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特許7148604CDK阻害剤としての4-[[(7-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)アミノ]メチル]ピペリジン-3-オール化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】CDK阻害剤としての4-[[(7-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)アミノ]メチル]ピペリジン-3-オール化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20220928BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220928BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220928BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220928BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220928BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20220928BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220928BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220928BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220928BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220928BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220928BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220928BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20220928BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 31/5685 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 31/4196 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 31/565 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 31/138 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
C07D487/04 142
C07D487/04 CSP
A61K45/00
A61P35/00
A61P31/12
A61P25/28
A61P25/16
A61P9/10
A61P13/12
A61P9/00
A61P37/06
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P17/06
A61P43/00 121
A61K31/519
A61K31/5685
A61K31/4196
A61K31/565
A61K31/138
A61K39/395 N
A61K31/517
A61K31/337
A61K31/675
A61K31/7068
A61K31/704
A61K31/513
A61K31/282
A61P43/00 111
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2020517114
(86)(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 EP2018075482
(87)【国際公開番号】W WO2019057825
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】1715194.5
(32)【優先日】2017-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520095050
【氏名又は名称】カリック セラピューティクス リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】511085460
【氏名又は名称】キャンサー・リサーチ・テクノロジー・リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】505167543
【氏名又は名称】アイピー2アイピーオー イノベ-ションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バール,アッシュ
(72)【発明者】
【氏名】アインスカウ,エド
(72)【発明者】
【氏名】ボンケ,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】バレット,アンソニー,ジー.エム.
(72)【発明者】
【氏名】スノセ,ミヒロ
(72)【発明者】
【氏名】シールズ,ジェイソン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】チョハン,カマルディープ
【審査官】東 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-506250(JP,A)
【文献】特表2010-529140(JP,A)
【文献】PARUCH, Kamil et al.,Bioorg. Med. Chem. Lett.,2007年,17,6220-6223
【文献】HAZEL, Pascale et al.,ChemMedChem,2017年,12,372-380
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式の化合物、又はその薬学的に許容できる塩、水和物もしくは溶媒和物から選択される化合物。
【化1】
【請求項2】
下記式の化合物、又はその薬学的に許容できる塩、水和物もしくは溶媒和物である、請求項1に記載の化合物。
【化2】
【請求項3】
下記式の化合物、又はその薬学的に許容できる塩、水和物もしくは溶媒和物である、請求項1に記載の化合物。
【化3】
【請求項4】
下記式の化合物、又はその薬学的に許容できる塩、水和物もしくは溶媒和物である、請求項1に記載の化合物。
【化4】
【請求項5】
下記式の化合物、又はその薬学的に許容できる塩、水和物もしくは溶媒和物である、請求項1に記載の化合物。
【化5】
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物と、薬学的に許容できる担体又は希釈剤とを含む組成物。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物と、薬学的に許容できる担体又は希釈剤とを混合するステップを含む組成物の調製方法。
【請求項8】
インビトロにおいて細胞でのCDK機能を阻害する方法であって、有効量の請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物と、前記細胞を接触させることを含む前記方法。
【請求項9】
インビトロにおいて、細胞増殖を阻害するか、細胞周期の進行を阻害するか、アポトーシスを促進するか、又はこれらのうちの1つ以上の組合せを行う方法であって、有効量の請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物と、細胞を接触させることを含む前記方法。
【請求項10】
障害の治療のための請求項6に記載の組成物であって、
前記障害が、増殖性障害;癌;ウイルス感染症;HV;神経変性障害;アルツハイマー病;パーキンソン病;虚血;腎疾患;心血管障害;アテローム性動脈硬化症;自己免疫障害;関節リウマチ;全身性エリテマトーデス;乾;又はシェーグレン症候群である、前記組成物。
【請求項11】
障害の治療のための請求項6に記載の組成物であって、
前記障害が増殖性障害である、前記組成物。
【請求項12】
障害の治療のための請求項6に記載の組成物であって、
前記障害が癌である、前記組成物。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか1項に記載の組成物であって、
前記治療が、さらなる活性薬剤を用いた治療をさらに含み、前記さらなる活性薬剤がアロマターゼ阻害剤であり、
任意選択で、前記アロマターゼ阻害剤がエキセメスタン、レトロゾール又はアナストロゾールである、前記組成物
【請求項14】
請求項13に記載の組成物であって、
前記障害が乳癌であり、任意選択で前記アロマターゼ阻害剤に耐性のある乳癌である、前記組成物
【請求項15】
請求項10~12のいずれか1項に記載の組成物であって、
前記治療が、さらなる活性薬剤を用いた治療をさらに含み、前記さらなる活性薬剤が抗エストロゲン剤であり、
任意選択で前記抗エストロゲン剤がフェソロデックス、タモキシフェン又はヒドロキシタモキシフェンである、前記組成物
【請求項16】
請求項15に記載の組成物であって、
前記障害が乳癌であり、任意選択で前記抗エストロゲン剤に耐性のある乳癌である、前記組成物
【請求項17】
請求項10~12のいずれか1項に記載の組成物であって、
前記治療が、さらなる活性薬剤を用いた治療をさらに含み、前記さらなる活性薬剤がHer2遮断薬であり、
任意選択で、前記Her2遮断薬がハーセプチン、ペルツズマブ又はラパチニブである、前記組成物
【請求項18】
請求項10~12のいずれか1項に記載の組成物であって、
前記治療が、さらなる細胞傷害性化学療法剤を用いた治療をさらに含み、
任意選択で、前記細胞傷害性化学療法剤がタキサン、パクリタキセル、ドセタキセル、シクロホスファミド、代謝拮抗薬、カルボプラチン、カペシタビン、ゲムシタビン、ドキソルビシン、エピルビシン、又は5-フルオロウラシルである、前記組成物
【請求項19】
障害の治療のための薬物の製造における、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物の使用であって、
前記障害が、増殖性障害;癌;ウイルス感染症;HIV;神経変性障害;アルツハイマー病;パーキンソン病;虚血;腎疾患;心血管障害;アテローム性動脈硬化症;自己免疫障害;関節リウマチ;全身性エリテマトーデス;乾癬;又はシェーグレン症候群である、前記使用。
【請求項20】
障害の治療のための薬物の製造における、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物の使用であって、
前記障害が増殖性障害である、前記使用。
【請求項21】
障害の治療のための薬物の製造における、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物の使用であって、
前記障害が癌である、前記使用。
【請求項22】
障害の治療のための薬物の製造における、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物の使用であって、
前記治療が、さらなる活性薬剤を用いた治療をさらに含み、前記さらなる活性薬剤がアロマターゼ阻害剤であり、
任意選択で、前記アロマターゼ阻害剤がエキセメスタン、レトロゾール又はアナストロゾールである、前記使用。
【請求項23】
請求項22に記載の使用であって、
前記障害が乳癌であり、任意選択で前記アロマターゼ阻害剤に耐性のある乳癌である、前記使用。
【請求項24】
請求項19~21のいずれか1項に記載の使用であって、
前記治療が、さらなる活性薬剤を用いた治療をさらに含み、前記さらなる活性薬剤が抗エストロゲン剤であり、
任意選択で前記抗エストロゲン剤がフェソロデックス、タモキシフェン又はヒドロキシタモキシフェンである、前記使用。
【請求項25】
請求項24に記載の使用であって、
前記障害が乳癌であり、任意選択で前記抗エストロゲン剤に耐性のある乳癌である、前記使用。
【請求項26】
請求項19~21のいずれか1項に記載の使用であって、
前記治療が、さらなる活性薬剤を用いた治療をさらに含み、前記さらなる活性薬剤がHer2遮断薬であり、
任意選択で、前記Her2遮断薬がハーセプチン、ペルツズマブ又はラパチニブである、前記使用。
【請求項27】
請求項19~21のいずれか1項に記載の使用であって、
前記治療が、さらなる細胞傷害性化学療法剤を用いた治療をさらに含み、
任意選択で、前記細胞傷害性化学療法剤がタキサン、パクリタキセル、ドセタキセル、シクロホスファミド、代謝拮抗薬、カルボプラチン、カペシタビン、ゲムシタビン、ドキソルビシン、エピルビシン、又は5-フルオロウラシルである、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年9月20日に出願した英国特許出願番号第1715194.5号に関連しており、該出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は概して治療用化合物の分野に関する。より詳細には、本発明は、特定の4-[[(7-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)アミノ]メチル]ピペリジン-3-オール化合物(本明細書においては「APPAMP化合物」と呼ぶ)に関しており、その化合物はとりわけ、CDK(例えば、CDK1、CDK2、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK8、CDK9、CDK10、CDK11、CDK12、CDK13等)を阻害する(例えば、選択的に阻害する)。また本発明は、このような化合物を含む医薬組成物、ならびにそのような化合物及び組成物の、インビトロとインビボの両方でCDKを阻害する用途及び障害を治療する用途にも関する。この障害としては、CDKに関連する障害;サイクリン依存性キナーゼ(CDK)の不適切な活性により生じる障害;CDK変異に関連する障害;CDK過剰発現に関連する障害;CDKの上流経路活性化に関連する障害;CDKの阻害によって寛解する障害;増殖性障害;癌;ウイルス感染症(HIVを含む);神経変性障害(アルツハイマー病及びパーキンソン病を含む);虚血;腎疾患;心血管障害(アテローム性動脈硬化症を含む);ならびに自己免疫障害(関節リウマチを含む)が含まれる。任意に、上記の治療は、さらなる活性薬剤を用いた治療(例えば、同時治療又は逐次治療)をさらに含み、上記のさらなる活性薬剤は、例えばアロマターゼ阻害剤、抗エストロゲン剤、Her2遮断薬、細胞傷害性化学療法剤等である。
【背景技術】
【0003】
本発明と本発明が関する技術の水準をさらに十分に記載し、開示するために、本明細書においては多数の文献を引用している。これらの各文献は、あたかも個々の文献がそれぞれ参照によって詳細にかつ個別に援用されていると示されているように、参照によりその全体が本開示に援用される。
【0004】
本明細書とこれに続く特許請求の範囲とを通し、文脈から別段の意が必要とされない限り、「含む(comprise)」という語と、その変化形(「comprises」及び「comprising」等)は、述べられている整数もしくは工程、又は整数もしくは工程の群を含むことを含意しているが、他のいかなる整数もしくは工程、又は整数もしくは工程の群を排除するものではないことが理解されよう。
【0005】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、文脈から明らかに別様に示されていない限り、単数形「a」「an」及び「the」は複数指示物を含むことに留意が必要である。したがって、例えば「医薬担体」という言及は、このような担体の2個以上の混合物等を含む。
【0006】
