(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】高電圧薄膜トランジスタおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20220928BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20220928BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20220928BHJP
G09F 9/37 20060101ALI20220928BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20220928BHJP
H01L 41/04 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H01L29/78 616T
H01L29/78 616S
H01L29/78 626Z
H01L29/06 301F
G09F9/30 338
G09F9/37
H01L27/146 A
H01L41/04
(21)【出願番号】P 2020517329
(86)(22)【出願日】2018-09-24
(86)【国際出願番号】 NL2018050630
(87)【国際公開番号】W WO2019066647
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-08-24
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511095850
【氏名又は名称】ネーデルランドセ・オルガニサティ・フォール・トゥーヘパスト-ナトゥールウェテンスハッペライク・オンデルズーク・テーエヌオー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘルヴィン・ヘルマニュス・ヘルリンク
(72)【発明者】
【氏名】ヤン-ラウレンス・ピーテル・ヤコーブス・ファン・デル・ステーン
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-254450(JP,A)
【文献】米国特許第06912082(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第1693181(CN,A)
【文献】特開2015-220430(JP,A)
【文献】特表2001-513270(JP,A)
【文献】米国特許第06310378(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第1422442(CN,A)
【文献】特表2007-507877(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0114608(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1860614(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
H01L 29/06
G09F 9/30
G09F 9/37
H01L 27/146
H01L 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極層(31)のゲート電極(G11、G21)と、
前記ゲート電極層に平行であり、ゲート誘電体層(32)によって前記ゲート電極から電気的に絶縁されている
半導体チャネル層(34)の半導体チャネル(C11、C12)であって、前記
半導体チャネル層(34)が、前記ゲート電極層(31)に面する第1の表面及び前記第1の表面の反対側の第2の表面である、半導体チャネル(C11、C12)と、
支配的な主電極及び従属的な主電極(M12、M11)であって、各々が、主電極層(36)の外部部分(M12e、M11e)、並びに、支配的な主電極接触領域(M12c)及び従属的な主電極接触領域(M11c)において前記半導体チャネルに電気的に接触するために、前記主電極層と前記
半導体チャネル層
(34)との間のさらなる誘電体層(35)を通って突出する内部部分(M12i、M11i)を有する、支配的な主電極及び従属的な主電極(M12、M11)と、を備え、
第1の距離(D1)が、前記従属的な主電極接触領域(M11c)に面する前記支配的な主電極接触領域(M12c)の側部と、前記従属的な主電極(M11)の外部部分(M11e)に面する前記支配的な主電極(M12)の外部部分(M12e)の側部との間に規定され、第2の距離(D2)が、前記支配的な主電極接触領域(M12c)に面する前記従属的な主電極接触領域(M11c)の側部と、前記支配的な主電極(M12)の外部部分(M12e)に面する前記従属的な主電極(M11)の外部部分(M11e)の側部との間に規定され、前記第1の距離(D1)が、前記第2の距離(D2)の少なくとも2倍であり、前記半導体チャネル層(34)の第2の表面が、前記主電極層(36)に面する、
高電圧薄膜トランジスタ。
【請求項2】
少なくとも制御端子(10)、第1及び第2の電源端子(12、14)、並びに、前記
第1の電源端子(12)から前記第2の電源端子(14)まで延びる直列配置を備える高電圧ドライバ回路(1)であって、前記直列配置が、請求項1に記載の少なくとも第1の高電圧薄膜トランジスタ(22)、及び、第2の薄膜トランジスタ(24)、並びに、前記直列配置によって制御可能に電力供給される負荷(40)を含み、前記第1の高電圧薄膜トランジスタ(22)及び前記第2の薄膜トランジスタ(24)の少なくとも一方が、前記制御端子(10)によって制御されるゲートを有する、高電圧ドライバ回路(1)。
