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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】コロニーコントラスト収集
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20220928BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20220928BHJP
   G06T 7/215 20170101ALI20220928BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G01N21/27 A
G06T7/00 630
G06T7/215
C12M1/34 B
C12M1/34 D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020168832
(22)【出願日】2020-10-06
(62)【分割の表示】P 2018506804の分割
【原出願日】2016-04-22
(65)【公開番号】P2021043203
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】62/318,483
(32)【優先日】2016-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/151,681
(32)【優先日】2015-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517370191
【氏名又は名称】ビーデー キーストラ ビー.ヴィー.
(73)【特許権者】
【識別番号】517370205
【氏名又は名称】ワイルズ,ティモシー エム.
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100096943
【氏名又は名称】臼井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】ワイルズ,ティモシー エム.
(72)【発明者】
【氏名】マーセルポイル,ラファエル ロドルフ
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許第3286731(EP,B1)
【文献】米国特許第10692216(US,B2)
【文献】特表平10-510706(JP,A)
【文献】特開2015-073452(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0056504(US,A1)
【文献】特開平9-187270(JP,A)
【文献】国際公開第2010/143420(WO,A1)
【文献】国際公開第03/022999(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2004/0253660(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/01、21/17-21/61
G01N 33/48-33/98
G06T 7/00-7/90
C12M 1/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料を接種され、光学的に透明な容器内に配置された培養培地における増殖を特定するシステムであって、
前記培養培地のデジタル画像を捕捉するための画像取得デバイスと;
前記捕捉されたデジタル画像に関する情報を記憶するメモリと;
以下の命令を行うよう命令を実行するように動作可能な1つ以上のプロセッサと;
を備える、システム:
インキュベーターから受け取られた接種された培養培地が、前記画像取得デバイス内に受け取られたときに、第1の時点(t)において前記接種された培地の第1のデジタル画像を得ることであって、該第1のデジタル画像は複数のピクセルを有すること;
前記接種された培養培地を保有する前記透明な容器に対する前記第1のデジタル画像における前記ピクセルの座標を求めること;
更なる培養の後、前記接種された培養培地が前記画像取得デバイス内に受け取られ、前記1つ以上のプロセッサが以下の工程を実行すること:
第2の時点(t)において、前記接種された培地の第2のデジタル画像を得ることであって、該第2のデジタル画像は複数のピクセルを有すること;
前記第1のデジタル画像を前記第2のデジタル画像と位置合わせすることであって、それによって、前記第2のデジタル画像内のピクセルの前記座標が、前記第1のデジタル画像内の対応するピクセルの前記座標に対応すること;
前記第2のデジタル画像の前記ピクセルを、前記第1のデジタル画像の対応するピクセルと比較すること;
前記第1のデジタル画像と前記第2のデジタル画像との間で変化したピクセルを特定することであって、前記第1のデジタル画像と前記第2のデジタル画像との間で変化していない前記ピクセルは背景を示すこと;
前記第2のデジタル画像における前記特定されたピクセルのいずれが背景を示す前記ピクセルとの所定のレベルの閾値コントラストを有するかを判断すること;
前記第2のデジタル画像における1つ以上の物体を識別することであって、各物体は前記所定のレベルの閾値コントラストを超えるコントラストを有し、背景ピクセルによって互いに分離しないピクセルからなること;
前記識別された物体のうちの少なくとも1つについて、前記物体のピクセルから前記物体の形態を求めること;
前記物体の形態から、前記物体がコロニー候補であるか否かを判断すること;および
前記物体に関連付けられた前記ピクセルの前記座標をメモリに提供すること。
【請求項2】
前記1つ以上のプロセッサが以下の命令を実行するように動作可能な、請求項1に記載のシステム:
前記識別された物体に関連付けられた前記ピクセルについての情報から物体特徴を得ることであって、前記物体特徴は、物体形状、物体サイズ、物体エッジ及び物体の色のうちの少なくとも1つを含み、前記物体の形態は、前記物体特徴に基づいて求められること。
【請求項3】
前記物体の色は、前記物体に関連付けられた前記ピクセルのスペクトル特徴から求められる、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記スペクトル特徴は、ピクセルの色、色相、ルミナンス及びクロミナンスからなる群から選択される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記1つ以上のプロセッサが以下の命令を実行するように動作可能な、請求項2に記載のシステム:
背景特徴情報を得ることであって、前記背景特徴情報は、培地タイプ及び培地の色を含むこと;および
前記背景特徴情報に基づいて前記識別された物体の形態を求めること。
【請求項6】
前記1つ以上のプロセッサが以下の命令を実行するように動作可能な、請求項5に記載のシステム:
前記物体特徴及び前記背景特徴情報を、メモリ内に記憶された物体特徴及び背景特徴情報と比較すること;および
前記物体特徴及び前記背景特徴情報に基づいて、微生物のタイプを判断すること。
【請求項7】
前記1つ以上のプロセッサが以下の命令を実行するように動作可能な、請求項1に記載のシステム:
前記第1のデジタル画像及び前記第2のデジタル画像の各々のピクセルに極座標を割り当てることによって、前記第1のデジタル画像を、前記第2のデジタル画像と位置合わせすることであって、それによって、前記第2のデジタル画像内のピクセルの前記極座標が、前記第1のデジタル画像内の対応するピクセルの前記極座標と同じ極座標であるようにすること。
【請求項8】
前記1つ以上のプロセッサが以下の命令を実行するように動作可能な、請求項1に記載のシステム:
前記第1のデジタル画像内で、前記光学的に透明な容器又はプレート培地における結露の証拠であるピクセル情報を特定すること;および
前記第1のデジタル画像内のピクセル情報から、結露に起因する前記ピクセル情報を減算すること。
【請求項9】
前記1つ以上のプロセッサが以下の命令を実行するように動作可能な、請求項8に記載のシステム:
照明源が前記光学的に透明な容器の底面に向かって上方に方向付けられた前記第1のデジタル画像内で前記結露を特定すること;および
前記前記第1のデジタル画像から、所定の閾値未満の光学密度を有するピクセルのためのピクセル情報を減算すること。
【請求項10】
前記1つ以上のプロセッサが以下の命令を実行するように動作可能な、請求項1に記載のシステム:
前記第1のデジタル画像内又は前記第2のデジタル画像内で、塵の証拠であるピクセル情報を特定すること;および
前記ピクセル情報から、塵に起因する前記ピクセル情報を減算すること。
【請求項11】
前記1つ以上のプロセッサが以下の命令を実行するように動作可能な、請求項1に記載のシステム:
前記接種された培地の第3のデジタル画像を得ることであって、該第3のデジタル画像は、前記第1のデジタル画像が取得される時点と、前記第2のデジタル画像が取得される時点との間の時点で得られ、前記接種された培養培地は、前記画像取得デバイスから取り出され、前記第1のデジタル画像の前記取得と前記第2のデジタル画像の前記取得との間、及び前記第2のデジタル画像の前記取得と前記第3のデジタル画像の前記取得との間で前記インキュベーター内に設置されること;
前記第3のデジタル画像を前記第1のデジタル画像と位置合わせすることであって、前記第3のデジタル画像内のピクセルの極座標が、前記第1のデジタル画像内の対応するピクセルの極座標と同じ極座標であるようにすること;
前記第3のデジタル画像及び前記第2のデジタル画像の前記ピクセルを互いに比較すること;および
前記第3のデジタル画像及び前記第2のデジタル画像間で変化したピクセルを特定すること。
【請求項12】
前記1つ以上のプロセッサが以下の命令を実行するように動作可能な、請求項11
に記載のシステム:
前記識別された物体のうちの少なくとも1つを、前記第3のデジタル画像と前記第2のデジタル画像との間で変化した前記識別されたピクセルと関連付けること。
【請求項13】
前記1つ以上のプロセッサが以下の命令を実行するように動作可能な、請求項1に記載のシステム:
前記接種された培地の第3のデジタル画像を得ることであって、該第3のデジタル画像は、前記第2のデジタル画像が得られる時点の後に得られ、前記接種された培養培地は、前記第2のデジタル画像が得られる時点と前記第3のデジタル画像が得られる時点との間に、画像取得デバイスから取り出され、前記インキュベーター内に設置されること;
前記第3のデジタル画像を、前記第1のデジタル画像及び前記第2のデジタル画像と位置合わせすることであって、前記第3のデジタル画像内のピクセルの極座標が、前記第1のデジタル画像及び前記第2のデジタル画像内の対応するピクセルの極座標と同じ極座標であるようにすること;
前記第3のデジタル画像及び前記第2のデジタル画像の前記ピクセルを互いに比較すること;
前記第2のデジタル画像と前記第3のデジタル画像との間で変化したピクセルを特定すること;
変化したことが特定された、前記第2のデジタル画像及び前記第3のデジタル画像の前記比較されたピクセルに基づいて、前記第2のデジタル画像内で識別された物体が、前記第3のデジタル画像内で変化したと判断すること。
【請求項14】
前記1つ以上のプロセッサが以下の命令を実行するように動作可能な、請求項13に記載のシステム:
前記第2のデジタル画像内でシードオブジェクトであると識別された物体であって、その物体から、判断された変化の程度が評価される、物体を用いて、前記第3のデジタル画像内で変化した物体を前記第2のデジタル画像内で識別すること。
【請求項15】
前記1つ以上のプロセッサが以下の命令を実行するように動作可能な、請求項14に記載のシステム:
前記第2のデジタル画像と前記第3のデジタル画像との間で変化したことが特定された前記ピクセルに基づいて、前記メモリ内の前記物体に関連付けられた前記ピクセルの前記座標を更新すること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2015年4月23日に出願された米国仮特許出願第62/151,681号及び2016年4月5日に出願された米国仮特許出願第62/318,483号の出願日の利益を主張するものであり、これらの仮特許出願の開示は、引用することにより本明細書の一部をなす。
【背景技術】
【0002】
微生物増殖の検出のための培養プレートのデジタル画像がますます注目されている。微生物増殖を検出するためにプレートを撮像する技法が、国際公開第2015/114121号に記載されており、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。そのような技法を用いると、研究室のスタッフは、もはや直接検査することによりプレートを読み出す必要はなく、プレート検査のために高品質デジタル画像を用いることができる。研究室ワークフロー及び意思決定を培養プレートのデジタル画像の調査にシフトすることにより、効率を改善することもできる。画像は、運用者又は適切な技能を有する別の人物によって更にまとめるために、運用者によってマーク付けすることができる。更なる画像を取得し、二次プロセスを誘導するのに用いることもできる。
【0003】
コロニーの検出、コロニーの計数、コロニーの個体群分化及びコロニーの同定は、近代の微生物学撮像システムのための目的を定義する。これらの目的を可能な限り早期に実現することにより、患者に結果を送達する目標が迅速に達成され、そのような結果及び解析が経済的にもたらされる。研究室のワークフロー及び意思決定を自動化することにより、目標を達成することができる速度及びコストを改善することができる。
【0004】
微生物増殖の証拠を検出するための撮像技法に関して大きな進歩がなされたが、自動化されたワークフローをサポートするそのような撮像技法を拡張することが依然として求められている。微生物増殖を示すための培養プレートを調査するための装置及び方法は、プレート調査の高度に視覚的な特性に部分的に起因して、自動化するのが困難である。これに関して、自動化された解釈に基づいて、培養プレート画像を自動的に解釈し、行われる次のステップ(例えば、コロニーの同定、感受性試験等)を決定することができる技法を開発することが望ましい。
【0005】
例えば、特にコロニーが異なるサイズ及び形状であり、互いに接触しているときに、プレート培養物におけるコロニーを同定及び区別することは困難である可能性がある。これらの問題は、成長が既にプレートのいくつかの領域において重なり合っているときに悪化する。これらの理由により、可能な場合、コロニーを同定し、プロセスにおいて増殖を早期に判断することが好ましい。一方、コロニーの少なくともいくらかの増殖を可能にするために、培養時間が依然として必要とされている。このため、一方では、コロニーが増殖することを可能にされる時間が長いほど、コロニーはより多く、背景と及び互いにコントラストをなし始め、それらのコロニーを同定するのがより容易になる。しかし、他方で、コロニーがあまりに長く増殖を許され、プレートを満たし始める及び/又は互いに接触し始める場合、これらのコロニーを背景と及び互いに対比することがより困難になる。相対的に乏しいコントラストであっても、コロニーを互いから分離するのに十分なだけコロニーが依然として小さい培養時間においてコロニーを検出することが可能である場合、この問題を最小限にするか、又は更には解決することができる。
【発明の概要】
【0006】
本開示の一態様は、プレート培地(plated media)における微生物増殖を評価するための自動化された方法であって、実質的に光学的に透明な容器内に配置された、生体試料を接種された培養培地を準備することと、インキュベーターにおいて、接種された培養培地を培養することと、接種された培養培地を保有する透明な容器をデジタル撮像装置内に設置することと、第1の時点(t)において接種された培養培地の第1のデジタル画像を得ることであって、第1のデジタル画像は複数のピクセルを有することと、接種された培養培地を保有する容器に対する第1のデジタル画像におけるピクセルの座標を求めることと、接種された培養培地を保有する容器をデジタル撮像装置から取り出すとともに、接種された培養培地を、更なる培養のためにインキュベーター内に設置することと、更なる培養の後、接種された培養培地を保有する容器をデジタル撮像装置内に設置することと、第2の時点(t)において、接種された培養培地の第2のデジタル画像を得ることであって、第2のデジタル画像は複数のピクセルを有することと、第1のデジタル画像を第2のデジタル画像と位置合わせすることであって、それによって、第2のデジタル画像内のピクセルの座標が、第1のデジタル画像内の対応するピクセルの座標に対応することと、第2のデジタル画像のピクセルを、第1のデジタル画像の対応するピクセルと比較することと、第1のデジタル画像と第2のデジタル画像との間で変化したピクセルを特定することであって、第1のデジタル画像と第2のデジタル画像との間で変化していないピクセルは背景を示すことと、第2のデジタル画像における特定されたピクセルのいずれが背景を示すピクセルとの所定のレベルの閾値コントラストを有するかを判断することと、第2のデジタル画像における1つ以上の物体を識別することであって、各物体は上記閾値コントラストのレベルに一致し、背景ピクセルによって互いに分離しないピクセルからなることと、識別された物体のうちの少なくとも1つについて、物体のピクセルから物体の形態を求めることと、物体の形態から、物体がコロニー候補であるか否かを判断することと、物体に関連付けられたピクセルの座標をメモリに提供することとを含む、方法を対象とする。
