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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】免疫抱合体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220928BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220928BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220928BHJP
   C07K 14/55 20060101ALI20220928BHJP
   C12N 15/26 20060101ALI20220928BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220928BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220928BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220928BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220928BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220928BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220928BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20220928BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220928BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220928BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C07K16/28
C07K14/55
C12N15/26
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C12P21/08
A61P35/00
A61K38/20
A61K39/395 T
A61K47/68
【請求項の数】 40
(21)【出願番号】P 2019554366
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2018058037
(87)【国際公開番号】W WO2018184965
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-01-27
(31)【優先権主張番号】17164538.5
(32)【優先日】2017-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】306021192
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コダッリ ディーク, ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】クライン, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ラウナー, ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】ゼーベル, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ウマーニャ, パブロ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルトハウアー, イニヤ
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-506793(JP,A)
【文献】特表2013-532153(JP,A)
【文献】国際公開第2016/071448(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/150447(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C07K 16/00
C07K 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫抱合体であって、変異体IL-2ポリペプチドと、PD-1及びTim-3に結合する二重特異性抗原結合分子とを含み、
変異体IL-2ポリペプチドが、アミノ酸置換F42A、Y45A及びL72Gを含むヒトIL-2分子であり、ここで、当該アミノ酸置換における番号付けは、ヒトIL-2配列の配列番号22に対する番号付けであり、
二重特異性抗原結合分子が、
(i)(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2及び配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)と、(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2及び配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、PD-1に結合する第1の抗原結合部分;及び
(ii)(a)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H2及び配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)と、(b)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L2及び配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、Tim-3に結合する第2の抗原結合部分
を含む、免疫抱合体。
【請求項2】
第1の抗原結合部分が、(a)配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、(b)配列番号8、配列番号9、配列番号10及び配列番号11からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、請求項1に記載の免疫抱合体。
【請求項3】
第2の抗原結合部分が、
(a)配列番号18のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、(b)配列番号19のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むか、又は
(a)配列番号20のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、(b)配列番号21のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、請求項1又は2に記載の免疫抱合体。
【請求項4】
変異体IL-2ポリペプチドが更に、アミノ酸置換T3A及び/又はアミノ酸置換C125Aを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の免疫抱合体。
【請求項5】
変異体IL-2ポリペプチドが、配列番号23の配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の免疫抱合体。
【請求項6】
免疫抱合体が、1つを超えない変異体IL-2ポリペプチドを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の免疫抱合体。
【請求項7】
第1及び/又は第2の抗原結合部分がFab分子である、請求項1~6のいずれか一項に記載の免疫抱合体。
【請求項8】
第1又は第2の抗原結合部分が、Fab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVH又は定常ドメインCL及びCH1が、互いに置き換わっている、請求項1~7のいずれか一項に記載の免疫抱合体。
【請求項9】
第1又は第2の抗原結合部分が、Fab分子であり、定常ドメインにおいて、位置124のアミノ酸が、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸が、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)、請求項1~8のいずれか一項に記載の免疫抱合体。
【請求項10】
第1の抗原結合部分が、Fab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが、互いに置き換わっており、第2の抗原結合部分が、Fab分子であり、定常ドメインにおいて、位置124のアミノ酸が、置換されたリシン(K)であり(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸が、独立して、リシン(K)又はアルギニン(R)によって、特にアルギニン(R)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫抱合体。
【請求項11】
二重特異性抗原結合分子が、更に、第1及び第2のサブユニットで構成されるFcドメインを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の免疫抱合体。
【請求項12】
Fcドメインが、IgGクラス、特に、IgGサブクラスのFcドメインである、請求項11に記載の免疫抱合体。
【請求項13】
Fcドメインが、ヒトFcドメインである、請求項11又は12に記載の免疫抱合体。
【請求項14】
Fcドメインが、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する改変を含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の免疫抱合体。
【請求項15】
Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基は、より大きな側鎖容積を有するアミノ酸残基と置き換わり、それによって、第2のサブユニットのCH3ドメイン内の空洞内に配置可能な突起を第1のサブユニットのCH3ドメイン内に生成し、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基は、より小さな側鎖容積を有するアミノ酸残基と置き換わり、それによって、第2のサブユニットのCH3ドメイン内に空洞を生成し、その中で、第1のサブユニットのCH3ドメイン内の突起が配置可能である、請求項11~14のいずれか一項に記載の免疫抱合体。
【請求項16】
Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、位置366のトレオニン残基は、トリプトファン残基と置き換わっており(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、位置407のチロシン残基は、バリン残基と置き換わっている(Y407V)、(Kabat EUインデックスによる番号付け)、請求項11~15のいずれか一項に記載の免疫抱合体。
【請求項17】
Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、更に、位置354のセリン残基が、システイン残基と置き換わっている(S354C)か、又は位置356のグルタミン酸残基が、システイン残基と置き換わっており(E356C)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、更に、位置349のチロシン残基が、システイン残基と置き換わっている(Y349C)(Kabat EUインデックスによる番号付け)、請求項16に記載の免疫抱合体。
【請求項18】
変異体IL-2ポリペプチドは、そのアミノ末端アミノ酸で、Fcドメインのサブユニットの1つのカルボキシ末端アミノ酸に、リンカーペプチドを介して融合する、請求項11~17のいずれか一項に記載の免疫抱合体。
【請求項19】
リンカーペプチドが、配列番号24のアミノ酸配列を有する、請求項18に記載の免疫抱合体。
【請求項20】
第1の抗原結合部分は、Fab分子であり、Fab重鎖のC末端で、Fcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合し、第2の抗原結合部分は、Fab分子であり、Fab重鎖のC末端で、Fcドメインのサブユニットの他の1つのN末端に融合する、請求項11~19のいずれか一項に記載の免疫抱合体。
【請求項21】
第1及び第2の抗原結合部分が、免疫グロブリンヒンジ領域によって、それぞれFcドメインに融合する、請求項20に記載の免疫抱合体。
【請求項22】
Fcドメインが、Fc受容体に対する結合及び/又はエフェクター機能を低下させる1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項11~21のいずれか一項に記載の免疫抱合体。
【請求項23】
前記1つ以上のアミノ酸置換が、L234、L235及びP329(Kabat EUインデックスの番号付け)の群から選択される1つ以上の位置にある、請求項22に記載の免疫抱合体。
【請求項24】
Fcドメインのそれぞれのサブユニットが、アミノ酸置換L234A、L235A及びP329G(Kabat EUインデックスの番号付け)を含む、請求項11~23のいずれか一項に記載の免疫抱合体。
【請求項25】
配列番号25の配列に対して少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号26の配列に対して少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号27の配列に対して少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び配列番号28の配列に対して少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の免疫抱合体。
【請求項26】
免疫抱合体が、変異体IL-2ポリペプチド及びIgG免疫グロブリン分子からなり、Fab分子の1つにおける重鎖及び軽鎖の可変又は定常領域が、互いに置き換わっており、リンカー配列によって接続している、請求項1~25のいずれか一項に記載の免疫抱合体。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか一項に記載の免疫抱合体をコードする1つ以上の単離されたポリヌクレオチドであって、免疫抱合体の全ての部分が1つの単離されたポリヌクレオチドにコードされるか、または免疫抱合体の全ての部分が2つ以上の単離されたポリヌクレオチドに分かれてコードされる、ポリヌクレオチド
【請求項28】
請求項27に記載のポリヌクレオチドを含む、1つ以上のベクター。
【請求項29】
請求項27に記載のポリヌクレオチド又は請求項28に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項30】
変異体IL-2ポリペプチドと、PD-1及びTim-3に結合する二重特異性抗原結合分子とを含む、免疫抱合体を産生する方法であって、(a)免疫抱合体の発現に適した条件下、請求項29に記載の宿主細胞を培養することと、場合により、(b)免疫抱合体を回収することとを含む、方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法によって産生される、変異体IL-2ポリペプチドと、PD-1及びTim-3に結合する二重特異性抗原結合分子とを含む、免疫抱合体。
【請求項32】
請求項1~26又は31のいずれか一項に記載の免疫抱合体と、医薬的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項33】
請求項1~26又は31のいずれか一項に記載の免疫抱合体を含む医薬。
【請求項34】
請求項1~26又は31のいずれか一項に記載の免疫抱合体を含む、疾患の処置に使用するための医薬。
【請求項35】
前記疾患ががんである、請求項34に記載の医薬。
【請求項36】
疾患の処置のための医薬の製造における請求項1~26又は31のいずれか一項に記載の免疫抱合体の使用。
【請求項37】
前記疾患ががんである、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
個体において疾患を処置するための医薬であって、請求項1~26又は31のいずれか一項に記載の免疫抱合体を含む、治療有効量の医薬的に許容される形態の組成物を含む、医薬。
【請求項39】
前記疾患ががんである、請求項38に記載の医薬。
【請求項40】
個体において免疫系を刺激するための医薬であって、請求項1~26又は31のいずれか一項に記載の免疫抱合体を含む、有効量の医薬的に許容される形態の組成物を含む、医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、免疫抱合体に関し、特に、変異体インターロイキン-2ポリペプチドと、PD-1及びTim-3に結合する二重特異性抗原結合分子とを含む免疫抱合体に関する。加えて、本発明は、免疫抱合体をコードするポリヌクレオチド分子、並びにかかるポリヌクレオチド分子を含むベクター及び宿主細胞に関する。本発明は更に、変異体免疫抱合体を産生する方法、変異体免疫抱合体を含む医薬組成物、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン-2(IL-2)は、T細胞成長因子(TCGF)としても知られ、リンパ球の生成、生存及びホメオスタシスにおいて中心的な役割を果たす15.5kDaの球状糖タンパク質である。IL-2は、133アミノ酸長であり、その機能に必須な四次構造を形成する4つの平行ではない両親媒性αらせんからなる(Smith、Science 240、1169-76(1988);Bazan、Science 257、410-413(1992))。異なる種由来のIL-2の配列は、NCBI Ref Seq番号NP000577(ヒト)、NP032392(マウス)、NP446288(ラット)又はNP517425(チンパンジー)で見出される。
【0003】
IL-2は、3個の個々のサブユニットからなるIL-2受容体(IL-2R)に結合することによって、その作用に媒介し、その異なる会合によって、IL-2に対するアフィニティが異なる受容体形態を生成し得る。α(CD25)、β(CD122)及びγ(γ、CD132)サブユニットの会合によって、IL-2のトリマー高アフィニティ受容体が得られる。βサブユニット及びγサブユニットからなるダイマーIL-2受容体は、中程度アフィニティIL-2Rと呼ばれる。αサブユニットは、モノマー低アフィニティIL-2受容体を形成する。ダイマー中程度アフィニティIL-2受容体は、トリマー高アフィニティ受容体よりも約100分の1低いアフィニティでIL-2に結合するが、ダイマー及びトリマーのIL-2受容体バリアントは、両方ともIL-2に結合するとシグナルを伝達することができる(Minami et al.、Annu Rev Immunol 11、245-268 (1993))。したがって、α-サブユニットCD25は、IL-2シグナル伝達に必須ではない。α-サブユニットは、その受容体に対して高いアフィニティ結合を与え、一方、βサブユニットCD122及びγサブユニットは、シグナル伝達にとって重要である(Krieg et al.,Proc Natl Acad Sci 107,11906-11(2010))。CD25を含むトリマーIL-2受容体は、(休止状態の)CD4フォークヘッドボックスP3(FoxP3)制御性T(Treg)細胞によって発現される。これらは、従来の活性化されたT細胞でも一時的に誘発され、一方、休止状態では、これらの細胞は、ダイマーIL-2受容体のみを発現する。Treg細胞は、in vivoで一貫して最も高いレベルのCD25を発現する(Fontenot et al.,Nature Immunol 6,1142-51(2005))。
【0004】
IL-2は、活性化T細胞、特に、CD4ヘルパーT細胞によって主に合成される。IL-2は、T細胞の増殖及び分化を刺激し、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の生成並びに末梢血リンパ球から細胞毒性細胞及びリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞への分化を誘発し、T細胞によるサイトカイン及び細胞溶解性分子の発現を促進し、B細胞の増殖及び分化並びにB細胞による免疫グロブリンの合成を容易にし、ナチュラルキラー(NK)細胞の生成、増殖及び活性化を刺激する(例えば、Waldmann,Nat Rev Immunol 6,595-601(2009);Olejniczak and Kasprzak,Med Sci Monit 14,RA179-89 (2008);Malek,Annu Rev Immunol 26,453-79(2008)にまとめられている)。
【0005】
IL-2がリンパ球の集合をin vivoで拡張する能力と、これらの細胞のエフェクター機能を増加させる能力は、IL-2に抗腫瘍効果を与え、IL-2免疫療法を、特定の転移性癌にとって魅力的な処置選択肢にしている。その結果、高用量IL-2処置は、転移性腎臓癌腫及び悪性黒色腫を有する患者において使用することが承認されてきた。
【0006】
しかし、IL-2は、エフェクター細胞の拡張及び活性を媒介するだけではなく、末梢免疫耐性の維持に大きく関わっているという点で、免疫応答において二重の機能を有する。
【0007】
末梢自己耐性の根底にある主要な機構は、T細胞におけるIL-2によって誘発された活性化誘導細胞死(AICD)である。AICDは、完全に活性化されたT細胞が、CD95(Fasとも呼ばれる)などの細胞表面で発現するデス受容体又はTNF受容体の係合によって、プログラムされた細胞死を受けるプロセスである。高アフィニティIL-2受容体を発現する抗原活性化T細胞(IL-2に既に曝露した後)、増殖中に、T細胞受容体(TCR)/CD3複合体を介し、抗原による再刺激がされると、Fasリガンド(FasL)及び/又は腫瘍壊死因子(TNF)の発現が誘発され、細胞が、Fas介在性アポトーシスに適したものとなる。このプロセスは、IL-2依存性であり(Lenardo,Nature 353,858-61(1991)、STAT5によって媒介される。Tリンパ球におけるAICDのプロセスによって、耐性が、自己抗原に対して確立されるだけではなく、腫瘍抗原などの明確に宿主構成物の一部ではない持続性抗原に対しても確立され得る。
【0008】
更に、IL-2は、末梢CD4CD25制御性T(Treg)細胞の管理にも関与する(Fontenot et al.,Nature Immunol 6,1142-51 (2005);D’Cruz and Klein,Nature Immunol 6,1152-59(2005);Maloy and Powrie,Nature Immunol 6,1171-72 (2005))、これらは、サプレッサーT細胞としても知られる。これらは、エフェクターT細胞がその(自己の)標的を破壊するのを、細胞-細胞接触によってT細胞の補助及び活性化を阻害することによって、又はIL-10又はTGF-βなどの免疫抑制性サイトカインの放出によって、抑制する。Treg細胞を消耗させると、IL-2によって誘発される抗腫瘍免疫が高まることが示された(Imai et al.,Cancer Sci 98,416-23 (2007))。
【0009】
したがって、IL-2存在下、生成したCTLが、腫瘍を自身で認識し、AICDを受けるか、又は免疫応答が、IL-2依存性Treg細胞によって阻害されるため、IL-2は腫瘍成長の阻害のために最適とはいえない。
【0010】
IL-2免疫療法に関連する更なる問題は、組換えヒトIL-2処置によって生じる副作用である。高用量IL-2処置を摂取する患者は、重篤な心血管、肺、腎臓、肝臓、胃腸、神経、皮膚、血液及び全身の有害事象を頻繁に経験し、集中的なモニタリングと入院患者管理が必要となる。これらの副作用の大部分は、いわゆる血管(又は毛細管)の漏れ症状(VLS)の進行、複数の臓器における流体漏出を引き起こす血管透過性の病的な増加(例えば、肺及び皮膚の浮腫並びに肝細胞の損傷を引き起こす)、血管内の流体枯渇(血圧の低下、心拍の補償的増加を引き起こす)によって説明することができる。IL-2の離脱以外のVLSの処置は存在しない。低用量IL-2レジメンは、VLSを回避するために患者で試験されたが、最適とはいえない治療結果であった。VLSは、IL-2によって活性化されたNK細胞からの腫瘍壊死因子(TNF)-αなどの炎症性サイトカインの放出によって引き起こされると考えられていた。しかし、近年、IL-2によって誘発される肺浮腫が、低濃度から中程度の濃度の機能性αβγ IL-2受容体を発現する肺内皮細胞に対するIL-2の直接的な結合によって生じることが示された(Krieg et al.、Proc Nat Acad Sci USA 107、11906-11 (2010))。
【0011】
IL-2免疫療法に関連するこれらの問題を克服するために、いくつかの手法が行われてきた。例えば、IL-2と特定の抗IL-2モノクローナル抗体との組み合わせは、in vivoでIL-2の処置効果を高める(Kamimura et al.,J Immunol 177,306-14(2006);Boyman et al.,Science 311,1924-27(2006))。代替的な手法では、IL-2は、その毒性を下げ、及び/又はその有効性を高めるために、種々の様式で変異された。Hu et al.(Blood 101、4853-4861(2003)、米国特許出願公開第2003/0124678号)は、IL-2の血管浸透活性をなくすために、IL-2の位置38のアルギニン残基をトリプトファンで置換している。Shanafelt et al.(Nature Biotechnol 18、1197-1202 (2000))は、NK細胞よりもT細胞に対する選択性を高めるために、アスパラギン88からアルギニンに変異している。Heaton et al.(Cancer Res 53、2597-602(1993);米国特許第5,229,109号)は、NK細胞からの炎症性サイトカインの分泌を減らすために、Arg38Ala及びPhe42Lysの2つの変異を導入した。Gillies et al.(米国特許出願公開第2007/0036752号)は、VLSを減らすために、中程度アフィニティIL-2受容体に対するアフィニティに寄与するIL-2の3つの残基が置換されている(Asp20Thr、Asn88Arg及びGln126Asp)。Gillies et al.(WO 2008/0034473号)も、有効性を高めるために、アミノ酸置換Arg38Trp及びPhe42LysによってIL-2とCD25との界面を変異させ、CD25との相互作用と、Treg細胞の活性化を低下させた。同じ目的のために、Wittrup et al.(WO 2009/061853号)は、CD25に対するアフィニティを高めたが、受容体を活性化せず、アンタゴニストとして作用するIL-2変異体を製造した。導入される変異は、受容体のβ-サブユニット及び/又はγ-サブユニットとの相互作用を破壊することを目的としたものであった。
【0012】
IL-2免疫療法に関連する上述の問題(VLSの誘発によって引き起こされる毒性、AICDの誘発によって引き起こされる腫瘍耐性、及びTreg細胞の活性化によって引き起こされる免疫抑制)を克服するために設計された特定の変異体IL-2ポリペプチドが、WO2012/107417号に記載されている。位置42のフェニルアラニン残基をアラニンに置換、位置45のチロシン残基をアラニンに置換、IL-2の位置72のロイシン残基をグリシンに置換すると、IL-2受容体(CD25)のα-サブユニットに対するこの変異体IL-2ポリペプチドの結合が本質的になくなる。
【0013】
上述の手法に更に、IL-2免疫療法は、例えば、腫瘍細胞で発現する抗原に結合する抗体を含む免疫抱合体の形態で、腫瘍に対してIL-2を選択的に標的化することによって高められてもよい。いくつかのこのような免疫抱合体が記載されている(例えば、Ko et al.,J Immunother(2004)27,232-239;Klein et al.,Oncoimmunology(2017)6(3),e1277306を参照)。
【0014】
しかし、腫瘍は、抗体の標的抗原を削減し、変異させ、又はダウンレギュレーションすることによって、このような標的化から逃避する場合がある。更に、腫瘍を標的とするIL-2は、リンパ球を能動的に除外する腫瘍微小環境において、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)などのエフェクター細胞と最適な接触をしない場合がある。
【0015】
したがって、IL-2免疫療法を更に改善することが依然として必要である。腫瘍標的化の問題を回避し得る手法は、エフェクター細胞、特にCTLに対してIL-2を直接的に標的化することである。
【0016】
Ghasemi et al.は、ナチュラルキラー(NK)細胞などのNKG2Dを有する細胞に対してIL-2を標的化するための、IL-2とNKG2D結合タンパク質の融合タンパク質を記載している(Ghashemi et al.、Nat Comm (2016) 7、12878)。
【0017】
プログラムされた細胞死タンパク質1(PD-1又はCD279)は、受容体のCD28ファミリーの阻害性メンバーであり、CD28、CTLA-4、ICOS及びBTLAも含まれる。PD-1は、細胞表面受容体であり、活性化されたB細胞、T細胞及び骨髄細胞で発現している(Okazaki et al(2002)Curr. Opin. Immunol.14:391779-82;Bennett et al.(2003)J Immunol 170:711-8)。PD-1の構造は、1つの免疫グロブリン可変様の細胞外ドメインと、免疫受容体阻害性モチーフ(ITIM)及び免疫受容体チロシンに基づくスイッチモチーフ(ITSM)を含む細胞質ドメインとからなるモノマー型1膜貫通タンパク質である。PD-1に結合するとT細胞活性化をダウンレギュレーションすることが示されているPD-1の2種類のリガンドPD-L1及びPD-L2が特定されている(Freeman et al(2000)J Exp Med 192:1027-34;Latchman et al(2001)Nat Immunol 2:261-8;Carter etal(2002)Eur J Immunol 32:634-43)。PD-L1及びPD-L2は、両方ともPD-1に結合するB7ホモログであるが、他のCD28ファミリーメンバーには結合しない。PD-1の1つのリガンドであるPD-L1は、種々のヒト腫瘍で豊富である(Dong et al(2002)Nat.Med 8:787-9)。PD-1とPD-L1との間の相互作用によって、腫瘍浸潤性リンパ球が減少し、T細胞受容体が介在する増殖が減少し、癌生細胞による免疫回避が減少する(Dong et al.(2003)J. MoI.Med.81:281-7;Blank et al.(2005)Cancer Immunol.Immunother.54:307-314;Konishi et al.(2004)Clin.Cancer Res.10:5094-100)。免疫抑制(T細胞の機能不全又は消耗)は、PD-1とPD-L1の局所的相互作用を阻害することによって逆行させることができ、その効果は、PD-1とPD-L2の相互作用が同様にブロックされるとき、相加的である。(Iwai et al. (2002)Proc.Nat 7.Acad.ScL USA 99:12293-7;Brown et al.(2003) J.Immunol. 170:1257-66)。
【0018】
しかし、PD-1-PD-L1経路のみを標的としても、常にT細胞消耗の逆行が常に起こるわけではなく(Gehring et al.、Gastroenterology 137 (2009)、682-690)、このことは、他の分子がおそらくT細胞消耗に関与していることを示している(Sakuishi、J. Experimental Med. 207 (2010)、2187-2194)。
【0019】
Tim-3は、IFN-γを分泌するTh1細胞及びTc1細胞で選択的に発現するものであるとして元々特定されている分子である(Monney et al.、Nature 415 (2002)、536-541)。Tim-3とそのリガンドのガレクチン-9との相互作用は、Tim-3T細胞における細胞死を引き起こす。したがって、Tim-3及びPD-1は、T細胞応答の負の制御因子として機能し得る。Tim-3が、固体悪性腫瘍及び血液悪性腫瘍の前臨床モデルにおいて、CD8+ T細胞の最も抑制されているか、又は機能不全の集合を記録することが示された(Sakuishi、J.Experimental Med.207(2010)、2187-2194;Zhou、Blood 117(2011)、4501-4510;Majeti R et al.、PNAS、106(2009)、3396-3401)。これらのモデルにおいて、全てのCD8+Tim-3+T細胞が、PD-1を一緒に発現し、これらの二重発現細胞は、両細胞周期の進行及びエフェクターサイトカイン産生[インターロイキン(IL)-2、TNF及びIFN-γ]において、PD-1のみを発現する細胞よりも、大きな欠陥を示す。したがって、Tim-3経路は、PD-1経路と協働し、癌におけるCD8+ T細胞の表現型の重篤な機能不全の進行を促進し得る。従って、Tim-3及びPD-1経路を組み合わせた標的化は、腫瘍成長を制御する際に非常に効果的であると予想される。
【0020】
PD-1及びTim-3に結合する二重特異性抗体は、例えば、PCT特許出願第PCT/EP2016/073192号に記載される。これらの二重特異性抗体は、PD-1及びTim-3両方の抗原を発現するT細胞でPD-1及びTim-3を効果的にブロックするだけではなく、これらの細胞に非常に選択的であり、それによって、固有の免疫細胞(例えば、ネイティブ樹状細胞(DC)及び単球)などの他の細胞上でTim-3のブロックに関連する副作用を避け得る。
【発明の概要】
【0021】
本発明は、腫瘍細胞ではなく、免疫エフェクター細胞、例えば、細胞傷害性Tリンパ球に対する直接的な免疫療法にとって有利な特性を有する、IL-2の変異体形態を標的とする新規な手法を提供する。免疫エフェクター細胞に対する標的化は、PD-1及びTim-3に結合する二重特異性抗原結合分子に対する変異体IL-2分子の接合によって達成される。
【0022】
本発明で使用されるIL-2変異体は、IL-2免疫療法に関連する問題、特に、VLSの誘発によって引き起こされる毒性、AICDの誘発によって引き起こされる腫瘍耐性、及びTreg細胞の活性化によって引き起こされる免疫抑制を克服するために設計されてきた。上述の腫瘍標的化からの腫瘍の逃避を迂回することに加え、免疫エフェクター細胞に対するIL-2変異体の標的化によって、更に、免疫抑制性Treg細胞よりもCTLの優先的な活性化を増大させ得る。PD-1及びTim-3に結合する二重特異性抗原結合分子を使用することによって、PD-1/PD-L1経路及び/又はTim-3によって誘発されるT細胞活性の抑制を更に逆行させ、そのため、免疫応答を高め得る。PD-1及びTim-3の標的化を組み合わせると、特に、両抗原を発現する疲弊したT細胞に対する免疫抱合体の標的化を更に高める。
【0023】
第1の態様では、本発明は、免疫抱合体であって、変異体IL-2ポリペプチドと、PD-1及びTim-3に結合する二重特異性抗原結合分子とを含み、
変異体IL-2ポリペプチドが、アミノ酸置換F42A、Y45A及びL72Gを含むヒトIL-2分子であり(ヒトIL-2配列の配列番号22に対する番号付け)、二重特異性抗原結合分子が、(i)PD-1に結合する第1の抗原結合部分と、(ii)Tim-3に結合する第2の抗原結合部分とを含む、免疫抱合体を提供する。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2及び配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)と、(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2及び配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、(a)配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、(b)配列番号8、配列番号9、配列番号10及び配列番号11からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、(a)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H2及び配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)と、(b)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L2及び配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、(a)配列番号18のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、(b)配列番号19のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むか、又は(a)配列番号20のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、(b)配列番号21のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは更に、アミノ酸置換T3A及び/又はアミノ酸置換C125Aを含む。いくつかの実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、配列番号23の配列を含む。いくつかの実施形態では、免疫抱合体は、1つを超えない変異体IL-2ポリペプチドを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2の抗原結合部分は、Fab分子である。いくつかの実施形態では、第1又は第2の抗原結合部分は、Fab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVH又は定常ドメインCL及びCH1、特に可変ドメインVL及びVHが、互いに置き換わっている。いくつかの実施形態では、第1又は第2の抗原結合部分は、Fab分子であり、定常ドメインにおいて、位置124のアミノ酸が、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸が、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが、互いに置き換わっており、前記第2の抗原結合部分が、Fab分子であり、定常ドメインにおいて、位置124のアミノ酸が、置換されたリシン(K)であり(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸が、独立して、リシン(K)又はアルギニン(R)によって、特にアルギニン(R)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸は、グルタミン酸(E)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0028】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は更に、第1及び第2のサブユニットで構成されるFcドメインを含む。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、IgGクラス、特に、IgGサブクラスのFcドメインである。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、ヒトFcドメインである。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する改変を含む。いくつかの実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基は、もっと大きな側鎖容積を有するアミノ酸残基と置き換わり、それによって、第2のサブユニットのCH3ドメイン内の空洞内で位置換え可能な第1のサブユニットのCH3ドメイン内に突起を生成し、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基は、もっと小さな側鎖容積を有するアミノ酸残基と置き換わり、それによって、第2のサブユニットのCH3ドメイン内に空洞を生成し、その中で、第1のサブユニットのCH3ドメイン内の突起が位置換え可能である。いくつかの実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、位置366のトレオニン残基は、トリプトファン残基と置き換わっており(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、位置407のチロシン残基は、バリン残基と置き換わっており(Y407V)、場合により、位置366のトレオニン残基は、セリン残基と置き換わっており(T366S)、位置368のロイシン残基は、アラニン残基と置き換わっている(L368A)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。いくつかのこのような実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、更に、位置354のセリン残基が、システイン残基と置き換わっている(S354C)か、又は位置356のグルタミン酸残基が、システイン残基と置き換わっており(E356C)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、更に、位置349のチロシン残基が、システイン残基と置き換わっている(Y349C)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0029】
