(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】工具マガジン及び工具変更方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/157 20060101AFI20220928BHJP
B23Q 11/10 20060101ALN20220928BHJP
B24B 45/00 20060101ALN20220928BHJP
【FI】
B23Q3/157 R
B23Q3/157 F
B23Q11/10 D
B24B45/00 A
(21)【出願番号】P 2020505225
(86)(22)【出願日】2018-09-04
(86)【国際出願番号】 EP2018073770
(87)【国際公開番号】W WO2019052859
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-05-27
(32)【優先日】2017-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515264894
【氏名又は名称】ロロマティク・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】ピコン・ファービエン
(72)【発明者】
【氏名】ビュルリ・フレデリク
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02567783(EP,A1)
【文献】特開昭63-144926(JP,A)
【文献】特開2013-226631(JP,A)
【文献】米国特許第03745646(US,A)
【文献】特開昭56-126552(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014218899(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/155 - 3/157
B23Q 11/10
B24B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の工具主軸に配置するために備えられた複数の工具を収容する工具マガジンは、
機械基部(6)に固定配置されたガイドレール(5)と、
ガイドレール(5)に移動可能に取り付けられたマガジンキャリッジ(7)と、
マガジンキャリッジ
(7)上に配置された回転駆動装置(8)とを備え、回転駆動装置
(8)は、マガジンキャリッジ
(7)上に回転可能に配置されたマガジンシャフト(9)にトルクを伝達し、シャフト回転軸線(13)を中心にマガジンシャフト(9)を回転させ
るものであり、工具マガジンはさらに、
マガジンシャフト(9)に
設けられていて、シャフト回転軸線(13)を中心に回転可能な少なくとも2
個のマガジンホイール(10、11、12)と、
機械基部(6)の移送軸線(19)に沿ってガイドレール(5)に対して横方向で直線的に移動可能な、工具(15)を備えた移送装置(18)とを備え、
少なくとも2であるn個のマガジンホイール(10、11、12)それぞれがm個の工具ホルダを備え、1個の工具ホルダが各マガジンホイール上で空いている状態を保つようにnとmの数が設定されていて、工具マガジンが、合計m-n+1個の工具(15、25)を収容可能であり、
移送装置(18)は、マガジンホイール(10、11、12)の工具ホル
ダの1つに配置されている工具(15)を受け取り、受け取った工具(15)を移送軸線(19)に沿って工具ホル
ダから離れて工具主軸(3)に向かって移送して、工具主軸(3)に配置し、そして、移送装置(18)は、工具主軸(3)に配置されている工具(25)を受け取り、移送軸線(19)に沿って工具主軸(3)から離れて、マガジンホイール(10、11、12)の自由な工具ホルダ(14)に向かって移送して、自由な工具ホルダ(14)に工具(25)を配置する、
工具マガジン。
【請求項2】
移送装置(18)は、
移送装置(18)が工具主軸(3)に最も近い位置にあり、工具主軸(3)に配置された工具(25)を受け取るか、又は工具(15)を工具主軸(3)に配置する、主軸位置と、
移送装置(18)が移送装置(18)に向いているマガジンホイール(10)の
前記自由な工具ホルダ(14)と異なる工具ホル
ダに配置され
ていた工具(15)を受け取り、又はマガジンホイール(10)の自由な工具ホルダ(14)に工具(25)を配置する工具(25)を受け取る、工具変更位置と、
の少なくとも2つの最終位置を持ち、そして、
移送装置(18)は、移送軸線(19)に沿って、主軸位置と工具変更位置との間で直線的に変位可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の工具マガジン。