【請求項3】
前記負荷(40)が、前記直列配置の中間ノード(15)と第3の電源端子(16)との間に結合され、前記中間ノードが、前記第1の高電圧薄膜トランジスタ(22)と前記第2の薄膜トランジスタ(24)との間に設けられ、前記第2の薄膜トランジスタ(24)のゲートが、前記制御端子(10)によって制御される、請求項2に記載の高電圧ドライバ回路(1)。
【請求項4】
前記第2の薄膜トランジスタ(24)が、適切なゲート電極(G21)、適切な支配的な主電極(M21)、及び、適切な従属的な主電極(M22)を有する、請求項1に記載の
第2の高電圧薄膜トランジスタであり、前記第1及び第2の高電圧薄膜トランジスタ(22、24)が、それらのゲート(G11、G21)を用いて前記制御端子
(10)に結合され、前記第1及び第2の
高電圧薄膜トランジスタ(22、24)が、それらの支配的な主電極(M12、M21)を用いて互いに直列に接続され、前記負荷(40)が、前記第2の高電圧薄膜トランジスタ(24)と前記第2の電源端子(14)との間に直列配置で直列に配置される、請求項2に記載の高電圧ドライバ回路(1)。
【請求項5】
複数の列線と行線とによって画定されたアレイに配置された複数のアクチュエータを含むアプリケーションであって、各アクチュエータが、請求項2から4の何れかに記載のそれぞれの関連する回路の負荷として配置され、前記複数の列線のうちの1つの列線及び前記複数の行線のうちの1つの行線のそれぞれの対に関連付けられ、前記それぞれの関連する回路の
第1の電源端子(12)及び制御端子(10)がそれぞれ、その関連するそれぞれの対の列線(54
j)及び行線(55
i)と電気的に接続される、アプリケーション。
【請求項6】
前記アクチュエータが、高分子膜アクチュエータである、請求項5に記載のアプリケーション。
【請求項7】
複数の列線と行線とによって画定されるアレイに配置された複数の表示素子を含むディスプレイであって、各表示素子が、請求項2から4の何れかに記載のそれぞれの関連する回路に負荷として配置され、前記複数の列線のうちの1つの列線及び前記複数の行線のうちの1つの行線のそれぞれの対に関連付けられ、前記それぞれの関連する回路の
第1の電源端子(12)及び制御端子(10)がそれぞれ、その関連するそれぞれの対の前記列
線及び前記行
線に電気的に接続されている、ディスプレイ。
【請求項8】
前記表示素子が、電気泳動素子である、請求項7に記載のディスプレイ。
【請求項9】
前記表示素子が、圧電素子である、請求項7に記載のディスプレイ。
【請求項10】
複数の列線と行線とによって画定されるアレイに配置された複数の画像センサー要素を含む撮像装置であって、各画像センサー要素が、請求項2から4の何れかに記載のそれぞれの関連する回路に負荷として配置され、前記複数の列線のうちの1つの列線及び前記複数の行線のうちの1つの行線のそれぞれの対に関連し、前記それぞれの関連する回路の
第1の電源端子(12)及び制御端子(10)がそれぞれ、その関連するそれぞれの対の前記列
線及び前記行
線に電気的に接続されている、撮像装置。
【請求項11】
前記画像センサー要素が、超音波振動子である、請求項10に記載の撮像装置。
【請求項12】
基板(30)を提供する段階と、
ゲート電極(G11、
G21)を画定する導電性材料のゲート電極層(31)を提供する段階と、
誘電体材料のゲート誘電体層(32)を提供し、前記ゲート電極のためのゲート誘電体を画定する段階と、
半導体チャネル(C11、
C21)を画定する半導体材料の
半導体チャネル層(34)を提供する段階であって、前記
半導体チャネル層(34)が、前記ゲート電極層(31)に面する第1の表面及び前記第1の表面の反対側の第2の表面を有する、段階と、
誘電体材料のさらなる誘電体層(35)を提供する段階と、
支配的な主電極接触領域(
M12c)において前記半導体チャネルに電気的に接触するために、前記さらなる誘電体層(35)を通って突出する支配的な主電極(
M12)の内部部分(
M12i)を提供する段階と、
従属的な主電極接触領域(
M11c)において前記半導体チャネルに電気的に接触するために、前記さらなる誘電体層(35)を通って突出する従属的な主電極(
M11)の内部部分(
M11i)を提供する段階と、
前記支配的な主電極の外部部分(
M12e)及び前記従属的な主電極の外部部分(
M11e)を含む導電性材料の主電極層(36)を提供する段階であって、前記支配的な主電極及び前記従属的な主電極の外側部分が、相互に区別され、第1の距離(D1)が、前記従属的な主電極接触領域(
M11c)に面する前記支配的な主電極接触領域(
M12c)の側部と、前記従属的な主電極の外部部分(
M11e)に面する前記支配的な主電極(
M12e)の外部部分(
M12e)の側部との間に規定され、第2の距離(D2)が、前記支配的な主電極接触領域(
M12c)に面する前記従属的な主電極接触領域(
M11c)の側部と、前記支配的な主電極の外部部分(
M12e)に面する前記従属的な主電極の外部部分(
M11e)の側部との間に規定され、前記第1の距離(D1)が、前記第2の距離(D2)の少なくとも2倍であり、前記
半導体チャネル層(34)の第2の表面が、前記主電極層(36)に面する、段階と、
を含む、高電圧薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の段階を含む、高電圧ドライバ回路(1)を製造する方法であって、さらに、
