IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 24エム・テクノロジーズ・インコーポレイテッドの特許一覧

特許7148578電気化学的スラリー組成物及びその調製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】電気化学的スラリー組成物及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20220928BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20220928BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220928BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20220928BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220928BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20220928BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/139
H01M4/13
H01M4/02 Z
H01M4/62 Z
H01G11/86
【請求項の数】 23
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020141311
(22)【出願日】2020-08-25
(62)【分割の表示】P 2018120482の分割
【原出願日】2013-06-10
(65)【公開番号】P2020198312
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】61/659,248
(32)【優先日】2012-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/659,736
(32)【優先日】2012-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/662,173
(32)【優先日】2012-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/665,225
(32)【優先日】2012-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】13/832,861
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511242269
【氏名又は名称】24エム・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】24M Technologies, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ドハーティー,トリスタン
(72)【発明者】
【氏名】リムトンクル,ピンパ
(72)【発明者】
【氏名】バトロス,アスリ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥドゥタ,ミハイ
(72)【発明者】
【氏名】クロス,ジェームズ シー.,サード
【審査官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-524074(JP,A)
【文献】特開2009-224141(JP,A)
【文献】特開2006-294288(JP,A)
【文献】特開2008-270137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/04
H01M 4/139
H01M 4/13
H01M 4/02
H01M 4/62
H01G 11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも0.80の混合指数を有する半固体電極材料を形成するために、活物質を電解質及び導電性添加剤と混合することと、
混合中の前記半固体電極材料の温度を制御して、混合中に蒸発する前記電解質が27体積%未満になるように、前記半固体電極材料からの前記電解質の蒸発率を制御することと、
前記半固体電極材料から第1の電極を形成することと、
第2の電極を形成することと、
前記第1の電極と前記第2の電極とを組み合わせて電気化学的セルを形成することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記活物質の前記電解質及び前記導電性添加剤との混合は、二軸スクリュー押出しにより行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記半固体電極材料は、前記電解質中の前記活物質及び前記導電性添加剤の懸濁物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記半固体電極材料が、少なくとも10-6S/cmの導電性を有するまで前記半固体電極材料を混合することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記半固体電極材料が、1,000s-1の見かけの剪断速度にて100,000Pas未満の見かけの粘度を有するまで前記半固体電極材料を混合することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記活物質が、体積で前記半固体電極材料の20%~75%である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記電解質が、体積で前記半固体電極材料の25%~70%である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記導電性添加剤が、体積で前記半固体電極材料の0.5%~25%である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも0.80の混合指数を有する半固体電極材料を形成するために、混合デバイス内で活物質及び電解質を導電性添加剤と混合することと、
混合中の前記半固体電極材料の温度を制御して、混合中に蒸発する前記電解質が27体積%未満になるように、前記電解質の蒸発率を制御することと、
を含む方法。
【請求項10】
前記混合デバイスは、二軸スクリュー押出機である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記活物質が、体積で前記半固体電極材料の20%~75%であり、前記導電性添加剤が、体積で前記半固体電極材料の0.5%~25%であり、前記電解質が、体積で前記半固体電極材料の20%~70%である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記混合デバイスは高剪断ミキサである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記混合デバイスは遊星形ミキサである、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記混合デバイスは遠心分離遊星形ミキサである、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
半固体電極材料を形成するために、混合デバイスの容器内で活物質および電解質を導電性添加剤と混合することと、
混合中の前記半固体電極材料の所定の温度を制御して、混合中に蒸発する前記電解質が27体積%未満になるように、前記電解質の蒸発率を制御することと、
前記半固体電極材料から電極を形成することと、を含み、
前記混合デバイスが、前記半固体電極材料に混合エネルギーを与えるように構成される、
方法。
【請求項16】
前記混合デバイスは、二軸スクリュー押出機である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記混合デバイスの前記容器は、混合中、10℃未満の前記所定の温度まで冷却される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記混合デバイスは高剪断ミキサである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記混合デバイスは遊星形ミキサである、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記混合デバイスは遠心分離遊星形ミキサである、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記混合デバイスはシグマミキサである、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記混合デバイスはCAMミキサである、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記混合デバイスはローラミキサである、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
[0001] 本出願は、「Electrochemical Slurry Compositions and Methods for Preparing the Same」と題した2013年3月15日出願の米国特許出願第13/832,861号の継続出願であり、それに対する優先権を主張し、それは2012年6月13日出願の米国仮特許出願第61/659,248号、2012年6月14日出願の米国仮特許出願第61/659,736号、2012年6月20日出願の米国仮特許出願第61/662,173号、及び2012年6月27日出願の第61/665,225号に対する優先権を主張し、それらはすべて参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本出願はまた、「Electrochemical Slurry Compositions and Methods for Preparing the Same」と題した2012年6月27日出願の米国仮特許出願第61/665,225号に対する優先権を主張し、その開示は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
[0003] 本出願はまた、「Electrochemical Slurry Compositions and Methods for Preparing the Same」と題した2012年6月20日出願の米国仮特許出願第61/662,173号に対する優先権を主張し、その開示は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0004】
[0004] 本出願はまた、「Electrochemical Slurry Compositions and Methods for Preparing the Same」と題した2012年6月14日出願の米国仮特許出願第61/659,736号に対する優先権を主張し、その開示は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0005】
[0005] 本出願はまた、「Electrochemical Slurry Compositions and Methods for Preparing the Same」と題した2012年6月13日出願の米国仮特許出願第61/659,248号に対する優先権を主張し、その開示は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0006】
[0006] 本明細書に記載する実施形態は、一般に半固体懸濁物に関し、特に、例えば電池などの電気化学的デバイスの電極として使用する半固体懸濁物を調製するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0007】
[0007] 電池は通常、固体の電極、セパレータ、電解質、及び付属的構成要素、例えば電流キャリアの端子へのパッケージング、熱管理、セル平衡、統合、及び/又は他のこのような構成要素で構成される。電極は通常、活物質、導体、結合剤及び他の添加物を含む。
【0008】
[0008] 電池を調製するための公知の幾つかの方法は、溶媒中に溶解している活物質、導電性添加剤、及び結合剤で金属基質(例えば集電体)を被覆することと、溶媒を蒸発させることと、乾燥した固体基質を特定の厚さまでカレンダー加工することとを含む。次に、電極を切断し、他の構成要素で外装して、電解質を溶浸させ、次に外装全体を封止する。