いくつかの実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、そのアミノ末端アミノ酸で、Fcドメインのサブユニットの1つ(特に、Fcの第1のサブユニット)のカルボキシ末端アミノ酸に、場合によりリンカーペプチドを介して融合する。いくつかの実施形態では、リンカーペプチドは、配列番号24のアミノ酸配列を有する。
【0030】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fab分子であり、Fab重鎖のC末端で、Fcドメインのサブユニットの1つのN末端に、特に、Fcドメインの第1のサブユニットに融合し、第2の抗原結合部分は、Fab分子であり、Fab重鎖のC末端で、Fcドメインのサブユニットの1つのN末端に、特に、Fcドメインの第2のサブユニットに融合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の抗原結合部分は、免疫グロブリンヒンジ領域によって、それぞれFcドメインに融合する。
【0031】
いくつかの実施形態では、Fcドメインが、Fc受容体、特に、Fcγ受容体に対する結合及び/又はエフェクター機能、特に抗体依存性細胞傷害(ADCC)を低下させる1つ以上のアミノ酸置換を含む。いくつかのこのような実施形態では、前記1つ以上のアミノ酸置換は、L234、L235及びP329(Kabat EUインデックスの番号付け)の群から選択される1つ以上の位置にある。いくつかの実施形態では、Fcドメインのそれぞれのサブユニットは、アミノ酸置換L234A、L235A及びP329G(Kabat EUインデックスの番号付け)を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、免疫抱合体は、配列番号25の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号26の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号27の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び配列番号28の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、免疫抱合体は、変異体IL-2ポリペプチド及びIgG免疫グロブリン分子から本質的になり、Fab分子の1つにおける重鎖及び軽鎖の可変又は定常領域が、互いに置き換わっており、リンカー配列によって接続している。
【0034】
本発明は、更に、本発明の免疫抱合体をコードする1つ以上の単離されたポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む1つ以上のベクター(特に、発現ベクター)、及び前記ポリヌクレオチド又は前記ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0035】
変異体IL-2ポリペプチドと、PD-1及びTim-3に結合する二重特異性抗原結合分子とを含む、免疫抱合体を産生する方法であって、(a)前記免疫抱合体の発現に適した条件下、本発明の宿主細胞を培養することと、場合により、(b)前記免疫抱合体を回収することとを含む、方法も提供される。また、本発明によって提供されるのは、この方法によって提供される、変異体IL-2ポリペプチドと、PD-1及びTim-3に結合する二重特異性抗原結合分子とを含む、免疫抱合体である。
【0036】
本発明は更に、本発明の免疫抱合体と、医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物、及び本発明の免疫抱合体を使用する方法を提供する。
【0037】
特に、本発明は、医薬として使用するための、また、疾患の処置に使用するための本発明に係る免疫抱合体を包含する。特定の実施形態では、前記疾患は、癌である。
【0038】
ある疾患の処置のための医薬の製造における本発明に係る免疫抱合体の使用も、本発明に包含される。特定の実施形態では、前記疾患は、癌である。
【0039】
個体において疾患を処置する方法であって、治療有効量の本発明に係る免疫抱合体を含む組成物を医薬的に許容される形態で前記個体に投与することを含む、方法が更に提供される。特定の実施形態では、前記疾患は、癌である。
【0040】
個体において免疫系を刺激する方法であって、有効量の本発明に係る免疫抱合体を含む組成物を医薬的に許容される形態で前記個体に投与することを含む、方法も提供される。
【0041】
発明の詳細な説明
(定義)
用語は、以下に他の意味であると定義されていない限り、当該技術分野で一般的に使用されるように本明細書で使用される。
【0042】
「インターロイキン-2」又は「IL-2」との用語は、本明細書で使用される場合、特に示されていない限り、哺乳動物、例えば、霊長類(例えばヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)を含め、任意の脊椎動物源由来の任意のネイティブIL-2を指す。この用語は、未処理のIL-2と、細胞の処理から生じるIL-2の任意の形態を包含する。この用語は、IL-2の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトIL-2のアミノ酸配列を配列番号22に示す。未処理のヒトIL-2は、さらに、成熟IL-2分子には存在しない、配列番号32の配列を有するN末端20アミノ酸シグナルペプチドを含む。
【0043】
「IL-2変異体」又は「変異体IL-2ポリペプチド」との用語は、本明細書で使用される場合、全長IL-2、IL-2の先端切断された形態、IL-2が融合又は化学的抱合などによって別の分子に連結した形態を含め、IL-2分子の種々の形態の任意の変異体形態を包含することを意図している。「全長」は、IL-2を参照して使用される場合、成熟した天然の長さのIL-2分子を意味することを意図している。例えば、全長ヒトIL-2は、133個のアミノ酸を含む分子を指す(例えば、配列番号22)。種々の形態のIL-2変異体は、IL-2とCD25との相互作用に影響を与える少なくとも1つのアミノ酸変異を有することを特徴とする。この変異は、その位置に通常配置される野生型アミノ酸残基の置換、欠失、先端切断又は改変を含んでいてもよい。アミノ酸置換によって得られる変異体が好ましい。特に示されない限り、IL-2変異体は、本明細書では、変異体IL-2ペプチド配列、変異体IL-2ポリペプチド、変異体IL-2タンパク質又は変異体IL-2アナログと呼ばれてもよい。
【0044】
IL-2の種々の形態の命名は、本明細書では、配列番号22に示される配列に対して行われる。同じ変異を示すために、本明細書で様々な名称を使用してもよい。例えば、位置42でのフェニルアラニンからアラニンへの変異は、42A、A42、A42、F42A又はPhe42Alaとして示すことができる。
【0045】
「ヒトIL-2分子」とは、本明細書で使用される場合、配列番号22のヒトIL-2配列に対して少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%又は少なくとも約96%同一のアミノ酸配列を含むIL-2分子を意味する。特に、配列同一性は、少なくとも約95%、更に特定的には、少なくとも約96%である。特定的な実施形態では、ヒトIL-2分子は、全長IL-2分子である。
【0046】
「アミノ酸変異」との用語は、本明細書で使用される場合、アミノ酸の置換、欠失、挿入及び改変を包含することを意味している。置換、欠失、挿入及び改変の任意の組み合わせは、最終構築物が、所望の特徴、例えば、CD25に対する結合の低下を有する限り、最終構築物に到達するように行うことができる。アミノ酸配列の欠失及び挿入は、アミノ末端及び/又はカルボキシ末端のアミノ酸の欠失及び挿入を含む。末端の欠失の一例は、全長ヒトIL-2の位置1にあるアラニン残基の欠失である。好ましいアミノ酸変異は、アミノ酸置換である。例えば、IL-2ポリペプチドの結合特徴を変える目的のために、非保存的アミノ酸置換(すなわち、1つのアミノ酸を、構造特性及び/又は化学特性が異なる別のアミノ酸と置き換えること)が特に好ましい。好ましいアミノ酸置換は、疎水性アミノ酸を親水性アミノ酸によって置き換えることを含む。アミノ酸置換としては、天然に存在しないアミノ酸による置き換え、又は20種類の標準的なアミノ酸(例えば、4-ヒドロキシプロリン、3-メチルヒスチジン、オルニチン、ホモセリン、5-ヒドロキシリシン)の天然に存在するアミノ酸誘導体による置き換えが挙げられる。アミノ酸変異は、当該技術分野で周知の遺伝的方法又は化学的方法を用いて作成することができる。遺伝的方法としては、部位特異的変異導入、PCR、遺伝子合成などが挙げられ得る。遺伝子操作以外の方法によってアミノ酸の側鎖基を変える方法、例えば、化学修飾も有用な場合があることが想定される。
【0047】
本明細書で使用される場合、IL-2の「野生型」形態は、野生型形態が、変異体IL-2ポリペプチドのそれぞれのアミノ酸位置に野生型アミノ酸を有する以外は、変異体IL-2ポリペプチドと同じIL-2の形態である。例えば、IL-2変異体が、全長IL-2である(すなわち、IL-2が、任意の他の分子に融合又は接合していない)場合、この異性体の野生型形態は、全長ネイティブヒトIL-2である。IL-2変異体が、IL-2とIL-2の下流(例えば、抗体鎖)をコードする別のポリペプチドとの融合である場合、このIL-2異性体の野生型形態は、同じ下流のポリペプチドに融合した、野生型アミノ酸配列を有するIL-2である。更に、IL-2変異体が、IL-2の先端切断された形態(IL-2の先端切断されていない部分の中の変異した形態又は改変された形態)である場合、このIL-2変異型の野生型形態は、同様に、野生型配列を有する先端切断されたIL-2である。種々の形態のIL-2変異体のIL-2受容体結合アフィニティ又は生体活性を、対応するIL-2の野生型形態と比較する目的のために、野生型との用語は、天然に存在するネイティブIL-2と比較して、IL-2受容体結合に影響を与えない1つ以上のアミノ酸変異(例えば、ヒトIL-2の残基125に対応する位置のシステインをアラニンに置換)を含むIL-2の形態を包含する。いくつかの実施形態では、本発明の目的のための野生型IL-2は、アミノ酸置換C125Aを含む(配列番号39を参照)。本発明に係る特定の実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドと比較される野生型IL-2ポリペプチドは、配列番号22のアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドと比較される野生型IL-2ポリペプチドは、配列番号39のアミノ酸配列を含む。
【0048】
「CD25」又は「IL-2受容体のα-サブユニット」との用語は、本明細書で使用される場合、特に示されていない限り、哺乳動物、例えば、霊長類(例えばヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)を含め、任意の脊椎動物源由来の任意のネイティブCD25を指す。この用語は、「全長」の未処理のCD25と、細胞の処理から生じるCD25の任意の形態を包含する。この用語は、CD25の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントも包含する。特定の実施形態では、CD25は、ヒトCD25である。ヒトCD25のアミノ酸配列は、例えば、UniProtエントリー番号P01589(バージョン185)で見出される。
【0049】
「高アフィニティIL-2受容体」との用語は、本明細書で使用される場合、受容体γ-サブユニット(共通のサイトカイン受容体γ-サブユニット、γ、又はCD132、UniProtエントリー番号P14784(バージョン192)を参照)、受容体β-サブユニット(CD122又はp70としても知られる、UniProtエントリー番号P31785(バージョン197)を参照)及び受容体α-サブユニット(CD25又はp55としても知られる、UniProtエントリー番号P01589(バージョン185)を参照)からなる、IL-2受容体のヘテロトリマー形態を指す。「中程度アフィニティIL-2受容体」との用語は、対照的に、γ-サブユニット及びβ-サブユニットのみを含み、α-サブユニットを含まないIL-2受容体を指す(総説としては、例えば、Olejniczak and Kasprzak、Med Sci Monit 14、RA179-189 (2008)を参照)。
【0050】
「アフィニティ」は、分子の単一の結合部位(例えば、受容体)と、その結合対(例えば、リガンド)との間の非共有結合性相互作用の合計強度を指す。特に示されない限り、本明細書で使用される場合、「結合アフィニティ」は、結合対(例えば、抗原結合部分と抗原、又は受容体とそのリガンド)のメンバー間の1:1相互作用を反映する固有の結合アフィニティを指す。分子Xのその結合対Yに対するアフィニティは、一般的に、解離定数(K)によって表すことができ、脱離速度定数と解離速度定数(それぞれkoff及びkon)の比である。したがって、速度定数の比率が同じである限り、等価なアフィニティが、異なる速度定数を含む場合がある。アフィニティは、本明細書に記載するものを含め、当該技術分野で公知の十分に確立された方法によって測定することができる。アフィニティを測定する特定の方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)である。
【0051】
IL-2受容体の種々の形態についての変異体又は野生型のIL-2ポリペプチドのアフィニティは、WO 2012/107417号に記載する方法に従って、表面プラズモン共鳴(SPR)によって、BIAcore装置(GE Healthcare)などの標準的な装置と、組換え発現によって得られ得るような受容体サブユニットとを用い、決定することができる(例えば、Shanafelt et al.、Nature Biotechnol 18、1197-1202(2000)を参照)。又は、IL-2受容体の異なる形態に対するIL-2変異体の結合アフィニティは、1つの又は他のこのような形態の受容体を発現することが知られている細胞株を用いて評価されてもよい。結合アフィニティを測定するための具体的な実例及び例示的な実施形態を、本明細書で以下に記載する。
【0052】
「制御性T細胞」又は「Treg細胞とは、他のT細胞の応答を抑制し得る特殊な種類のCD4T細胞を意味する。Treg細胞は、IL-2受容体(CD25)のα-サブユニット及び転写因子フォークヘッドボックスP3(FOXP3)の発現によって特徴付けられ(Sakaguchi、Annu Rev Immunol 22、531-62(2004))、腫瘍によって発現するものを含め、抗原に対する末梢自己耐性の導入及び維持に重要な役割を果たす。Treg細胞は、その機能及び成長、その抑制特徴の誘発のために、IL-2を必要とする。
【0053】
本明細書で使用される場合、「エフェクター細胞」との用語は、IL-2の細胞毒性効果を媒介するリンパ球の集合を指す。エフェクター細胞としては、エフェクターT細胞、例えば、CD8細胞傷害性T細胞、NK細胞、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞及びマクロファージ/単球が挙げられる。
【0054】
本明細書で使用される場合、「PD1」、「ヒトPD1」、「PD-1」又は「ヒトPD-1」(プログラムされた細胞死タンパク質1、又はプログラムされた死1(Programmed Death 1)としても知られる)は、ヒトタンパク質PD1(配列番号33、シグナル配列を含まないタンパク質)/(配列番号34、シグナル配列を含むタンパク質)を指す。UniProtエントリー番号Q15116(バージョン156)も参照。本明細書で使用される場合、「PD-1に結合する(binding to PD-1)」、「PD-1に特異的に結合する」、「PD-1に結合する(that binds to PD-1)」又は抗体(又は抗原結合部分)又は「抗PD-1抗体」は、抗体が、PD-1を標的とする際に診断及び/又は治療薬剤として有用であるように十分なアフィニティで、PD-1に、特に、細胞表面で発現するPD-1ポリペプチドに結合可能な抗体(又は抗原結合部分)を指す。一実施形態では、無関係な非PD-1タンパク質に対する抗PD-1抗体の結合度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)又はフローサイトメトリー(FACS)によって、又はBiacore(登録商標)システムなどのバイオセンサシステムを用いた表面プラズモン共鳴アッセイによって測定する場合、PD-1に対する抗体の結合の約10%未満である。特定の実施形態では、PD-1に結合する抗体(又は抗原結合部分)は、ヒトPD-1に対する結合に関する結合アフィニティのKD値が、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)である。一実施形態では、結合アフィニティのKD値は、ヒトPD-1の細胞外ドメイン(ECD)(PD-1-ECD、配列番号35を参照)を抗原として用いた表面プラズモン共鳴アッセイで決定される。
【0055】
本明細書で使用される場合、「Tim-3」、「ヒトTim-3」、「TIM3」又は「ヒトTIM3」(「T細胞 疫グロブリン及びムチンドメインを含む分子3」としても知られる)との用語は、ヒトタンパク質Tim-3(配列番号36、シグナル配列を含まないタンパク質)/(配列番号37、シグナル配列を含むタンパク質)と呼ばれる。UniProtエントリー番号Q8TDQ0(バージョン123)も参照。本明細書で使用される場合、「Tim-3に結合する(binding to Tim-3)」、「Tim-3に特異的に結合する」、「Tim-3に結合する(that binds to Tim-3)」抗体(又は抗原結合ドメイン)又は「抗Tim-3抗体」は、抗体が、Tim-3を標的とする際に診断及び/又は治療薬剤として有用であるように十分なアフィニティで、Tim-3に、特に、細胞表面で発現するTim-3ポリペプチドに結合可能な抗体(又は抗原結合ドメイン)を指す。一実施形態では、無関係な非Tim-3タンパク質に対する抗Tim-3抗体の結合度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)又はフローサイトメトリー(FACS)によって、又はBiacore(登録商標)システムなどのバイオセンサシステムを用いた表面プラズモン共鳴アッセイによって測定する場合、Tim-3に対する抗体の結合の約10%未満である。特定の実施形態では、Tim-3に結合する抗体(又は抗原結合部分)は、ヒトTim-3に対する結合に関する結合アフィニティのKD値が、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)である。一実施形態では、結合アフィニティのKD値は、ヒトTim-3の細胞外ドメイン(ECD)(Tim-3-ECD、配列番号38を参照)を抗原として用いた表面プラズモン共鳴アッセイで決定される。
【0056】
「特異的に結合する」とは、その結合が抗原選択性であり、望ましくない相互作用又は非特異的な相互作用とは判別することができることを意味する。抗体が特定の抗原(例えば、PD-1)に結合する能力は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)又は当該技術分野で知られた他の技術、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)技術(例えば、BIAcore装置で分析される)(Liljeblad et al.、Glyco J 17、323-329(2000))、及び従来の結合アッセイ(Heeley、Endocr Res 28、217-229 (2002))によって測定することができる。一実施形態では、無関係なタンパク質に対する抗体の結合度は、例えばSPRによって測定される抗原に対する抗体の結合の約10%未満である。本明細書に記載の免疫抱合体に含まれる二重特異性抗原結合分子の抗原結合部分は、PD-1又はTim-3に特異的に結合する。
【0057】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」との用語は、アミド結合(ペプチド結合としても知られている)によって線形に接続したモノマー(アミノ酸)で構成される分子を指す。「ポリペプチド」との用語は、2つ以上のアミノ酸の任意の鎖を指し、特定の長さの産物を指さない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、又は2つ以上のアミノ酸の鎖を指すために使用される任意の他の用語は、「ポリペプチド」の定義に含まれ、「ポリペプチド」との用語は、これらのいずれかの用語の代わりに、又は相互に置き換え可能に使用されてもよい。「ポリペプチド」との用語も、限定されないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解による開裂、又は天然に存在しないアミノ酸による改変を含め、ポリペプチドの発現後改変の産物を指すことを意図している。ポリペプチドは、天然の生体源から誘導されてもよく、又は組換え技術によって産生されてもよいが、指定の核酸配列から必ずしも翻訳されなくてもよい。ポリペプチドは、化学合成によるものを含め、任意の様式で作られてもよい。ポリペプチドは、所定の三次元構造を有していてもよいが、ポリペプチドは、このような構造を必ずしも有していなければならないわけではない。所定の三次元構造を有するポリペプチドは、折りたたまれていると呼ばれ、所定の三次元構造を有しておらず、むしろ多数の異なる配座をとり得るポリペプチドは、折りたたまれていないと呼ばれる。
【0058】
「単離された」ポリペプチド又はそのバリアント、又はその誘導体は、その天然の環境にはないポリペプチドを意図している。特定のレベルの精製は、必要とされない。例えば、単離されたポリペプチドは、そのネイティブ環境又は天然環境から取り出すことができる。宿主細胞で発現する組換え産生されたポリペプチド及びタンパク質は、本発明の目的のために単離されたと考えられ、任意の適切な技術によって、分離され、フラクション化され、又は部分的又は実質的に精製される、ネイティブポリペプチド又は組換えポリペプチドである。
【0059】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列の同一性率(%)」は、配列をアラインメントし、最大の配列同一性率を達成するために、必要ならばギャップを導入した後、配列同一性の一部として任意の保存的置換を考慮せずに、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基の割合であると定義される。アミノ酸配列同一性率を決定するためのアラインメントは、当該技術分野の技術の範囲内にある種々の様式で、例えば、公的に入手可能なコンピュータソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST-2、Clustal W、Megalign(DNASTAR)ソフトウェア又はFASTAプログラムパッケージを用いて達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大アラインメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含め、配列をアラインメントするのに適切なパラメータを決定することができる。しかし、本発明の目的のために、アミノ酸配列同一性%の値は、FASTAパッケージバージョン36.3.8cのggsearchプログラム用い、又はその後のBLOSUM50比較マトリックスを用いて作成される。FASTAプログラムパッケージは、W.R.Pearson及びD.J.Lipman(1988)、「Improved Tools for Biological Sequence Analysis」、PNAS 85:2444-2448;W.R.Pearson (1996) 「Effective protein sequence comparison」 Meth.Enzymol. 266:227-258;及びPearson et. al.(1997) Genomics 46:24-36によって記載されており、http://fasta.bioch.virginia.edu/fasta_www2/fasta_down.shtml.から公的に入手可能である。又は、http://fasta.bioch.virginia.edu/fasta_www2/index.cgiでアクセス可能な公的なサーバーを使用し、ggsearch(global protein:protein)プログラム及びデフォルトオプション(BLOSUM50;オープン:-10;ext:-2;Ktup=2)を用い、ローカルではなくグローバルのアラインメントを確実に行い、配列を比較することができる。アミノ酸同一性率は、アウトプットアラインメントヘッダーで与えられる。
【0060】
「ポリヌクレオチド」との用語は、単離された核酸分子又は構築物、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、ウイルス由来のRNA、又はプラスミドDNA(pDNA)を指す。ポリヌクレオチドは、従来のホスホジエステル結合又は従来の結合以外の結合(例えば、アミド結合、例えば、ペプチド核酸(PNA)中に見出されるもの)を含んでいてもよい。「核酸分子」との用語は、任意の1つ以上の核酸セグメント、例えば、ポリヌクレオチド中に存在するDNA又はRNAフラグメントを指す。
【0061】
「単離された」核酸分子又はポリヌクレオチドとは、その天然環境から取り出された、核酸分子、DNA又はRNAを意図している。例えば、ベクターに含まれるポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドは、本発明の目的のために単離されていると考えられる。単離されたポリヌクレオチドの更なる例としては、異種宿主細胞内に維持されるか、又は溶液中で精製される(部分的に、又は実質的に)、組換えポリヌクレオチドが挙げられる。単離されたポリヌクレオチドは、元々そのポリヌクレオチド分子を含む細胞に含まれているが、そのポリヌクレオチド分子が、染色体外に存在するか、又はその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在するポリヌクレオチド分子を含む。単離されたRNA分子は、in vivo又はin vitroでの本発明のRNA転写物、及びポジティブ及びネガティブの鎖形態、二本鎖形態を含む。本発明に係る単離されたポリヌクレオチド又は核酸は、更に、合成によって作られるこのような分子を含む。これに加え、ポリヌクレオチド又は核酸は、プロモーター、リボソーム結合部位、又は転写ターミネーターなどの制御要素であってもよく、又はこれらの制御要素を含んでいてもよい。
【0062】
「[例えば、本発明の免疫抱合体]をコードする単離されたポリヌクレオチド(又は核酸)」は、抗体重鎖及び軽鎖及び/又はIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)をコードする1つ以上のポリヌクレオチド分子を指し、単一のベクター又は別個のベクターにおいて、このような核酸分子が宿主細胞の1つ以上の位置に存在するこのようなポリヌクレオチド分子を含む。
【0063】
「発現カセット」との用語は、組換えによって、又は合成によって作られるポリヌクレオチドを指し、標的細胞内の特定の核酸の転写が可能な特定の一連の核酸要素を含む。組換え発現カセットは、プラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、プラスチドDNA、ウイルス又は核酸フラグメントに組み込むことができる。典型的には、発現ベクターの組換え発現カセット部分は、配列の中でも特に、転写される核酸配列とプロモーターとを含む。特定の実施形態では、発現カセットは、本発明の免疫抱合体をコードするポリヌクレオチド配列又はそのフラグメントを含む。
【0064】
「ベクター」又は「発現ベクター」との用語は、細胞に作動可能に会合する特定の遺伝子の発現を導入し、指令するために使用されるDNA分子を指す。この用語は、自己複製する核酸構造としてのベクター、及び導入される宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを含む。本発明の発現ベクターは、発現カセットを含む。発現ベクターによって、安定なmRNAを大量に転写することができる。発現ベクターが細胞内に入ると、遺伝子によってコードされるリボ核酸分子又はタンパク質は、細胞内転写及び/又は翻訳機構によって産生される。一実施形態では、本発明の発現ベクターは、本発明の免疫抱合体をコードするポリヌクレオチド配列又はそのフラグメントを含む発現カセットを含む。
【0065】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養物」との用語は、相互に置き換え可能に使用され、外因性核酸が導入された細胞を指し、かかる細胞の子孫を含む。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換された細胞」を含み、これらは、継代数にかかわらず、初代の形質転換された細胞と、初代の形質転換された細胞から誘導された子孫を含む。子孫は、親細胞の核酸含有量と完全に同一でなくてもよいが、変異を含んでいてもよい。元々の形質転換された細胞についてスクリーニングされるか、又は選択されるのと同じ機能又は生体活性を有する変異体子孫が本発明に含まれる。宿主細胞は、本発明の免疫抱合体を生成するために使用可能な任意の種類の細胞系である。宿主細胞としては、培養細胞、例えば、哺乳動物培養細胞、例えば、ほんの数例を挙げると、HEK細胞、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞又はハイブリドーマ細胞、酵母細胞、昆虫細胞及び植物細胞が挙げられるが、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物又は培養植物又は動物組織に含まれる細胞も含まれる。
【0066】
本明細書の「抗体」との用語は、最も広い意味で使用され、種々の抗体構造を包含し、限定されないが、所望な抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体フラグメントを含む。
【0067】
本明細書で使用される場合、「抗原結合分子」との用語は、最も広い意味で、抗原決定基に特異的に結合する分子を指す。抗原結合分子の例は、免疫グロブリン及びその誘導体(例えばフラグメント)である。
【0068】
「二重特異性」との用語は、抗原結合分子が、少なくとも2つの別個の抗原決定基に特異的に結合することができることを意味する。典型的には、二重特異性抗原結合分子は、2つの抗原結合部位を含み、それぞれが異なる抗原決定基に対して特異的である。特定の実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、2つの抗原決定基(特に、2つの別個の細胞で発現する2つの抗原決定基)に同時に結合することができる。
【0069】
「価数」との用語は、本明細書で使用される場合、抗原結合分子内の特定数の抗原結合部位の存在を示す。この場合、「抗原に対する一価の結合」との用語は、抗原結合分子内の抗原に特異的な1つ(及び1つを超えない)抗原結合部位の存在を示す。
【0070】
「抗原結合部位」は、抗原との相互作用を与える抗原結合分子の部位(すなわち、1つ以上のアミノ酸残基)を指す。例えば、抗体の抗原結合部位は、相補性決定領域(CDR)からのアミノ酸残基を含む。ネイティブ免疫グロブリン分子は、典型的には、2つの抗原結合部位を含み、Fab分子は、典型的には、1つの抗原結合部位を有する。
【0071】
本明細書で使用される場合、「抗原結合部分」との用語は、抗原決定基に特異的に結合するポリペプチド分子を指す。一実施形態では、抗原結合部分は、標的部位に、例えば、抗原決定基を有する特定の種類の腫瘍細胞に接続する部分(例えば、IL-2ポリペプチド)に指向することができる。抗原結合部分は、本明細書に更に定義される抗体及びそのフラグメントを含む。特定の抗原結合部分は、抗体重鎖可変領域と抗体軽鎖可変領域とを含む、抗体の抗原結合ドメインを含む。特定の実施形態では、抗原結合部分は、本明細書で更に定義され、当該技術分野で知られているような抗体定常領域を含んでいてもよい。有用な重鎖定常領域は、α、δ、ε、γ又はμの5種類のアイソタイプのいずれかを含む。有用な軽鎖定常領域は、κ及びλの2つのアイソタイプのいずれかを含む。
【0072】
本明細書で使用される場合、「抗原決定基」との用語は、「抗原」及び「エピトープ」と同義であり、抗原結合部分-抗原複合体を形成する、抗原結合部分が結合するポリペプチド高分子上の部位(例えば、アミノ酸の連続伸長部又は異なる領域の非連続アミノ酸から構成される配座構成)を指す。有用な抗原決定基は、例えば、腫瘍細胞表面に、ウイルス感染した細胞表面に、他の疾患細胞表面に、免疫細胞表面に、血清中に遊離状態で、及び/又は細胞外マトリックス(ECM)内に見出されてもよい。
【0073】
「モノクローナル抗体」との用語は、本明細書で使用される場合、実質的に均一な抗体の集合から得られる抗体を指す。すなわち、集合に含まれる個々の抗体が、同一であり、及び/又は同じエピトープに結合するが、但し、例えば、天然に存在する変異又はモノクローナル抗体製剤の製造中に生じる変異を含む、可能なバリアント抗体は除く。このようなバリアントは、一般的に、少量存在する。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤のそれぞれのモノクローナル抗体は、1つの抗原上の単一の決定基に対して指向する。したがって、修飾詞「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集合から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするように構築されない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、限定されないが、ハイブリドーマ方法、組換えDNA方法、ファージディスプレイ方法、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全て又は一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法、本明細書に記載するモノクローナル抗体を作るためのこのような方法及び他の例示的な方法を含め、種々の技術によって作られてもよい。
【0074】
「単離された」抗体は、その天然環境の構成要素から分離された(すなわち、その天然環境にはない)ものである。特定のレベルの精製は、必要とされない。例えば、単離された抗体は、そのネイティブ環境又は天然環境から取り出すことができる。宿主細胞で発現する組換え産生された抗体は、本発明の目的のために単離されたと考えられ、 は、任意の適切な技術によって、分離され、フラクション化され、又は部分的又は実質的に精製される、ネイティブ抗体又は組換え抗体である。このように、本発明の免疫抱合体は、単離される。いくつかの実施形態では、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー(例えば、イオン交換又は逆相HPLC)方法によって決定される場合、純度が95%より大きく、又は99%より大きくなるまで精製される。抗体純度の評価のための方法の総説については、例えば、Flatman et al.、J.Chromatogr.B848:79-87(2007)を参照。
【0075】
「全長抗体」、「インタクト抗体」及び「全抗体」との用語は、ネイティブ抗体構造に実質的に類似した構造を有する抗体を指すために、本明細書で相互に置き換え可能に用いられる。
【0076】