前記ゲート電極層(31)が、さらなるゲート電極(G21)を画定し、
前記ゲート誘電体層(32)が、前記さらなるゲート電極(G21)のためのゲート誘電体をさらに画定し、
前記
半導体チャネル層(
34)が、さらなる半導体チャネル(C21)をさらに画定し、
前記主電極層(36)が、さらなる支配的な主電極(M21)の外部部分及びさらなる従属的な主電極(M22)の外部部分をさらに含み、これらの外部部分が相互に区別され、このさらなる支配的な主電極が、さらなる支配的な主電極接触領域において前記さらなる半導体チャネルに電気的に接触するために、前記さらなる誘電体層(35)を通って突出する内部部分を有し、このさらなる従属的な主電極が、さらなる従属的な電極接触領域(M12c)において前記さらなる半導体チャネルに電気的に接触するために、前記さらなる誘電体層(35)を通って突出する内部部分を有し、第1のさらなる距離が、前記さらなる従属的な主電極接触領域に面する前記さらなる支配的な主電極接触領域の側部と、前記さらなる従属的な主電極の外部部分に面する前記さらなる支配的な主電極の外部部分の側部との間に規定され、第2のさらなる距離が、前記さらなる支配的な主電極接触領域に面する前記さらなる支配的な主電極接触領域の側部と、前記さらなる支配的な主電極の外部部分に面する前記さらなる支配的な主電極の外部部分の側部との間に規定され、前記第1のさらなる距離が、前記第2のさらなる距離の少なくとも2倍である、
高電圧ドライバ回路(1)を製造する方法。
【請求項14】
前記支配的な主電極(M12)の外部部分及び前記さらなる支配的な主電極(M21)の外部部分が、前記主電極層(36)に共通領域によって形成される、請求項13に記載の高電圧ドライバ回路(1)を製造する方法。
【請求項15】
請求項14に記載の段階を含む、アプリケーションを製造する方法であって、
電気絶縁材料の絶縁層(37)を提供する段階と、
負荷の電極を画定し、前記従属的な主電極又は前記さらなる従属的な主電極の外部部分との電気的接続を有する、導電性材料の導電層(38)を提供する段階と、
をさらに含む、アプリケーションを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
様々な用途で、例えば100~400Vppの範囲において、高電圧作動が必要である。その例は、開放された高分子アクチュエータ膜を使用するディスプレイ及び撮像装置のような用途である。この範囲の電圧は、標準的な薄膜トランジスタ技術によって提供される動作範囲を大きく超える。厚いゲート誘電体を使用すると、このような高い動作電圧が可能になるが、性能及びコストの理由から、通常、厚い誘電体層は避けられる。また、そのような層は、特に機械的に歪んだ場合に、容易に割れることがある。
【背景技術】
【0002】
Chowらは、高電圧薄膜トランジスタ(HVTFT)及びそれと制御可能に作動されるMEMSとのその集積化のための技術を、「High voltage thin film transistors integrated with MEMS. Transducers」 ‘05: 13th International Conference on Solid-State Sensors, Actuators and Microsystems; Digest of Technical Papers; 2005 June 5-9; Seoul; Korea. Piscataway NJ: IEEE; 2005; 2:1318-1321において開示している。そこで提案されている技術では、薄膜トランジスタは、ドレインコンタクトの近くにオフセット領域が設けられている。このオフセット領域により、ゲート電極及びソース電極の電圧を低く抑えながら、ドレイン電極で高いブレークダウン電圧を実現することができる。
【0003】
この既知のHVTFTの欠点は、ドレインオフセットがデバイスの全体抵抗に追加されることである。これにより、HVTFTがアクチュエータに提供できるデバイス電流に許容できない制限が生じる。この増加したデバイス抵抗が、増加した電力消費及び増加した熱発生を伴うことは、さらなる欠点である。
【0004】
米国特許第6310378号明細書が、改善されたオン状態特性を有する高電圧薄膜トランジスタ及びその製造方法を開示していることに留意されたい。米国特許第6310378号明細書の
図1は、基板10、酸化物層20、エピタキシャル膜層30、ソース電極60、ゲート電極70及びドレイン電極80を含むSOI LDMOSデバイスを示す。左から右へと横方向に連続する薄膜層30は、その後、ソース領域31、ボディ領域32、薄いドリフト領域35及びドレイン領域36を含む。薄いドリフト領域35は、長さLにわたって延在し、ゲート酸化物層41及びドリフト領域絶縁層42が薄膜層30の上に形成される。ゲート酸化物41及びドリフト領域絶縁層42の上に製造されるのは、ポリシリコンゲート50である。高ブレークダウン電圧能力を達成するために、ドリフト領域35は、1ミクロン未満に薄くされ、線形ドーピングプロファイルがドリフト領域に導入される。ドーピングプロファイルは、ボディ領域32に近い領域33の最小値から、ドレイン領域34に隣接するドリフト領域の最大値まで変化する。
図1のデバイスにおける線形ドーピングプロファイルの開始は、薄いドリフト領域35を生成するSOI層30の薄化と一致し、両方とも参照線5によって示される原点から始まる。
【0005】
