(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】低温球
(51)【国際特許分類】
F17C 3/04 20060101AFI20220928BHJP
F17C 3/08 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
F17C3/04 Z
F17C3/08
(21)【出願番号】P 2020557129
(86)(22)【出願日】2019-01-07
(86)【国際出願番号】 US2019012553
(87)【国際公開番号】W WO2019139853
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2022-01-06
(32)【優先日】2018-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520244016
【氏名又は名称】クライオポート,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】ボーリンガー,ブレット
(72)【発明者】
【氏名】メリキャン,ホブハンネス
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-517007(JP,A)
【文献】米国特許第04919300(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0166326(US,A1)
【文献】特表2014-527610(JP,A)
【文献】特開平09-329297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 3/04
F17C 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲温度より低い温度で液体を貯蔵するための球状デュワーであって、
上部と、
前記上部より重い底部であって、前記
球状デュワーが筐体の向きに関係なく筐体の中で、傾斜、回転、または角度付けされたときに前記
球状デュワーを直立位置で安定させるように構成されている底部と、
周囲温度より低い温度で液体を保持するように構成されたペイロード領域を形成する内壁と、
外壁であって、前記外壁および前記内壁は、前記ペイロード領域の液体へのアクセスを可能にする開口部を有する、外壁と、
前記内壁と前記外壁との間に真空断熱を生成するように構成された真空ポートと、
蒸気プラグであって、前記蒸気プラグは、ハンドルと、前記開口部に挿入されるネックと、ロックデバイスと、を有し、前記ロックデバイスは、前記蒸気プラグを所定の位置に固定す
る、蒸気プラグと、
前記蒸気プラグの前記ネック内に埋め込まれた電子熱電対と、を備え、
前記蒸気プラグと前記ペイロード領域の内側部分との間に、ガスを逃がすための間隙が設けられ、
前記ロックデバイスは、前記ネックの外周内に埋め込まれた1つまたは複数の磁石を含み、
前記ネックの外周内に埋め込まれた1つまたは複数の磁石は、前記球状デュワーの内壁内の1つまたは複数の他の磁石と
連動され、
前記蒸気プラグが前記球状デュワー内の特定の位置で回されると、前記ネックの前記磁石と前記球状デュワーの前記磁石とは前記球状デュワー内の前記蒸気プラグをロックし、前記蒸気プラグが前記蒸気プラグの軸を中心に別の位置まで回転すると、前記ネックの前記磁石と前記球状デュワーの前記磁石との反対の極性により前記蒸気プラグは前記球状デュワーから押し出される、球状デュワー。
【請求項2】
前記蒸気プラグのネックの外周内に埋め込まれた1つまたは複数の磁石と、前記球状デュワーの内壁内の1つまたは複数の他の磁石とは、反対の極性を有する、請求項1に記載の球状デュワー。
【請求項3】
前記蒸気プラグのネックが前記開口部に挿入されるとき、前記ロックデバイスは、前記蒸気プラグを所定の位置にロックするように構成され、前記球状デュワーが異なる方向に配向または回転されるとき、前記ロックデバイスは、前記蒸気プラグが脱落するのを防止するように構成される、請求項1に記載の球状デュワー。
【請求項4】
前記球状デュワーは、前記底部に、重心または質量中心を有する、請求項1に記載の球状デュワー。
【請求項5】
周囲温度より低い温度で液体を貯蔵するための球状デュワーであって、
上部と、
前記上部より重い底部であって、前記
球状デュワーが筐体の向きに関係なく筐体の中で、傾斜、回転、または角度付けされたときに前記
球状デュワーを直立位置で安定させるように構成されている底部と、
周囲温度より低い温度で液体を保持するように構成されたペイロード領域を形成する内壁と、
