(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】定温輸送箱、定温輸送籠、および定温輸送システム
(51)【国際特許分類】
B65D 81/18 20060101AFI20220928BHJP
F25D 3/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
B65D81/18 B
F25D3/00 D
(21)【出願番号】P 2020107096
(22)【出願日】2020-06-22
【審査請求日】2022-05-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520226698
【氏名又は名称】株式会社エス・ディ・コラボ
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加古 雅広
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-015514(JP,A)
【文献】特開2001-056169(JP,A)
【文献】特開2016-108009(JP,A)
【文献】特開2020-001803(JP,A)
【文献】特開2016-210466(JP,A)
【文献】特開2014-219109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/18
B65D 81/38
F25D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療目的に使用される対象物の温度維持をする定温輸送箱であって、
直方体状の形状を有し、
内面における三方向の側面の中央よりも上部
のみに、前記側面の夫々を横断するように設けられ、蓄冷材を保持可能な
、横方向に長い矩形のポケットと、
前記三方向の側面のうちの少なくとも一つの側面における前記ポケットよりも上部に設けられ、温度センサを保持可能な温度センサ用ホルダと、
上面に設けられ、発信機を収容可能な第2のポケットと、を備える、
定温輸送箱。
【請求項2】
請求項1に記載の定温輸送箱と、
前記定温輸送箱を取り付け可能で、キャスター付きの枠体と、
を備えることを特徴とする、定温輸送籠。
【請求項3】
請求項1に記載の定温輸送箱と、
前記三方向の側面に設けられた前記ポケットに保持された複数の蓄冷材と、
前記温度センサ用ホルダに保持された内部温度センサと、
を備える、定温輸送システム。
【請求項4】
外気の温度を測定する外気用の温度センサと、
前記外気用の温度センサを前記箱の周囲において保持する保持部材と、を備える、
請求項3に記載の定温輸送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、定温輸送箱、定温輸送籠、および定温輸送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
食料品などを輸送する際に、鮮度を保つ目的で保冷機能付きの宅配便や保冷容器等が利用されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
輸送品を保冷容器に入れて輸送する場合、保冷容器の外部の熱が保冷容器の側壁を伝って保冷容器の内部へ熱伝導し、保冷容器の内部空間の温度が上昇することが考えられる。そこで、保冷容器の内部を予め充分に冷却し、輸送中に内部空間が温度上昇した場合であっても輸送品の鮮度に影響が及ぶことを回避することが考えられる。しかしながら、このような輸送方法は、保冷容器の内部温度を所定の範囲に維持して輸送すべき輸送品(例えば医薬品、臓器等の医療に使用される物)には適用することが困難である。また、保冷容器の内部空間の温度分布が一様とならないことが考えられる。このような点からも医薬品や臓器などを保冷容器に収容して輸送した場合に、品質保持が困難な場合があると考えられる。
【0005】
また、このような問題を改善するために、空調機を別途用意し、空調機により温度調節された空気を保冷容器の内部空間へ供給し、内部空間の温度分布を一様に維持することが考えられる。しかしながら、このような構造では、保冷容器の構造が複雑で大掛かりなものとなる。また、空調機を動作させるための電力が必要となるため、輸送中の電源の確保が問題となることが考えられる。
【0006】
本開示は、一側面では、このような実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、医療に使用される物の周囲を低温状態に簡易に維持して輸送することのできる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0008】