さらに、米国特許出願公開第2007/114608号明細書が、ラテラル薄膜シリコンオンインシュレータ(SOI)デバイスを開示し、フィールドプレートは、デバイスをパッケージ及び表面電荷効果から保護するために実質的にラテラルドリフト領域上に延びるように提供されることに留意されたい。特に、フィールドプレートは、シリコンドリフト領域内の体積ドーピング勾配によって確立される横方向電界プロファイルを想定するために、空間によって互いに横方向に分離された複数の金属領域の層を含む。フィールドプレートは、ソース領域に接続されているか、ソース領域の延長部である。
【0006】
さらに、米国特許第6912082号明細書が、高電圧薄膜トランジスタを使用するMEMSデバイス用の統合ドライバ電子機器を開示していることに留意されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第6310378号明細書
【文献】米国特許第6912082号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/114608号明細書
【非特許文献】
【0008】
【文献】High voltage thin film transistors integrated with MEMS. Transducers」 ‘05: 13th International Conference on Solid-State Sensors, Actuators and Microsystems; Digest of Technical Papers; 2005 June 5-9; Seoul; Korea. Piscataway NJ: IEEE; 2005; 2:1318-1321
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、これらの欠点が少なくとも軽減される高電圧薄膜トランジスタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的に従って、高電圧薄膜トランジスタは、
ゲート電極層のゲート電極と、
前記ゲート電極層に平行であり、ゲート誘電体層によって前記ゲート電極から電気的に絶縁されているチャネル層の半導体チャネルであって、前記半導体チャネル層が、前記ゲート電極層に面する第1の表面及び前記第1の表面の反対側の第2の表面である、半導体チャネルと、
支配的な主電極及び従属的な主電極であって、各々が、主電極層の外部部分、並びに、支配的な主電極接触領域及び従属的な主電極接触領域において前記半導体チャネルに電気的に接触するために、前記主電極層と前記チャネル層との間のさらなる誘電体層を通って突出する内部部分を有する、支配的な主電極及び従属的な主電極と、を備え、第1の距離が、前記従属的な主電極接触領域に面する前記支配的な主電極接触領域の側部と、前記従属的な主電極の外部部分に面する前記支配的な主電極の外部部分の側部との間に規定され、第2の距離が、前記支配的な主電極接触領域に面する前記従属的な主電極接触領域の側部と、前記支配的な主電極の外部部分に面する前記従属的な主電極の外部部分の側部との間に規定され、前記第1の距離が、前記第2の距離の少なくとも2倍である。高電圧薄膜トランジスタは、半導体チャネル層の第2の表面が主電極層に面していることを特徴とする。
【0011】
他の主電極に対する支配的な主電極の極性が、半導体チャネルの伝導に関与する電荷担体の極性に対応するモードで、特許請求の範囲に記載された薄膜トランジスタが動作する場合、支配的な主電極は、ソース電極として構成される。例えば、これは、半導体チャネルの電荷担体が電子であり、支配的な主電極が従属的な主電極に対して負の極性を有する場合である。あるいは、これは、半導体チャネルの電荷担体が正孔であり、支配的な主電極が従属的な主電極に対して正の極性を有する場合である。支配的なソース構成とも呼ばれるこの構成では、トランジスタのチャネルの大部分は、例えば0Vの基準電圧である支配的なソース電極の電位によって制御される。この構成でのソース電極の優位性により、チャネルに注入される電荷を適切に制御し、短チャネル効果に対する高い耐性及び高い出力抵抗を実現する。
【0012】
逆に、従属的な主電極に対する支配的な主電極の極性が、半導体チャネルの伝導に関与する電荷担体の極性と反対であるモードで、特許請求の範囲に記載された薄膜トランジスタが動作する場合、支配的な主電極は、ドレイン電極として構成される。例えば、これは、半導性チャネルの電荷担体が電子であり、支配的な主電極が従属的な主電極に対して正の極性を有する場合、又は、半導性チャネルの電荷担体が正孔であり、支配的な主電極が、従属的な主電極に対して負の極性を有する場合である。支配的なドレイン構成とも呼ばれるこの構成では、チャネルの大部分が静電的にドレイン電圧の影響を受ける。ドレイン側の延長部は、チャネル内に電荷を蓄積するのに役立ち、従って、第1の構成と比較して、電流が大きくなる。ドレイン側からの電界がチャネル内、さらにはゲートの下まで伸びているため、トランジスタは、強いVDS(ドレイン-ソース電圧)依存性を示し、支配的なソース構成と比較して低い出力抵抗を示す。
【0013】
これら及び他の態様は、図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】高電圧薄膜トランジスタの実施形態を概略的に示す断面図である。
【
図2】アクチュエータ要素のマトリクスを概略的に示す。
【
図3】
図2のマトリクスのアクチュエータ要素での使用に適した高電圧ドライバ回路を示す。
【
図4A】
図3の第1の状態の高電圧ドライバ回路を示す。
【
図4B】
図3の第2の状態の高電圧ドライバ回路を示す。
【
図5】
図3の高電圧ドライバ回路で発生する動作電圧と、負荷に提供される負荷電流との関係を示す。