【0009】
[0009] このような公知の方法は一般に、電極を鋳込むなどの複雑で費用がかかる製造工程を含み、例えば100μm未満などの限定された厚さの電極にしか適切ではない。限定された厚さの電極を生産するこれらの公知の方法により、電池は容量が低下し、エネルギー密度が低下し、活物質に対する不活性構成要素の比率が高くなる。さらに、公知の電極調合に使用される結合剤は、電極の蛇行性を高め、そのイオン導電率を低下させることがある。したがって、簡単化して製造費を削減し、電極及び完成した電池の不活性構成要素を減少させ、性能を向上させることが、エネルギー蓄積システム開発の不変の目標である。
【発明の概要】
【0010】
[0010] 本明細書に記載する実施形態は、一般に半固体懸濁物に関し、特に例えば電池などの電気化学的デバイスの電極として使用するために半固体懸濁物を調製するシステム及び方法に関する。幾つかの実施形態では、半固体電極を調製する方法は、中間材料を形成するために、ある量の活物質をある量の電解質と組み合わせることを含む。次に、電極材料を形成するために、中間材料を導電性添加剤と組み合わせる。電極材料を混合して、少なくとも約0.80の混合指数を有する懸濁物を形成し、次に半固体電極に形成する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】[0011]様々な実施形態により、ある範囲の組成物について混合方法が半固体電極の導電性に与える効果を示すプロットである。
図2】[0012]様々な実施形態により、ある範囲の組成物について混合方法が半固体電極の降伏応力に与える効果を示すプロットである。
図3A】[0013]様々な実施形態による半固体懸濁物の概略図である。
図3B】[0013]様々な実施形態による半固体懸濁物の概略図である。
図3C】[0013]様々な実施形態による半固体懸濁物の概略図である。
図4A】[0013]様々な実施形態による半固体懸濁物の概略図である。
図4B】[0013]様々な実施形態による半固体懸濁物の概略図である。
図4C】[0013]様々な実施形態による半固体懸濁物の概略図である。
図5】[0014]様々な実施形態による半固体電極の導電性対導電性添加剤負荷のプロットである。
図6A】[0015]様々な実施形態による異なる導電性添加剤負荷を有する電極スラリー混合物を示す。
図6B】[0015]様々な実施形態による異なる導電性添加剤負荷を有する電極スラリー混合物を示す。
図6C】[0015]様々な実施形態による異なる導電性添加剤負荷を有する電極スラリー混合物を示す。
図7】[0016]様々な実施形態によるスラリー調合の流動学的特性を示すプロットである。
図8】[0016]様々な実施形態によるスラリー調合の流動学的特性を示すプロットである。
図9】[0016]様々な実施形態によるスラリー調合の流動学的特性を示すプロットである。
図10】[0016]様々な実施形態によるスラリー調合の流動学的特性を示すプロットである。
図11】[0017]様々な実施形態による混合曲線を示すプロットである。
図12】[0017]様々な実施形態による混合曲線を示すプロットである。
図13】[0017]様々な実施形態による混合曲線を示すプロットである。
図14】[0018]様々な実施形態による混合指数及び比エネルギー入力と導電性添加剤負荷との関係を示すプロットである。
図15】[0019]様々な実施形態により混合が特定のスラリーパラメータに与える効果を示すプロットである。
図16】[0020]混合時間の関数として特定のスラリーの導電性を示すプロットである。
図17A】[0021]ある実施形態により2つの異なる混合時間を経たスラリーの顕微鏡写真である。
図17B】[0021]ある実施形態により2つの異なる混合時間を経たスラリーの顕微鏡写真である。
図17C】[0021]ある実施形態により2つの異なる混合時間を経たスラリーの顕微鏡写真である。
図17D】[0021]ある実施形態により2つの異なる混合時間を経たスラリーの顕微鏡写真である。
図18】[0022]2つの異なる正極について、100rpmにおける混合指数と導電性及び混合継続時間の進展を示す。
図19】[0023]2つの異なるアノード組成物について、100rpmにおける混合指数と導電性及び混合継続時間の進展を示す。
図20】[0024]様々な実施形態により、2つの剪断状態について、混合時間の関数として導電性を示すプロットである。
図21】[0025]様々な実施形態により、時間、混合継続時間及び温度に伴う電解質の損失を示すプロットである。
図22】[0026]様々な実施形態により温度が粘度に与える効果を示すプロットである。
図23】[0026]様々な実施形態により温度が粘度に与える効果を示すプロットである。
図24】[0027]2つの異なる例示的カソード組成物について、ある時間にわたる混合指数を示す。
図25】[0028]2つの異なる例示的アノード組成物について、ある時間にわたる混合指数を示す。
図26】[0029]様々な混合プロセスを使用して調整済みアノード組成物の混合指数及び導電性を示す。
図27】[0030]2つの異なる混合方法を使用して調製した2つの異なるカソード組成物について、混合指数及び導電性を示す。
図28】[0031]2つの異なる混合時間で混合したアノード組成物の混合指数及び導電性を示す。
図29】[0032]第一アノード組成物について、加工中に混合時間が安定性に与える効果を示す。
図30】[0033]第二アノード組成物について、加工中に混合時間が安定性に与える効果を示す。
図31】[0034]2つのアノード組成物及び4つの異なる混合継続時間を示す。
図32】[0035]第一カソード組成物について、加工中に混合時間が安定性に与える効果を示す。
図33】[0036]第二カソード組成物について、加工中に混合時間が安定性に与える効果を示す。
図34】[0037]2つのカソード組成物及び3つの異なる混合継続時間を示す。
図35A】[0038]充電及び放電率、及びサンプル充電/放電曲線の関数として例示的半固体カソード組成物の容量を示す。
図35B】[0038]充電及び放電率、及びサンプル充電/放電曲線の関数として例示的半固体カソード組成物の容量を示す。
図36A】[0039]充電及び放電率、及びサンプル充電/放電曲線の関数として例示的半固体カソード組成物の容量を示す。
図36B】[0039]充電及び放電率、及びサンプル充電/放電曲線の関数として例示的半固体カソード組成物の容量を示す。
図37A】[0040]充電及び放電率、及びサンプル充電/放電曲線の関数として例示的半固体カソード組成物の容量を示す。
図37B】[0040]充電及び放電率、及びサンプル充電/放電曲線の関数として例示的半固体カソード組成物の容量を示す。
図38A】[0041]充電及び放電率、及びサンプル充電/放電曲線の関数として例示的半固体カソード組成物の容量を示す。
図38B】[0041]充電及び放電率、及びサンプル充電/放電曲線の関数として例示的半固体カソード組成物の容量を示す。
図39A】[0042]100サイクルにわたって半固体ベースの電気化学的セルの性能、及びサンプル充電/放電曲線を示す。
図39B】[0042]100サイクルにわたって半固体ベースの電気化学的セルの性能、及びサンプル充電/放電曲線を示す。
図40A】[0043]30サイクルにわたって半固体ベースの電気化学的セルの性能、及びサンプル充電/放電曲線を示す。
図40B】[0043]30サイクルにわたって半固体ベースの電気化学的セルの性能、及びサンプル充電/放電曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0044] 本明細書に記載する実施形態は、一般に半固体懸濁物に関し、特に、例えば電池などの電気化学的デバイスの電極として使用する半固体懸濁物を調製するシステム及び方法に関する。幾つかの実施形態では、半固体電極を調製する方法は、中間材料を形成するために、ある量の活物質をある量の電解質と組み合わせることを含む。次に、中間材料を導電性添加剤と組み合わせて電極材料を形成する。電極材料を混合して、少なくとも約0.80の混合指数を有する懸濁物を形成し、次に半固体電極に形成する。
【0013】
[0045] 消費者用電子機器の電池は、リチウムイオン電池の発達とともにエネルギー密度が徐々に増加している。製造された電池の蓄積エネルギー又は充電容量は、(1)活物質(mAh/g)の固有充電容量、(2)電極の体積(cm)(すなわち、電極の厚さ、電極の面積、層(スタック)の数の積)、及び(3)電極媒質中の活物質の負荷(例えば電極媒質1cm当たりの活物質のグラム数)の関数である。したがって、一般に、商業的魅力を向上させる(例えばエネルギー密度の増大及び費用の削減)には、電極の面積充電容量(mAh/cm)を増大させることが望ましい。面積充電容量の増大を達成する、したがって不活性構成要素の相対的パーセンテージを減少させる一つの方法は、電極の厚さを増加させることである。しかし、バインダを使用する従来の電極組成物は、約200μmを超える厚さにすることができない。何故なら、鋳込み及び高速ロールツーロールカレンダー加工プロセスを使用して製造した従来の電極は、200μmより厚くしてある場合、平坦な集電体から乾燥すると、ひび割れ及び/又は層間剥離の傾向があるからである。また、電極が厚いほどセルのインピーダンスが高くなり、これで(例えばYu他の、「Effect of electrode parameters on LiFePO4 cathodes」(J. Electrochem. Soc. Vol. 153, A835-A839 (2006))に記載するように)エネルギー効率が低下する。
【0014】
[0046] 本明細書に記載する半固体電極組成物及び調製方法の実施形態は、半固体懸濁物で直接製造することができ、それにより従来の結合剤及び電極の鋳込み、乾燥、及びカレンダー加工工程がすべて回避される。この方法の幾つかの利点には、例えば(i)機器の数が減少した状態で(すなわち、それほど資本集約的ではない)簡単化した製造、(ii)様々な厚さの電極を(例えば簡単に成形型の寸法を変更することにより)製造する能力、(iii)より厚く(200μm超)、より高い容量(mAh/cm)の電極を加工し、それにより活物質に対して不活性構成要素の体積、質量、及び費用分布を削減すること、及び(iv)結合剤(例えばPVdF)を省略し、それにより電極の蛇行性を減少させて、イオン導電性を増大させ、さらに発熱反応に寄与することがある結合剤を除外することによって安全性を増大させることが含まれる。半固体懸濁物を使用する電池の構造の例が、「Stationary, Fluid Redox Electrode」と題した国際特許公開第WO2012/024499号、「Semi-Solid Filled Battery and Method of Manufacture」と題した国際特許公開第WO2012/088442号、「Stationary Semi-Solid Battery Module and Method of Manufacture」と題した米国特許出願第13/607,021号、及び「Semi-Solid Electrode Cell Having a Porous Current Collector and Methods of Manufacture」と題した米国特許出願第13/606,986号に記載され、それぞれの全開示が参照により本明細書に組み込まれる。
【0015】
[0047] 本明細書に記載する「約」という用語は、一般に、表明した値の±10%を意味し、例えば約5は4.5~5.5を含み、約10は9~11を含み、約100は90~110を含む。
【0016】
[0048] 本明細書に記載する実施形態は、一般に、例えばリチウムイオン電池などの電気化学的デバイスに関するが、本明細書に記載するシステム、方法及び原理は、電気化学的に活性の媒質を含有するすべてのデバイスに適用可能である。言い換えると、少なくとも活材料(電荷担体の源又はシンク)、電子的に導電性の添加剤、及びイオン導電性媒質(電解質)を含む任意の電極及び/又はデバイス、例えば電池、コンデンサ、電気二重層コンデンサ(例えばウルトラキャパシタ)、疑似コンデンサなどは本開示の範囲に入る。
【0017】
