(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】包装材料をリサイクルするための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C08J 11/08 20060101AFI20220928BHJP
B32B 43/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
C08J11/08
B32B43/00
(21)【出願番号】P 2019531887
(86)(22)【出願日】2017-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2017082971
(87)【国際公開番号】W WO2018109147
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-11-30
(32)【優先日】2016-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513187106
【氏名又は名称】ザペラテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン ロビス
(72)【発明者】
【氏名】マルクス シュルツェ
【審査官】田名部 拓也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/169801(WO,A1)
【文献】特開2000-034362(JP,A)
【文献】特開2008-007630(JP,A)
【文献】米国特許第05127958(US,A)
【文献】中国特許出願公開第101054446(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104592546(CN,A)
【文献】特表2014-507529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/00 - 17/04
C08J 11/00 - 11/28
B09B 1/00 - 5/00
B09C 1/00 - 1/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層システム
においてポリマー層(20,40)から金属層(30)を分離するための分離流体(330)の使用であって、前記分離流体(330)が、
前記ポリマー層から前記金属層を分離する水
と短鎖カルボン酸と
の混合物を含み、前記金属層の溶解を低減するリン酸
とアルカリ金属水酸化物と
をさらに含む、分離流体(330)の使用。
【請求項2】
前記短鎖カルボン酸と、リン酸と、アルカリ金属水酸化物とが溶液中で部分的に反応して、アルカリ金属リン酸塩及びアルカリ金属カルボン酸塩を形成する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記短鎖カルボン酸が水混和性C1-C4モノカルボン酸である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記短鎖カルボン酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸から成る群から選択される、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記アルカリ金属水酸化物が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムから成る群から選択される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記混合物の成分が、30~60重量パーセントの短鎖カルボン酸と、0.5~5重量パーセントのリン酸(30%溶液)と、2~8重量パーセントのアルカリ金属水酸化物(33%溶液)と、30~60重量パーセントの水とを含む、請求項1から5までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記混合物の成分が、42~48重量パーセントの短鎖カルボン酸と、2~4重量パーセントのリン酸(30%溶液)と、4~8重量パーセントのアルカリ金属水酸化物(33%溶液)と、45~50重量パーセントの水とを含む、請求項1から6までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
多層材料(10)中のポリマー層(20,40)から金属層(30)を分離する方法であって、
前記多層材料(10)を、請求項1から7までのいずれか1項に記載の分離流体(330)を含むバット(310)内に入れる
