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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】カテーテル組立体
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20220928BHJP
   A61M 25/02 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
A61M25/06 500
A61M25/02 510
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020187814
(22)【出願日】2020-11-11
(62)【分割の表示】P 2017519137の分割
【原出願日】2016-05-10
(65)【公開番号】P2021035559
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2020-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2015100357
(32)【優先日】2015-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】石田 昌弘
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-529111(JP,A)
【文献】国際公開第2011/118643(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/199697(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/023358(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
A61M 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のカテーテルと、
前記カテーテルを固定保持するカテーテルハブと、
針先を有し、前記カテーテルの内部に離脱可能に挿通される内針と、
前記内針を固定保持する針ハブと、
前記内針に対する前記カテーテルの相対移動を操作可能なカテーテル操作部材と、
前記針ハブ及び前記カテーテル操作部材とは別体に構成され、前記針ハブに対して移動可能な支持部材と、を備え、
前記支持部材は、上下方向に延び出る軸棒部と、前記軸棒部から前記軸棒部の軸心と直交する方向に向けて、前記カテーテル操作部材に保持された前記カテーテルに接触可能な長さで延び出た支持本体部と、を有し、
前記支持本体部は、前記カテーテルを接触支持可能な第1位置と、前記第1位置と異なる位置で前記カテーテルに非接触となる第2位置とに移動自在であり、
前記支持本体部は、前記軸棒部を中心に回転することで前記第1位置と前記第2位置とに移動する、
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば患者に対して輸液等を行う際に、血管に穿刺し留置するカテーテル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者に対して輸液等を行う際には、カテーテル組立体が使用される。この種のカテーテル組立体は、中空のカテーテルと、カテーテルの基端に固定されたカテーテルハブと、カテーテル内に挿入され先端に鋭利な針先を有する中空の内針と、この内針の基端に固定された針ハブとを備える(特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献1に開示のカテーテル組立体は、患者の体内の奥深くにカテーテルを挿入するため、長尺なカテーテル及び内針を重ねた状態で、筒状の針ハブ内の軸方向に沿って収容している。医師や看護師等のユーザは、カテーテル及び内針を患者に穿刺し、この穿刺状態でカテーテルハブに接続されたカテーテル操作部材を進出操作することにより、内針及び針ハブに対し長尺なカテーテルを相対的に進出させて体内に挿入していく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2013-529111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のカテーテル組立体は、体内へのカテーテルの挿入時に、針ハブの先端側を上下に分離させて、カテーテルの挿入後に、カテーテル、カテーテルハブ及びカテーテル操作部材を内針及び針ハブから離脱させる構成となっている。しかしながら、このように針ハブが分離する構成では、カテーテルの挿入時に、カテーテル及び内針が針ハブに対して非支持(自由)状態で延在することになり、カテーテルは患者から反力を受けると比較的容易に撓んでしまう。場合によっては、患者の挿入部から針先が後退して(抜けて)、この針先が患者に再び穿刺するおそれもある。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、カテーテルの挿入時にカテーテルを支持可能とすることでその撓みを抑制し、しかもカテーテルハブ及びカテーテル操作部材を針ハブから容易に離脱させ得るカテーテル組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明に係るカテーテル組立体は、中空のカテーテルと、前記カテーテルを固定保持するカテーテルハブと、針先を有し、前記カテーテルの内部に離脱可能に挿通される内針と、前記内針を固定保持する針ハブと、前記内針に対する前記カテーテルの相対移動を操作可能なカテーテル操作部材と、前記針ハブ及び前記カテーテル操作部材とは別体に構成され、前記針ハブに対して移動可能な支持部材と、を備え、前記支持部材は、上下方向に延び出る軸棒部と、前記軸棒部から前記軸棒部の軸心と直交する方向に向けて、前記カテーテル操作部材に保持された前記カテーテルに接触可能な長さで延び出た支持本体部と、を有し、前記支持本体部は、前記カテーテルを接触支持可能な第1位置と、前記第1位置と異なる位置で前記カテーテルに非接触となる第2位置とに移動自在であり、前記支持本体部は、前記軸棒部を中心に回転することで前記第1位置と前記第2位置とに移動することを特徴とする。
【0008】