[0049] 幾つかの実施形態では、半固体電極(本明細書では「半固体懸濁物」及び/又は「スラリー」電極とも呼ぶ)を調製する方法は、中間材料を形成するために、ある量の活物質をある量の電解質と組み合わせることを含むことができる。中間材料を電解質と組み合わせて、電極材料を形成する。電極材料は、その間の範囲をすべて含めて少なくとも約0.8、少なくとも約0.9、少なくとも約0.95、又は少なくとも約0.975の混合指数を有する実質的に安定した懸濁物が形成されるまで混合する。幾つかの実施形態では、電極材料が、その間の範囲をすべて含めて少なくとも約10-6S/cm、少なくとも約10-5S/cm、少なくとも約10-4S/cm、少なくとも約10-3S/cm、又は少なくとも約10-2S/cmの導電性を有するまで電極材料を混合する。幾つかの実施形態では、電極材料が、その間の範囲をすべて含めて約1,000s-1の見かけの剪断速度で、約100,000Pa-s未満、約10,000Pa-s未満、又は約1,000Pa-s未満の見かけの粘度を有するまで電極材料を混合する。幾つかの実施形態では、電極材料に含まれる活物質の量は、その間の範囲をすべて含めて体積で約20%~約75%、体積で約40%~約75%、又は体積で約60%~約75%とすることができる。幾つかの実施形態では、電極材料に含まれる電解質の量は、その間の範囲をすべて含めて体積で約25%~約70%、体積で約30%~約50%、又は体積で約20%~約40%とすることができる。幾つかの実施形態では、電極材料に含まれる導電性材料の量は、その間の範囲をすべて含めて体積で約0.5%~約25%、又は約1%~約6%とすることができる。
【0018】
[0050] 幾つかの実施形態では、電極材料の混合は、例えば高剪断ミキサ、遊星形ミキサ(planetary mixer)、遠心分離遊星形混合物、シグマ混合物、CAM混合物及び/又はローラ混合物のいずれか1つで実行することができる。幾つかの実施形態では、電極材料の混合は、その間の範囲をすべて含めて少なくとも約90J/g、少なくとも約100J/g、約90J/g~約150J/g、又は約100J/g~約120J/gの比混合エネルギーを供給することができる。
【0019】
[0051] 幾つかの実施形態では、リチウムシステムの正電極の電気活性材料は、α-NaFeO(いわゆる「層状化合物」)を含む秩序的岩塩化合物LiMOの一般的族、又は斜方晶系LiMnO構造タイプ、又はその異なる結晶対称、結晶配列、又は金属又は酸素の部分置換の誘導体を含む。Mは少なくとも1つの第1列の遷移金属を含むが、Al、Ca、Mg、又はZrを含むが、それらに限定されない非遷移金属を含んでもよい。このような化合物の例には、LiCoO、MgをドープしたLiCoO、LiNiO、Li(Ni,Co,Al)O(「NCA」として知られる)、及びLi(Ni,Mn,Co)O(「NMC」として知られる)が含まれる。例示的な電気活性材料の他の族には、構造が秩序的岩塩及び尖晶石配列を有するナノスコピック領域を含むLiMnなどの尖晶石構造及びその誘導体、いわゆる「層状尖晶石ナノ複合体」、MがMn、Fe、Co、又はNiのうち1つ又は複数を含むカンラン石LiMPO及びその誘導体、LiVPOFなどの部分的にフッ素化した化合物、以下で説明するような他の「ポリアニオン」化合物、及びV及びV11を含む酸化バナジウムVが含まれる。
【0020】
[0052] 幾つかの実施形態では、活物質は例えば米国特許第7,338,734号に記載されているような遷移金属ポリアニオン化合物を含む。1つ又は複数の実施形態では、活物質はアルカリ金属、遷移金属酸化物又はリン酸塩を含み、例えば化合物はA(M’1-aM”)y(XD、A(M’1-aM”)y(DXD、又はA(M’1-aM”)y(Xの組成物を有し、xにy(1-a)を加えてM’の1つ又は複数の正式原子価を掛け、yaを加えてM”の正式原子価又は原子価を掛けた値が、zにXD、X、又はDXD基の正式原子価を掛けた値と等しくなるような値を有する、又は化合物が(A1-aM”M’(XD、(A1-aM”M’(DXD(A1-aM”M’(Xの組成物を含み、(1-a)xに量axを加え、M”の1つ又は複数の正式原子価を掛け、yを加えて、M’の1つ又は複数の正式原子価を掛けた値が、zにXD、X又はDXD基の正式原子価を掛けた値と等しくなるような値を有する。化合物中で、Aはアルカリ金属及び水素のうち少なくとも1つであり、M’は第1列の遷移金属であり、Xはリン、イオウ、砒素、モリブデン、及びタングステンのうち少なくとも1つであり、M”はIIA、IIIA、IVA、VA、VIA、VIIA、VIIIA、IB、IIB、IIIB、IVB、VB、及びVIB族の金属のうちいずれかであり、Dは酸素、窒素、炭素、又はハロゲンのうち少なくとも1つである。正電気活性材料は、カンラン石構造の化合物LiMPOとすることができ、ここで、MはV、Cr、Mn、Fe、Co、及びNiのうち1つ又は複数であり、化合物は任意選択でLi、M又はO部位にてドープする。Li部位における欠失は、金属又はメタロイドの添加によって補償され、O部位における欠失はハロゲンの添加によって補償される。幾つかの実施形態では、正活物質は熱的に安定し、カンラン石構造を有して、(Li1-x)NPOの式を有し、遷移金属をドープしたリチウム遷移金属リン酸塩を含み、ここで、MはV、Cr、Mn、Fe、Co,及びNiのうち1つ又は複数であり、ZはTi、Zr、Nb、AI、又はMgなどの非アルカリ金属ドーパントであり、xは0.005~0.05の範囲である。
【0021】
[0053] 幾つかの実施形態では、リチウム遷移金属リン酸塩材料は、L1-x-z1+zPO4の全体的組成物を有し、ここで、MはTi、V、Cr、Mn、Fe、Co及びNiからなる群から選択される少なくとも1つの第1列の遷移金属を含み、xは0~1であり、zは正又は負でよい。MはFeを含み、zは約0.15と-0.15の間である。材料は、0<x<0.15の組成物範囲にわたって固溶体を示すことができる、又は材料は0と少なくとも約0.05の間のxの組成物範囲にわたって安定した固溶体を示すことができる、又は材料は室温(22~25℃)にて0と少なくとも約0.07の組成物範囲にわたって安定した固溶体を示すことができる。材料は、リチウムが不十分な領域、例えばx≧0.8、又はx≧0.9、又はx≧0.95の場合に固溶体も示すことができる。
【0022】
[0054] 幾つかの実施形態では、酸化還元活性電極材料は、置換反応又は転換反応を経ることによってアルカリイオンを蓄積する金属塩を含む。このような化合物の例には、CoO、Co、NiO、CuO、MnOなどの金属酸化物が含まれ、これは通常リチウム電池の負極に使用され、Liと反応すると、置換反応又は転換反応を経て、さらに還元された酸化物の形態又は金属質形態でLiOと金属成分との混合物を形成する。他の例には、CuF、FeF、FeF、BiF、CoF、及びNiFなどの金属フッ化物が含まれ、これは置換反応又は転換反応を経て、LiF及び還元金属成分を形成する。このようなフッ化物は、リチウム電池の正極として使用することができる。他の実施形態では、酸化還元活性電極材料は一フッ化炭素又はその誘導体を含む。幾つかの実施形態では、置換反応又は転換反応を経た材料は、100ナノメートル以下の平均寸法を有する微粒子の形態である。幾つかの実施形態では、置換反応又は転換反応を経た材料は、不活性ホストと混合した活物質のナノ複合体を含む。
【0023】
[0055] 幾つかの実施形態では、スラリー成分は、バッチプロセスにおいて、本明細書でさらに詳細に説明するように特定の空間及び/又は時間的順序で成分を添加して、例えば高剪断混合物、遊星形混合物、遠心分離遊星形混合物、シグマ混合物、CAM混合物及び/又はローラ混合物を含むことができる例えばバッチミキサで混合することができる。幾つかの実施形態では、スラリー成分は連続的プロセスにて(例えば押出機中で)特定の空間及び/又は時間的順序で成分を添加して混合することができる。
【0024】
[0056] 幾つかの実施形態では、プロセス条件(温度、剪断速度又は率スケジュール、成分の添加順序、位置、及び速度、混合又は滞留時間)を選択及び/又は変更して、調製済みスラリーの電気的、流動学的及び/又は組成物(例えば均一性)の特性を制御することができる。幾つかの実施形態では、混合要素(例えばローラブレードの縁)の速度は、約0.5cm/秒と約50cm/秒の間とすることができる。幾つかの実施形態では、混合事象中に流体が流れる最小間隙(例えばローラブレードの縁からミキサの封じ込め壁までの距離)は、約0.05mmと約5mmの間とすることができる。したがって、剪断速度(速度スケールを長さスケールで割った値)は、これに応じて約1と約10,000s-1(inverse seconds)との間である。幾つかの実施形態では、剪断速度は、1s-1未満とすることができ、他の実施形態では、10,000s-1を上回る。
【0025】
[0057] 幾つかの実施形態では、プロセス条件は、少なくとも約0.80、少なくとも約0.90、少なくとも約0.95、又は少なくとも約0.975の混合指数を有する調製済みスラリーを生成するように選択することができる。幾つかの実施形態では、プロセス条件は、少なくとも約10-6S/cm、少なくとも約10-5S/cm、少なくとも約10-4S/cm、少なくとも約10-3S/cm、又は少なくとも約10-2S/cmの導電性を有する調整済みスラリーを生成するように選択することができる。幾つかの実施形態では、プロセス条件は、室温で約100,000Pa-s未満、約10,000Pa-s未満、又は約1,000Pa-s未満の見かけの粘度を、すべて1,000s-1の見かけの剪断速度で有する調整済みスラリーを生成するように選択することができる。幾つかの実施形態では、プロセス条件は、本明細書に記載するような2つ以上の特性を有する調整済みスラリーを生成するように選択することができる。
【0026】
[0058] 半固体電極の混合及び形成は通常、(i)原料の運搬及び/又は供給、(ii)混合、(iii)混合スラリーの運搬、(iv)計量分配、及び(v)形成を含む。幾つかの実施形態では、プロセスの複数の工程を同時に及び/又は機器の同じ部片で実行することができる。例えば、スラリーの混合及び運搬は、同時に押出機で実行することができる。プロセスの各工程は、1つ又は複数の可能な実施形態を含むことができる。例えば、プロセスの各工程は手作業で、又は様々なプロセス機器のいずれかで実行することができる。各工程は、1つ又は複数のサブプロセスを、及び任意選択でプロセスの品質を監視する検査工程も含むことができる。
【0027】
[0059] 原料の運搬及び/又は供給は、自然に供給する状態で(例えば外力がない状態でミキサが混合する材料を受けられるようにして)バッチ単位の手作業での材料計量、ピストン機構又はスクリュー式「サイドスタッファ」によって強制供給した状態でバッチ単位の手作業での材料計量、自然に供給する(例えば、ミキサが自然に材料を受けられる速度での供給)重量スクリュー固体フィーダ、強制供給する(例えば、Brabender Industries Inc.が販売するユニットとピストン機構又はスクリュー式「サイドスタッファ」との組み合わせ)重量スクリュー固体フィーダ、及び/又は任意の他の適切な運搬及び/又は供給法及び/又は任意のその適切な組み合わせを含むことができる。
【0028】
[0060] 幾つかの実施形態では、例えば混合後、スラリーは、例えばピストンポンプ、蠕動ポンプ、ギヤ/ローブポンプ、一軸ねじポンプ、一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機の運搬区間、及び/又は他の任意の運搬装置を使用して運搬及び/又は加圧することができる。幾つかの実施形態では、運搬及び/又は加圧中に、運搬装置のトルク及び/又は出力、運搬装置の出口圧力、流量、及び/又は温度を測定、監視、及び/又は制御することができる。
【0029】
[0061] 幾つかの実施形態では、例えば運搬及び/又は加圧後、スラリーを計量分配及び/又は押し出すことができる。スラリーは、例えば「ハンガーダイ」シート押出ダイ、「ウィンターマニホールド」シート押出ダイ、プロファイルスタイルのシート押出ダイ、材料の連続流を基質に適用するように動作可能な任意のノズル、正確なサイズ及び形状の型への注入(例えばポケットの材料充填)、及び/又は他の任意の計量分配デバイスを使用して計量分配及び/又は押出し加工することができる。
【0030】
[0062] 幾つかの実施形態では、計量分配後、スラリーを最終的電極に形成することができる。例えば、スラリーはカレンダー加工ロールで形成、打ち抜き及び/又は圧締め、振盪沈殿させる、及び/又は別個の区間へ切断することができる。また、幾つかの実施形態では、材料の望ましくない部分を除去し(例えばマスキング及びクリーニング)、任意選択でリサイクルし、スラリー製造プロセスに戻すことができる。
【0031】