【請求項3】
移送装置(18)は、第3の最終位置として、主軸位置と工具変更位置との間に中間位置を有し、中間位置で、マガジンホイール(10、11、12)
の回転は移送装置(18)
に損なわれない、
ことを特徴とする請求項2に記載の工具マガジン。
【請求項4】
マガジンホイール(10、11、12)は工具ホルダ用の移送位置を有し、
移送位置において、移送位置にある工具ホルダ(14)が、
工具ホルダ(14)に配置された工具(15)が工具変更位置における移送装置(18)に配置可能となるか、又は工具ホルダがない場合、移送装置に配置された工具が、工具ホルダに配置可能となるように、移送装置(18)の工具変更位置のすぐ隣に配置されることと、
マガジンホイール(10、11、12)の各工具ホルダ(14)が移送位置に移動可能ように、マガジンホイール(10、11、12)が、ガイドレール(5)に沿って移動可能で
あることと
を特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の工具マガジン。
【請求項5】
各マガジンホイール(10、11、12)の工具ホルダ(14)の1つは、工具が移送装置又は工具主軸に配置されている場合、工具がないことを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項に記載の工具マガジン。
【請求項6】
マガジンキャリッジ(7)をガイドレール(5)に沿って移動させるリニア駆動部を備えることを特徴とする請求項1から
5のいずれか一項に記載の工具マガジン。
【請求項7】
複数のマガジンホイール(10、11、12)はマガジンシャフト(9)上で互いに平行に配置されていることを特徴とする請求項1から
6のいずれか一項に記載の工具マガジン。
【請求項8】
少なくとも3つのマガジンホイール(10、11、12)が装備されていて、2つの隣り会うマガジンホイール(10、11、12)間は、等距離であることを特徴とする請求項1から
7のいずれか一項に記載の工具マガジン。
【請求項9】
マガジンシャフト(9)は、少なくとも1つの回転軸受(24)に収容され、マガジンキャリッジ(7)に支持されていることを特徴とする請求項1から
8のいずれか一項に記載の工具マガジン。
【請求項10】
マガジンホイール(10、11、12)の工具ホルダ(14)は、工具モジュール(17)とともに工具(15)を収容し、工具モジュール(17)には、各工具(15)が冷媒分配機(16)と共に配置されていることを特徴とする請求項1から
9のいずれか一項に記載の工具マガジン。
【請求項11】
マガジンシャフト(9)は、ガイドレール(5)とほぼ平行に配置されていることを特徴とする請求項1から
10のいずれか一項に記載の工具マガジン。
【請求項12】
各工具ホルダ(14)
には、工具(15)がマガジンシャフト(9)に平行な工具軸線に配向するように、工具(15)
が1つだけ入ることを特徴とする請求項1から
11のいずれか一項に記載の工具マガジン。
【請求項13】
移送装置(18)は、ガイドレール(5)に対して実質的に直交に、移送軸線(19)に沿って直線的に変位可能となるように機械基部(6)上に配置されることを特徴とする請求項1から
12のいずれか一項に記載の工具マガジン。
【請求項14】
マガジンシャフト(9)が、工具主軸とほぼ平行に配置されていることを特徴とする請求項1から
13のいずれか一項に記載の工具マガジン。
【請求項15】
請求項1から
14のいずれか一項に記載の工具マガジン(1)を備える加工機械(2)は、少なくとも1つの自由な工具ホルダ(14)を各マガジンホイール(10、11、12)に設けられている、工具主軸を有する加工機械(2)において工具を交換する方法において、
工具主軸(3)に最も近い位置にある主軸位置に移送装置(18)を配置して、移送装置(18)によって工具主軸(3)に配置され
ている第1工具(25)を受け取ることと、
マガジンホイール(10)の自由な工具ホルダ(14)が、移送装置(18)に配置され
ている第
1工具(25)を自由な工具ホルダ(14)に配置可能である移送位置に位置するように、マガジンホイール(10、11、12)の回転とマガジンキャリッジ(7)の変位との少なくとも一方を行う
ことであって、マガジンホイール(10)は工具主軸(3)に配置すべき第2工具(15)を自由な工具ホルダ(14)と異なる工具ホルダに持っている、前記回転と前記変位との少なくとも一方を行うことと、
工具主軸(3)から離れて、工具交換位置へ移送軸線(19)に沿って移送装置(18)を工具交換位置に移動することであって、
工具交換位置では、移送装置(18)が第2工具(15)を持ってマガジンホイール(10)に最接近していて、そして、
移送位置では、一方で第1工具(25)を持っている移送装置(18)と、他方