上記によれば、カテーテル組立体は、カテーテル操作部材の進出操作時に、カテーテルが患者から反力を受けても、支持部材により、針ハブ内でカテーテルを接触支持してカテーテルの撓みを抑制することができる。これにより、カテーテル及び内針の延在状態が維持されて、ユーザは、カテーテルを患者に良好に挿入していくことが可能となる。また、支持部材は、第1位置から第2位置への変位により、カテーテルハブ及びカテーテル操作部材を邪魔することなく進出させ、針ハブから容易に離脱させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カテーテル組立体は、カテーテルの挿入時にカテーテルを支持可能とすることでその撓みを抑制し、しかもカテーテルハブ及びカテーテル操作部材を針ハブから容易に離脱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るカテーテル組立体の全体構成を示す斜視図である。
図2図1のカテーテル組立体の分解斜視図である。
図3図3Aは、カテーテル組立体の使用時の動作を示す第1説明図であり、図3Bは、図3Aに続くカテーテル組立体の動作を示す第2説明図である。
図4図4Aは、図3Bに続くカテーテル組立体の動作を示す第3説明図であり、図4Bは、図4Aに続くカテーテル組立体の動作を示す第4説明図である。
図5図2の内針及び針ハブを斜め下側から見た斜視図である。
図6図2のカテーテル操作部材を別角度から見た斜視図である。
図7図7Aは、支持部材を斜め下側から見た斜視図であり、図7Bは、支持部材を斜め上側から見た斜視図である。
図8】カテーテル操作部材と支持部材によるカテーテルの支持状態を拡大して示す斜視図である。
図9図9Aは、支持部材の操作部材用溝部にカテーテル操作部材の側縁が位置する状態を示す斜視図であり、図9Bは、支持部材の操作部材用溝部にカテーテル操作部材の傾斜縁が位置する状態を示す斜視図である。
図10図10Aは、支持本体部が第1位置に位置する状態を下側から見た平面図であり、図10Bは、支持本体部が第2位置に位置する状態を下側から見た平面図である。
図11】第1変形例に係るカテーテル組立体の全体構成を示す斜視図である。
図12図12Aは、支持バネ部が第2位置に変位した状態を斜め下側から見た斜視図であり、図12Bは、カテーテルハブ、補助部材ハブ及び針保護部材を基端方向に後退した際の状態を斜め上側から見た斜視図である。
図13】本発明の第2実施形態に係るカテーテル組立体の全体構成を示す斜視図である。
図14図13のカテーテル組立体の針ハブ及び内針を示す斜視図である。
図15】第2変形例に係るカテーテル組立体の全体構成を示す斜視図である。
図16】第3変形例に係るカテーテル組立体の全体構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るカテーテル組立体について好適な実施形態(第1及び第2実施形態)をあげ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
本発明に係るカテーテル組立体10は、患者(生体)に輸液や輸血等を行う場合に、患者の体内に穿刺及び留置されて薬液等の導入部を構築するために使用される。カテーテル組立体10は、末梢静脈カテーテルよりも長さが長いカテーテル(例えば、中心静脈カテーテル、PICC、ミッドラインカテーテル等)として構成され得る。なお、カテーテル組立体10は、末梢静脈カテーテルとして構成されてもよい。また、カテーテル組立体10は、静脈用カテーテルに限らず、末梢動脈カテーテル等の動脈用カテーテルとして構成されてもよい。
【0013】
〔第1実施形態〕
第1実施形態に係るカテーテル組立体10は、図1及び図2に示すように、カテーテル12と、カテーテル12を固定保持するカテーテルハブ14と、カテーテル12内に挿入される中空の内針16と、内針16を固定保持する針ハブ18と、カテーテルハブ14の上側に装着されるカテーテル操作部材20と、カテーテル12と内針16の間に挿入される管状の補助部材22と、補助部材22を固定保持する補助部材ハブ24と、カテーテルハブ14及び補助部材ハブ24の基端に接続される針保護部材26とを備える。
【0014】
カテーテル組立体10は、使用前の初期状態で、カテーテル12、補助部材22及び内針16を外側から順に重ねた多重管構造(多重管部11)を形成している。カテーテル操作部材20は、この多重管部11を直接保持する構成となっている。さらに、カテーテル組立体10は、初期状態で、多重管部11の一部、カテーテルハブ14、カテーテル操作部材20、補助部材ハブ24及び針保護部材26を適宜組み付けて、針ハブ18内に収容している。
【0015】
医師や看護師等のユーザは、使用時に、図1に示す初期状態のカテーテル組立体10の針ハブ18を把持し、多重管部11の先端を患者の血管(静脈又は動脈)内に穿刺する。この穿刺状態を維持したまま、ユーザは、カテーテル操作部材20を針ハブ18に対し相対的に進出操作することで、カテーテル12を内針16よりも先端側(血管の奥部)に進出させる。
【0016】
カテーテル組立体10は、図3Aに示すように、カテーテル12の進出又はカテーテル12に対する針ハブ18の相対的な後退に伴い、カテーテル操作部材20に接続されたカテーテルハブ14、補助部材ハブ24及び針保護部材26も一体的に移動する。この際、内針16が針ハブ18に固定されていることで、多重管部11は、カテーテル12と補助部材22の2重構造に移行する。また、カテーテル操作部材20は、カテーテル12の進出操作時に、多重管部11の保持を解除する。
【0017】
さらに進出を続けると、図3Bに示すように、針保護部材26まで針ハブ18の先端から抜け出て、この針保護部材26に内針16の針先16aが収容される。さらに、カテーテル12及びカテーテルハブ14は、図4Aに示すように、針ハブ18から抜け出した補助部材ハブ24及び針保護部材26と分離可能になり、進出の継続に伴い補助部材22から離脱する。最終的には、図4Bに示すように、カテーテル操作部材20がカテーテルハブ14から離脱することにより、カテーテル12及びカテーテルハブ14が患者に留置される。以下、このカテーテル組立体10について、具体的に説明していく。
【0018】
図2に示すように、カテーテル組立体10のカテーテル12は、可撓性を有し、内部に内腔13が貫通形成されている。内腔13は、内針16及び補助部材22を収容可能且つ薬液や血液等を流動可能な直径に形成される。カテーテル12の長さは、特に限定されず用途や諸条件等に応じて適宜設計可能であり、例えば、14~500mm程度に設定され、あるいは30~400mm程度に設定され、あるいは76~200mm程度に設定される。
【0019】