[0063] 本明細書に記載するシステム、混合機器、プロセス及び方法は、電気化学的デバイス(例えば電池)に使用するのに適切な半固体懸濁物(例えばスラリー)の生成に使用することができる。このようなシステム及び方法によって生成された半固体懸濁物は、特定の特性、例えば流動性、導電性、及び電気化学的性能を有するスラリー系電極の調合に適切である。例えば、幾つかの適切な混合デバイスには、例えばより高剪断のミキサ、遊星形ミキサ、遠心分離遊星形混合、シグマ混合、CAM混合又はローラ混合、C.W. Brabender又はBanburry(登録商標)スタイル混合などのバッチミキサ、ポート式一軸又は二軸スクリュー押出機(例えばLeistritz、Haake)などの連続配合デバイス、ブレード型ブレンダ、高速混練機などの高剪断ミキサ、及び/又は回転インペラが含まれる。幾つかの実施形態では、混合デバイスは、スラリーの流動性を制御して温度を調整する、及び/又は化学組成を調節することによってスラリーの均質性を制御するように動作可能にすることができる。
【0032】
[0064] バッチミキサを使用して半固体懸濁物を混合する実施形態では、半固体懸濁物を、バッチミキサから加工機器、例えば押出機の別の部片へと移送することができる。このような実施形態では、電解質の損失を最小化する、スラリーの状態を感知できるほど破損させない、及び/又は周囲気体の混入など、他の加工上の困難を導入しないように、移送方法を選択することができる。押出機(例えば二軸スクリュー)を使用して半固体懸濁物を混合する実施形態では、混合と材料運搬を一緒に実行し、したがって1つのプロセス工程を削除することができる。
【0033】
[0065] 幾つかの実施形態では、多少の電解質の損失は許容し、制御仕様として使用することができ、許容できる量は通常、電解質の体積分率が増加する、及び/又は混合指数が増加するにつれて減少する。例えば、0.8の混合指数で、最大電解質損失は、約39%未満、約33%未満、又は約27%未満になるように制御することができる。0.9の混合指数では、最大電解質損失は約5%未満、約4%未満、又は約3%未満になるように制御することができる。0.9より高い混合指数では、最大電解質損失は約5%未満、約4%未満、又は約3%未満になるように制御することができる。成分濃度は、許容可能な損失を判定及び/又は予想するように計算し、特定の成分に応じて変更することができる。他の実施形態では、損失許容差が高くなるが、他ではさらに限定的になる。
【0034】
[0066] 幾つかの実施形態では、スラリーの組成及び混合プロセスは、スラリーの成分を均質に分散させる、本明細書でさらに詳細に説明するような望ましい電気化学的性能と相関する、スラリー全体の導電性パーコレーションネットワーク及び十分に高いバルク導電率を達成する、移送、運搬(例えば、押出し)、計量分配、セグメント化又は切断、及び計量分配後の形成(例えば、プレス成形、圧延、カレンダー加工など)、又は任意のその組み合わせなどを含む加工に資する流動学的状態を得るように選択することができる。
【0035】
[0067] 例えば、図1は様々なスラリー調合の導電性を示し、図2は、高剪断混合、遊星形混合、超音波を使用した遊星形混合、手練り、及び超音波を使用した手練りなどの様々な混合方法を使用して調製した同じスラリー調合の降伏応力、流動学的パラメータを示す。図1及び図2に示すように、様々な混合方法を使用して調製した場合、スラリー調合の導電性及び降伏応力には重大な変動があることがあり、このことは、混合方法が様々なスラリー調合の特性及び/又は性能基準の少なくとも幾つかに影響を与え得ることを実証している。幾つかの実施形態では、最終的な調整済みスラリーの1つ又は複数の所望の特性を得るように、混合方法を選択することができる。幾つかの実施形態では、性能基準を最大化することが常に最終的な調整済みスラリーの最も望ましい特性であるとは限らない。言い換えると、通常は高い導電性を有するスラリーを生成することが望ましいが、最終的なスラリーが容易に形成可能及び/又は安定的ではない場合、その特定のスラリーの高い導電性は有利にならない。同様に、容易に形成可能及び/又は非常に安定的であるが、導電性が低いスラリーを生成することも望ましくない。
【0036】
[0068] 混合中に、スラリーの組成均質性は、一般に混合時間とともに上昇するが、スラリーの微細構造も変化することがある。スラリー懸濁物の組成均質性は、スラリー懸濁物の成分の濃度分布の統計学的変動を測定することに基づいて、実験的方法で定量的に評価することができる。例えば、混合指数は統計学的基準、基本的に正規化した分散又は標準偏差であり、組成均質性の程度を示す。(例えばErol, M及びKalyon, D.M.のAssessment of the Degree of Mixedness of Filled Polymers, Intern. Polymer Processing XX (2005) 3、pps. 228-237を参照)。完全な分離はゼロの混合指数を有し、完全に均質な混合は1の混合指数を有することになる。あるいは、スラリーの均質性は、組成均一性(+x%/-y%)で示すことができ、これは本明細書では(100%-c)Cから(100%+x)Cの範囲と定義される。したがって、x及びYの値はすべて、平均値Cからの正及び負の最大偏差を示すサンプルによって画定され、したがって取得したすべての混合材料サンプルの組成物はこの範囲に入る。
【0037】
[0069] 混合指数を判定する基本的プロセスは、凝集した混合物から幾つかの等しいサイズ及び適切なサイズの材料サンプルを取得することと、各サンプルで組成分析を実施することとを含む。サンプリング及び分析は、混合プロセスの様々な時に繰り返すことができる。サンプルのサイズ及び体積は長さスケールの考察事項に基づいており、ここで均質性は重要であり、例えば最大固体粒子サイズ及び下端では究極の混合状態平均粒子内距離、及び上端ではNがサンプル数である総体積の1/Nの両方の倍数より大きい。任意選択で、サンプルは電極厚さ程度とすることができ、これは通常、電極の長さ及び幅よりはるかに小さい。熱重量分析計(TGA)などの特定の実験機器の容量が、実際のサンプル体積の範囲をさらに狭くする。サンプルの「寸法」とは、サンプル体積の立方根を意味する。例えば、サンプリング(サンプル数)を確証する一般的なアプローチは、任意の混合継続時間に対応するサンプルの平均組成物が、ミキサに導入される材料成分の全体的部分に特定の許容差まで一致するというアプローチである。所与の混合時間における混合指数は、この実施形態により1-σ/σrefと定義され、ここで、σは測定した組成物(スラリーの任意の1つ又は複数の成分の測定量でよい)における標準偏差であり、σrefは[C(1-C)]1/2に等しく、ここで、Cは、サンプル組成物の変動が減少し、混合指数が1に近づくようなN個のサンプルの平均組成物である。以上の記述で、「時間」及び「継続時間」は、混合事象の進行を述べる一般的用語であることを理解されたい。例えば混合物への累積エネルギー入力、電機子の数、ローラ、混合ブレード、又はスクリューの回転、混合物中の理論的点又は実際の微量粒子が移動する距離、混合温度(粘性加熱から影響を受ける)、技術解析に一般的に使用される特定の無次元数、及びその他などの他の混合指標を使用して、スラリーがいかに良好に混合されるかを予想又は推定することができる。
【0038】
[0070] 一実施形態では、有機溶媒中に体積で50%の活物質粉末を含有し、粒子サイズ分布がD50=10μm及びD90=15μm、及び体積で6%の導電性添加凝集塊を含有し、D50=8μm及びD90=12μmである総体積43立方センチメートルのサンプルを調製する。この混合物を使用して、面積が80cm、厚さが500μmの電極を構築することができる。サンプル寸法は、比較的大きい固体粒子のサイズ、すなわち15μm、及び比較的大きい混合状態の粒子内長さスケール、すなわち約16μmより所定の倍数だけ大きくなければならない。N=14個のサンプルという標的の場合、サンプル寸法は2,500μm未満でなければならない。対称となる特定の寸法は、この範囲の中央にあり、すなわち500μmである。したがって、混合指数の量を決定するには、直径が0.5mm、深さが0.61mmの円筒形サンプリングキャビティを有する特殊ツールでサンプルを採取する。この例では、サンプル体積は0.12mmとなる。
【0039】
[0071] 幾つかの実施形態では、混合指数を測定するためのサンプル体積の選択は、均一性が重要である長さスケールに従う。幾つかの実施形態では、この長さスケールは、スラリーを使用する電極の厚さ(例えば250μm~2,000μm)である。例えば、電極が厚さ0.5mmである場合、サンプル体積は(0.5mm)=0.125mm程度、すなわち約0.04mmと約0.4mmの間であることが好ましい。電極が厚さ0.2mmである場合、サンプル体積は0.0025mmと0.025mmの間であることが好ましい。電極が厚さ2.0mmである場合、サンプル体積は2.5mmと25mmの間であることが好ましい。幾つかの実施形態では、混合指数を評価する際のサンプル体積は、電極厚さの3乗±10%である。幾つかの実施形態では、混合指数を評価する際のサンプル体積は0.12mm±10%である。一実施形態では、混合指数は、電極スラリーのバッチから、又はN個のサンプルの総体積より大きい体積を有する形成済みスラリー電極からN個のサンプルを抜き取ることによって測定し、ここで、Nは少なくとも9であり、各サンプルはサンプル体積を有する。各サンプル体積を、時間温度プロファイルに従って酸素ガスを流して熱重量分析計(TGA)中で加熱し、室温で3分間保持され、その後に20℃/分で850℃まで加熱し、150℃と600℃の間の累積重量損失を使用して混合指数を計算する。この方法で測定した電解質溶媒を蒸発させ、重量損失の測定値は主に、サンプル体積中の炭素の熱分解による損失である。
【0040】
[0072] 幾つかの実施形態では、Brabender Batch Mixerを使用してスラリーを30~100rpmで混合することができる。幾つかの実施形態では、スラリーは10~200rpm又は任意の他の適切な速度で混合することができる。幾つかの実施形態では、ミキサの速度は混合サイクルを通して変動させることができ、例えば混合速度を下げて構成要素を組み込むことができ、混合速度を上げてスラリーを均質化することができる。幾つかの実施形態では、構成要素を添加する最中に混合速度を変動させることができる。幾つかの実施形態では、合計混合時間は1分と100分の間とすることができる。他の実施形態では、任意の適切な混合時間を選択することができる。幾つかの実施形態では、ミキサは3J/gと2,000J/gの間の特定の混合エネルギーを供給することができる。他の実施形態では、ミキサは任意の適切な量の混合エネルギーを供給することができる。
【0041】
[0073] 本明細書に記載するように、導電性添加剤は、動的及び/又は静的懸濁物中のその分散及び電気化学的挙動に影響する技術特性及び形態(すなわち、基本的粒子の階層的クラスタ化)を有することができる。導電性添加剤の分散及び電気化学的挙動に影響し得る特性には、表面積及びバルク導電性が含まれる。例えば、特定の導電性炭素添加剤の場合、形態学的要素が炭素粒子の分散に影響することがある。主たる炭素粒子はナノメートル程度の寸法を有し、粒子は、(例えばファンデルワールス力によって)電気的に結合するか、一緒に焼結された粒子で構成された比較的大きい凝結体の要素として存在するのが典型である。このような凝集塊は、ナノメートルからミクロン程度の寸法を有することがある。また、粒子の表面エネルギー、環境、及び/又は温度に応じて、凝集体は、一般的に凝集塊と呼ばれる比較的大きいスケールのクラスタを形成することがあり、これは数ミクロンから数十ミクロン程度の寸法を有することができる。
【0042】
[0074] このような導電性添加剤がスラリーに含まれている場合、例えば混合中に与えられるような流体剪断力が、例えば凝集塊及び凝集体の結合力を克服することによって、カーボンネットワークを破壊することがある。導電性ネットワークを破壊することにより、添加剤は導電性固体のこれより細かいスケールの(より顆粒状であり、より均質である)分散で存在することができる。混合は、導電性固体のクラスタの密度を高めることもできる。幾つかの実施形態では、混合は導電性ネットワークの破壊とクラスタの密度上昇との両方を可能にし、これは導電性経路切り離して、電気化学的性能に悪影響を及ぼすこともある。
【0043】
[0075] 図3A図3Cは、活物質310及び導電性添加剤320を含有する電気的に活性のスラリーの概略図であり、導電性添加剤320の量は導電性ネットワークを形成するのに十分ではない。図3Aは、いかなる混合エネルギーも適用する前、又は最小限の混合エネルギーのみ適用した後のスラリーを示す。図3Bは、最適量の混合エネルギーが適用された状態のスラリーを示す。図3Cは、過剰な量の混合エネルギーが適用された状態のスラリーを示す。図3Bに示すように、最適量の混合でも、導電性添加剤320の量は、電極ボリューム全体で認識できるほどの導電性ネットワークを生成するのに重文ではない。
【0044】
