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特許7148522針部材、センサ、針部材の製造方法及びセンサの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】針部材、センサ、針部材の製造方法及びセンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1473 20060101AFI20220928BHJP
   B21G 1/08 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
A61B5/1473
B21G1/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019540824
(86)(22)【出願日】2018-07-31
(86)【国際出願番号】 JP2018028711
(87)【国際公開番号】W WO2019049561
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2017171457
(32)【優先日】2017-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】秋山 毅
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】実公昭52-19437(JP,Y2)
【文献】実公昭51-36400(JP,Y2)
【文献】特開平02-031741(JP,A)
【文献】特開平04-361152(JP,A)
【文献】実開昭54-078393(JP,U)
【文献】特開2004-284239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/145 - 5/157
B21G 1/08
A61M 5/158, 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被穿刺者への穿刺を行うための針部材であって、
中空部を区画する金属製の管部と、
前記中空部において前記管部の軸方向に沿って延在し、前記中空部を複数の空間に仕切ると共に前記管部を補強する補強部と、を備え
前記補強部は、前記軸方向と直交する断面視で、前記管部の中心軸から前記管部の径方向の外側に向かって延在し、前記中空部を前記管部の周方向において前記複数の空間に仕切る仕切板部を備え、
前記補強部は、前記管部の先端よりも突出する突出部を備え、
前記補強部の前記突出部には、前記軸方向に対して傾斜する面で構成された、針先を含む刃面、が形成されている針部材。
【請求項2】
前記管部の周壁には、前記周方向において前記仕切板部を跨って形成されている開口部が設けられており、
前記仕切板部により仕切られている複数の空間は、前記開口部を通じて前記管部の外部空間に連通している、請求項1に記載の針部材。
【請求項3】
前記刃面は、前記突出部の対向する両面に形成された第1刃面部及び第2刃面部を備え、
前記第1刃面部及び前記第2刃面部は、前記軸方向の基端側から先端側に向かうにつれて近づくように傾斜しており、交差して前記針先を形成している、請求項1又は2に記載の針部材。
【請求項4】
前記刃面は、前記突出部の対向する両面の少なくとも一方の面に形成されている、互いが交差する稜線により前記針先を一端とする刃縁を形成する第1刃面部及び第2刃面部を備える、請求項1又は2に記載の針部材。
【請求項5】
中空部を区画する金属製の管部、及び、前記管部の軸方向に沿って延在し、前記中空部を複数の空間に仕切ると共に前記管部を補強する補強部、を備える、被穿刺者への穿刺を行うための針部材と、
前記複数の空間に位置する線状の検出部材と、を備え
前記補強部は、前記軸方向と直交する断面視で、前記管部の中心軸から前記管部の径方向の外側に向かって延在し、前記中空部を前記管部の周方向において前記複数の空間に仕切る仕切板部を備え、
前記補強部は、前記管部の先端よりも突出する突出部を備え、
前記補強部の前記突出部には、前記軸方向に対して傾斜する面で構成された、針先を含む刃面、が形成されているセンサ。
【請求項6】
中空部を区画する金属製の管体に、前記管体の軸方向に直交する断面視で前記管体の中心軸から前記管体の径方向の外側に向かって延在し、前記中空部を前記管体の周方向において複数の空間に仕切る長尺な板材を挿入する板材挿入工程と、
前記板材を前記中空部に収容している前記管体を前記軸方向に引き伸ばし、前記板材が前記管体の内壁により前記径方向内側に圧縮された状態とする伸長工程と、を含み、
前記伸長工程は、前記板材の長手方向の一端部が、前記管体の一端よりも突出した状態で実行され、
前記板材の前記一端部に、前記軸方向に対して傾斜する面で構成された、針先を含む刃面、を形成する刃面形成工程を更に含む、被穿刺者への穿刺を行うための針部材の製造方法。
【請求項7】
前記管体の周壁に開口部を形成する開口形成工程を更に含む、請求項6に記載の針部材の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の針部材の製造方法を含む、センサの製造方法であって、
前記複数の空間の少なくとも1つに線状の検出部材を挿入する検出部材挿入工程を含む、センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、針部材、センサ、針部材の製造方法及びセンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、患者などの被検者の体内にセンサを挿入又は埋め込み、被検者の血液又は体液中の被計測物質(例えば、グルコースやpH、生理活性物質、たんぱく質等)を該センサによって検出することが行われている。
【0003】
特許文献1には、挿入装置及び挿入銃を使用して患者の中へ挿入され、埋め込まれる電気化学センサが開示されている。また、特許文献2には、経皮的にセンサをデリバリ可能な、スロットが形成されている針が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4499128号公報
【文献】国際公開第2016/191302号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
センサを被検者の体内に埋め込んで、例えば1週間などの所定の期間、被計測物質の検出を行う場合、針部材を検出部材の挿入時のみに利用する場合と、針部材と検出部材とを共に体内に埋め込まれた状態で使用する場合と、がある。いずれの場合においても、針部材は、挿入時や日常生活を行う所定期間の間に折れ曲がりや破断が生じることが無いような十分な強度を有することが好ましい。また、針部材は、被検者への侵襲が低減された構成とすることが好ましい。
【0006】
検出部材の有無に関わらず、体内に挿入及び抜去される注入針等の針部は、上述の強度及び低侵襲性能を備えることが好ましい。
