IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-軸受装置、及び回転機械 図1
  • 特許-軸受装置、及び回転機械 図2
  • 特許-軸受装置、及び回転機械 図3
  • 特許-軸受装置、及び回転機械 図4
  • 特許-軸受装置、及び回転機械 図5
  • 特許-軸受装置、及び回転機械 図6
  • 特許-軸受装置、及び回転機械 図7
  • 特許-軸受装置、及び回転機械 図8
  • 特許-軸受装置、及び回転機械 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】軸受装置、及び回転機械
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/03 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
F16C17/03
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020563112
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2019049372
(87)【国際公開番号】W WO2020137688
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-06-11
(31)【優先権主張番号】P 2018248015
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】鴫原 拓造
(72)【発明者】
【氏名】諫山 秀一
(72)【発明者】
【氏名】吉峰 千尋
(72)【発明者】
【氏名】横山 真平
(72)【発明者】
【氏名】脇 勇一朗
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-180815(JP,A)
【文献】特開2016-145587(JP,A)
【文献】特開2000-274432(JP,A)
【文献】特開2012-172729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00-17/26,33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の外周面を該回転軸の軸線回りに回転可能に支持する軸受パッドと、
該軸受パッドにおける前記回転軸の回転方向上流側に配置されて前記回転軸の外周面に潤滑油を供給する供給孔を有するノズルと、
前記ノズルの前記回転方向上流側で前記回転軸の外周面に対向して、かつ、前記ノズルの前記軸線方向両側に一対が配置されて、一対のうちの少なくとも一方に該一方を前記軸線方向に貫通する排出孔が形成されたサイドプレートと、
前記供給孔と前記排出孔との間の周方向位置で、前記回転方向上流側を向くとともに前記回転軸の外周面に沿って、前記軸受パッドが設けられる範囲の全域にわたって前記軸線方向に延びる案内面と、
を有し、
前記ノズルは、前記一対のサイドプレートにわたって前記軸線方向に延びており、
前記案内面は、前記ノズルにおける前記回転方向上流側を向く面であり、
前記ノズルは、前記案内面における前記回転軸の径方向外側の端部に接続されているとともに、前記排出孔の前記径方向外側で前記案内面における前記径方向外側の端部から前記回転方向上流側に向かって延びるブロック面を有し、
前記排出孔は、前記軸線方向から見て、前記案内面、前記ブロック面及び前記回転軸の外周面に囲まれた領域内に位置している軸受装置。
【請求項2】
前記案内面における前記回転軸の径方向内側の端部が、前記径方向内側に向かうに従って前記回転方向上流側に向かって延びている請求項に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記回転軸と、
該回転軸を前記軸線回りに支持する請求項1又は2に記載の軸受装置と、
を備える回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受装置、及び回転機に関する。本願は、2018年12月28日に、日本に出願された特願2018-248015号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