カテーテル12の構成材料は、特に限定されるものではないが、軟質樹脂材料が好適であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂又はこれらの混合物、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルナイロン樹脂、前記オレフィン系樹脂とエチレン・酢酸ビニル共重合体との混合物等があげられる。
【0020】
カテーテル12の基端部は、適宜の固着方法(かしめ、融着、接着等)によってカテーテルハブ14内の先端部に固着される。カテーテルハブ14は、カテーテル12が血管内に挿入された状態で患者の皮膚上に露出され、テープ等により貼り付けられてカテーテル12とともに留置される。
【0021】
カテーテルハブ14は、先端方向に先細りの筒状に形成される。カテーテルハブ14の構成材料は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリアリレート、メタクリレート-ブチレン-スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂を適用するとよい。カテーテルハブ14の基端側には、内針16の離脱後に、図示しない輸液チューブのコネクタが接続される。
【0022】
カテーテルハブ14の内部には、カテーテル12の内腔13に連通して輸液剤を流通可能な中空部15が設けられている。この中空部15には、内針16の穿刺時に血液の逆流を防ぐとともに、輸液チューブのコネクタの挿入に伴い輸液を可能とする、図示しない止血弁やプラグ等が収容されてもよい。
【0023】
また、カテーテルハブ14の外周面の先端寄りには、径方向外側に突出し、カテーテルハブ14の周方向に周回する環状突起28が形成されている。さらに、カテーテルハブ14の外周面の基端には、環状突起28と同じく、カテーテルハブ14の周方向に周回するネジ部30が突出形成されている。
【0024】
一方、カテーテル組立体10の内針16は、生体の皮膚を穿刺可能な剛性を有する中空管に構成され、カテーテル12の内腔13及びカテーテルハブ14の中空部15に貫通配置される。内針16は、カテーテル12よりも長い全長で基端部から先端方向に向かって徐々に大径となるように形成され、その先端には鋭利な針先16aが設けられる。多重管部11は、図1に示す初期状態で、カテーテル12及び補助部材22から針先16aを露出している。内針16の内部には、内針16の軸方向に沿って貫通孔16bが設けられている。なお、内針16の外周面には、軸方向に沿って溝部(図示せず)が設けられてもよい。また、内針16は、中実針であってもよい。
【0025】
内針16の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金、チタン又はチタン合金のような金属材料、硬質樹脂、セラミックス等があげられる。内針16は、適宜の固着方法(融着、接着、インサート成形等)により、針ハブ18に強固に固着される。
【0026】
針ハブ18は、図5に示すように、下壁32と、下壁32の側辺部32aから上方向に突出する一対の側壁34a、34bとを有するハウジング19として構成されている。ハウジング19は、内針16の軸方向長さよりも短く延びた細長い椀状を呈している。下壁32及び一対の側壁34a、34bで囲う内側には、多重管部11の一部、カテーテルハブ14、補助部材ハブ24及び針保護部材26を収容する収容空間40が形成される。
【0027】
針ハブ18を構成する樹脂材料は、特に限定されず、例えば、カテーテルハブ14であげた材料を適宜選択し得る。なお、このカテーテル組立体10は、内針16に対しカテーテル12の相対回転を操作可能とするため、カテーテルハブ14及び針保護部材26を上側に露出している。あるいは、カテーテル組立体10は、ハウジング19に上壁を形成したり、蓋体を取り付けたりしてカテーテルハブ14や針保護部材26等を覆う構成でもよい。
【0028】
下壁32は、平坦状に形成された一対の側辺部32aと、一対の側辺部32aの間に挟まれ下方向に円弧状に窪むガイド溝部32bとを有する。ガイド溝部32bは、カテーテルハブ14、補助部材ハブ24及び針保護部材26をハウジング19の長手方向に沿って摺動自在に配置する。下壁32の基端側且つ幅方向中央部(ガイド溝部32b)には、その上面から上方に突出して所定の高さ位置で内針16の基端部を固着する針保持部36が一体成形されている。なお、針保持部36は、ハウジング19とは別に成形し、ハウジング19に接着固定してもよい。
【0029】
一対の側壁34a、34bは、下壁32とともに長手方向に平行に延び、基端側及び中間側の上下幅が一定で、この中間側に対し先端側の上下幅が幅広に形成されている。各側壁34a、34bの先端側上部には、溝状のレール部42が設けられる。一対のレール部42は、各側壁34a、34bの幅広な部分の内面を長手方向に沿って直線状に延び、中間側の上面に至っている。各レール部42は、カテーテル操作部材20の側縁46a、46bを収容して、カテーテル操作部材20の進退をガイドする。レール部42を構成する溝壁の先端は、カテーテル操作部材20の湾曲を許容する湾曲面42aに形成されている。
【0030】
また、側壁34aには、支持部材44を取り付けるための配置用凹部43が設けられる。配置用凹部43は、側壁34aの先端から基端方向に向かって切り欠かれて、下壁32とレール部42の間に位置している。配置用凹部43の形成位置の下壁32及び側壁34aには、支持部材44を回転自在に取り付ける一対の支承孔部43a、43bが設けられる。レール部42に重なる位置(上側の支承孔部43aと配置用凹部43の間)には、後述する支持部材44のカム凸部106(図7A参照)が収容される窓43cが設けられ、配置用凹部43と窓43cの間の壁には、軸棒部100が配置される窪みが形成される。さらに、下壁32には、支持部材44の支持本体部102が略90°回転した際に、係止凸部118が挿入される係止凹部43dが形成されている。
【0031】
図2に戻り、カテーテル組立体10の補助部材22は、カテーテル12を内側から支持し、カテーテル12の血管内への挿入を補助する機能を有している。補助部材22は、カテーテル12の内径よりも小さな外径で、内針16の外径よりも大きな内径を有する中空管に形成される。補助部材22の基端部は、適宜の固着方法(かしめ、融着、接着等)により補助部材ハブ24に固着保持される。
【0032】
補助部材ハブ24は、その先端側がカテーテルハブ14に着脱自在に組み付けられ、その基端側に針保護部材26が着脱自在に組み付けられる。この補助部材ハブ24は、カテーテルハブ14及び針保護部材26のそれぞれを一体回転可能に接続している。なお、補助部材ハブ24は、針保護部材26に一体化(すなわち、補助部材22が針保護部材26に固着)していてもよい。またカテーテル組立体10は、補助部材22及び補助部材ハブ24を備えなくてもよい。この場合、カテーテルハブ14の基端側に針保護部材26が直接装着される。