「抗体フラグメント」は、インタクト抗体が結合する抗原に結合するインタクト抗体の一部を含むインタクト抗体以外の分子を指す。抗体フラグメントの例としては、限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、ダイアボディ、直鎖抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFv)、及びシングルドメイン抗体が挙げられる。特定の抗体フラグメントの総説としては、Holliger and Hudson、Nature Biotechnology 23:1126-1136(2005)を参照。scFvフラグメントの総説としては、例えば、Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照。また、WO 93/16185号及び米国特許第5,571,894号及び第5,587,458号を参照。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、in vivoでの半減期が長くなったFab及びF(ab’)フラグメントの説明については、米国特許第5,869,046号を参照。ダイアボディは、二価又は二重特異性であってもよい、2つの抗原結合部位を有する抗体フラグメントである。例えば、EP 404,097号、WO 1993/01161号、Hudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003)及びHollinger et al.,Proc Natl Acad Sci USA 90,6444-6448(1993)を参照。トリアボディ及びテトラボディも、Hudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003)に記載される。シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全て又は一部又は軽鎖可変ドメインの全て又は一部を含む抗体フラグメントである。特定の実施形態では、シングルドメイン抗体は、ヒトシングルドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA。例えば、米国特許第6,248,516 B1号を参照)。抗体フラグメントは、限定されないが、本明細書に記載されるように、インタクト抗体のタンパク質分解による消化、及び組換え宿主細胞(例えば、大腸菌又はファージ)による産生を含め、種々の技術によって作られてもよい。
【0077】
「免疫グロブリン分子」との用語は、天然に存在する抗体の構造を有するタンパク質を指す。例えば、IgGクラスの免疫グロブリンは、約150,000ダルトンのヘテロテトラマー糖タンパク質であり、ジスルフィド結合した2つの軽鎖と2つの重鎖から構成される。N末端からC末端まで、それぞれの重鎖は、可変ドメイン(VH)(可変重鎖ドメイン又は重鎖可変領域とも呼ばれる)と、その後に3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)(重鎖定常領域とも呼ばれる)を有する。同様に、N末端からC末端まで、それぞれの軽鎖は、可変ドメイン(VL(可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変領域とも呼ばれる)と、その後に定常軽鎖(CL)ドメイン(軽鎖定常領域とも呼ばれる)を有する。免疫グロブリンの重鎖は、α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG)又はμ(IgM)と呼ばれる5種類の1つに割り当てられてもよく、このいくつかは、例えば、γ(IgG)、γ(IgG)、γ(IgG)、γ(IgG)、α(IgA)及びα(IgA)などの更なるサブタイプに分けられてもよい。免疫グロブリンの軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2種類の1つに割り当てられてもよい。免疫グロブリンは、免疫グロブリンヒンジ領域を介して接続する、2つのFab分子とFcドメインとからなる。
【0078】
「Fab分子」は、免疫グロブリンの重鎖(「Fab重鎖」)のVH及びCH1ドメインと、免疫グロブリンの軽鎖(「Fab軽鎖」)のVL及びCLドメインからなるタンパク質を指す。
【0079】
「クロスオーバー」Fab分子(「クロスfab」とも呼ばれる)は、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメイン及び定常ドメインが交換された(すなわち、互いに置き換えられた)Fab分子を意味する。すなわち、クロスオーバーFab分子は、軽鎖可変ドメインVL及び重鎖定常ドメイン1 CH1(VL-CH1、N末端からC末端方向に)で構成されるペプチド鎖、重鎖可変ドメインVH及び軽鎖定常ドメインCL(VH-CL、N末端からC末端方向に)で構成されるペプチド鎖を含む。明確性のために、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインが交換されているクロスオーバーFab分子において、重鎖定常ドメイン1 CH1を含むペプチド鎖は、本明細書では、(クロスオーバー)Fab分子の「重鎖」と呼ばれる。逆に、Fab軽鎖及びFab重鎖の定常ドメインが交換されているクロスオーバーFab分子において、重鎖可変ドメインVHを含むペプチド鎖は、本明細書では、(クロスオーバー)Fab分子の「重鎖」と呼ばれる。
【0080】
これとは対照的に、「従来の」Fab分子は、その天然のフォーマットでのFab分子を意味し、すなわち、重鎖可変ドメイン及び定常ドメインで構成される重鎖(VH-CH1、N末端からC末端方向に)と、軽鎖可変ドメイン及び定常ドメインで構成される軽鎖(VL-CL、N末端からC末端方向に)とを含む。
【0081】
「抗原結合ドメイン」との用語は、ある抗原の一部又は全てに特異的に結合し、ある抗原の一部又は全てに対して相補的な抗体の一部を指す。抗原結合ドメインは、例えば、1つ以上の抗体可変ドメイン(抗体可変領域とも呼ばれる)によって与えられてもよい。特に、抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)と、抗体重鎖可変ドメイン(VH)とを含む。
【0082】
「可変領域」又は「可変ドメイン」との用語は、抗原に対する抗体の結合に関与する抗体重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然の抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は、一般的に、同様の構造を有し、それぞれのドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と、3つの超可変領域(HVR)とを含む。例えば、Kindt et al.,Kuby Immunology,第6版、W.H.Freeman and Co.,91ページ(2007)を参照。抗原結合特異性を与えるために、単一のVH又はVLドメインで十分な場合がある。可変領域配列と組み合わせて本明細書で使用される場合、「Kabat番号付け」は、Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed. Public Health Service,National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)によって記載される番号付けシステムを指す。
【0083】
本明細書で使用される場合、重鎖及び軽鎖の全ての定常領域及びドメインのアミノ酸位置は、Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD (1991)に記載されるKabat番号付けシステムに従って番号付けされ、本明細書では「Kabatによる番号付け」又は「Kabat番号付け」と呼ばれる。特定的には、Kabat番号付けシステム(Kabat、et al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th ed.、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991)の647-660ページを参照)を、κ及びλアイソタイプの軽鎖定常ドメインCLに使用し、Kabat EUインデックス番号付けシステム(661-723ページを参照)を、重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2及びCH3)に使用し、この場合には、「Kabat EUインデックスによる番号付け」と言及することによって更に明確にしている。
【0084】
「超可変領域」又は「HVR」との用語は、本明細書で使用される場合、配列において超可変性であり(「相補性決定領域」又は「CDR」)、及び/又は構造的に所定のループ(「超可変ループ」)を形成し、及び/又は抗原に接触する残基(「抗原接触」)を含有する抗体可変ドメインのそれぞれの領域を指す。一般的に、抗体は、6個のHVRを含み、VHに3個(H1、H2、H3)、VLに3個(L1、L2、L3)含む。本発明の例示的なHVRとしては、以下のものが挙げられる。
【0085】
(a) アミノ酸残基26-32(L1)、50-52(L2)、91-96(L3)、26-32(H1)、53-55(H2)及び96-101(H3)で生じる超可変ループ(Chothia and Lesk、J.Mol.Biol.196:901-917(1987));
(b) アミノ酸残基24-34(L1)、50-56(L2)、89-97(L3)、31-35b(H1)、50-65(H2)及び95-102(H3)に存在するCDR(Kabat et al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed. Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991));
(c) アミノ酸残基27c-36(L1)、46-55(L2)、89-96(L3)、30-35b(H1)、47-58(H2)及び93-101(H3)で生じる抗原接触(MacCallum et al.J. Mol. Biol.262:732-745(1996));並びに
(d) (a)、(b)及び/又は(c)の組み合わせ、HVRアミノ酸残基46-56(L2)、47-56(L2)、48-56(L2)、49-56(L2)、26-35(H1)、26-35b(H1)、49-65(H2)、93-102(H3)及び94-102(H3)を含む。
【0086】
特に示されない限り、HVR残基及び可変ドメイン中の他の残基(例えば、FR残基)は、Kabat et al.(前出)に従って本明細書では番号付けされる。
【0087】
「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的に、FR1、FR2、FR3及びFR4の4つのFRドメインからなる。したがって、HVR及びFR配列は、一般的に、VH(又はVL)中で以下の順位で現れる。FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0088】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基と、ヒトFR由来のアミノ酸残基とを含むキメラ抗体を指す。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、HVR(例えばCDR)の全て又は実質的に全てが、非ヒト抗体に対応し、FRの全て又は実質的に全てが、ヒト抗体に対応する。このような可変ドメインは、本明細書では「ヒト化可変領域」と呼ばれる。ヒト化抗体は、場合により、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体のいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性又はアフィニティを回復するか、又は向上させるために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基に由来する抗体)由来の対応する残基で置換されている。ある抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を受けた抗体を指す。本発明に包含される「ヒト化抗体」の他の形態は、特に、C1q結合及び/又はFc受容体(FcR)結合という観点で、本発明に係る特性を作り出すために、定常領域が、元々の抗体の定常領域から更に改変されるか、又は変更されているものである。
【0089】
「ヒト抗体」は、ヒト又はヒト細胞によって産生されるか、又はヒト抗体のレパートリー又は他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト源から誘導される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するものである。このヒト抗体の定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特定的に除外する。特定の実施形態では、ヒト抗体は、非ヒトトランスジェニック哺乳動物、例えば、マウス、ラット又はウサギに由来する。特定の実施形態では、ヒト抗体は、ハイブリドーマ細胞株に由来する。ヒト抗体ライブラリから単離された抗体又は抗体フラグメントも、本発明のヒト抗体又はヒト抗体フラグメントであると考えられる。
【0090】
抗体又は免疫グロブリンの「クラス」は、その重鎖が保有する定常ドメイン又は定常領域の種類を指す。5種類の主要なクラスの抗体IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMが存在し、これらのいくつかは、更に、サブクラス(アイソタイプ)IgG、IgG、IgG、IgG、IgA及びIgAに分けられてもよい。免疫グロブリンの異なる種類に対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。
【0091】
「Fcドメイン」又は「Fc領域」との用語は、本明細書において、定常領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、ネイティブ配列Fc領域とバリアントFc領域を含む。IgG重鎖のFc領域の境界は、わずかに変動してもよいが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常は、Cys226から、又はPro230から、重鎖のカルボキシ末端まで延びると定義される。しかし、宿主細胞によって産生される抗体は、重鎖のC末端から1つ以上、特に1つ又は2つのアミノ酸の翻訳後開裂を受けてもよい。したがって、全長重鎖をコードする特定の核酸分子の発現によって、宿主細胞によって産生する抗体は、全長重鎖を含んでいてもよく、又は全長重鎖の開裂したバリアントを含んでいてもよい(本明細書で「開裂下バリアント重鎖」とも呼ばれる)。これは、重鎖の最終的な2つのC末端アミノ酸がグリシン(G446)及びリシン(K447、Kabat EUインデックスによる番号付け)である場合であってもよい。したがって、Fc領域のC末端リシン(Lys447)、又はC末端グリシン(Gly446)及びリシン(K447)が存在してもよく、又は存在していなくてもよい。Fcドメイン(又は本明細書に定義されるFcドメインのサブユニット)を含む重鎖のアミノ酸配列は、特に示されていない場合には、本明細書では、C末端グリシン-リシンジペプチドを含まずに示される。本発明の一実施形態では、本発明に係る免疫抱合体に含まれる本明細書で特定されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖は、更なるC末端グリシン-リシンジペプチド(G446及びK447、KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む。本発明の一実施形態では、本発明に係る免疫抱合体に含まれる本明細書で特定されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖は、更なるC末端グリシン残基(G446、KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む。本発明の組成物、例えば、本明細書に記載の医薬組成物は、本発明の免疫抱合体の集合を含む。免疫抱合体の集合は、全長長鎖を含む分子と、開裂したバリアント重鎖を含む分子とを含んでいてもよい。免疫抱合体の集合は、全長重鎖を有する分子と、開裂したバリアント重鎖を有する分子との混合物からなっていてもよく、免疫抱合体の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%は、開裂したバリアント重鎖を有する。本発明の一実施形態では、本発明の免疫抱合体の集合を含む組成物は、更なるC末端グリシン-リシンジペプチド(G446及びK447、KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む、本明細書で特定されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖を含む免疫抱合体を含む。本発明の一実施形態では、本発明の免疫抱合体の集合を含む組成物は、更なるC末端グリシン残基(G446、KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む、本明細書で特定されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖を含む免疫抱合体を含む。本発明の一実施形態では、このような組成物は、本明細書で特定されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖を含む分子、更なるC末端グリシン残基(G446、KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む本明細書で特定されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖を含む分子、更なるC末端グリシン-リシンジペプチド(G446及びK447、KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む本明細書で特定されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖を含む分子で構成される免疫抱合体の集合を含む。本明細書で特に明記されない限り、Fc領域又は定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed. Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991(上も参照)に記載されるような、EU番号付けシステム(EUインデックスとも呼ばれる)に従う。Fcドメインの「サブユニット」は、本明細書で使用される場合、ダイマーFcドメインを形成する2つのポリペプチドの1つ(すなわち、安定な自己会合が可能な、免疫グロブリン重鎖のC末端定常領域を含むポリペプチド)を指す。例えば、IgG Fcドメインのサブユニットは、IgG CH2及びIgG CH3の定常ドメインを含む。
【0092】
「Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する改変」は、ホモダイマーを形成するためのFcドメインサブユニットを含むペプチドと同一のポリペプチドとの会合を減らすか又は防ぐ、ペプチド骨格の操作又はFcドメインサブユニットの翻訳後改変である。会合を促進する改変は、本明細書で使用される場合、特に、会合することが望ましい2つのFcドメインサブユニット(すなわち、Fcドメインの第1及び第2のサブユニット)それぞれに対し、別個の改変を含み、改変は、2つのFcドメインサブユニットの会合を促進するように、互いに相補性である。例えば、会合を促進する改変は、それぞれ立体的又は静電的に望ましい会合を行うように、Fcドメインサブユニットの片方又は両方の構造又は電荷を変えてもよい。したがって、(ヘテロ)二量化は、第1のFcドメインサブユニットを含むポリペプチドと、第2のFcドメインサブユニットを含むポリペプチドとの間で起こり、それぞれのサブユニットに融合する更なる構成要素(例えば、抗原結合部分)が同じではないという意味で、同一ではない場合がある。いくつかの実施形態では、会合を促進する改変は、Fcドメイン内のアミノ酸変異、特定的には、アミノ酸置換を含む。特定の実施形態では、会合を促進する改変は、Fcドメインの2つのサブユニットそれぞれに、別個のアミノ酸変異、特定的にはアミノ酸置換を含む。
【0093】
「エフェクター機能」との用語は、抗体に言及しつつ使用される場合、抗体のFc領域に帰属可能な生体活性を指し、抗体アイソタイプによって変わる。抗体エフェクター機能の例としては、以下のものが挙げられる。C1q結合及び補体依存性細胞障害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞障害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、サイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性抗原取り込み、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)のダウンレギュレーション、及びB細胞活性化。
【0094】
抗体依存性細胞傷害(ADCC)は、免疫エフェクター細胞による、抗体で被覆された標的細胞の溶解を引き起こす免疫機構である。標的細胞は、Fc領域を含む抗体又はその誘導体が、一般的にFc領域に対してN末端であるタンパク質部分を介して、特異的に結合する細胞である。本明細書で使用される場合、「ADCCの低下」との用語は、所与の時間で、標的細胞の周囲の培地中、所与の抗体濃度で溶解する標的細胞の数の減少、上に定義されるADCCの機構によって、及び/又は所与の時間に、ADCCの機構によって所与の数の標的細胞の溶解を達成するのに必要な、標的細胞の周囲にある培地中の抗体濃度の増加として定義される。ADCCの低下は、同じ標準的な産生、精製、配合及び保存方法を用い(当業者には既知)、同じ種類の宿主細胞によって作られるが、操作されない同じ抗体が媒介するADCCに対するものである。例えば、そのFcドメインを含む抗体によって媒介されるADCCの低下である、ADCCを低下させるアミノ酸置換は、Fcドメイン中にこのアミノ酸置換を含まない同じ抗体によって媒介されるADCCに対するものである。ADCCを測定するのに適したアッセイは、当該技術分野で周知である(例えば、PCT出願公開第WO 2006/082515号又はPCT出願公開第WO 2012/130831号を参照)。
【0095】
「活性化Fc受容体」は、抗体のFcドメインによる係合の後に、エフェクター機能を発揮するために受容体を含む細胞を刺激するシグナル伝達事象を誘発するFc受容体である。ヒト活性化Fc受容体としては、FcγRIIIa(CD16a)、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32)及びFcαRI(CD89)が挙げられる。
【0096】
本明細書で使用される場合、「操作する、操作される、操作すること」との用語は、天然に存在するか、又は組換えポリペプチド又はこれらのフラグメントのペプチド骨格の任意の操作又は翻訳後改変を含むと考えられる。操作とは、アミノ酸配列の改変、グリコシル化パターンの改変、又は個々のアミノ酸の側鎖基の改変、及びこれらの手法の組み合わせを含む。
【0097】
「結合の低下」、例えば、Fc受容体またはCD25に対する結合の低下は、例えばSPRによって測定される場合、それぞれの相互作用についてのアフィニティの低下を指す。明確性のために、この用語は、アフィニティがゼロまで低下する(又は分析方法の検出限界未満になる)こと、すなわち、相互作用が完全に失われることも含む。逆に、「結合の増加」は、それぞれの相互作用に対する結合アフィニティの増加を指す。
【0098】
本明細書で使用される場合、「免疫抱合体」との用語は、少なくとも1つのIL-2分子と少なくとも1つの抗体とを含むポリペプチド分子を指す。IL-2分子は、種々の相互作用によって、本明細書に記載の種々の構成で、抗体に接続することができる。特定的な実施形態では、IL-2分子は、ペプチドリンカーを介して抗体に融合する。本発明に係る特定の免疫抱合体は、1つ以上のリンカー配列によって接続する、1つのIL-2分子と、抗体(例えば二重特異性抗原結合分子)から本質的になる。
【0099】
「融合する」とは、構成要素(例えば、抗体及びIL-2分子)が、ペプチド結合によって直接的に、又は1つ以上のペプチドリンカーを介して連結することを意味する。
【0100】
本明細書で使用される場合、Fcドメインサブユニットなどに関する「第1」及び「第2」の用語は、それぞれの種類の部分が1つより多く存在する場合に、区別するのが簡便なように使用される。これらの用語の使用は、そのように明示的に示されていない限り、免疫抱合体の特定の順序又は向きを与えることを意図していない。
【0101】
ある薬剤の「有効量」は、その薬剤が投与される細胞又は組織において、ある生理学的変化を引き起こすのに必要な量を指す。
【0102】
ある薬剤(例えば、医薬組成物)の「治療有効量」は、所望な治療結果又は予防結果を達成するのに有効な量、必要な投薬量及び必要な期間を指す。ある薬剤の治療有効量は、例えば、ある疾患の副作用をなくし、減らし、遅らせ、最低限にし、又は防ぐ。
【0103】
「個体」又は「被験体」は、哺乳動物である。哺乳動物としては、限定されないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、げっ歯類(例えば、マウス及びラット)が挙げられる。特に、個体又は被験体は、ヒトである。
【0104】
「医薬組成物」との用語は、その中に含まれる有効成分の生体活性を有効にし、組成物が投与される被験体に対して受け入れられないほど毒性である更なる構成要素を含まないような形態での製剤を指す。
【0105】
「医薬的に許容される担体」は、医薬組成物中の成分であって、有効成分以外であり、被験体にとって毒性ではない成分を指す。医薬的に許容される担体としては、限定されないが、バッファー、賦形剤、安定化剤又は防腐剤が挙げられる。
【0106】
本明細書で使用される場合、「処置」(及びその文法的な変形語、例えば、「処置する」又は「処置すること」)は、処置される個体において疾患の本来の経過を変える試みにおける臨床的介入を指し、予防のために、又は臨床病理の経過の間に行うことができる。所望な処置効果としては、限定されないが、疾患の発生又は再発の予防、症状の軽減、疾患の任意の直接的又は間接的な病的状態、転移の予防、疾患の進行率を下げる、疾患状態の軽減又は緩和、回復又は改良された予後が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の免疫抱合体を使用し、疾患の発生を遅らせるか、又は疾患の進行を遅らせる。
【発明を実施するための形態】
【0107】
変異体IL-2ポリペプチド
本発明に係る免疫抱合体は、免疫療法にとって有利な特性を有する変異体IL-2ポリペプチドを含む。特に、毒性に寄与するが、IL-2の有効性にとって必須ではないIL-2の薬理学的特性は、変異体IL-2ポリペプチドでは除去される。このような変異体IL-2ポリペプチドは、その全体が本明細書に参考として組み込まれるWO 2012/107417号に詳細に記載される。上述のように、異なる形態のIL-2受容体は、異なるサブユニットからなり、IL-2に対して異なるアフィニティを示す。中程度アフィニティIL-2受容体は、β及びγ受容体サブユニットからなり、休止状態のエフェクター細胞で発現し、IL-2シグナル伝達にとって十分である。高アフィニティIL-2受容体は、受容体のα-サブユニットを更に含み、制御性T(Treg)細胞及び活性化されたエフェクター細胞で主に発現し、IL-2による係合によって、それぞれ、Treg細胞が介在する免疫抑制又は活性化誘導細胞死(AICD)を促進することができる。したがって、理論によって束縛されることを望まないが、IL-2受容体のα-サブユニットに対するIL-2のアフィニティが低下するか、又はなくなると、制御性T細胞によるエフェクター細胞機能のIL-2によって誘発されるダウンレギュレーションと、AICDプロセスによる腫瘍耐性の進行が減るはずである。一方、中程度アフィニティIL-2受容体に対するアフィニティの維持は、IL-2によるNK細胞及びT細胞などのエフェクター細胞の増殖及び活性化の誘発を保存すべきである。
【0108】
本発明に係る免疫抱合体に含まれる変異体インターロイキン-2(IL-2)ポリペプチドは、それぞれの野生型IL-2ポリペプチドと比較して、IL-2受容体のα-サブユニットに対する変異体IL-2ポリペプチドのアフィニティをなくすか、又は減らし、中程度アフィニティIL-2受容体に対する変異体IL-2ポリペプチドのアフィニティを保存する、少なくとも1つのアミノ酸変異を含む。
【0109】
CD25に対するアフィニティが低下したヒトIL-2(hIL-2)の変異体は、例えば、アミノ酸位置35、38、42、43、45又は72、又はこれらの組み合わせ(配列番号22のヒトIL-2配列に対する番号付け)でのアミノ酸置換によって作られてもよい。例示的なアミノ酸置換としては、K35E、K35A、R38A、R38E、R38N、R38F、R38S、R38L、R38G、R38Y、R38W、F42L、F42A、F42G、F42S、F42T、F42Q、F42E、F42N、F42D、F42R、F42K、K43E、Y45A、Y45G、Y45S、Y45T、Y45Q、Y45E、Y45N、Y45D、Y45R、Y45K、L72G、L72A、L72S、L72T、L72Q、L72E、L72N、L72D、L72R及びL72Kが挙げられる。本発明の免疫抱合体で有用な特定のIL-2変異体は、ヒトIL-2の残基42、45又は72に対応するアミノ酸位置、又はこれらの組み合わせにアミノ酸変異を含む。一実施形態では、前記アミノ酸変異は、F42A、F42G、F42S、F42T、F42Q、F42E、F42N、F42D、F42R、F42K、Y45A、Y45G、Y45S、Y45T、Y45Q、Y45E、Y45N、Y45D、Y45R、Y45K、L72G、L72A、L72S、L72T、L72Q、L72E、L72N、L72D、L72R及びL72Kの群から選択されるアミノ酸置換であり、より特定的には、F42A、Y45A及びL72Gの群から選択されるアミノ酸置換である。これらの変異体は、中程度アフィニティIL-2受容体と実質的に同様の結合アフィニティを示し、IL-2変異体の野生型形態と比較して、IL-2受容体のα-サブユニット及び高アフィニティIL-2受容体に対するアフィニティがかなり低下している。
【0110】
有用な変異体の他の特徴としては、IL-2受容体を含むT細胞及び/又はNK細胞の増殖を誘発する能力、IL-2受容体を含むT細胞及び/又はNK細胞においてIL-2シグナル伝達を誘発する能力、NK細胞によって二次サイトカインとしてインターフェロン(IFN)-γを生成する能力、末梢血単核細胞(PBMC)による二次サイトカイン(特に、IL-10及びTNF-α)の生成を誘発する能力の低下、制御性T細胞を活性化する能力の低下、T細胞においてアポトーシスを誘発する能力の低下、及びin vivoでの毒性プロフィールの低下が挙げられ得る。
【0111】
本発明に有用な特定の変異体IL-2ポリペプチドは、IL-2受容体のα-サブユニットに対する変異体IL-2ポリペプチドのアフィニティがないか、又は低いが、中程度アフィニティIL-2受容体に対する変異体IL-2ポリペプチドのアフィニティを保存する3アミノ酸変異を含む。一実施形態では、前記3アミノ酸変異は、ヒトIL-2の残基42、45及び72に対応する位置にある。一実施形態では、前記3アミノ酸変異は、アミノ酸置換である。一実施形態では、前記3アミノ酸変異は、F42A、F42G、F42S、F42T、F42Q、F42E、F42N、F42D、F42R、F42K、Y45A、Y45G、Y45S、Y45T、Y45Q、Y45E、Y45N、Y45D、Y45R、Y45K、L72G、L72A、L72S、L72T、L72Q、L72E、L72N、L72D、L72R及びL72Kの群から選択されるアミノ酸置換である。具体的な実施形態では、前記3アミノ酸変異は、アミノ酸置換F42A、Y45A及びL72G(配列番号22のヒトIL-2配列に対する番号付け)である。
【0112】
特定の実施形態では、前記アミノ酸変異は、IL-2受容体のα-サブユニットに対する変異体IL-2ポリペプチドのアフィニティを少なくとも5分の1、特定的には少なくとも10分の1、より特定的には少なくとも25分の1まで下げる。IL-2受容体のα-サブユニットに対する変異体IL-2ポリペプチドのアフィニティを下げる1つより多いアミノ酸変異が存在する実施形態では、これらのアミノ酸変異の組み合わせが、IL-2受容体のα-サブユニットに対する変異体IL-2ポリペプチドのアフィニティを少なくとも30分の1、少なくとも50分の1、又は更に少なくとも100分の1まで下げてもよい。一実施形態では、前記アミノ酸変異、又はアミノ酸変異の組み合わせは、表面プラズモン共鳴によって結合が検出可能ではないように、IL-2受容体のα-サブユニットに対する変異体IL-2ポリペプチドのアフィニティをなくす。
【0113】
中程度アフィニティ受容体に対して実質的に同様に結合すること(すなわち、前記受容体に対する変異体IL-2ポリペプチドのアフィニティの保存)は、IL-2変異体が、中程度アフィニティIL-2受容体に対するIL-2変異体の野生型のアフィニティの約70%より大きなアフィニティを示す場合に達成される。本発明のIL-2変異体は、このようなアフィニティの約80%より大きく、さらには約90%より大きいアフィニティを示してもよい。
【0114】
IL-2のO-グリコシル化をなくすことと組み合わせて、IL-2受容体のα-サブユニットについてのIL-2のアフィニティを下げると、改良された特性を有するIL-2タンパク質が得られる。例えば、O-グリコシル化部位がないと、変異体IL-2ポリペプチドがCHO細胞又はHEK細胞などの哺乳動物細胞で発現するときに、より均一な産物が得られる。
【0115】
したがって、特定の実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、ヒトIL-2の残基3に対応する位置にIL-2のO-グリコシル化部位がない更なるアミノ酸変異を含む。一実施形態では、ヒトIL-2の残基3に対応する位置にあるIL-2のO-グリコシル化部位をなくす更なるアミノ酸変異は、アミノ酸置換である。例示的なアミノ酸置換としては、T3A、T3G、T3Q、T3E、T3N、T3D、T3R、T3K及びT3Pが挙げられる。具体的な実施形態では、前記更なるアミノ酸変異は、アミノ酸置換T3Aである。
【0116】
特定の実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、本質的に、全長IL-2分子である。特定の実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、ヒトIL-2分子である。一実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、変異のない配列番号22を含むIL-2ポリペプチドと比較して、IL-2受容体のα-サブユニットに対する変異体IL-2ポリペプチドのアフィニティをなくすか、又は減らすが、中程度アフィニティIL-2受容体に対する変異体ポリペプチドのアフィニティを保存する少なくとも1つのアミノ酸変異を有する配列番号22の配列を含む。別の実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、変異のない配列番号39を含むIL-2ポリペプチドと比較して、IL-2受容体のα-サブユニットに対する変異体IL-2ポリペプチドのアフィニティをなくすか、又は減らすが、中程度アフィニティIL-2受容体に対する変異体ポリペプチドのアフィニティを保存する少なくとも1つのアミノ酸変異を有する配列番号39の配列を含む。
【0117】
具体的な実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、活性化されたTリンパ球細胞の増殖、活性化されたTリンパ球細胞の分化、細胞傷害性T細胞(CTL)活性、活性化されたB細胞の増加、活性化されたB細胞の分化、ナチュラルキラー(NK)細胞の増殖、NK細胞の分化、活性化されたT細胞又はNK細胞によるサイトカイン分泌、NK/リンパ球活性化キラー(LAK)抗腫瘍細胞毒性からなる群から選択される1つ以上の細胞応答を誘発することができる。
【0118】
一実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、野生型IL-2ポリペプチドと比較して、制御性T細胞におけるIL-2シグナル伝達を誘発する能力が低下している。一実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、野生型IL-2ポリペプチドと比較して、T細胞における活性化誘導細胞死(AICD)をほとんど誘発しない。一実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、野生型IL-2ポリペプチドと比較して、in vivoでの毒性プロフィールが低下している。一実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、野生型IL-2ポリペプチドと比較して、血清半減期が長くなっている。
【0119】
本発明で有用な特定の変異体IL-2ポリペプチドは、ヒトIL-2の残基3、42、45及び72に対応する位置に4つのアミノ酸置換を含む。具体的なアミノ酸置換は、T3A、F42A、Y45A及びL72Gである。WO 2012/107417号に示されるように、前記四重変異体IL-2ポリペプチドは、CD25に対する検出可能な結合を示さず、T細胞においてアポトーシスを誘発する能力の低下、Treg細胞においてIL-2シグナル伝達を誘発する能力の低下、及びin vivoでの毒性プロフィールの低下を示す。しかし、エフェクター細胞においてIL-2シグナル伝達を活性化する能力、エフェクター細胞の増殖を誘発する能力、NK細胞により二次サイトカインとしてIFN-γを生成する能力を保持している。
【0120】
更に、前記変異体IL-2ポリペプチドは、WO 2012/107417号に記載されるように、表面疎水性の低下、良好な安定性及び良好な発現収率などの更に有利な特性を有する。予想できないことだが、前記変異体IL-2ポリペプチドは、野生型IL-2と比較して、血清半減期も長くなっている。
【0121】
本発明で有用なIL-2変異体は、CD25又はグリコシル化部位を有するIL-2の界面を形成するIL-2の領域に変異を有することに加え、これらの領域の外側のアミノ酸配列に1つ以上の変異を有していてもよい。ヒトIL-2におけるこのような更なる変異は、発現又は安定性の増加などの更なる利点を与えてもよい。例えば、位置125のシステインは、セリン、アラニン、トレオニン又はバリンなどの中性アミノ酸と置き換わっていてもよく、米国特許第4,518,584号に記載されるように、それぞれ、C125S IL-2、C125A IL-2、C125T IL-2又はC125V IL-2が得られる。ここに記載されるように、IL-2のN末端アラニン残基を欠失すると、des-A1 C125S又はdes-A1 C125Aなどの変異体が得られ得る。これに代えて、又はこれと組み合わせて、IL-2変異体は、変異を含んでいてもよく、それにより、野生型ヒトIL-2の位置104に通常存在するメチオニンが、アラニンなどの中性アミノ酸と置き換わっている(米国特許第5,206,344号を参照)。得られる変異体、例えば、des-A1 M104A IL-2、des-A1 M104A C125S IL-2、M104A IL-2、M104A C125A IL-2、des-A1 M104A C125A IL-2又はM104A C125S IL-2(これらの変異体及び他の変異体は、米国特許第5,116,943号及びWeiger et al.、Eur J Biochem 180、295-300 (1989)に見出される)を、本発明の特定のIL-2変異と組み合わせて使用してもよい。
【0122】
したがって、特定の実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、ヒトIL-2の残基125に対応する位置に、更なるアミノ酸変異を含む。一実施形態では、前記更なるアミノ酸変異は、アミノ酸置換C125Aである。
【0123】
当業者は、どの更なる変異が、本発明の目的にとって更なる利点を与え得るかを決定することができる。例えば、中程度アフィニティIL-2受容体に対するIL-2のアフィニティを下げるか、又はなくすIL-2配列のアミノ酸変異、例えば、D20T、N88R又はQ126D(例えば、US 2007/0036752号を参照)は、本発明に係る変異体IL-2ポリペプチドに含むことが適切ではない場合があることを理解する。