ことを含む、方法。
【請求項9】
前記多層材料(10)の成分を含む前記分離流体(330)に篩過又は濾過(240)のうちの少なくとも一方を施し、そしてその後選別(260,280)して、前記金属層(30)からの金属の第1画分、及び前記ポリマー層(20,40)からのプラスチックの第2画分を得ることをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記分離流体(330)をリサイクルすることをさらに含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記分離が20℃~90℃の温度で行われる、請求項8から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記分離が70℃の温度で行われる、請求項8から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記分離流体のpH値が2~4である、請求項8から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記多層材料(10)が、少なくとも1つのアルミニウム層と、PET又はPEから成る少なくとも1つのポリマー層(20,40)とを含む、請求項8から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの金属層(30)と少なくとも1つのプラスチック層(20,40)とを含む多層材料(10)を含む包装材料(300)をリサイクルする方法であって、前記方法が、
請求項1から7までのいずれか1項に記載の分離流体(330)を含むバット(310)内に前記包装材料(10)を入れて、前記金属層(30)からの金属細片と、前記ポリマー層(20,40)からのプラスチック細片と、残余成分との混合物を生成する(260)ことを含む、方法。
【請求項16】
金属粒子を生成するために前記金属細片と前記プラスチック断片とを選別し(280)、分離することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記金属層(30)がアルミニウム又はアルミニウムの合金からのものである、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのプラスチック層(20,40)がポリオレフィンから形成されている、請求項15から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記分離流体(330)をリサイクルすることをさらに含む、請求項15から18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
多層材料(10)から形成された包装材料をリサイクルするための装置であって、
請求項1から7までのいずれか1項に記載の分離流体(330)を有するバット(310)と、前記包装材料(10)を前記バット(310)内へ輸送するための輸送機器と、前記分離流体(330)と前記包装材料(10)との組み合わせから、分離された材料を除去する(240)ための篩過/濾過機器(350)と
を含む、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離流体及びその使用、金属層と少なくとも1つのプラスチック層とを含む多層材料を含む包装材料をリサイクルするための方法及び装置を含む。
【背景技術】
【0002】
積層体又は多層材料を分離するためにマイクロエマルジョン分離流体を使用することは、例えば、出願人の国際出願公開(WO)第2012/101189号パンフレットに基づき公知である。この文献には、多層材料内の層を互いに分離することが教示されている。このWO’189の開示の実施例は、光起電モジュールにおいて使用される多層材料の分離を対象としている。
【0003】
食品包装材料において使用される積層体のリサイクルを改善するための要件が論じられている。例えば、Mario Abreuによる「The recycling of tetra pak aseptic cartons(テトラパック無菌カートンのリサイクル)」における記事(www.environmental-expert.com上で見いだされる)では、この問題が広範に論じられ、セルロースティッシュのリサイクルは可能であるが、しかしアルミニウム箔からポリエチレンを分離することは可能でないことが注目されている。
【0004】