でマガジンホイール(10)の自由な工具ホルダ(14)とが互い
に対向する、移送装置(18)を移送軸線(19)に沿って移動することと、
移送装置(18)に配置されている第1工具(25)を、
マガジンホイール(10)の自由な工具ホルダ(14)に置くことと、
第
2工具(15)を
自由な工具ホルダ(14)と異なる工具ホルダに持つマガジンホイール(10)を、第
2工具(15)を持つ工具ホルダが移送位置になるまで回転することと、
移送装置(18)に第
2工具(15)を置くことと、
移送軸線に沿ってマガジンホイール(10)から離れて工具主軸(3)に向かって、第
2工具(15)を有する移送装置(18)が主軸位置になるまで、移送装置(18)を移動することと、
第
2工具(15)を工具主軸(3)に置くことと
を備えることを特徴とする、方法。
【請求項16】
第
1工具(25)の配置と第
2工具(15)の取り上げとの間で、移送装置(18)は、マガジンシャフトから中間位置まで移送軸線(19)に沿って移動し、そのときマガジンシャフト(9)は、工具ホルダから第
2工具(15)を取り上げるために、第
2工具(15)が移送位置にあり、移送装置(18)が続いて工具変更位置に戻されるまで、回転されることを特徴とする請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
第
1工具(25)を工具主軸(3)から移送装置(18)に配置することと、移送装置(18)を工具主軸(3)からマガジンシャフト(9)の方向に移動することとが、第
2工具(15)を持つマガジンホイール(10)の移動と移送位置にあるこのマガジンホイール(10)の自由な工具ホルダ(14)の配置と同時に、行われることを特徴とする請求項
15又は16に記載の方法。
【請求項18】
第
2工具(15)が工具主軸(3)に配置された後、移送装置(18)は移送軸線(19)に沿って移動し、工具主軸(3)から外れているアイドリング位置に配置されることを特徴とする請求項
15から17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の工具主軸上に配置するために提供される複数の工具を収容する工具マガジン、及び工具マガジンを使用して工具を交換する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工具主軸を備えた工作機械は、加工物の加工、例えば穿孔、フライス加工、研削、旋削、研磨、ねじ切りなどに使用される。多くの場合、加工物を加工する際に異なる工具が必要である。加工に応じて、これらの工具は工具主軸に配置される。機械加工に必要な工具は、工具マガジンで入手可能である。工具マガジンには移送装置が装備されている。移送装置は、工具主軸に既に配置されている最初の工具を工具主軸から取り外し、工具マガジンに移動してそこに置き、工具マガジンから2番目の工具を取り外し、工具主軸に移動して工具主軸に配置する。そのような工具マガジンは、特許文献1に既知である。この文書は、研削盤用の工具マガジンを開示する。工具マガジンには、研削主軸に平行な工具マガジン軸を中心に回転可能なマガジンホイールが装備されている。マガジンホイールには複数のホルダがあり、各ホルダは工具を有している。移送装置が移動可能に設けられている。移送装置は、研削主軸とマガジンホイールの間を、粉砕主軸線に垂直に走る移送方向に前後に移動する。研削主軸から工具を取り外し、工具マガジンの工具と交換する。工具を移送装置からマガジンホイールに、又はその逆に移送可能にするように、空いているホルダ又は工具を位置させるため、マガジンホイールは回転される。工具マガジンで使用可能な工具数は、マガジンホイールによって予め決まる。提供する工具の数を増やす場合、マガジンホイールの半径を大きくする必要がある。工具マガジンは通常、同じ機械基部の同じ筐体内の工具主軸のすぐ隣りに設けられる。マガジンホイールの半径が大きくなるならば、これは、工具主軸とは別に追加のスペースを使用可能にする必要があることを意味する。このスペースは通常、指定された筐体では残っていない。したがって、マガジンホイールの半径の増加は、通常、筐体の拡大を伴う。工具マガジン軸を備えたマガジンホイールは研削主軸線に平行に配置されているため、工具マガジン内の工具数の増加は、工具主軸線に垂直な平面での工作機械の筐体の拡大を意味する。これは、工作機械が使用場所に設置されると、より大きな空間を占有することを意味する。