【0007】
いくつかの例では、本方法は、所定の一連の照明条件に従って最初に複数の第1のデジタル画像を得ることを更に含むことができ、第1のデジタル画像の各々は、異なる照明条件下で得られ、各照明条件は、照明源に対する、接種された培養培地を保有する光学的に透明な容器の指定された向きと、デジタル撮像装置内で光学的に透明な容器が上に設置される指定された背景色とを含む。指定された向きは、接種された培養培地を保有する光学的に透明な容器の上面に向かって下方に方向付けられた照明源と、接種された培養培地を保有する光学的に透明な容器の底面に向かって上方に方向付けられた照明源と、接種された培養培地を保有する光学的に透明な容器の側面に向かって方向付けられた照明源とを備えることができる。指定された上面及び側面の向きについて、指定された背景色は黒色とすることができる。指定された底面の向きについて、指定された背景色は白色とすることができる。照明条件は、指定された照明スペクトルを更に含むことができ、指定された照明スペクトルは、赤色波長を放射する照明源と、緑色波長を放射する照明源と、青色波長を放射する照明源とを備える。
【0008】
いくつかの例では、本方法は、物体に関連付けられたピクセル情報から物体特徴を得ることを更に含むことができ、物体特徴は、物体形状、物体サイズ、物体エッジ及び物体の色のうちの少なくとも1つを含み、物体の形態は、物体特徴に基づいて求められる。物体の色は、物体に関連付けられたピクセルのスペクトル特徴から求めることができる。スペクトル特徴は、ピクセルの色、色相、ルミナンス及びクロミナンスからなる群から選択することができる。また、背景特徴情報を得ることができる。背景特徴情報は、培地タイプ及び培地の色を含むことができ、物体の形態は、背景特徴情報に更に基づいて求めることができる。物体特徴及び背景特徴情報を、メモリ内に記憶された他の物体特徴及び他の背景特徴情報と比較することができ、物体特徴及び背景特徴情報に基づいて、微生物のタイプを判断することができる。
【0009】
いくつかの例では、第1のデジタル画像を、第2のデジタル画像と位置合わせすることは、第1のデジタル画像及び第2のデジタル画像の各々のピクセルに極座標を割り当て、それによって、第2のデジタル画像内のピクセルの極座標が、第1のデジタル画像内の対応するピクセルの極座標と同じであるようにすることを含むことができる。また、いくつかの例では、複数の培養培地が準備され、生体試料を接種され、1つ以上の光学的に透明な容器内に配置され、インキュベーターにおいて培養され、細菌増殖の同じ時間フレームにおいてデジタル撮像装置内に設置されることができ、それによって、培養培地ごとに第1のデジタル画像及び第2のデジタル画像が得られる。また、いくつかの例では、本方法は、第1のデジタル画像内で、光学的に透明な容器又はプレート培地における結露の証拠であるピクセル情報を特定することと、画像から、結露に起因するピクセル情報を減算することとを更に含むことができる。照明源が光学的に透明な容器の底面に向かって上方に方向付けられたデジタル画像内で、結露の証拠であるピクセル情報を特定することができ、画像から、所定の閾値未満の光学密度を有するピクセルのためのピクセル情報が減算される。
【0010】
いくつかの例では、本方法は、第1のデジタル画像内又は第2のデジタル画像内で、塵の証拠であるピクセル情報を特定することと、画像から、塵に起因するピクセル情報を減算することとを更に含むことができる。デジタル画像内で、塵の証拠であるピクセル情報を特定することができ、デジタル画像について、光学的に透明な容器は、白色の培養培地を含み、照明源は、光学的に透明な容器の上面に向かって下方に方向付けられ、背景色は黒色であり、光学的に透明な容器は、色付きの又は暗い培養培地を含み、照明源は、光学的に透明な容器の上面に向かって下方に方向付けられ、背景色は白色であり、又は、照明源は、光学的に透明な容器の底面に向かって上方に方向付けられる。塵は、培養培地、光学的に透明な容器、又はデジタル撮像装置の光学コンポーネントのうちの任意のものの上にある塵とすることができる。
【0011】
いくつかの例では、本方法は、接種された培地の第3のデジタル画像を得ることであって、第3のデジタル画像は、第1のデジタル画像が取得される時点と、第2のデジタル画像が取得される時点との間の時点で得られ、接種された培養培地は、デジタル撮像装置から取り出され、第1のデジタル画像の取得と第2のデジタル画像の取得との間、及び第2のデジタル画像の取得と第3のデジタル画像の取得との間でインキュベーター内に設置されることと、第3のデジタル画像を第1のデジタル画像と位置合わせすることであって、第3のデジタル画像内のピクセルの座標が、第1のデジタル画像内の対応するピクセルの座標と同じであるようにすることと、第3のデジタル画像及び第2のデジタル画像のピクセルを互いに比較することと、第3のデジタル画像及び第2のデジタル画像間で変化したピクセルを特定することとを更に含むことができる。第1のデジタル画像と第3のデジタル画像との間の培養時間は、第3のデジタル画像と第2のデジタル画像との間の培養時間に等しいものとすることができる。識別された物体のうちの少なくとも1つは、第3のデジタル画像と第2のデジタル画像との間で変化した識別されたピクセルに関連付けることができる。
【0012】
いくつかの例では、本方法は、接種された培地の第3のデジタル画像を得ることであって、第3のデジタル画像は、第2のデジタル画像が得られる時点の後に得られ、接種された培養培地は、第2のデジタル画像が得られる時点と第3のデジタル画像が得られる時点との間に、デジタル撮像装置から取り出され、インキュベーター内に設置されることと、第3のデジタル画像を、第1のデジタル画像及び第2のデジタル画像と位置合わせすることであって、第3のデジタル画像内のピクセルの座標が、第1のデジタル画像及び第2のデジタル画像内の対応するピクセルの座標と同じであるようにすることと、第3のデジタル画像及び第2のデジタル画像のピクセルを互いに比較することと、第2のデジタル画像と第3のデジタル画像との間で変化したピクセルを特定することと、変化したことが特定された、第2のデジタル画像及び第3のデジタル画像の比較されたピクセルに基づいて、第2のデジタル画像内で識別された物体が、第3のデジタル画像内で変化したと判断することとを更に含むことができる。第3のデジタル画像内で変化したと判断された第2のデジタル画像内で識別された物体は、シードオブジェクトであると判断することができ、シードオブジェクトからの判断された変化の程度が評価される。そのような場合、本方法は、第2のデジタル画像と第3のデジタル画像との間で変化したことが特定されたピクセルに基づいて、メモリ内の物体に関連付けられたピクセルの座標を更新することを更に含むことができる。
【0013】
本開示の別の態様は、培養物を接種され、培養された、プレート培地における微生物増殖を特定する方法であって、培地の培養の開始時(t)に、培地の第1のデジタル画像を得ることであって、第1のデジタル画像は複数のピクセルを有することと、第1のデジタル画像の1つ以上のピクセルに座標を割り当てることと、培地のための培養期間後(t)に、培地の第2のデジタル画像を得ることであって、第2のデジタル画像は複数のピクセルを有することと、第2のデジタル画像を第1のデジタル画像と位置合わせすることであって、この位置合わせは、第1の画像のピクセルに割り当てられた座標と、座標を割り当てられた第1の画像のピクセルに対応する第2の画像の1つ以上のピクセルとに基づくことと、第2のデジタル画像の局所的に隣接するピクセル間の変化を示す空間コントラストデータを生成することと、第1のデジタル画像及び第2のデジタル画像の対応するピクセル間の変化を示す時間コントラストデータを生成することと、第2のデジタル画像の複数のピクセルの各々について、ピクセルの空間コントラストデータ及び時間コントラストデータの組み合わせに基づいて、ピクセルにコントラスト値を割り当てることと、所定の閾値を超え、互いの所定の誤差範囲内にあるコントラスト値を有する隣接するピクセルを関係付けることであって、関係付けられたピクセルは、識別された物体を構成することと、各識別された物体を、メモリ内に候補コロニーとして記憶することとを含む、方法を対象とする。
【0014】
いくつかの例では、空間コントラストデータ及び時間コントラストデータを組み合わせることは、空間コントラストデータ及び時間コントラストデータの平均をとることを含む。空間コントラストデータ及び時間コントラストデータは、加重平均に従って組み合わせることができる。
【0015】
空間コントラストデータを生成することは、時点tにおいて複数の画像を得ることであって、複数の画像の各々は、異なる照明条件下で得られることと、複数のt画像の各々において空間データを処理することと、処理された空間データを組み合わせることとを含むことができる。空間データを処理することは、照明条件ごとに空間データ結果を別個に処理するとともに、別個に処理された空間データ結果から最大の結果を選択することを含むことができる。
【0016】
時間コントラストデータを生成することは、時点tにおいて複数の画像を得ることであって、複数の画像の各々は、異なる照明条件下で得られることと、時点tにおいて複数の画像を得ることであって、時点tにおける各画像の照明条件は、時点tにおいて得られた画像の照明条件に対応することと、対応するt画像及びt画像の各々における時間データを処理することと、処理された時間データを組み合わせることとを含むことができる。時間データを処理することは、照明条件ごとに時間データ結果を別個に処理するとともに、別個に処理された時間データ結果から最大の結果を選択することを含むことができる。
【0017】
いくつかの例では、本方法は、所与の識別された物体について、物体に関連付けられたピクセル情報から複数の物体特徴を得ることであって、物体特徴は、少なくとも1つの形態学的特徴を含み、形態学的特徴は、物体形状、物体エリア、物体外周又は物体エッジのうちの少なくとも1つであることと、分類アルゴリズムを用いて物体特徴を組み合わせることと、組み合わされた物体特徴を、メモリ内に記憶された複数の微生物のための物体特徴情報と比較することと、比較に基づいて、識別された物体を、微生物のタイプとして分類することとを更に含むことができる。物体特徴は、少なくとも1つのスペクトル特徴を更に含むことができ、スペクトル特徴は、物体の色、物体の明るさ、物体の色相、物体の彩度のうちの少なくとも1つ、又は少なくとも1つの時間特徴である(時間特徴は、物体の増殖率、物体の色の変化、又は物体が最初に視覚的に観察可能であった予測時間のうちの少なくとも1つである)。物体特徴のうちの少なくとも1つを、識別された物体の各ピクセルについて得て、次に、1つ以上の統計的ヒストグラム特徴を用いて組み合わせることができる。分類アルゴリズムは、教師あり機械学習アルゴリズムとすることができ、組み合わされた物体特徴は、メモリに記憶された4つ以下の微生物について物体特徴情報と比較することができる。
【0018】
いくつかの例では、本方法は、所与の識別された物体について、識別された物体のピクセルごとに、ピクセルの時間コントラストデータに基づいて、ピクセルに時間コントラスト値を割り当てることと、割り当てられた時間コントラスト値から1つ以上の最大値を特定することと、2つ以上の最大値が特定される場合、最大値が共通コロニー形成ユニットに関連付けられるか、又は異なるコロニー形成ユニットに関連付けられるかを判断することと、異なるコロニー形成ユニットに関連付けられると判断された任意の2つの最大値について、識別された物体を、上記2つの最大値のそれぞれのロケーションに少なくとも部分的に基づいて、2つの物体に分割することとを更に含むことができる。2つの最大値が共通のコロニー形成ユニットに関連付けられるか又は異なるコロニー形成ユニットに関連付けられるかを判断することは、最大値ごとに、最大値から識別された物体のエッジへの距離を求めることと、各求められた距離と、2つの最大値間の距離とに基づいて、包含係数値を計算することと、包含係数値を所定の範囲と比較することであって、最大値は、包含係数値が所定の範囲未満である場合、共通コロニー形成ユニットと関連付けられ、包含係数値が所定の範囲よりも大きい場合、異なるコロニー形成ユニットと関連付けられることとを更に含むことができる。包含係数値が所定の範囲内にある場合、また、本方法は、最大値ごとに、最大値を取り囲む領域を画定することと、最大値を取り囲むそれぞれの領域の凸性を計算することであって、凸性が閾値よりも高い場合、最大値は、異なるコロニー形成ユニットに関連付けられることとを更に含むことができる。
【0019】
いくつかの例では、本方法は、空間コントラストデータに基づいて、第1の時点におけるデジタル画像内の1つ以上の物体を識別することと、第2の時点におけるデジタル画像内の所与の識別された物体について、第2の時点におけるデジタル画像内の物体のための組み合わされた空間コントラストデータ及び時間コントラストデータが、第1の時点におけるデジタル画像内で識別された物体のための空間コントラストデータに一致する場合、第2のデジタル画像内の物体をアーチファクトとして分類することとを更に含むことができる。
【0020】
本開示の更に別の態様は、培養物を接種され、培養されたプレート培地における微生物増殖を評価する方法であって、プレート培地の第1のデジタル画像及び第2のデジタル画像を得ることであって、各デジタル画像は、接種された培地のための培養期間後に、異なる時点に得られることと、第2のデジタル画像を第1のデジタル画像と位置合わせすることであって、この位置合わせは、第1の画像のピクセル、及び座標に割り当てられた第1の画像のピクセルに対応する第2の画像の1つ以上のピクセルに割り当てられた座標に基づくことと、第1のデジタル画像及び第2のデジタル画像の対応するピクセル間の変化を示す時間コントラストデータを生成することと、時間コントラストデータから、第2のデジタル画像内の物体を識別することと、時間コントラストデータから、識別された物体の1つ以上の動的物体特徴を得ることと、1つ以上の動的物体特徴に基づいて、識別された物体を、有機体のタイプとして分類することと、識別された物体及びその分類をメモリ内に記憶することとを含む、方法を対象とする。いくつかの例では、1つ以上の動的物体特徴は、識別された物体の増殖速度、識別された物体のクロマティック特徴に対する変化、又はプレート培地に対し概ね垂直な軸に沿った増殖の変化を含むことができる。
【0021】
いくつかの例では、本方法は、プレート培地の第3のデジタル画像を、接種された培地のための培養期間後に、第1のデジタル画像及び第2のデジタル画像と異なる時点に得ることと、第3のデジタル画像を、第1のデジタル画像及び第2のデジタル画像と位置合わせすることと、第2のデジタル画像及び第3のデジタル画像の対応するピクセル間の変化を示す時間コントラストデータを生成することとを更に含むことができ、物体は、上記時間コントラストデータに更に基づいて特定され、識別された物体のうちの1つ以上の動的物体特徴は、時間コントラストデータの二次導関数を含む。1つ以上の動的物体特徴は、物体増殖加速度を含むことができる。
【0022】
本開示の更なる態様は、プロセッサに方法を実行させるように構成されたプログラム命令が符号化されたコンピュータ可読メモリストレージ媒体を対象とする。本方法は、プレート培地における微生物増殖を評価するか、培養物を接種され、培養されたプレート培地における微生物増殖を特定するか、又は培養物を接種され、培養されたプレート培地における微生物増殖を評価するための上記の方法のうちの任意のものとすることができる。
【0023】
本開示のまた更なる態様は、生体試料を接種された培養培地における増殖を評価するためのシステムを対象とする。本システムは、培養培地のデジタル画像を捕捉するための画像取得デバイスと、メモリと、方法を行うよう命令を実行するように動作可能な1つ以上のプロセッサとを備える。いくつかの例では、メモリは、捕捉されたデジタル画像に関する情報を記憶することができ、実行された命令によって行われる方法は、プレート培地における微生物増殖を評価するための上記の方法のうちの任意のものとすることができる。他の例では、メモリは、捕捉されたデジタル画像において識別された候補コロニー物体に関する情報を記憶することができ、実行された命令によって行われる方法は、培養物を接種され、培養されたプレート培地における微生物増殖を特定する上記で説明した方法のうちの任意のものとすることができる。また更なる例では、メモリは、捕捉されたデジタル画像において識別された1つ以上の物体に関する情報、及び識別された物体の1つ以上の分類を記憶することができ、実行された命令によって行われる方法は、培養物を接種され、培養されたプレート培地における微生物増殖を評価するための上記で説明した方法のうちの任意のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本開示の態様による、培養物を撮像解析及び試験するためのシステムの概略図である。