外壁であって、前記外壁および前記内壁は、前記ペイロード領域の液体へのアクセスを可能にする開口部を有する、外壁と、
前記内壁と前記外壁との間に真空断熱を生成するように構成された真空ポートと、
蒸気プラグであって、前記蒸気プラグは、ハンドルと、前記開口部に挿入されるネックと、ロックデバイスと、を有し、前記ロックデバイスは、前記蒸気プラグを所定の位置に固定す
る、蒸気プラグと、
前記蒸気プラグの前記ネック内に埋め込まれた電子熱電対と、を備え、
前記蒸気プラグと前記ペイロード領域の内側部分との間に、ガスを逃がすための間隙が設けられ、
前記蒸気プラグの前記ネックは、蛇行経路を含む波形の部分を有し、前記蛇行経路は前記内壁を前記外壁に接続する、球状デュワー。
【請求項6】
前記蒸気プラグの前記ネックの高さは、直線ネックチューブの高さ未満である、請求項5に記載の球状デュワー。
【請求項7】
周囲温度より低い温度で液体を貯蔵するための球状デュワーであって、
上部と、
前記上部より重い底部であって、前記
球状デュワーが筐体の向きに関係なく筐体の中で、傾斜、回転、または角度付けされたときに前記
球状デュワーを直立位置で安定させるように構成されている底部と、
周囲温度より低い温度で液体を保持するように構成されたペイロード領域を形成する内壁と、
外壁であって、前記外壁および前記内壁は、前記ペイロード領域の液体へのアクセスを可能にする開口部を有する、外壁と、
前記内壁と前記外壁との間に真空断熱を生成するように構成された真空ポートと、
蒸気プラグであって、前記蒸気プラグは、ハンドルと、前記開口部に挿入されるネックと、ロックデバイスと、を有し、前記ロックデバイスは、前記蒸気プラグを所定の位置に固定し、前記球状デュワーが異なる方向に配向または回転されるときに前記蒸気プラグが抜け落ちるのを防止す
る、蒸気プラグと、
前記蒸気プラグの前記ネック内に埋め込まれた電子熱電対と、を備え、
前記蒸気プラグと前記ペイロード領域の内側部分との間に、ガスを逃がすための間隙が設けられ、
前記ロックデバイスは、前記ネックの外周内に埋め込まれた1つまたは複数の磁石を含み、
前記ネックの外周内に埋め込まれた1つまたは複数の磁石は、前記球状デュワーの内壁内の1つまたは複数の他の磁石と
連動され、
前記蒸気プラグが前記球状デュワー内の特定の位置で回されると、前記ネックの前記磁石と前記球状デュワーの前記磁石とは前記球状デュワー内の前記蒸気プラグをロックし、前記蒸気プラグが前記蒸気プラグの軸を中心に別の位置まで回転すると、前記ネックの前記磁石と前記球状デュワーの前記磁石との反対の極性により前記蒸気プラグは前記球状デュワーから押し出される、球状デュワー。
【請求項8】
前記蒸気プラグのネックの外周内に埋め込まれた1つまたは複数の磁石と、前記球状デュワーの内壁内の1つまたは複数の他の磁石とは、反対の極性を有
する、請求項7に記載の球状デュワー。
【請求項9】
前記球状デュワーは、前記底部に、重心または質量中心を有する、請求項7に記載の球状デュワー。
【請求項10】
周囲温度より低い温度で液体を貯蔵するための球状デュワーであって、
上部と、
前記上部より重い底部であって、前記
球状デュワーが筐体の向きに関係なく筐体の中で、傾斜、回転、または角度付けされたときに前記
球状デュワーを直立位置で安定させるように構成されている底部と、
周囲温度より低い温度で液体を保持するように構成されたペイロード領域を形成する内壁と、
外壁であって、前記外壁および前記内壁は、前記ペイロード領域の液体へのアクセスを可能にする開口部を有する、外壁と、
前記内壁と前記外壁との間に真空断熱を生成するように構成された真空ポートと、
蒸気プラグであって、前記蒸気プラグは、ハンドルと、前記開口部に挿入されるネックと、ロックデバイスと、を有し、前記ロックデバイスは、前記蒸気プラグを所定の位置に固定し、前記球状デュワーが異なる方向に配向または回転されるときに前記蒸気プラグが抜け落ちるのを防止す
る、蒸気プラグと、
前記蒸気プラグの前記ネック内に埋め込まれた電子熱電対と、を備え、
前記蒸気プラグと前記ペイロード領域の内側部分との間に、ガスを逃がすための間隙が設けられ、
蒸気プラグの前記ネックは、蛇行経路を含む波形の部分を有し、前記蛇行経路は前記内壁を前記外壁に接続する、球状デュワー。
【請求項11】
前記蒸気プラグの前記ネックの高さは、直線ネックチューブの高さ未満である、請求項10に記載の球状デュワー。
【請求項12】