例えば蒸気タービン、ガスタービン、コンプレッサ等に用いられる軸受装置が知られている(例えば特許文献1参照)。軸受装置は、回転軸の周方向に離間して配置された複数の軸受パッドを備えている。このような軸受装置として、ティルティングパッド軸受が知られている。ティルティングパッド軸受では、各軸受パッドが外周側からピボット(支持部)によって揺動可能に支持されている。回転軸とパッド面との間の摺動部には、ノズルから供給された潤滑油の油膜が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-078476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような軸受装置では、ノズルから供給された潤滑油の一部は、回転軸の回転に伴って軸受上半部を経由し、キャリーオーバ油として再度摺動部に供給されることがある。このようなキャリーオーバ油には空気がボイドとして混入されているため、場合によっては、摺動部での油不足が生じる結果、低周波振動が発生する。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、摺動部での油不足を抑制することができる軸受装置、及び回転機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る軸受装置は、回転軸の外周面を該回転軸の軸線回りに回転可能に支持する軸受パッドと、該軸受パッドにおける前記回転軸の回転方向上流側に配置されて前記回転軸の外周面に潤滑油を供給する供給孔を有するノズルと、前記ノズルの前記回転方向上流側で前記回転軸の外周面に対向して、かつ、前記ノズルの前記軸線方向両側に一対が配置されて、一対のうちの少なくとも一方に該一方を前記軸線方向に貫通する排出孔が形成されたサイドプレートと、前記供給孔と前記排出孔との間の周方向位置で、前記回転方向上流側を向くとともに前記回転軸の外周面に沿って、前記軸受パッドが設けられる範囲の全域にわたって前記軸線方向に延びる案内面と、を有し、前記ノズルは、前記一対のサイドプレートにわたって前記軸線方向に延びており、前記案内面は、前記ノズルにおける前記回転方向上流側を向く面であり、前記ノズルは、前記案内面における前記回転軸の径方向外側の端部に接続されているとともに、前記排出孔の前記径方向外側で前記案内面における前記径方向外側の端部から前記回転方向上流側に向かって延びるブロック面を有し、前記排出孔は、前記軸線方向から見て、前記案内面、前記ブロック面及び前記回転軸の外周面に囲まれた領域内に位置している。
【0007】
上記構成では、回転軸の外周面に付着しているキャリーオーバ油が案内面に到達すると、該案内面によって軸線方向に案内される。その結果、キャリーオーバ油は、サイドプレートに形成された排出孔を介して、軸受装置の軸線方向の端部側に排出される。よって、キャリーオーバ油が、ノズルの供給孔から新たに供給される潤滑油とともに軸受パッドと回転軸との間に導入されてしまうことを抑制することができる。
また、回転軸の外周面に付着しているキャリーオーバ油が案内面に到達すると、該案内面によって軸線方向に案内される。その結果、キャリーオーバ油は、サイドプレートに形成された排出孔を介して、軸受装置の軸線方向の端部側に排出される。よって、キャリーオーバ油が、ノズルの供給孔から新たに供給される潤滑油とともに軸受パッドと回転軸との間に導入されてしまうことを抑制することができる。
さらに、案内面に到達したキャリーオーバ油は、ブロック面によって径方向外側からブロックすることできる。そのため、キャリーオーバ油が不用意に流れ出てしまうことなく、該キャリーオーバ油を案内面を介して軸線方向に円滑に案内することができる。
【0012】
上記軸受装置では、前記案内面における前記回転軸の径方向内側の端部が、前記径方向内側に向かうに従って前記回転方向上流側に向かって延びていてもよい。
【0013】
上記構成によれば、案内面の径方向内側の端部で回転軸の外周面からキャリーオーバ油を掻き取るようにして該案内面上に導入することができる。
【0014】
本発明の一態様に係る回転機械は、前記回転軸と、該回転軸を前記軸線回りに支持する上記いずれか一の態様に係る軸受装置と、を備える。
【0015】
上記構成によれば、安定的に運用することが可能な回転機械を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、摺動部での油不足を抑制することができる軸受装置及び回転機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第一実施形態に係る軸受装置を備えた蒸気タービンの模式的な縦断面図である。
図2】第一実施形態に係る軸受装置の軸線に直交する断面図である。
図3】第一実施形態に係る軸受装置を径方向内側から見た展開図である。
図4図3のA-A線における断面図である。
図5図3のB-B線における断面図である。
図6】第二実施形態に係る軸受装置の要部における軸線に直交する断面図である。
図7】第三実施形態に係る軸受装置の軸線に直交する断面図である。
図8】各実施形態の変形例に係るノズルの構成を示す図である。