【0007】
本開示は、外径を細径化したとしても強度を確保し易い構成を備える針部材、針部材を備えるセンサ、針部材の製造方法、及び、センサの製造方法、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様としての針部材は、中空部を区画する金属製の管部と、前記中空部において前記管部の軸方向に沿って延在し、前記中空部を複数の空間に仕切ると共に前記管部を補強する補強部と、を備える。
【0009】
本発明の1つの実施形態として、前記補強部は、前記軸方向と直交する断面視で、前記管部の中心軸から前記管部の径方向の外側に向かって延在し、前記中空部を前記管部の周方向において前記複数の空間に仕切る仕切板部を備える。
【0010】
本発明の1つの実施形態として、前記管部の周壁には、前記周方向において前記仕切板部を跨って形成されている開口部が設けられており、前記仕切板部により仕切られている複数の空間は、前記開口部を通じて前記管部の外部空間に連通している。
【0011】
本発明の1つの実施形態として、前記補強部は、前記管部の先端よりも突出する突出部を備え、前記補強部の前記突出部には、前記軸方向に対して傾斜する面で構成された、針先を含む刃面、が形成されている。
【0012】
本発明の1つの実施形態として、前記刃面は、前記突出部の対向する両面に形成された第1刃面部及び第2刃面部を備え、前記第1刃面部及び前記第2刃面部は、前記軸方向の基端側から先端側に向かうにつれて近づくように傾斜しており、交差して前記針先を形成している。
【0013】
本発明の1つの実施形態として、前記刃面は、前記突出部の対向する両面の少なくとも一方の面に形成されている、互いが交差する稜線により前記針先を一端とする刃縁を形成する第1刃面部及び第2刃面部を備える。
【0014】
本発明の第2の態様としてのセンサは、中空部を区画する金属製の管部、及び、前記管部の軸方向に沿って延在し、前記中空部を複数の空間に仕切ると共に前記管部を補強する補強部、を備える針部材と、前記複数の空間に位置する線状の検出部材と、を備える。
【0015】
本発明の第3の態様としての針部材の製造方法は、中空部を区画する金属製の管体に、前記中空部を複数の空間に仕切る長尺な板材を挿入する板材挿入工程と、前記板材を前記中空部に収容している前記管体を軸方向に引き伸ばし、前記板材が前記管体の内壁により径方向内側に圧縮された状態とする伸長工程と、を含む。
【0016】
本発明の1つの実施形態として、前記伸長工程は、前記板材の長手方向の一端部が、前記管体の一端よりも突出した状態で実行される。
【0017】
本発明の1つの実施形態としての針部材の製造方法は、前記板材の前記一端部に、前記軸方向に対して傾斜する面で構成された、針先を含む刃面、を形成する刃面形成工程を更に含む。
【0018】
本発明の1つの実施形態としての針部材の製造方法は、前記管体の周壁に開口部を形成する開口形成工程を更に含む。
【0019】
本発明の第4の態様としてのセンサの製造方法は、中空部を区画する金属製の管体に、前記中空部を複数の空間に仕切る長尺な板材を挿入する板材挿入工程と、前記板材を前記中空部に収容している前記管体を軸方向に引き伸ばし、前記板材が前記管体の内壁により径方向内側に圧縮された状態とする伸長工程と、前記複数の空間の少なくとも1つに線状の検出部材を挿入する検出部材挿入工程と、を含む。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、外径を細径化したとしても強度を確保し易い構成を備える針部材、針部材を備えるセンサ、針部材の製造方法、及び、センサの製造方法、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態としてのセンサ、を備える計測装置を示す図である。
図2図1に示すセンサを示す斜視図である。
図3図1に示すセンサの正面を示す正面図である。
図4図1に示すセンサの背面を示す背面図である。
図5図1に示すセンサの一方側の側面図である。
図6図1に示すセンサの他方側の側面図である。
図7図3のI-I線に沿う断面図である。
図8図3のII-II線に沿う断面図である。
図9図1に示すセンサを先端側から見た図である。
図10A図2に示す補強部の変形例を示す図である。
図10B図2に示す補強部の変形例を示す図である。
図10C図2に示す補強部の変形例を示す図である。
図11A図1に示す針部材の変形例を示す図である。
図11B図1に示す針部材の変形例を示す図である。
図11C図1に示す針部材の変形例を示す図である。
図12図1に示す針部材の変形例を示す図である。
図13図2に示す開口部の内壁の形状を示す断面図である。
図14図2に示す開口部の変形例を示す図である。
図15】一実施形態としてのセンサを示す斜視図である。
図16図15に示すセンサの正面を示す正面図である。
図17図15に示すセンサの背面を示す背面図である。
図18図15に示すセンサの一方側の側面図である。
図19図15に示すセンサの他方側の側面図である。
図20図1に示すセンサの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図21図20の板材挿入工程の概要を示す概要図である。
図22図20の伸長工程の概要を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、針部材、センサ、針部材の製造方法、及び、センサの製造方法の実施形態について、図1図22を参照して説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
【0023】
図1は、一実施形態としてのセンサ1を備える計測装置100を示す図である。図1に示すように、計測装置100は、センサ1と、制御部2と、支持部材3と、ハウジング4と、を備える。
【0024】
センサ1は、被計測物質を検出し、検出結果の情報を制御部2に送信する。制御部2は、プロセッサやメモリ、電池等により構成される。制御部2は、センサ1から受信した検出結果の情報を解析し、解析結果を必要に応じて表示装置等の外部装置に送信する。支持部材3は、センサ1を支持している。具体的には、支持部材3は、センサ1の後述する針部材10の基端部を保持することで、センサ1を支持している。ハウジング4は、制御部2を内部に収容しており、ハウジング4が制御部2を覆った状態で支持部材3に取り付けられる。
【0025】
センサ1が体内に挿入された状態で、計測装置100は被検者に装着される。図1では、計測装置100の制御部2、支持部材3及びハウジング4が、被検者の体表面BS上に装着されている状態を示している。計測装置100が被検者に装着されている間、計測装置100は、被検者の体液中の被計測物質を経時的に計測する。計測装置100が被検者に装着されている期間は、数時間、数日、1週間、1カ月など、医師等の判断で適宜決定される。
