(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】人工筋肉アクチュエータの製造
(51)【国際特許分類】
A61F 2/08 20060101AFI20220928BHJP
D02G 3/44 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
A61F2/08
D02G3/44
(21)【出願番号】P 2019546886
(86)(22)【出願日】2018-02-27
(86)【国際出願番号】 US2018019929
(87)【国際公開番号】W WO2018160555
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2019-08-27
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518380665
【氏名又は名称】リンテック・オブ・アメリカ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルシオ・ディアス・リマ
(72)【発明者】
【氏名】セルゲイ・リ
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-065339(JP,A)
【文献】国際公開第2016/064220(WO,A1)
【文献】米国特許第04322944(US,A)
【文献】特表2015-533521(JP,A)
【文献】特開2016-003398(JP,A)
【文献】国際公開第01/38620(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0167748(US,A1)
【文献】米国特許第3488934(US,A)
【文献】中国特許出願公開第105696138(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/08
D02G 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的工程において、
無撚繊維をチューブの軸に沿って前記チューブの内部に通すことと、
前記無撚繊維に張力を提供することと、
前記繊維が前記チューブ内部にある間に前記無撚繊維を撚ることと、
を含み、
前記チューブが、
前記チューブの少なくとも1つの領域に配置された加熱手段を含み、前記チューブの
前記少なくとも1つの領域の断面
の温度を所定の温度へ上昇させ
る、
人工筋肉アクチュエータ繊維を製造する方法であって、
前記チューブの内径は、前記人工筋肉アクチュエータ繊維のもつれを防止するように設計されており、
前記所定の温度が、前記繊維のガラス転移温度よりも高く、かつ前記繊維の融解温度よりも低
く、
前記チューブの前記少なくとも1つの領域の内径は、前記無撚繊維の直径よりも10%~20%大きい、方法。
【請求項2】
前記無撚繊維を前記撚ることが前記チューブ内にコイル状繊維を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記無撚繊維が、ナイロン6、ナイロン6,6、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン6,10、ナイロン6,12、液晶ポリマー、ポリアリレート、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマー繊維を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記無撚繊維が、カーボンナノチューブ(CNT)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
コーティングを前記撚繊維または前記無撚繊維に塗布することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記繊維が前記チューブ内にある間に前記繊維にコーティングを施すことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記無撚繊維を前記チューブの前記軸に沿って通す前に前記無撚繊維から水分を除去することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