図9】各実施形態の他の変形例に係るノズルの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第一実施形態]
図1に示すように、本発明の第一実施形態に係る蒸気タービン1(回転機械)は、蒸気のエネルギーを回転動力として取り出す外燃機関であって、発電所における発電機等に用いられるものである。
【0025】
蒸気タービン1は、タービンケーシング2と、該タービンケーシング2を貫通するように軸線Oに沿って延びる回転軸10と、タービンケーシング2に保持された静翼3と、回転軸10に設けられた動翼4と、回転軸10を軸線O回りに回転可能に支持する軸受部20とを備えている。軸受部20は、スラスト軸受21及びジャーナル軸受け30を備えており、回転軸10を回転可能に支持している。
【0026】
回転軸10は、軸線Oを中心として延びる円柱形状をなしている。回転軸10は、タービンケーシング2に対して軸線O方向に延在している。回転軸10の一部には、スラストカラー11が形成されている。スラストカラー11は、軸線Oを中心として円板形状をなしており、フランジ状をなすように回転軸10の本体から回転軸10の径方向外側に一体的に張り出している。スラスト軸受21は、スラストカラー11を軸線O方向両側から摺動可能に支持している。
【0027】
このような蒸気タービン1では、タービンケーシング2内に導入される蒸気が静翼3及び動翼4の間の流路を通過する。この際、蒸気が動翼4を回転させることで該動翼4に伴って回転軸10が回転し、該回転軸10に接続された発電機等の機械に動力(回転エネルギー)が伝達される。
【0028】
次に、本実施形態の軸受装置であるジャーナル軸受け30について、図2を参照して説明する。ジャーナル軸受け30は、キャリアリング40と、複数のピボット45と、複数(2つ)の軸受パッド50と、ガイドメタル60(サイドプレート)と、上半カバー70と、下流側ノズル75と、上流側ノズル80(ノズル)と、を備えている。
【0029】
キャリアリング40は、軸線Oを中心とする円環状をなすことで、回転軸10を外周側から覆っている。キャリアリング40は、キャリアリング本体41と、サイドリング42と、を有している。キャリアリング本体41は、回転軸10の外周面に対して隙間を介して当該回転軸10を外側から覆っている。サイドリング42は、キャリアリング本体41の軸線O方向両側から上記の空間を覆っている。サイドリング42は、軸線Oを中心とする円環状をなしている。
【0030】
キャリアリング本体41の内周面上には、複数のピボット45が設けられている。ピボット45は、後述する軸受パッドを支持するために設けられている。各ピボット45は、キャリアリング本体41の内周面から軸線Oに対する径方向内側に向かって突出している。各ピボット45は、径方向外側から内側に向かうに従って次第に先細りしている。本実施形態では、2つのピボット45が周方向に間隔をあけて配列されている。より具体的には、これらピボット45は、キャリアリング本体41における下半部に設けられている。なお、ここで言う下半部とは、軸線Oが水平方向に延びている場合において、当該軸線Oよりも下方の領域を指している。
【0031】
軸受パッド50は、回転軸10の周方向に間隔をあけて互いに異なる周方向位置に、ピボット45と対応するように該ピボット45と同数が設けられている。本実施形態では、2つの軸受パッド50と、2つのピボット45が設けられている。各軸受パッド50は、回転軸10の軸線Oに直交する断面視において円弧状をなし、かつ、径方向の寸法が一様な湾曲板形状をなしている。軸受パッド50における径方向外側を向く外周面は、上記ピボット45の先端によって支持される裏面51とされている。軸受パッド50はピボット45の先端を支点として揺動可能とされている。これにより、いわゆるディルティング機構が構成されている。軸受パッド50の裏面51と、ピボット45の先端とは点接触している。
【0032】
軸受パッド50の内周面は、回転軸10に対向するパッド面52とされている。パッド面52と回転軸10との間に潤滑油が介在されることで、パッド面52は当該潤滑油を介して回転軸10の外周面を摺動可能に支持している。パッド面52は、軸線O方向から見て径方向外側に凹む円弧状をなしており、当該円弧形状を維持したまま軸線O方向に延在している。軸受パッド50は、外周側の部分が鋼材等から形成された基部とされており、当該基部の内周側にホワイトメタルが積層されている。パッド面52はホワイトメタルによって形成されている。
【0033】