米国特許第5,421,526号明細書(Tetra Laval)には、金属、プラスチック、及び場合によっては紙又は厚紙から成る層を含む積層包装材料の廃棄物から、個別の材料成分、例えば金属、プラスチック、及び適用可能な場合には、紙を回収する方法が教示されている。ギ酸、酢酸、プロパン酸、酪酸、及びその他の同様の揮発性有機酸から選択された、有機酸又は有機酸の混合物で廃棄物を処理することによって、層は互いに分離される。上記特許の方法は酢酸の引火点(80%の濃度で約60℃)を上回る高い温度(80℃)で実施される。これは大量のエネルギーを必要とするだけではなく、安全性のリスクをも高くする。使用される混合物は、酢酸の濃度が高い(80%)ため、高度な攻撃性を有する。この混合物はアルミニウム成分を攻撃し、水素の形成、並びにプロセス中に回収されたアルミニウムの量の損失を招くことになる。
【0005】
欧州特許(EP)出願公開第0 543 302号明細書(Kersting)には、アルミニウムのリサイクルを可能にするために、プラスチック箔、例えばPE箔からアルミニウム箔を分離する方法が教示されている。低級脂肪酸(例えば酢酸、プロピオン酸、ギ酸、ブタン酸)の20%溶液中に積層体を入れ、これを10~20分間にわたって100℃まで加熱する。この方法は、液体をその沸点で且つ/又はその沸点を上回る温度で操作するために、閉じた容器内で実施することが好ましい。加えて、溶液が冷却されるのに伴って、負圧が形成されることがある。EP’302に記載されたこの方法の工業的実現可能性には疑問の余地がある。それというのも、アルミニウム箔及びプラスチック箔の形態を成す廃棄物材料を溶液と一緒に全体として装入サイクル毎に加熱し冷却しなければならないからである。このことを大型の容器で充分に速く実施するには難しいことがあり、大量のエネルギーを必要とする。
【0006】
同様に、中国特許出願第CN 104744724号明細書は、アルミニウム・プラスチック積層体のための分離流体、及び分離流体を利用することによりプラスチック層からアルミニウム層を分離するための方法に関する。分離流体は主として、40~200部のメタン酸(ギ酸)と5~10部のジクロロメタンとを混合することにより調製され、また1~4部の非イオン性界面活性剤を含有する。この出願の分離流体は高揮発性であり、また環境に対して有害な成分を含有している。
【0007】
中国特許出願第103131042号明細書は、アルミニウム・プラスチック多層材料を分離するための別のタイプの分離剤に関する。このタイプの分離剤は、メタン酸(ギ酸)とエタノールとを体積比4:1~1:4で混合することによって調製される。分離剤を使用することによる、アルミニウム・プラスチック複合フィルムの分離方法は、次の工程、すなわち、分離剤と水とを混合することにより分離流体を得、そして清浄化済のアルミニウム・プラスチック複合フィルムを分離流体中に浸漬する工程と、取り出し、清浄化し、遠心分離し、そして乾燥させる工程とを含む。アルミニウム・プラスチック分離フィルムが分離流体と水とから混合された溶液中に浸漬されると、アルミニウム・プラスチック複合フィルムのアルミニウムとプラスチックとを効率的に分離することができる。中国特許出願CN’042に記載された例では、50~80℃の温度が採用される。このような温度は、分離剤が可燃性であり且つアルミニウムを攻撃する条件であり、安全性リスク及びアルミニウム損失を招く。
【0008】
米国特許出願公開第2002/0033475号(Bejarano)には、長寿命包装用Tetra Brik(登録商標)無菌カートンをリサイクルするための合成処理組成物が開示されている。上記特許出願に開示された組成物は、乳酸、酢酸ナトリウム、セルロース酵素、α-アミラーゼ酵素、マルトース酵素、クエン酸、及び活性炭を含む。この組成物は、紙とポリエチレンとアルミニウムとから成る多層材料を分離するために使用される。
【0009】
国際公開第03/104315号パンフレット(Masuria)には、紙、アルミニウム、及び/又はポリマーフィルムを含む多層を有する複合材料のためのリサイクル方法が教示されている。この方法の場合、複合材料は、層間に使用される接着剤の特徴に応じて種々異なる溶媒、例えばクロロホルム、テトラヒドロフラン、キシレン、プロトン性カルボン酸、又は水で処理される。しかしながら、この方法においてハロゲン化媒体のような有機溶媒を使用することは、環境に対して不都合な影響を及ぼす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
多層材料内のポリマー層から金属層を分離するための分離流体の使用が、本開示において教示される。この方法は、多層材料内の層を分離するために、分離流体を含むバット(vat)内に多層材料を入れることを含む。分離流体は、水と、短鎖カルボン酸と、リン酸と、アルカリ金属水酸化物との混合物を含む。言うまでもなく、アルカリ金属リン酸塩及びアルカリ金属カルボン酸塩を生成するように、短鎖カルボン酸及びリン酸はアルカリ金属水酸化物と部分的に反応する。
