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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】構造体、光センサおよび画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20220928BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20220928BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20220928BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20220928BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H01L27/146 D
H01L27/146 A
H01L27/146 E
G02B5/22
G02B5/26
G02B5/28
G02B5/20 101
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020541235
(86)(22)【出願日】2019-09-03
(86)【国際出願番号】 JP2019034601
(87)【国際公開番号】W WO2020050265
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2018166955
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】宮田 哲志
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-208496(JP,A)
【文献】特開2014-190975(JP,A)
【文献】特開2005-019654(JP,A)
【文献】特開2018-085402(JP,A)
【文献】国際公開第2016/186050(WO,A1)
【文献】特開2015-195333(JP,A)
【文献】特開2018-076241(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0189696(US,A1)
【文献】国際公開第2017/199771(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0371844(US,A1)
【文献】国際公開第2018/096980(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2018/0120485(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03299422(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0270315(US,A1)
【文献】特開2018-125848(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0227510(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
G02B 5/22
G02B 5/26
G02B 5/28
G02B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外域に極大吸収波長を有し、吸収した赤外域の光に応じた電荷を発生する光電変換材料を含む赤外光光電変換層を含む赤外光光電変換素子と、
可視域の波長の光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する可視光光電変換素子と、
可視域の波長の光のうち前記可視光光電変換素子が感度を有する波長の少なくとも一部の波長の光、および、赤外域の波長の光のうち前記赤外光光電変換素子が感度を有する波長の少なくとも一部の波長の光をそれぞれ透過させ、かつ、赤外域の波長の光の一部を遮光する光学フィルタと、
が同一光路上に設けられており、かつ、前記光学フィルタからの光の射出側に前記赤外光光電変換素子および前記可視光光電変換素子がそれぞれ設けられており、
前記赤外光光電変換層は、p型有機半導体と、n型有機半導体とを含み、前記p型有機半導体および前記n型有機半導体の少なくとも一方は波長700nm以上に極大吸収波長を有し、かつ、最高被占軌道のエネルギー準位が-4.5eV以下である、
構造体。
【請求項2】
前記p型有機半導体および前記n型有機半導体の少なくとも一方は波長700nm以上に極大吸収波長を有し、かつ、最低空軌道のエネルギー準位が-3.0eV以下である、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
赤外域に極大吸収波長を有し、吸収した赤外域の光に応じた電荷を発生する光電変換材料を含む赤外光光電変換層を含む赤外光光電変換素子と、
可視域の波長の光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する可視光光電変換素子と、
可視域の波長の光のうち前記可視光光電変換素子が感度を有する波長の少なくとも一部の波長の光、および、赤外域の波長の光のうち前記赤外光光電変換素子が感度を有する波長の少なくとも一部の波長の光をそれぞれ透過させ、かつ、赤外域の波長の光の一部を遮光する光学フィルタと、
が同一光路上に設けられており、かつ、前記光学フィルタからの光の射出側に前記赤外光光電変換素子および前記可視光光電変換素子がそれぞれ設けられており、
前記赤外光光電変換層は、p型有機半導体と、n型有機半導体とを含み、前記p型有機半導体および前記n型有機半導体の少なくとも一方は波長700nm以上に極大吸収波長を有し、他方は波長400nm以下に極大吸収波長を有する、
構造体。
【請求項4】
前記光学フィルタは、赤外線吸収剤を含み、前記赤外線吸収剤は、スクアリリウム化合物およびフタロシアニン化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項5】
前記赤外光光電変換素子は、更に電荷輸送層を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項6】
前記赤外光光電変換素子は可視域の波長の光の透過率が50%以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項7】
前記可視光光電変換素子への光の入射側にカラーフィルタを有する、請求項1~のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項8】
前記可視光光電変換素子は、可視域の波長のうち、少なくとも一部の波長の光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する光電変換材料を含む可視光光電変換層を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項9】
前記可視光光電変換素子は、シリコンフォトダイオードを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項10】
前記光学フィルタは、更に紫外域の波長の光の少なくとも一部を遮光するものである、請求項1~のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の構造体を含む光センサ。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の構造体を含む画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光と赤外光とを同時に検出できる構造体に関する。また、前述の構造体を含む光センサおよび画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外光(赤外線)は可視光に比べて波長が長いので散乱しにくく、距離計測や、3次元計測などにも活用可能である。また、赤外光は人間、動物などの目に見えないので、夜間に被写体を赤外光光源で照らしても被写体に気付かれることなく、夜行性の野生動物を撮影する用途、防犯用途として相手を刺激せずに撮影することにも使用可能である。このように、赤外光に感知する光センサは、様々な用途に展開が可能であり、このような光センサについて種々の検討がなされている。
【0003】
また、近年では、可視光と赤外光とを同時に検出できる光センサの開発も進められている。
【0004】
このような可視光と赤外光とを同時に検出できる光センサとしては、特許文献1などに記載されているように、シリコンフォトダイオードなどの受光素子上にカラーフィルタの画素と赤外光透過フィルタの画素とをそれぞれ形成したものなどが知られている。
【0005】
また、特許文献2には、可視域と赤外域を併せた範囲における吸収スペクトルの吸収ピークを赤外域に持ち、吸収した光に応じた電荷を発生する光電変換材料を含んで構成される光電変換層を含む赤外光光電変換部であって、全体として可視域の光を50%以上透過する赤外光光電変換部と、可視域と赤外域を併せた範囲における吸収スペクトルの吸収ピークを可視域に持ち、吸収した光に応じた電荷を発生する可視光光電変換部であって、赤外光光電変換部の下方に設けられる可視光光電変換部とを含む固体撮像素子に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-162946号公報
【文献】特開2012-169676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
受光素子上にカラーフィルタの画素と赤外光透過フィルタの画素とをそれぞれ形成することにより、可視光と赤外光とを同時に検出することができ、これによってカラー画像と赤外光画像とを同時に取得することなどができる。しかしながら、この構成の場合、赤外光透過フィルタの画素を導入したことに伴いカラーフィルタの画素の面積が減少してしまうので、可視光の受光感度が低下することがあった。また、赤外光は可視光に比べて感度が低い傾向にあるため、赤外光透過フィルタの画素の面積を減少させると赤外光の受光感度も低下しやすい傾向にあった。
【0008】
一方で、特許文献2では、可視光光電変換部の上方、すなわち、可視光光電変換部への光の入射側に可視域と赤外域を併せた範囲における吸収スペクトルの吸収ピークを赤外域に持ち、吸収した光に応じた電荷を発生する光電変換材料を含んで構成される光電変換層を含む赤外光光電変換部を設けている。このような構成とすることにより可視光と赤外光の受光面積を十分に確保することが可能である。しかしながら、このような構成の場合、赤外光光電変換部には目的の波長以外の光も入射することになるためノイズが発生することがあり、赤外光の検出精度についてはさらなる改善の余地があった。また、本発明者の検討によれば、上記光電変換材料を含んで構成される光電変換層の耐光性について、更なる改善の余地があることが分かった。
【0009】