【0026】
被計測物質は特に限定されない。センサの検出部材の種類によって、間質液中のグルコース、酸素、pH、乳酸等を測定することができる。
【0027】
また、図1に示す計測装置100が、センサ1を体内に挿入する挿入機構を備える構成としてもよい。
【0028】
以下、本実施形態のセンサ1について説明する。図2はセンサ1を示す斜視図である。図3はセンサ1の正面を示す正面図である。図4はセンサ1の正面と反対側の面である背面を示す背面図である。図5はセンサ1の一方側の側面図であり、図6はセンサ1の他方側の側面図である。図7図3のI-I断面図である。図8図3のII-II断面図である。図9はセンサ1を先端側から見た図である。
【0029】
図2に示すように、センサ1は、針部材10と、検出部材30と、を備える。
【0030】
図3に示すように、針部材10は、中空部11を区画する金属製の管部10aと、中空部11において管部10aの軸方向Aに沿って延在し、中空部11を複数の空間に仕切ると共に管部10aを補強する補強部10bと、を備える。
【0031】
管部10aの太さは、例えば、最大外径が0.2mm~1.2mm(33~18ゲージの外径に相当)であり、その長さは、1mm~10mm、好ましくは3~6mmである。また、管部10aの肉厚は、例えば、0.02mm~0.15mmの範囲から設定される。図2図9では、最大外径が0.3mm(29ゲージの外径に相当)、長さが9.5mm、肉厚が0.05mmの略円筒状の管部10aを例示している。図2図9に示す管部10aの肉厚は、管部10aの周方向Bの位置によらず0.05mmであり、略一様な肉厚を有している。
【0032】
管部10aの材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金等の金属材料が用いられる。
【0033】
補強部10bは、管部10aの中空部11内で、管部10aの軸方向Aに沿って延在する長尺部材である。そして、図7に示すように、補強部10bは、管部10aの軸方向Aと直交する断面において、中空部11を、複数の空間としての第1中空部11a及び第2中空部11bに仕切っている。本実施形態の補強部10bは、中空部11を2つの空間に分割する仕切り部材である。
【0034】
また、補強部10bは、管部10aの内壁に当接又は一体化している。本実施形態の補強部10bは、管部10aと別体で形成されており、管部10aの内壁に当接することで、管部10aの強度を補強している。但し、補強部10bを、管部10aの内壁と溶接等により接合して一体化させてもよい。
【0035】
補強部10bの材料としては、管部10aの材料と同様、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金等の金属材料が用いられる。このなかでも、ステンレス鋼が好ましい。ステンレスであれば、JIS G 4305:2012に規定するSUS304、SUS304L、若しくはSUS321、またはISO9626:2016の材料の項に適合するステンレス鋼が特に好ましい。このなかでも、JISZ2241:2011(金属引張試験方法)の引張強さ400N/m以上800N/mが好ましく、450N/m以上650N/m以下のステンレスが特に好ましい。上記の特に好ましい範囲であると、33~29ゲージ相当の細径の針を製造する際に、製造効率の良い加工が可能となる。管部10a及び補強部10bは、同一の材料であってもよく、異なる材料であってもよい。
【0036】
このように、中空部11内に、補強部10bを設けることで管部10aを補強することにより、管部10aを、生体内に挿入するのに十分な強度とすることができる。すなわち、管部10aの厚みを厚肉化することなく管部10aの強度を確保できるので、管部10aの細径化が実現できる。すなわち、強度の確保と細径化とを両立した針部材10を実現できる。
【0037】
図3に示すように、検出部材30は、中空部11の複数の空間としての第1中空部11a及び第2中空部11bに位置するワイヤ線状部材である。換言すれば、第1中空部11a及び第2中空部11bには、ワイヤ線状の検出部材30が収容されている。検出部材30としては、被計測物質の量または濃度に応じた電気的信号を検出する部材を用いることができる。検出部材30は、中空部11の第1中空部11a及び/又は第2中空部11bにおいて、管部10aの軸方向Aに沿って延在している。
【0038】
より具体的に、本実施形態の検出部材30は横断面形状が円形のワイヤ電極である。図7図9に示すように、本実施形態では、2本の検出部材30としてのワイヤ電極が、中空部11に収容されている。本実施形態の検出部材30としてのワイヤ電極の外径は、0.02mm~0.2mmである。以下、2本の検出部材30を区別なく記載する場合には「検出部材30」と記載し、2本の検出部材30を区別して記載する場合には、2本の検出部材30の一方を「第1検出部材30a」と記載し、他方を「第2検出部材30b」と記載する。
【0039】
第1検出部材30aは、補強部10bにより仕切られている一方の空間である第1中空部11aに収容されている。第2検出部材30bは、補強部10bにより仕切られている他方の空間である第2中空部11bに収容されている。このように、補強部10bにより中空部11を仕切ることで、複数の検出部材30を配置するスペースを別々に確保することができる。つまり、検出部材30の個数に応じた数の空間部を確保することができる。
【0040】
第1検出部材30aは、導電性の芯材をベースに構成され、芯材の外周面に、検体と接触して被計測物質を検出するよう構成された検出部と、更にその外周面に絶縁性の素材でコーティングされた保護部とを備える。検出部は、被計測物質に対する電気的特性の変化を検出する作用電極であり、芯材表面にディッピング、電解重合、スパッタリング等の薄膜形成手段を用いて形成される。本実施形態では、第2検出部材30bにより、上述の検出部としての作用電極に対する参照電極が構成されている。中空部11内に3本の検出部材30を配置し、その3本の検出部材30それぞれにより、作用電極、参照電極及び対極を構成してもよい。3本の検出部材30を配置する場合は、例えば、中空部11を3つに仕切るようにすればよい(図10B参照)。また、参照電極または対極として、針部材10を利用する構成としてもよい。
【0041】
また、本実施形態の検出部材30の基端部には、支持部材3を貫通して制御部2に接続される接続部が設けられている。検出部によって検出された被計測物質の情報は、接続部を経由して制御部2に送信される。
【0042】
以下、本実施形態の針部材10の更なる詳細について説明する。
【0043】
[補強部10b]
補強部10bは、中空部11を仕切りつつ、管部10aを補強する構成であればよい。したがって、補強部10bには、補強部10bにより仕切られた複数の空間を連通させる貫通孔があってもよい。但し、管部10aの補強性能を高める観点では、貫通孔がない構成とすることが好ましい。