【0011】
使用される短鎖カルボン酸は、水混和性C1-C4モノカルボン酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸である。本発明の1態様では、ギ酸又は酢酸が使用される。
【0012】
アルカリ金属水酸化物には、リチウム、ナトリウム、及びカリウムの水酸化物が含まれるが、これらに限定されない。一般に、他の水酸化物が不溶性リン酸塩を形成しないならば、そのような他の水酸化物を使用することもできる。なぜならば、これらの不溶性塩は、本明細書の方法において教示されるように、アルミニウムの不動態化を妨害するからである。
【発明の効果】
【0013】
分離流体が有する成分は、例えば中国特許出願から公知のものよりも、環境に対する害が少ない。有機成分の揮発性はより少ない。このことは化学物質のエミッション及び爆発のリスクを最小限に抑える。それというのも、本明細書の分離流体は下記のように、検出可能な引火点を示さないからである。
【0014】
この方法は、多層材料の成分と一緒に分離流体を篩過/濾過することにより、分離液から多層材料の成分を回収し、そしてその後、金属層から金属第1画分を、そしてポリマー層からプラスチック第2画分を得るように選別することを含むこともできる。本発明のいくつかの態様では、異なる種類のポリマーから成る第3画分を得ることができる。このことは、多層材料に由来する材料をリサイクルするのを可能にする。得られたポリマーを押し出し、金属を金属細片(metal shreds)の形態で回収することができる。
【0015】
本開示はまた、包装材料、例えば汎用飲料容器からポリマー成分と金属成分とをリサイクルする方法を教示する。
【0016】
包装材料をリサイクルするための装置も開示される。装置は、分離流体を有するバットと、多層材料をバット内へ輸送するための輸送機器と、分離流体と包装材料との組み合わせから、分離された材料を除去するための篩過/濾過機器とを含む。
【0017】
言うまでもなく、本開示において使用される「多層材料(multilayer material)」という用語は、いくつかの材料層を含む物体を包含するものとする。いくつかの材料層の非制限的な例は、層が互いに積層、結合、又は接着されるか、又は1つの材料を別の材料上に堆積させることができる物体を含む。多層材料は、飲料容器から知られているような板紙層を含むことができるが、しかし板紙層を含む必要があるわけではない。
【0018】
非制限的な実施態様における下記方法は、飲料又は食品の容器の積層体をリサイクルするために用いられる。しかし、言うまでもなく、この方法は他の用途において使用される他の積層体をリサイクルする際に応用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本開示の方法を用いてリサイクルされる、無菌包装において使用される積層体の一例を示している。
【
図2】
図2は、本開示の教示内容を用いた方法のフローダイヤグラムを示している。
【
図3】
図3は、本開示の教示内容を用いた、リサイクルのための装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面に基づいて本発明を以下に説明する。本明細書中に記載された本発明の実施態様及び態様が一例にすぎず、クレームの保護範囲を制限するものでは決してないことは明らかである。本発明はクレーム及びクレームと同等のものによって定義される。言うまでもなく、本発明の1つの態様又は実施態様の特徴を、本発明の異なる態様及び/又は実施態様の特徴と組み合わせることができる。
【0021】
図1は、無菌包装において使用される積層体10の非制限的な例を示している。積層体10は第1ポリマー層20を含む。この第1ポリマー層20はアルミニウム層30に結合されている。アルミニウム層は第2ポリマー層40に結合されている。これらの異なる層の間には結合剤が使用されている。このような結合剤には、エチレン/アクリル酸コポリマー及び/又はポリウレタン接着剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
積層体10は本発明の1態様では、無菌包装、例えば飲料、例えばフルーツジュース、及びミルク、並びにトマトピューレ、及び同様の流体のための起立型パウチのために使用される無菌包装において使用される。同様の包装が他の食品、例えばスナックフード、並びに化粧品のためにも使用される。いくつかの用途では、ポリマー層のうちの1つの層の一方の側に、又は両方の側に、例えば製品の説明が印刷される。
【0023】