前記蒸気プラグは前記開口部から取り外し可能である、請求項10に記載の球状デュワー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0002]本明細書は、周囲温度よりも低い液体または気体を低温で貯蔵、輸送および/または送るためのシステム、デバイスまたは装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[0004]実験室の技術者、科学者、医師や看護師等の医療専門家、およびその他の技術者は、液体または気体を低温(cryogenic temperatures)で貯蔵し、病院、実験室、研究施設等の様々な施設に輸送し得る。液体または気体を低温で輸送する場合、技術者および/または専門家は、液体または気体を冷蔵温度または低温に保持するために使用されるデュワー(dewar)に液体または気体を貯蔵する。デュワーは、開いたバケツ、フラスコ、および/または自己加圧タンクを含むいくつかの異なる形態をとり得る。デュワーは、壁の間に真空を備えた二重壁の金属製またはガラス製のフラスコであってもよい。これは壁の間の断熱を提供する。
【0003】
[0005]技術者または専門家は、デュワーに液体または気体を充填し、輸送用材料を使用してデュワーを梱包し得る。次いで、技術者または専門家が、デュワーを含むパッケージを荷送人に提供し、開梱される最終的な目的地に内容物が運ばれる。但し、液体または気体はゆっくりと沸騰するため、デュワーはその上部に、気体を逃がすように設計された開口部を有し得る。また、輸送中にデュワーが傾いたり横転したりして、デュワーから液体や気体が流出し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0006]したがって、デュワー内の液体または気体を、輸送中の蒸発および流出から保護するためのシステム、デバイスまたは装置が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0007]一般に、本明細書で説明される主題の一態様は、低温貯蔵システムで具体化される。低温貯蔵システム(「貯蔵システム」)は、液体または気体を貯蔵および/または輸送する。貯蔵システムは、筐体と空洞とを有する。貯蔵システムは、筐体の空洞内に位置決めされたデュワーを有する。デュワーは、液体を周囲温度より低く保つように構成されたペイロード領域(payload area)を有する。デュワーは、液体を周囲温度より低く保ち、直立位置で受動的に安定するように構成されている。デュワーは、内壁と外壁とを含んで形成され、ペイロード領域へのアクセスを可能にする開口部を備えている。
【0006】
[0008]これらおよび他の実施形態は、随意的に、以下の特徴の1つまたは複数を含み得る。デュワーは球状であってもよく、デュワーの底部に重心または質量中心を有してもよく、このことは、デュワーが筐体内で傾斜、角度付けまたは回転されるときに、デュワーを受動的に安定させる。デュワーは二重壁フラスコであってもよい。デュワーは球状デュワーであってもよい。球状デュワーは、筐体が回転または傾けられると、筐体内の直立位置に戻るように構成されてもよい。球状デュワーは、底部と上部とを有していてもよい。底部は、傾斜または回転したときに球状デュワーが直立したままであるか、または安定するように、上部よりも重くてもよい。筐体は立方体の形状であってもよく、複数の側面を有していてもよい。筐体は、各側面に円形の開口部を有していてもよく、筐体内にデュワーが配置された場合にデュワーにアクセスすることができる。
【0007】
[0009]貯蔵システムは、取り外し可能な蒸気プラグを有していてもよい。取り外し可能な蒸気プラグは、デュワーの空洞へのアクセスを制限するために、デュワーの開口部に挿入されるように構成され得る。取り外し可能な蒸気プラグは、ハンドル部分およびネックを有していてもよい。貯蔵システムは、温度監視デバイスを有していてもよい。温度監視デバイスは、デュワー内の温度を監視するように構成されてもよく、ネック内に位置決めされてもよい。温度監視デバイスは、電子デバイスと無線で接続するように構成されてもよく、デュワー内の温度を電子デバイスに送信してもよい。
【0008】
[0010]貯蔵システムは、ボール移送デバイスを有していてもよい。ボール移送デバイスは、デュワーと筐体との間に接続されてデュワーと筐体とを連結してもよい。ボール移送デバイスは、デュワーと筐体との間の摩擦を最小限にするように構成されてもよい。
【0009】
[0011]別の態様では、主題は、デュワー用の筐体に具体化される。筐体は、デュワーを受け入れて囲むように構成された空洞を有している。筐体は複数の側面を有する。各側面は、筐体にデュワーを挿入した場合にデュワーへのアクセスを可能とする開口部を有する。筐体はボール移送デバイスを有している。ボール移送デバイスはデュワーに接続され、デュワーと筐体との間の摩擦を最小限に抑えるように構成されている。
【0010】