図2】本開示の態様による、培養物を撮像解析及び試験するための自動化された研究室ワークフロールーチンを示すフローチャートである。
図3A】本開示の態様による、コロニー形態が経時的に変化するときのコロニー形態の視覚表現による時間コントラストを示す画像である。
図3B】本開示の態様による、コロニー形態が経時的に変化するときのコロニー形態の視覚表現による時間コントラストを示す画像である。
図3C】本開示の態様による、コロニー形態が経時的に変化するときのコロニー形態の視覚表現による時間コントラストを示す画像である。
図3D】異なる照明条件下の空間コントラストを示す画像である。
図3E】異なる照明条件下の空間コントラストを示す画像である。
図4】本開示の態様による、画像情報を得て解析するための例示的なルーチンのフローチャートである。
図5】本開示の態様による、空間コントラストを得るための例示的なルーチンのフローチャートである。
図6】本開示の態様による、時間コントラストを得るための例示的なルーチンのフローチャートである。
図7】本開示の態様による、画像からアーチファクトをフィルタリングするための例示的なルーチンのフローチャートである。
図8】本開示の態様による、画像のピクセルをラベル付けするための例示的なルーチンのフローチャートである。
図9】本開示の態様による、コロニーを別個の物体に分割するための例示的なルーチンのフローチャートである。
図10】本開示の態様による、例示的な物体分割ルーチンのフローチャートである。
図11図10の分割ルーチンの一部としてのコンフルエントコロニーの測定値を示す図である。
図12】本開示の態様によるボロノイ図である。
図13A】本開示の態様による分離係数(isolation factor)測定を示す図である。
図13B】本開示の態様による分離係数測定を示す図である。
図13C】本開示の態様による分離係数測定を示す図である。
図14】本開示の態様による、影響のボロノイ領域を示す図である。
図15A】本開示の態様による、コロニー増殖の特徴化を示す画像である。
図15B】本開示の態様による、コロニー増殖の特徴化を示す画像である。
図15C】本開示の態様による、コロニー増殖の特徴化を示す画像である。
図16A】画像の試料コロニーの、ズームされ向きを変えられた画像を有する、撮像プレートのセクションを示す図である。
図16B】画像の試料コロニーの、ズームされ向きを変えられた画像を有する、撮像プレートのセクションを示す図である。
図16C図16Bのそれぞれの画像のベクトル図である。
図17】本開示の態様による、標本のSHQI、空間コントラスト及び時間コントラスト画像を示す図である。
図18図2のルーチンのタイムラインを、比較可能なマニュアル実行されるルーチンのタイムラインと比較するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示は、プレート培地の1つ以上のデジタル画像において検出されるコントラストに少なくとも部分的に基づいて、プレート培地における微生物増殖を特定及び解析する装置、システム及び方法を提供する。本明細書において説明される方法の多くは、完全に又は部分的に自動化することができ、例えば、完全に又は部分的に自動化される研究室ワークフローの一部として統合される。
【0026】
本明細書に記載のシステムは、微生物の同定及びそのような微生物の微生物増殖検出のために微生物学試料を撮像する光学系において実施することが可能である。本明細書に詳細に記載されていない多くのそのような市販のシステムが存在する。1つの例は、BD Kiestra(商標)ReadAコンパクトインテリジェント培養及び撮像システムである。他の例示的なシステムは、国際公開第2015/114121号及び米国特許出願公開第2015/0299639号に記載されているものを含み、それらの全体が、引用することにより本明細書の一部をなす。そのような光学的撮像プラットフォームは、当業者には既知であり、本明細書に詳細に説明されない。
【0027】
図1は、プレート培地の高品質撮像を提供するための処理モジュール110及び画像取得デバイス120(例えば、カメラ)を有するシステム100の概略図である。処理モジュール及び画像取得デバイスは、プレート培地上で培養される培養物の増殖を可能にするために、プレート培地を培養するための培養モジュール(図示せず)等の他のシステムコンポーネントに更に接続され、それによって、これらと更にインタラクトすることができる。そのような接続は、培養のための標本を受け取り、これらをインキュベーターに、次にインキュベーターと画像取得デバイスとの間に移送する追跡システムを用いて、完全に又は部分的に自動化することができる。
【0028】
処理モジュール110は、システム100の他のコンポーネントに、様々なタイプの情報の処理に基づいてタスクを実行するように命令することができる。プロセッサ110は、1つ以上の動作を実行するハードウェアとすることができる。プロセッサ110は、中央処理装置(CPU)等の任意の標準的なプロセッサとすることもできるし、又は特定用途向け集積回路(ASIC)若しくはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等の専用プロセッサとすることもできる。1つのプロセッサブロックが示されているが、システム100は、並列に動作する場合もしない場合もある複数のプロセッサ、又はインキュベーター及び/又は画像取得デバイス120内の試料容器に関する情報を記憶及び追跡するための他の専用ロジック及びメモリを含むこともできる。これに関して、処理ユニットは、限定ではないが、システム内の標本のロケーション(インキュベーター又は画像取得デバイス、内部のロケーション及び/又は向き等)、培養時間、捕捉画像のピクセル情報、試料のタイプ、培養培地のタイプ、予防処置情報(例えば、有害な標本)等を含む、システム100内の標本に関するいくつかのタイプの情報を追跡及び/又は記憶することができる。これに関して、プロセッサは、本明細書に記載の様々なルーチンを完全に又は部分的に自動化することが可能であり得る。1つの実施形態において、本明細書に記載のルーチンを実行するための命令は、非一時的コンピュータ可読媒体(例えば、ソフトウェアプログラム)上に記憶することができる。
【0029】
図2は、培養物を撮像、解析、及び任意選択で試験するための例示的な自動化された研究室ルーチン200を示すフローチャートである。ルーチン200は、BD Kiestra(商標)Total Lab Automation又はBD Kiestra(商標)Work Cell Automation等の自動化された微生物学研究室システムによって実施することができる。例示的なシステムは、相互接続されたモジュールを含み、各モジュールは、ルーチン200の1つ以上のステップを実行するように構成される。
【0030】
202において、培養培地が準備され、生体試料を接種される。培養培地は、光学的に透明な容器とすることができ、それによって、生体試料は、様々な角度から照明されている間、容器内で観測することができる。接種は所定のパターンを辿ることができる。試料をプレート上にストリークするためのストリーキングパターン及び自動化された方法は、当業者には既知であり、本明細書において詳細に論じない。1つの自動化された方法は、磁気制御されたビーズを用いてプレート上に試料をストリークする。204において、培地は、生体試料の増殖を可能にするために培養される。
【0031】
206において、培地及び生体試料の1つ以上のデジタル画像が捕捉される。以下でより詳細に説明されるように、培地のデジタル撮像は、培養プロセス中に複数回(例えば、培養の開始時、培養の最中の時点、培養の終了時に)行うことができ、それによって、培地の変化を観測及び解析することができる。培地の撮像は、インキュベーターから培地を取り出すことを含むことができる。複数の画像が異なる時点において培地から取得されるが、培地は、撮像セッション間に更なる培養のためにインキュベーターに返される場合がある。
【0032】
208において、生体試料は、捕捉されたデジタル画像からの情報に基づいて解析される。デジタル画像の解析は、画像内に含まれるピクセル情報の解析を含むことができる。いくつかの例において、ピクセル情報は、ピクセル単位で解析することができる。他の例において、ピクセル情報は、ブロック単位で解析することができる。また更なる例では、ピクセルは、ピクセルの全体領域に基づいて解析することができ、それによって、領域内の個々のピクセルのピクセル情報を、個々のピクセルの情報を組み合わせるか、試料ピクセルを選択するか、又は以下でより詳細に説明される統計的ヒストグラム動作等の他の統計的動作を用いることによって導出することができる。本開示において、「ピクセル」に適用されるものとして記載されている動作は、ブロック又は他のピクセルのグループに同様に適用可能であり、「ピクセル」という語は、本明細書ではそのような適用を含むように意図される。
【0033】
解析は、増殖が培地において検出されるか否かを判断することを含むことができる。画像解析の観点から、(物体とその隣接する環境との間の差に基づいて)撮像される物体を識別することによって、次に経時的に物体の変化を特定することによって、画像内で増殖を検出することができる。本明細書においてより詳細に説明するように、これらの差及び変化は共に「コントラスト」の形態をとる。増殖を検出することに加えて、108における画像解析は、検出される増殖の量を量子化し、別個のコロニーを識別し、姉妹コロニーを識別すること等を更に含むことができる。
【0034】
210において、生体試料(特に、識別された姉妹コロニー)が量的に大きな増殖を呈するか否かが判断される。増殖が見つからない場合、又は僅かな量の増殖しか見つからない場合、ルーチン200は220に進むことができ、220において、最終報告が出力される。210から220に進む場合、最終報告は、大量の増殖がないことを示すか、又は正常細菌叢の増殖を報告する可能性が高い。
【0035】
生体試料が、量的に大きな増殖を呈すると判断される場合、212において、以前の解析に基づいて、1つ以上のコロニーを画像から選び出すことができる。コロニーを選び出すことは、完全に自動化されたプロセスとすることができ、このプロセスにおいて、選び出されたコロニーの各々がサンプリングされ、試験される。代替的に、コロニーを選び出すことは、部分的に自動化されたプロセスとすることができ、このプロセスにおいて、複数の候補コロニーが自動的に同定され、デジタル画像において視覚的に運用者に提示され、それによって、運用者は、サンプリング及び更なる試験のための1つ以上の候補の選択を入力することができる。選択された又は選び出されたコロニーのサンプリングは、それ自体をシステムによって自動化することができる。
【0036】
214において、有機体懸濁液における試料をプレート培養すること等によって、サンプリングされたコロニーが、更なる試験のために用意される。216において、試料が、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)撮像を用いて試験され、元の培地からサンプリングされた標本のタイプが同定される。218において、試料は、更に又は代替的に抗生物質感受性試験(AST)にかけられ、同定された標本のための可能な処置が特定される。
【0037】
220において、最終報告において試験結果が出力される。報告は、MALDI及びASTの結果を含むことができる。上述したように、報告は、標本増殖の量子化を示すこともできる。このため、自動化システムは、接種された培養培地で開始し、培養物において見つかった標本に関する最終報告を、追加の入力をほとんど又は全く行うことなく生成することが可能である。
【0038】
図2の例示的なルーチン等のルーチンにおいて、検出及び同定されたコロニーは、多くの場合に、コロニー形成単位(CFU)と呼ばれる。CFUは、1つ又はいくつかの細菌として開始する微小物体である。経時的に、バクテリアは、増殖してコロニーを形成する。細菌がプレート内に配置されたときからの時間において早期であるほど、検出される細菌が少なく、結果として、コロニーが小さくなり、背景に対するコントラストが低くなる。言い換えると、コロニーサイズが小さいほど、より小さな信号をもたらし、一定の背景における信号が小さいほど、結果としてコントラストが小さくなる。これは、以下の式によって反映される。
【数1】
【0039】
コントラストは、画像内のCFU等の物体又は他のアーチファクトを識別する際の重要な役割を果たすことができる。物体は、明るさ、色及び/又はテクスチャが背景と大きく異なっている場合、画像内で検出することができる。物体が検出されると、解析は、検出された物体のタイプを識別することも含むことができる。そのような識別は、識別された物体のエッジの平滑性等のコントラスト測定値、又は物体の色及び/又は明るさの均一性(又は均一性の欠如)にも依拠することができる。このコントラストは、画像センサによって検出されるためには、画像のノイズ(背景信号)に勝るように十分大きくなくてはならない。
【0040】
人間のコントラストの知覚(ウェバーの法則によって支配される)は限られている。最適な条件下で、人間の目は、1%の光レベル差を検出することができる。画像測定値(例えば、明るさ、色、コントラスト)の品質及び信頼性は、測定の信号対雑音比(SNR)によって特徴付けることができ、ここで、100のSNR値(又は40db)が、ピクセル輝度と無関係に、人間の検出能力に合致する。高SNR撮像情報及び既知のピクセル毎SNR(SNR per pixel)情報を利用したデジタル撮像技法は、これらのコロニーがまだ人間の目に見えない場合であっても、コロニーの検出を可能にすることができる。
【0041】
本開示において、コントラストは少なくとも2つの方法で、空間的に及び時間的に収集することができる。空間コントラスト又はローカルコントラストは、単一の画像における所与の領域(例えば、ピクセル、又は隣接するピクセルのグループ)と、その周囲との間の色又は明るさの差を量子化する。時間コントラスト(temporal contrast)又はタイムコントラスト(time contrast)は、1つの画像の所与の領域と、異なる時点において取得された別の画像内のその同じ領域との間の色又は明るさの差を量子化する。時間コントラストを支配する定式は、空間コントラストのものと類似している。
【数2】
【0042】
ここで、tはtに続く時点である。所与の画像の空間コントラスト及び時間コントラストの双方を用いて物体を識別することができる。識別された物体は、それらの重要性(例えば、それらがCFUであるか、正常細菌叢であるか、塵であるか等)を判断するように更に試験することができる。
【0043】
図3A図3B及び図3Cは、時間コントラストが撮像された試料に対し有することができる効果の視覚的実証を提供する。図3Aに示す画像は、異なる時点に捕捉され(左から右、上の行から下の行)、試料における全体的な増殖を示す。図3Aにおいて増殖が顕著であるが、図3Bの対応するコントラスト時間画像から、増殖が更により顕著であり、シーケンスの更に早期において気づくことができる。明確にするために、図3Cは、図3Bのズームされたセクションを示す。図3Cに見て取ることができるように、コロニーの一部分が長く撮像されているほど、コントラスト画像においてより明るいスポットが作成される。このようにして、各コロニーの質量中心を、コロニーの明るい中心又はピークによって示すことができる。このため、経時的に得られる画像データは、コロニー形態における変化における重大な情報を明らかにすることができる。
【0044】
背景に対する物体の空間コントラスト又は時間コントラストを最大限にするために、システムは、異なる背景における異なる入射光を用いて画像を捕捉することができる。例えば、上面照明法、底面照明法、側面照明法のうちの任意のものを、黒い背景又は白い背景で用いることができる。
【0045】
図3D及び図3Eは、撮像された試料に対し照明法条件が有し得る効果の視覚的実証を与える。図3Dにおける画像は、上面照明法を用いて捕捉されたのに対し、図3Eにおける画像は、底面法照明を用いて、概ね同じ時点(例えば、顕著でも大量でもない増殖が生じた時点に十分近い)に捕捉された。見て取ることができるように、図3D及び図3Eの試料における画像の各々は、いくつかのコロニーを含むが、コロニーに関する追加の情報(この場合、溶血)は、図3Dの画像における背面照明法又は底面照明法により見ることができるのに対し、同じ情報は、図3Eの画像において把握するのが困難である。
【0046】
所定の時点において、複数の照明条件下で複数の画像を捕捉することができる。画像は、照明光レベル、照明角、及び/又は物体とセンサとの間で展開されるフィルター(例えば、赤色、緑色及び青色フィルター)に起因してスペクトルが異なる、異なる光源を用いて捕捉することができる。この方式において、画像取得条件は、光源位置(例えば、上面、側面、底面)、背景(例えば、黒、白、任意の色、任意の輝度)、及び光スペクトル(例えば、赤色チャネル、緑色チャネル、青色チャネル)の観点で変動することができる。例えば、第1の画像は、上面照明及び黒色背景を用いて捕捉することができ、第2の画像は、側面照明及び黒色背景を用いて捕捉することができ、第3の画像は、底面照明及び背景なし(すなわち、白色背景)を用いて捕捉することができる。さらに、特定のアルゴリズムを用いて、使用する空間コントラストを最大限にするために、1組の変動する画像取得条件を生成することができる。これらの又は他のアルゴリズムは、所与のシーケンスに従って及び/又は或る期間にわたって画像取得条件を変動させることによって、時間コントラストを最大限にするのにも有用とすることができる。いくつかのそのようなアルゴリズムは、国際公開第2015/114121号に記載されている。