【0033】
針保護部材26は、初期状態で内針16を貫通配置している。そして、カテーテル12と内針16の離脱に伴い、移動してきた針先16aを内部に収容して針先16aの再露出を防止する。この針保護部材26は、針先16aの再露出を防止するため、シャッタ82及び抜け止め部材94を内部に収容している。シャッタ82は、内針16の貫通配置状態で内針16の外周面に接触して弾性変形しており、針先16aが抜けることにより弾性復元して内針16の貫通経路を遮断する。抜け止め部材94は、内針16の針先16aよりも小径な孔部を有することで、針先16aの基端方向への抜けを規制する。
【0034】
カテーテル操作部材20は、カテーテル12を直接保持するとともにカテーテルハブ14に装着されることで、内針16及びハウジング19に対しカテーテル12及びカテーテルハブ14を相対的に進退させる。図2及び図6に示すように、カテーテル操作部材20は、ハウジング19の長手方向に延びる操作板部46(長尺部)と、操作板部46の基端に一体成形されカテーテルハブ14に着脱自在に装着されるハブ装着部48とを有する。
【0035】
操作板部46は、ユーザの指が当てられて進退操作がなされる部位である。操作板部46の一対の側縁46a、46bは、初期状態で、一対のレール部42と、レール部42の基端側の一対の側壁34a、34bの上面とに配置される。この操作板部46は、充分に薄肉に形成されることで、操作板部46の面方向と直交する方向、つまり内針16から離れる方向に湾曲可能な可撓性を有する。操作板部46(カテーテル操作部材20)を構成する材料は、特に限定されるものではなく、例えば、カテーテルハブ14であげた材料を適宜選択し得る。
【0036】
図1に示すように、操作板部46は、平面視で概ね長方形状に形成されるが、側縁46a(支持部材44の設置箇所側)の基端側には、切り欠き部47が設けられている。切り欠き部47は、操作板部46を幅方向内側に切り欠くことにより、その形成箇所と操作板部46の境界に段差47aを作っている。また、段差47aよりも先端側の側縁46aには、基端方向に向かって幅方向内側に緩やかに傾く傾斜縁46cが形成されている。
【0037】
さらに、図2及び図6に示すように、操作板部46の上面には、上側リブ50及びタブ52、54が設けられ、操作板部46の先端には、先端反り部56が設けられ、操作板部46の下面には、保持部58及び下側リブ51が設けられる。
【0038】
上側リブ50及び下側リブ51は、操作板部46の長手方向に沿って複数設けられる。これら上側及び下側リブ50、51は、上下にそれぞれ突出し、操作板部46の幅方向に沿って直線状に延びることで、操作板部46の幅方向の強度を高める。これにより操作板部46は、外部から外力がかかってもハウジング19内での折れ曲りや撓み等が抑止され、一対の側壁34a、34bの上面及びレール部42に沿ってスムーズに進退する。
【0039】
タブ52、54は、ユーザの指が直接当てられることを想定した部位であり、上側リブ50よりも高く突出している。タブ52、54の設置数は、図2に示す2つに限定されず、1つ又は3つ以上設けられてよい。
【0040】
先端反り部56は、図6に示すように、操作板部46の下面側に突出する肉厚部56aを有し、この肉厚部56aから先端方向に向かって薄肉になりつつ、上方に向かって湾曲している。肉厚部56aの幅方向中央部には、カテーテル12が非接触又は弱い摩擦力で通される挿通溝57が形成されている。先端反り部56は、カテーテル操作部材20の進出に伴い、反っている下面側が患者に接触する又はユーザに把持されることで、操作板部46が斜め上方に向かうように案内する。
【0041】
一方、カテーテル操作部材20の保持部58は、操作板部46の長手方向に沿って複数(図6中では5つ)設けられる。保持部58は、操作板部46の長手方向に等間隔に配置され、各箇所でカテーテル12の外周面に接触して保持(ホールド)する。なお、カテーテル操作部材20は、所定の1箇所に保持部58を設けてカテーテル12を保持する構成でもよい。
【0042】
複数の保持部58は、操作板部46の下面から下方向に突出する一対の突片70(突部)を有する。一対の突片70は、操作板部46の幅方向中間部を挟んで互いに対称形状に形成されている(以下、図6中の手前側の突片70を第1突片71、図6中の奥側の突片70を第2突片72ともいう)。
【0043】
第1及び第2突片71、72は、操作板部46の幅方向に幅広な矩形状に形成されている。第1突片71と第2突片72の各内側縁は、カテーテル12の外径よりも若干広い間隔に設定される。各内側縁の下部側には、幅方向内側に微量に突出する爪部73、74が設けられている。一対の爪部73、74の各突出端は、相互に近接することでカテーテル12の外径よりも若干狭い間隔に設定される。
【0044】
カテーテル12は、カテーテル操作部材20への組付時に、一対の爪部73、74を通り過ぎて、第1及び第2突片71、72間に容易に咥え込まれる。なお、本明細書中の「咥え込む」とは、保持部58がカテーテル12を弱い係合力で接触保持することを表すものである。勿論、保持部58の構成は、上記一対の突片70に限定されず、カテーテル12を保持する種々の構成を適用可能である。
【0045】
第1及び第2突片71、72は、側面断面視で、突出端(下端)に丸角を有する四角形状に形成されている。この第1及び第2突片71、72の丸角は、カテーテル操作部材20の進退時に、下側にある支持部材44に対して第1及び第2突片71、72を容易に乗り越えさせる(摺動性を向上する)。
【0046】
さらに、第1及び第2突片71、72は、操作板部46の長手方向に沿って相互に位相(形成位置)がずれるように突出形成される。つまり、第1突片71と第2突片72は、カテーテル12を同軸上で挟み込まないことにより、カテーテル12を弱い係合力で保持する。このため、カテーテル操作部材20は、操作板部46が湾曲すると、第1突片71、第2突片72の順にカテーテル12の引っ掛かりをずらして外していく。
【0047】
一方、カテーテル操作部材20のハブ装着部48は、操作板部46から下方向に突出する一対の側板60と、操作板部46から上方向に多少突出した半円筒状の上板62により箱状に形成される。一対の側板60は、ハブ装着部48を下方向から見た場合に、基端側及び中間側が平行に延び、中間側に連なる先端側が先端方向に向かって内側に傾斜している。