すなわち、本開示の一側面に係る定温輸送箱は、医療目的に使用される対象物の温度維持をする定温輸送箱であって、直方体状の形状を有し、内面における三方向の側面の中央よりも上部に、前記側面の夫々を横断するように設けられ、蓄冷材を保持可能なポケットと、前記三方向の側面のうちの少なくとも一つの側面における前記ポケットよりも上部に設けられ、温度センサを保持可能な温度センサ用ホルダと、を備える。
【0009】
当該構成によれば、蓄冷材をポケットに収容することができる。蓄冷材が所定温度に冷却されて設置される場合、箱の上部から箱の底面方向へ向かって冷気が下降する。よって、箱の内部において熱の自然対流により箱の上部に暖気が溜まることは抑制される。その結果、箱の内部において医療に使用される物の周囲の温度は低温状態に維持される。また、蓄冷材が設置される側面の上部は、横断方向に一様に冷却される。そして、横断方向に
一様に分布した冷気は箱の内側面に沿って一様に緩やかに下降する。よって、箱の内側面の表面は一様に緩やかに冷却される。その結果、箱の外部の熱が箱の側壁を伝って箱の内部へ熱伝導し、箱の内部の温度が上昇することは抑制される。
【0010】
また、当該構成によれば、温度センサ用ホルダに温度センサは収容可能となる。よって、温度センサが箱の外部へ測定情報を送信可能である場合、箱の内部温度は確認可能である。その結果、箱に収容される医療に使用される物の保冷状態を保証することができる。
【0011】
また、当該構成では、空調機などの装置を使用していない。つまり、当該構成によれば、箱の内部の温度を低温状態に簡易に維持することができる。
【0012】
また、本開示の一側面に係る定温輸送籠は、上記一側面に係る定温輸送箱と、前記定温輸送箱を取り付け可能で、キャスター付きの枠体と、を備える。
【0013】
当該構成によれば、定温輸送箱を保冷庫に入れる場合や定温輸送箱を輸送する場合、定温輸送箱の移動は容易となる。
【0014】
また、本開示の一側面に係る定温輸送システムは、上記一側面に係る定温輸送箱と、前記三方向の側面に設けられた前記ポケットに保持された複数の蓄冷材と、前記温度センサ用ホルダに保持された内部温度センサと、を備える。
【0015】
当該構成によれば、蓄冷材が所定温度に冷却されて設置される場合、箱の上部から箱の底面方向へ向かって冷気が下降する。よって、箱の内部において熱の自然対流により箱の上部に暖気が溜まることは抑制される。その結果、箱の内部において医療に使用される物の周囲の温度は低温状態に維持される。また、蓄冷材が設置される側面の上部は、横断方向に一様に冷却される。そして、横断方向に一様に分布した冷気は箱の内側面に沿って一様に緩やかに下降する。よって、箱の内側面の表面は一様に緩やかに冷却される。その結果、箱の外部の熱が箱の側壁を伝って箱の内部へ熱伝導し、箱の内部の温度が上昇することは抑制される。
【0016】
また、当該構成によれば、温度センサが箱の外部へ測定情報を送信可能である場合、箱の内部温度は確認可能である。よって、箱に収容される医療に使用される物の定温輸送状態を保証することができる。
【0017】
また、当該構成によれば、空調機などの装置を使用していない。つまり、当該構成によれば、箱の内部の温度を低温状態に簡易に維持することができる。
【0018】
また、上記一側面に係る定温輸送システムは、外気の温度を測定する外気用の温度センサと、前記外気用の温度センサを前記箱の周囲において保持する保持部材と、を備えてもよい。
【0019】
当該構成によれば、外気用の温度センサが箱の外部へ測定情報を送信可能である場合、箱を輸送している間の外気温度を確認することができる。従って、外気温度に対する箱の内部温度の関係情報を取得することができる。その結果、取得した関係情報に基づき、箱の内部に設置される蓄冷材の個数や蓄冷材の初期温度などを、箱の内部温度が所望温度となるように変更することが容易となる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、医療に使用される物の周囲を低温状態に簡易に維持して輸送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、実施形態に係る保冷システムの概要を示している。
【
図2】
図2は、保冷籠を構成する箱の概要を示している。
【
図4】
図4は、輸送するフローの概要を示している。
【
図5】
図5は、保冷籠を輸送した場合の箱の内部温度の一例を示している。
【
図6】
図6は、箱の内部の温度及び外気温度の詳細を示している。
【
図7】
