(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】誘導インプラント歯科医療のための外科用テンプレートの力拘束または形状拘束定位
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20220928BHJP
A61C 1/08 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
A61C1/08 Z
(21)【出願番号】P 2019516170
(86)(22)【出願日】2017-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2017074565
(87)【国際公開番号】W WO2018060296
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-06-16
(32)【優先日】2016-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506422065
【氏名又は名称】デントスプリー インプランツ ナムローゼ フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マッスールス,ヨー
(72)【発明者】
【氏名】ポルスプル,バウテル
(72)【発明者】
【氏名】ムイラールト,ドミニク
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0217667(US,A1)
【文献】特開2010-119465(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0146830(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0066267(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0216974(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102005023028(DE,A1)
【文献】特表2013-510654(JP,A)
【文献】国際公開第2008/149822(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
A61C 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔の一部分によって規定される3D支持面に嵌合するための歯科外科用テンプレートであって、前記
歯科外科用テンプレートは、1つまたは複数の歯科用器具を誘導するための1つまたは複数の誘導機構と、少なくとも7つの接触機構から成るセットとを含み、各接触機構は、点対面接触部である点接触部によって前記3D支持面の剛性部分に接触するように構成されており、各点接触部は、点接触において前記3D支持面の前記剛性部分に接触するように構成されており、前記歯科外科用テンプレートの本体は、前記接触機構のセットと前記1つまたは複数の誘導機構とを接続して単一部品にし、前記接触機構のセットを有する前記歯科外科用テンプレートは、前記
歯科外科用テンプレートが前記3D支持面上に設置されるときに、前記3D支持面と協働して、形状拘束を達成するように構成されており、これにより、前記
誘導機構は、
前記誘導機構と前記3D支持面との間の空間により、前記3D支持面と接触しないように構成され、前記
歯科外科用テンプレートは、さらに、1つまたは複数の接触機構を、形状拘束の条件を満たす前記3D支持面の前記剛性部分にスナップ留めすることができるような、前記
歯科外科用テンプレートの一時的変形による締結機構を有し、形状拘束は、前記
歯科外科用テンプレートに作用する任意の外力、すなわち力の大きさと力の方向と力の位置との任意の組み合わせによって前記
歯科外科用テンプレートを前記3D支持面からいずれの方向においても取り外すことができない条件であり、このとき、前記3D支持面が変形することはなく、または、前記
歯科外科用テンプレートの前記本体に対する前記接触機構の位置の変位を含む、歯科外科用テンプレート。
【請求項2】
少なくとも6つの接触機構が受動ロケータ接触機構であり、少なくとも1つの接触機構が能動的締結接触機構である、請求項1に記載の歯科外科用テンプレート。
【請求項3】
前記点接触部が、球形、回転楕円形、円錐形、角錐形または円筒形状の点接触部である、請求項1または2に記載の歯科外科用テンプレート。
【請求項4】
前記点接触部がゼロ面積接触部である、請求項1または2または3に記載の歯科外科用テンプレート。
【請求項5】
前記3D支持面の前記剛性部分は、顎骨の一部分、天然歯列もしくは歯科修復物、取り外し可能な義歯、固定義歯、充填物、ベニアリングなど、またはそれらのインビトロコピーに対応する、請求項1から4のいずれか1項に記載の歯科外科用テンプレート。
【請求項6】
歯科用インプラントの配置を支援すること、マーキングを転写すること、または顎骨の縮小または平坦化に使用するための患者特有の歯科外科用テンプレートである、請求項1から5のいずれか1項に記載の歯科外科用テンプレート。
【請求項7】
歯科用インプラントのための骨切り部を作成すること、および術前計画に従って前記歯科用インプラントを配置することを支援するのに使用するための患者特有の歯科外科用テンプレートである、請求項1から6のいずれか1項に記載の歯科外科用テンプレート。
【請求項8】
前記術前計画は、CTもしくはCBCTもしくはMRI、または光学的走査から選択され、医用画像に記録される容積測定走査画像である、患者の解剖学的構造の画像を含む、請求項7に記載の歯科外科用テンプレート。
【請求項9】
骨切り術またはマーキングの転写において使用される外科用器具を誘導するために、前記
歯科外科用テンプレート内に前記誘導機構が設けられている、請求項1から8のいずれか1項に記載の歯科外科用テンプレート。
【請求項10】
前記骨切り術が、骨腔または骨の縮小または平坦化である、請求項9に記載の歯科外科用テンプレート。
【請求項11】
1つまたは複数の外科用構成要素が、前記構成要素を手術位置に運ぶために、前記誘導機構内にまたは前記誘導機構を通して挿入され得る、請求項1から10のいずれか1項に記載の歯科外科用テンプレート。
【請求項12】
前記1つまたは複数の外科用構成要素は、
1つまたは複数のドリルおよび/またはインプラント配置器具、もしくはインプラントホルダ、または
前記顎骨を縮小または平坦化するための骨ピエゾトーム、または
後続の外科的介入に備えて口腔内マーキングを所定の位置に作成するためのマーキング装置である、請求項11に記載の歯科外科用テンプレート。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の歯科外科用テンプレートを製造する方法であって、
前記歯科外科用テンプレートは、積層造形技法、鋳造およびフライス加工またはそれらの組み合わせのいずれかから作成される、歯科外科用テンプレートの製造方法。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか1項に記載の歯科外科用テンプレートを製造する方法であって、
前記接触機構の最終形状および位置がCNCフライス加工ステップによって得られる場合に、前記歯科外科用テンプレートは、積層造形技法とCNCフライス加工との組み合わせから作成される、歯科外科用テンプレートの製造方法。
【請求項15】
前記歯科外科用テンプレートはCNC器具が前記位置を決定することを可能にする参照機構を含む、請求項14に記載の歯科外科用テンプレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科用テンプレート、これらを製造する方法、およびこれらを設計する方法に関し、それによって外科用テンプレートは、再現可能な形状拘束または力拘束定位を有する。本発明はまた、歯科インプラントなどの外科用テンプレートの設計を支援することができるソフトウェア、ならびに再現可能な形状拘束または力拘束定位を有するように製造された外科用テンプレートの画像に関する。
【背景技術】
【0002】
技術的背景
歯科外科用テンプレートは、外科において、例えば歯科用インプラントの配置の支援における使用を意図した特注の装置である。より具体的には、外科用テンプレートは、意図されたユーザが歯科用インプラントのための骨切り部を作成するのを助け、意図された使用者が術前計画に従って歯科用インプラントを配置するのを助けるように意図することができる。外科用テンプレートは、好ましくは患者特有の方法で調製される、すなわちそれは各患者の解剖学的構造に特有の寸法を有する。
【0003】
従来の歯科外科用テンプレートは、それらの接触面が支持面のネガ型に基づいているため、口腔内でそれらの支持面と完全に接触しているか、または完全にそれらに対して割り付けられている。支持面状で支持を受ける外科用テンプレートの領域における、元の支持面に対する逸脱は、支持面上への外科用テンプレートの位置決めを不正確にすることになる。
【0004】
図1aは、歯列1の歯4または歯肉7の支持面と完全に接触することに完全に依拠する従来のプラスチック外科用テンプレート5を示す。
図1bは、誘導機構(典型的にはブッシング14)が組み立てられる、例えば、テンプレート5の本体に挿入される位置にある、
図1aに示されるような従来の外科用テンプレート5の概略断面図を示す。外科用テンプレート5の本体は、部分的に歯列1の支持面のネガ型であり、結果としてその支持のための連続的で完全な接触がもたらされる。
図1bの例では、支持面の少なくとも一部は歯肉7として示されているが、
図1aでは、支持面は歯4との完全な接触として示されている。
図1bに示されるように、ブッシング14の下の空間8は各側で歯肉7の真下のテンプレート5によって両側を覆われており、したがって、提案されているインプラント部位6は歯科医には見えない。また、テンプレート5によってインプラント部位が覆い隠されるために、ドリルがブッシング14を通って挿入され、インプラントを受けるためのボアを穿孔するために使用されるとき、穿孔作業のための洗浄を提供する可能性が制限される。
図2およびまた
図2には、既知の外科用テンプレートの断面図が示されており、ここで外科用テンプレートの本体は少なくとも部分的に支持面のネガ型であり、結果として完全な接触をもたらす。
図2および
図3では、支持面は歯4およびまた歯肉7である。
図2では、テンプレート5は、歯4および歯肉7の表面の大部分によって支持されている。
図3では、テンプレート5は歯4および歯肉7の表面の部分によって支持されている。歯肉は圧縮性であるため、テンプレートの位置および向きは手術中に変化する可能性がある。
【0005】
歯科用インプラントの配置を支援するために使用される従来の外科用テンプレートは、手術中にテンプレートを支持面上に指で押し付けることによって、または事前に穿孔された骨切り部においてねじまたはピンを使用して顎骨に固定することによって定位置に保持される。外科用テンプレートを手動で定位置に保持することは、追加の支援、すなわち「追加の手」を必要とするため、外科手術をより複雑にし、これもまた、結果として手術上の自由度および口腔内視認性をより制限し得る。事前に穿孔された骨切り部において固定ねじまたは固定ピンを使用して外科用テンプレートを固定することによって、外科手術にさらなる侵襲的側面が追加される。
【0006】
「Custom linkable imaging and multifunctional tray」と題する米国特許第9,226,801号明細書は、口腔内解剖学的構造の剛性部分のデジタル表現から設計され、かつ接触機構の個別のセットにおいてその口腔内解剖学的構造と接触する外科用テンプレートであり得るトレイを参照する。しかしながら、この特許文献に記載されているこれらの接触機構の形状は特に規定されておらず、接触領域に限定されるが、本質的に連続的であり得る。連続領域にわたる接触は、不完全な走査または製造から生じることがある干渉変形、または突出の影響を受けやすい。さらに、これらの接触機構の位置は、これまで製造前(すなわち、デジタル設計中)に特定の数学的条件(力拘束条件など)に対して決して評価されることはなく、テンプレートの上壁から延伸する接触機構およびテンプレートの側壁から延伸する少なくとも1つの接触機構のみが必要とされている。この特許文献は、テンプレートの取り付けおよび取り外し中に口腔構造が動くのを防止する「往復接触」を伴う実施形態を含む。しかしながら、この往復接触がどのようにして達成されるかは記載されておらず、すなわち、その形状および位置は、固定化が保証されるように具体的には規定されていない。
【0007】
米国特許出願公開第2011/0066267号明細書は、患者の口腔内解剖学的構造の剛性部分上で支持を受ける外科用ドリルガイドを作成する方法を記載している。好ましい実施形態では、外科用テンプレートは、安定化三脚効果をもたらすために少なくとも3つの歯の上で支持される。この特定の実施形態は、外科用テンプレートが一定の外力条件に対してのみ支持面(歯)上で安定したままであることを保証する。例えば、垂直方向下向きの力が加えられてもテンプレートはおそらく安定した位置に留まるが、横方向または上向きの力がテンプレートに加えられたときにテンプレートが所定の位置に留まることは決してない。
【0008】
国際公開第2014/040695号パンフレットはまた、術前計画に従って骨切り術を行うための外科用テンプレートを製造するための方法を記載している。患者の口腔内構造のデジタル表現は、外科用テンプレートのデジタル設計の基礎として使用される。しかしながら、外科用テンプレートは支持面と連続的に接触し、したがって支持面の境界を超えないことを除いて所定の位置条件に適合しない。
【0009】