[0076] 図4A図4Cは、活物質410及び導電性添加剤420を含有する電気的活性スラリーの概略図である。図3A図3Cとは対照的に、この実施例では、導電性添加剤420の量は、導電性ネットワークを形成するのに十分である。図4Aに示すように、導電性添加剤420は大部分が枝なしの凝集塊430の形態である。導電性添加剤420の均質性は、この段階では不均一と特徴付けることができる。図4Bに示すように、凝集塊430は、流体剪断及び/又は混合力によって「分解」されており、導電性添加剤凝集塊440の粒子間ネットワークの望ましい「配線」(本明細書では「導電性経路」とも呼ぶ)を生成している。図4Cに示すように、導電性ネットワークは過剰混合によって破壊されており、ここでは導電性添加剤420は破壊及び/又は不完全(又は非導電性)経路450の形態である。したがって、図3A図3C及び図4A図4Cは、電気化学的に活性のスラリーは、導電性添加剤320/420負荷の最小閾値、及び2つの極値の間の最適加工方式(すなわち、図4Bに示すスラリー)を含むことができることを示す。導電性添加剤320/420の適切な負荷及び加工方式を選択することにより、認識できるほどの導電性粒子間ネットワーク(例えば導電性添加剤凝集塊440のネットワーク)を有する半固体懸濁物を形成することができる。幾つかの実施形態では、適用される比混合エネルギーは、その間の範囲をすべて含めて、約90J/g~約150J/g、例えば少なくとも約90J/g、少なくとも約100J/g、少なくとも約120J/g、又は少なくとも約150J/gとすることができる。
【0045】
[0077] 特定のレベルのバルク導電性を達成する混合に適切である活物質などの、他の成分に対する所与の混合に使用される導電性添加剤の量、すなわち導電性添加剤の質量又は体積分画(本明細書では導電性添加剤の「負荷」とも呼ぶ)は、クラスタ状態に依存する。パーコレーション理論を使用して、導電性添加剤の負荷を選択することができる。次に図5を参照すると、電気化学的スラリーの導電性と導電性添加剤負荷のプロットが示されている。導電性添加剤の負荷が増加すると、スラリーの導電性も増加する。図5には導電性の3つの領域が描かれている。導電性添加剤522の低負荷では、スラリーは比較的低い導電性を有する。例えば、導電性添加剤負荷522が低いこのスラリーは、図3A図3Cに描かれたスラリーに対応することができ、ここでは認識できるほどの粒子間ネットワークを形成する導電性材料が不十分である。導電性添加剤負荷が増加すると、パーコレーションネットワーク524が形成され始める。何故なら、導電性添加剤の鎖が少なくとも活性粒子間に結合性を提供することができるからである。負荷が(例えば図4A図4Cに描かれたスラリーで示すように)さらに増加すると、相対的に安定した粒子間ネットワーク530が形成される。パーコレーション曲線の形状及び高さは、本明細書に記載するように導電性添加剤の特性を混合する方法によって調節することができる。
【0046】
[0078] しかし、スラリーに使用する導電性添加剤の量は、他の考慮事項によって制約されることがある。例えば、エネルギー密度及び比エネルギーなどの電池の属性を最大化することが通常は望ましく、活物質の負荷がこれらの属性に直接影響する。同様に述べると、導電性材料の負荷に加えて、活物質などの他の固体の量を考慮しなければならない。本明細書に記載するスラリーの組成物及び混合プロセスは、導電性を改善するために導電性添加剤のクラスタ化を可能にしながら、比較的均一な組成物のスラリーを得るように選択することができる。すなわち、適切な量の混合の後に粒子間ネットワークを形成し、それにより活物質負荷を最大化するために、導電性添加剤の最小閾値が含まれるように、スラリーを調合し、混合することができる。幾つかの実施形態では、スラリー中の導電性添加剤の量は、その間の範囲をすべて含めて、体積で約0.5%~約25%、例えば体積で約0.5%、1%、6%、又は25%とすることができる。幾つかの実施形態では、調製済みスラリーの電子導電性は、その間の範囲をすべて含めて、少なくとも約10-6S/cm、少なくとも約10-5S/cm、少なくとも約10-4S/cm、少なくとも約10-3S/cm、又は少なくとも約10-2S/cmとすることができる。
【0047】
[0079] 幾つかの実施形態では、ゼロ活物質負荷における最大導電性添加剤負荷、及びゼロ導電性添加剤負荷における最大活物質負荷は、使用する導電性添加剤及び活物質のタイプに依存する。例えば、一定の流動学的パラメータ値(例えば所与の剪断速度における有効粘度)を有する導電性添加剤に対する活物質の線形傾向が通常観察されるが、他の形状(外向き湾曲、内向き湾曲、又は変曲点あり)が可能である。言い換えると、一定の流動学的パラメータ値は、「加工可能な」組成物を選択できる領域を画定することができる。この領域は、例えば使用する材料に依存することがあり、実験で決定することもできる。幾つかの実施形態では、加工可能な組成物は、表面積が40m/g未満で、体積で導電性添加剤の約20%以下、表面積が1,000m/g未満で、体積で導電性添加剤の約5%以下、及びタップ密度が1.3g/ccで、体積でチタン酸リチウムの約52%以下とすることができる。
【0048】
[0080] 幾つかの実施形態では、電池製造に関連する材料の取扱いを促進するために、電気化学的に活性のスラリーが「加工可能」になることが望ましい。例えば、スラリーの流動性が高すぎると、組成的に不安定になることがある。すなわち、重力(例えば固体の沈殿)又は遠心分離力などの特定の力に曝露すると、均質性を喪失することがある。スラリーが不安定である場合、固体相の密度差、又は他の属性が分離及び/又は組成勾配を生じることがある。言い換えると、スラリーが過剰に流動性である場合、これは低い固体負荷又は大幅に破壊された導電性ネットワークに由来することがあるが、固体が粒子の移動を阻止するために所定の位置で十分に結合しないことがある。あるいは、電気化学的活性スラリーが過剰に固体である場合、スラリーは分解、崩壊、及び/又は他の方法で部片に分離することがあり、これは加工及び寸法制御を複雑にすることがある。十分な加工可能性の帯域内でスラリーを調合すると、より簡単なスラリー系電池製造を促進することができる。スラリーの加工可能性は通常、レオメータを使用して測定することができる流動学的パラメータを使用して数量化することができる。スラリーの加工可能性を数量化するために使用できる様々なタイプのレオメータの幾つかの例には、歪み又は応力制御した回転、細管、スリット、及び外延的レオメータが含まれる。
【0049】
[0081] 本明細書に記載するように、混合速度(フィードバック信号に従って固定する、段階的にする、連続的に変動させる、振動させる、及び/又は制御することができる)及び混合(又は特定の工程)の継続時間は、炭素基質の導電性の確立及び安定性、及び対応するセルの電圧効率、及びすべての材料成分間の組成均質性に影響を及ぼし得る。導電性の成立及び安定性は、高剪断又は長時間の混合によって低下することがある。しかし、高剪断及び/又は長時間の混合は均質性を促進することができ、これは局所的な電極の平衡及び長いサイクル寿命を支援することができる。また、製造中にさらに効率的な加工及び取扱いを可能にすることができる材料の「加工可能性」及び/又は長期間の局所的な組成安定性(例えば仕上げた電極内に固体の「沈殿」がないこと)も、混合速度及び継続時間から影響を受けることがある。
【0050】
[0082] ミキサ、押出機、又は他の結合機器への成分の供給は、ラム供給シュート又は同様の定容量形デバイスによって促進することができる。成分を結合機器に供給する速度を設定又は制御することができ、これは最初に添加される材料の剪断履歴の累積を制限することができる。
【0051】
[0083] 様々なタイプ、構造、形態の、及び/又は様々なプロセスで作成した活物質及び導電性添加剤は、混合物中の様々な成分と様々な相互作用を有することができる。その結果、スラリーは、流動学的特性が異なる状態で同じ比率の固体と電解質とを有することができる。
【0052】
[0084] 幾つかの実施形態では、活物質と導電性添加剤と電解質との比率は、スラリーの安定性、加工可能性及び/又は流動学的特性に影響することがある。図6A図6Cは、電解質に対して活物質及び導電性添加剤の負荷が異なる電極スラリー混合物を示す。低負荷610(図6A)、すなわち電解質に対して活物質及び導電性添加剤が相対的に少ないスラリーの結果、不安定な、又は「流れやすい」混合物になることがある。図示のように、相分離、すなわち電解質(液体相)からの活物質及び導電性添加剤(固体相)の分離は、低負荷610混合物で観察することができる。対照的に、電解質中の固体材料の最大パッキングを超えている高負荷混合物630(図6C)では、混合物は過剰に乾燥し、所望の形状又は厚さに伝達又は加工するのに十分なほど流動性がない。したがって、図6Bに示すように、スラリーが安定し(すなわち懸濁物中に固体粒子が維持される)、電極に加工可能であるほど十分に流動性である最適負荷の混合物620がある。
【0053】
[0085] 様々な固体負荷を有する「加工可能」なスラリーは、流動性及び加工性について評価することができる。スラリーの流動学的挙動は、一軸又は二軸スクリュー押出しなどの圧力による流れ及び/又はダイを通る流れでの加工性を示すことができる。スラリーは、様々な負荷レベル及び低粘度の液体媒質/基質を有する「懸濁物」と分類することができる。このような懸濁物の流れの挙動は、固体粒子のサイズ分布、形状及び体積分画、粒子間及び粒子-基質の相互作用、及び基質の流動性に依存することがある。幾つかの実施形態では、スラリーは流動学的性質に基づいて選択することができ、これを使用してスラリーの好ましい加工性及び/又は望ましい電気化学的性能を予測することができる。「加工可能」なスラリーの流動学的性質は、組成調合、例えば様々な濃度で装填された異なる活物質及び導電性添加剤及び/又はスラリーの均質性によって決定することができる。
【0054】
[0086] 幾つかの実施形態では、懸濁物を相互に保持するゲル様ネットワークを形成することができ、分離を防止することができる導電性添加剤のタイプ及び負荷レベルを選択することができる。この負荷レベルで、その構造に応じて、様々なタイプの導電性添加剤は、同じ負荷レベルにて異なる流動学的特性を有するスラリーを形成することができる。あるいは、活物質の所与の体積負荷レベルで、同じ流動学的性質を有することができるスラリーに、異なる量及び/又は異なるタイプの導電性添加剤をパックすることが可能である。同様に、所与の体積負荷レベル及びタイプの調合の導電性添加剤に組み込んだ活物質のタイプが、スラリーの流動学的特性に影響することがある。また、固体(例えば活物質及び/又は導電性添加剤)の粒子サイズ、アスペクト比及び粒子サイズの分布は、スラリーの流動学的特性に影響を及ぼすことができる。
【0055】
[0087] 幾つかの実施形態では、導電性添加剤は懸濁物の流動学的性質に影響を及ぼすことができる。したがって、このような実施形態では、導電性添加剤の同じ負荷レベルで、活物質の濃度上昇は、懸濁物の剪断粘度を上昇させることにより、スラリーの流動学的性質に寄与することができる。図7は、体積で約35%~約50%のNMC及び体積で約6%~約12%の導電性添加剤C45から調合したスラリーの様々な組成物について、見かけの粘度(ηapprPa-s)及び見かけの剪断速度(γappr-1)を含む流動学的特性を示す。図8は、体積で約35%~約50%のグラファイト(PGPT)及び体積で約2%~約10%の導電性添加剤C45から調合されたスラリーの様々な組成物について、本明細書に記載する流動学的特性を示す。本明細書に記載するスラリーの見かけの粘度は、見かけの剪断速度が上昇するにつれて低下する。
【0056】
[0088] 細管レオメータを使用して、様々な組成物のスラリーの流動学的挙動を特徴付けることができる。細管レオメータは、圧力による流れを使用し、材料を10-1-1より高い剪断速度にかけることによって例えば懸濁物の加工性を判定する。細管レオメータ中で、リザーバ/バレル中の懸濁物は、ピストンによって生じた圧力で細管/ダイを通って流れることができる。懸濁物の流れ及び変形挙動は、異なる直径、長さ及び入口角を有する様々な細管ダイを使用することにより、流量対圧力低下のデータを生成して特徴付けることができる。
【0057】
[0089] 懸濁物の流れは、懸濁物の特性、すなわち降伏応力、基質粘度、負荷レベル、粒子の相互作用、及びこのような特性によって制御される壁滑り挙動に応じて、様々なメカニズムで示すことができる。幾つかの実施形態では、懸濁物は滑りがある、又はない状態で流れることができる。幾つかの実施形態では、懸濁物は、降伏応力より低い応力では変形せずに、栓のように流れることができる。高負荷のスラリー懸濁物は、強力な滑りメカニズムによって、及びほぼ35,000Paの高い降伏応力で特徴付けることができる。