【0048】
一対の側板60と上板62の内側には、カテーテルハブ14を回転自在に収容する一方で、ハブ装着部48に対するカテーテルハブ14の軸方向の移動を規制する装着室64が設けられる。装着室64は、ハブ装着部48の下部及び基端において外部に開放されている。
【0049】
装着室64の内面には、台形孔及び円形孔を連ねた係止溝66と、一対の側板60及び上板62をU字状に延在する溝部68と、ハブ装着部48の内側に向かって突出する一対の突起69とが形成されている。係止溝66は、下側が幅広で上側が幅狭な台形孔によりカテーテル12を通して円形孔に配置し、台形孔と円形孔の境界部分に引っ掛けてカテーテル12を適度に係止する。溝部68は、カテーテルハブ14の環状突起28を、回転自在且つ先端及び基端方向への移動を規制して収容する。また一対の突起69は、カテーテルハブ14の基端側外周面を軽い係合力で引っ掛ける。
【0050】
図2に戻り、カテーテル組立体10は、カテーテル操作部材20に保持されたカテーテル12の下側を支えるため、ハウジング19の先端側に支持部材44を備える。支持部材44は、円柱状の軸棒部100と、軸棒部100から横方向(軸棒部100の軸心と直交方向)に突出する支持本体部102とを有する。
【0051】
軸棒部100は、図2図7A及び図7Bに示すように、上下方向に短く延びて、その上端部と下端部が配置用凹部43の上下一対の支承孔部43a、43bにそれぞれ挿入される。支持部材44は、この軸棒部100を基点にハウジング19に回転自在に組み付けられる。
【0052】
軸棒部100の下側には、支持部材44のハウジング19の組付状態で、配置用凹部43の上下幅に対応した連結補強部104が膨出形成されている。支持本体部102は、この連結補強部104に連結される。また、軸棒部100の上側には、支持部材44を回転操作させるカム部として機能する一対のカム凸部106(カム部)が一体成形されている。一対のカム凸部106は、所定位置(ハウジング19の組付状態で窓43cに収容される位置)に設けられ、軸棒部100を挟んで互いに反対方向且つ同程度に突出している。
【0053】
さらに、支持部材44は、軸棒部100及び一対のカム凸部106の支持本体部102を臨む位置に操作部材用溝部108を有する。操作部材用溝部108は、初期状態で、先端側のカム凸部106の最先端から基端側のカム凸部106の最基端まで直線状に延在している。この操作部材用溝部108は、レール部42に対応する位置に配置されて、レール部42とともにカテーテル操作部材20の側縁46aを摺動可能に収容する。
【0054】
一方、支持部材44の支持本体部102は、ハウジング19の組付状態で、上記の軸棒部100を基点とした回転により移動する部位である。具体的に、支持本体部102は、収容空間40内に位置してカテーテル12を接触支持可能な第1位置P1(図7B図10A参照)と、第1位置P1と異なりハウジング19の外部及び配置用凹部43に位置してカテーテル12に非接触となる第2位置P2(図10B参照)とに変位する。軸棒部100を軸心周りとした第1位置P1と第2位置P2間の角度は、カテーテルハブ14、補助部材ハブ24及び針保護部材26が容易に抜けるように90°以上であることが好ましい。本実施形態では、第2位置P2においてカム凸部106がレール部42内に位置するように90°に設定している。
【0055】
支持本体部102は、正面視で、配置用凹部43の上下幅に略一致する大きさのS字状に形成され、上下方向に弾性変形可能なバネ力を有している。支持本体部102の上面には、僅かに上方に隆起する隆起部110が設けられる。この隆起部110は、支持本体部102の第1位置P1で、カテーテル操作部材20に保持されたカテーテル12(多重管部11)に接触可能となっている。なお、本実施形態では、支持本体部102は、第1位置P1の配置状態で、カテーテル12に非接触に対向してユーザの押圧に伴い接触支持する構成であるが、これに限らず、第1位置P1の配置に伴いカテーテル12を接触支持する構成でもよい。
【0056】
また、支持本体部102の上部先端側には、先端方向且つ下方に傾斜する先端傾斜面112が形成され、支持本体部102の上部基端側には、基端方向且つ下方に傾斜する基端傾斜面114が形成される。さらに、支持本体部102の隆起部110に連なる端部には、軸棒部100から離れる幅方向外側且つ下側に向かって傾斜して突出するウイング116が一体成形されている。
【0057】
支持本体部102の下面には、係止凸部118が下方に向かって突出形成される。係止凸部118は、支持本体部102の第2位置P2でハウジング19の係止凹部43dに挿入される。また、支持本体部102の下部側の基端には、基端方向に突出する接触用突起120が設けられる。この接触用突起120は、カテーテル操作部材20の進出時に側板60(ハブ装着部48)に接触して、支持本体部102の第1位置P1から90°離れた第2位置P2への変位を誘導する。
【0058】
支持部材44を構成する材料は、特に限定されるものではなく、例えば、カテーテルハブ14であげた材料を適宜選択し得る。なお、支持部材44は、ハウジング19に対して別体に設けられるだけでなく、ハウジング19に一体成形されてもよい。また、支持部材44は、ハウジング19の側壁34aのみに設けられるものではなく、側壁34bに設けられてもよく、側壁34a、34bの両方に一対設けられてもよい。また支持本体部102の回転方向は、ハウジング19の平面方向に限らず、上下を含む側面方向でもよい。
【0059】
本実施形態に係るカテーテル組立体10は、基本的には以上のように構成され、以下、その作用効果について説明する。
【0060】
カテーテル組立体10は、上述したように、患者への輸液の導入部を構築する際に用いられる。図1に示す初期状態では、カテーテルハブ14、補助部材ハブ24及び針保護部材26が接続されるとともに、カテーテル操作部材20(ハブ装着部48)の装着室64にカテーテルハブ14が収容されて、ハウジング19の収容空間40に一体的に収容される。
【0061】
さらに初期状態では、ハウジング19の先端部に組み付けられた支持部材44の支持本体部102が第1位置P1に待機し、図8に示すように、カテーテル操作部材20の複数の保持部58に保持された多重管部11に対向している。各保持部58は、カテーテル12の外周面を軸方向の各箇所において弱い係合力で咥え込み、カテーテル操作部材20全体としてカテーテル12を強固に保持している。
【0062】
