、分解されるフィードストック(690)はスチームクラッカの炉の対流部(603)に入りスチーム(680)と混合される。この混合物は、放射部に入る前に高圧スチーム(675)を使用して予熱することができる。放射部は、フィードの温度を約750~850℃まで高めて、分解が起こるように十分に高い温度を確保する複数のバーナを備えている。スチームクラッカの炉を出た後、分解されたガスは、オプションとして、さらなる反応が起こることを防止するために冷却される。上述したように、炉640は対流部(603)と放射ゾーン(601)との両方を形成し、これらゾーンのそれぞれの内部に、チューブ(698)としての対流コイルとチューブ(699)としての放射コイルとが設けられている。
【0098】
炭化水素フィードストックまたは、スチームと炭化水素フィードストックとの混合物が、対流チューブ(698)と流体流連通状態にある導管(692)を介して対流チューブ(698)の入口(697)に送られる。フィード(690)が分解炉(640)のチューブ(698)を通過し、ここで、それは当該フィードの分解を誘導するために分解温度まで加熱される。分解炉(692)からの分解生成物ストリームは導管694を通ってセパレータ(696)へと下流側に流れ、このセパレータによって分解生成物ストリームはアルケン含有ストリームと他のストリームとに分離される。
【0099】
分解ゾーン内の典型的な圧力は、一般に、約0psig~約100psig、好ましくは1psig~60psig、の範囲である。
【0100】
熱交換器(619)によって(620)から(604)にかけていくらかの圧力低下が生じるので、空気コンプレッサ(626)を使用して環境空気(625)の圧力を十分に上げることによってこの圧力低下を克服する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11