【0044】
図7図8に示すように、本実施形態の補強部10bは、複数(本実施形態では2つ)の仕切板部12を備えている。仕切板部12とは、センサ1の軸方向Aと直交する断面視(図7図8参照。以下、単に「横断面視」と記載する。)で、管部10aの中心軸Oから管部10aの径方向Cの外側に向かって延在する部分である。そして、複数の仕切板部12は、中空部11を管部10aの周方向Bにおいて、複数の空間としての第1中空部11a及び第2中空部11bに仕切っている。仕切板部12の径方向Cの外側の外縁部は、管部10aの内壁に当接又は一体化されている。このように、横断面視において、管部10aの中心軸Oから径方向C外側に向かって延在する複数の仕切板部12を備える構成とすることで、周方向Bの位置による管部10aの強度のばらつきを抑制できる
【0045】
より具体的に、本実施形態の補強部10bの2つの仕切板部12は、横断面視(図7図8参照)において、略一様な厚みを有し、管部10aの内径と略等しい幅を有する1枚の平板部により構成されている。この平板部で構成されている2つの仕切板部12は、横断面視(図7図8参照)において、管部10aの中心軸Oを中心とした中心角が180°離れた位置で、中心軸Oから径方向C外側に向かって延在している。このように、周方向Bにおいて隣接する仕切板部12同士の、中心軸Oを中心とする中心角を略等しくすれば、周方向Bの位置による管部10aの強度のばらつきを、より抑制することができる。
【0046】
本実施形態の仕切板部12は、横断面視(図7図8参照)において、管部10aの中心軸Oから径方向Cの外側に向かって直線状に延在する平板形状であるが、図10Aに示すように、中心軸Oから径方向Cの外側に向かって湾曲して延在する湾曲板形状の仕切板部12としてもよい。
【0047】
また、本実施形態の補強部10bは2つの仕切板部12を備える構成であるが、図10A図10Cに示すように、3つ以上の仕切板部12を備える構成としてもよい。図10Aでは、横断面視(図3におけるI-I断面図に相当する箇所における断面図)において、4つの仕切板部12が、中心軸Oから径方向Cの外側に向かって湾曲して延在している。また、図10Bでは、横断面視(図3におけるI-I断面図に相当する箇所における断面図)において、3つの仕切板部12が、中心軸Oから径方向Cの外側に向かって直線状に延在している。更に、図10Cでは、横断面視(図3におけるI-I断面図に相当する箇所における断面図)において、4つの仕切板部12が、中心軸Oから径方向Cの外側に向かって直線状に延在している。横断面視において、空間部の数が偶数となるように仕切板部12を設ける場合は、中心軸Oに対して点対称になるような仕切板部12とすると、周方向Bの位置による管部10aの強度のばらつきを、より抑制することができる。
【0048】
更に、図10B及び図10Cに示すように、3つ以上の仕切板部12を設ける場合であっても、3つ以上の仕切板部12を、周方向Bにおいて隣接する仕切板部12同士の、中心軸Oを中心とする中心角が略等しくなるように、等間隔に配置することが好ましい。このようにすれば、上述したように、周方向Bの位置による管部10aの強度のばらつきを、より抑制することができる。
【0049】
図3図4に示すように、本実施形態の補強部10bは、管部10aの先端よりも突出する突出部13を備えている。この突出部13には、軸方向Aに対して、針部材10の先端方向へ向かって傾斜する面で構成された、針先14を含む刃面15、が形成されている。このような構成とすることで、管部の先端部に針先を含む刃面が形成されている構成と比較して、針部材10の先端をさらに薄い鋭利な形状にすることができる。そのため、穿刺時に被検者や患者等の被穿刺者が感じる痛みを軽減することができる。
【0050】
具体的に、本実施形態の刃面15は、突出部13の対向する両面に形成された第1刃面部16及び第2刃面部17を備えている。つまり、突出部13の対向する2つの面の一方に第1刃面部16が形成されており、対向する2つの面の他方に第2刃面部17が形成されている。そして、第1刃面部16及び第2刃面部17は、軸方向Aの基端側から先端側に向かうにつれて互いに近づくように傾斜している。第1刃面部16及び第2刃面部17は、先端側で互いに交差して針先14を形成している。このような刃面15とすることで、針部材10の先端を、より薄い鋭利な形状にすることができる。
【0051】
より具体的に、本実施形態の補強部10bの突出部13は板状であり、突出部13の厚み方向で対向する両面に上述の第1刃面部16及び第2刃面部17が形成されている。そして、本実施形態の補強部10bの突出部13には、幅方向で対向する両端面にも第3刃面部18及び第4刃面部19が形成されている。第3刃面部18及び第4刃面部19は、軸方向Aの基端側から先端側に向かうにつれて互いに近づくように傾斜する。第3刃面部18及び第4刃面部19は、先端側で互いに交差して針先14を形成している。つまり、本実施形態の針先14は、第1刃面部16、第2刃面部17、第3刃面部18及び第4刃面部19の4つの刃面部が、先端側で交差することにより形成されている。このような構成とすることで、針部材10の先端を、より一層薄い鋭利な形状にすることができる。
【0052】
本実施形態の補強部10bの突出部13は、図3のセンサ1の正面視において、略一様な厚みT1で軸方向Aに延在する基端側部13aと、この基端側部13aの軸方向Aの先端側に連続し、上述の第1刃面部16及び第2刃面部17が形成されている先端側部13bと、を備えている。そして、図5図6に示すように、第3刃面部18及び第4刃面部19は、先端側部13bのみならず、基端側部13aに亘って形成されている。換言すれば、図3に示すように、基端側部13aの厚みT1は、軸方向Aの位置によらず略一様であるが、図5図6に示すように、基端側部13aの幅W1は、軸方向Aの基端側から先端側に向かって漸減している。このような構成とすることで、第3刃面部及び第4刃面部を先端側部13bのみに形成する構成と比較して、第3刃面部18及び第4刃面部19を軸方向Aに沿うように延在する刃面部とすることができる。そのため、針部材10の先端をより細くすることができ、穿刺時に被穿刺者が感じる痛みを、より軽減することができる。
【0053】
上述したように、本実施形態の補強部10bの仕切板部12は平板部により構成されており、本実施形態では、仕切板部12を構成する平板部が、管部10a内の部分から突出部13の基端側部13aまで略一様な厚みT1で延在している。但し、厚みT1を、管部内の部分から突出部の基端側部まで、軸方向Aの先端側に向かうにつれて漸減する平板部としてもよい。
【0054】
また、後述するように、管部10aの周壁には開口部25(図3等参照)が形成されている。本実施形態の補強部10bは、軸方向Aにおいて開口部25が形成されている領域に、少なくとも配置されている。このようにすることで、開口部25の位置での管部10aの強度低下を補うように補強することができる。