本明細書においては、範囲はしばしば「およそ(約)」の一特定値から、かつ/又は「およそ(約)」の別の特定値までとして表されている。このような範囲が表されている場合、別の実施形態は、その一特定値から、かつ/又は他方の特定値までを含む。同様に、先行詞として「約」を使用することによって数値が近似値として表されている場合、その特定値が別の実施形態を形成するということが理解されよう。
【0007】
本開示は、本発明を理解するのに有用であり得る情報を含む。その情報は、本明細書において提供される任意の情報が先行技術であるという承認をするものではなく、又はここで請求される発明に関連があることを承認するものではない。又は、詳細にもしくは暗黙的に参照されている任意の文献が先行技術であることを承認するものではない。
【0008】
サイクリン依存性プロテインキナーゼ(CDK)
サイクリン依存性プロテインキナーゼ(CDK)は、21個のセリン/スレオニンプロテインキナーゼのファミリーの触媒サブユニットであり(例えば、2009年のMalumbresらの文献を参照のこと)、それらのうちのいくつかは、成長段階を通しての細胞進行、DNA複製及び有糸分裂を制御する(例えば、1995年のPinesら;1995年のMorganらの文献を参照のこと)。細胞周期の別の段階を通しての適切な進行と、細胞周期の次の段階への移行には、特定のCDKの活性化が必要とされる。CDK4とCDK6は、成長期(G1)を通しての進行に必要とされ、CDK2はDNA合成(S期)で、そしてCDK1は有糸分裂と細胞分裂(M期)で必要とされる。細胞周期CDK活性化の調節は、細胞周期の段階を通しての正しい細胞進行のタイミングに極めて重要であり、それらの活性は多くの段階で調節される。その段階としては、特定サイクリン(A、B、D及びEクラスのサイクリン;これらのサイクリンは細胞周期の段階を通して合成され、分解される)、CDK阻害剤(CDKI)、特にCIP/KIP及びINK型CDKI(例えば、1995年のSherrらの文献を参照のこと)との複合体形成、ならびに特定残基におけるリン酸化及び脱リン酸化が含まれる。活性化ループ(Tループと呼ばれる)における特定スレオニン残基のリン酸化状態は、細胞周期CDKの活性に対し重要な修飾である(例えば、1994年のFisherらの文献を参照のこと)。
【0009】
CDK自身はめったに変異しないので、CDK活性の調節解除が、一般に高い活性及び/又は不適当な活性に起因する多くの病状の重要な要素である。細胞周期CDKにおける変異のまれな例としては、INK4 CDKIへの非感受性を生じさせる遺伝性メラノーマを有するCDK4ファミリーが挙げられる(例えば、1996年のZuoらの文献を参照のこと)。p16INK4及びp14ARF CDKIをコードするCDKN2A遺伝子における不活性化変異は、遺伝性メラノーマにおいて起こることがより多く(例えば、2010年のHanssonらの文献を参照のこと)、これらの変異は、罹患した家族での乳癌及び膵臓癌のよい多い発生率にも関連している(例えば、2000年のBorgらの文献を参照のこと)。CDK4及びCDK6は癌において増幅され、かつ/又は過剰発現することができ、それらのサイクリンエフェクターであるD型サイクリンもしばしば増幅され、かつ/又は過剰発現するが、CDK4/CDK6阻害剤(INK4遺伝子)は多くの種類の癌で頻繁に欠失し、かつ/又は後成的なサイレンシングを経る(例えば、2002年のOrtegaらの文献を参照のこと)。E型サイクリンは活性化のためCDK2と相互作用し、癌において頻繁に過剰発現するが、CDK2、ならびにCDK1に作用するp21及びp27阻害タンパク質は、癌においてエピジェネティックにサイレンシングされる(例えば、2001年のMalumbresらの文献;2007年のJonesらの文献を参照のこと)。したがって細胞周期CDKの活性の上方制御は、癌の発生と進行に欠くことのできないものである。
【0010】
CDKファミリーの別のメンバーであるCDK7は、サイクリンH及びMAT1と複合化し、T-ループの活性化において細胞周期CDKをリン酸化して、それらの活性を促進する(例えば、1994年のFisherらの文献を参照のこと)。よって、CDK7を阻害することにより、細胞周期進行を阻害する有力な手段が得られると提案されており、少なくとも大半の細胞型で、細胞周期に対してCDK2、CDK4及びCDK6の絶対的な必要性は乏しいことについて、マウスでの遺伝子ノックアウト研究から説得力のある証拠があることを考慮すると、かかる手段は特に適切あり得る(例えば、2009年のMalumbresらの文献を参照のこと)。一方、別の腫瘍はいくつかを必要とするが、他の間期CDK(CDK2、CDK4、CDK6)とは無関係であると思われる。最近の遺伝子研究及び生化学研究により、細胞周期進行に対するCDK7の重要性が確かめられている(例えば、2007年のLarochelleらの文献;2012年のGanuzaらの文献を参照のこと)。
【0011】
CDK活性化キナーゼ(CAK)としての役割に加え、CDK7/サイクリンH/MAT1は、基本転写因子TFIIHと複合化して、RNAポリメラーゼII(PolII)のC末端ドメイン(CTD)をリン酸化する(例えば、1995年のLuらの文献;1995年のSerizawaらの文献を参照のこと)。ファミリーの他のメンバーであるCDK9も、PolII CTDリン酸化に必要とされる。PolII CTDは、チロシン-セリン-プロリン-スレオニン-セリン-プロリン-セリン(YSPTSPS)配列を有する7つのアミノ酸反復からなり、哺乳動物PolII CTDには52個のYSPTSPS七つ組反復が存在する。転写開始時にPolIIが遺伝子プロモーターから放出されるには、CDK7及びCDK9によるセリン-2(S2)とセリン-5(S5)のリン酸化が必要とされる。CDK7はCDK9の上流で作用すると思われ、CDK7によるS5リン酸化は、CDK9によるS2リン酸化よりも前に生じる(例えば、2012年のLarochelleらの文献を参照のこと)。フラボピリドールならびにCDK7とCDK9を阻害するCDK阻害剤等の転写阻害剤も、癌においてCDK7とCDK9を阻害することの潜在的な有用性を示している(例えば、2008年のWangらの文献を参照のこと)。PolII CTDのリン酸化における作用に加え、CDK7とCDK9は、乳癌に関連するエストロゲン受容体(ER)(例えば、2000年のChenらの文献を参照のこと)、レチノイド受容体(例えば、1997年のRochette-Eglyら;2000年のBastienらの文献を参照のこと)、アンドロゲン受容体(例えば、2011年のChymkowitchら;2010年のGordonらの文献を参照のこと)を含むいくつかの転写因子、ならびに腫瘍抑制因子p53(例えば、1997年のLuら;1997年のKoら;2006年のRadhakrishnanら;2006年のClaudioらの文献を参照のこと)の活性の調節に関係があるとされている。CDK8は、転写因子とPol II基本転写機構の間の相互作用に関する機構により遺伝子転写を制御するメディエーター複合体の要素であり、転写因子をリン酸化もしてその活性を制御する(例えば、2009年のAlarconらの文献を参照のこと)。また、CDK8は転写再開制御に対しても重要であると思われる。CDK8遺伝子は40~60%の結腸直腸癌で増幅されており、その一方CDK8のサイクリンパートナーであるサイクリンCは多くの癌種で上方制御されているという知見により、癌におけるCDK8の重要性が注目を浴びている。一方、機能的研究が、癌におけるCDK8の発癌的役割を支持している(例えば、2011年のXuらの文献を参照のこと)。メディエーター活性の制御におけるCDK11の潜在的な役割が説明されており、転写制御におけるCDK11の役割が示されており(例えば、2012年のDrogatらの文献を参照のこと)、その一方CDK11はS2 PolII CTDをリン酸化する能力も、転写におけるCDK12及びCDK13の関与を示し;CDK12はゲノム安定性の維持にも(例えば、2010年のBartkowiakらの文献;2011年のBlazekらの文献;2012年のChengらの文献を参照のこと)。
【0012】
上記のCDK及び他のCDKに関する、癌におけるかなりたくさんの証拠に加え(例えば、CDK10;例えば、2008年のLornsらの文献;2012年のYuらの文献を参照のこと)、CDKはHIVを含めたウイルス感染症(例えば、2002年のKnockeartらの文献を参照のこと)、アルツハイマー病及びパーキンソン病を含めた神経変性障害(ここで特に着目するのはCDK5である。例えば2005年のMonacoらの文献;2008年のFaternaらの文献を参照のこと)、虚血、腎疾患を含めた増殖性障害(例えば、2006年のMarshallらの文献を参照のこと)、アテローム性動脈硬化症を含めた心血管障害、ならびに関節リウマチを含めた自己免疫障害においても重要である。実際、CDK7阻害は、NF-κB活性化及びIL-1β/IL-6分泌の遮断を介して関節リウマチの炎症を抑制することが示されている(例えば、2018年のHongらの文献を参照のこと)。さらに、CDK7阻害がNF-κBシグナル伝達経路を阻止する能力は、CDK7阻害剤がさまざまな自己免疫疾患を治療する潜在的に幅広い能力を示している(例えば、2004年のBacherらの文献を参照のこと)。
【0013】
小分子CDK阻害剤の開発により、多くのヒト疾患、特に癌の治療において潜在的に有力なアプローチがもたらされる。したがって、細胞周期進行の阻害は、選択的CDK1阻害剤(CDK1は細胞周期に必要不可欠であると思われるので)、もしくは選択的CDK7阻害剤(CDK7は細胞周期CDKを制御するので)の開発により達成されるか、又は全ての細胞周期CDKに対する活性を有する阻害剤を用いて達成される可能性がある。いくつかの証拠は、選択的CDK4/CDK6阻害剤又はCDK2阻害剤が特定条件に対する有用性(例えば、造血器腫瘍におけるCDK4/CDK6、及び神経膠芽腫又は骨肉腫におけるCDK2)を有する可能性があることを示しており、したがってこれらのCDKに対する選択的阻害剤の開発は有用であり得、選択性はおそらく毒性の問題の助けとなるであろう。
【0014】
公知化合物
2015年のBondkeらの文献は、CDK阻害剤として特定のピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5,7-ジアミン化合物を記載しており、例えば、以下の化合物(その中でPPDA-001と呼ばれる)が挙げられている:
【化1】
【発明の概要】
【0015】
改善された特性を有する新規化合物
本明細書中に記載されたAPPAMP化合物は、驚くべきことに、そして予想外に、例えば、2015年のBondkeらの文献に示されるような、公知の構造的に類似する化合物よりも優れている。
【0016】
例えば、ここに記述されているAPPAMP化合物は、1つ以上の重要で有利な特性、例えば、CDK7効力の向上;CDK2に対するCDK7の選択性の改善;ヒト血漿中の遊離画分(free fraction)の改善;MDCK-MDR1及び/又はMDCK-BCRP排出(efflux)の低下に関して、実質的な改善をもたらす。
【0017】
いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、置換基の特定の組み合わせ及びそれらの位置が特許請求される化合物の格別な特性を生じさせると考える。
【0018】
発明の概要
本発明の一態様は、本明細書に記載のある特定の4-[[(7-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)アミノ]メチル]ピペリジン-3-オール化合物(本明細書においては「APPAMP化合物」と呼ばれる)に関する。
【0019】
本発明の別の態様は、本明細書に記載のAPPAMP化合物と、薬学的に許容できる担体又は希釈剤とを含む組成物(例えば、医薬組成物)に関する。
【0020】
本発明の別の態様は、本明細書に記載のAPPAMP化合物と、薬学的に許容できる担体又は希釈剤とを混合するステップを含む組成物(例えば、医薬組成物)の調製方法に関する。
【0021】
本発明の別の態様は、インビトロ又はインビボにおいて、CDK(例えば、CDK1、CDK2、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK8、CDK9、CDK10、CDK11、CDK12、CDK13等)の機能(例えば、細胞での機能)を阻害する方法に関しており、この方法は、有効量の本明細書に記載のAPPAMP化合物と、上記の細胞を接触させることを含む方法である。
【0022】
本発明の別の態様は、インビトロ又はインビボにおいて、細胞増殖(例えば、細胞の増殖)を制御する(例えば、阻害する)か、細胞周期進行を阻害するか、アポトーシスを促進するか、又はこれらのうちの1つ以上の組合せを行う方法に関しており、この方法は、有効量の本明細書に記載のAPPAMP化合物と、細胞を接触させることを含む方法である。
【0023】
本発明の別の態様は、治療により人体又は動物体を治療する方法において使用するための本明細書に記載のAPPAMP化合物に関しており、例えば本明細書に記載の障害(例えば、疾患)の治療方法において使用するための化合物に関する。
【0024】
本発明の別の態様は、本明細書に記載のAPPAMP化合物の薬物製造における使用に関しており、その薬物は、例えば本明細書に記載の障害(例えば、疾患)の治療方法等の治療方法において使用するための薬物である。
【0025】
本発明の別の態様は、例えば本明細書に記載の障害(例えば、疾患)の治療方法等の治療方法に関しており、この方法は、治療有効量の本明細書に記載のAPPAMP化合物を、好ましくは医薬組成物の形態で、治療の必要な対象に投与することを含む方法である。
【0026】
一実施形態においては、上記の治療は、さらなる活性薬剤を用いた治療(例えば、同時治療又は逐次治療)をさらに含み、上記のさらなる活性薬剤は、例えば本明細書に記載のアロマターゼ阻害剤、抗エストロゲン剤、Her2遮断薬、細胞傷害性化学療法剤等である。
【0027】
本発明の別の態様は、(a)本明細書に記載のAPPAMP化合物、好ましくは医薬組成物として、好適な容器内に、かつ/又は好適な包装を用いて提供されるもの;及び(b)使用についての説明書、例えば、上記の化合物の投与法について文書化された説明書を含むキットに関する。
【0028】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の合成方法、又は本明細書に記載の合成方法を含む方法によって得ることができるAPPAMP化合物に関する。
【0029】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の合成方法、又は本明細書に記載の合成方法を含む方法によって得られたAPPAMP化合物に関する。
【0030】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の新規中間体に関しており、この中間体は、本明細書に記載の合成方法での使用に好適である。
【0031】
本発明の別の態様は、上記のような本明細書に記載の新規中間体の、本明細書に記載の合成方法における使用に関する。
【0032】
当業者によって理解されるように、本発明の一態様の特長及び好ましい実施形態は、本発明の他の態様にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
化合物
本発明の一態様はある特定の化合物に関しており、その化合物はピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5,7-ジアミンに関する。
【化2】
【0034】
より詳細には、化合物は、4-[[(7-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)アミノ]メチル]ピペリジン-3-オール
【化3】
に関する。
【0035】
さらにより詳細には、化合物は、下記の構造式:
【化4】
(式中、-R、-R、及び-Rは、本明細書において定義されるとおりである)
を有する特定の置換された4-[[(7-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)アミノ]メチル]ピペリジン-3-オール化合物である。
【0036】