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の架台は、マガジンホイールの軸に垂直な平面内でより大きなスペースを取ることなく、マガジンホイールを備えた既知の工具マガジンよりも多くの工具を受容可能な工具マガジン及び工具マガジンの工具交換方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1の機能を備えた工具マガジンによって達成される。工具マガジンは、ガイドレールに沿って移動可能なマガジンキャリッジを備えることを特徴とする。マガジンキャリッジにはロータリー駆動部が設けられ、マガジンシャフトにトルクを伝達し、シャフト回転軸線を中心にマガジンシャフトを回転させる。少なくとも2つのマガジンホイールがマガジンシャフトに回転可能に設けられている。つまり、マガジンシャフトが回転すると、マガジンホイールが一緒に回転する。マガジンホイールは全て、マガジンシャフトとともにシャフト回転軸線を中心に回転する。マガジンホイールはマガジンシャフト上に並んで配置され、軸方向に間隔を空けている。各マガジンホイールには、いくつかの工具ホルダが装備されている。各工具ホルダは、1つの工具を正確に収容可能である。工具ホルダに工具がないとき、工具ホルダは自由な工具ホルダという。工具マガジンは、機械基部に移動可能に設けられている移送装置も備える。これは、工具主軸とマガジンホイールの間で、移送軸に沿って移送方向及びその反対に移動可能である。移送方向はガイドレールを横断する。移送軸線とガイドレールは、所定の角度で交差している。移送装置は、工具ホルダの1つに配置された工具を受け取り、それを工具ホルダから移送方向に移送して工具主軸に送る。移送装置はそこに工具を配置する。工具主軸上の工具を交換する場合、移送装置は工具主軸に配置されていた工具を取り上げ、移送方向と反対方向に、工具主軸からマガジンホイールの自由な工具ホルダに移動し、自由な工具ホルダに置く。
【0006】
工具マガジンに、工具を受け取る工具ホルダの数を増やすために、マガジンシャフトに複数の工具ホイールが配置されている。マガジンシャフトとマガジンホイールとを備えるユニットは、ガイドレールに沿って移動可能に取り付けられているマガジンキャリッジ上にロータリー駆動部とともに設けられている。各マガジンホイールの半径は、既知の工具マガジンのマガジンホイールの半径よりも比較的大きくても小さくてもよい。したがって、シャフトの回転軸線に垂直な平面内の工具マガジンの大きさは、1つのマガジンホイールを備えた既知の工具マガジンの範囲と同じくらいの大きさ、場合によってはより小さい。工具マガジンキャリッジが、ガイドレールに沿って変位可能に取り付けられて、工具マガジンは、マガジンホイールを持つ既知の工具マガジンよりもより長い延長を示すが、この延長は、工具主軸線に平行であるか、又は工具主軸線に対して傾いている。いずれにせよ、工作機械はこの方向に大きく延在する。実質的に工具主軸線に平行であるか、ある角度で延在するガイドレールの方向の工具マガジンのサイズが、この方向の工作機械のサイズよりも小さいか同じである限り、本発明による工具マガジンを備えた工作機械は、設置時に、既知の工具マガジンを持つ工作機械よりも、占有スペースは小さい。したがって、本発明による工具マガジンを使用すると、工具マガジンを備えた工作機械が使用場所での設置中により大きなスペースを占めることなく、工具を収容するためのより多くの工具ホルダが利用可能になる。
【0007】
本発明の有利な実施形態によれば、移送装置は、少なくとも2つの最終位置、すなわち、主軸位置及び工具変更位置を備える。主軸位置では、移送装置は工具主軸に最も近い位置にある。この位置で、移送装置は工具主軸に配置されている工具を取り上げるか、又は工具主軸に工具を置く。工具変更位置では、移送装置はマガジンシャフトに最も近い位置にある。特に、工具変更位置には、マガジンシャフトに最も近い位置で工具を受け取る移送装置の収容装置がある。工具変更位置では、移送装置は、それに隣接するマガジンホイールの工具ホルダに配置された工具を受け取るか、又はそれに対向するマガジンホイールの自由な工具ホルダに工具を配置する。移送装置は、主軸位置と工具変更位置の間を移送方向に、又は移送方向とは逆に、直線的に移動可能である。
【0008】
本発明のさらに有利な実施形態によれば、移送装置は、第3の最終位置として、主軸ス位置と工具変更位置との間に位置する中間位置を有する。中間位置では、マガジンホイールが移送装置と工具変更を自由に回転するように、移送装置が配置される。この中間位置において、移送装置が共に配置され、移送装置は、好ましくは、マガジンホイールの1つに第1の工具を配置した後、そして第1の工具はマガジンホイールから第2の工具を取り上げる前に配置される。これらの2つの動作の間に、マガジンシャフトがマガジンホイールとともに回転し、第2の工具が移送装置によって取り上げられる移送位置に移動する。
【0009】