[0012]本発明の他のシステム、方法、特徴、および利点は、以下の図および詳細な説明を検討すれば当業者には明らかであろう。図示される構成部品は、必ずしも縮尺通りではなく、本発明の重要な特徴をよりよく示すために誇張されている場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】[0013]本発明の一態様による、例示的な低温貯蔵システムを示す。
【
図2】[0014]本発明の一態様による、筐体内に配置された球状デュワーを示す。
【
図3】[0015]本発明の一態様による、筐体内で回転する球状デュワーを示す。
【
図4】[0016]本発明の一態様による、液体または気体を挿入することを可能にする開いた球状デュワーを示す。
【
図5】[0017]本発明の一態様による、
図1の低温貯蔵システムの断面図を示す。
【
図6】[0018]
図6Aは、本発明の一態様によるペイロード領域内の液体または気体を異なる向きで示す。
図6Bは、本発明の一態様によるペイロード領域内の液体または気体を異なる向きで示す。
図6Cは、本発明の一態様によるペイロード領域内の液体または気体を異なる向きで示す。
【
図7】[0019]本発明の一態様による、
図1の低温貯蔵システムの例示的な蒸気プラグである。
【
図8A】[0020]本発明の一態様による、
図1の低温貯蔵システムの例示的な波形ネックチューブである。
【
図8B】[0021]本発明の一態様による、
図1の低温貯蔵システムのデュワーに接続された波形ネックチューブを示す。
【
図9】[0022]本発明の一態様による、
図1の低温貯蔵システムの例示的なボール移送デバイスである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0023]本明細書では、液体窒素などの液体または気体を輸送および貯蔵するためのシステム、装置、およびデバイスが開示される。システム、装置またはデバイスは、液体を貯蔵および輸送する低温貯蔵システムであってもよい。本明細書で説明する主題の特定の実施形態は、以下の利点のうちの1つまたは複数を実現するために実装され得る。
【0013】
[0024]低温貯蔵システムは筐体を有していてもよく、筐体は、低温に耐え得るように、ポリマー材料から作られる。即ち、ポリマー材料は、脆さに対して耐性があり、低温において粉砕の影響を受けにくい。筐体は、液体または気体を含むデュワーを保持するかまたは吊り下げてもよい。さらに、筐体は、デュワーを取り囲んで衝突からデュワーを保護する。筐体は、デュワーを自由に吊り下げたり保持したりし、これにより、デュワーは、筐体の内側に影響を与えることなく筐体内を自由に回転および/または移動し得る。さらに、デュワーは球状であってもよく、受動的な安定性を有する。つまり、デュワーは、開口部の真向かいに位置する重心と、重心の近くのデュワーの底部またはその近くにある質量中心とを有するため、傾けたときに、直立位置または垂直位置に維持されるか、または戻る。筐体内で自由に回転できることと、受動的な安定性を有することとにより、デュワーは筐体の向きに関係なく直立したままになって漏出を防止する。さらに、デュワーを直立させて安定させることにより、低温貯蔵システムはデュワー内の液体の蒸発量を低減する。例えば、低温貯蔵システムは、デュワー内の窒素蒸発率を低下させ、輸送中のデュワーの寿命を延ばす。
【0014】
[0025]他の利点および長所としては、筐体が、デュワーへのアクセスを提供する複数の面を有するため、液体または気体を挿入および/または除去するためのデュワーの開口部への物理的なアクセスが改善されることが含まれる。さらに、デュワーは、デュワー内部の温度を伝達および監視する電子デバイスを備えていてもよく、デュワーが自由に回転するときに筐体とデュワーとの間の摩擦量を減らす接続デバイスを備える。
【0015】
[0026]
図1は、低温貯蔵システム100の斜視図を示し、
図2は、低温貯蔵システム100の断面図を示す。低温貯蔵システム(「貯蔵システム」)100は、筐体102、二重壁フラスコなどのデュワー104、および蒸気プラグ106を含む。筐体102は、三次元(3D)であり、立方体として成形されてもよい。筐体102は、立方体、四面体、十二面体または八面体などの任意のタイプの三次元物体として成形することができ、筐体102が低温で粉砕しないようにポリマー材料から作製してもよい。
【0016】
