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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】2ストローク内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02B 1/04 20060101AFI20220928BHJP
   F02B 25/06 20060101ALI20220928BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20220928BHJP
   F02B 43/10 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
F02B1/04
F02B25/06
F02M21/02 G
F02B43/10 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020501849
(86)(22)【出願日】2018-03-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 FR2018050693
(87)【国際公開番号】W WO2018172703
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】1752425
(32)【優先日】2017-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519342312
【氏名又は名称】エスエーエス トム サーミック ハイドロジェン オキシジェン モビリティー
【氏名又は名称原語表記】SAS THOM THERMIC HYDROGEN OXYGEN MOBILITY
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ロペ,ディディエ
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0260363(US,A1)
【文献】特開2010-216454(JP,A)
【文献】特開平08-338345(JP,A)
【文献】特開平08-093571(JP,A)
【文献】特開平11-159360(JP,A)
【文献】特表2008-505282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 1/00
25/00
43/10
F02M 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方クランクケース(702)と、ピストン(706)を低い静止位置から燃焼位置へ潤滑化するためのオイルを含む下方クランクケース(703)とを有するクランクケース(701)を含む2ストローク燃焼機関(700)であって、常にかつあらゆる環境で、前記下方クランクケース(703)内にオイルを閉じ込める封止手段を備え、前記上方クランクケース(702)が、一方で、二水素および二酸素をベースとする気体燃料を導入するための吸気ポート(712)と、他方で、前記下方クランクケース(703)内にオイルを維持することにより、未消費の気体燃料が装填された水蒸気のみを排出する排気ポート(714)と、を備えることを特徴とし、排気ガスリサイクルデバイス(72)に接続されている前記排気ポート(714)が、前記未消費の気体燃料を回収し、かつそれを前記吸気ポート(712)に再注入し、前記封止手段が、前記排気ポート(714)および前記吸気ポート(712)をそれぞれ塞ぐための2つの封止要素(710a、710b)を備えることを特徴とする、2ストローク燃焼機関(700)。
【請求項2】
前記排気ガスリサイクルデバイス(72)が、凝縮によって、消費されたガス混合物の蒸気を分離する熱交換器を備えることを特徴とする、請求項1に記載の2ストローク燃焼機関(700)。
【請求項3】
前記封止手段が、前記ピストン(706)の上方部分に形成された封止部材(710)を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の2ストローク燃焼機関(700)。
【請求項4】
前記封止要素(710a、710b)が、前記ピストン(706)上に横方向に取り付けられ、前記ピストン(706)の両側で長手方向に延在することを特徴とする、請求項に記載の2ストローク燃焼機関(700)。
【請求項5】
前記吸気ポート(712)の上流に配置されたミキサ(61)を備えることを特徴とし、前記ミキサ(61)が、前記二水素および前記二酸素の混合を可能にし、すべての燃料が、熱触媒による燃焼に適合された前記気体燃料を生成するために加圧される、請求項1~の1項に記載の2ストローク燃焼機関(700)。
【請求項6】
前記ミキサ(61)が、二酸素および二水素を圧縮空気と混合し、かつ前記気体燃料中の二酸素および二水素の濃度を変えるための、圧縮空気入口も備えることを特徴とする、請求項に記載の2ストローク燃焼機関(700)。
【請求項7】
前記ミキサ(61)が、前記吸気ポート(712)に吸気ダクト(70)を介して接続されていることを特徴とする、請求項に記載の2ストローク燃焼機関(700)。
【請求項8】
前記排気ガスリサイクルデバイス(72)の出口における前記未消費の気体燃料が、前記ミキサ(61)に回収ダクト(74)を介して再注入されることを特徴とする、請求項の1項に記載の2ストローク燃焼機関(700)。
【請求項9】
前記上方クランクケース(702)内に、前記排気ポート(714)が、前記吸気ポート(712)よりも高く配置されていることを特徴とする、請求項1~の1項に記載の2ストローク燃焼機関(700)。
【請求項10】
前記封止手段が、前記下方クランクケース(703)内に、前記下方クランクケース(703)内に前記オイルを常に維持することに寄与する、膨張システム(709)を備えることを特徴とする、請求項1~の1項に記載の2ストローク燃焼機関(700)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送および再生可能エネルギーの分野に関する。特に、本発明は、車両、好ましくは水上車両をけん引するために再生可能エネルギーを使用するけん引システムに関わる。
【0002】
「水上車両」なる表現は、本文書においては、河川であろうと海洋であろうと、水路を進む車両に対応することに留意されたい。
【背景技術】
【0003】
最初に、あらゆる水路における物品および人の水上輸送だけでなく、専門家活動(漁業、調査、科学的活動、警務および軍務、観光など)のための移動や、ボート航行は、多くの利点を有する。実際、セーリングは、使用場所で直接、無料でかつ完全に再生可能な風力エネルギーを使用する。さらに、セーリングは、このエネルギーを生成または活用するために、排出物および汚染を生み出さないという利点も有する。