したがって、本発明の1つの態様は、下記式の化合物、又はその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物(便宜上、本明細書では集合的に「4-[[(7-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)アミノ]メチル]ピペリジン-3-オール化合物」及び「APPAMP化合物」と呼ぶ)から選択される化合物である:
【化5】
【0037】
実質的に精製された形態
本発明の一態様は、実質的に精製された形態及び/又は混入物が実質的に存在しない形態の、本明細書に記載のAPPAMP化合物に関する。
【0038】
一実施形態においては、実質的に精製された形態は、少なくとも50重量%であり、例えば少なくとも60重量%、例えば少なくとも70重量%、例えば少なくとも80重量%、例えば少なくとも90重量%、例えば少なくとも95重量%、例えば少なくとも97重量%、例えば少なくとも98重量%、例えば少なくとも99重量%である。
【0039】
別段の定めがない限り、実質的に精製された形態は、任意の立体異性形態又は任意の鏡像異性形態の化合物を指す。例えば、一実施形態においては、実質的に精製された形態は立体異性体の混合物を指し、すなわち他の化合物に関して精製されている形態を指す。一実施形態においては、実質的に精製された形態は1つの立体異性体を指し、例えば光学的に純粋な立体異性体を指す。一実施形態においては、実質的に精製された形態は、鏡像異性体の混合物を指す。一実施形態においては、実質的に精製された形態は、鏡像異性体の等モル混合物(すなわち、ラセミ混合物、ラセミ化合物)を指す。一実施形態においては、実質的に精製された形態は、1つの鏡像異性体を指し、例えば光学的に純粋な鏡像異性体を指す。
【0040】
一実施形態においては、混入物は50重量%以下であり、例えば40重量%以下、例えば30重量%以下、例えば20重量%以下、例えば10重量%以下、例えば5重量%以下、例えば3重量%以下、例えば2重量%以下、例えば1重量%以下である。
【0041】
定めがない限り、混入物は他の化合物を指し、すなわち立体異性体又は鏡像異性体以外の化合物を指す。一実施形態においては、混入物は他の化合物と、他の立体異性体とを指す。一実施形態においては、混入物は他の化合物と、他方の鏡像異性体とを指す。
【0042】
一実施形態においては、実質的に精製された形態は少なくとも60%光学的に純粋であり(すなわち、モル基準で化合物の60%が所望の立体異性体又は鏡像異性体であり、40%は所望でない立体異性体又は鏡像異性体である)、例えば少なくとも70%光学的に純粋であり、例えば少なくとも80%光学的に純粋であり、例えば少なくとも90%光学的に純粋であり、例えば少なくとも95%光学的に純粋であり、例えば少なくとも97%光学的に純粋であり、例えば少なくとも98%光学的に純粋であり、例えば少なくとも99%光学的に純粋である。
【0043】
異性体
ある特定の化合物は、1個以上の特定の幾何学形態、光学的形態、鏡像異性形態、ジアステレオ異性形態、エピマー形態、アトロピック(atropic)形態、立体異性形態、互変異性形態、立体配座形態又はアノマー形態、たとえば限定せずにcis-及びtrans-形態;E-及びZ-形態;c-、t-及びr-形態;endo-及びexo-形態;R-、S-及びmeso-形態;D-及びL-形態;d-及びl-形態;(+)及び(-)形態;ケト-、エノール-及びエノラート-形態;syn-及びanti-形態;シンクリナル-及びアンチクリナル-形態;α-及びβ-形態;アキシアル及びエカトリアル形態;舟型-、いす型-、ねじれ型-、エンベロープ型-及び半いす形-形態;ならびにそれらの組合せで存在し得、以降、まとめて「異性体」(又は「異性形態」)と呼ぶ。
【0044】
構造のクラスへの言及には、そのクラス内にある構造異性形態が適切に含まれてもよい(例えば、C1-7アルキルにはn-プロピル及びイソプロピルが含まれ;ブチルにはn-、iso-、sec-及びtert-ブチルが含まれ;メトキシフェニルにはオルト-、メタ-及びパラ-メトキシフェニルが含まれる)。しかしながら、特定の基又は置換パターンへの言及には、空間内の位置ではなく原子間の結合に関して異なる他の構造(structural)異性体(又は構造(constitutional)異性体)が含まれることは意図されていない。例えば、メトキシ基-OCH3への言及は、その構造異性体であるヒドロキシメチル基-CH2OHへの言及として解釈されるべきではない。同様にして、オルト-クロロフェニルへの明確な言及は、その構造異性体であるメタ-クロロフェニルへの言及として解釈されるべきではない。
【0045】
上記の除外は、例えば以下の互変異性対:ケト/エノール(以下に図示する)、イミン/エナミン、アミド/イミノアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エンチオール、N-ニトロソ/ヒドロキシアゾ、及びニトロ/アシニトロにおける、例えばケト-、エノール-及びエノラート-形態等の互変異性形態には関係がない。本明細書においては、1つの互変異性体への言及は、両方の互変異性体を包含するよう意図される。
【化6】
【0046】
1つ以上の同位体置換がなされた化合物は、「異性体」という用語に特定的にに含まれることに留意されたい。例えば、Hは、1H、2H(D)及び3H(T)を含めたいずれの同位体形態であってもよく;Cは、12C、13C及び14Cを含めたいずれの同位体形態であってもよく;Oは、16O及び18Oを含めたいずれの同位体形態であってもよい等である。
【0047】
別段の定めがない限り、特定の化合物への言及は、その混合物(例えばラセミ混合物)を含めた、上記のような異性体形態全てを含む。このような異性体形態の調製方法(例えば、不斉合成)及び分割方法(例えば、分別結晶法及びクロマトグラフィー手段)は、いずれも当業者に公知であるか、あるいは、本明細書で教示される方法又は公知方法を公知様式で適合させることによって容易に得られる。
【0048】

対応する化合物の塩、例えば薬学的に許容できる塩を調製し、精製し、かつ/又は取り扱うことが便利であるか又は望ましくあり得る。薬学的に許容できる塩の例は、Bergeら,1977,「Pharmaceutically Acceptable Salts」,J.Pharm.Sci.,66巻,1-19頁で考察されている。
【0049】
例えば、化合物がアニオン性であるか、又はアニオン性であり得る官能基(例えば、-COOHは-COO-であってもよい)を有する場合、塩は好適なカチオンを用いて形成され得る。
【0050】
好適な無機カチオンの例としては、Na+及びK+等のアルカリ金属イオン、Ca2+及びMg2+等のアルカリ土類カチオン、ならびにAl3+及びアンモニウムイオン(すなわち、NH4 +)等の他のカチオンが挙げられるがこれらに限定されない。好適な有機カチオンの例としては、置換アンモニウムイオン(例えば、NH3+、NH22 +、NHR3 +、NR4 +)が挙げられるがこれらに限定されず、例えば式中、Rはそれぞれ独立して直鎖又は分岐の飽和C1-18アルキル、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルキル-C1-6アルキル及びフェニル-C1-6アルキルであり、フェニル基は任意に置換されている。いくつかの好適な置換アンモニウムイオンの例は、エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン及びトロメタミン、ならびにリジン及びアルギニン等のアミノ酸から誘導されるイオンである。一般的な四級アンモニウムイオンの例はN(CH34 +である。
【0051】
化合物がカチオン性であるか、又はプロトン付加によってカチオン性となってもよい官能基(例えば、-NH2は-NH3 +となってもよい)を有する場合、塩は好適なアニオンを用いて形成されてもよい。
【0052】
例えば、親構造がカチオン性基(例えば、-NMe2 +)を含むか、又はプロトン付加によってカチオン性となってもよい官能基(例えば、-NH2は-NH3 +となってもよい)を有する場合、塩は好適なアニオンを用いて形成されてもよい。四級アンモニウム化合物の場合には、正電荷と釣り合いをとるために、対アニオンが一般的には常に存在する。化合物が、カチオン性基(例えば、-NMe2 +、-NH3 +)に加え、アニオンを形成することができる基(例えば、-COOH)も含む場合は、分子内塩(双性イオンとも呼ばれる)が形成されてもよい。
【0053】
好適な無機アニオンの例としては、以下の無機酸:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸及び亜リン酸から誘導されるアニオンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
好適な有機アニオンの例としては、以下の有機酸:2-アセチルオキシ安息香酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、ケイ皮酸、クエン酸、エデト酸、1,2-エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフタレンカルボン酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、フェニルスルホン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、酒石酸、トルエンスルホン酸及び吉草酸から誘導されるアニオンが挙げられるが、これらに限定されない。好適なポリマー有機アニオンの例としては、以下のポリマー酸:タンニン酸、カルボキシメチルセルロースから誘導されるアニオンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
別段の定めがない限り、特定の化合物への言及は、その塩形態も含む。
【0056】
溶媒和物及び水和物
対応する化合物の溶媒和物を調製し、精製し、かつ/又は取り扱うことが便利であるか又は望ましくあり得る。本明細書においては、「溶媒和物」という用語は、溶質(例えば、化合物、化合物の塩)と溶媒の複合体を指す従来の意味で使用される。溶媒が水の場合、溶媒和物は好都合に水和物と呼ばれてもよく、例えば一水和物、二水和物、三水和物等と呼ばれてもよい。
【0057】
別段の定めがない限り、特定の化合物への言及は、その溶媒和物形態及び水和物形態も含む。
【0058】
化学的保護形態
化合物を化学的保護形態で調製し、精製し、かつ/又は取り扱うことが便利であるか又は望ましくあり得る。本明細書においては、「化学的保護形態」という用語は、従来の化学的意味で使用され、特定された条件(例えば、pH、温度、照射、溶媒等)の下での望ましくない化学反応から、1個以上の反応性官能基が保護されている化合物に関する。実際には、周知の化学的方法を使用して、保護しなければ特定条件下で反応性である官能基を可逆的に非反応性にする。化学的保護形態では、1個以上の反応性官能基は、保護された基又は保護している基(あるいは、マスクされた基もしくはマスクしている基、又はブロックされた基もしくはブロックしている基)の形態である。反応性官能基を保護することにより、保護基に影響を及ぼすことなく、他の無保護の反応性官能基に関わる反応を行うことができ;通常は次のステップで、分子の残り部分に実質的に影響を及ぼすことなく保護基を取り除くか、又はマスキング基を変換してもよい。例えば、「Protective Groups in Organic Synthesis」(T.Green及びP.Wuts;第4版;John Wiley and Sons,2006)を参照のこと。
【0059】
多種多様の上記のような「保護」方法、「ブロック」方法又は「マスキング」方法が幅広く使用されており、有機合成において周知である。例えば、特定された条件下でともに反応性である2個の非等価な反応性官能基を有する化合物を誘導体化して、その官能基のうち1つを「保護」し、したがって特定条件下で無反応性であるようにしてもよく;そのように保護して、1つの反応性官能基のみを効果的に有する反応体としてその化合物を使用してもよい。保護基は、所望の反応(他の官能基に関わる反応)の完了後、「脱保護」してもとの官能基に戻してもよい。
【0060】
例えば、ヒドロキシ基をエーテル(-OR)又はエステル(-OC(=O)R)として保護してもよい。このエーテル又はエステルは、例えばt-ブチルエーテル;ベンジルエーテル、ベンズヒドリル(ジフェニルメチル)エーテルもしくはトリチル(トリフェニルメチル)エーテル;トリメチルシリルエーテルもしくはt-ブチルジメチルしリルエーテル;又はアセチルエステル(-OC(=O)CH3、-OAc)である。
【0061】
例えばアミノ基を、例えばアミド(-NRCO-R)もしくはウレタン(-NRCO-OR)として;又は、好適な場合には(例えば、環状アミン類)、ニトロキシドラジカルとして(>Ν-O・)保護してもよい。このアミド又はウレタンは、例えばアセトアミド(-NHCO-CH3);ベンジルオキシアミド(-NHCO-OCH265、-NH-Cbz);t-ブトキシアミド(-NHCO-OC(CH33、-NH-Boc);2-ビフェニル-2-プロポキシアミド(-NHCO-OC(CH326465、-NH-Bpoc)、9-フルオレニルメトキシアミド(-NH-Fmoc)、6-ニトロベラトリルオキシアミド(-NH-Nvoc)、2-トリメチルシリルエチルオキシアミド(-NH-Teoc)、2,2,2-トリクロロエチルオキシアミド(-NH-Troc)、アリルオキシアミド(-NH-Alloc)、2(-フェニルスルホニル)エチルオキシアミド(-NH-Psec)である。
【0062】
プロドラッグ
化合物をプロドラッグの形態で調製し、精製し、かつ/又は取り扱うことが便利であるか又は望ましくあり得る。本明細書において使用される場合、「プロドラッグ」という用語は、インビボで所望の活性化合物を生成する化合物に関する。典型的には、プロドラッグは不活性であるか、又は所望の活性化合物よりも活性が低いが、有利な取り扱い特性、投与特性又は代謝特性を提供し得る。
【0063】
例えば、いくつかのプロドラッグは、活性化合物のエステル(例えば、生理学的に許容できる代謝的不安定性エステル)である。代謝中、エステル基(-C(=O)OR)が開裂して活性薬物を生成する。そのようなエステルは、例えば親化合物中のカルボン酸基(-C(=O)OH)のいずれかをエステル化することによって形成させてもよく、必要に応じて、親化合物に存在する任意の他の反応基をあらかじめ保護し、その後必要であれば脱保護して形成させてもよい。
【0064】
また、いくつかのプロドラッグは酵素学的に活性化されて、活性化合物を生成するか、又はさらなる化学反応で活性化合物を生成する化合物を生成する(例えば、抗体指向性酵素プロドラッグ療法(ADEPT)、遺伝子指向性酵素プロドラッグ療法(GDEPT)、脂質指向性酵素プロドラッグ療法(LIDEPT)等での場合)。例えば、プロドラッグは糖誘導体もしくは他のグリコシド複合体であってもよく、又はアミノ酸エステル誘導体であってもよい。
【0065】
組成物
本発明の一態様は、本明細書に記載のAPPAMP化合物と、薬学的に許容できる担体、希釈剤又は賦形剤とを含む組成物(例えば、医薬組成物)に関する。
【0066】
本発明の別の態様は、本明細書に記載のAPPAMP化合物と、薬学的に許容できる担体、希釈剤又は賦形剤とを混合することを含む、組成物(例えば、医薬組成物)の調製方法に関する。
【0067】
用途
本明細書に記載のAPPAMP化合物は、例えば増殖性障害の治療(「抗増殖剤」として)、癌の治療(「抗癌剤」として)、ウイルス感染症の治療(「抗ウイルス剤」として)、神経変性疾患の治療(「抗神経変性剤」として)等において有用である。
【0068】
CDK阻害方法における用途
本発明の一態様は、インビトロ又はインビボにおいて、CDK(例えば、CDK1、CDK2、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK8、CDK9、CDK10、CDK11、CDK12、CDK13等)の機能(例えば、細胞での機能)を阻害する方法に関しており、この方法は、有効量の本明細書に記載のAPPAMP化合物と、上記の細胞を接触させることを含む方法である。