【0047】
図4は、コントラストに少なくとも部分的に基づいて、撮像プレートを解析するための例示的なルーチンを示すフローチャートである。図4のルーチンは、図2のルーチン200の例示的なサブルーチンとみなすことができ、図2の206及び208が、少なくとも部分的に図4のルーチンを用いて実行されるようになっている。
【0048】
402において、第1のデジタル画像は、時点tにおいて捕捉される。時点tは、培養プロセスが開始してすぐの時点とすることができ、撮像プレート内の細菌はまだ視認可能なコロニーを形成し始めていない。
【0049】
404において、座標が第1のデジタル画像の1つ以上のピクセルに割り当てられる。いくつかの場合、座標は、撮像プレートの中心点から延在する径座標と、中心点の周りの角座標とを有する極座標とすることができる。座標は、後のステップにおいて、第1のデジタル画像を、異なる角度から及び/又は異なる時点に取得されたプレートの他のデジタル画像と位置合わせするのに役立つように用いることができる。いくつかの場合、撮像プレートは、特定のランドマーク(例えば、中心を外れたドット又はライン)を有することができ、第1の画像内のランドマークを覆うピクセル(複数の場合もある)の座標を、他の画像内の同じランドマークを覆うピクセル(複数の場合もある)に割り当てることができるようになっている。他の場合、画像自体を、未来の位置合わせのための特徴とみなすことができる。
【0050】
406において、第2のデジタル画像は、時点tにおいて捕捉される。時点tは、撮像プレート内の細菌が視認可能なコロニーを形成する機会を有した、t後の時点である。
【0051】
408において、第2のデジタル画像は、以前に割り当てられた座標に基づいて、第1のデジタル画像と位置合わせされる。画像を位置合わせすることは、例えば、国際公開第2015/114121号に記載の方法及びシステムを用いた画像の正規化及び標準化を更に含むことができる。
【0052】
410において、第2のデジタル画像のコントラスト情報が求められる。コントラスト情報は、ピクセル単位で収集することができる。例えば、第2のデジタル画像のピクセルを、第1のデジタル画像の(同じ座標における)対応するピクセルと比較して、時間コントラストの存在を判断することができる。さらに、第2のデジタル画像の隣接するピクセルを、互いに比較するか、又は背景ピクセルに既知の他のピクセルと比較して、空間コントラストの存在を判断することができる。ピクセルの色及び/又は明るさにおける変化はコントラストを示し、1つの画像から次の画像、又は1つのピクセル(又はピクセルの領域)から次のピクセル(又はピクセルの領域)へのそのような変化の大きさを、測定、計算、推定又は他の形で求めることができる。時間コントラスト及び空間コントラストの双方が所与の画像について求められる場合、画像の所与のピクセルの全体コントラストを、その所与のピクセルの空間コントラスト及び時間コントラストの組み合わせ(例えば、平均、加重平均)に基づいて求めることができる。
【0053】
412において、第2のデジタル画像内の物体は、410において計算されるコントラスト情報に基づいて識別される。類似のコントラスト情報を有する第2のデジタル画像の隣接するピクセルは、同じ物体に属するとみなすことができる。例えば、隣接するピクセルとそれらの背景との間、又はピクセルと第1のデジタル画像におけるそれらの明るさとの間の差が概ね同じである(例えば、所定の閾値量内にある)場合、ピクセルは、同じ物体に属するとみなすことができる。例として、システムは、大きなコントラスト(例えば、閾値量を超える)を有する任意のピクセルに「1」を割り当てることができ、次に、全て「1」を割り当てられた隣接するピクセルのグループを、物体として識別することができる。物体には、同じラベルを有するピクセルが一定の特性を共有するように、特定のラベル又はマスクを与えることができる。このラベルは、サブルーチン400の後のプロセスの間に、他の物体及び/又は背景から物体を区別するのに役立つことができる。デジタル画像における物体を識別することは、デジタル画像を複数の領域(例えば、前景及び背景)に分割又は区分することを含むことができる。分割の目標は、コンポーネントを解析することが容易になるように、画像を複数のコンポーネントの表現に変更することである。画像分割は、画像内の対象物体を位置特定することに用いられる。
【0054】
414において、(412によって識別される)所与の物体の特徴を特徴付けることができる。物体の特徴の特徴付けは、物体の記述的統計(例えば、エリア、反射率、サイズ、光学密度、色、プレートロケーション等)を導出することを含むことができる。記述的統計は、(例えば、SHQI画像から、コントラスト画像から)物体に関して収集された情報の集合の或る特定の特徴を最終的に量的に記述することができる。そのような情報は、種、濃度、混合物、時間及び培地の関数として評価することができる。一方、少なくともいくつかの場合、物体を特徴付けることは、物体の特徴に関する質的情報の集合から始まることができ、ここで、質的情報は、その後、量的に表される。以下の表1は、質的に評価することができ、その後、量的表現に変換することができる例示的な特徴のリストを与える。
【0055】
【表1】
【0056】
形状、又は視覚的に観察されるまでの時間等の物体のいくつかの特徴は、全体として物体について一回測定することができる。他の特徴は、数回(例えば、ピクセルごと、共通y座標を有するピクセルの行ごと、共通x座標を有するピクセルの列ごと、共通の角座標を有するピクセルの射線(ray)ごと、共通径座標を有するピクセルの円について)測定することができ、次に、例えばヒストグラムを用いて、単一の測定値に組み合わせることができる。例えば、ピクセルごとの色、増殖速度、又はピクセルの行、列、射線若しくは円ごとのサイズ等を測定することができる。
【0057】
416において、特徴付けられた特徴に基づいて物体がコロニーの候補であるか否かが判断される。コロニー候補判断は、量的特徴(例えば、上記の表1に示すスコア)、又はそのサブセットを分類器に入力することを含むことができる。分類器は、物体を評価するために、教師あり機械学習アルゴリズムを実施するための混同行列、又は教師なし機械学習アルゴリズムを実施するためのマッチング行列を含むことができる。教師あり学習は、物体が、可能性のある有機体の制限された組(例えば、2つ又は3つ)と区別される場合に好ましい場合がある(この場合、アルゴリズムは、トレーニングデータの比較的限られた組に対しトレーニングすることができる)。対照的に、教師なし学習は、物体が、可能性のある有機体のデータベース全体から区別される場合に好ましい場合がある。この場合、包括的な、又は更には十分なトレーニングデータを提供することが困難である。混同行列又はマッチング行列の場合、差別化は、範囲において数値的に測定することができる。例えば、所与の物体の対について、「0」は2つの物体が互いに区別されるべきであることを意味し得るのに対し、「1」は、物体を互いに差別化することが困難であることを意味し得る。
【0058】
コロニー候補は、更なる使用(例えば、試験、以下で説明する分割ルーチン等)のために、自動化システムのメモリに記憶することができる。
【0059】
複数の培地の使用
上記の例において、単一の培地について培養物の評価が説明されている。一方、これらの例は、培養物が複数の培地において評価される場合に同様に適用可能である。
【0060】
細菌の特性(例えば、色、増殖率等)は、用いられる培養培地(「培地」)のタイプに依拠して変動する場合があるので、分類中に、培地ごとに異なる混同行列を適用することができる(例えば、サブルーチン400の416)。このため、1つの培地のための分類器が2つの物体について「0」を出力するのに対し、異なる培地のための分類器が同じ2つの物体について「1」を出力することは、完全に理にかなっている。次に、分類器の集合結果を共に(マニュアルで、又は更なるマシン駆動の関係に基づいて)評価して、物体のための全体的な又は最終的な差別化又は区別に到達することができる。
【0061】
複数の培地の評価は、単一の容器を用いて実施することができる。単一の容器は、複数の培地を同時に撮像することができるように、複数の培地(例えば、二重プレート、三重プレート、四重プレート等)を保持するように構成することができる。代替的に、いくつかの容器において培養物試料をストリークすることによって複数の培地を評価することができる。各容器は1つ以上の培地を保持する。複数の容器の各々は、次に、上記で説明した撮像ルーチンにかけることができる。様々な培地において発見された増殖の、より十分な情報による識別を行うために、培地(例えば、特徴付けられた特徴)の各々から導出された情報を、分類器に集合的に入力することができる。
【0062】
コントラスト情報
図5は、図4の410の一部として空間コントラストを得るための例示的なサブルーチン500を示す流れ図である。サブルーチン500は、入力として、1つ以上の背景条件及び照明法条件551の組並びにフィルター554を受信する。502において、入力組551から、指定された照明法条件及び背景条件の下でデジタル画像が得られる。504において、次に画像が複製される。506において、複製された画像のうちの1つが、フィルター554を用いてフィルタリングされる。図5の例において、ローパスカーネルがフィルターとして用いられるが、当業者は、用いることができる他のフィルターを認識する。508において、フィルタリングされていない画像から減算されたフィルタリングされた画像と、フィルタリングされていない画像に加えられたフィルタリングされた画像との比が計算される。510において、空間コントラスト画像が、508の計算された比に基づいて得られる。このルーチン500は、背景条件及び照明法条件551の各々について繰り返すことができる。ルーチン500の各反復の結果として、別の空間コントラスト画像が得られ、これを用いて、510において以前に記憶された空間コントラスト画像を反復的に更新することができる。このため、包括的なコントラスト画像(照明条件の各々からのコントラストを含む)を反復的に構築することができる。1つの実施形態では、各反復において、(反復的に構築されたコントラスト画像と比較して)コントラスト設定が依然としてゼロに設定されているクリアされたコントラスト画像を、各照明設定のための入力として提供することができる。512において、最後の画像が処理されたと判断される場合、ルーチン500が終了する。
【0063】
図6は、同様に図4の410の一部として時間コントラストを得るための例示的なサブルーチン600を示す流れ図である。サブルーチン600は、入力として、1つ以上の背景及び照明法条件の組651と、フィルター655とを受信する。602において、特定の照明法条件及び背景条件下で取得された第1のデジタル画像及び第2のデジタル画像の各々が得られる。604において、t画像がフィルタリングされる。図6の例において、ローパスカーネルがフィルターとして用いられるが、当業者であれば、用いることができる他のフィルターを認識している。606において、フィルタリングされていないt画像からフィルタリングされたt画像を減算したものと、フィルタリングされていないt画像にフィルタリングされたt画像を加算したものとの比が計算される。608において、606の計算された比に基づいて時間コントラスト画像が得られる。このルーチン600は、異なる照明条件及び/又は異なる背景条件の下で繰り返すことができる。ルーチン600の各繰り返しの結果として、別の時間コントラスト画像が得られ、これを用いて、608において以前に記憶された時間コントラスト画像を反復的に更新することができる。空間コントラスト画像の構築に関して、時間コントラスト画像を反復的に構築することができ、クリアされたコントラスト画像が各照明条件の入力として与えられる。610において、最後の画像が処理されたと判断される場合、ルーチン600が終了する。
【0064】
コントラストに関する包括的又は全体的な判断を行うために、空間及び時間コントラスト結果を更に組み合わせることができる。空間コントラスト及び時間コントラストの組み合わせは、本明細書において、「混合コントラスト」(MC)と呼ばれる。1つの実施形態では、混合コントラストは、以下の式に従って、時点tにおける空間コントラスト(SC)画像、時点tにおける空間コントラスト画像、並びにt画像及びt画像の比較から導出される時間コントラスト(TC)画像から導出することができる。
【数3】
【0065】
フィルタリング
画像解析を向上させるために、図4のサブルーチン400に追加のプロセスを含めることができる。例えば、第1のデジタル画像を、時点tにおける画像内に現れる物体のために解析することができる。tにおいて、細菌がまだ大幅に増殖し始めていないことがわかっているため、時点tにおいて発見された任意の物体が、単に、コロニー候補を構成しない塵、気泡、アーチファクト、結露等であると仮定することができる。
【0066】
1つのフィルタリングプロセスを捕捉画像に対し用いて、撮像プレート又はレンズ上に載る塵及び他のアーチファクトを減算することができる。トランスペアレントな培地を検討するとき(例えば、MacConkeyの寒天培養基、CLED寒天培養基、CHROM寒天培養基等)を検討するとき、捕捉画像において或るレベルの塵が存在することが予期される。所与の画像における塵の影響は、画像が取得される特定の照明法条件及び背景条件に少なくとも部分的に基づいて指示することができる。例えば、白色の培地を用いるとき、反射性アーチファクト及び塵は、培地が底面に黒色の背景を用いて上方から照明されるときに最も観測可能である。別の更なる例として、色付きの又は暗い培地を用いるとき、アーチファクト及び塵は、培地が底面に白色の背景を用いて上方から照明されるとき、最も観測可能となる。更なる例として、ほとんど任意の培地において、光を吸収するアーチファクト及び塵は、背景と無関係に、培地が底面から照明されるときに観測可能となる。いずれの場合も、塵及びアーチファクトの管理は、微生物増殖の検出に大きく影響を与え得る複雑な画像処理の課題である。
【0067】
塵及びアーチファクトは、2つのタイプ、すなわち、(A)位置を変更することが可能なタイプ、及び(B)位置を変更することが可能でないタイプ、に分けることができる。塵及びアーチファクトは、経時的に蓄積することができ、タイプA及びBの双方の数が経時的に変動する場合があることを意味する。それにもかかわらず、観測結果は、タイプAが、タイプBよりも、経時的な量の変化を起こしやすいことを示している。当然ながら、タイプAは、プレートが撮像チャンバーの内外に動かされることに起因した変化も、より起こしやすい。
【0068】
通常、タイプBは、インクドット(プレートの底面にプリントされたブランド、ロット番号及び情報)等、プレート自体に関連するアーチファクト、プラスチック射出成形ポイントに関連する欠陥、又は霜が付いた領域によって生じる。タイプBは、培地の上に詰まるか、培地内にトラップされるか、又はプレートの下側に静電的に詰まった塵又は気泡によっても生じる可能性がある。
【0069】
撮像の観点から、タイプAの塵及びアーチファクトであっても、それら自体はほとんど位置が変化しない。一方、フィルター及びレンズとして動作するプレート及び培地のプラスチックに起因して、タイプAアーチファクトの観測される特徴及び位置は、培地の色、培地レベル、及びプラスチックに依拠して僅かに変化する場合がある。タイプBの塵及びアーチファクトも位置が変化しない。一方、タイプBの塵及びアーチファクトが培地に連結し、培地が経時的に僅かな動き及びシフトを受けている限り(ほとんどが、インキュベーターにおける経時的な僅かな乾燥に起因する)、タイプBの塵及びアーチファクトは、培地に対して動く可能性がある。したがって、タイプBの塵及びアーチファクトの位置も、少なくとも幾分、微細な変化を起こしやすい。
【0070】
コントラストの観点で、タイプAの塵の小片は、位置「p」においてt空間コントラスト画像内に、及び位置「p」においてt空間コントラスト画像内に存在すると述べることができる。p及びpが異なるロケーションであると仮定すると、塵又はアーチファクトは、双方のロケーションにおける時間コントラスト画像にも存在する(例えば、pロケーションにおいて正のコントラストを示し、pロケーションにおいて負のコントラストを示す)。比較により、タイプBの塵の小片は、時点t及びtにおいて双方の空間コントラスト画像の共通ロケーションに存在しているが、時間コントラスト画像にはない。
【0071】