よって、本発明の目的は、耐光性が良好で、かつ、可視光および赤外光の検出精度に優れた構造体、光センサおよび画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる状況のもと、本発明者が鋭意検討を行った結果、後述する構成とすることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。よって、本発明は以下を提供する。
<1> 赤外域に極大吸収波長を有し、吸収した赤外域の光に応じた電荷を発生する光電変換材料を含む赤外光光電変換層を含む赤外光光電変換素子と、
可視域の波長の光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する可視光光電変換素子と、
可視域の波長の光のうち可視光光電変換素子が感度を有する波長の少なくとも一部の波長の光、および、赤外域の波長の光のうち赤外光光電変換素子が感度を有する波長の少なくとも一部の波長の光をそれぞれ透過させ、かつ、赤外域の波長の光の一部を遮光する光学フィルタと、
が同一光路上に設けられており、かつ、光学フィルタからの光の射出側に赤外光光電変換素子および可視光光電変換素子がそれぞれ設けられている、構造体。
<2> 赤外光光電変換素子は、更に電荷輸送層を含む、<1>に記載の構造体。
<3> 赤外光光電変換素子は可視域の波長の光の透過率が50%以上である、<1>または<2>に記載の構造体。
<4> 可視光光電変換素子への光の入射側にカラーフィルタを有する、<1>~<3>のいずれか1つに記載の構造体。
<5> 可視光光電変換素子は、可視域の波長のうち、少なくとも一部の波長の光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する光電変換材料を含む可視光光電変換層を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の構造体。
<6> 可視光光電変換素子は、シリコンフォトダイオードを含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の構造体。
<7> 赤外光光電変換層は、p型有機半導体と、n型有機半導体とを含み、p型有機半導体およびn型有機半導体の少なくとも一方は波長700nm以上に極大吸収波長を有する、<1>~<6>のいずれか1つに記載の構造体。
<8> p型有機半導体およびn型有機半導体の少なくとも一方は波長700nm以上に極大吸収波長を有し、かつ、最高被占軌道のエネルギー準位が-4.5eV以下である、<7>に記載の構造体。
<9> p型有機半導体およびn型有機半導体の少なくとも一方は波長700nm以上に極大吸収波長を有し、かつ、最低空軌道のエネルギー準位が-3.0eV以下である、<7>または<8>に記載の構造体。
<10> p型有機半導体およびn型有機半導体のうち一方は波長700nm以上に極大吸収波長を有し、他方は波長400nm以下に極大吸収波長を有する、<7>~<9>のいずれか1つに記載の構造体。
<11> 光学フィルタは、更に紫外域の波長の光の少なくとも一部を遮光するものである、<1>~<10>のいずれか1つに記載の構造体。
<12> <1>~<11>のいずれか1つに記載の構造体を含む光センサ。
<13> <1>~<11>のいずれか1つに記載の構造体を含む画像表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐光性が良好で、かつ、可視光および赤外光の検出精度に優れた構造体、光センサおよび画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の構造体の一実施形態を示す概略面である。
図2】本発明の構造体に用いられる赤外光光電変換素子の一実施形態を示す概略図である。
図3】本発明の構造体の他の実施形態を示す概略面である。
図4】本発明の構造体の他の実施形態を示す概略面である。
図5】本発明の構造体の他の実施形態を示す概略面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定でのポリスチレン換算値として定義される。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0014】
<構造体>
本発明の構造体は、
赤外域に極大吸収波長を有し、吸収した赤外域の光に応じた電荷を発生する光電変換材料を含む赤外光光電変換層を含む赤外光光電変換素子と、
可視域の波長の光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する可視光光電変換素子と、
可視域の波長の光のうち上記可視光光電変換素子が感度を有する波長の少なくとも一部の波長の光、および、赤外域の波長の光のうち上記赤外光光電変換素子が感度を有する波長の少なくとも一部の波長の光をそれぞれ透過させ、かつ、赤外域の波長の光の一部を遮光する光学フィルタと、
が同一光路上に設けられており、かつ、光学フィルタからの光の射出側に上記赤外光光電変換素子および上記可視光光電変換素子がそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明の構造体は、赤外光光電変換素子と可視光光電変換素子とがそれぞれ同一光路上に設けられている、すなわち、異なる光を検出する光電変換素子が縦方向に配置されている。このため、各素子にて入射した光のほぼ全てを信号として取り出すことが可能であり、光量の損失がなく、可視光および赤外光を感度よく検出できる。また、これらの素子への光の入射側に上記の分光特性を有する光学フィルタが配置されているので、ノイズとなる成分の光が低減された光をこれらの素子に入射させることができる。このため、可視光および赤外光の検出精度を高めることができる。更には、赤外光光電変換素子の耐光性も向上させることができる。赤外光光電変換素子へ入射する赤外域の波長の光(赤外光)の一部を上記光学フィルタにて遮光したことにより、赤外光光電変換層に含まれる光電変換材料の劣化や分解などを抑制できたためであると推測される。
【0016】
また、上記の光学フィルタにおける赤外光を透過させる範囲および遮光させる範囲を適宜調整することにより、赤外光光電変換素子へ入射させる赤外光の波長を容易に変更させることもできる。このため、目的や用途に応じた設計変更を容易に行うこともできる。
【0017】
本発明の構造体の実施形態について、以下図面を用いて説明する。なお、図中の矢印は構造体への入射光を表す。また、以下の説明において、赤外域の波長域の光(赤外光)とは、一般的に波長700~2500nmの範囲の光を示し、可視域の波長域の光(可視光)とは、一般的に波長400~650nmの範囲の光を示すものとする。又、本明細書において、「ある波長域α~βnmでの吸収率又は透過率」とは、波長域α~βnmについて、吸収率又は透過率が100%としたときの波長域α~βnmでの積分値をX、各波長の吸収率又は透過率の波長域α~βnmでの積分値をYとしたとき、Y/X×100で表せるものとする。
【0018】
(第1の実施形態)
図1に示す構造体1は、支持体100上に可視光光電変換素子200が設けられている。支持体100としては、特に限定はない。例えば、ガラス基板、セラミックス基板、樹脂基板、半導体基板などが挙げられる。半導体基板としては、シリコン基板、SOI(Silicon on Insulator)基板、SOI基板のシリコン層上にシリコンエピタキシャル成長層を形成した基板などが挙げられる。また、支持体100には、可視光光電変換素子200や赤外光光電変換素子300によって光電変換された信号電荷を読み出すための転送ゲートが形成されていてもよい。また、支持体100には、配線部が形成されてもよい。
【0019】
可視光光電変換素子200は、可視域の波長の光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する素子である。可視光光電変換素子200は、波長400nm以上の波長の光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する素子であることが好ましい。また、可視光光電変換素子200は少なくとも波長400~650nmの範囲の波長の光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する素子であることも好ましい。
【0020】
可視光光電変換素子200は、シリコンフォトダイオードや、可視域の波長を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する光電変換材料を含む可視光光電変換層を含む素子などが挙げられる。
【0021】
シリコンフォトダイオードは、支持体100としてシリコン基板を用い、シリコン基板の表面にイオン注入などの公知の半導体プロセスを用いて形成することができる。
【0022】
上記可視光光電変換層を含む素子の構成としては、後述する赤外光光電変換素子300の項で説明する構造を有するものが挙げられる。可視光光電変換層に用いられる光電変換材料としては、可視域(好ましくは波長400~650nmの範囲)に極大吸収波長を有し、吸収した光に応じた電荷を発生する光電変換材料であればいずれも好ましく用いられる。
【0023】
可視光光電変換層の膜厚は1~100000nmが好ましい。上限は、90000nm以下が好ましく、10000nm以下がより好ましい。下限は、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。
【0024】
可視光光電変換層に用いられる光電変換材料としては、可視域に吸収を有する半導体材料が挙げられる。例えば、色素化合物、量子ドットなどが挙げられる。色素化合物としては、キサンテン色素化合物、トリアリールメタン色素化合物、シアニン色素化合物、スクアリリウム色素化合物、クロコニウム色素化合物、ベンズイミダゾロン色素化合物、ベンズイミダゾリノン色素化合物、キノフタロン色素化合物、フタロシアニン色素化合物、アントラキノン色素化合物、ジケトピロロピロール色素化合物、キナクリドン色素化合物、アゾ色素化合物、イソインドリノン色素化合物、イソインドリン色素化合物、ジオキサジン色素化合物、ペリレン色素化合物、チオインジゴ色素化合物、ピロメテン色素化合物などが挙げられる。量子ドットとしては、InP、Si、CdSeなどが挙げられる。
【0025】
可視光光電変換層に含まれる光電変換材料は、p型有機半導体及びn型有機半導体の少なくとも一方を含んでいることが好ましく、p型有機半導体及びn型有機半導体の両方を含んでいることがより好ましい。ここで、p型有機半導体とは、ドナー性有機半導体のことであり、主に正孔輸送性有機化合物に代表され、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、p型有機半導体には、電子供与性のある有機化合物が用いられる。また、n型有機半導体(化合物)とは、アクセプター性有機半導体(化合物)のことであり、主に電子輸送性有機化合物に代表され、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、n型有機半導体には電子受容性のある有機化合物が用いられる。
【0026】