カテーテル組立体10の使用において、ユーザは、ハウジング19を把持操作して多重管部11を患者に穿刺する。穿刺時には、保持部58がカテーテル12を保持していることで、穿刺に伴う抵抗力を受けても、ハウジング19内での多重管部11の撓みが防止される。また、穿刺時に、カテーテル操作部材20の先端側がユーザの指により下方に押圧されると、多重管部11が第1位置P1に待機している支持部材44に接触支持される。このため、多重管部11は、カテーテル操作部材20(先端反り部56の挿通溝57)と支持部材44(隆起部110)の間に固定されて撓みが一層抑制される。
【0063】
その結果、多重管部11は、ハウジング19の先端からの延出状態が良好に維持されることになり、ユーザは、多重管部11を患者に違和感なく穿刺することができる。また、カテーテル組立体10は、内針16の強度を弱めて一層細く形成することも可能となり、患者の負担を軽減することができる。
【0064】
図3Aに示すように、多重管部11の穿刺状態において、ユーザは、内針16に対しカテーテル12を相対的に進出させて血管内に挿入する。この際、ユーザは、カテーテル操作部材20の上側リブ50やタブ52、54に指を当てて、ハウジング19に対しカテーテル操作部材20を先端方向に進出(相対移動)させる。カテーテル操作部材20の進出操作では、保持部58による多重管部11の保持が継続して、カテーテル12がスムーズに進出する。
【0065】
進出操作時には、図9Aに示すように、支持部材44の操作部材用溝部108に操作板部46の側縁46aが存在することで、支持部材44が回転不能となっており、支持本体部102が第1位置P1で待機し続ける。このため、支持部材44は、多重管部11の下側を支持可能な状態を継続し、カテーテル12の挿入時にカテーテル12が皮膚等から反力を受けても、保持部58からの多重管部11の抜けを抑制する。従って例えば、内針16の針先16aが撓みにより後退し皮膚から抜けることがなくなり、内針16を皮膚に再び穿刺する等の不都合が回避される。
【0066】
また、支持本体部102は、上下方向に弾性力を有し且つ基端傾斜面114を有することで、進出時に保持部58(一対の突片70)が接触すると、適宜弾性変形して保持部58の通過を許容する。これにより、カテーテル操作部材20は、カテーテル12をスムーズに進出させる。
【0067】
カテーテル操作部材20の操作板部46は、先端方向への進出に伴い患者の皮膚等に先端反り部56が接触する、又はユーザが先端反り部56を把持する等により、多重管部11の軸線方向から遠のくように湾曲する。操作板部46の湾曲は、操作板部46の先端側から生じ、長手方向に並ぶ各保持部58は、先端側から個々の係合力に抗して多重管部11を順次外していく。操作板部46の湾曲により先端側の保持部58が保持を解除しても、ハウジング19内で直線性が維持される基端側の保持部58は、多重管部11の保持を継続することができる。さらに、支持部材44の支持本体部102は、第1位置P1に待機し続けて、基端側でカテーテル12を保持する保持部58とともに、多重管部11の支持を継続する。
【0068】
また、ユーザは、カテーテル12の挿入が上手くいかない場合に、カテーテル操作部材20を一旦後退操作して、内針16及びハウジング19に対しカテーテル12を相対的に後退させてもよい。後退時には、操作板部46がハウジング19のレール部42に再収容されて、湾曲状態から直線状(非湾曲状態)に移行する。また、カテーテル操作部材20の後退に伴い、ウイング116及び隆起部110は、カテーテル12を保持部58に向けて持ち上げて、複数の保持部58(一対の突片70)に再び咥え込ませることができる。
【0069】
カテーテル操作部材20は、ある程度進出すると、図9Aに示す側縁46aが操作部材用溝部108に位置する状態から、図9Bに示す操作板部46の傾斜縁46cが操作部材用溝部108に位置する状態に移行する。これと同時にハブ装着部48の側板60が支持本体部102の接触用突起120に接触することで、支持本体部102は第1位置P1から回転を開始する。
【0070】
操作板部46の段差47aが支持部材44の先端側のカム凸部106を通り過ぎると、カム凸部106が切り欠き部47に位置するようになり、支持部材44は回転自在となる。支持本体部102の接触用突起120は、カテーテル操作部材20の接触により充分な回転角度(90°)で支持本体部102を回転させる。その結果、支持本体部102は、図10Aに示す第1位置P1から、図10Bに示す第2位置P2に変位して収容空間40の先端側を大きく開放する。これにより、カテーテルハブ14、補助部材ハブ24及び針保護部材26が先端方向に通過可能になり、ハウジング19から容易に抜け出ることができる。
【0071】
支持本体部102が第2位置P2に位置した状態では、係止凸部118が係止凹部43dに挿入されることで、支持本体部102を第2位置P2に待機させる。またこの状態では、カム凸部106の一方がレール部42内に位置している。そのため、ユーザは、カテーテル操作部材20を後退操作すると、段差47aとカム凸部106の接触により支持部材44を回転させ、支持本体部102を第2位置P2から第1位置P1に再び戻すことができる。支持本体部102の回転時には、ウイング116が斜め下側に延出していることで、カテーテル12の横方向へのずれを回避してカテーテル12を支持本体部102の上部に案内する。そのため、支持部材44は、カテーテル操作部材20の後退に伴い、カテーテル12を保持部58に再び咥え込ませることができる。
【0072】
カテーテル操作部材20の進出(又は内針16及びハウジング19の後退)に伴い、ハブ装着部48に装着されているカテーテルハブ14、及びカテーテルハブ14に装着されている針保護部材26も進出する。そして、カテーテルハブ14及び針保護部材26がハウジング19から抜けてある程度進出すると、針保護部材26の内部に内針16の針先16aが収容される。この針保護部材26は、抜け止め部材94により針先16aの抜けを規制するとともに、針保護部材26内で内針16の外周面により収縮していたシャッタ82が、針先16aの前で展開することにより針先16aの再露出を防止する。
【0073】
また、ハウジング19からカテーテルハブ14を離脱した後は、ハブ装着部48の係止溝66及び一対の突起69と、カテーテルハブ14との係止が容易に解除可能となる。そのため、ユーザは、適宜のタイミングで、カテーテル操作部材20をカテーテル12及びカテーテルハブ14から分離させ、カテーテル12及びカテーテルハブ14が患者に良好に留置される。
【0074】