上記で説明したように、混合コントラスト結果を導出するために、空間コントラスト画像及び時間コントラスト画像を組み合わせることができる。タイプA及びタイプBの双方の塵及びアーチファクトの影響は、混合コントラスト結果から更に除去することができる。1つの実施形態において、物体(例えば、CFU候補)が混合コントラスト結果において識別される場合、この物体を、時点tにおける空間コントラスト結果における物体の近傍N(x,y)により検出された塵及びアーチファクトと比較することができる。このため、時点tにおける空間コントラスト結果において同様の物体が見つかる場合、混合コントラスト結果において識別された物体は、Aタイプ又はBタイプの偽陽性としてフラグを付けられる。物体が、最初にAタイプ又はBタイプの偽陽性としてフラグを付けられない場合であっても、経時的に、物体がサイズを大幅に変更していないことがわかる場合、依然として、後に、物体がBタイプの偽陽性であると判断することができる。偽陽性を記憶し、後に、以下で更に説明されるフィルタリングマスク(例えば、バイナリマスク)等を通じて、後続の画像に適用することができる。
【0072】
別のフィルタリングプロセスを用いて、(例えば、培養セッションの開始時に冷蔵庫からインキュベーターに移送する間に)プレート上に形成された結露を減算することができる。1つの例示的な結露フィルターにおいて、プレートは底面照明法を用いて照らされ、それによって、結露のロケーションを通り抜ける光は、結露のないロケーションよりも少ない。次に、画像の光学密度を評価することができ、低い光学密度のエリアを画像から減算することができる。
【0073】
さらに又は代替的に、物体を、t画像及び/又は後続のデジタル画像の任意の解析の考慮から外すように、画像マスクを構築することができる。図7は、t画像の空間コントラストを用いて画像マスクを生成するための例示的なルーチン700を示す流れ図である。ルーチン700の例において、提供される唯一の入力は、時点tにおいて取得されるSHQI画像751である。702において、t画像の空間コントラストが決定される。704において、空間コントラスト情報を用いて、(例えば、明るさの)平均及び標準偏差等の、t画像の対象領域内のピクセルに関する統計的情報を収集する。706において、コントラスト閾値が、適切な数のピクセルがこの閾値を超えることを確実にするように調整される。例えば、所与のパーセンテージよりも多くのピクセルが画像の背景とみなされない場合、閾値を増大させることができる。708において、閾値は、この閾値の下のこれらのピクセルに関する統計情報に基づいて更に調整される。最終的に、710において、バイナリマスクが生成される。バイナリマスクは、有効なピクセルでない様々なアーチファクトと、有効であるとみなされる他のピクセルとの間を差別化する。次に、バイナリマスクを、潜在的なコロニーが存在する後続の時点において用いて、有効でないピクセルを占有する物体を検出し、これらの物体が候補コロニーとならないようにすることができる。
【0074】
上記のフィルタリングプロセスは、塵、結露又は他のアーチファクトを物体として誤って含めることを回避し、414において、特性特徴化が有効なピクセルについてのみ実行されればよいため、そのような特徴化を加速することによって、サブルーチン400を改善することができる。
【0075】
物体及びラベルの定義
図4のサブルーチン400に追加することができる別のプロセスは、412において識別された物体にラベルを割り当てることである。物体に特定のラベルを与えることができ、それによって、同じラベルを有するピクセルは、或る特定の特性を共有する。ラベルは、サブルーチン400の後のプロセスの間に、他の物体及び/又は背景から物体を差別化するのに役立つことができる。図8は、時点tにおいて取得された画像(すなわち、「t画像」)のピクセルをラベル付けするための例示的なルーチン800を示す流れ図である。図8の例において、バイナリマスク851(例えば、ルーチン700の出力)、t画像のための初期化されていない候補マスク852、及び時間コントラスト画像853(例えば、サブルーチン600の出力)が入力として受信される。802において、候補マスク852が初期化される。初期化は、撮像プレート上の対象領域を特定することと、バイナリマスク851を用いて、時点tにおいて取得された画像内の「有効ピクセル」を特定することを含むことができる。有効なピクセルは、候補コロニーとして考慮から外されておらず、ラベル付けのために検討される画像のピクセルである。804において、時間コントラスト画像853が、(例えば、明るさの)平均及び標準偏差等の、t画像の対象領域内の有効なピクセルに関する統計的情報を収集するために用いられる。次に、806において、時間コントラスト画像853及びバイナリマスク851の各々の統計情報(好ましくは、同様の照明法条件及び背景条件下で生成される)が組み合わされ、閾値コントラスト画像が形成される。閾値コントラスト画像によって定義される閾値を用いて、t画像の「コネクスコンポーネント(connex component)」が808においてラベル付けされる。コネクスコンポーネントは、効果的には、隣接するピクセル間の接続(又は隣接するピクセル間のグループ分け)を示すラベルであり、そしてこれは、ピクセルが同じ物体の一部であることを示す。
【0076】
コネクスコンポーネントがt画像について定義されると、各コネクスコンポーネントを(810において)個々に解析して、そのステータスを単一の物体として検証することができる。図8の例において、ラベルに関連付けられたピクセルの統計的計算が812において行われる。計算は、ピクセルの明るさ又は色の平均及び/又は標準偏差を求めるためにヒストグラムを利用することができる。814において、ピクセルが閾値エリアに一致するか否かが判断される。閾値エリアに一致しない場合、動作が830に進み、830においてラベルが更新される。ラベルを更新することは、解析されたコンポーネントを1つのラベルとして保持すること、又はコンポーネントを2つのラベルに分割することを含むことができる。閾値エリアが一致しない場合、コンポーネントは単一のラベルとして保持される。閾値エリアが一致する場合、816において、ヒストグラムが平滑化され、818において、分散してラベル付けされたピクセルのピークが特定される。ピークは、最小エリアを有することによって更に定義することができる。なぜなら、最小エリアよりも小さいピークは無視することができるためである。820において、識別されたピークの数をカウントすることができる。1つのピークのみが存在する場合、動作が830に進み、ラベルが更新され、それによってコンポーネントが1つの物体として保持される。2つ以上のピークが存在する場合、824において、閾値コントラスト画像を用いて、ピーク間のコントラストが大きいか否かが更に評価される。次に、動作が830に進み、複数の識別されたピークに基づいてラベルが更新され、それによって、大きなコントラストの結果として、コンポーネントが2つに分割され、そうでない場合、1つとして保持される。
【0077】
分割
サブルーチン400の一部として含むことができる別のプロセスは、時点tにおけるコンフルエントコロニーを別個の物体に分離するための分割プロセスである。時点tにおいて、コロニーが互いに重なるか又は接触するところまで増殖している場合、領域内の別個のコロニーを評価するために、コンフルエント領域を通るように境界を引くことが必要とされる場合がある。
【0078】
いくつかの例において、2つの隣接するコロニーが異なる特徴(例えば、異なる色、異なるテクスチャ)を有する場合、分割は、単に、コンフルエント領域の特徴解析を含むことができる。一方、空間コントラスト及び時間コントラスト単独では、コロニー間の境界を特定するのに常に十分とは限らない。図9は、そのようなコロニーを(例えば、別個のラベルを有する)別個の物体に分離するための、又は言い換えれば、コロニーを分割するための例示的なルーチン900を示す流れ図である。図9の例示的なルーチン900は、時点tにおいて取得される第1のデジタル画像951と、時点tにおいて取得される第2のデジタル画像と、t画像バイナリマスク953(例えば、ルーチン700によって生成されたマスク)とを入力として用いる。902において、t画像951及びt画像952に基づいて時間コントラスト画像が生成される。904において、時間コントラスト画像は、バイナリマスク953を用いて分割される。906において、ラベルが画像のセグメントに適用される。908において、ラベルごとにピーク又は最大値が特定される。所与のセグメントの最大値は、通常、セグメントの質量の中心点又は中心である。910において、ラベルごとに、(例えば、解析中のラベルの、近傍のラベルの)最大値を用いて、所与のラベルが近傍に対し一意であるか、又は1つ以上の近傍ラベルと組み合わせられるべきであるかに関して更なる判断を行う。ラベルが一意のコンポーネントまで削減されると、ラベルごとの特徴の特徴化(例えば、ルーチン400のステップ414及び416)を、912において実行することができ、候補コロニーの大域リストを914において生成することができる。
【0079】
包含係数(inclusion factor)等の様々な係数を適用して、所与のラベルの局所最大値が、1つのコロニーに属するか又は異なるコロニーに属するかを判断することができる。包含係数は、近傍ピクセルが隣接する物体に関連付けられているか否かを示す係数である。そのような係数を分割戦略において用いて、所与のラベルにおける2つの局所最大値を2つの別個の物体に分けるか、又はそれらを単一の物体に統合するかを判断することができる。
【0080】
図10は、そのような例示的な分割戦略を示す流れ図である。ルーチン1000は、図9におけるステップ910のサブルーチンとして用いることができる。図10に示すように、2つの局所最大値1051及び1052が特定される。1002において、周囲領域がこの最大値ごとに特定される。図10の例において、領域「A」は最大値1051を取り囲み、領域「B」は最大値1052を取り囲む。以下の例示的な式の目的で、領域Aのサイズが領域B以上であることが仮定される。いくつかの例において、各領域は、領域の水平軸に沿った水平距離(xA,xB)と、領域の垂直軸に沿った垂直距離(yA,yB)とを有する長円形状を与えることができる。図11は、図10のルーチンを明確にするために、領域A及びB並びにそれぞれの最大値の例示的な図を提供する。
【0081】
1004において、最大値から物体のエッジへの距離が各局所最大値1051及び1052について求められる。いくつかの例では、求められる距離は、1002において割り当てられる領域の平均距離又は中央値距離であり、以後、距離マップと呼ばれる。領域Aの距離マップは、以後rAと呼ばれ、領域Bの距離マップは、rBと呼ばれる。
【0082】
1006において、包含係数は、2つの局所最大値間の距離「d」と、1004において求められた距離とに基づいて計算される。1つの実施形態において、包含係数は、以下の式を用いて計算される。
【数4】
【0083】
1008において、包含係数が、所定の範囲(例えば、0.5~1)未満であるか、所定の範囲よりも大きいか、又は所定の範囲内にあるかが判断される。包含係数が所定の範囲未満である場合、最大値は、同じ物体に関連付けられていると判断される。所定の範囲よりも大きい場合、最大値は、別個の物体に関連付けられていると判断される。
【0084】
包含係数が範囲内に入る場合、最大値が同じ物体に属するか又は異なる物体に属するかは、すぐに明らかとならず、更なる処理が必要とされる。次に、ルーチン1000は1010に続き、1010において、2つの最大値のそれぞれの周囲の領域の凸性が、2つの最大値間の位置における第3の領域「C」の座標を用いて計算される。いくつかの例において、領域は、2つの領域の重み付けされた中心とすることができ、領域Cの中心点は、より大きな領域Aよりも、より小さな領域Bに近くなるようになっている。水平距離xC及び垂直距離yC、並びに距離マップHも、領域Cについて計算することができる。例えば、凸性は、上記の値及びd(A,C)を用いて計算することができ、これは、以下の式に従う、領域Cの中心点と最大値Aとの間の距離である。
【数5】
【0085】
1012において、凸性値が所与の閾値よりも大きいか(より凸であるか)否かが判断される。例えば、ΔΗを0の閾値と比較することができる。凸値が閾値よりも大きい場合、最大値は、別個の物体に関連付けられていると判断される。そうでない場合、1014において、領域Cの1つ以上のパラメーターが、領域Cのサイズが増大するように更新される。例えば、distOffsetは、ΔHに基づいて更新することができ、例えば、ΔHは、0と1との間の値で上限を設けられ(ΔHが1よりも大きい場合、ΔHは1に丸められる)、次に、distOffsetに加えられる。
【0086】
1016において、領域Cのサイズが、閾値以上であるか否かが判断される。この閾値以上である場合、最大値は、同じ物体に関連付けられていると判断される。換言すれば、領域Aと領域Bとの差が非常に不明確であるため、領域Cが領域A及びBに影を落とし始めるほど増大する場合、これは、最大値1051及び1052が同じ物体に属することを良好に示す。上記の例において、これは、最大値間の距離d以上のdistOffsetによって示すことができる。そうでない場合、動作は1010に戻り、領域A及びBの凸性が、領域Cの更新パラメーター(複数の場合もある)に基づいて再計算される。
【0087】
全ての最大値について関連付けが求められると、求められた関連付けを、例えば行列(関連付け行列とも呼ばれる)に記憶することができる。記憶された情報を用いて、最大値のリスト全体を、候補物体の最終リストに変換することができる。例えば、関連付け行列の場合、マスターリストは、最大値の完全なリストから作成することができ、次に、各最大値を、反復して見直し、関連付けられた最大値が依然としてリスト上に残っている場合、この最大値をマスターリストから除去することができる。
【0088】
図9及び図10の例において、第2の画像が取得される時点t(このため、ルーチン900を実行することができる最も早い時点)は、培養プロセスが始まって僅か数時間後とすることができる。そのような時点は、通常、完全に形成されたコロニーを同定するには早すぎるとみなされるが、分割画像を作成するには十分である場合がある。分割画像は、任意選択で、後続の時点において取得される未来の画像に適用されてもよい。例えば、コロニーの予想される増殖を予測するために、コロニー間の境界を引くことができる。次に、コロニー間がコンフルエントになった場合、境界を利用して、コンフルエントコロニーを分離することができる。
【0089】
時点t後の2つ以上の画像による解析
上記で説明したプロセス及びルーチンは、時点tの後に取得された1つの画像(例えば、時点tにおける第1のデジタル画像及び時点tにおける第2のデジタル画像)のみを必要とするが、他のプロセスは、少なくとも、時点tの後に取得された第2の画像を必要とする。例えば、時点tにおける画像がコンフルエントコロニーを含むことが発見される場合、時点t(ここで、0<n<x)において取得された別の画像を用いて、個々のコロニーを同定し、分解することができる。
【0090】
例えば、t=培養が始まって0時間後(この時点において増殖は生じていない)、及びt=培養が始まって24時間後(この時点において、多くの増殖が生じたため、コロニーはコンフルエントになっている)の場合、時点t=12時間(この時点において、コロニーは増殖を開始しているが、まだコンフルエントではない)は、個々のコロニーの存在を明らかにする。次に、時点tにおける画像に基づいてコロニー増殖を予想し、時点tにおけるコンフルエントコロニー間の境界を推定することができる。これに関して、時点tにおける画像は、高速に増殖しているコロニーを、低速に増殖しているコロニーと区別するのに役立つことができる。当業者であれば、時点tと時点tとの間で取得された画像数が増大するにつれ、コロニーの増殖速度をより正確に予想することができることを認識するべきである。
【0091】
上記の概念の1つの用途において、時点tにおいて取得された画像(又は、より包括的には、時点tとtとの間で取得された画像)を用いて、経時的に増殖するコロニーであることが疑われる物体であるコロニーシードを識別し、これらのシードを、対応するマスク及びラベルと関連付けることができる。各シードは、一意のラベルを受信し、ラベルは、異なる特徴(例えば、SHQI画像から生成された画像に基づく位置、形態及びヒストグラム、赤色チャネル、緑色チャネル、青色チャネル、ルミナンス、クロミナンス、色相又は合成画像)、及び特性(例えば、分離状態/非分離状態、時系列の繁殖を予想するための他の情報)と共に記憶される。いくつかの記憶された特徴(例えば、ヒストグラム)は、プレートグローバルインジケーターを抽出するために、特定のシードに寄与するのではなく、プレートレベルにおいて計算することもできる。次に、シードにより記憶された特徴を用いて、時点tにおけるコロニー抽出を行うことができ、これらの特徴はまた、トレーニング及び/又は試験のための分類器に入力として提供される。
【0092】
の後に取得された複数の画像を用いた増殖レート追跡を用いて、ワークフロールーチンの最中にプレート上又は撮像レンズ内に現れる塵、アーチファクト又は他の異物を検出することもできる。例えば、塵の小片が、tの後であるがtの前に撮像レンズ上に落ちる場合、この小片によって生成されるスポットは、時点tにおいて可視でなかったため、最初は増殖中のコロニーであると解釈される可能性がある。一方、後続の撮像により、スポットに対するサイズ変化がないことが明らかになると、スポットが増殖しておらず、したがってコロニーでないと判断することができる。
【0093】