【0055】
[管部10a]
図3図6に示すように、本実施形態の管部10aは、本体部20と、この本体部20の軸方向Aの先端側に連続し、軸方向Aの先端側に向かって内径及び外径が漸減するテーパ部21と、このテーパ部21の先端側に連続し、軸方向Aに対して傾斜する面で構成された刃面22aが形成されている先端部22と、を備えている。本体部20、テーパ部21及び先端部22の中心軸は共通する直線状の中心軸Oである。
【0056】
本体部20は円筒状であり、後述する開口部25(図3等参照)が設けられている位置を除き、その内径及び外径は、軸方向Aの位置によらず略一定である。
【0057】
テーパ部21の内周面及び外周面は、軸方向Aの基端側から先端側に向かって、中心軸Oに近づくように傾斜している。
【0058】
先端部22には、上述したように刃面22aが形成されている。以下、上述した補強部10bの刃面15と区別するため、説明の便宜上、管部10aの先端部22の刃面22aを「管部刃面22a」と記載する。図5図6に示すように、管部刃面22aは、上述した補強部10bの板状の突出部13の厚み方向の両側で、軸方向Aの基端側から先端側に向かって中心軸Oに近づくように傾斜する第1刃面部23及び第2刃面部24を備えている。より具体的に、管部刃面22aは、上述した補強部10bの板状の突出部13の厚み方向の両側で、軸方向Aの基端側から先端側に向かって中心軸Oを含み板状の突出部13の面内方向に平行な平面に近づくように傾斜する第1刃面部23及び第2刃面部24を備えている。管部刃面22aの第1刃面部23は、軸方向Aの先端側で、板状の突出部13の基端側部13aの厚み方向の一方の面に滑らかに連続している。また、管部刃面22aの第2刃面部24についても、軸方向Aの先端側で、板状の突出部13の基端側部13aの厚み方向の他方の面に滑らかに連続している。
【0059】
より具体的に、管部刃面22aの第1刃面部23及び第2刃面部24は、凹状に湾曲した湾曲面で形成されている。このようにすれば、管部刃面22aの第1刃面部23及び第2刃面部24を、突出部13の基端側部13aの面と滑らかに連続するように繋げることができる。
【0060】
図3に示すように、本実施形態の管部10aの周壁には、中空部11に繋がる開口部25としての貫通孔が設けられている。具体的に、開口部25としての貫通孔は、管部10aの本体部20の周壁に形成されている。開口部25により、中空部11の複数の空間としての第1中空部11a及び第2中空部11bの少なくとも1つと、管部10aの外部空間と、を連通させることができる。上述したように、本実施形態の針部材10は、第1中空部11a及び第2中空部11bにワイヤ線状の検出部材30を収容した状態で、一定期間の間、体内に留置される。その間、計測装置100(図1参照)により、検出部材30により検出される、被検者の体液中の被計測物質を、経時的に計測する。本実施形態のような開口部25を設ける構成とすれば、開口部25が無い構成と比較して、被検者の体液が針部材10の管部10aの中空部11内に出入りし易い。そのため、管部10a内に位置する検出部材30に接触する体液も循環し易く、被計測物質の経時的な変化をより正確に計測することが可能となる。
【0061】
また、図8に示すように、管部10aの周壁に形成された開口部25としての貫通孔は、周方向Bにおいて、補強部10bの複数の仕切板部12のうち少なくとも1つの仕切板部12を跨って形成されている。より具体的に、本実施形態では、開口部25としての貫通孔が、周方向Bにおいて、1つの仕切板部12aのみを跨って形成されている。換言すれば、少なくとも1つの仕切板部12は、その径方向C外側の外端面が開口部25内に露出するように、配置されている。つまり、本実施形態では、図8に示すように、仕切板部12aの径方向C外側の外端面12a1が、開口部25を通じて外部空間から視認可能に、開口部25内に露出している。
【0062】
そして、開口部25としての貫通孔が周方向Bにおいて跨る仕切板部12aにより仕切られている複数の空間は、開口部25を通じて管部10aの外部空間に連通している。本実施形態では、仕切板部12aにより仕切られている2つの空間としての第1中空部11a及び第2中空部11bが、開口部25を通じて管部10aの外部空間に連通している。
【0063】
このように、開口部25を、周方向Bにおいて少なくとも1つの仕切板部12を跨るように形成すれば、周方向Bにおいて仕切板部12を跨らない開口部とする場合と比較して、開口部25を設けたことによる管部10aの強度低下を効率的に補強することができる。開口部25を設けると、開口部25が設けられている位置で、管部10aの外径が細くなる。具体的に、管部10aのうち、開口部25が設けられている位置と、開口部25と径方向Cで対向する位置と、の間の径方向厚みT2は、開口部25が設けられていない位置同士の径方向厚みT3(本実施形態では管部10aの外径に等しい)と比較して、薄い。そのため、管部10aは、開口部25を設けることにより、開口部25が設けられていない位置同士の径方向厚みT3の厚み方向よりも、開口部25が設けられている位置を含む径方向厚みT2の厚み方向(以下、説明の便宜上、「変形容易方向」と記載する。図8では上下方向)に、折れや曲げなどの変形が発生し易くなる。そのため、管部10aが、開口部25が設けられている位置で、変形容易方向に変形し難くなるように、仕切板部12aを配置することが好ましい。本実施形態のように、開口部25を、周方向Bにおいて仕切板部12aを跨るように形成すれば、周方向Bにおいて仕切板部を跨らないように開口部を形成する場合と比較して、管部10aの変形容易方向の曲げ変形の発生を抑制することができる。すなわち、開口部25を設けたことによる管部10aの強度低下を効率的に補強することができる。
【0064】
本実施形態の管部10aでは、上述の位置に開口部25が設けられているため、図3図5図6に示すように、開口部25と、管部刃面22aの第1刃面部23及び第2刃面部24と、は周方向Bにおいて異なる位置に配置されている。より具体的に、本実施形態の開口部25は、図3に示すセンサ1の正面に形成されている。これに対して、本実施形態の管部刃面22aの第1刃面部23及び第2刃面部24は、図5図6に示すセンサ1の側面に形成されている。
【0065】