以上のように、本実施形態に係るカテーテル組立体10は、第1位置P1に位置する支持部材44により、カテーテル操作部材20の反対側でカテーテル12を支持することができる。そのため、カテーテル操作部材20の進出操作時に、カテーテル12が患者から反力を受けても、支持部材44は、ハウジング19内でカテーテル12を接触支持してその撓みを抑制することができる。これにより、多重管部11の延在状態が良好に維持されて、ユーザは、カテーテル12を患者に良好に挿入することが可能となる。また、支持部材44は、第1位置P1から第2位置P2への変位により、カテーテルハブ14及びカテーテル操作部材20を邪魔することなく進出させ、内針16及びハウジング19から容易に離脱させることができる。
【0075】
カテーテル組立体10は、初期状態で、カテーテル操作部材20と支持部材44にカテーテル12が挟まれて支持されることにより、多重管部11を患者に穿刺した際も多重管部11の撓みを抑制することが可能となる。よって、ユーザは、多重管部11を違和感なく穿刺することができる。また、支持本体部102は、初期状態で第1位置P1からの移動が規制されていることで、カテーテル12を安定的に支持することができる。その一方で、カテーテル操作部材20の進出時に支持本体部102の移動規制が解除されることで、カテーテルハブ14及びカテーテル操作部材20をハウジング19からスムーズに露出させることができる。さらに、保持部58は、カテーテル12を直接保持するので、多重管部11の穿刺時やカテーテル12の挿入時に、カテーテル操作部材20により撓みを抑えることができる。この際、支持部材44は、カテーテル操作部材20の反対側でカテーテル12を支持可能であるため、保持部58からのカテーテル12の抜けを抑制することができる。
【0076】
この場合、支持部材44がハウジング19に回転自在に装着されていると、支持本体部102は、第1位置P1と第2位置P2を短い距離で変位することができ、カテーテル組立体10の小型化を図ることができる。そして、支持本体部102は、軸棒部100によりハウジング19に回転自在に設けられることで、第1位置P1と第2位置P2の間を円滑に変位する。これにより、カテーテル12の支持可能状態と、カテーテルハブ14等の離脱可能状態とを容易に切り換えることができる。また、カテーテル操作部材20の側縁46aが操作部材用溝部108に存在する場合には、支持部材44が回転不能となり、カテーテル12を支持可能な第1位置P1に支持本体部102を待機させ続けることができる。その一方で、カテーテル操作部材20の切り欠き部47が操作部材用溝部108に存在する場合には、支持部材44が回転可能となり、カテーテルハブ14等の通過を許容する第2位置P2に支持本体部102を変位させることができる。
【0077】
また支持本体部102は、カテーテル操作部材20の進退操作時に、カテーテル12を保持する保持部58が接触しても弾性変形することで、保持部58の通過を許容することができる。従って、カテーテル操作部材20の移動性を充分に確保することができる。カテーテル操作部材20は、進出時に接触用突起120に接触することにより支持本体部102を大きく回転させて、第1位置P1から第2位置P2に支持本体部102を確実に配置することができる。従って、カテーテル操作部材20の後退操作時に、カテーテル操作部材20と支持部材44の意図しない接触を回避して、カテーテル操作部材20をスムーズに後退させることが可能となる。
【0078】
なお、本発明に係るカテーテル組立体10は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の応用例及び変形例をとり得る。例えば、カテーテル組立体10は、内針16の貫通孔16bに図示しないガイドワイヤを収容して、このガイドワイヤに接続された図示しないガイドワイヤ操作部材を操作することで、針先16aからガイドワイヤを露出してカテーテル12を案内する構成でもよい。
【0079】
また、ハウジング19内でカテーテル12を支持可能な支持部材44は、上記構成に限定されず、例えば、支持部材44に代えて第1位置P1と第2位置P2の間をスライド移動するスライダ(図示せず)を適用してもよい。この場合、スライダは、ハウジング19の幅方向(カテーテル12の移動方向に直交する方向)に進退する構成であるとよい。これにより、スライダは、ハウジング19の軸心寄りでカテーテル12を支持可能な第1位置P1と、ハウジング19の外側でカテーテルハブ14等の通過を許容する第2位置P2とに容易に切り換えることができる。
【0080】
〔第1変形例〕
次に、第1変形例に係るカテーテル組立体10Aについて説明する。なお、後述の説明において、上記実施形態と同一の参照符号は、同一の構成又は同一の機能を有するものとし、以下、その詳細な説明を省略する。
【0081】
第1変形例に係るカテーテル組立体10Aは、図11に示すように、カテーテル12を支持する支持部材としてトーションバネ130を採用している点で、カテーテル組立体10と異なる。また、カテーテル組立体10Aの針ハブ18A(ハウジング19A)は、上述した配置用凹部43に代えて、トーションバネ130を配置するための収容部132を備える。
【0082】
収容部132は、ハウジング19Aの側壁34aから幅方向外側に若干膨出し、その内部にバネ収容室(図示せず)を有する。さらに、収容部132は、後述するトーションバネ130の支持バネ部136が変位した際に、支持バネ部136を通すことが可能なスリット132aを、レール部42の下側に備える。
【0083】
トーションバネ130は、金属材料からなる線材を螺旋状に巻回したコイル部134と、コイル部134の上端から横方向(コイル部134の軸心と直交方向)に突出する支持バネ部136(支持本体部、突出部)とを有する。コイル部134は、その軸方向がハウジング19Aの上下方向に沿うようにハウジング19Aに組み付けられる。また、コイル部134は、下端部から突出するピン134aを有し、このピン134aは回転不能に収容部132に固定される。
【0084】
支持バネ部136は、平面視でU字状に形成され、トーションバネ130をハウジング19Aに組み付けた状態で、コイル部134から多重管部11及び保持部58を超える位置(第1位置P1)まで延出する。これにより、支持バネ部136は、ユーザによるカテーテル操作部材20Aの操作時に、多重管部11の支持が可能となり多重管部11の撓みを抑える。この支持バネ部136は、コイル部134及び支持バネ部136自体のバネ力により上下に弾性変形するので、カテーテル操作部材20Aの進退時には、保持部58の接触に伴い下側に逃げ、保持部58を容易に通過させる。
【0085】