不活性ガスを前記チューブ内部に供給することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記撚ることの間に前記チューブ内部に潤滑剤を供給することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記撚繊維を第2のチューブの軸に沿って通すことを更に含み、
前記第2のチューブが、前記第2のチューブの断面領域の温度を第2の所定の温度に上昇するための第2の加熱手段を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の所定の温度が、前記所定の温度よりも高い、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つのチューブと、
前記少なくとも1つのチューブの
少なくとも1つの領域
を加熱するための前記少なくとも1つのチューブ
の少なくとも1つの領域に配置された1つ以上の加熱手段と、
を含み、
前記加熱手段が、前記少なくとも1つのチューブ断面の温度を所定の温度まで上昇させる、
人工筋肉アクチュエータ繊維を連続的に製造する装置であって、
前記チューブの内径は、前記人工筋肉アクチュエータ繊維のもつれを防止するように設計されており、
前記所定の温度が、前記繊維のガラス転移温度よりも高く、かつ前記繊維の融解温度よりも低い、装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つのチューブの内径が、前記少なくとも1つのチューブの特定の長さに沿って前記繊維の直径よりも少なくとも10%から20%大きい、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記繊維上にコーティングを施す少なくとも1つのコーティング手段を更に含む、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つのチューブ内に不活性ガスを注入するガス注入手段を更に含む、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
前記少なくとも1つのチューブ内に潤滑剤を供給する潤滑手段を更に含む、請求項12に記載の装置。
【請求項17】
第2のチューブの断面領域の温度を第2の所定の温度に上昇させるための第2の加熱手段を含む、前記第2のチューブを更に含む、請求項12に記載の装置。
【請求項18】
前記第2の所定の温度が、前記所定の温度よりも高い、請求項17に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱的及び化学的人工筋肉アクチュエータの構造、製造、及び動作に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
下記の特許出願の材料は、本明細書で開示された実施形態と併せて使用されてもよく、それら特許出願は、「MANUFACTURING OF ARTIFICIAL MUSCLE ACTUATORS」と題する2017年2月28日に出願の米国仮特許出願第62/465,003号、「EMBEDDED CONDUCTIVE WIRES IN POLYMER ARTIFICIAL MUSCLE ACTUATING DEVICES」と題する2017年11月22日に出願の米国仮特許出願第62/590,121号、2017年4月28日に出願されたWIPO出願番号第PCT/US2017/030199号、及び2017年10月26日に出願された「SHEET WRAPPING MUSCLES」と題する米国特許仮出願第62/577,512号である。これらの出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
撚ったポリマー及びカーボンナノチューブ(CNT)繊維及び糸に基づいた熱駆動トーショナルアクチュエータは、広範囲の用途を有している。撚った及び/またはコイル状ポリマーを含む人工筋肉アクチュエータは、低コスト、高生産量、及び設計の単純性という利点を有する。人工筋肉アクチュエータは、非常に単純化されたエンジニアリング及びより低い製造コストによって、小型モータに勝る利点を有し得る。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、本発明の実施形態は、人工筋肉アクチュエータ装置の繊維を連続製造する方法に関する。本方法は、撚られていない繊維をチューブの軸に沿って、チューブの内側に通すことを含む。チューブは、チューブ断面の局所的な温度を所定の温度に上昇させるための加熱手段を含む。撚られていない繊維に張力が加えられており、本方法は、繊維がチューブ内にある間に撚られていない繊維を撚ることを含む。