但し、開口部25は、周方向Bにおいて少なくとも1つの仕切板部12を跨るように形成された構成に限られない。例えば、図11A図11B図11Cに示す変形例としての針部材110、210、310のように、周方向Bにおいて1つの仕切板部112も跨らない開口部125としてもよい。このようにすれば、仕切板部112により仕切られる各空間の大きさや位置に適した開口部125を形成することができる。しかしながら、上述したように、開口部による強度低下を補う補強の観点では、図1図9に示す本実施形態のように、周方向Bにおいて少なくとも1つの仕切板部12を跨るように開口部25を形成することが好ましい。更に、このような開口部25とすれば、仕切板部12により仕切られる複数の空間で1つの開口部25を共有できるため、複数の空間それぞれに別々の開口部125(図11A図11C参照)を設ける構成と比較して、開口部25を形成する加工の作業工程を効率化することができる。具体的に、図1図9に示す管部10aには、第1中空部11a及び第2中空部11bを外部空間に連通させる1つの開口部25が設けられているのに対して、図11Aの管部110a、図11Bの管部210a、及び、図11Cの管部310a、には、第1中空部111a及び第2中空部111bそれぞれに対して1つずつの開口部125、つまり、2つの開口部125が設けられている。
【0066】
ここで、図11Aに示す針部材110は、図1図9に示す針部材10と比較して、上述した開口部の構成のみが相違している。これに対して、図11Bに示す針部材210は、図1図9に示す針部材10と比較して、上述した開口部の構成に加えて、先端部の構成が相違している。
【0067】
図11Bに示す針部材210では、補強部210bが管部210aの先端から突出していない。そして、針部材210では、管部210aの先端に、軸方向Aに対して傾斜する面である刃面部227を備える刃面226が形成されている。そして、針先214は、刃面226の先端であり、管部210aの外周面上に形成されている。刃面226は、複数の刃面部227で構成されていてもよく、1つのみの刃面部227で構成されていてもよい。
【0068】
図11Cに示す針部材310は、図11Bの針部材210と同様、図1図9に示す針部材10と比較して、上述した開口部の構成に加えて、先端部の構成が相違している。
【0069】
具体的に、図11Cに示す針部材310では、補強部310bが管部310aの先端から突出していない。そして、針部材310では、管部310aの先端に、軸方向Aに対して傾斜する面である刃面部327を備える刃面326が形成されている。そして、針先314は、刃面326の先端であり、管部310aの外周面上に形成されている。刃面326は、複数の刃面部327で構成されていてもよく、1つのみの刃面部327で構成されていてもよい。
【0070】
但し、図11Cに示す針部材310は、図11Bに示す針部材210と比較して、刃面部の傾斜方向が異なる。具体的に、図11Bの刃面部227は、2つの仕切板部112を構成する平板部の厚み方向(図11Bでは上下方向)の一方側に位置する管部210aの外周面上に、針先214が形成されている。これに対して、図11Cの刃面部327は、平板部の厚み方向と直交する延在方向(図11Bでは上下方向)の一方側に位置する管部310aの外周面上に、針先314が形成されている。穿刺時の痛み軽減の観点では、図11Cに示す針部材310が、図11Bに示す針部材210よりも好ましい。図11Cに示す針部材210によれば、図11Bに示す針部材210と比較して、穿刺時に、体表面BSの穿刺口周囲の皮膚が、刃面326に露出する平板部の先端面により、穿刺口内に巻き込まれることを抑制できる。そのため、被穿刺者が穿刺時に感じる痛みを軽減することができる。
【0071】
また、穿刺時の痛み軽減の観点では、図1図9に示す本実施形態の針部材10及び図11Aに示す針部材110が、図11Bに示す針部材210及び図11Cに示す針部材310よりも好ましい。図1図9に示す針部材10では、管部10aから突出する補強部10bの突出部13に刃面15が形成されるため、図11B及び図11Cに示す構成と比較して、針部材10の先端をより薄い鋭利な形状にすることができる。図11Aに示す針部材110も同様である。
【0072】
更に、図12は、本実施形態の針部材10の変形例としての針部材410を示す図である。図12に示す針部材410は、上述した図11Aに示す針部材110と比較して、管部の開口部の形状及び数が相違しているが、他の構成は同一である。
【0073】
図12に示す針部材410の管部410aの周壁には、複数の開口部425が形成されている。各開口部425は、周方向Bにおいて1つの仕切板部412も跨らない構成である。そのため、各開口部425は、中空部411内の1つの空間に対してのみ連通している。図12に示す例では、1つの空間である第1中空部411aと外部空間とを連通する2つの開口部425が、軸方向Aの異なる位置に形成されている。また、図12に示す例では、1つの空間である第2中空部411bと外部空間とを連通する2つの開口部425が、軸方向Aの異なる位置に形成されている。更に、図11Aに示す開口部125の形状は、軸方向Aに長い長孔であったが、図12に示す開口部425は、円形の貫通孔である。このように、管部に設ける開口部の形状や数については、何ら限定されることなく、適宜設計することができる。
【0074】
図13は、本実施形態の開口部25の内壁の形状を示す図である。より具体的に、図13は、開口部25を含む、管部10aの軸方向に沿う断面の一部を示す断面図である。図13に示すように、本実施形態の開口部25の内壁のうち、軸方向Aの先端側(図13では左側)に位置する先端側内壁25aは、軸方向Aの基端側から先端側に向かうにつれて、中心軸Oから離れるように傾斜する斜面により構成されている。また、本実施形態の開口部25の内壁のうち、軸方向Aの基端側(図13では右側)に位置する基端側内壁25bは、軸方向Aの基端側から先端側に向かうにつれて、中心軸Oに近づくように傾斜する斜面により構成されている。このようにすることで、針部材10の穿刺時及び抜去時の刺通抵抗を低減することができ、被穿刺者の感じる痛みを軽減することができる。
【0075】
また、図8に示すように、開口部25の中空部11側の縁における、軸方向Aと直交する方向での最大幅W2は、管部10aの最大内径Xよりも小さい。このようにすることで、開口部25の位置で、上述した変形容易方向における径方向厚みT2が極端に薄くなることを抑制し、管部10aの強度が極端に低下することを抑制することができる。図14は、開口部25の変形例としての開口部25´について、図8と同位置での断面を示す断面図である。図14に示す開口部25´の中空部11側の縁における、軸方向Aと直交する方向での最大幅W2についても、管部10aの最大内径Xよりも小さい。更に、図14に示す開口部25´では、周方向Bの一方側の内壁25c´と、周方向Bの他方側の内壁25d´とが対向している。このような構成とすれば、上述した変形容易方向(図14でゃ上下方向)における径方向厚みT2が薄くなることを、より抑制することができる。そのため、管部10aの強度が極端に低下することを、より抑制することができる。
【0076】