ガイドメタル60は、キャリアリング本体41の内周面の上半部に、上半カバー70を介して固定されている。ガイドメタル60は、回転軸10の荷重を支持するものではなく、回転軸10の飛び上がりを防ぐために設けられている。ガイドメタル60は、キャリアリング本体41の内周面に周方向に延びる円弧状の部材である。ガイドメタル60は、外周面がキャリアリング本体41に固定され、内周面が回転軸10の外周面に隙間をあけて対向している。ガイドメタル60の内周面は軸線O方向から見て、該軸線Oを中心とした円弧状をなしている。詳しくは後述するが、ガイドメタル60は、軸線O方向に間隔をあけて2つ設けられている。
【0034】
上半カバー70は、ガイドメタル60の外周側に設けられることで、当該ガイドメタル60をキャリアリング本体41の内周面に固定している。上半カバー70は、軸線Oを中心とする円弧状をなしている。回転方向Tの下流側における上半カバー70の端部は、回転方向Tの下流側におけるガイドメタル60の端部よりも、回転方向Tの上流側に位置している。即ち、当該端部では、キャリアリング本体41、ガイドメタル60、及び上半カバー70に囲まれた空間が形成されている。
【0035】
下流側ノズル75、及び上流側ノズル80は、軸受パッド50と回転軸10との間に潤滑油を供給する役割を有する。下流側ノズル75、及び上流側ノズル80は、各軸受パッド50における回転軸10の回転方向T上流側に設けられている。下流側ノズル75、及び上流側ノズル80は、外部から供給される潤滑油を回転方向T下流側に向かって吐出する。
【0036】
上流側ノズル80は、ノズル本体81と、ブロック体90と、を有している。ノズル本体81は、軸線Oに対する径方向に延びている。ブロック体90は、ノズル本体81における回転方向Tの上流側から周方向に突出している。ブロック体90は、上述した空間(キャリアリング本体41、ガイドメタル60、及び上半カバー70に囲まれた空間)を埋めるために設けられている。また、上流側ノズル80がブロック体90を有することで、後述する供給孔85を複数列形成することができるため、1つの上流側ノズル80当たりの給油量を十分に確保することもできる。
【0037】
図3から図5に示すように、ノズル本体81は、一方側のサイドリング42から他方側のサイドリング42にかけて軸線O方向に延びている。つまり、ノズル本体81は、ガイドメタル60に対して下流側から対向している。ノズル本体81における径方向内側を向く面は、回転軸10の外周面に対向する対向面82とされている。対向面82上には、径方向外側に向かって凹む凹部83が形成されている。さらに、この凹部83の底面(径方向外側の面)上には、軸線O方向に間隔をあけて配列された複数の供給孔85が形成されている。各供給孔85は、ノズル本体81の内部に形成された内部流路84(図4参照)に連通している。内部流路84を通じて導かれた潤滑油は、供給孔85を経て、回転軸10の外周面に向かって吐出される。
【0038】
ノズル本体81における回転方向Tの上流側を向く面は案内面86とされている。案内面86の径方向外側の端縁は、ブロック体90の内周面(ブロック面91)の回転方向Tにおける下流側の端縁と接続されている。ブロック面91は、回転方向Tの上流側に向かって延びている。
【0039】
ガイドメタル60におけるブロック体90と周方向で重なる位置には、当該ガイドメタル60を軸線O方向に貫通する排出孔61が形成されている。なお、排出孔61は、2つ(一対)のガイドメタル60のうち、少なくとも一方に形成されていればよい。本実施形態では、一対のガイドメタル60の両方に排出孔61が形成されている例について説明する。各排出孔61は、ノズル本体81の案内面86よりも回転方向Tの上流側に開口している。
【0040】
続いて、本実施形態に係るジャーナル軸受け30の動作について説明する。蒸気タービン1の運転に伴って回転軸10が回転すると、回転軸10と軸受パッド50との間には、上記の下流側ノズル75及び上流側ノズル80によって潤滑油が供給される。潤滑油は、回転軸10の外周面と軸受パッド50のパッド面52との間に油膜を形成する。この油膜によって、回転軸10は、パッド面52上で摺動可能に支持される。
【0041】
ここで、上記のジャーナル軸受け30では、軸受パッド50が下半側のみに設けられている。したがって、下流側ノズル75及び上流側ノズル80から供給された潤滑油の一部は、回転軸10の回転に伴ってジャーナル軸受け30の上半部を経由し、キャリーオーバ油として再度パッド面52上に供給されることがある。このようなキャリーオーバ油には空気がボイドとして混入されているため、場合によっては、パッド面52での油不足が生じる可能性がある。その結果、回転軸10に低周波振動が発生する虞がある。
【0042】