【
図6】
図2のマトリクスのアクチュエータ要素での使用に適した代替的な高電圧ドライバ回路を示す。
【
図7】
図3の回路の実装を概略的に示す断面図である。
【
図8】
図6の回路の実装を概略的に示す断面図である。
【
図9A】高電圧薄膜トランジスタの例示的な空間構成を示す。
【
図9B】2つの高電圧薄膜トランジスタの直列配置の例示的な空間構成を示す。
【
図9C】2つの高電圧薄膜トランジスタの直列配置の例示的な空間構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
様々な図面における同様の参照記号は、別段の指示がない限り、同様の要素を示す。
【0016】
図1は、ゲート電極層31内のゲート電極G11、ゲート電極層に平行であり、誘電体層32内のゲート誘電体によってゲート電極から電気的に絶縁されているチャネル層34内の半導体チャネルC11を含む高電圧薄膜トランジスタ22を概略的に示す。高電圧薄膜トランジスタ22は、支配的な主電極M12及び従属的な主電極M11をさらに備える。
【0017】
支配的な主電極M12及び従属的な主電極M11はそれぞれ、外部部分及び内部部分を有する。それぞれM12e、M11eとして示される外部部分は、主電極層とチャネル層との間に設けられたさらなる誘電体層35の表面35A上の主電極層36に設けられる。内部部分M12i、M11iはそれぞれ、さらなる誘電体層35を通って突出して、支配的な主電極接触領域M12c及び従属的な主電極接触領域M11cのそれぞれにおいて半導体チャネルC11に電気的に接触する。
【0018】
第1の距離D1は、従属的な主電極接触領域M11cに面する支配的な主電極接触領域M12cの側部と、従属的な主電極M11の外部部分M11eに面する支配的な主電極M12の外部部分M12eの側部との間に定められる。第2の距離D2は、支配的な主電極接触領域M12cに面する従属的な主電極接触領域M11cの側部と、支配的な主電極M12の外部部分M12eに面する従属的な主電極M11の外部部分M11eの側部との間に定められる。第1の距離D1は、第2の距離D2の少なくとも2倍大きい。
【0019】
図2は、行及び列を有するマトリクスに配置された複数のアクチュエータ要素51ijを含むアプリケーション50を示す。例として、5行及び5列のみが示されているが、実際には、行及び列の数は、例えば、数百又は数千のオーダーで、実質的に大きくなり得る。あるいは、より少ない数の行及び/又は列を有する実施形態が企図され得る。それぞれの供給電圧を列線4
j-2、4
j-1、4
j、4
j+1、4
j+2に供給する列ドライバ56が提供される。さらに、それぞれの制御電圧を行線5
i-2、5
i-1、5
i、5
i+1、5
i+2に提供する行ドライバ57が提供される。列ドライバ56及び行ドライバ57は、それらの順番で、主コントローラ58によって制御される。
【0020】
図3は、アクチュエータ要素で使用される高電圧ドライバ回路1をより詳細に示す。
図3の高電圧ドライバ回路1は、例えば、列線54
j及び行線55
iに接続されたアクチュエータ要素51ijの一部である。通常、このドライバ回路は、他のアクチュエータ要素のドライバ回路の代表でもあるが、厳密には必要なわけではない。いくつかのアクチュエータ要素は、例えば、追加の機能を有することができる。
図3に示すように、高電圧ドライバ回路1は、行線55
iに接続された制御端子10、列線54
jに結合された第1の電源端子12、及び、第2の電源端子14を備える。第2の電源端子14は、典型的には、各アクチュエータ要素の共通端子であり、例えば、第2の電源端子14は、0Vの基準電圧に維持される導電層に結合されてもよい。あるいは、第2の電源端子は、さらなる格子のラインに結合されてもよい。
図3は、高電圧ドライバ回路1が、第1の電源端子12から第2の電源端子14まで延びる直列配置を含むことを示す。直列配置は、
図1に示されるような第1の高電圧薄膜トランジスタ22、及び、第2の薄膜トランジスタ24を含む。高電圧ドライバ回路1は、制御端子10によって制御されるゲートG11、G21を有する第1の高電圧薄膜トランジスタ22及び第2の薄膜トランジスタ24の直列配置によって制御可能に電力供給される負荷、ここでは容量性負荷、特に高分子アクチュエータ膜40をさらに含む。
【0021】
図3に示すように、第2の薄膜トランジスタ24も高電圧薄膜トランジスタである。この例では、第1の薄膜トランジスタ22は、例えば
図1に示されるように、従属的な主電極M11及び支配的な主電極M12を有する。第2の薄膜トランジスタ24は、支配的な主電極M21及び従属的な主電極M22を有する。第1及び第2の高電圧薄膜トランジスタ22、24の両方は、それらのゲートG11、G21を用いて制御端子10に結合される。負荷40は、第2の高電圧薄膜トランジスタ24と第2の電源端子14との間に、直列配置で直列に配置される。すなわち、一方では、それは、第2の高電圧薄膜トランジスタ24の従属的な主電極M22に接続され、他方では、それは、第2の電源端子14に接続される。
図3に示すように、第1の高電圧薄膜トランジスタ22は、その支配的な主電極M12として、直列配置で最後に現れる主電極を備える。第2の薄膜トランジスタ24は、その支配的な主電極M21として、直列配置で最初に現れる主電極を備える。すなわち、第1及び第2の薄膜トランジスタ22、24は、それらの支配的な主電極M12、M21が電気的に接続されるように直列に配置される。
【0022】
図4A、
図4Bは、動作中の直列配置22、24、40の第1及び第2の状態を示す。そこでは、