更に、本実施形態の管部10aのテーパ部21は、第1中空部11a及び第2中空部11bにそれぞれ収容されている検出部材30の先端位置決め部を構成している。図7図8に示すように、本実施形態の補強部10bを構成する平板部は、横断面視で、中空部11を略半円状の2つの第1中空部11aと第2中空部11bに仕切っている。図7及び図9に示すように、第1中空部11aの幅W3は、軸方向Aにおけるテーパ部21の領域で、軸方向Aの基端側から先端側に向かうにつれて漸減している。第2中空部11bの幅W4についても、第1中空部11aの幅W3と同様、軸方向Aにおけるテーパ部21の領域で、軸方向Aの基端側から先端側に向かうにつれて漸減している。第1中空部11aの幅W3及び第2中空部11bの幅W4とは、平板部の厚み方向での長さを意味している。
【0077】
そして、図9に示すように、テーパ部21の軸方向Aの先端の位置では、第1中空部11aの幅W3の最大幅W3aが、第1検出部材30aの直径よりも小さい。そのため、第1検出部材30aは、その先端がテーパ部21の位置で第1中空部11aを区画するテーパ内壁に突き当たることで、テーパ部21よりも先端側に抜け落ちない。換言すれば、本実施形態の第1検出部材30aは、その先端がテーパ部21の内壁に突き当たることで、第1中空部11a内で位置決めされている。
【0078】
また、図9に示すように、テーパ部21の軸方向Aの先端の位置では、第2中空部11bの幅W4の最大幅W4aが、第2検出部材30bの直径よりも小さい。そのため、第2検出部材30bは、その先端がテーパ部21の位置で第2中空部11bを区画するテーパ内壁に突き当たることで、テーパ部21よりも先端側に抜け落ちない。換言すれば、本実施形態の第2検出部材30bは、その先端がテーパ部21の内壁に突き当たることで、第2中空部11b内で位置決めされている。
【0079】
次に、別の実施形態としてのセンサ501について説明する。図15図19は、センサ501を示す図である。具体的に、図15はセンサ501を示す斜視図である。図16はセンサ501の正面を示す正面図である。図17はセンサ501の正面と反対側の面である背面を示す背面図である。図18はセンサ501の一方側の側面図であり、図19はセンサ501の他方側の側面図である。
【0080】
図15図19に示すセンサ501は、上述のセンサ1と同様、針部材510及び検出部材30を備えている。
【0081】
図15に示すように、針部材510は、管部10a及び補強部510bを備えている。
【0082】
ここで、本実施形態のセンサ501の検出部材30は、上述したセンサ1の検出部材30と同様の構成であるため、ここでは説明を省略する。また、本実施形態の針部材510の管部10aは、上述した針部材10の管部10aと同様の構成であるため、ここでは説明を省略する。
【0083】
補強部510bは、上述した補強部10bと比較して、刃面の構成が相違しているが、その他の構成は同様である。したがって、ここでは、補強部510bの刃面515の構成についてのみ説明する。
【0084】
図16図19に示すように、本実施形態の補強部510bは、管部10a内に延在する仕切板部512と、管部10aの先端よりも突出する突出部513と、を備えている。本実施形態の補強部510bの仕切板部512は、軸方向Aに長尺の平板部により構成されている。突出部513には、軸方向Aに対して先端側に向かって1°~10°傾斜する複数の面で構成された、針先514を含む刃面515が形成されている。このような構成とすることで、管部の先端部に針先を含む刃面が形成されている構成と比較して、針部材510の先端を薄い鋭利な形状にすることができる。そのため、穿刺時に被検者や患者等の被穿刺者が感じる痛みを軽減することができる。
【0085】
具体的に、本実施形態の刃面515は、突出部513の対向する両面の一方の面に形成されている、互いが交差する稜線により針先514を一端とする刃縁528を形成する第1刃面部516及び第2刃面部517を備えている。つまり、突出部513の対向する2つの面の一方側の面に、第1刃面部516及び第2刃面部17が形成されている。第1刃面部516及び第2刃面部517は、軸方向Aに対して傾斜する平面状の斜面で構成されており、第1刃面部516及び第2刃面部517は、軸方向Aの先端側で互いが交差して稜線を形成している。この稜線が、穿刺時の切れ刃となる刃縁528を構成しており、この刃縁528は、軸方向Aに沿って針先514まで延在している。この刃縁528は、針先514から径中心方向外側に向かって10°~25°傾斜している。このような刃面515とすることで、針部材510の先端を、より薄い鋭利な形状にすることができる。また、切れ刃となる刃縁528を形成することで、刺通抵抗を、より低減することができる。
【0086】
より具体的に、本実施形態の補強部510bの突出部513は板状であり、突出部513の厚み方向で対向する両面の一方の面のみに、上述の第1刃面部516及び第2刃面部517が形成されているが、他方の面にも、同様の刃面部を形成してもよい。このようにすれば、針部材510の先端を、より一層薄い鋭利な形状にすることができる。また、切れ刃となる刃縁528を両面に形成することで、刺通抵抗を、より一層低減することができる。
【0087】
また、本実施形態の補強部510bの突出部513には、幅方向で対向する両端面にも第3刃面部518及び第4刃面部519が形成されている。第3刃面部518及び第4刃面部519は、軸方向Aの基端側から先端側に向かうにつれて近づくように傾斜しており、先端側で互いに交差して針先514を形成している。つまり、本実施形態の針先514は、第1刃面部516、第2刃面部517、第3刃面部518及び第4刃面部519の4つの刃面部が、先端側で交差することにより形成されている。このような構成とすることで、針部材510の先端を、より一層薄い鋭利な形状にすることができる。
【0088】
ここで、図18図19に示すように、本実施形態の刃面515では、第3刃面部518と第1刃面部516との間にも切れ刃となる刃縁531を備えている。また、本実施形態の刃面515では、第4刃面部519と第2刃面部517との間にも切れ刃となる刃縁532を備えている。すなわち、本実施形態の刃面515は、3つの刃縁528、刃縁531、刃縁532を備えているため、上述した針部材10の刃面15(図3等参照)と比較して、穿刺時の刺通抵抗を低減することができる。
【0089】
次に、上述したセンサ1の製造方法の一例について説明する。図20は、センサ1の製造方法の一例を示すフローチャートである。また、図21図22は、図20に示す製造方法の一部の工程の概要を示す概要図である。図20図22に示すように、センサ1の一製造方法は、中空部11を区画する金属製の管体60に、中空部11を複数の空間に仕切る長尺な板材61を挿入する板材挿入工程S1と、板材61を中空部11に収容している管体60を軸方向Aに引き伸ばし、板材61が管体60の内壁により径方向C内側に圧縮された状態とする伸長工程S2と、板材61の一端部に、軸方向Aに対して傾斜する面で構成された、針先14(図3等参照)を含む刃面15(図3等参照)を形成する刃面形成工程S3と、管体60の周壁に開口部25(図3等参照)を形成する開口形成工程S4と、板材61により仕切られた複数の空間の少なくとも1つに線状の検出部材30(図7等参照)を挿入する検出部材挿入工程S5と、含む。以下、各工程S1~S5について詳細に説明する。