【0124】
一実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、対応する野生型IL-2配列、例えば、配列番号22のヒトIL-2配列と比較して、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、又は5以下のアミノ酸変異を含む。特定の実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、対応する野生型IL-2配列、例えば、配列番号22のヒトIL-2配列と比較して、5以下のアミノ酸変異を含む。
【0125】
一実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、配列番号23の配列を含む。一実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、配列番号23の配列からなる。
【0126】
免疫抱合体
本明細書に記載の免疫抱合体は、IL-2分子と、二重特異性抗原結合分子とを含む。このような免疫抱合体は、IL-2を例えば腫瘍微小環境に直接的に標的化することによって、IL-2治療の有効性を顕著に高める。本発明によれば、免疫抱合体に含まれる二重特異性抗原結合分子は、全抗体又は免疫グロブリン、又は抗原特異的な結合アフィニティなどの生物学的機能を有するこれらの一部又はバリアントであってもよい。
【0127】
免疫抱合体治療の一般的な利益は、容易に明らかである。例えば、免疫抱合体に含まれる二重特異性抗原結合分子は、腫瘍特異的なエピトープを認識し、腫瘍部位に対し、免疫抱合体分子が標的化される。したがって、高濃度のIL-2を腫瘍微小環境に送達することができ、それによって、未抱合IL-2で必要とされるよりもかなり少ない用量の免疫抱合体を用い、本明細書に述べた種々の免疫エフェクター細胞の活性化及び増殖が引き起こされる。更に、免疫抱合体の形態でIL-2を適用すると、サイトカイン自体を低用量にすることが可能であるため、IL-2の望ましくない副作用の可能性が制限され、免疫抱合体による身体の特定の部位へのIL-2の標的化によっても、全身曝露量が減り、そのため、未抱合IL-2を用いて得られるよりも副作用が小さくなる。加えて、未抱合IL-2と比較して、免疫抱合体の血中半減期が増加することは、免疫抱合体の有効性に寄与する。しかし、IL-2免疫抱合体のこの特徴は、IL-2分子の潜在的な副作用を再び悪化させる場合がある。血流中のIL-2免疫抱合体の血中半減期が、未抱合IL-2と比較して、顕著に長いため、IL-2又は融合タンパク質部分の他の部分が、血管系内に一般的に存在する構成要素を活性化する可能性が高まる。同じ問題を、Fc又はアルブミンなどの別の部分に融合したIL-2を含む他の融合タンパク質にも適用し、血中のIL-2の半減期を長くする。したがって、IL-2の野生型形態と比較して毒性が低い、本明細書及びWO 2012/107417号に記載される変異体IL-2ポリペプチドを含む免疫抱合体は、特に有利である。
【0128】
本明細書で上に記載したように、腫瘍細胞ではなく、免疫エフェクター細胞に対してIL-2を直接的に標的化することは、IL-2免疫療法にとって有利であり得る。
【0129】
したがって、本発明は、本明細書で以下に記載される変異体IL-2ポリペプチドと、PD-1及びTim-3に結合する二重特異性抗原結合分子を提供する。一実施形態では、免疫抱合体は、1つを超えない変異体IL-2ポリペプチドを含む。一実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドと、二重特異性抗原結合分子とが、融合タンパク質を形成し、すなわち、変異体IL-2ポリペプチドは、二重特異性抗原結合分子とペプチド結合を共有する。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、第1及び第2のサブユニットで構成されるFcドメインを含む。具体的な実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、そのアミノ末端アミノ酸で、Fcドメインのサブユニットの1つのカルボキシ末端アミノ酸に、場合によりリンカーペプチドを介して融合する。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、全長抗体である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、免疫グロブリン分子であり、特に、IgGクラス免疫グロブリン分子であり、より特定的には、IgGサブクラス免疫グロブリン分子であり、Fab分子(結合アーム)の1つにおいて、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域(それぞれVH/VL又はCH1/CL)が、互いに交換され/置き換わっている。1つのこのような実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖の1つと、アミノ末端ペプチド結合を共有している。特定の実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗体フラグメントである。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、Fab分子又はscFv分子を含む。一実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、Fab分子を含む。別の実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、scFV分子を含む。本発明の免疫抱合体は、第1及び第2の抗原結合部分を含む。それぞれの抗原結合部分は、独立して、抗体及び抗体フラグメントの種々の形態から選択することができる。例えば、第1の抗原結合部分は、Fab分子であってもよく、第2の抗原結合部分は、scFv分子であってもよい。具体的な実施形態では、前記第1及び前記第2の抗原結合部分はそれぞれscFv分子であるか、又は前記第1及び第2の抗原結合部分はそれぞれ、Fab分子である。特定の実施形態では、前記第1及び第2の抗原結合部分はそれぞれ、Fab分子である。
【0130】
免疫抱合体フォーマット
例示的な免疫抱合体フォーマットは、その全体が本明細書に参考として組み込まれるPCT出願公開第WO 2011/020783号に記載されている。これらの免疫抱合体は、少なくとも2つの抗原結合部分を含む。したがって、一実施形態では、本発明に係る免疫抱合体は、本明細書に記載の変異体IL-2ポリペプチドと、少なくとも第1及び第2の抗原結合部分とを含む。特定の実施形態では、前記第1及び第2の抗原結合部分は、独立して、Fv分子(特に、scFv分子)及びFab分子からなる群から選択される。具体的な実施形態では、前記変異体IL-2ポリペプチドは、前記第1の抗原結合部分と、アミノ末端ペプチド結合又はカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、前記第2の抗原結合部分は、(i)変異体IL-2ポリペプチド又は(ii)第1の抗原結合部分と、アミノ末端ペプチド結合又はカルボキシ末端ペプチド結合を共有する。特定の実施形態では、免疫抱合体は、1つ以上のリンカー配列によって接続する、変異体IL-2ポリペプチドと、第1及び第2の抗原結合部分、特にFab分子とから本質的になる。このようなフォーマットは、標的抗原(PD-1及びTim-3)に対して高いアフィニティで結合するが、IL-2受容体に対するモノマー結合のみを与え、そのため、標的部位以外の他の位置にあるIL-2受容体を生じる免疫細胞に対して免疫抱合体が標的化するのを避けるという利点を有する。特定の実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、第1の抗原結合部分(特に第1のFab分子)と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有し、更に、第2の抗原結合部分(特に第2のFab分子)と、アミノ末端ペプチド結合を共有する。別の実施形態では、第1の抗原結合部分(特に第1のFab分子)は、変異体IL-2ポリペプチドと、カルボキシ末端ペプチド結合を共有し、更に、第2の抗原結合部分(特に第2のFab分子)と、アミノ末端ペプチド結合を共有する。別の実施形態では、第1の抗原結合部分(特に第1のFab分子)は、第1の変異体IL-2ポリペプチドと、アミノ末端ペプチド結合を共有し、更に、第2の抗原結合部分(特に第2のFab分子)と、カルボキシ末端ペプチドを共有する。特定の実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、第1の重鎖可変領域と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有し、更に、第2の重鎖可変領域と、アミノ末端ペプチド結合を共有する。別の実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、第1の軽鎖可変領域と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有し、更に、第2の軽鎖可変領域と、アミノ末端ペプチド結合を共有する。別の実施形態では、第1の重鎖又は軽鎖可変領域は、カルボキシ末端ペプチド結合によって、変異体IL-2ポリペプチドに接続し、更に、アミノ末端ペプチド結合によって、第2の重鎖又は軽鎖可変領域に接続する。別の実施形態では、第1の重鎖又は軽鎖可変領域は、アミノ末端ペプチド結合によって、変異体IL-2ポリペプチドに接続し、更に、カルボキシ末端ペプチド結合によって、第2の重鎖又は軽鎖可変領域に接続する。一実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、第1のFab重鎖又は軽鎖と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有し、更に、第2のFab重鎖又は軽鎖と、アミノ末端ペプチド結合を共有する。別の実施形態では、第1のFab重鎖又は軽鎖は、変異体IL-2ポリペプチドと、カルボキシ末端ペプチド結合を共有し、更に、第2のFab重鎖又は軽鎖と、アミノ末端ペプチド結合を共有する。他の実施形態では、第1のFab重鎖又は軽鎖は、変異体IL-2ポリペプチドと、アミノ末端ペプチド結合を共有し、更に、第2のFab重鎖又は軽鎖と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する。一実施形態では、免疫抱合体は、1つ以上のscFV分子と、アミノ末端ペプチド結合を共有し、1つ以上のscFV分子と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する、変異体IL-2ポリペプチドを含む。
【0131】
他の例示的な免疫抱合体フォーマットは、その全体が本明細書に参考として組み込まれるPCT出願公開第WO 2012/146628号に記載されている。これらの免疫抱合体は、抗原結合部分として免疫グロブリン分子を含む。
【0132】
本発明の免疫抱合体は、特定的な実施形態では、本明細書に記載の変異体IL-2ポリペプチドと、PD-1及びTim-3に結合する二重特異性抗原結合分子とを含み、二重特異性抗原結合分子は、免疫グロブリン分子、特にIgG分子、より特定的にはIgG分子であり、Fab分子(結合アーム)の1つにおいて、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域(それぞれVH/VL又はCH1/CL)が、互いに交換され/置き換わっている。一実施形態では、免疫グロブリン分子は、ヒトである。一実施形態では、免疫グロブリン分子は、ヒト定常領域、例えば、ヒトCH1、CH2、CH3及び/又はCLドメインを含む。一実施形態では、免疫グロブリンは、ヒトFcドメイン、特に、ヒトIgGFcドメインを含む。一実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、免疫グロブリン分子と、アミノ末端ペプチド結合又はカルボキシ末端ペプチド結合を共有する。一実施形態では、免疫抱合体は、1つ以上のリンカーペプチドによって接続する、変異体IL-2ポリペプチドと、免疫グロブリン分子、特にIgG分子、より特定的にはIgG分子から本質的になる。具体的な実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、そのアミノ末端アミノ酸で、免疫グロブリン重鎖の1つのカルボキシ末端アミノ酸に、場合によりリンカーペプチドを介して融合する。
【0133】
変異体IL-2ポリペプチドは、二重特異性抗原結合分子に直接的に、又は1つ以上のアミノ酸、典型的には、約2~20アミノ酸を含むリンカーペプチドを介して融合していてもよい。リンカーペプチドは、当該技術分野で知られており、本明細書に記載される。適切な非免疫原性リンカーペプチドとしては、例えば、(GS)、(SG、(GS)又はG(SGリンカーペプチドが挙げられる。「n」は、一般的に、1~10、典型的には2~4の整数である。一実施形態では、リンカーペプチドは、少なくとも5アミノ酸長を有し、一実施形態では、5~100アミノ酸長、更なる実施形態では、10~50アミノ酸長を有する。特定の実施形態では、リンカーペプチドは、15アミノ酸長を有する。一実施形態では、リンカーペプチドは、(GxS)又は(GxS)であり、G=グリシン、S=セリン、及び(x=3、n=3、4、5又は6、m=0、1、2又は3)、又は(x=4、n=2、3、4又は5、m=0、1、2又は3)であり、一実施形態では、x=4、n=2又は3、更なる実施形態では、x=4、n=3である。特定の実施形態では、リンカーペプチドは、(GS)(配列番号24)である。一実施形態では、リンカーペプチドは、配列番号24のアミノ酸配列を含む(又は配列番号24のアミノ酸配列からなる)。
【0134】
特定の実施形態では、免疫抱合体は、本明細書に記載の変異体IL-2ポリペプチドと、PD-1及びTim-3に結合する二重特異性抗原結合分子とを含み、二重特異性抗原結合分子は、免疫グロブリン分子、特にIgGクラス免疫グロブリン分子、より特定的にはIgGサブクラス免疫グロブリン分子であり、Fab分子(結合アーム)の1つにおいて、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域(それぞれVH/VL又はCH1/CL)が、互いに交換され/置き換わっており、変異体IL-2分子は、そのアミノ末端アミノ酸で、免疫グロブリン重鎖の1つのカルボキシ末端アミノ酸に、配列番号24のリンカーペプチドを介して融合する。
【0135】
特定の実施形態では、免疫抱合体は、本明細書に記載の変異体IL-2ポリペプチドと、PD-1及びTim-3に結合する二重特異性抗原結合分子とを含み、二重特異性抗原結合分子は、第1及び第2のサブユニットで構成されるFcドメイン、特にヒトIgGFcドメインを含み、変異体IL-2分子は、そのアミノ末端アミノ酸で、Fcドメインのサブユニットの1つのカルボキシ末端アミノ酸に、配列番号24のリンカーペプチドを介して融合する。
【0136】
PD-1及びTim-3に結合する二重特異性抗原結合分子
本発明の免疫抱合体は、二重特異性抗原結合分子、すなわち、2つの別個の抗原決定基(例えばPD-1及びTim-3)に対して特異的に結合可能な少なくとも2つの抗原結合部分を含む抗原結合分子を含む。
【0137】
本発明の免疫抱合体に含まれる二重特異性抗原結合分子は、PD-1及びTim-3、特に、ヒトPD-1及びヒトTim-3に結合し、例えば、腫瘍に関連する、PD-1及び/又はTim-3が発現する標的部位に対し、特に、PD-1及び/又はTim-3が発現するT細胞に対し、変異体IL-2ポリペプチドを指向させることができる。
【0138】
本発明の免疫抱合体で使用可能な適切なPD-1/Tim-3二重特異性抗原結合分子は、その全体が本明細書に参考として組み込まれるPCT特許出願番号PCT/EP2016/073192号に記載される。
【0139】
本発明の特定の実施形態によれば、二重特異性抗原結合分子に含まれる抗原結合部分は、Fab分子である(すなわち、重鎖及び軽鎖で構成される抗原結合ドメイン、それぞれが可変ドメインと定常ドメインを含む)。一実施形態では、第1及び/又は第2の抗原結合部分は、Fab分子である。一実施形態では、前記Fab分子は、ヒトである。特定の実施形態では、前記Fab分子は、ヒト化されている。更に別の実施形態では、前記Fab分子は、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインを含む。
【0140】
好ましくは、抗原結合部分の少なくとも1つは、クロスオーバーFab分子である。このような改変は、異なるFab分子からの重鎖と軽鎖のミスマッチを減らし、それによって、組換え産生における二重特異性抗原結合分子の収率及び純度を高める。本発明の免疫抱合体に含まれる二重特異性抗原結合分子にとって有用な特定のクロスオーバーFab分子において、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメイン(それぞれVLとVH)が置き換わっている。しかし、このドメイン交換を用いても、二重特異性抗原結合分子の調製は、うまく対にならなかった重鎖と軽鎖との間のいわゆるBence Jones型の相互作用に起因して特定の副生成物を含む場合がある(Schaefer et al、PNAS、108 (2011) 11187-11191を参照)。異なるFab分子由来の重鎖及び軽鎖の誤った対形成を更に減らし、それにより、所望な二重特異性抗原結合分子の純度及び収率を上げるために、反対の電荷で帯電したアミノ酸を、本明細書でさらに記載するように、PD-1に結合するFab分子またはTim-3に結合するFab分子のいずれかのCH1及びCLドメインの特定のアミノ酸位置に導入してもよい。電荷改変は、二重特異性抗原結合分子 に含まれる従来のFab分子(例えば、図1A、Bに示されるもの)、又は二重特異性抗原結合分子に含まれる(VH/VL)クロスオーバーFab分子(例えば、図1C、Dに示されるもの)のいずれかでなされる(しかし、両方ではない)。特定的な実施形態では、電荷改変は、二重特異性抗原結合分子(特定の実施形態では、Tim-3に結合する)に含まれる従来のFab分子においてなされる。
【0141】
第1の抗原結合部分
本発明の免疫抱合体に含まれる二重特異性抗原結合分子は、PD-1、特にヒトPD-1(第1の抗原)に結合する少なくとも1つの抗原結合部分、特にFab分子を含む。特定的な実施形態では、PD-1に結合する抗原結合部分は、本明細書に記載するクロスオーバーFab分子(すなわち、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCH1及びCLが互いに交換され/置き換わっているFab分子)である。このような実施形態では、Tim-3に結合する抗原結合部分は、従来のFab分子である(例えば、図1A、Cに示されるような)。
【0142】
代替的な実施形態では、Tim-3に結合する抗原結合部分は、本明細書に記載するクロスオーバーFab分子(すなわち、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCH1及びCLが互いに交換され/置き換わっているFab分子)である。このような実施形態では、PD-1に結合する抗原結合部分は、従来のFab分子である(例えば、図1B、Dに示されるような)。
【0143】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2及び配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3と、配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2及び配列番号6のアミノ酸配列とを含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2及び配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)と、(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2及び配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、ヒト化抗体である(ヒト化抗体から誘導される)。一実施形態では、VHは、ヒト化VHであり、及び/又はVLは、ヒト化VLである。一実施形態では、第1の抗原結合部分は、上のいずれかの実施形態と同じHVRを含み、更に、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークを含む。いくつかの実施形態では、重鎖及び/又は軽鎖可変領域は、ヒトフレームワーク領域(FR)を含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、(a)配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号8、配列番号9、配列番号10及び配列番号11からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、(a)配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、(b)配列番号8、配列番号9、配列番号10及び配列番号11からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のVH配列と、配列番号8、配列番号9、配列番号10及び配列番号11の群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のVL配列とを含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、(a)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、(b)配列番号8、配列番号9、配列番号10及び配列番号11からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
【0149】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号7のVH配列と、配列番号8、配列番号9、配列番号10及び配列番号11の群から選択されるVL配列とを含む。
【0150】
特定の実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号7のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号8のアミノ酸配列を含むVLとを含む。
【0151】
特定の実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号7のVH配列と、配列番号8のVL配列とを含む。
【0152】
一実施形態では、第1の抗原結合部分は、ヒト定常領域を含む。一実施形態では、第1の抗原結合部分は、ヒト定常領域、特に、ヒトCH1及び/又はCLドメインを含むFab分子である。ヒト定常ドメインの例示的な配列は、配列番号41及び42(それぞれヒトκ及びλCLドメイン)及び配列番号43(ヒトIgG重鎖定常ドメインCH1-CH2-CH3)で与えられる。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号41又は配列番号42のアミノ酸配列、特に配列番号41のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。特に、軽鎖定常領域は、「電荷改変」の状態で本明細書に記載するアミノ酸変異を含んでいてもよく、及び/又はクロスオーバーFab分子である場合、1つ以上の(特に2つの)N末端アミノ酸の欠失又は置換を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号43のアミノ酸配列に含まれるCH1ドメイン配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。特に、重鎖定常領域(特定的にはCH1ドメイン)は、「電荷改変」状態で本明細書に記載のアミノ酸変異を含んでいてもよい。
【0153】
一実施形態では、PD-1に結合する1つを超えない抗原結合部分が、二重特異性抗原結合分子中に存在する(すなわち、二重特異性抗原結合分子は、PD-1に対する一価の結合を提供する)。
【0154】
第2の抗原結合部分
本発明の免疫抱合体に含まれる二重特異性抗原結合分子は、Tim-3、特にヒトTim-3(第2の抗原)に結合する少なくとも1つの抗原結合部分、特にFab分子を含む。
【0155】
特定的な実施形態では、Tim-3に結合する抗原結合部分は、従来のFab分子である。このような実施形態では、PD-1に結合する抗原結合部分は、好ましくは、本明細書に記載するクロスオーバーFab分子(すなわち、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCH1及びCLが互いに交換され/置き換わっているFab分子)である(図1A、Cを参照)。
【0156】
代替的な実施形態では、PD-1に結合する抗原結合部分は、従来のFab分子である。このような実施形態では、Tim-3に結合する抗原結合部分は、本明細書に記載するクロスオーバーFab分子(すなわち、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCH1及びCLが互いに交換され/置き換わっているFab分子)である(図1B、Dを参照)。
【0157】
いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H2及び配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H3と、配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L2及び配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、(a)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H2及び配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)と、(b)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L2及び配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ヒト化抗体である(ヒト化抗体から誘導される)。一実施形態では、VHは、ヒト化VHであり、及び/又はVLは、ヒト化VLである。一実施形態では、第2の抗原結合部分は、上のいずれかの実施形態と同じHVRを含み、更に、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークを含む。いくつかの実施形態では、重鎖及び/又は軽鎖可変領域は、ヒトフレームワーク領域(FR)を含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、配列番号18又は配列番号20のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、配列番号19又は配列番号21のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、(a)配列番号18のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、(b)配列番号19のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。他の実施形態では、第2の抗原結合部分は、(a)配列番号20のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、(b)配列番号21のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、配列番号18のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のVH配列と、配列番号19のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のVL配列とを含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、配列番号20のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のVH配列と、配列番号21のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のVL配列とを含む。
【0162】
特定の実施形態では、第2の抗原結合部分は、(a)配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。更に特定の実施形態では、第2の抗原結合部分は、配列番号18のVH配列と、配列番号19のVL配列とを含む。
【0163】
一実施形態では、第2の抗原結合部分は、配列番号20のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号21のアミノ酸配列を含むVLとを含む。更なる実施形態では、第2の抗原結合部分は、配列番号20のVH配列と、配列番号21のVL配列とを含む。
【0164】
一実施形態では、第2の抗原結合部分は、ヒト定常領域を含む。一実施形態では、第2の抗原結合部分は、ヒト定常領域、特に、ヒトCH1及び/又はCLドメインを含むFab分子である。ヒト定常ドメインの例示的な配列は、配列番号41及び42(それぞれヒトκ及びλCLドメイン)及び配列番号43(ヒトIgG重鎖定常ドメインCH1-CH2-CH3)で与えられる。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、配列番号41又は配列番号42のアミノ酸配列、特に配列番号41のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。特に、軽鎖定常領域は、「電荷改変」の状態で本明細書に記載するアミノ酸変異を含んでいてもよく、及び/又はクロスオーバーFab分子である場合、1つ以上の(特に2つの)N末端アミノ酸の欠失又は置換を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号43のアミノ酸配列に含まれるCH1ドメイン配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。特に、重鎖定常領域(特定的にはCH1ドメイン)は、「電荷改変」状態で本明細書に記載のアミノ酸変異を含んでいてもよい。
【0165】
一実施形態では、Tim-3に結合する1つを超えない抗原結合部分が、二重特異性抗原結合分子中に存在する(すなわち、二重特異性抗原結合分子は、Tim-3に対する一価の結合を提供する)。
【0166】
電荷改変
本発明の免疫抱合体に含まれる二重特異性抗原結合分子は、それに含まれるFab分子に、1つ(または2つより多い抗原結合Fab分子を含む分子の場合にはさらに多い)結合アーム中にVH/VL交換を有するFab由来の二重/多重特異性抗原結合分子の産生で生じ得るマッチしない重鎖との軽鎖の間違った対形成(Bence-Jones型副生成物)を減らすのに特に効果的であるアミノ酸置換を含んでいてもよい。(その全体が本明細書に参考として組み込まれるPCT出願公開第WO 2015/150447号、特に、その中の実施例も参照)。所望ではない副生成物(特に、結合アームの1つにあるVH/VLドメインの交換を伴う二重特異性抗原結合分子中に存在するBence Jones型副生成物)と比較した場合の、所望な二重特異性抗原結合分子の比率は、帯電したアミノ酸に、CH1及びCLドメインの特定のアミノ酸位置に反対の電荷を導入することによって向上させることができる(本明細書では、「電荷改変」と呼ばれることがある)。
【0167】
したがって、二重特異性抗原結合分子の第1及び第2の抗原結合部分が両方ともFab分子であり、抗原結合部分の1つ(特に、第1の抗原結合部分)において、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっている、いくつかの実施形態では、
i)第2の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、正に帯電したアミノ酸によって置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸は、負に帯電したアミノ酸によって置換されているか(Kabat EUインデックスによる番号付け)、又は
ii)第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、正に帯電したアミノ酸によって置換されており(Kabatによる番号付け)、第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸は、負に帯電したアミノ酸によって置換されているか(Kabat EUインデックスによる番号付け)、又は
二重特異性抗原結合分子は、(i)及び(ii)で述べられる両方の改変を含まない。VH/VLが置き換わっている抗原結合部分の定常ドメインCL及びCH1は、互いに交換されていない(すなわち、置き換わらないままである)。
より具体的な実施形態では、
i)第2の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されているか(Kabat EUインデックスによる番号付け)、又は
ii)第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されているか(Kabat EUインデックスによる番号付け)、又は
1つのこのような実施形態では、第2の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0168】
更なる実施形態では、第2の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0169】
特定の実施形態では、第2の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸が、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0170】
より特定の実施形態では、第2の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リシン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸が、リシン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0171】
更に特定の実施形態では、第2の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リシン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸が、アルギニン(R)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0172】
特定的な実施形態では、上の実施形態に係るアミノ酸置換が、第2の抗原結合部分の定常ドメインCL及び定常ドメインCH1でなされる場合、第2の抗原結合部分の定常ドメインCLは、カッパアイソタイプである。
【0173】
又は、上の実施形態に係るアミノ酸置換が、第2の抗原結合部分の定常ドメインCL及び定常ドメインCH1の代わりに、第1の抗原結合部分の定常ドメインCL及び定常ドメインCH1でなされていてもよい。特定のこのような実施形態では、第1の抗原結合部分の定常ドメインCLは、カッパアイソタイプである。
【0174】
したがって、一実施形態では、第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されているか(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0175】
更なる実施形態では、第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0176】
更に別の実施形態では、第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸が、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0177】
一実施形態では、第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リシン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸が、リシン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0178】
別の実施形態では、第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リシン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸が、アルギニン(R)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0179】
特定の実施形態では、本発明の免疫抱合体に含まれる二重特異性抗原結合分子は、
(a)PD-1に結合し、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わったFab分子である、第1の抗原結合部分と、
(b)Tim-3に結合し、(従来の)Fab分子である、第2の抗原結合部分とを含み、
第2の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リシン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸が、アルギニン(R)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0180】
特定の実施形態では、本発明の免疫抱合体に含まれる二重特異性抗原結合分子は、
(a)PD-1に結合し、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わったFab分子である、第1の抗原結合部分と、
(b)Tim-3に結合し、(従来の)Fab分子である、第2の抗原結合部分とを含み、
第2の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって(特定の字実施形態では、独立して、リシン(K)又はアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸が、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって(特定の実施形態では、独立して、リシン(K)又はアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0181】
二重特異性抗原結合分子フォーマット
本発明に係る免疫抱合体に含まれる二重特異性抗原結合分子の構成要素は、種々の構成で互いに融合していてもよい。例示的な構成は、図1に示される。適切な二重特異性抗原結合分子フォーマットは、その全体が本明細書に参考として組み込まれるPCT出願公開第WO2009080252号及び第WO2009080253号に記載される。