米国特許出願公開第2004/0146830号明細書は、個別のピン形状接触先端部を使用した接触測定を通して患者の顎骨の表面形状を測定するためのテンプレートを記載している。これらのピンをロックすることによって、テンプレートの位置を骨構造上に固定化することができる。一実施形態は、そのテンプレートに取り付けられたドリル誘導機構であり得、ドリル誘導機構は、当該機構を骨切り部作成のために外科用テンプレートに供する。この特許出願文献は、個別の接触点を介して剛性の口腔内構造上に外科用テンプレートを支持することを記載しているが、これらの接触点の位置は、テンプレートの製造前に決して決定されない。テンプレートの位置が製造前に決定されないため、手術器具のための誘導機構の位置も術前に決定されず、これは術前計画に従って手術器具の誘導を可能にするための面倒な手順になる。このデバイスはまた、サイズが非常に大きく、特に臼歯の上の上部空間の多くを占める。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明の実施形態の一態様では、歯科用インプラントの配置などの外科的処置を支援するのに使用することができ、それによって外科用テンプレートを患者の口腔解剖学的構造上にまたはそのインビトロコピー上に配置することができる歯科外科用テンプレートの製造方法が提供され、例えば歯科外科用テンプレートは、口腔内構造に適合させることができ、口腔内構造によって支持することができ、外科用テンプレートの本体は、口腔内構造の剛性部分に関して、口腔内構造の支持面に接触する点接触部である少なくとも7つの接触機構から成るセットを含む。点接触部の数は、8、7から10、7から12、7から15、7から20、または7から30であってもよい。点接触部は点対面接触部であり、例えば球形、回転楕円形、円錐形、円筒形または角錐形の点接触部であってもよい。点接触部は、「面積ゼロ」の点接触部、例えば、球形、回転楕円形、円錐形、円筒形、または角錐形状の点接触部であってもよく、ここで「ゼロ面積」とは、デジタル設計されるときに0mm2の点接触部を意味する。そのような点接触部の物理的接触面積は、古典的な点接触力学からのヘルツモデルを用いた近似によって計算することができる。これらの点接触機構の位置はテンプレートの製造前に決定される、すなわちその位置はそのデジタル設計の一部であり得る。これらの点接触機構の位置は、外科用テンプレートが3D支持面、好ましくは剛性3D支持面上に設置されると、外科用テンプレートおよび3D支持面、例えば、剛性3D支持面が協働して形状拘束または力拘束を達成する数学的条件に準拠することができる。テンプレートを支持する口腔内構造の表面は、以後、まとめて3D支持面として参照され、これは好ましくは剛性3D支持面である。本願で使用されるような3D支持面は、歯、装着型インプラント、固定または取り外し可能な義歯、歯冠もしくはブリッジもしくは他の修復要素、充填物、ベニアリング、および/またはそれらのインビトロコピーのような、患者の解剖学的構造、例えば、顎骨、歯列、歯茎など、および/または患者に取り付けられる人工装具の一部分に関連し得る。形状拘束は、テンプレートに作用する外力、すなわち力の大きさ/力の方向/力の位置の任意の組み合わせによって外科用テンプレートを支持面からいずれの方向においても取り外すことができない条件として規定される。このとき、支持面が変形することはなく、または、外科用テンプレートが変形することはなく、後者は、外科用テンプレートの本体に対する接触機構の位置の変位を含む。
【0011】
製造前に、テンプレートはデジタル設計され、以下を備える。
1)例えば、ゼロ面積点接触部のような点対面接触部などの、点接触部として支持面のデジタル表現に接触する最少で7つの接触機構から成るセット。点接触部は、球形、回転楕円形、円錐形、または角錐形、または円筒形であり得、例えば、
2)歯科用器具のための1つまたは複数の誘導機構。および
3)3D支持面、好ましくは3D剛性支持面と接触していない本体。本体は、接触機構と1つまたは複数の誘導機構とを接続して単一の部品にする。取り付けられたとき、本体は、好ましくは、接触機構の作用とのいかなる干渉も回避するために、3D支持面、好ましくは3D剛性支持面と接触していない。したがって、本体はまた、点接触部の作用を妨げる可能性がある口腔内の他のどの部分とも接触していない。
【0012】
デジタル設計の物理的テンプレートは、積層造形またはCNCフライス加工のようなフライス加工またはそれらの組み合わせによって製造することができる。外科用テンプレートの接触機構の点接触部、例えば、ゼロ面積点接触部のような点対面接触部の位置は、最初にコンピュータシステムを使用して、3D支持面のデジタル表現上の少なくとも7つの空間位置のセットを数学的に決定することと、その後、コンピュータシステムを使用して、数学的形状拘束または力拘束条件に対してこの位置のセットを評価することとによって達成することができる。手動で、すなわち人間の対話によって最初の位置セットを指示し、その後、再びコンピュータシステムの適用を通じて自動的に数学的アルゴリズムを実行し、後続する第2、第3、…の空間位置セットを規定することが可能である。これらは、数学的形状拘束または力拘束条件に対してコンピュータシステムを使用して再び評価することができる。外科用テンプレートは、最小および最大数の接触点が上記のように規定される限定された数の接触点を有することが好ましい(例えば、30未満、20未満または15未満、ただし例えば7以上)。
【0013】
形状拘束または力拘束条件を評価するために、コンピュータシステムは、3D支持面のデジタル表現上の空間位置の空間座標およびそのデジタル支持面に対するこれらの位置のそれぞれの法線方向を利用する数学的アルゴリズムを実行する。
【0014】
本発明の特定の実施形態では、コンピュータシステムには、接触機構、すなわち、例えば、形状または力拘束基準を満たすセットの位置の各々において、点接触部内の支持面のデジタル表現に接触する、点対面接触部、例えば、ゼロ面積接触部、または、球形、回転楕円形、円錐形、円筒形、もしくは角錐形状の接触機構をデジタル生成するためにコンピュータシステムによって使用されるソフトウェアが提供される。
【0015】
球形接触部、すなわち本発明の特定の実施形態の場合、接触する球の中心は、3D支持面、好ましくはこれらの位置内の3D支持面に垂直な方向に沿って位置することが好ましい。この線上では、球の中心は、その接触球の選択された半径に正確に等しい、支持面から離れた距離に位置している。結果として、外科用テンプレートは、この接触点の支持面と特異点において干渉する。すなわち、デジタル設計された接触球の表面は、3D支持面、好ましくは、設計段階において3D支持面、好ましくは剛性3D支持面のデジタル表現を貫通せず、3D支持面、好ましくは剛性3D支持面のデジタル表現から離れることもない。これは、設計段階においてゼロ面積接触部が意味するものを規定する。好ましくは、すべての点接触部は特異点である。
【0016】
物理的円錐形、球形、球形、回転楕円形、円筒形、角錐形状の接触機構のような物理的点接触機構のいずれかの半径は0.01mmから5mmの間にあるべきであり、典型的には、接触部半径サイズは好ましくは0.1mmから1mmの間である。
【0017】
外科用テンプレートとの接触が確立される3D支持面の部分は、例えば歯などの、好ましくは剛性のものである。本発明の実施形態は、例えば、歯科用インプラントの配置において、または骨の平坦化もしくは縮小のために、または手術部位をマーキングするために使用することができる外科用テンプレートを提供する。外科用テンプレートは、接触機構、誘導機構および本体が単一の実体であるか、または、接触機構および誘導機構を外科用テンプレートの本体に組み付けることができる単一部品物体とすることができる。ねじを有するなどの調整可能な接触機能は、直接または角度付きねじアクセスによって締め付けることができる。
【0018】
外科用テンプレートの特に有利な実施形態は、少なくとも6つの静的な、すなわち「ロケータ(locator)」接触機構と、少なくとも1つの能動的な、すなわち「締結(clamping)」接触機構とを有する外科用テンプレートである。
【0019】
本発明の実施形態はまた、1)力または形状拘束条件を満たす3D支持面のデジタル表現上の最少7つの接触点位置から成るセットの決定を支援し、2)正確に上記位置にあるゼロ面積点接触部内のような、デジタル表現の支持面を点対面接触部に接触させる少なくとも7つの接触機構から成る限定されたセットを含み、外科用器具のための1つまたは複数の誘導機構、および、これらの接触機構および誘導機構を接続している支持面と相互作用しない本体を含む、外科用テンプレートをデジタル設計する、ソフトウェアならびにそのソフトウェアによって使用される方法およびアルゴリズムに関する。
【0020】
本発明の実施形態はまた、歯科インプラント用の外科用テンプレートを製造するために使用される方法にも関する。テンプレートは、限定された数の接触機構(例えば、30未満、20未満または15未満かつ7以上)を有し、例えば、テンプレートは、力拘束または形状拘束定位を有する3D支持面に嵌合する。
【0021】
本発明の実施形態はまた、3D支持面上に外科用テンプレートを設置する方法に関し、テンプレートは、力または形状拘束定位を有する3D支持面に嵌合する、限定された数の上記専用の位置決めされた接触機構(例えば、30未満、20未満または15未満かつ7超)を有する。
【0022】
本発明の実施形態はまた、ゼロ面積点接触部などの点対面接触部において支持面に接触する限定された数の接触機構(例えば、30未満、20未満または15未満かつ7超)を有する上記外科用テンプレートを使用して歯科インプラントを設置する方法に関し、テンプレートは力または形状拘束定位を有する3D支持面に嵌合する。
【0023】
本発明の実施形態は、3D支持面上への外科用テンプレートの締結が得られるような変形形態を含む。様々な締結メカニズムの例は、(限定されるものではないが)、当接ねじ(複数可)の使用による締結、外科用テンプレートの3D支持面へのスナップ留めによる締結、接触機構内に締結力をもたらす外科用テンプレート内の内部応力を生成する外科用テンプレートの初期変形による締結、カンチレバー(複数可)の使用による締結、および/またはばね(複数可)の使用による締結であってもよい。
【0024】
本発明の実施形態は、外科用テンプレートの本体、誘導機構および接触機構に使用される多様な材料を含む。さらに、外科用テンプレートの本体は、複数の材料の組み合わせを含むかまたはそれらから成ることができる。外科用テンプレートの特定の実施形態は、金属製の一体型外科用テンプレートである。
【0025】
本発明の実施形態は、外科用テンプレートを製造するために使用される多様な技術を含む。製造方法は、積層造形またはより単純には「積層造形」方法、フライス加工方法または手動仕上げもしくは彫刻またはそれらの組み合わせを含むことができる。特定の実施形態は、CNC設備が、外科用テンプレートの本体に対する正しい位置においてフライス加工作業(誘導機構のフライス加工、例えば円筒形ブッシングの穴の穿孔など、および、球形接触機構のフライス加工など)を実行することを可能にする移送機構を含む外科用テンプレートを含む。この移送機構により、積層造形によって生成されたテンプレートが、所定の位置において万力(フライス加工用の部品ホルダ)に配置されることが保証される。さまざまな製造方法に適した材料は、以下を含む。
【0026】
SLM:Ti、CoCr、(ステンレス)鋼、銀、金、青銅、真鍮、アルミニウム
SLA:エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリルエポキシ樹脂、TPA
FDM:ABS、ポリカーボネート、PPSU、
フライス加工:すでに上述した金属、ABS、アセタール、アクリル、POM、ガラス繊維入りナイロン、ナイロン、PEEK、フェノール、PC、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PTFE、PVC、PPS、ポリアミドポリマー、フルオロポリマー、PEI、フッ化炭素樹脂、ガラスエポキシ、PPE、ナイロン、ニッケル合金、ベリリウム銅、鉄合金
SLS:ポリアミド、ガラス繊維入りポリアミド、アルマイド、難燃性ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン
ジェット印刷:アクリレート、樹脂、ビニルポリマー、石膏
真空鋳造:ポリウレタン、TPE、ABS、PP、PC、PE
一態様では、本発明は、3D支持面に嵌合してそれによって支持される外科用テンプレートを提供し、この外科用テンプレートは、3D支持面の少なくとも剛性部分に対する、最少7つの接触機構から成るセットを有し、当該接触機構は、ゼロ面積点接触部のような点対面接触部において支持面に接触し、外科用テンプレートおよび3D支持面は、外科用テンプレートが支持面上に設置されたときに共同して力または形状拘束を達成する。点接触部は、球形、回転楕円形、円筒形、角錐形または円錐形の接触点であってもよい。限定された数の接触機構および力または形状拘束により、テンプレートの固有、正確かつ再現可能な配置が可能になる。接触機構は、
図5aから
図5cに示されている受動的ロケータ接触機構または
図5dに示されているような能動的締結接触機構のいずれかであり得る。
【0027】
限定された数の接触機構は、3D支持面の剛性部分とのみ相互作用する。
以下のうちの任意のものまたは以下のものの任意の組み合わせを使用して、接触機構の1つまたは複数における締結活動を達成することができる:1つまたは複数の接触機構を、形状拘束の条件を満たす3D支持面の剛性部分にスナップ留めすることができるような、外科用テンプレートの一時的変形による締結機構。すなわち、支持面またはテンプレートが変形するかまたは力拘束されない限り、テンプレートはいかなる外力によっていかなる方向にも支持面からそれ以上外れることができない。
【0028】
a.形状拘束の条件を満たすためのレバー締結機構。すなわち、支持面またはテンプレートが変形しない限り、テンプレートはいかなる外力によっていかなる方向にも支持面からそれ以上外れることができない。ここで、テンプレートの変形は、レバー締結接触機構または力拘束の除去、変形、転位を含み得る。
【0029】
b.形状拘束の条件を満たすためのばね締結機構。すなわち、支持面またはテンプレートが変形しない限り、テンプレートはいかなる外力によっていかなる方向にも支持面からそれ以上外れることができない。ここで、テンプレートの変形は、ばね締結接触機構の、または力拘束に関する除去、変形、転位を含み得る。
【0030】