可視光光電変換層に用いられるp型有機半導体とn型有機半導体との組み合わせとしては、p型有機半導体の最高被占軌道のエネルギー準位がn型有機半導体の最高被占軌道のエネルギー準位よりも0.1eV以上大きく、二種の吸収極大が可視域に対して相補的である組み合わせが好ましい具体例として挙げられる。
【0027】
本発明の構造体において、可視光光電変換素子200としてシリコンフォトダイオードを用いた場合は、既存のプロセスを流用可能でありコストを抑えることができる、耐久性が高いという有利な点がある。また、本発明の構造体において、可視光光電変換素子200として上述した光電変換材料を含む可視光光電変換層を含む素子を用いた場合には、可視光光電変換素子200全体の厚みをより薄くすることができ、本発明の構造体を適用した各種装置の厚さをより薄くすることができる。更には、自由度の高い分光設計が可能になるという有利な点がある。
【0028】
図1に示す構造体1では、可視光光電変換素子200上に、赤外光光電変換素子300が設けられている。この赤外光光電変換素子300は、赤外域に極大吸収波長を有し、吸収した赤外域の光に応じた電荷を発生する光電変換材料を含む赤外光光電変換層を含むものである。
【0029】
赤外光光電変換層の膜厚は1~10000nmが好ましい。上限は、10000nm以下が好ましく、1000nm以下がより好ましい。下限は、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。
【0030】
赤外光光電変換層に含まれる光電変換材料は、赤外域での極大吸収波長を700nm以上(好ましくは波長700~2500nm)の範囲に有することが好ましい。また、上記波長での赤外光光電変換層の吸収率については50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0031】
図1に示すように、赤外光光電変換素子300を可視光光電変換素子200への光入射側に配置する場合は、赤外光光電変換素子300は、可視域の波長(好ましくは波長400~650nm)の光の透過率が高いことが好ましい。例えば、赤外光光電変換素子300は、可視域の波長(好ましくは波長400~650nm)の光の透過率が50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、75%以上であることがさらに好ましい。一方、可視光光電変換素子200を赤外光光電変換素子300への光入射側に配置する場合は、赤外光光電変換素子300の可視域の波長の光の透過率は特に限定はない。例えば、赤外光光電変換素子300の可視域の波長(好ましくは波長400~650nm)の光の透過率は50%未満であってもよく、50%以上であってもよい。
【0032】
図2を合わせて参照しながら赤外光光電変換素子300について更に詳しく説明する。図2は、本発明の構造体に用いられる赤外光光電変換素子300の一例を示す概略図である。図2に示す赤外光光電変換素子300は、下部電極330と、下部電極330に対向する上部電極320と、下部電極330と上部電極320との間に設けられた赤外光光電変換層310とを含んでいる。図2に示す赤外光光電変換素子300は、上部電極320の上方から光を入射して用いられる。
なお、図示しないが、赤外光光電変換層310と下部電極330との間、および/または赤外光光電変換層310と上部電極320との間に電荷輸送層が設けられていてもよい。以下、上部電極と下部電極とを合わせて単に電極ともいう。これらの電極と赤外光光電変換層310との間に電荷輸送層を設けることで、赤外光光電変換層310での電荷の分離効率を向上させることができ、赤外光の受光感度を向上させることができる。更には、赤外光光電変換層310上に電極を形成する場合においては、赤外光光電変換層310上に電荷輸送層を形成し、この電荷輸送層上に電極を形成することで、電極形成時における赤外光光電変換層310に与えられるダメージを軽減することもできる。また、電極上に赤外光光電変換層310を形成する場合においては、電極上に電荷輸送層を形成し、この電荷輸送層上に赤外光光電変換層310を形成することで、均一な膜厚の赤外光光電変換層を形成しやすい。電荷輸送層としては正孔輸送層、電子輸送層が挙げられる。正孔輸送層の材料としては、PEDOT:PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4-スチレンスルホン酸))、MoO3などが挙げられる。電子輸送層の材料としては、ZnO2、TiO2などが挙げられる。
【0033】
上部電極320は、可視域と赤外域を併せた範囲の光(可視光と赤外光)に対して透明な導電材料で構成された透明電極であることが好ましい。また、下部電極330も上部電極320と同様に透明電極を用いることが望ましい。本明細書において「ある波長の光に対して透明」とは、その波長の光を70%以上透過することをいう。また、上部電極320の可視光と赤外光の透過率は90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。また、下部電極330の可視光の透過率は90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。上部電極320には図示しない配線によってバイアス電圧が印加される。このバイアス電圧は、赤外光光電変換層310で発生した電荷のうち、電子が上部電極320に移動し、正孔が下部電極330に移動するように、その極性が決められている。もちろん、赤外光光電変換層310で発生した電荷のうち、正孔が上部電極320に移動し、電子が下部電極330に移動するように、バイアス電圧を設定しても良い。
【0034】
上部電極320、下部電極330の材料としては、金属、合金、金属酸化物、金属窒化物、金属ホウ化物、有機導電性化合物、これらの混合物等が好適に挙げられる。具体例としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウムタングステン(IWO)等の導電性金属酸化物、窒化チタン等の金属窒化物、金、白金、銀、クロム、ニッケル、アルミニウム等の金属、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロ-ル等の有機導電性材料、これらとITOとの積層物などが挙げられる。また、沢田豊監修「透明導電膜の新展開」(シーエムシー刊、1999年)、沢田豊監修「透明導電膜の新展開II」(シーエムシー刊、2002年)、日本学術振興会著「透明導電膜の技術」(オーム社、1999年)等に詳細に記載されているものを用いても良い。上部電極320、下部電極330の材料は、隣接する層との密着性や電子親和力、イオン化ポテンシャル、安定性等を考慮して選択される。
【0035】
電極(上部電極、下部電極)の形成方法としては、用いる材料によって適宜選択することができる。例えば酸化インジウム錫(ITO)の場合、電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、化学反応法(ゾルーゲル法など)、酸化インジウム錫の分散物の塗布などの方法で形成することができる。
【0036】
赤外光光電変換層310は、赤外域に極大吸収波長を有し、吸収した赤外域の光に応じた電荷を発生する光電変換材料を含む。このような光電変換材料としては、赤外域に吸収を有する半導体材料などが好ましく用いられる。例えば、トリアリールアミン化合物、トリアリールメタン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピロロピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、スクアリリウム化合物、クロコニウム化合物、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン及びこれらの誘導体など)、チオフェン化合物、テトラチアフルバレン化合物、キノリド化合物、ペリレン化合物、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、金属錯体化合物、フラーレン化合物、キノイド化合物などが挙げられる。金属錯体化合物としては、金属に配位する少なくとも1つの窒素原子、酸素原子または硫黄原子を有する配位子をもつ金属錯体化合物が挙げられる、金属としては、ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、ガリウム、亜鉛イオン、インジウム、錫が挙げられる。配位子としては種々の公知の配位子が有るが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer-Verlag社 H.Yersin著1987年発行、「有機金属化学-基礎と応用-」裳華房社山本明夫著1982年発行等に記載の配位子が挙げられる。好ましくは含窒素ヘテロ環配位子(好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数2~20、特に好ましくは炭素数3~15であり、単座配位子であっても2座以上の配位子であっても良い。例えばピリジン配位子、ビピリジル配位子、キノリノール配位子、ヒドロキシフェニルアゾール配位子(ヒドロキシフェニルベンズイミダゾール、ヒドロキシフェニルベンズオキサゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾール配位子)などが挙げられる)、アルコキシ配位子(好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数1~20、特に好ましくは炭素数1~10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2-エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ配位子(好ましくは炭素数6~30、より好ましくは炭素数6~20、特に好ましくは炭素数6~12であり、例えばフェニルオキシ、1-ナフチルオキシ、2-ナフチルオキシ、2,4,6-トリメチルフェニルオキシ、4-ビフェニルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロアリールオキシ配位子(好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数1~20、特に好ましくは炭素数1~12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アルキルチオ配位子(好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数1~20、特に好ましくは炭素数1~12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ配位子(好ましくは炭素数6~30、より好ましくは炭素数6~20、特に好ましくは炭素数6~12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環置換チオ配位子(好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数1~20、特に好ましくは炭素数1~12であり、例えばピリジルチオ、2-ベンズイミゾリルチオ、2-ベンズオキサゾリルチオ、2-ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、またはシロキシ配位子(好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数3~25、特に好ましくは炭素数6~20であり、例えば、トリフェニルシロキシ基、トリエトキシシロキシ基、トリイソプロピルシロキシ基などが挙げられる)であり、より好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ基、またはシロキシ配位子であり、更に好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、またはシロキシ配位子である。