図4Aは、第2の電源端子14として基準電圧に対して正の電圧V1が第1の電源端子12に印加されるときの前半フェーズを示し、
図4Bは、負の電圧-V1が第1の電源端子12に印加される後半フェーズを示す。
【0023】
図4Aに示されるように、前半フェーズでは、主電極M12及びM22は、電荷担体としての電子源として動作する。主電極M11、M21は、この前半フェーズでドレインとして動作する。従って、この半フェーズでは、トランジスタ22は、支配的なソース構成を有し、トランジスタ24は、支配的なドレイン構成を有する。この半フェーズでは、トランジスタ22のチャネルの大部分は、支配的な主電極M12の電位によって制御される。ここでのソース電極M12の優位性は、この実施形態ではその拡張されたオーバーラップにより、トランジスタチャネルに注入される電荷を良好に制御し、短チャネル効果に対する高い耐性及び高い出力抵抗をもたらす。第2のトランジスタ24の場合、チャネルの大部分は、ドレイン電圧V2によって静電的に影響を受ける。ドレイン側の延長部は、チャネル内に電荷を蓄積するのに役立ち、従って、第1の構成と比較して、電流が大きくなる。ドレイン側からの電界が、さらにチャネルにまで伸び、またゲートの下まで伸びているため、トランジスタ24は、強いVDS(ドレイン-ソース電圧)依存性を示し、従って、第1の構成22に比べて出力抵抗が低くなる。従って、この前半フェーズでは、
図4Aに示されるように、電圧差V1-V2は、差V2-V3より実質的に大きい。これは、
図5に示されている。10Vに等しいゲート電圧Vgでは、第1のトランジスタ22を通る負荷電流I
loadは、高いドレインソース電圧であっても約18μAに制限される。その結果、電源端子12における約100Vの供給電圧で、電圧降下V1-V2は、約95Vの値であると推測され、電圧降下V2-V3は、数Vのオーダーのままである。アクチュエータ40によって形成された容量が充電されると、総電圧降下V1-V3が減少し、特に、実質的に同じ負荷電流I
loadを維持しながら、第1の高電圧薄膜トランジスタにわたる電圧降下V1-V2が減少する。前半フェーズの最終段階でのみ、総電圧降下V1-V3が約10V以下に減少すると、負荷電流が大幅に減少し始める。それとともに、この前半フェーズでは、第1のトランジスタ22は、アクチュエータ40がほぼ完全に充電されるまで、そのレベルを実質的に維持しながら、電流を許容レベルに制限することによって第2のトランジスタ24を保護する役割を果たす。これは、第1のトランジスタ22が抵抗器によって置き換えられた場合には達成できなかった。このような抵抗器は、保護を提供できるが、負荷電流I
loadが電圧差の減少に伴って直線的に減少するため、回路のRC時間を実質的に増加させる。
【0024】
図4に示されるような後半フェーズでは、主電極M11及びM21は、電荷担体としての電子源として動作する。主電極M12、M22は、この後半フェーズのドレインである。従って、この動作段階では、トランジスタ24は、支配的なソース構成を有し、トランジスタ22は、支配的なドレイン構成を有する。この動作フェーズでは、トランジスタ24のチャネルの大部分は、支配的なソース電極M21の電位によって制御される。これにより、ここではその拡張されたオーバーラップから生じるソース電極M21の優位性により、チャネルに注入された電荷の良好な制御、短チャネル効果に対する高い耐性、及び、高い出力抵抗がもたらされる。第1のトランジスタ22の場合、今やチャネルの大部分は、ドレイン電圧-V2’によって静電的に影響を受ける。ドレイン側の延長部は、チャネル内に電荷を蓄積するのに役立ち、従って、第1の構成と比較して、電流が大きくなる。ドレイン側からの電界が、さらにチャネルにまで伸び、またゲート下に伸びているため、トランジスタ22は、強いVDS(ドレイン-ソース電圧)依存性を示し、従って、第1の構成24に比べて出力抵抗が低くなる。従って、この段階では、
図4Bに示されるように、さらに
図5に示されるように、電圧差V2’-V3’は、差V1’-V2’より実質的に大きい。前半フェーズと同様に、(前半フェーズとは逆の極性の)比較的一定の負荷電流I
loadが実現される。要約すると、この後半フェーズでは、第2の高電圧薄膜トランジスタ24は、第1の高電圧薄膜トランジスタ22の保護を提供する一方で、比較的高い一定の負荷電流を可能にする。
【0025】
従って、前半フェーズでは、第1のトランジスタ22は、高電圧動作が可能であり、それにより、通常のトランジスタとして前半フェーズで動作する第2のトランジスタ24を保護する。後半フェーズでは、第2のトランジスタ24は、必要な高電圧動作を示し、それにより、第1のトランジスタ22を保護し、ここでは通常のトランジスタとして機能する。従って、個々のTFTは非対称である一方で、セル全体の動作は対称であるが、個々のTFTの高電圧特性は、保持される。
【0026】
図6は、代替的な高電圧ドライバ回路1Aを示す。回路1として、それは、制御端子10、第1の電源端子12及び第2の電源端子14を備える。さらに、それは、例えば0Vの基準レベルに維持される第3の電源端子16を含む。通常、第3の電源端子16は、0Vの基準電圧に維持される導電層に結合されてもよい。あるいは、第3の電源端子は、さらなる格子のラインに結合されてもよい。回路1の実施形態と同様に、回路1Aは、第1及び第2の薄膜トランジスタ22、24を含む、第1の電源端子12から第2の電源端子14まで延びる直列配置を含む。高電圧ドライバ回路1Aの制御端子10は、行線55
iに接続され得、第1の電源端子12は、列線54