c.形状拘束の条件を満たすための、頂点が球形のねじ締結機構。すなわち、支持面またはテンプレートが変形しない限り、テンプレートはいかなる外力によっていかなる方向にも支持面からそれ以上外れることができない。ここで、テンプレートの変形は、ばね締結接触機構の除去、変形、転位を含み得る。
【0031】
テンプレートは、歯科用インプラントの配置を支援すること、マーキングを転写すること、または顎骨の縮小または平坦化に使用するための患者特有の外科用テンプレートとすることができる。そのような患者特有の外科用テンプレートは、歯科用インプラントのための骨切り部を作成すること、および術前計画に従って歯科用インプラントを配置することを支援するのに使用するためのものであり得る。術前計画は患者の解剖学的構造の画像を含む。これは例えば、CTもしくはCBCTもしくはMRIから、またはインビトロモデルの光学的走査もしくは口腔内走査のような光学的走査から選択され、医用画像に記録される容積測定走査画像である。
【0032】
外科用テンプレートは、骨切り術またはマーキングの転写において使用される外科用器具を誘導するために外科用テンプレート内に設けられた誘導機構を含むことができる。骨切り術は、骨腔または骨の縮小もしくは平坦化であり得る。例えば、誘導機構は、1つまたは複数の外科用構成要素または器具を、それを通じてその中に挿入してそれらの外科用構成要素または器具を動作位置に運ぶことができる、シリンダまたはブッシングであり得る。
【0033】
1つまたは複数の外科用構成要素または器具は、
1つまたは複数のドリルおよび/またはインプラント配置器具、もしくはインプラントホルダ、または
顎骨を縮小または平坦化するための骨ピエゾトーム、または
後続の外科的介入に備えて口腔内マーキングを所定の位置に作成するためのマーキング装置であってもよい。
【0034】
本発明の別の態様では、3D支持面に嵌合して支持されるための外科用テンプレートを作製する方法が提供され、外科用テンプレートは、3D支持面の少なくとも剛性部分に対する最少7つの接触機構から成るセットを有し、接触機構は、ゼロ面積点接触部のような点対面接触部において支持面に接触し、外科用テンプレートおよび3D支持面は、外科用テンプレートが3D支持面に取り付けられたときに協働して形状拘束または力拘束を達成し、方法は、CTもしくはCBCTもしくはMRIから、またはインビトロモデルの走査もしくは口腔内走査のような光学的走査から選択され、医用画像に記録される容積測定走査法を通じて取得される患者の解剖学的構造の画像を含む術前計画を取得すること、3D支持面、好ましくは剛性3D支持面に嵌合し、当該支持面によって支持されるための外科用テンプレートのデジタル版を生成すること、外科用テンプレート内に、3D支持面の少なくとも剛性部分に対してゼロ面積点接触部(例えば、球形、回転楕円体形、円錐形、円筒形または角錐形)のような点対面接触部において支持面に接触する最少7つの接触機構から成るセットを提供すること、および、外科用テンプレートが3D支持面に嵌合するとき、3D支持面と協働して力拘束または形状拘束を達成する能力に関して、外科用テンプレートを評価すること、ならびに、積層造形法または鋳造またはフライス加工によって外科用テンプレートを作製することを含む。接触機構は、受動的ロケータ接触機構または能動的締結接触機構のいずれかである。3D支持面は、ヒトまたは動物の口腔の解剖学的構造もしくはその一部、またはそのインビトロコピーに対応する。
【0035】
3D支持面の剛性部分は、顎骨の一部分、天然歯列もしくは歯科修復物、取り外し可能な義歯、固定義歯、充填物、ベニアリングなど、またはそれらのインビトロコピーに対応し得る。
【0036】
インビトロコピーは、ヒトもしくは動物の天然歯もしくは歯科修復物を含むヒトもしくは動物の歯列、またはヒトもしくは動物の歯列の一部、またはヒトもしくは動物の骨構造、または顎骨のモデルであってもよい。インビトロコピーは、積層造形または鋳造またはフライス加工によって作成することができる。
【0037】
方法は、以下のうちの任意のものまたは以下の任意の組み合わせを形成して、接触機構の1つまたは複数における締結活動を達成することを含むができる:
1つまたは複数の接触機構を、力拘束または形状拘束の条件を満たす3D支持面の剛性部分にスナップ留めすることができるような、外科用テンプレートの一時的変形による締結機構、
力拘束または形状拘束の条件を満たすためのレバー締結機構、
力拘束または形状拘束の条件を満たすためのばね締結機構、
ねじが締め付けられると、形状拘束を達成することができる、力拘束の条件を満たすためのねじ締結機構。
【0038】
外科用テンプレートは、積層造形技法、鋳造およびフライス加工またはそれらの組み合わせのいずれかによって作製することができる。外科用テンプレートは、歯科用インプラントの配置を支援すること、マーキングを転写すること、または顎骨の縮小または平坦化に使用するための患者特有の外科用テンプレートとして調製することができる。患者特有の外科用テンプレートは、歯科用インプラントのための骨切り部を作成すること、および術前計画に従って歯科用インプラントを配置することを支援するのに使用するためのものであり得る。
【0039】
術前計画は患者の解剖学的構造の画像によって準備することができる。画像は、CTもしくはCBCTもしくはMRI、またはインビトロモデルの走査もしくは口腔内走査のような光学的走査から選択され、医用画像に記録される容積測定走査画像である。
【0040】
方法はまた、外科用テンプレートは、骨切り術またはマーキングの転写において使用される外科用器具を誘導するための誘導機構を外科用テンプレート内に設けることを含むこともできる。骨切り術は、骨腔または骨の縮小もしくは平坦化であり得る。
【0041】
誘導機構は、1つまたは複数の外科用構成要素を、それを通じてその中に挿入してそれらの外科用構成要素または器具を動作位置に運ぶことができる、シリンダまたはブッシングとして提供することができる。
【0042】
別の態様では、本発明は、患者に対して骨切り術を実施する方法を提供し、この方法は、3D支持面、好ましくは剛性3D面に嵌合して当該支持面によって支持される外科用テンプレートを取得することであって、3D面は、顎骨、天然歯列、歯科修復物、取り外し可能な義歯、固定義歯、充填物、ベニアリングなどの一部分であり、外科用テンプレートは、3D支持面の少なくとも剛性部分に関して、ゼロ面積点接触部のような点対面接触部において支持面と接触する最少7つの接触機構から成るセットを有し、例えば、点接触部は、球形、回転楕円形、円筒形、角錐形または円錐形の接触点であり得、外科用テンプレートおよび3D支持面は、外科用テンプレートが3D支持面に嵌合するとき、協働して力または形状拘束を達成し、骨切り術において使用される外科用器具を誘導するためのガイドをさらに備え、方法は、外科用テンプレートを3D支持面上に配置することと、外科用器具を操作することによって骨切り術を実施することとを含む。
【0043】
別の態様では、本発明は、3D支持面に嵌合して支持されるための外科用テンプレートを作成するためのシステムを提供し、外科用テンプレートは、3D支持面の少なくとも剛性部分に対する最少7つの接触機構から成るセットを有し、接触機構は、ゼロ面積点接触部のような点対面接触部において支持面に接触し、外科用テンプレートおよび3D支持面は、外科用テンプレートが3D支持面に嵌合するときに協働して力拘束または形状拘束を達成し、システムは、
CTもしくはCBCTもしくはMRIスキャナから、またはインビトロモデルの走査もしくは口腔内走査のような光学スキャナから選択される容積測定スキャナ、および、走査された医用画像を記録するための手段と、
術前計画からの患者の解剖学的構造の画像を表示することと、3D支持面のデジタル版に嵌合し、当該デジタル版によって支持されるための外科用テンプレートのデジタル版を生成することと、外科用テンプレートのデジタル版内に、3D支持面の少なくとも剛性部分に関してゼロ面積点接触部のような点対面接触部において支持面(のデジタル表現)に接触する最少7つの接触機構から成るセットを提供することと、外科用テンプレートが3D支持面に嵌合するとき、3D支持面と協働して力拘束または形状拘束を達成する能力に関して、外科用テンプレートを評価することとを行うためのコンピュータと、
外科用テンプレートを作製するための積層造形または鋳造またはフライス加工機械と、
を備える。点接触部は、球形、回転楕円形、円筒形、角錐形または円錐形の接触点であってもよい。
【0044】
別の態様において、本発明は、処理エンジン上で実行されると、例えば、上記で列挙したような、本発明の方法のいずれかを実行するコンピュータプログラム製品を提供する。コンピュータプログラム製品を記憶するために、非一時的記憶媒体を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1a】部分無歯顎状況におけるインプラント配置のための既知の外科用テンプレートを示す図である。
【
図1b】誘導ブッシングの位置における既知の外科用テンプレートの断面図である。
【
図2】歯に支持されている位置における既知の外科用テンプレートの断面図である。
【
図3】歯に支持されている位置における既知の外科用テンプレートの断面図である。
【
図4a】本発明の実施形態による、部分無歯顎状況におけるインプラント配置のための外科用テンプレートを示す図である。
【
図4b】締結が3D支持面に対する当接ねじの使用によって達成される、6つのロケータ接触機構と1つの締結接触機構とを有する、本発明の一実施形態による外科用テンプレートの下面図である。この図における接触機構の形状は球形であり、本発明の1つの特定の実施形態を表すにすぎない。これらの接触機構は、力または形状拘束条件を評価する数学的アルゴリズムによって事前に決定される位置にある、例えばゼロ面積点接触部などの点対面接触部において支持面に接触する。この評価のために、アルゴリズムは、3D支持面上の空間位置(3D座標)と、これらの位置における支持面のデジタル表現に対する法線方向の両方を使用する。外科用テンプレートの接触機構がこれらの位置において3D支持面と正確に接触することを確実にするために、接触機構は、それらが点対面接触、すなわちゼロ面積点接触を可能にするように設計されるべきである。たとえば、球形の接触機構の場合、その球の中心は、これらの位置の支持面に垂直な方向に沿って(テンプレート設計ソフトウェアによって)配置される。この線上では、球の中心は、その接触球の選択された半径に正確に等しい、3D支持面から離れた距離に位置している。結果として、外科用テンプレートは、3D支持面と特異点において干渉する、すなわち、接触球の表面は、3D支持面のデジタル表現を貫通せず、また支持面から離れもしない。
【
図4c】誘導ブッシングの位置にある、本発明の実施形態による、部分無歯顎状況におけるインプラント配置のための外科用テンプレートを示す図である。
【
図5】
図5a~
図5dは、球形(例えば、摩擦または無摩擦)接触機構を介して3D支持面と接触している、本発明のさらなる実施形態によるさらなる外科用テンプレートの断面図である。これらの実施形態では、外科用テンプレートの2D断面は、2次元空間内、すなわち平面内の歯によって形成された3D支持面の2D断面に対して形状拘束されている。2D空間での形状拘束を達成するためには、少なくとも4つの接触機構が関与し、同様に、3D空間での形状拘束を達成するためには最少7つの接触機構が関与している。
図5aは回転楕円形接触機構を示し、
図5bはナイフエッジまたは尖鋭な点接触機構を示し、
図5cは弾性材料から作製することができる組み立てられた接触機構を示し、
図5dはねじ締結接触機構を示している。
【
図6】3D支持面に対する当接ねじの使用を通して締結が達成される
図5dに示されるような接触機構の調整を示す図である。形状拘束の条件は、締結接触機構の方向および位置が患者の口の届きにくい領域に配置されることを要求することが可能である。したがって、当接ねじのねじ頭は、ドライバを当接ねじの方向とは異なる方向に向けながら、当接ねじを締め付けることを可能にするヘクサロビュラドライバを受け入れるように設計することができ、そのため、当接ねじを締める機能を保ちながら、口の中でより快適な位置にドライバを位置決めすることが可能である。
【
図7】本発明の実施形態による誘導手術を伴うインプラント治療のワークフローを示す。
【
図8】本発明の一実施形態による外科用テンプレートを設計するための方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
定義
外科用テンプレートの力拘束定位は、上記3D支持面、好ましくは剛性3D支持面上での外科用テンプレートの把持であり、それによって、3D支持面、好ましくは剛性3D支持面に対する外科用テンプレートの任意の動きが接触力による抵抗を受ける。これは、3D支持面、好ましくは剛性の3D支持面が、ゼロではない外部の仕事がなければ、接触部との接触を破ることができないことを意味する。
【0047】
形状拘束定位は、外部の非変形の仕事の大きさおよび方向にかかわらず、3D支持面、好ましくは剛性3D支持面が接触機構との接触を破ることができないという意味で、力拘束把持のより厳密な適用である。形状拘束は、テンプレートに作用する外力によっても、すなわち、力の大きさと力の方向と力の位置とのいかなる組み合わせによっても、3D支持面からいかなる方向にも外科用テンプレートを取り外すことができない条件であり、3D支持面が変形することはなく、または、外科用テンプレートが変形することもない。後者は、外科用テンプレートの本体に対する接触機構の位置の変位を含む。力拘束は、3D支持面上での外科用テンプレートの把持であり、ここで、接触機構のセットの幾何学的設計を通じて任意の力およびモーメントを3D支持面に加えることができ、3D支持面に対する外科用テンプレートの任意の運動が接触力による抵抗を受け、それによって、3D支持面は何らかの非ゼロの外部仕事なしに接触機構のセットとの接触を破ることができない。
【0048】
「点対面接触」。歯科技工士および歯科医師は、口腔内および歯列弓内の様々な接触を認識する。これらは以下を含む:
・点対点接触
・点対面接触
・辺対辺接触
・辺対面接触
・面対面接触。
【0049】