図7は、目的地に到着した保冷籠を保冷庫に入れずに放置した場合の温度変化の一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本開示の例示に過ぎない。本開示の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本開示の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。また、以降の説明において、保冷籠の箱2に設けられている扉5(後述する)を正面とする。
【0023】
図1は、本実施形態に係る保冷システム1(本開示の「定温輸送システム」の一例)の概要を示している。
図1に示されるように保冷システム1は、直方体状の箱2(本開示の「定温輸送箱」の一例)と、箱2が設置される台車3(本開示の「キャスター付きの枠体」の一例)と、箱2の内部に設置される蓄冷材13を備える。また、箱2の内部には、温度センサ用ホルダ15が設置されている。なお、台車3には箱2の周囲を囲む枠が設けられている。また、箱2および台車3を以降の説明では保冷籠(本開示の「定温輸送籠」の一例)という。
【0024】
また、保冷システム1は、発信機12を備える。発信機12は、外部装置とネットワークを介して無線通信可能な無線通信モジュールを有しており、箱2の外部に設置される。また、保冷システム1は、箱2の内部温度を測定可能な温度センサ(本開示の「内部温度センサ」一例、図示しない)を備える。そして、発信機12は、図示しないが温度センサ用ホルダ15で固定された温度センサ及びケーブルと接続されている。よって、温度センサから取得した箱2の内部温度情報を発信機は外部装置へ送信可能である。よって、箱2の内部温度は、保冷籠から離れた場所で確認可能である。また、発信機12の内部には、人工衛星からの電波により自身の位置情報を取得するGPS(Global Positioning System)モジュールが設けられている。
【0025】
また、保冷システム1は、外気温度を測定可能な温度ロガー(本開示の「外気用の温度センサ」の一例)と、当該温度ロガー等を入れるポケット9を備える。ポケット9は、台車3に設置されている。また、保冷システム1は、テープ17および結束帯18を有する。そして、ポケット9はテープ17によって台車3の枠に貼り付けられる。また、ポケット9は結束帯18により台車3の枠に取り付けられている。また、ポケット9には外部の装置と無線通信可能な無線モジュールが設けられる。そして、測定した外気温度情報は無線モジュールを介して外部装置に送信される。このような場合、保冷籠の周囲の外気温度は、保冷籠から離れた場所で確認可能である。また、台車3、ポケット9、テープ17および結束帯18は、本開示の「保持部材」の一例である。なお、これらの保持部材は設けられていなくともよい。
【0026】
箱2の内部には、例えば医薬品あるいは臓器などの医療に関する物品が収容される。そして、箱2の内部温度は箱2の内部に設けられた蓄冷材13により保冷される。
【0027】
図2は、箱2の概要を示している。
図2に示されるように、箱2にはカールベルト4が上面の二か所及び背面の四隅近傍の4箇所に設けられている。そして、これらのカールベルト4が台車3(
図1参照)の枠に掛けられることにより箱2が台車3に対して固定される。なお、箱2の外装及び内装は、4層のアルミ蒸着シートにより形成されている。このようなアルミ蒸着シートは、外部から箱2の内部への熱伝導を抑制する効果を有する。
【0028】
また、
図2に示されるように、箱2は、正面に扉5と、扉5を開くための取手10と、を備える。また、扉5の中央部分には、2枚の長方形のフレーム11が上下方向に延びるように設置されている。取手10は、フレーム11に取り付けられており、取手10が手前に引かれることにより、扉5の中央部分は手前方向に開かれる。
【0029】
なお、フレーム11は、例えばポリプロピレンなど、所定の剛性を有する材料により形成される。そして、2枚のフレーム11の少なくとも一部は、扉5が閉じられた場合に重なる構造となっている。つまり、所定の剛性を有し、平面度の高いフレーム11が重なることにより、扉5が閉じられた場合にフレーム11同士の間に隙間が生じることは抑制される。また、フレーム11には、扉止めベルト8が設けられている。扉止めベルト8が所定の場所に引っ掛けられることにより、扉5が不用意に開閉されることは抑制される。
【0030】
また、箱2にはフラップ6A及びフラップ6Bが設けられている。フラップ6Aは、箱2の上面と扉5との間、及び箱2の下面と扉5との間の隙間を覆う。また、フラップ6Bは、箱2の正面から見て左右の外側面と扉5との間の隙間を覆う。
【0031】