本発明のさらに有利な実施形態によれば、移送装置は、工具変更が完了したときに移送方向が移動するアイドリング位置を有する。アイドリング位置は、移送装置のさらなる終了位置である。アイドリング位置は主軸位置から外れているため、移送装置は、工具を装備した工具主軸による加工物の加工を妨げない。したがって、工具変更が完了し、工具が工具主軸に配置された後、移送装置は移送方向と反対にアイドリング位置に移動する。移送装置は、工具変更が再度実行されるまでそこにとどまる。交換する工具を工具主軸から取り外すために、そこから工具変更中に工具主軸に移動する。アイドリング位置は中間位置と一致してもよい。
【0010】
本発明のさらに有利な実施形態によれば、移送装置のアイドリング位置は、主軸位置と工具変更位置との間にある。アイドリング位置は中間位置と一致してもよい。
【0011】
本発明のさらに有利な実施形態によれば、移送装置のアイドリング位置は工具変更位置に一致する。したがって、工具変更が完了し、工具が工具主軸に置かれると、移送装置は、移送方向と反対方向に、マガジンシャフトに最も近い位置に戻される。移送装置は、工具変更が再度実行されるまでそこにとどまる。改めて工具変更となると、交換すべき工具を工具主軸から取り外すために、アイドリング位置から工具主軸に移動する。
【0012】
本発明のさらに有利な実施形態によれば、マガジンホイールは、工具ホルダのための移送位置を有する。この移送位置では、移送位置にある工具ホルダは、移送装置の工具変更位置のすぐ隣に配置されるため、この工具ホルダに配置された工具は、工具変更位置にある移送装置に配置可能である。あるいは、移送装置に配置された工具が工具ホルダに配置可能である。マガジンホイールは、ガイドレールに沿って移動し、マガジンシャフトの回転軸線を中心にマガジンシャフトと一緒に回転して、マガジンホイールの各工具ホルダを移動位置に移動可能である。有利には、一度に正確に1つの工具ホルダが移送位置にあるため、同時に複数の工具ホルダが移送位置にあることはできないこととする。
【0013】
本発明のさらに有利な実施形態によれば、工具マガジンは、n個のマガジンホイールと、n個全てのマガジンホイールにm個の工具ホルダとを有する。工具マガジンには、合計m-n+1個の工具がある。これにより、工具が移送装置又は工具主軸に配置されている場合、1つの工具ホルダが各マガジンホイール上で空いている状態を保つことが可能である。
【0014】
本発明のさらに有利な実施形態によれば、工具が移送装置又は工具主軸に配置されていると、各マガジンホイールの工具ホルダには工具がない。つまり、各マガジンホイールには常に空いている工具ホルダが用意されているため、工具を交換する場合、工具主軸に元々配置されていた工具をマガジンホイールに配置してから、同じマガジンホイールから別の工具を取り外すことが可能である。
【0015】
本発明のさらに有利な実施形態によれば、工具マガジンは、マガジンスライドをガイドレールに沿って移動させるリニア駆動部を備えている。
【0016】
本発明のさらに有利な実施形態によれば、マガジンホイールはマガジンシャフト上で互いに平行に配置される。マガジンシャフトから、工具ホルダはマガジンホイールに半径方向に配置される。
【0017】
本発明のさらに有利な実施形態によれば、工具マガジンは少なくとも3つのマガジンホイールを備える。隣り合う2つのマガジンホイール間の距離は等しい。
【0018】
本発明のさらに有利な実施形態によれば、マガジンシャフトは少なくとも1つの回動軸受に収容され、マガジンスライド上に支持される。したがって、マガジンシャフトはマガジンキャリッジにしっかりと確実に保持される。マガジンキャリッジを支持する回動軸受を2つのマガジンホイールの間に配置してもよい。
【0019】
本発明のさらに有利な実施形態によれば、マガジンホイールの工具ホルダは、工具モジュールとともに工具を収容する。工具は、冷媒分配器と一緒に工具モジュールに配置される。工具と冷媒分配器とを備えた工具モジュールにより、冷媒分配器を装備した工具を工具主軸に簡単に配置可能である。
【0020】
本発明のさらに有利な実施形態によれば、マガジンシャフトは、ガイドレールと本質的に平行に整列している。
【0021】
本発明のさらなる有利な実施形態によれば、各工具ホルダは、工具がマガジンシャフトに平行なその工具軸と整列するように、正確に1つの工具を収容する。
【0022】
本発明の別の有利な実施形態によれば、移送装置は、ガイドレールに対して実質的に垂直に、移送軸線に沿って直線的に変位可能となるように機械基部上に配置される。したがって、搬送方向とガイドレールは互いに直行する。
【0023】
本発明のさらなる有利な実施形態によれば、マガジンシャフトは、工具主軸と本質的に平行に整列される。
【0024】