また、カテーテル操作部材20Aのハブ装着部48は、図12Aに示すように、カテーテルハブ14の外周面を挟み込む一対の脚部138により構成される。さらに、カテーテル操作部材20Aは、一対の脚部138の前方側で側縁46a寄りの下面に、下方に突出するブロック140を備える。ブロック140は、カテーテル操作部材20Aの進出に伴い、支持バネ部136に接触して、支持バネ部136を平面視で反時計回りに回転(弾性変形)させる。従って、支持バネ部136は、先端側のスリット132aに挿入された位置(第2位置P2)に変位して、カテーテルハブ14、補助部材ハブ24、針保護部材26の通過を許容する。
【0086】
また、カテーテル操作部材20Aをハウジング19Aに組み付ける際や、カテーテル操作部材20Aの再後退時には、図12Bに示すように、針保護部材26等が支持バネ部136に接触して、支持バネ部136を基端方向に回転させる。これにより、支持バネ部136は、基端側のスリット132aに挿入され、カテーテルハブ14、補助部材ハブ24、針保護部材26の通過を許容する。
【0087】
以上のように、第1変形例に係るカテーテル組立体10Aでも、カテーテル組立体10と同様の効果を得ることができる。特に、トーションバネ130は、ブロック140に押圧されるまでは多重管部11を安定的に支持可能であり、多重管部11の撓みを効果的に抑制する。その一方で、トーションバネ130は、ブロック140の押圧に伴いカテーテルハブ14、補助部材ハブ24、針保護部材26を容易に通過させることができる。なお、このトーションバネ130にも、上述したウイング116や接触用突起120を設けてもよい。
【0088】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係るカテーテル組立体200について説明する。カテーテル組立体200は、図13及び図14に示すように、針ハブ202の形状が第1実施形態に係るカテーテル組立体10の針ハブ18と異なる。具体的には、針ハブ202は、ハウジング204と、ハウジング204から先端方向に突出する一対のアーム212とを有する。
【0089】
ハウジング204は、一対の側辺部32a、ガイド溝部32bを有する下壁206と、下壁206の両側辺部から上方向に突出する一対の側壁208とを含み、下壁206及び一対の側壁208の内側に収容空間204aを形成している。ハウジング204の収容空間204aには、初期状態で針保護部材26が収容されている。なお、このカテーテル組立体200は、上記の補助部材22、補助部材ハブ24を備えていないが、これら各構成を備えてもよいことは勿論である。
【0090】
また図14に示すように、ハウジング204の下壁206には、針保護部材26より基端側に、ハウジング204とは別部品に形成された針保持部材210が固定されている。針保持部材210は、幅方向中央部の保持基部210aと、保持基部210aの下側付近から幅方向外側に突出して一対の側辺部32aに接触する横板210bと、横板210bの突出端から上方向に突出して一対の側壁208に接触する縦板210cとを有する。保持基部210aは、その上部において内針16の基端部を固定保持している。さらに、保持基部210aの下部には、下壁206の装着孔206a(図13参照)に引っ掛かり、針保持部材210をハウジング204に強固に固定する図示しないフック状連結部が設けられている。
【0091】
図13及び図14に示すように、一対のアーム212(第1アーム214、第2アーム216)は、ハウジング204の一対の側壁208に連結され、そのまま先端方向に向かって延出している。一対のアーム212の各々の内面には、レール部42が設けられており、また各々の外面には、ユーザが把持するためのグリップ212aが設けられている。さらに第1アーム214には、第1実施形態と同様に、配置用凹部43、一対の支承孔部43a、43b、窓43c、係止凹部43dが形成され、支持部材44が回転自在に取り付けられる。なお、一対のアーム212は、その剛性を高める(すなわち延在姿勢を補強する)ために、金属材により構成されてもよく、あるいは樹脂材の内部に金属棒等の補強部材(図示せず)が埋め込まれていてもよい。
【0092】
第2実施形態に係るカテーテル組立体200は、基本的には以上のように構成され、カテーテル組立体10と同様の効果を得ることができる。すなわち、針ハブ202に取り付けられた支持部材44によって、多重管部11を下支えすることで、穿刺時の多重管部11の撓みを良好に抑制することができる。その一方で、針ハブ202は、一対のアーム212を有することで、組立体全体の軽量化を図るとともに、カテーテル操作部材20の進退時の摩擦を減らして、カテーテル操作部材20の移動性を向上させることができる。
【0093】
〔第2変形例〕
また、図15に示す第2変形例に係るカテーテル組立体220(針ハブ222)は、第2実施形態に係る針ハブ202と同様に一対のアーム212を有するが、さらに一対のアーム212間を架橋する連結架橋部224を備えた構成となっている。連結架橋部224は、一対のアーム212の先端側の内面且つ下方位置で、該一対のアーム212に一体成形されている。この連結架橋部224は、ハウジング204の下壁206の幅方向と一致する長さで、且つ一対の側辺部32a及びガイド溝部32bを有する。さらに、連結架橋部224の軸方向長さは、支持部材44の設置範囲に対応しており、支持部材44を下側に露出しないように設定されている。
【0094】
このように、針ハブ222は、一対のアーム212の先端側に連結架橋部224を有することで、一対のアーム212の先端側及び全体の間隔を一定とすることができる。そのため、ユーザが一対のアーム212のグリップ212a付近を把持しても、針ハブ222の形状が良好に維持されて、カテーテル操作部材20の進退操作を円滑に実施させることができる。
【0095】
〔第3変形例〕
さらに、図16に示す第3変形例に係るカテーテル組立体230(針ハブ232)は、上記の連結架橋部224に代えて、一対のアーム212の先端側を連結する連結棒324を備えた構成となっている。連結棒324は、例えば金属材からなり丸棒に成形された部材である。連結棒324は、連結架橋部224と同様に、一対のアーム212間を下壁206の幅方向と一致する長さで架橋することで、一対のアーム212の間隔を一定とする。
【0096】
要するに、針ハブ222、232は、一対のアーム212の延在姿勢を補強して、カテーテル操作部材20の移動を円滑化させる種々の構成を採用することができる。例えば、連結架橋部224や連結棒324は、一対のアーム212の先端側に設けられるだけでなく、一対のアーム212の延在方向途中位置に設けられてもよい。
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