【0090】
図21は、図20の板材挿入工程S1の概要を示す概要図である。図21に示すように、板材挿入工程S1では、金属製の管体60の中空部11に、管体60の軸方向Aに沿って延在する長尺な板材61を挿入する。図21では、平板状の板材61としているが、図10A図10Cに示すような別の形状の板材61を挿入してもよい。
【0091】
図22は、図20の伸長工程S2の概要を示す概要図である。図22に示すように、伸長工程S2では、例えば、ダイス62を用いた空引きの引抜き加工により、管体60を引き伸ばす。これにより、管体60を細径化することができる。この伸長工程S2において、管体60の内径が細径化されることで、管体60の内壁が、内部の板材61の幅方向Dの両端面に接触すると共に、板材61の幅方向Dの両端面を挟み込み、径方向Cの内側に圧縮する。これにより、管体60と板材61とを一体化することができる。
【0092】
また、伸長工程S2では、管体60と共に、板材61を引き伸ばしてもよい。このようにすることで、管体60と板材61との密着性が高まり、より強固に一体化することができる。管体60及び板材61を共に引き伸ばす場合は、板材61の厚み及び管体60の内径を略一定としたまま引き伸ばすことが好ましい。
【0093】
更に、図20に示すセンサ1の製造方法の伸長工程S2は、板材61の長手方向の一端部が、管体60の一端よりも突出した状態で実行される。このようにすることで、上述した補強部10b(図3等参照)の突出部13(図3等参照)を形成することができる。
【0094】
図22に示すように、伸長工程S2は、ダイス62を用いた空引きの引抜き加工により実行可能である。このダイス62を用いた伸長工程S2では、ダイス62のテーパ内面62aを利用して、管体60にテーパ部63を形成することができる。つまり、図22に示す伸長工程S2は、管体60を引き伸ばすことに加えて、管体60の軸方向Aの一部にテーパ部63を形成するテーパ部形成工程を含む。
【0095】
また、伸長工程S2は、図22に示すダイス62を用いた空引きの引き抜き加工の他に、例えば、軸方向Aに移動する管体60の外面を、管体60の周囲で回転するダイスにより、径方向Cの内側に繰り返し押圧することで、管体60を細径化するスウェージング加工により実行してもよい。更に、スウェージング加工で用いるダイスのテーパ内面を利用して、管体60にテーパ部63を形成するようにしてもよい。つまり、スウェージング加工により伸長工程S2を実行する場合であっても、管体60の軸方向Aの一部にテーパ部63を形成するテーパ部形成工程を含むようにすることができる。このテーパ部63は、針部材10の管部10aのテーパ部21(図3等参照)となる。
【0096】
但し、テーパ部形成工程は、伸長工程S2の後で、伸長工程S2とは別の工程として実行してもよい。
【0097】
刃面形成工程S3及び開口形成工程S4は、例えば、砥石による研削又はレーザー加工によって実行することができる。例えば、管体60の基端部を周方向Bに回動可能に固定し、管体60を周方向Bに回動させて、刃面15(図3等参照)及び開口部25(図3等参照)を順次形成することができる。図1図9に示す針部材10の場合、管体60を周方向Bに90°回動させることで、砥石やレーザーにより加工可能な加工面を変更し、管体60の周壁の周方向Bの異なる位置に、刃面15及び開口部25それぞれを形成している。
【0098】
刃面形成工程S3及び開口形成工程S4については、いずれの工程を先に実行してもよい。
【0099】
以上の板材挿入工程S1、伸長工程S2、刃面形成工程S3、及び、開口形成工程S4、により、針部材10(図2等参照)を製造することができる。換言すれば、本実施形態の針部材10の製造方法は、板材挿入工程S1、伸長工程S2、刃面形成工程S3、及び、開口形成工程S4、を含む。
【0100】
最後に、検出部材挿入工程S5では、完成された針部材10の中空部11に、検出部材30(図2等参照)を挿入する。これにより、センサ1を製造することができる。
【0101】
図15図19に示すセンサ501についても、図19に示す製造方法と同様の方法により製造することが可能である。
【0102】
本開示に係る針部材、センサ、針部材の製造方法、及び、センサの製造方法は、上述した実施形態や変形例の構成・工程に限られず、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限り、種々の変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本開示は、針部材、センサ、針部材の製造方法及びセンサの製造方法に関する。
【符号の説明】
【0104】
1:センサ
2:制御部
3:支持部材
4:ハウジング
10:針部材
10a:管部
10b:補強部
11:中空部
11a:第1中空部
11b:第2中空部
12:仕切板部
12a:仕切板部
12a1:仕切板部の外端面
13:突出部
13a:基端側部
13b:先端側部
14:針先
15:刃面
16:第1刃面部
17:第2刃面部
18:第3刃面部
19:第4刃面部
20:本体部
21:テーパ部
22:先端部
22a:管部刃面
23:第1刃面部
24:第2刃面部
25、25´:開口部
25a:先端側内壁
25b:基端側内壁
25c´:周方向の一方側の内壁
25d´:周方向の他方側の内壁
30:検出部材
30a:第1検出部材
30b:第2検出部材
60:管体
61:板材
62:ダイス
62a:テーパ内面
63:テーパ部
100:計測装置
110:針部材
110a:管部
111a:第1中空部
111b:第2中空部
112:仕切板部
125:開口部
210:針部材
210a:管部
210b:補強部
214:針先
226:刃面
227:刃面部
310:針部材
310a:管部
310b:補強部
314:針先
326:刃面
327:刃面部
410:針部材
410a:管部
411:中空部
411a:第1中空部
411b:第2中空部
412:仕切板部
425:開口部
501:センサ
510:針部材
510b:補強部
513:突出部
514:針先
515:刃面
516:第1刃面部
517:第2刃面部
518:第3刃面部
519:第4刃面部
528:刃縁
531、532:刃縁
A:管部の軸方向
B:管部の周方向
C:管部の径方向
D:板材の幅方向
O:管部の中心軸
T1:突出部の基端側部の厚み
T2:開口部が設けられている位置と、開口部と径方向で対向する位置と、の間の径方向厚み
T3:開口部が設けられていない位置同士の径方向厚み
W1:突出部の基端側部の幅
W2:開口部の中空部側の縁における、軸方向と直交する方向での最大幅
W3:第1中空部の幅
W3a:第1中空部の最大幅
W4:第2中空部の幅
W4a:第2中空部の最大幅
X:管部の最大内径
BS:体表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22