【0037】
また、上記光電変換材料として、量子ドットを用いることも好ましい。量子ドットの材料としては、カドミウム化合物、鉛化合物、インジウム化合物などが用いられる。具体例としては、CdS、CdSe、PbS、PbSe、InAsなどが挙げられる。量子ドットの形状としては、特に限定はなく、真球状、燐片状、板状、柱状、楕円球状、不定形が挙げられる。
【0038】
赤外光光電変換層310に含まれる光電変換材料は、p型有機半導体及びn型有機半導体の少なくとも一方を含んでいることが好ましく、p型有機半導体及びn型有機半導体の両方を含んでいることがより好ましい。
p型有機半導体としては、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン及びこれらの誘導体など)、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、トリアリールアミン化合物、テトラチアフルバレン化合物、ピロロピロール化合物、スクアリリウム化合物が好ましい。n型有機半導体としては、フラーレン化合物、トリアリールアミン化合物、キノイド化合物、フタロシアニン化合物、ペリレン化合物が好ましい。これらの具体例としては、後述する実施例に記載の化合物が挙げられる。
【0039】
また、p型有機半導体およびn型有機半導体の少なくとも一方は、波長400~650nmの範囲のモル吸光係数の最大値と、波長700~2500nmの範囲のモル吸光係数の最大値との比が0.5以下(好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下)の条件を満たすことが好ましく、両方が上記の関係を満たすことがより好ましい。
【0040】
p型有機半導体およびn型有機半導体の両方が波長700nm以上に極大吸収波長を有するものを用いた場合には、赤外光光電変換層310における赤外光の感度をより向上させることができる。
【0041】
また、p型有機半導体およびn型有機半導体のうち一方は波長700nm以上に極大吸収波長を有するものを用い、他方は波長400nm以下(好ましくは波長200~400nmの範囲)に極大吸収波長を有するものを用いることも好ましい。この態様によれば、赤外光光電変換層310の可視光透過性を高めることができる。このため、図1に示す態様のように、赤外光光電変換素子300を可視光光電変換素子200よりも外部からの光入射側に設けた場合には、可視光光電変換素子200における可視光の感度をより高めることができ、より鮮明な可視光画像を得ることができる。更には、一方の有機半導体として、紫外線を吸収する材料を用いることで、赤外光光電変換層310からの光射出側に設けられた部材の劣化を抑制することもできる。
【0042】
また、p型有機半導体およびn型有機半導体の少なくとも一方は赤外域に極大吸収波長を有し、かつ、最高被占軌道のエネルギー準位が-4.5eV以下であることが好ましい。最高被占軌道のエネルギー準位は、-4.5eV以下であることが好ましく、-4.8eV以下であることがより好ましく、-5.0eV以下であることが更に好ましい。この態様によれば、赤外光光電変換層310の耐熱性をより向上させることができる。また、p型有機半導体およびn型有機半導体の両方を赤外域に極大吸収波長を有するものを用いた場合は、耐熱性の観点からp型有機半導体およびn型有機半導体の両方の最高被占軌道のエネルギー準位が-4.5eV以下であることが好ましい。
【0043】
また、p型有機半導体およびn型有機半導体の少なくとも一方は赤外域に極大吸収波長を有し、かつ、p型有機半導体の最低空軌道のエネルギー準位が-3.0eV以下であることも好ましい。最低空軌道のエネルギー準位は、-3.0eV以下であることが好ましく、-3.1eV以下であることがより好ましい。また、p型有機半導体の最低空軌道のエネルギー準位は、n型有機半導体の最低空軌道のエネルギー準位よりも0.1eV以上大きいことが好ましく、0.2eV以上大きいことがより好ましい。この態様によれば、赤外光光電変換層310での赤外光の変換効率をより向上させることができ、赤外光の感度をより向上させることができる。また、p型有機半導体およびn型有機半導体の両方を赤外域に極大吸収波長を有するものを用いた場合は、赤外光の変換効率の観点からp型有機半導体およびn型有機半導体の両方の最低空軌道のエネルギー準位が-3.0eV以下であることが好ましい。
【0044】
また、p型有機半導体およびn型有機半導体のうち、一方の有機半導体の最高被占軌道のエネルギー準位と他方の有機半導体の最低空軌道のエネルギー準位との差の絶対値は 0.2~2.5eVであることが好ましい。上限は2.0eV以下であることが好ましく、1.8eV以下であることがより好ましく、1.7eV以下であることが更に好ましい。下限は0.3eV以上であることが好ましく、0.4eV以上であることがより好ましく、0.5eV以上であることが更に好ましい。この態様によれば、高い赤外光光電変換能を発揮するという効果が期待できる。
【0045】
本発明において、赤外光光電変換層310は、p型半導体層とn型半導体層とを有し、p型半導体とn型半導体の少なくともいずれかが有機半導体であり、かつ、それらの半導体層の間に、p型半導体およびn型半導体を含むバルクヘテロ接合構造層を中間層として有するものであってもよい。このような場合、赤外光光電変換層310にバルクへテロ接合構造を含有させることにより、赤外光光電変換層310での光電変換効率をより向上させることもできる。
【0046】
また、赤外光光電変換層310は、p型半導体層とn型半導体層で形成されるpn接合層の繰り返し構造(タンデム構造)の数を2以上有する構造を有するものであってもよい。また、繰り返し構造の間に、導電材料の薄層が挿入されていてもよい。pn接合層の繰り返し構造(タンデム構造)の数は特に限定されないが、光電変換効率の観点から2~50が好ましく、2~30がより好ましく、2~10が更に好ましい。導電材料としては銀または金が好ましく、銀がより好ましい。
【0047】
また、赤外光光電変換層310は、p型半導体層、n型半導体層を有し、p型半導体層及びn型半導体層のうちの少なくとも一方(好ましくは両方)に配向制御された有機化合物を含んでいてもよい。
【0048】
赤外光光電変換層310の形成方法としては、塗布などの湿式成膜法、蒸着等の乾式成膜法などが挙げられる。用いる材料に応じて適宜選択することができる。
【0049】
乾式成膜法としては、真空蒸着法が好ましく用いられる。真空蒸着法においては抵抗加熱蒸着法、電子線加熱蒸着法等の化合物を加熱する方法、るつぼ、ボ-ト等の蒸着源の形状、真空度、蒸着温度、基盤温度、蒸着速度等が基本的なパラメ-タ-である。均一な蒸着を可能とするために基盤を回転させて蒸着することは好ましい。真空度は高い方が好ましく、1×10-2Pa以下がより好ましく、1×10-3Pa以下が更に好ましく、1×10-6Pa以下が更に好ましい。蒸着時のすべての工程は真空中で行われることが好ましく、基本的には化合物が直接、外気の酸素、水分と接触しないようにすることがより好ましい。
【0050】
湿式成膜法で形成する場合には、吸収した赤外域の光に応じた電荷を発生する有機光電変換材料(たとえばp型有機半導体およびn型有機半導体から選ばれる少なくとも1種、好ましくはp型有機半導体およびn型有機半導体)を含む光電変換層用組成物を用い、従来公知の塗布方法にて電極などの支持体上に塗布して形成することができる。塗布方法としては、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコート法);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009-145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。
【0051】
赤外光光電変換層用組成物は、更に、溶剤、重合性化合物、重合開始剤、樹脂などを含んでいてもよい。また、赤外光光電変換層用組成物に用いられる重合性化合物や樹脂は、導電性を有する材料が好ましい。導電性を有する樹脂としては、π共役系高分子などが挙げられる。具体例としては、下記構造の樹脂(P-1)、(p-2)などが挙げられる。
【化1】
【0052】
重合開始剤としては、熱重合開始剤、および光重合開始剤が挙げられ、光重合開始剤が好ましい。また、重合開始剤は、ラジカル重合開始剤であることが好ましい。重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物など)、アシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物などが挙げられる。重合開始剤は、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体、ハロメチルオキサジアゾール化合物および3-アリール置換クマリン化合物が好ましく、オキシム化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、および、アシルホスフィン化合物から選ばれる化合物がより好ましく、オキシム化合物が更に好ましい。オキシム化合物の市販品としては、IRGACURE-OXE01、IRGACURE-OXE02、IRGACURE-OXE03、IRGACURE-OXE04(以上、BASF社製)、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-014052号公報に記載の光重合開始剤2)が挙げられる。
【0053】
赤外光光電変換層用組成物において、有機光電変換材料の含有量は、光電変換層用組成物の全固形分中1~100質量%であることが好ましく、10~100質量%であることがより好ましい。また、赤外光光電変換層用組成物が更に重合性化合物を含む場合、重合性化合物の含有量は、赤外光光電変換層用組成物の全固形分中90質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。また、赤外光光電変換層用組成物が更に樹脂を含む場合、樹脂の含有量は、赤外光光電変換層用組成物の全固形分中90質量%以下であることが好ましく50質量%以下であることがより好ましい。また、赤外光光電変換層用組成物が更に重合開始剤を含む場合、重合開始剤の含有量は、赤外光光電変換層用組成物の全固形分中0.5~15質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましい。赤外光光電変換層用組成物が更に溶剤を含む場合、溶剤の含有量は、赤外光光電変換層用組成物の全固形分中1~99質量%であることが好ましく、20~95質量%であることがより好ましい。一方で、赤外光光電変換層用組成物を用いて蒸着などの乾式成膜法で赤外光光電変換層310を形成する場合においては、溶剤、重合性化合物、重合開始剤、溶剤などの有機光電変換材料以外の素材は含まなくてもよい。