【0182】
特定的な実施形態では、二重特異性抗原結合分子に含まれる抗原結合部分は、Fab分子である。このような実施形態では、第1、第2などの抗原結合部分は、それぞれ、本明細書では、第1、第2などのFab分子と呼ばれる場合がある。
【0183】
特定的な実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、第1及び第2のサブユニットで構成されるFcドメインを含む。Fcドメインの第1及び第2のサブユニットは、安定な会合が可能である。
【0184】
二重特異性抗原結合分子は、異なる構成を有していてもよく、すなわち、第1及び第2の抗原結合部分が、互いに、また、異なる様式でFcドメインに融合していてもよい。構成要素は、直接に、又は好ましくは、1つ以上の適切なリンカーペプチドを介し、互いに融合していてもよい。Fab分子の融合が、FcドメインのサブユニットのN末端に対するものである場合、その融合は、典型的には、免疫グロブリンヒンジ領域を介する。
【0185】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の抗原結合部分は、それぞれFab分子であり、それぞれ、Fab重鎖のC末端で、Fcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合する。特定のこのような実施形態では、第2の抗原結合部分は、従来のFab分子であり、第1の抗原結合部分は、明細書に記載するクロスオーバーFab分子(すなわち、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCL及びCH1が互いに交換され/置き換わっているFab分子)である。他のこのような実施形態では、第2のFab分子が、クロスオーバーFab分子であり、第1のFab分子は、従来のFab分子である。
【0186】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、第1及び第2のFab分子から本質的になり、Fcドメインは、第1及び第2のサブユニットと、場合により1つ以上のリンカーペプチドで構成され、第1及び第2のFab分子は、それぞれ、Fab重鎖のC末端をFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合する。このような構成は、図1に模式的に示される(図1A及び1Cの例では、第1の抗原結合ドメインが、VH/VLクロスオーバーFab分子であり、第2の抗原結合部分が従来のFab分子であり、図1B及び1Dの例では、第2の抗原結合ドメインがVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第1の抗原結合部分が従来のFab分子である)。第1及び第2のFab分子は、Fcドメインに直接的に、又はリンカーペプチドを介して融合していてもよい。特定の実施形態では、第1及び第2のFab分子は、免疫グロブリンヒンジ領域によって、それぞれFcドメインに融合する。具体的な実施形態では、免疫グロブリンヒンジ領域は、ヒトIgGヒンジ領域であり、特に、Fcドメインは、IgGFcドメインである。
【0187】
Fab分子が、免疫グロブリンヒンジ領域を介してFab重鎖のC末端をFcドメインのそれぞれのサブユニットのN末端に融合する二重特異性抗原結合分子の構成において、2つのFab分子、ヒンジ領域及びFcドメインは、本質的に免疫グロブリン分子を形成する。特定の実施形態では、免疫グロブリン分子は、IgGクラス免疫グロブリンである。なお更なる特定の実施形態では、免疫グロブリンは、IgGサブクラス免疫グロブリンである。別の実施形態では、免疫グロブリンは、IgGサブクラス免疫グロブリンである。更に特定の実施形態では、免疫グロブリンは、ヒト免疫グロブリンである。他の実施形態では、免疫グロブリンは、キメラ免疫グロブリン又はヒト化免疫グロブリンである。一実施形態では、免疫グロブリンは、ヒト定常領域、特に、ヒトFc領域を含む。
【0188】
抗原結合部分は、Fcドメインに(又は互いに)直接的に、又は1つ以上のアミノ酸、又は典型的には約2~20アミノ酸を含むリンカーペプチドを介して融合してもよい。リンカーペプチドは、当該技術分野で知られており、本明細書に記載される。適切な非免疫原性リンカーペプチドとしては、例えば、(GS)、(SG、(GS)又はG(SGリンカーペプチドが挙げられる。「n」は、一般的に、1~10、典型的には2~4の整数である。一実施形態では、前記リンカーペプチドは、少なくとも5アミノ酸長を有し、一実施形態では、5~100アミノ酸長、更なる実施形態では、10~50アミノ酸長を有する。一実施形態では、前記リンカーペプチドは、(GxS)又は(GxS)であり、G=グリシン、S=セリン、及び(x=3、n=3、4、5又は6、m=0、1、2又は3)、又は(x=4、n=2、3、4又は5、m=0、1、2又は3)であり、一実施形態では、x=4、n=2又は3、更なる実施形態では、x=4、n=2である。一実施形態では、前記リンカーペプチドは、(GS)である。リンカーペプチドはまた、免疫グロブリンヒンジ領域(の一部)を含んでいてもよい。特に、Fab分子が、FcドメインサブユニットのN末端に融合する場合、免疫グロブリンヒンジ領域又はその一部を介し、更なるリンカーペプチドを伴い、又は伴わずに融合してもよい。
【0189】
特定の実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域が、第1のFab分子のFab重鎖定常領域と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、第1のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域と置き換わっている)、Fcドメインサブユニット(VL(1)-CH1(1)-CH2-CH3(-CH4))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドと、第2のFab分子のFab重鎖が、Fcドメインサブユニット(VH(2)-CH1(2)-CH2-CH3(-CH4))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する、ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、更に、ポリペプチドを含み、第1のFab分子のFab重鎖可変領域は、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域(VH(1)-CL(1))及び第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する。特定の実施形態では、ポリペプチドは、例えば、ジスルフィド結合によって共有結合している。例えば、図1A及び1Cを参照。
【0190】
他の実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、第2のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域と置き換わっている)、Fcドメインサブユニット(VL(2)-CH1(2)-CH2-CH3(-CH4))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドと、第1のFab分子のFab重鎖が、Fcドメインサブユニット(VH(1)-CH1(1)-CH2-CH3(-CH4))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する、ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、更に、ポリペプチドを含み、第2のFab分子のFab重鎖可変領域は、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域(VL(2)-CL(2))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する。特定の実施形態では、ポリペプチドは、例えば、ジスルフィド結合によって共有結合している。例えば、図1B及び1Dを参照。
【0191】
特定の実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、第1のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域と置き換わっている)、Fcドメインサブユニット(VH(1)-CL(1)-CH2-CH3(-CH4))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドと、第2のFab分子のFab重鎖が、Fcドメインサブユニット(VH(2)-CH1(2)-CH2-CH3(-CH4))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する、ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、更に、ポリペプチドを含み、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域は、第1のFab分子のFab重鎖定常領域(VL(1)-CH1(1))及び第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する。特定の実施形態では、ポリペプチドは、例えば、ジスルフィド結合によって共有結合している。
【0192】
更に他の実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、第2のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域と置き換わっている)、Fcドメインサブユニット(VH(2)-CL(2)-CH2-CH3(-CH4))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドと、第1のFab分子のFab重鎖が、Fcドメインサブユニット(VH(1)-CH1(1)-CH2-CH3(-CH4))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する、ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、更に、ポリペプチドを含み、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域は、第2のFab分子のFab重鎖定常領域(VL(2)-CH1(2))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する。特定の実施形態では、ポリペプチドは、例えば、ジスルフィド結合によって共有結合している。
【0193】
特定の実施形態では、本発明の免疫抱合体に含まれる二重特異性抗原結合分子は、
a)PD-1に結合し、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVH又は定常ドメインCL及びCL1が互いに置き換わったFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)Tim-3に結合し、(従来の)Fab分子である、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインとを含み、
ここで、
(a)での第1の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端を、(c)でのFcドメインのサブユニットの1つ(特に第1のサブユニット)のN末端に融合し、(b)での第2の抗原結合部分は、(c)でのFcドメインのFab重鎖のC末端を、サブユニットの他の1つ(特に第2のサブユニット)のN末端に融合する。
【0194】
特定の実施形態では、第1及び第2の抗原結合部分は、免疫グロブリンヒンジ領域によって、それぞれFcドメインに融合する。
【0195】
別の実施形態では、本発明の免疫抱合体に含まれる二重特異性抗原結合分子は、
a)PD-1に結合し、(従来の)Fab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)Tim-3に結合し、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVH又は定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換わったFab分子である、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインとを含み、
ここで、
(a)での第1の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端を、(c)でのFcドメインのサブユニットの1つ(特に第1のサブユニット)のN末端に融合し、(b)での第2の抗原結合部分は、(c)でのFcドメインのFab重鎖のC末端を、サブユニットの他の1つ(特に第2のサブユニット)のN末端に融合する。
【0196】
特定の実施形態では、第1及び第2の抗原結合部分は、免疫グロブリンヒンジ領域によって、それぞれFcドメインに融合する。
【0197】
二重特異性抗原結合分子の異なる構成の全てにおいて、本明細書に記載するアミノ酸置換は、存在する場合、第1の抗原結合部分/Fab分子のCH1及びCLドメイン、又は第2の抗原結合部分/Fab分子のCH1又はCLドメインのいずれかにあってもよい。好ましくは、これらは、第2の抗原結合部分/Fab分子のCH1ドメイン及びCLドメイン内にある。本発明の概念によれば、本明細書に記載されるアミノ酸置換が、第2の抗原結合部分/Fab分子においてなされる場合、このようなアミノ酸置換は、第1の抗原結合部分/Fab分子においてはなされない。逆に、本明細書に記載されるアミノ酸置換が、第1の抗原結合部分/Fab分子においてなされる場合、このようなアミノ酸置換は、第2の抗原結合部分/Fab分子においてはなされない。アミノ酸置換は、特定的には、Fab分子を含む二重特異性抗原結合分子でなされ、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVH1が互いに置き換わっている。
【0198】
二重特異性抗原結合分子の特定の実施形態では、特に、本明細書に記載のアミノ酸置換が、第2の抗原結合部分/Fab分子内で行われる実施形態では、第2のFab分子の定常ドメインCLは、カッパアイソタイプである。二重特異性抗原結合分子の他の実施形態では、特に、本明細書に記載のアミノ酸置換が、第1の抗原結合部分/Fab分子内で行われる実施形態では、第1の抗原結合部分/Fab分子の定常ドメインCLは、カッパアイソタイプである。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分/Fab分子の定常ドメインCLと、第2の抗原結合部分/Fab分子の定常ドメインCLは、カッパアイソタイプである。
【0199】
特定の実施形態では、本発明の免疫抱合体に含まれる二重特異性抗原結合分子は、
a)PD-1に結合し、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わったFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)Tim-3に結合し、(従来の)Fab分子である、第2の抗原結合部分とを含み、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインとを含み、
ここで、(bでの第2の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リシン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸が、リシン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによる番号付け)、(b)での第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
ここで、
(a)での第1の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端を、(c)でのFcドメインのサブユニットの1つ(特に第1のサブユニット)のN末端に融合し、(b)での第2の抗原結合部分は、(c)でのFcドメインのFab重鎖のC末端を、サブユニットの他の1つ(特に第2のサブユニット)のN末端に融合する。
【0200】
特定の実施形態では、第1及び第2の抗原結合部分は、免疫グロブリンヒンジ領域によって、それぞれFcドメインに融合する。
【0201】
別の実施形態では、本発明の免疫抱合体に含まれる二重特異性抗原結合分子は、
a)PD-1に結合し、(従来の)Fab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)Tim-3に結合し、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わったFab分子である、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインとを含み、
ここで、(a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リシン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸が、リシン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによる番号付け)、(a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
ここで、
(a)での第1の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端を、(c)でのFcドメインのサブユニットの1つ(特に第1のサブユニット)のN末端に融合し、(b)での第2の抗原結合部分は、(c)でのFcドメインのFab重鎖のC末端を、サブユニットの他の1つ(特に第2のサブユニット)のN末端に融合する。
【0202】
特定の実施形態では、第1及び第2の抗原結合部分は、免疫グロブリンヒンジ領域によって、それぞれFcドメインに融合する。
【0203】
Fcドメイン
特定的な実施形態では、本発明の免疫抱合体に含まれる二重特異性抗原結合分子は、第1及び第2のサブユニットで構成されるFcドメインを含む。
【0204】
二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、免疫グロブリン分子の重鎖ドメインを含む一対のポリペプチド鎖からなる。例えば、免疫グロブリンG(IgG)分子のFcドメインは、ダイマーであり、それぞれのサブユニットは、CH2及びCH3 IgG重鎖定常ドメインを含む。Fcドメインの2つのサブユニットは、互いに安定な会合が可能である。一実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、1つを超えないFc分子を含む。
【0205】
一実施形態では、二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、IgG Fcドメインである。特定の実施形態では、Fcドメインは、IgGFcドメインである。別の実施形態では、Fcドメインは、IgGFcドメインである。より具体的な実施形態では、Fcドメインは、位置S228にアミノ酸置換、特にアミノ酸置換S228Pを含むIgGFcドメインである(Kabat EUインデックス番号付け)。このアミノ酸置換は、in vivoでのIgG抗体のFabアーム交換を減らす(Stubenrauch et al.,Drug Metabolism and Disposition 38,84-91(2010)を参照)。更に特定の実施形態では、Fcドメインは、ヒトFcドメインである。更により特定的な実施形態では、Fcドメインは、ヒトIgGFcドメインである。ヒトIgGFc領域の例示的な配列は、配列番号40で与えられる。
【0206】
ヘテロ二量体化を促進するFcドメイン改変
本発明に係る免疫抱合体は、変異体IL-2ポリペプチド、特に、1つの(1つを超えない)変異体IL-2ポリペプチドと、二重特異性抗原結合分子のFcドメインの2つのサブユニットの一方又は他方に融合し得る異なる抗原結合部分とを含み、そのため、Fcドメインの2つのサブユニットが、2つの非同一なポリペプチド鎖に含まれる。これらのポリペプチドの組換え同時発現及びその後の二量化によって、2つのポリペプチドのいくつかの可能な組み合わせが生じる。組換え産生における二重特異性抗原結合分子の収率及び純度を高めるために、二重特異性抗原結合分子のFcドメインに、所望なポリペプチドの会合を促進する改変を導入することが有利である。
【0207】
したがって、特定的な実施形態では、本発明に係る免疫抱合体に含まれる二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する改変を含む。ヒトIgG Fcドメインの2つのサブユニット間の最も長いタンパク質-タンパク質相互作用の部位は、FcドメインのCH3ドメイン内にある。したがって、一実施形態では、前記改変は、FcドメインのCH3ドメインの中にある。
【0208】
ヘテロ二量化を強化するために、FcドメインのCH3ドメイン内で改変するためにいくつかの手法が存在し、例えば、WO 96/27011号、WO 98/050431号、EP 1870459号、WO 2007/110205号、WO 2007/147901号、WO 2009/089004号、WO 2010/129304号、WO 2011/90754号、WO 2011/143545号、WO 2012058768号、WO 2013157954号、WO 2013096291号に十分に記載されている。典型的には、全てのこのような手法において、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインと、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインが、両方とも、各CH3ドメイン(又はそれを含む重鎖)が、自身とホモ二量化せず、相補的に操作された他のCH3ドメインとヘテロ二量化するように仕向けられている相補的な様式で操作されている(その結果、第1及び第2のCH3ドメインがヘテロ二量化し、第1又は第2のCH3ドメインの間のホモ二量体は形成されない)。改良された重鎖ヘテロ二量化のためのこれらの異なる手法は、重鎖/軽鎖の誤った対形成と、Bence Jones型副生成物が低下した二重特異性抗原結合分子において、重鎖-軽鎖改変と組み合わせた異なる代替例として想定される(例えば、1つの結合アームでのVH及びVLの交換/置き換えと、CH1/CL界面で、帯電したアミノ酸を反対の電荷で置換したものの導入)。
【0209】
具体的な実施形態では、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する改変は、いわゆる「ホールにノブを入れる」改変であり、Fcドメインの2つのサブユニットの1つに「ノブ」改変と、Fcドメインの2つのサブユニットの他の1つに「ホール」改変とを含む。
【0210】
ホールにノブを入れる技術は、例えば、US 5,731,168号、US 7,695,936号、Ridgway et al.,Prot Eng 9, 617-621(1996)及びCarter,J Immunol Meth 248,7-15(2001)に記載される。一般的に、この方法は、第1のポリペプチドの界面にある突起(「ノブ」)と、第2のポリペプチドの界面にある空洞(「ホール」)とを導入することを含み、その結果、突起が、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨害するように空洞内に位置することができる。突起は、第1のポリペプチドの界面からの小さなアミノ酸側鎖を、もっと大きな側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)と交換することによって構築される。突起と同一又は同様の大きさの相補性空洞が、大きなアミノ酸側鎖を、より小さなアミノ酸側鎖(例えば、アラニン又はトレオニン)と置き換えることによって、第2のポリペプチドの界面に作られる。
【0211】
したがって、特定の実施形態では、二重特異性抗原結合分子のFcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基は、より大きな側鎖容積を有するアミノ酸残基と置き換わり、それによって、第2のサブユニットのCH3ドメイン内の空洞内で位置換え可能な第1のサブユニットのCH3ドメイン内に突起を生成し、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基は、より小さな側鎖容積を有するアミノ酸残基と置き換わり、それによって、第2のサブユニットのCH3ドメイン内に空洞を生成し、その中で、第1のサブユニットのCH3ドメイン内の突起が位置換え可能である。
【0212】
好ましくは、より大きな側鎖容積を有する前記アミノ酸残基は、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)及びトリプトファン(W)からなる群から選択される。
【0213】
好ましくは、より小さな側鎖容積を有する前記アミノ酸残基は、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)及びバリン(V)からなる群から選択される。
【0214】
突起及び空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を変えることによって、例えば、部位特異的変異導入法によって、又はペプチド合成によって作成することができる。
【0215】
具体的な実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニット(「ノブ」サブユニット)(のCH3ドメイン)において、位置366のトレオニン残基が、トリプトファン残基と置き換わっており(T366W)、Fcドメイン(「ホール」サブユニット)の第2のサブユニット(のCH3ドメイン)において、位置407のチロシン残基は、バリン残基と置き換わっている(Y407V)。一実施形態では、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、更に、位置366のトレオニン残基が、セリン残基と置き換わっており(T366S)、位置368のロイシン残基が、アラニン残基と置き換わっている(L368A)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0216】
なお更なる実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、更に、位置354のセリン残基が、システイン残基と置き換わっている(S354C)か、又は位置356のグルタミン酸残基が、システイン残基と置き換わっており(E356C)(特に、位置354のセリン残基がシステイン残基と置き換わっており)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、更に、位置349のチロシン残基が、システイン残基と置き換わっている(Y349C)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。これら2つのシステイン残基の導入によって、Fcドメインの2つのサブユニット間にジスルフィド架橋が生成し、ダイマーをさらに安定化する(Carter,J Immunol Methods 248,7-15(2001))。
【0217】
特定の実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354C及びT366Wを含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366S、L368A及びY407Vを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0218】
特定の実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、Fcドメインの第1のサブユニット(「ノブ」改変を含む)に(場合によりリンカーペプチドを介して)融合している。理論によって束縛されることを望まないが、Fcドメインのノブを含有するサブユニットに対する変異体IL-2ポリペプチドの融合は、2つの変異体IL-2ポリペプチドを含む免疫抱合体の生成を(更に)最小化する(2つのノブを含有するポリペプチドの立体的な衝突)。
【0219】
ヘテロ二量化を強化するためのCH3改変の他の技術は、本発明の代替例として想定され、例えば、WO 96/27011号、WO 98/050431号、EP 1870459号、WO 2007/110205号、WO 2007/147901号、WO 2009/089004号、WO 2010/129304号、WO 2011/90754号、WO 2011/143545号、WO 2012/058768号、WO 2013/157954、WO 2013/096291号に記載されている。
【0220】
一実施形態では、EP 1870459号に記載されるヘテロ二量体化手法を代わりに使用する。この手法は、Fcドメインの2つのサブユニット間のCH3/CH3ドメイン界面における特定のアミノ酸位置への反対の電荷で帯電したアミノ酸の導入に基づく。本発明の免疫抱合体に含まれる二重特異性抗原結合分子の1つの好ましい実施形態は、アミノ酸変異R409D;(Fcドメインの)2つのCH3ドメインの1つにおけるK370E及びアミノ酸変異D399K;FcドメインのCH3ドメインの他の1つにおけるE357K(Kabat EUインデックスによる番号付け)である。
【0221】
別の実施形態では、本発明の免疫抱合体に含まれる二重特異性抗原結合分子は、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸変異T366Wを含み、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸変異T366S、L368A、Y407Vを含み、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインに更なるアミノ酸変異R409D;K370E、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸変異D399K;E357Kを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0222】
別の実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸変異S354C、T366Wを含み、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸変異Y349C、T366S、L368A、Y407Vを含むか、又は前記二重特異性抗原結合分子は、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸変異Y349C、T366Wを含み、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸変異S354C、T366S、L368A、Y407Vを含み、更に、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸変異R409D;K370Eを含み、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸変異D399K;E357Kを含む(全てKabat EUインデックスによる番号付け)。
【0223】
一実施形態では、WO 2013/157953号に記載されるヘテロ二量体化手法を代わりに使用する。一実施形態では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸変異T366Kを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸変異L351Dを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。更なる実施形態では、第1のCH3ドメインは、更なるアミノ酸変異L351Kを含む。更なる実施形態では、第2のCH3ドメインは、更に、Y349E、Y349D及びL368E(好ましくはL368E)(Kabat EUインデックスによる番号付け)から選択されるアミノ酸変異を含む。
【0224】
一実施形態では、WO 2012/058768号に記載されるヘテロ二量体化手法を代わりに使用する。一実施形態では、WO 2012/058768号に記載されるヘテロ二量体化手法を代わりに使用する。一実施形態では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸変異L351Y、Y407Aを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸変異T366A、K409Fを含む。更なる実施形態では、第2のCH3ドメインは、位置T411、D399、S400、F405、N390又はK392にある更なるアミノ酸変異、例えば、(a)T411N、T411R、T411Q、T411K、T411D、T411E又はT411W、(b)D399R、D399W、D399Y又はD399K、(c)S400E、S400D、S400R又はS400K、(d)F405I、F405M、F405T、F405S、F405V又はF405W、(e)N390R、N390K又はN390D、(f)K392V、K392M、K392R、K392L、K392F又はK392E(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。更なる実施形態では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸変異L351Y、Y407Aを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸変異T366V、K409Fを含む。更なる実施形態では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸変異Y407Aを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸変異T366A、K409Fを含む。更なる実施形態では、第2のCH3ドメインは、更に、アミノ酸変異K392E、T411E、D399R及びS400R(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。
【0225】
一実施形態では、WO 2011/143545号に記載されるヘテロ二量化手法が代わりに使用され、例えば、368及び409からなる群から選択される位置にアミノ酸改変を有する(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0226】
一実施形態では、上に記載するホールにノブを入れる技術も使用する、第WO 2011/090762号に記載されるヘテロ二量化手法が、代わりに使用される。一実施形態では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸変異T366Wを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸変異Y407Aを含む。一実施形態では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸変異T366Yを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸変異Y407Tを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0227】
一実施形態では、二重特異性抗原結合分子又はそのFcドメインは、IgGサブクラスであり、WO 2010/129304号に記載されるヘテロ二量体化手法を代わりに使用する。
【0228】
代替的な実施形態では、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する改変は、例えば、PCT出願公開第WO 2009/089004号に記載されるように、静電操縦効果に介在する改変を含む。一般的に、この方法は、2つのFcドメインサブユニットの界面に、ホモ二量体生成が静電的に望ましくないが、ヘテロ二量化が静電的に望ましいように、帯電したアミノ酸残基による1つ以上のアミノ酸残基の置き換えを含む。1つのこのような実施形態では、第1のCH3ドメインは、K392又はN392の負に帯電したアミノ酸(例えば、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)、好ましくはK392D又はN392D)によるアミノ酸置換を含み、第2のCH3ドメインは、D399、E356、D356又はE357の正に帯電したアミノ酸によるアミノ酸置換(例えば、リシン(K)又はアルギニン(R)、好ましくはD399K、E356K、D356K又はE357K、より好ましくはD399K及びE356K)を含む。更なる実施形態では、第1のCH3ドメインは、更に、K409又はR409の負に帯電したアミノ酸によるアミノ酸置換(例えば、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)、好ましくはK409D又はR409D)を含む。更なる実施形態では、第1のCH3ドメインは、更に、又はこれに代えて、K439及び/又はK370の負に帯電したアミノ酸(例えば、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D))(全てKabat EUインデックスによる番号付け)によるアミノ酸置換を含む。
【0229】
なお更なる実施形態では、WO 2007/147901号に記載されるヘテロ二量体化手法を代わりに使用する。一実施形態では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸変異K253E、D282K及びK322Dを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸変異D239K、E240K及びK292Dを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0230】
更に別の実施形態では、WO 2007/110205号に記載されるヘテロ二量体化手法を代わりに使用してもよい。
【0231】
一実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換K392D及びK409Dを含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換D356K及びD399Kを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0232】
Fc受容体結合及び/又はエフェクター機能を下げるFcドメイン改変