本発明の1つの非限定的な例において、ポリマー層20は、低密度ポリエチレン(LDPE)から成っており、ポリマー層40はポリエチレンテレフタレート(PET)から成っている。金属層30はアルミニウムから成っている。これは本発明を限定するものではなく、他のポリオレフィン又はプラスチック、例えばポリプロピレン(PP)、ポリアミド、又はポリエステルが使用されてもよい。同様に、金属層30はアルミニウム合金又は別の金属であってもよい。
【0024】
いくつかのタイプの包装は、金属層30を備えたただ1つのポリマー層20だけを含む。例えば生産からの拒絶品は、金属層30を備えたただ1つのポリマー層20を有するだけでもよい。他のタイプの包装材料は、同じポリマーから成る2つのポリマー層20及び40を含む。本開示の教示内容は、これらのタイプの多層材料にも応用可能であり、言及される多層材料に制限されることはない。
【0025】
図3は、概略的なダイヤグラムである。このダイヤグラムは、本開示の多層積層体10をリサイクルするためのリサイクル設備の一例である。言うまでもなく、
図3に示された設備は一例にすぎず、本発明を限定するものではない。多層積層体10は上記のように構成されている。
【0026】
リサイクル設備は切断機器又は細断機器300を含む。切断機器又は細断機器は、多層積層体10から成る包装材料の梱(bale)50を切断又は細断する。切断機器又は細断機器300に続いて、攪拌器320を備えたバット310が設けられており、これによりバット310の内容物をかき混ぜ、攪拌する。バット310は、分離流体330と、分離流体330をバット310内へ定量供給するための流体ディスペンサ340とを含んでいる。
【0027】
材料は篩過機器350内で分離流体330から篩過することができ、次いで篩過された材料は洗浄機360内の水で洗浄されることになる。例えば、湿式選別器370内で浮沈分離技術又は遠心分離技術を用いることにより、篩過された材料から成分を分離するための第1選別工程を湿潤環境内で実施することができる。この結果、概ね2つの材料流が生じる。上記積層体10の非制限的な例では、2つの材料流のうちの一方は、主として低密度ポリエチレンであり、材料流のうちの他方は、アルミニウムとPETとの混合物を含む混合流である。2つの材料流は必要な場合には、さらなる洗浄工程において洗浄することができる。
【0028】
結果として生じる2つの材料流は乾燥ユニット380内で乾燥させることができ、続いて乾式選別ユニット390内で精製することができる。例えば混合流からアルミニウムとPETとを抽出するための乾式選別は、例えば風篩(wind-sifting)技術又は電磁的技術によって行うことができる。言うまでもなく、選別(湿式又は乾式)は要件に応じて単一の機器内、又は2を超える機器内で実施することもできる。
【0029】
分離流体330は、濾過により不純物を取り除き、消費された化学物質を補充するために、流体リサイクル機器355内で大部分がリサイクルされる。洗浄水も、水リサイクル機器365内で洗浄水を清浄化するためにリサイクルされる。リサイクルはクロスフロー濾過技術、逆浸透、及び/又は液液抽出を含む。これらはまた、洗浄水から分離流体330の化学物質の少なくともいくらかを回収することを可能にする。
【0030】
図2は、
図3に示された機器において用いられる、積層体10をリサイクルするための方法の概要を示している。積層体10は、包装材料の梱50として収集される。積層体10は一般にそれらの体積を低減するために押し合わされて梱50にされている。積層体10は、廃棄物塵芥収集及び/又は処理設備において食品の残りを除去するために洗浄されていてよい。リサイクル設備に到着すると、梱50は工程200において、まずサイズ低減のために切断・細断機器300内へ入れられる。切断/細断された積層体10のバッチは次いでバット310内へローディングされる。攪拌器320は工程210において積層体10と分離液300とをバット310内で混合することにより、混合物を生成する。
【0031】
工程230において、積層体10と分離流体330との混合物をさらに所定の処理時間、例えば4時間にわたって攪拌してかき混ぜ、多層積層体10をその成分層、すなわち(上記非制限的例の場合)LDPEの第1ポリマー層20と、アルミニウム層30と、PETの第2ポリマー層40とに分離する。一般に、分離流体330の効果は、LDPEの第1ポリマー層20及び/又は第2ポリマー層40と金属層30との間の接着結合部分を除去することにより、金属層30に由来する金属細片と、第1ポリマー層20及び第2ポリマー層40に由来するポリマー細片とを生成することである。これは、典型的には30分間~300分間の処理時間にわたって所与の温度、例えば20℃~90℃で達成される。方法の1態様において、所与の温度は70℃である。汎用飲料カートンのための方法の別の態様では、所与の温度は30℃~50℃となる。温度及び処理時間の選択は大まかにいえば、剥離されるべき接着結合剤のタイプに依存する。エチレン/アクリル酸コポリマーに由来する結合剤で互いに結合された層は約40℃で剥離し、またポリウレタン接着剤に由来する結合剤で互いに結合された層は、約70℃で剥離する。