【0054】
図1に再び戻ると、図1に示す構造体1では、赤外光光電変換素子300上に光学フィルタ400が設けられている。なお、図1では、赤外光光電変換素子300の上方に距離を置いて光学フィルタ400が設けられているが、赤外光光電変換素子300の表面に光学フィルタ400が設けられていてもよい。また、赤外光光電変換素子300と光学フィルタ400との間に中間層が設けられていてもよい。
【0055】
本発明の構造体において、光学フィルタ400としては、可視域の波長の光のうち可視光光電変換素子200が感度を有する波長の少なくとも一部の波長の光、および、赤外域の波長の光のうち赤外光光電変換素子300が感度を有する波長の少なくとも一部の波長の光をそれぞれ透過させ、かつ、赤外域の波長の光の一部を遮光する分光特性を有するものが用いられる。
【0056】
光学フィルタ400は、例えば波長450~600nmの範囲の光の透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
また、赤外光光電変換素子300が感度を有する波長の少なくとも一部の波長の光の透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。赤外光光電変換素子300が感度を有する赤外域の波長の光であって、光学フィルタ400が透過させる光の波長幅(例えば、透過率が70%を超える光の波長幅)は用途に応じて適宜選択することができる。たとえば5~200nmが好ましく、10~100nmがより好ましい。この態様によれば、赤外光の検出精度をより向上させることができる。
【0057】
本発明で用いられる光学フィルタ400は、更に紫外域の波長の光(好ましくは波長300~400nmの範囲の光)の少なくとも一部を遮光するものであることも好ましい。この態様によれば、構造体の耐光性向上、ノイズの低減という効果が得られる。また、光学フィルタ400は波長300~400nmの範囲の少なくとも一部の波長の光の透過率が50%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。また、波長300~400nmの範囲光の透過率の最大値が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
【0058】
光学フィルタ400としては、誘電体多層膜などが挙げられる。誘電体多層膜は、たとえば、ガラス基板や樹脂基板などの透明基板上に形成して用いられる。また、赤外光光電変換素子300上に形成して用いることもできる。誘電体多層膜を透明基板上に形成する場合は、透明基板の片面のみに誘電体多層膜を形成してもよく、両面に形成してもよい。
【0059】
誘電体多層膜は光の干渉の効果を利用して赤外線を遮光する膜である。誘電体多層膜は、高屈折率の誘電体薄膜(高屈折率材料層)と低屈折率の誘電体薄膜(低屈折率材料層)とを交互に積層することで作製することができる。誘電体多層膜における誘電体薄膜の積層数は、2~100層が好ましく、4~60層がより好ましく、6~40層が更に好ましい。
【0060】
高屈折率材料層の形成に用いられる材料としては、屈折率が1.7~2.5の材料が好ましい。具体例としては、Sb23、Sb23、Bi23、CeO2、CeF3、HfO2、La23、Nd23、Pr611、Sc23、SiO、Ta25、TiO2、TlCl、Y23、ZnSe、ZnS、ZrO2などが挙げられる。低屈折率材料層の形成に用いられる材料としては、屈折率が1.2~1.6の材料が好ましい。具体例としては、Al23、BiF3、CaF2、LaF3、PbCl2、PbF2、LiF、MgF2、MgO、NdF3、SiO2、Si23、NaF、ThO2、ThF4、Na3AlF6などが挙げられる。
【0061】
誘電体多層膜の形成方法としては、特に制限はないが、例えば、イオンプレーティング、イオンビーム等の真空蒸着法、スパッタリング等の物理的気相成長法(PVD法)、化学的気相成長法(CVD法)などが挙げられる。
【0062】
高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚みは、遮断しようとする光の波長λ(nm)の0.1λ~0.5λの厚みであることが好ましい。厚みを上記範囲とすることにより、特定波長の遮断・透過をコントロールしやすい。
【0063】
光学フィルタ400は、更に赤外線吸収剤および紫外線吸収剤から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。たとえば、誘電体多層膜の表面にこれらの成分を含む層が形成されていてもよく、誘電体多層膜を形成する支持体がこれらの成分を含んでいてもよい。
【0064】
赤外線吸収剤としては、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、クアテリレン化合物、メロシアニン化合物、クロコニウム化合物、オキソノール化合物、イミニウム化合物、ジチオール化合物、トリアリールメタン化合物、ピロメテン化合物、アゾメチン化合物、アントラキノン化合物、ジベンゾフラノン化合物、金属酸化物、金属ホウ化物等が挙げられる。ピロロピロール化合物としては、特開2009-263614号公報の段落番号0016~0058に記載の化合物、特開2011-068731号公報の段落番号0037~0052に記載の化合物、国際公開第2015/166873号の段落番号0010~0033に記載の化合物などが挙げられる。スクアリリウム化合物としては、特開2011-208101号公報の段落番号0044~0049に記載の化合物、特許第6065169号公報の段落番号0060~0061に記載の化合物、国際公開第2016/181987号の段落番号0040に記載の化合物、特開2015-176046号公報に記載の化合物、国際公開第2016/190162号の段落番号0072に記載の化合物、特開2016-074649号公報の段落番号0196~0228に記載の化合物、特開2017-067963号公報の段落番号0124に記載の化合物、国際公開第2017/135359号に記載の化合物、特開2017-114956号公報に記載の化合物、特許6197940号公報に記載の化合物、国際公開第2016/120166号に記載の化合物などが挙げられる。シアニン化合物としては、特開2009-108267号公報の段落番号0044~0045に記載の化合物、特開2002-194040号公報の段落番号0026~0030に記載の化合物、特開2015-172004号公報に記載の化合物、特開2015-172102号公報に記載の化合物、特開2008-088426号公報に記載の化合物、国際公開第2016/190162号の段落番号0090に記載の化合物などが挙げられる。クロコニウム化合物としては、特開2017-082029号公報に記載の化合物が挙げられる。イミニウム化合物としては、例えば、特表2008-528706号公報に記載の化合物、特開2012-012399号公報に記載の化合物、特開2007-092060号公報に記載の化合物、国際公開第2018/043564号の段落番号0048~0063に記載の化合物が挙げられる。フタロシアニン化合物としては、特開2012-077153号公報の段落番号0093に記載の化合物、特開2006-343631号公報に記載のオキシチタニウムフタロシアニン、特開2013-195480号公報の段落番号0013~0029に記載の化合物が挙げられる。ナフタロシアニン化合物としては、特開2012-077153号公報の段落番号0093に記載の化合物が挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズ、酸化亜鉛、Alドープ酸化亜鉛、フッ素ドープ二酸化スズ、ニオブドープ二酸化チタン、酸化タングステンなどが挙げられる。酸化タングステンの詳細については、特開2016-006476号公報の段落番号0080を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。金属ホウ化物としては、ホウ化ランタンなどが挙げられる。ホウ化ランタンの市販品としては、LaB6-F(日本新金属(株)製)などが挙げられる。また、金属ホウ化物としては、国際公開第2017/119394号に記載の化合物を用いることもできる。酸化インジウムスズの市販品としては、F-ITO(DOWAハイテック(株)製)などが挙げられる。また、赤外線吸収剤としては、また、特開2017-197437号公報に記載のスクアリリウム化合物、国際公開第2017/213047号の段落番号0090~0107に記載のスクアリリウム化合物、特開2018-054760号公報の段落番号0019~0075に記載のピロール環含有化合物、特開2018-040955号公報の段落番号0078~0082に記載のピロール環含有化合物、特開2018-002773号公報の段落番号0043~0069に記載のピロール環含有化合物、特開2018-041047号公報の段落番号0024~0086に記載のアミドα位に芳香環を有するスクアリリウム化合物、特開2017-179131号公報に記載のアミド連結型スクアリリウム化合物、特開2017-141215号公報に記載のピロールビス型スクアリリウム骨格又はクロコニウム骨格を有する化合物、特開2017-082029号公報に記載されたジヒドロカルバゾールビス型のスクアリリウム化合物、特開2017-068120号公報の段落番号0027~0114に記載の非対称型の化合物、特開2017-067963号公報に記載されたピロール環含有化合物(カルバゾール型)、特許第6251530号公報に記載されたフタロシアニン化合物などを用いることもできる。
【0065】
紫外線吸収剤は、アゾメチン化合物、インドール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、トリアジン化合物合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾエート化合物、サリシレート化合物、オキサニリド化合物、マロン酸エステル化合物、シアノアクリレート化合物などが挙げられる。アゾメチン化合物、インドール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、トリアジン化合物としては、特開2016-162946号公報の段落番号0061~0074に記載された化合物が挙げられる。ベンゾフェノン化合物としては、特開2014-218610号公報の段落0067等に記載された化合物が挙げられる。ベンゾエート化合物としては、特開2014-218610号公報の段落0066等に記載された化合物が挙げられる。サリシレート化合物としては、例えば特開2014-218610号公報の段落0069等に記載された化合物が挙げられる。オキサニリド化合物としては、特開2014-218610号公報の段落0070等に記載された化合物が挙げられる。マロン酸エステル化合物としては、特開2015-030811号公報の段落0074等に記載された化合物が挙げられる。シアノアクリレート化合物としては、特開2014-218610号公報の段落0068等に記載された化合物が挙げられる。