また、フラップ6Aの裏面と、フラップ6Aにより覆われる扉5の表面とには、面ファスナー7Aが設けられている。同様にして、フラップ6Bの裏面と、フラップ6Bにより覆われる箱2の外側面とには、面ファスナー7Bが設けられている(
図2では、右側の面ファスナー7Bのみ表示)。そして、面ファスナー7A及び面ファスナー7Bが閉じられることにより、箱2の本体と扉5との間の隙間は封止される。よって、箱2の内部から冷気が外部に漏れることは抑制される。
【0032】
また、扉5の表面には、収容される物品の情報や輸送先などの情報が記載されたカードが挿入可能なポケット19が設けられている。また、発信機12は、箱2の上面に設けられるポケット16に収容される。
【0033】
また、
図3は、箱2の内部構造の概要を示している。
図3に示されるように、箱2は、その内側面にポケット14を備える。そしてポケット14の内部に蓄冷材13が収容されることで、蓄冷材13が6個並べて設置可能となっている。より詳細には、ポケット14は、箱2の三方向の内側面の夫々を横断するように3つ設置される。ここで、ポケット14の内部は、蓄冷材13を横方向に並べて設置可能な大きさの空間を有する。また、ポケット14は、扉5の裏面には設定されていない。また、ポケット14が設置される高さは、箱2の内側面の中央部分よりも上部である。
【0034】
また、箱2は、温度センサ用ホルダ15を備える(本開示の「温度センサ用ホルダ」の一例)。温度センサ用ホルダ15は、例えばベルトであり、3つ設置されているポケット14のうちの一つのポケット14の上部に設けられている。また、設置される温度センサ用ホルダ15は例えば4つであり、それら4つの温度センサ用ホルダ15は、横方向に並べられている。そして、箱2の内部温度を測定する温度センサおよび温度センサと一体のケーブル(図示しない)とを箱2の内壁に対して固定する。
【0035】
図4は、医薬品などを箱2に収容し、保冷籠ごと輸送する場合のフローの概要を示して
いる。なお、出発地から目的地に保冷籠が輸送されている間、箱2に設置された発信機12に設けられたGPSモジュールにより保冷籠の位置情報が取得される。そして、取得された位置情報はネットワークを介して外部装置に送信される。よって、輸送中の保冷籠の位置を確認することができる。
(S101)
本フローのステップS101では、蓄冷材13を所定温度に冷却する。所定温度は、輸送対象に応じて定められる温度であって、例えば-25度である。
【0036】
(S102)
ステップS102では、ステップS101において冷却された6つの蓄冷材13を箱2の内部に設けられたポケット14に入れる。また、輸送対象の医薬品を箱2の内部に入れる。そして、扉5を開けた状態の箱2を保冷庫に入れ、所定時間放置する。ここで、所定時間は、例えば3時間程度であってもよい。また、保冷庫の温度は、例えば5度程度とする。なお、箱2は、台車3に取り付けられ、保冷籠として保冷庫の内部に放置される。また、保冷籠が保冷庫の内部に収容されている間、箱2の扉5は開放されている。よって、箱2の内部温度を測定する温度センサ用ホルダ15で固定された温度センサによって庫内の温度が測定される。そして、測定された庫内の温度情報は発信機12を介して外部装置へ送信される。よって、保冷庫に放置された保冷籠が所定温度で冷却されているか確認することができる。
【0037】
(S103)
ステップS103では、ステップS102において、保冷庫に入れて3時間経過した箱2の扉5を閉じる。そして、箱2の外表面に結束帯をかける。そして、出荷まで保冷庫にそのまま保管する。その後、所定時間となると、保冷庫から保冷籠が取り出され、目的地へ向けて出荷される。
【0038】
図5は、箱2に医薬品が収容された保冷籠を車両輸送及び海上輸送した場合の箱2の内部温度の一例を示している。
図5に示される例では、保冷籠は、出荷地から約1日かけて車両輸送される。その後、保冷籠は、約3日間海上輸送される。さらにその後、保冷籠は、約1日かけて車両輸送されて目的地に到着する。なお、
図5に示される例では、箱2の内部に15個の温度ロガーを設置し、箱2の内部の温度を測定している。また、ポケット9に収容された外気温度測定用の温度ロガーにより、箱2の周囲の外気温度が測定され、測定された外気温度は、
図5のグラフに重ねて表示されている。また、
図5に示される例では、2度目の車両輸送の際に通過する都市の気温が重ねて表示されている。
【0039】
図5に示されるように、箱2の内部の温度は、2回の車両輸送と1回の海上輸送が行われた場合であっても、輸送前の保冷庫の温度である5度程度を維持している。また、出荷地から目的地へ到着するまでに5日間程度要しているが、箱2の内部の温度の上昇は抑制されていることがわかる。
【0040】
また、
図6は、