【0069】
当業者は、候補化合物がCDK(例えば、CDK1、CDK2、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK8、CDK9、CDK10、CDK11、CDK12、CDK13等)を阻害するか否かを容易に測定することができる。例えば、好適なアッセイは、本明細書に記載されているか、当業者に公知である。
【0070】
一実施形態においては、上記の方法はインビトロで行われる。
一実施形態においては、上記の方法はインビボで行われる。
【0071】
一実施形態においては、APPAMP化合物は、薬学的に許容できる組成物の形態で提供される。
【0072】
任意の種類の細胞を処理してもよく、その細胞としては、脂肪、肺、胃腸(例えば、腸、結腸を含む)、乳房(乳腺)、卵巣、前立腺、肝臓(肝)、腎臓(腎)、膀胱、膵臓、脳及び皮膚が含まれる。
【0073】
例えば、細胞試料をインビトロで成長させ、この細胞と化合物を接触させ、化合物がその細胞に及ぼす効果を観測してもよい。「効果」の例としては、細胞の形態的状態(例えば、生存又は死亡等)を測定してもよい。化合物が細胞に影響を及ぼすと見出された場合、このことを、同じ細胞型の細胞を保有する患者の治療法において、化合物の効力の予後マーカー又は診断マーカーとして使用してもよい。
【0074】
細胞増殖等を阻害する方法における用途
本明細書に記載のAPPAMP化合物は、例えば(a)細胞増殖の制御(例えば、阻害);(b)細胞周期進行の阻害;(c)アポトーシスの促進;又は(d)これらのうちの1つ以上の組合せを行う。
【0075】
本発明の一態様は、インビトロ又はインビボにおいて、細胞増殖(例えば、細胞の増殖)を制御する(例えば、阻害する)か、細胞周期進行を阻害するか、アポトーシスを促進するか、又はこれらのうちの1つ以上の組合せを行う方法に関しており、この方法は、有効量の本明細書に記載のAPPAMP化合物と、細胞を接触させることを含む方法である。
【0076】
一実施形態においては、上記の方法は、インビトロ又はインビボにおいて、細胞増殖(例えば、細胞の増殖)を制御する(例えば、阻害する)方法であり、この方法は、有効量の本明細書に記載のAPPAMP化合物と、細胞を接触させることを含む。
【0077】
一実施形態においては、上記の方法はインビトロで行われる。
一実施形態においては、上記の方法はインビボで行われる。
【0078】
一実施形態においては、APPAMP化合物は、薬学的に許容できる組成物の形態で提供される。
【0079】
任意の種類の細胞を処理してもよく、その細胞としては、肺、胃腸(例えば、腸、結腸を含む)、乳房(乳腺)、卵巣、前立腺、肝臓(肝)、腎臓(腎)、膀胱、膵臓、脳及び皮膚が含まれる。
【0080】
当業者は、候補化合物が細胞増殖等を制御する(例えば、阻害する)か否かを容易に測定することができる。例えば、特定の化合物によって与えられる活性の評価に便利に使用されてもよいアッセイが、本明細書において記載されている。
【0081】
例えば、細胞試料(例えば、腫瘍からの細胞)をインビトロで成長させ、この細胞と化合物を接触させ、化合物がその細胞に及ぼす効果を観測してもよい。「効果」の例としては、細胞の形態的状態(例えば、生存又は死亡等)を測定してもよい。化合物が細胞に影響を及ぼすと見出された場合、このことを、同じ細胞型の細胞を保有する患者の治療法において、化合物の有効性の予後マーカー又は診断マーカーとして使用してもよい。
【0082】
治療法における用途
本発明の別の態様は、治療により人体又は動物体を治療する方法において使用するための本明細書に記載のAPPAMP化合物に関しており、例えば本明細書に記載の障害(例えば、疾患)の治療方法において使用するための化合物に関する。
【0083】
薬物の製造における用途
本発明の別の態様は、本明細書に記載のAPPAMP化合物の薬物製造における使用に関しており、その薬物は、例えば本明細書に記載の障害(例えば、疾患)の治療方法等の治療方法において使用するための薬物である。
【0084】
一実施形態においては、上記の薬物はAPPAMP化合物を含む。
【0085】
治療方法
本発明の別の態様は、例えば本明細書に記載の障害(例えば、疾患)の治療方法等の治療方法に関しており、この方法は、治療有効量の本明細書に記載のAPPAMP化合物を、好ましくは医薬組成物の形態で、治療の必要な対象に投与することを含む方法である。
【0086】
治療される障害
一実施形態(例えば、治療法において使用する実施形態、薬物製造における使用の実施形態、治療方法の実施形態)においては、治療は、CDKに関連する障害(例えば、疾患);CDKの不適切な活性により生じる障害(例えば、疾患);CDK変異に関連する障害(例えば、疾患);CDK過剰発現に関連する障害(例えば、疾患);CDKの上流経路活性化に関連する障害(例えば、疾患);CDKの阻害(例えば、選択的阻害)によって寛解する障害(例えば、疾患)の治療である。
【0087】
一実施形態(例えば、治療法において使用する実施形態、薬物製造における使用の実施形態、治療方法の実施形態)においては、治療は、増殖性障害;癌;ウイルス感染症(例えば、HIV);神経変性障害(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病);虚血;腎疾患;心血管障害(例えば、アテローム性動脈硬化症);又は自己免疫障害(関節リウマチを含む)の治療である。
【0088】
治療される障害-CDKに関連する障害
一実施形態(例えば、治療法において使用する実施形態、薬物製造における使用の実施形態、治療方法の実施形態)においては、治療は、CDK(例えば、CDK1、CDK2、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK8、CDK9、CDK10、CDK11、CDK12、CDK13等)、特にCDK7に関連する障害(例えば、疾患)の治療である。
【0089】
一実施形態においては、治療は、CDK(例えば、CDK1、CDK2、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK8、CDK9、CDK10、CDK11、CDK12、CDK13等)、特にCDK7の不適切な活性により生じる障害(例えば、疾患)の治療である。
【0090】
一実施形態においては、治療は、CDK変異;CDK過剰発現(例えば、対応する正常細胞と比較して;例えば、過剰発現が1.5倍、2倍、3倍、5倍、10倍、20倍もしくは50倍);又はCDKの上流経路活性化に関連する障害(例えば、疾患)の治療である。
【0091】
一実施形態においては、治療は、CDK(例えば、CDK1、CDK2、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK8、CDK9、CDK10、CDK11、CDK12、CDK13等)、特にCDK7の阻害(例えば、選択的阻害)によって寛解する障害(例えば、疾患)の治療である。
【0092】
治療される障害-増殖性障害
一実施形態(例えば、治療法において使用する実施形態、薬物製造における使用の実施形態、治療方法の実施形態)においては、治療は増殖性障害の治療である。
【0093】
本明細書において使用される場合、「増殖性障害」という用語は、不必要であるか又は制御されていない、過剰又は異常な細胞の細胞増殖に関しており、その細胞増殖は望まれない細胞増殖であり、例えば新生物成長又は過形成性成長等である。
【0094】
一実施形態においては、治療は、良性細胞増殖、前癌性細胞増殖又は悪性細胞増殖を特徴とする増殖性障害の治療である。
【0095】
一実施形態においては、治療は、過形成;新生物;腫瘍(例えば、組織球腫、グリオーマ、星状細胞腫、骨腫);癌;乾癬;骨疾患;線維増殖性障害(例えば、結合組織の線維増殖性障害);肺線維症;アテローム性動脈硬化症;又は血管中の平滑筋細胞増殖(例えば、狭窄もしくは血管形成術後の再狭窄)の治療である。
【0096】
治療される障害-癌
一実施形態(例えば、治療法において使用する実施形態、薬物製造における使用の実施形態、治療方法の実施形態)においては、治療は癌の治療である。
【0097】
一実施形態においては、治療は癌転移の治療である。
【0098】
癌に含まれるのは以下のものである。
(1)癌腫。重層扁平上皮(扁平上皮癌)から生じる腫瘍、ならびに臓器及び腺(腺癌)内に生じる腫瘍が含まれる。
例としては、乳房、結腸、肺、前立腺、卵巣が挙げられる。
【0099】
(2)肉腫。骨肉腫及び骨原性肉腫(骨);
軟骨肉腫(軟骨);平滑筋肉腫(平滑筋);横紋筋肉腫(骨格筋);中皮肉腫及び中皮腫(体腔の膜裏層);線維肉腫(線維組織);血管肉腫及び血管内皮腫(血管);脂肪肉腫(脂肪組織);グリオーマ及び星状細胞腫(脳に存在する神経原性結合組織);粘液肉腫(一次胚結合組織);間葉腫又は混合性中胚葉腫瘍(混合性結合組織型)が含まれる。
【0100】
(3)骨髄腫。
【0101】
(4)造血器腫瘍。骨髄性白血病及び顆粒球性白血病(骨髄及び顆粒球白血球系の悪性腫瘍);リンパ性、リンパ球性及びリンパ芽球性白血病(リンパ及びリンパ球血球系の悪性腫瘍);真性多血症(様々な血液細胞産物(しかし赤血球が一番多い)の悪性腫瘍)が含まれる。
【0102】
(5)リンパ腫。ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫が含まれる。
【0103】
(6)混合型。例えば腺扁平上皮癌;混合性中胚葉性腫瘍;癌肉腫;奇形癌腫が含まれる。
【0104】
例えば、一実施形態においては、治療は乳癌の治療である。
【0105】
一実施形態においては、癌は癌幹細胞を特徴とするか、又は癌幹細胞をさらなる特徴とする。
【0106】
一実施形態においては、癌はCDK(例えば、CDK1、CDK2、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK8、CDK9、CDK10、CDK11、CDK12、CDK13等)、特にCDK7と関連がある。
【0107】
一実施形態においては、癌はCDK(例えば、CDK1、CDK2、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK8、CDK9、CDK10、CDK11、CDK12、CDK13等)、特にCDK7の不適切な活性を特徴とするか、又はその不適切な活性をさらなる特徴とする。
【0108】
一実施形態においては、癌はCDK(例えば、CDK1、CDK2、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK8、CDK9、CDK10、CDK11、CDK12、CDK13等)、特にCDK7の過剰発現を特徴とするか、又はその過剰発現をさらなる特徴とする。
【0109】
抗癌効果は、1個以上の機構により生じてもよい。その機構には、細胞増殖の制御、細胞周期進行の阻害、血管新生(新しい血管の形成)の阻害、転移(発生点からの腫瘍の広がり)の阻害、細胞移動(体の他の部分への癌細胞の広がり)の阻害、浸潤(隣接する正常組織への腫瘍細胞の広がり)の阻害、アポトーシス(プログラム細胞死)の促進、壊死による死、又はオートファジーによる死の誘発が含まれるがこれらに限定されない。本明細書に記載される化合物は、本明細書において論じられている機構から独立して、本明細書に記載の癌の治療に使用してもよい。
【0110】
治療される障害-ウイルス感染症
一実施形態(例えば、治療法において使用する実施形態、薬物製造における使用の実施形態、治療方法の実施形態)においては、治療はウイルス感染症の治療である。
【0111】
一実施形態においては、治療は、
(グループI)dsDNAウイルス、例えばアデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス;
(グループII)ssDNAウイルス、例えばパルボウイルス;
(グループIII)dsRNAウイルス、例えばレオウイルス;
(グループIV)(+)ssRNAウイルス、例えばピコルナウイルス、トガウイルス;
(グループV)(-)ssRNAウイルス、例えばオルソミクソウイルス、ラブドウイルス;
(グループVI)ssRNA-RTウイルス、例えばレトロウイルス;又は
(グループVII)dsDNA-RTウイルス、例えばヘパドナウイルスによるウイルス感染の治療である。
【0112】
上で使用される場合、ds:二重鎖;ss:+鎖;(+)ssRNA:+鎖RNA;(-)ssRNA:-鎖RNA;ssRNA-RT:生活環にDNA中間体を有する(+鎖)RNAである。
【0113】
一実施形態においては、治療は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV);B型肝炎ウイルス(HBV);C型肝炎ウイルス(HCV);ヒトパピローマウイルス(HPV);サイトメガロウイルス(CMV);又はエプスタイン-バーウイルス(EBV);カポジ肉腫に関連するヒトヘルペスウイルス8型(HHV);コクサッキーウイルスB3型;ボルナウイルス;インフルエンザウイルスの治療である。
【0114】
治療される障害-自己免疫障害
一実施形態(例えば、治療法において使用する実施形態、薬物製造における使用の実施形態、治療方法の実施形態)において、治療は、自己免疫障害の治療である。
【0115】
一実施形態において、治療は、結合組織、関節、皮膚、又は眼に関連する自己免疫障害の治療である。
【0116】
一実施形態において、治療は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、乾癬、又はシェーグレン症候群の治療である。
【0117】
治療
本明細書において障害の治療と関係して使用される場合、「治療」という用語は、一般に例えば障害の進行の阻害等の、いくつかの所望の治療効果が達成される、ヒト又は動物(例えば、獣医学用途で)の治療に関する。また、「治療」という用語には、進行速度の減少、進行速度の停止、障害の症状の軽減、障害の寛解、及び障害の治癒が含まれる。予防手段(すなわち、予防法)としての治療も含まれる。例えば、まだ障害を生じさせていないが、障害を生じさせるリスクのある患者での使用が、「治療」という用語に包含される。
【0118】
例えば、治療には、癌の予防法、癌の発生率を下げること、癌の症状の緩和等が含まれる。
【0119】
本明細書において使用される場合、「治療有効量」という用語は、所望の治療計画に従って投与された際に、妥当な有益度/リスク比に応じていくつかの所望の治療効果を生じさせるのに有効な、化合物、又は化合物を含む材料、組成物、もしくは剤形の量に関する。
【0120】
併用療法
「治療」という用語には、2つ以上の治療又は療法を、例えば逐次又は同時に組み合わせた併用治療及び併用療法が含まれる。例えば、本明細書に記載の化合物を、例えば他の薬剤と組み合わせて、併用療法で使用してもよい。治療及び療法の例としては、化学療法(例えば薬物、抗体(例えば、免疫療法の場合)、プロドラッグ(例えば、光線力学的療法、GDEPT、ADEPT等の場合)を含めた活性薬剤の投与);外科手術;放射線療法;光線力学的療法;遺伝子療法;及び食事制限が挙げられる。
【0121】
本発明の一態様は、以下に記載する、1つ以上(例えば、1、2、3、4つ等)のさらなる治療薬と組み合わせた本明細書に記載の化合物に関する。
【0122】
特定の組合せは医師の自己の判断で行われ、医師は自身の一般知識と、熟練の一般医に公知の投与計画とを使用して用量を選択する。
【0123】
薬剤(すなわち、本明細書に記載の化合物と、1つ以上の他の薬剤)は、同時又は逐次に投与してもよく、個人で異なる投与計画で異なる経路により投与してもよい。例えば、逐次投与する場合、薬剤は密な間隔で(例えば、5~10分間にわたって)、又はより長い間隔で(例えば、1、2、3、4時間以上空けるか、もしくは必要であればさらに長い期間を空けて)投与することができ、詳細な投与計画は治療薬の特性に応じる。
【0124】
薬剤(すなわち、本明細書に記載の化合物と、1つ以上の他の薬剤)は、1つの剤形に一緒に製剤されてもよく、あるいは、個々の薬剤を別々に製剤し、キットの形態で、任意に使用説明書と共に、一緒に提供されてもよい。
【0125】
本明細書に記載のAPPAMP化合物を用いた治療と共に投与するか、又は組み合わせてもよいさらなる薬剤/療法の例としては、以下のものが挙げられる。