【0058】
[0090] スラリー懸濁物は、組成物中の液体基質の粘度が低い故に臨界剪断応力値で流れる場合、分離及び流れの不安定性、構造の発達、マット形成及び/又は結合材の濾過の傾向を生じることがある。このような挙動は、小さい直径及び長いL/Dを使用する細管レオメータを使用することにより特徴付けることができる。組成調合、特に導電性炭素負荷のレベル、及び押出し温度が、圧力による流れの間にこのような構造的変化に影響することがある。図9及び図10は、約35%~50%のNMC及び約6%~12%のC45を含む第一スラリーの様々な調合(図9)、及び約45%~50%のPGPT及び約2%~6%のC45を含む第二スラリーの様々な調合(図10)の時間-圧力のグラフを示す。ここで図示されているように、スラリーの流動学的特性、例えば見かけの粘度及び見かけの剪断速度に応じて、所定の期間内に予め画定された量のスラリーを計量分配又は流すために、様々な量の圧力が必要である。幾つかの実施形態では、約1,000s-1の見かけの剪断速度で調製されたスラリーの見かけの粘度は、約100,000Pa-s未満、約10,000Pa-s未満、又は約1,000Pa-s未満とすることができる。幾つかの実施形態では、平均スラリー粘度の逆数は約0.001L/(Pa-s)より大きくすることができる。スラリー調合には、例えば活物質(例えばNMC、リン酸リチウム鉄(LFP)、グラファイトなど)、導電性添加剤(例えばカーボンブラック)、及び電解質(例えば炭酸塩系溶媒と溶解したリチウム系塩との混合物)などの3つの主要成分を含むものがある。幾つかの実施形態では、3つの主要成分はバッチミキサ中で混合される。幾つかの実施形態では、活物質を最初に混合ボウルに、その後に溶媒を添加する。幾つかの実施形態では、電解質は、中間材料を形成するために、混合ボウルの混合区間からの材料のいかなる「ブラックアウト」も経験せずに、密度の高い活物質と均質に混和させることができる。溶媒と活物質が十分に混合すると、緩やかで湿気のあるペーストを形成することができる。混合物に均一に混和できるように、導電性添加剤をこの中間材料(すなわち緩やかなペースト)に添加することができる。幾つかの実施形態では、活物質は凝集して凝集塊にならないような傾向を有することができる。他の実施形態では、成分は別の添加順序で組み合わせることができ、例えば溶媒を最初に混合ボウルに添加し、次に活物質を添加して、最後に添加剤を添加することができる。他の実施形態では、任意の他の添加順序を使用してスラリーを混合することができる。
【0059】
[0091] ミキサ(例えばバッチミキサ)は、混合中のバルク材料に分散性剪断エネルギーを加えることができる。混合エネルギーは、混合中の材料の質量に正規化することができ、これは所与のサンプルを混合するために実行した作業の量について量化可能な計量を提供することができる。混合が経時的に進行すると、混合エネルギーが増大する。混合作業の開始時に、比較的少量の混合エネルギーがスラリーに加えられている場合、混合物は低い均質性を示すことがあり、例えば材料が混合物の塊全体に均一に分布しないことがある。また、比較的少量の混合エネルギーが加えられているスラリーは、低い流動性及び/又は成形性を有することがある。例えば、混合物の液体相が固体粒子間に均一に分布していなかった場合、固体材料(例えば導電性添加剤)の凝集物が残ることがある。幾つかの実施形態では、このような凝集物は肉眼で見えるより小さいことがあるが、それでもこれらの凝集物によりスラリーが「乾燥」又は「脆く」なることがある。さらに、少量の混合エネルギーを有するスラリーは、延性がないことがあり、これは、形成されると材料が広がるのではなく破断する傾向を含むことがある。
【0060】
[0092] 混合エネルギーが増大すると、混合物の均質性が向上することがある。混合を継続できるようにすると、最終的に過度の混合エネルギーをスラリーに与えることがある。例えば、本明細書に記載するように、過度の混合エネルギーは低い導電性を特徴とするスラリーを生成することがある。混合エネルギーをスラリーに加えると、導電性添加剤の凝集物が分解して分散することがあり、これは図3及び図4に関して上述したように、ネットワーク様導電性基質を形成する傾向を有することがある。混合が継続すると、炭素粒子が相互から分離するので、このネットワークが分解し、顕微鏡規模でさらに均質な炭素の分散を形成することがある。このような過剰分散及びネットワークの損失は、電子導電性の損失として現れることがあり、これは電気化学的活性のスラリーにとって望ましくない。さらに、過度の混合エネルギーが与えられたスラリーは、不安定な流動学的性質を示すことがある。カーボンネットワークは、スラリーの電子的特性ばかりでなく機械的特性にも影響するので、過剰混合されている組成物は、混合エネルギーの量がこれより少ないスラリーよりも「さらに湿って」見える傾向がある。過度の量の混合エネルギーを経験しているスラリーは、重力により固体相が沈殿する傾向があるので、長期的な組成均質性も低下する傾向がある。したがって、特定の組成物は、適切な量で混合されると、好ましい電気的及び/又は流動学的特性を有することができる。任意の所与の調合について、許容可能な分散、導電性及び流動学的安定性を与えるために最適の混合エネルギーの範囲がある。
【0061】
[0093] 図11図13は、それぞれ、例示的混合曲線、同じ炭素添加剤負荷について低い及び高い活物質負荷の比較混合曲線、及び同じ活物質負荷について低い及び高い炭素添加剤負荷の比較混合曲線を示すプロットである。
【0062】
[0094] 図11は、ある実施形態によるスラリーの比混合エネルギー1110、速度1140、及びトルク1170を含む混合曲線を示す。第一ゾーン1173は、原料を加えていることを示す。幾つかの実施形態では、活物質をミキサに加え、次に電解質、最後に導電性添加剤(カーボンブラック)を加える。炭素添加剤は、軽量で飛散性の粉末を比較的乾燥した混合物に混和する困難により、混合ボウルに加えるのに最長の時間がかかる。トルク曲線1170は、粘度、特に粘度変化の指標を提供する。カーボンブラックを加えると混合物の粘度が上昇するので、スラリーの混合に必要なトルクが増大する。粘度増加は、炭素の機械的ネットワークが形成されていることを示す。第二ゾーン1177で混合が継続すると、混合曲線は、スラリーの混合に必要なトルクの減少によって明らかにされるように、原料の分散及び比較的低い粘度を示す。
【0063】
[0095] 図12は、活物質の低い負荷と高い負荷との差を示す。この曲線から、導電性炭素添加剤を加えるために必要な時間の長さは、低い及び高い活物質負荷とほぼ等しいが、活物質負荷が高い方が全体的トルク(及びその結果の混合エネルギー)がはるかに高いことが分かる。これは、粘度がはるかに高いことを示す。
【0064】
[0096] 図13は、同じ活物質負荷について、導電性炭素添加剤の低い負荷と高い負荷との差を示す。高い炭素負荷の混合曲線は、比混合エネルギー1310、速度1340及びトルク1373を含む。第一ゾーン1373は、原料を加えていることを示す。カーボンブラックを加えると混合物の粘度が上昇するので、第一混合ゾーン1375に見られるように、スラリーの混合に必要なトルクが増大する。粘度増加は、カーボンネットワークが形成されていることを示す。第二ゾーン1377で混合が継続すると、混合曲線は、スラリーの混合に必要なトルクの減少によって明らかにされるように、原料の分散及び比較的低い粘度を示す。炭素導電性添加剤を加えるために必要な時間は、高い炭素負荷の方がはるかに長く、全体的トルク(及び混合エネルギー)もはるかに高いことを留意されたい。この混合曲線は、炭素負荷が活物質負荷よりも材料の粘度に及ぼす影響がはるかに大きいことを示す。
【0065】
[0097] 本明細書に記載するように、スラリーの組成均質性は一般に混合時間とともに向上し、組成均質性は混合指数で特徴付けることができる。図14は、導電性添加剤負荷が異なるスラリーについて異なる混合指数を達成するために必要な比エネルギー入力を示す。図示のように、所望の比指数、例えば約0.95を達成するには、より大量の比エネルギー入力が必要である。スラリー調合で導電性添加剤の体積%が増加するからである。幾つかの実施形態では、スラリーが、その間のすべての混合指数を含めて、約0.8、約0.9、約0.95又は約0.975の混合指数を有するまでスラリーを混合する。
【0066】
[0098] 図15は、ある実施形態により、スラリーの混合指数及び電子導電性を含む特定のスラリーパラメータに対して混合が及ぼす影響を示す。混合曲線1580は単調に上昇するが、電子導電性1590は(導電性ネットワークが媒質中で分散すると)最初に増加して、最大値に到達し、次に減少する(「過剰混合」によりネットワークが分解する)。
【0067】
[0099] 幾つかの実施形態では、加工パラメータが電子導電性に影響することがあり、これは電気化学的に活性のスラリーにとって重要なパラメータである。例えば、図16は、半固体電極の電子導電性及び形態学的性質を変更するように、加工時間を選択できることを実際に示す。このような結果の例が図16に示され、これは混合時間の関数として、約35%のNMC及び約2%~15%の導電性添加剤C45を含む特定のスラリーの導電性を示す。図16に見られるように、混合時間が長くなると、導電性が低下したサンプルが生じることがある。
【0068】
[00100] 同様に、図17A図17Dは、2つの異なる混合時間を経たスラリーの顕微鏡写真であり、炭素導電性添加剤の凝集は、短い方の時間だけ混合したサンプル1720(図17C図17D)と比較して、長い方の時間だけ混合したサンプル1710(図17A図17B)で増加する傾向があることを示す。
【0069】
[00101] 幾つかの実施形態では、混合時間は電極スラリーの混合指数及び導電性に同時に影響を与えることができる。図18は、約45%~50%のNMC及び約8%のC45を含む様々なスラリー調合の混合指数及び導電性に及ぼす混合時間の影響を示す。本明細書では、及びその後に提示する混合指数の測定値では、個々のサンプル体積の合計より大きい総体積を有する電極スラリーのバッチから、0.12mmのサンプル体積を取り出すことにより、混合指数を測定する。スラリーの各サンプル体積は、熱重量分析器(TGA)中で酸素ガスを流し、室温での3分の保持時間で開始して、その後に20℃/分で850℃まで加熱する時間-温度プロファイルに従って加熱し、150℃と600℃の間の累積重量損を使用して混合指数を計算する。図18に示すように、混合指数は増加することが観察されるが、導電性は混合時間の増加とともに低下することが観察される。これらの実施形態では、約2分の混合時間で、導電性と混合指数が良好に折り合い、例えば50%のNMC及び8%のC45で構成されたスラリー組成物が、約0.95の混合指数及び約0.02S/cmの導電性を有することが観察された。さらに混合すると、導電性に悪影響を与える。
【0070】
[00102] 図19は、約45%~50%のPGPT及び約2%~4%のC45を含む様々なスラリー調合の混合指数及び導電性に及ぼす混合時間の影響を示す。50%のPGPTと2%のC45の混合物の場合、導電性は最初に上昇し、4分間の混合時間でピークに到達して、次に24分間で2倍超減少することが観察され、これは図15で説明した傾向と一致する。したがって、スラリーの最適な混合指数及び導電性を得るために必要な混合時間は、スラリーの調合に依存する。
【0071】
[00103] 幾つかの実施形態では、剪断速度は混合の力学及び導電性に影響を及ぼすことがある。その結果、幾つかの実施形態では、混合要素の回転速度、容器及び/又はローラのサイズ、クリアランスの寸法/幾何形状などの選択が、導電性に影響を及ぼすことがある。図20は、2つの異なる剪断条件について、混合時間の関数として導電性を示すプロットである。図示のように、剪断が低い方の混合2010を経たスラリーは、過剰混合に対する感度が低下する。剪断が高い方の混合2020を経たスラリーは、ピーク導電性がわずかに高く、最大導電性に到達するための混合が少なく、過剰混合に対する感度が高い。幾つかの実施形態では、最適混合時間は、その間の混合時間を含めて、20秒、2分、4分、又は8分とすることができる。
【0072】
[00104] 幾つかの実施形態では、スラリー懸濁物中の固体粒子の粒子サイズ、形状、アスペクト比、及び分散は、負荷レベルを決定するように選択することができる。
【0073】
[00105] 幾つかの実施形態では、加工中の温度制御を使用することができ、これは電解質の蒸発を減少させることができる。スラリーの温度を制御することにより、スラリーの流動学的性質、導電性及び/又は他の特性を改善することができる。
【0074】