【0005】
別の態様では、本発明の実施形態は、人工筋肉アクチュエータ装置の繊維を連続製造するための装置に関する。装置は、少なくとも1つのチューブ、及び少なくとも1つのチューブの断面領域を局所的に加熱するために少なくとも1つのチューブに配置された1つ以上の加熱手段を含む。加熱手段は、少なくとも1つのチューブ断面の局所的な温度を所定の温度まで上昇させる。
【0006】
本発明の他の態様及び利点は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0007】
本開示の特定の実施形態は、添付の図面を参照して以下に説明されており、そこでは類似の参照番号は類似の要素を示している。しかし、添付の図面は、本明細書で説明されている様々な実装形態を示しており、本明細書で説明されている様々な技術の範囲を限定することを意味するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の1つ以上の実施形態による略図を示す。
【
図2】本発明の1つ以上の実施形態による略図を示す。
【
図3】本発明の1つ以上の実施形態による略図を示す。
【
図4】本発明の1つ以上の実施形態による略図を示す。
【
図5】本発明の1つ以上の実施形態によるフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態の以下の詳細な説明では、本発明のより完全な理解をもたらすために多数の具体的な詳細が述べられている。しかし、本発明がこれらの具体的な詳細を伴わずに実施され得ることは当業者に明らかであろう。他の例では、説明を不必要に複雑にすることを避けるために、周知の特徴は詳細には説明されていない。
【0010】
概して、本発明の実施形態は、アクチュエータ材料、または人工筋肉を製造するための装置、及び製造するための方法に関する。アクチュエータ繊維材料の実施形態は、電気的に、光子的に、熱的に、化学的に、吸収によって、または他の手段によって加熱されたときに撚り及び/または引っ張り作動を生成する撚り紡糸繊維を含む。本発明の実施形態は、撚られたか、または巻かれた人工筋繊維を利用するアクチュエータ繊維材料の製造を含み、純粋な材料であっても、ゲスト材料を含んでいてもよい。
【0011】
従来、撚られた人工筋繊維(以下、本明細書では撚繊維と称する)の製造は、バッチ間プロセスと考えられており、バッチ毎に数メートルの撚繊維が生じる。大量の撚繊維の効率的で信頼できる連続製造は、人工筋肉の広範な商業的使用を容易にし、人工筋肉の製造コストを下げ得る。
【0012】
連続的撚り及び紡ぎ装置内で人工筋繊維に回転力を加えると、人工筋繊維はその長さに沿って多くの異なる位置で捻れる場合がある。このことは、多過ぎる捻れが長さ及び繊維に沿った特定の場所に蓄積することにつながり得る。更に、特定の場所に多過ぎる捻れが蓄積することで、もつれが生じる場合があり、すなわち、人工筋繊維がそれ自体に捻れて、繊維の軸に沿った「捻れ玉」が生じる。そのようなもつれは、人工筋繊維に適切及び/または均等な撚りを加えることを妨げることになり、従って、製造を再開できる前に除去されなければならない。
【0013】
本明細書に開示される実施形態は、撚繊維及びコイル状人工筋繊維(以下、コイル状繊維)を連続製造する装置、及び連続製造する方法を含み、コイル状繊維は、撚繊維または撚られていない人工筋繊維(以下、無撚繊維)であり得る。
【0014】
張力、捻れ、及びもつれの間には関係性が存在する。例えば、人工筋繊維にかかる張力が大きいほど、人工筋繊維をもつれさせることなく、より大きな捻れが加えられ得る。しかし、張力が人工筋繊維の強度を超えると、人工筋繊維が破断する場合がある。加えられる張力の量は、人工筋繊維の引張強度によって制限されることから、繊維に挿入され得る捻れ量は、人工筋繊維の引張強度での人工筋繊維に沿ったもつれの発生に制限される。当業者であれば、上記の考察が人工筋繊維のサイズ及び材料の関数でもあることを理解するであろう。
【0015】
1つ以上の実施形態によれば、筋繊維のバイアス角が大きいほど、動作中に人工筋繊維アクチュエータが発生させ得るトルクが大きくなる。この文脈において、バイアス角は、繊維と撚繊維の中心軸との間の相対角度を指す。本明細書に開示されている実施形態では、バイアス角は特定の作動特性に直接関係しており、それに応じて変更され得る。
【0016】