本発明で使用される点接触部は、点対面接触部である。したがって当業者は、本発明で使用される点接触部が歯科技工士および歯科医師の知識と一致することを認識する。これらは、球形、回転楕円形、円錐形、円筒形、または角錐形状の点接触部などであってもよい。
【0050】
「ゼロ面積」接触部」とは、デジタル設計時、すなわち設計段階において0mm2の点接触部を意味する。そのような点接触部の物理的接触面積は、古典的な点接触力学からのヘルツモデルを用いた近似によって計算することができる。結果として、例えば、外科用テンプレートは、接触点の支持面と好ましくは特異点において干渉する。すなわち、デジタル設計された接触点の表面は、3D支持面、好ましくは、設計段階において3D支持面、好ましくは剛性3D支持面のデジタル表現を貫通せず、3D支持面、好ましくは剛性3D支持面のデジタル表現から離れることもない。
【0051】
発明の詳細な説明
本発明は、特定の実施形態に関して、および特定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。記載された図面は概略的なものに過ぎず、限定ではない。本明細書および請求項において用語「備える(comprising)」が使用される場合、それは他の要素またはステップを排除するものではない。さらに、明細書および特許請求の範囲の第1、第2、第3などの用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも順次的または時間的な順序を説明するためではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であること、および、本明細書に記載の本発明の実施形態は、本明細書に記載または図示されている以外の順序で動作することが可能であることを理解されたい。
【0052】
本発明の実施形態の一態様では、歯科用インプラントの配置などの外科的処置を支援するのに使用することができる外科用テンプレートが提供される。外科用テンプレートは、患者の口腔解剖学的構造の一部分またはそのインビトロコピー上に配置することができる。テンプレートを支持するこの口腔解剖学的構造は、以後、3D支持面と呼ばれる。本願で使用されるような3D支持面は、歯、装着型インプラント、固定または取り外し可能な義歯、歯冠もしくはブリッジもしくは他の修復要素、充填物、ベニアリング、歯茎の歯肉のような軟組織もしくは骨またはそれらのインビトロコピーのような、患者の解剖学的構造、および/または患者、すなわち口腔の一部分に取り付けられる人工装具の一部分に関連し得る。3D支持面は、好ましくは剛性面である。剛性面は、歯、装着型インプラント、固定または取り外し可能な義歯、歯冠もしくはブリッジもしくは他の修復要素、充填物、ベニアリング、もしくは骨、または、これらのいずれかのインビトロコピーもしくは歯茎の歯肉のような軟組織のインビトロコピーのような、患者の解剖学的構造および/または患者に取り付けられる人工装具の一部分のような、口腔の一部分によって提供され得る。例えば、インビトロコピーを使用してテンプレートを試用することができる。本発明の実施形態は、例えば、歯科用インプラントの配置において、または骨の平坦化もしくは縮小のために、または手術部位をマーキングするために使用することができる外科用テンプレートを提供した。限定された数の接触機構(例えば、30未満、20未満、または15未満かつ7以上)を有する外科用テンプレートには、3D支持面、好ましくは剛性3D支持面上での外科用テンプレートの力拘束または形状拘束定位が達成されるように専用の定位が与えられ、外科用テンプレートは術前計画に従って調製される。接触機構は、外科用テンプレートの本体に組み付けることができる。ねじを有するなどの調整可能な接触機能は、直接または角度付きねじアクセスによって締め付けることができる。
【0053】
外科用テンプレートの力拘束定位は、上記3D支持面、好ましくは剛性3D支持面上での外科用テンプレートの把持であり、それによって、3D支持面、好ましくは剛性3D支持面に対する外科用テンプレートの任意の動きが接触力による抵抗を受ける。これは、3D支持面、好ましくは剛性の3D支持面が、ゼロではない外部の仕事がなければ、接触部との接触を破ることができないことを意味する。形状拘束定位は、外部の非変形の仕事の大きさおよび方向にかかわらず、3D支持面、好ましくは剛性3D支持面が接触機構との接触を破ることができないという意味で、力拘束把持のより厳密な適用である。外科用テンプレートの力拘束定位は、少なくとも2つの柔軟指摩擦接触部、または少なくとも3つの硬質指摩擦接触部、または少なくとも7つの無摩擦接触部を用いて達成される。その理由は、2つの柔軟指摩擦接触部ではなく、2つの硬質指接触部による把持では、2つの接触点を結ぶ線の周りにトルクを発生させることができず、またはトルクに抵抗することができないためである。形状拘束は、少なくとも7つの接触機構によってのみ達成することができる。形状拘束は、無接触機構によって達成することができる。外科用テンプレートは、7つより多くの接触機構を含み得るが、これらの追加の接触機構は、力拘束または形状拘束を達成するためにあまり使用されていなくても、より良好な安定性を提供し得る。接触機構は互いに干渉すべきではなく、それによって、接触機構の最大数は、外科用テンプレートの本体によって覆われる3D支持面、好ましくは剛性3D支持面のサイズおよび接触機構のサイズによって規定される。後者は、0.01mmから5mmの間にあるべき接触半径によって規定することができ、典型的には接触半径のサイズはむしろ0.1mmから1mmの間になる。単純にするために、外科用テンプレートは、最小および最大数の接触点が上記のように規定される限定された数の接触点を有すると考えられる(例えば、30未満、20未満または15未満、7以上)。外科用テンプレートの特に有利な実施形態は、6つの静的、すなわち「ロケータ」接触機構と1つの能動的、すなわち「締結」接触機構とを有する外科用テンプレートであり、ここで、ロケータ接触機構はほとんど摩擦がないと考えられ、締結接触機構は摩擦があってもよく、またはなくてもよい。
【0054】
本発明の実施形態はまた、歯科インプラント用の外科用テンプレートの設計を支援するソフトウェアならびにそのソフトウェアによって試用される方法およびアルゴリズムにも関する。テンプレートは、限定された数の接触機構を有し、例えば、テンプレートは、例えば、30未満、20未満または15未満かつ7以上の接触機構による力拘束または形状拘束定位を有する3D支持面、好ましくは剛性3D支持面に嵌合する。
【0055】
本発明の実施形態はまた、歯科インプラント用の外科用テンプレートを製造するために使用される方法にも関する。テンプレートは、限定された数の接触機構(例えば、30未満、20未満または15未満かつ7以上)を有し、例えば、テンプレートは、力拘束または形状拘束定位を有する3D支持面、好ましくは剛性3D支持面に嵌合する。
【0056】
本発明の実施形態はまた、3D支持面上に、好ましくは剛性3D支持面上に外科用テンプレートを設置する方法に関し、テンプレートは、力拘束または形状拘束定位を有する3D支持面、好ましくは剛性3D支持面に嵌合する、限定された数の上記専用の位置決めされた接触機構(例えば、30未満、20未満または15未満かつ7超)を有する。
【0057】
本発明の実施形態は、3D支持面上への、好ましくは剛性3D支持面上への外科用テンプレートの締結が得られるような変形形態を含む。様々な締結メカニズムの例は、(限定されるものではないが)、固定ねじ(複数可)の使用による締結、外科用テンプレートの3D支持面、好ましくは剛性3D支持面へのスナップ留めによる締結、接触機構内に締結力をもたらす外科用テンプレート内の内部応力を生成する外科用テンプレートの初期変形による締結、カンチレバー(複数可)の使用による締結、および/またはばね(複数可)の使用による締結であってもよい。
【0058】
本発明の実施形態はまた、外科用テンプレートを使用して歯科用インプラントを設置する方法にも関する。テンプレートは、限定された数の接触機構(例えば、30未満、20未満または15未満かつ7以上)を有し、例えば、テンプレートは、力拘束定位または形状拘束を有する3D支持面、好ましくは剛性3D支持面に嵌合する。
【0059】
本発明の実施形態は、外科用テンプレートの本体、誘導機構および接触機構に使用される多様な材料を含む。さらに、外科用テンプレートの本体は、複数の材料の組み合わせを含むかまたはそれらから成ることができる。外科用テンプレートの特定の実施形態は、金属製の一体型外科用テンプレートである。
【0060】
本発明の実施形態は、外科用テンプレートを製造するために使用される多様な技術を含む。製造方法は、積層造形またはより単純には「積層造形」方法、フライス加工方法または手動仕上げもしくは彫刻またはそれらの組み合わせを含むことができる。様々な異なる製造方法に適した材料を以下に規定する。
【0061】
SLM:Ti、CoCr、(ステンレス)鋼、銀、金、青銅、真鍮、アルミニウム
SLA:エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリルエポキシ樹脂、TPA
FDM:ABS、ポリカーボネート、PPSU、
フライス加工:すでに上述した金属、ABS、アセタール、アクリル、POM、ガラス繊維入りナイロン、ナイロン、PEEK、フェノール、PC、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PTFE、PVC、PPS、ポリアミドポリマー、フルオロポリマー、PEI、フッ化炭素樹脂、ガラスエポキシ、PPE、ナイロン、ニッケル合金、ベリリウム銅、鉄合金
SLS:ポリアミド、ガラス繊維入りポリアミド、アルマイド、難燃性ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン
ジェット印刷:アクリレート、樹脂、ビニルポリマー、石膏
真空鋳造:ポリウレタン、TPE、ABS、PP、PC、PE
一態様では、本発明は、3D支持面、好ましくは剛性3D支持面に嵌合し、当該支持面によって支持される外科用テンプレートを提供する。外科用テンプレートは、3D支持面の少なくとも剛性部分に関して、摩擦または無摩擦接触機構の限定されたセットを有し、外科用テンプレートが3D支持面、好ましくは剛性3D支持面上に設置されると、外科用テンプレートおよび3D支持面、好ましくは、剛性3D支持面は協働して力拘束または形状拘束を達成する。限定された数の接触点および形状または力拘束により、テンプレートの正確かつ再現可能な配置が可能になる。接触機構は、
図5aから
図5cに示されている受動的ロケータ接触機構または
図5dに示されているような能動的締結接触機構のいずれかであり得る。
【0062】
3D支持面、好ましくは剛性3D支持面は、ヒトもしくは動物の口腔解剖学的構造もしくはその一部、または口腔の一部のようなそのインビトロコピーに対応する。3D支持面は剛性構成要素から構成されるべきであり、3D支持面の剛性部分は、好ましくは、顎骨の一部分、天然歯列もしくは歯科修復物、取り外し可能な義歯、固定義歯、充填物、ベニアリングなど、またはそれらのインビトロコピーに対応する。ビトロコピーは、ヒトもしくは動物の天然歯もしくは歯科修復物を含むヒトもしくは動物の歯列、またはヒトもしくは動物の歯列の一部、またはヒトもしくは動物の骨構造、または顎骨のモデルであってもよい。インビトロコピーは、積層造形または鋳造またはフライス加工によって作成することができる。インビトロコピーは、患者にアクセスできない歯科技工士がテンプレートの設計を改良することを可能にする。
【0063】
以下のうちの任意のものまたは以下の任意の組み合わせを使用して、接触機構の1つまたは複数における締結活動を達成することを含むができる:
a.1つまたは複数の接触機構を、力拘束または形状拘束の条件を満たす3D支持面の剛性部分のアンダーカット領域にスナップ留めすることができるような、外科用テンプレートの一時的変形による締結機構、
b.力拘束または形状拘束の条件を満たすためのレバー締結機構、
c.力拘束または形状拘束の条件を満たすためのばね締結機構、
d.ねじが締め付けられると、形状拘束を達成することができる、力拘束の条件を満たすためのねじ締結機構。
【0064】
外科用テンプレートは、積層造形技法、鋳造およびフライス加工またはそれらの組み合わせのいずれかから作製することができる。テンプレートは、歯科用インプラントの配置を支援すること、マーキングを転写すること、または顎骨の縮小または平坦化に使用するための患者特有の外科用テンプレートとすることができる。そのような患者特有の外科用テンプレートは、歯科用インプラントのための骨切り部を作成すること、および術前計画に従って歯科用インプラントを配置することを支援するのに使用するためのものであり得る。術前計画は患者の解剖学的構造の画像を含む。これは例えば、CTもしくはCBCTもしくはMRIから、またはインビトロモデルの光学的走査もしくは口腔内走査のような光学的走査から選択され、医用画像に記録される容積測定走査画像である。
【0065】
外科用テンプレートは、骨切り術またはマーキングの転写において使用される外科用器具を誘導するために外科用テンプレート内に設けられた誘導機構を含むことができる。骨切り術は、骨腔または骨の縮小もしくは平坦化であり得る。例えば、誘導機構は、1つまたは複数の外科用構成要素または器具を、それを通じてその中に挿入してそれらの外科用構成要素または器具を動作位置に運ぶことができる、シリンダまたはブッシングであり得る。
【0066】
1つまたは複数の外科用構成要素または器具は、
1つまたは複数のドリルおよび/またはインプラント配置器具、もしくはインプラントホルダ、または
顎骨を縮小または平坦化するための骨ピエゾトーム、または
後続の外科的介入に備えて口腔内マーキングを所定の位置に作成するためのマーキング装置であってもよい。
【0067】