【0004】
20世紀の経済的事情、特に大量の物品および/または人をますます迅速に輸送する必要性は、時代とともにより重要となり、変位エネルギー源としての化石燃料の使用により、風力エネルギーの使用の代替をもたらした。この進化に直面し、保存されることなく、その入手可能性が所定の河道おいて断続的または不在である風力エネルギーの欠点は、法外となった。次の知見がなされる:セーリングはもはや、我々の現在のニーズおよび未来に一致しない。
【0005】
今日、セーリングは、娯楽や競技会に使用されるのみであり、特に海洋および河川での輸送にはもはや使用されず、まれな例外はあるが、移動するためのエネルギー源として化石燃料を使用する。
【0006】
しかしながら、21世紀に入ると、これまでは豊富であり、ときには果てることがないと考えられていた化石エネルギー資源の枯渇が目立つようになった。この化石燃料の入手可能性の低減は、国際市場における価格の定常的上昇に反映されている。結果として、化石燃料の消費は、輸送コストに大きな影響を有する。
【0007】
さらに、化石燃料の消費は、公衆衛生環境にも影響を及ぼす。
【0008】
一方で、化石燃焼の燃焼が、ガスの燃焼(CO2、粒子など)によって生成される直接汚染を惹起することが認められている。これらの燃焼排出物は、特にグリーンハウス効果の増幅に起因するオゾン層の減少、空気の質、河川または海洋の水質など、環境条件の劣化に寄与する。この環境劣化は、次いで、動物相および植物相に影響する。次いで、公衆衛生は、特に、呼吸器、皮膚、および代謝の疾患の源である、これら環境劣化に影響される。他方で、化石燃料の使用は、それらの採掘、加工、および輸送の間に上流側で生成される汚染と、機材の減耗の間に下流側で生成される汚染とを伴う。
【0009】
最後に、時間通りの現象であっても、偶発的な汚染は、偶発的事件現場の近くであると判定される地帯の環境、動物相、および植物相に重大な影響を与える。
【0010】
化石燃料を変位源として使用することの有利性を鑑み、太陽エネルギーによって給電される電動化プロジェクトが開発されている。これらのプロジェクトにより、実行可能な長期解決策を考えることが可能となる。
【0011】
しかしながら、今のところ、太陽エネルギーは断続的であるという不便さがあり、太陽光発電パネルによって生成される電気の形態で太陽エネルギーを電池内に保存することには、多数の問題があり、満足のいく解決策を構成するものではない。動作中、太陽光発電パネルによる電気の生成が汚染性でないならば、電気を電池に保存することはそれほど有利ではない。
【0012】
まず、電池の製造は汚染性であり、限られた資源、例えば、リチウム、コバルト、またはマンガンを必要とする。さらに、電池は複雑なデザインを有し、複合塩によって形成される特定の電解質、金属酸化物または黒鉛によって形成される電極を含み得、これらはすべてがリサイクルのために隔離すべき要素である。これらの知見から、電池の排除/リサイクルは簡単な行為ではなく、複雑で、エネルギーを消費し、かつ汚染性であることが明らかとなる。
【0013】
別の代替解決策は、電気分解の使用、特に燃料セルによる電気モータの給電とともに考えられている。しかしながら、現在、燃料セルは、利用するにはエネルギー連鎖収率が低すぎる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
フランスなどの多くの国が、高価な水路、つまりもはや十分に使用されていない輸送ルートである複数の海洋アクセスを有する。これに関連して、本発明は、この輸送を利用することを目的とする。これらの目的のため、本発明は、どんな気候条件であろうと、車両の動きを再生可能エネルギーから生成するための解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的のため、本出願人は、車両のけん引システムを開発することとし、けん引システムは、燃焼ガスジェネレータに給電する電気生成手段を備える。有利には、燃焼ガスは、熱機関に供給する加圧保管ユニット内に保管され、その一方、電気生成手段は、太陽光発電パネル、風力ジェネレータ、および/または潮汐ジェネレータを備える。
【0016】
特に、けん引システムの効率を最適化するために、本出願人は、ガス混合物を供給されるよう適合された2ストローク燃焼機関を開発した。
【0017】
これに関連して、本発明は、上方クランクケースと、低い静止位置から燃焼位置まで、ピストンを潤滑化するためのオイルを含む下方クランクケースとを有するクランクケースを備える2ストローク燃焼機関であって、常にかついかなる環境下でも、下方クランクケース内にオイルを閉じ込める封止手段を備える、2ストローク燃焼機関に関する。
【0018】
2ストローク燃焼機関は、上方クランクケースが、一方で、二水素および二酸素をベースとする気体燃料を導入するための吸気ポートと、他方で、下方クランクケース内にオイルを維持することにより、未使用の燃料ガスが装填された水蒸気のみを排出する排気ポートとを備え、排気ポートは、未消費の気体燃料を回収し、かつそれを吸気ポートレベルに再注入するための、排気ガス再循環デバイスに接続されていることを特徴とする。有利には、本発明の機関は、消費されなかったすべての気体燃料を回収することを可能にする。結果として、2ストローク燃焼機関の効率は最適化され、その一方、燃料および/またはエンジン潤滑油の燃焼からの汚染物排出を排除する。
【0019】
本発明の第1の特徴によれば、リサイクルデバイスは、凝縮によって、消費されたガス混合物から蒸気を分離する熱交換器を備える。
【0020】
本発明の第2の特徴によれば、封止手段は、ピストンの上方部分に形成された封止部材を備える。封止部材は、ピストンの底部のど真ん中の位置から吸気ポートおよび/または排気ポートまで、下方クランクケース内にオイルを維持するよう機能する。
【0021】
本発明の第3の特徴によれば、封止手段は、排気ポートおよび吸気ポートをそれぞれ塞ぐための2つの封止要素を備える。有利には、封止要素は、ピストンが吸気ポートおよび/または排気ポートに到達したかまたはそれを超えたとき、下方クランクケース内にオイルを維持することを保証する。特に、封止要素は、ピストン上に横方向に取り付けられ、ピストンの両側で長手方向に延在する。
【0022】
本発明の第4の特徴によれば、2ストローク燃焼機関は、吸気ポートの上流に配置されたミキサを備え、ミキサは、いずれも加圧された二水素および二酸素の混合し、熱触媒による燃焼に適した気体燃料を生成することを可能にする。
【0023】
有利には、ミキサは、二酸素および二水素を圧縮空気と混合し、かつ気体燃料中の二酸素および二水素の濃度を変えるための、圧縮空気入口も備え、エンジン速度を変化させることを可能にする。