【0032】
分離流体330と、分離された材料、すなわちLDPE、アルミニウム及びPETとの混合物をバット310から取り出し、工程240において篩350内で篩過することにより固形材料を除去する。固形材料は第1ポリマー層20に由来するLDPEと、第2ポリマー層40に由来するPETと、金属層30に由来する金属細片のほとんどとを含む。次いで分離流体330を機器355によってリサイクルする。リサイクルは工程245における濾過と、工程246における消費された化学物質の補充とによって実施される。次いで、リサイクルされた流体は流体ディスペンサ340内へ戻される。機器355における濾過工程245は、前には篩過されなかった金属細片を含む分離流体330から固形不純物のほぼ全てを除去する。
【0033】
工程240において篩過された固形材料は、ポリマーとアルミニウムとの混合物である。この結果としてできた材料は、工程250において洗浄機360内で洗浄され、次いで湿式選別工程260において湿式選別器370内で浮沈分離技術又は遠心分離技術によって、大部分がLDPEである軽量材料と、大部分がアルミニウム及びPETである高密度材料とに選別される。軽量材料及び高密度材料を工程270(軽量材料)及び工程271(高密度材料)において別々に乾燥させる。乾燥させた高密度材料を、工程280において乾式選別器390内で風篩技術又は電磁的技術によってさらに選別することにより、アルミニウムが豊富な材料と、PETが豊富な材料とを得る。言うまでもなく、選別(湿式又は乾式)は要件に応じて単一の工程、又は2を超える工程において実施することもできる。
【0034】
洗浄水は、洗浄水がやはり再使用される前に、工程255において水リサイクル機器365によって処理されることを必要とする。これらの処理は、通常の濾過技術及びクロスフロー濾過技術、逆浸透、及び/又は液液抽出を含むいくつかの濾過工程を含む。これらの技術はまた、洗浄水から化学物質の少なくともいくらかが回収され、再使用のために流体リサイクル機器355へ移されることを可能にする。1つの態様では水リサイクル機器365は、逆浸透と組み合わされた液液抽出ユニットを含む。
【0035】
LDPEが豊富な材料を工程290において押し出すことにより顆粒にすることができる。金属細片をリサイクルのために工程291においてプレスすることによりペレットにすることができる。同様に、PETが豊富な材料を工程292において出荷のために圧密化することもできる。後処理工程290,291及び292は、例えば押し出し機械又はプレス機械によって機器395内で行うことができる。
【0036】
流体ディスペンサ340から来る、バット310内で使用される分離流体330は、水と、短鎖カルボン酸と、リン酸と、アルカリ金属水酸化物との混合物を含む。短鎖カルボン酸は、例えば水混和性C1-C4モノカルボン酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸である。アルカリ金属水酸化物は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムである。水は本発明の1つの態様の場合、脱イオン化されている。短鎖カルボン酸と水との混合物は、多層材料のアルミニウムと接着層との接着分子間力を低減する。リン酸及びアルカリ金属水酸化物は、下記のように、アルミニウム溶解という副反応を制御するために添加される。
【0037】
分離流体330は20℃~90℃、そして2~4のpH値で維持される。実際の値は、包装材料の投入された積層体10又は他の多層材料の特性に応じて選択される。通常、低いpH値は分離性能だけでなく、アルミニウム溶解をもたらす副反応をも優先させる。理想的には、本開示の方法は、金属層30から充分に高い金属収量を、又は第1ポリマー層20及び第2ポリマー層40から充分に高いポリマー収量を処理時間内に達成する一方で、金属層30の溶解を最小限に保つ。金属層30の溶解を最小限にすることは安全性の理由から重要である。それというのも、アルミニウムの溶解は気体状水素の形成をも招き、このことは爆発の危険を意味するからである。従って、pH値は、アルカリ金属水酸化物溶液を分離流体330に添加することによって調節される。
【0038】
分離流体330中の溶解されたアルミニウムの含量を制御するために、分離流体330は、リン酸、又はリン酸の塩(ホスフェート)を含有する。アルミニウムは、pH値を調節することによって、適宜の条件下でリン酸アルミニウムとして沈殿する。リン酸アルミニウムは微細に分散された固形物である。この固形物は工程245において液体から濾過することができる。