[0027]筐体102は、複数の側面108または面を有する。側面108は、デュワー104を取り囲むまたは囲う閉じた筐体を形成する。側面108は、他の側面に接続して筐体102を形成し、デュワー104を取り囲む平面または格子状の表面であってもよい。デュワー104が筐体102内に存在するように、デュワー104が筐体102の空洞に挿入または配置される。複数の側部108は、1つまたは複数の締結具を使用して互いにスナップ留めしてもよい。複数の側面108は、例えば、1つまたは複数のコーナー112で一緒にスナップ留めしてもよい。いくつかの実装形態では、筐体は、複数のモジュール部品から形成され得る。複数のモジュール部品を一緒に接続および/または固定して筐体102を形成してもよい。複数の側面は、1つまたは複数の筐体開口部110を有してもよい。1つまたは複数の筐体開口部110は、円形であってもよく、および/またはデュワー開口部と同じ形状に形成されてもよい。1つまたは複数の筐体開口部110により、筐体102内でデュワー104が回転するときにデュワー104へのアクセスがもたらされる。したがって、デュワー104の開口部402は、筐体102の向きに関係なくアクセスすることができる。
【0017】
[0028]例えば、筐体102は、立方体として成形され、6つの側面108を有する。各側面は、コーナー112で少なくとも別の側面に接続される。各側面に、筐体開口部110がある。筐体開口部により、デュワー開口部が筐体102の側面で筐体開口部110と位置合わせされたときに、蒸気プラグ106およびデュワー開口部へのアクセスが可能になる。したがって、デュワーが筐体の空洞内で回転すると、1つまたは複数の筐体開口部110がデュワー開口部と整列するとき、1つまたは複数の筐体開口部110により、蒸気プラグ106およびデュワー開口部へのアクセスがもたらされる。
【0018】
[0029]筐体102は、内部骨格114および外部骨格116を有していてもよい。外側骨格116は、衝突、振動および/または衝撃からデュワー104を保護する。例えば、外部骨格116は、筐体102が出荷または貯蔵されるときに、デュワー104を他のボックスまたはトラックの側面などの他の物体から分離する。内部骨格114は、筐体102内にデュワー104が配置される空洞を形成する。デュワー104を空洞内で回転させることができるように、デュワー104は、内部骨格114の空洞内に吊り下げられ、配置され、または他の方法で配置されてもよい。
【0019】
[0030]貯蔵システム100は、筐体102とデュワー104との間に接続されたボール移送デバイス900を含み得る。ボール移送デバイス900は、筐体102に対するデュワー104の動きを容易にする。ボール移送デバイス900は、筐体102とデュワー104との間にある内部指骨または翼202に位置決めされ、摩擦のない、またはほぼ摩擦のない表面を提供してもよい。ボール移送デバイス900は、デュワー104と筐体102との間の摩擦を最小化または排除し、それにより、デュワー104は、筐体102内で自由に移動または回転することができる。
図9は、ボール移送デバイス900の構造をさらに説明する。
【0020】
[0031]貯蔵システム100は、デュワー104を含む。デュワー104は、二重壁フラスコであってもよく、球状または他の任意の多面体として形作られてもよい。デュワー104は、筐体102の中央空洞内の中央に配置されてもよく、中央空洞内で自由に回転および/または移動し得る。デュワー104は、例えば
図3に示されるように、中心垂直軸線306を中心として方向302、304に、または他の任意の方向に三次元的に回転し得る。
【0021】
[0032]デュワー104は、内壁504、外壁502、および開口部402を有する。例えば
図4に示すように、貯蔵システム100は、開口部402に挿入されていくらかの気体を逃がしながらデュワー104を封止または部分的に封止し得る蒸気プラグ106などのプラグを有していてもよい。開口部402は、デュワー104内にある空洞またはペイロード領域506に繋がる。
図5は、デュワー104の断面図におけるペイロード領域506を示す。デュワー104は、内壁504と外壁502との間に真空を形成して、周囲温度未満で液体または気体を保持または貯蔵し得る。デュワー104は、ポンプアウトポート412を有していてもよい。ポンプアウトポート412は、デュワー104の内壁504と外壁502との間に真空を生成するために使用されてもよく、これによって、内壁504と外壁502との間の空間が完全に排出され得る。
【0022】
[0033]デュワー104は、内壁504と外壁502との間に真空を備えた内壁504および外壁502を有する。外壁502は、液体または気体をペイロード領域506に挿入または配置することを可能にする開口部402を有する。開口部402は、デュワー104が受動的に安定化されるときに開口部402が直立したままであるように、デュワー104の重心または質量中心512の反対側に位置決めされてもよい。開口部402は、デュワー104のペイロード領域506から気体が逃げることを可能にし、デュワー104内における気体膨張を緩和する。