請求項16の特徴を備えた本発明による方法は、工具主軸に配置された第1の工具がマガジンホイールの工具ホルダに配置された第2の工具に迅速かつ容易に交換されることを特徴とする。工具マガジンの各マガジンホイールには、自由な工具ホルダがある。この方法を実行するとき、第2の工具を持つマガジンホイールは、その自由な工具ホルダを移送位置に移動する。移送位置にある工具ホルダは、移送装置の工具変更位置のすぐ近くに位置している。その間、移送装置は工具主軸に移動し、主軸位置になる。この主軸位置では、移送装置は工具主軸のすぐ脇に位置する。移送装置は、それから、工具主軸に配置されている第1の工具を引き継ぐ。次いで、移送装置は、工具変更位置まで、移送方向とは反対の方向に第1の工具とともに動かされる。これで、第1の工具を伴う移送装置は工具変更位置にあり、第2の工具を持つマガジンホイールの自由な工具ホルダが移送位置にある。この位置では、第1の工具と自由な工具ホルダが互いに向かい合って配置される。移送装置は、第1の工具を自由な工具ホルダに置くので、その結果、移送装置が空き、それまで空いていた工具ホルダに第1の工具が置かれる。次に、第2の工具が移送位置になるまで、マガジンシャフトが全てのマガジンホイールとともに回転する。次に、第2の工具工具を移送装置に置く。これにより、それまで第2の工具が入っていた工具ホルダが解放され、移送装置に第2の工具が配置される。次に、移送装置は、第2の工具を伴って、マガジンシャフトとマガジンホイールから離れて工具主軸に向かって移送方向に沿って移動する。移送装置が主軸位置に達すると、第2の工具が工具主軸に配置される。その後、工具の変更が完了する。
【0025】
本発明のさらなる有利な実施形態によれば、移送装置は、はじめに、工具ホルダへの第1の工具の投入と第2の工具の受け取りとの間で、移送方向にマガジンシャフトから離れるように動かされ、工具変更位置と主軸位置との間の中間位置に留まる。それから、マガジンシャフトは、第2の工具が移動位置にくるまで回転される。
次に、工具ホルダから第2の工具を取り上げるために、移送装置を工具変更位置に戻す。移送装置は、移送装置が中間位置に移動することによりマガジンホイールから外れ、マガジンホイールの回転が移送装置によって損なわれないようにする。マガジンホイールからの移送装置が外れることは、マガジンホイール間の距離がシャフト回転軸線の方向における移送装置の延長よりも短い場合に、特に有利である。
【0026】
本発明のさらに有利な実施形態によれば、第1の工具が工具主軸から移送装置上に置かれることと、移送装置がマガジンシャフトの方向に工具主軸から離れることとは、第2の工具を持つマガジンホイールの移動及び自由な工具ホルダの移送位置への配置と同時に、実行される。これにより、工具変更プロセスが高速化される。よって、マガジンホイールが1つしかない工具マガジンを使用するよりも、工具変更に時間がかからない。
【0027】
本発明のさらに有利な実施形態によれば、第2の工具が工具主軸上に置かれた後、移送装置は移送方向とは反対の方向に動かされ、工具主軸から離れたアイドリング位置に配置される。工具変更が再度実行されるまで、移送装置はアイドリング位置にとどまる。アイドリングは工具主軸から離れた位置にあるため、移送装置は工具主軸による加工物の加工を妨げない。
【0028】
本発明のさらなる利点及び有利な実施形態は、以下の説明、図面及び特許請求の範囲に見出せるであろう。
【0029】
図面では、本発明の実施形態が以下のように示され、説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】工具主軸及び工具マガジンを備えた工作機械の斜視図である。
【
図2】工具主軸及び工具マガジンを備えた
図1の工作機械の正面図である。
【
図3】工具主軸及び工具マガジンを備えた
図1の工作機械の上面図である。
【
図4】工具主軸及び工具マガジンを備えた
図1の工作機械の側面図である。
【
図5】工具マガジンが、工具を持たずにマガジンホイールに配置されている移送装置とともにある、工具主軸及び工具マガジンを備えた
図1の工作機械の図である。
【
図7】移送装置が、工具主軸とマガジンホイールとの間に配置されている、
図5による工作機械を示す。
【
図8】工具が移送装置にあり、移送装置が主軸位置にある、
図5の工作機械を示す。
【
図9】移送装置が工具変更位置にある、
図8の工作機械を示す。
【
図10】移送装置が中間位置にある、
図8の工作機械を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1から
図10は、工作機械2に配置された工具マガジン1を示している。工作機械2は、主軸線4を中心に回転するように駆動される工具主軸3を有する。工具マガジン1は、工作機械2に共通の機械ベース6に配置されたガイドレール5を有する。工具マガジン1は、ガイドレール5上に直線的に変位可能に配置されたマガジン
キャリッジ7をさらに備える。ガイドレール5は、マガジンキャリッジ7を移動可能な直線軸を