本発明の別の態様では、3D支持面、好ましくは剛性3D支持面に嵌合してそれによって支持される外科用テンプレートを作製する方法が提供され、外科用テンプレートは、3D支持面の少なくとも剛性部分に関して、摩擦または無摩擦接触機構の限定されたセットを有し、外科用テンプレートが支持面、好ましくは剛性3D支持面に嵌合されると、外科用テンプレートおよび3D支持面、例えば、剛性3D支持面は協働して力拘束または形状拘束を達成する。方法は、CTもしくはCBCTもしくはMRIから、またはインビトロモデルの走査もしくは口腔内走査のような光学的走査から選択され、医用画像に記録される容積測定走査法を通じて取得される患者の解剖学的構造の画像を含む術前計画を取得すること、3D支持面、好ましくは剛性3D支持面に嵌合し、当該支持面によって支持されるための外科用テンプレートのデジタル版を生成すること、外科用テンプレート内に、3D支持面の少なくとも剛性部分に関して摩擦または無摩擦接触機構の限定されたセットを提供すること、および、外科用テンプレートが3D支持面、好ましくは剛性3D支持面に嵌合するとき、3D支持面、好ましくは剛性3D支持面と協働して力拘束または形状拘束を達成する能力に関して、外科用テンプレートを評価すること、ならびに、積層造形または鋳造またはフライス加工によって外科用テンプレートを作製することを含む。接触機構は、受動的ロケータ接触機構または能動的締結接触機構のいずれかである。3D支持面、好ましくは剛性3D支持面は、口腔の一部のような、ヒトもしくは動物の口腔解剖学的構造もしくはその一部、またはそのインビトロコピーに対応する。
【0068】
3D支持面の剛性部分は、顎骨の一部分、天然歯列もしくは歯科修復物、取り外し可能な義歯、固定義歯、充填物、ベニアリングなど、またはそれらのインビトロコピー、例えば歯茎または歯肉のインビトロコピーに対応し得る。
【0069】
インビトロコピーは、ヒトもしくは動物の天然歯もしくは歯科修復物を含むヒトもしくは動物の歯列、またはヒトもしくは動物の歯列の一部、またはヒトもしくは動物の骨構造、または顎骨のモデルであってもよい。インビトロコピーは、積層造形または鋳造またはフライス加工によって作成することができる。
【0070】
方法は、以下のうちの任意のものまたは以下の任意の組み合わせを形成して、接触機構の1つまたは複数における締結活動を達成することを含むができる:
1つまたは複数の接触機構を、力拘束または形状拘束の条件を満たす3D支持面の剛性部分にスナップ留めすることができるような、外科用テンプレートの一時的変形による締結機構、
力拘束または形状拘束の条件を満たすためのレバー締結機構、
力拘束または形状拘束の条件を満たすためのばね締結機構、
ねじが締め付けられると、形状拘束を達成することができる、力拘束の条件を満たすためのねじ締結機構。
【0071】
外科用テンプレートは、積層造形技法、鋳造およびフライス加工またはそれらの組み合わせのいずれかによって作製することができる。外科用テンプレートは、歯科用インプラントの配置を支援すること、マーキングを転写すること、または顎骨の縮小または平坦化に使用するための患者特有の外科用テンプレートとして調製することができる。患者特有の外科用テンプレートは、歯科用インプラントのための骨切り部を作成すること、および術前計画に従って歯科用インプラントを配置することを支援するのに使用するためのものであり得る。
【0072】
術前計画は患者の解剖学的構造の画像によって準備することができる。画像は、CTもしくはCBCTもしくはMRI、またはインビトロモデルの走査もしくは口腔内走査のような光学的走査から選択され、医用画像に記録される容積測定走査画像である。
【0073】
方法はまた、外科用テンプレートは、骨切り術またはマーキングの転写において使用される外科用器具を誘導するための誘導機構を外科用テンプレート内に設けることを含むこともできる。骨切り術は、骨腔または骨の縮小もしくは平坦化であり得る。
【0074】
誘導機構は、1つまたは複数の外科用構成要素を、それを通じてその中に挿入してそれらの外科用構成要素または器具を動作位置に運ぶことができる、シリンダまたはブッシングとして提供することができる。
【0075】
別の態様では、本発明は、患者に対して骨切り術を実施する方法を提供し、この方法は、3D支持面に嵌合して当該支持面によって支持される外科用テンプレートを取得することであって、3D面は、顎骨、天然歯列、歯科修復物、取り外し可能な義歯、固定義歯、充填物、ベニアリングなどの一部分、すなわち、好ましくは剛性3D支持面であり、外科用テンプレートは、3D支持面の少なくとも剛性部分に関して、摩擦または無摩擦接触機構の限定されたセットを有し、外科用テンプレートおよび3D支持面、好ましくは剛性3D支持面は、外科用テンプレートが3D支持面、好ましくは剛性3D支持面に嵌合するとき、協働して力拘束または形状拘束を達成し、骨切り術において使用される外科用器具を誘導するためのガイドをさらに備え、方法は、外科用テンプレートを3D支持面上に、好ましくは剛性3D支持面上に配置することと、外科用器具を操作することによって骨切り術を実施することとを含む。
【0076】
別の態様では、本発明は、3D支持面、好ましくは剛性3D支持面に嵌合してそれによって支持される外科用テンプレートを作成するためのシステムを提供し、外科用テンプレートは、3D支持面の少なくとも剛性部分に関して、摩擦または無摩擦接触機構の限定されたセットを有し、外科用テンプレートが3D支持面に、好ましくは剛性3D支持面に嵌合されると、外科用テンプレートおよび3D支持面、好ましくは、剛性3D支持面は協働して力拘束または形状拘束を達成する。システムは、
CTもしくはCBCTもしくはMRIスキャナから、またはインビトロモデルの走査もしくは口腔内走査のような光学スキャナから選択される容積測定スキャナ、および、走査された医用画像を記録するための手段と、
術前計画からの患者の解剖学的構造の画像を表示することと、3D支持面、好ましくは剛性3D支持面に嵌合し、当該3D支持面によって支持されるための外科用テンプレートのデジタル版を生成することと、外科用テンプレート内に、3D支持面の少なくとも剛性部分に対して摩擦または無摩擦接触機構の限定されたセットを提供することと、および、外科用テンプレートが3D支持面、好ましくは剛性3D支持面に嵌合するとき、3D支持面、好ましくは剛性3D支持面と協働して力拘束または形状拘束を達成する能力に関して、外科用テンプレートを評価することとを行うためのコンピュータと、
外科用テンプレートを作製するための積層造形または鋳造またはフライス加工機械と、
を備える。
【0077】
別の態様において、本発明は、処理エンジン上で実行されると、例えば、上記で列挙したような、本発明の方法のいずれかを実行するコンピュータプログラム製品を提供する。コンピュータプログラム製品を記憶するために、非一時的記憶媒体を使用することができる。
【0078】
本発明の実施形態を詳細に説明する前に、
図7に示すような、本発明の実施形態に関連する、コンピュータ誘導手術を用いた歯科用インプラント配置のステップを説明する。これらのステップは、本発明の実施形態の一部として含まれてもよい。インプラント配置の目的は、患者に、これらのインプラントを介して顎骨に固定することができるものよりも、歯科修復物を提供することである。本発明の実施形態は、インプラント歯科学に関し、特に、例えば、例として術前計画で決定された位置にドリルおよびインプラントドライバなどの外科用器具を誘導するための、外科用テンプレートの設計、製造および使用に関する。
【0079】
術前計画への入力は、患者の解剖学的構造、例えば顎骨および歯列の従来のまたはコーンビーム(CB)走査、コンピュータトモグラフィ(CT)走査、またはMRI走査などの容積測定走査から、任意選択的に、インビトロモデルの光学的走査または口腔内の光学的走査または口腔外の光学的、CTもしくはMRI走査のような他のタイプの走査によって得られる1つまたは複数の画像である。1回以上の走査から、例えば、当業者に既知のソフトウェアおよび従来の技法を使用することによって、患者の解剖学的構造、例えば歯列のデジタル化が得られる。術前計画では、患者の解剖学的構造、例えば骨および歯列のデジタル化が組み合わされ、歯科外科医または医師は、それらの最適または最善の可能な臨床的および任意選択的に審美的な位置において仮想的にインプラント位置を計画するか、または第三者から術前計画を受信して検討する。次に、歯科外科医または医師は、外科用テンプレートが支持を受ける必要がある3D支持面のタイプ、および外科用テンプレートと共に使用される外科用器具のタイプを指示し、これらは外科用テンプレートの誘導機構の位置および寸法を規定する。
【0080】
仮想インプラント計画および外科用テンプレート処方を含む術前計画が完成すると、外科用テンプレートのデジタル設計を可能にするソフトウェアが当業者によって使用される。その後、この外科用テンプレートが製造され、インプラント治療手術を実行する歯科外科医に送られる。手術中、外科用テンプレートは患者の口内の3D支持面に設置される。本発明の任意の実施形態に関して、口腔内の支持面のインビトロコピーにテンプレートを適用することもできる。そのようなインビトロコピーは、例えば、積層造形または鋳造またはフライス加工によって作製することができる。
【0081】
本発明の実施形態による外科用テンプレートは、患者の口内の3D支持面に適合し、3D支持面は、a)1つまたは複数の患者の歯、または、b)固定または取り外し可能な義歯、ブリッジ、充填物、ベニアリングなどの修復物、または、c)顎骨、または、d)歯肉などの軟組織、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。
【0082】
手術中、顎骨にインプラントを配置するなどの外科手術の前に骨切り部が作成される。例えば、コンピュータ誘導手術が適用される、または適用される可能性がある本発明の実施形態に関して、その目的は骨切り術を行うこと、および
a)術前計画に従ってインプラントを効果的にまたは可能な限り正確に配置すること、
b)手術ステップが実施されるべき位置にマーキングすること、
c)顎骨隆線を縮小または平坦化にする、または、空洞を形成することである。
【0083】
そのような実施形態では、以下のような1つまたは複数の外科用器具を誘導する外科用テンプレートが作製される。
【0084】
a)1つまたは複数のドリルおよび/またはインプラント配置器具、すなわちインプラントホルダ、または
b)顎骨を縮小または平坦化するための骨ピエゾトーム、または
c)後続の外科的介入に備えて口腔内マーキングを所定の位置に作成するためのマーキング装置。
【0085】
本発明の実施形態は、以下の特性のうちの1つ以上を有することができる。
・本発明の実施形態である外科用テンプレートは、連続的な接触領域ではなく、3D支持面、好ましくは剛性の3D支持面との個別の機械的界面を提供する限定されたサイズの接触機構を形成する球形、円錐形、角錐形、または円筒形状の要素を含む。
【0086】
・本発明の実施形態である外科用テンプレートは、固有の、安定した正確に再位置決め可能なテンプレートを提供する3D支持面の剛性部分とのみ接触している接触機構を含む。
【0087】
・本発明の実施形態である外科用テンプレートは、締結接触機構を含むことができ、締結接触機構は、例えば、ヘクサロビュラねじおよびドライバを使用することによって角度付きアクセスを備えた当接ねじによる固定を含むことができる。
【0088】
・本発明の実施形態である外科用テンプレートは、各々が安定した正確な最位置決め可能テンプレートを提供することができる、力拘束またはより好ましくは形状拘束定位にある球形、回転楕円形、円錐形、円筒形、または角錐形状の接触機構(すなわち、線接触部または点接触部ではあるが連続接触領域ではない)を含む。
【0089】
外科用テンプレートの本体に組み付けることができる接触機構を含む外科用テンプレートは、それによって異なる材料の使用を可能にし、したがって、接触機構の異なる摩擦特性を提供する。
【0090】
本発明の実施形態による外科用テンプレートは、好ましくは、1つまたは複数の外科用器具を、術前計画において計画されたような位置および向きに誘導するために、1つまたは複数の誘導機構、典型的にはシリンダまたはブッシングまたは誘導面を含む。
図4aにおいて、本発明の実施形態による外科用テンプレート10は、外科用テンプレート10が、例えば、6のような1つまたは複数の手術部位に隣接または近接する歯4を含む3D支持面上に支持される部分無歯顎状況について示されている。これらは、骨切り部が作成されることになり、インプラントが配置されることになるなどの外科的処置を実行することができる1つまたは複数の位置である。歯4は、本発明の実施形態による外科用テンプレートがその上に力拘束または形状拘束様式で載置されることになる剛性3D支持面の一部分を形成する。歯2のいくつかは外科用テンプレート10を支持する必要はない。固定または取り外し可能な義歯、ブリッジもしくは歯冠、充填物またはベニアリング、または歯肉を通して露出されたまたは到達可能なときの骨のような修復要素もまた、剛性3D支持面の一部を形成することができる。任意選択的に、剛性部分に加えて、歯肉などの軟組織7を使用して、テンプレート10の一部を支持することができる。テンプレート10は、1つまたは複数の被支持区画11を含み、例えば、ドリルのような1つまたは複数の外科用器具を誘導するために使用されることになっているボア12を有するシリンダまたはブッシング14などの1つまたは複数の誘導機構を有する。テンプレート10は、一般に、少なくとも2つの支持区画11と、1つまたは複数の手術部位にわたる誘導機構とを含む。
図4aでは、ボア12を有するシリンダ14である誘導機構は、外科用テンプレート10の本体と一体(一体に形成されている)であり、例えば、特に金属テンプレートについては同じ材料から作製することができる。代替的に、ただしあまり好ましくないが、シリンダ14などの誘導機構が、外科用テンプレート10の本体内に挿入され、埋め込まれ、または組み立てられる。この誘導機構はシリンダ14として示されており、このシリンダ14はドリルを上から(または上顎については下から)挿入することを必要とする。しかしながら、シリンダまたはブッシング14は、ドリルのような外科用器具が側面から導入されることを可能にするために片側で切り取られてもよい。これは、上部から(または上顎の下から)ドリルを挿入するのに十分な上部空間が口内にない場合に使用することができる。本発明の実施形態は、外科用テンプレート10の本体内に(テンプレートと一体に)組み込まれた、または埋め込まれたまたは組み立てられた誘導機構を可能にする。
【0091】