Fcドメインは、二重特異性抗原結合分子(又は抗体)に、標的組織への良好な蓄積に寄与する長い血清半減期、望ましい組織-血液分布比を含め、望ましい薬物動態特性を与える。しかし、同時に、好ましい抗原を含む細胞ではなく、Fc受容体を発現する細胞に対する二重特異性抗原結合分子(又は抗体)の望ましくない標的化を引き起こす場合がある。更に、Fc受容体シグナル伝達経路の同時活性化によって、サイトカインが放出され、IL-2ポリペプチドと、長い半減期の二重特異性抗原結合分子とが組み合わさり、全身投与すると、サイトカイン受容体が過剰に活性化し、重篤な副作用が起こる。これと一致して、従来のIgG-IL-2免疫抱合体は、注入反応と関係があることが記載されている(例えば、King et al.、J Clin Oncol 22、4463-4473 (2004)を参照)。
【0233】
したがって、特定的な実施形態では、本発明の免疫抱合体に含まれる二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、ネイティブIgGFcドメインと比較して、Fc受容体に対する結合アフィニティの低下及び/又はエフェクター機能の低下を示す。1つのこのような実施形態では、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む二重特異性抗原結合分子)は、ネイティブIgGFcドメイン(又はネイティブIgGFcドメインを含む二重特異性抗原結合分子)と比較して、Fc受容体に対する結合アフィニティの50%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満の結合アフィニティを示し、及び/又はネイティブIgGFcドメインドメイン(又はネイティブIgGFcドメインを含む二重特異性抗原結合分子)と比較して、50%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満のエフェクター機能を示す。一実施形態では、Fcドメインドメイン(又は前記Fcドメインを含む二重特異性抗原結合分子)は、Fc受容体に実質的に結合せず、及び/又はエフェクター機能を誘発しない。特定の実施形態では、Fc受容体は、Fcγ受容体である。一実施形態では、Fc受容体は、ヒトFc受容体である。一実施形態では、Fc受容体は、活性化Fc受容体である。具体的な実施形態では、Fc受容体は、活性化ヒトFcγ受容体であり、より特定的には、ヒトFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRIIaであり、最も特定的には、ヒトFcγRIIIaである。一実施形態では、エフェクター機能は、CDC、ADCC、ADCP及びサイトカイン分泌の群から選択される1つ以上である。特定の実施形態では、エフェクター機能は、ADCCである。一実施形態では、Fcドメインのドメインは、ネイティブIgGFcドメインドメインと比較して、新生児Fc受容体(FcRn)に対して実質的に同様の結合アフィニティを示す。FcRnに対する実質的に同様の結合は、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む二重特異性抗原結合分子)が、ネイティブIgGFcドメイン(又はネイティブIgGFcドメインを含む二重特異性抗原結合分子と比較して、FcRnに対して約70%より大きく、特に約80%より大きく、より特定的には約90%より大きい結合アフィニティを示す場合に達成される。
【0234】
特定の実施形態では、Fcドメインは、操作されていないFcドメインと比較して、Fc受容体に対する結合アフィニティが低下し、及び/又はエフェクター機能が低下するように操作される。特定的な実施形態では、二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、Fc受容体に対するFcドメインの結合アフィニティ及び/又はエフェクター機能を下げる1つ以上のアミノ酸変異を含む。典型的には、Fcドメインの2つのサブユニットそれぞれに、同じ1つ以上のアミノ酸変異が存在する。一実施形態では、アミノ酸変異は、Fc受容体に対するFcドメインの結合アフィニティを下げる。一実施形態では、アミノ酸変異は、Fc受容体に対するFcドメインの結合アフィニティを、少なくとも2分の1、少なくとも5分の1、又は少なくとも10分の1に下げる。Fc受容体に対するFcドメインの結合アフィニティを下げる1つより多いアミノ酸変異が存在する実施形態では、これらのアミノ酸変異の組み合わせが、Fc受容体に対するFcドメインの結合アフィニティを少なくとも10分の1、少なくとも20分の1、又は更に少なくとも50分の1まで下げてもよい。一実施形態では、操作されたFcドメインを含む二重特異性抗原結合分子は、操作されていないFcドメインを含む二重特異性抗原結合分子と比較して、Fc受容体の結合アフィニティの20%未満、特に10%未満、より特定的には5%未満を示す。特定の実施形態では、Fc受容体は、Fcγ受容体である。いくつかの実施形態では、Fc受容体は、ヒトFc受容体である。いくつかの実施形態では、Fc受容体は、活性化Fc受容体である。具体的な実施形態では、Fc受容体は、活性化ヒトFcγ受容体であり、より特定的には、ヒトFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRIIaであり、最も特定的には、ヒトFcγRIIIaである。好ましくは、これらそれぞれの受容体に対する結合が低下する。いくつかの実施形態では、相補性構成要素に対する結合アフィニティ(特定的にはC1qに対する結合アフィニティ)も低下する。一実施形態では、新生児Fc受容体(FcRn)に対する結合アフィニティは、低下しない。FcRnに対する実質的に同様の結合(すなわち、前記受容体に対するFcドメインの結合アフィニティの保護)は、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む二重特異性抗原結合分子)が、FcRnに対するFcドメインの操作されていない形態(又はFcのこの操作されていない形態を含む二重特異性抗原結合分子)の結合アフィニティの約70%を超える結合アフィニティを示す場合に達成される。Fcドメイン、又は前記Fcドメインを含む二重特異性抗原結合分子は、このようなアフィニティの約80%より大きく、更に約90%より大きいアフィニティを示してもよい。特定の実施形態では、二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、操作されていないFcドメインと比較して、エフェクター機能が低下するように操作される。エフェクター機能の低下としては、限定されないが、以下の1つ以上が挙げられ得る。補体依存性細胞傷害(CDC)の低下、抗体依存性細胞傷害(ADCC)の低下、抗体依存性細胞食作用(ADCP)の低下、サイトカイン分泌の低下、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性抗原取り込みの低下、NK細胞に対する結合の低下、マクロファージに対する結合の低下、単球に対する結合の低下、多形核細胞に対する結合の低下、直接的なシグナル伝達誘発性アポトーシスの低下、標的に結合する抗体の架橋の低下、樹状細胞成熟の低下、又はT細胞プライミングの低下。一実施形態では、エフェクター機能の低下は、CDCの低下、ADCCの低下、ADCPの低下及びサイトカイン分泌の低下の群から選択される1つ以上である。特定の実施形態では、エフェクター機能の減少は、ADCCの減少である。一実施形態では、ADCCの低下は、操作されていないFcドメイン(又は操作されていないFcドメインを含む二重特異性抗原結合分子)によって誘発されるADCCの20%未満である。
【0235】
一実施形態では、Fc受容体に対するFcドメインの結合アフィニティ及び/又はエフェクター機能を下げるアミノ酸変異は、アミノ酸置換である。一実施形態では、Fcドメインは、E233、L234、L235、N297、P331及びP329の群から選択される位置にアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。より具体的な実施形態では、Fcドメインは、L234、L235及びP329の群から選択される位置にアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、アミノ酸置換L234A及びL235A(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。1つのこのような実施形態では、Fcドメインは、IgGFcドメイン、特にヒトIgGFcドメインである。一実施形態では、Fcドメインは、位置P329にアミノ酸置換を含む。より具体的な実施形態では、アミノ酸置換は、P329A又はP329G、特にP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)である。一実施形態では、Fcドメインは、位置P329にアミノ酸置換を含み、E233、L234、L235、N297及びP331から選択される位置に更なるアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。より具体的な実施形態では、更なるアミノ酸置換は、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D又はP331Sである。特定的な実施形態では、Fcドメインは、位置P329、L234及びL235のアミノ酸置換(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。より特定的な実施形態では、Fcドメインは、アミノ酸変異L234A、L235A及びP329Gを含む(「P329G LALA」、「PGLALA」又は「LALAPG」)。特定的には、特定的な実施形態では、Fcドメインのそれぞれのサブユニットは、アミノ酸置換L234A、L235A及びP329G(Kabat EUインデックス番号付け)を含み、すなわち、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットそれぞれにおいて、位置234のロイシン残基が、アラニン残基(L234A)と置き換わっており、位置235のロイシン残基が、アラニン残基(L235A)と置き換わっており、位置329のプロリン残基が、グリシン残基(P329G)と置き換わっている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0236】
1つのこのような実施形態では、Fcドメインは、IgGFcドメイン、特にヒトIgGFcドメインである。アミノ酸置換の「P329G LALA」の組み合わせは、その全体が本明細書に参考として組み込まれるPCT出願公開第WO 2012/130831号に記載されるように、ヒトIgGFcドメインのFcγ受容体(及び相補体)の結合をほとんど完全になくす。WO 2012/130831号は、このような変異体Fcドメインを調製する方法及びFc受容体の結合又はエフェクター機能などの特性を決定する方法も記載する。
【0237】
IgG抗体は、IgG抗体と比較して、Fc受容体に対する結合アフィニティの低下と、エフェクター機能の低下を示す。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の免疫抱合体に含まれる二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、IgGFcドメイン、特にヒトIgGFcドメインである。一実施形態では、IgGFcドメインは、位置S228にアミノ酸置換を含み、特定的には、アミノ酸置換S228P(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。Fc受容体及び/又はそのエフェクター機能に対する結合アフィニティを更に低下させるために、一実施形態では、IgGFcドメインは、位置L235にアミノ酸置換を含み、特定的には、アミノ酸置換L235E(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。別の実施形態では、IgGFcドメインは、位置P329にアミノ酸置換を含み、特定的には、アミノ酸置換P329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。特定の実施形態では、IgGFcドメインは、位置S228、L235及びP329にアミノ酸置換を含み、特異的には、アミノ酸置換S228P、L235E及びP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。このようなIgGFcドメイン変異体及びそのFcγ受容体結合特性は、その全体が本明細書に参考として組み込まれるPCT出願公開第2012/130831号に記載される。
【0238】
特定の実施形態では、ネイティブIgGFcドメインと比較して、Fc受容体に対する結合アフィニティの低下及び/又はエフェクター機能の低下を示すFcドメインは、アミノ酸置換L234A、L235A及び場合によりP329Gを含むトIgGFcドメイン、又はcomprising theアミノ酸置換S228P、L235E及び場合によりP329Gを含むヒトIgGFcドメインである(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0239】
特定の実施形態では、FcドメインのN-グリコシル化は、除去されている。1つのこのような実施形態では、Fcドメインは、位置N297にアミノ酸変異、特定的には、アスパラギンをアラニンに置き換えるアミノ酸置換(N297A)又はアスパラギン酸に置き換えるアミノ酸置換(N297D)(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。
【0240】
本明細書に記載され、PCT出願公開第WO 2012/130831号に記載されるFcドメインに加え、Fc受容体結合及び/又はエフェクター機能が低下したFcドメインは、Fcドメイン残基238、265、269、270、297、327及び329の1つ以上の置換(米国特許第6,737,056号)(Kabat EUインデックスによる番号付け)も含む。このようなFc変異体としては、アミノ酸位置265、269、270、297及び327のうち2つ以上での置換を有するFc変異体が挙げられ、残基265及び297がアラニンに置換されている、いわゆる「DANA」Fc変異体を含む(米国特許第7,332,581号)。
【0241】
変異体Fcドメインは、当該技術分野で周知の遺伝的方法又は化学的方法を用い、アミノ酸の欠失、置換、挿入又は改変によって調製することができる。遺伝的方法は、コードDNA配列の部位特異的変異導入法、PCR、遺伝子合成などを含んでいてもよい。正しいヌクレオチド変化は、例えば、スクリーニングによって確認することができる。
【0242】
Fc受容体に対する結合は、例えば、ELISAによって、又はBIAcore装置(GE Healthcare)などの標準的な装置と組換え発現によって得られ得るFc受容体を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)によって、容易に決定することができる。又は、Fc受容体に対するFcドメイン又はFcドメインを含む二重特異性抗原結合分子の結合アフィニティは、特定のFc受容体を発現することが知られている細胞株(例えば、FcγIIIa受容体を発現するヒトNK細胞)を用いて評価されてもよい。
【0243】
Fcドメイン、又はFcドメインを含む二重特異性抗原結合分子のエフェクター機能は、当該技術分野で既知の方法によって測定することができる。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの例は、米国特許第5,500,362号、Hellstrom et al.Proc Natl Acad Sci USA 83,7059-7063 (1986)及びHellstrom et al., Proc Natl Acad Sci USA 82,1499-1502(1985)、米国特許第5,821,337号、Bruggemann et al., J Exp Med 166, 1351-1361 (1987)に記載される。又は、非放射性アッセイ方法を使用してもよい(例えば、フローサイトメトリー(CellTechnology、Inc. Mountain View、CA)のためのACTI(商標)非放射性細胞毒性アッセイ、及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega、Madison、WI))。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。これに代えて、又はこれに加えて、目的の分子のADCC活性は、in vivoで、例えば、Clynes et al.,Proc Natl Acad Sci USA 95,652-656 (1998)に開示されるような動物モデルにおいて評価されてもよい。
【0244】
いくつかの実施形態では、相補性構成要素に対する(特定的にはC1qに対する)Fcドメインの結合が低下する。したがって、Fcドメインが、エフェクター機能が低下するように操作されたいくつかの実施形態では、エフェクター機能の低下は、CDCの低下を含む。Fcドメイン、又はFcドメインを含む二重特異性抗原結合分子が、C1qに結合することができ、したがって、CDC活性を有するかどうかを決定するために、C1q結合アッセイが行われてもよい。例えば、WO 2006/029879号およびWO 2005/100402号のC1q及びC3c結合ELISAを参照。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al.、J Immunol Methods 202、163 (1996);Cragg et al.、Blood 101、1045-1052 (2003);及びCragg and Glennie、Blood 103、2738-2743 (2004)を参照)。
【0245】
FcRn結合及びin vivoでのクリアランス/半減期の決定は、当該技術分野で既知の方法を用いても行うことができる(例えば、Petkova、S.B. et al.、Int’l. Immunol. 18(12):1759-1769 (2006);WO 2013/120929号を参照)。
【0246】
本発明の特定の態様
特定の態様では、本発明は、免疫抱合体であって、変異体IL-2ポリペプチドと、PD-1及びTim-3に結合する二重特異性抗原結合分子とを含み、
前記変異体IL-2ポリペプチドは、アミノ酸置換F42A、Y45A及びL72G(ヒトIL-2配列の配列番号22に対する番号付け)を含むヒトIL-2分子であり、
前記二重特異性抗原結合分子が、
i)PD-1に結合し、(a)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と(b)配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む第1の抗原結合部分と、
ii)Tim-3に結合し、(a)配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と(b)配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む第2の抗原結合部分とを含む、免疫抱合体を提供する。
【0247】
特定の態様では、本発明は、免疫抱合体であって、変異体IL-2ポリペプチドと、PD-1及びTim-3に結合する二重特異性抗原結合分子とを含み、
変異体IL-2ポリペプチドは、アミノ酸置換T3A、F42A、Y45A、L72G及びC125A(ヒトIL-2配列の配列番号22に対する番号付け)を含むヒトIL-2分子であり;
前記二重特異性抗原結合分子が、
i)PD-1に結合し、(a)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と(b)配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む第1の抗原結合部分と、
ii)Tim-3に結合し、(a)配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と(b)配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む第2の抗原結合部分とを含む、免疫抱合体を提供する。
【0248】
特定の態様では、本発明は、免疫抱合体であって、変異体IL-2ポリペプチドと、PD-1及びTim-3に結合する二重特異性抗原結合分子とを含み、
変異体IL-2ポリペプチドが、配列番号23のアミノ酸配列を含み、
前記二重特異性抗原結合分子が、
i)PD-1に結合し、(a)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と(b)配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む第1の抗原結合部分と、
ii)Tim-3に結合し、(a)配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と(b)配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む第2の抗原結合部分とを含む、免疫抱合体を提供する。
【0249】
上の態様のいずれか1つに係るいくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっており、第2の抗原結合部分が、(従来の)Fab分子である。いくつかのこのような実施形態では、第2の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リシン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸が、リシン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0250】
上の態様のいずれか1つに係るいくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は更に、第1及び第2のサブユニットで構成されるFcドメインを含む。いくつかのこのような実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端で、Fcドメインのサブユニットの1つのN末端に(特に、Fcドメインの第1のサブユニットに)融合し、第2の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端で、Fcドメインのサブユニットの他の1つのN末端に(特に、Fcドメインの第2のサブユニットに)融合する。
【0251】
特定の態様では、本発明は、免疫抱合体であって、変異体IL-2ポリペプチドと、PD-1及びTim-3に結合する二重特異性抗原結合分子とを含み、
変異体IL-2ポリペプチドが、配列番号23のアミノ酸配列を含み、
前記二重特異性抗原結合分子が、
i)PD-1に結合し、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが、互いに置き換わったFab分子であり、(a)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、(b)配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、第1の抗原結合部分と、
ii)Tim-3に結合し、(従来の)Fab分子であり、(a)配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み、第2の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リシン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸が、リシン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)、第2の抗原結合部分と、
iii)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインとを含み、
第1の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端で、Fcドメインのサブユニットの1つのN末端に(特に、Fcドメインの第1のサブユニットに)融合し、第2の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端で、Fcドメインのサブユニットの他の1つのN末端に(特に、Fcドメインの第2のサブユニットに)融合する。
【0252】
本発明の上のいずれかの態様に係るいくつかの実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、位置366のトレオニン残基は、トリプトファン残基と置き換わっており(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、位置407のチロシン残基は、バリン残基と置き換わっており(Y407V)、場合により、位置366のトレオニン残基は、セリン残基と置き換わっており(T366S)、位置368のロイシン残基は、アラニン残基と置き換わっている(L368A)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。いくつかのこのような実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、更に、位置354のセリン残基が、システイン残基と置き換わっている(S354C)か、又は位置356のグルタミン酸残基が、システイン残基と置き換わっており(E356C)(特に、位置354のセリン残基がシステイン残基と置き換わっており)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、更に、位置349のチロシン残基が、システイン残基と置き換わっている(Y349C)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0253】
本発明の上のいずれかの態様に係るいくつかの実施形態では、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットそれぞれにおいて、位置234のロイシン残基が、アラニン残基(L234A)と置き換わっており、位置235のロイシン残基が、アラニン残基と置き換わっており(L235A)、位置329のプロリン残基が、グリシン残基と置き換わっている(P329G)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0254】
本発明の上のいずれかの態様に係るいくつかの実施形態では、Fcドメインは、ヒトIgGFcドメインである。
【0255】
本発明の上の態様のいずれかに係るいくつかの実施形態では、変異体IL-2ポリペプチドは、そのアミノ末端アミノ酸で、配列番号24のリンカーペプチドを介し、Fcドメインの第1のサブユニットのカルボキシ末端アミノ酸に融合する。
【0256】
特定の具体的な実施形態では、免疫抱合体は、配列番号25の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号26の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号27の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び配列番号28の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。更に特定の特定的な実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号25のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号26のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号27のアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び配列番号28のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0257】
ポリヌクレオチド
本発明は更に、本明細書に記載の免疫抱合体をコードする、単離されたポリヌクレオチド又はそのフラグメントを提供する。いくつかの実施形態では、前記フラグメントは、抗原結合フラグメントである。
【0258】
本発明の免疫抱合体をコードするポリヌクレオチドは、完全な免疫抱合体をコードする単一のポリヌクレオチドとして発現されてもよく、又は同時発現される複数の(例えば、2つ以上の)ポリヌクレオチドとして発現されてもよい。一緒に発現するポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは、例えば、ジスルフィド結合又は他の手段を介して会合し、機能的な免疫抱合体を形成してもよい。例えば、抗体の軽鎖部分は、抗体の重鎖と変異体IL-2ポリペプチドとを含む免疫抱合体の一部に由来する別個のポリヌクレオチドによってコードされてもよい。同時発現する場合、重鎖ポリペプチドは、軽鎖ポリペプチドと会合し、免疫抱合体を形成する。別の例では、2つのFcドメインサブユニットのうち1つと変異体IL-2ポリペプチドとを含む免疫抱合体の一部は、2つのFcドメインサブユニットの他方を含む免疫抱合体の一部に由来する別個のポリヌクレオチドによってコードされてもよい。同時発現する場合、Fcドメインサブユニットが会合し、Fcドメインを形成する。
【0259】
いくつかの実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、本明細書に記載する本発明に係る免疫抱合体全体をコードする。他の実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、本明細書に記載する本発明に係る免疫抱合体に含まれるポリペプチドをコードする。
【0260】
一実施形態では、本発明の単離されたポリヌクレオチドは、免疫抱合体に含まれる二重特異性抗原結合分子の重鎖(例えば、免疫グロブリン重鎖)と変異体IL-2ポリペプチドをコードする。別の実施形態では、本発明の単離されたポリヌクレオチドは、免疫抱合体に含まれる二重特異性抗原結合分子の軽鎖をコードする。
【0261】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチド又は核酸は、DNAである。他の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、RNAであり、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)の形態のRNAである。本発明のRNAは、一本鎖又は二本鎖であってもよい。
【0262】
組換え方法
本発明で有用な変異体IL-2ポリペプチドは、当該技術分野で周知の遺伝的方法又は化学的方法を用い、欠失、置換、挿入又は改変によって調製することができる。遺伝的方法は、コードDNA配列の部位特異的変異導入法、PCR、遺伝子合成などを含んでいてもよい。正しいヌクレオチド変化は、例えば、スクリーニングによって確認することができる。この観点で、ネイティブIL-2のヌクレオチド配列は、Taniguchi et al.(Nature 302,305-10(1983))に記載されており、ヒトIL-2をコードする核酸は、American Type Culture Collection(ロックビル、MD)などの公的な寄託機関から入手可能である。ネイティブヒトIL-2の配列を配列番号22に示す。置換又は挿入は、天然アミノ酸残基及び非天然アミノ酸残基を含んでいてもよい。アミノ酸改変は、例えば、グリコシル化部位の付加又は炭水化物の接続など、化学修飾の周知の方法を含む。
【0263】
本発明の免疫抱合体は、例えば、固体状態ペプチド合成(例えば、Merrifield固相合成)又は組換え産生によって得られてもよい。組換え産生について、免疫抱合体(フラグメント)をコードする1つ以上のポリヌクレオチド、例えば、上述のものは、更なるクローニング及び/又は宿主細胞での発現のために、単離され、1つ以上のベクターに挿入される。このようなポリヌクレオチドは、従来の手順を用い、容易に単離され、配列決定されてもよい。一実施形態では、本発明の1つ以上のポリヌクレオチドを含むベクター、好ましくは発現ベクターが提供される。当業者に周知の方法を使用し、適切な転写/翻訳制御シグナルと共に、免疫抱合体(フラグメント)のコード配列を含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法としては、in vitro組換えDNA技術、合成技術及びin vivo組換え/遺伝子組換えが挙げられる。、例えば、Maniatiset al.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、N.Y.(1989);及びAusubelet al.、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates and Wiley Interscience、N.Y (1989)に記載される技術を参照。発現ベクターは、プラスミド、ウイルスの一部であってもよく、又は核酸フラグメントであってもよい。発現ベクターは、免疫抱合体(フラグメント)をコードするポリヌクレオチド(すなわちコード領域)が、プロモーター及び/又は他の転写要素又は翻訳制御要素と共に操作可能に会合してクローン化される発現カセットを含む。本明細書で使用される場合、「コード領域」は、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸の一部である。「停止コドン」(TAG、TGA又はTAA)は、アミノ酸に翻訳されないが、コード領域の一部であると考えられてもよいが、存在する場合、任意のフランキング配列、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロン、5’及び3’未翻訳領域などは、コード領域の一部ではない。2つ以上のコード領域が、単一のポリヌクレオチド構築物中に例えば、単一のベクター上に存在していてもよく、又は別個のポリヌクレオチド構築物中に例えば別個の(異なる)ベクター上に存在していてもよい。更に、任意のベクターは、単一のコード領域を含んでいてもよく、又は2つ以上のコード領域を含んでいてもよく、例えば本発明のベクターは、1つ以上のポリペプチドをコードしてもよく、翻訳後又は翻訳と同時に、タンパク質分解による開裂によって、最終的なタンパク質へと分離される。これに加え、本発明のベクター、ポリヌクレオチド又は核酸は、異種コード領域をコードし、本発明の免疫抱合体をコードするポリヌクレオチド、又はそのバリアント又は誘導体に融合するか、又は融合しなくてもよい。異種コード領域としては、限定されないが、特殊な要素又はモチーフ、例えば、分泌シグナルペプチド又は異種機能性ドメインが挙げられる。作動可能な会合は、ある遺伝子産物(例えばポリペプチド)のコード領域が、制御配列の影響下又は制御下で、遺伝子産物の発現を行うような様式で、1つ以上の制御配列と会合する。2つのDNAフラグメント(例えば、ポリペプチドコード領域及びこれに関連するプロモーター)は、プロモーター機能の導入によって、所望の遺伝子産物をコードするmRNAの転写が起こる場合、2つのDNAフラグメント間の結合の性質が、遺伝子産物の発現を試行する発現制御配列の能力を妨害しないか、又はDNAテンプレートを転写する能力卯を妨害しない場合、「作動可能に会合する」。したがって、プロモーター領域は、プロモーターが核酸の転写を行うことが可能な場合、ポリペプチドをコードする核酸と作動可能に会合していてもよい。プロモーターは、所定の細胞内でのDNAの実質的な転写のみに指向する細胞特異的なプロモーターであってもよい。プロモーター以外の他の転写制御要素、例えば、エンハンサー、オペレーター、転写停止シグナルは、細胞特異的な転写に指向するために、ポリヌクレオチドに作動可能に会合してもよい。適切なプロモーター及び他の転写制御領域は、本明細書に開示される。種々の転写制御領域が当業者に知られている。これらとしては、限定されないが、脊椎動物細胞内で機能する転写制御領域、例えば、限定されないが、サイトメガロウイルス由来のプロモーター及びエンハンサーセグメント(例えば最初期プロモーター、イントロン-Aと組み合わせる)、シミアンウイルス40(例えば初期プロモーター)及びレトロウイルス(例えばラウス肉腫ウイルス)が挙げられる。他の転写制御領域としては、脊椎動物遺伝子から誘導されるもの、例えば、アクチン、ヒートショックタンパク質、ウシ成長ホルモン及びウサギβ-グロビン、及び真核細胞において遺伝子発現を制御することが可能な他の配列が挙げられる。更なる適切な転写制御領域としては、組織特異的なプロモーター及びエンハンサー、及び誘発性プロモーター(例えばプロモーター誘発性テトラサイクリン)が挙げられる。同様に、種々の翻訳制御要素は、当業者に知られている。これらとしては、限定されないが、リボソーム結合部位、翻訳開始及び停止コドン、ウイルス系から誘導される要素(特に、内部リボソーム侵入部位、すなわちIRES、CITE配列とも呼ばれる)が挙げられる。発現カセットは、例えば、複製の起源及び/又は染色体組み込み要素、例えば、レトロウイルスの長い末端反復 (LTR)、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)末端逆位配列(ITR)などの他の特徴も含んでいてもよい。
【0264】
本発明のポリヌクレオチド 及び核酸コード領域は、分泌又はシグナルペプチドをコードする更なるコード領域と会合してもよく、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの分泌を指向する。シグナル仮説によれば、哺乳動物細胞によって分泌されるタンパク質は、シグナルペプチド又は分泌リーダー配列を有しており、これらは、粗い小胞体を通って成長したタンパク質鎖が外に出始めると、成熟タンパク質からは開裂する。当業者は、脊椎動物細胞によって分泌されるポリペプチドが、一般的に、ポリペプチドのN末端に融合するシグナルペプチドを有しており、ポリペプチドの分泌した形態又は「成熟」形態を生成するために、翻訳されたポリペプチドから開裂することを知っている。例えば、ヒトIL-2は、ポリペプチドのN末端にある20アミノ酸シグナル配列を用いて翻訳され、その後、開裂して、成熟133アミノ酸ヒトIL-2を生成する。特定の実施形態では、ネイティブシグナルペプチド、例えばIL-2 シグナルペプチド 又は免疫グロブリン重鎖又は軽鎖シグナルペプチドが使用されるか、又は作動可能に会合するポリペプチドの分裂を指向する能力を保持する配列の機能性誘導体が使用される。又は、異種哺乳動物シグナルペプチド、又はその機能性誘導体を使用してもよい。例えば、野生型リーダー配列は、ヒト組織プラスミノーゲンアクティベーター(TPA)又はマウスβ-グルクロニダーゼのリーダー配列で置換されてもよい。
【0265】
後の精製を容易にするために使用可能な(例えば、ヒスチジンタグ)、又は免疫抱合体を標識するのに役立つ短いタンパク質配列をコードするDNAは、ポリヌクレオチドをコードする免疫抱合体(フラグメント)の末端に、又は末端の中に含まれていてもよい。
【0266】