jに結合され、第2の電源端子14は、第3の電源端子14の基準電圧に対して一定の負電圧V
NEGを提供する格子のラインに結合され得る。この場合、
図1に示すように、薄膜トランジスタ22、24は共に、高電圧薄膜トランジスタである。あるいは、第2の薄膜トランジスタ24は、従来のタイプ、すなわち、支配的な主電極がないタイプであってもよい。
【0027】
回路1とは逆に、第2の薄膜トランジスタ24のみが制御端子10によって制御されるゲートを有し、第1の高電圧薄膜トランジスタ22は、その支配的な主電極M12に関して固定バイアス電圧VBIAS(例えば0V)に設定されたゲートを有する。この実施形態では、負荷40は、第1及び第2のトランジスタ22、24によって形成される直列配置の中間ノード15と、第3の電源端子16との間に結合される。この実施形態では、第1のトランジスタ22の従属的な主電極M11の電位は、その支配的な主電極M12の電位以上である。第1の高電圧薄膜トランジスタ22が負の電荷担体タイプであると仮定すると、支配的な主電極M12は、そのソースを形成する。それとともに、この第1のトランジスタ22のチャネルは、その支配的な電極M12の電位によって制御され、それにより、トランジスタチャネルに注入される電荷に対する良好な制御、短チャネル効果に対する高い耐性、及び、高い出力抵抗が達成される。
【0028】
動作の前半フェーズでは、VNEG以下の値を有する電圧VINが制御端子10に印加される。これにより、第2のトランジスタ24’は、非導通状態に設定され、負荷40は、第1のトランジスタ22によって提供される負荷電流で充電される。このトランジスタ22は、支配的なソース構成を有するので、それは、電流制限を提供し、それにより、第2のトランジスタを保護し、これは、第2のトランジスタを非導通状態に切り替える瞬間に特に重要である。電流は、中間ノード15の電位VOUTが第1の電源端子12の電圧VPOSに実質的に近づくまで、実質的に同じレベルに維持される。それにより、支配的なソース構成で構成された第1のトランジスタは、負荷の急速充電を可能にする。
【0029】
動作の後半フェーズでは、電圧VNEGに第2のトランジスタ24’の必要な閾値電圧VTHを加えた値よりも大きい値を有する電圧VINが制御端子10に印加される。これにより、第2のトランジスタ24’は、導通状態に設定され、中間ノードの出力電圧VOUTが第2の電源端子14のVNEGに近づくまで負荷40が放電することを可能にする。
【0030】
再び
図1を参照すると、そこに示されているような高電圧薄膜トランジスタ22は、以下のように製造することができる。例えばガラス又はポリマーの基板30には、ゲート電極G11を画定する導電性材料、例えば、金属のゲート電極層31が設けられる。誘電体材料、例えばセラミック材料の誘電体層32は、ゲート電極のためのゲート誘電体を画定するゲート電極層上に提供される。次に、半導体材料のチャネル層34が提供され、半導体チャネルC11を画定する。誘電体材料のさらなる誘電体層35がチャネル層上に提供される。次に、支配的な主電極M11の外部部分M11e及び従属的な主電極の外部部分M12eを含む導電性材料の主電極層36が提供される。支配的な主電極及び従属的な主電極の外部部分は、相互に区別される。
【0031】
支配的な主電極接触領域M11cにおいて半導体チャネルに電気的に接触するために、さらなる誘電体層35を通って突出する支配的な主電極M11の内部部分M11iが提供される。
【0032】
従属的な主電極接触領域M12cにおいて半導体チャネルに電気的に接触するために、さらなる誘電体層35を通って突出する従属的な主電極M12の内部部分M12iが提供される。
【0033】
チャネルC11との電気的接触を提供するために、主電極層の導電性材料は、さらなる誘電体層35を貫通することができる。これは、開口部がさらなる誘電体層35に、例えば、さらなる誘電体層に使用される堆積プロセス中に、例えば、印刷方法を使用し、又は、後で別のプロセス段階で設けられることで達成されてもよい。あるいは、チャネルC11に電気的に接触する主電極M11、M12の内部部分M11e、M12eは、チャネル層34と主電極層36との間に延在する別個の導電性要素によって形成されてもよい。
図1に示されるように、第1の距離D1は、従属的な主電極接触領域M12cに面する支配的な主電極接触領域M11cの側部と、従属的な主電極の外部部分M12の外部分M12eに面する支配的な主電極M11の外部部分M11eの側部との間に定められる。第2の距離D2は、支配的な主電極接触領域M11cに面する従属的な主電極接触領域M12cの側部と、支配的な主電極M11の外部部分M11eに面する従属的な主電極M12の外部部分M12eの側部との間に定められる。第1の距離D1は、第2の距離D2の少なくとも2倍大きい。
【0034】
図7は、高電圧薄膜トランジスタ22、24が、製品に供給される負荷40とどのように統合され得るかを示す。これは、次のようにして達成することができる。
図7に示されるように、ゲート電極層31は、さらなるゲート電極G21をさらに画定し、誘電体層32は、さらなるゲート電極G21のためのゲート誘電体をさらに画定する。同様に、チャネル層33はさらに、さらなる半導体チャネルC21を画定する。
【0035】
第1の薄膜トランジスタについて説明したのと同じように、さらに支配的な主電極M21及びさらなる従属的な主電極M22を設けることができる。
図7に示されるように、第1の薄膜トランジスタ22の支配的な主電極M12及びさらなる支配的な主電極M21の外側部分は、主電極層36の共通領域によって形成される。