図4cは、誘導機構(典型的にはシリンダまたはブッシング14)がテンプレート10の本体に一体化されているかまたは埋め込まれている位置にある、本発明の実施形態による外科用テンプレート10の概略断面図を示す。本発明の実施形態は、外科用テンプレート10の本体内に組み込まれたまたは埋め込まれたまたは組み立てられた誘導機構を可能にするが、一体型(テンプレートと一体で同じ材料から作製される)誘導機構が特に金属製テンプレートには好ましい。外科用テンプレート10の本体に組み付けられるとき、シリンダ14などの誘導機構は、ブッシングの形態であり得、外科用テンプレート10の材料とは異なる材料から成り得る。例えば、テンプレート10はアクリルのようなプラスチック材料から作製することができ、シリンダ14は金属ブッシングの形態とすることができる。誘導シリンダ14は、(例えば、術前計画において歯科外科医または医師によって示されるように)1つまたは複数の手術器具を術前に計画された骨切り部およびインプラント位置6へと誘導するような横方向および垂直位置ならびに角度において位置決めされる。
図4cは、インプラントが配置されるべき位置6にある歯肉7と、シリンダまたはブッシング14の底部との間の空間8を示す。この空間8は任意選択であり、誘導機構、例えばシリンダまたはブッシング14を歯肉7まで延伸することによって回避することができるが、存在する場合、以下の利点がある。
【0092】
a)従来のテンプレートよりもインプラント部位6のより良好な視認性を提供する。
b)手術時、例えば、インプラントが配置される顎骨内の骨にボアを穿孔するとき、ドリルのような外科用器具の良好な洗浄のための空間を提供する。
【0093】
c)無切開または最小切開処置が実行され得るように十分なスペースを提供する。
本発明の実施形態のいずれかによる外科用テンプレート10の3D支持面は、1つまたは複数の歯、固定または取り外し可能な義歯、ブリッジまたは歯冠、充填物またはベニアリングのような修復物もしくは修復要素、骨、例えば軟組織の組織片をひらくことによって露出される顎骨、または歯肉などの軟組織またはそれらの組み合わせであってもよい。本発明の実施形態である口腔歯科インプラント配置用の外科用テンプレート10は、外科用テンプレート10の本体が3D支持面のネガ型であることを必要としない。本発明の1つ、いくつかまたはすべての実施形態は、その3D支持面上への外科用テンプレート10の位置決めが固有かつ再現可能である、すなわち口内に設置され、取り外され、同じ向きで同じ位置に再設置される外科用テンプレート10を提供する。
【0094】
本発明の実施形態は、3D支持面と外科用テンプレートとの間の間隙と組み合わせて、例えば、支持区画11上に限定された数(例えば、30未満、20未満、または15未満かつ7超)の異なる接触機構20を設けることによって3D支持面上への位置決めを達成する。間隙は、テンプレートの本体が3D支持面に接触するのを防ぎ、したがって3D支持面に接触し、テンプレートを力または形状拘束において支持するための所定の限定された数の接触機構20(例えば、30未満、20未満または15未満かつ7超)だけを残す。
図4bは、
図2および
図3に示すような1つまたは複数の大きい接触領域(複数可)ではなく、複数の凸状の接触機構21、22、23、24、25、26を示す。
図4bはまた、ねじ固定またはクランプ27などの変形可能な接触機構20をも示す。本発明の実施形態で使用するための変形可能な接触機構は、接触面の位置を調整ねじのような器具によって調整することができるものを含む。そのような機構はまた、プラスチック、ゴムもしくはエラストマーから作製されているような弾性接触機構であり得るか、または剛性であり得る。エラストマーは、例えば、イソプレン、ポリイソプレン、または他の合成ゴムであり得る。
【0095】
外科用テンプレートと3D支持面との間の完全な接触を有することと比較した、限定された数の接触機構20を有することの利点は、完全な接触領域の各単一の接触点が(正しく製造されない場合)誤った位置決めの原因となり得るため、外科用テンプレートの位置決めが不正確または不安定になる可能性が、外科用テンプレートが完全なまたは連続的な領域によって支持されることによってより高くなり、一方、本発明の実施形態では、その可能性がより低いことである。本発明の実施形態による接触機構20は、球形、回転楕円形、円錐形、角錐形、円筒形、ナイフエッジもしくは尖鋭点、樽形または切頂球形、切頂回転楕円形、切頂円筒形、切頂樽形または切頂ナイフエッジもしくは切頂尖鋭点接触機構などの凸状構造である。接触機構20は、歯肉を貫通することができ、すなわち、それによって、接触機構20が歯肉を貫通することができ、その下にある骨によって支持されることができるが、好ましくはその骨を侵襲しない。接触機構は、好ましくは点対面接触部である。接触機構は、球形、回転楕円形、円錐形、角錐形または円筒形状の点接触部であり得る。接触機構はゼロ面積接触部であり得る。
【0096】
接触機構20は、外科用テンプレート10の本体内へと機械加工、成形、埋め込み、または組み付けることができ、組み立て時に外科用テンプレート10の本体と同じまたは異なる材料から作製することができる。異なる形状の接触機構の例が
図5a、
図5b、
図5cに示されている。
図5aは、(テンプレートと一体に作られた)一体的な、例えば、埋め込まれた回転楕円形接触機構20aを示す。接触機構20aはテンプレート10と同じ材料から形成することができ、したがって剛性材料から作製することができる。積層造形法では、2つ以上の材料を使用することができ、その結果、テンプレートが積層造形によって製造されるとき、接触機構20aの材料はテンプレート10の材料とは異なり得、したがって機構20aは、例えば、テンプレートの材料よりも弾力性があり得る。接触機構20bは調整可能にすることができ、すなわちそれはテンプレート10のねじ切り部分にねじ山で取り付けることができる。
図5bは、一体型(テンプレートと一体に作られている)または埋め込まれたナイフエッジまたは尖鋭点接触機構20bを示す。接触機構20bは、テンプレート10と同じ材料から形成することができ、したがって剛性材料から製造することができる。積層造形法では、2つ以上の材料を使用することができ、その結果、接触機構20bの材料はテンプレート10の材料とは異なり得、したがって機構20bは、例えば、テンプレートの材料よりも弾力性があり得る。接触機構20bは調整可能にすることができ、すなわちテンプレート10のねじ切り部分にねじ山で取り付けることができる。接触機構20bは、下にある骨上に支持されるが骨を貫通することなく、歯肉を貫通し、歯肉貫通接触機構を形成することができる尖鋭点を有することができる。歯肉貫通接触機構20bは調整可能にすることができ、すなわちテンプレート10のねじ切り部分にねじ山で取り付けることができる。
図5cは、外科用テンプレート10の本体と同じかまたは異なる材料から作成することができ、したがって、例えばテンプレート10よりも弾力性であり得、例えば、プラスチック、ゴムまたはエラストマーから作成されてもよい、組み立てられた接触機構20cを示す。プラスチックはアクリル樹脂であってもよく、エラストマー/ゴムはイソプレン、ポリイソプレン、または他の合成ゴムであってもよい。接触機構20cは、テンプレートのスロットまたは穴に力嵌めすることができ、テンプレートのスロットまたは穴にスナップ嵌合することができ、例えば、接着剤を用いて、またははんだ付けもしくは溶接によって所定の位置に固定することができる。
【0097】
図5dは、外科用テンプレート10の本体と同じかまたは異なる材料から作製することができ、したがって、例えばテンプレート10よりも弾力性であり得、例えば、プラスチック、ゴムまたはエラストマーから作製されてもよい、調整可能な接触機構20dを示す。接触機構20dは、テンプレート10のねじ切り部分にねじ山34で取り付けることができる。接触機構20dの支持端部は、任意の既に説明されているもの、例えば、回転楕円形、球形、円筒形、ナイフエッジまたは尖鋭点、樽形、または、切頂回転楕円体、切頂球形、切頂円筒形、切頂樽形または切頂ナイフエッジもしくは切頂尖鋭点接触機構のような凸状構造であってもよい。機構の他方の端部は、例えばねじの回転によって機構の位置を調整するための器具(
図6参照)を受け入れるためのねじ頭35として構成することができる。接触機構20dは、3D支持面に対する当接ねじ34の使用により締結を達成する。接触機構20dには、
図5a~
図5cの他の接触機構(31、32、33として示す)のいずれか、例えば回転楕円形、球形、円筒形、ナイフエッジまたは尖鋭点、樽形、または、切頂回転楕円体、切頂球形、切頂円筒形、切頂樽形または切頂ナイフエッジもしくは切頂尖鋭点接触機構のような凸状構造を設けることができる。力拘束または形状拘束の条件は、締結接触機構の方向および位置が患者の口の届きにくい領域に配置されることを要求することが可能である。
図6に見られるように、当接ねじのねじ頭35は、ドライバを当接ねじの方向とは異なる方向に向けながら、当接ねじを締め付けることを可能にするヘクサロビュラドライバ36のような特殊なアクセス器具を受け入れるように設計することができる。これによって、当接ねじを締める機能を保ちながら、口の中でより快適な位置にドライバを位置決めすることが可能である。
【0098】
接触機構20は互いに干渉してはならないため、限定された数の接触機構が好ましい。適切な接触機構20の最大数は、外科用テンプレートの本体によって覆われる3D支持面のサイズおよび接触機構のサイズによって規定される。後者は、好ましくは0.01mm~5mmの間にある接触半径によって規定することができ、典型的な接触半径は、例えば0.1mm~1mmの間にすることができる。接触機構は、好ましくは点対面接触部である。接触機構は、球形、回転楕円形、円錐形、角錐形または円筒形状の点接触部であり得る。接触機構はゼロ面積接触部であり得る。
【0099】
単純にするために、外科用テンプレートは、最小および最大数の接触点が上記のように規定される限定された数の接触点を有すると考えられる(例えば、30未満、20未満または15未満かつ7以上)。接触機構は、ほぼ無摩擦とすることができ、または、設置されるときのテンプレートの変形によって、もしくは、例えばねじ調整によって接触機構20の位置を調整することによって規定することができる摩擦力があってもよい。本発明による外科用テンプレートは、金属またはプラスチックなどの接触機構のための様々な材料を含むことができる。接触機構と3D支持面との間の接触の摩擦特性は、接触機構と3D支持面の両方の材料特性に大きく依存する。本発明の実施形態による外科用テンプレートは、静的「ロケータ」、または、例えば、締結圧力を形成するために調整可能な能動的、すなわち「締結」のいずれかである接触機構を含むことができる。
【0100】
本発明の実施形態は、力拘束または形状拘束によって3D支持面上への位置決めを達成する。外科用テンプレートの力拘束定位は、これらの接触機構の幾何学的設計を通じて任意の力およびモーメントをこの3D支持面に加えることができ、同等に、3D支持面に対する外科用テンプレートの任意の動きが接触力による抵抗を受ける、3D支持面上での外科用テンプレートの把持であり、これは、3D支持面が、ゼロではない外部の仕事がなければ、接触部との接触を破ることができないことを意味する。形状拘束定位は、任意の外部の、ただし非変形の仕事の大きさおよび方向にかかわらず、3D支持面が接触機構との接触を破ることができないという意味で、力拘束把持のより厳密な適用である。3D空間において、外科用テンプレートの力拘束定位は、少なくとも2つの柔軟指摩擦接触機構、または少なくとも3つの硬質指摩擦接触機構を用いて達成され得る。その理由は、2つの柔軟指摩擦接触機構ではなく、2つの硬質指接触機構による把持では、2つの接触点を結ぶ線の周りにトルクを発生させることができず、トルクに抵抗することができないためである。形状拘束は、3D空間においては少なくとも7つの接触機構によってのみ達成することができる。2D空間では、形状拘束を実現するために必要な接触機構は4つだけであることに留意されたい。2D空間における形状拘束の原理は
図5dに示されている。この図から、例えば、外科用テンプレートまたは3D支持面を変形させることではなく、3D支持面からテンプレートを引き離す、または傾けることを試みる、任意の外部仕事の大きさまたは方向に関係なく、3D支持面に対する外科用テンプレートの2D空間(2並進および1回転)に存在する3自由度がブロックされることは明らかである。
【0101】
結果として、本発明の実施形態による外科用テンプレートは、少なくとも2つの接触機構20を含み、より典型的には7つ以上(例えば、30未満、20未満、15未満)の接触機構20を有する。接触機構は、好ましくは点対面接触部である。接触機構は、球形、回転楕円形、円錐形、角錐形または円筒形状の点接触部であり得る。接触機構はゼロ面積接触部であり得る。
【0102】
本発明の実施形態による外科用テンプレート10は、歯、修復要素、インプラント、充填物、固定または取り外し可能な義歯、ベニアリングおよび/または顎骨など、口腔解剖学的構造によって形成される3D支持面の剛性領域と接触する個別の接触機構を有する外科用テンプレート10を含む。個別の接触機構20は、外科用テンプレート10の位置決めの固有性を損なう可能性があるため、粘膜または歯肉などの口腔解剖学的構造の柔軟な領域と接触していないことが好ましいが、そのような接触機構は、発明の接触機構と共存することを可能にされ得る。必要な場合、軟組織の組織片を持ち上げ、その下にある骨を3D支持面として使用することができる。本発明の実施形態による外科用テンプレートは、組織片を上げる必要なしに、かつ接触部位においてその骨を非侵襲的にしながら、歯肉を通して骨表面に接触する接触機構を含み得る。本発明による外科用テンプレート10の実施形態は、歯肉などの3D支持面の柔軟な領域に支持されるより大きい接触領域を含むことができる。しかしながら、これは、患者の口腔解剖学的構造によって形成された3D支持面の剛性領域上に配置された個別の接触機構20を介して達成される、3D支持面上への外科用テンプレート10の位置決めに影響しないものである。本発明の実施形態による外科用テンプレートは、7つより多くの接触機構を含むことができ、これらは、力拘束または形状拘束を達成するために必要とされないが、より良好な安定性を提供することができる。本発明の実施形態による特に有利な外科用テンプレートは、6つの静的、すなわち「ロケータ」接触機構と1つ~3つの能動的、すなわち「締結」接触機構(複数可)とを有する外科用テンプレートであり、ここで、ロケータ接触機構は無摩擦であるかまたはほとんど摩擦がないように構成され、締結接触機構は摩擦力を利用して、または、利用せずに締結することができる。ここで、6つの静止ロケータ接触機構は術前計画に従って固有の再現可能な位置を規定し、一方、力拘束または形状拘束状態は、少なくとももう1つの接触機構、すなわち締結接触機構を加えることによって達成される。