【0024】
好ましくは、ミキサは、吸気ダクトを介して吸気ポートに接続される。さらに、リサイクルデバイスの出口における消費された軟質気体燃料は、回収ラインを介してミキサに再注入される。
【0025】
本発明の第5の特徴によれば、上方クランクケース内で、排気ポートは、吸気ポートよりも高く配置される。
【0026】
本発明の別の実施形態によれば、封止手段は、下方クランクケース内に、常にかついかなる環境下でも、下方クランクケース内にオイルを維持することに寄与する、膨張システムを備える。
【0027】
有利には、封止部材と膨張システムとは、常にかついかなる環境でも、上方クランクケースを下方クランクケースから気密隔離するように協働し、下方クランクケースから燃焼チャンバに導かれるオイルを防止する。これにより、燃焼チャンバでオイルを燃焼させる通常の2ストローク機関の主な欠陥の1つが克服され、したがって、極めて汚染性のあるオイル燃焼残渣を排除する。
【0028】
他の特徴および利点は、添付文書の図1図11に示された、本発明の2つの非限定的例示的実施形態の以下の詳細説明において明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に従うけん引システムが装備された水上車両を表す図である。
図2】本発明の第1の実施形態に従うけん引システムを示す図である。
図3.4.5.6.7.8.9.10】本発明の第2の実施形態に従う、けん引システムに使用される2ストロークガス機関の運動を表す図である。
図11】流体の運動エネルギーを機械エネルギーに変換するためのデバイスの概略図であって、この変換デバイスは図1の車両に装備される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、河川および/または海洋ルートを航行するように適合された車両2、好ましくは水上車両2のけん引システム1に関わる。有利には、本発明に従うけん引システム1は、どんな気候条件であろうと、太陽エネルギー、風力エネルギー、および水上車両用の水力などの再生可能エネルギーから、車両2の推進手段に給電することを可能にする。
【0031】
この点において、図1および図2に示すけん引システム1は、再生可能エネルギーからの電気生成手段3を備える。
【0032】
これらの目的で、電気生成手段3は、太陽光発電パネル30、好ましくは太陽光発電パネル30のアセンブリ31によって太陽エネルギーを捕捉するように適合されている。水上車両2という特定のケースでは、使用される太陽光発電パネル30は、海洋使用に準拠した外側コーティング、すなわち、高度な塩腐食条件に特に耐性のある外側コーティングを備える。電気生成手段3は、太陽光発電パネル30の出力に変換器32を備え、決められた電圧の電気を生成することを可能にする。
【0033】
図1に示された例では、太陽光への最大暴露を与えるため、太陽光発電パネル30は、高さにおいて車両2の日よけ20のレベルに設けられている。
【0034】
太陽光発電パネル30は、太陽光発電センサの向きを変えるために、太陽光最適化システムに加えて装備され得ることに留意されたい。太陽光最適化システムは、例えば、太陽光発電パネル30の傾斜を変えるように適合されたジャックによって構成され得る。
【0035】
さらに、電気生成を最適化するために、電気生成手段3は、水上車両2のすぐ近傍を循環する水または空気の流れを捕捉することによって電気を生成すようにそれぞれ適合された、風力デバイスおよび水圧デバイスを備える。各風力および水圧デバイスは、オルタネータを介して電気を生成し、決められた電圧で電気を生成するように、変換器32に接続されている。
【0036】
しかしながら、風力タービンデバイスおよび水圧デバイスの両方を車両2に組み込むという事実は、風力および水圧デバイスに関する技術の水準では解決策が提案されない制約を呈する。
【0037】
実際、一方で、最も一般的であり、回転軸および空気流に垂直なブレードを有する、「水平軸」と呼ばれる風力タービンと、他方で、「垂直軸」と呼ばれる風力タービンとの、少なくとも2つのタイプの風力タービンデバイスがある。
【0038】
両ケースで、これらのタービンは、定常的な空気流に暴露されるためにできるだけ高く配置され、地上および水表面の両方で乱流によって影響されてはならないロータを有する。さらに、水平軸風力タービンのロータは、その垂直ブレードよりも高く配置されねばならず、ブレードは、ロータおよびオルタネータの回転を駆動するのに十分に大きくなければならない。しかしながら、このような特性は、電気を生成するように複数の向きの空気流を捕捉しながら動くよう意図された車両2の制約と相容れない。
【0039】
同様に、水流を捕捉し、オルタネータを使用して電気を生成できる、「潮汐タービン」と呼ばれるいくつかのタイプの水圧デバイスがある。一般に、それは、水圧流、例えば、US海流によって回転される大きなタービンである。しかしながら、水上車両2に内蔵されるために、タービンは、どの向きであろうと、水圧流の捕捉を可能にするのに十分なトルクを有しながら、適度の寸法のものである必要がある。
【0040】
これに関連して、本出願人は、どの向きであろうと、水流および空気流の両方を捕捉し、それを層流中に導き、オルタネータを駆動するように適合されたタービンの方向において層流を加速することができる技術的解決策を開発した。
【0041】
図1および図2に示すように、けん引システム1には、回転可能に取り付けられ、流体流3300の運動エネルギーに応答して回転に入るように適合されたタービン3301を通して、流体流3300の運動エネルギーを機械エネルギーに変換するためのデバイス33が装備されている。
【0042】
流体流3300は、図11では、変換デバイス33に向かって配向された矢印で示されている。ここでは、タービン3301は、例えばリスかご型の、すなわち回転軸上に取り付けられたブレードホイールを備えるタービン。回転軸は、流体流に垂直であり、(図11に示された)タービン3301の機械的回転エネルギーを電気エネルギーに変換するように、オルタネータなどのロータリ機械レシーバ3302に接続されている。
【0043】
図11に示された例では、変換デバイス33は、タービン3301に向かう層状流体流3305を生成するように、一方で、どの向きであろうとも、流体流3300を感知するための、多方向流体流3300の感知部材3303と、他方で、案内手段3304とを備える。層状流体流3305は、図11では、タービン3301の方向において案内手段に続く、変換デバイス33の内側に位置する矢印で示されている。
【0044】