画定する。マガジンキャリッジ7には、ロータリー駆動装置8と、マガジンシャフト9と、3つのマガジンホイール10、11、12とが配置されている。ロータリー駆動装置8は、マガジンシャフト9を駆動して、そのシャフト回転軸線13を中心に回転させる。シャフト回転軸線13は、ガイドレール5に平行である。3つのマガジンホイール10、11、12は、マガジンシャフト9がそのシャフト回転軸13の周りを回転するとき、3つ全てのマガジンホイール10、11、12がシャフト回転軸13を中心に回転するようにマガジンシャフト9に配置される。3つのマガジンホイール10、11、12のそれぞれに、6つの工具ホルダ14が装備されている。
図1から
図4では、マガジンホイール10、11、12ごとに、6つの工具ホルダの1つの工具ホルダは、空いている。
図1から
図4の移送装置には別の工具が配置されている。工具が配置されていない場合、工具ホルダは空いている。
図1から
図4では、研削ホイールが、工具モジュール17上の冷媒分布装置と共に、工具15として他の工具ホルダに配置されている。工具モジュール17は、マガジンホイール10、11、12の工具ホルダ14に配置される。
【0032】
図5から
図10において、概観を見やすくするため、マガジンホイール10、11、12の全ての工具ホルダ14に工具はない。したがって、マガジンホイール10、11、12と、マガジンホイール10、11、12の工具ホルダ14が、より明確に区別可能である。
図5から
図7では、移送装置にも工具はない。工具15は、
図8から
図10の移送装置に配置されている。
【0033】
シャフト回転軸線13と、ガイドレール5と、主軸線4とは平行に走っている。研削ホイールは、研削ホイールの工具軸が主軸と平行になるように、マガジンホール10、11、12に配置される。工具軸は、マガジンホイール10、11、12から工具主軸3に移動して戻っている間でも、主軸線4と平行に整列したままである。シャフト回転軸線13とガイドレール5とは、図示の例示的実施形態では主軸線4に平行であるため、研削ホイールの工具軸も、シャフト回転軸線13とガイドレール5とに平行に延在している。
【0034】
移送装置18は、機械基部6上に、直線的に移動可能に配置されている。移送装置18が移送方向20に沿って移送方向20に移動可能な直線軸線は、主軸線4と、ガイドレール5と、シャフト回転軸線13とに垂直に延在する。これを移送軸線19とする。移送軸線19に沿った直線変位のために、機械基部6には、移送装置が摺動可能に受け入れられる移送装置ガイドレール21が装備されている。移送装置18は、上向きの移送アーム22と、その上に配置された、工具25用の収容装置23とを有する。
【0035】
移送装置18は、工具15、25をマガジンホイール10、11、12から工具主軸3へと、その逆とに移送する。この目的のために、それは、工具主軸上の直接主軸位置と、移送軸線19に沿ったマガジンホイール10、11、12すぐ脇の工具変更位置との間で前後に移動する。
図1及び
図2では、移送装置18は、工具主軸3の近くの位置に示されている。工具主軸3から取り外された工具25は、収容装置23に配置されている。
【0036】
収容装置23は、工具主軸3の方向にて移送アーム22上に突出している。その結果、移送装置18は、主軸位置と工具変更位置との間を移動するとき、工具マガジン1から離れる方向に主軸軸線4上に突出しない。したがって、工具マガジンとは反対側のこの面は、工作機械の他の部品に使用可能である。例えば、工具主軸で加工される加工物を変更及び/又は収容する装置は、工具マガジン1とは反対側に向くこの主軸線の側に設けててもよい。このようにして、工具マガジンと工作機械の他の部品との交換作用が、この方法では不可能である。したがって、工具の変更と加工物の変更を同時に実施可能である。
【0037】
図3は、工具マガジン1及び工作機械2を工具主軸3とともに上から見た図である。 移送装置は
図3には示されていない。この表現では、マガジンシャフト9がロータリー駆動部8の一端で受けられ、さらに回動軸受24によっても支持されていることがわかる。回動軸受24は、ロータリー駆動部8から最も遠いマガジンホイール10と、中間マガジンホイール11との間に位置する。図では、3つのマガジンホイール10、11及び12が互いに平行であり、互いに同じ距離で離れていることも分かる。
【0038】
図4は、工具マガジン1及び工作機械2を側面図で示す。この図では、マガジンホイール10及び11は、2つのマガジンホイール11及び12と同様に、互いに等距離にあり、マガジンホイール10、11、12は、互いに平行でマガジンシャフト9に垂直に配置されていることもわかる。
【0039】