[00106] 幾つかの実施形態では、電解質は異なるレベルの揮発性及び蒸気圧を有する溶媒の混合物を含むことができる。温度は、この混合物の蒸発率、さらにどの成分が他の成分より前に優先的に蒸発するかに影響を及ぼすことがあり、これは電解質の組成物及び/又は性能を変化させることができる。図21は、温度及び混合継続時間とともに生じる電解質の百分率損を示す。電解質全体が減少し、スラリー混合物中で電解質の揮発性が高い方の成分が損失すると、スラリーのイオン導電性が低下し、その後に電圧極性化が上昇して、電池の効率及び容量が低下することがある。加工温度を低下及び/又は制御することによって、スラリーの組成物の蒸発及びその後の変化を減少させ、さらに容易に制御可能なプロセスにすることができる。
【0075】
[00107] 幾つかの実施形態では、例えば電解質の損失が生じた場合、「補償」工程をプロセスに追加することができる。この工程は、加工の何らかの工程で余剰の電解質及び/又は電解質の成分(例えば揮発性が高い方の電解質成分)を添加することを含むことができる。この添加を実行する工程は、電解質の初期混合中、最終的なセル組立中、又は任意の他の工程における工程とすることができる。
【0076】
[00108] 幾つかの実施形態では、電解質の粘度制御に温度制御も使用することができ、これはスラリーの流動学的挙動に影響を及ぼすことができる。図22は、ある実施形態により、約45%のPGPT及び約4%のC45を含むアノードスラリー組成物の見かけの粘度及び見かけの剪断応力に様々な温度が及ぼす影響を示す。アノードスラリーは、-2℃の第一温度及び5℃の第二温度で調合された。スラリー及び/又は電解質の温度が低下すると、粘度が上昇する。電解質の粘度が上昇すると、懸濁物が流れる間にその中の固体粒子に加える力が増加する。粘度が上昇した電解質及び/又はスラリーは、スラリーの固体成分(活性及び導電性添加剤)が低速で移動して、蓄積し、固体材料の「栓」になる性質を低下させる傾向がある。図23は、ある実施形態により約50%のNMC及び約8%のC45を含むカソードスラリー組成物の見かけの粘度及び見かけの剪断応力に及ぼす様々な温度の影響を示す。カソードスラリーは、5℃の第一温度及びほぼ室温(RT)(例えば25℃)の第二温度で調合された。図22のアノードスラリー調合と同様に、カソードスラリーの粘度は温度低下とともに上昇する。
【0077】
[00109] 幾つかの実施形態では、電解質及び/又はスラリーの温度は、プロセス機器などの他の材料に対するスラリーの接着性に影響を及ぼすことができる。低温では、スラリーは加工に使用される典型的材料に対する接着レベルが低下することがある。逆に、接着が望ましい材料(例えば金属箔又はポリマー膜)にスラリーを適用する場合、スラリー/材料の境界面温度を上昇させて、接着を促進するように作用することができる。
【0078】
[00110] 幾つかの実施形態では、加工温度は約10℃とすることができる。幾つかの実施形態では、加工温度は10℃未満とすることができる。加工温度は、例えば液体相(例えば電解質)の粘度を調節することによって、スラリーの流れ安定性を向上するように選択することができる。言い換えると、所与の流れの幾何学的性質、スラリー組成物、及び駆動力では、スラリーは1つの温度で組成均一性の喪失を経験する(すなわち凝集する)ことがあるが、異なる温度では組成均一性の喪失を経験しないことがある。幾つかの実施形態では、スラリーの流れの安定性を(例えば温度の選択によって)調節し、プロセス機器(例えば押出機、押出ダイなど)を通る材料の運搬を改善することができる。幾つかの実施形態では、スラリーの流れの安定性を調節して、プロセス機器(例えばカレンダーロール、切断ブレードなど)に対するスラリーの接着性を低下させることができる。幾つかの実施形態では、スラリーの流れの安定性を調節して、積層基質(例えば金属箔又はポリマー膜)に対する所望の接着性を引き起こすことができる。幾つかの実施形態では、電解質の蒸発量を最小化する、又は他の方法で制御するように、加工温度を先学することができる。幾つかの実施形態では、プロセスを通じて加工温度を変化させ、様々な工程で所望の特性を達成することができる。
【0079】
[00111] 幾つかの実施形態では、超音波処理を使用して、スラリー中の導電性ネットワークを調節することができる。例えば、振動性励起(超音波処理、振動、音響)を(容器内又は現場で)混合デバイス、運搬/配合デバイス、及び/又はスラリー自体に適用することができる。
【0080】
[00112] 幾つかの実施形態では、導電性添加剤は凝結及び凝集特性(表面エネルギー及び粒子間力)を有することができ、これは1つ又は複数のプロセス工程中及び/又はその後に、他の手段、例えば温度、光又は他の調整した放射への曝露、電界又は磁界の適用、スラリーの液体相中の添加剤使用、活物質の専用被覆、導電性添加剤への化学的成分の添加、及び/又は電気化学的運転構成の運転などによって調節することができる。例えば、加工前、加工中及び/又は加工後に塩を添加することができる。
【0081】
[00113] 電池の電解質は1つ又は複数の溶媒、例えば様々な有機炭酸塩を含むことができる。幾つかの実施形態では、電池の電解質は1つ又は複数の塩を含むことができる。幾つかの実施形態では、電解質は他の添加剤、例えば界面活性剤、分散剤、増粘剤、及び/又は任意の他の適切な作用物質を含有することができる。幾つかの実施形態では、添加剤は電解質の特性を調節する、例えば流動性、加工性、組成安定性、加工可能性、及び/又は全体的な製造性を促進することができる。添加剤は、例えばDaikin Industriesが開発したようなフッ化炭酸塩誘導体を含むことができる。これらの添加剤は、望ましい方法でスラリー特性を調節することができ、例えば(1)液体相の粘度を上昇させ、これは流体固体間の組成均質性を維持しながら、加工に使用できる剪断速度の範囲を拡大する、(2)潤滑性を向上させる-これは流れる間の滑動領域を拡張して、均質性を保持し、場合によっては加工に関連するエネルギー入力を減少させる、(3)混合物の蒸気圧を低下させ、特に制限のない空間で加工中の損失を減少させる。幾つかの実施形態では、このような添加剤は電気化学的性能に悪影響を及ぼすことがあるが、電池生産にもたらされる利点が悪影響を上回ることがある。
【0082】
[00114] 幾つかの実施形態では、以下の電池構造は本明細書に記載する方法を利用することができる。すなわち、(1)電極が両方ともスラリー系である、(2)一方の電極がスラリー系で、他方が従来通りに鋳込まれる、(3)一方の電極がスラリー系で、他方が気相反応体、例えば空気からの酸素を消費し、利用するように設計される構造である。設計には、単一のアノード-カソード対(ユニットセル)、複数のアノード/カソード対が相互に重ねられたプリズム状アセンブリ、螺旋巻アセンブリ、ゼリーロールアセンブリ、及び他の変形体が含まれる。
【0083】
[00115] 幾つかの実施形態では、活物質はチタン酸リチウム、グラファイト、シリコン合金、スズ合金、シリコン-スズ合金、リン酸リチウム鉄、リチウム遷移金属酸化物、マグネシウム化合物、ビスマス、ホウ素、ガリウム、インジウム、亜鉛、スズ、アンチモン、アルミニウム、酸化チタン、モリブデン、ゲルマニウム、マンガン、ニオブ、バナジウム、タンタル、鉄、銅、金、プラチナ、クロミウム、ニッケル、コバルト、ジルコニウム、イットリウム、酸化モリブデン、酸化ゲルマニウム、又は任意の他の適切な活物質を含むことができる。幾つかの実施形態では、導電性添加剤は炭素(高い例えばKetjenブラック又は低い例えばC45、比表面積、グラファイト-天然又は人工、グラフェン、ナノチューブ又は他のナノ構造、気相成長炭素繊維、ペレット化炭素、硬質炭素など)、金属粉末(例えばアルミニウム、銅、ニッケル)、カーバイド、及びその混合物を含むことができる。幾つかの実施形態では、スラリーに含まれる電解質は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、及びその炭素化又はフッ素化誘導体、及び非環式炭酸ジアルキルエステルの族、例えば炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジプロピル、炭酸メチルプロピル、炭酸エチルプロピル、炭酸ジブチル、炭酸ブチルメチル、炭酸ブチルエチル、炭酸ブチルプロピル、y-ブチロラクトン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオノニトリル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジメチル、テトラグリムなどを含むことができる。
【0084】
[00116] 幾つかの実施形態では、固定されたRPM(例えば100RPM)の混合速度について経時的な混合指数の経過は、混合中の材料の組成物に依存することがある。例えば、図24は、約45%のNMC及び約8%のC45を含む第一アノード組成物、及び約50%のNMC及び約8%のC45を含む第二アノード組成物について、ある期間にわたる100rpmでの混合指数を示す。図25の混合指数は、約45%のPGPT及び約4%のC45を含む第一アノード組成物、及び約50%のPGPT及び2%のC45を含む第二アノード組成物について、ある期間にわたる100rpmでの混合指数を示す。各ケースで、約0.1~0.2立方ミリメートルの範囲の体積を有する9個のサンプルを使用して、混合指数の量を決定した。図24及び図25に示すように、カソード及びアノードスラリーは混合時間とともに混合指数の上昇を示す。図25に示すように、混合指数は、例えば特定の混合時間、例えば8分の後に安定状態になり、その後にさらに混合しても混合指数の上昇は引き起こさない。
【0085】
[00117] 幾つかの実施形態では、混合プロセスが異なると、同じアノード及び/又はカソード組成物でも生成される混合の程度(すなわち混合指数)及び導電性が異なることがある。例えば図26は、約35%のPGPT及び約2%のC45を含み、4つの異なる混合技術(例えば手練り、ローラ、シグマ及びCAM)を用いて100RPMの固定混合速度で4分間混合したアノード組成物について、混合指数及び導電性を示す。図示のように、シグマの方がより良い均一性(すなわち、より高い混合指数)を達成するが、ローラの方が高い導電性を達成する。さらに、これらの混合条件で、CAMが最高の均一性(例えば約0.96の混合指数)及び導電性(例えば0.33S/cm)を達成する。図27は、約35%のNMC及び8%のC45を含む第一カソード組成物、及び約45%のNMC及び8%のC45を含む第二電極組成物について、両方とも2つの異なる混合技術(例えばCAM及びローラ)を使用し、100RPMの固定混合速度で4分間混合した場合の混合指数及び導電性を示す。35%のNMC/8%のC45のスラリーの方が、ローラミキサで高い混合指数を達成するが、45%のNMC/8%のC45のスラリーの方が、CAMローラで高い混合指数を達成する。
【0086】
[00118] 幾つかの実施形態では、使用する混合プロセスのタイプも、スラリーの導電性に影響を及ぼすことがある。例えば図28は、第一混合プロセス(例えばローラブレード)又は第二混合プロセス(例えばCAMブレード)を使用して、1分間又は4分間の期間混合した約45%のPGPT及び約4%のC45を含むアノード組成物の混合指数及び導電性を示す。ここで示すように、比較的短い混合時間(例えば1分間)の場合、幾つかの混合タイプ(例えばローラ)は実際に、他の混合タイプ(例えばCAM)より高い均一性を達成する。しかし、ある期間(例えば4分間)が過ぎると、2つの混合タイプの混合指数は逆転し、CAMの方が高い均一性を生成する。さらに、場合によっては、より長い期間で混合した後、さらに高い導電性を達成することができる(例えば0.45S/cm)。
【0087】
[00119] 幾つかの実施形態では、混合時間は、スラリーの安定性の指標であるスラリーの流動性に影響することがある。例えば、図29図30は、それぞれ約45%のPGPT及び4%のC45を含む第一アノードスラリー調合、及び50%のPGPT及び約2%のC45を含む第二アノードスラリー調合の組成安定性を評価するレオメータ試験からのデータを示す。第一及び第二アノードスラリー調合はそれぞれ、1分間、2分間、4分間又は8分間混合した。安定したプロセス条件のセットで、スラリーを動かすために必要な圧力は通常、時間的に比較的一定のままである。平坦からの圧力偏差の時間スケールは、安定性の指標である。図30では、安定性が最高の第一アノードスラリー調合は、4分間という中間の混合物を有する調合であり、これより短く(1分間及び2分間)、及びこれより長く(8分間)混合したスラリーは、安定性がこれより低い。図30では、第二アノードスラリー調合で同様の傾向が観察される。図31は、本明細書に記載するように様々な期間にわたって混合した第一アノードスラリー及び第二アノードスラリーの顕微鏡写真を示す。ここで示すように、4分間混合した第一及び第二アノードスラリーが最も安定している。