そこで、本実施形態に係るジャーナル軸受け30では、上述のように上流側ノズル80のノズル本体81に案内面86が形成されているとともに、ガイドメタル60に排出孔61が形成されている。これにより、回転軸10の外周面に付着しているキャリーオーバ油が案内面86に到達すると、該案内面86によって軸線O方向両側に広がるように案内される。その結果、キャリーオーバ油は、ガイドメタル60に形成された排出孔61を介して、ジャーナル軸受け30の軸線O方向の端部側に排出される。よって、キャリーオーバ油が、ノズルの供給孔85から新たに供給される潤滑油に伴って再び軸受パッド50と回転軸10との間に導入されてしまうことを抑制することができる。
【0043】
さらに、上記構成によれば、ノズル本体81自体に案内面86が形成されているため、別途案内面86を形成する部材を設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることができる。
【0044】
加えて、上記構成によれば、案内面86に到達したキャリーオーバ油は、ブロック面91によって径方向外側からブロックすることできる。そのため、キャリーオーバ油が不用意に流れ出てしまうことなく、該キャリーオーバ油を案内面86を介して軸線方向に円滑に案内することができる。
【0045】
さらに加えて、上記構成によれば、ノズル本体81の対向面82が回転軸10に対向している。これにより、上流側の軸受パッド50と下流側の軸受パッド50とが分断される。そのため、上流側の軸受パッド50から流れ出たキャリーオーバ油の周囲の高温の雰囲気が、下流側の軸受パッド50に到達することがない。その結果、下流側の軸受パッド50の温度が上昇してしまう可能性を抑制することができる。
【0046】
以上、本発明の第一実施形態について説明した。なお、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0047】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について、図6を参照して説明する。なお、上記第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。同図に示すように、本実施形態では、ノズル本体81における案内面100は、平坦部101と、掻き取り部102と、を有している。軸線O方向から見て、平坦部101は、軸線Oに対する径方向に延びている。平坦部101の径方向外側の端縁は、回転方向Tにおけるブロック面91の下流側の端縁に接続されている。一方で、案内面100における径方向内側の端部である掻き取り部102は、径方向内側に向かうに従って回転方向Tの上流側に向かって延びている。即ち、掻き取り部102は、回転方向Tの上流側に向かって先細りとなるように突出している。掻き取り部102の径方向内側の端面は、回転軸10の外周面がなす円周曲面に沿って円弧状に湾曲している。また、掻き取り部102の径方向外側の端縁と、平坦部101の径方向内側の端縁とは、滑らかな曲面状となるように互いに接続されている。
【0048】
この構成によれば、案内面100の径方向内側の端部で回転軸10の外周面からキャリーオーバ油を掻き取るようにして該案内面100上に導入することができる。その結果、上記の排出孔61に向かってキャリーオーバ油をさらに積極的に導くことができる。これにより、キャリーオーバ油が、ノズルの供給孔85から新たに供給される潤滑油に伴って再び軸受パッド50と回転軸10との間に導入されてしまう可能性をさらに低減することができる。
【0049】
以上、本発明の第二実施形態について説明した。なお、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0050】
[第三実施形態]
続いて、本発明の第三実施形態について、図7を参照して説明する。なお、上記第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。同図に示すように、本実施形態に係るジャーナル軸受け30Bでは、上述の軸受パッド50、及びこれを支持するピボット45がそれぞれ4つずつ設けられている点で上記の各実施形態とは異なる。つまり、本実施形態では、4つの軸受パッド50が、周方向に間隔をあけて配列されている。各軸受パッド50の上流側には、上述した上流側ノズル80がそれぞれ設けられている。また、各軸受パッド50の下流側には、下流側ノズル75がそれぞれ設けられている。
【0051】
この構成によれば、上述の各実施形態で説明した作用効果に加えて、ジャーナル軸受け30Bが4つの軸受パッド50を備えていることから、周方向におけるさらに広い範囲で回転軸10による荷重を安定的に支持することができる。また、各軸受パッド50にそれぞれ上流側ノズル80と下流側ノズル75が設けられていることから、それぞれの軸受パッド50に対して安定的に潤滑油を供給することができる。
【0052】