ここでは、流体流3300の案内手段3304は、好ましくは、水平であり、水平に延在する多側面チャンバ3306からなる。多側面チャンバ3306は、一方で、多側面チャンバ3306に平行な方向に延在する上方床および下方床3307によってそれぞれ、上方および下方が画定され、他方で、規定の高さで、多側面チャンバ3306に垂直に延在する側面3308によって、横方向が画定されている。
【0045】
図1に示すように、変換デバイス33を車両2に組み込むことから、多側面チャンバ3306の側面3308は、車両2のフレーム21に併合する。水面下のまたは一部水面下のタービンとして作用する変換デバイス33の場合、多側面チャンバ3306の側面3308は、ここでは車両2のフレーム21の外壁210に併合し、車両2の船郭211のレベルは、車両2の水位線に近いか、または車両2の水位線下に十分に沈む。
【0046】
逆に、風力タービンとして作用する変換デバイス33の場合、車両2のフレーム21の空気構造のレベルで、例えば日よけ20のレベルで、利用可能であらねばならない。この場合、多側面チャンバ3306の側面3308は、日よけ20の側方外壁200に併合する。
【0047】
図11に示す例では、各側面3308は、流体流3300の感知部材3303を備え、各感知部材3303は、軸の周りに回転するための可動フラップ3309によって形成されている。閉じ位置と開き位置との間で可動に取り付けられるのは、各感知部材3303のこの特性に従うものである。次いで、感知部材3303が閉じ位置にあるときは、流体流3300に対して機械的反応を発揮して、多側面チャンバ3306を区画する。逆に、感知部材3303が開き位置にあるときは、流体流3300は多側面チャンバ3306に進入する。
【0048】
本例では、感知部材3303は、機械的には、閉じ位置から開き位置へ、およびその逆に動くように設計されている。この目的のため、各感知部材3303は、図11に反応矢印によって示された、決められた機械的反応閾値3310を有する。この機械的反応閾値3310は、例えば、感知部材3303の、その軸からの弾性回転を通して、機械的手段によって調整され得る。それゆえに、流体流が、感知部材3303に、機械的反応閾値3310よりも大きい力を印加するのに十分な速度に達すると、感知部材3303は、閉じ位置から開き位置へ動く。感知部材3303が一旦開き位置になると、流体流3300は多側面チャンバ3306に進入する。
【0049】
図11に示すように、多側面チャンバ3306は、流体流3300の案内チャネル3311を含む。案内チャネル3311は、一方で、多側面チャンバ3306のすべての側面3308によって、他方で、側面3308の向きに追従するために、それ自体に巻装される内壁3312によって、横方向が画定されるという特殊性を有する。これらの目的のため、内壁3312は、第1の側3314から、案内チャネル3311の第1の端部3315に配置された側面3308に接続された第1のセクション3313を有し、第1のセクション3313は、多側面チャンバ3306の長手方向に延在する。第1のセクション3313の、第1の端部3314とは反対側の第2の端部3316は、内壁3312の第2のセクション3317に接続され、第2のセクション3317は、内壁3312の第3のセクション3319の第1の端部3318との接合点として作用する。第3のセクション3319も、多側面チャンバ3306の長手方向に、第1の端部3318とは反対側の第2の端部3320まで延在し、そこで、内壁3312は、案内チャネル3311の第2の側3322のレベルに位置する第4のセクション3321によって延長されている。内壁3312の第4のセクション3321は、接合ゾーン3323を規定し、接合ゾーン3323は、案内チャネル3311の端部を印し、加速チャネル3324と連通する。
【0050】
本例では、加速チャネル3324が、内壁3312の第1および第3のセクション3313、3319の間に形成される隙間を長手方向に、内壁3312の第2のセクション3317近くに位置するタービン3301まで延在する。有利には、内壁3312の第4のセクション3321は、ベンチュリ効果により層状流体流3305の加速を促進する加速チャネル3324のポートの断面の低減に寄与する。有利には、層状流体流3305の加速は、タービン3301のトルクを増大すること、したがって変換デバイス33の電気生成効率を最適化することを可能にする。
【0051】
図11に示すように、流体流3300が、案内チャネル3311の第1の側3315に位置する、加速チャネル3324から最も遠い側面3308によって多側面チャンバ3306に進入するとき、流体流3300は、層状流体流3305に導かれ、タービン3301に直接向かわされる。有利には、案内チャネル3311は加速チャネル3324と協働して、層状流体流3305を制限して実質的に渦巻き状の行程を作る。
【0052】
逆に、流体流3300が、その位置の上流、すなわち案内チャネル3311の第1の側3315に向かって、1つ以上の側面3308を有する側面3308を通して進入するならば、その場合、多側面チャンバ3306に進入する流体流3300は、まず、多側面チャンバ3306を圧力下におき、次いで、案内チャネル3311が流体流3300を層状流体流3305に変換し、それを、タービン3301のほうへ加速チャネル3324を介して向かわせ、後者を通りながら、層状流体流3305は、ベンチュリ効果、すなわち加速チャネル3324のポートの狭窄によって加速される。
【0053】
流体流3300、3305が多側面チャンバ3306に進入するとき、流体流3300、3305は、感知部材3303に内部圧力を印加し、それによって、流体流3300に対する機械的反応閾値3310を外側に増大させる。有利には、この特徴は、多側面チャンバ3306内の最も強力な流体流3300の進入のみを支持する。したがって、最大流体流3300の向きが変化したとき、感知部材3303が反応し、最強流体流3300の以前の向きに対応する感知部材3303は閉じ、同時に、新しい感知部材3303が、最強流体流3300の新しい向きの軸内に位置し、それを、多側面チャンバ3306に進入させる。
【0054】
図1に示すように、水平に延在する多側面チャンバ3306内に流体流3300を捕捉する能力は、小型化することを可能にし、いくつかの変換デバイス33の相互重畳を促進する。ここでは、車両2は、一方で、車両2の日よけ20に配置され、したがって風力タービンとして作用するいくつかの変換デバイス33を装備され、日よけ20は、太陽光発電パネル30で覆われており、他方で、車両2の船郭211に配置され、潮汐ターピンとして作用するいくつかの変換デバイス33を装備される。
【0055】
層状流体流3305を加速するための加速チャネル3324の使用は、タービン3301の電力がおおよそ「ベッツ限界」に従うと予測することを可能にする。「ベッツ限界」の式を使用することにより、特に、以下の式における流体速度から、電力をワットで予測することが可能である。