アロマターゼ阻害剤、例えばエキセメスタン(アロマシンとしても知られる)、レトロゾール(フェマーラとしても知られる)、アナストロゾール(アリミデックスとしても知られる)等;
抗エストロゲン剤、例えばフェソロデックス(フルベストラント及びICI182780としても知られる)、タモキシフェン(ノルバデックスとしても知られる)、ヒドロキシタモキシフェン等;
Her2遮断薬、例えばハーセプチン、ペルツズマブ、ラパチニブ等;
細胞傷害性化学療法剤、例えばタキサン(例えば、タクソールとしても知られるパクリタキセル;タキソテールとしても知られるドセタキセル)、シクロホスファミド、代謝拮抗薬(例えば、カルボプラチン、カペシタビン、ゲムシタビン、ドキソルビシン、エピルビシン、5-フルオロウラシル等)等。
【0126】
したがって、一実施形態においては、上記の治療は、さらなる活性薬剤を用いた治療(例えば、同時治療又は逐次治療)をさらに含み、そのさらなる活性薬剤は、例えばアロマターゼ阻害剤、抗エストロゲン剤、Her2遮断薬、細胞傷害性化学療法剤等である。
【0127】
アロマターゼ阻害剤及び/又は抗エストロゲン剤を用いた併用療法
エストロゲン受容体(ERα)は乳癌の70%で発現しており、この場合、乳癌の発生と進行の大きな要因であるとして認識されている。
【0128】
したがってERαは、ERα-陽性乳癌において、補助療法の有力な標的である。抗エストロゲン剤を用いた、エストロゲン生合成の阻害(例えば、アロマターゼ阻害剤を使用して)によるERαの活性の阻害は再発を減らし、患者生存を改善する(例えば、1998年のOsborneの文献;2010年のCuzickらの文献を参照のこと)。タモキシフェン(ノルバデックス)は、エストロゲン受容体への結合をエストロゲンと競合することによって作用して、ERα活性を阻害する抗エストロゲン剤である。重要なことには、ERα-陽性乳癌を有する患者の多くは、これらのホルモン療法中に再発し、耐性腫瘍はほとんどERα-陽性のままである(例えば、2002年のAliらの文献;2003年のJohnstonらの文献;2011年のAliらの文献;2011年のOsborneらの文献を参照のこと)。
【0129】
タモキシフェンは、選択的エストロゲン受容体調節物質(SERM)として知られる抗エストロゲン剤のクラスの典型的な例であり、乳房では抗エストロゲン性であるが、心血管系及び骨等の他の組織ではしばしばエストロゲン様活性を有する。タモキシフェンは、閉経前及び閉経後の女性において、ERα-陽性乳癌の治療で最初に使われる補助薬剤として幅広く使用されている。フルベストラント(フェソロデックス)は、ERαへの結合をエストロゲンと競合してERαの活性化を防ぎ、またERαタンパク質の下方制御も促進する抗エストロゲン剤である。このように、フルベストラントは、選択的エストロゲン受容体抑制物質(SERD)として知られる抗エストロゲン剤のクラスの例である。フルベストラントは、タモキシフェン等の最初に使用される補助薬剤での治療後に再発を経たERα-陽性乳癌患者の治療において、主に使用される。
【0130】
アロマターゼは、アンドロゲンのエストロゲンへの変換において、律速段階を触媒するチトクロムP450酵素である。臨床的に、アナストロゾール(アリミデックス)及びレトロゾール(フェマーラ)は、アロマターゼ複合体の競合的阻害薬であり、一方、エキセメスタン(アロマシン)はアロマターゼの不可逆阻害剤である。アロマターゼ阻害剤は、エストロゲン生合成を阻害し、それにより循環エストロゲンの濃度を阻害し、その結果、エストロゲンの入手可能性を制限することによって、ERα活性化を防ぐ。
【0131】
ERαタンパク質へのエストロゲンの結合は、DNA結合領域(DBD)に対しC末端のリガンド(ホルモン)結合領域(LBD)で生じ、ERα二量体化、核移行、及び標的遺伝子の調節領域でのDNAへの結合を促進して、この標的遺伝子の発現を制御する。ERαのリン酸化は、DNA結合及び転写活性化を含めた、ERα活性を制御する重要な機構を提供する。特に、ERαによる転写活性化にとって重要な、DBDに対しN末端の領域(転写活性化機能1(AF-1)として知られる)におけるセリン-118でのERαリン酸化は、ERα活性化において極めて早く起こるイベントの1つである。セリン-118リン酸化は、CDK7を含む転写因子複合体TFIIHのエストロゲン刺激動員によって媒介される。エストロゲン結合LBDへのエストロゲン刺激TFIIH動員により、セリン-118のCDK7媒介リン酸化が可能になり、ERα活性が促進される。CDK7過剰発現は、アロマターゼ阻害剤によって引き起こされる低エストロゲン濃度の条件下でERα活性を促進することができ、タモキシフェン結合ERαの活性化を導く(例えば、1993年のAliら;2000年のChenら;2002年のChenらの文献を参照のこと)。
【0132】
これらの知見により、本明細書に記載のAPPAMP化合物をアロマターゼ阻害剤又は抗エストロゲン剤と組み合わせ、乳癌患者の治療に使用する根拠が提供される。そのような併用療法は、アロマターゼ阻害剤耐性又は抗エストロゲン剤耐性が発生した後の乳癌患者の治療において特に有用である。そのような併用療法は、毒性を下げるために、使用するAPPAMP化合物、抗エストロゲン剤及び/又はアロマターゼ阻害剤の量及び/又は濃度を少なくすることも可能である。
【0133】
エストロゲン反応性ERα-陽性MCF-7乳癌細胞株における、特定のピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5,7-ジアミン化合物(PPDA-001、ICEC0942とも呼ばれる)を抗エストロゲン剤(4-ヒドロキシタモキシフェン、又はフェソロデックス)と組み合わせた相乗効果を示す研究は、2015年のBodkeらの文献に記載されている。薬剤は協同的に作用して、乳癌細胞の増殖を阻害する。
【0134】
したがって、一実施形態においては、上記の治療はさらなる活性薬剤を用いた治療(例えば、同時治療又は逐次治療)をさらに含み、そのさらなる活性薬剤はアロマターゼ阻害剤であり、例えばエキセメスタン(アロマシンとしても知られる)、レトロゾール(フェマーラとしても知られる)又はアナストロゾール(アリミデックスとしても知られる)である。一実施形態においては、上記の障害は乳癌(例えば、上記のアロマターゼ阻害剤に対し耐性のある乳癌)である。
【0135】
また、一実施形態においては、上記の治療はさらなる活性薬剤を用いた治療(例えば、同時治療又は逐次治療)をさらに含み、そのさらなる活性薬剤は抗エストロゲン剤であり、例えばフェソロデックス(フルベストラント及びICI182780としても知られる)、タモキシフェン(ノルバデックスとしても知られる)又はヒドロキシタモキシフェンである。一実施形態においては、上記の障害は乳癌(例えば、上記の抗エストロゲン剤に対し耐性のある乳癌)である。
【0136】
他の用途
本明細書に記載のAPPAMP化合物は、CDK(例えば、CDK1、CDK2、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK8、CDK9、CDK10、CDK11、CDK12、CDK13等)を阻害する細胞培養液添加剤としても使用してよい。
【0137】
本明細書に記載のAPPAMP化合物は、例えば、考察中の化合物と処理することにより候補のホストが利益を得る可能性があるかどうかを判断するために、インビトロアッセイの一部としても使用してよい。
【0138】
本明細書に記載のAPPAMP化合物は、他の活性化合物や他のCDK(例えば、CDK1、CDK2、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK8、CDK9、CDK10、CDK11、CDK12、CDK13等)阻害剤等を同定するために、例えばアッセイで標準物質としても使用してよい。
【0139】
キット
本発明の一態様は、(a)本明細書に記載のAPPAMP化合物、又は本明細書に記載のAPPAMP化合物を含む組成物、例えば、好ましくは好適な容器内に、かつ/又は好適な包装を用いて提供されたもの;及び(b)使用についての説明書、例えば、上記の化合物又は組成物の投与法について文書化された説明書を含むキットに関する。
【0140】
文書化された説明書は、活性成分が治療するのに好適な適応症のリストも含んでよい。
【0141】
投与経路
APPAMP化合物又はそのAPPAMP化合物を含む医薬組成物は、任意の好都合な投与経路により、全身的、末梢的又は局所的のいずれでも(すなわち、所望の作用部位で)対象に投与してよい。
【0142】
投与経路の例としては、経口(例えば、摂取による投与);口腔内;舌下;経皮(例えば、パッチ、硬膏剤等による投与が含まれる);経粘膜(例えば、パッチ、硬膏剤等による投与が含まれる);鼻腔内(例えば、鼻腔スプレーによる投与);眼内(例えば、点眼薬による投与);経肺(例えば、エアロゾルを使用して、例えば口又は鼻を経た吸入又は通気療法による投与);経直腸(例えば、座薬又は浣腸による投与);膣内(例えば、膣坐剤による投与);非経口、例えば皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、心臓内、髄腔内、脊髄内、嚢内、嚢下、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、くも膜下及び胸骨内を含めた注射による投与;例えば皮下又は筋肉内のデポー又はリザーバの移植による投与が挙げられる。
【0143】
対象/患者
対象/患者は、脊索動物、脊椎動物、哺乳動物、有胎盤哺乳動物、有袋類(例えば、カンガルー、ウォンバット)、齧歯類(例えば、モルモット、ハムスター、ラット、マウス)、ネズミ科動物(例えば、マウス)、ウサギ目動物(例えば、ウサギ)、鳥類(例えば、トリ)、イヌ科動物(例えば、イヌ)、ネコ科動物(例えば、ネコ)、ウマ科動物(例えば、ウマ)、ブタ(porcine)(例えば、ブタ(pig))、ヒツジ(ovine)(例えば、ヒツジ(sheep))、ウシ科動物(例えば、ウシ)、霊長類、サル(simian)(例えば、サル(monkey)又は類人猿)、サル(monkey)(例えば、マーモセット、ヒヒ)、類人猿(例えば、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、テナガザル)、又はヒトであってもよい。
【0144】
さらに、対象/患者は、任意の発達形態であってもよく、例えば胎児であってもよい。
【0145】
好ましい一実施形態においては、対象/患者はヒトである。
【0146】
製剤
APPAMP化合物は単独で投与することも可能であるが、医薬組成物(例えば、組成物、調剤品、薬物)として提供することが好ましく、この医薬組成物は、1種以上の本明細書に記載のAPPAMP化合物を、1種以上の他の薬学的に許容できる成分と一緒に含む。この薬学的に許容できる成分は当業者に周知であり、これには、薬学的に許容できる担体、希釈剤、賦形剤、アジュバント、充填剤、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤、滑沢剤、安定剤、可溶化剤、界面活性剤(例えば、湿潤剤)、マスキング剤、着色剤、香味剤及び甘味剤が含まれる。製剤は、他の活性薬剤、例えば、他の治療薬又は予防薬をさらに含んでもよい。
【0147】
したがって、本発明は、上で規定された医薬組成物をさらに提供し、かつ、1種以上の本明細書に記載のAPPAMP化合物を、1種以上の他の薬学的に許容できる成分と一緒に混合することを含む、医薬組成物の作製方法をさらに提供する。上記の薬学的に許容できる成分は当業者に周知であり、例えば担体、希釈剤、賦形剤等である。個別の単位(例えば、錠剤等)として製剤される場合は、各単位は所定量(用量)の上記の化合物を含有する。
【0148】
「薬学的に許容できる」という用語は、本明細書において使用される場合、信頼できる医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激作用、アレルギー反応、又は他の問題もしくは合併症なしに、妥当な効果/リスク比と釣り合って、問題の対象(例えば、ヒト)の組織と接触して使用するのに好適な化合物、成分、物質、組成物、剤形などに関する。各担体、希釈剤、賦形剤等は、製剤の他の成分と適合性であるという意味でも、「許容できる」必要がある。
【0149】
好適な担体、希釈剤、賦形剤等は、標準的な医薬教書、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」,第18版,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1990;及び「Handbook of Pharmaceutical Excipients」,第5版,2005において見出すことができる。
【0150】
上記の製剤は、薬学の技術分野で周知の任意の方法によって調製してもよい。このような方法は、上記の化合物を、1種以上の副成分を構成する担体と合わせるステップを含む。一般に、上記の製剤は、上記の化合物を担体(例えば、液体担体、微粉化された固体担体等)と均一かつ密に合わせ、次いで必要に応じて製品を成形することにより調製する。
【0151】
上記の製剤は、速放性又は徐放性(slow release);即時放出性、遅延放出性、徐放性(timed release)、もしくは持続放出性(sustained release);又はそれらの組合せを提供するよう調製してもよい。
【0152】
製剤は好適に液体、溶液(例えば、水性、非水性)、懸濁液(例えば、水性、非水性)、乳濁液(例えば、水中油型、油中水型)、エリキシル、シロップ、舐剤、洗口液、ドロップ、錠剤(例えば、コーティングした錠剤が含まれる)、顆粒剤、粉剤、トローチ剤、香錠、カプセル(例えば、硬質ゼラチンカプセル及び軟質ゼラチンカプセルが含まれる)、カシェ剤、丸剤、アンプル、巨丸剤、坐剤、膣坐剤、チンキ、ゲル剤、ペースト剤、軟膏、クリーム、ローション剤、油剤、フォーム剤、スプレー、噴霧剤又はエアロゾル剤の形態であってもよい。
【0153】
製剤は、1種以上の化合物と、任意に1種以上の他の薬学的に許容できる成分とを浸透させたパッチ、絆創膏、包帯、包帯材等として好適に提供してもよい。この薬学的に許容できる成分には、例えば浸透(penetration)増強剤、浸透(permeation)増強剤及び吸収増強剤が含まれる。製剤は、デポー又はリザーバの形態で好適に提供してもよい。
【0154】
上記の化合物は、1種以上の他の薬学的に許容できる成分に溶かすか、懸濁させるか、又はそれと混合してもよい。上記の化合物は、リポソーム内で提供するか、又は例えば血液成分もしくは1種以上の臓器を標的にして化合物を向かわせるよう設計された他の微粒子内で提供してもよい。
【0155】
経口投与(例えば、摂取による投与)に好適な製剤としては、液体、溶液(例えば、水性、非水性)、懸濁液(例えば、水性、非水性)、乳濁液(例えば、水中油型、油中水型)、エリキシル、シロップ、舐剤、錠剤、顆粒剤、粉剤、カプセル、カシェ剤、丸剤、アンプル、巨丸剤が挙げられる。
【0156】
口腔内投与に好適な製剤としては、洗口液、トローチ剤、香錠、ならびにパッチ、絆創膏、デポー及びリザーバが挙げられる。トローチ剤は通常、風味付けした主成分中に上記の化合物を含む。この風味付けした主成分は通常、スクロール及びアラビアゴム又はトラガカントゴムである。香錠は通常、ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアラビアゴム等の不活性マトリックス中に上記の化合物を含む。洗口液は通常、好適な液体担体中に上記の化合物を含む。
【0157】
舌下投与に好適な製剤としては、錠剤、トローチ剤、香錠、カプセル及び丸剤が挙げられる。
【0158】
経口経粘膜投与に好適な製剤としては、液体、溶液(例えば、水性、非水性)、懸濁液(例えば、水性、非水性)、乳濁液(例えば、水中油型、油中水型)、洗口液、トローチ剤、香錠、ならびにパッチ、絆創膏、デポー及びリザーバが挙げられる。
【0159】
非経口経粘膜投与に好適な製剤としては、液体、溶液(例えば、水性、非水性)、懸濁液(例えば、水性、非水性)、乳濁液(例えば、水中油型、油中水型)、座剤、膣坐剤、ゲル剤、ペースト剤、軟膏、クリーム、ローション剤、油剤、ならびにパッチ、絆創膏、デポー及びリザーバが挙げられる。