図7は、電気絶縁材料の絶縁層37が設けられることを示している。
【0036】
さらに、
図7は、負荷40の電極を画定し、主電極M22との電気的接続を有する導電性材料の導体層38が提供されることを示す。さらなるステップにおいて、負荷の別の電極は、例えば、基準ソースに接続された透明な導電層の一部として、又は、それに電気的に接続されて提供されてもよい。これにより、
図3に示すような電気回路が得られる。
【0037】
同様にして、
図6に示されるような電気回路が、
図8に示されるように上記のステップを用いて得ることができる。この場合、負荷40の電極は、第1の高電圧薄膜トランジスタ22と第2の薄膜トランジスタ24との間に設けられた中間ノード15に電気的に接続される。
【0038】
特定の要件に応じて、使用される材料は、有機又は無機の性質のものであり得る。比較的簡単な堆積及び処理方法を可能にするため、有機材料の使用が好ましい場合がある。
【0039】
基板は、例えば、ポリマーなどの有機材料であってもよいが、代替的に、ガラス又は金属などの無機材料であってもよい。金属、例えばAl、Au、Cu、Mo、又は、それらの合金を導電性材料として使用することができるが、代わりに導電性ポリマーをこの目的に使用することができ、有機及び無機成分の導電性組成物も使用することができる。透明な導電性構造は、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール又はドープされたポリマーなどの材料から提供されてもよい。有機材料とは別に、ITO(インジウムスズ酸化物)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、ATO(アンチモンスズ酸化物)、又は、スズ酸化物などの様々な無機透明導電材料を使用することができる。また、ニッケル-タングステン酸化物、インジウムをドープした酸化亜鉛、マグネシウム-インジウム酸化物を含むが、これらに限定されない他の金属酸化物が、透明な導電性材料としての使用に適している。絶縁層は、セラミック材料又はポリマーなどの無機材料であってもよい。
【0040】
トランジスタに半導体チャネルを形成するための半導体材料として、IGZO(インジウムガリウム亜鉛酸化物)又は水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)などの無機材料を使用することができる。あるいは、P3HT、IDTBT及びN2200などの半導体ポリマー材料が適している。
【0041】
上述の製造ステップにおいて、例えば、様々な方法、印刷、コーティング、蒸着、スパッタリングによって層が提供されてもよいことに留意されたい。層をパターン化する必要がある場合、これは、印刷又はマスク堆積プロセスを使用するなど、パターン化された堆積を可能にする堆積方法によって実現することができる。あるいは、又はさらに、層は、パターン化プロセスによって、例えばエッチング、機械的除去、又は、レーザーによるアブレーションによってパターン化されてもよい。
【0042】
図9Aは、導電性チャネルC11、第1及び第2の主電極M11、M12、並びに、半導電性チャネルの下のゲート電極G11を含む高電圧薄膜トランジスタ、例えば高電圧トランジスタ22の例示的な空間構成を示す。主電極M11、M12はそれぞれ、相互に反対側に半導体チャネルC11との適切な電気接点M11c、M12cを有する内部部分(斜線部分として示されている)を有する。さらに、主電極M11、M12はそれぞれ、実線で示される外部部分M11e、M12eを有する。
図9Aに示されるように、第2の主電極M12は、支配的な主電極である。すなわち、その外部部分M12eは、従属的な電極M11の外部部分M11eよりも、半導体チャネルC11との接点M12cを超えてさらに延びる。外部部分M12eが延びる距離は、その距離の少なくとも2倍、例えば、外部部分M12eが延びるその距離の少なくとも4倍である。
【0043】
図9Bは、
図3の回路で使用され、
図7、
図8の断面図に示されるように、相互に相補的に構成された2つの薄膜トランジスタ22、24の直列配置の例示的な実施形態を示す。ここで、トランジスタ22の構成は、
図9Aに示すものに対応し、トランジスタ24の構成は、それに対して相補的である。すなわち、トランジスタは、導電性チャネルC21、支配的な主電極M21、従属的な主電極M22、及び、半導電性チャネルC21の下のゲート電極G21を備える。
【0044】
図9Bに示されるように、ゲート電極G11、G21は、例えばゲート電極層(
図7の符号31を参照)において相互に接続される。支配的な主電極層M12、M21は、主電極層36の共通領域36Cに形成されている。
【0045】
図9Cは、2つの高電圧薄膜トランジスタ22、24の直列配置の別の例示的な空間構成を示す。
図9Bの要素に対応する要素は、同じ参照記号で示されている。
【符号の説明】
【0046】
1 高電圧ドライバ回路
10 制御端子
12 電源端子
14 電源端子
15 中間ノード
16 電源端子
22 高電圧薄膜トランジスタ
24 高電圧薄膜トランジスタ
31 ゲート電極層
32 ゲート誘電体層
34 チャネル層
35 誘電体層
36 主電極層
37 絶縁層
38 導電層
40 負荷
54j 列線
55i 行線
C11 半導体チャネル
C12 半導体チャネル
D1 第1の距離
D2 第2の距離
G1 ゲート電極
G2 ゲート電極
M11 従属的な主電極
M11c 従属的な主電極接触領域
M11e 外部部分
M11i 内部部分
M12 支配的な主電極
M12c 支配的な主電極接触領域
M12e 外部部分
M12i 内部部分