更なる実施形態では、本発明の1つ以上のポリヌクレオチドを含む宿主細胞が提供される。特定の実施形態では、本発明の1つ以上のベクターを含む宿主細胞が提供される。ポリヌクレオチド及びベクターは、それぞれポリヌクレオチド及びベクターに関連して本明細書に記載する特徴のいずれかを単独で、又は組み合わせて組み込んでもよい。1つのこのような実施形態では、宿主細胞は、本発明の免疫抱合体をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む1つ以上のベクターを含む(例えば、形質転換されるか、又はトランスフェクトされる)。本明細書で使用される場合、「宿主細胞」との用語は、本発明の免疫抱合体又はそのフラグメントを生成するように操作することが可能任意の種類の細胞系を指す。免疫抱合体を複製し、免疫抱合体の発現を補助するのに適した宿主細胞は、当該技術分野で周知である。このような細胞は、適切な場合、特定の発現ベクターを用いてトランスフェクトされるか、又は形質導入されてもよく、大規模発酵機に接種するために大量のベクターを含む細胞を成長させ、臨床用途に十分な量の免疫抱合体を得ることができる。適切な宿主細胞としては、原核微生物(例えば大腸菌)又は種々の真核生物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、昆虫細胞などが挙げられる。例えば、ポリペプチドは、特にグリコシル化が必要とされない場合には、細菌内で産生されてもよい。発現後、ポリペプチドは、適切なフラクション中の細菌細胞ペーストから単離されてもよく、更に精製されてもよい。原核生物に加え、真核生物の微生物、例えば、糸状菌又は酵母は、ポリペプチドをコードするベクターに適切なクローニング又は発現の宿主であり、グリコシル化経路が「ヒト化」された真菌株及び酵母株を含み、部分的又は完全にヒトグリコシル化パターンを有するポリペプチドを産生する。Gerngross,Nat Biotech 22,1409-1414(2004)及びLi et al.,Nat Biotech 24,210-215(2006)を参照。(グリコシル化)ポリペプチドの発現に適した宿主細胞も、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。多くのバキュロウイルス株が同定されており、特に、Spodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために、これを昆虫細胞と組み合わせて使用してもよい。植物細胞培養物も、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、第6,040,498号、第6,420,548号、第7,125,978号及び第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPL抗体TM技術)を参照。脊椎動物細胞も、宿主として使用されてもよい。例えば、懸濁物中で成長するように適合した哺乳動物細胞株が有用な場合がある。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40(COS-7)によって形質転換されたサル腎臓CV1株、ヒト胚腎臓株(例えば、Graham et al.、J Gen Virol 36、59(1977)に記載されるような293細胞又は293T細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather、Biol Reprod 23、243-251(1980)に記載されるようなTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリサル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト頸部癌腫細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍細胞(MMT 060562)、TRI細胞(例えば、Mather et al.、Annals N.Y.Acad Sci 383,44-68(1982)に記載されるもの)、MRC 5細胞、及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株としては、dhfrCHO細胞を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub et al.,Proc Natl Acad Sci USA 77,4216(1980))、骨髄腫細胞株、例えば、YO、NS0、P3X63及びSp2/0が挙げられる。タンパク質産生に適した特定の哺乳動物宿主細胞の総説としては、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology,Vol. 248(B.K.C.Lo, ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp. 255-268 (2003)を参照。宿主細胞としては、培養細胞、例えば、ほんの数例を挙げると、哺乳動物培養細胞、酵母細胞、昆虫細胞、細菌細胞及び植物細胞が挙げられるが、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物又は培養植物又は動物組織に含まれる細胞も含まれる。一実施形態では、宿主細胞は、真核細胞であり、好ましくは、哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胚腎臓(HEK)細胞又はリンパ球細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。
【0267】
これらの系において外来遺伝子を発現させる標準的な技術は、当該技術分野で既知である。抗体の重鎖又は軽鎖のいずれかに融合する変異体IL-2ポリペプチドを発現する細胞は、発現した変異体IL-2の融合産物が、重鎖と軽鎖の両方を含む抗体であるように、抗体鎖の他方も発現するように操作されてもよい。
【0268】
一実施形態では、本発明に係る免疫抱合体を産生する方法が提供され、この方法は、本明細書に提供されるように、免疫抱合体の発現に適した条件下、免疫抱合体をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む宿主細胞を培養することと、場合により、宿主細胞(又は宿主細胞培地)から免疫抱合体を回収することとを含む。
【0269】
本発明の免疫抱合体では、変異体IL-2ポリペプチドは、二重特異性抗原結合分子に遺伝的に融合していてもよく、又は二重特異性抗原結合分子に化学的に抱合していてもよい。二重特異性抗原結合分子に対するIL-2ポリペプチドの遺伝的融合は、IL-2配列が、ポリペプチドに直接的に融合するか、又はリンカー配列を介して間接的に融合するように設計することができる。リンカーの組成及び長さは、当該技術分野で周知の方法に従って決定されてもよく、有効性について試験されてもよい。特定のリンカーペプチドは、本明細書に記載される。また、更なる配列が、開裂部位を組み込み、融合の個々の構成要素を分離するために含まれていてもよい(所望な場合、例えば、エンドペプチダーゼ認識配列)。これに加え、IL-2融合タンパク質は、当該技術分野で周知であるように、ポリペプチド合成方法(例えば、Merrifield固相合成)を用い、化学的に合成されてもよい。変異体IL-2ポリペプチドは、周知の化学抱合方法を用い、他の分子(例えば抗体)に化学的に抱合されてもよい。二官能架橋試薬(例えば、当該技術分野で周知のホモ官能性及びヘテロ官能性架橋試薬)をこの目的で使用することができる。使用する架橋試薬の種類は、IL-2にカップリングする分子の性質に依存し、当業者なら容易に特定することができる。これに代えて、又はこれに加え、変異体IL-2及び/又は抱合されることを意図した分子は、これも当該技術分野で周知なように、これら2つを別個の反応で抱合することができるように化学的に誘導体化されてもよい。
【0270】
本発明の免疫抱合体は、二重特異性抗原結合分子を含み、抗体(の一部)を含んでいてもよい。抗体を産生する方法は、当該技術分野で周知である(例えば、Harlow and Lane,「Antibodies, a laboratory manual」,Cold Spring Harbor Laboratory,1988を参照)。天然に存在しない抗体は、固相ペプチド合成を用いて構築することができ、組換えによって産生することができ(例えば、米国特許第4,186,567号に記載されるように)、又は例えば、可変重鎖及び可変軽鎖を含むコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって(例えば、McCaffertyに対する米国特許第5,969,108号を参照)構築することができる。免疫抱合体、抗体、及びこれらを産生する方法も、例えば、その全体が本明細書に参考として組み込まれるPCT出願公開番号第WO 2011/020783号、第WO 2012/107417号及び第WO 2012/146628号に記載されている。
【0271】
任意の動物種の抗体、抗体フラグメント、抗原結合ドメイン又は可変領域を、本発明の免疫抱合体で使用してもよい。本発明で有用な非限定的な抗体、抗体フラグメント、抗原結合ドメイン又は可変領域は、マウス、霊長類又はヒト由来であってもよい。免疫抱合体がヒトへの使用を意図したものである場合、抗体の定常領域がヒト由来であるキメラ形態の抗体を使用してもよい。抗体のヒト化形態又は完全なヒト形態は、当該技術分野で周知の方法に従って調製することもできる(例えば、Winterに対する第5,565,332号を参照)。ヒト化は、限定されないが、(a)重要なフレームワーク残基(例えば、良好な抗原結合アフィニティ又は抗体機能を維持するのに重要なもの)を保持しつつ、又は保持せずに、非ヒト(例えば、ドナー抗体)のCDRをヒト(例えば、レシピエント抗体)のフレームワーク領域及び定常領域に接合すること、(b)非ヒト特異性決定領域(SDR又はa-CDR;抗体-抗原相互作用にとって重要な残基)のみをヒトフレームワーク及び定常領域にグラフト接合すること、又は(c)全非ヒト可変ドメインを翻訳するが、表面残基を置き換えることによって、これらとヒト様部分とを「クローキング」することを含め、種々の方法によって達成されてもよい。ヒト化抗体及びこれを製造する方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633 (2008)に記載され、更に、例えば、Riechmann et al.,Nature332:323-329 (1988);Queen et al.,Proc.Nat’l Acad. Sci.USA86:10029-10033(1989);米国特許第5,821,337号、第7,527,791号、第6,982,321号及び第7,087,409号;Kashmiriet al.,Methods36:25-34(2005)(特異性決定領域(SDR)のグラフト接合を記載する);Padlan,Mol. Immunol.28:489-498 (1991)(「リサーフェシング」を記載する);Dall’Acqua et al.,Methods 36:43-60 (2005)(「FRシャッフリング」を記載する);及びOsbourn et al.,Methods36:61-68 (2005)及びKlimka et al.,Br. J. Cancer,83:252-260 (2000)(FRシャッフリングに対する「ガイド付き選択」手法を記載する)に記載される。ヒト化に使用可能なフレームワーク領域としては、限定されないが、「ベストフィット」方法を用いて選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J. Immunol.151:2296 (1993)を参照);軽鎖又は重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列から誘導されるフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89:4285(1992);及びPresta et al.J. Immunol.、151:2623(1993)を参照);ヒト成熟(体細胞性変異を受けた)フレームワーク領域又はヒト生殖系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson、Front. Biosci. 13:1619-1633(2008)を参照);及びFRライブラリのスクリーニングから誘導されるフレームワーク領域(例えば、Baca et al.、J. Biol. Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok et al.、J. Biol. Chem. 271:22611-22618(1996)を参照)が挙げられる。
【0272】
ヒト抗体は、当該技術分野で既知の種々の方法を用いて産生することができる。ヒト抗体は、一般的に、van Dijk and van de Winkel、Curr Opin Pharmacol 5、368-74(2001)及びLonberg、Curr Opin Immunol 20、450-459(2008)に記載される。ヒト抗体は、免疫原を、インタクトなヒト抗体又は抗原性チャレンジに応答してヒト可変領域を有するインタクト抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に投与することによって調製されてもよい。このような動物は、典型的には、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全て又は一部を含み、内因性免疫グロブリン遺伝子座が置き換わっているか、又は動物の染色体に外部の染色体が存在するか、又は無作為に組み込まれている。このようなトランスジェニックマウスにおいて、外因性免疫グロブリン遺伝子座は、一般的に不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得る方法の総説として、Lonberg、Nat. Biotech.23:1117-1125(2005)を参照。また、例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載する米国特許第6,075,181号及び第6,150,584号、HuMab(登録商標)技術を記載する米国特許第5,770,429号、K-M MOUSE(登録商標)技術を記載する米国特許第7,041,870号、VelociMouse(登録商標)技術)を記載する米国特許出願公開第US 2007/0061900号も参照。このような動物から作られるインタクト抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって、更に改変されてもよい。
【0273】
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づく方法によっても製造することができる。ヒトモノクローナル抗体を産生するためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株が記載されている。(例えば、KozborJ. Immunol.,133:3001(1984);Brodeur et al,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987);及びBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)を参照。)ヒトB細胞ハイブリドーマ技術によって作られるヒト抗体は、Li et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、103:3557-3562(2006)にも記載される。更なる方法は、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株由来のモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載する)及びNi、Xiandai Mianyixue、26(4):265-268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載する)を含む。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)も、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91 (2005)に記載される。
【0274】
ヒト抗体はまた、本明細書に記載されるように、ヒト抗体ライブラリからの単離によって作られてもよい。
【0275】
本発明に有用な抗体は、所望な1つ以上の活性を有する抗体に関するコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって単離されてもよい。コンビナトリアルライブラリをスクリーニングする方法は、例えば、Lerner et al.、Nature Reviews16:498-508(2016)にまとめられている。例えば、ファージディスプレイを作成し、所望な結合特徴を有する抗体について、このようなライブラリをスクリーニングする種々の方法が、当該技術分野で既知である。このような方法は、例えば、Frenzel et al.mAbs8:1177-1194 (2016);Bazan et al.Human Vaccines and Immunotherapeutics 8:1817-1828 (2012)及びZhao et al.Critical Reviews in Biotechnology 36:276-289 (2016)及びHoogenboom et al.Methods in Molecular Biology178:1-37(O’Brien et al.編集、Human Press,Totowa,NJ,2001)及びMarks and Bradbury Methods in Molecular Biology248:161-175(Lo編集、Human Press,Totowa,NJ,2003)にまとめられている。
【0276】
特定のファージディスプレイ方法において、VH及びVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別個にクローン化され、ファージライブラリに無作為に組み換えられ、次いで、Winter et al.Annual Review of Immunology12: 433-455(1994)に記載されるように、抗原結合ファージについてスクリーニングすることができる。ファージは、典型的には、一本鎖Fv(scFv)フラグメントとして、又はFabフラグメントとして、抗体フラグメントを提示する。免疫化源からのライブラリは、ハイブリドーマを構築する必要なく、免疫原に対する高アフィニティ抗体を与える。又は、ナイーブなレパートリーをクローン化し(例えば、ヒトから)、Griffiths et al.EMBO Journal12:725-734(1993)に記載されるように、免疫化することなく、非自己から自己抗原までの広範囲に対する単一の抗体源を得ることができる。最後に、ナイーブライブラリーも、Hoogenboom and Winter,Journal of Molecular Biology227:381-388(1992)に記載されるように、幹細胞から再整列していないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含むPCRプライマーを用い、高度に可変性のCDR3領域をコードし、in vitroで再整列を達成することによって、合成的に作成することができる。ヒト抗体ファージライブラリを記載する特許刊行物としては、例えば、以下のものが挙げられる。米国特許第5,750,373号、第7,985,840号、第7,785,903号及び第8,679,490号、並びに米国特許出願公開第2005/0079574号、第2007/0117126号、第2007/0237764号及び第2007/0292936号。所望な1つ以上の活性を有する抗体のためのコンビナトリアルライブラリをスクリーニングする当該技術分野で既知の方法の更なる例としては、リボソーム及びmRNAディスプレイ、及び細菌、哺乳動物細胞、昆虫細胞又は酵母細胞上での抗体提示及び選択のための方法が挙げられる。酵母表面ディスプレイの方法は、例えば、Scholler et al.Methods in Molecular Biology503:135-56 (2012)及びCherf et al.Methods in Molecular biology1319:155-175 (2015)及びZhao et al.Methods in Molecular Biology889:73-84 (2012)にまとめられている。リボソームディスプレイのための方法は、例えば、He et al.Nucleic Acids Research 25:5132-5134 (1997) and in Hanes et al、PNAS94:4937-4942 (1997)に記載される。
【0277】
本発明の免疫抱合体の更なる化学修飾が望ましい場合がある。例えば、免疫原性及び半減期の問題は、ポリエチレングリコール(PEG)又はポリプロピレングリコール(PPG)などの実質的に直鎖のポリマーへの抱合によって改良され得る(例えば、WO 87/00056号を参照)。
【0278】
本明細書で記載するように調製される免疫抱合体は、例えば、高速液体クロマトグラフィー、イオン排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーなどの当該技術分野で既知の技術によって精製されてもよい。特定のタンパク質を精製するために使用される実際の条件は、一部には、正味の電荷、疎水性、親水性などの因子に依存し、当業者には明らかである。抗体のアフィニティクロマトグラフィー精製について、リガンド受容体又は抗原を、免疫抱合体が結合するものに対して使用してもよい。例えば、変異体IL-2ポリペプチドに特異的に結合する抗体を使用してもよい。本発明の免疫抱合体のアフィニティクロマトグラフィー精製の場合、プロテインA又はGを含むマトリックスを使用してもよい。例えば、連続的なプロテインA又はGアフィニティクロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーを使用し、本質的に実施例に記載されるように、免疫抱合体を単離することができる。免疫抱合体の純度は、ゲル電気泳動、高速液体クロマトグラフィーなどの任意の種々の周知の分析方法によって決定することができる。
【0279】
組成物、製剤及び投与経路
更なる態様では、本発明は、以下のいずれかの治療方法で使用するための、本明細書に記載の免疫抱合体を含む医薬組成物を提供する。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で与えられるいずれかの免疫抱合体と、医薬的に許容される担体とを含む。別の実施形態では、医薬組成物は、本明細書で提供される免疫抱合体のいずれかと、少なくとも1つの更なる治療薬剤(例えば、以下に記載するもの)とを含む。
【0280】
更に提供されるのは、in vivoで投与に適した形態で本発明の免疫抱合体を産生する方法であって、この方法は、(a)本発明に係る免疫抱合体を得ることと、(b)免疫抱合体と、少なくとも1つの医薬的に許容される担体とを配合し、それによって、免疫抱合体の製剤を、in vivoでの投与のために配合することとを含む、方法である。
【0281】
本発明の医薬組成物は、医薬的に許容される担体に溶解又は分散した治療有効量の免疫抱合体を含む。「医薬的又は薬理学的に許容される」との句は、一般的に、使用する投薬量及び濃度でレシピエントに非毒性であり、すなわち、適切な場合、動物(例えばヒト)に投与したときに、有害なアレルギー反応又は他の不都合な反応を引き起こさない分子部分及び組成物を指す。免疫抱合体と、場合により更なる有効成分とを含む医薬組成物の調製は、本明細書に参考として組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences、18th Ed. Mack Printing Company、1990に例示されるように、本開示の観点で、当該技術分野で既知である。更に、動物(例えば、ヒト)投与の場合、製剤が、FDA Office of Biological Standards又は他の国の対応する機関によって必要とされるような滅菌性、発熱原性、全体的な安全性及び純度の基準を満たすべきであることは理解される。好ましい組成物は、凍結乾燥された製剤又は水溶液である。本明細書で使用される場合、「医薬的に許容される担体」は、当業者には知られているように(例えば、本明細書に参考として組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences、18th Ed. Mack Printing Company、1990、pp. 1289-1329を参照)、任意及び全ての溶媒、バッファー、分散媒体、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば抗菌剤、抗真菌剤)、等張化剤、吸収遅延剤、防腐剤、酸化防止剤、タンパク質、薬物、薬物安定化剤、ポリマー、ゲル、バインダー、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、染料、このような類似の材料及びこれらの組み合わせを含む。任意の従来の担体が、有効成分と不適合である場合を除き、治療組成物又は医薬組成物における使用が想定される。
【0282】
本発明の免疫抱合体(及び任意の更なる治療薬剤)は、非経口、肺内、鼻内を含む任意の適切な手段によって投与されてもよく、所望な場合、局所処置では、病変内投与によって投与されてもよい。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内又は皮下投与を含む。投薬は、任意の適切な経路によるもの、例えば、一部には、投与が一時的であるか慢性的であるかに依存して、注射によって、例えば、静脈又は皮下への注射によるものであってもよい。
【0283】
非経口組成物としては、注射による(例えば、皮下、皮内、病変内、静脈内、動脈内、筋肉内、髄腔内又は腹腔内注射による)投与のために設計されたものが挙げられる。注射のために、本発明の免疫抱合体は、水溶液中で配合されてもよく、好ましくは、生理学的に適合するバッファー、例えば、Hank溶液、Ringer溶液又は生理食塩水バッファー中で配合されてもよい。溶液は、配合剤、例えば、懸濁剤、安定化剤及び分散剤を含有していてもよい。又は、免疫抱合体は、適切なビヒクル、例えば、滅菌パイロジェンフリー水を用いて使用前に構築するための粉末形態であってもよい。滅菌注射可能溶液は、必要な場合には以下に列挙する種々の他の成分と共に、本発明の免疫抱合体を必要な量で、適切な溶媒に組み込むことによって調製される。滅菌性は、例えば、滅菌濾過膜による濾過によって、容易に達成され得る。一般的に、分散物は、種々の滅菌した有効成分を、塩基性分散媒体及び/又は他の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射可能溶液、懸濁物又は乳化物を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、既に滅菌濾過した液体媒体から有効成分と任意の更なる所望な成分の粉末が得られる減圧乾燥又は凍結乾燥技術である。液体媒体は、必要な場合には適切に緩衝化されているべきであり、注射する前に、十分な食塩水又はグルコースで液体希釈剤をまず等張性にする。組成物は、製造条件及び保存条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の混入作用から保護されなければならない。内毒素の混入は、安全なレベルで、例えば、0.5ng/mgタンパク質未満で最小限に維持されるべきであることが理解される。適切な医薬的に許容される担体としては、限定されないが、バッファー、例えば、ホスフェート、シトレート及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド;ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルパラベン又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリシン;単糖類、二糖類及び他の炭水化物、グルコース、マンノース又はデキストリンを含む;キレート化剤、例えば、EDTA;糖類、例えば、ショ糖、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩を形成する対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又は非イオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。水性注射懸濁物は、懸濁物の粘度を上げる化合物(例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、デキストランなど)を含んでいてもよい。場合により、懸濁物は、適切な安定化剤、又は高度に濃縮した溶液の調製を可能にするために、化合物の溶解度を高める薬剤も含んでいてもよい。更に、活性化合物の懸濁物は、適切な油注射懸濁物として調製されてもよい。適切な親油性溶媒又はビヒクルとしては、脂肪族油(例えば、ゴマ油)、又は合成脂肪酸エステル(例えば、エチルクリート(ethyl cleats)又はトリグリセリド)又はリポソームが挙げられる。
【0284】
有効成分は、例えば、コアセルベーション技術によって、又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル中に封入されてもよく(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン微小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルションに封入されてもよい。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(18th Ed. Mack Printing Company,1990)に開示されている。徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の適切な例としては、ポリペプチドを含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、例えば、フィルム又はマイクロカプセルなどの成型物品の形態である。特定的な実施形態では、注射可能組成物の持続性吸収は、吸収を遅らせる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン、又はこれらの組み合わせ)の組成物での使用によってもたらされてもよい。
【0285】
既に記載した組成物に加え、免疫抱合体は、デポー製剤として配合されてもよい。このような長く作用する製剤は、移植によって(例えば、皮下又は筋肉内)、又は筋肉内注射によって投与されてもよい。したがって、例えば、免疫抱合体は、適切なポリマー又は疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルションとして)又はイオン交換樹脂を用いて、又はやや難溶性の誘導体として、例えば、やや難溶性の塩として配合されてもよい。
【0286】
本発明の免疫抱合体を含む医薬組成物は、従来の混合、溶解、乳化、カプセル化、封入又は凍結乾燥プロセスによって製造されてもよい。医薬組成物は、1つ以上の生理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤又はタンパク質を医薬として使用可能な製剤へと加工するのを容易にする補助剤を用い、従来の様式で配合されてもよい。適切な製剤は、選択する投与経路によって変わる。
【0287】
免疫抱合体は、遊離酸又は遊離塩基、中性又は塩形態で組成物に配合されてもよい。医薬的に許容される塩は、遊離酸又は遊離塩基の生体活性を実質的に保持する塩である。医薬的に許容される塩としては、酸付加塩、例えば、タンパク質組成物の遊離アミノ基と形成される酸付加塩、又は塩酸又はリン酸などの無機酸と形成されるか、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸又はマンデル酸などの有機酸と形成されるものが挙げられる。遊離カルボキシル基と形成される塩も、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムの水酸化物又は水酸化第二鉄などの無機塩基から誘導されてもよく、又はイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン又はプロカインなどの有機塩基から誘導されてもよい。医薬塩は、対応する遊離塩基形態よりも、水及び他のプロトン性溶媒に溶けやすい傾向がある。
【0288】
治療方法及び組成物
本明細書で与えられるいずれかの免疫抱合体を治療方法に使用してもよい。本発明の免疫抱合体は、例えば、癌の処置において、免疫治療剤として使用されてもよい。
【0289】
治療方法で使用するために、本発明の免疫抱合体は、良好な医療での実施に一致した様式で配合され、用量に分けられ、投与される。この観点で考慮する因子としては、処置される特定の障害、処置される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与計画、及び医学専門家には既知の他の因子が挙げられる。
【0290】
本発明の免疫抱合体は、宿主の免疫系の刺激が有益である疾患状態、特に、高められた細胞免疫応答が望ましい状態を処置する際に特に有用であり得る。これらは、宿主免疫応答が不十分であるか、又は不足している疾患状態を含んでいてもよい。本発明の免疫抱合体が投与され得る疾患状態は、例えば、細胞免疫応答が、特定の免疫にとって重大な機構である腫瘍又は感染を含む。本発明の免疫抱合体は、そのまま投与されてもよく、又は任意の適切な医薬組成物で投与されてもよい。
【0291】
一態様では、医薬として使用するための本発明の免疫抱合体が提供される。さらなる態様では、疾患の処置に使用するための本発明の免疫抱合体が提供される。特定の実施形態では、処置方法に使用するための本発明の免疫抱合体が提供される。一実施形態では、本発明は、疾患の処置を必要とする個体に、疾患の処置に使用するための本明細書に記載の免疫抱合体を提供する。特定の実施形態では、本発明は、個体に治療有効量の免疫抱合体を投与することを含む、疾患を有する個体を処置する方法で使用するための免疫抱合体を提供する。特定の実施形態では、処置される疾患は、増殖性障害である。特定の実施形態では、疾患は、癌である。特定の実施形態では、この方法は、更に、個体に、治療有効量の少なくとも1つの更なる治療薬剤(例えば、処置される疾患が癌である場合、抗癌剤)を投与することを含む。さらなる実施形態では、本発明は、免疫系を刺激するのに使用するための免疫抱合体を提供する。特定の実施形態では、本発明は、個体に有効量の免疫抱合体を投与し、免疫系を刺激することを含む、個体において免疫系を刺激するための方法で使用するための免疫抱合体を提供する。上のいずれかの実施形態に係る「個人」は、哺乳動物、好ましくはヒトである。上のいずれかの実施形態に係る「免疫系の刺激」は、免疫機能の一般的な増加、T細胞機能の増加、B細胞機能の増加、リンパ球機能の回復、IL-2受容体の発現の増加、T細胞応答性の増加、ナチュラルキラー細胞活性又はリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞活性の増加などのうち任意の1つ以上を含んでいてもよい。
【0292】
更なる態様では、本発明は、医薬の製造又は調製における本発明の免疫抱合体の使用を提供する。一実施形態では、医薬は、疾患の処置を必要とする個体において、疾患の処置のためのものである。一実施形態では、医薬は、疾患を有する個体に、治療有効量の医薬を投与することを含む、疾患を処置する方法で使用するためのものである。特定の実施形態では、処置される疾患は、増殖性障害である。特定の実施形態では、疾患は、癌である。一実施形態では、この方法は、更に、個体に、治療有効量の少なくとも1つの更なる治療薬剤(例えば、処置される疾患が癌である場合、抗癌剤)を投与することを含む。更なる実施形態では、医薬は、免疫系を刺激するためのものである。更なる実施形態では、医薬は、個体に有効量の免疫抱合体を投与し、免疫系を刺激することを含む、個体において免疫系を刺激するための方法で使用するためのものである。上のいずれかの実施形態に係る「個体」は、哺乳動物、好ましくはヒトであってもよい。上のいずれかの実施形態に係る「免疫系の刺激」は、免疫機能の一般的な増加、T細胞機能の増加、B細胞機能の増加、リンパ球機能の回復、IL-2受容体の発現の増加、T細胞応答性の増加、ナチュラルキラー細胞活性又はリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞活性の増加などのうち任意の1つ以上を含んでいてもよい。
【0293】
更なる態様では、本発明は、個体において疾患を処置するための方法を提供する。一実施形態では、この方法は、このような疾患を有する個体に、治療有効量の本発明の免疫抱合体を投与することを含む。一実施形態では、組成物は、前記個体に投与され、本発明の免疫抱合体を医薬的に許容される形態で含んでいる。特定の実施形態では、処置される疾患は、増殖性障害である。特定の実施形態では、疾患は、癌である。特定の実施形態では、この方法は、更に、個体に、治療有効量の少なくとも1つの更なる治療薬剤(例えば、処置される疾患が癌である場合、抗癌剤)を投与することを含む。更なる態様では、本発明は、個体に有効量の免疫抱合体を投与し、免疫系を刺激することを含む、個体において免疫系を刺激するための方法を提供する。上のいずれかの実施形態に係る「個体」は、哺乳動物、好ましくはヒトであってもよい。上のいずれかの実施形態に係る「免疫系の刺激」は、免疫機能の一般的な増加、T細胞機能の増加、B細胞機能の増加、リンパ球機能の回復、IL-2受容体の発現の増加、T細胞応答性の増加、ナチュラルキラー細胞活性又はリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞活性の増加などのうち任意の1つ以上を含んでいてもよい。
【0294】
特定の実施形態では、処置される疾患は、増殖性障害、特に癌である。癌の非限定的な例としては、膀胱癌、脳腫瘍、頭頸部癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、食道癌、結腸癌、結腸直腸癌、肛門癌、胃癌、前立腺癌、血液がん、皮膚癌、扁平細胞癌腫、骨がん及び腎臓癌が挙げられる。本発明の免疫抱合体を用いて処置可能な他の細胞増殖障害としては、限定されないが、腹部、骨、乳房、消化系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、脳下垂体、睾丸、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭頸部、神経系(中枢及び末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟組織、脾臓、胸部領域及び泌尿生殖器系に位置する新生物が挙げられる。前癌状態又は病変及び癌転移も含まれる。特定の実施形態では、癌は、腎臓癌、皮膚癌、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、脳腫瘍、頭頸部癌、前立腺癌及び膀胱癌からなる群から選択される。当業者は、多くの場合に、免疫抱合体が、治癒を与えないが、部分的な利益のみを与える場合があることを容易に認識する。いくつかの実施形態では、いくつかの利益を有する生理学的変化も、治療利益であると考えられる。したがって、いくつかの実施形態では、生理学的変化を与える免疫抱合体の量は、「有効量」又は「治療有効量」と考えられる。処置が必要な被験体、患者又は個体は、典型的には、哺乳動物であり、より特定的には、ヒトである。
【0295】
いくつかの実施形態では、有効量の本発明の免疫抱合体が細胞に投与される。他の実施形態では、治療有効量の本発明の免疫抱合体が、疾患を処置するために個体に投与される。