増殖速度及び分割の追跡とは別に、コロニーの他の態様は、tとtとの間の追加の画像の助けにより追跡することができる。コロニー内で経時的に低速に進展する僅かな形態変化の場合、これらの僅かな変化は、より多くの画像を捕捉することによって、より迅速に特定することができる。いくつかの場合、増殖は、通常のx軸及びy軸に加えて、又はその代わりに、z軸に沿って測定することができる。例えば、肺炎連鎖球菌は、血液寒天培地内で増殖するとき、沈んだ中心を低速に形成することが知られているが、沈んだ中心は、通常、解析2日目まで可視でない。細菌増殖の時間進行を調べることにより、初期の沈んだ中心を検出することができ、中心が完全に沈むのを待たなければならない場合よりも、細菌をはるかに早期に同定することができる。
【0094】
他の場合、コロニーは、経時的に色を変えることが知られている場合がある。したがって、コロニーの撮像は、tより後の時点において第1の色(例えば、赤色)を有し、次に、後続の時点において第2の色(例えば、緑色)を有し、これを用いて、コロニー内で増殖するバクテリアの正体を特定することができる。色変化は、色空間(例えば、RGB、CMYK等)を通るベクトル又は経路として測定することができる。コロニーの他の色彩特徴に対する変化も同様に測定することができる。
【0095】
物体特徴
図4に関連して上記で論じたように、撮像プレート上の物体の特徴は、撮像プレート上で行われる画像解析の一部として特徴付けることができる。特徴付けられた特徴は、静的特徴(単一の画像に関する)及び動的画像(複数の画像に関する)の双方を含むことができる。
【0096】
静的特徴は、所与の時点における物体属性及び/又は周囲の背景を反映することを目的とする。静的特徴は以下を含む。
(i)重心:これは、座標空間(例えば、x-y、極)における撮像された物体の重心を与える静的特徴である。物体の重心は、物体の極座標のように、所与の照明法条件及び背景条件下で特徴組の不変性を与える。重心は、まず、画像内の全てのコロニーのための重み付けされた質量中心を求めることによって取得することができる(Mは、全ての検出されたコロニーのためのバイナリマスクである)。重み付けされた質量中心は、画像の各ピクセルが等しい値であるという仮定に基づいて求めることができる。次に、所与のコロニーのための重心を、以下の式によってx-y座標において記述することができる(ここで、E={p|p∈M}であり(Eは現在のコロニーのバイナリマスクである)、x座標の範囲は、[0,画像幅]であり、y座標の範囲は、[0,画像高さ]であり、各ピクセルは1単位である)。
【数6】
(ii)極座標:これも静的特徴であり、重心等の撮像プレート上のロケーションを更に特徴付けるために用いることができる。通常、極座標は、径方向軸(d)及び角度軸(Θ)に沿って測定され、プレート中心の座標は[0,0]である。igv(x,y)の座標d及びΘは、(dについて、ミリメートル単位で、Θについて、度単位で)以下の式によって与えられる(ここで、kは、ピクセルをミリメートルに対応させるピクセル密度であり、「バーコード」は、プレートと以前の及び/又は未来の画像との位置合わせを確実にするための、撮像プレートのランドマーク特徴である)。
【数7】
(iii)画像ベクトル:次に、二次元極座標は、1次元画像ベクトルに変換することができる。画像ベクトルは、径方向軸の関数として(通常、コロニーの中心が最も高い輝度を有する)、及び/又は角度軸の関数として画像のピクセルの輝度を特徴付けることができる。多くの場合に、画像ベクトルは、撮像された物体間の類似性/差異をより正確に分類することができる。
(iv)所与の物体の形状及びサイズを記述する形態学的特徴
(a)エリア:これは形態学的特徴であり、撮像された物体(「ブロブ」とも呼ばれる)におけるピクセルの数に基づいて求めることができる。ただし、物体の孔はカウントしない。ピクセル密度が利用可能であるとき、エリアは、物理的サイズ(例えば、mm)において測定することができる。そうではなく、ピクセル密度が利用可能でないとき、ピクセルの総数はサイズを示すことができ、ピクセル密度(k)は1に等しくなるようにセットされる。1つの実施形態において、エリアは、以下の式を用いて計算される。
【数8】
(b)外周:物体の外周も形態学的特徴であり、物体のエッジを測定し、エッジの総長を合算することによって求めることができる(例えば、1平方ユニットのエリアを有する単一のピクセルは、4ユニットの外周を有する)。このエリアに関して、長さは、ピクセルユニット(例えば、kが利用可能でないとき)又は物理的長さ(例えば、kが利用可能であるとき)の観点で測定することができる。いくつかの状況において、外周は、物体における任意の孔の外周も含むことができる。さらに、内側の角を2ではなく
【数9】
としてカウントすることによって、ラダー効果(ladder effect)(斜めのエッジがラダー状のボックスにデジタル化されるときに結果として生じる)を補償することができる。1つの実施形態では、外周は、以下の式を用いることによって求めることができる。
【数10】
(c)循環性:物体の循環性も形態学的特徴であり、エリア及び外周の組み合わせに基づいて求めることができる。1つの実施形態では、循環性は、以下の式を用いて計算される。
【数11】
(d)半径変動係数(RCV:radius coefficient of variation):これも形態学的特徴であり、N個全ての方向における物体の平均半径
【数12】
又は重心から延在する角度θと、半径σの標準偏差との比をとることによって、物体の半径の変動を示すのに用いられる。1つの実施形態では、この値は、以下の式を用いて計算することができる。
【数13】
(v)他の検出された物体及びプレート壁エッジに対する精密な調査の下での物体の近傍の地形学的関係を記述する、コンテクスト特徴。例えば、撮像されたコロニーの場合、コロニーの1つのコンテクスト特徴は、コロニーが自由であるか、制限された自由空間を有するか、又はリソースへのアクセスを求めて他の周囲のコロニーと競合しているかであり得る。そのような特徴は、同じ知覚環境で増殖するコロニーを分類し、及び/又は異なる環境内で増殖するコロニーを区別するのに役立つ傾向にある。
(a)影響領域:これは、物体と、その近傍物体との間の空間を検討するコンテクスト特徴であり、解析下の物体が拡張して(他の異なる物体が拡張して、その同じ領域を最初に占有することなく)占有する場合がある領域を予測する。影響の領域は、図12に示す図等のボロノイ図の形態で表すことができる。これは、コロニー1201と、その近傍のコロニー、例えば1205との間の距離dに基づく影響領域(影付き)を示す。1つの実施形態において、物体のエッジから影響領域のエッジへの距離(DNC)は、以下の式を用いて特徴付けることができる。
【数14】
(b)プレート壁への距離:これは、最近傍のプレート壁からの物体のエッジの距離(DPW)を計算するコンテクスト特徴である。1つの実施形態において、この距離は、以下の式を用いて特徴付けることができる。
【数15】
(c)分離係数:これは、物体のサイズ、及び(例えば、別の物体、プレート壁の)最近傍のエッジへの距離に基づいて、所与の物体の相対的分離を特徴付けるコンテクスト特徴である。図13A図13Cは、分離係数の態様を示す。図13Aは、最近傍のエッジがプレート壁に対しコロニーから距離dにある例を示す。図13B及び図13Cは、最近傍のエッジが別のコロニーに属する例を示す。そのような場合、解析下のコロニーを中心として周りに円が描かれ、次に、円が近傍のコロニーに接触するまで拡張される(図13Bにおけるように、最初は小さく、その後、図13Cにおけるように大きくなる)。図13A図13Cの実施形態において、分離係数(IF)は、以下の式を用いて特徴付けることができる。
【数16】
(d)近傍占有比:これは、所与の物体についての所与の距離d内のプレートの境界を画されたボロノイ影響領域(V)のエリア断片を特徴付けるコンテクスト特徴である。1つの実施形態では、近傍占有比(OR)は、以下の式を用いて特徴付けることができる(この式の場合、E={p|p∈V,dist(p,igv(x,y))<d}である)。
【数17】
(e)相対近傍占有比:いくつかの例では、所与の距離dは、所定の係数
【数18】
を乗算された物体の平均半径を用いて導出することができる。結果は、相対近傍占有比(RNOR)であり、以下の式を用いて所与の係数xについて導出することができる。
【数19】
(vi)所与の物体の光特性を記述するスペクトル特徴。色(赤色光、緑色光及び青色光チャネル、色相、ルミナンス及びクロミナンス、又は任意の他の色空間変換)、テクスチャ及びコントラスト(経時的及び/又は空間にわたる)が、そのような特徴の例である。スペクトル特徴は、コロニーマスクを用いた培養中に様々な時点において及び/又は様々な照明条件下で捕捉された画像から導出することができ、所与のコロニーのためのボロノイ影響領域に更に関連付けることができる。
(a)チャネル画像:これは、特定のカラーチャネル(例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B))を用いて画像をスペクトル分解するのに用いられるスペクトル特徴である。
(b)ルマ:これもまた、RGBチャネルを入力として用いて画像の明るさを特徴付けるのに用いられるスペクトル特徴である。
(c)色相:これは、画像のエリアが、知覚した色(例えば、赤色、黄色、緑色、青色)又はそれらの組み合わせに類似して見えるように特徴付けられているスペクトル特徴である。色相(H)は、通常、以下の式を用いて特徴付けられる。
【数20】
(d)クロマ:これは、エリアが同様に白で照明される場合に、その明るさに対し画像のエリアの彩度を特徴付けるスペクトル特徴である。クロマ(C)は、通常、以下の式を用いて特徴付けられる。
【数21】
(e)放射分散:色相及びクロマコントラストの放射分散を解析することにより、アルファ溶血、ベータ溶血及びガンマ溶血の区別が可能になる。
(f)最大コントラスト:この特徴は、画像の中心点(例えば、撮像されたコロニーの中心)から所与の半径rにおけるピクセルについて、測定された平均コントラストの最大値を計算することによって、画像の分解能を特徴付ける。この特徴を用いて、解析される物体によって生じる増殖に基づいて、時点tに取得された画像と、時点tにおいて取得された画像との間の知覚される差を記述することができる。最大コントラストは、以下のように特徴付けることができる。
【数22】
(vii)解析される物体の近傍における培地の変化を記述する背景特徴。例えば、撮像されたコロニーの場合、変化は、コロニーの周りの微生物増殖(例えば、溶血の兆候、PHの変化、又は特定の酵素反応)によって生じ得る。
【0097】
動的特徴は、物体属性及び/又は周囲の背景の変化を経時的に反映することを目的とする。時系列処理により、静的特徴を経時的に関係付けることが可能になる。これらの特徴の別個の一次導関数及び二次導関数は、経時的に特徴付けられるそのような特徴における変化の瞬間「速度」及び「加速度」(又は横ばい若しくは減速度)を与える。動的特徴の例は以下を含む。
(i)経時的に上記の静的特徴を追跡するための時系列処理。所与の培養時点に測定された各特徴を、その相対的培養時間に従って参照し、特徴が、後の培養時点において測定される特徴に関係付けられることを可能にすることができる。画像の時系列を用いて、上記で説明したように、経時的に現れ、増殖するCFU等の物体を検出することができる。物体の以前に捕捉された画像の進行中の解析に基づいて、自動化されたプロセスによって、撮像のための時点をプリセット又は定義することができる。各時点において、画像は、単一の取得構成の全シリーズのための、又は、複数の取得構成から捕捉された画像のシリーズ全体としての、所与の取得構成とすることができる。
(ii)経時的な上記の特徴(例えば、上記で論じたような増殖速度の追跡)に対する変化の瞬間速度及び加速度(又は横ばい若しくは減速度)を与えるための、そのような特徴の別個の一次導関数及び二次導関数。
(a)速度:経時的な特徴の一次導関数。特徴xの速度(V)は、(x単位)/時間の観点で特徴付けることができ、Δtは、以下の式に基づく、時間単位で表される期間である。
【数23】
(b)加速度:速度の一次導関数でもある、経時的な特徴の二次導関数。加速度(A)は、以下の式に基づいて特徴付けることができる。
【数24】
【0098】
上記の画像特徴は、物体又は物体のコンテクストから測定され、様々な培地及び培地条件において増殖する有機体の特異性を捕捉することを目的とする。列挙された特徴は、包括的であることを意図するものではなく、任意の当業者が、当該技術分野において既知の多岐にわたる既知の画像処理ベースの特徴に従って、この特徴組を変更、拡大又は制限することができる。
【0099】
画像特徴は、画像内のピクセルごと、ピクセルグループごと、物体ごと、又は物体のグループごとに収集することができる。画像の領域を、更には画像全体をより包括的に特徴付けるために、収集された特徴の分布をヒストグラムに構成することができる。ヒストグラム自体は、到来する画像特徴データを解析するか又は他の形で処理するために、いくつかの統計的特徴に頼ることができる。
【0100】
統計的ヒストグラム特徴は、以下を含むことができる。
(i)最小値:ヒストグラム内で捕捉される分布の最も小さな値。これは、以下の関係によって特徴付けることができる。
【数25】
(ii)最大値:ヒストグラム内で捕捉される分布の最も大きな値。これは、以下の関係によって特徴付けることができる。
【数26】
(iii)和:ヒストグラム内で捕捉される全ての個々の値の和。和は、以下の関係によって定義することができる。
【数27】
(iv)平均(mean):算術平均(arithmetic mean)又は平均(average)。これは、以下の関係に従って、全てのスコアの和をスコア数(N)で除算したものである。
【数28】
(v)四分位1(Q1):分布の第一四分位数におけるスコア。スコアの25%がQ1未満であり、75%がQ1を超える。これは、以下の関係によって記述される。
【数29】
(vi)中央値(Q2):分布の第二四分位数におけるスコア。スコアの50%が中央値未満であり、50%が中央値を超える。中央値は、平均よりも極端なスコアに対し敏感でなく、これにより、通常、高度に歪んだ分布の場合に、中央値は平均よりも良好な尺度となる。これは以下の関係によって記述される。
【数30】
(vii)四分位3(Q3):分布の第三四分位数におけるスコア。スコアの75%がQ3未満であり、25%がQ3を超える。これは、以下の関係によって記述される。
【数31】
(viii)最頻値:分布において最も頻繁に生じるスコア。これは代表値(measure of central tendency:中心傾向の尺度)として用いられる。代表値としての最頻値の利点は、その意味が明らかであることである。さらに、最頻値は、公称データと共に用いることができる唯一の代表値である。最頻値は、標本変動の影響を大きく受け、したがって、通常、唯一の代表値としては用いられない。また、多くの分布は、2つ以上の最頻値を有する。これらの分布は、「多峰性」と呼ばれる。最頻値は以下の関係によって記述される。
【数32】
(ix)三項平均(trimean):第一四分位+第二四分位(中央値)の二倍+第三四分位を合算し、4で除算することにより計算されるスコア。三項平均は、極端なスコアに対し、中央値とほぼ同じくらい耐久性があり、歪んだ分布において、算術平均ほどサンプリング変動の影響を受けない。一方、正規分布の場合、三項平均は通常、平均よりも効果的でない。三項平均は、以下の関係に従って記述される。
【数33】
(x)トリム平均:或る特定のパーセンテージの最低スコア及び最高スコアを除外し、次に残りのスコアの平均を算出することによって計算されるスコア。例えば、50%トリムされた平均は、スコアの下位25%及び上位25%を除外し、残りのスコアの平均をとることにより計算される。更なる例として、中央値は、100%トリムされた平均であり、算術平均は、0%トリムされた平均である。トリム平均は、通常、算術平均よりも、極端なスコアの影響を受けにくい。したがって、歪んだ分布の場合、トリム平均は、平均よりもサンプリング変動の影響を受けにくい。正規分布の場合、トリム平均は通常、平均よりも効果的でない。例として、50%トリムされた平均は、以下の関係によって記述される。
【数34】
(xi)範囲:最大値と最小値との間の差。範囲は、広がりの有用な尺度とすることができる。一方、範囲は、2つの値のみに基づくため、極端なスコアに対し敏感である。この敏感さに起因して、範囲は通常、広がりの唯一の尺度として用いられないが、それにもかかわらず、標準偏差又は半四分位範囲等の広がりの他の尺度を補足するものとして用いる場合、有益である。
(xii)半四分位範囲:第三四分位(Q3)と第一四分位(Q1)との間の差異の2分の1として計算される広がりの尺度。分布におけるスコアの半分がQ3とQ1との間にあるため、半四分位範囲は、上記スコアの半分を覆うのに必要な距離の半分である。対称分布において、中央値の1半四分位範囲下から、中央値の1半四分位範囲上まで及ぶ間隔は、スコアの半分を含むことになる。一方これは、歪んだ分布の場合には当てはまらない。範囲と異なり、半四分位範囲は、通常、極端なスコアによる影響を実質的に受けない。一方、半四分位範囲は、標準偏差よりも、正規分布におけるサンプリング変動の影響をより大きく受け、したがって、概ね正規分布しているデータの場合には頻繁に用いられない。半四分位範囲は、以下の関係に従って定義される。