【0023】
[0034]内壁504は、デュワー104内のペイロード領域506を形成および/または囲む。ペイロード領域506は、デュワー104の上部508から底部510まで縦方向に延在するデュワー104内の円筒状の空洞であってもよい。ペイロード領域506は、周囲温度未満の液体または気体を保持または格納する。ペイロード領域506の底部にまたはそれを取り囲んで吸収性材料606が設けられていてもよい。吸収性材料606は、ペイロード領域506内の温度を周囲温度より低く維持することができる。
【0024】
[0035]デュワー104は、上部508および下部510を有する。上部508は、開口部402が配置される場所であり、デュワー104の受動的な安定化のために直立のままである。底部510は、重心または質量中心512を含む。重心または質量中心512がデュワー104の底部510内に配置されているので、デュワー104は、重心または質量中心512の周りで安定し、これによってデュワー104が直立したままになる。筐体102の向きに関係なく、重心または質量中心512の周りにデュワー104を安定させることにより、貯蔵システム100は、液体または気体の蒸発の量および/または速度を低減し、および/または吸収材、例えば、窒素の蒸発速度が低下する。液体もしくは気体および/または吸収材の蒸発の量および/または速度は、例えば
図6A~
図6Cに示されるように、液体または気体602の断面積604a~cの量に基づく。加えて、受動的な安定化を行うことにより、デュワー104は、輸送業者が輸送用コンテナ内の使用可能なスペースまたは空のボリュームに最も適合する筐体102に任意の形状を使用することを可能にする任意の形状の筐体102に封入され得るので、輸送用コンテナ内の輸送密度の量を増加させる。
【0025】
[0036]
図6Aは、デュワー104が直立しているときのデュワー104のペイロード領域506内の液体または気体602および吸収材606を示す。吸収材606は、デュワー104のペイロード領域506の底部内またはその周囲に位置決めされてもよい。ペイロード領域506が直立または垂直であるため、デュワー104が直立している場合、液体または気体602の断面積604aは、直径Dを有する。ペイロード領域506が、例えば
図6Bおよび
図6Cに示されるように、角度付けまたは傾斜された場合、液体または気体602は、ペイロード領域506が直立または垂直である場合の断面積602a、Dよりも大きいD+ΔDの断面積604b~cをそれぞれ有する。ペイロード領域506が傾斜または角度付けされると、断面領域604aの形状は、ペイロード領域506の円筒形の性質により円形から断面領域604b~cの楕円形状に移行する。楕円形の断面積604b~cのサイズは、角度が増加するにつれて増加する。増大した断面積602b~cは、液体または気体602の蒸発の速度および/もしくは量の増大、ならびに/または吸収材606の燃焼の速度または量の増大をもたらす。増大した断面積604b~cは、液体または気体602のより多くをより高温の媒体に曝し、吸収材606が液体または気体602を冷却するためのより速い燃焼速度を引き起こす。さらに、ペイロード領域506が傾けられると、液体および/または気体は、デュワー104の開口部402からこぼれるか、またはそこから逃れ得る。さらに、液体または気体602がこぼれるか、および/または断面積602b~cが増加すると、部分的な真空が生成され、温風が引き込まれて平均温度がさらに上昇し、液体または気体602を冷却する吸収材606の燃焼速度が速くなる。
【0026】
[0037]貯蔵システム100内のデュワー104は、筐体102の向きに関係なくデュワー104を直立位置に維持する受動的な安定化を有するので、デュワー104内のペイロード領域506は、デュワー104が傾けられ、回転され、および/またはそうでなければ角度付けされたときに、直立位置を維持するか、または直立位置に戻る。したがって、貯蔵システム100は、デュワー104が直立位置および/または垂直位置に戻るか、またはそれを維持するように、デュワー104を直立位置に維持すること、および/またはデュワー104を受動的に調整することによって、液体または気体602の蒸発の量および/または速度を低減し、吸収材料606の燃焼速度を低減する。さらに、窒素であり得る吸収材料606の燃焼速度を低下させることにより、デュワー104の動的保持時間が増加する。動的保持時間は、デュワー104が輸送中に内部温度を-150℃以下に維持する時間である。
【0027】
[0038]貯蔵システム100は、蒸気プラグ106を含む。
図4、