本明細書に開示される実施形態によれば、可能な最大のバイアス角を達成するために、人工筋繊維を可能な限り最大限に撚ることが必要であり得るが、しかし、人工筋繊維に挿入され得る最大量の捻れは、繊維がもつれる前、または過度の張力下で破断する前となっている。本明細書に開示されている1つ以上の実施形態は、捻れを挿入するための装置または方法を提供しており、人工筋繊維が破断するのを防止するのに十分に低い荷重でのもつれを防止している。本発明の1つ以上の実施形態はまた、繊維をもつれさせることなく、コイル状、すなわちコイルの形状をした筋繊維を製造するために、繊維をチューブ内で連続的に撚るための装置または方法を提供する。1つ以上の実施形態によれば、得られるコイル状筋繊維は撚られたものでも撚られていないものでもよい。
【0017】
図1は、本発明の1つ以上の実施形態による、人工筋繊維を撚るための装置を示す。人工筋繊維100は、局所的にまたは特定の場所の領域において人工筋繊維100の温度を上昇させる1つ以上の加熱区域を含み得る第1のチューブ130を通過して、その繊維の特定の場所をより柔らかくし、かつ展性を高める。人工筋繊維100を撚るために人工筋繊維100に回転力を加えると、人工筋繊維100は、その特定の位置で捻れ、それが最小量の内部捻り抵抗を加える。このように、人工筋繊維100をその特定の位置(以下、捻れ点121)で柔らかくする。特定場所としての局所的な加熱は、捻れが人工筋繊維100の捻れ点121で起こることを確実にする。当業者は、そのような装置が複数の加熱区域を含み得、1つ以上の加熱区域が、人工筋繊維100の複数の位置で温度を上昇(または低下)し得ることを理解するであろう。当業者はまた、装置が、捻れ点121が、所望の用途に応じて局所化された単一点、複数の局所化された点、1つの領域、または繊維の長さに沿った複数の領域であり得るように設計され得ることを理解するであろう。
【0018】
1つ以上の実施形態によれば、第1のチューブ130は金属チューブであり得るか、または金属チューブを含み得る。金属チューブの区域の温度を上昇させるために、その区域は抵抗加熱によって加熱され得る。1つ以上の実施形態によれば、加熱手段は、第1のチューブ130の加熱区域に電流を供給し得る。1つ以上の実施形態によれば、熱電対は加熱区域の温度を制御し得る。熱電対は、第1のチューブ130の加熱区域に配置され得る。
【0019】
1つ以上の実施形態によれば、加熱区域は、人工筋繊維100上の断面点を局所的に加熱する。1つ以上の実施形態によれば、加熱区域は、人工筋繊維100の領域を加熱する。
【0020】
図1に示すように、人工筋繊維100は、第1のチューブ130に向けて左から右へ移動する。人工筋繊維100が捻れ点121で撚りを継続しているときに、無撚繊維/非コイル状繊維110が第1のチューブ130に入る。捻れ点121は、第1のチューブ130の加熱区域と実質的に重なり得る。人工筋繊維100の軟化した部分が加熱区域から離れるにつれて、軟化した部分は冷却されてより剛性になる。当業者であれば、チューブの区域も他の手段によって冷却され得ることを理解するであろう。従って、人工筋繊維100が第1のチューブ130内を移動すると、撚繊維120が第1のチューブ130から出る。
【0021】
1つ以上の実施形態によれば、撚繊維120のバイアス角は、約45度以下であり得る。他の実施形態では、撚繊維120のバイアス角は、53度以下であり得るか、または53度以下を超え得る。特定のバイアス角は、人工筋肉アクチュエータの所望の最終特性に基づいて選択され得る。上記の値は、利用可能なトルクを最大にするためのものであるが、しかし、用途によっては、利用可能な最大トルクが望ましくない場合がある。
【0022】
本発明の1つ以上の実施形態によれば、第1のチューブ130は、捻れ点121、または撚繊維が依然として軟質であり得る繊維の他の部分でのもつれを防止するために軟質の撚繊維を物理的に拘束する。1つ以上の実施形態によれば、第1のチューブ130の内径は、人工筋繊維100の直径よりもわずかに大きいだけであってよい。いくつかの実施形態では、第1のチューブ130の直径は、所望の人工筋繊維100の直径に基づいて決定され得る。
【0023】
本発明の1つ以上の実施形態によれば、人工筋繊維100は1つの材料から作製されてもよく、その材料は、限定されるものでないが、ポリマー系繊維であり得る。例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ポリアリレートなどの液晶ポリマー、及びそれらの任意の組み合わせであり得る。1つ以上の実施形態によれば、人工筋繊維100はまた、カーボンナノチューブ(CNT)系材料を含み得る。