【数35】
(xiii)分散:分布の広がりの尺度。分散は、以下の関係に従って、平均から各数の平均二乗偏差を得ることによって計算される。
【数36】
(xiv)標準偏差:分布の値がどの程度広く平均から散らばっているかを測定する分散の関数。標準偏差は、分散の二乗根である。標準偏差は、通常、範囲よりも、極端なスコアに対し敏感でないが、通常、半四分位範囲よりも敏感である。このため、極端なスコアの可能性が存在するとき、標準偏差を補うために半四分位範囲を用いることができる。
(xv)歪み:平均を中心とした分散の非対称性の尺度。分布は、その尾部のうちの一方が他方よりも長い場合、歪んでいる。正の歪みは、非対称の尾部がより正の値(平均よりも大きい)に向かって延びている分布を示す。負の歪みは、非対称の尾部がより負の値(平均未満)に向かって延びている分布を示す。歪みは、以下の関係に従って計算することができる。
【数37】
(xvi)尖度:正規分布と比較した、分布の鋭さ又は平坦さ(又は相対的ピーク幅)の尺度である。正の尖度は、比較的尖った分布を示す。負の尖度は、比較的平坦な分布を示す。尖度は、分布の尾部のサイズに基づき、以下の関係によって求められる。
【数38】
【0101】
上記の統計的方法は、画像内の各点におけるローカル特徴を計算し、ローカル特徴の分布から統計の組を導出することによって、濃淡値の空間分布を解析するのに有用である。これらの統計的方法を用いて、解析された領域のためのテクスチャを記述し、統計的に定義することができる。
【0102】
テクスチャは、テクスチャ記述子を用いて特徴付けることができる。テクスチャ記述子は、画像の所与の領域にわたって計算することができる(以下で更に詳細に論じられる)。1つの一般的に適用されるテクスチャ方法は、引用することにより本明細書の一部をなす、Haralick, R.他「Texture features for image classification」IEEE Transactions of System, Man and Cybernetics, Vol. 3, pp. 610-621 (1973)によって紹介された共起法(co-occurrence method)である。この方法において、方向θにおける距離dによって分離されたピクセルの濃淡度対の相対周波数が組み合わされ、相対変位ベクトル(d,θ)が形成される。相対変位ベクトルは、計算され、濃淡度共起行列(GLCM)と呼ばれる行列に記憶される。この行列は、二次統計テクスチャ特徴を抽出するのに用いられる。Haralickは、2次元確率密度関数pijを記述するために14個の異なる特徴を提案し、それらの特徴のうちの4つが、他のものよりも一般的に用いられる。
【0103】
テクスチャは、テクスチャ記述子を用いて特徴付けることができる。テクスチャ記述子は、画像の所与の領域にわたって計算することができる(以下で更に詳細に論じられる)。1つの一般的に適用されるテクスチャ方法は、引用することにより本明細書の一部をなす、Haralick, R.他「Texture features for image classification」IEEE Transactions of System, Man and Cybernetics, Vol. 3, pp. 610-621 (1973)によって紹介された共起法である。この方法において、方向θにおける距離dによって分離されたピクセルの濃淡度対の相対周波数が組み合わされ、相対変位ベクトル(d,θ)が形成される。相対変位ベクトルは、計算され、濃淡度共起行列(GLCM)と呼ばれる行列に記憶される。この行列は、二次統計テクスチャ特徴を抽出するのに用いられる。Haralickは、2次元確率密度関数pijを記述するために14個の異なる特徴を提案し、それらの特徴のうちの4つが、他のものよりも一般的に用いられる。
(i)角度方向の第2のモーメント(ASM)は、以下によって計算される。
【数39】
(ii)コントラスト(Con)は、以下によって計算される。
【数40】
(iii)相関(Cor)は、以下によって計算される(ここで、σ及びσは、対応する分布の標準偏差である)。
【数41】
(iv)エントロピー(Ent)は、以下によって計算される。
【数42】
【0104】
これらの4つの特徴は、同様に引用することにより本明細書の一部をなす、Strand, J.他「Local frequency features for the texture classification」Pattern Recognition, Vol. 27, No. 10, pp 1397-1406 (1994) [Strand94]にも挙げられている。
【0105】
所与の画像について、上記の特徴が評価される画像の領域を、マスク(例えば、コロニーマスク)によって、又はマスクを超えて延在するボロノイ影響領域によって定義することができる。
【0106】
図14は、いくつかの可能な領域を示す。領域1410は、コロニー自体と同じだけ遠くに延在するコロニーマスクである。領域1420は、コロニーのボロノイ影響領域である(画像又はプレートのエッジにより境界を画される)。更なる説明のために、ピクセル1430は、領域1420内であるが領域1410外のピクセルである。換言すれば、領域1410によって表されるコロニーは、ピクセル1630に拡張されることが予期されるが、まだ拡張されていない。ピクセル1440は、領域1410及び1420の双方の外側にあるピクセルである。換言すれば、コロニーが画像の時点でピクセル1410を占有しないのみでなく、ピクセル1410が未来のいずれの時点においてもコロニーによって占有されることも予測されない(この場合、このピクセルは異なるコロニーによって既に占有されている)。
【0107】
培養プロセスに沿って異なる時点でコロニーマスクを用い、上述したような、それらに関連付けられたボロノイ影響領域を用いると、コロニーの異なる態様、及び周囲の局所的な増殖中の培地に対するそれらの影響を示す複数のヒストグラムを生成することが可能である。コロニーマスク及びボロノイ影響領域自体は、経時的に、例えばコロニーが成長する際に調整することができる。例えば、図15A図15Cは、コロニーの増殖をどのように用いて、経時的にコロニーのマスクを調整することができるかを示す。図15Aは、寒天培地における24時間の増殖後の血液培養物の一部である。図15Bは、tにおいて以前に捕捉された画像と比較した、同じ培養物のコントラスト画像である。図15Cは、9時間(最も明るい)、12時間(中間)及び24時間(最も暗い)の増殖を示すグレースケール画像である。図15Cにおける各影は、コロニーのための異なるマスクを設計するのに用いることができる。代替的に又は付加的に、増殖が生じるとき、マスクは、それぞれのボロノイ影響領域に従って分離することができる。
【0108】
上記の特徴リストにおける特徴のうちの任意の1つ又は組み合わせを、様々な培養条件下の撮像プレートの様々な培地において増殖する有機物の特異性を捕捉するための特徴組として用いることができる。このリストは、包括的であることを意図しておらず、任意の当業者が、撮像されることが意図される物体、及び当該技術分野において既知の多岐にわたる画像処理ベースの特徴に従って、この特徴組を変更、拡大又は制限することができる。このため、上記の例示的な特徴は、例示として与えられ、限定するものではない。
【0109】
当業者は、物体の形状及び特徴を求めるための他の測定及び手法を認識しており、上記の例は、例示として与えられ、限定するものではない。
【0110】
コントラスト構築
画像シリーズ内のいずれの画像が、増殖の検出、カウント又は同定のための値をもたらすかを初期に予測するのは多くの場合に困難である。これは、一部には、画像コントラストが、異なるコロニー形成ユニット(CFU)について、及び異なる培地にわたって変動することに起因する。いくつかのコロニーの所与の画像において、増殖検出のために、1つのコロニーは、背景に対し、非常に望ましいコントラストを有する場合があるのに対し、別のコロニーは、背景に対し、適切なコントラストを有しない場合がある。これによって、単一の手法を用いて培地におけるコロニーを同定することも困難になる。
【0111】
したがって、空間(空間差)及び時間(共通撮像条件下での時間差)を通じて、そして様々な撮像条件(例えば、赤色チャネル、緑色チャネル及び青色チャネル、明るい背景及び暗い背景、スペクトル画像又は任意の他の色空間変換)を用いることによって入手可能な全てのマテリアルからコントラストを構築することが望ましい。また、複数の入手可能なソースからコントラストを収集して、コロニーを検出するためのアルゴリズムへの入力として、標準化された画像を提供することも望ましい。
【0112】
画像データは、任意の数の要因に基づいて区切ることができる。例えば、画像データは、特定の時点及び/又は要求される特定の情報(例えば、空間画像情報は、時間画像情報が必要とするほど多くの時点を必要としない場合がある)に限定することができる。照明構成及び色空間を選択して、特定のコントラスト目標を達成することもできる。所望のサイズ(又は目標範囲内のサイズ)を有する物体(例えば、コロニー)を検出するために、空間周波数を変動させることもできる。
【0113】
離散した物体を検出するために、コントラストは[0,1]の絶対値に、又は符号付きの[-1,-1]に設定することができる。コントラスト出力のスケール及びオフセットを指定することもできる(例えば、符号付きコントラストを有する8ビット画像の場合、オフセットは127.5とすることができ、スケールは127.5とすることができる)。コントラストが極値に設定される例では、絶対オフセットをゼロに設定し、スケールを256に設定することができる。
【0114】
空間コントラストを用いて、均一な背景における別個の物体を検出することができる。定式を利用して、距離r内のロケーション(x,y)において画像I上の空間コントラスト
【数43】
の自動評価を提供することができる。距離rが
【数44】
以上の距離に制限され、コントラスト演算子Kを用いてコントラスト設定が制御される1つの実施形態において、以下の式が適用される。
【数45】
【0115】
時間コントラストを用いて、(撮像プレート上に現れ、及び/又は拡張するCFU等の)動いている物体又は経時的に変化する物体を検出することができる。定式を利用して、時点t及びt間のロケーション(x,y)における画像I上の時間コントラスト
【数46】
の自動評価を提供することができる。1つの実施形態において、以下の式が適用される。
【数47】
【0116】
空間コントラスト収集は、事前にプログラムされたシーケンスに従ってプレートの複数のSHQI画像を生成することによって、自動化された形式で実施することができる。所与の培養時間において複数の画像を生成してコロニー検出調査を進めることができる。1つの実施形態では、画像データ(特に、コントラスト収集演算子にコントラスト入力を提供するのに用いられるベクトル「vect」)が、以下の式に従って所与の時点において検出されたコロニーからのいくつかの異なる半径(Rmin~Rmax)において、いくつかの構成(CFG~CFG)にわたって収集される。
【数48】
【0117】
所与の画像I(x,y)(例えば、SHQI撮像がソースであるとき)についてSNRが知られている場合、SNR重み付きコントラストが最大にされる構成は、
【数49】

【数50】
にわたって最大であるとき、最良の構成(最良のCFG)として特定することができる。
【0118】
コントラスト演算子Kは、この既知のSNR情報から更に利益を得て、上記の式は以下となる。
【数51】
【0119】
時間コントラスト収集は、事前にプログラムされたシーケンスに従って、プレートの複数のSHQI画像を生成することによって、自動化された形式で実施することもできる。複数の培養時点にわたって複数の画像を生成してコロニー検出調査を進める。複数の培養時点のうちの少なくとも1つはtである。1つの実施形態において、画像データは、以下に従って、時点t、及び時点tまでの1つ以上の後続の培養時点におけるいくつかの構成にわたって収集される[式は、これまで、ベクトル及び構成の双方に「N」を用いていたが、混乱を招くと思われる...以下の改定された式は受け入れ可能であるか、又はTを式に戻す必要があるか?]
【数52】
【0120】
上記の例では、ベクトルは、2つの時点(例えば、t及びt)における画像の差に基づいた、これらの2つの時点間のベクトルとすることができる。一方、tとtとの間の更なる時点が含まれる他の用途では、ベクトルは、画像が取得される時点と同じだけ多くの点にわたってマッピングすることができる。数学的に言えば、ベクトルに含めることができる点の数に制限はない。
【0121】
空間コントラストに関して、所与の画像I(x、y)についてSNRが知られている場合、SNR重み付きコントラストが最大にされる構成は、
【数53】

【数54】
にわたって最大であるとき、最良の構成(最良のCFG)として特定することができる。
【0122】
コントラスト演算子Kは、この既知のSNR情報から更に利益を得て、上記の式は以下となる。
【数55】
【0123】
上記の例において、Max演算子は、パーセンタイル(例えば、Q1、中央値、Q3、又は任意の他のパーセンタイル)、又は加重和等の任意の他の統計演算子と交換することができる。加重値は、トレーニングデータベースから抽出された事前作業から生じ、それによって、ニューラルネットワークに対し、教師ありのコントラスト抽出の分野を開拓することができる。さらに、複数のアルゴリズムを用いることができ、複数のアルゴリズムの結果は、Max演算子等の別の演算子を用いて更に組み合わされる。
【0124】
画像位置合わせ
経時的に複数の画像が取得されるとき、それらの画像から有効な時間推定を得るために、画像の非常に正確な位置合わせが必要となる。そのような位置合わせは、機械位置合わせデバイス及び/又はアルゴリズム(例えば、画像追跡、画像マッチング)によって達成することができる。当業者であれば、この目標を達成するためのこれらの解決策及び技法を認識している。
【0125】
例えば、プレート上の物体の複数の画像が収集される場合、物体のロケーションの座標を決定することができる。後続の時点に収集される物体の画像データは、次に、座標に基づいて以前の画像データと関連付けることができ、次に、これらを用いて、経時的な物体の変化を求めることができる。
【0126】
(例えば、分類器への入力として用いられるときの)画像の高速で有益な使用のために、画像の不変性を最大限にするように、これらの画像を空間的基準において記憶することが重要である。コロニーのための基本形状記述子は通常円形であるので、極座標系を用いてコロニー画像を記憶することができる。コロニー質量中心は、コロニーが最初に検出されるとき、コロニーのロケーションの中心として特定することができる。中心点は、後に、コロニーの各後続の画像の極変換のための原点中心(origin center)としての役割を果たすことができる。図16Aは、中心点「O」を有する撮像プレートのズームされた部分を示す。点「O」から延びる2つの射線「A」及び「B」が(明確にするために)画像の上に重ね合わされて示される。各射線はそれぞれのコロニー(円で囲まれている)と交差する。図16Aの円で囲まれたコロニーが、図16Bの画像1611及び1612において更に詳細に示される。図16Bにおいて、画像1611(射線「A」に交差するコロニー)は、画像1613の径方向の軸が画像1612の径方向の軸と位置合わせされるように、向きを変えられて画像1613(「A’」)にされ、それによって、向きを変えられた画像の最も左の部分が、図16Aの点「O」に最も近くなり、向きを変えられた画像の最も右の部分が、点「O」から最も遠くなる。この極の向き変更により、(照明等の要素に関して)撮像プレートの異なる方向に向けられたコロニーのより容易な解析が可能になる。
【0127】
図16Cにおいて、極変換は、図16Bの画像1611、1612及び1613の各々について完成する。極変換画像1621、1622及び1623において、それぞれの向きを変更された画像1611、1612及び1613の径方向軸(各それぞれの撮像されたコロニーの中心から延在する)が、図16Cの画像における左から右にプロットされ、(それぞれのコロニーの)角度軸が上から下にプロットされる。
【0128】
極画像ごとに、径方向軸及び/又は角度軸に沿って、例えば、形状特徴及び/又はヒストグラム特徴(例えば、物体の色又は輝度の平均及び/又は標準偏差)を用いて、要約した1次元ベクトルの組を生成することができる。回転を検討するときに、形状及びヒストグラム特徴がほとんど不変である場合であっても、いくつかのテクスチャ特徴が、回転時に大きな変動を示す可能性があり、このため、不変性は保証されない。したがって、照明ごとに同じ観点又は角度からコロニー画像の各々を提示することに大きな利点がある。なぜなら、次に、物体のテクスチャの差を用いて互いを区別することができるためである。照明条件は、ほとんどの場合、プレート撮像中心の周りの角度位置にリンクされた変動を示すので、コロニー及びプレート中心を通る射線(図16Bの画像1611、1612及び1613の各々において線として示される)は、各画像極変換のための原点(Θ)としての役割を果たすことができる。