Pw=16/27×1/2×p×S×V
ここで、
Pw=電力ワット
p=流体の密度
S=平方メートルで表される面積
V=m/sで表される流体速度
【0056】
図2に示された例では、電気生成手段33の出力における有効電気生成は、変換器32に送られ、変換器32は、燃焼ガスジェネレータ4の決められた電圧で電気を供給する。ここでは、ガスジェネレータ4は、グループに編成されている電解セル40によって形成されている。好ましくは、電解セル40は、太陽光発電パネル30によって給電される太陽グループ41と、風力タービンとして作用する変換デバイス33によって給電される風力グループ42と、潮汐タービンとして作用する変換デバイス33によって給電される水圧ユニット43との、3つのグループに編成される。
【0057】
好ましくは、電解セル40の各グループ41、42、43は、並列接続されたいくつかの電解セル40を備える。また、電解セル40の3つのグループ41、42、43は、相互に並列接続されている。
【0058】
下記の表1に説明されるように、電気生成手段3は、利用可能な再生可能エネルギーに対応する少なくとも1つのグループ41、42、43の電解セル40を用いて、3つのタイプの再生可能エネルギー(太陽、風力、水圧)で給電することを可能にする。3つの異なる再生可能エネルギーから電気を生成できる能力は、燃焼ガスの生成をほぼ連続的に維持することを可能とする。各再生可能エネルギー源は、大気条件に依存する利用可能性を有する。ここでは、電気生成手段3は、電気をほぼ永久的に生成することができ、再生可能エネルギー源の定例的な断続性の問題を克服する。
【表1】
【0059】
本例では、電解セル40には、車両2が水上用である場合、貯水所または周辺水環境のいずれかから水が供給される。
【0060】
各グループ41、42、43の電解セル40には、触媒、または海水中に自然に存在するイオン形態(Na(含水),Cl(含水))の含水塩化ナトリウム(NaCl)などの電解質が供給される。
【0061】
公知の方法では、水の電気分解は、次の式に従い、気体形態の二水素および二酸素を生成することを可能にする。
2HO(l)→O(g)+2H(g)
【0062】
圧力下で相互に混合された上記2種の気体は、本発明のけん引システム1に関連して利用したい、卓越した燃焼特性を有する。
【0063】
しかしながら、これらの燃焼特性は、二水素および二酸素を相互に隔離すること、かつ独立して保存することを強要する。この目的で、水の電気分解中の公知の方法では、二酸素を、電解セル40のアノードにおける酸化反応によって形成する。逆に、二水素は、カソードにおける還元反応によって形成する。これに関連して、カソードとアノードとを分離することにより、二水素の生成を二酸素の生成から隔離することが可能である。
【0064】
この教訓に従い、例えば、けん引システム1に取り付けられた各電解セル40は、圧力下の電解水溶液に対応する電解質が充填されたチャンバからなり得る。
【0065】
ここでは、電解水溶液は、電導性ならびに二酸素および二水素の形成を支援する電解質塩を装填された水を指す。
【0066】
本例では、各電解セル40のチャンバは、一方で、酸化/還元反応を促進する電解質供給と、他方で、電解質が電解セル40内に留まるように、異なる圧力および/または容積によって機械的入力を補充する加圧温水供給400とが装備された、遷移隔室を備える。
【0067】
遷移隔室は、一方で、完全に浸漬されたアノード電極またはアノードが配置されたアノード隔室に、他方で、完全に浸漬されたカソード電極またはカソードが配置されたアノード隔室に接続されている。遷移隔室は、アノードとカソードとの間の電流の流れを可能にすることに留意されたい。
【0068】
カソード隔室およびアノード隔室はそれぞれ、二水素装填水出口401と、二酸素装填水出口402とを備え、これらは両方とも、二酸素および/または二水素を電解質水溶液から分離するように適合された水/ガスセパレータに接続されている。水/ガスセパレータの出口では、二水素および二酸素はそれぞれ、それらに特定された圧縮/保管回路403、404に送り込まれ、その一方、電解質は、電解セル40のチャンバに戻るために戻りパイプを拝借する。
【0069】
図2に示すように、各グループ41、42、43の各電解セル40は、一方で、二水素の圧縮/保管回路403に、他方で、二酸素の圧縮/保管回路404に接続されている。各保管回路403、404は、二水素および二酸素をそれぞれ、それらに専用の加圧保管ユニット5に送達することを可能にする。したがって、けん引システム1は、二水素の保管に専用化された第1の保管ユニット50と、二酸素の保管に専用化された第2の保管ユニット51とを含む。
【0070】
各保管ユニット50、51には、ガスが保管される前にガスを圧縮するように適合された圧縮器52が装備されている。圧縮器52は、保管筐体55、56の内部圧力を制御するための第1の安全圧力スイッチを含む、保管筐体55、56の入口53、54に配置される。第1の安全圧力スイッチは、例えば、圧力が予め決められた機械的抵抗閾値に達すると、可聴警報をトリガするようにプログラムされる。
【0071】
そのうえ、保管筐体55、56の偶発的な破損を防止するために、低圧の、例えば5バール未満の圧力の、空洞安全隔室59、60によって包囲されている。安全隔室には、たとえ最小限であろうとも、保管筐体55、56の漏洩を排除するよう設定された、第2の安全圧力スイッチが装備されている。したがって、安全隔室59、60の圧力に小さな変化があった場合、後者によって検出され、後者は、警報、例えば可聴シグナルをトリガして、安全隔室59、60の異常圧力を知らせるようにプログラムされる。したがって、システム全体を休止させ、警報によって懸念される隔室59、60を空にし、破損ゾーンの位置を突き止め、それを処置することが可能である。
【0072】
さらに、各保管筐体55、56の出口57、58には、膨張バルブが設けられ、熱機関7への供給回路6においてより低圧になる前に、保管されているガスの少なくとも部分減圧を可能にする。
【0073】
水の電気分解の式により上述したように、この反応は、二酸素の2倍、したがって2倍の容積の二水素を生成する。このパラメータは、二酸素の保管筐体56の保管容量の2倍の保管容量を有する二水素の保管筐体55の設計において考慮される。
【0074】
図2に示された例では、供給回路6は、圧力下の二水素をその保管ユニット50からミキサ61へ運搬する第1のパイプ60を備える。平行して、第2のパイプ62が、圧力下の二酸素をその保管ユニット51からミキサ61へ運搬する。ミキサ61は、熱触媒による燃焼に適した気体混合物を生成するために、いずれも加圧されている二水素および二酸素を混合する。ミキサ61は、ミキサが圧縮空気を二酸素および二水素と混合できるように、圧縮空気供給も含む。