【0066】
なお、図1では支持体100上に可視光光電変換素子200が設けられているが、可視光光電変換素子200と赤外光光電変換素子300との積層順序を入れ替えてもよい。また、図1では可視光光電変換素子200と赤外光光電変換素子300とが接しているが、両者の間に中間層や、ガラスや樹脂などで構成された透明基板が配置されていてもよい。例えば、可視光光電変換素子200と赤外光光電変換素子300とをそれぞれ別の基板上に形成しておき、これらを接合した場合は、可視光光電変換素子200と赤外光光電変換素子300との間に基板が介在した構造体とすることができる。
【0067】
図1に示す構造体を光センサなどに組み込むことで、鮮明な白黒画像と赤外光画像とを同時に取得することができる。
【0068】
(第2の実施形態)
次に、本発明の構造体の第2の実施形態について、図3を用いて説明する。図3に示す構造体2は、赤外光光電変換素子300上に、カラーフィルタ500が配置されている点が第1の実施形態の構造体と相違している。
【0069】
カラーフィルタ500としては、赤色画素、青色画素、緑色画素、シアン色画素、マゼンタ色画素、イエロー画素などの着色画素を1色以上有するフィルタが挙げられる。カラーフィルタの具体例としては、赤色画素、青色画素および緑色画素を少なくとも有するフィルタや、シアン色画素、マゼンタ色画素およびイエロー画素を少なくとも有するフィルタなどが挙げられる。カラーフィルタは、有彩色着色剤を含む着色組成物を用いて製造できる。また、カラーフィルタは、これらの着色画素以外の画素を更に有していてもよい。着色画素以外の画素としては、透明(白色)画素などが挙げられる。カラーフィルタ500における各画素の配列は、公知の単板式固体撮像素子に用いられているカラーフィルタ配列(ベイヤー配列や縦ストライプ、横ストライプ等)を採用することができる。
【0070】
なお、図3では、カラーフィルタ500は3種類の画素500a、500b、500cを有している。たとえば、画素500aを赤色画素、500bを青色画素、500cを緑色画素とする態様が一例として挙げられる。また、図3では、カラーフィルタは3種類の画素を有しているが、画素の種類は2種以下とすることもでき、4種以上とすることもできる。
【0071】
また、図示しないが、カラーフィルタ500の各画素上面にはマイクロレンズが形成されていることも好ましい。各画素上面にマイクロレンズを形成する場合は、各画素の表面にマイクロレンズが直接形成されていてもよく、中間層が間に介在していてもよい。
【0072】
この実施形態において、光学フィルタ400は、例えば波長450~600nmの範囲の光の透過率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。また、光学フィルタ400は、赤色の波長域の光の少なくとも一部と、緑色の波長域の光の少なくとも一部と、青色の波長域の光の少なくとも一部とを含む可視光の透過率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。ここで、赤色の波長域の光とは、一般的に波長550~650nmの範囲の光を示し、緑色の波長域の光とは、一般的に波長450~610nmまでの範囲の光を示し、青色の波長域の光とは、一般的に波長400~520nmの範囲の光を示す。また、赤外光光電変換素子300が感度を有する波長の少なくとも一部の波長の光の透過率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
【0073】
なお、図3では、赤外光光電変換素子300上にカラーフィルタ500が設けられているが、赤外光光電変換素子300とカラーフィルタ500との積層順序を入れ替えてもよい。また、図3では赤外光光電変換素子300とカラーフィルタ500とが接しているが、両者の間に中間層が配置されていてもよい。
【0074】
図3に示す構造体を光センサなどに組み込むことで、鮮明なカラー画像と赤外光画像とを同時に取得することができる。
【0075】
(第3の実施形態)
次に、本発明の構造体の第3の実施形態について、図4を用いて説明する。
【0076】
図4に示す構造体3においては、支持体100上に赤外光光電変換素子300が設けられている。支持体100および赤外光光電変換素子300については、第1の実施形態で説明したものが挙げられる。なお、図4においては、可視光光電変換素子250が赤外光光電変換素子300よりも入射光側に設けられているので、赤外光光電変換素子300は可視域の波長の光の透過性については特に限定されない。例えば、赤外光光電変換素子300の可視域の波長(好ましくは波長400~650nm)の光の透過率は50%未満であってもよく、50%以上であってもよい。一方、可視光光電変換素子250と赤外光光電変換素子300との積層順序を入れ替えた場合には、赤外光光電変換素子300については、可視域の波長(好ましくは波長400~650nm)の光の透過率が高いことが好ましい。例えば、赤外光光電変換素子300については、可視域の波長(好ましくは波長400~650nm)の光の透過率が50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、75%以上であることがさらに好ましい。
【0077】
図4において、赤外光光電変換素子300上には、可視域の波長のうち、一部の波長の光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する光電変換材料を含む可視光光電変換層を含む可視光光電変換素子250が複数積層している。この実施形態では、可視光光電変換素子250a~250cの3種の素子が積層している。この場合、吸収する光の波長範囲が異なるものが用いられる。例えば、可視光光電変換素子250として、赤色の光を透過する可視光光電変換素子(以下、赤色光電変換素子ともいう)と、緑色の光を透過する可視光光電変換素子(以下、緑色光電変換素子ともいう)と、青色の光を透過する可視光光電変換素子(以下、青色光電変換素子ともいう)とをそれぞれ積層した態様が挙げられる。また、複数の可視光光電変換素子250a~250cは、信号処理時の負荷低減という理由からより長波側の光を透過させる可視光光電変換素子が入射光側に配置されていることが好ましい。例えば、可視光光電変換素子250として、赤色光電変換素子と、緑色光電変換素子と、青色光電変換素子とを用いた場合、符号250aが赤色光電変換素子で、符号250bが緑色光電変換素子で、符号250cが青色光電変換素子であることが好ましい。
【0078】
図4において、可視光光電変換素子250の上には、光学フィルタ400が設けられている。なお、図3においても、赤外光光電変換素子300の上方に距離を置いて光学フィルタ400が設けられているが、入射光側最表層の可視光光電変換素子250cの表面に光学フィルタ400が設けられていてもよい。また、可視光光電変換素子250cと光学フィルタ400との間に中間層が設けられていてもよい。
【0079】
図4では、可視光光電変換素子250の積層数が3層であるが、1層であってもよく、2層であってもよく、4層以上であってもよい。
【0080】
(第4の実施形態)
次に、本発明の構造体の第4の実施形態について、図5を用いて説明する。
【0081】
図5に示す構造体4においては、支持体100上に可視光光電変換素子200が設けられている。また、可視光光電変換素子200上には、赤外光光電変換素子300が設けられている。
支持体100、可視光光電変換素子200および赤外光光電変換素子300については、第1の実施形態の項で説明した支持体100、可視光光電変換素子200および赤外光光電変換素子300と同様の構成が適用され、好ましい態様も同様である。
【0082】
また、赤外光光電変換素子300上には、可視域の波長のうち、一部の波長の光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する光電変換材料を含む可視光光電変換層を含む可視光光電変換素子250dが設けられている。また、可視光光電変換素子250d上には、カラーフィルタ501が設けられている。
【0083】
カラーフィルタ501としては、赤色画素、青色画素、緑色画素、シアン色画素、マゼンタ色画素、イエロー画素などの着色画素を1色以上有するフィルタが挙げられる。図5では、カラーフィルタ501は、2種の異なる種類の画素501a、501bを有している。図5に示す構造体においては、画素501aと、501bと、可視光光電変換素子250dとは可視域の光のうち、それぞれ異なる色の光を透過するものであることが好ましい。例えば、画素501aが赤色画素、501bが青色画素、可視光光電変換素子250dが緑色光電変換素子とする構成が好ましい一例として挙げられる。この態様によれば、カラーフィルタ方式では感度が小さくなる傾向にある緑色画素を高感度で取得することができ、より鮮明な画像が得られやすい。
【0084】
そして、カラーフィルタ501上には、光学フィルタ400が設けられている。なお、図5においても、カラーフィルタ501の上方に距離を置いて光学フィルタ400が設けられているが、カラーフィルタ501の表面に光学フィルタ400が設けられていてもよい。また、カラーフィルタ501と光学フィルタ400との間に中間層が設けられていてもよい。
【0085】
なお、図5では、カラーフィルタは2種類の画素を有しているが、画素の種類は1種とすることもでき、3種以上とすることもできる。また、この実施形態において、可視光光電変換素子は1層のみであるが、2層以上とすることもできる。2層以上とする場合、それぞれの可視光光電変換素子は異なる色の光を透過するものであることが好ましい。
また、図5に示す構造体において、可視光光電変換素子200と赤外光光電変換素子300との積層順序、赤外光光電変換素子300と可視光光電変換素子250dとの積層順序、それぞれを入れ替えてもよい。また、入射光側から順に光学フィルタ400、赤外光光電変換素子300、カラーフィルタ501、可視光光電変換素子250d、可視光光電変換素子200、支持体100の順に配置されていてもよい。また、入射光側から順に光学フィルタ400、赤外光光電変換素子300、カラーフィルタ501、可視光光電変換素子200、可視光光電変換素子250d、支持体100の順に配置されていてもよい。
【0086】
<光センサ>
本発明の光センサは、本発明の構造体を有する。光センサとしては、固体撮像素子などが挙げられる。本発明の光センサの構成としては、本発明の構造体を有する構成であり、光センサとして機能する構成であれば特に限定されない。本発明の構造体が組み込まれた光センサは、生体認証用途、監視用途、モバイル用途、自動車用途、農業用途、医療用途、距離計測用途、ジェスチャー認識用途などの用途に好ましく用いることができる。
【0087】
<画像表示装置>