図7は、蒸気プラグ106を示す。蒸気プラグ106は、ハンドル部分408およびネック410を有していてもよい。ハンドル部分408は、ユーザが蒸気プラグ106を時計回りまたは反時計回りの方向にねじって、ネック410の少なくとも一部を開口部402に挿入することを可能にするハンドルまたはグリップを有していてもよい。蒸気プラグ106は取り外し可能であってもよい。即ち、蒸気プラグ106は、デュワー104の開口部402に挿入されて、デュワー104を閉鎖または部分的に閉鎖し、ペイロード領域506へのアクセスを防止し得る。ハンドル部分408および/またはネック410は、ポリマーまたはグラスファイバの様な材料などの非導電性材料から作製されてもよい。
【0028】
[0039]蒸気プラグ106は、例えば
図4に示されるように、時計回りおよび/または反時計回りに回転または捩じられてもよい。例えば、蒸気プラグ106は、開口部402に挿入されると時計回りに回転して、開口部402内に蒸気プラグ106を固定し、反時計回りに回転して、開口部402から蒸気プラグ106を取り外して、ペイロード領域506に液体または気体を挿入することができる。別の例では、蒸気プラグ106は、開口部402内に挿入されると反時計回りに回転して、開口部402内に蒸気プラグ106を固定し、時計回りに回転して、開口部402から蒸気プラグ106を取り除くことができる。蒸気プラグ106は、ペイロード領域506内の液体が蒸発するときに圧力が蓄積するのを防ぐために気体が逃げることを可能にする間隙が残るように、開口部402に挿入されてもよい。
【0029】
[0040]
図7に示すように、蒸気プラグ106は、ロックデバイス704を有していてもよい。ロックデバイス704は、蒸気プラグ106のネック上に位置決めされ得る。ロックデバイス704は、デュワー104のペイロード領域506の上部内側部分内の1つまたは複数の他の磁石と連動する1つまたは複数の磁石であってもよい。磁石は反対の極性を有していてもよく、蒸気プラグ106がデュワー104内の特定の位置で回されると、磁石はデュワー104内の蒸気プラグをロックする。逆に、蒸気プラグ106がその軸を中心に別の位置まで回転すると、磁石の反対の極性により蒸気プラグがデュワー104から押し出され得る。
【0030】
[0041]ロックデバイス704は、蒸気プラグ106がペイロード領域506内に挿入されるとロックする。蒸気プラグ106とデュワー104のペイロード領域506の内側部分との間に間隙があり得るので、デュワー104が異なる方向に向けられ、または回転されると、ロックデバイス704は、蒸気プラグ106をデュワー104と共に適所にロックして、蒸気プラグ106が脱落するのを防止する。蒸気プラグ106とデュワー104との間の間隙は、ペイロード領域506内の気体の膨張または液体の蒸発により気体が逃げることを可能にし、ペイロード領域506内に圧力が蓄積するのを防ぐ。
【0031】
[0042]貯蔵システム100は、蒸気プラグ106のネック410内に位置決めされ、埋め込まれ、もしくは含まれ、またはネック410に接続され得る電子熱電対702を含み得る。電子熱電対702は、デュワー104内の温度を測定および監視する電子デバイスまたはセンサであってもよい。電子熱電対702は、無線プロトコルを使用して、スマートデータロガーなどの別の電子デバイスと無線送信および/または通信することができる。電子熱電対702は、スマートデータロガーに通信して温度を提供し得、および/または温度を監視するためにスマートデータロガーから命令を受信し得る。スマートデータロガーは、温度を表示するか、またはユーザまたは別の電子プラットフォームに温度を伝達してもよい。これは、他の個人によるデュワー104内の温度のリアルタイム監視を可能にする。
【0032】
[0043]貯蔵システム100は、例えば
図8A~
図8Bに示されるように、波形ネックチューブ800を含み得る。波形ネックチューブ800は、薄壁であってもよい。波形ネックチューブ800は、内壁504をデュワー104の外壁502に接続する。波形ネックチューブ800は、ネックチューブの全体の高さを低減するが、直線ネックチューブと同じように、熱を伝導する経路の全長を維持する。波形ネックチューブ800は、熱伝導を提供する蛇行経路802を有し得る。ネックチューブの高さを低くするが、経路全体の長さを真っ直ぐなネックチューブと同じに保つことにより、波形ネックチューブ800は、デュワー104の全体的なサイズを低減する。さらに、熱伝導の経路全体の長さを真っ直ぐなネックチューブと同じに保つことにより、波形ネックチューブ800は、デュワー104に伝導される熱の量を低減する。したがって、波形ネックチューブ800は、同様の全経路長の直線ネックチューブよりも短いネックチューブ(例えば、全体の高さまたはサイズが短い)で同じ熱伝導を提供する。例えば、波形ネックチューブ800の高さは5.08~7.62cm(2~3インチ)の長さであり得るが、熱伝導の全体の経路長は、薄壁波形ネックチューブに沿った蛇行経路であり得るので、熱伝導の全体の経路長は、15.24cm(6インチ)長であってもよい。