【0024】
人工筋繊維100を捻っている間に、その撚りが特定の量を超えると、人工筋繊維100を巻き得る。しかし、人工筋繊維100の捻れを増すだけで人工筋繊維100を巻く従来の方法は、人工筋繊維100に沿ってもつれを形成するリスクを増加させる。
【0025】
図2は、本発明の1つ以上の実施形態による、人工筋繊維200をもつれさせずに、撚るための、及び/または巻くための装置を示す。第1のチューブ230の特定の直径を選択することによって、人工筋繊維200は同時に撚られ、巻かれることができる。第1のチューブ230の内径は、人工筋繊維200をコイル状にするのに十分に大きいが、人工筋繊維200がもつれることを防止するのに十分に小さいものであり得る。
【0026】
1つ以上の実施形態によれば、人工筋繊維200は、1つの場所で撚ってもよく、次いで第1のチューブ230に沿った別の場所で巻いてもよい。
【0027】
1つ以上の実施形態によれば、非限定的な実施例として、第1のチューブ230の内径は、巻くために無撚繊維/非コイル状繊維210の直径よりも10~20%大きくなり得る。このような巻きは、初めからの撚繊維120、220または無撚繊維/非コイル状繊維210に対して実行され得る。
【0028】
1つ以上の実施形態によれば、非限定的な実施例として、ナイロン6,6が繊維材料として使用される場合、第1のチューブ230の内径は、無撚繊維/非コイル状繊維210の直径の約2倍となり得る。
【0029】
1つ以上の実施形態によれば、第1のチューブ230は、1つ以上の加熱区域を有し得る。更に、第1のチューブ230は、その長さにわたって異なる内径を有する1つ以上の区域を有し得る。1つ以上の実施形態によれば、捻れ点221の温度は、巻回点241の温度とは異なり得る。1つ以上の実施形態によれば、巻回点241における第1のチューブ230の内径は、捻れ点221における第1のチューブ230の内径と異なり得る。例えば、巻回点241における第1のチューブ230の内径は、捻れ点221における第1のチューブ230の内径よりも大きくてもよい。
【0030】
1つ以上の実施形態によれば、第1のチューブ230は、チューブの長さにわたって複数の内径を有してもよい。このことは、繊維が第1のチューブ230を通って移動するときに、人工筋繊維200を異なるように撚ること、及び/または巻くことを可能にし得る。例えば、繊維が捻れる位置における第1のチューブ230の内径は、繊維が巻く位置における第1のチューブ230の内径とは異なり得る。
【0031】
図2では、撚り及び巻き工程は、加熱チューブ内の別個の別々の領域として示されている。1つ以上の実施形態によれば、巻き及び捻れはまた、第1のチューブ230内の実質的に同じ位置でも起こり得る。
【0032】
図2に示すように、人工筋繊維200は第1のチューブ230に向かって左から右に移動し、人工筋繊維200が、捻れ点221及び/または巻回点241において撚ること及び/または巻くことを継続するとともに、無撚繊維/非コイル状繊維210が第1のチューブ230に入る。人工筋繊維200の軟化した部分が加熱区域から動いて、離れると、軟化した繊維は冷却されてより剛性になる。その結果、撚られ得るコイル状繊維240が、
図2に示すように、第1のチューブ230の右端から出ている。
【0033】
1つ以上の実施形態によれば、第1のチューブ230、130の内径は、一部の繊維が他の繊維よりも緊密なコイル状構造を形成し得ることから、人工筋繊維100、200を製造するために使用される材料間で変化し得る。前述したように、繊維を軟化してチューブ内で撚り及び/または巻きが起きることを確実にするために、第1のチューブ230の特定の位置において加熱が加えられ得る。1つ以上の実施形態によれば、捻れ点221または巻回点241における人工筋繊維230の温度は、少なくとも人工筋繊維200の材料のガラス転移温度、かつ人工筋繊維200の材料の融点未満まで上昇され得る。
【0034】
1つ以上の実施形態では、第1のチューブ130、230の後に第2のチューブが使用され得る。撚繊維120またはコイル状繊維240が第1のチューブ130、230を出た後、それらは第2のチューブに入る。第2のチューブは、撚繊維120またはコイル状繊維240をアニールして弛緩させ、得られた繊維(撚繊維、コイル状繊維、またはその他)が、張力が解放されても巻き戻されることなく、得られた配向を保持するようにする。1つ以上の実施形態では、第2のチューブは、第1のチューブ130、230と少なくとも同じ温度で動作され得る。1つ以上の実施形態において、第2のチューブの加熱温度は、第1のチューブ130、230の加熱温度よりもわずかに高くてもよい。