【0075】
有利には、二水素および二酸素と実質的に等しい圧力の圧縮空気の供給は、熱機関7が停止されているときは0%だけ、熱機関7が全速であるときは100%で、熱機関7の速度を変調するために、燃焼混合物の燃料濃度の豊富度を変化させることを可能とする。
【0076】
さらに、圧縮空気の供給はまた、二酸素保管筐体56への二酸素を、圧縮空気中で自然に入手可能である二酸素に、追加することにより、燃焼および酸化剤の利用可能性を促進する。
【0077】
最後に、容易に入手可能な圧縮空気の供給は、熱機関7の運転のために必要な気体混合物の容積を、より低コストで補充することを可能とする。
【0078】
ミキサ61の出口において、気体混合物は、熱機関7に吸気ダクト63を介して注入される。
【0079】
同様に、保管筐体55、56については、供給回路6は、これら要素、つまりパイプ60、62、ミキサ61、および吸気ダクト63の各々に対する圧力スイッチが装備された安全エンベロープを有し得る。
【0080】
本発明の第1の実施形態によれば、けん引システム1には、標準的な熱機関7が装備される。吸気ダクト63は、熱機関7の入口70に、好ましくは数百ミリバール~数バールの低圧ガス混合物を供給する。
【0081】
有利なことに、加圧二水素/二酸素の気体混合物の燃焼は、下記の式に従い、水蒸気のみを生成することが認められている:
2H(g)+O(g)=HO(g)
【0082】
二水素および二酸素は燃焼ガスであり、ここでは、二水素は燃料の役割を果たし、その一方、二酸素は、圧縮空気からの二酸素に加えて、酸化剤というその通常の役割を果たす。これに関連して、熱機関7の排気71は、水蒸気と、熱機関7の入口70に最初に導入されたガス混合物の非燃焼画分とである。排気71のガスが熱機関7から逃げるのを防止するため、かつ熱機関7の効率を最適化するために、けん引システム1は、排気71のレベルに設けられた排気ガスリサイクルデバイス72を備える。
【0083】
本例では、排気ガスリサイクルデバイス72は、熱機関7からの排気71内で直接に、未消費の燃焼ガスを捕捉し、それらを、熱機関7の入口70のレベルで再注入することを可能にする。この目的で、リサイクルデバイス72は、排気ガスを凝縮して、未消費の燃焼ガスが充填されている70℃~90℃の温水を得るための熱交換器を備える。未消費の燃焼ガスを熱機関7に再注入するために、リサイクルデバイス72は、適合され、未消費の燃焼ガスから蒸気を分離する。本例では、水蒸気は、未消費の燃焼ガスから凝縮によって分離される。大気圧では、水蒸気は100℃未満の温度で凝縮するが、二水素および二酸素は、正の温度の大気圧では凝縮され得ない。
【0084】
水蒸気を凝縮するために、リサイクルデバイス72は、熱伝導流体を使用する。ここでは、リサイクルデバイス72は、冷却材として冷水を使用する熱交換器からなる。冷水は、好ましくは、20℃未満の温度であり、7201油圧ポンプによって供給される水供給ライン7200から来る。
【0085】
好ましくは、水上車両2の場合、油圧ポンプ7201は水を周囲環境に引き入れる。けん引システム1のパイプを詰まらせないため、例えば多層セラミックフィルタを介して、ポンプ7201で重量濾過を実施する。
【0086】
リサイクルデバイス72の出口では、蒸気凝縮器が、第1の排出パイプ7203を通過する排出7202に排出され、その一方、未消費の燃焼ガスは、導管回収74を介してミキサ61内に再注入される。ミキサ61が均質で均圧のガス混合物を吸気ダクト63に送達するように、消費された燃焼ガスは、ミキサ61の入口で圧縮されることに留意されたい。
【0087】
さらに、排気ガスを冷却するための冷却材として機能した温水は、リサイクルデバイス72の出口で集められ、温水のミキサ/バルブ8にリサイクルライン740を介して移送される。
【0088】
けん引システム1はまた、熱機関7の冷却システム75を備える。熱機関7の冷却システム75は、冷却材の循環を使用して機関7を冷却する。ここでは、冷却システム75は、冷却材として冷水を使用する。リサイクルデバイス72については、冷水は、好ましくは20℃未満の温度を有し、水供給ライン7200の支管7204から来る。
【0089】
冷却システム75の出口では、熱機関7の冷却の間に生成された温水が、回収ライン7500を介して、温水とともにミキサ/バルブ8に移送される。
【0090】
これに関連して、温水ミキサ/バルブ8は、熱機関7の冷却システム75およびリサイクルデバイス72から温水を受け取り、次いで、温水の第1の部分を供給回路80内に、電解セル40の下方の温水供給チャネル400まで移送する。
【0091】
ミキサ/バルブ8は、暖水の第2の部分を、第2の排出ライン83を介して排出7202に排出する。
【0092】
さらに、けん引システム1は、ミキサ61の入口および出口に配置された第1の対の逆流防止火炎バルブと、熱機関7の入口70および排気72のレベルに配置された、第2の可撓性逆流防止バルブ火炎と、排気のリサイクルデバイス73の交換器の入口および出口に配置された第3の対の逆流防止バルブとを備える、安全システム9の逆流防止バルブを備える。
【0093】
標準的な熱機関7の使用は、一方で、すでに活動中の一隊の車両2にけん引システム1を容易に適合させること、他方で、再生可能エネルギーから、燃焼ガスの供給が一時的に不足した場合に化石燃焼供給に切り替えるように適合された、供給回路6の可逆スイッチを作ること、を可能にする。しかしながら、標準的な熱機関の使用は、燃焼ガスのエネルギーを機械的エネルギーに変換する効率が低い。
【0094】
図3図10に示す本発明の第2の実施形態では、出願人は、標準的な2ストローク熱機関の主な長所を保存し、その主な欠点を排除する、新たな2サイクル熱機関を開発すべく努力した。
【0095】
一般論として、2ストローク熱機関は、その保守管理を容易にする単純な機械構造を有すること、同じ排気量の4ストローク機関よりも強力で、面倒でなく、軽量であること、実質的な変更なしにあらゆる位置で使用可能であることという長所を有し、2,000rpm未満の低速および30,000rpmを超える超高速の、広範な用途があり、ターボまたは圧縮器なしで430ch/Lの、および低燃費の2ストローク直接注入機関の場合、3L/100km未満のオーダーの良好な性能を有する。
【0096】
これらすべての長所にもかかわらず、かつて広く使用されていた2ストローク熱機関は、はるかに汚染性が少ない、より複雑な4ストローク機関に次第に置き換えられた。実際、2ストローク機関では、一方で、未燃焼燃料の損失を惹起する、排気ポートを閉じる前にピストンが進む距離が長すぎること、他方で、大気中に放出されるもので、シリンダを潤滑化するための燃料中の潤滑油に由来する、あまり燃焼していないオイルの放出という、2つの主な現象が著しい汚染排気を生成する。これは、燃料が下方クランクケースに供給され、そこで、燃料が、クランクケース内のシリンダを通過する前に、予め圧縮されるという事実に起因する。結果として、2ストローク機関は、オイルの存在による潤滑がなく、下方クランクケース内に維持される。潤滑油は、したがって、空気および燃料と混合される。