工作機械2では、工具主軸3の前方に、図示しない加工物ホルダが配置されている。 工具主軸で加工されるべき加工物が加工物ホルダに配置される。この加工物も図示されていない。さまざまな角度で加工物を工具主軸に配向させるために、加工物ホルダは通常、複数の軸線を中心に移動可能に機械基部に設けられる。このため、加工物ホルダは工具主軸に対して特定の空間を占有する。加工物ホルダが占める主軸線4の方向におけるこの空間は、主軸回転軸線13の方向で工具マガジンが占める空間よりも、大きい。したがって、工具マガジンは、主軸に平行な方向に工作機械を超えて突出しない。加工物ホルダは、工具主軸とともに、図示されていない筐体内に設けられている。この筐体は、工具マガジンも囲む。
図4による表現は、工作機械の筐体内の工具マガジンが、マガジンホイールを備えた既知の工具マガジンを備えた工作機械と比較して、機械筐体の外部寸法において、追加のスペースを取らないことを示す。
【0040】
図8から
図10は、移送装置18の異なる最終位置を示し、移送装置18はこれらの最終位置で停止しているので、移送装置はこれらの最終位置に一定時間留まる。
図8は、主軸位置と名付ける最終位置にある移送装置を示す。この位置では、移送装置18は工具主軸3のすぐ近くに設けられているので、例示的な実施形態では研削ホイールである工具は、工具主軸と、移送装置18の収容装置23との間で、変更可能である。
【0041】
図9は、工具変更位置と名付ける最終位置にある移送装置18を示す。この位置では、移送装置は、マガジンシャフト9のシャフト回転軸線13に最も近い位置にある。工具変更位置では、移送装置と、マガジンホイール10、11、12の1つとの間で、工具を変更可能である。工具変更は、移送位置にある工具キャリッジと、移送装置の収容装置との間で、行われる。
【0042】
図10は、中間位置と名付ける位置にある移送装置を示す。移送装置は、
図9による工具変更位置と、
図8による主軸位置との間の中間位置に位置し、中間位置と工具変更位置との間の距離は最小である。中間位置では、移送装置は工具主軸3の方向に移動し、移送装置又は移送装置に配置された工具によって回転が損なわれることなく、マガジンホイール10、11、12がシャフト回転軸線を中心に回転可能である。
【0043】
工具変更のシーケンスは、
図2を参照して説明される。工具主軸3上に最も近く配置された、以下で第1の工具と名付ける工具25は、マガジンホイール10の工具15と交換されることになっている。マガジンホイール10の工具15は、以下で第2の工具という。この目的のために、工具15を持つマガジンホイール10は、その自由な工具ホルダ14のある移送位置にもたらされる。移送位置にある工具ホルダ14は、移送装置18の工具変更位置のすぐ近くに配置される。その間、移送装置18は、主軸位置に来るように工具主軸3に移動される。この主軸位置では、移送装置18は工具主軸3のすぐ近くの位置にある。移送装置18は、工具主軸3に配置されていた第1の工具25を引き継ぐ。続いて、移送装置は第1の工具25とともに、移送方向20と反対方向に工具変更位置に向かって移動する。ここで、第1の工具25を備えた移送装置18は工具変更位置にあり、第2の工具15を持っているマガジンホイール10の自由な工具ホルダ14は現在移送位置にある。この状態の位置では、第1の工具25と自由な工具ホルダ14とが、互いに向かい合っている。移送装置18は、第1の工具25を自由な工具ホルダ14に置くので、移送装置18が空くことになり、そして、それまで空いていた工具ホルダ14が第1の工具25を備えることとなる。次に、移送装置が中間位置に移動し、マガジンシャフト9が全てのマガジンホイール10、11、12とともに自由に回転可能となるようにする。マガジンシャフト9とマガジンホイール10、11、12とは、第2の工具15が移送位置になるまで回転される。次に、第2の工具15が移送装置18上に置かれ、それにより、以前に第2の工具を収容していた工具ホルダが空になり、移送装置18に第2の工具15が装備される。次に、移送装置18は、マガジンシャフト9及びマガジンホイール10、11、12から離れて移送方向20に第2の工具15とともに移動され、工具主軸3に向かって移動される。移送装置18が主軸位置に到達すると、第2の工具15を工具主軸3に配置する。そうして、工具の変更が完了する。
【0044】
全ての特徴は、本発明にとって個々に及び相互の任意の組み合わせの両方で不可欠であってよい。
【符号の説明】
【0045】
1 工具マガジン
2 工作機械
3 工具主軸
4 主軸線
5 ガイドレール
6 機械基部
7 マガジンキャリッジ
8 ロータリー駆動部
9 マガジンシャフト
10 マガジンホイール
11 マガジンホイール
12 マガジンホイール
13 シャフト回転軸線
14 工具ホルダ
15 工具
16 冷媒分配装置
17 工具ユニット
18 移送装置
19 移送軸線
20 移送方向
21 移送装置ガイドレール
22 移送アーム
23 収容装置
24 回動軸受
25 工具