【0035】
1つ以上の実施形態では、第1のチューブ130、230が、従来のバッチ式製造プロセスにおけるのと同様に、他の手段によって撚られた繊維をアニールするために使用され得る。本明細書に開示されている1つ以上の実施形態は、第1のチューブ130、230及び第2のチューブの両方の機能を提供する単一のチューブを利用してもよい。
【0036】
図3は、本発明の1つ以上の実施形態による、人工筋繊維300を乾燥させるための装置を示す。水分は、例えばナイロンなどの一部の人工筋肉材料の挙動に影響を及ぼし得る。1つ以上の実施形態によれば、無撚繊維/非コイル状繊維310の水分は、撚りまたは巻きの前に制限された量に低減され得る。例えば、第1のチューブ330内で軟化する前に無撚繊維/非コイル状繊維310を乾燥させるために乾燥チャンバ350または水分収集ストリップが使用され得る。そのような乾燥区域は、第1のチューブ330に組み込まれ得る。例えば、第1のチューブ330は水分収集物質を含み得る。
【0037】
図4は、1つ以上の実施形態によると、繊維が第1のチューブ430の内側にある間に人工筋繊維400にコーティングを塗布してもよい1つ以上のコーター460を示している。コーター460は、随時、すなわち、繊維を加熱する前、繊維を加熱した後、または繊維の加熱中に、人工筋繊維400上にコーティングを塗布してもよい。コーティングは、1つ以上の実施形態に従って第1のチューブ430内の特定の位置に塗布されてもよく、コーティングが繊維の任意の特定の位置に塗布されてもよいようになっている。1つ以上の実施形態では、コーティングは、既知の技術に従って繊維がチューブの外側にある間に塗布されてもよい。1つ以上の実施形態によれば、不活性ガスが第1のチューブ430の内側に供給されてもよく、第1のチューブ430内側の酸化反応または化学反応を防止する。
【0038】
1つ以上の実施形態によれば、コーティングは、2018年2月22日に出願された「CONTINUOUS PRODUCTION OF MUSCLE FIBERS」と題するWIPO出願第PCT/US18/19225号、及び2017年12月7日に出願された「IMPROVEMENTS IN ARTIFICIAL MUSCLE ACTUATORS」と題するWIPO出願第PCT/US17/65127号に開示されているコーティングと同様であり得る。これらの出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0039】
1つ以上の実施形態では、撚り工程を容易にするために潤滑剤がチューブの内側に供給されてもよい。これらの実施形態では、シリコン系油などの比較的軽い油が使用され得る。
【0040】
本明細書に開示される1つ以上の実施形態では、第1のチューブ130、230、330、430は金属で構成され得る。これらの実施形態では、第1のチューブ130、230、330、430は抵抗加熱されてもよい。金属チューブを加熱するための当該技術分野において既知の他の加熱方法が使用されてもよい。例えば、加熱要素は第1のチューブ130、230、330、430内の特定の位置に直接取り付けられてもよい。
【0041】
図5は、本発明の1つ以上の実施形態による、撚った人工筋繊維を連続的に製造するための方法のフローチャートを示す。本明細書で開示される方法は、無撚繊維をチューブの軸に沿ってチューブの内側に通すこと(ST5001)、及び無撚繊維に張力を加えること(ST5002)を含み得る。本方法は、繊維がチューブ内にある間に無撚繊維を撚ることを含む(ST5003)。1つ以上の方法における前述の繊維及びチューブは、上で開示された人工筋繊維100、200、300、400及び第1のチューブ130、230、330、430であり得る。1つ以上の方法では、第1のチューブ130は、捻れ点121において人工筋繊維100の温度を上昇させて、捻れ点121において繊維をより柔らかくし、かつ展性を高める1つ以上の加熱区域を含み得る。本明細書に開示される方法は、人工筋繊維100に適切な張力を加えることを含み得る。本明細書に開示される方法は、軟化されて最小量の内部捻り抵抗を有する捻れ点121において人工筋繊維100を撚る回転力を人工筋繊維100に加えることを含み得る。
【0042】