【0097】
図3図10に示すように、本出願人は、常にかつあらゆる環境で、相互に隔離された2つの隔室に分割されるクランクケース701を備える、2ストローク燃焼機関700を開発した。実際、クランクケース701は、その中に燃焼チャンバ7020が形成されている上方クランクケース702と、下方クランクケース703とを備える。上方クランクケース702および下方クランクケース703は、シリンダ704によって接続されている。本例では、下方クランクケース703には、下方クランクケース703内に配置されたクランクシャフト705の良好な潤滑を保証するエンジンオイルが充填されている。エンジンオイルは、上方クランクケース702と下方クランクケース703との間のシリンダ704内に位置する休止位置と、7020燃焼チャンバの頂部7021に到達する圧縮位置との間で可動である潤滑ピストン706に作用する。7020燃焼チャンバの頂部7021は、下方クランクケース703とは反対側の、上方クランクケース702内に位置している。1つエンジンサイクルの間、ピストン706は、下方クランクケース703から燃焼チャンバ7020の頂部7021まで、および逆戻りして下方クランクケース703まで、シリンダ704内の並進運動によって一方の位置から他方へ動いて、エンジンサイクルを完了する。
【0098】
ここでは、クランクシャフト705は、接続ロッド707を通して、ピストン706に偏心して接続されている。ロッド707は、一方で、ピストン706に対して軸方向に、他方で、機械的ボール接合部の助けによりクランクシャフト705に対して偏心して、回転する機械的リンクによって接続されている。このクランクシャフト705における接続ロッド707の偏心機械的接続は、ピストン706の並進運動を、エンジンサイクルの間、クランクシャフト705の連続回転運動に変換することを可能にする。さらに、クランクシャフト705は、車両2を推進するための手段を駆動するように適合された回転機械的レシーバにそれ自体が接続されている、回転シャフトと一体化されている。
【0099】
本例では、2ストローク機関700は、ピストン706と協働して、エンジンサイクルの間常にかついかなる環境下でも、上方クランクケース702を下方クランクケース703から気密隔離する、封止手段を備える。
【0100】
有利には、上方クランクケース702に対する下方クランクケース703の絶縁は、常にかついかなる環境下でも、下方クランクケース703内に存在するエンジンオイルが燃焼チャンバ7020に移動し、そこで、その一部および/または全部が燃焼し、かつ/または排気中に廃棄されるのを防止することを可能にする。この特性は、したがって、下方クランクケース703のオイルは決して燃焼チャンバ7020内に移動しないので、汚染性排気放出の排除に寄与する。さらに、エンジンサイクル中にピストン706のストロークを容易にするために、シリンダ704を潤滑化するための追加化合物を導入することはもはや必要ない。かつては部分的に燃焼し、機関から排出されていた、これらの追加化合物は、重大な汚染源であった。
【0101】
下方クランクケース703に対する上方クランクケース702の絶縁のため、2ストローク機関700は、その吸気ポート712が、燃焼チャンバ7020レベルで、上方クランクケース702の第1の側7022から直接形成されている、入口70を含む。したがって、シリンダ704を潤滑化するために燃料に潤滑油を加えることはもはや必要でない。
【0102】
有利なことに、加圧気体混合物の導入は、標準的な熱機関の吸気ポートのものと比較し、吸気ポート712の寸法を小さくすることを可能とし、ピストン706の運動に関連して、吸気ポート712の寸法を小さくするという事実は、ピストン706と吸気ポート712との間の協働を最適化する。実際、吸気ポート712と、空気吸入ポートの上方に設けられた排気ポート714との間のピストン706のストロークを制限するように、吸気ポート712をより最適な位置に配置することが可能である。この特性は、エンジンサイクルを再スタートする前の、新たなガス混合物による燃焼チャンバ7020の洗浄時間を限定することを可能にする。この特徴は、有利なことに、ガス混合物消費を低減する。ここでは、吸気ポート712は、熱触媒によって探査するように適合された加圧ガス流が流れる吸気ダクト63に接続されている。
【0103】
公知の方法では、2ストローク機関700が稼働中のとき、下方クランクケース703内に含まれるオイルは、温度が上昇し、膨張する。したがって、下方クランクケース703内に含まれるオイルの体積は、その低温の体積の8%~15%膨張する。その結果、封止手段が、下方クランクケース703と上方クランクケース702との間の気密隔離を維持することだけでなく、期限切れのオイルが、吸気ポート712および/または排気ポート714を通して逃げるのを防止するよう機能する。有利なことに、封止手段は、潤滑オイルが、2ストローク機関700から排気として廃棄されることを防止することに寄与する。
【0104】
この目的で、封止手段は、好ましくはピストン706の上方部分711内に、ピストン706に装備する少なくとも1つの封止部材710を備える。本例では、ピストンは、相互に近接して配置された2つのセグメントによって形成される封止部材710を備え、2つのセグメントは、ピストン706をその上方部分711で包囲する。
【0105】
封止部材710は、封止部材710が、図4図6に示された吸気ポート712および/または排気ポート714に到達しかつそれを超えるまで、(図10に示された)ピストンの底部のど真ん中の位置から、下方クランクケース703を上方クランクケース702から隔離することを可能にする。ピストン706の運動のこの状況では、オイルが下方クランクケース703から逃げないように、封止部材は2つの側方封止要素710a、710bを備える。側方封止要素710a、710bは、それぞれ排気ポート714および吸気ポート712を塞ぐように、ピストン706に取り付けられる。これらの目的のため、側方封止要素710a、710bは、ピストン706の両側で長手方向に延在する。
【0106】
実際、側方封止要素710a、710bは、封止部材710が位置する方向に対して垂直である、同じ長手方向に延在する2つのセグメントによってそれぞれ形成されている。それらの構成によって、側方封止要素710a、710bは、下方クランクケース703のオイルを閉じ込め、したがって、2ストローク機関700の排気中への汚染物質放出を防止する。
【0107】