図4における2度目の車両輸送の場合の箱2の内部の温度及び外気温度の詳細を示している。
図6に示されるように、2度目の車両輸送では、通過する都市の温度が25度程度と高い温度となっており(
図5)、外気温度も15度程度に上昇する場合もあるが、箱2の内部の温度の上昇は5度程度に維持されていることがわかる。
【0041】
また、
図7は、目的地に到着した保冷籠を保冷庫に入れずに放置した場合の温度変化の一例を示している。
図7に示されるように、目的地では、ポケット9に収容された外気温度測定用の温度ロガーにより測定される箱2の周囲の外気温度が20度程度と高温になっていることがわかる。しかしながら、箱2の内部の温度は、目的地に到着してから5時間程度経過した場合であっても、8度程度となっており、温度上昇が抑制されていることが
わかる。
【0042】
(作用・効果)
上記のような保冷システム1によれば、蓄冷材13が冷却された状態で、箱2の高さ方向の中央より上部に設けられたポケット14に設置されている。よって、輸送中に箱2の上部から箱2の底面方向へ向かって冷気が下降し、箱2の内部における自然対流の発生を促進する。これにより箱2の上部に暖気が滞留することは抑制される。
【0043】
また、蓄冷材13が並べられたポケット14の内部は一様に冷却される。そして、このようなポケット14が設置された箱2の三方向の側面は、その横断方向の温度が一様に冷却される。そして、横断方向に一様に分布した冷気は、側面に沿って一様に緩やかに下降する。よって、箱2の側面は一様に緩やかに冷却されることになる。よって、箱2の外部の熱が箱2の側壁を伝って箱の内部へ熱伝導し、箱2の内部の温度が上昇することは抑制される。
【0044】
このような効果は、保冷籠を5日程度に亘って車両輸送及び海上輸送した場合であっても、箱2の内部において医療品の周囲の温度が、出荷地の保冷庫の温度である5度程度に維持されていることからも確認できる(
図5及び
図6)。また、このような効果は、箱2の周囲の外気温度が15度程度に上昇する場合であっても、箱2の内部の温度が5度程度に維持されていることからも確認できる(
図6)。また、このような効果は、外気温度が20度程度と高温になり、目的地に到着してから5時間程度経過した場合であっても、箱2の内部の温度は8度程度となっていることからも確認できる(
図7)。よって、箱2に収容される医薬品の保冷状態は保証される。
【0045】
また、上記のような保冷システム1によれば、保冷籠を輸送している間の箱2の内部温度と外気温度との関係を、箱2の内部温度の測定情報およびポケット9に収容される外気温度測定用の温度ロガーにより測定された測定情報により確認することができる。よって、取得した関係情報に基づき、箱2の内部に設置される蓄冷材13の個数や蓄冷材の初期温度などを、箱2の内部温度が所望温度となるように変更することが容易となる。
【0046】
なお、発信機12を収容するポケット16は設けられていなくともよい。また、内部温度を測定する温度センサ用ホルダ15で固定された温度センサは、自身が測定した内部温度情報を、ネットワークを介して外部へ無線送信可能な無線モジュールを有していてもよい。また、外気の温度を測定するポケット9に設置した温度ロガーは、測定温度を外部装置に送信しなくともよい。また、温度ロガーは設けられていなくともよい。
【0047】
また、上記の保冷システム1では、輸送中に箱2の内部温度が2度から8度程度に維持される例を示したが、保冷システム1は箱2の内部温度を例えば15度から25度の常温帯に維持することもできる。
【0048】
また、上記のような保冷システム1によれば、空調機などの装置を有していない。つまり、上記のような保冷システム1によれば、箱2の内部の温度を5度程度の低温状態に簡易に維持することができる。
【0049】
また、上記のような保冷システム1によれば、箱2は台車3に設置可能である。よって、箱2を保冷庫に入れる場合や箱2を輸送する場合、箱2の移動は容易となる。なお、上記の実施形態では保冷システム1は台車を含んでいるが、保冷システム1は台車3を含まなくともよい。
【0050】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせる事ができる。
【符号の説明】
【0051】
1 :保冷システム
2 :箱
3 :台車
4 :カールベルト
5 :扉
6A :フラップ
6B :フラップ
7A :面ファスナー
7B :面ファスナー
8 :扉止めベルト
9 :ポケット(温度ロガー、看板)
10 :取手
11 :フレーム
12 :発信機
13 :蓄冷材
14 :ポケット
15 :温度センサ用ホルダ
16 :ポケット
17 :テープ
18 :結束帯
19 :ポケット