本発明の構造体は、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置などの画像表示装置に用いることもできる。画像表示装置の定義や詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木昭夫著、(株)工業調査会、1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田龍男編集、(株)工業調査会、1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。
【0088】
画像表示装置は、白色有機EL素子を有するものであってもよい。白色有機EL素子としては、タンデム構造であることが好ましい。有機EL素子のタンデム構造については、特開2003-045676号公報、三上明義監修、「有機EL技術開発の最前線-高輝度・高精度・長寿命化・ノウハウ集-」、技術情報協会、326-328ページ、2008年などに記載されている。有機EL素子が発光する白色光のスペクトルは、青色領域、緑色領域及び黄色領域に強い極大発光ピークを有するものが好ましい。これらの発光ピークに加え更に赤色領域に極大発光ピークを有するものがより好ましい。
【実施例
【0089】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0090】
以下の実施例および比較例で用いた素材は以下の通りである。以下において、HOMOは最高被占軌道の略語であり、LUMOは最低空軌道の略語であり、λmaxは極大吸収波長の略語であり、Mwは重量平均分子量の略語である。
【0091】
(p型半導体)
IR-p1:下記構造の化合物(LUMOのエネルギー準位=-3.5eV、HOMOのエネルギー準位=-5.2eV、λmax=830nm)
【化2】
【0092】
IR-p2:下記構造の化合物(LUMOのエネルギー準位=-3.4eV、HOMOのエネルギー準位=-5.3eV、λmax=830nm)
【化3】
【0093】
IR-p3:下記構造の化合物(LUMOのエネルギー準位=-3.0eV、HOMOのエネルギー準位=-4.0eV、λmax=1240nm)
【化4】
【0094】
IR-p4:下記構造の化合物(LUMOのエネルギー準位=-2.7eV、HOMOのエネルギー準位=-5.1eV、λmax=516nm)
【化5】
【0095】
Adjuvant-p1:下記構造の化合物(LUMOのエネルギー準位=-1.8eV、HOMOのエネルギー準位=-5.2eV、λmax=380nm)
【化6】
【0096】
Adjuvant-p2:下記構造の化合物(LUMOのエネルギー準位=-1.4eV、HOMOのエネルギー準位=-5.0eV、λmax=340nm)
【化7】
【0097】
(n型半導体)
IR-n1:下記構造の化合物(LUMOのエネルギー準位=-4.1eV、HOMOのエネルギー準位=-5.4eV、λmax=950nm)
【化8】
【0098】
IR-n2:下記構造の化合物(LUMOのエネルギー準位=-3.8eV、HOMOのエネルギー準位=-4.8eV、λmax=1300nm)
【化9】
【0099】
Adjuvant-n1:下記構造の化合物(PC60BM(フェニルC61酪酸メチルエステル)、LUMOのエネルギー準位=-3.8eV、HOMOのエネルギー準位=-6.1eV、λmax=340nm)
【化10】
【0100】
Adjuvant-n2:下記構造の化合物(LUMOのエネルギー準位=-4.0eV、HOMOのエネルギー準位=-7.7eV、λmax=340nm)
【化11】
【0101】
(樹脂)
P-1:下記構造の樹脂(Mw=10000)
P-2:下記構造の樹脂(Mw=10000)
【化12】
(重合開始剤)
I-1:IRGACURE-OXE01(BASF社製)
【0102】
<光学フィルタの作製>
(IRC-1)
ARTON F4520(JSR(株)製、ノルボルネン樹脂)の100質量部、紫外線吸収剤として下記構造の化合物(u-1)の0.10質量部、赤外線吸収剤として下記構造の化合物(a-1)の0.03質量部、下記構造の化合物(a-2)の0.03質量部、下記構造の化合物(a-3)の0.03質量部、ならびに塩化メチレンを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を得た。次いで、得られた溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mmの透明樹脂製基板を得た。
【0103】
【化13】
【化14】
【0104】
次に、得られた透明樹脂製基板の片面に、下記組成の組成物(1)をバーコーターで塗布し、オーブン中70℃で2分間加熱し、溶剤を揮発除去した。この際、乾燥後の厚みが2μmとなるように、バーコーターの塗布条件を調整した。次に、コンベア式露光機を用いて露光(露光量500mJ/cm2,200mW)を行い、組成物(1)を硬化させ、透明樹脂製基板上に樹脂層を形成した。同様に、透明樹脂製基板のもう一方の面にも組成物(1)からなる樹脂層を形成して基材を得た。
【0105】
組成物(1):トリシクロデカンジメタノールアクリレートの60質量部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの40質量部と、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの5質量部とを混合し、メチルエチルケトンを加えて固形分濃度30質量%に調整した。
【0106】
続いて、得られた基材の片面に誘電体多層膜Iを形成し、光学フィルタ(IRC-1)を得た。下記表に誘電体多層膜Iの膜構成を示す。なお、層1が最外層である。
【0107】
【表1】
【0108】
(IRC-2)
ARTON F4520(JSR(株)製、ノルボルネン樹脂)の100質量部に塩化メチレンを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を得た。次いで、得られた溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mmの透明樹脂製基板を得た。この透明樹脂製基板を用いてIRC-1と同様の方法で樹脂層、誘電体多層膜IIを形成して光学フィルタ(IRC-2)を製造した。下記表に誘電体多層膜IIの膜構成を示す。なお、層1が最外層である。
【表2】
【0109】
(IRC-3)
ARTON F4520(JSR(株)製、ノルボルネン樹脂)の100質量部に塩化メチレンを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を得た。次いで、得られた溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mmの透明樹脂製基板を得た。この透明樹脂製基板を用いてIRC-1と同様の方法で樹脂層、誘電体多層膜IIIを形成して光学フィルタ(IRC-3)を製造した。下記表に誘電体多層膜IIIの膜構成を示す。なお、層1が最外層である。
【表3】
【0110】
(IRC-4)
ARTON F4520(JSR(株)製、ノルボルネン樹脂)の100質量部に塩化メチレンを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を得た。次いで、得られた溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mmの透明樹脂製基板を得た。この透明樹脂製基板を用いてIRC-1と同様の方法で樹脂層、誘電体多層膜IVを形成して光学フィルタ(IRC-4)を製造した。下記表に誘電体多層膜IVの膜構成を示す。なお、層1が最外層である。
【表4】
【0111】
(IRC-1n)
ARTON F4520(JSR(株)製、ノルボルネン樹脂)の100質量部に塩化メチレンを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を得た。次いで、得られた溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mmの透明樹脂製基板を得た。この透明樹脂製基板を用いてIRC-1と同様の方法で誘電体多層膜Iの形成して光学フィルタ(IRC-1n)を製造した。
【0112】
<構造体の製造>
(実施例1)
シリコンフォトダイオードが形成されたシリコン基板上に、スパッタ法によりアモルファス性酸化インジウム錫(ITO)膜を30nm成膜して下部電極を形成した。次に、下部電極上に、p型半導体(IR-p1)とn型半導体(Adjuvant-n1)との混合物(質量比1:1)からなる光電変換材料を100質量部、溶剤としてオルトジクロロベンゼンを400質量部とからなる光電変換層形成用組成物を塗布し、150℃で300秒乾燥して厚さ0.2μmの光電変換層を形成した。次に、この光電変換層上にスパッタ法によりアモルファス性ITOを5nm成膜して上部電極を形成して、赤外光光電変換素子を作製した。
【0113】
次に、この赤外光光電変換素子上に、Red組成物を製膜後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコート法で塗布した。次いで、ホットプレートを用い、100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を用い、1000mJ/cm2の露光量にて、2μm四方のパターンを有するマスクを介して露光した。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにて純水でリンスを行った。次いで、ホットプレートを用い、200℃で5分間加熱することで、近赤外線カットフィルタのベイヤーパターン上にRed組成物をパターニングした。同様にGreen組成物、Blue組成物を順次パターニングし、赤、緑および青の着色パターンを形成してカラーフィルタを形成した。
次に、このカラーフィルタ上に光学フィルタ(IRC-1)が位置するようにパッケージングを施し実施例1の構造体を製造した。
【0114】
Red組成物、Green組成物、Blue組成物は以下の通りである。
【0115】
(Red組成物)
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Red組成物を調製した。
Red顔料分散液 ・・・51.7質量部
樹脂1 ・・・0.6質量部
重合性モノマー4 ・・・0.6質量部
光重合開始剤(IRGACURE-OXE01、BASF社製) ・・・0.4質量部
界面活性剤1 ・・・4.2質量部
紫外線吸収剤(UV-503、大東化学(株)製) ・・・0.3質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA) ・・・42.6質量部
【0116】
(Green組成物)
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Green組成物を調製した。
Green顔料分散液 ・・・73.7質量部
樹脂1 ・・・0.3質量部
重合性モノマー1 ・・・1.2質量部
光重合開始剤(IRGACURE-OXE01、BASF社製) ・・・0.6質量部
界面活性剤1 ・・・4.2質量部