【0160】
経皮投与に好適な製剤としては、ゲル剤、ペースト剤、軟膏、クリーム、ローション剤及び油剤、ならびにパッチ、絆創膏、包帯、包帯材、デポー及びリザーバが挙げられる。
【0161】
錠剤は、任意に1種以上の副成分を用いて好都合な手段によって作製してもよく、例えば圧縮又は成形によって作製してもよい。圧縮錠剤は、粉末又は顆粒等の流動性形態の上記の化合物を、任意に1種以上の結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、アラビアゴム、ソルビトール、トラガカントゴム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤又は希釈剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロース、リン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ);崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム);界面活性剤又は分散剤又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム);防腐剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、ソルビン酸);香料、香味増強剤及び甘味剤と混合して、好適な機械で圧縮することにより調製してもよい。錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた上記の粉末化合物の混合物を、好適な機械で成型することによって調製してもよい。錠剤は、任意にコーティングしても、割線をいれてもよく、中にある上記の化合物の徐放性又は制御放出性を提供するために、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを、比率を変えて使用して製剤し、所望の放出特性を提供してもよい。錠剤は、任意にコーティングして提供して例えば放出性に影響を与えてもよく、例えば腸溶コーティングして、胃ではなく腸の部分で放出をもたらしてもよい。
【0162】
軟膏は通常、上記の化合物と、パラフィン系軟膏基剤又は水混和性軟膏基剤とから調製する。
【0163】
クリームは通常、上記の化合物と、水中油型クリーム基剤とから調製する。所望であれば、クリーム基剤の水相は、例えば約30%w/w以上の多価アルコールを含んでもよい。この多価アルコールは、すなわち2個以上のヒドロキシル基を有するアルコールであり、例えばプロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール及びポリエチレングリコールならびにそれらの組合せ等である。局所用製剤は、皮膚又は他の患部への上記の化合物の吸収又は浸透を向上させる化合物を望ましくは含んでもよい。このような経皮浸透増強剤の例としては、ジメチルスルホキシド及び関連類似体が挙げられる。
【0164】
乳濁液は通常、上記の化合物と、油相とから調製し、任意に単に乳化剤(他には乳化剤(emulgent)としても知られる)を含んでもよく、又は1種以上の乳化剤と、脂肪もしくは油もしくは脂肪及び油の両方との混合物を含んでもよい。好ましくは、親水性乳化剤が、安定剤として作用する親油性乳化剤と一緒に含まれる。油と脂肪の両方を含むことも好ましい。さらに、乳化剤は、安定化剤を伴うか又は伴わずにいわゆる乳化蝋を形成し、この蝋は、油及び/又は脂肪と共にいわゆる乳化軟膏基剤を形成し、これがクリーム製剤の油性分散相を形成する。
【0165】
好適な乳化剤及び乳濁液安定剤としては、Tween60、Span80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル及びラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。医薬乳濁液に使用する可能性のあるほとんどの油では上記の化合物の溶解度は非常に低くてもよいので、上記の製剤に好適な油又は脂肪の選択は、所望の美容特性を達成することに基づく。したがって、上記のクリームは、好ましくはチューブ又は他の容器からの漏れを避けるのに好適な粘稠性を有する、非グリース状、非着色性かつ洗浄可能製品である必要がある。ジイソアジピン酸エステル、ステアリン酸イソセチルエステル、ヤシ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2-エチルへキシル、又はCrodamol CAPとして知られる分岐鎖エステルの混和物といった、直鎖又は分岐鎖の一塩基性又は二塩基性アルキルエステルを使用してもよく、最後の3つが好ましいエステルである。これらは、必要な特性に応じて、単独で使用しても、組み合わせて使用してもよい。あるいは、白色軟パラフィン及び/もしくは流動パラフィン等の高融点脂質、又は他の鉱油を使用することができる。
【0166】
鼻腔内投与に好適な製剤としては、担体が液体である場合は、例えば鼻腔用スプレー、点鼻薬、又はネブライザーによるエアロゾル剤投与が挙げられ、上記化合物の水性又は油性溶液を含む。
【0167】
鼻腔内投与に好適な製剤としては、担体が固体である場合は、例えば約20~約500ミクロンの粒径を有する粗粉末として提供される製剤が含まれる。この製剤は、鼻から吸入する手法で、すなわち、鼻の近くに持った上記の粉末の容器から鼻孔を経て急速に吸入して投与される。
【0168】
経肺投与(例えば、吸入又は通気療法による投与)に好適な製剤としては、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の好適なガスといった好適な高圧ガスを使用した加圧容器からのエアロゾルスプレーとして提供される製剤が含まれる。
【0169】
眼内投与に好適な製剤としては、上記の化合物が好適な担体中に(特に上記化合物では水性溶媒中に)溶解又は懸濁している点眼剤が挙げられる。
【0170】
経直腸投与に好適な製剤は、例えばカカオバターもしくはサリチル酸エステルといった、天然油もしくは硬化油、蝋、脂肪、半液体もしくは液体ポリオールを含む好適な基剤を用いた座剤として;又は浣腸による治療用の溶液もしくは懸濁液として提供してもよい。
【0171】
膣内投与に好適な製剤は、当技術分野において適切であることが公知の担体を上記の化合物に加えて含有する膣坐剤、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤又はスプレー製剤として提供してもよい。
【0172】
非経口投与(例えば、注射による投与)に好適な製剤としては、発熱物質を含まない水性もしくは非水性等張滅菌液(例えば、溶液、懸濁液)が挙げられ、この滅菌液には、上記の化合物が溶解、懸濁、又は他の方法(例えば、リポソーム内もしくは他の微粒子内)で準備されている。そのような液体は、抗酸化剤、緩衝剤、防腐剤、安定剤、静菌剤、懸濁剤、増粘剤、及び対象のレシピエントの血液(又は他の関連体液)と製剤を等張にする溶質といった、他の薬学的に許容できる成分をさらに含有してもよい。賦形剤の例としては、例えば水、アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油等が挙げられる。このような製剤で使用するのに好適な等張性担体の例としては、塩化ナトリウム注射剤、リンゲル液又は乳酸加リンゲル注射剤が挙げられる。
【0173】
典型的には、液体中の上記の化合物の濃度は、約1ng/mL~約10μg/mL、例えば約10ng/mL~約1μg/mLである。製剤は、単回用量又は頻回用量の密封容器、例えば、アンプル及びバイアルで提供してもよく、また、使用直前に無菌液体担体(例えば、注射用水)の添加のみを必要とする凍結-乾燥(凍結乾燥)状態で保存してもよい。
【0174】
無菌の粉剤、顆粒剤及び錠剤より、即席注射溶液及び懸濁液を調製してもよい。
【0175】
用量
APPAMP化合物、及びAPPAMP化合物を含む組成物の適切な用量は、患者ごとに異なりうることは当業者に理解されよう。一般に、最適用量の決定は、あらゆるリスク又は有害な副作用に対する治療利益のレベルを比べて考えることを含む。選択される用量レベルは、特定のAPPAMP化合物の活性、投与経路、投与の時間、APPAMP化合物の排出速度、治療期間、組み合わせて使用する他の薬物、化合物及び/又は物質、障害の重症度、ならびに患者の種、性別、年齢、体重、状態、健康状態及び既往歴を含めた様々な要因に依存する。用量は、APPAMP化合物の用量及び投与経路は、最終的には医師、獣医師又は臨床医の裁量によるものであるが、一般には、作用部位で、実質的に有害又は有毒の副作用を引き起こさずに所望の効果が得られる局所濃度に到達するよう選択される。
【0176】
投与は、治療期間全体を通じて1回の投与で行うか、連続的に又は間欠的に(例えば、適切な間隔での分割用量で)行うことができる。最も有効な投与手段及び投与量を決定する方法は当業者に周知であり、療法で使用する製剤、療法の目的、治療標的細胞、及び治療する対象に応じて変動する。治療を行う医師、獣医師又は臨床医によって選択される用量レベル及びパターンを用いて、単回又は頻回の投与を行うことができる。
【0177】
一般に、APPAMP化合物の好適な用量は、1日につき、対象の体重1キログラムあたり約10μg~約250mg(より典型的には、約100μg~約25mg)の範囲である。上記の化合物が塩、エステル、アミド、プロドラッグ等である場合、投与する量は親化合物に基づいて計算するので、実際に使用する重量は比例して増加する。
【実施例
【0178】
化学合成
APPAMP化合物の化学合成のための方法をここに記載する。APPAMP化合物の合成の代替的又は改善された方法を提供するために、これら及び/又は他の周知の方法を既知の方法で改変及び/又は適合させてもよい。
【0179】
略語
aq:水性;
Boc:tert-ブトキシカルボニル;
BocO:ジ-tert-ブチルジカーボネート;
br:ブロード;
ca.:約;
d:ダブレット;
BuXPhos-Pd-G3:[(2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニル)-2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホナート;
DCM:ジクロロメタン;
ジオキサン:1,4-ジオキサン;
DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン;
EtOAc:酢酸エチル;
EtOH:エタノール;
h:時間;
HPLC:高速液体クロマトグラフィー;
LCMS:液体クロマトグラフィー-質量分析;
LiHMDS:リチウムヘキサメチルジシラジド;
m:マルチプレット;
M:モル、分子イオン;
MeCN:アセトニトリル;
MeOH:メタノール;
min:分;
MS:質量分析;
NCS:N-クロロスクシンイミド;
NIS:N-ヨードスクシンイミド;
NMR:核磁気共鳴;
PdCl(dppf)DCM:[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)、ジクロロメタンとの錯体);
q:カルテット;
RT:室温(約20℃);
:保持時間;
s:シングレット、固体;
SCX:強陽イオン交換;
t:トリプレット;
TFA:トリフルオロ酢酸;
THF:テトラヒドロフラン。
【0180】
他の略語は、それらの一般的に受け入れられている意味を伝えることを意図している。
【0181】
構造の命名は、ChemDraw(登録商標)Professional 15(PerkinElmer)からの「Structure to Name」変換を使用して作成した。
【0182】
一般合成
APPAMP化合物は、例えば、以下の化学スキームに例示される方法によって調製され得る。ギ酸エチルを用いてニトリル(I-1)をホルミル化し、続いて得られたα-ホルミルニトリルをヒドラジンと縮合させると、アミノピアラゾール(I-2)が得られる。マロン酸ジエチルと縮合させ、続いてオキシ塩化リンで塩素化すると、ピラゾロピリミジンI-3が得られる。アミンによる求核芳香族置換とそれに続くBoc保護により5-アミノピラゾロピリミジンI-4を生成させ、その後Buchwald-Hartwigクロスカップリング反応を用いて中間体I-5に変換する。例えばTFAを用いた中間体I-5のBoc脱保護により、化合物I-6が得られる。必要に応じて、I-6をNCSを用いて塩素化して、6-クロロアナログI-7を得る。
【0183】
スキーム1
【化7】
【0184】
上記スキームにおける反応条件は以下の通りである:(a)BuLi,PrNH,EtOCHO,THF,-78℃~RT;(b)N(aq),AcOH,EtOH,90℃;(c)Na(s),EtOH,マロン酸ジエチル,還流;(d)POCl,PhNMe,60-90℃;(e)RCHNH,DIPEA,EtOH,還流;(f)BocO,DMAP,DCM,RT;(g)BuXPhos-Pd-G3,LiHMDS,THF,60℃;(h)TFA,DCM,RT;(i)NCS,DCM,RT。
【0185】
あるいは以下の化学スキームに例示されるように、I-5は、5,7-ジクロロピラゾロ[1,5-a]ピリミジンのヨウ素化、続いてアミン及びBoc保護による求核芳香族置換によってヨード複素環I-8を得ることによって調製することができ、I-8をSuzuki-Miyauraカップリング反応を使用してI-5に変換することができる。
【0186】
スキーム2
【化8】
【0187】
上記の方法における反応条件は、下記のとおりである:(a)NIS、MeCN、還流、(b)R2 CH2 NH2、DIPEA、EtOH、還流、(c)BocO、DMAP、DCM、RT、(d)PdCldppf)DCM、KPO、PhMe、HO、100℃)。
【0188】
化学合成例
以下の実施例は単に本発明を説明するために提供されるものであり、本明細書に記載される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0189】
一般実験条件
全ての出発物質及び溶媒は、商業的供給源から得たか、又は文献引用に従って調製した。別段の指示がない限り、反応混合物を磁気撹拌した。
【0190】
カラムクロマトグラフィーは別段の指示がない限り、Grace(商標)GraceResolv(商標)予備充填シリカ(40μm)カートリッジを使用して、CombiFlash Rfシステムなどの自動フラッシュクロマトグラフィーシステムで行った。
【0191】
Bruker Avance III分光計(400MHz)を用いて、H NMRスペクトルを記録した。化学シフトは、残留プロトン性溶媒の中心ピーク又は参照としてのテトラメチルシランの内部標準のいずれかを使用して、ppmで表される。スペクトルは特に明記しない限り、周囲温度で記録した。
【0192】
保持時間及び関連する質量イオンを決定するための分析LCMS実験を、以下に記載される方法1又は方法2を実行するAgilent 6110又は6120シリーズシングル四重極質量分析計に連結されたAgilent 1200シリーズHPLCシステムを使用して行った。
【0193】
分取HPLC精製は、Waters X-Bridge BEH C18、5μm、19×50mmカラムを用いて、MeCN及び10mM重炭酸アンモニウム(水溶液)の勾配を用いて行った。可変波長検出器によって測定された単一波長でのUVによる検出後に画分を収集した。
【0194】
SCX樹脂はSigma Aldrich又はSilicycleから購入し、使用前にMeOHで洗浄した。
【0195】
分析方法
方法1-酸性4分法:
【0196】
カラム:Waters X-Select CSH C18、2.5μm、4.6x30mm
検出:別段の指示がない限り、254nmでのUV
MSイオン化:エレクトロスプレー
溶媒A:水/0.1%ギ酸
溶媒B:MeCN/0.1%ギ酸
【表A】
【0197】
方法2-塩基性4分法:
カラム:Waters X-Bridge BEH C18、2.5 μm、4.6x30mm
溶媒A:水/10mM重炭酸アンモニウム
溶媒B:MeCN
(他のパラメータは、方法1と同じである)
【0198】
合成1