【0103】
本発明の実施形態による外科用テンプレート10は、摩擦を用いるまたは用いない1つまたは複数の接触機構を含むことができる。接触機構は、好ましくは点対面接触部である。接触機構は、球形、回転楕円形、円錐形、角錐形または円筒形状の点接触部であり得る。接触機構はゼロ面積接触部であり得る。無摩擦接触の場合、各接触部は、接触力が、接触が行われる位置において3D支持面に対して垂直に向けられる単一の点接触部である。摩擦による接触の場合、摩擦接触機構に作用する接触力の方向は、3D支持面上に頂点を有する円錐内に位置する、すなわち摩擦力は、接触点において3D支持面に対して垂直な成分および接線方向の成分に分解され得る。
【0104】
形状拘束が達成されるように、すべて摩擦のない、6つのロケータ接触機構および1つの締結接触機構を有する外科用テンプレートの例を考える。したがって、この特定の外科用テンプレートは、本発明の実施形態に従うと考えられる。以下に、この外科用テンプレートのための接触機構の位置を得るための、本発明の実施形態による1つの特定の方法を
図8に記載し要約する。開始点は、3D支持面を抽出し規定することができる患者の画像と、任意選択的に、外科用テンプレートのデジタル表現とを含む術前計画である。3D支持面は、好ましくは、歯のような歯列の剛性要素、インプラント、ブリッジ、および歯冠のような修復要素、充填物、ベニアリング、固定または除去可能な義歯、骨および任意選択的に軟組織上にある。
【0105】
図8に示す外科用テンプレートを設計する方法では、ステップ1、2および3の順序は入れ替えることができる。テンプレートを設計する方法は次のとおりである。
【0106】
a)ステップ1において、患者のデジタル画像を利用し、外科用テンプレートの患者固有のデジタルバージョンが決定されるか、または外科用テンプレートのデジタルバージョンが第三者から取得される。
【0107】
b)ステップ2において、誘導機能が設計されるか、または設計が第三者から受信される。ステップ3において、形状拘束のために、6つのロケータ接触部と1つの締結接触部から成る初期セットの位置が3D支持面上に規定され、これらの位置が外科用テンプレート10のデジタル表現に転写される。代替的に、力拘束のために、2つの柔軟指摩擦接触部または少なくとも3つの硬質指摩擦接触点の位置を選択することができる。接触機構は、好ましくは点対面接触部である。接触機構は、球形、回転楕円形、円錐形、角錐形または円筒形状の点接触部であり得る。接触機構はゼロ面積接触部であり得る。
【0108】
c)例えば、例として多数の接触位置部位を選択するためにモンテカルロ法を適用するために、以前の経験、または7つ以上(例えば、30未満、20未満、15未満)の定位の単なる無作為選択に基づくなど、様々な方法を使用して、位置の初期セットを規定することができる。
【0109】
d)ステップ3において、位置に加えて、形状拘束のために、これらの接触機構における3D支持面に対する垂直方向もまた、テンプレートの設置状態において規定される。形状拘束のための実施形態では、接触機構は無摩擦であると考えられ、したがってテンプレートが設置されたときにこれらの接触点において3D支持面に対して垂直方向にある接触力をもたらす。摩擦による力拘束のために接触機構に作用する力は、摩擦円錐によってモデル化することができる、すなわち、摩擦によって接触機構に作用する力は、その接触点において3D支持面に対して垂直方向の成分および接線方向の成分に分解することができることに留意されたい。
【0110】
e)ステップ4において、オイラー-ニュートンの公式が適用され、それによっていかなる並進運動または回転運動も阻止される、すなわちゼロである。これにより、テンプレートが設置位置にあるときに、各接触機構における力およびトルクの大きさが負になり得ないという条件が生じる。この条件が満たされる場合、外科用テンプレートは力拘束を有するということになり、またこの特定の例では形状拘束を有する。
【0111】
f)ステップ5において、条件が満たされない場合、接触点位置のセットを更新することができる。ここでも、様々な方法を使用して新しい位置のセットを規定することができ、その方法の1つは、接触点のうちの1つを無作為に選択された新しいものと置き換えることである。この新しい接触点のセットはその後、力拘束または形状拘束条件に対して再度評価される。この手順は、接触機構を毎回異なる接触機構と置き換えることによって繰り返すことができる。例えば、モンテカルロ法を適用して、多数の接触位置部位を選択して評価することができる。
【0112】
g)接触機構のセットを、接触機構に作用する力およびトルクの分布の均一性などの他の基準に対して評価することができる。テンプレートが設置位置にあるときに、接触機構のセットの更新における反復を開始して力およびトルクの分布を最適化することができる。力およびトルク分布の均一性の最適化は、各セットについて異なる接触機構にわたる力およびトルクの大きさの分散が計算される、接触機構のセットの規定の反復を設定することを含む。極小の分散を有する接触機構のセットが、均一な力およびトルク分布の基準に対する最適なセットとなる。同様に、接触機構のうちの1つに対する最小化された最大の力を有するものについて、接触機構のセットを検索することができる。ここで、力およびトルクの最大の大きさが、接触機構の各セットについて記録される。極小の最大の大きさを有する接触機構セットが、この基準に対する最適なセットをもたらすことになる。
【0113】
h)任意選択的に、石または石膏模型のような歯列のインビトロモデルを患者の歯列から作製することができ、接触機構を有するテンプレート10をこの石膏模型上で試用することができる。代替的に、テンプレートを患者の口の中で試用することができる。必要に応じて、接触機構を手動で、例えば、歯科医のドリルを使用して修正することができる。
【0114】
i)最後に、ステップ6において、その接触機構を有するテンプレートが以下に開示される方法によって製造される。
【0115】
以下では、その全体が参照により本明細書に組み込まれる引用文献「Optimizing Fixture Layout in a point-set domain」(Wang Y.M., and Pelinescu D.M., IEEE Transactions on Robotic and automation,vol.17,No.3,June 2001)に基づいて、6つの無摩擦静止「ロケータ」接触点および1つの能動「締結」接触点を有する外科用テンプレートの特定の例について力拘束条件を評価するための1つの特定のアルゴリズムを説明する。
【0116】
以下に開示される理論によって限定されることなく、外科用テンプレートの接触機構の位置および規定を取得するための他の関連方法が本発明の範囲内に含まれ、その方法は本発明の実施形態による範囲にわたって他の外科用テンプレートを得るために適用され得る。以下において、接触点は、ゼロ面積点接触部などの点対面接触部である。点接触部は、例えば、球形、回転楕円形、円錐形、角錐形または円筒形であってもよい。
【0117】
3D支持面の位置ベクトルriを有するi番目の接触点が、外科用テンプレート10に対して小さい位置摂動δriを有すると仮定する。この摂動は、3つの並進成分(ベクトルb)および3つの回転成分(ベクトルθ)を含む6×1ベクトル
【0118】
【0119】
によって記述される、外科用テンプレートに対する3D支持面全体のわずかな変位をもたらす。さまざまな接触機構の変位とテンプレート全体の変位との間の関係は、次のように記述することができる。
【0120】
【0121】
6 x 1列ベクトルは以下のとおりである。
【0122】
【0123】
ここで、δyi=ni
Tδriであり、niは、外科用テンプレートとの接触点における外側(3D支持面から)の単位法線ベクトルを表す3×1ベクトルである。δyiは、小さい動きが接触点において法線と同じ方向にある並進成分を有する場合は正であり、小さい動きが接触点において法線の反対方向にある並進成分を有する場合には負であり、小さい動きが接触点において法線に垂直であるときは0であるスカラーである。これの実際的理解は、δyi>0が外科用テンプレート内への接触点の(禁止された)動きであること、δyi<0が科用テンプレートから離れる(接触が失われる)接触点の動きであること、および、δyi=0が外科用テンプレートと平行な動きである(接触は保持される)ことである。3D支持面とのm個の接触機構を有する外科用テンプレートの場合、個々の摂動式は、外科用テンプレートシステム全体を以下のように記述する単一の式にまとめることができる。
【0124】
【0125】
ここで、
【0126】
【0127】
であり、G=[g1 g2 ・・・ gm]6×n行列は、n個の異なる接触機構を介して外科用テンプレートを3D支持面上に固定する力学動態を完全に特徴付ける。決定論的局在化は、加工片が少なくとも1つのロケータとの接触を失うことなしにいかなる微小運動をすることもできないことを示す基本的な要件である。これは、ロケータ行列Gが6のフルランク、すなわちランクG=6を有する場合に限り当てはまる。
【0128】
静的ロケータ接触機構と、位置ベクトルrcおよび単位表面法線ncによって規定されるクランプとを有する本発明の特定の実施形態を検討する。接触点について、3D支持面にかかる締結力は次のように与えられる。
【0129】
【0130】
ここで、λc>0は締結力の大きさを表す。Qが、空間的に固定されていると考えられる外科用テンプレートに対して3D支持面に加えられるすべての外力をとする。より直感的には、Qは、3D支持面に対して外科用テンプレートに加えられる重力、手動の引っ張り、手動の押しなどのようなすべての力を表す。このとき、平衡式は次のように与えられる。
【0131】
【0132】
ここで、第1の項は静的ロケータ接触部内の内力を表し、第2の項は能動的締結接触部内の力を表し、第3の項は外科用テンプレートに加えられる外力を表す。ここで、非負のn x 1列ベクトル
【0133】
【0134】
は、各一般化接触力fiの大きさの集合であり、ここで、fi=tigiである。
ロケータ接触力tの強度(大きさ)についてのこの式の解の一般形は次のように表現することができる。
【0135】
【0136】
式中、G+=GT(GGT)-1およびP=G+Gである。
ここで、G+はGの擬似逆であり、Pは予測行列であり、γはn×1ベクトルである。最初の2つの項は式の特定の解であり、それぞれ外力Qおよび締結作用に応じたロケータ接触力の大きさを表す。最後の項は斉次解を表し、ロケータ間の内力に対応する。ロケータは受動的な要素であるため、これらの内力は物理的に発生するべきではない。したがって、最後の項は無視しなければならず、力拘束要件は以下のようになる(G=6のランクという要件の隣)。
【0137】
【0138】
ここで、i=1...nであり、nは接触機構の数であり、式中、M=GGTであり、この場合は外科用テンプレートである治具のフィッシャー情報行列と呼ばれる。解析は、力拘束条件が各ロケータの位置(gi)とクランプの位置(gc)に同時に依存することを示している。さらに、力拘束条件が各クランプについて別個に満足される場合、貝の任意の組み合わせの締結もまた条件を満足しなければならない。したがって、マルチクランプ治具の力拘束解析は、連続した1クランプ治具解析に縮小することができる。
【0139】
力拘束の条件の上記の導出は、提示された本発明の特定の実施形態、すなわち6つのロケータ接触機構および1つの締結接触点を有する無摩擦接触機構の場合に適用可能である。同じく本発明の実施形態による外科用テンプレートの他の構成は、接触機構摩擦を含むことができる。摩擦による接触点において作用する力は、摩擦力の接線成分を考慮に入れる必要がある摩擦円錐によって表すことができる。上述のアルゴリズムと同様のアルゴリズムを適用して、摩擦を伴う接触機構が含まれるときの力拘束条件を求めることができる(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる引用文献「Closure problem and Force optimization in fixtures and robotic manipulation」(J.Ma,M.Y.Wang and X.Zhu, 6th annual IEEE Conference on automation science and engineering,Canada,2010)を参照されたい)。
【0140】
当業者は、前段落で述べたように、力拘束要件または性能最適化要件を満たすロケータ位置を求めるためのいくつかの方法フローが存在することを認識する。本発明は、上記の特定の方法フローによって限定されず、その範囲内に任意のそのような方法フローを含む。本発明の実施形態は、これらの条件のいずれかを満たす接触機構のセットを得るために使用される方法フローにかかわらず、力拘束条件または形状拘束を満たす外科用テンプレートの任意の設計を含む。
【0141】
本発明の実施形態による外科用テンプレート10は、以下の2つの態様、すなわち、力拘束または形状拘束のロケータ位置決定およびクランプ構成設計を含むかまたはそれらから成るレイアウト設計を有する。所与の3D支持面について、力拘束または形状拘束の条件を満たすための、本発明の実施形態による外科用テンプレートのための接触機構の多数のセットが存在し得る。本発明の実施形態は、a)正確度局在化(すなわち、ロケータの位置誤差に対する外科用テンプレートの位置正確度のロバスト性)、b)ロケータ接触力の最小化、およびc)ロケータ力の最適化されたバランスのような治具性能基準を有する外科用テンプレートを含む。本発明の実施形態は、これらの最適化された性能条件を任意選択的に含むことができるが、必須ではない。