別の実施形態によれば、封止要素710a、710bは、膜によって形成される、膨張システム709によって置き換えられ得る。膨張可能な膜は、機械的装飾性を有するポリマー化および/または複合材料で作成し得る。これらの機械的変形特性によって、膜は、ピストン706の上向きおよび下向きのストロークの間、変形することができる。変形することで、膜の上方部分は、吸気ポート712および/または排気ポート:714を塞ぐように、変形および/または膨張する。ピストン706の下向きストロークの間、膜は後退し、元の形状に戻る。
【0108】
別の実施形態によれば、封止要素710a、710bは、吸気ポート712および/または排気ポート714に取り付けられたバルブによって置き換えられ得る。有利には、封止部材710が吸気ポート712および/または排気ポート174に到達したときおよび/またはそれを超えたとき、バルブは、それらを塞ぐように構成される。
【0109】
本例では、圧力によるガスの流れは、ミキサ61から吸気ダクト63を介して来る、二水素/二酸素/加圧空気のガス混合物に対応する。
【0110】
気体混合物の燃焼を生み出すために、2ストローク機関700は、サイクル内で加圧および圧縮された気体混合物の燃焼を熱的に触媒することができる電気アークを生成するように適合された点火システム716を備える。ここでは、点火システム716は、燃焼チャンバ7020の頂部7021に配置されたスパークプラグによって形成されている。
【0111】
さらに、2ストローク機関700は、排気71を有し、その排気ポート714は、燃焼チャンバ7020のレベルにおいて、上方クランクケース702の第2の側7023から洗浄される。ここでは、上方クランクケース702内で、排気ポート714は吸気ポート712の上方に配置されている。
【0112】
有利には、排気ポート714は、排気ポート714の開口の高さを変えることを可能にする機械的システムを備え、特に低速および中速のエンジン速度に対して、気体圧力損失を制限することを可能にする。この特性は、2ストローク燃焼機関のトルクおよび融通性を増大させる。
【0113】
本例では、排気ポート714は、機関排気をリサイクルデバイス72に運搬する排気ダクト715に接続され、未消費の燃焼ガスを回収し、続いてそれらを吸気70のレベルで再注入する。
【0114】
2ストローク燃焼機関700は、シリンダ704の冷却システム75を備える。前述したように、水上車両2の場合、冷却システム75は、油圧ポンプ7201によって供給される水供給ライン7200の中間点からの冷水を利用するオープン回路である。
【0115】
説明された2ストローク燃焼機関700の特徴を考慮し、ホッパーサイクルは、図3に示す吸気ステップを含む。この吸気ステップの間、ピストン706は休止位置にあり、したがって、吸気ポート712および排気ポート714を開き位置のままにする。加圧気体の二水素/二酸素混合物は、吸気ポート712を通して燃焼チャンバ7020に進入する。ここでは、吸気ダクト63から燃焼チャンバ7020へと貫く矢印によって、ガスの流れが模式的に示されている。
【0116】
エンジンサイクルは、図4および図5に示すステップを有する。これらのステップの間、ピストン706は、その圧縮位置における休止位置まで動き、ピストン706は、燃焼チャンバ7020の頂部7021に向かって延びる。封止部材710は、次いで、吸気および排気ポート712、714を封止する。この特性は、一方で、燃焼チャンバ7020内に存在する気体混合物の良好な圧縮を促進し、他方で、ピストン706の下方部分713に位置する第2の封止部材710は、(図5図7に示された)ピストン706が圧縮位置にまたは圧縮位置近くにあるとき、下方クランクケース703を機関吸気70から隔離することを可能にする。
【0117】
図6に示すように、エンジンサイクルは、ピストン706がその圧縮位置に到達し、その上方部分711が燃焼チャンバ7020の頂部7021のすぐ近傍に位置したときに発生する気体混合物に点火するステップを含む。このとき、点火システム716は、圧縮ガス混合物の燃焼をトリガする電気アークを生成する。ここでは、電気アークは、ピストン706と燃焼チャンバ7020の頂部7021との間に位置するスパーク717によって表されている。
【0118】
気体混合物の燃焼は、圧縮され、それに続く膨張ステップにおいて、燃焼に続くガスの膨張により、ピストン706は休止位置に押し戻され、(図7に示された)ピストン706の動きに追従する接続ロッド707の下降によって、クランクシャフト707の回転が惹起される。
【0119】
図8の例は、ピストン706が排気ポート714よりも下に押されたエンジンサイクルの瞬間に対応する排気ステップを示す。排気ポートは、次いで、燃焼由来のガスおよび未消費の燃焼ガスを燃焼チャンバ7020から許可する。ここでは、燃焼後の排気ガスは、燃焼チャンバ7020から出て排気ダクト715に向かう、排気ポート714内の矢印によって示されている。
【0120】
新たなエンジンサイクルを開始するために、エンジンサイクルは、図9および図10に示す、燃焼チャンバ7020の洗浄ステップを含む。このステップは、終了したエンジンサイクルの燃焼に由来するガスの排気ポート714を流し洗浄し、それを、新しい加圧ガス混合物で置換することからなる。この目的のため、このステップは、ピストン706がシリンダ704内の吸気ポート712よりも下に押し戻されたとき、つまり(矢印で示された)吸気ポート712が開いて、気体混合物のエントリを許可する状況でのみ、可能である。
【0121】
洗浄ステップに続いて、新たなエンジンサイクルが上述したように開始する。
【0122】
燃焼チャンバ7020を洗浄するために使用された余分な気体混合物は、リサイクルデバイス72によって回収され、吸気ポート712に再注入されることに留意されたい(上記参照)。この特徴は、2ストローク機関700の効率を可能にし、エンジンサイクルに続くいかなる汚染物質排出も防止する。
【0123】
本発明の別の特徴によれば、このような2ストローク機関700は、自動車などの陸上車両にも適合し得る。
【0124】
しかしながら、例えば小型水上車両2または陸上車両2といったある特定のケースには、あるいは大気条件が、2ストローク燃焼機関700の稼働のための二水素および二酸素の十分な生成を可能としないまれなケースでは、二水素および二酸素の生成は、本発明において利用される再生可能エネルギーのお陰で、達成、獲得、および脱同期化され得る。
【0125】
この問題に対して、通常の車両の方法では、このような車両2のユーザは、動かす前に、気体の力でまたは液化ガスの形態で、二水素および二酸素の保管ユニット55、56を再補給することができることが期待される。

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図9
図10
図11