【0033】
[0044]貯蔵システム100は、例えば
図9に示すように、ボール移送デバイス900を含む。ボール移送デバイス900は、内部指骨(inner phalange)または翼(wing)202において筐体102に接続されてもよい。ボール移送デバイス900は、筐体102とデュワー104との間に連結を提供し、デュワー104が筐体102の空洞内で自由に回転することを可能にし得る。
【0034】
[0045]ボール移送デバイス900は、ヘッド902および本体904を有してもよい。ヘッド902および本体904は、円筒として形作られてもよい。ヘッド902の直径は、本体904の直径より大きくてもよい。ボール移送デバイス900は、内部指骨または翼202の穴または開口部に挿入されてもよい。例えば、本体904は、開口部に挿入されてもよく、ヘッド902は、内部指骨または翼202の開口部の周りにシールを形成してもよい。ヘッド902および本体904は、玉軸受906およびばね908が存在する開口部および空洞を有していてもよい。
【0035】
[0046]ボール移送デバイス900は、ボールベアリング906、カップ910、およびボール移送デバイス900の空洞内に着座または静止するばね908を有していてもよい。ボールベアリング906は、上部および底部を有していてもよい。ボールベアリング906の上部は、ボール移送デバイス900のヘッド902から突出してもよい。デュワー104が筐体102の空洞内に着座されると、突出するボールベアリング906の上部がデュワー104に接触する。ボールベアリング906は、筐体102とデュワー104との間の摩擦を最小にし、デュワー104が筐体102内で自由に回転または移動できるようにする。ボールベアリング906は、摩擦のない、または摩擦の少ない表面を提供する。本体904の空洞内にあるボールベアリング906の底部は、ばね908と係合するカップ910に静止していてもよい。
【0036】
[0047]カップ910は、ボールベアリング906の底部とばね908との間を連結し、その結果、ボールベアリング906の上部に力が加えられると、ボールベアリング906の下部はカップ910を押し、それにより、ばね908に下向きの力が加わり、ばね908が収縮する。これにより、筐体102内においてデュワー104が自由に回転することができ、筐体102は貯蔵および/または輸送中の衝撃および振動を吸収することができる。デュワー104がボールベアリング906を押すと、ばね908がさらに収縮する一方で、ボールベアリング906はさらに本体904の空洞に入る。これにより、デュワー104が剛性を維持する代わりに押し合うことができ、衝撃または振動が吸収される。衝撃または振動を引き起こす事象が過ぎると、ばね908は、戻りまたは拡張して元の状態に戻り、筐体102の空洞内にデュワー104を位置決めしたままにする。さらに、1つまたは複数のボールベアリング906により、デュワー104は回転または角度付けされることができ、それにより、デュワー104は、筐体102の向きに関係なく、受動的に安定化され、直立のままである。
【0037】
[0048]ばね908は、筐体102への衝撃または振動により、デュワー104がボールベアリング906に外向きの力を加えるときなど、ボールベアリング906に下向きの力が加えられると収縮し得る。例えば、筐体102が移動、シフト、または落下すると、筐体102に振動力が作用する。デュワー104が振動力に応答して移動またはシフトする場合、デュワー104は、ボール移送デバイス900に外向きの力を及ぼし得、筐体102に激しく接触する代わりに、デュワー104は、ボールベアリング906に力を及ぼし、それによって、本体904の空洞内に後退し、ばね908を収縮させ、力を吸収させる。
【0038】
[0049]方法/システムの例示的な実施形態を、例示的な形態で開示してきた。したがって、全体を通して使用される用語は、非限定的な方法で読まれるべきである。本明細書の教示に対する小さな修正は、当業者にはよく知られているが、本明細書で保証される特許の範囲内で制限されることを意図するものは、合理的な範囲内の進歩の範囲内にあるそのような全ての実施形態であると理解されるべきであり、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物を考慮しない限り、その技術はここに貢献し、その範囲は制限されない。