紫外線吸収剤(UV-503、大東化学(株)製) ・・・0.5質量部
PGMEA ・・・19.5質量部
【0117】
(Blue組成物)
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Blue組成物を調製した。
Blue顔料分散液 ・・・44.9質量部
樹脂1 ・・・2.1質量部
重合性モノマー1 ・・・1.5質量部
重合性モノマー4 ・・・0.7質量部
光重合開始剤(IRGACURE-OXE01、BASF社製) ・・・0.8質量部
界面活性剤1 ・・・4.2質量部
紫外線吸収剤(UV-503、大東化学(株)製) ・・・0.3質量部
PGMEA ・・・45.8質量部
【0118】
Red組成物、Green組成物、Blue組成物に使用した原料は以下の通りである。
【0119】
・Red顔料分散液
C.I.Pigment Red 254を9.6質量部、C.I.Pigment Yellow 139を4.3質量部、分散剤(Disperbyk-161、BYKChemie社製)を6.8質量部、PGMEAを79.3質量部とからなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合および分散して、顔料分散液を調製した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cm3の圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、Red顔料分散液を得た。
【0120】
・Green顔料分散液
C.I.Pigment Green 36を6.4質量部、C.I.Pigment Yellow 150を5.3質量部、分散剤(Disperbyk-161、BYKChemie社製)を5.2質量部、PGMEAを83.1質量部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合および分散して、顔料分散液を調製した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cm3の圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、Green顔料分散液を得た。
【0121】
・Blue顔料分散液
C.I.Pigment Blue 15:6を9.7質量部、C.I.Pigment Violet 23を2.4質量部、分散剤(Disperbyk-161、BYKChemie社製)を5.5質量部、PGMEAを82.4質量部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合および分散して、顔料分散液を調製した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cm3の圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、Blue顔料分散液を得た。
【0122】
・重合性モノマー1:KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)
・重合性モノマー4:下記構造の化合物
【化15】
・重合性モノマー5:下記構造の化合物(左側化合物と右側化合物とのモル比が7:3の混合物)
【化16】
【0123】
樹脂1:下記構造の樹脂。(主鎖に付記した数値はモル比である。Mw=10000)
【化17】
【0124】
・界面活性剤1:下記混合物(Mw=14000)の1質量%PGMEA溶液。下記の式中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
【化18】
【0125】
(実施例2~14、22)
光電変換層形成用組成物として下記表5に記載されたものを用い、光学フィルタとして下記表6に記載されたものを用いた以外は実施例1と同様にして構造体を製造した。なお、実施例3においては、光電変換材料として、p型半導体(IR-p1)とp型半導体(IR-p2)とn型半導体(Adjuvant-n1)との混合物(質量比0.5:0.5:1.0)を用いた。実施例5においては、光電変換材料として、p型半導体(IR-p1)とn型半導体(Adjuvant-n1)とn型半導体(Adjuvant-n2)との混合物(質量比1:0.5:0.5)を用いた。実施例8においては、光電変換材料として、p型半導体(Adjuvant-p1)とp型半導体(Adjuvant-p2)とn型半導体(IR-n1)との混合物(質量比0.5:0.5:1.0)を用いた。実施例10においては、光電変換材料として、p型半導体(Adjuvant-p1)とn型半導体(IR-n1)とn型半導体(IR-n2)との混合物(質量比1.0:0.5:0.5)を用いた。実施例12においては、光電変換材料として、p型半導体(IR-p1)とp型半導体(IR-p2)とn型半導体(IR-n1)とn型半導体(IR-n2)との混合物(質量比0.5:0.5:0.5:0.5)を用いた。
【0126】
【表5】
【0127】
(実施例15)
光電変換層の厚さを0.1μmとした以外は実施例1と同様にして構造体を製造した。
【0128】
(実施例16)
光電変換層の厚さを1μmとした以外は実施例1と同様にして構造体を製造した。
【0129】
(実施例17)
シリコンフォトダイオードが形成されたシリコン基板上に、スパッタ法によりアモルファス性酸化インジウム錫(ITO)膜を30nm成膜して下部電極を形成した。次に、下部電極上に、光電変換材料として、p型半導体(IR-p1)とn型半導体(Adjuvant-n1)との混合物(質量比1:1)をアルミニウムポート上に設置し、真空加熱することで蒸着し、厚さ0.2μmの光電変換層を形成した。次に、この光電変換層上にスパッタ法によりアモルファス性ITOを5nm成膜して上部電極を形成して、赤外光光電変換素子を作製した。次に、この赤外光光電変換素子上に、実施例1と同様の方法で光学フィルタ(IRC-1)を設置して実施例17の構造体を製造した。
【0130】
(実施例18)
実施例1において、下部電極を形成したのち、PEDOT:PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4-スチレンスルホン酸))をスピンコート法により30nm成膜して正孔輸送層を形成した以外は実施例1と同様にして赤外光光電変換素子を作製した。次に、この赤外光光電変換素子上に、実施例1と同様の方法で光学フィルタ(IRC-1)を設置して実施例18の構造体を製造した。
【0131】
(実施例19)
実施例1において、光電変換層を形成したのち、光電変換層上にZnO2をスパッタ法にて7.5nm成膜して電子輸送層を形成した以外は実施例1と同様にして赤外光光電変換素子を作製した。次に、この赤外光光電変換素子上に、実施例1と同様の方法で光学フィルタ(IRC-1)を設置して実施例19の構造体を製造した。
【0132】
(実施例20)
シリコンフォトダイオードが形成されたシリコン基板上に、スパッタ法によりアモルファス性酸化インジウム錫(ITO)膜を30nm成膜して下部電極を形成した。次に、下部電極上に、PEDOT:PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4-スチレンスルホン酸))をスピンコート法により30nm成膜して正孔輸送層を形成した。ついで、正孔輸送層上に、光電変換材料として、p型半導体(IR-p1)とn型半導体(Adjuvant-n1)との混合物(質量比1:1)を100質量部、溶剤としてオルトジクロロベンゼンを400質量部含む光電変換層形成用組成物を塗布し、150℃で300秒乾燥して厚さ0.2μmの光電変換層を形成した。次に、この光電変換層上にZnO2をスパッタ法にて7.5nm成膜して電子輸送層を形成した。ついで、この電子輸送層上にスパッタ法によりアモルファス性ITOを5nm成膜して上部電極を形成して、赤外光光電変換素子を作製した。次に、この赤外光光電変換素子上に、実施例1と同様の方法で光学フィルタ(IRC-1)を設置して実施例20の構造体を製造した。
【0133】
(実施例21)
光学フィルタ(IRC-1)のかわりに光学フィルタ(IRC-1n)を設置した以外は実施例1と同様にして実施例21の構造体を製造した。
【0134】
(比較例1)
光学フィルタを用いなかった以外は実施例1と同様にして比較例1の構造体を製造した。
【0135】
<評価>
(可視光S/N)
各実施例および比較例の構造体からそれぞれ赤外光光電変換素子を除いた構造体のSNR10を測定し、その値を100とした際の各構造体の相対的なSNR10である「RS」を比較した。SNR10とは、ホワイトバランス処理後の最低被写体照度の指標のことでありこの値が小さいほどノイズが低いことを意味する。SNR10の計算手順については、特開2013-015817号公報の段落番号0405~0426に記載の方法に準拠した。
5:RS>90
4:90≧RS>80
3:80≧RS>60
2:60≧RS>30
1:30≧RS
【0136】
(赤外光S/N)
暗室中に、400~2000nmの範囲で均等な光拡散能を持つ白色拡散板を2つ設置する。片方に、AM1.5G条件の300~400nm域と800nmより長波域を遮蔽した光を当て、もう片方に1.0μW/cm2の発光強度と下記表に記載の波長を有する赤外発光ダイオード光源から発した光を当てた。その後、構造体を用いて両拡散板を撮影しながら、AM1.5G条件からスペクトル形状を変えないまま減光板を挟むことで発光強度を下げた。両拡散板の信号強度を比較し、AM1.5G側の強度Ivが赤外発光ダイオード側の強度Iの1/10になった減光率を記録した。
5:減光率0%で達した
4:減光率90%で達した
3:減光率99%で達した
2:減光率99.9%で達した
1:減光率99.9%でも達さない
【0137】
(耐熱性)
得られた構造体を、120℃に設定した高温庫に1000時間保管し、耐熱性試験を実施した。
耐熱性試験前後の構造体について、波長400~1300nmの光の透過率T%を測定し、その差分であるΔT%=|T%(耐熱性試験前)-T%(耐熱性試験後)|を求めて耐熱性を評価した。
3:ΔT%<5%
2:5%≦ΔT%<10%
1:10%≦ΔT%
【0138】
(耐光性)
得られた構造体を、耐光試験機(照度1万Lx、温度50℃、湿度50%)に6ヶ月入れ、耐光性試験を実施した。
耐光性試験前後の構造体について、波長400~1300nmの光の透過率T%を測定し、その差分であるΔT%=|T%(耐光性試験前)-T%(耐光性試験後)|を求めて耐光性を評価した。
3:ΔT%<5%
2:5%≦ΔT%<10%
1:10%≦ΔT%
【0139】
【表6】
【0140】
実施例の構造体は、耐光性が良好で、かつ、可視光および赤外光の検出精度に優れていた。これに対し、比較例の構造体は耐光性が不十分であった。
【符号の説明】
【0141】
1、2、3、4:構造体
100:支持体
200、250、250a~250d:可視光光電変換素子
300:赤外光光電変換素子
310:赤外光光電変換層
320:上部電極
330:下部電極
400:光学フィルタ
500、501:カラーフィルタ
500a、500b、500c、501a、501b:画素
図1
図2
図3
図4
図5