【0039】
リン酸はアルミニウム表面上にリン酸アルミニウムから成る薄い不動態化被覆層を誘発する。これらの表面リン酸塩は阻害剤として作用し、さらなる化学的攻撃からアルミニウム表面を部分的に不動態化する。こうして、リン酸の添加はアルミニウム溶解をさらに最小限に抑える。
【0040】
アルミニウムの溶解及び沈殿に関する総反応方程式は、
【化1】
である。反応生成物は分離流体330から固形形状又は気体形状で去る。リン酸は消費され、補充しなければならない。この補充は工程246の実施中に、他の化学物質の補充とともにリサイクル機器355内で行われる。
【0041】
包装において使用される多層材料の他の例
包装材料において使用される他の多層材料の非制限的な例は、LDPE(=低密度ポリエチレン)/アルミニウム/PET(コーヒー包装及び飲料包装において使用される)、又はコーヒー包装及びペットフード包装において使用されるPP(=ポリプロピレン)/アルミニウム/ポリエステル積層体、又はLDPE/アルミニウム/LDPE(工業用顆粒状原料のための包装又は歯磨きペースト用チューブにおいて使用される)を含む。別の例は、通常はLLDPE(線状低密度ポリエチレン)/アルミニウム/LLDPEから成る無菌汎用飲料カートンの内側部分(ポリマー及びアルミニウム)である。
【0042】
用途例(実験室規模)
下記組成物は好適な製剤の一例にすぎず、本発明を限定するものではない(全てのパーセンテージは重量パーセンテージである)。
【表1】
【表2】
【表3】
【0043】
組成1~3は、異なる短鎖カルボン酸を有する製剤を示す。
【表4】
【0044】
組成4は、金属水酸化物として水酸化カリウムを有する製剤を示す。
【0045】
下記実施例は、好適な用途の一例にすぎず、本発明を限定することを意図するものではない。実施例1~5は、本発明の範囲に含まれる分離組成物1で処理することができる種々異なる包装材料を明らかにしている。実施例6~8は、分離流体の他の組成物の使用を示している。
【0046】
実施例1
60gのLDPE/アルミニウム/PET材料(飲料起立型パウチからの断片1cm2)を70℃で1kgの分離液(組成1)と一緒に攪拌する。アルミニウムからのLDPEの剥離は2時間後に完了し、アルミニウムからのPETの剥離は4時間後に完了する。
【0047】
実施例2
30gのLDPE/アルミニウム/PET材料(スナックフード包装からの断片3cm2)を70℃で1kgの分離液(組成1)と一緒に攪拌する。アルミニウムからのLDPEの剥離は2時間後に完了し、アルミニウムからのPETの剥離は4時間後に完了する。
【0048】
実施例3
60gのLDPE/アルミニウム/LDPE材料(歯磨きペースト用チューブからの断片2cm2)を70℃で1kgの分離液(組成1)と一緒に攪拌する。アルミニウムからのLDPEの剥離は2時間後に完了する。
【0049】
実施例4
PP/アルミニウム/PET断片から成る3つの単独の試験片(箔業者及び加工業者から得たコーヒー包装のような積層体試料1cm2)を70℃で20gの分離液(組成1)と一緒に振盪する。アルミニウムからのPP及びPETの剥離は5時間後に完了する。
【0050】
実施例5
30gのLLDPE/アルミニウム/LLDPE+LLDPE材料(無菌飲料カートンの内側部分の断片10cm2)を40℃で1kgの分離液と一緒に攪拌する。LLDPEからのアルミニウムの剥離は2時間後に完了する。
【0051】
実施例6
PE/アルミニウム/PET断片から成る5つの単独の試験片(箔業者及び加工業者から得たコーヒー包装のような積層体試料1cm2)を70℃で20gの分離液(組成2)と一緒に振盪する。アルミニウムからのPE及びPETの剥離は1時間後に完了する。
【0052】
実施例7
PE/アルミニウム/PET断片から成る5つの単独の試験片(箔業者及び加工業者から得たコーヒー包装のような積層体試料1cm2)を70℃で20gの分離液(組成3)と一緒に振盪する。アルミニウムからのPE及びPETの剥離は10時間後に完了する。
【0053】
実施例8
PE/アルミニウム/PET断片から成る5つの単独の試験片(箔業者及び加工業者から得たコーヒー包装のような積層体試料1cm2)を70℃で20gの分離液(組成4)と一緒に振盪する。アルミニウムからのPE及びPETの剥離は8時間後に完了する。
本開示には、以下に例示する実施形態も開示される。
[実施形態1]
多層システムを分離するための分離流体(330)の使用であって、前記分離流体(330)が、水と、短鎖カルボン酸と、リン酸と、アルカリ金属水酸化物との混合物を含む、分離流体(330)の使用。
[実施形態2]