以上、本発明の第三実施形態について説明した。なお、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
例えば、上記の第三実施形態では、下流側ノズル75の下流側に上流側ノズル80が配置されている例について説明した。しかしながら、上流側の軸受パッド50から排出されるキャリーオーバ油による影響を回避する上では、下流側ノズル75の上流側に上流側ノズル80を設ける構成を採ることも可能である。
【0053】
また、既設の従来型の軸受装置に対して改修を施す場合には、既存の複数のノズルのうち、一部のみを上述の上流側ノズル80(ブロック型ノズル)に変更した構成を採ることも可能である。この構成によっても、上述したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0054】
また、各実施形態に共通する変形例として、図8図9に示す構成を採ることも可能である。図8の例では、複数の供給孔85が軸線方向に配列されることで1つの供給孔群gを形成しているとともに、当該供給孔群gが周方向に間隔をあけて複数設けられている。なお、同図の例では、2つの供給孔群gが設けられている構成を示しているが、3つ以上の供給孔群gが設けられた構成を採ることも可能である。
【0055】
上記構成によれば、供給孔群gが周方向に間隔をあけて複数設けられていることから、軸受パッド50により多くの油を安定的に供給することができる。また、従来はノズルからの給油量が不足している場合、ノズルを新たに増設することで不足を補っていた。しかしながら、上記構成によれば、このようにノズルを増設することなく、1つのノズル(上流側ノズル80)に複数の供給孔群gを形成することのみによって給油量を安定的に確保することができる。
【0056】
さらに、図9の例では、複数の供給孔85が軸線O方向一方側から他方側に向かうに従って周方向に交互に位置するように配置されている。言い換えれば、同図の例では、複数の供給孔85が千鳥格子状(staggerred)に配列されている。
【0057】
上記構成によれば、複数の供給孔85が周方向に交互に位置するように配置されていることから、軸受パッド50により多くの油を安定的に供給することができる。
【0058】
なお、上記の各実施形態では、上流側ノズル80を本発明の適用対象として説明した。しかしながら、下流側ノズル75をその適用対象とすることも可能である。なお、この場合、下流側ノズル75の軸線O方向両側には上記のガイドメタルが設けられていない。そこで、キャリアリング40のサイドリング42に排出孔を形成し、この排出孔から外部にキャリーオーバ油を排出する構成を採ることが望ましい。
【0059】
加えて、上記の各実施形態では、ノズル本体81に案内面86を形成した例について説明した。しかしながら、案内面86を有する部材を、ノズル本体81とは別に設け、これによってキャリーオーバ油を案内する構成を採ることも可能である。
【0060】
さらに加えて、上記の各実施形態では、ジャーナル軸受け30,30Bが、それぞれ2つ、又は4つの軸受パッド50を備えている例について説明した。しかしながら、軸受パッド50の個数は上記に限定されず、例えば3つや5つ以上の軸受パッド50を備える構成を採ることも可能である。また、上述した上流側ノズル80を隣接する軸受パッド50同士の間に、周方向に間隔をあけて複数設ける構成を採ることも可能である。
【0061】
さらに、上記の各実施形態では、ジャーナル軸受け30を回転機械としての蒸気タービン1に適用した例について説明した。しかしながら、回転機械の具体例は蒸気タービン1に限定されず、ガスタービンや圧縮機等を含む他の機械装置にジャーナル軸受け30を適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
上記の軸受装置によれば、摺動部での油不足を抑制することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 蒸気タービン
2 タービンケーシング
3 静翼
4 動翼
10 回転軸
11 スラストカラー
20 軸受部
21 スラスト軸受
30 ジャーナル軸受(軸受装置)
40 キャリアリング
41 キャリアリング本体
42 サイドリング
45 ピボット
50 軸受パッド
51 裏面
52 パッド面
60 ガイドメタル(サイドプレート)
61 排出孔
70 上半カバー
75 下流側ノズル
80 上流側ノズル
81 ノズル本体
82 対向面
83 凹部
84 内部流路
85 供給孔
86 案内面
90 ブロック体
91 ブロック面
100 案内面
101 平坦部
102 掻き取り部
O 軸線
T 回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9