(3R,4R)-4-(((7-(ベンジルアミノ)-3-シクロプロピルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)アミノ)メチル)ピペリジン-3-オール(化合物APPAMP-002)
【化9】
【0199】
工程1: 5,7-ジクロロ-3-ヨードピラゾロ[1,5-a]ピリミジン
MeCN(20ml)中の5,7-ジクロロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン(6.1g、32.4mmol)及びNIS(8.03g、35.7mmol)の混合物を還流下で1時間加熱した。混合物を真空下で濃縮し、残渣をDCM(200ml)に溶解し、水(200ml)で洗浄した。有機相をNaSO(s)上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(220gカートリッジ、DCM)による精製により、表題化合物(9.1g、28.4mmol、純度98%)を結晶性黄色固体として得た。H NMR(400MHz、DMSO-d)δ8.48(s、1H)、7.73(s、1H)。
【0200】
工程2: tert-ブチルベンジル(5-クロロ-3-ヨードピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル)カルバメート
ジオキサン(20ml)中の上記工程1の生成物(2.00g、6.24mmol、純度98%)、ベンジルアミン(765μl、7.01mmol)及びDIPEA(2.23ml、12.7mmol)の混合物を80℃で2時間加熱した。混合物を真空下で濃縮し、残渣をTHF(20ml)に溶解した。この溶液にBoc2 O(2.09g、9.58mmol)及びDMAP(78mg、0.637mmol)を加え、得られた混合物を40℃で2時間加熱した。反応混合物を真空下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(120gカートリッジ、0~50%EtOAc/イソヘキサン)によって精製して、表題化合物(710mg、1.44mmol、純度98%)を黄色固体として得た。LCMS(方法2):R1.73分、イオン化なし。
【0201】
工程3: tert-ブチルベンジル(5-クロロ-3-シクロプロピルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル)カルバメート
トルエン(8ml)及び水(1ml)の混合物中のシクロプロピルボロン酸(70.9mg、0.825mmol)、リン酸カリウム(350mg、1.65mmol)、上記工程2の生成物(400mg、0.809mmol、純度98%)及びPdCl2(dppf)DCM(13.5mg、0.017mmol)の混合物を100℃で5時間加熱した。混合物を真空下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(40gカートリッジ、0~100%DCM/イソヘキサン)によって精製して、表題化合物(225mg、0.553mmol、98%純度)を濃い黄色のガム状物として得た。H NMR(400MHz,DMSO-d)δ8.10(s,1H),7.34-7.18(m,5H),7.12(s,1H),5.00(s,2H),1.97(tt,J=8.4,5.1Hz,1H),1.28(s,9H),0.99-0.89(m,2H),0.81-0.75(m,2H)。
【0202】
工程4:(3R,4R)-4-(((7-(ベンジルアミノ)-3-シクロプロピルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)アミノ)メチル)ピペリジン-3-オール
上記工程3の生成物(220mg、0.541mmol、純度98%)、(3R,4R)-tert-ブチル4-(アミノメチル)-3-ヒドロキシピペリジン-1-カルボキシレート(152mg、0.662mmol)及びtBuBrettPhos-Pd-G3(23.6mg、0.028mmol)のTHF(5ml)溶液をN2で5分間脱気した。LiHMDS(THF中1M)(607μl、0.607mmol)を添加し、混合物をさらに5分間脱気した。反応混合物を60℃で0.5時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、EtOAc(50ml)に注いだ。有機相を水(2×20mL)で洗浄し、NaSO(s)で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、褐色のゴム状物を得た。この物質をジオキサン(5ml)中の4M HClに溶解し、1時間放置した。混合物を真空下で濃縮し、残渣をMeOH中のSCX樹脂(10g)のカラムにロードした。カラムをMeOHで洗浄し、次いで生成物をMeOH中7Mアンモニアで溶出した。生成物を含有する画分を真空下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(12gカートリッジ、0~10%(MeOH中0.7Mアンモニア)/DCM)によってさらに精製して、表題化合物(137mg、0.346mmol、99%純度)を白色固体として得た。
【0203】
LCMS(方法2):m/z 393(M+H)+,391(M-H)-1.71分。H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ7.83(t,J=6.5Hz,1H),7.52(s,1H),7.41-7.30(m,4H),7.30-7.19(m,1H),6.70(t,J=6.1Hz,1H),5.30(s,1H),5.17(s,1H),4.44(d,J=6.4Hz,2H),3.61-3.41(m,1H),3.25-3.13(m,1H),3.03(tt,J=9.6,4.5Hz,1H),2.91(dd,J=11.6,4.5Hz,1H),2.83-2.72(m,1H),2.30(td,J=12.1,2.6Hz,1H),2.16(dd,J=11.6,9.9Hz,1H),1.97(s,1H),1.71(tt,J=8.4,5.2Hz,1H),1.61-1.49(m,1H),1.40-1.26(m,1H),1.22-1.05(m,1H),0.82-0.70(m,2H),0.71-0.56(m,2H)。
【0204】
合成2
(3R,4R)-4-(((3-エチル-7-((2-フルオロベンジル)アミノ)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)アミノ)メチル)ピペリジン-3-オール(化合物APPAMP-001)
【化10】
【0205】
工程1: tert-ブチル(5-クロロ-3-エチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル)(2-フルオロベンジル)カルバメート
ジオキサン(5ml)中の5,7-ジクロロ-3-エチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン(95mg、0.440mmol)、DIPEA(154μl、0.879mmol)及び2-フルオロベンジルアミン(60.5mg、0.484mmol)の混合物を90℃で2時間加熱した。反応混合物をDCM(20ml)中に抽出し、水(10ml)で洗浄した。有機相を分離し、真空下で濃縮した。残渣をTHF(4ml)に溶解し、BocO(123μl、0.528mmol)、続いてDMAP(2.69mg、0.022mmol)で処理した。得られた混合物を室温で1時間撹拌した。混合物を真空下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(12gカートリッジ、0~50% EtOAc/イソヘキサン)によって精製して、表題化合物(219mg)を無色透明ガム状物として得た。LCMS(方法1):m/z405(M+H)+、2.94分。
【0206】
工程2:(3R,4R)-4-(((3-エチル-7-((2-フルオロベンジル)アミノ)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)アミノ)メチル)ピペリジン-3-オール
上記工程1の生成物(140mg)を、合成1工程4の手順を使用して、(3R,4R)-tert-ブチル4-(アミノメチル)-3-ヒドロキシピペリジン-1-カルボキシレート(96mg、0.415mmol)、tBuBrettPhos-Pd-G3(14.8mg、0.017mmol)及びLiHMDS(THF中1M)(346μl、0.346mmol)と反応させ、続いてジオキサン(5ml)中4M HClと反応させて、表題化合物(40mg、0.099mmol、純度99%)をクリーム状固体として得た。
【0207】
LCMS(方法1):m/z399(M+H)+,0.98分。H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ7.79(t,J=6.4Hz,1H),7.66(s,1H),7.40-7.28(m,2H),7.28-7.09(m,2H),6.86-6.69(m,1H),5.44(s,1H),5.16(s,1H),4.51(d,J=6.4Hz,2H),3.63-3.47(m,1H),3.23-3.13(m,1H),3.03(tt,J=9.5,4.4Hz,1H),2.92(dd,J=11.5,4.6Hz,1H),2.87-2.77(m,1H),2.49(q,J=7.5Hz,2H),2.40-2.29(m,1H),2.25-2.11(m,1H),1.65-1.50(m,1H),1.39-1.27(m,1H),1.23-1.12(m,1H),1.18(t,J=7.5Hz,3H)。
【0208】
合成3
3-(((3-エチル-5-((((3R,4R)-3-ヒドロキシピペリジン-4-イル)メチル)アミノ)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル)アミノ)メチル)ベンゾニトリル(化合物APPAMP-003)
【化11】
【0209】
工程1: tert-ブチル(5-クロロ-3-エチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル)(3-シアノベンジル)カルバメート
ジオキサン(5ml)中の5,7-ジクロロ-3-エチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン(136mg、0.631mmol)、3-(アミノメチル)ベンゾニトリル(100mg、0.757mmol)及びDIPEA(220μl、1.26mmol)の混合物を90℃で4時間加熱した。反応混合物を真空下で濃縮し、残渣をDCM(10ml)に溶解し、水(5ml)で洗浄した。有機相をNaSO上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。残渣をDCM(5ml)に溶解し、BocO(165mg、0.757mmol)、続いてDMAP(3.85mg、0.032mmol)で処理した。得られた混合物を室温で3時間撹拌し、次いで真空下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(12gカラム、0~50% EtOAc/イソヘキサン)により精製して、表題化合物(258mg、0.583mmol、93%純度)を得た。LCMS(方法1):m/z 434(M+Na)+、356(M+H-C4H8)+、2.87分。
【0210】
工程2:3-(((3-エチル-5-((((3R,4R)-3-ヒドロキシピペリジン-4-イル)メチル)アミノ)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル)アミノ)メチル)ベンゾニトリル
上記工程1の生成物(258mg、0.583mmol、純度93%)を、合成1工程4の手順を使用して、(3R,4R)-tert-ブチル4-(アミノメチル)-3-ヒドロキシピペリジン-1-カルボキシレート(171mg、0.742mmol)、tBuBrettPhos-Pd-G3(26.4mg、0.031mmol)及びLiHMDS(THF中1M)(0.680ml、0.680mmol)、続いてジオキサン(2ml)中の4M HClと反応させたが、ただし、カラムクロマトグラフィーを実施せず、代わりに生成物を分取HPLC(10mM重炭酸アンモニウム(aq)中の15~35%MeCN)によって精製して、表題化合物(31mg、0.076mmol、純度99%)を得た。
【0211】
LCMS(方法2):m/z409(M+H)+、1.59分。H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ7.96(t,J=6.5Hz,1H),7.84-7.79(m,1H),7.77-7.72(m,1H),7.72-7.68(m,1H),7.66(s,1H),7.57(t,J=7.7Hz,1H),6.71(t,J=6.0Hz,1H),5.36(s,1H),5.15(s,1H),4.50(d,J=6.5Hz,2H),3.61-3.43(m,1H),3.25-3.11(m,2H),3.00(tt,J=9.5,4.3Hz,1H),2.90(dd,J=11.6,4.6Hz,1H),2.85-2.74(m,1H),2.48(q,J=7.5Hz,2H),2.37-2.23(m,1H),2.22-2.08(m,1H),1.60-1.49(m,1H),1.40-1.23(m,1H),1.17(t,J=7.5Hz,3H)。
【0212】
合成4
3-(((6-クロロ-3-エチル-5-(((((3R,4R)-3-ヒドロキシピペリジン-4-イル)メチル)アミノ)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル)アミノ)メチル)ベンゾニトリル(化合物APPAMP-004)
【化12】
【0213】
3-(((3エチル-5((((3R,4R)-3-ヒドロキシピペリジン-4-イル)メチル)アミノ)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル)アミノ)メチル)ベンゾニトリル(化合物APPAMP-003)(合成3)(122mg,0.301mmol)のDCM(3ml)溶液をNCS(40.2mg,0.301mmol)で処理した。反応混合物を室温で1時間攪拌した。反応混合物を真空下で濃縮し、残渣を分取HPLC(10mM重炭酸アンモニウム(aq)中の20~50%MeCN)によって精製して、表題化合物(17mg、0.038mmol、純度98%)を黄色の粉末として得た。
【0214】
LCMS(方法2):m/z 440(M+H)+、1.90分。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ7.84-7.74(m,2H),7.72(s,1H),7.72-7.67(m,1H),7.66-7.59(m,1H),7.53(t,J=7.7Hz,1H),6.87-6.77(m,1H),5.17(d,J=4.4Hz,1H),5.13(d,J=7.1Hz,2H),3.66-3.50(m,1H),3.30-3.20(m,1H),3.19-3.06(m,1H),2.92(dd,J=11.6,4.6Hz,1H),2.84-2.75(m,1H),2.50(q,J=7.6Hz,2H),2.38-2.26(m,1H),2.23-2.11(m,1H),1.66-1.53(m,1H),1.54-1.41(m,1H),1.18(t,J=7.5Hz,3H),1.18-1.04(m,1H)。
【0215】
生物学的方法及びデータ
生物学的方法
方法1:CDK2 IC50
材料及び溶液:
- HEPES(Sigma、H3375)。
- オルトバナジン酸ナトリウム(Sigma、450243)。
- DTT(Sigma)。
- MgCl(Sigma、M1028)。
- PEG-20000(Sigma,95172)。
- ADP-Glo(Promega、V9102、ATPを含む)。
- ヒトCDK2/cycE1(ProQinase、0050-0055-1)。
- ヒストンH1(Merck Millipore、14~155)。
【0216】
アッセイ手順:
以下の成分を含む反応混合物(6μL)を調製した:60mM HEPES(60mM、pH7.5)、オルトバナジン酸ナトリウム(3μM)、PEG-20000(50μg/mL)、DTT(1.2mM)、MgCl(3mM)、精製ヒトCDK2/cycE1(4μg/mL)、ヒストンH1(50μg/mL)、ATP(20μM)、及びDMSOの最終濃度が1% w/wであるような適切な濃度の試験化合物。反応混合物を30℃で75分間インキュベートし、その後、ADP-Glo試薬(6μL)を加えて停止させた。反応物を25℃で1時間インキュベートして、残留ウンデシルATPを枯渇させた。続いて、キナーゼ検出試薬(12μL)を添加し、反応を25℃で1時間進行させた後、Envision Plate Reader(PerkinElmer)を用いた発光測定による分析を行った。
【0217】
方法2:CDK7 IC50
材料及び溶液:
方法1について上述したものに加えて:
- CDK7/cycH/MAT1(ProQinase、0366-0360-4)。
- MnCl(Sigma、M1787)。
- CDKtide(SignalChem、C06-58)。
【0218】
アッセイ手順:
以下の成分を含む反応混合物(6μL)を調製した:60mM HEPES(60mM、pH7.5)、オルトバナジン酸ナトリウム(3μM)、PEG-20000(50μg/mL)、DTT(1.2mM)、MgCl(3mM)、MnCl(3mM)、精製ヒトCDK7/cycH/MAT1(4μg/mL)、CDKtide(10μM)、ATP(8μM)及びDMSOの最終濃度が1%w/wであるようあ適切な濃度の試験化合物。反応混合物を30℃で30分間インキュベートし、次いでADP-Glo試薬(6μL)の添加によって停止させた。反応物を25℃で1時間インキュベートして、残留ATPを枯渇させた。続いて、キナーゼ検出試薬(12μL)を添加し、反応を25℃で1時間進行させた後、Envision Plate Reader(PerkinElmer)を用いた発光測定による分析を行った。
【0219】
方法3:CDK9 IC50
材料及び溶液:
方法1について上述したものに加えて:
- ヒトCDK9/cycK(Promega、V4104)。
- CDKtide(SignalChem、C06-58)。
【0220】
アッセイ手順:
以下の成分を含む反応混合物(6μL)を調製した:60mM HEPES(60mM、pH7.5)、オルトバナジン酸ナトリウム(3μM)、PEG-20000(50μg/mL)、DTT(1.2mM)、MgCl(3mM)、精製ヒトCDK9/cycK(2.5μg/mL)、CDKtide(35μM)、ATP(8μM)、及びDMSOの最終濃度が1%w/wであるような適切な濃度の試験化合物。反応混合物を30℃で60分間インキュベートし、次いでADP-Glo試薬(6μL)を加えて停止させた。反応物を25℃で1時間インキュベートして、残留ATPを枯渇させた。続いて、キナーゼ検出試薬(12μL)を添加し、反応を25℃で1時間進行させた後、Envision Plate Reader(PerkinElmer)を用いた発光測定による分析を行った。
【0221】
方法4:ヒト血漿タンパク質結合(PPB)
材料及び溶液:
- ヒト血漿(Sera Labs、HMHPLLIHP)。
- ブプロピオン塩酸塩(Sigma、B102)。
- DPBS(Sigma、D8537)。
- ギ酸(Sigma、F0507)。
- RED Device Single Use(Life Technologies、90006)。
- 内部標準溶液調製:ブプロピオン塩酸塩(50μL、DMSO中10mM)の溶液を、アセトニトリル(1000mL)中の0.1%ギ酸(1mL)と合わせた。
【0222】
アッセイ手順:
一旦凍結した血漿を解凍し、1M乳酸溶液を使用してpH7.4に調整し、この混合物の一部(792μL)を各試験化合物溶液(8μL、DMSO中0.5mM)と合わせた。得られたスパイク血漿の一部(200μL)をRED装置の試料区画に添加した。DBPS(350μL)をそれぞれ対応するバッファー区画に添加した。最初の試料(50μL)を採取し、次いで、REDプレートを密封し、加湿CO(5%)雰囲気中、血漿及びDBPS試料と一緒に、オービタルシェーカー(200rpm)上で37℃で240分間インキュベートした。各試料ウェルを内部標準溶液(300μL)で処理した。各バッファーウェル及び試料ウェルからアリコート(50μL)を取り出し、それぞれインキュベートした血漿(50μL)又はインキュベートしたDPBS(50μL)で置換した。プレートを密封し、遠心分離した(3500rpm、15分)。上清のアリコート(100μL)を水(50μL)と合わせ、Waters TQS質量分析計を用いて分析した。
【0223】
方法5:MDCK-MDR1 Efflux Ratio
材料及び溶液:
- MDCK/MDR1 Ready(商標)細胞プレート(Readycell)。
- 10%FBS、1%グルタミン200mM、1%ペニシリン(10,000U/mL)-ストレプトマイシン(10mg/mL)を補充した高グルコース細胞培養培地(Sigma,D5671)。
- HBSSバッファー(Gibco、14065-049)。
- 内部標準:アセトニトリル中の0.5μMブプロピオン/0.1%ギ酸(水溶液)(1:1v/v)。
【0224】
アッセイ手順:
HBSSアッセイバッファーをpH7.4で調製し、37℃に温めた。細胞培養培地をReadycellプレートから除去した。基底細胞をHBSSバッファー(3×225μL)で洗浄し、成長点細胞をHBSSバッファー(3×75μL)で洗浄した。細胞を加湿CO(5%)雰囲気中で37℃に加温し、250rpmで30分間振盪した。化合物及び標準溶液を、各化合物(10μL、DMSO中1mM)をHBSS(990μL)で希釈することによって調製した。バッファーを注意深く基底細胞プレートから除去し、続いて成長点細胞プレートから除去した。HBSSバッファー(225μL)及び化合物溶液(250μL)を基底細胞プレートに添加した。溶液のアリコート(25μL)を内部標準(75μL)と合わせ、t=0時間の試料として使用するために冷蔵した。HBSSバッファー(75μL)及び化合物溶液(100μL)を成長点細胞プレートに添加した。アリコート(25μL)を採取し、基底細胞プレートと同様に処理した。細胞を加湿CO(5%)雰囲気中で37℃に加温し、250rpmで2時間振盪した。インキュベーション後、各基底及び成長点溶液のアリコート(25μL)を内部標準(75μL)と合わせ、密封し、遠心分離した(3500rpm、15分)。上清のアリコート(50μL)を水(50μL)と合わせて、t=0時間の試料と共に、Waters TQS質量分析計を使用して分析した。
【0225】
方法6:MDCK-BCRP Efflux Ratio
方法5と本質的に同じであるが、MDCK/MDR1プレートの代わりにMDCK/BCRP Ready(商標)細胞プレート(Readycell)を使用した。
【0226】
生物学的データ
APPAMP化合物を、上記の生物学的方法を用いて評価した。
比較のために、以下の参照化合物(REF-001)も評価した。
【化13】
結果のデータは、以下の表に要約されている。
【表1】
【表2】
【0227】
比較
CDK7は重要な標的である。この重要な標的に対する効力は非常に望ましい。
【0228】
これらの化合物は、REF-001と比較して、同様の、又はより良好な、又は実質的により良好なCDK7生化学的効力を有する:
【表3】
CDK2に対してCDK7により大きな選択性を有する化合物は、正常組織と比較して、より高い治療指数を提供し、及び/又は疾患状態の細胞に対してより大きな選択性を示すと予想される。CDK2に対してCDK7についての改善された選択性は非常に望ましい。
【0229】
これらの化合物は、REF-001と比較して、CDK2に対してCDK7により良好な、又は実質的により良好な選択性を有する:
【表4】
化合物がより高い遊離画分を有する場合、より多くの化合物が、血漿タンパク質に結合されるのとは対照的に、標的と相互作用するために利用可能になる。遊離画分が多いとin vivoでの効力が増大し、薬理活性を得るための投与量が少なくなるはずである。より高い遊離画分は非常に望ましい。
【0230】
化合物はREF-001と比較して、ヒト血漿中(すなわち、1-ヒトPPB)で実質的に高い遊離画分を有する:
【表5】
排出(efflux)トランスポーターは、癌薬物耐性機序に関与している。排出トランスポーターに対する感受性が低いことは、癌治療における利点として認識されている。低いefflux ratioは非常に望ましい。
【0231】
これらの化合物は、REF-001と比較して、MDCK-MDR1細胞及びMDCK-BCRP細胞の両方において、実質的に低いefflux ratioを有する:
【表6】
【表7】
以下の表に示すように、各化合物は、少なくとも1つの点で、しばしばいくつかの点で、REF-001よりも実質的に優れている。
【表8】
【0232】
上述では、本発明の原理、好ましい実施形態、及び実施様式を記載した。しかしながら、本発明は、論じた特定の実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。その代わりに、上記の実施形態は、限定するものというよりもむしろ説明するものであるとみなされるべきである。上記の実施形態において、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者により変形がなされてもよいことを理解する必要がある。

本発明は例えば以下の態様を含む。
[項1]
下記式の化合物、又はその薬学的に許容できる塩、水和物もしくは溶媒和物から選択される化合物。
【化14】
[項2]
下記式の化合物、又はその薬学的に許容できる塩、水和物もしくは溶媒和物である、項1に記載の化合物。
【化15】
[項3]
下記式の化合物、又はその薬学的に許容できる塩、水和物もしくは溶媒和物である、項1に記載の化合物。
【化16】
[項4]
下記式の化合物、又はその薬学的に許容できる塩、水和物もしくは溶媒和物である、項1に記載の化合物。
【化17】
[項5]
下記式の化合物、又はその薬学的に許容できる塩、水和物もしくは溶媒和物である、項1に記載の化合物。
【化18】
[項6]
項1~5のいずれか1項に記載の化合物と、薬学的に許容できる担体又は希釈剤とを含む組成物。
[項7]
項1~5のいずれか1項に記載の化合物と、薬学的に許容できる担体又は希釈剤とを混合するステップを含む組成物の調製方法。
[項8]
インビトロ又はインビボにおいて細胞でのCDK機能を阻害する方法であって、有効量の項1~5のいずれか1項に記載の化合物と、前記細胞を接触させることを含む前記方法。
[項9]
インビトロ又はインビボにおいて、細胞増殖(例えば、細胞の増殖)を制御する(例えば、阻害する)か、細胞周期の進行を阻害するか、アポトーシスを促進するか、又はこれらのうちの1つ以上の組合せを行う方法であって、有効量の項1~5のいずれか1項に記載の化合物と、細胞を接触させることを含む前記方法。
[項10]
療法により人体又は動物体を治療する方法において使用するための、項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
[項11]
障害の治療方法において使用するための、項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
[項12]
障害の治療方法において使用するための薬物の製造における、項1~5のいずれか1項に記載の化合物の使用。
[項13]
治療が必要な対象に、治療有効量の項1~5のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む障害の治療方法。
[項14]
前記障害が、CDKに関連する障害;サイクリン依存性キナーゼ(CDK)の不適切な活性により生じる障害;CDK変異に関連する障害;CDK過剰発現に関連する障害;CDKの上流経路活性化に関連する障害;又はCDKの阻害によって寛解する障害である項11記載の使用のための化合物、項12記載の使用又は項13記載の方法。
[項15]
前記障害が、増殖性障害;癌;ウイルス感染症(例えば、HIV);神経変性障害(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病);虚血;腎疾患;心血管障害(例えば、アテローム性動脈硬化症);又は自己免疫障害(例えば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、乾癬、又はシェーグレン症候群)である項11記載の使用のための化合物、項12記載の使用又は項13記載の方法。
[項16]
前記障害が増殖性障害である項11記載の使用のための化合物、項12記載の使用又は項13記載の方法。
[項17]
前記障害が癌である項11記載の使用のための化合物、項12記載の使用又は項13記載の方法。
[項18]
前記治療が、さらなる活性薬剤を用いた治療(例えば、同時治療又は逐次治療)をさらに含み、前記さらなる活性薬剤がアロマターゼ阻害剤である項11及び14~17のいずれか1項に記載の使用のための化合物、項12及び14~17のいずれか1項に記載の使用、又は項13~17のいずれか1項に記載の方法。
[項19]
前記アロマターゼ阻害剤がエキセメスタン(アロマシンとしても知られる)、レトロゾール(フェマーラとしても知られる)又はアナストロゾール(アリミデックスとしても知られる)である項18記載の使用のための化合物、項18記載の使用又は項18記載の方法。
[項20]
前記障害が乳癌(例えば、前記アロマターゼ阻害剤に耐性のある乳癌)である項18もしくは19に記載の使用のための化合物、項18もしくは19に記載の使用、又は項18もしくは19に記載の方法。
[項21]
前記治療が、さらなる活性薬剤を用いた治療(例えば、同時治療又は逐次治療)をさらに含み、前記さらなる活性薬剤が抗エストロゲン剤である項11及び14~17のいずれか1項に記載の使用のための化合物、項12及び14~17のいずれか1項に記載の使用、又は項13~17のいずれか1項に記載の方法。
[項22]
前記抗エストロゲン剤がフェソロデックス(フルベストラント及びICI182780としても知られる)、タモキシフェン(ノルバデックスとしても知られる)又はヒドロキシタモキシフェンである項21記載の使用のための化合物、項21記載の使用又は項21記載の方法。
[項23]
前記障害が乳癌(例えば、前記抗エストロゲン剤に耐性のある乳癌)である項21もしくは22に記載の使用のための化合物、項21もしくは22に記載の使用、又は項21もしくは22に記載の方法。
[項24]
前記治療が、さらなる活性薬剤を用いた治療(例えば、同時治療又は逐次治療)をさらに含み、前記さらなる活性薬剤がHer2遮断薬である項11及び14~17のいずれか1項に記載の使用のための化合物、項12及び14~17のいずれか1項に記載の使用、又は項13~17のいずれか1項に記載の方法。
[項25]
前記Her2遮断薬がハーセプチン、ペルツズマブ又はラパチニブである項24記載の使用のための化合物、項24記載の使用又は項24記載の方法。
[項26]
前記治療が、さらなる細胞傷害性化学療法剤を用いた治療(例えば、同時治療又は逐次治療)をさらに含む項11及び14~17のいずれか1項に記載の使用のための化合物、項12及び14~17のいずれか1項に記載の使用、又は項13~17のいずれか1項に記載の方法。
[項27]
前記細胞傷害性化学療法剤がタキサン(例えば、タクソールとしても知られるパクリタキセル;タキソテールとしても知られるドセタキセル)、シクロホスファミド又は代謝拮抗薬(例えば、カルボプラチン、カペシタビン、ゲムシタビン、ドキソルビシン、エピルビシン、5-フルオロウラシル等)である項26記載の使用のための化合物、項26記載の使用又は項26記載の方法。
【0233】
参考文献
本発明と本発明が関する技術の技術水準をさらに十分に記載し、開示するため、本明細書においては多数の文献を引用している。これらの文献の完全な引用を以下に提供する。
【0234】
これらの各文献は、あたかも個々の文献がそれぞれ参照によって詳細にかつ個別に援用されていると示されているように、参照によりその全体が本開示に援用される。
【0235】
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