【0296】
疾患の予防又は処置のために、本発明の免疫抱合体の適切な投薬量(単独で使用される場合、又は1つ以上の他の更なる治療薬剤と組み合わせて使用される場合)は、処置される疾患の種類、投与経路、患者の体重、分子の種類(例えば、Fcドメインを含むか、又は含まないか)、疾患の重篤度及び経過、免疫抱合体が予防目的又は治療目的で投与されるかどうか、以前又は現在の治療介入、患者の病歴及び免疫抱合体に対する応答、及び主治医の判断によって変わる。投与の責任を担う医師は、いずれにしても、組成物中の有効成分の濃度、個々の被験体に適切な投薬量を決定する。限定されないが、種々の時間点にわたる単回又は複数回の投与、ボーラス投与、パルス注入を含む種々の投薬計画が本明細書で想定される。
【0297】
免疫抱合体は、一度に、又は一連の処置にわたって、患者に適切に投与される。疾患の種類及び重篤度に応じて、約1μg/kg~15mg/kg(例えば、0.1mg/kg~10mg/kg)の免疫抱合体が、例えば、1回以上の別個の投与によるか、又は連続的な注入によるかによらず、患者に投与するための初期の候補投薬量であってもよい。典型的な1日投薬量は、上述の因子に依存して、約1μg/kg~100mg/kgの範囲であってもよい。数日間又はさらに長く繰り返し投与する場合、状態に応じて、処置は、一般的に、疾患症状の所望な抑制が起こるまで続けられる。免疫抱合体の1つの例示的な投薬量は、約0.005mg/kg~約10mg/kgの範囲である。他の非限定的な例では、投薬量はまた、約1μg/kg/体重、約5μg/kg/体重、約10μg/kg/体重、約50μg/kg/体重、約100μg/kg/体重、約200μg/kg/体重、約350μg/kg/体重、約500μg/kg/体重、約1mg/kg/体重、約5mg/kg/体重、約10mg/kg/体重、約50mg/kg/体重、約100mg/kg/体重、約200mg/kg/体重、約350mg/kg/体重、約500mg/kg/体重から、約1000mg/kg/体重までを含んでいてもよく、又は投与あたり更に多くてもよく、これらから誘導される任意の範囲であってもよい。本明細書に列挙される数から誘導可能な範囲の非限定的な例では、約5mg/kg/体重~約100mg/kg/体重、約5μg/kg/体重~約500mg/kg/体重などが、上述の数に基づいて投与されてもよい。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/kg又は10mg/kg(又はこれらの任意の組み合わせ)の1回以上の投薬を患者に投与してもよい。このような投薬量を、断続的に、例えば、毎週、又は3週間ごとに投与してもよい(例えば、患者は、約2~約20回、又は例えば約6回の免疫抱合体の投薬を受ける)。初期の高負荷用量の後、1回以上の低用量を投与してもよい。しかし、他の投薬レジメンが有用な場合がある。この治療の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易にモニタリングされる。
【0298】
本発明の免疫抱合体は、一般的に、意図した目的を達成するのに効果的な量で使用される。疾患状態を処置又は予防するための使用のために、本発明の免疫抱合体、又はその医薬組成物が、治療有効量で投与されるか、又は塗布される。治療有効量の決定は、特に、本明細書に与えられる詳細な開示の観点で、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0299】
全身投与の場合、治療有効投薬量は、in vitroアッセイ、例えば、細胞培養アッセイから最初に概算することができる。次いで、細胞培養物で決定されるようなIC50を含む血中濃度範囲を達成するために、投薬量を動物モデルで配合してもよい。このような情報を使用し、ヒトにおける有用な用量をさらに正確に決定することができる。
【0300】
初期投薬量も、in vivoデータから、例えば、動物モデルから、当該技術分野で周知の技術を用いて概算することができる。当業者は、動物データに基づき、ヒトへの投与を容易に最適化することができる。
【0301】
治療効果を維持するのに十分な免疫抱合体の血漿濃度を与えるように、投薬量及び投薬間隔は、個々に調節されてもよい。注射による投与に有用な患者投薬量は、約0.1~50mg/kg/日、典型的には約0.5~1mg/kg/日の範囲である。治療に有効な血漿濃度は、各日に複数回投薬量を投与することによって達成されてもよい。血漿中の量は、例えば、HPLCによって測定されてもよい。
【0302】
局所投与又は選択的な取り込みの場合には、免疫抱合体の有効な局所濃度は、血漿濃度と関係がない場合がある。当業者は、過度な実験を行うことなく、治療に有効な局所投薬量を最適化することができる。
【0303】
本明細書に記載の免疫抱合体の治療に有効な投薬量は、実質的な毒性を引き起こすことなく、一般的に治療利益を与える。免疫抱合体の毒性及び治療有効性は、細胞培養物又は実験動物における標準的な医薬手順によって決定することができる。細胞培養アッセイ及び動物実験を使用し、LD50(集団の50%が致死に至る用量)及びED50(集団の50%が治療に有効である用量)を決定することができる。毒性と治療効果との間の投薬比は、治療指数であり、比LD50/ED50として表すことができる。大きな治療指数を示す免疫抱合体が好ましい。一実施形態では、本発明に係る免疫抱合体は、高い治療指数を示す。細胞培養アッセイ及び動物実験から得られるデータを、ヒトでの使用に適した投薬範囲を配合する際に使用することができる。投薬量は、好ましくは、毒性がほとんどないか、全くない状態で、ED50を含む血中濃度の範囲内にある。投薬量は、例えば、使用される投薬量、利用される投与経路、被験体の状態などの種々の因子に依存して、この範囲内で変動してもよい。実際の製剤、投与経路及び負う薬量は、患者の状態という観点で個々の医師によって選択されてもよい。(例えば、その全体が本明細書に参考として組み込まれるFingl et al.,1975,In:The Pharmacological Basis of Therapeutics,Ch.1,p.1を参照。)
【0304】
本発明の免疫抱合体で処置される患者の主治医は、毒性、臓器不全などに起因して、どのように、いつ投与を中止するか、中断するか、又は調整するかを知っている。逆に、主治医は、臨床応答が十分ではない場合(毒性を生じずに)、処置をもっと高レベルにするように調整することも知っている。目的の障害の管理において投与される投薬量の大きさは、処置される状態の重篤度、投与経路などに伴って変動する。状態の重篤度は、例えば、部分的には、標準的な診断評価方法によって評価されてもよい。更に、投薬量と、おそらく投薬頻度は、個々の患者の年齢、体重及び応答によっても変わる。
【0305】
本明細書に記載の変異体IL-2ポリペプチドを含む免疫抱合体の最大治療用量は、野生型IL-2を含む免疫抱合体に使用するものから増加してもよい。
【0306】
他の薬剤及び処置
本発明に係る免疫抱合体は、治療において、1つ以上の他の薬剤と組み合わせて投与されてもよい。例えば、本発明の免疫抱合体は、少なくとも1つの更なる治療薬剤と一緒に投与されてもよい。「治療薬剤」との用語は、このような処置が必要な個体において、症状又は疾患を処置するために投与される任意の薬剤を包含する。このような更なる治療薬剤は、処置される特定の徴候に適した任意の有効成分を含んでいてもよく、好ましくは、互いに有害な影響を与えない相補的な活性を有するものを含んでいてもよい。特定の実施形態では、更なる治療薬剤は、免疫制御剤、細胞増殖抑制剤、細胞接着の阻害剤、細胞毒性剤、細胞アポトーシスの活性化剤、又はアポトーシス誘発因子に対する細胞の感度を高める薬剤である。特定の実施形態では、更なる治療薬剤は、抗癌剤、例えば、微小管破壊剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼ阻害剤、DNAインターカレーター、アルキル化剤、ホルモン治療、キナーゼ阻害剤、受容体アンタゴニスト、腫瘍細胞アポトーシスの活性化剤、又は抗血管形成剤である。
【0307】
このような他の薬剤は、適切には、意図する目的にとって有効な量で組み合わせた状態で存在する。このような他の薬剤の有効量は、使用される免疫抱合体の量、障害又は処置の種類、上述の他の因子に依存する。免疫抱合体は、一般的に、同じ投薬量で、本明細書に記載の投与経路で使用されるか、又は約1~99%の本明細書に記載の投薬量で、又は経験的/臨床的に適切であると決定される任意の投薬量および任意の経路で使用される。
【0308】
上述のこのような併用療法は、組み合わせた投与(2つ以上の治療薬剤が、同じ又は別個の組成物に含まれる)、及び別個の投与を包含し、この場合、本発明の免疫抱合体の投与は、更なる治療薬剤及び/又はアジュバントの投与前、投与と同時及び/又は投与後に行われてもよい。また、本発明の免疫抱合体を、放射線療法と組み合わせて使用してもよい。
【0309】
製造物品
本発明の別の態様では、上述の障害の治療、予防及び/又は診断に有用な材料を含む製造物品が提供される。製造物品は、容器と、容器に挿入されるか、又は容器に付随するラベル又はパッケージ添付文書とを備えている。適切な容器としては、例えば、瓶、バイアル、シリンジ、静注溶液袋などが挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの種々の材料から作られてもよい。容器は、組成物をそれ自身で、又は状態を処置し、予防し、及び/又は診断するのに有効な別の組成物と組み合わせて保持しており、滅菌アクセス口を有していてもよい(例えば、容器は、皮下注射針によって穿孔可能なストッパーを有する静脈用溶液袋またはバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1つの活性薬剤は、本発明の免疫抱合体である。ラベル又はパッケージ添付文書は、その組成物が、選択した条件を処置するために使用されることを示す。更に、製造物品は、(a)中に組成物が入っており、組成物が、本発明の免疫抱合体を含む、第1の容器と、(b)中に組成物が入っており、組成物が、更なる細胞毒性剤又はその他の治療薬剤を含む、第2の容器とを備えていてもよい。製造物品は、本発明のこの実施形態では、その組成物を特定の状態を処置するために使用可能であることを示すパッケージ添付文書を更に備えていてもよい。これに代えて、又はこれに加えて、製造物品は、医薬的に許容されるバッファー、例えば、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝化生理食塩水、Ringer溶液及びデキストロース溶液を含む第2の(又は第3の)容器を更に備えていてもよい。他のバッファー、希釈剤、フィルター、ニードル及びシリンジを含め、商業的及びユーザの観点から望ましい他の材料を更に含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0310】
図1】本明細書に記載の免疫抱合体に含まれる二重特異性抗原結合分子の例示的な構成。(A、C)PD-1に結合するVH/VLクロスオーバーFab分子と、Tim-3に結合する(従来の)Fab分子と、Fcドメインとを含む、二重特異性抗原結合分子。(B、D)PD-1に結合する(従来の)Fab分子と、Tim-3に結合するVH/VLクロスオーバーFab分子と、Fcドメインとを含む二重特異性抗原結合分子。黒点:ヘテロ二量化を促進する、Fcドメインにおける任意の改変。++、--:CH1及びCLドメインにおいて任意に導入される反対の電荷のアミノ酸クロスオーバーFab分子は、VH領域とVL領域の交換を含むものとして示されるが、特に、CH1及びCLドメインに電荷改変が導入されない実施形態では、これに代えて、CH1及びCLドメインの交換を含んでいてもよい。
図2】PD1 IgG及びCEA-IL2vと比較した、CD3/CD28によって活性化されたPMBC内のCD4 T細胞(A)及びCD8 T細胞(B)に対するPD1-TIM3-IL2vの結合。
図3】2日後に測定された、PD1-TIM3-IL2vによって誘発されるヒトNK細胞株NK92の増殖。
図4】抗PD-1のみ、又はIL-2vと組み合わせて、PD1-IL2v、PD1-TIM3-IL2v、又はこれらの組み合わせが存在する状態で、又は抗PD-1、抗TIM-3及びIL-2vの組み合わせで、CMV免疫原性タンパク質pp65を用いた回収から48時間後のCD4 T細胞がIL-2(A)、IL-2及びIFN-γ又はIFN-γ(C)を分泌する能力。
図5-1】抗PD-1のみ、又はIL-2vと組み合わせて、PD1-IL2v、PD1-TIM3-IL2v、又はこれらの組み合わせが存在する状態で、又は抗PD-1、抗TIM-3及びIL-2vの組み合わせで、CMV免疫原性タンパク質pp65を用いた回収から48時間後のIL-2及びIFN-γの両方を分泌するウイルス特異的なCD4 T細胞(A及びB)又はIFN-γのみを分泌するウイルス特異的なCD4 T細胞(C、D、E)の分化状態。
図5-2】抗PD-1のみ、又はIL-2vと組み合わせて、PD1-IL2v、PD1-TIM3-IL2v、又はこれらの組み合わせが存在する状態で、又は抗PD-1、抗TIM-3及びIL-2vの組み合わせで、CMV免疫原性タンパク質pp65を用いた回収から48時間後のIL-2及びIFN-γの両方を分泌するウイルス特異的なCD4 T細胞(A及びB)又はIFN-γのみを分泌するウイルス特異的なCD4 T細胞(C、D、E)の分化状態。
図6図6A~D抗PD-1のみ、TIM-3とIL-2vとの組み合わせ、又は融合タンパク質として存在する状態で、CMV免疫原性タンパク質pp65を用いた回収から48時間後に、CD4 T細胞が、IL-2(図6A)、IL-2及びIFN-γ(図6B)又はIFN-γ(図6C)を分泌する能力、増殖する能力(図6D)。
図7】抗PD-1のみ、TIM-3とIL-2vとの組み合わせ、又は融合タンパク質として存在する状態で、CMV免疫原性タンパク質pp65を用いた回収から48時間後に、IFN-γを分泌するウイルス特異的なCD4 T細胞のCD45RO及びCD62Lの発現あたりの分化状態。
図8図8A及び8B同じサンプル内で、Tregに対し、Tconvに結合した所与の抗体の頻度のΔ値。それぞれの記号は、別個のドナーを表し、水平線は、N=4のメジアンを示す(図8A)。Tconv(黒色線)及びTreg(灰色)に対する結合を示す代表的なドナーの1つからのデータ(図8B)。
図9】同時培養5日後のTconvによって分泌したグランザイムB(図9A)及びインターフェロン-γ(図9B)のTregによる抑制の割合。それぞれの記号は、別個のドナーを表し、水平線は、N=5のメジアンを示し、0%の点線は、Tregによる抑制がないことを表す。Pは、一元配置ANOVAを用いて計算された(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001)。
図10図10A~D第1のドナー(CD8 T細胞(A)、NK細胞(B)、CD4 T細胞(C)及び制御性T細胞(D))の休止状態のPBMCに対するSTAT5アッセイ。
図11図11A~D第2のドナー(CD4 T細胞(A)、CD8 T細胞(B)、制御性T細胞(C)及びNK細胞(D))の休止状態のPBMCに対するSTAT5アッセイ。
図12図12A~D第3のドナー(CD8 T細胞(A)、NK細胞(B)、CD4 T細胞(C)及び制御性T細胞(D))の休止状態のPBMCに対するSTAT5アッセイ。
図13図13A~D第4のドナー(CD8 T細胞(A)、NK細胞(B)、CD4 T細胞(C)及び制御性T細胞(D))の休止状態のPBMCに対するSTAT5アッセイ。
【0311】
【実施例
【0312】
以下は、本発明の方法及び組成物の例である。上に提供した一般的な記載が与えられ、種々の実施形態が実施されてもよいことが理解される。
【0313】
実施例1
ヒトPD1-Tim3-IL-2vのクローニング及び発現
PD1-Tim3-ILv構築物のための発現ベクター(配列番号25、26、27及び28)を、PCT特許出願番号第PCT/EP2016/073192号に記載されるように調製した。
【0314】
振とうするフラスコ中、HEK293F細胞(Invitrogen)と適切なプラスミドのプラスミド比率1:1:1:1での同時トランスフェクションによって、ヒト抗PD1-Tim3-IL-2v構築物を作成した。1週間後、上清を収集し、滅菌フィルターで濾過し、標準的な方法によって精製した(例えば、PCT特許出願第PCT/EP2016/073192号を参照)。簡単に言うと、上清からの精製は、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーとサイズ排除クロマトグラフィーの組み合わせによって行われた。得られた生成物を、質量分析法によって属性について特性決定し、キャピラリー電気泳動(CE-SDS)によって純度、モノマー含有量及び安定性などの分析特性を特性決定した。免疫抱合体は、良好な収率で産生することができ、安定であった。
【0315】
実施例2
実施例2A.活性化されたCD8細胞及びCD4 T細胞に対するPD1-TIM3-IL2vの結合
健康なドナー由来の新しく単離したPBMCを、CD3及びCD28で一晩刺激し、T細胞でのPD1のアップレギュレーションを誘発した。PBMCを、1μg/mlのCD3(クローンOKT3、317304、BioLegend)を用い、37℃で1時間被覆した細胞培養フラスコ中の培地(RPMI1640、10% FCS、2mM グルタミン)に接種した。CD28を、溶液でPMBCに濃度2μg/mlの濃度で加えた(クローンCD28.2、302914、BioLegend)。次の日に、PBMCを収集し、96ウェル丸底プレートに移した(ウェルあたり200,000個の細胞)。細胞をFACSバッファー(PBS、2% FBS、5mM EDTA、0.025% NaN)で洗浄し40μlのFACSバッファー中の指定した分子(PD1-TIM3-IL2v、PD1 IgG、CEA-IL2v)で、4℃で30分間染色した。細胞をFACSバッファーで2回洗浄し、結合していない分子を除去した。次いで、40μlの希釈したPE抗ヒトFc特異的二次抗体(109-116-170、Jackson ImmunoResearch)を細胞に加えた。4℃で30分間インキュベートした後、細胞をFACSバッファーで2回洗浄した。T細胞を検出するために、PMBCを40μlのCD3 FITC(クローンUCHT1、300406、BioLegend)、CD4 APC(クローンRPA-T4、300514、BioLegend)及びCD8 BV421(クローンRPA-T8、301036、BioLegend)の混合物で、4℃で30分間染色した。結合していない抗体を、FACSバッファーで2回洗浄することによって除去した。最後に、細胞を、1% PFAのFACSバッファー溶液で固定し、CD3+CD4+細胞(CD4 T細胞)及びCD3+CD8+細胞(CD8 T細胞)に対するBD Fortessaゲーティングを用いて測定した。
【0316】
図2は、PD1-TIM3-IL2v及び対応するPD1 IgGが、CD4及びCD8 T細胞に同様に結合することを示す。CEAを標的とする類似の融合タンパク質CEA-IL2vを、標的化していないコントロールとして加え、T細胞に対するPD1-TIM3-IL2vの結合に対し、T細胞に対するIL2v単独の結合を比較した。
【0317】
実施例2B.PD1-TIM3-IL2vを用いたNK92の増殖
NK92細胞を収集し、計測し、生存率について評価した。細胞をPBSで3回洗浄して残留IL-2を除去し、IL-2を含まない培地(RPMI1640、10% FCS、1% グルタミン)に再懸濁させた。洗浄したNK92細胞を、細胞インキュベーター内で2時間インキュベートした(IL-2飢餓状態)。飢餓状態にした後、細胞を、IL-2を含まない新しい培地に、1mlあたり200,000細胞になるまで再懸濁させ、50μlの細胞懸濁物を96ウェル細胞培養物処理した平底プレートに移し、50μlの希釈した分子PD1-Tim3-IL2v(IL-2を含まない培地中)、プロロイキン(1.5μg/最終濃度(ml))又は培地(コントロールウェル)を追加し、最終容積をウェルあたり100μlにした。インキュベーター中、プレートを2日間インキュベートした。
【0318】
2日後、細胞Titer-Glo(Promega)試薬及び細胞培養プレートを室温になるまで平衡状態にした。CellTiter-Glo溶液を、製造業者の指示に記載されているように調製し、100μlの溶液を各ウェルに添加した。10分間インキュベートした後、ピペットによって残った凝集物を再懸濁させ、150μlの混合物を白色平底プレートに移した。Tecan Spark 10Mマルチモードリーダーを用い、発光を測定した。
【0319】
図3は、PD1-TIM3-IL2vが、濃度に依存する様式でNK92細胞の増殖を誘発することができることを示す。
【0320】
実施例3
PD-1又はPD-1及びTIM-3ブロックのいずれかによる、消耗したウイルス特異的なT細胞へのIL-2v送達の効果
近年、更なる免疫チェックポイントであるTIM-3は、PD-1単独の陽性よりも大きな機能不全度を有する、これらのPD-1陽性ウイルス特異的なT細胞の表面で同定された。したがって、本願発明者らは、高度に機能不全のウイルス特異的T細胞にIL-2vを送達するために、PD-1及びTIM-3の同時標的化の効果を評価した。
【0321】
図4に示される結果は、IL-2vをウイルス特異的なT細胞に送達するためにPD-1とTIM-3を標的化する効果の組み合わせを、PD-1のみを標的とする場合と比較して、強調する。興味深いことに、PD1-TIM3-IL-2v構築物は、PD-1のブロックのみと比較すると、IL-2及びIFN-γ(図4B、p≦0.001)を一緒に分泌することができ、及びIFN-γのみ(図4C、p≦0.01)を分泌することができる保護性CMV特異的なCD4 T細胞の頻度を非常に顕著に高める。PD1-IL2v(PD-1のみを標的化する類似分子、配列番号29、30及び31を参照)は、PD-1のブロックのみと比較すると、顕著に拡大した保護多重機能性で、PD1-TIM3-IL2vに対して同様の傾向を示し、また、IFN-γのみを分泌するCMV特異的なCD4 T細胞も同様の傾向を示す(図4B、p≦0.05及び図4CC、p≦0.01)。PD-1-IL-2v及びPD-1-TIM-3-IL-2vは、両方とも、IL-2を単独で分泌するCD4 T細胞の頻度を顕著に増加させなかった。
【0322】
PD1-TIM3-IL2vが、保護ウイルス特異的な多重機能性T細胞のエフェクター機能を拡大/向上させる能力は、慢性感染及び癌において消耗/機能不全の抗原特異的T細胞を標的化するこの分子の潜在的な用途に関連する特徴である。
【0323】
多機能性CD4 T細胞が、固有の増殖能力を有し、そのため、寿命になるまでの間自己維持する能力を有することが記載されているため、本願発明者らは、異なる構築物存在下、pp65再刺激を行ったときの分化状態を特性決定した。興味深いことに、本願発明者らは、PD1-TIM3-IL2v及びPD1-IL2vで処置すると、多重機能性CD4 T細胞内で、エフェクターメモリ(CD45ROCD62L)及び中心メモリプール(CD45ROCD62L)の増加傾向を観察した(図5A及びB)。
【0324】
IFN-γを分泌するCD4 T細胞は、多重機能性の対象物から誘導され、さらに多く分化することが記載されているため、その増殖する能力を失っている。CMV特異的なCD4 T細胞のこの部分集合において、本願発明者らは、PD1-TIM3-IL2v及びPD1-IL2vで処置すると、エフェクター及び中心メモリ細胞の頻度の増加に気づいただけではなく(図5C、p≦0.01及び図5D)、最後まで分化したエフェクターの頻度の増加にも気づいた(CD45ROCD62L)(図5C)。
【0325】
全てをまとめると、データは、PD1-TIM3-IL2vが、寿命の長い保護性ウイルス特異的多重機能性T細胞の頻度を高め、増殖する固有の能力を失ったこれらのウイルス特異的なエフェクターCD4 T細胞の拡張も可能にする。
【0326】
実施例4
PD-1又はPD-1及びTIM-3ブロックのいずれかによる、消耗したウイルス特異的なT細胞へのIL-2v送達の効果
PD-1発現は、最初に、消耗したウイルス特異的なT細胞で、ウイルス抗原に慢性的に曝露した結果、T細胞が有効な抗ウイルス応答をすることができないことと関係があると記載されている。IL-2とIFN-γを同時に分泌することができるウイルス特異的なCD4 T細胞は、慢性感染においてウイルス再活性化からの保護を与える。実際に、CD4 T細胞の多重機能性シグネチャは、数年間にわたって症状がないままである、サイトメガロウイルス(CMV)、Epstein-Barrウイルス(EBV)及びヘルペス単純ウイルス(HSV)に感染した健康な個体及びヒト免疫不全ウイルスに感染した個体におけるウイルス制御と関係がある。
【0327】
近年、更なる免疫チェックポイントであるTIM-3は、PD-1単独の陽性よりも大きな機能不全度を有する、これらのPD-1陽性ウイルス特異的なT細胞の表面で同定された。したがって、IL-2(IL-2v)の変異態様を機能不全抗原特異的なT細胞に送達するためにPD-1及びTIM-3を標的化する効果を評価するために、in-vitroアッセイが開発された。このアッセイに適したドナーの量に対する制限を回避するために、集団のほぼ80%がCMV血清学的陽性であるT細胞の回収抗原としてのCMV免疫原性ウイルスタンパク質(pp65)を選択した。したがって、健康なヒトドナー末梢血単核細胞(PBMC)を、濃度10μg/mlの構築物存在下、CMV-pp65(Miltenyi)で刺激した。43時間後、ゴルジから輸送したタンパク質を、Golgi Plug(BD Bioscience、Brefeldin A)及びGolgi Stop(BD Bioscience、Monensin)を添加することによってブロックし、細胞を37℃で更に5時間インキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、抗ヒトCD3、CD4、CD8、CD62L及びCD45RO抗体で表面を染色した後、FoxP3転写FactorStaining Buffer Set(eBioscience)で固定/透過化した。最後に、IL-2について、IFN-γ及びKi67(両方ともeBioscience製)の細胞内染色を行った。
【0328】
図6は、抗PD-1のみ、TIM-3とIL-2vとの組み合わせ、又は融合タンパク質として存在する状態で、CMV免疫原性タンパク質pp65を用いた回収から48時間後に、CD4 T細胞が、IL-2(A)、IL-2及びIFN-γ(B)又はIFN-γ(C)を分泌する能力、増殖する能力(D)を示す。図6に示される結果は、PD-1ブロックのみ、又は標的ではないIL-2vに対し、PD-1とTIM-3をブロックしつつ、IL-2vをウイルス特異的なT細胞に送達する組み合わせた効果を強調する。興味深いことに、PD1-TIM3-IL-2v構築物は、PD-1のブロックのみと比較して、IL-2及びIFN-γを一緒に(図6B)、IFN-γのみ(図6C、P≦0.0001)を分泌することができるCMV特異的なCD4 T細胞の頻度を高めた。逆に、DP47-IL2vは、IL-2単機能性CD4 T細胞を増加させた(図6A)。予想されるように、標的化されたIL-2v又は標的化されていないIL-2vで処置した全ての細胞が、Ki67染色に対する陽性によって示されるように、増殖した(図6D)。
【0329】
図7は、抗PD-1のみ、TIM-3とIL-2vとの組み合わせ、又は融合タンパク質として存在する状態で、CMV免疫原性タンパク質pp65を用いた回収から48時間後に、IFN-γを分泌するウイルス特異的なCD4 T細胞のCD45RO及びCD62Lの発現あたりの分化状態を示す。拡張されたIFN-γを分泌するウイルス特異的なCD4 T細胞の表現型特性決定(図7)から、エフェクター-メモリ(CD45ROCD62L)プロフィールが判明した。
【0330】
したがって、PD1-TIM3-IL2v融合タンパク質を介する消耗したCMV特異的なCD4 T細胞へのIL-2vの送達によって、分化したメモリプロフィール及びIL-2とIFN-γを両方とも分泌する能力によって特徴付けられる、長く生存する保護性ウイルス特異的な集団の拡張がみられたと結論付けることができる。このことは、慢性感染及び癌における消耗/機能不全の抗原特異的なT細胞を標的とするこの分子の潜在的な用途に関連する特徴である。
【0331】
実施例5
実施例5A.活性化された制御性T細胞を上回る、活性化された従来のT細胞に対するPD1-TIM3-IL2vの優先的な結合。
活性化された従来のT細胞及び制御性T細胞に対するPD1-TIM3-IL2vの結合特性を、競争結合アッセイで評価した。CD4CD25CD127dim制御性T細胞(Treg)を、2段階のRegulatory T cell Isolation Kit(Miltenyi、番号130-094-775)を用いて単離した。並行して、CD25陽性選択(Miltenyi、番号130-092-983)の陰性フラクションを集め、その後、CD4が豊富なもの(Miltenyi、番号130-045-101)を選択することによって、CD4CD25従来のT細胞(Tconv)を単離した。Tconvを、CFSE(eBioscience、#65-0850-84)で標識し、Tregを、Cell Trace Violet(ThermoFisher scientific、C34557)で標識し、両集団の増殖を追跡した。Tconv及びTregは、培養プレートに一緒に接種され、1μg/ml CD3(クローンOKT3、番号317315、BioLegend)を用い、4℃で一晩被覆された。CD28を、溶液で、濃度1g/ml CD28の濃度で加えた(クローンCD28.2、302923、BioLegend)。刺激から5日後に、研究室内でAF647で両方とも標識したPD1(0376)及びPD1-TIM3-IL2v(0592)を用いて結合アッセイを行った。
【0332】
図8Aは、同じサンプル内で、Tregと比較して、Tconvに結合した所与の抗体の頻度のΔ値を示し、それぞれの記号は、別個のドナーを表し、平行線は、N=4でのメジアンを示す。図8Bは、Tconv(黒色線)及びTreg(灰色)に対する結合を示す代表的なドナーの1つからのΔ値を示す。PD1-TIM3-IL2v三重特異性抗体は、PD1と匹敵する結合プロフィールを示す(図8A及び8B)。両方の分子は、TregよりもTconvでのPD-1発現レベルが高いため、TregよりもTconvに対して高い結合能力を示す。従って、PD1-IL2v二重特異性抗体は、IL2vが抗体に結合するにも関わらず、PD1の結合特性を維持する。
【0333】
実施例5B.Treg抑制アッセイにおいてPD1-TIM3-IL2v処置したときのTconvエフェクター機能の救済
次の工程で、PD1-TIM3-IL2vが、TconvのTreg抑制を回復することができるかどうかを試験した。したがって、本願発明者らは、アロ特異的刺激について無関係のドナーからのCD4CD25存在下、ブロッキング抗体を含み、又は含まずに、Tconv及びTregを5日間一緒に培養する抑制機能アッセイを確立した。この目的のために、Tconv及びTregを、上に記載したとおりに単離し、標識した。ゴルジ複合体内のサイトカインの蓄積は、FACS染色の前に、Protein Transport Inhibitor(GolgiPlug番号555029、BD and GolgiStop番号554724、BD)を5時間適用することによって向上した。
【0334】
Treg存在下及び非存在下で、増殖したTconvがグランザイムB(GrzB)及びインターフェロンガンマ(IFNγ)を分泌する能力を測定した。Treg抑制を以下の式を用いて計算した。
サイトカイン抑制%=100-(サイトカイン%Tconv+Treg±ブロッキング抗体)/(サイトカイン%Tconv未処置)*100)
式中、サイトカイン%(Tconv+Treg±ブロッキング抗体)は、Treg±ブロッキング抗体存在下、Tconvによって分泌するサイトカインのレベルであり、サイトカイン%(Tconv未処置)は、Treg非存在下、Tconvによって分泌するサイトカインのレベルである。図9において、同時培養5日後のTconvによって分泌したグランザイムB(図9A)及びインターフェロン-γ(図9B)のTregによる抑制の割合が示される。それぞれの記号は、別個のドナーを表し、水平線は、N=5のメジアンを示し、0%の点線は、Tregによる抑制がないことを表す。Pは、一元配置ANOVAを用いて計算された(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001)。
【0335】
PD1抗体(0376)を用いて処置すると、未処置群の抑制のメジアン68.6%と比較して、Tconv機能抑制のメジアンが47.7%である(統計的有意性なし)。同様に、アテゾリズマブ、ニボルマブ及びペンブロリズマブを用いたPD-1/PD-L1相互作用のブロックは、研究室内のPD1での傾向と同じ傾向を示した。興味深いことに、DP47-IL2v(メジアン=-11.3%、p=0.0011)及びPD1-TIM3-IL2v(メジアン=-37.3%、p<0.0001)は、Treg抑制から、Tconv GrzBエフェクター機能を救済した。更に、PD1-TIM3-IL2vは、PD1単独の場合よりも、更に有意に(p=0.0016)更に強力であった。これと並行して、TregによるTconvのINFγ抑制について、同じ分析を行った。DP47-IL2v(メジアン=51.77%、p=0.0251)及びPD1-TIM3-IL2v(メジアン=21.58%、p=0.0001)は、Treg抑制からTconv IFNγエフェクター機能を救済した。
【0336】
実施例6
実施例6A.ドナー1及び2の細胞活性化(pSTAT5アッセイ)
健康なドナーから新しく単離したPBMCを、96ウェル丸底プレート(200,000細胞/ウェル)内の温かい培地(RPMI1640、10% FCS、2mM グルタミン)に接種した。プレートを300gで10分間遠心分離処理し、上清を除去した。細胞を50μlのIL2分子を含有する培地に再懸濁させ、37℃で20分間刺激した。リン酸化状態を保存するために、刺激の直後に、等量のあらかじめ温めておいたCytofixバッファー(554655、BD Bioscience)を用い、37℃で10分間かけて細胞を固定した。その後、プレートを300gで10分間遠心分離処理し、上清を除去した。細胞内染色を可能にするために、細胞を、200μlのPhosflow Perm buffer III(558050、BD Bioscience)中、4℃で30分欠けて透過化した。次いで、細胞を150μlの冷たいFACSバッファーで2回洗浄し、2つの96ウェル丸底プレートに分け、それぞれを20μlの抗体ミックス又はIIを用い、冷蔵庫内で60分間染色した。抗体ミックスIを使用し、CD4 T細胞及び制御性T細胞中のpSTAT5を染色し、抗体ミックスIIを使用し、CD8 T細胞及びNK細胞のpSTAT5を染色した。その後、細胞をFACSバッファーで2回洗浄し、ウェルあたり2%のPFAを含有するFACSバッファー200μlで再懸濁した。BD Fortessaフローサイトメーターを用いて分析を行った。
表1及び表2に係るFACS抗体ミックスを使用した。
【0337】
【0338】
図10は、ドナー1の休止時PMBCをPD1-IL2v、FAP-IL2v及びFAP-IL2wtで処置したときの、CD8 T細胞(A)、NK細胞(B)、CD4 T細胞(C)及び制御性T細胞(D)におけるSTAT5リン酸化を示す。試験した3種類全ての分子は、CD8 T細胞、NK細胞及びCD4 T細胞に対して等しく強力である(Tregを除く)。FAP-IL2wtは、TregでSTAT5リン酸化し、その後にPD1-IL2vを用いたときに、より強力である。FAP-IL2vは、Tregについて、最も低い活性を有する。
【0339】
図11は、ドナー2の休止時PBMCをFAP-IL2v、PD1-IL2c、FAP-IL2wt及びPD1-TIM3-IL2vで処置したときの、CD4 T細胞(A)、CD8 T細胞(B)、制御性T細胞(C)及びNK細胞(D)におけるSTAT5リン酸化を示す。試験した4種類全ての分子は、CD8 T細胞、NK細胞及びCD4 T細胞に対して匹敵する活性がある(Tregを除く)。FAP-IL2wtは、TregでSTAT5リン酸化し、その後にPD1-IL2vを用いたときに、より強力である。FAP-IL2vは、Tregについて、最も低い活性を有する。
【0340】
実施例6B.ドナー3及び4の細胞活性化(pSTAT5アッセイ)
健康なドナーから単離し、凍結したPBMCを解凍し、37℃で一晩培養した。次の日に、細胞を、96ウェル丸底プレート(200,000細胞/ウェル)内の温かい培地(RPMI1640、10% FCS、2mMグルタミン)に接種した。プレートを300gで10分間遠心分離処理し、上清を除去した。細胞を50μlのIL2分子を含有する培地に再懸濁させ、37℃で20分間刺激した。リン酸化状態を保存するために、刺激の直後に、等量のあらかじめ温めておいたCytofixバッファー(554655、BD Bioscience)を用い、37℃で10分間かけて細胞を固定した。その後、プレートを300gで10分間遠心分離処理し、上清を除去した。細胞内染色を可能にするために、細胞を、200μlのPhosflow Perm buffer III(558050、BD Bioscience)中、4℃で30分欠けて透過化した。次いで、細胞を150μlの冷たいFACSバッファーで2回洗浄し、2つの96ウェル丸底プレートに分け、それぞれを20μlの抗体ミックス又はIIを用い、冷蔵庫内で60分間染色した。抗体ミックスIを使用し、CD4 T細胞及び制御性T細胞中のpSTAT5を染色し、抗体ミックスIIを使用し、CD8 T細胞及びNK細胞のpSTAT5を染色した。その後、細胞をFACSバッファーで2回洗浄し、ウェルあたり2%のPFAを含有するFACSバッファー200μlで再懸濁した。BD Fortessaフローサイトメーターを用いて分析を行った。表3及び表4に係るFACS抗体ミックスを使用した。
【0341】
【0342】
図12は、ドナー3の休止時PMBCを、FAP-IL2v、PD1-IL2v、FAP-IL2wt、PD1-TIM3-IL2vで処置したときのCD8 T細胞(A)、NK細胞(B)、CD4 T細胞(C)及び制御性T細胞(D)におけるSTAT5リン酸化を示す。試験した4種類全ての分子は、CD8 T細胞、NK細胞及びCD4 T細胞に対して匹敵する活性がある(Tregを除く)。FAP-IL2wtは、TregでSTAT5リン酸化し、その後にPD1-IL2vを用いたときに、より強力である。FAP-IL2vは、Tregについて、最も低い活性を有する。
【0343】
図13は、ドナー4の休止時PMBCを、FAP-IL2v、PD1-IL2v、FAP-IL2wt、PD1-TIM3-IL2vで処置したときのCD8 T細胞(A)、NK細胞(B)、CD4 T細胞(C)及び制御性T細胞(D)におけるSTAT5リン酸化を示す。試験した4種類全ての分子は、CD8 T細胞、NK細胞及びCD4 T細胞に対して匹敵する活性がある(Tregを除く)。FAP-IL2wtは、TregでSTAT5リン酸化し、その後にPD1-IL2vを用いたときに、より強力である。FAP-IL2vは、Tregについて、最も低い活性を有する。
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上述の発明を、理解を明確にする目的で、説明及び実施例によってある程度詳細に記載してきたが、その記載及び実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。本明細書に引用される全ての特許及び科学文献の開示は、その全体が参考として明示的に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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