前記短鎖カルボン酸と、リン酸と、アルカリ金属水酸化物とが溶液中で部分的に反応して、アルカリ金属リン酸塩及びアルカリ金属カルボン酸塩を形成する、実施形態1に記載の使用。
[実施形態3]
前記短鎖カルボン酸が水混和性C1-C4モノカルボン酸である、実施形態1又は2に記載の使用。
[実施形態4]
前記短鎖カルボン酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸から成る群から選択される、実施形態3に記載の使用。
[実施形態5]
前記アルカリ金属水酸化物が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムから成る群から選択される、実施形態1から4までのいずれか1項に記載の使用。
[実施形態6]
前記混合物の成分が、30~60重量パーセントの短鎖カルボン酸と、0.5~5重量パーセントのリン酸(30%溶液)と、2~8重量パーセントのアルカリ金属水酸化物(33%溶液)と、30~60重量パーセントの水とを含む、実施形態1から5までのいずれか1項に記載の使用。
[実施形態7]
前記混合物の成分が、42~48重量パーセントの短鎖カルボン酸と、2~4重量パーセントのリン酸(30%溶液)と、4~8重量パーセントのアルカリ金属水酸化物(33%溶液)と、45~50重量パーセントの水とを含む、実施形態1から6までのいずれか1項に記載の使用。
[実施形態8]
多層材料(10)中のポリマー層(20,40)から金属層(30)を分離する方法であって、
前記多層材料(10)を、実施形態1から7までのいずれか1項に記載の分離流体(330)を含むバット(310)内に入れる
ことを含む、方法。
[実施形態9]
前記多層材料(10)の成分を含む前記分離流体(330)に篩過又は濾過(240)のうちの少なくとも一方を施し、そしてその後選別(260,280)して、前記金属層(30)からの金属の第1画分、及び前記ポリマー層(20,40)からのプラスチックの第2画分を得ることをさらに含む、実施形態8に記載の方法。
[実施形態10]
前記分離流体(330)をリサイクルすることをさらに含む、実施形態8又は9に記載の方法。
[実施形態11]
前記分離が20℃~90℃の温度で行われる、実施形態8から10までのいずれか1項に記載の方法。
[実施形態12]
前記分離が70℃の温度で行われる、実施形態8から11までのいずれか1項に記載の方法。
[実施形態13]
前記分離流体のpH値が2~4である、実施形態8から12までのいずれか1項に記載の方法。
[実施形態14]
前記多層材料(10)が、少なくとも1つのアルミニウム層と、PET又はPEから成る少なくとも1つのポリマー層(20,40)とを含む、実施形態8から13までのいずれか1項に記載の方法。
[実施形態15]
少なくとも1つの金属層(30)と少なくとも1つのプラスチック層(20,40)とを含む多層材料(10)を含む包装材料(300)をリサイクルする方法であって、前記方法が、
実施形態1から7までのいずれか1項に記載の分離流体(330)を含むバット(310)内に前記包装材料(10)を入れて、前記金属層(30)からの金属細片と、前記ポリマー層(20,40)からのプラスチック細片と、残余成分との混合物を生成する(260)ことを含む、方法。
[実施形態16]
金属粒子を生成するために前記金属細片と前記プラスチック断片とを選別し(280)、分離することをさらに含む、実施形態15に記載の方法。
[実施形態17]
前記金属層(30)がアルミニウム又はアルミニウムの合金からのものである、実施形態15又は16に記載の方法。
[実施形態18]
前記少なくとも1つのプラスチック層(20,40)がポリオレフィンから形成されている、実施形態15から17までのいずれか1項に記載の方法。
[実施形態19]
前記分離流体(330)をリサイクルすることをさらに含む、実施形態15から18までのいずれか1項に記載の方法。
[実施形態20]
多層材料(10)から形成された包装材料をリサイクルするための装置であって、
実施形態1から7までのいずれか1項に記載の分離流体(330)を有するバット(310)と、前記包装材料(10)を前記バット(310)内へ輸送するための輸送機器と、前記分離流体(330)と前記包装材料(10)との組み合わせから、分離された材料を除去する(240)ための篩過/濾過機器(350)と
を含む、装置。
【符号の説明】
【0054】
10 多層材料
20 第1ポリマー層
30 金属層
40 第2ポリマー層
50 梱
300 切断又は細断機器
310 バット
320 攪拌器
330 分離流体
340 流体ディスペンサ
350 篩過機器
355 流体リサイクル機器
360 洗浄機
365 水リサイクル機器
370 湿式選別器
380 乾燥ユニット
390 乾式選別ユニット
395 後処理