人工筋繊維100が第1のチューブ130を通過すると、加熱され撚られた人工筋繊維100の部分は、第1のチューブ130の加熱区域から離れるように動き、冷却し、より剛性になる。従って、人工筋繊維100が第1のチューブ130を通過すると、撚繊維120が第1のチューブ130から出る。当業者は、そのような方法が人工筋繊維100の2つ以上の区域を加熱することを含み得ることを理解する。当業者であれば、本明細書に記載の方法では、捻れ点121は、局所化された単一点、複数の局所化された点、1つの領域、または繊維の長さに沿った複数の領域であり得ることを理解するであろう。
【0043】
本明細書に記載の1つ以上の方法では、人工筋繊維100の柔らかい撚った部分は、冷却区域を介して冷却され得る。
【0044】
本明細書に記載の1つ以上の方法では、第1のチューブ130は金属製チューブであってもよいか、または金属チューブを含んでもよい。金属チューブの位置の温度を上昇させるために、抵抗加熱によって加熱されてもよい。
【0045】
本明細書に記載の1つ以上の方法では、撚繊維120のバイアス角は、前述のように選択され得る。
【0046】
本明細書に記載の1つ以上の方法では、第1のチューブ130は、捻れ点121または撚繊維が依然として柔らかくあり得る繊維の他の部分において、もつれることを防ぐために、柔らかい撚繊維を物理的に拘束し得る。1つ以上の実施形態によれば、第1のチューブ130の内径は、人工筋繊維100の直径よりもわずかに大きいだけであってよい。
【0047】
本明細書に開示されている1つ以上の方法は、もつれることなく人工筋繊維200を巻くことを含み得る。第1のチューブ230用に特定の直径を選択することによって、人工筋繊維200は同時に撚られて巻かれることができる。第1のチューブ230の内径は、人工筋繊維200の巻きを可能にするために十分に大きいが、人工筋繊維200のもつれを防止するために十分に小さくなるように設計され得る。
【0048】
上記のように、本明細書に記載の1つ以上の方法では、人工筋繊維200は、1つの場所で撚ってもよく、次いで第1のチューブ230に沿った別の場所で巻いてもよい。
【0049】
1つ以上の実施形態によれば、非限定的な実施例として、第1のチューブ230の内径は、無撚繊維/非コイル状繊維210の直径よりも10~20%大きいように設計され得る。そのような巻きは、撚繊維120、220または無撚繊維/非コイル状繊維210に対して実行されてもよい。
【0050】
本明細書において開示されている1つ以上の方法によれば、非限定的な実施例として、ナイロン6,6が繊維材料として使用される場合、第1のチューブ230の内径は、無撚繊維/非コイル状繊維210の直径の約2倍であり得る。
【0051】
当業者は、本明細書において開示されている第1のチューブ130、230、330、430は円筒形に限定されず、様々な外部形状及び内部形状を有し得ることを理解する。例えば、第1のチューブ130、230、330、430の形状は、円筒形から異なるチューブ状の形状に変化してもよく、繊維は依然として第1のチューブ130、230、330、430内を容易に移動することができ、もつれないようになっている。例えば、チューブの内径は長さに沿って変化してもよい。そのような変動は緩やかであっても、そうでなくてもよい。
【0052】
本明細書において開示されている実施形態によれば、回転力が繊維に沿って第1のチューブ130、230、330、430の加熱部分(複数可)の柔らかい領域に移動し得ることから、当業者であれば、加えられた回転力を第1のチューブ130、230、330、430の近くに提供する必要がないことを理解するであろう。
【0053】
本明細書に開示された実施形態は、人工筋繊維の連続的製造方法を提供し得る。実施形態は、撚り工程に機械的拘束を提供することによって、より安定した撚り工程を提供し得る。更に、本明細書に開示された実施形態は、製造された人工筋繊維により大きなバイアス角を提供し得る。例えば、53度のバイアス角が得られている。本明細書に開示されている実施形態は、53度を超えるバイアス角を提供し得る。
【0054】
本発明を限られた数の実施形態に関して説明してきたが、本開示の恩恵を受ける当業者であれば、本明細書に開示した本発明の範囲から逸脱することなく他の実施形態を考案できることを理解するであろう。
【符号の説明】
【0055】
100 人工筋繊維
110 非コイル状繊維
120 撚繊維
121 捻れ点
130 第1のチューブ
200 人工筋繊維
210 非コイル状繊維
220 撚繊維
221 捻れ点
230 第1のチューブ
240 コイル状繊維
241 巻回点
300 人工筋繊維
310 非コイル状繊維
330 第1のチューブ
350 乾燥チャンバ
400 人工筋繊維
430 第1のチューブ
460 コーター