【0129】
更なる位置合わせの課題は、プレート培地が完全に凍って固い状態でなく、したがって、取得された1つのものから次のものへと僅かにシフトする場合があることにより生じる。したがって、或る時点において取得された画像の或る特定の座標にあるプレートの領域が、後の時点において取得された同じ座標におけるプレートの領域と必ず完全に合致することを確実に想定することはできない。換言すれば、培地の僅かな歪みは、所与のピクセルと、培養プロセス中の異なる時点において捕捉された対応するピクセルとの厳密なマッチングに関して、僅かな不確実性をもたらす場合がある。
【0130】
この不確実性を考慮するために、時点taにおける所与のピクセル輝度値
【数56】
を、異なる時点tbにおけるこのピクセルの局所近傍N(x,y)における最も近い輝度値
【数57】
と比較することができる。局所近傍の選択は、1つの時点から次の時点への撮像プレートの再位置決めにおける1つ以上の誤差又は不正確性(例えば、撮像された培地の不完全な再位置決めに起因した位置正確度誤差、1つの時点から次の時点への撮像された培地の未知の高さに起因する視差の誤差)を求めることを含むことができる。1つの例において、約3ピクセル~約7ピクセルの範囲内)の設定「x」及び「y」は、ピクセルあたり約50ミクロンの分解能を有する画像に適していることが観測された。
【0131】
当業者であれば、tbソース画像から2つのtb画像、すなわち、tbの濃淡度拡張(
【数58】
と呼ばれる)に対応する第1の画像と、tbの濃淡度の衰え(grey level erosion)(
【数59】
と呼ばれる)に対応する第2の画像とを生成することが効果的な解決策であると認識するであろう。これらは共に、再位置決めの距離の不確実性dに合致するカーネルサイズを有する。
【0132】
【数60】
の場合、コントラストは0であり、そうでない場合、コントラストは、以下の式を用いて、
【数61】

【数62】
との間の
【数63】
に最も近い値から推定される。
【数64】
【0133】
SNRの改善
通常の照明条件下で、光子ショット雑音(センサに到来する光子の到着率における統計的変動)が、検出システムのSNRを制限する。最近のセンサは、有効平方ミクロンあたり約1700個~約1900個の電子であるフルウェルキャパシティを有する。このため、プレート上の物体を撮像する際、主な関心事は、物体を撮像するために用いられるピクセルの数ではなく、センサ空間内で物体によって覆われるエリアである。センサのエリアを増大させることにより、撮像される物体のためのSNRが改善する。
【0134】
画像品質は、センサを飽和させることなく(フレームごとのピクセルごとに記録することができる光子の最大数)、光子雑音がSNRを支配する照明条件(光子雑音=
【数65】
)を用いて画像を捕捉することによって改善することができる。SNRを最大化するために、画像平均化技法が共通して用いられる。暗い領域のSNRは、明るい領域のSNRよりもはるかに低いので、以下の式によって示すように、これらの技法を用いて大きな明るさ(又は色)の差を有する画像に対処する。
【数66】
【0135】
ここで、Iは、センサにおける電子ストリームによって生成される平均電流である。物質の吸収/反射における差及び電磁スペクトルにわたる光に起因して色が知覚されるとき、捕捉された色に対する信頼性は、高SNRを有する輝度を記録するシステムの能力に依拠する。画像センサ(例えば、CCDセンサ、CMOSセンサ等)は、当業者によく知られており、本明細書において詳細に説明されない。
【0136】
従来のSNR撮像制限を克服するために、撮像システムは、画像取得中に撮像プレートの解析を行い、解析に基づいて、照明条件及び露出時間をリアルタイムで調整することができる。このプロセスは、引用することにより本明細書の一部をなす、国際公開第2015/114121号に記載されており、包括的に、管理された高品質撮像(SHQI:Supervised High Quality Imaging)として参照される。システムは、異なるカラーチャネル内のプレートの様々な明るさの領域のための撮像条件をカスタマイズすることもできる。
【0137】
画像の所与のピクセルx、yについて、現在のフレームN中に取得されたピクセルのSNR情報を、以前の又は後続の取得されたフレーム(例えば、N-1、N+1)中に取得された同じピクセルのSNR情報と組み合わせることができる。例として、組み合わされたSNRは、以下の式によって指示される。
【数67】
【0138】
新たな取得により画像データを更新した後、取得システムは、環境制約(例えば、対象領域内のピクセルあたり必要とされる最小SNR)に従って、SNRを最大にする最良の次の取得時点を予測することができる。例えば、明るい条件及び暗い条件の最適照明において捕捉された2つの画像の情報をマージすることにより、2つのみの取得において暗い領域のSNRが
【数68】
だけ上がるとき、非飽和状態で捕捉される5つの画像の平均をとることにより、暗い領域(最大輝度の10%)のSNRが
【数69】
だけ上がる。
【0139】
画像のモデリング
いくつかの状況において、1つ以上の画像のピクセル間の空間コントラスト又は時間コントラストを計算するとき、所与の画像のためのピクセル情報が利用可能でない場合があるか、又は劣化している場合がある。利用不可能性は、例えば、プレートの画像が、細胞増殖の前の時間内に捕捉されなかった(例えば、プレートが時点t0において、又はその直後に撮像されなかった)場合に生じ得る。信号情報の劣化は、例えば、画像が時点t0において捕捉されるが、捕捉画像のピクセルが、細菌の増殖前に撮像プレートを正確に反映していないときに生じる場合がある。そのような不正確性は、プレートの後続の時系列画像内に再登場しない一時的なアーチファクト(例えば、プレートが最初にインキュベーターに入れられるときに、熱衝撃に起因してプレートの下で一時的に形成される結露)によって生じ得る。
【0140】
そのような状況において、利用不可能な又は劣化した画像(又は画像の或る特定のピクセル)は、プレートのモデル画像と置き換えるか、又はこのモデル画像を用いて向上させることができる。モデル画像は、プレートが、利用不可能な又は劣化した画像の特定の時点をどのように調べることが予期されるかを反映するピクセル情報を提供することができる。時点t0におけるモデル画像の場合、モデルは、プレートの平面画像又は標準画像とすることができ、3次元撮像/モデル化技法を用いて算術的に構築することができる。モデルは、可能な限りリアルなモデルを生成するために、物理的設計パラメーター(例えば、直径、高さ、複数の培地を収容するための仕切り、プラスチック材料等)、培地パラメーター(例えば、培地のタイプ、培地の組成、培地の高さ又は厚み等)、照明パラメーター(例えば、光源の角度、光源の色又は波長(複数の場合もある)、背景の色等)及び位置決めパラメーター(例えば、撮像チャンバーにおけるプレートの位置)の各々を含むことができる。
【0141】
劣化した画像の場合、劣化した画像の向上は、(例えば、下にある結露が、一部の光を、プレートを通らないようにブロックし、それによって結露を有するプレートのセクションが僅かにより透明でなくなることに起因して)ピクセル情報が残りの画像ほど鮮明でないとき、信号回復を用いて画像の劣化したピクセル特徴を鮮明にすることにより達成することができる。信号の回復は、残りの画像について輝度情報を求めることと、輝度情報の中央値輝度を特定することと、次に、画像のよりシャープでない領域のための輝度情報を、残りの画像の中央値輝度と置き換えることとを含むことができる。
【0142】
応用形態
本開示は、主に、通常の尿の報告量(CFU/mlバケットグループ)をシミュレートするために、様々な希釈の生理食塩水において行われる試験に基づく。分離株ごとの懸濁液が、0.5マクファーランド濁度標準液に対し調節され、BD Urine Vacutainerチューブ(型番364951)において、推定される1×106、1×105、5×104、1×104、1×103及び1×102CFU/mlの懸濁液において希釈物を準備するのに用いられた。標本チューブは、標準的な尿のストリーキングパターン、すなわち、#4Zigzag(プレートあたり0.01mlの分注)を用いた、Kiestra InoqulA(WCA1)を使用して処理された。
【0143】
プレートは、ReadA Compact(35oC、非CO2)を用いて処理され、最初の24時間にわたって2時間ごとに、次の24時間にわたって6時間ごとに撮像され、計48時間培養された。培養時間は、1時間の第1の読み値として入力され、許容されるマージンが±15分としてセットされた。2時間~24時間の次の読み値は、±30分の許容されるマージンを有して2時間ごとにセットされた。読み値24~48は、±30分の許容されるマージンを有して6時間ごとにセットされた。単純な実現可能性の調査の後、これは、許容可能なマージンを削除するように変更された。これは、所望の18時間~24時間の範囲で画像取得を改善するように行われた。
【0144】
他の場合、画像は、48時間の期間にわたって、最初の24時間については2時間間隔で、次の24時間については6時間間隔で得ることができる。そのような場合、48時間の期間にわたって、時点t0(0時間)から取得される画像を含む、合計17個の画像が得られる。
【0145】
全ての取得される画像は、既知の物体ピクセルサイズ、正規化された照明条件、及びピクセルごとの帯域ごとの高い信号対雑音比を用いて、スペクトルの平衡をとられたレンズの幾何収差及び色収差について補正された。本明細書に記載される方法及びシステムにおいて用いるのに適したカメラは、当業者によく知られており、本明細書において詳細に説明されない。例として、4メガピクセルカメラを用いて90mmプレート画像を捕捉することにより、コロニーが適切なコントラストを有する直径において100μmの範囲内にあるとき、最大で30コロニー/mm2のローカル密度(>105CFU/プレート)の計数が可能になるはずである。
【0146】
以下の培地を用いて、培地上で増殖したコロニーのコントラストが評価された。
【0147】
TSAII5%羊血液(BAP):尿培養のために広く用いられる非選択培地。
【0148】
BAV:コロニー形態及び溶血に基づくコロニー計数及び推定IDのために用いられる。
【0149】
MacConkeyII寒天培地(MAC):最も一般的なグラム陰性UTI病原体のための選択的培地。MACは、コロニーを生成する乳糖の分化のために用いられる。MACは、プロテウスの遊走も阻害する。BAP及びMACは、尿培養のために一般的に広く用いられる。いくつかの培地は、いくつかのグラム陰性の部分阻害に起因して、コロニーのカウントに用いることを推奨されない。
【0150】
コリスチンナリジクス酸寒天培地(CNA):最も一般的なグラム陽性UTI病原体のための選択的培地。CNAは、尿培養のためにMACほど一般的に用いられないが、グラム陰性コロニーの過度な増殖が生じた場合に、コロニーの同定に役立つ。
【0151】
CHROMAgarオリエンタシオン(CHROMA):尿培養のために広く用いられる非選択培地。CHROMAは、コロニーの色及び形態に基づくコロニーの計数及びIDのために用いられる。大腸菌及びエンテロコッカス属は、培地によって同定され、確認試験を必要としない。CHROMAは、コストに起因して、BAPほど用いられない。混合試料の場合、CLED培地も用いられた。
【0152】
システイン・乳糖電解質欠損(CLED)寒天培地:乳糖発酵に基づく尿中病原体のコロニー計数及び推定IDのために用いられる。
【0153】
標本処理BD Kiestra(商標)InoqulA(商標)を用いて、細菌学標本の処理を自動化し、標準化を可能にし、一貫した高品質のストリーキングを確保した。BD Kiestra(商標)InoqulA(商標)標本プロセッサは、磁性ローリング粒子(magnetic rolling bead)技術を使用して、カスタマイズ可能なパターンを用いて培地プレートをストリークする。磁性ローリング粒子は、直径5mmである。
【0154】
図17は、CHROMagar(上面図)及び血液寒天培地(底面図)培地の双方においてモルガン菌増殖を取り出す際のコントラスト収集アルゴリズム性能の1つの例を示す。CHROMagar及びBAPは共に、微生物学研究において一般的に用いられている非選択増殖培地である。図17の中央の画像の各々は、プレートの上で光により照明された撮像プレートを表す(上面図)。左側の画像は、中央の画像の対応する空間コントラストを表す。空間コントラストは、1ミリメートルの中央値カーネルに基づく。最後に、右側の画像は、中央の画像の時間コントラストを表す。時間コントラストは、各画像捕捉時点における様々な照明法条件(異なるカラーチャネル、照明設定等)を用いて、培養の0時間(t0)と12時間(tx)との間に捕捉された画像から編集される。
【0155】
図17に示すように、局所コントラストは、特にエッジ遷移が小さい場合に、半透明のコロニーを扱うときに制限を有する。なぜなら、空間コントラストアルゴリズムを単独で用いると、最もコントラストが高いコンフルエント領域しか画像から選び出すことができない可能性があるためである。空間コントラストは物体を捉えるのに失敗する可能性がある。図17から、分離したコロニーにおける時間コントラストの効果も明らかである。
【0156】
図17(特に、底面の血液寒天培地画像)も、空間コントラストを単独で用いて透明な培地における増殖を検出する問題を強調する。透明ケースにプリントされるインクは、非常に強力なエッジを有し、このため、強力な空間コントラストを有する。この結果、任意の他の空間コントラストを見るのが非常に困難になる。なぜなら、コロニーは、あまり強力に定義されたエッジを有していないためである。このため、空間コントラストと併せた時間コントラストの使用が、本開示における大きな利点となっている。
【0157】
最終的に、上記で説明したコントラスト判断の結果は、撮像された培地におけるコロニーの高速検出及び同定のための方法を自動化することができるというものである。自動化された方法は、比較可能なマニュアル方法を上回る大きな利点をもたらす。
【0158】
図18は、自動化された試験プロセス1800(例えば、図2のルーチン200)のタイムラインを、比較可能なマニュアル実行される試験プロセス1805のタイムラインと比較するフローチャートの対を示す。各プロセスは、試験のための標本が研究室において受け取られる(1810、1815)ことから開始する。次に、各プロセスは、培養1820、1825に進み、培養中、標本は数回撮像することができる。自動化されたプロセスにおいて、自動化された評価1830は、概ね12時間の培養の後に行われ、その時間後、標本内に増殖(又は通常の増殖)がないか否かを明確に判断する(1840)ことができる。図17における結果から示されるように、自動化プロセスにおける時間コントラストの使用により、12時間のみの後であっても、コロニーを検出する能力が大幅に改善される。対照的に、マニュアルプロセスにおいて、マニュアル評価1835は、培養プロセスが始まってほぼ24時間が経過するまで行うことができない。24時間経過して初めて、標本内に増殖(又は通常の増殖)がないか否かを明確に判断する(1845)ことができる。
【0159】
自動化プロセスの使用は、より高速のAST及びMALDIの試験も可能にする。自動化プロセスにおけるそのような試験1850は、初期評価1830の直後に開始することができ、結果は、24時間マークまでに取得(1860)及び報告(1875)することができる。対照的に、マニュアルプロセスにおけるそのような試験1855は、多くの場合、36時間マークに近づくまで開始することができず、データを見直し(1865)、報告する(1875)ことができるようになるには、更に8時間~12時間を要する。
【0160】
まとめると、マニュアル試験プロセス1805は、最大で48時間かかることが示され、18時間~24時間の培養期間を必要とし、その後初めてプレートが増殖について評価され、試料がどの程度長く培養されていたか更に追跡する方法はない。対照的に、自動試験プロセス1800は、(背景と、及び互いと比較して、)コロニー間の比較的乏しいコントラストであっても検出することができ、微生物学者がタイミングを追跡する必要なく撮像及び培養を行うことができるため、標本を特定し、更なる試験(例えば、AST、MALDI)のために準備することができるようになる前に、12時間~18時間の培養しか必要とせず、プロセス全体は、約24時間以内に完了することができる。このため、本開示の自動化プロセスは、本明細書に記載のコントラスト処理の支援により、試験結果の品質又は正確度に悪影響を及ぼすことなく、より高速な試料の試験をもたらす。
【0161】
本発明は特定の実施形態を参照しながら本明細書において説明されてきたが、これらの実施形態は本発明の原理及び応用形態を例示するにすぎないことは理解されたい。それゆえ、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に数多くの変更を加えることができること、及び他の構成を考案することができることは理解されたい。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図16C
図17
図18