【0142】
本発明の実施形態は、3D支持面上に外科用テンプレートを締結する様々な方法を有する外科用テンプレート10を含む。本発明の実施形態による外科用テンプレートに含まれ得る様々な締結メカニズムの例は、(限定されるものではないが)、当接ねじ(複数可)の使用による締結、外科用テンプレートの初期変形が、接触機構に対する締結力をもたらす外科用テンプレート内の内部応力を生成する外科用テンプレートの3D支持面へのスナップ留めによる締結、レバー(複数可)の使用による締結、ばね(複数可)の使用による締結、カンチレバーによる締結などであってもよい。例えば、
図4bは、締結が3D支持面に対する当接ねじ28の使用によって達成される、6つのロケータ接触機構21、22、23、24、25、26と1つの締結点27とを有する、外科用テンプレートの特定の実施形態の視覚化である。
【0143】
本発明の実施形態は、外科用テンプレートの本体、誘導機構および接触機構に使用される多様な材料を含む。これは、接触機構の摩擦特性を変えることができることなど、いくつかの利点を有することができる。さらに、外科用テンプレートの本体は、複数の材料の組み合わせを含むかまたはそれらから成ることができる。例えば、外科用テンプレート10の特定の実施形態は、チタン、チタンアルミニウムもしくはチタンバナジウムのようなチタン合金、コバルトまたはコバルトクロムもしくはコバルトモリブデンのようなコバルト合金のような貴金属から作製される一体型外科用テンプレートであり得る。本体が金属フレームワークであると考えられる外科用テンプレートは、以下の理由により、硬化エポキシ樹脂などのポリマー系材料などの他の材料よりも特に有利であり得る。
【0144】
a)良好な形態安定性および熱、湿気または放射線に対する耐性、これは外科用テンプレートの滅菌に有益であり得る。
【0145】
b)金属の特別な強度は、穿孔中の良好な洗浄、より良好な視認性および最小切開手術の使用のためにインプラント部位への優れたアクセスを与える広い(必要最低限の)設計を可能にする。
【0146】
c)より正確なインプラント位置整合をも可能にする正しい位置への再現可能な嵌合の容易さ。
【0147】
d)ブッシングではなく一体化ボアホールがテンプレートの製造を単純にし、ドリルガイドの精度を高める。
【0148】
e)これらのすべては、費用が関係している限りにおいて、ならびにまた技術的および審美的な品質においても、患者にとってより良い治療に貢献する。
【0149】
しかしながら、金属テンプレートの使用は限定されており、本発明は、接触機構の接触面積を減少させ、正確な配置をより容易にするなどの有利な改善を提供する。
【0150】
本発明の実施形態による外科用テンプレートは、様々な方法によって製造することができる。本発明の特定の実施形態は、容積測定走査、または、CT走査、CBCT走査およびMRI走査もしくは光学的走査などの他の走査から外科用テンプレートを生成する製造方法を含む。本発明の範囲内に含まれる製造方法は、積層造形またはより単純には「積層造形」法、フライス加工法またはそれらの組み合わせを含むことができる。積層造形という技術用語は広い意味で理解されるべきである。ISO/ASTM52900-15は、7つのカテゴリーのAMプロセス、すなわち、結合剤噴射、指向性エネルギー堆積、材料押出し、材料噴射、粉末床溶融、シート積層および液槽光重合を定義する。そのような方法は、層ごとに材料を追加することによって原材料の塊を所望の形状に変換する3D作業エンベロープを進む。積層造形のその他の用語は、デスクトップ造形、迅速造形、ラピッドプロトタイピング、およびオンデマンド造形またはオンデマンド印刷または3D印刷を含む。層を堆積させて部品を形成する方法および使用される材料に関係なく、積層プロセスが本発明の範囲内に含まれる。適切な方法は、層を製造するための材料の溶融または軟化、例えば、選択的レーザ溶融(SLM)または直接金属レーザ焼結(DMLS)、選択的レーザ焼結(SLS)、溶融堆積モデリング(FDM)、または溶融フィラメント製造(FFF)を含むことができ、これはまた、ステレオリソグラフィ(SLA)、または積層物製造(LOM)などの異なる技術を用いた液体材料の硬化も含む。本発明の実施形態による積層造形方法のいずれか、いくつか、またはすべては、必要に応じて犠牲材料および支持材料の使用を含む。
【0151】
適切な材料は以下のいずれかである。
SLM:Ti、CoCr、(ステンレス)鋼、銀、金、青銅、真鍮、アルミニウム、
SLA:エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリルエポキシ樹脂、TPA
FDM:ABS、ポリカーボネート、PPSU、
フライス加工:すでに上述した金属、ABS、アセタール、アクリル、POM、ガラス繊維入りナイロン、ナイロン、PEEK、フェノール、PC、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PTFE、PVC、PPS、ポリアミドポリマー、フルオロポリマー、PEI、フッ化炭素樹脂、ガラスエポキシ、PPE、ナイロン、ニッケル合金、ベリリウム銅、鉄合金
SLS:ポリアミド、ガラス繊維入りポリアミド、アルマイド、難燃性ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン
ジェット印刷:アクリレート、樹脂、ビニルポリマー、石膏
真空鋳造:ポリウレタン、TPE、ABS、PP、PC、PE。
【0152】
本発明の実施形態は組み合わされた方法を含むことができる。本発明の特定の実施形態は、選択的レーザ溶融(SLM)およびコンピュータ数値制御(CNC)フライス加工の組み合わせを使用する。この特定の実施形態では、接触機構の最終位置および形状、ならびに、誘導シリンダの内径のような誘導機構の他の寸法を正確に決定するために、フライス加工ステップは積層造形ステップ(SLM)に後続することができる。前述の特定の実施形態に記載されているような製造技術の組み合わせでは、印刷ビルドプレートとフライス加工設定との間の参照が使用されることが好ましく、それによって、フライス加工イベントが装置上の正しいスポットにおいて行われる。オプションは少なくとも以下の通りである。
【0153】
○ ハブ:印刷中、ガイド(1つ以上)がハブに接続されている。印刷後、ハブおよび付属のガイドが専用のハブプレースホルダに配置されて、フライス加工中に参照される。
【0154】
○ 印刷ビルドプレート上の参照オブジェクト。これにより、印刷用ビルドプレート上で直接フライス加工すること、すなわちバッチフライス加工が可能になり、ハブの設計および構築が回避されることになる。
【0155】
本発明の実施形態はまた、例えば上記で説明された方法フローによって提供される設計からの手作業による彫刻またはフライス加工を含む除去加工である他の製造方法も含む。
【0156】
本発明の実施形態による外科用テンプレートの製造後、および必要な嵌合調整の後、
図7に示すようにコンピュータ誘導治療を実行することができる。ステップ10から13において、外科用テンプレートは上述のように設計され製造される。ステップ14において、テンプレートが、例えば、歯、インプラント、ブリッジ、歯冠、充填物、ベニアリング、固定もしくは取り外し可能な義歯または骨などの修復要素の表面など、3D支持面上に位置する患者の口の中に配置され、1つまたは複数の誘導機構が、外科用器具を誘導するために使用される。例えば、器具は、インプラントが配置される骨に穴を穿孔するための1つまたは複数のドリル、またはインプラント配置器具、すなわち、インプラントホルダ、または、顎骨を縮小または平坦化するための骨ピエゾトーム、または、後続の外科的介入に備えて口腔内マーキングを所定の位置に作成するためのマーキング装置であってもよい。テンプレートの形状は、手術部位への良好な視認性を可能にし得、また手術部位への良好な洗浄をも可能にし得る。
【0157】
本発明はまた、画像を操作するためのコンピュータ、CNCフライス盤、積層造形装置、CT、CBCT、MRIまたは光スキャナなどのスキャナのようなデジタル処理能力を有する様々な装置を含むシステムに関する。これらの装置は、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、中央処理装置(CPU)および/またはグラフィックス処理装置(GPU)のようなマイクロコントローラを含み、これらはソフトウェア、すなわち1つまたは複数のコンピュータプログラムでプログラムされることによってそれぞれの機能を実行する。
【0158】
これらの装置のいずれか、いくつかまたはすべては、メモリ(非一時的コンピュータ可読媒体、RAMおよび/またはROMなど)、オペレーティングシステム、固定フォーマットディスプレイのようなディスプレイ、キーボードのようなデータ入力装置、「マウス」などのポインタ装置、他の装置にアタッチするためのシリアルまたはパラレルポート、任意のネットワークに接続するためのネットワークカードおよび接続を有することができる。
【0159】
ソフトウェアは、ソフトウェアがそれぞれの1つまたは複数の装置にロードされ、マイクロプロセッサ、ASIC、FPGAなどの1つまたは複数の処理エンジン上で実行されるとき、以下の機能を実行するように適合することができる。
【0160】
患者の歯列のデジタル画像を取得すること、
患者の歯列のデジタル画像の処理および操作を可能にすること、
外科用テンプレートのための3D支持面を抽出および表示して、テンプレートのデジタル版を患者の歯列の画像内への配置を可能にし、決定するために外科用テンプレートの患者特有のデジタル版を表示および変更すること。
【0161】
ソフトウェアは、ソフトウェアがそれぞれの1つまたは複数の装置にロードされ、マイクロプロセッサ、ASIC、FPGAなどの1つまたは複数の処理エンジン上で実行されるとき、以下の機能を実行するように適合することができる。
【0162】
形状拘束について、6つのロケータ接触部と1つの締結接触部のような接触機構の初期セットの位置を3D支持面上に表示し、これらの位置を外科用テンプレートのデジタル表現に移すこと。代替的に、力拘束について、2つの柔軟指摩擦接触部または少なくとも3つの硬質指摩擦接触点の位置を表示すること。
【0163】
任意選択的に、形状拘束について、テンプレートが3D支持面上の設置位置にあるときに、これらの接触機構の3D支持面に対する法線方向の規定を可能にすること。形状拘束について、接触機構は無摩擦であると考えられ得、したがってテンプレートが設置されたときにこれらの接触点において3D支持面に対して垂直方向にある接触力をもたらす。摩擦による力拘束のために接触機構に作用する力は、摩擦円錐によってモデル化することができる、すなわち、摩擦によって接触機構に作用する力は、その接触点において3D支持面に対して垂直方向の成分および接線方向の成分に分解することができる。
【0164】
ソフトウェアは、ソフトウェアがそれぞれの1つまたは複数の装置にロードされ、マイクロプロセッサ、ASIC、FPGAなどの1つまたは複数の処理エンジン上で実行されるとき、以下の機能を実行するように適合することができる。
【0165】
任意の並進運動または回転運動がブロックされる、すなわちゼロであるオイラー・ニュートンの公式を適用すると、テンプレートが設置位置にあるとき、各接触機構における力およびトルクの大きさは負になり得ないという条件がもたらされる。この条件が満たされる場合、外科用テンプレートは力拘束を有し、おそらく形状拘束を形成するということになる。
【0166】
条件が満たされない場合、ソフトウェアは、接触点位置のセットが更新されることを可能にするように適合され、例えば、位置の新しいセットを規定するためのさまざまな方法を可能にし、それらの方法のうちの1つは、1つの接触点を、無作為に選択された新しい位置と置き換えることである。
【0167】
ソフトウェアは、この新しい接触点のセットがその後、力拘束または形状拘束条件に対して再度評価されることを可能にするように適合することができる。
【0168】
ソフトウェアは、接触機構の各セットが、接触機構に作用する力およびトルクの分布の均一性などの他の基準に対して評価されることを可能にするように適合することができる。
【0169】
ソフトウェアは、テンプレートが設置位置にあるときに、力およびトルクの分布を最適化するために、接触機構のセットの更新における反復を可能にするように適合することができる。
【0170】
ソフトウェアは、力およびトルク分布の均一性の最適化を可能にするように適合することができ、各セットについて異なる接触機構にわたる力およびトルクの大きさの分散が計算される、接触機構のセットの規定の反復を設定することを含むことができる。
【0171】
ソフトウェアは、極小の分散を有する接触機構のセットが、均一な力およびトルク分布の基準に対する最適なセットとして選択されることを可能にするように適合することができる。
【0172】
ソフトウェアは、接触機構のうちの1つに対する最小化された最大の力を有するものについて、接触機構の各セットを検索することを可能にするように適合することができる。
【0173】
ソフトウェアは、接触機構の各セットについて力およびトルクの最大の大きさの記録を可能にするように適合することができる。
【0174】
ソフトウェアは、極小の最大の大きさを有する接触機構のセットを選択するように適合することができる。
【0175】
接触機構は、球形、回転楕円形、円錐形、角錐形または円筒形状の点接触部であり得る。
【0176】
接触機構はゼロ面積接触部であり得る。
ソフトウェアは、例えば、積層造形、CNCフライス加工などのためのファイルなど、製造に適したその接触機構を有するテンプレートのデジタルファイルを生成することを可能にするように適合することができる。
【0177】
上記のソフトウェアのいずれも、サーバのようなネットワーク装置を含む、上記の層値のいずれかの処理エンジン用にコンパイルされたコンピュータプログラム製品として実装されてもよい。コンピュータプログラム製品は、光ディスク(CD-ROMまたはDVD-ROM)、デジタル磁気テープ、磁気ディスク、USBフラッシュメモリ、ROMなどのソリッドステートメモリなどの非一時的信号記憶媒体に記憶することができる。