【0088】
[00120] 次に図32図33を参照すると、それぞれ約50%のNMC及び8%のC45を含む第一カソードスラリー調合、及び45%のNMC及び約8%のC45を含む第二カソードスラリー調合の組成安定性を評価するレオメータ試験からのデータである。第一及び第二カソードスラリー調合はそれぞれ、4分間又は8分間混合した。1分間混合したスラリーの結果は示さなかった。形状を保持できないほど不安定だったからである。図30及び図31に示すように、4分間又は8分間混合した第一及び第二カソードスラリーは、同等に良好な流動学的特性を示す。図34は、本明細書に記載するように様々な期間にわたって混合した第一カソードスラリー及び第二カソードスラリーの顕微鏡写真を示す。図示のように、1分間混合した第一及び第二カソードスラリーは不安定で分解してしまい、4分間又は8分間混合した第一及び第二カソードスラリーは安定している。
【0089】
[00121] 粘度と同様に、導電性、均質性、及び流動学的パラメータは、電気化学的セル以外で測定することができるスラリー特性である。これらは潜在的電気化学的性能、寿命、及び加工性の指標として使用され、スラリーの重要な「性能指数」である。すなわち、例えばイオン導電性、インピーダンスなどの動電気的応答、弾性率、湿潤性、光学特性、及び磁気特性などの他のパラメータを、電気化学的性能の指標として使用することができる。
【0090】
[00122] 幾つかの実施形態では、スラリーが有用な電気化学的特性を有するかの判定には、電気化学的セル中のスラリーの性能を検証することが含まれることがある。微分容量dQ/dVの大きさが最大値に到達する放電電圧の50%~150%のセル電圧範囲にわたって、電極の理論的容量の少なくとも80%であるC/10以上の電流率における放電容量は、スラリーが有用な電気化学的特性を有するための基準定義として働くことができる。以下の実施例は、本明細書に記載するスラリー調製方法を使用して形成した様々な半固体電極の電気化学的特性を示す。これらの実施例は例示のみを目的とし、本開示の範囲の限定するものではない。
【0091】
実施例1
[00123] 45体積%のLFP及び2体積%のカーボンブラックを炭酸エチレン/炭酸ジメチル/LiPF系の電解質と混合することにより、LFP半固体カソードを調製した。ローラブレード付属品を有するバッチミキサを使用して、カソードスラリーを調製した。混合は100rpmで2分間実施した。半固体スラリーは0.9を超える混合指数及び1.5×10-4S/cmの導電性を有していた。スラリーから厚さ250mmの電極を作成し、Swagelokセル構成中でLi金属アノードに対して試験した。セルはMaccor電池テスタを使用して試験し、V=2~4.2Vの電圧範囲の間で循環させた。セルは、定電流-定電圧を使用して充電し、最初の2サイクルではC/10及びC/8の定電流率で、次にその後のサイクルではC/5とした。定電流充電の後、充電電流がC/20未満に減少するまで、定電圧を4.2Vに保持する。セルは、C/10と5Cの間のC率の範囲にわたって放電した。
【0092】
[00124] 図35Aは、実施例1の半固体電極について、放電C率の関数として充電及び放電容量を示し、図35Bは、低いC率における代表的な充電及び放電曲線を示す。2.23mAhという名目セル容量は、LFP正極活物質を完全に使用した値に対応する。セル容量の大部分は、最大1CのC率の試験条件で得られることが分かる。
【0093】
実施例2
[00125] 45体積%のNMC及び8体積%のカーボンブラックを炭酸エチレン/炭酸ジメチル/LiPF系の電解質と混合することにより、NMC半固体カソードを調製した。ローラミルブレード付属品を有するバッチミキサを使用して、カソードスラリーを調製した。半固体スラリーが0.9を超える混合指数及び8.5×10-3S/cmの導電性を有するように、混合は100rpmで4分間実施した。実施例1と同じセル構成を使用して、カソードをLi金属アノードに対して試験した。セルはMaccor電池テスタを使用して試験し、V=2~4.3Vの電圧範囲の間で循環させた。セルは、定電流-定電圧を使用して充電し、最初の2サイクルではC/10及びC/8の定電流率で、次にその後のサイクルではC/5とした。定電流充電の後、充電電流がC/20未満になるまで、定電圧を4.2Vに保持した。セルは、C/10と5Cの間のC率の範囲にわたって放電した。
【0094】
[00126] 図36Aは、実施例2の半固体電極について、放電C率の関数として充電及び放電容量を示し、図36Bは、低いC率における代表的な充電及び放電曲線を示す。3.17mAhという名目セル容量は、試験した電圧範囲にわたってNMC正極活物質を完全に使用した値に対応する。セル容量の大部分は、最大C/2のC率の試験条件で得られることが分かる。
【0095】
実施例3
[00127] 55体積%のNMC及び4体積%のカーボンブラックを炭酸エチレン/炭酸ジメチル系/LiPF6系の電解質と混合することにより、NMC半固体カソードを調製した。ローラブレード付属品を有するバッチミキサを使用して、カソードスラリーを調製した。半固体スラリーが0.9を超える混合指数及び8.4×10-4S/cmの導電性を有するように、混合は100rpmで4分間実施した。実施例2と同じセル構成及び試験手順を使用して、カソードスラリーをLi金属に対して試験した。
【0096】
[00128] 図37Aは、実施例3の半固体電極について、放電C率の関数として充電及び放電容量を示し、図37Bは、低いC率における代表的な充電及び放電曲線を示す。2.92mAhという名目セル容量は、試験した電圧範囲にわたってNMC正極活物質を完全に使用した値に対応する。セル容量の大部分は、最大C/2のC率の試験条件で得られることが分かる。
【0097】
実施例4
[00129] 60体積%のNMC及び2体積%のカーボンブラックを炭酸エチレン/炭酸ジメチル/LiPF6系の電解質と混合することにより、NMC半固体カソードを調製した。ローラブレード付属品を有するバッチミキサを使用して、カソードスラリーを調製した。混合は100rpmで4分間実施した。実施例2と同じセル構成及び試験手順を使用して、カソードスラリーをLi金属に対して試験した。
【0098】
[00130] 図38Aは、実施例4の半固体電極について、放電C率の関数として充電及び放電容量を示し、図38Bは、低いC率における代表的な充電及び放電曲線を示す。3.70mAhという名目セル容量は、使用した電圧範囲にわたってNMC正極活物質を完全に使用した値に対応する。セル容量の大部分は、最大C/2のC率の試験条件で得られることが分かる。
【0099】
[00131] 幾つかの実施形態では、サイクル試験でのセル安定性も、スラリー及び/又は電気化学的セルの性能の評価に使用することができる。安定性とは、サイクル間で十分に高く、例えば99%以上など、電気化学的容量を保持することを意味する。以下の実施例は、本明細書に記載する半固体電極調製方法を使用して調製した2つのスラリー調合について、サイクル試験でのセル安定性を実際に示す。
【0100】
実施例5
[00132] 35体積%のNMC及び8体積%のカーボンブラックを炭酸エチレン/炭酸ジメチル/LiPF系の電解質と混合することにより、NMC半固体カソードを調製した。ローラブレード付属品を有するバッチミキサを使用して、カソードスラリーを調製した。混合は100rpmで4分間実施した。これにより、0.987の混合指数及び5×10-3S/cmの導電性を有する半固体カソード懸濁物が生成された。カソードに使用したものと同じ組成物の電解質中で35体積%のグラファイトと2体積%のカーボンブラックを混合することにより、グラファイト半固体アノードを調製した。アノードスラリー調合を100rpmで20秒間混合し、0.933の混合指数及び0.19S/cmの導電性を有する半固体アノード懸濁物を生成した。カソード及びアノード半固体スラリーから、それぞれ500μmの厚さの電極を形成した。電極を使用して、カソード及びアノードの両方で約20cmの活性面積を有するNMC-グラファイト系電気化学的セルを形成した。セルは、様々なC率で2.75~4.2Vの間で循環させた。この電圧範囲にわたって、NMCカソードの予想比容量は155mAh/gである。セルは、定電流-定電圧充電(CC-CV)及び2.75~4.2Vの間の定電流放電プロトコルを使用して循環させた。特定の試験段階で、パルス充電及び放電試験を実施した(プロット上の「DCR」で示す)。DCR試験サイクル中に、そのサイクルの容量値はプロット上でゼロに近いように見える(例えば14、34及び55番目のサイクル)。定電流-定電圧充電段階では、セルをCC/10などの規定された率で定電流にかけ、電圧限界に到達すると、電流がC/20未満に低下するまで、定電圧でセルを充電し、その後に放電に切り換えた。定電流は、すべての放電段階に使用した。放電電流は、そのサイクルの充電電流と同じ電流であった。例えば、チャート上で画定されたCC-CV/10サイクルは、C/10の定電流でセルを充電し、その後に電流値がC/20に低下するまで、定電圧充電することを意味する。次に、電圧下限に到達するまで、C/10でセルを放電する。そのタイプの充電/放電プロトコルのサイクル数は、「xサイクル数」と示される。例えば、「CC-CV/5×3」とは、その試験段階中に、セルをC/5の定電流で充電し、その後に定電圧を4.2Vに保持して、その段階を3回繰り返すという意味である。
【0101】
[00133] 図39Aは、実施例5の電気化学的セルの充電/放電サイクル結果の結果を示す。電気化学的セルは、第一充電/放電サイクルでNMC1グラム当たり約160mAhに対応する容量を示し、100充電/放電サイクルの後でも、NMCの約120mAh/gの容量を維持する。図39Bは、電気化学的セルの代表的充電及び放電曲線を示す。電気化学的セルで測定したセル容量は215mAhであった。
【0102】
実施例6
[00134] 45体積%のNMC及び8体積%のカーボンブラックを炭酸エチレン/炭酸ジメチル/LiPF6系の電解質と混合することにより、NMC半固体カソードを調製した。ローラブレード付属品を有するバッチミキサを使用して、カソードスラリーを調製した。混合は100rpmで4分間実施した。これにより、0.973の混合指数及び0.0084S/cmの導電性を有する半固体カソード懸濁物が生成された。カソードと同じ電解質中で50体積%のグラファイトと2体積%のカーボンブラックを混合することにより、グラファイト半固体アノードを調製した。アノードスラリー調合を100rpmで20秒間混合し、0.962の混合指数及び2S/cmの導電性を有する半固体アノード懸濁物を生成した。カソード及びアノード半固体スラリーから、それぞれ500μmの厚さの電極を形成した。電極を使用して、カソード及びアノードの両方で約20cmの活性面積を有するNMC-グラファイト系電気化学的セルを形成した。セルは、定電流-定電圧充電(CC-CV)及び2.75~4.2Vの間の定電流放電プロトコルを使用し、実施例5に示したものと同様のプロトコルで循環させた。この電圧範囲にわたって、NMCカソードの予想比容量は155mAh/gである。
【0103】
[00135] 図40Aは、実施例6の電気化学的セルの充電/放電サイクル結果の結果を示す。電気化学的セルは、第一充電/放電サイクルでNMC1グラム当たり約170mAhに対応する容量を示し、30充電/放電サイクルの後に、NMCの約100mAh/gの容量を維持する。図40Bは、電気化学的セルの代表的充電及び放電曲線を示す。電気化学的セルで測定したセル容量は305mAhであった。
【0104】
[00136] 以上でシステム、方法及びデバイスの様々な実施形態について説明してきたが、これは例示によって提示されているにすぎず、限定するものではないことを理解されたい。上述した方法及び段階は特定の順番で生じる特定の事象を示しているが、本開示の恩恵を受ける当業者には、特定の段階の順番を変更することができ、このような変更が本発明の変形に従うことが認識される。また、特定の段階は、可能な場合に並列プロセスで同時に実行し、さらに上述したように順序よく実行することができる。実施形態を詳細に図示し、述べてきたが、形態及び詳細を様々に変更できることが理解される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図17D
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35A
図35B
図36A
図36B
図37A
図37B
図38A
図38B
図39A
図39B
図40A
図40B